金融審議会金融分科会第一部会(第23回)議事録

日時:平成16年12月24日

金融庁 総務企画局

午前10時00分開会

○神田部会長

それでは、まだ若干遅刻して来られる方もいらっしゃるようですけれども、時間になりましたので、始めさせて頂きます。

ただいまから、金融審議会金融分科会第一部会を開催します。本日は第23回目の会合になります。

皆様方には、いつもご多忙のところをお集まり頂きまして、ありがとうございます。また、年末のお忙しいところをありがとうございます。

本日でございますが、去る11月16日に金融庁が公表いたしました「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応」のうち、ディスクロージャー・ワーキング・グループの方に検討の要請がありました開示制度の整備について、検討の結果を取りまとめて頂きましたので、ディスクロージャー・ワーキング・グループからその検討結果についてご報告をして頂きます。そして、その内容につきましてご議論頂き、ここでご了承を頂ければと思います。ご了承頂けますと、当部会としての報告ということにさせて頂ければと思います。その後で、前回までの議論の続きですけれども、投資サービスの範囲及び定義方法について、事務局からの説明をして頂いて、審議を進めたいと思います。

なお、本日は伊藤金融担当大臣にこの部会の報告をお渡しすることが予定されておりまして、カメラ撮りも行われることが予定されております。大臣の日程の都合がございますので、恐らく投資サービス法についての審議の途中で15分程度の審議の中断をお願いして報告書を大臣にお渡しすることになろうかと思いますので、あらかじめその点ご了承頂ければと存じます。

それでは議事に入らせて頂きます。まず、ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて」につきまして、座長の岩原先生と事務局からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○岩原委員

それではディスクロージャー・ワーキング・グループから報告をさせて頂きます。

ディスクロージャー・ワーキング・グループにおきましては、第一部会からのご指示によりまして、本年10月7日からディスクロージャー制度のあり方をめぐる諸論点について幅広い検討を進めております。この間、本年10月中旬以降、皆様ご存じのとおり、証券取引法上のディスクロージャーをめぐりまして不適正な事例が相次いで判明したところでございます。これを受けまして、11月16日には金融庁から「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応」が発表されました。そこでは、開示制度の整備といたしまして、第1に、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の評価と公認会計士等による監査のあり方、第2に、継続開示義務違反に対する課徴金制度のあり方、第3に、コーポレート・ガバナンスに係る開示の充実のあり方、第4に、親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実のあり方、以上の4項目につきまして、ディスクロージャー・ワーキング・グループに対して具体的な検討の要請がございました。

これらの事項につきましては、ディスクロージャー制度に対する信頼を確保するという観点から早急な対応が必要であると考えられたために、ディスクロージャー・ワーキング・グループにおきましては、これらの事項に関し、この1カ月間の間に4回にわたりまして集中的に審議を行い、議論の取りまとめを行ったところでございます。そして、他の審議項目と切り離して、本日第一部会にディスクロージャー・ワーキング・グループ報告「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて」をご報告させて頂くこととした次第でございます。

具体的な報告書の内容につきましては、事務局からお願いいたしたいと思います。それでは、よろしくお願いします。

○谷口市場課課長補佐

それでは、お手元の「金融審議会第一部会ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告」を読み上げさせて頂きます。

金融審議会第一部会ディスクロージャー・ワーキング・グループ報告

-ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて-

1 .審議経緯等

当ディスクロージャー・ワーキング・グループ(WG)では、ディスクロージャー制度のあり方をめぐる諸論点について幅広い検討を進めている。この間、本年10月中旬以降、証券取引法上のディスクロージャーをめぐり不適正な事例が相次いで判明するところとなった。これを受けて、11月16日には、金融庁から当WGに対して、マル1財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者の評価と公認会計士等による監査のあり方、マル2継続開示義務違反に対する課徴金制度のあり方、マル3コーポレート・ガバナンスに係る開示の充実のあり方、マル4親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実のあり方の4項目について、具体的な検討の要請があった。これらの事項については、ディスクロージャー制度に対する信頼を確保するとの観点から、早急な対応が必要であると考えられるため、当WGでは、他の審議項目と切り離して報告を行うこととした。

なお、当WGでは、ディスクロージャー制度をめぐる諸論点につき、引き続き審議を進めていくこととしている。

2 .財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価と公認会計士等による監査のあり方

証券取引法において、有価証券報告書は投資者に企業情報を開示する基本的かつ最も重要な開示書類であり、有価証券報告書の開示内容について不適正な事例が相次いでいる最近の事態は、投資者の証券市場に対する信頼を揺るがしかねない重大な事態であると認識している。

最近の事例を見ると、ディスクロージャーの信頼性を確保するための内部統制が有効に機能していなかったのではないかといったことがうかがわれ、また、日本公認会計士協会による調査においても、会計監査について、現状では、内部統制の評価等に費やされる時間が海外に比べて少ないとのデータが報告されている。このような状況を踏まえると、ディスクロージャーの信頼性を確保するため、内部統制の強化を図る方策が真剣に検討されるべきである。

この点に関連して、米国の企業改革法においては、経営者に年次報告書の開示が適正である旨の宣誓を義務づけるとともに、財務報告に係る内部統制の有効性を評価した内部統制報告書の作成を経営者に義務づけ、さらに、これについて公認会計士による検証を受けることとされている。この米国の手法については、内部統制の有効性評価に当たっての事務コストが、とりわけ事務プロセスの文書化に関して多大である、あるいは、米国流のコーポレート・ガバナンスの基準に基づくものであり、日本には必ずしも馴染まないといった指摘がある一方、我が国においても内部統制を構築し有効に機能させる責任が経営者にあることは明らかであり、実効性を失わせない形でできる限りタイムリーでコストがかからないようにする等の工夫はあるにせよ、その有効性は否定できないとの指摘がある。

我が国では、平成16年3月期決算から、会社代表者による有価証券報告書の記載内容の適正性に関する確認書が任意の制度として導入されており、その中では財務報告に係る内部統制システムが有効に機能していたかの確認が求められている。また、主要金融機関は、バーゼル銀行監督委員会のフレームワーク等に従って、平成15年3月期決算から前倒しでこの確認書を提出しており、これに関して、日本公認会計士協会は監査に係る実務指針を公表している。さらに、平成16年3月期決算においては、主要金融機関以外でも、数十の会社から確認書が提出されている。

内部統制の強化を図っていくためには、この制度の一層の活用を促していくことが重要であり、このためにも、この確認を行うための基準及びこの確認の内容について会計監査人の検証を得ようとする場合の検証の基準についての明確化を図っていくことが重要である。

このような状況を踏まえ、以下の対応を強く求めたい。

(1) 諸外国の実例や我が国の会社法制との整合性等にも留意しつつ、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価の基準及び公認会計士等による検証の基準の明確化を早急に図るべきである。

(2) これを通じて、会社代表者による確認書制度の活用を促していくとともに、当該基準に示された実務の有効性や諸外国の状況等を踏まえ、その義務化の範囲や方法等が適切に判断されるべきである。

3 .継続開示義務違反に対する課徴金制度のあり方

ディスクロージャー規制違反に対しては、規制の実効性を確保するために、適切な違反抑止の枠組みが整備されることが必要である。これまで、ディスクロージャー規制違反があった場合の対応のための制度は、証券取引法上、虚偽記載等のある開示書類に係る訂正命令及び虚偽記載等に対する罰則の適用に限られてきた。しかしながら、刑事罰の適用には謙抑性、補完性の原則が存在することから、規制の実効性を確保し、違反行為を的確に抑止するためには必ずしも十分でないと考えられる。

こうした認識に基づき、本年6月に公布された証券取引法等の一部を改正する法律では、規制違反に対して金銭的な負担を課する行政上の措置として課徴金制度が導入され、平成17年4月1日から施行されることとなった。しかしながら、この課徴金の対象行為は、マル1有価証券届出書の虚偽記載等のいわゆる発行開示義務違反、マル2風説の流布・偽計の禁止違反、マル3相場操縦行為の禁止違反及びマル4インサイダー取引の禁止違反に限定されており、継続開示義務違反については対象とされていない。

これに対し、最近のディスクロージャーをめぐる不適正な事例の多くはいずれも継続開示に関するものであり、また、発行市場と流通市場における取引数量や取引金額等を比較すれば、継続開示義務違反を抑止する必要性は、発行開示義務違反に比べても劣るものではないと考えられる。継続開示義務に違反した会社は、マル1上場の維持等を通じて、当該会社の有価証券について価格水準や流動性の確保が可能となる他、マル2財務状況が実際より健全に見えることによるレピュテーションの上昇及びそれに伴う取引拡大、人材確保の容易化、マル3会社の格付等の上昇による借入金等のスプレッド改善等、様々な形で利得を得ているのであり、発行開示義務違反の場合とバランスのとれた形で適切な金銭的な負担を課すことなしに、違反行為を的確に抑止することは困難であるということができる。

国際的にみても、米国、英国、ドイツ、フランス等主要な証券市場においては、発行開示義務違反、継続開示義務違反のいずれもが課徴金制度の対象とされており、発行開示義務違反のみが課徴金制度の対象とされている例はない。

これらの点を踏まえれば、我が国においても継続開示義務違反を課徴金制度の対象とすべきことは明白であり、このための法制面の詰めが早急に進められるべきである。

なお、課徴金の額について、来年4月に導入される課徴金制度では、経済的利得相当額が算定の根拠とされている。この点について、規制違反を十分に抑止するためには、経済的利得を超える額の課徴金を課すことが必要であり、今後、全般的な見直しが検討されるべきであるとの指摘があった。また、仮に経済的利得を超える額の課徴金が課されるという場合には、行為の態様等に応じて、きめ細かく課徴金額の加減算が行われるべきであるとの指摘もあった。

4 .コーポレート・ガバナンスに係る開示の充実のあり方

開示会社のコーポレート・ガバナンスの状況に係る情報は、投資者が投資判断を行うに当たって重要な情報であるとの認識の下、平成16年3月期の有価証券報告書から、その開示が義務づけられたところであるが、具体的な開示内容については、基本的に開示会社の判断に委ねられており、関係府令で規定された有価証券報告書の「記載上の注意」では、会社の機関の内容、内部統制システムの整備の状況等の開示が例示されているに過ぎない。

