金融審議会金融分科会第一部会(第24回)議事録

日時:平成17年1月21日

金融庁 総務企画局

午前10時01分開会

○神田部会長

おはようございます。まだこちら側が集まりが悪いようですけれども、予定の時間を過ぎましたので、始めさせて頂きます。

ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の24回目の会合を開催させて頂きます。

皆様方には、いつもご多忙のところをお集まり頂きましてありがとうございます。

本日は、昨年の12月24日、金融庁が公表いたしました金融改革プログラムについて簡単にご説明して頂きます。その後、前回の続きの議論といたしまして、投資サービスの対象範囲・定義方法、規制内容について事務局から説明を頂いて、審議を進めていきたいと思っております。

いつものことですけれども、議事は公開となっておりまして、報道機関の方々などのために後ろの方の席を確保させて頂いております。

今回も、引き続きまして、高橋伸子さんにオブザーバーとしてご参加頂いております。

それでは、早速でございますが、議事次第に従いまして、まず金融改革プログラム、そして、対象範囲・定義方法について(3)というところまで、事務局からご説明をお願いします。

○大森市場課長

金融制度は金融審議会で議論して決めていきますが、日々の金融行政全体の指針になるのがプログラムで、現在のものは金融再生プログラムで、今、部会長からご紹介のあった、昨年末まとめられ、今後2年間をカバーするのが、今日さわりだけご紹介する金融改革プログラムでございます。

特に、監督行政はこの10年紆余曲折があって、足元の問題に追われ試行錯誤していく中で、中期的な指針の必要性を感じるのは自然なことで、3年前にも神田先生や池尾先生、淵田委員にもご参加頂いて、将来ビジョンが策定されました。このときも足元の不良債権問題をどう克服していくかが議論の中心になりましたけれども、結局のところ、不良債権問題を再びこの国の足枷にしないためには、実体経済のリスクが銀行だけに集中してしまう金融システムのマネーフローを貯蓄から投資に変えていくと。制度的には業態の役割分担といったものを、その流れにふさわしい形に見直していくということでございました。

この将来ビジョン策定の直後に内閣改造があって、金融行政の断絶があったかのごとく世間では歓迎されているのですけれども、中から見ているとそうでもないという文章を、私、先日書きましたら、同じ雑誌に池尾先生も淵田委員も同じ趣旨を述べておられました。この間の違いが主に銀行に対して不良債権の処理をどういう構えで臨むかということでしたから、現在の金融再生プログラムはそこに焦点が当てられておりますが、処理目標のめどがついてようやく非常時を脱しつつあるように見える現在、金融行政の指針としてのプログラムも金融システム全体を展望して、その望ましい将来像に向けて当面何をするのかというものに性格が変わってきたと思います。

全体を展望する場合に、1ページの目次をご覧頂きますと、2の I の(1)の利用者ニーズというのが今回の一つの特徴でございます。金融行政は基本的には金融機関への働きかけを通じて利用者たる国民に貢献してもらうものですが、より直接、利用者を意識した行政を志向していこうという姿勢でございます。制度面では、そこにありますように多様な金融商品・サービスの提供とか、実態に対応した利用者保護ルール、さらに情報提供・相談等の枠組みなどと書いてございます。

ここでの利用者というのは、資金を調達する企業というよりは、運用する個人を想定しておりまして、もう少しブレイクダウンして、普通の個人が金融機関に何を求めているかというと、銀行に対しては早くもうちょっとまともな利息を払えるようになってくれということでしょうし、保険会社に対しては極力低コストで広く安心を保障してということでしょうから、割とシンプルなニーズだと思いますけれども、銀行、保険以外の投資商品・サービス業というジャンルこそが、他社のリスクを判断して資金を投じるがゆえに、リスク判断の前提になる発行体のディスクロージャーとか、業者の説明責任、勧誘のあり方、顧客の投資に対するリテラシーとか、監視体制とか、さまざま微妙な論点がございます。したがって、ここで言う利用者保護ルールの整備というのは、実質的にはかなりの部分、「投資サービス法」の課題になるということだと思います。

普通の国民が安心して市場に参加できる環境が整うとすると、企業の側から見れば銀行借入以外の選択肢が充実するということになりますので、3回前のセッションでご紹介頂いたように、日米で証取法の存在感がまるで違うのは、アメリカのカバレッジの広い法制と国民の市場への信頼を確保している強力なSECということでしょうし、EUでは実質的な市場統合、経済統合に向けて投資商品及びそれを提供する投資サービス業のカバレッジを広くとって、各国の主権がますます制約されてきているということでございました。

いずれも「投資サービス法」に相当するものが金融システムの中核的インフラというだけではなくて、実体経済に効率的に資金を提供する、実体経済のリスクを効率的にシェアする上で不可欠であるという認識に基づいていると思います。こういった認識が、このプログラムの2ページの下から2番目のパラグラフにも示されております。貯蓄から投資への流れの加速は、リスクに柔軟に対応できる経済構造の構築にも資すると書いてございます。

その前段は割と抽象的なことが書いてあるので、どうしてこういう改革を通じてこうなるのかというのがややわかりにくいのですけれども、要は、制度改革は今に始まった話ではなく、これまでも随分行ってきております。6年前に施行されました包括的な市場改革、日本版ビッグバン以降もいろいろな試みをしてきておりますし、最近では、当部会で証券仲介業あるいは金融機関への解禁、さらには郵便局での投信販売といった国民と市場との接点を拡充する動きとか、単に取次ぎではなく、資産運用サービスの提供体制の拡充といったことに重きを置いてまいりました。

ただ、当然ながら貯蓄とか投資は個人の資産選択ですから、実体経済や個々の企業業績の将来に期待が持てる状況にならないと、個人投資家の裾野が拡大して金融システムのマネーフローが変わるほどの資産選択行動の劇的な変化を促すような実体経済環境になかったということだと思います。したがって、制度改革の成果を検証するには、ビッグバンも含めて時期尚早と思いますけれども、言い訳していてもしようがないので、貯蓄から投資に向けた制度改革の仕上げとしての「投資サービス法」になっております。

4ページをご覧頂きますと、真ん中のパラグラフの「金融実態に対応した利用者保護ルールの整備」の最初に「投資サービス法の制定」とありまして、次の5ページの一番下のパラグラフ「市場機能の充実と市場の信頼性の向上」と題したところの次のページに、「投資サービス法」の制定(再掲)とあるのは、先ほど申し上げた「投資サービス法」の複合的性格というか、調達・運用両面からとらえられる性格を示していると思います。

また、かつて将来ビジョンをまとめた際に、主に淵田さんからのご意見で、金融業がIT技術とともに発展する傾向はますます強めている以上、金融行政もより最新のテクノロジーに敏感であれとか、行政への活用を考えようというセクションがあるのですが、今回のプログラムでもITの位置づけがますます大きくなっているのが、先ほど申し上げた利用者重視と並んで、この改革プログラムの特徴と言ってよいと思います。

このほかにも、当第一部会の所掌に属する事項があちこちに書いてありますが、説明は省略いたします。繰り返しになりますが、金融制度は金融審議会で議論して決めていくことですから、まだ審議会で議論されていない制度問題がこの中に入っているとすれば、今後検討の上、審議会にお諮りしたいという行政当局の希望を表明しているということでございます。

次の7ページの中ほどに「金融の国際化・構造変化に対応した制度等の構築」というタイトルがございまして、最初の○に「コングロマリット化に対応した金融法制の整備の検討」とあるのは、前回も少し言及させて頂きましたが、銀行・証券・保険にまたがる監督行政上の問題を検討する国際組織としてバーゼル、IOSCO、IAISがジョイントフォーラムを設けておりまして、金融コングロマリットにおけるリスクの管理や遮断、健全性確保、情報開示といった論点について作業を行っております。日本の金融持株会社は各業法で若干取扱いが異なっておりますが、今後とも国際的な議論を踏まえて、コングロマリット規制の枠組みを検討していかなければいけないという、当然のことが書いてあるだけでありまして、前回以降も「業態の融合・再編を促すための政策を打ち出した」といった不可解な報道が散発的になされておりますので、そのようなものではないということを念のために申し添えておきます。

プログラムについては以上でございます。

昨年までは、現行証取法の第1章有価証券及び有価証券を取り扱う証券業の定義について、有価証券より幅広い投資商品及びその投資証券を証券業以上にさまざまな形で取り扱う投資サービス業という概念に拡大改組していくべきではないかという議論が行われました。ただ、定義した結果どういう効果が生じるのかは具体的なルールを見る必要がありますので、現行証取法で言えば第2章以下に議論を進めさせて頂きたいと思いますが、定義に関連して2点だけ追加で、ご意見があればお願いしたいと存じます。

1つは、資料1の2枚目の網かけの部分で、「投資商品」の個別列挙と包括定義の関係についての前回の黒沼先生の問題提起でございます。以前、「同様に個別列挙と包括定義が併存しているインサイダー規制の重要事実の定義には構造的欠陥がある」という黒沼論文を資料としてお配りしましたが、恐らくそのアナロジーでのご指摘だったと思います。一般に法令は明確なほど望ましいですから、個別に列挙するのですけれども、列挙されていないものが規制されないと、投資者保護上支障を来すというのが今回の議論の出発点でございます。

ところが、個別列挙条項に該当するかどうかは明確ですが、包括定義に該当するかどうかは一般に判断を必要とするので、インサイダーで言えばバスケットクローズ、投資判断に著しい影響を及ぼすかどうかということを判断しなければならないわけです。仮に、個別列挙条項に該当せず、かつ、包括定義上も著しい影響を及ぼすとまでは言えないという場合には、規制されるべきがされない可能性がある。一方、個別列挙の方は著しい影響がなくても形式的に規制対象になってしまうので、インサイダーは包括条項一本で定義した方がよいのではないかという趣旨だったと思いますが、ちょっと単純化しすぎていたら、黒沼先生、後から補足してください。

「投資商品」の定義も、ここに書いてありますように、個別列挙に該当せず、包括定義に該当するかどうか不明確ということがあり得ると思います。この問題は、原則と例外の規定の仕方の技術でありまして、株券とか社債券のように100パーセント例外なく該当するものは個別に列挙しておけばいいだけですけれども、信託受益権とか組合のように該当するものもあるという場合に、これまでのようにこういう信託受益権、こういう組合は該当しますと書くと、当然ながらそれに該当しないものは漏れてしまう、後から登場すると漏れてしまうということになります。逆に、「信託受益権や組合は原則該当する、例外的に投資者保護上問題のないものは除く」という形で書いておけば、新しい投資商品が出てきたときに、原則カバーされるということになります。

