金融審議会金融分科会第一部会(第26回)議事録

平成17年3月3日

金融庁 総務企画局

午前10時01分開会

○神田部会長

それでは、予定の時間になりましたので始めさせて頂きます。

本日は金融審議会金融分科会第一部会の第26回目の会合になります。ただいまから開催いたします。

皆様方には、いつもご多忙のところをお集まり頂きましてありがとうございます。

会議に先立ちしまして、いつものことではございますが、本日の会議も公開とさせて頂いておりますので、この点をまずご了解頂ければと思います。

本日はまず、証券取引法の見直しについてということで、現在の通常国会への提出を目指しております法律案の検討状況について説明をして頂きます。

その後、前回、資料はお配りさせて頂いたのですけれども、時間の関係で議論に入りませんでした集団投資スキーム(ファンド)についてということで議論をお願いしたいと思います。また、前回の議論を踏まえまして、事務局のほうで「規制内容について(3)」というバージョンアップ版のメモを作成して頂いておりますけれども、多分今日は時間がないと思いますので、申し訳ありませんけれども次回以降に必要があればご議論をお願いするということにおそらくなると思います。

それでは、早速ですけれども、お手元の議事次第に従いまして、まず事務局から証券取引法の見直しについての説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○池田参事官

それでは、お手元に資料1をお配りしております。この資料に沿いまして、今通常国会に金融庁が現在提出を目指してまして検討、最終的な詰めの作業を行っております改正案の中に盛り込もうとしておりますポイントについてご説明をさせて頂きたいと思います。

表紙をおめくり頂きますと、まず1ページ目は総括的に並べてございます。今回の証券取引法の改正においては、3つの事項について改正案に盛り込むことを現在検討しているところでございます。

1番目は公開買付規制、TOB規制の適用範囲の見直しということでございます。この点につきましては、2月初旬にいわゆるニッポン放送株の取得に関しての動きがあります中で、東京証券取引所のToSTNet-1、いわゆる立会外取引における株の大量の取得が行われたということについて、公開買付規制の適用が現行法上適用できないのではないかという、そういう議論の中で株主に平等の売却の機会を与えるという観点から公開買付規制の対象としていくことを検討する必要がないかという問題意識でございます。

それから、2番目は12月に取りまとめを頂きました第一部会の報告の中でも触れられていた事項でございますけれども、子会社が上場会社であって、親会社が非開示会社であるという場合に、親会社に対する情報開示の義務付けを行っていく必要があるのではないかという点についての対応でございます。

3番目は、昨年夏の第一部会の報告の中でご指摘を頂いていた点でございますけれども、外国会社等の英文による企業情報の開示につきまして、法律上の手当てを行おうというものでございます。

それぞれにつきまして2ページ目以下、それぞれご説明をしておりますので、そちらに沿いましてご説明をさせて頂きたいと思います。

まず、公開買付、TOB規制の適用範囲の見直しでございます。ご案内のとおり、現在の公開買付制度ではこの証券取引法の規定によりますと、上場会社の株券等につき、取引所市場外で一定の買付、例えば買付後の所有割合が3分の1、33%を超えるといったなどの場合には買付者に買付価格等をあらかじめ提示することを義務づけ、株主に平等に売却の機会を与えるという制度が作られているところでございます。

この証券取引法の規定では、アンダーラインをしたところでございますが、取引所市場外でということが要件とされているところでございます。

現在の取引所市場内外での取引の状況を簡単に整理したものが下の表でございますが、大きく取引所市場内取引と取引所市場外取引と大別できるかと思いますが、取引所市場内取引の中でいわゆる立会時間に行われる立会取引と、それ以外に立会外、立会時間外で行われる取引というものが存在をしているところでございます。

そして、今回のニッポン放送株の取得について使われましたこのToSTNet-1の東証の取引の仕組みで申しますと、立会時間の始まる前、朝40分、それから昼休み、それから後場が終わりました後の1時間半という時間を限って、こちらのほうで委託を受けた証券会社間でネットワーク上で相対交渉による取引が可能なシステムが作られているということでございます。

そして、法律の立て付けからしますと、公開買付規制の適用というのは現行、先ほど申しましたように取引所市場外で行われる場合が公開買付の規制の適用になっているわけですが、立会外取引で行われた場合には基本的に取引所市場内取引だということでありますので、公開買付規制の対象と考えていくのは難しい面がある。

これは違反した場合には罰則等の適用が証券取引法の効果としては考えられているわけですけれども、こういったものを証券取引法上、取引所市場外取引と明記されているものについて罰則の適用を行っていくのはなかなか難しいのではないかと考えているところでございます。

こういった状況に鑑みまして、私ども検討しておりますところでは、立会外取引のうち相対取引に類似する取引については、買付後の株券等の保有割合が3分の1を超える場合には公開買付の規制を適用していくことが適当ではないかと考えているところでございます。