しかしながら、証券取引法上のディスクロージャーをめぐる最近の不適正な事例等を踏まえると、内部監査等の状況や社外取締役・社外監査役の独立性、会計監査人の監査体制や監査継続年数等についての開示の充実が図られる必要がある。

このため、早急に関係府令の改正を行い、平成17年3月期の有価証券報告書から以下の開示を求めることが適当である。

(1) 内部監査等の状況として、内部監査及び監査役(又は監査委員会)監査の手続の概要(監査に係る組織、人員についての記述を含む。)並びに内部監査、監査役(又は監査委員会)監査及び会計監査の相互連携の概要

(2) 社外取締役及び社外監査役と会社との人的関係、資本的関係又は取引関係、その他の利害関係の概要

(3) 会計監査の状況として、関与した公認会計士の氏名、監査法人への所属及び監査継続年数(監査継続年数が7年を超える場合には、その旨及び監査継続年数を記載。)、会計監査業務に係る補助者の構成、監査証明を個人の公認会計士が行っている場合には会計監査業務に係る審査体制の概要

5 .親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実のあり方

開示会社に親会社が存在する場合に当該親会社の株主・役員・財務等の状況は、当該開示会社の経営に大きな影響を及ぼしうる。したがって、これらについての情報は、当該開示会社の経営、コーポレート・ガバナンスの状況等を把握する上で重要な情報であるにもかかわらず、当該親会社が継続開示会社でない場合には、投資者が当該親会社の情報を入手することは困難である。

現行の有価証券報告書においても、「関係会社の情報」及び「関連当事者との取引」として親会社の情報は一定程度、開示されることとなるが、これらの情報は、主に、有価証券報告書の提出会社とその親会社との間の人的、取引関係等に関するものであり、親会社自身の情報は限られた内容となっている。

こうした状況を踏まえ、早急に関係府令の改正を行い、親会社が継続開示会社でない場合には、継続開示会社である子会社の有価証券報告書において、平成17年3月期から、親会社に係る以下の情報の開示を求めることが適当である。

(1) 株式の所有者別状況及び大株主の状況

(2) 役員の状況

(3) 商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書(監査役(又は監査委員会)の監査報告書(会計監査人の監査を受けている場合には、会計監査人の監査報告書を含む。)を添付。)

なお、子会社に親会社情報の開示を求めても、親会社の協力が得られない場合には、実効性が限定されるのではないかとの指摘がある。この点については、

(1) 親会社の協力が得られない場合には、その旨及び理由を有価証券報告書で明示させる

(2) 証券取引所の上場規則で、親会社の協力を求める

(3) 法律で、親会社の協力を求める

といった方策が考えられる。親会社情報の開示につき早急に対応していくとの観点から、まずは、(1)及び(2)の方策の組み合わせにより対応していくことが考えられるが、現在の開示制度との整合性について留意しながら、(3)の方策についても、検討を進めていくことが適当である。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの報告書につきまして、皆様方からご質問、ご意見がありましたら、ここでお出し頂ければと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ、上柳委員、それから原委員の順番で。

○上柳委員

報告書で言いますと3ページの一番下のなお書きのところに関係しての意見及び質問なのですけれども、今回は急ぎの対応ということで、従来の枠組みから大きく踏み出すことはなかなか難しいのかもわかりませんけれども、継続開示について対応することはもちろんとしまして、課徴金の性格というのは、いろいろな考え方があるかもわかりませんけれども、諸外国の例などでも利得を超えるものというのはむしろそういうものとして考えられていたのではないかと私などは思うのですけれども、ここについての検討は引き続き早急にやっていく必要があるのではないかと思っております。もちろん、乱用とか、あるいは手続的なルール化をしっかりしないでつくるということはまずいわけですけれども、その整備等を含めて、この点についての検討はこれからどういうスケジュール観をお持ちなのか、もし情報がありましたら教えて頂きたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。事務局の池田さん。

○池田企業開示参事官

スケジュール観という点がございましたので、その点については事務局の方からご説明したいと思います。

私どもとしては、ディスクロージャー・ワーキング・グループ、あるいは今日ご了承頂ければ、第一部会からこのようなご指摘を頂くということでございましたら、これを踏まえて法制面の検討を早急に進めるということだと思っております。その中で、今ご指摘のあった経済的利得を超える部分を含めた課徴金の制度ということになりますと、単にディスクロージャーに係る部分の手直しということにとどまらず、既に来年の4月から導入が予定されております公正取引に係る課徴金を含めた全般的な見直しが必要になってこようかと思っておりまして、問題意識としてはこういった形で今回ご指摘を頂いていることは認識しておりますけれども、法制面の詰めの必要の程度からしますと、ディスクロージャーの中での整合性の問題と全般を含めたものというのはちょっと作業の程度に差はあるのかなと思っておりますけれども、いずれにしても、法制面の詰めを進める中で、審議会からのご指摘を踏まえて最大限の努力をしていきたいと考えているところでございます。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

それでは、原委員、どうぞ。

○原委員

上柳委員と同様の質問をちょっと思っておりましたので、ちょっと繰り返しになって大変恐縮なのですが、ワーキング・グループに私は所属しておりましたので、早急にワーキング・グループが立ち上がったというところは評価をしているのですけれども、実際にまとめられて、それがどういう法律改正に結びついていくかのところのスケジュールが、4つ論点がありますけれども、1つ、コーポレート・ガバナンスのところについては明示されているのですが、ほかの3つについては明示されていないので、ぜひワーキング・グループを立ち上げたのと同様に早急の措置をお願いしたいと思っております。

特に、意見としては、上柳委員と重複いたしますけれども、課徴金制度のあり方については、消費者としても大変関心を持っております。ワーキング・グループの中でも、この3ページのなお書きに紹介されているように、経済的利得を超える額の課徴金を課すことが必要でありということは、かなり意見として出ていたと私は思っておりまして、不当利得の吐き出しだけではなくて、抑止力を発揮するためには、それ以上の課徴金ということが検討されるべきだと思っておりまして、ここの検討もぜひ早急に進めて頂きたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、東委員。

○東委員

一つは質問なのですが、5ページ目の親会社の情報開示についてですが、ここには親会社の子会社、つまり連結全体の数字と子会社個々の数字まで含まれているのかいないのか。もし親会社の数字単体あるいは連結だけだった場合の子会社の情報についての取り扱いはどう考えたらいいのかというのが質問です。

もう一つは、これは意見として、2ページ目にアメリカの例を引いて考え方の整理がされているわけですが、内部統制報告書の事務コストと有効性というところだと思うのですが、ディスクロージャーを充実するということと内部統制の充実とは次元が違うと思うんです。ディスクローズされたものが正しいということがマーケットの大前提でありますので、そこをいかに信頼性を上げるかというところについて、その内部統制の議論というのは当然なければいけないと思います。ただ、一つ問題なのは、どんどん統制のための統制を一方でしていくということになります。従って、そこはコストとの兼ね合いで、先ほど来議論が出ているマーケットとしてはディスクローズしている企業そのものを信用するという立場を軸足として、仮にそれに違反した場合、それ相当のペナルティーが与えられるというのはやはりそれ相当のものですという組み合わせが重要なのではないかと考えています。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

第1点については、池田さんからお願いします。

○池田企業開示参事官

第1点につきましては、ここにございますように、ワーキング・グループの指摘で、親会社の情報として、財務の状況としては商法上の決算書類を基本的には開示頂くという考え方でございますので、今後、商法の世界で連結という問題はございますけれども、これまでの世界で言えば、基本的には単体の財務情報ということだと思います。連結については、親会社を軸にした連結というのは必ずしもその作業を求めるものではないということだと思いますけれども、その親会社の下にある開示会社である子会社を頭にする連結というのは当然証取法の世界で作成されているということでございます。それ自身が継続開示会社でない親会社に証券取引法上の膨大な決算作業を連結作業も含めてすべて求めるということは、あり得ないことはないのかもしれませんけれども、かなり膨大な作業になるものだろうと思っておりますので、ここの報告では、そういった会社であっても当然商法上の計算書類は既に作成されているはずでございますので、そういったものについては開示頂くという考え方で整理がされております。

○東委員

そういう意味では趣旨はわかりましたけれども、仮に問題が起こるとした場合に、親会社単体で明確になるような問題というのは多分実際には多くないのではないかなという危惧をします。そういう意味では、これは実際に進められた後の問題として、ぜひそういう点も視野に入れて今後も検討のテーマとして頂ければと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

課徴金制度なども、何しろ証券取引法としては初めて去年ご審議頂きまして、今年の改正で導入して、来年の4月1日から施行されるということですので、その様子を見ながら、さらに今日ご指摘がありましたように、そしてまたここのワーキング・グループのご報告でご指摘がありましたように、課徴金制度そのものの考え方ということにつきましても引き続き議論していかなければいけないと思います。今、東委員ご指摘のような点も踏まえ、今後さらに議論していく課題もあるということかとは思いますけれども、この報告書(案)につきまして、できましたらこれを第一部会の報告という形にしてご了承を頂ければありがたいと思います。その場合には、この「審議経緯等」のところの文章を若干修正させて頂いて、この部会とディスクロージャー・ワーキング・グループの報告ということにさせて頂きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。原委員、どうぞ。

○原委員

すみません。もう一度だけ確認をさせて頂きたいのですが、投資サービス法の検討ということを今9月から進めているわけですが、この投資サービス法の中に、またこのワーキング・グループで検討することになると思いますけれども、最終的には3月か4月の段階で盛り込まれてくるということになると思ってよろしいのでしょうか。

○神田部会長

どうぞ。

○池田企業開示参事官

今のは、特に課徴金の関係に関してということでしょうか。

○原委員

4つそれぞれにスケジュール観はあるのだろうとは思います。

○池田企業開示参事官

4点あるうちの第3点目、第4点目については、これは速やかに省令で手当てしたいということでございますので、3月時点でなお論点として残っているかどうかという問題がございますが、ディスクロージャー・ワーキング・グループも現在審議しております全体について報告を2月ないし3月ぐらいに頂きたいと考えておりますから、その時点でなお論点として存在しているものであれば、そこは報告に盛り込んで頂くことは十分に考えられるかなと考えておりますが、いずれにしても、それはワーキング・グループ、部会の中での審議の上で決まっていくことかなと思っております。我々としては、今回の報告で早急に対応すべきものと指摘頂いたものは、できるだけ多くのものが早急に対応できるように臨みたいと思っておりますが、それでもなお残っている問題があれば、改めてそこで指摘を頂くということは十分に考えられるのかなと考えております。