ちょっとトリビアルなことに拘泥しているように聞こえるかもしれませんが、これは「投資サービス法」全体のつくり方にかかわる問題で、以前も申し上げたと思いますが、インサイダー規制の重要事実として、決算情報というのは年度決算を意味しているので、半期決算や四半期決算に基づくインサイダー取引は摘発できないという難点があって、これをすべての決算とか財務情報という形で規定しておけば、罪刑法定主義的な明確性は低下しますけれども、エンフォース上の不都合も低下する。さらに、抽象度を高めて、先ほどの黒沼先生の論文のように投資判断に影響を及ぼすすべての情報と言えば、規定の不備によって悪質な人たちを摘発できないということはなくなるのですが、同時に何がやっていけないことなのかがわかりにくくなってしまうかもしれないという兼ね合いの問題でございます。

これは2つと申し上げた定義をめぐるもう1つの論点に直結しておりまして、前回まで会社や組合といった事業執行のツールについて、事業の所有と執行の分離の度合いに応じて証取法、「投資サービス法」はどう対応するのかという議論がございまして、お金を持っている人と事業をしたい人が一致しないので、投資という他者の努力を評価して資金を投じる行為が実体経済の原動力になって、安心して投資できる環境がインフラとして重要ということでございます。

4ページに経済産業省さんと扱いを相談しております日本版リミテッド・パートナーシップの姿がこれまでよりは具体的な形で出てきております。ここの中ほどに(1)、(2)とありますが、(1)で「業務執行のうち重要な財産の処分・譲受け、多額の借財については、重要度や金額に応じ、所有者たる組合員全員か3分の2以上の同意が必須」とありますから、所有と執行が相当程度重なっております。また、(2)で「所有者たる組合員は業務の執行の一部のみを委任することが可能」とありますから、所有と執行が完全には分離しない仕組みになっております。したがって、他者の努力を評価して資金を投じるという、投資者を保護しなければならないという実態にない場合もあるということでございます。

先ほどの個別列挙と包括定義の議論をあてはめますと、かくかくしかじかというタイプのLLPだけは証取法が適用されるという、これまでのような規定の仕方ではなく、LLPには原則証取法が適用される。ただし、これこれは投資者保護の必要性に乏しいので除くという規定の仕方、原則、例外を転換した規定の仕方が適切ではないかというのが、その前段に書いてあることでございます。

一番下の(注)にありますように、アメリカではLLPにHowey基準が適用され、利益が主として実質的に他者の努力によるかどうかで判断されているということ。また、イギリスでは法人として持ち分が、投資物件、インベストメンツになっているということと整合的ではないかと思います。

私の説明に偏りがあれば経産省さんから補足して頂きたいと思います。とりあえずここで一たん切らせて頂きます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ここで一遍切ってご議論をお願いしたいと思いますが、前の方の金融改革プログラムについてのご質問やご意見でも結構です。資料1の「論点1」は毎回バージョンアップしていくという新しいアプローチをとらせて頂いておりますけれども、今、大森課長からご説明頂きました部分を中心に、関連してその他の部分に及んで頂いても結構かと思いますので、どなたからでもご質問、ご意見等をお出し頂ければありがたく思います。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

各1点ずつあります。

プログラムについても、一つだけ、感想というのか意見を申し上げたいと思います。例えば4ページで利用者ニーズの重視とありまして、趣旨については全く賛同なのですけれども、利用者という言葉ですね。私の提案として、これはもうでき上がっておりますから、提案も何もないのですが、今後の展開として、「利用者」を「消費者」に置き換えるとか、あるいは、「利用者・消費者」にするとか。いわゆる個人のエンドユーザーを重視するんだということを、中身から言えばもっとはっきりと表現してもいいのではないかと、解説なりこの間の流れを聞いて思いました。

もちろん、「消費者」という言葉については、もともとの歴史的な考え方がいろいろあるかもわかりませんけれども、そのようなことを思ったのが1点です。

それから、資料1の「論点1」の個別列挙、包括規定の点についてですが、私は理屈的にも黒沼先生のおっしゃるとおりだと思ってしまうのですね。ただ、実際的には今回の「投資サービス法」というと、その先の金融サービス法との違いは何か強調することになるかもわかりませんけれども、現在の法制からの移行的な意味もあると思いますので、ある程度の個別列挙は必要なのではないか、その方がわかりやすいのではないかと思っております。

その上で、ペーパーにありますように、それが必ずしも限定列挙ではないのだということが解釈としてきっちり示せばいいのではないかと思っています。さらに、LLPについて言えば、確かに所有と執行が重なっている面はありますけれども、極端を言えば株式会社でも、あるいは、株式会社の末端労働者であっても、持株会で株を持つことはあり得るわけですから、極端に言えば程度の問題かと思いますので、原則対象になるという考え方が適切なのではないかと考えています。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

どうぞ、原委員。

○原委員

私も2点発言させて頂きたいと思います。

金融改革プログラムの方ですけれども、今、上柳委員から出されたように4ページにあります「利用者ニーズの重視、利用者保護ルールの徹底」というところは、「消費者」という文言が、「金融サービス立国への挑戦」ということであれば、適当ではないかと思います。私は金融審議会に所属してもうかなりの年月がたつのですけれども、最初からずうっと「消費者」という言葉を使ってきております。半年ぐらいたったときに、ほかの委員から「なぜ原さんは消費者という言葉をいつも使うのか」という質問を、会議が終わった後受けまして、そのときも説明したのですが、金融分野にかかわって非常に違和感を感じたのは、「消費者」という言葉がどこにも使われていないということでした。

なぜ使わなければいけないということを2つの意味で思っております。1つは、「利用者」とか「契約者」とか「個人投資家」になってしまうと、契約の当事者同士で対等ということになります。例えば広告一つ取り上げても、広告は消費者全般に提供されているものになりますから、そういった広告規制のところになかなか踏み込めないというような、広がりが持てない。「消費者」という概念を立てないと広がりが持てないということが1つです。

もう1つは、去年、「消費者保護基本法」を改正して、「消費者基本法」にいたしましたけれども、消費者と事業者の間には、情報力とか交渉力、資金力という意味で構造的な格差が存在する。そういう意味で言えば、消費者の権利からくる保護される消費者、保護される部分というような話が出てくるわけで、こういった構造的な格差を持つ存在であるということを示すという意味でも、「消費者」という文言が大切だと考えております。ようやく「顧客」とか「利用者」という言葉になってきたとは思っておりますけれども、将来を考えれば、ぜひその言葉を入れて頂きたいと思っております。

それから、今回、「投資サービス法」の検討を進めておりますけれども、「金融サービス立国への挑戦」ということであれば、銀行業務、保険業務も含めての金融サービス法への挑戦ということもぜひお願いしたいと思っております。それが1点です。

それから、今日の本題の議論で、定義のところですが、包括定義と個別列挙という組み合わせは、どういうふうに置けば漏れがないのかということをぜひ先生方にお願いしたいと思っておりますけれども、これまでの議論の中で「適用除外」の話も随分出てきておりまして、この「適用除外」についても、先ほど大森課長から少し説明はありましたが、どのようなレベルことをどのような範囲のもので考えていらっしゃるのかということも含めて議論を深めて頂けたらと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

田中委員、どうぞ。

○田中委員

「論点1」の4ページの一番下に書いてあります「デリバティブ取引」、それから、5ページの「証取法以外の法律により投資者が保護されている商品との関係」、これに関連してコメントしたいと思います。

貯蓄から投資への流れをより円滑にするためには、信頼される投資商品の提供が重要だと考えています。そのとき同じ種類の投資商品であっても、業法が違う、あるいは、監督官庁の違いによって規制が違うことにより、開示される内容が異なることが考えられると思います。その場合、投資者から見た場合、比較検討がしにくい、その結果として投資商品に対するリスクの判断ができなくなるということが考えられます。こういうような状況になりますと、安心した、あるいは、信頼された投資商品の提供というのは非常に難しくなってくると思います。そういう面で、同じ種類の投資商品に対する開示される内容は同レベルでなければいけないと考えます。

また、税金の議論でもよく言われることなのですが、複雑な規制内容になってきますと、利用者から見て非常にわかりにくくなるということが言えると思います。そういう面で、冒頭申し上げた「貯蓄から投資へ」というものを円滑に行うためには、なるべくわかりやすい、複雑にならない制度が重要だと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、西村委員、どうぞ。

○西村委員

私は金融プログラムと今日の内容についてそれぞれ1点ずつコメントしたいと思います。

まず、金融プログラムですが、8ページ以降の「地域経済への貢献」というところで非常に重要なことが幾つか書いてあります。私が最近非常に気になっているのは、都市銀行、大手のメガバングに関してはリスク管理という点では非常に進んだと思うのですけれども、地方銀行に関してきちんとしたリスク管理がなされているかどうか心配なところがあるということから、ここら辺についての今後の対策をお考え頂いた方がよろしいのではないかと思っております。

ご案内のように、官は事前ではきちんとした制度をつくり、事後でそれがきちんと遂行されているかどうかを見るという形になりますので、事前の制度的な枠組みできちんとしたリスク管理がなされているということを担保することは非常に重要になりますので、その点について実際の業務の遂行の際にお考え頂きたいと思います。特に間接的な不動産関連の融資に関しての最近の動きについて若干心配な面がありますので、その辺についてご配慮頂きたいと思います。

それから、今日の本題に関してですが、今の田中さんの話とも関係するのですけれども、私がわからなくなっているのは、1つはディスクロージャーに関してのことなのです。いわゆるディスクロージャーという形で一言でいうのですが、さまざまな程度があると思うわけです。その程度に従って投資家保護をしなければいけない目的、もしくは影響と、このディスクロージャー義務の範囲は決まって来ると思うのです。これは金融庁だけではないのですが、その辺の統一的な何らかの対応関係を考えていかないといけないのではないかと思います。有価証券にするかどうかということだけでとらえると、もしくは投資商品にするとかしないとかいう形でとらえるとすると、そういった綾のところが対処できなくなって、結局、プロクルステスのヘッド(注:ギリシア神話。メガラからアテナイへの道に住んでいた強盗。旅人をベッドに寝かせ、体が長すぎると切り取り、小さすぎるとたたいて伸ばして殺した)のような形になってしまう可能性があると思います。

実際のところ、問題が起こるのはそういう綾のところで起こるわけですね。“The Devil lies in the details”という言葉がありますけれども、そういうところが重要ですので、この辺をどういうふうにお考えになっているのか。逆に言えば、これは金融庁だけで決める問題ではなくて、ほかの所轄官庁との協議をしなければいけなくなると思うのですが、その辺のところをどういう形で今度お進めになるのかということをお聞きしたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございました。