次に3ページをご覧頂きますと、上場会社の親会社に対する情報開示の義務付けの点でございます。ここはもう報告を頂いたところなので繰り返しになりますけれども、子会社が上場会社であって、親会社が上場していないということで開示が行われていない場合に、親会社自身の情報は投資家に必ずしも十分に提供されていないのではないか。下の絵にございますように、上場会社に対して非開示である親会社の支配がある場合に、投資家が上場会社である子会社の状況を正確に把握して、投資判断をしていく場合に、この親会社の情報についても重要性があるのではないかということで、こういったことを踏まえましてこういった場合に親会社自身の情報の開示を義務づけるということで、具体的に考えておりますのは、親会社の範囲として上場会社の議決権の過半数を直接または間接に保有している会社については、ここに掲げてありますようなその親会社自身の株主の状況や役員の状況、あるいは商法に基づく計算書類等の開示を義務づけていく方向で考えているところでございます。

それから、もう1枚おめくり頂きまして、4ページになりますけれども、外国会社等の英文による企業情報の開示でございます。こちらも報告書で詳細な報告を頂いておりますので、あえて詳細をご説明することは避けさせて頂こうと思いますけれども、わが国証券市場の国際競争力を高めていくという問題意識の中で投資判断に必要な情報開示を確保しつつ、可能な限り上場関係コストの負担を軽減していく方策が考えられないかということで検討頂いてきたものでございます。

下の改正案にありますように、外国会社等が本国等において適切な開示基準に基づいて英語による開示を行っているという場合には、日本語による要約その他の報告書で書かれております補足資料を添付すること等を条件に英語による有価証券報告書の提出を認めようという関係の法改正を行いたいと考えております。以上が今回の証取法に盛り込むべく、現在検討を進めている事項でございます。

前回の第一部会の折に証取法の検討の状況について、やはりご報告をしまして、その際に特に継続開示義務違反に対する課徴金制度の導入についての検討状況について、まず詳細をご説明させて頂きました。その際、各委員の方々から叱咤激励の声を頂いたことを記憶しておりますけれども、その後の状況としまして、正直申し上げて大きく状況が変化しているという状況にはないと申し上げざるを得ない状況でございます。政府が提出いたします法案の提出期限というのが決められておりますけれども、そういう法案の提出期限等の時間的な制約を考えたときに、現状では継続開示違反に対する課徴金制度の導入について法案に盛り込むことは時間的に大変厳しい状況になっているということを申し添えさせて頂きたいと思います。検討状況は以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。それでは、今頂きましたご説明につきましてご質問、ご意見をどなたからでもお出し頂ければと思います。いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。

吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

公開買付規制の件でございますけれども、証券市場を運営管理している立場から一言申し添えさせて頂きたいと思います。

このような規制を行うということ、グレーゾーンのところを明確にするという方向については、何ら反対するものではございません。ただ、実態的に投資家層の機関家現象、例えば投資信託であるとか、年金の運用であるとか、そういう場面でこの立会外取引が結構使われている機会が多うございまして、今ボリュームで私どもの取引の約1割を占めるような形でございます。

したがいまして、一律的な規制を行うという話になりますと、いろいろとそういう部分で障害になってくるということであります。この制度は、ニューヨーク証券取引所で行われているクロッシングセッションに類似して作られた制度でございまして、投資家層の機関家現象に伴った、証券取引を機動的に行うような体制を作ろうという理由でできた制度でございます。例えばの話でございますが、一時的な保有ですぐに解消されてしまうような場合、例えばこのところよく起きました年金の代行返上で、そのために一時的に証券会社が保有して、それをまたすぐ売却をするという事例も多く見られました。こういった面であるとか、もうすでに規制の対象外になっています自己株の取得、事前公表に基づく、ToSTNet-2で行われていますが、そういった部分については規制の対象外にされるよう、実務の点から今の実態面から見ますと、そういう必要性があるということを要望しておきたいと思います。以上でございます。

○神田部会長

ほかにいかがでしょうか。

木村委員。

○木村委員

私のほうから極めて素人的な発言になるかもしれませんけれども、証券市場の取引が公正なルールに基づいて市場に参加する一般の人の投資家が不測の損害を被らないような仕組みになっているかどうかということをチェックしていくことが非常に重要だと思います。これも私、全然わからないで言っているのですが、今回、大変すばやい対応をされているわけですが、特にこの公開買付規制の適用の見直しでございますが、今回のこの規制強化だけでいいのかどうか。ほかにも同じような話がないのかどうか。もしあるとすれば後追いの弥縫的な策になってはいけないということでありまして、総合的に見直しをする必要があるのではないかなと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。重要なご指摘です。

岩原委員、どうぞ。

○岩原委員

最初に、先ほど池田参事官からお話のございました継続開示に関する課徴金の問題は極めて遺憾でございまして、今回の法案提出に間にあわないとしても、ぜひ引き続き努力を頂いて、何らかの形で実現するようにして頂きたいことを強く申し上げたいと思います。

第2点が、今、吉野委員、それから木村委員からご指摘のあった公開買付制度にかかる問題ですが、両委員のご指摘は非常に重要な論点を含んでいると思います。公開買付制度については一昨年末、羽藤参事官がこの問題を取り扱われていたときに、当第一部会の下のディスクロージャーワーキンググループでそもそも強制的公開買付制度はいかにあるべきかということの検討を行いました。これは企業買収に関する基本的なアプローチの仕方からいろいろ考え方が分かれているところで、黒沼委員からそもそも強制的公開買付制度を廃止すべきだというご提案があり、ディスクロージャーワーキンググループで検討をしたところであります。