○神田部会長

もうちょっと私なりの理解で言えば、要するに早急な対応ということを提言しておられますので、いわゆる政令・省令のレベルのものはできるだけ早く対応するということであり、法律の改正が必要なものについては、当然のことですけれども、法改正になりますので、法案の策定が必要になり、これもできるだけ早くやる。ただ、課徴金について言えば、5番目の親会社情報も同じ問題だとは思いますけれども、現在の法制の枠組みの中で改正法案がつくれるものについてはできるだけ早くやる。例えば課徴金の例で言いますと、現在の経済的利得というところまでのものについて継続開示違反、これはまず第一弾としてやるということではないでしょうか。そして、先ほどご指摘がありました経済的利得を超える額の課徴金がどうかという問題については、まさにおっしゃって頂いたように、投資サービス法の議論と並行してというか、その中でそういうもののあり方を課徴金制度全体についてご議論頂くというスケジュールになるのではないかと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

今の点を含めて、もしさらにご質問があれば、お受けします。

それでは、このお手元の報告案につきまして、この部会の報告という形にさせて頂きたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

はい、ありがとうございます。それでは、そういうことにさせて頂きます。どうもありがとうございました。冒頭に申し上げましたように、後ほど伊藤金融担当大臣がいらっしゃったときに、このご報告をお渡しさせて頂きたいと思います。

それでは、引き続き次の議題に移らせて頂きます。投資サービスの範囲・定義方法その他につきまして、事務局からのご説明をお願いします。

○大森市場課長

ただいまの課徴金の議論は、昨年は第一部会本体でしておりまして、ちょうど昨年の今日12月24日にまとまった報告では、課徴金対象となる虚偽記載を発行開示に限っておりませんし、証券会社の行為規制違反なども含む幅広い対象を想定しておりました。額についても、抑止のために十分な水準となっておりまして、そういう意味で、今回のワーキング・グループで冒頭から既に結論が出ていると黒沼先生が言われるのも、あるいはかかる制度の必要性は子供でもわかるという意見が出されるのももっともなのですけれども、立法作業のプロセスにおける関係者全員が子供のように素直だったら苦労しないんだがということでもございまして、(笑)課徴金はもとより、新たなタイプの規制手法を設けることに対して極めて厳格に考える日本の法制の常識をそのままにして、今から投資サービス法をつくっていくのも大変なことですから、前回も申し上げましたけれども、現実の急激な変化に対応していかなければならない市場の法制と他の一般的なエンフォースメント法制の違いということも含めて今から議論して頂かなければならないのかなと思います。それで、前回いきなり定義から入ると議論しにくいという意見がありましたので、今日は資料2として具体的な規制の議論のたたき台を用意してみたのですが、ちょっとそこまでいくのがなかなか難しいかもわかりませんので、いけなければ来年続きをお願いするということになろうかと思います。若干急いで方針を決めなければいけない事柄もございますので、本日は前回の投資商品・投資サービス業の範囲・定義方法という論点につき、もう一度掘り下げた上でご意見を頂きたいということでございます。資料1の追加部分に網かけをしております。

前回までで投資商品のカバレッジについては、広ければ広いほど、利用者保護という観点からも、金融システム、ひいては実体経済において資金やリスクをシェアするインフラとしても望ましいであろうという点は、おおむねコンセンサスがあったと思います。諸外国を概観しても、日米で証取法の存在感がまるで違うのは、アメリカのセキュリティーのカバレッジの広さと、そのセキュリティーの取引への侵害を確保する強力なSECということでしょうし、EUでは、ご紹介頂きましたけれども、実質的市場統合に向けて、パスポートの対象となる投資商品や投資サービス業のカバレッジをますます広くとって、むしろ各国の主権が制限されているということでございました。カバレッジを広げるという場合に、これまでと同じように、証取法第2条の有価証券またはみなし有価証券を追加していくやり方がありますが、証券が紙でなくなる日がもう既に視野に入っている中で、そもそもどういう定義の仕方がいいのか、また必要な都度追加しなくても済む包括定義が必要ではないかという論点がございます。

以前から事務局の資料では、この(2)、(3)投資家保護措置が講じられていない商品、それから別の法律により措置の講じられているものに整理してきたところでございまして、何らの措置が講じられていない投資商品のうち、外国為替証拠金取引については、その規制の緊急性にかんがみ、いわば伝統的手法により先般応急手当てをしたということでございます。前回、それ以外の投資家保護措置の講じられていない投資商品についてもカバーすべきだというご意見が多かったと思いますが、若干その議論を複雑にしているのは、私はここで「投資商品」という言葉を使っておりますけれども、現在、法制審議会あるいは経済産業省において、会社や組合という新たな資金調達手段といいますか、事業実施主体の法的選択肢を用意しておられまして、その持分がお金を出す側から見れば投資商品だということです。そもそも、お金を持っている人と事業をしたい人が一致しないから金融という機能が必要になって、お金を持っている人が元本を保証され一定の金利で満足するのだったら貯蓄になるし、元本毀損のリスクはあってもより高いリターンを志向するなら投資になりますが、お金を持っている人と事業をしたい人が必ずしも株式会社ほど截然とは分離されていない場合もございます。今申し上げた会社や組合法制改革の動きというのは、通常、業起こしや事業再編の促進という文脈で語られますけれども、私どももそこにお金を出す側から見た取り扱いを同時に検討し、同時に法的手当てをする必要があるということでございます。

そこで、まず(2)のマル1の会社法制の現代化でございます。まず、株式会社と有限会社の統合は、これは中小企業の実態に即した株式会社をつくれるようにする、いわば株式会社の要件緩和というものですから、証取法サイドではこれまでどおりということで、特に新たな論点はございません。

次に、網かけの部分ですが、日本版LLCと言われております新たな類型、合同会社、これは株式会社のように所有と経営を分離するほどのことはなくて、意思決定や利益配分は組合的に社員の話し合いでやっていく一方で社員全員が有限責任という仕組みでございます。これは、社員の出資持分というのは株式と同じ性質を持ってくるので、この資料ではみなし有価証券ではないかという提案をさせて頂いております。有限会社という仕組みはそもそも社員数50人までですから公募にならないのですが、この合同会社はそうした制限もありませんので、こうした点からも証取法の対象にすべきだと思われます。

さらに、合名会社、合資会社については、5つほどごたごた書いてありまして、基本的に無限責任の社員がいるということが株式会社や合同会社との大きな違いでございますが、一方で有限責任社員もいるとか、無限責任といっても保護しなくていいわけではないとか、会社が借り入れをしなければ事実上この会社というのは有限責任になるとか、さらに昨年、投資型組合の場合は民法組合も含め有限責任・無限責任という区別さえしなかったとか、最後に、先ほどの合同会社も含め類型が変更できるとか、いろいろ書いてございますが、要はその実態として所有と経営が融合しているほど仲間うちでやっているのだから、ほうっておいてくれということになるのでしょうが、制度は器ですから、実際にはいろいろな使われ方がされ得るということでございまして、どこかで具体的な線引きをしなければなりません。かつて証取法の有価証券該当性を論じた際は、転々流通するかどうかというのが大きなメルクマールだったですし、現行法にもその残滓がありますが、最近では、不特定多数の者に販売されるのであれば、転々流通しようが、しまいが、当然投資家保護措置を講じるべきだという考え方の変化があって、昨年の投資型組合への適用もそういう考え方に基づくものであったと思います。

こういった問題の構造は、マル2の事業型組合も同じでございまして、ただいま申し上げたように、昨年は、株式や金銭債権に投資する組合というのは事実上投資信託SPCと同じではないか、そのアナロジーで証取法を適用することにしましたが、次のページにありますように、これは前回に申し上げましたが、集めたお金で組合が自ら事業を行う、映画をつくるとか、CDをつくるとか、お店を経営するという場合にも、みなし有価証券にする必要があるのではないかということでございます。

網かけに書いてありますが、現にオンラインの証券会社などでは、初心者には投資信託を勧めて、上級者にはこういった組合ファンドを勧めるというように、さほど取り扱いに本質的な違いがなくなってきているようですけれども、上級者向けの方が制度上、だれがどのように勧めていいというのもバランスが悪いと思います。

網かけの「また」以下に書いておきました、経済産業省で現在検討しておられます日本版LLPというのは、これは会社ではなくて、組合という法形式でパススルー課税を確保しようというもので、先ほどの日本版LLC合同会社と同様、組合員全員が有限責任であれば、株式と同じ性格を持ってくるので、みなし有価証券という扱いが適当ではないかということでございます。

もっとも、このパラグラフの下から4行目ぐらいにあるように、業務執行が組合員全員一致で業務の委任をしないというのであれば、金だけ出すという人はいなくて、投資家保護は考えなくてもいいということなのかもしれません。元来、会社であれ、組合であれ、その事業をやりたい人たちだけがお金を持ち寄るのであれば自己責任の話ですけれども、責任は自分が出した金額を上限としたいし、事業を大きくしようとすれば、当然事業そのものに従事しない人からもお金を集めなければならないので、投資商品という性格を帯びてまいります。こういう話は、アメリカであれば、ハウイ判決のようにケース・バイ・ケースで裁判所が判断していくのでしょうが、日本の法制では、ある程度あらかじめ決めておかなければならないということでございます。

もちろん、マル1マル2、会社・組合の新たな法制への対応というのは、役所間で相談もしておりますけれども、来年早い時点で対応を決める必要がありますので、若干前回の説明を詳しめに繰り返させて頂きまして、ご意見があればちょうだいしたいということでございます。

(2)の以下は前回と基本的には大きく変わっておりませんで、デリバティブ取引はますます拡大・多様化していくでしょうし、証券と金融先物というのをいつまでも別々の法体系にし続けておく根拠はあまりなさそうでありますし、原資産の違いというのも投資家にとっては意味を持たなくなってきております。マル4の病院債・学校債についても、前回申し上げたとおりですが、ここで一つ、政令指定と書いてありますのは、せっかく証取法に政令指定という仕組みがあるのですが、使われていないので、これぐらいの話であれば、機動的に政令指定することを試みてもいいのではないかといった程度の動機でございます。マル3マル4には、プロかアマかとか、投資家保護のためのコストと調達する資金の兼ね合いといった論点がついてまいります。