今の点について何かあったらお願いいたします。

○大森市場課長

まさに現実の取引主体の情報格差があって、それを埋めていくのがディスクロージャーということでしょうから、過不足なく埋めていかないと、わかっている人に無駄なディスクローズをすればよけいなコストがかかって、イノベーションを損なうということだと思いますので、今日、後半の部分で「ホールセール、リーテイル」、「プロ、アマ」という議論がまた出てまいりますけれども、そういう境目を上手に画するということが、今、西村先生のおっしゃった綾というのか、微妙なところだとは思いますが、上手に綾をつけていくということではないかと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

それでは、池尾委員、高橋委員の順でよろしゅうございますか。

○池尾委員

私は原則は投資家保護を徹底することが資本市場発展の道であるという立場なんですが、個別的な論点になると迷うところがありまして、今日出された個別列挙と包括定義の併用の話に関しても、基本的にトレードオフがあるような気がするのですね。かつてこれはステレオタイプ化され、あるいは、カリカチュア化された話だと思うのですが、アメリカは原則自由だと、法律でいけないと書いてあることはやっていい国だと。それに対して日本は原則禁止の国で、法律で明示的にやっていいと言っていない限りはやってはいけない国なんだと。その違いが金融イノベーションに対して大きく影響して、アメリカで盛んにイノベーションが行われたのに対して、日本でそういうものが起こらなかった一つの大きな原因だみたいな議論があったと思うのですね。

そういう側面はあって、投資家保護という観点からいうと網をしっかりかけておいた方がいいと、当然のこととして言えるわけですけれども、本当の意味の革新的な動きに対して、それが制約になってしまう可能性はあるわけですから、そのあたりのトレードオフをどう考えていくかということが大切になると思うのですね。今の続きを言いますと、日本はかつて原則禁止の国だったはずなのですが、それは多分、規制当局の意向で原則禁止になっていたのが、最近そういう意向を気にしない人たちが出てきていろいろやるようになったと。そうすると法律が原理的にそういうふうになっていないと、原則自由的な感じの振る舞いが出てきていろいろ変なことが起こったので、ちゃんとしようという話に流れとしてはなっていると思うのですね。だから、イノベイティブな動きに対しての効果みたいな視点は投資家保護と並んで持っている必要があるのではないかというのが意見です。

○神田部会長

ありがとうございます。

それでは、高橋委員、どうぞ。

○高橋(伸)委員

一部、先ほどの上柳委員、原委員のご意見と重なるところがございますが、1点は金融改革プログラムに関する感想、意見、もう1点はプログラムと今回検討の「投資サービス法」との関連でご質問をさせて頂きます。

まず1点目、プログラムでございますが、私も「利用者保護」という言葉よりは「消費者保護」という言葉の方が一般の国民には理解されやすいと思っております。私は以前この第一部会に所属しておりまして、5年以上前に同じ議論をやっていまして、「消費者」「利用者」「顧客」、どの言葉を使うかということはかなり議論されたのですけれども、英国で「コンシューマ」という言葉に関しての疑問が呈されたということで、「消費者」という言葉を使うことに関してストップしてしまったという経緯がございます。

それで、「顧客」というと事業者からの見方というところで、間をとって「利用者」となった経緯があるのですが、ふたを開けてみましたら、イギリスの金融サービス市場法はしっかり「コンシューマ」という言葉で通していたということがございますので、その辺も踏まえて今回議論していったらどうかと思っております。「投資サービス法」の中に「投資家」という言葉も出てくると思うのですけれども、一度、概念整理をして頂けるとありがたいと思います。先日の会見で伊藤大臣は、「コンペティション」と「コンプライアンス」と「カスタマー」ということで、「顧客」という言葉で説明をされていたのですけれども、金融庁として言葉に対する統一感がほしいなと思っております。

2点目は、貯蓄から投資へという流れを加速する、そのためには一般国民の金融リテラシーに関する向上が不可欠ということもずうっと言われてきているのですが、今回の改革プログラムでは、流れ懇、それから、2000年の金融支援報告書、その後、証券改革プログラム等で出てきました「消費者教育」とか「金融経済教育」、そういう言葉が一切なくなっているのですね。ここのところもどのようにご当局がお考えでこのような形にしていらっしゃるのかということも教えて頂けたらと思います。

と言いますのは、イギリスの場合には金融サービス市場法の中に入れていくという形でいったので、この「投資サービス法」の議論は、私は途中からの参加でよくわからないのですけれども、投資に関する教育等々はルールの整備・徹底の「徹底」の中に法律に関する趣旨徹底も含まれてくるのかどうなのか。その点をお伺いしたいと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

○三國谷審議官

4ページのところの「利用者保護のための情報提供・相談等の枠組みの充実」の中に4項目ほどございまして、その中の「利用者の目線に立った」というところで「金融サービス利用者相談室」というのは予算要求もしておりまして、こういったものに取り組むほか、「利用者のライフサイクルに応じ、身近な実例に即した金融経済教育」という言葉を使っております。「金融経済教育」というのは、金融サービスとか経済全般に関連するということで、幅広い観点からこういったことにも取り組んでいくということをここに書き込んでいるわけでございます。

プログラム自体は、現在、一種のロードマップでございまして、これからさらにいろいろな工程表、あるいは、検討を加えていって、今後2年間でこの型に取り組んでいくという性格であるということを申し添えたいと思います。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

それでは、高橋委員、黒沼委員の順で。どうぞ高橋委員。

○高橋(厚)委員

LLPの問題は、「投資サービス法」の対象とするかどうかという問題と、どういう規制を適用するかという2つの問題があるのではないかと思います。大森課長の説明に一部あったんですけれども、他人の努力ということが全くないというような仕組みのLLPであれば、投資家がいないというふうにも見えるわけでありまして、そういうものであれば、それは定義のところで外れるということかなと思います。

ただ、多くの場合は完全に重なるということではないので、そういうことを前提としてLLPを対象として取り入れるのではないかと思います。その場合に、重なっているところが多いんだということであれば、投資家保護という観点から、さっき西村先生もディスクロージャーのやり方は必ずしも一律ではないじゃないかというお話もありましたが、ディスクロージャーの点につきましても、そのほかの行為規制その他につきましても、弾力的な適用がされる、あるいは、極端な場合には規定の適用除外ということも含めて考えていいのではないかと思います。

ですから、定義として入れるかどうかという問題は、別途、定義の議論はあるだろうと思いますので、そこの定義に該当するかどうかということで考えたらいいと思います。その場合でも、規定の適用にあたっては弾力的な対応も含めて検討していいのではないかと思います。

○神田部会長

ありがとうございました。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

同じく定義のところでありますけれども、個別列挙と包括的な定義を併用するというやり方と、包括的な定義は置いた上で適用除外を規定するというやり方とは、同じことの表と裏という関係ではございません。解釈上は包括定義に該当してしまうけれども、不都合がある場合には適用除外規定を適用するという考え方だろうと思います。ですから、後者は個別列挙に該当しないものはすべて適用除外として列挙するという考え方ではありませんので、その点でどちらがいいかを考えたらいいかと思います。

もう1つ、前回はきちんと頭の中で整理されていなかったので発言できなかったのですけれども、包括規定は実質基準で定めて、個別列挙は形式基準で定めるということになりますと、個別列挙に当たるものとそれ以外のものとで基準が異なってくるという問題が生じると思うのですね。インサイダー取引の場合にはそれが大きな問題になったのですが、こちらの方はそれほど大きな問題にはならないかもしれません。アメリカでは列挙された証券については原則として有価証券とした上で判断していますけれども、例えば株券についても場合によっては有価証券ではないと解される場合もあるわけですから、個別列挙に該当すればすべて投資商品と考える考え方の当否についても検討すべきだと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

岩原委員、どうぞ。

○岩原委員

私も今の定義の点について申し上げたいと思います。

黒沼委員のご指摘は、さっき上柳委員がおっしゃいましたように、議論としては非常に優れた指摘であり、インサイダー取引について現在の個別列挙と包括条項を組み合わせた規定についての適用の仕方で難しい問題が起きて、最高裁判例等も出ていろいろ難しい問題が起きていることは事実であります。包括定義で基本的な考え方をきちんと定めて、原則としてはすべて適用範囲を決めていくということができれば、それが証取法的な観点から一番望ましいかなという気がいたします。

ただ、実際上の法律の適用を考えますと、インサイダー取引規制の規定を入れたときもまさに問題になったところですが、インサイダー取引にせよ、「投資サービス法」の規定の適用にしても、違反に対する刑事罰の適用ということが問題になってきます。そうしますと、検察官が法律を適用してくれないと実際のエンフォースメントができないということになります。これはここの問題ではありませんけれども、日本の司法の強い特色として罪刑法定主義、しかも条文の適用を非常に厳格にして、明文上はっきりしていないと刑事罰はなかなか適用しないという傾向があります。それを考えますと、包括定義条項を置いて、それに一定の適用除外を置くという形で、適用範囲を決めますと、実際の法律の適用がスムーズにいくのかどうかに大きな懸念があります。

インサイダー取引についても、検察の方で違反に対して積極的に証券取引法の規定を適用してくれないのではないかということが大きな問題になって、そこで個別列挙と包括条項を組み合わせるという立法の仕方をしたわけであります。そのことを考えますと、黒沼委員ご指摘のとおりの問題はあり得るのですが、実際に法律がうまく適用されて、エンフォースされていくということを考えると、今回も個別列挙と包括条項の組み合わせでいくのが妥当ではないかという感じがしています。ただ、個別列挙の範囲については相当慎重に考えて、明確なものをまず個別列挙し、それでいかないものについては包括定義の方で拾っていくというやり方にならざるを得ないのではないかという気がしております。

そのような観点から申しますと、今回挙げられた中の幾つかの問題、例えば今のLLPについては、私はLLPについてどのような制度が現在案としてかたまってきているのかよく存じませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、ここに書いてあるような違いだけで投資商品性がなくなるということにはならないのかなと。アメリカにおいてHowey基準で他者の努力について、LLPについては利益が主として、または実質的に他者の努力による場合に当たると考えられているように、所有と経営の一致がかなりあるようではありますが、実際上の運営は経営者がある程度やっていくことになると思いますので、それを考えればこれについても恐らく個別列挙の中に入れても差し支えないものではないかと考えます。