その結果、当面この制度をそういうふうに根本的に変えることは適切でないということで、3分の1を越える場合の強制的公開買付制度が存続したという経緯がございます。そのときもその時点でそういった根本的な問題、企業買収との関係でこういった制度をどう考えるかということについて、根本的な結論を出すのが困難であるということで、制度を存続したということでありますので、ただいま木村委員がご指摘のあったように、この制度の根本のところについて、本当にこれから時間をかけて考える必要がある。企業買収について、本当に今真剣に考える必要がある時期に来ておりますので、ぜひそういうことをお願いしたい。まず根本論として申し上げたいと思います。

その上で現在のように強制公開買付制度を存続している、この制度を前提にして考えますと、この制度の趣旨はいわば3分の1を超える、それによっていわば企業の支配権が移動するような大規模な株式の解決が行われる場合においては、それは株主の利益に非常に大きな影響がある。したがってそういうときにはたとえ相対取引で行われるとき、手法としても事前に公表をされたうえで公開買付の形をとることによって、一般株主にもその売買に参加できる機会を与えるということで、この強制公開買付の制度ができているわけであります。

そういう制度を前提にしますと、今回問題になったToSTNet-1の場合ですと、株式市場においてそういう時間外取引で値幅制限だけが事実上あるような取引になっているわけでありますから、今申し上げた強制公開買付制度の趣旨から考えますと、一般株主に事前にそれがディスクローズされるわけでもありませんし、それから一般株主が実際にその取引に参加できる可能性もまずないわけでありますから、そういうことから申しますと、少なくとも強制公開買付制度の趣旨に反する取引であったということは否定できないと思います。

それを違法で無効と解するかどうか、これは従来の解釈との関係で議論があるかもしれませんが、少なくとも制度の趣旨には反する。

したがって、そういったものを強制公開買付制度を存続させる以上は、そういった取引が対象になるというか、そういった取引については強制公開買付制度を適用するということを少なくともこれから立法によって明確化することは適切であると私は考えます。

そういう証券取引法27条の2のこの趣旨から考えますと、自己株取得のための公開買付の場合も同じようにToSTNet-1のような形の取引については強制公開買付制度の対象にするというふうにするのが筋ではないか。

なぜかと申しますと、自己株取得のための公開買付の場合であっても、結果的に企業支配に大きな影響を与えますし、株主の利害を考えますと、そういったディスクロージャー等がなされることが適切だと考えられるからであります。

そういう趣旨からさらに考えますと、先ほど吉野委員がおっしゃいましたToSTNet-2、これは確かにToSTNet-1と比較しますと事前に公表がなされ、そして時間優先の原則が働くということで問題が少ないと認識しております。しかし、実際上どれだけ株主が売買に参加できるかという観点を考えてみると問題がないわけではないと思っています。

ただ、その背後にある大きい問題として吉野委員がおっしゃいましたように機関家現象が進んでいる中で、ここでいう取引所市場というものをどういうふうに考えていったらいいのかというものは非常に大きい問題であって、先ほどTOBについて強制公開買付制度について考え直すとともに、取引所取引というものについても本当は考え直す必要があって、取引所がこういったものを時間外取引としてどう位置づけ、どういうふうなルールのもとに運営していくかということについては、今後ぜひ検討がなされるべきであると考える次第であります。

以上でございます。

○神田部会長

ありがとうございました。それでは高橋委員、どうぞ。

○高橋委員

今の岩原先生のご意見のうちの、まず最初の課徴金についてのコメント、私は大賛成でありまして、ぜひ引き続きご検討頂きたいと思います。

それから、TOBの制度あるいは立会外取引所取引について全面的に見直しが必要ではないか、検討が必要ではないかというご指摘についても基本的にそのとおりだと思います。

何よりも大事なことは、やはり市場がルールに従って透明に行われている。公正に行われているということだと思います。それによって投資家が安心して市場に入ってきてくれる。そういうことから考えますと、今問題になっているToSTNet-1を使ってTOB、支配株取得をしたということが、今ご指摘がありましたように一般投資家、一般株主に参加の機会を与えていないという点はそのとおりだと思います。

それに加えましてルールの公正さということから考えますと、こういう支配株を取得するような取引というのがTOBという一定のルールに従って行われるべきだというふうに証取法はなっているわけでありまして、例えばその期間中はTOBをかけている人はそれ以外の買付はできない、取引所内であってもできないという仕組みで、TOBをかけた人はその公開した価格で買い付けるということを義務づけているわけです。

ところが、本件のように本来テイクオーバー、支配株を取得するためにするという取引がこの手続きをされていないということでありまして、そのルールに従わないで価格も自由に買入れができているというようなことが、果たして公正さということからどうだろうか。たまたま本件の場合は別のTOBがかかっていたといたしますと、そちらのTOBはルールに従ってほかの買入れはできないという状況になっているわけでありますから、ルールの公正さということからもこの点は疑問があるのではないかと思います。

そういうことを考えますと、ご提案されたような趣旨で、もしこれが岩原先生のご指摘にもございましたけれども、違法でないのだということであれば法律を改正して対応しようということは適切な処理だと思います。