(3)の証取法以外の法律により手当てされている投資商品との関係については、証取法に入っていないのはそれなりの理由があってのことでしょうから、どこが違うのか、また証取法的な体系に組み込むとどういう影響が生じるのかを今後、年明けになると思いますけれども、個別に見ていくということになろうかと思います。

前回までの資料では、他省庁との共管の投資商品まで書いてありまして、他省庁主管の商品というのは遠慮して書いていなかったのですけれども、最近、このように遠慮していると、自分の庭先だけきれいにする金融庁などと言われる時代になってしまいましたので、(笑)今回の資料では遠慮なく商品先物なども書いてございます。

そこで、(4)の包括的定義ですが、いきなり望ましい定義を提示する力もないので、資料1-5をご覧頂きますと、アメリカの判例と日本の既存の立法例をここに集めてございます。黒沼先生からもご紹介頂きましたが、有名なハウイ判決は、共同事業に資金を投資し、他人の努力から利益を期待するものとなっておりまして、具体的には、果樹園の売主が買主に対してオレンジ栽培のノウハウの提供とか販売収益の交付もするので、これは単なる不動産の分譲契約ではなく投資契約だとされたものです。先ほどの組合の議論で言いますと、売主に金を払う買主が業務の一部を売主に委託しているので、それは単なる売買ではなく投資だということです。四角の下に共同事業性の水平的、垂直的というややこしそうなことが書いてありますが、このケースで言えば、分譲果樹園の買主兼果樹園サービスへの投資者が複数存在しなければならないのか、売主との共同事業で足りるのかということです。

こういった判例の基準は、具体的事案に妥当な結論を導くためのものですから、どこまで汎用性があるのかいろいろ見方があって、例えば、その下のRisk capital testで4つ基準がありますけれども、そのうちのii)の「出資が事業のリスクに晒されること」というのは、四角の下に書いてありますが、あいまいで具体的適用が困難だという評価がありますし、その次のページ、3のFamily resemblance testにおける、まず適用除外を列挙してから一般基準がこの下にi)からiv)まで書いてありますが、当事者の動機とか、どのように合理的一般人に認識されているかとか、確かに大事な要素ではありますが、かえってクリアではなくなっているという評価がございます。

一方、日本における立法例は3ページ目につけておりまして、証取法の政令指定は、(1)の有価証券では、「流通性その他の事情を勘案し」とあり、(2)のみなし有価証券では、「流通の状況が有価証券に準ずる」、「有価証券と同様の経済的性質を有する」とあります。現実には、先ほど申し上げたように、こうした流通性を眼目とする定義を投資家保護のために拡張解釈しながら具体的に法律に列挙しましたから、この政令指定が使われてはきていないということでございます。

2の(1)は、民法組合の商品ファンドで、これをご覧頂きますと、各当事者が出資を行い、業務の執行を委任された者が共同の事業としてその出資を主として商品投資により運用し、その運用から生ずる収益の分配云々を行うとあって、これはさすがに平成に入ってからの新しい法律ですから、学習効果が働いてハウイ判決を連想させるものになっております。ここで、「主として商品投資により運用」という文言の解釈として、逆に言うと、有価証券が何割までだったら抵触しないのかといった役所間の調整マターがあるのですけれども、例えばこの「主として商品投資」という部分をこれまで議論してきたカバレッジの広がった投資商品に置きかえてしまえば、相当広範なカバレッジを持つ投資ファンド法になるということだと思います。ここに引用していませんが、同様に業務の執行を委任された者が不動産取引を行い、そこから生ずる収益の分配云々と書いてあるのが、タイトルだけ引用しております不動産特定共同事業法でございます。この商品ファンド、不動産特定共同事業と投信法は仕組み法ですから構造が似ておりますが、投信法では有価証券から始まって、その後対象資産を不動産などにも拡大しましたので、現在はリートのような投資商品もできているわけでございます。

(2)の投信法施行令は、これ自体匿名組合の出資持分の運用対象に加えるものですけれども、当事者の一方が相手方の行う資産の運用のために出資を行い、その出資が当該資産に対する投資として運用され、運用から生じた利益の分配を行うとあります。ここにいう前各号及び次号には有価証券、商品、債権、不動産云々と列挙されているわけで、こういった仕組み法の定義の仕方というのも参考になると思います。

3の出資法による出資とは、不特定多数の者に対し、後日出資金額以上の額を支払うと明示されているものとなっておりまして、出資金額元本割れという場合は含まれていないですが、それは、この法律がうまいことを言って人をだます人たちを罰するための刑事特別法だからだと思います。

以上、現行の投資の基本法である証取法は、流通性に着目して極力具体的に列挙しており、各種の仕組み法は、運用者に出資し、成果に応じて配分を受けるという実態のプロセスを記述してありますが、現行法は運用対象資産の範囲にばらつきがある。出資法では、不特定多数の者から元本以上を保証して集めるということになっておりまして、もちろん対象が明確であれば明確に列挙しておけばいいのですが、先ほど申し上げたように、問題の発生と法令の手当てというのがいたちごっこにならないためには、こういった事例も参考に包括定義を考えていく必要があるのではないかということでございます。

資料1に戻って頂きまして、次に投資商品を提供する投資サービス業の類型ですが、前回はいわゆる新しい金融の流れ懇談会の8類型を現行法制に基づいて仕分けをして並べてみました。今回、証取法に相当するグループに多角的取引システムというのを追加したのは、特に深い意味はないんですけれども、前々回EUディレクティブに関する神作先生のプレゼンでも、このMTF、日本で言うとPTSが投資サービス業の中核に位置づけられたというお話でした。代表的な仲介業者である証券会社と代表的な市場である証券取引所はもちろん日本でも証取法上別々に規制されていて、証券会社に対しては主として投資家保護、取引所に対しては公正で効率的な運営を確保するという観点から規制が行われてきましたが、先般の証取法改正では、取引所取引原則を廃止し、PTSの機能を取引所並みにして、証券会社には最良執行義務を求めるという、いわば仲介業者と市場の違いを相対化する措置が講じられております。そういう意味で、これまでのところEUと日本は同じ方向を向いているのですが、投資サービス法においてもこの仲介業者の提供する取引システムをどう位置づけるかという課題があるということでございます。

もう一つ、網かけで発行者募集の記述を追加しております。証取法では、例えば株式の発行者と発行された株式を仲介したり売買したりする証券会社は当然別ですが、投信法の中の仕組み法では、直販というルートがございます。この直販というルートは、投信の場合には証券会社との力学上なのでしょうか、あまり活用されておりませんが、元来、自ら製作した望ましい運用パッケージを自ら販売するというのが自然なことだと思います。したがって、投資商品の範囲が拡大すれば、発行者募集についてのルールが必要になるのは、論理的な帰結だと思います。

次のページ、マル2が資産運用と助言でございまして、これも前回、現在は投資顧問業法で規定しておりますが、既に証券会社が投資顧問業を兼業して運用サービスに乗り出そうとしている中で、法律を別々にしておくよりも、むしろ資産運用を投資サービス法の中核業務として位置づけた方が望ましいのではないかと申し上げました。これは、単なる法体系の整理論というのではなくて、証券会社が販売や仲介の都度代金の一定割合の手数料を受け取りますから、昔から売ったり買ったりの回転させた方がもうかるという営業の仕方についていろいろな批判があるのですけれども、資産を運用して運用残高の一定割合の手数料を受け取るのであれば、回転売買のインセンティブは働かないで、顧客のために残高の増加に専念すればよいので、そういう形で長期的な信頼関係というのが形成されるということだと思います。若干改革論が混じってしまうのですけれども、法体系が別になっていますと、大手銀行も証券も保険もグループ内に投資顧問会社をつくってはみるのですけれども、なかなか本格的な展開にならないといいますか、本当は親の方で偉くなりたかったのだけれどもというような人に経営されていると、潜在的に大きな可能性のある資産運用ビジネスにとっていいことではないのだと思います。この網かけの追加部門の投資商品のカバレッジを拡大することの論理的な帰結で、有価証券の一任運用は助言だから証券投資顧問なのですけれども、顧客側から見ると、何を運用してほしいのその何に意味があるのではなくて、トータルで資産をふやしてほしいという、トータルで資産がふえる助言が欲しいということでしょうから、資産運用というくくりで考えればいいので、証券・商品・不動産の投資顧問などと分かれていてもしようがなさそうであります。

カストディについては、別に書いておりません。

マル4の仕組み行為の網かけ部分というのは、仕組み法というのは、仕組みそのものとその仕組みを使う業者を規制しておりますから、開示・販売・運用・資産管理といった点を整理すれば、仕組みというか、商品性そのものへの規制がなくても、投資サービス法にうまく溶け込んでしまえないかということでございます。

マル5として、その他のアナリスト、格付け機関というのは、前回ご意見も頂きましたし、個別に問題が起こるとよく議論になります。これらは、投資助言を公開でやっているようなものですから、中立性が認められないとだれも相手にしなくなりますが、中立性を担保するために何らかの公的関与があった方がいいのか、自助努力に委ねるべきなのかということだろうと思います。スピッツァーがメリルを提訴した後に各社次々に、部門を分けるとか、給料の出所が違うとか、中立だと感じてもらうための努力をしておりました。SECもこの問題については、証券業協会や取引所の自主規制に基本的に委ねるという構えであると思います。

一方EUは、この注2で、前々回ご紹介がありましたように、典型的な投資銀行業務に加えて、今年の指令で投資調査及び財務分析その他の形式での推奨というのが投資サービス業の付随業務に加えられました。法令に書かれるということは、何か問題が起こったときにエンフォースの手がかりを行政当局に与えるということですから、私どもも時折、何を根拠に推奨しているのだとか、幾ら何でもこの格付けはあまりじゃないかと感じることはあるのですけれども、感じるだけで何も言えない方がいいのかということです。この点はもう少し議論して頂きたいと思います。