もう1点、いいですか。デリバティブについても、これは実質で考えていけばいいと。ですから、これは恐らく包括条項の問題になると思います。それから、網線はかけられておりませんが、3ページの一番下にある中間法人等について、これがなかなか難しい問題だと理解しておりまして、建前からいうと中間法人というのは非営利法人、今、非営利法人の立法もやっておりまして、私もそれのあれにかかわったのですけれども、建前上は非営利法人で利益の分配はないということですから、Howey基準などの実質論からも外れそうではあるのですね。ところが、実際の使われ方を見ると、配当という形では利益の分配が行われておりませんが、一方でサービス等の形でのリターンを行ったり、場合によると役員報酬等の形で実質的には利益の分配が行われる場合がありますので、これこそ実質を見て包括基準等で拾っていく必要がある場合があるのではないかという感じがしております。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

経産省の櫻井さん、何かございましたら。

○櫻井経産省資金課長

LLPにつきまして私どもが考えておりますのは、専門的な能力を有する方などが事業に対等な形と言いますか、いろいろな形で参画できるようにする、それによって共同で事業を行うことを、今までよりもやりやすいようにしよう、ということでございまして、例えば大学の先生と事業化する能力のある方が一緒にお組みになって、大学の先生の研究成果等を使って新しい事業を起こす、というようなことを、LLPを使ってやって頂くことを想定しております。

そこにおきましては、民法上の組合と同じような形にしながら、例えば出資者についての有限責任性を認めるといったような形で、より事業参画性が確保されるようなことを考えております。したがいまして、一義的には、先ほど大森課長からご説明のありました紙にありますように、すべての方が何らかの形で事業に参画して頂くということを想定しておりますので、Howeyテストの「他人の努力」と言いましょうか、お金だけを出して自ら事業には関与しないというようなことは、私どもが想定しているものとしては中核的なものではないということでございます。

ただ中には、そういうことをこの法律を使っておやりになるということを、悪知恵と言っていいのかどうかわかりませんけれども、考える方がいるかもしれないというご指摘もあろうかと思いますので、私どもとしても、一定のものにつきまして、LLPも証取法の対象とすることについては十分に検討に値するということで、金融庁とその方向で調整を進めさせて頂いているところでございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

「論点1」は大体よろしゅうございますかね。

いつも勝手に自分がしゃべる機会をつくって恐縮ですけれども、この部会でどの程度共有感が持てているのかというところはちょっと自信がなくて。去年あたりの議論ですと、黙っておられる方のお顔を拝見するとうなずいて頂いているような感じなのですけれども、今回は今ひとつ「うーん」というか、うなずいて頂いていないというような感じもしてくるのですが、お顔の色が違うようにも思うものですから(笑)。

個別か包括かという問題の基礎にあるのは何かということだと思うのですね。従来は、例えば株式会社という器とか仕組みを使えば、形式的に株式であれば有価証券ということに証券取引法の体系ではしてきているわけで、それは株式会社という仕組みが、先ほどからのご指摘のように所有と経営を制度的に分離しており、その所有である出資持分、すなわち株式というものには商法で原則流通性が与えられており、そしてまた、そういった株式は資本市場における投資の対象になるから、形式的にはほとんど問題がない。黒沼さんがおっしゃったように、国によっては例外的な場合はごく例外的なものを外せばいいということだと思うのです。

しかし、今回は証券取引法ではなくてというか、それを改組して広げましょうという発想ですから、言葉を換えて言えば銀行取引商品、保険取引商品以外をもって投資商品ということにしようということですので、そこのところは考え方を変えるというか、株式会社のような形式基準を使ったものだけではない場合をカバーしなければいけないという問題になるのだと思うのですね。言葉を換えていうと、信託だから、組合だから、当然に入らないとか、あるいは、信託あるいは組合だから当然に入るということではなくて、信託や組合の場合には、私法上、当然に株式会社のように所有と経営が分離していることが制度上想定されているわけではありませんので、信託や組合という器や仕組みを使う場合には、それを使って何が行われているかが大事であって、それを使って投資サービスの提供が行われている場合には、「投資サービス法」の対象となるということだと思うのですね。

言葉を換えていえば、組合という形を使っても、そこで預金の受入れが行われていれば、協同組織金融機関というのがありますけれども、それは銀行法の話になるわけです。そこで投資商品を書くときに「さあ、どうしましょうか」というのは非常に難しい問題があると思うのですが、ものすごくラフに整理すれば、形式で書けるもの、形式だけでは書けなくて、プラス実質基準、Howey基準みたいなものが要るもの、3番目に実質基準でしか書けないものと、3つの類型になると思うのです。株式会社の株式は原則、形式基準だけで書けて、もし外さなければいけないものがあれば外せばいい。

しかし、組合とか信託は形式基準だけでは書けないので、実質基準がそこに加わる。それをHowey基準と呼ぶかどうかは人の問題ですけれども、とにかく形式基準プラス実質基準で書くことになる。そして、第3に、岩原先生もご指摘のように、包括条項は実質基準でしか書けないものということだと思うのですけれども。この3種類があって、組合とか、そういうものは2つ目になると思うのですね。形式プラス実質と。あとは法技術の問題で、原則は入るというか当たりますよと言っておいて、Howey基準を満たないものを外すのか、Howey基準を満たしてはじめて入ると書くのかということかと思います。アメリカでも投資契約という形式だけでは定義しきれないわけです。

したがって、プラス実質というところでHowey基準が出てきたということであって、株式会社の株式であれば形式だけで書ける、こういうことだと思いますので、大きく言えばそういう3つぐらいの類型で、黒沼さんがおっしゃったような弊害はできるだけ出ないように努力はするけれども、やはり3つぐらい並べていくしかない。その意味では、岩原委員がおっしゃったような方向で整理していくことになるのではないかと感じます。

もう1点は、若干違う点ですが、西村先生がご指摘になったディスクロージャーのつくり方というお話、池尾先生がおっしゃったことにも関連すると思うのですけれども、イノベーションの促進というのも、証券取引法の適用対象になるとイノベーションの促進の妨げになるのでは困る話ですよね。それはまさにトレードオフとおっしゃった。ですから、対象になるというのは、その結果イノベーションを促進するんだと考えていかなければならない。規制を受ければ、規制のコストというのがあるのでしょうけれども、何も受けなければ何も受けないコストもあるわけですね、社会的に見れば。

その辺を整理する必要があるということで言いますと、西村委員がおっしゃった点は非常に大事で、製造・販売という言葉を使えば、現在の証券取引法の体系は、投資商品を製造する発行者がいて、それを販売する業者がいる。ディスクロージャー制度というのは発行者開示主義なのですね。製造者が情報提供の義務を負うというのが証券取引法のディスクロージャー制度で、販売する業者が負うディスクロージャー義務というのは、説明義務とか情報提供義務とか呼んでいるもので別です。

したがって、発行者がディスクロージャー義務を負うような投資商品、そしてまた、販売者が、「説明義務」などと俗に言っていますけれども、先ほど概念の整理についてご指摘がありましたけれども、「消費者」というか、「投資家」というかに対して負う、それも広い意味での情報提供ですが、そういう二段の仕組みにふさわしいものと、よく言われますデリバティブ取引などは、現在の証券取引法でも発行者概念はありませんので、発行者開示主義というか、発行者開示制度の適用もないわけであって、そういうものとして整理していく必要があるでしょうし。

応用編としては、製造者がつくったものをそのまま売るような場合、これは業の問題になりますけれども、発行者がつくった投資商品というのを、販売者というか、販売業務を超えているということだと思いますが、キャッシュフローを組み替えて、それを「仕組み行為」という人もいますけれども、売っていくような場合には、現在の証券取引法の枠組みから言えば組み替えがあったところで、新たな証券の発行者となり、発行者開示主義の下で発行者ディスクロージャー制度の適用があるというふうに整理するか、あるいは、しないか、どっちかしか選択肢はないのですけれども、そういう二分法でいいのかどうか。ディスクロージャー制度については、西村委員がおっしゃったように基本的な整理をしていく必要があると思います。

最後に、この紙に沿って言えば、岩原先生もご指摘になったことですけれども、中間法人について、3ページ目からの「投資家保護が講じられていない投資商品」について、4類型をなぜ今、議論しているのかということは確認する必要があると思うのですね。マル1の合同、合名、合資、それから、中間法人もそうだと思いますけれども、これらは恐らく株式会社と違って形式だけで入れられないから問題になっているわけで、私のさっきの表現で言えば第2類型で、形式プラス実質基準。ただ、中間法人については、形式プラス実質というよりは、ご指摘がありましたように実質一本で入る場合があるという整理なのかもしれません。

マル2の事業型の組合についても同じですね。

マル3のデリバティブ取引はちょっと系統が違うものでして、これは実質と言ってもいいですし、「投資サービス法」の議論から言えば銀行取引商品、保険取引商品以外のものとしてこちらに入ってくる。そういう意味では投資サービスが残りをカバーするという意味において結果として入ってくるものではないか。

マル4は比較的簡単で、医療機関債とか学校債というのは、従来の考え方からもう既に入ってしかるべきだったものが、たまたま落ちていたという言い方がいいかどうかわかりませんけれども、そういうものですね。したがってマル1からマル4までの4つはそれぞれ類型は違うと思うのです。しかし、それについて今、議論しなければならない理由は、それぞれ類型ごとに属性が違うからではないかというふうに思われるわけです。

長くなって恐縮ですけれども、そういった点について、皆様方の間でどの程度共有感が持てるかということがあろうかと思いますが、今日頂きましたご意見からすれば、基本的なところでは共有感は醸成されつつあるような感じもいたします。

次のテーマに移らせて頂いてもよろしゅうございますでしょうか。それとも、今、私が申し上げたことも含めて、これまでのご発言で……。

原委員、どうぞ。

○原委員

神田先生に整理して頂いて大変よくわかりました。

個別の商品名も出てきているので、2つ確認させて頂きたいのですけれども、商品ファンド、先物ですね、この取引について、6ページの「他省庁との共管」というところで、商品ファンドとか商品先物取引が出ております。このペーパーは肉付けをしていって、バージョンアップを図っていくということですが、この部分だけちょっと取り残されているというような感じがするのですね。

今、医療債とか学校債は当然こちらへということで、これも他省庁がかかわると思うのですけれども、経済産業省のかかわりがあるというところで、私たち一般の消費者も取引にかなり参画させられている先物取引については、ぜひこちらの検討俎上にと思っているのですが、ここが肉付けされていくことになるのかどうか。もしも落とされていくことがあると大変困ると思っています。先ほど申し上げた適用除外というのは、そういう意味で先物取引の話がそういう適用除外に入っていないかどうかということを確認したかったということです。