ただ、その場合に吉野委員からも指摘がありましたように、この使われ方が支配株の取得でないのだというような場合でありますとか、その実態に応じてよく整理をして、規制をかけていく必要があるのではないかと思います。

そういうふうに考えますと、3分の1を超える場合の取得ということで提案されていると思いますが、TOBは3分の1を超える場合だけでなく、5%を超える場合でも10人以上からの買入れがある場合はTOBのルールに従わなければいけないということになっているわけです。それも改正するということを視野においておられるのかどうか。これは質問ですが、TOBのルールの中には3分の1というのもありますが、5%というのも人数によってはあるわけでありまして、それをどう扱うのかということもあると思います。

5%の場合でも対象にするのだということであれば、さっき吉野委員が言われた一時的に持っているということがもっと頻繁に起こるのですね。証券会社が、会社が自社株を売却するようなケースにいったん取得をして、それで市場の動向を見て売っていくということがあります。そうしますと、証券会社はディーリングをやっておりますので、自己で買い付けをするというのはほかにもたくさんケースが出てきて、10人というのはすぐ超えると思います。例えばそういうケースはどうかということもご検討頂く必要があるのではないかと思います。

それから、ToSTNet-2についてですが、これは今、岩原先生からもお話がありましたように、むしろ終値取引で時間優先で、だれでも参加できる形でやっているというので、そうするとToSTNet-1とは少し違う形かなと思います。

ただ、ToSTNet-2でも、一般的には時間優先ですが、一つの証券会社が売りと買いと同じ注文が入っているときには、自店優先というのでしょうか、当該証券会社の売りと買いをまず突合するということを優先するということを伺っています。そうだとしますと、クロス取引と呼んでいるようですが、そういう部分はToSTNet-2でありましても時間優先でオープンにされているものとはまた違うのかなと思います。いずれにしても、ややきめ細かく見て頂く必要があるのではないかと思います。

最後に申し上げたかったのは木村委員もご指摘の点でありますが、これはTOBだけではないのですが、いろいろ自由化が進んでいる、あるいは、情報通信の技術が進んでいるということで、いろいろな手法、いろいろな商品というものが出てくるし、そういう中で証取法あるいは証券取引関係の一般的な規則を何らかの形で不正あるいは適切でないような手段で回避するというようなことが、いろいろな場面で出てくることがあるだろうと思うのですね。これは決してTOBだけの問題でないように思います。

さっきの木村委員のご指摘はそういうことをよく考えて法改正をすべきだということで、そのとおりだと思うのですが、今、全知全能を尽くして考えてみても、全部そういうものに対応できるとは思えない。そうなりますと、今後起こってくるケースがまた後追いになってしまう。後追いになると、すでに発生した分については及ばないわけですから、そこで投資家保護の問題あるいは株主平等の問題、あるいは適切な価格形成ということが歪んでしまうということがあろうかと思いますし、また一般には、今回の場合もそうだったと思うのですが、普通は今回のケースも違法だと思ってやらなかったという人が多かったと思います。また、証券会社も、あるいは取引所もそうだったと思いますが、そういうことは法律に問題があるのだということでやらせなかった、やらないように指導していたということがあるだろうと思います。その人たちにとっては非常に不平等な扱いということになってしまいます。

ですから、そういう法律の趣旨が不正な、あるいは著しく適切でないような手段で回避されたような場合に、法律改正でなく、例えば金融庁に一定のパネルを作っておくとか、恣意的な判断はもちろんいけないわけですが、公正な判断ができる場を作っておいて、タイムリーに判断をしていく、判断できるような余地が証取法全体の中で一般的なルールとして作っていく必要があるのかなというふうに思います。

もちろん予見可能性といいますか、そういうものが大事だということが基本で、法律で全部書いてあれば、それは一番いいわけですが、法律に書かれていないグレーな部分とさっきお話がありましたが、グレーな、あるいはそれが黒っぽいグレーであるようなときに、法律を改正しなければ対応できないというような状況にしておいていいのだろうかというような気がいたします。以上でございます。

○神田部会長

ありがとうございました。公開買付制度は非常に難しい分野ですが、非常に難しいコメントを頂きまして、ありがとうございました。ご質問の部分があったかと思いますが……。

○池田参事官

ただいまの高橋委員、あるいはその前の岩原委員のほうからご指摘があったところでありますが、まずこの第一部会の親会で投資サービス法の問題を取り組んでいて、さらにディスクロージャー部会ではいろいろなテーマを取り上げておりますけれども、その中の一つの大きい柱としてそういう投資サービス法との接合ということについても意識をしながら現在の開示制度の再編をしていこうという、大変大きい課題を取り上げ、すでに夏から着手をしてきているわけですが、そういった中で公開買付制度その他の開示制度についても、根本的な検討をしていかなければいけない問題意識がすでにディスクロージャー部会としても夏以来、問題意識を持って取り組んできているということであります。そういった努力は続けていくということがそもそもの大前提だと思います。