以上見てきましたような投資サービス業をどの程度展開すれば規制対象の業になるのかが最後の論点でございます。証取法には単に「営業」と書いてございまして、「営業」とは、この注にありますように、営利目的、反復継続性、対公衆性、対不特定多数といった要件があるとされております。ちょっと以下の文章の整理がよくないですけれども、要はこういった要件の何に重きを置くかということで、営利目的というのは対価をもらうということですが、最近では仲介という投資サービス業の対価である手数料をもらわなくても信用取引の貸出金利で採算がとれてしまうようになって、そういう業者も現れてきますから、そうなると、これは貸金業者が事実上投資サービス業を無償で提供していると観念するのも常識的ではないようですし、反復継続性ということにこだわって、1、2回であれば詐欺的な行為を大目に見るというのも見識のなさそうな話だと思います。不特定多数というところに重きを置くのか、発行時点では特定していてもその後流通市場で不特定になってしまうとか、いろいろ書いてありますけれども、あまり細かく考え過ぎず、広く網をかけていけばいいのかを含めて、ご意見を頂ければと思います。 以上、前回の議論に対して幾つか追加的に論点をつけ加えてご説明させて頂きました。最近では、投資サービス法という言葉もかなり定着してまいりまして、あるべき姿を論じる文章も目にするようになってきましたが、まだ当部会での議論が入り口にあるせいか、十人十色で、自分の言いたいことが投資サービス法であるみたいになっているところが、ビッグバンが始まったときと何か似ているなと思うのですけれども、その典型がこの法律により業態がなくなるというたぐいです。確かに、投資商品やそれを提供する投資サービス業のカバレッジが拡大すると、新たな担い手はふえるでしょうし、既存の金融各業態はますます投資サービス業としての性格を強めていくとは思いますが、投資サービス業以外の金融業態が何の制約もなく投資サービス業を行えるようにならないということは当たり前でございます。

こうした議論の構造は投資サービス法に限りませんで、何人かの第一部会の委員の方からお問い合わせがあったのでついでに申しますと、先週はコングロマリット化という現象に対応した金融制度を検討する中で業態の融合を促すという奇想天外な報道がされておりました。(笑)そこで引用されておりましたグラム・リーチ・ブライリー法は、昨年淵田委員に紹介して頂きましたけれども、銀行が系列証券会社を持つことを正式に許容する一方で、銀行本体で証券業務を行うとか、証券会社本体で預金を受け入れることは、依然として禁止したままにしておくものです。そこに至る過程で財務省、OCC、SECのファンクショナル・スーパービジョンとFRBのアンブレラ・スーパービジョンという大きな論争があったようですけれども、金融行政当局が一つしかない日本では、一つ一つの論点を具体的にファンクショナルに考えていけばいいのだと思います。

ちょっと余計なことを言いましたが、以上でございます。

○神田部会長

それでは、審議の途中で大変恐縮ですけれども、冒頭申し上げましたように、先ほどご承認頂きました第一部会報告を伊藤金融担当大臣にお渡しすることになっておりまして、準備ができたようでございますので、ただいまからまずカメラが入室いたしますので、その撮影中は審議中断ということにさせて頂きたいと思います。大変恐縮ですが、そのままで行わせて頂きたいと思います。では、どうぞ。

(カメラ入室)

(大臣入室)

○神田部会長

それでは、先ほどご承認頂きました当部会の報告「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて」を伊藤大臣に私からお渡しさせて頂きます。

それでは、ここで大臣からごあいさつを頂きたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○伊藤金融担当大臣

おはようございます。金融担当大臣の伊藤達也でございます。ご報告を頂きまして、本当にありがとうございます。この機会にぜひ一言ごあいさつをさせて頂きたいと思います。

委員の皆様方におかれましては、金融審議会の審議にご参加頂き、そして御尽力を頂いておりますこと、心から感謝申し上げたいと思います。

さて、本年10月中旬以降、証券取引法上のディスクロージャーをめぐり不適切な事例が相次いで判明いたしております。金融庁では、これをディスクロージャー制度に対する国民の信頼を揺るがしかねない事態であると認識し、去る11月16日に「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応」を発表いたしました。対応策のうち、開示制度の整備につきましては、本部会のディスクロージャー・ワーキング・グループにおいて短期間のうちに精力的なご議論を頂き、本日第一部会としてのご報告を頂きましたこと、厚く御礼を重ねて申し上げる次第でございます。ご報告に盛り込まれた項目はいずれもディスクロージャー制度に対する信頼性を確保するために重要なものばかりであり、金融庁といたしましては、ご提言を実現すべく最大限の努力を行っていく所存であります。

また、投資者の投資に対する選択肢を広げ、貯蓄から投資への流れを確かなものとしていくことは、我が国のマネーフローの構造改革、さらには経済の活性化に必要不可欠のものでございます。これを実現するためには、市場インフラの整備を一層進めていく必要があります。現在、第一部会におきましては、これからの投資サービス法制のあり方についてご議論を頂いておりますが、これはまさにこの市場インフラの整備の大きな柱をなすものであります。皆様には、いわゆる投資サービス法を初めとするインフラ整備の実現のため、今後とも精力的なご審議を頂きますようお願い申し上げます。

以上で私のごあいさつにかえさせて頂きたいと思います。これからもどうかよろしくお願い申し上げます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

なお、大臣は公務ご多忙のため、これにて退席されます。

(大臣退室)

○神田部会長

それでは、どうもありがとうございました。審議を再開させて頂きたいと思います。

大森課長、どうもありがとうございました。大森さんからのご説明は、資料1と、それからその参考として資料1-5を中心にお話し頂きまして、資料1-2以下は前回にもお出ししている資料であります。それから、資料2というものと、2-2、2-3、2-4、2-5は前の第一部会のものですが、2-6ですけれども、前回池尾先生からご指摘があったと思うのですけれども、この定義というのでしょうか、投資サービスの定義あるいは業の定義みたいな問題を議論するときでも、結局ルールの中身がどうなるかがわからないと、これは入り口だけ議論していても議論がしにくいというご指摘がありまして、それは全くそのとおりですので、中身の方の現行法でのイメージと将来の議論のご参考ということで資料2以下を用意させて頂いております。今日はちょっと時間の関係で資料2以下の方のご議論はできないと思いますけれども、資料2以下も適宜横目で見ながら今ご説明頂きました資料1をご議論頂くということにして、あとはまた年明け以降に議論をつなげたいと感じております。そういうことで、今日はあと残りの時間40分強あろうかと思いますが、今、大森課長からご説明頂きました資料1について主としてご意見を頂ければと思います。繰り返しになりますけれども、投資商品の範囲と、それから投資サービス業の範囲というのが、この議論の対象になるのではないかと思います。それでは、どなたからでもご質問、ご意見を出して頂ければと思います。田中委員、原委員の順番でお願いします。

○田中委員

資料についての質問です。4ページ目のところで、「マル3デリバティブ取引」とあり、この追加部分の真ん中辺から、「IT技術の発達により、これらを預金などと組み合わせた商品も今後ますます増加するものと見込まれ、このような商品についても広く対象とすべきではないか」と記載されております。前回の議論でもあって、まさにこれは重要だと思うのですが、現実に一部の銀行でオプションをライトしている預金もあり、元本リスクが実際に存在するということだと思います。そうしますと、次の5ページ目の「(3)証券取引法以外の法律による投資者保護が図られている投資商品との関係」というところで、金融庁所管のところに列挙している中で、変額保険として保険業法というのが載っております。これは、変額保険の中身が投資信託と類似しているというところでここに載せられているのだと思います。そうしますと、この前のページには預金に関しても触れられているということを考えると、ここのところにどうして名前が載っていないのかなというのがちょっと疑問だったので、質問ということでお願いいたします。

○大森市場課長

全く深い意味はございませんで、デリバティブのところは、将来の動向としてますますこうなっていくであろうという一つの例として書いてあるのに対して、変額保険というのは、もう既に確立した投資商品として、これまでも随分問題を起こしてきたという、普通の国民にとっての存在感の違いが、今、田中さんのおっしゃったような書き方の違いになってあらわれたということだけだと思います。排除するとか、そういうつもりは全くございません。

○神田部会長

よろしゅうございますでしょうか。

それでは、原委員、どうぞ。

○原委員

3点なんですけれども、1つは、今もちょっとご意見が出ておりましたけれども、保険と預金、それから共済、このあたりの整理をどのように入れていくのかというところが1点目です。変額個人年金保険、変額保険については、前回対象外にというご意見が業界委員から出ましたけれども、これは商品性から見ても、それからこれまでも変額保険では多数の被害を出しているという経緯から考えても、当然対象に入るべきだと思っております。今回提示されましたIT技術の発展と、それから預金との組み合わせですとか、デリバティブ商品と預金との組み合わせのようなものも、ぜひ対象に入れて頂きたいと思いますし、預金の中では、外貨預金もかなりリスクがあるわけで、この預金の範囲をどのように考えるのか。それから、保険は今、変額個人年金保険と変額保険を言いましたけれども、共済についてなのですが、無認可共済については第二部会の方で短期小額保証商品ということで、保険業法の中の特例というのでしょうか、そういう形で当面整理していくということになりましたけれども、今日は和仁委員が欠席なのですけれども、和仁委員は、無認可共済の商品性を見ていて、これはクレジットデリバティブでもやれるといったご発言をたしか第二部会かワーキング・グループでなさっていらっしゃるのですけれども、そういう意味から言うと、今出されている無認可共済――「共済」という言葉が一般用語なのでだれでも使っているというところがあるのですけれども、お金を出して何らかの仕組みをつくっていくという点では、私はこちらの投資サービス法の範囲の中で考えられるものもあるのではないかと思いますので、共済についても目配りをお願いしたいと思っております。ですから、大きい意味で預金・保険・共済・年金あたりをどこまでここに入れていくかということが1つです。