同じような商品で、変額年金とか変額保険はこれで入っていると読めるとのことですが、EUのディレクティブの中に融資付きの投資商品の話が出ていたのですけれども、これについては日本でどういった商品で出てくるかというところがなかなか読めないところもあります。それについても私としては検討の中に入れておいて頂きたいと思います。

それから、池尾委員の発言は、私もそのように思っていて、投資家保護というと規制を強化して入口のところでガチガチにというふうに思っているわけではなくて、今まで入口でガチガチに規制することをやっていたのが、今は、少しそれを緩める方向になるので、事後の体制が非常に弱い。ですから、ディスクロージャーの話とか適合性の原則、それから、サンクション、このあたりが非常に弱いので、そこの充実を望んでいます。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございます。

はい、どうぞ、石橋委員。

○石橋委員

今、原委員から具体的に名前を上げられた変額なのですけれども、これは「論点2」で意見を言わせて頂きたいと思いますので、留保だけさせて頂きたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

それでは、「論点2」に移らせて頂いてよろしゅうございますでしょうか。

どうも失礼しました。どうぞ。

○宮本経産省商務課長

オブザーバーで恐縮でございますけれども、前回の金融審部会、それから今回も、個別に名前を出して頂いております商品先物を所管する経産省の商務課長でございます。今までは、金融審のご議論に責任ある対応をすべき立場でない、オブザーバーという立場でしたので発言を控えておりました。いわばずっと被告席にいるような気分でいたわけでございますけれども、このたび改めてご指摘もございましたので、一言発言をさせて頂いてよろしゅうございますか。

○神田部会長

もちろん、被告席ではないので(笑)、ぜひ積極的にお願いします。

○宮本経産省商務課長

まず、前回のご議論も含めまして、我々商品先物を所管している立場としても、投資者あるいは消費者の方々の利益を考えるというのを前提としております。この点について、今までいろいろ厳しいご指摘もあったわけでございますが、そういう実態も踏まえまして、このたびそうした問題を解決すべく抜本的な法律改正をしたところでございます。まだ改正法が施行もされてないところでございますが、まずは、それを厳正に執行し、投資家、消費者の保護を図っていく、というのが第一と考えているところであります。

投資家保護の観点でどういう規制が必要かということは、それぞれ商品の特性に応じて考えるべきですし、その中で必要な規制の統一が図られるべきかと思っております。それについて、銀行等の部分を入れるかどうかは別としましても、金融あるいは投資という形で一本としてやるのか、それぞれの規制をそろえていくのか、いろいろな議論は今後なされるべきかとは思います。

それから、いろいろな先物について金融に似たような手法もあり、したがって、そのような形でとらえられる部分もある反面、特に商品先物について言えば、もともと実際の商品の取引のリスクヘッジ、そのための機能が基本にあるわけであります。今でも単に差金のやりとりだけという意味の金融とは違いまして、最終的には現物の受渡しという形で、実体経済に根ざした産業インフラという機能を持っているわけでございます。こういう観点はこの金融審議会の場で議論されるべきものかは別といたしまして、我々としては重要な機能と思っているところであります。

ここで、我々の法律についてこの場で更に議論をするつもりはありませんけれども、今、原委員等からご指摘のありました点については、今後、金融庁とご議論させて頂きたいところであります。

○神田部会長

どうもありがとうございました。繰り返しますけれども、被告席ではございませんので、積極的にご発言頂ければありがたいと思います。

こちら側に座っておられる方はなかなか気がつかないので申し訳ありません。前原さん、何かありますか。

○前原幹事

それでは1点だけ、池尾先生が言われたイノベーションとの関係で申し上げたいと思います。

金融市場の参加者にとりまして重要なのは、制度の透明性と予見可能性ということだと思います。どのような商品が「投資サービス法」の対象になるか否かについては、だれにとっても明確にわかるような制度となっていることが望ましいと思いますので、例えば先ほどからあります個別か包括かということを考える際にも、そういったところにも十分配慮しながらご議論頂きたいなと思います。よろしくお願いします。

○神田部会長

ありがとうございます。

それでは、よろしいでしょうか。もちろん「論点1」も今日で終りということではありませんので、頂きましたご指摘を踏まえてさらにバージョンアップを図っていきたいと思います。

それでは、次へ移らせて頂きます。次は、規制内容について(1)でございます。

事務局からのご説明をお願いします。

○大森市場課長

各論に入っていきますと、いろいろな次元で論点は無数にありまして、証取法に限りましても、委員の皆様、この法律に基づいて営業するとか、この法律に基づいて消費者保護に取り組むとか、研究対象にするとか、私どものようにこの法律に基づいてエンフォースしておりますと、使い勝手が悪いとか、ここがこうなっていればいいのにと感じます。そこで今日は、現行制度のおさらいと、私どもなりに整理した論点の例をお示しした後、いろいろな次元で感じておられることを自由にご発言頂ければと思います。

資料2で四角で囲っておりますのは、規制の枠組みとして、「投資サービス法」の業の本来業務・付随業務・兼業業務の範囲、参入・行為規制の整備、その他横断化・柔軟化にあたっての留意点、とりわけ2として「ホールセール・リーテイル」、「プロ・アマ」の区分といった論点を掲げております。

おさらいの資料として、資料2-2をご覧頂きたいと思います。ご承知のとおり、第1章の定義に引き続き、第2章はディスクロージャーになっておりまして、この部分は基本的に岩原先生のワーキングで検討されておりますが、「投資サービス法」にとっても決定的に重要で、そもそも昨年まで議論してきたような証取法の適用を受けない投資商品、投資サービス業がたくさんあるのは、このディスクロージャーの負担を回避したいというのが主要な動機の一つになっておりますから、カバレッジの拡大という検討を始めますと、真っ先にディスクロージャーをどうするかという論点が出てまいります。

投資というのは資金を運用する側からの表現ですけれども、投資される側から見れば資金調達ですから、調達する資金額とのかねあいにおいてディスクロージャーのコストが合理的かどうかという論点は常にございます。ただいま部会長のお話がありましたけれども、銀行預金貸出という資金仲介では元本保証の運用対象を提供する一方で、経済学的にいうと情報の非対称性を縮減して信用リスクをとるのがもっぱら銀行の役割ですが、投資においては情報提供は基本的に発行体がディスクロージャーという形で行う。そこに投資サービス業者の説明責任が加わるという形で担われますから、コスト論と天秤にかけるという構えでいいのかという気もいたします。というのは、現実の動きが銀行借入れなど通常の資金調達が難しいので、手軽なツールを使ってイノセントな個人の投資を募っているという側面があるからでございます。

次の第3章は業者規制で、ここでビッグバンに際して基本的な枠組みを変えた部分でございます。それ以前はご承知のとおり免許制の下で参入を制限し、競争を制限することによって経営を安定させ、いわばつぶさないことによって投資者保護を図るという発想が基本にございましたし、経営を安定させるためには余計な業務には手を出させない、専業義務というものもございました。これを登録制に改め、登録要件を満たしていれば新規参入は自由にするとともに、専業業務を廃止して、業務分野を整理いたしました。

その業務の整理が資料2-3でございます。証券業の本来業務と付随業務が証取法の規制対象という形になっております。例えば本来業務、これが投資サービス業になっていくのでしょうけれども、本来業務として顧客の株式売買注文を取り次いでいれば、当然、その顧客資産を保護預かりするとか、売買のために信用供与するという付随業務が必要になってまいります。また、別途、根拠法のある業務を行うときは、その根拠法の手続に基づいて兼業するという形になりまして、例えば証券会社が兼業業務の1にある投資顧問業を兼業するというケースも出てきつつあります。

若干微妙なのは、付随業務の9番目に「情報の提供または助言」と書いてありまして、投資顧問業に該当するものを除くとなっております。証券会社に新規口座を開いたお客さんに、「あとは全部あなたの自己責任、自主判断で、好きなようにおやりください」では商売にならないので、注文取次ぎの前提として一般的な情報提供や助言をするということは、当然、付随する業務だと考えられているわけです。情報提供や助言そのものから対価を得るほど本格的に行おうとすれば、投資顧問業を兼業することになりますが、兼業できるんだったら、「投資サービス法」という形で枠組みを広げるのであれば、情報提供や助言が投資サービス業の本来業務であっても差し支えないのではないかというのが昨年来の議論でして、こういった構造はその下の資産運用とか金融先物なども同じでございます。

もう1つ例を挙げると、兼業業務の7に貸金業というのがございます。信用取引に伴って行われる金銭の貸付けは付随業務の3として書いておりまして、兼業業務は証券業とは独立に行えるものということでございます。この兼業業務の中に、当然ながら銀行業は入っておりませんで、これが65条の帰結ですけれども、銀行業は預金の受入れと資金の貸出をあわせ行う業だと定義されておりますから、元本を保証して預金を受け入れる業務と証券業の間に、投資者の犠牲において預金者を保護される利益相反の可能性があるから、原則禁止するという考え方に立っていることになります。投資サービス業の範囲が広がっても、前回申し上げたように、投資サービス業以外の金融業を営んでいる者が、どこまで投資サービス業を兼業できるか、できないかというのが、「投資サービス法」における65条問題ということになると思います。

資料2-2に戻って頂きまして、行為規制が2ページに列挙されております。これはいろいろな時代にいろいろな事件への対応として形成されておりますので、白地で考えれば別の規定の仕方があるかもしれません。例えば、平成3年に発覚した事件への対応として、損失補填が禁止されるとともに、その温床になるということで取引一任勘定も禁止されていますが、資産を預かって運用すること自体は悪いことでもありませんので、現在、そうしたければ、先ほど申し上げたように、投資顧問一任業を兼業することになっております。最近では取引所とPTSの競争条件の整備、投資者保護の必要性に対応して、最良執行義務が導入されましたが、法改正というのは必要があって行うのですけれども、以前から存在している規定の現段階での必要まできちんと検証して手当する余裕がないのが実情ですから、この際何でもご意見を頂いておきたいと思います。

また、取引対応やリスクの説明義務、顧客の属性に照らした勧誘を求める適合性原則などは、投資商品を提供する以上当然だとは思いますが、先般の外為証拠金取引においてはそれだけでは実効性が担保できないので、不招請勧誘の禁止という措置を講じたところで、そういう意味での規制の柔構造も考えていく必要があると思います。

その下の財務規制は、ビッグバンに際して、上にあります顧客資産の分別管理義務を導入しましたので、分別管理を遵守している限りにおいて、経営が破綻しても投資者に損失が生じなくなり、相対的に重要性が低下しております。この財務規制自体が、何がなんでも健全性を維持せよというのではなくて、投資者にとっての不測の事態に備えて監督当局がウォッチするという性格のものに変わってきております。