その上で今回の証券取引法の見直しの中でどういう具体的な手当てをとるかということがございますが、そのときには吉野委員、あるいは今、高橋委員のほうからありましたように、立会外取引自体はいわゆる証券ビッグバンの流れの中でクロッシングセッション等を強く意識をしながらこういった制度を作ってきた。その背景には機関投資家のいろいろな取引執行ニーズにいかに取引所が機能を的確に果たしていくかという問題意識の中でやってきたものがあります。そういったものを殺してしまうということは、大変大きい流れの中ではいけないことだろうと思いますので、そういう意味ではきめ細かい対応をしなければいけないというのはご指摘のとおりだと思います。そうしたものが可能な法的枠組みをできるだけ作っていきたいと考えております。

そのときにご質問のあった、今日の紙でも3分の1ということで書いてございますが、5%を超える多数からのものをどう取り扱うかという問題ですが、基本的には3分の1を超えるという水準の買い付けについて、そういう意味では著しく少数という部分の現在ルールがかかっている部分のところを手当てをすることを基本的に考えております。5%を超える部分でいいますと、高橋委員からご指摘のあったように証券会社のほうがいろいろなディーリング玉の処理等で使っている、通常の取引の中にもかなり網にかかってきてしまうものが出てくるという現状はあろうかと思います。

それから、岩原先生のほうから自社株取得のことも筋としては対象とすべきではないかというご指摘でありまして、その制度の整合性、全体の議論の中でどう考えていくかということはあろうかと思いますが、ご案内のように自己株取得の世界にこの33%ルールというのは、現状そういうルールはなくて、むしろ1株からでも自社株取得の場合、TOBという議論になり得るわけですが、自社株取得についてはToSTNet-1を使う、これはインサイダー取引との兼ね合い等もあって、ToSTNet-1というよりはToSTNet-2を使って、かつ事前にある程度そういう買付をするということを公表しながらToSTNet-2で時間優先を使って、そのルールの中でやっていくという形が基本になっていると理解しております。

自己株取得のためのマーケットというのも立会外取引がそもそも存在した大きな理由でありますので、今回の改正では基本的には自社以外の買付による場合のこの33%のところを手当てすることを基本的に考えていきたいと考えております。

ただ、先ほど来ありましたけれども、きめ細かくいろいろ規定できるような法的枠組みにできるだけしたいと考えますし、同時にまさに取引所の取引ルールを細かく見ていかなければならないわけで、取引所のルールのほうが固定的なものだとも必ずしも思っていないので、今回の実態等も踏まえながら各取引の公平性、公正性、あるいは透明性、明瞭性、そういったものの中で岩原先生からもあったところですが、取引制度自体を現状のままでいいのか、何らか改良していく部分があるのか、その辺はよく取引所のお考えも伺いながら、そういう中であるべき制度を法的にカバーするものはカバーしていくという姿勢で取り組んでいきたいと考えております。

○神田部会長

ありがとうございます。

池尾委員。

○池尾委員

1つ質問したいのですが、ただ1番目のTOB規制の話ではなくて、2番目以降の話なのですが、特に2番目の上場会社の親会社に対する情報開示の義務付けという話で、若干3とも関係するのですが、コクドとか西武のような企業形態というのは国内では珍しいものかもしれませんが、東アジアではむしろ一般的な企業形態という感じで、韓国のチェボル、財閥もそうですし、中国の企業なんかも一番上は国有会社であって、その下に株式会社があるという形態が一般的なわけですね。それで東京証券取引所に上場している外国企業の数が一貫して減少してきている中で、最近久々に新たに上場する外国会社が出たということで、記憶違いをしていたら後で吉野委員の訂正して頂きたいのですが、中国企業で親会社は新華社通信か何かだったと思うのです。そういう場合、親会社に関する情報開示の義務づけというときに、実際上どうなるのでしょうかという、新華社通信の内容を開示させるということになるのでしょうかという。

ただ、いつまでもというか、ドメスティックなマーケットという話ではなくて、グローバル化していくことを積極的に言っているわけですから、そうすると特に東アジアに位置しているということを考えると、この2番目のケースは非常に国際的に見ると難しい問題になるような可能性も含んでいるように思うので、そのあたりはいかがかなという質問です。

○池田参事官

まず、この開示の義務づけを考えていく前提として、ディスクロージャーワーキング、さらにこの第一部会でも議論があったかと思いますが、この問題には対応していかなければいけないという前提の下で、ではどういう手法でやっていくかということを考えたときに、幾つかの選択肢がこの報告書の中にも書かれていたと思いますが、取引所のルールとか、あるいは開示で実際に親会社の協力がなくて開示ができない場合にはその理由を書かせるとか、そういうソフトなやり方から取引所ルールでやる、さらに法律という議論があって、ワーキングあるいは部会では取引所ルールで対応するとしても、例えば虚偽があったようなときに親会社が虚偽の情報を出していた場合に対応のしようがないのではないか。したがって、究極的には法律の手当てがいる部分があるのではないかというご指摘であったと思います。

いずれにしても今回の制度を作るときに、法律が思いつきのように制度を作るというのは適切でないと思っていまして、基本的ベースは各取引所においてすでにこういう親会社情報の開示ということは取引所ルールの中で手当てがされてきている。そういう制度があることをベースに法律で例えば虚偽があったときに対応するということも念頭において制度を組み立てているというふうに基本的には考えておりますので、取引所のルールも内外の差を設けてという基本的な考え方ではできていない。そういう中で親会社情報も一定の開示を要請する形になっていると理解しております。