それから2つ目は、先ほど大森課長の方から、金融庁の庭先だけきれいにしてもといったお話があったのですが、別棟にいらっしゃる、今日は経済産業省と国土交通省と農林水産省と担当の方がお見えになっていらっしゃいますけれども、消費者から見ると、こちらで出されている商品もほとんど同じように広告されている、情報提供されているという意味では、同じ法律体系の中に入ってきて頂きたいと考えております。特に商品先物は、一般紙への広告も大変多く目立つようになってきておりまして、今年の夏にも資産運用に前向きな知恵をということで広告を協会がなさっていらっしゃるんですけれども、中にはこれは自己責任でおやりになってくださいといった文言が書かれていて、ある医療保険とこちらだけがそういうことを広告の文言にお使いになっていらっしゃるのですけれども、私としては、これだけ多くの商品先物を一般の消費者に売っている日本という非常に特殊な事情ということもありますので、よその国がどうとかということではなくて、日本の事情を考えると、当然今回の投資サービス法の範囲に入れて頂きたいと思います。今、商品取引所法の改正で、販売勧誘についてはガイドラインについてパブリックコメントを求めていらっしゃるのですが、販売勧誘という非常に大きな問題をガイドラインで済ませるというところ自体、私は大変大きな疑問を感じております。それが2点目です。ですから、範囲を非常に、他省庁のものも広く入れて頂きたいということです。

3点目ですが、仕組みについて、資料1の後ろから2枚目になると思うのですけれども、仕組み行為についてはどのようにするかということで、アメリカに倣う形で、開示をすれば特に仕組み行為についての規制は必要ないと考えてよいかという疑問で出されているわけですけれども、私としては開示さえすればオーケーかという点ではやはりちょっと疑問を感じるところがありますので、ここについては検討を尽くして頂きたいと思っております。

それから、ちょっと今日はまとまった意見を持ってきていないので大変恐縮なのですが、先ほど大森課長がおっしゃられた資産運用というのはかなり中核を占めてくるのではないかという点については同様に考えますので、ぜひここの検討も尽くして頂きたいと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、木村委員、どうぞ。

○木村委員

今の原委員とちょっとかぶりますけれども、商品先物取引のことについては、やはり、たとえ隣の庭であっても、ここはしっかりと金融庁が入って頂くということにして頂きたいと思います。同意見です。

それから、4枚目にLLPのお話が出ておりましたけれども、これは先端技術に係る事業創出とかで非常に期待されている仕組みでございまして、これは原則事業に参画する人が出資するということであれば保護する必要はないのではないかなということでございまして、ここに書かれている「どのような態様であれば」というところの意味はそういうことでよろしいのでしょうか。その確認です。

○大森市場課長

このマル1マル2の話というのは、まさに法制審議会なり経済産業省さんの作業に投資という側面から今まさに追いついていこうとしているという段階にあるものですから、まだ100%、こういう形のものを次期通常国会に出すというところまで、会社法制の現代化にせよ、この日本版LLPにせよ、煮詰まっていないものですから、その前提自体がはっきりしないところがあって、むしろ今日の段階では、文字どおり、どういうものであれば投資者保護措置が必要だとか、必要でないとか、委員の皆様の自由なご意見を伺いたいということでございます。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

ほかに。では、上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

一つはやはり商品先物取引の関係なのですけれども、これは弁護士のところに対する相談例などにも大変多いですので、統一的なルールづくりという意味で取り組むことが必要だと思います。日弁連の中でも、伝統的に証券取引を扱う弁護士と商品先物取引を扱う弁護士というのは何となく分かれていまして、それぞれ別々に意見を出したり、縦割りでずっとやってきたのですけれども、最近は、この投資サービス法なり金融サービス法の中に両方とも統一してやるべきではないかと、関係委員の中でも何となく合意がとれてきまして、多分そんな意見を出すことに将来なるのだと思いますけれども、そういう時代ではないかと思います。もちろん、低きに流れては困りますし、それぞれ適切な性質に合ったという部分が残ることは事実だと思いますけれども、ぜひそういう線で、何も経産省を排除すると私は考えているという趣旨ではなくて、必要に応じて共同で対処して頂きたいと思います。最近、お隣との境界線ではっきりしない部分についても金融庁が対処して頂けるようになってきたのですけれども、消費者の側から見ますと垣根は見えませんので、ぜひそのようにお願いしたいと思います。

あと、医療債と学校債なのですけれども、これは少なくとも個人的には大変心配しておりまして、この2つの業界は両方とも経済情勢の中でなかなか厳しいですので、これまでも問題はありましたけれども、いろいろ起こってくると思います。そういう意味で、本来私は法律で対処すべきではないかと思いますけれども、確かに政令指定という方式はこういうことのためにあったのかと私も思いますので、ぜひ両面で対処をお願いしたいと思いますし、最後はつけ加えですけれども、LLPについても、これはもちろん制度設計次第ですが、私は一定の囲われた方々の中での行為であっても、それこそ50人を超えると、やはりいわゆる投資サービスとしての規制が必要なのではないかということで、その50という数字が絶対的なものかどうかはわかりませんけれども、そういう思想で対処すべきだと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

ほかにいかがでしょうか。それでは、高橋委員、どうぞ。

○高橋(厚)委員

今、何人かの委員からご発言があったことに私も賛成でありまして、ここに大森課長から前回並びに今回示されたように、現在投資家保護の対象となっていないもの、あるいは他省庁あるいは他法令の対象で保護されているようなものにつきまして、統一的な枠組みの中に取り入れていこうという方向が、基本的に投資家の保護ということ、あるいは前から問題になっておりますイノベーションの促進という観点からも、いいのではないかと思います。もとより、例えばLLP等につきまして、一定のものについて規制が弾力的に適用される、あるいは適用除外にされるということがあろうかと思いますけれども、少なくとも定義としては、これは別途議論されるのだろうと思いますけれども、例えばハウイ・テストのような考え方で、日本版のハウイ・テストのようなものができれば、それに対応するものはすべてその体系の中で投資家保護なり、あるいは市場のルールというものができていくという仕組みを基本とすべきではないかと思います。

現在、既に他法令等で対象となっているものについてどう取り組んでいくかというときに、現在の規制のうち、投資家保護でありますとか、あるいは市場秩序でありますとか、投資商品としての、あるいは投資サービスとしての規制というものにつきましては、新たな統一された枠組みの中でのルールに置きかえていくことがよいと思います。どの商品がどのように保護されているのかというのがばらばらの体系ではなくて一律の体系の中で理解できるように、新しい体系の中で枠組みをつくっていくのではないかと思います。もとより、ある意味で一般法であります証券取引法の規制というものがあるわけでありますので、それを基本として、弾力的な対応、あるいは除外といったものをどういうものにどのようにかけていくかということを議論していくことがいいのではないかなと思います。

そういう意味では、定義としては、ここにも提案されているかと思いますけれども、包括的な定義というものを法律上規定する、例示としての列挙というものはあり得るだろうと思いますけれども、基本的には包括的な定義をするということがいいのではないかと思います。ただ、その場合、実際の運用に当たって、予見可能性といいますか、理解のしやすさといったことが必要であろうかと思いますので、ガイドラインでありますとか、あるいはノーアクションレターでありますとか、補助的な仕組みを工夫していくことが必要じゃないかなと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

それでは、太田委員、それから向こうの高橋委員、その順番でお願いします。

○太田委員

今いろいろな方からお話がございましたけれども、いろいろな投資商品を対象に加えるということについては全く同意見なのですが、それにしては証券取引法をベースにした色彩がやや強過ぎるのではないかということを若干危惧しております。もちろん証券取引法はみなし有価証券という定義のもとにいろいろな商品の規制を包摂してきたということはわかるわけですけれども、他省庁の商品とか、いろいろな投資商品を含めて対象にするのであれば、そこは、みなし有価証券というような修補で拡大してきたものが本当に一般法として有効なのかどうかというのをもう一度検討する方がいいんじゃないかと思います。例えば、デリバティブのところで金融先物取引などについてもいろいろ書いてございますけれども、デリバティブ商品の中には、原資産について、有価証券デリバティブで前提とされているような、原資産が有限のものばかりではないわけです。例えば、天候デリバティブは、気温を対象にしたものですが、これは無限なものですから、こういうものについて、結局は包括的な定義の問題になるのかもしれませんが、果たして今までのような考え方でいいのかどうか。むしろ、現物と先物とか、あるいはデリバティブは一つのくくりとして考えるといったことも必要になってくるのではないか。したがって金融先物取引法と証券取引法を統合するという、この統合という意味がよくわかりませんが、もともと証取法も業法でありますし、金先法も業法という面もございますので、どういう形になるかよくわからないのです。証取法をベースにした考え方にとらわれると言うと語弊がございますが、そこはより広く投資対象を包摂するつもりであれば、なおさら、いろいろな観点から考え直してみる、最終的にどういう姿になるかは別として、ということも必要ではないかと考えてます。

○神田部会長

ありがとうございます。

それでは、高橋委員、どうぞ。

○高橋(伸)委員

これまで多数ご意見の出ています商品先物取引のところでございますので、ちょっと重複して恐縮なのですが、消費者保護の立場から申し上げたいと思います。

この商品先物取引は、国民生活センターの年間の苦情相談件数が7,000件を超えるという非常に異常な事態になってきております。どういう方が被害を受けているかを丁寧に見ていったときに、アルツハイマーの高齢者であるとか、かなり問題のある勧誘による取引が行われているということがございます。ですので、対象商品にして、不招請勧誘の禁止であるとか、適合性の原則を入れていかないと、まだまだ被害は拡大する状況にあると思いますので、ぜひ対象に入れて頂きたいということを申し上げます。外国為替証拠金、無認可共済に次いで、第3番目に緊急性が高いと認識しておりますので、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

ありがとうございます。

この部会には当初からオブザーバーとして経産省・国交省・農水省からご出席を頂いているのですけれども、もし何かご感想なりこの時点でのご発言等ございましたらご自由にお出し頂けたらと思いますが、いかがでしょうか。

○田辺農水省商品取引監理官(オブザーバー)