マル2の証券仲介業者は、顧客に勧誘したり販売したりは証券業者と同じですから、参入規制や行為規制は同じようにかかりますが、自分の勘定で行っていませんから、財務規制はないという形になっております。

マル3の投資顧問業者につきましては、業務の性質に応じて規制内容も証券業とは若干違っておりますが、率直に言えば業務が違うから規制が違うという面もあるのですけれども、市場関係の法改正をする場合には証取法が優先されてしまうというところもありまして、万全のメンテナンスをしてきたかどうかということもあろうかと思います。

1つ例を挙げますと、登録制である助言業務に比べて、投資一任業務は責任が重いので認可制になっている。それはいいのですが、3ページの上から5行目の兼業規制をご覧頂きますと、投信委託業の兼業は届出でいいが、証券業や信託業は認可が必要になっています。先ほどの証取法で証券会社が投資顧問一任業を兼業する場合は投資顧問業法上の手続だけで済むのに対して、逆の場合は証取法のみならず投資顧問業法が兼業を抑制しているという制度になっているわけです。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、ここまで業を細かく分けて技巧を凝らす意味はあまりないような気がいたします。

3番目、市場関係者に関する規制の最初にあるのが自主規制機関で、証券業協会につきましては、一昨年暮れの当審議会の報告に基づいて組織改革をされたところでございますが、引き続き行政当局と自主規制機関の役割分担とか、いかに有効に自主規制を機能させるかというのが重要な課題だと思います。特に、仮に分立した業法が「投資サービス法」に統合されているならば、証券業協会とか投資顧問業協会、投信協会、金先業協会とか、各業法に基づく機関も、例えば投資サービス業協会に統合されるのが自然でしょうから、インフラとしてはより重要だと思いますし、ここで言う自主規制も単に行政当局の規制の外延部分という狭い意味ではなくて、紛争処理機能を充実させるとか、投資教育とか、国民の投資への信頼を高める活動を幅広く考えていくべきだと思います。

次の投資者保護基金は、先ほど申し上げたように分別管理していれば基本的には世話にならなくても済むはずで、あまり大げさに考えなくてもいいとは思うのですが、制度を変えるときはこういう金目の問題は結構盛り上がる傾向がございます。

以下、証券取引所、証券取引清算機関、証券金融会社と続きますが、「投資サービス法」においては、これまでも議論がありましたように、証券という冠に限っておくことが必要かつ適切かどうかということでございます。

最後の取引規制は、先ほどの業者の行為規制と同じで、試行錯誤しながら形成されておりますから、次元の違うものが並んでおりまして、マル1のようにアメリカに相当するものは、岩原先生のご指摘がありましたが、ほかに手段がない場合に限って極めて例外的にしか日本では適用されておりません。あとは、おおむね精緻に構成要件が規定されておりますので、それはそれで使い勝手がいいとは限らないというのは先ほど申し上げたとおりでございます。

「投資サービス法」においても、業者の行為規制と市場参加者、何人たりともやってはいけないという規制は併存すると思いますが、規定の仕方に議論の余地があるということでございます。

時間がないのに説明が長くなってしまいましたが、以上が現行法のおさらいでございます。

資料2に戻って頂きまして、2ページの(1)は既に申し上げました。主に販売・勧誘に関するルールを定める証取法と、資産運用・助言に関するルールを定める投資顧問業法が合体して、ともに「投資サービス法」の本来業務ということでいいのではないか。先週でしたか、野村グループの大きな広告が新聞に出ていまして、アセットマネージメントの社長と証券会社の国内営業担当とグローバルホールセール担当役員の3人が並んでいまして、総合金融サービス会社として資産運用とか調達運用のソリューションを提供するということが書いてありましたけれども、こういった実態に法制も追いついていってもいいのではないかということでございます。

それから、マル2の他の投資者保護を目的とする法律との関係というのは、先ほどの証取法の枠組みからすると100パーセントフィットしない面があるのは当然でして、100パーセントフィットしていれば証取法に入っていたはずですから、違いがあるから別でいいんだという議論はややトートロジー気味だと思います。何度も同じことを申しますが、リスクに強靱な金融システムに再構築していくために貯蓄から投資へという国策があって、そのための基本的な制度基盤の議論をしているわけですから、投資であることに着目して、どこまで横断的なわかりやすい仕組みにできるかという構えが基本ではないかと思います。

先ほど申し上げたように、すべてについてディスクロージャーをどうするか、参入・行為規制をどうするかという論点がありますが、時間がないので、それぞれの特徴について簡単に申しますと、抵当証券は、それ自体ではなくて、小口化した共有持ち分であるモーゲージ証書を販売しております。次のページにありますように、二重売り、カラ売りという問題が出てきたので、抵当証券法そのものは戦前の法律ですけれども、新たに業の規制法ができまして、保管機構が購入者に保管証を発行しております。今や証券化のツールはほかにもたくさんありますし、抵当証券業をやっておられる方も少なくなりましたので、頑張って議論する実益に乏しいかもしれませんが、根っこにある資産を小口化して持ち分を売るという特殊性が分別管理という証取法の投資者保護規制とはやや様相を異にしております。

変額保険は、先ほど申し上げたように、死亡最低保障があるから保険なんだとか、逆に運用実績でリターンが決まるし、解約返戻金も保証されてないから投資なんだという、どちらかに属性を決め打ちするのはあまり生産的ではなくて、投資という側面に着目すれば何が必要かということだと思います。この場合に、直販もあれば代理店、仲立人というふうに、道具立てが証取法と違っておりますから、どういう整理をするかということになります。

次の信託受益権、改正信託業法は昨年暮れに施行されたばかりで、対象資産、担い手の制約を撤廃して、従来からの運用型信託会社に加え、資産管理に特化する管理型信託会社というツールを設けました。こういったツールを活用しようというさまざまな動きが出てきております。これも昨年来の当部会の議論の流れからすればどの程度かということはあると思いますが、信託受益権は原則「投資サービス法」の投資商品であって、その販売業者は原則投資サービス業者であるというのはそんなに違和感がないのではないかと思います。「投資サービス法」に先ほど申し上げたような資産運用業を本来業務として規定していくのであれば、委託者というか、指図権者なども、そこで整理していくのはそんなに難しくないような気がいたします。

立法の技術論みたいな説明になっていますが、以下いろいろ書いてあるのも構図は基本的に同じでして、要は、毎回申し上げておりますように、以前から証取法の有価証券概念を広げていくことが投資者保護上望ましいという考えはあったのですが、リジットに適用されると不都合だとか、原資産が違うとか、官庁をまたがっているという理由で、個別に立法されてまいりました。商品ファンドなら匿名組合、組合、信託という法形態を使って主として商品に投資するというスキームですから、商品か証券かという違いの投資者にとっての意味と、こうした法形態をとるほかのファンドとの線引きの問題だと思います。

不動産の場合は、より実物不動産投資に近いようなものもございますので、こういったものをどうするかといったことになります。

金融先物、次のページの商品先物についても、昨年来申し上げております。

4ページのデリバティブ預金というのは、最近では地域の金融機関でも結構な規模で提供されているようでございます。広告を見ると「投資」とは書いてありませんけれども、「市場性商品なので毎日金利が変わります。よってリスクがあります」と書いてあって、投資信託などと同様の注意をもって提供しておられるのだと思います。

4ページの中ほどの本来業務・付随業務、兼業業務については既に申し上げました。

次の参入・行為規制については、資料を参照している時間がないのですが、資料2-4に登録制、免許制、許可制、認可制などいろいろな名前の制度がございます。先ほどはややステレオタイプの説明をしましたが、実際に参入をコントロールするのは制度というよりは運用の方針であって、免許制時代の証券会社に原則新規参入がなかったのは、免許制だからというよりも、むしろ新規参入を認めない方針だったからでございます。免許の手続が法律に書いてあるのに、実際には与えられないという運用に対して、先ほどの池尾先生ではないですけれども、みんなおとなしかったので文句を言う人もあまりいなかったのですね。

ビッグバンで「免許制の見直し」という活字が出るようになると、ぼつぼつ新規参入の相談を受けるようになりました。ですから、免許制から登録制に移行する前、いわば免許制末期にも幾つか新規参入がございまして、第1号が一昨年、当部会に来てくれたディ-ブレインの出縄さんです。ただ、登録制になってからの方が新規参入に弾みがついたのは周知のことで、登録制が申請する側もされる側も要件さえ満たしていれば認められるというメンタリティになる仕組みなんだと思います。したがって、こういった予見可能性が高い仕組みを「投資サービス法」の基本に置くべきではないか。事前にルール化できないような要素があれば上乗せを考えるということではないかと思います。

参入に関係しては、最低資本金とか自己資本規制といった論点もありますけれども、こういったことも最大公約数的な基本ラインを決めて、業の性質上上乗せの必要があればそうするということではないかと思います。商号についても、今の証券会社とか投資顧問会社という概念をどうするのかということはあるのですけれども、ご意見を頂ければと思います。

マル2の行為規制については、「証取法などを基本としながら、投資商品や現行業法の内容を踏まえて柔軟性を持たせる」と書いてあります。資料2-4をご覧頂くと非常にごたごた書いてあるのですけれども、リスクを的確に説明するとか、顧客の属性に応じた勧誘をするというのは、共通原則として抽出できると思います。一方で、広告についてはまちまちになっておりますし、この資料2は、「取引所取引原則」とクーリング・オフという、業法によって扱いが違うものをどうするのかという例を挙げております。それ以外はそんなに本質的な違いはないのではないかと思います。

その他として、「外証法」と書いてありますけれども、極めて乱暴に言うと、証取法の枠組みでの新規参入を認めたくないので別建てにしたということですから、今やその中身に本質的な違いはありませんので、この際統合すればよいのではないかと思います。

最後に、「ホールセールとリーテイル」、「プロとアマ」という論点を掲げているのは、先ほど西村先生のご質問にお答えしたとおりで、過不足ない規制でないと無駄なコストがかかり、イノベーションを損なうからでございます。この点は、大蔵省時代の金融審第一部会でも途中まで議論をしておりまして、引用は省略しますが、販売・勧誘のルールは取引主体間の情報格差によるので、基本的には適格機関投資家のように取引主体に着目して区分することがふさわしいと。当時のレポートでは「アマ」に分類されればよりきめ細かい対応を受けられるし、「プロ」であれば選択肢の拡大とか低い手数料を享受できるといったことが書いてありますけれども、今や個人でも自分が特段のサポートをしないプロだと認識すれば、オンラインで選択肢の拡大、低い手数料を事実上既に享受しておりますから、取引実態の変化も踏まえて検討していく必要があると思います。前々回に新EU投資ディレクティブの仕組みをご紹介しましたが、どういう属性を持つ個人がプロとしての扱いを求められるか、業者が恣意的に誘導していくのをどう排除するかといった、具体論を検討していくことだと思います。