あと新華社通信の個別のことは具体的な内容は、必要があれば吉野委員のほうからと思いますが、例えば親会社が国ですとかソブリンの会社ですとか、最終的には国の信用が拠り所にある場合、開示制度でもソブリンの場合には別の枠組みになっているところがありますので、例えばソブリンが親会社であるという場合は、そこに一般会社と同等の開示を求めるというようなことは考えにくいのかなと思っておりますけれども、財閥というところを切り分けるというのはなかなか難しいのかなと思いますが、その辺は会社の信用という意味で差があるならば考える余地はあるかもしれませんけれども、そこは基本的には内外でルールを分けるということは適切ではないのかなというふうに思いますが、例えばソブリンということであれば、そこは開示制度上も違う扱いがあり得るのではないかと考えております。

○吉野委員

池尾先生がおっしゃったとおりでございまして、実は新華ファイナンスという会社が上場されたのですが、これは今までの私どもの上場会社という外国会社はほとんど本国の市場に上場しているということでございましたので、ディスクロージャーの点であまり問題になるようなことがなかったのです。つまり、同じように他の取引所で、親会社の情報開示についての規制がありますので、そういった点ではあまり問題がなかったのですが、新華ファイナンスの場合はおっしゃるとおり東証上場が初めての上場ということで、まさに単独上場ということがございまして、親会社が新華社という国営企業であったということで、これをどういう形で適応できるかは、現実問題、非常に難しい問題がございまして、当然、国と国のやりとりになる可能性もあるのですが、どのような開示ができるかということは、私どもは今、規則を制定した後、対応方について具体的なことを詰めているところであると記憶しております。

○池田参事官

ソブリンのような扱いの、今、国営企業というお話でしたので、ソブリンに当たるようなケースであれば、そこは必ずしも問題は、開示制度上出てこない可能性はあろうかと思います。

○池尾委員

私はエクイティに関しては親会社が国だから別扱いにできるというロジックは全く理解できないです。子会社の少数株主と親会社の支配株主の間の利益相反の問題は、親会社が国だったら解消されるというふうには全く思っていないので、私の意見はそうだということです。

○神田部会長

ありがとうございます。どうぞ、島崎委員。

○島崎委員

公開買付の関係、発行体のほうから意見というか申し上げたいのですが、先ほど来いろいろ出てきている意見、それから今回のこの見直しについては私はこのとおりで賛成なのですが、企業、会社の立場からすると今一番関心があるのは、今現在例えば我々の会社の株主さんというのはどんな方がなっているのだろうというのが非常に関心があって、どういう移動があるのかということも把握したいというのが強いわけですが、現状なかなか把握ができない。

ですから、日々の例えば当社の株式の売買についてどういう人が買って、どういう人が売っているのか。そういうような確認ができないわけですが、期末になって明確化した株主名簿がきて、こんなことになっているのかということで、企業として対応を考えていた場合に若干トゥーレートかな。

そうすると、期中で先ほどおっしゃった3分の1で支配を意図として保有する人は公開買付。しかし、5%ルールがあって、それで分かるじゃないかということですが、それについても一般の事業会社の場合には5日ですか。あとその他の金融機関、機関投資家については1か月後とか、あるいはまとめてということになる。そういうところにいろいろなものが入っているのではないかということ。

実はずっと株主の構成を見ていると、これは日本全体もそうでしょうが、ずっと企業間で持ち合っている株というのが比率が減ってきて、その部分が外人の株主の比率が増えてきている。そういう中でほとんど個人の株主が増えていない。この辺のところがここの部会のテーマでもあるのでしょうが、というような傾向がある。

ですから、企業経営者としては相当緊張感が高まってきている中で、今回こういうことが起こっているということで、こういう手当ては非常にタイムリーで適切だと思いますが、それではこれをやっただけでどうなのかということであって、そういう株主の動きがもうちょっとタイムリーに把握できるような仕組み、また電子化するとかいろいろなことがあるのだろうと思いますが、そういうことも検討して頂く必要があるのかなという感じでいるわけです。

ただ、5%ルールでどんどん何でもタイムリーに出せということになると、先ほどおっしゃったように機関投資家などの売買とかそういうものまでそういうことで報告しなければいけないとなると、相当事務の負担もかけるということになりますから、そういうことも検討しなければいけないかと思いますが、現状ではレーティストの株主さんの構成はどうなっているのかということは、なかなか企業では把握しづらい状況になっているということを申し上げたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございます。また、いろいろ難しい論点が出てきましたが……。田中委員。

○田中委員

先ほどからの公開買付の点について一言申し上げます。

3分の1を超えた者に対して公開買付の規制を適用することに賛成です。先ほど5%のところの話が出ましたので、一言証券会社の立場から申し上げたいと思います。

5%超、10人以上、60日間、これがもし適用になることになると、先ほど島崎委員から実務が大変だという発言があったのですが、大変だというよりは、そうなると円滑な機関投資家の投資行動が著しく阻害されてしまうことになると思います。したがいまして、この5%の部分に関しては、これは適用の対象とは、もともとの原案には入っていないわけですが、それでやって頂きたいと思います。以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