農林水産省で商品先物取引を担当しております田辺と申します。

商品先物取引でございますけれども、ご案内のように、商品取引所法という法律がございまして、その中でも、投資家保護と申しますか、委託者保護についても一定の制度的な整備がされておりまして、特に今年、法律を改正いたしまして、来年の5月から施行でございますけれども、その中で勧誘に関する規制につきましては抜本的に強化するということにしております。今、高橋委員からもご指摘がございましたけれども、適合性の原則というのも既に商品取引所法の中で規定されておりまして、それをさらに強化するということにしておりまして、そういう観点から先日ガイドラインという形で、適合性ですとか、あるいは勧誘規制の中身をより具体的にお示しして、今後委託者に対するトラブルが起きないようにしようといったことで取り組んでおりまして、私ども商品先物取引の制度を所管している立場から申し上げますと、一定の投資家保護のためのルールというのは商品取引所法の中に位置づけられているという点についてもご理解頂きたいと考えておりますし、むしろ商品先物取引に関連します商品取引所法の規制と申しますのが、制度上はむしろ証券なりの勧誘規制よりもより厳しい規制を導入しようとしているということでございます。これは、先ほどご指摘がありましたような取引にまつわるトラブルが多いということを念頭に置いているものでございまして、そういう意味では経産省と農水省で、そういった投資家保護に欠けることのないような取り組みというのは、制度面もそうでございますし、あるいは立入検査などといった形での監督上の処分というものを通じて投資家保護を図っていこうということで取り組んでいるという点につきましては、ご理解を頂けたらと考えております。

○神田部会長

ありがとうございます。

経産省と国交省はいかがでしょうか。無理にご発言頂く必要はありませんが、今までなかなかオブザーバーとしてご発言の機会がなかったかもしれませんので……。今後またお願いはしたいと思いますが……。どうぞ。

○菅井国交省不動産市場整備室長(オブザーバー)

国土交通省は、不動産特定共同事業ということで、それはあまり話題になっていないので、今のところあまりコメントすることもないのですが、基本的には、消費者保護、投資家保護を必要十分な形で図っていく、そのための仕組みとしてどういう形がいいのか、私どもの方ですと、不動産特定共同事業はどういう形の仕組みがいいのかということに尽きるわけでございまして、これからの議論を伺っていきたいと思っております。

○神田部会長

ありがとうございます。櫻井さん。

○櫻井経産省産業資金課長(オブザーバー)

経済産業省でございますが、商品取引については、先ほど農水省の方からお話がございましたが、特につけ加えることはございません。それからLLPの話が出ておりましたが、直接私が担当しているわけではないので、やや一般的なコメントでございますけれども、さきほど委員の方もおっしゃいましたように、LLPは構成員には事業参加性があるということを前提に議論されていると思いますので、その場合、例えば今日頂きました資料1-5のハウェイ・テストの「他人の努力に依存する」とか、あるいは、リスク・キャピタル・テストの「被勧誘者が事業に対する実務上、経営上の支配権を行使するものではないこと」といったところが投資サービスの定義だとすると、事業参加的な形でLLPの事業が行われるということを前提にしたときに、果たして投資サービスに当たるのかどうか、というのが一つの論点かなという感じはしております。とりあえずの感想でございまして、今日伺いました意見等は担当課に伝えさせて頂きたいと思っております。

○神田部会長

池尾先生、どうぞ。

○池尾委員

私は、この金融審議会の委員のほかに産業構造審議会の商品取引所分科会の委員もしておりまして、私はできたら2つの会合に出なければいけない立場から、1つだけの会合に出れば間に合うようになってもらいたいと思っておりますので、(笑)そういう意味で統一してほしいなと思っております。

それで、今、田辺さんからご説明がありましたように、今般の商品取引所法の改正で随分前進はあったと私自身は思っているのですが、ただ、個人的には、不招請勧誘の全面禁止まで踏み込めていないとか、それから、ルールはできても、それをエンフォースする体制の面で、人員等が必ずしも十分確保されているのかとか、そういう点でやはりまだ問題といいますか、改善努力の余地は十分に残っていると認識しております。

それで、先ほど太田委員からご発言があったのですか、私も、デリバティブというのは、原商品が何であれ、投資商品として考えるという、これはアメリカでしたか、そういうスタンスが基本的に好ましいというか、当然そうすべきだと考えているのですが、その際、ちょっと最初の方でも出ていましたが、デリバティブと保険の機能の共通性みたいな問題が出てくると思うんです。特に損害保険的なものに関しては、ほとんどデリバティブ商品で極めて近い機能が実現できるということで、カタストロフィー・ボンドだとか、そのような商品が実際に存在しているわけですから、その辺の整理は、だから原商品は何であれ、デリバティブは投資商品だと位置づけて規制の対象にするときに、保険の機能との類似性の点についての整理は必ず必要になるのじゃないかなと思っています。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

手が一斉に挙がりました。それでは、まず種橋委員、それから田中委員、原委員の順番で、よろしくお願いします。

○種橋委員

先ほど来各委員の方からご発言がございましたけれども、資料4ページでは「IT技術の発達により、デリバティブ取引を預金などと組み合わせた商品も今後ますます増加するものと見込まれ、このような商品についても広く対象とすべきではないか」とされているわけでございますが、商品の種類あるいは性格、想定される経済的な効果等に応じた対応を行うべきではないかと考えております。したがいまして、銀行法のもとで預金等として整理すべき商品とそれ以外の商品をどのように区分するかにつきましては、これからしっかりと議論していかなければならないと考えております。言葉をかえて申し上げますと、組み合わせ商品というだけで一律に取り扱うということは適当ではないのではないかと思います。

それから、先ほどご発言の中に外貨預金というお話が出たわけでございますが、外貨預金といいますのは、あくまでも外貨ベースでは当然のことながら元本が毀損しないという商品でございまして、これをデリバティブ取引との組み合わせというような商品に扱うというのはちょっと性格が異なるのではないかなと思います。また、本件につきましては銀行法によって規制監督が行われているということで、銀行法の中での手当てしていくべき商品だと考えております。

以上でございます。

○神田部会長

ありがとうございます。

田中委員、どうぞ。

○田中委員

本来言おうと思っていたことの前に種橋委員のご発言について一言申し上げますと、先ほど私が言った元本を毀損する預金というのは、単なる外貨預金ではありませんで、種橋さんのところではない別の銀行が扱っているもので、ここでその名前とか仕組みは言いませんけれども、オプションをライトしている、組み込まれている商品なので、ちょっと単純な外貨預金とは違います。

それでは、もともと発言しようと思ったことを申し上げます。先ほどから皆さんがいろいろと議論されているので、ちょっと重複になってしまうのですが、今、貯蓄から投資へということが大きな課題となっているわけだと思うのですが、そういうことを考えた場合、個人の投資者の方がどのように考えるのかと。原商品がいろいろと違うと、監督官庁がいろいろと違っている。これは過去の経緯から来ているわけなのですが、これに関しては、10年前、20年前は、だれでも商品の違いというものが認識できたという時代だったと思います。それが、このデリバティブがどんどん進んでくるに従って、いわゆる金融商品という言い方をすると、デリバティブが内蔵されていて、原商品が何であるかは全く構わないという状況に今はなってきている。そういう中にあって、投資商品というものがきちんと行政のところで同じ基準で見られているという安心感を与えられるかどうか、これは極めて重要な問題だと思います。そういう観点で、過去のいろいろないきさつをあまり論じても意味ないと思いますので、あくまでも投資者から見てどういうルール、仕組みが一番安心感ができるのかという観点で考えていかなければいけないと思います。そういう面で、今回大森課長から金融庁の庭先云々の話がありましたけれども、これは大いに範囲を広げて、投資者のためにどうかという観点で進めていくべきだと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

それでは、原委員、どうぞ。

○原委員

たびたびで恐縮です。簡単に3点だけなのですが、1つは、商品取引所法の改正の話が出たので、私はあのパブリックコメントで意見を提出させて頂いた者なのですが、それから今回のガイドラインも見せて頂いておりますが、池尾委員がおっしゃられたように、確かに半歩は進みましたけれども、不招請勧誘の禁止も入っておりませんし、広告についての規定も金融先物取引法ほどには入っていないというところがありまして、私自身は、どんなに頑張られても、私も去年外国為替証拠金取引のことで経済産業省と、それから農林水産省を回りましたけれども、事業者育成が中心なわけです。そういう意味では、やはり限界があると感じておりますので、ぜひ自分のところでやっているからということではなくて、大きな投資サービス法の枠の中で検討を進めて頂きたいと思います。それが1点です。

2点目は、太田委員や田中委員から今ご発言が出ている点なのですけれども、それぞれの業法と、それから今ここで検討している投資サービス法と、この先のステップとしての金融サービス法との整理というんでしょうか、それを念頭に置きながらやっていかないと混乱するのではないかなと思っております。私としても、預金をどうするのかというところで、外貨預金というものがこの先のステップの金融サービス法の中で銀行法もしくは保険業法も規制の中に入ってきて検討されるのであれば、そこに預けてもいいと思うわけです。ただ、この投資サービス法で考える範囲が、証券取引の業法の拡大ということで考えるのか、だから業法の拡大で考えるのか、それとももう少し違うポジションを占めるのかという、先ほどの太田委員の発言にあったとおりだと思うんですけれども、そのあたり、法律としての性格と、それからポジションといったところを少し整理しておく必要があると思っております。

もう一つは、資産運用のところで、私は資産運用と助言のところは大変大きいと考えておりまして、先ほど大森課長の方で回転売買による手数料稼ぎの話が出ましたけれども、まさに今行われていることはこういうことで、それから、私も何人かの方から相談とかを受けたりすると、大概は事業者の担当になった方の口車に乗せられて損をしたというのが多いわけです。回転売買の手数料稼ぎだけでなくて、自分としてはおかしいなと思っているのに、非常に担当の人に勧められて売買を控えたりやってみたりといったところで非常に大きな損害をこうむったといったトラブルが大半なのだと思っております。そういう意味では、この助言、アドバイスの範囲が一体どこまでの人にかかるのか、それか行為にかかるのかということでは整理が必要で、今日は時間がありませんけれども、論点2のところでも販売勧誘についてのルール規定も入ってきておりますけれども、このあたりの資料をもう少し充実させて頂けたらと思っております。アナリストは出ておりますけれども、まだファイナンシャルプランナーについては何ら言及されておりませんけれども、ISO国際標準化機構の方でも規格化が進められておりますので、そういったところの資料もあわせてお願いしたいと思っております。恐縮です。