その下は既に言及しました。

例によって何から発言すればいいのかわからないような説明になってしまったかもしれませんし、急いで説明したつもりなのにあと20分になってしまいました。何からでも結構でございますので、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

時間の制約の中でありがとうございました。

いろいろあるとは思いますけれども、今日は実質的にみて第1回と考えたいと思いますので、「論点2」というのは資料2の冒頭に書いてありますように、「投資サービス法」の対象となるような投資商品が広がりをもってきた場合に、投資サービス業の業者ルールの中身をどういう考え方で整理していったらいいかという問題であります。

今、ご説明頂きました点、資料2から参考資料を含めると資料2-6まであると思いますけれども、残りの時間、お気づきの点についてご質問、ご意見を頂ければと思います。

池尾先生、どうぞ。

○池尾委員

先ほど投資家保護と金融イノベーションの間のトレードオフということを申し上げて、この資料2の(2)の行為規制のところにそれと同じ趣旨の、投資家保護の徹底と金融イノベーションの促進を両立させる観点というのが出ているのですが、ちょっと違うような気がして。金融イノベーションの促進という話は、先ほど日本銀行の前原さんがおっしゃったように予見可能性を高めるという話であって、規制上の取扱いの不確実性が大きいとイノベーションに対して阻害要因になると。その種の不確実性を下げるというのが金融イノベーションとのかかわりのある論点であって、「プロ・アマ」とか「ホールセール・リーテイル」という話は、それ自体非常に重要な論点だと思いますが、申し上げたトレードオフの上で主として論じられるべき議論かというと、ちょっと違うのではないかという気がいたしました。

「プロとアマ」とか「ホールセールとリーテイル」という話は、どこまで自己責任を問い得るのかというような議論であって、その結果として過剰規制による社会的コストと過少規制による社会的コストと両側あると思うのですが、そういう過剰規制及び過少規制による社会的コストを高めないという文脈で論じられるべき議論であって、ここ殊更金融イノベーションという話を持ってくるのはちょっと趣旨が違うような気がしたので、気になりましたので発言させて頂きました。

○神田部会長

ありがとうございます。

2つの点は区別すべきですね。実質はおっしゃるとおりだと思います。表現の問題はあると思いますけれども、ここでは過剰規制も含めての意味で使われていると思います。ご指摘ありがとうございました。

それでは、上柳委員、手を挙げられましたよね。どうぞ。

○上柳委員

ほとんど同じことなのですけれども、整理として商品の設計とか金融システムについては自由化しようということで、その中でそれを消費者あるいは顧客とのインターフェースについては、どのような行為規制をするのかということだろうと思うのですね。ですので、金融イノベーションを行為規制が阻害するという関係にはないのではないかと思っています。

さらに、各論というか、資料2-4を見ていろいろ言いたいことがあるのですけれども、1つだけに絞るとすれば大事なのは適合性原則のところ、それから、一定のものについては、今回、金先法でありましたけれども、不招請の勧誘というような問題だろうと思います。ここでも勧誘の規制と一般的な義務の規制を分けて、そのことによって、先ほど課長から少しお話がありましたけれども、今、個人顧客でも勧誘を受けないで、自分で商品を探していくという動きがかなりあると思いますので、勧誘がある場合と勧誘がない場合、勧誘がなくてもその説明あるいは情報提供が必要であるというような整理によって、さらに言いますと、プロ、アマの区別をする場合のプロの範囲というのはどちらかというとヨーロッパ風に、ヨーロッパもまた変わるかもわかりませんけれども、個人は原則として、あるいは、個人はほとんどアマにとどまるというような区別ができていくのではないかと思います。

全部しゃべろうと思ったので失敗しました。また次回以降発言させてください。よろしくお願いします。

○神田部会長

次回以降またたっぷりとお願いします。

石橋委員、どうぞ。

○石橋委員

先ほど留保させて頂いた点についてお話させて頂きたいと思います。資料2の2ページのマル2の他の投資者保護を目的とする法律との関係ということの中で、次の3ページ、変額保険についてでございます。繰り返しになりますが、監督官庁も業法もない投資商品がたくさん登場する中で、制度的な基本インフラとして投資家保護のルールを整備するということについては、何人も否定するところではないと思います。したがって、その検討にあたって、別の法律によって明確な規制・整備が図られている商品とか分野について、その規制体系を変更する必要性の有無とか、あるいは、二重規制によってメリット、デメリットをどういうふうに考えていくのかというところについての検討はぜひお願いしたいと思っております。

そういう面で、変額年金保険につきましては、当然のことながら保険でございますから、業法によりまして認可制となっておりますし、資産の運用方針、運用実績、あるいは、投信の目論見書相当の書面をお客様にお渡しするということは、すべて投信と同じレベルで業法の範囲の中で私どもは対応しているつもりでございます。さらにまた、取扱者につきましては、業法が旧募集取締法も含まれている中で、変額年金商品販売の資格登録制度、これは自主ルールでございますけれども、こういう形で担い手に対しての我々の努力も行っているところでございます。

それが仮に投資サービス法制で規制されてくる場合には、変額保険でございますから、当然のことながら保険としての認可、業法としての規制は入った上での二重規制というふうになってまいります。そうしますと、二重規制になった場合に、本当に迅速な監督あるいは契約者保護に対してプラスになるだろうか。一つの事象に対してどちらの法律でカバーするのかというようなことで、ボールが落ちてしまうことはないだろうか。あるいは、意見調整に時間を弄することにならないだろうか。さらにまた、コストについてみましても、二重監督という面、これは監督する方と、それを受ける方についても、やはりコスト面、それから池尾先生が使われております「エンフォースメント」あるいは「実効性」という面から、果たして実質的な前進になっていくんだろうかということについて、ぜひ検討をお願いしたいと思っております。

海外については、前回か前々回でしたか、説明させて頂いたと思いますが、ドイツについても保険監督法の中で規制されておりますし、EU指令につきましても、投資サービス指令の適用は受けないと明記されておりまして、生命保険指令の中で規制ということで、二重規制の対象から外しております。アメリカについては、二重規制だというご報告を頂いた記憶がございますけれども、これは全く私の個人的な推測ですが、そのときの判例が1950年代の判例でございまして、これはまだアメリカで変額保険が登場したばかりということで、今説明させて頂いたような我が国における現在の法律、それから自主規制が不十分だったときの話だと認識しております。勝手な部分があるかもしれませんが、私はそういうふうに理解しております。

そうやって考えてまいりますと、繰り返しになりますが、二重規制によるデメリットを考慮しますと、保険業法をベースとして、現在と同様に必要なものについては必要なものを迅速に業法の中で適用していくということが、実質的な面でのお客様への対応につながってくるのではないかと思っております。

○神田部会長

ありがとうございました。

今の点、ちょっと誤解があるのではないかとも思うのですが。私の誤解かとも思いますけれども。保険契約とか信託契約とか、組合契約でも何でもいいのですが、その仕組み自体についてどういう法的ルールがあるのかという話と、それを使って何が行われているかは別だと思います、先ほどの私の言葉で言えば。ここでいうと、それを使って投資サービス商品の提供が行われているかという話は区別する必要があると思うのですね。

信託契約であれ、組合契約であれ、保険契約であれ、それ自体については私法上のルールもあり、また必要に応じて、とりあえず業法上のルールと呼んでおきますけれども、信託で言えば信託業法、あるいは、保険については保険業法があるわけですが、どういう仕組みであれ、保険契約であれ、信託契約であれ、組合契約であれ、それを使って、今ここで議論しようとしている投資サービス商品にあたるようなものの提供が行われた場合のルールは、「投資サービス法」の中に横断的に整理した方がいいのではないか。それとも、そのルールは、例えば保険業法とか信託業法に既に存在しているのであれば、保険業法とか信託業法に置いておいていいのか。そういう問題だと思います。

そういう問題ですので、二重規制ということはないと思うのですね。つまり、選択肢は「投資サービス法」に横断的に置くということは、保険業法から移すということを意味していますし、保険業法に残しておくべきだというご議論はもちろんあり得るとは思うのですけれども、その場合には、投資サービス商品の提供が行われているにもかかわらず、その業者ルールというのは「投資サービス法」ではなくて、保険業法に残しておく、そういう議論をすることになると思います。

私も誤解があるかもしれませんし、石橋委員もそういう趣旨でおっしゃっているとは思うのですけれども……。

○石橋委員

私もそのつもりで、言葉が足らなかったと思いますが。

○神田部会長

二重規制ということはないと思いますので……。

○石橋委員

一点だけ教えて頂きたいと思います。結論的には、私が先ほど申しましたように、保険業法という規定の中で募集取締法もカバーしているような保険業法で、これから一層充実するべきところはしていくべきではないか、ということの結論については同じです。先生に教えて頂きたいのは、変額保険が保険だという位置づけについては変わらないということになってきますと、結果的に保険業法の枠を外れて、「投資サービス法」という新しい法律ができたとした場合、その法律だけの適用ということになるのでしょうか。業法を外れるということになるのでしょうか。

○神田部会長

私も混乱しているかもしれませんけれども、例えば組合でもそうだと思うのですが、投資事業有限責任組合法という法律があって、そこで仕組みそのものについてはルール化されているわけですね。しかし、それを使って何かが行われる場合に、その何かというものがある線を超えると、「超える」という表現がいいかどうかわかりませんけれども、ある範囲に入ってくると現在の証券取引法の適用対象になるということであって、今後で言えばある範囲に入ってくれば、それを私の言葉で言えば「投資サービスの提供」ということなのですが、「投資サービス法」の下では投資商品に入る。したがって、「投資サービス法」の適用を受けると。

その場合の投資サービス業者、すなわち投資サービスを提供する業者についての業者ルールは、「投資サービス法」の中にルールが置かれる以上は、例えば有限責任組合法の中にはルールは置かれない。ただ、仕組みを規制するとの関係で最低限のルールはあると思うのですけれども、二重にはならないですね。したがって、それを保険の例で言いますと、私の理解では、保険契約という仕組みについての基本的なルールは、当然のことですけれども、保険契約法という私法、現在では商法ですね、あるいは、相互会社形態がとられた場合には保険業法の中にありまして、加えて保険業法の中で基本的な仕組みの部分についての業法というのはあるのですね。