淵田委員。

○淵田委員

事務局のTOBの適用範囲の見直しの表を見ながらの感想ですが、そもそももう立会所もないのに立会取引とか、あるいは夜間取引をやらせろという議論が高い中で時間内とか時間外という発想があったり、こういうこと1つとってもやはり制度が現実の変化に追いついていない面があると言わざるを得ません。金融審としてもできるだけ後追いにならないように議論を進めていかなくてはいけない、投資サービス法に限らずもぐらたたきは避けなければいけないという感想を持っております。

その場合、先ほどから根本的な議論の必要性ということを何人かの委員の方がおっしゃっていますが、やはりどういう政策を手段をとるかというのは、政策目的に依存するわけでありまして、政策目的の議論を深めなくてはいけないと思います。とりわけこのTOB規制に関しましては、そもそもの目的論のところからかなりの意見の相違が専門家の間でもあるやに聞いております。現行制度を前提とすれば、今回の措置というのは、当然のことではないかと思いますが、現行制度のあり方についての根本の議論も深めていく必要性は強調されねばならないと思います。

その上でやや具体的に感想めいたことでありますが、今後、そうした議論の中でクリアにしていかなければいけないと思いますことを幾つか挙げますと、1つは立会中での、時間内でのクロス取引というのをどう考えるか。

それから、この表で取引所市場外取引イコール相対で、だから強制的公開買付制度が適用だとありますが、例えばオークション取引のPTSが存在したとして、ここが使われた場合はどうなのか。

あるいは、海外で上場されている株について、海外の取引所の取引時間内に、日本は閉まっているときにこうした取引がなされた場合にどう考えるのか。今の枠組みでも当然答えが出ている部分もあるかと思いますが、根本的な議論をする場合、例えばでありますがそうしたこともぜひ明確にしていかなければならないのではないかと思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

岩原委員、お願いします。

○岩原委員

先ほど私が申し上げた自己株式取得についての池田参事官からのお話について、一言だけ申し上げますが、現在でも自己株取得についてはToSTNet-1は使われていなくて、ToSTNet-2でいっているのだということであれば、ToSTNet-1のような取引について自己株を3分の1以上取得するときには、強制的公開買付の対象にするということは、私はあってもいいのではないかというように少なくとも思っております。それだけ申し上げます。

○神田部会長

ありがとうございました。自己株の場合、私もよく考えていないのですが、支配権の取得にはならないですよね、議決権がないわけですから。ですから、考え方としては普通の場合は例えばAという人が3分の1超の取得する場合は取得するわけで、売るほうは多数の場合もあれば1人の場合もあると思いますが、そういう意味で支配権の移動があるわけですが、自己株取得の場合には取得したほうは支配権は取得しませんので、売る株主や他の株主が影響を受けるという意味で移動があるということはおっしゃるとおりなので、ちょっと類型が違う面もあるわけですね。

○岩原委員

それはそのとおりで、類型が違うのは部会長ご指摘のとおりでありますが、それによって事実上、一種の企業買収の行方を決めるようなことにもなり得るわけでありますし、株主にとっての利害としては類似した面があるのではないか。非常に重大な取引であるという点では共通しておりますので、それに参加します可能性を株主に保証するという意味では、共通した問題になるのではないかということであります。

○神田部会長

ありがとうございます。

原委員。

○原委員

今日勉強させて頂こうという感じで、ご意見を聞かせて頂いておりました。私自身、ディスクロージャーのワーキングに所属しておりまして、岩原先生とか黒沼先生もご一緒にこの2、3年の議論というのに参加していて思うことなのですけれども、皆様から意見が出ているように、ディスクロージャーのワーキングでも検討する課題が大変多くて、その時々のテーマを一生懸命検討して、こちらに挙げてきているという状況があって、やはり全体的な枠組みというところをきちんと第一部会で検討して、ワーキングのほうで再度検討を尽くしていくというスタイルがいいのではないかと思っております。

今回のことについては大変大きく報道されて、関心を持っている人たちにとってはかなりいろいろな情報が流れてきていて、問題点というところも少しずつ明らかになっていると思うのですが、個人株主とか一般の投資家、消費者という観点からすると、やはり基本は徹底した開示をして頂きたい、というところに置いて頂きたいということ。

それからもう一つはサンクションというのでしょうか、制裁についての規定の明確化も必要だと思っていて、今回は継続開示の虚偽記載については課徴金の導入が見送られるということで、算定根拠が明確でないということが理由にされているようですけれども、私自身は金融庁が出されたあの論拠のペーパーにプラスして、虚偽記載をすることで多くのお客というか投資家を得ているということでの利益は当然あると思っておりまして、ここはぜひ部会に挙げて頂きたいと思いますし、これからの検討を進めるに当たってはこの開示を原則ということと、制裁についての明確化ということを基本において組み立てて行きたいと思っております。

○神田部会長

ありがとうございました。佐々木委員、どうぞ。

○佐々木委員

TOBに関してですけれども、私はこれに賛成だということだけ申し上げたいと思います。そもそも法律というのは、一番上に憲法があって、みんながフェアで、公平に正しく生活をしたり、経済活動をするというルールの原則があると思うのですが、今回は時間外というところに関してTOBの穴がある意味ではあいていた。思いがけないことが起きたということから見直しに入っていると思います。ですから、3分の1を超える場合にという条件がついて、この改正案に関しては賛成の意見というふうに述べさせて頂きます。