○神田部会長

ありがとうございました。

私がまた発言して恐縮ですけれども、整理しておいた方がいいのではないかと気がついた点がありまして、ちょっと手短に申し上げたいと思います。

まず第1点目は、原委員からご指摘のありました今の点と、それから前の方にご指摘のありました仕組み行為ということについての記述についてです。この仕組み行為の記述はちょっとわかりにくいと思うのですけれども、この趣旨は、仕組み行為業というのがあるかという話だと思うのです。仕組み行為業というのは観念しなくても、今ありました運用業・管理業・販売業というものに分解して理解できるのではないか。ですから、仕組み自身は、投資商品の方のルールとして、ディスクロージャーだけでいいのか。あるいはアメリカの例えばミューチュアル・ファンドのように、仕組み自体の登録制というのでしょうか、今の投資信託法で言えば届出制ですけれども、そういう商品の問題としてとらえれば、仕組み行為業という類型は業の類型としては不要ではないかという問題提起だと思います。それが1点目です。

2点目は、よくハウイ・テスト、ハウイ基準というのが言われますけれども、釈迦に説法で恐縮ですけれども、ハウイ基準というのは、アメリカの証券法には投資契約という一つの類型があって、その投資契約という類型を適用するための基準にすぎないのです。ただ、そこでの考え方というのは参考になるというので、広く証券とか集団投資スキームとかを考える際にも参照されているということではないかと思いますけれども、もともとアメリカでは投資契約という概念がありますので。簡単に言えば、ホテルを経営している人が、そこに宿泊しにきたお客さんに、「私は果樹園を経営しています。ついでに果樹園も買いませんか。ただ、あなたは何もフルーツを持って帰らなくてもいいです。私が全部経営して、上がりだけを金銭でお支払いします」という契約をした。そこには別に組合もなければ、会社もなければ、信託もないのですけれども。そういう契約をしたときに、これは投資契約ではないか。投資契約であれば、証券法の証券に当たる。そういうコンテキストでの判例ですので、ほかにも基準は多々あるわけです。1つは、既に証券として並んでいるものと、今日もご紹介がありましたけれども、ファミリーリゼンブランス、家族的類似性、非常に似ているものであれば、それは証券にしますとか、あるいはパートナーシップとかLLPとか信託といったものについてはまた別の基準で切っているわけでして、ですから、ハウイ・テストというのは参考にはなりますけれども、ハウイ・テストが万能ではありませんので、そこはちょっと気をつけた方がいいと思います。

3点目は、原委員も何度もおっしゃっていることですけれども、リスクのあるものは投資商品だと言ってしまえば、金融商品というのは将来のキャッシュフローを契約で移転することですから、常にリスクはあるのです。そういうことで言えば、販売・勧誘ということで言えば、投資から見ればリスクのあるものにお金を出しているわけですから、それは銀行商品であれ、保険商品であれ、金融商品以外のものでも、ひょっとすると、そういう意味では同じでありますし、同じように将来キャッシュフローをデリバティブという別の法形式を使ってつくることは幾らでも可能なわけです。ですから、そこはすべてという議論ではないはずで、ここでの議論は、貯蓄から投資へという言葉を使わせて頂ければ、貯蓄というところではなくて、投資というところについてインフラ不足であり、またエンフォースメントをきちんとしたインフラをつくりましょうという議論ですので、その結果、銀行の伝統的な形態の預金ですとか、伝統的な形態での保険商品というのはとりあえず除いて、それ以外の分野について投資サービス法を構想しましょうということです。確かに具体的な線引きはなかなか難しいところはあると思いますけれども、まず投資サービスの議論はそういうことだということでこの第一部会は議論していると思いますので、その意味で、貯蓄というか、伝統的な銀行預金ですとか、あるいは本来的な保険というのはとりあえず視野には入れる必要はなくて、その次の段階で、ひょっとするとおっしゃるように対象になり得るのではないかと思います。

最後に、太田委員が強調された点ですけれども、証券取引法の体系にとらわれることはもちろんないと思いますし、証券取引法は改組されるのだとは思いますけれども、まず、現時点で、証券取引法の体系とは何ぞやということについて、共通の理解を持っておく必要があると思うのです。日本の証券取引法の体系は、有価証券という概念があって、まずディスクロージャーにいくのです。それは発行者という概念をつくって、発行者がディスクローズしますと。ですから、原委員などがよくおっしゃっているように、業者が勧誘のときに説明してくださいという説明義務とは違う体系で、その説明義務は条文の場所としては後ろの方に出てくる。まず発行者概念を決めて、有価証券概念を決めて、ディスクロージャーがある。それから、条文から言えば後ろですけれども、不公正取引があって、それとは別に業規制があって、参入から始まって、その業者の行為規制の中に販売勧誘ルールがあるという体系になっているわけです。イギリスの法律は、繰り返しになりますけれども、まず業者ルールからありますので、投資物件概念がありますけれども、次には投資サービス業の概念が来て、業者ルールの体系との関係で日本的な、あるいはアメリカや日本のような有価証券概念があり、発行者ディスクロージャーというのは後ろの方に出てきているという体系になっているわけです。ですからという言い方がいいかどうかわかりませんけれども、日本の証券取引法では、例えば有価証券関連のデリバティブについて言えば、原則としては有価証券概念には入れていないのです。なぜかというと、それは、有価証券概念に入れて、それ自体を発行者開示主義、発行者ディスクロージャールールというものに服する必要がない。デリバティブはそういう商品だからなのです。これは半分ぐらいは法技術的な概念だと思いますので、どっちがきれいかといったことにすぎないようには思いますけれども、デリバティブ商品というのはそういう特性があることは確かなので、現在の証取法の体系から言えば、現渡しのあるようなものを除きますと、ほとんどのものは証券業のところで定義されており、有価証券であって発行者開示制度に服すというところは外れているといるわけです。あとは、これが主たるものですけれども、業者の規制に服しているということです。ですから、そこはつくり方であって、ただここで議論していることとの関係で言えば、投資サービス分野におけるインフラ整備ということから言えば、デリバティブは、ルールのつくり方はともかく当然投資サービス法に含まれてきてしかるべきものだと整理してよい。ただ、今の証取法の体系から言えば、もう既にそれがありますけれども、ちょっと普通の有価証券というものとは違う形で整理される。そういうことだと思います。いろいろと将来議論する必要はあるとは思いますが、範囲に含めるかどうかということを議論するときには、これは太田委員もその趣旨でおっしゃったと思いますけれども、それはあまり気にしないで、後で入れてつくっていくときにどういう体系に持っていくのかということだと理解しています。

すみません、ちょっとまた私がしゃべり過ぎて申しわけありませんでした。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

少し細かい技術的な話なのですが、事務局のご説明を聞いていて、少しわからなかったところがございます。それは、定義のあり方について、個別列挙と包括条項を組み合わせて定義するのか、それとも包括条項を基本にして定義を組み立てていくのか、どちらのやり方をとるのかという点です。それも今後の検討の対象になるのだろうと思うのですけれども、また、私自身、きちんと考えてはこなかったのですが、個別列挙と包括条項を組み合わせた場合、新しい商品が出てきたときに、個別列挙に挙げるか、それとも包括条項で賄えるのでそのままにしておくのかという判断がわからないといいますか、区別の基準をどこに求めればいいのかわからない自体に陥ると思うのです。また、個別列挙には挙がっているけれども適用除外になっているものについて、包括条項で拾うことができるのか、あるいは、例えば合同会社等の有限責任の出資持分だけを個別列挙した場合に、無限責任の持分は包括条項の適用対象になるのかといった問題が生じるかと思います。

それから、LLPのところで紹介されていたように、態様によっては投資者保護が必要で、そうでないものは必要ないということだろうと思いますので、結局、投資者保護を必要とするような態様をうまく包括条項に書き込めば、原則として包括条項に該当するものは投資商品となって、あとは適用除外が必要なものについてのみ、特定の形式については、投資商品に該当するものであっても、こういう場合には除かれるといった適用除外の規定を整備していった方がかえって明確ではないかと思います。細かい点ですけれども、よろしくお願いします。

○神田部会長

どうもありがとうございます。法律をやっている人間としては、おっしゃることは非常によくわかります。

どうぞ。

○前原幹事

予定の時間も過ぎているところで恐縮なのですけれども、デリバティブ取引のことがいろいろ話題になっておりましたので、金融市場をモニターしています中央銀行の立場から1点だけ申し述べさせて頂きたいと思います。

デリバティブ商品というのは、投資商品として一定の規制に服する必要があるということは、もちろん皆様議論されておられますし、私が言うまでもないことであろうと思います。ただ、同時にデリバティブ商品というのは、元来、金利リスクとか為替リスクといった金融取引の過程で直面するさまざまなリスクを当事者の間で再配分し、それをそれらの主体にとってより最適に近いリスクの分担を実現するような形で機能を果たしているという部分も念頭に置いておく必要があるのではないかと思います。先般の金融先物取引法の改正というのは、近年大きな問題となっておりました外国為替証拠金取引に対応するものであり、そうした部分から、他の投資商品と比べて、これは私の印象でございますけれども、やや規制色が強い内容となっているように感じております。したがいまして、デリバティブ取引全般といったものについての規制ということを考える際におきましては、先ほど申し上げましたような市場の機能とか、より効率的な資源配分、あるいはリスクの配分の実現といった観点も十分に織り込んで、慎重にご検討頂くことが必要ではないかと思います。

ありがとうございました。

○神田部会長

どうもありがとうございました。本日はご欠席ですが、お隣に財務省からもいらっしゃっていますので、また次回以降も含めて積極的にどうかご発言願えればと思います。

それでは、そろそろ終わりにさせて頂きたいと思いますけれども、最後に特に言っておきたいという点がございましたら、いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。はい、西村先生、どうぞ。

○西村委員

あまり言わないようにと思っていたのですけれども、先ほど前原さんがおっしゃったことと絡むのですが、実はこの対象を決めるというのは、規制にどれだけのコストをかけるかということと非常に表裏の関係にあると思うんです。そこのところは恐らく次の論点の規制内容についてというところで極めて明快な問題になると思うのですが、その点だけは、最後ですけれども、一応テークノートしておきたいと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、よろしゅうございますでしょうか。このあたりで本日の審議は終了ということにさせて頂きたいと思います。この後、記者会見を行いまして、本日の当部会の模様についてお話をさせて頂きます。

それでは、最後に事務局からのご連絡をお願いします。

○大森市場課長

次回、年明けは1月21日金曜日午前10時から2時間程度で予定させて頂いておりますので、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして散会いたします。皆様方にはよいクリスマスとよいお年をお迎えください。

午後0時06分閉会

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