○石橋委員

そうですね。

○神田部会長

ただ、それを使って投資商品が提供されているような場合、それは先ほどの組合契約でも信託契約でも同じだと思いますけれども、「投資サービス法」の方で例えば販売・勧誘ルールを整備すれば、そういう投資商品の販売・勧誘に関する限りは重ねて保険業法が適用になるということはないと私は思っているのです。

これは田中委員がおっしゃったことですけれども、それぞれの業法で投資家保護が図られているというのが現状で、だからこそここに列挙されているのですけれども、その内容が違っていいのかどうかということだと思うのですね。ですから、きちんとやられているということは、それぞれの業法はきちんとやられていると私は思っています、歴史を反映してそうなっているわけですから。

○石橋委員

そう信じて頂ければと思います。

○神田部会長

ですから、きちんとやられているものを横断的に、それを「投資サービス法」と我々は呼んでいるのですけれども、同じようなルールにした方がいいのではないかというのがここでの議論であって、その辺がまだすぐには見通しはたちませんが、今後もそういう観点からご意見等を頂ければありがたいと思います。

○石橋委員

私ばかり時間をとって恐縮なのですが、保険という商品になってくるときには、保険業法に基づく認可があるのではないかと。そして、今、神田先生のお話の販売勧誘と言いますか、販売場面、あるいは、その後のメンテナンスという部分について「投資サービス法」の適用になってくるというような先生の整理はよく理解したつもりですが、その場合でもその間の部分で、この分野は業法の商品の問題なんだろうか、あるいは、販売の問題だろうかというような部分も出てくるという懸念は持っております。

○神田部会長

ありがとうございます。また引き続きご検討頂ければありがたく思います。

○石橋委員

そうですね、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

奥野委員、よろしくお願いします。

○奥野委員

資産運用について規制を考えた場合、その運用資産あるいは規制の方法について、できるだけ広く考えるべきではないかと考えております。例えば、資産運用の中では主として不動産に運用するファンドもございまして、こういったファンドを考えた場合、ファンドを受託する側に規制をかける方法もありましょうが、もう1つは不動産の投資を指図する立場に規制をかけるというような方法、どちらが効率的かということも考えて、そういった観点から運用資産あるいは規制の方法について幅広く考えていくべきではないかと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

原委員、どうぞ。

○原委員

時間がありませんので、簡潔に項目だけ4つ、検討して頂きたいということを言いたいと思います。

その前に1つ、変額保険、変額個人年金保険は「投資サービス法」の範囲内での検討を、言葉ではなくて内容というところでぜひお願いしたいと思います。

4つありまして、1つは適合性の原則の徹底というところが、金融商品販売法の中では、勧誘方針の策定・公表という形式的なところに委ねられて、私としては非常に不十分だと考えておりますので、ぜひ明確に位置づけて頂きたいというのが1点目です。

2つ目は、販売・勧誘等の業務の部分ですが、インターネットなどが登場して非常に複雑になってきていて、金融オンブズネットでも金融サービス法の検討を進めている中で、ここを3類型に分けました。1つは広告、1つが非接触型勧誘ということで、これはネットなどが入ってくると思います。3つ目が人的な勧誘ということで、オンブズネットにかかわっていらっしゃる弁護士さんから提案があったということになるのですが、この3つに分けて、広告は入れて頂きたい。それから、人的勧誘のところは電話とか訪問によるものですけれども、金融先物取引法に不招請勧誘の禁止規定を盛り込みましたので、ぜひこれをきちんと位置づけて頂きたいと思っております。それが2点目です。

3点目は、前回の大森課長の発言にもありましたように、助言業務の大きさですね。これは取引に入るところ、契約に入るところと、契約に入ってからと両方あると思うのです。投資顧問業の話はもちろん入ってくると思いますけれども、たくさんのアドバイス・助言が、アナリストやファイナンシャルプランナーを通じて、また調査・分析も含めてありますので、助言についても範囲の明確化と責務の明確化をお願いしたいと思います。

4点目は、実際には参入のところを登録制にしていくことになるということが書かれているのですが、金融先物取引法でも登録制になっております。登録制一本にしてしまって、それぞれの取引のリスクの程度、それから、商品性もかなり違うので、登録制一本にしていいのかどうかということと、もし登録制一本にするとすれば、販売・勧誘とかディスクロージャーのあり方とか、セーフティネットのあり方が変わってくると思うのです。このあたりの整理も必要ではないかと思っております。

以上の4点です。

○神田部会長

ありがとうございました。

何とか一本という発想ではないと思いますので、その点だけ。これも柔構造でいきますので。

そろそろ時間なのですが、私の進行がいつもよくなくて申しわけありません、今日のうちに何かございましたら。

高橋委員、どうぞ。

○高橋(伸)委員

石橋委員からの変額年金ですけれども、この議論を一歩進めておきたいので一言申し上げたいと思います。

変額年金保険は、商品性の問題はもちろんあるのですけれども、保険会社が自社チャネルではなく売っているというところにいろいろな問題が発生してきていると思います。証券会社が売る、あるいは、銀行が売るということになるわけですが、今日のテーマである販売・勧誘ということで言いますと、大分取材したのですけれども、証券会社が生命保険会社から依頼されて募集品として変額年金を売るケース、銀行が売るケース。これがどこまで販売者責任があるのか、どの時点で保全という形で保険会社の引受になるのかというところが、消費者から見ると非常に見えにくいところがございます。

契約形態というのは、業務委託がどうなっているのかというのはなかなか見えないのですけれども、取材させて頂きました結果では、証券業者がおおむね証券を自分のところの顧客に売るわけだから、いろいろなファンドについての助言的なアドバイスはあくまでもサービスとしてやっているというケースがほとんどです。証券会社の一部には生命保険会社から、そこのところがちゃんと業務委託の中に入っている。つまり、お金をもらって顧客に対して情報提供なんかもするというところもございます。

銀行の場合は、取材が足りないかもしれませんが、ほとんどが取次ぎだけみたいな、販売の契約までの手続までを説明して、申込書を出したら、それが保険会社に届いた段階で、すべての保険会社の責任になっていくということで、情報提供その他は銀行には全然責任がないということなのですけれども、顧客の方は誤解が結構ありまして、銀行で買ったんだからいろいろ面倒見てくれるんじゃないかと思っているわけです。そこのところが、保険会社にしてみますと、説明は難しいので、証券会社だったら上手にやってくれるだろうということだったのですが、その次には投信販売に慣れてきたので、自社の投信を組み込のでいるような変額年金だったら大丈夫だろうからということで、銀行に下ろしていった経緯があると思うのです。そうしたときに、投信信託と変額年金と、そのファンドに関して銀行がどういう態度をとっていくのかということも、消費者はわかっていないということがあるんじゃないかなと思います。

ですので、一般の方は銀行から入ったんだけれども、その段階から突き放されて、情報提供も、ファンドもスイッチングできる商品が多いですが、その切り替えも全部自分が行わなければいけなくて、すべての責任が自分にあるんだということがきちんと徹底して売られていれば、それはそれでいいと思うのですけれども、実際には保険会社の方はそういうふうに、銀行に売ってくださいという依頼も出していないようでございます。ですから、かなり今後も問題が起きてくるというふうに思われます。

それから、2点目は、そのファンドの中身、何を組み入れているかということに関してきちんとした説明が行われていないと。銀行が販売した場合には、銀行のグループ会社のファンドで、運用関係からいろいろな事業が全部自分たちのグループに落ちるような形で売られている商品が結構ありますけれども、その辺も消費者は知らないまま買っていくということがございます。それから、銀行が複数の保険会社の商品を販売する場合にはそれぞれ手数料が違うわけですけれども、日本の場合は手数料の開示もされていませんから、いっぱいある保険の中からどうして変額年金保険を勧められるのかということに関しても、イギリスとかほかと比べた場合にはかなり劣っているということがあると思います。

大変なことを申し上げましたけれども、販売の現場及び購入した後の問題が、いわゆる保険としてとらえるには別次元の問題が多すぎるというふうに私は考えておりますので、ぜひこちらで検討して頂きたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

今日はもうその点のお話は打ち切らざるを得ませんけれども、今後さらに議論させて頂きたいと思います。

池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

時間をとって申しわけありません。また、何度も発言してあれですけれども、1点だけ、ルールのあり方と、ルールをエンフォースメントする体制のあり方の議論が混同されているような面があるような気がして、分けて議論した方がいいと思うのですね。保険会社が何らかの形で投資サービスを供給していれば、ルールとしては投資サービスは適用されるという話になりますよね。

しかしながら、それをエンフォースするときの体制はいろいろなバリエーションが考えられるわけで、例えば保険監督官にすべてエンフォースメントを委任するという体制はあり得るわけで、保険監督官が保険業法及び投資サービス法の規定を含めて全責任を持つような形で、保険会社という組織を監督するというエンフォースメントの体制をとるというのは十分考えられるわけですね。だから、エンフォースメントの体制の問題とルールのあり方を分けて議論しないと混乱が生じるように思うのです。

商品先物関係もそうで、ルールとして統一ルールが適用されるということと、エンフォースメントを金融庁から経済産業省ないしは農水省に全部委任する体制をとるということはあり得るわけですから、組織体制の問題とルールは明確に分けて議論して頂きたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、相当時間をオーバーしてしまいましたので、引き続きこの議論はさせて頂くということで、今日はこのあたりで打ち切らせて頂いてよろしゅうございますでしょうか。

それでは、どうもありがとうございました。

この後、記者会見を行いまして、本日の当部会の模様について私からお話をさせて頂きます。

最後に、事務局からご連絡があると思いますが、その前にちょっと一言。

委員の皆様方、私も含めて、金融審議会というのは1月に発足して、委員の任期は2年ということのようでございます。そういうことで申しますと、現メンバーでの第一部会は本日をもって一応の区切りということになるようであります。2年前の平成15年1月に皆様方とともにこの議論をさせて頂いてから16回の第一部会を開かせて頂きました。通し番号でいいますと第9回から24回になります。この16回の第一部会、非常に頻度は多かったと思いますけれども、大変精力的にご議論を頂きましたことを、私から厚く御礼申し上げます。

また、ワーキングも多数開いて頂きまして、ワーキングにもご参加頂きました委員の方々には、短期間で集中的かつ非常に質の高いご議論をして頂きましたことにつきまして、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

委員の皆様方、部会及びワーキングの両方を含めまして、どうもありがとうございました。

それでは、事務局からのご連絡をお願いします。

○大森市場課長

今、部会長がおっしゃったことはあくまでも形式的な区切りの問題でございまして(笑)、実質的にはこの体制で続いていくということで、次回は2月8日(火)の午前10時からまた2時間ということでよろしくお願いいたします。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでこれで散会いたします。

午後12時08分閉会

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