○神田部会長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。かなり本質的な問題から技術的な問題、細かい問題までご指摘頂きましたが。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

今後の検討課題の1つとして岩原委員から自己株式の取得の問題が出ましたけれども、さらにもう1つ付け加えますと、新株発行による支配権の移転がある場合にどう対応するかということも併せて検討すべきではないかと考えております。それだけ付け加えさせて頂きます。

○神田部会長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。なかなか難しい宿題をいっぱい頂きましたけれども、またワーキングのほうでやって頂くように、宿題を提起した方にお願いしたいところではあるのですが。(笑)あまりワーキングばかりにご負担ばかりかけても申し訳ありませんし……。

公開買付という制度も理念はそんなに難しい話ではなくて、透明で公正なルールでやってくださいということなのですが、公正ということを具体化するとどういうルールになるのかがいまひとつ難しいところですね。

ですから、現在は今おっしゃったように3分の1超については公開買付をしてくださいという強制公開買付ルールですから、その例外として市場で買うのはいいです。こう書いてあるので、その市場というのはどういうものを言うのか。どういう条件が整ったら例外として市場で買うからいいですという要件に当たるのかということを、法改正をして明確にしようということですね。

でも、根本に戻ればそういうご意見もあったということですけれども、何でもアメリカがいいというわけでは決してありませんけれども、例えばアメリカではそもそも3分の1のような強制公開買付ルールはありません。ですから、それも1つのルールですよね。

そういう中で支配権の取得というのは、ある会社があって、それを別の人が取得し合っているような状況と、今最後のほうにご指摘がありましたが、その会社による支配権の維持というと言葉は悪いと思うのですが、自己株式を買い受けたり、あるいは黒沼委員ご指摘のように新株を発行したり、そういう場合の支配権の移動というか、変化というか、維持というか、移動というか、そういう取引もAさんとBさんと両方が買収という言葉を使うとすれば買収しようとしているときと同じふうに整理するのかどうかという、こういうようなことだと思いますので、問題の所在はそんなに難しくないと思うのですが、解決は諸外国も分かれていて、なかなか難しいところだと思いますが、たくさん課題を頂きましたので、今回の改正にとどまらず、ぜひこの部会でも引き続き重要な点はご意見をお出し頂ければ大変ありがたいと思います。

それから、親会社情報の開示についても確かに何を求めるかということで、信用力の情報を求めるということであれば、国とか国営であれば適用除外をすればいいということだと思いますが、親会社がいることによって利益相反取引が起きる、そういう可能性があるために情報を出して頂いて、あとは市場で判断する。そういう仕組みだとしますと、池尾先生ご指摘のように利益相反が起きる可能性の情報ですから、信用力とは直接または間接的に影響することがないわけでないかもしれませんから、ロジックの上では別だということになります。

かといって他方、何でも開示を求めるということにすると、こんどは上場を促進していくという、東アジアだけではなく、多分ヨーロッパの企業も多くはこういう形だと思いますので、そういう政策も他方ではあると思いますので、その辺のバランスはなかなか難しい問題はあるように思います。実際に制度にして動かしていく上でうまく動かして頂けるように工夫して頂ければと感じます。

今日は前半のほうの議題というのでしょうか、それでかなりお時間を頂いて、大変貴重なご指摘を受けましたけれども、次のテーマに移らせて頂いてもよろしゅうございますでしょうか。それとも、さらに追加でご発言ありますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、どうもいろいろとありがとうございました。事務局のほうでは今回の法改正はそれとしてきちんと実現し、かつ叱咤激励頂いた事項も含めて、引き続きこの分野の改善に努力して頂きたいと思います。

それでは、次に移らせて頂きます。投資サービス法の話に戻るというと変ですが、集団投資スキーム(ファンド)についての(1)というもの、資料2になります。事務局からご説明をお願いします。

○大森課長

大分観客が減ってしまいました。(笑)制度におけるグレーゾーンは小さいほうがよくて、投資サービス法の作りにおいてもそうでなければならないのですが、緻密に作るほどよいというものでもなくて、現にインサイダー取引規制をめぐっては緻密に作った結果として、かえってグレーになっているとか、さりとて包括定義と判例だけでやっていけるどこの国は成熟していないといった議論が前回もございました。

法律でどこまで書くかとエンフォースメントの体制、さらには行政と司法の役割分担といったことも関係してこようと思います。

この集団投資スキームという議論も基本的にはこれまでの投資商品や投資サービス業の定義と構造は同じでございます。市場型間接金融というか、間接投資というか、第三者に運用管理を委ねる仕組みを規定しておりますから、若干ややこしく見えますが、投資サービス業者として投資商品を運用するとか管理するとか販売するといった、これまでの議論の組み合わせで長きにわたり試行錯誤してきた結果、形成されている現行制度を虚心坦懐に見るとどう整理していくのかということだと思います。

前々回は昔話をしていたら長くなってしまいましたので、簡単に経緯を振り返りますが、資料2-4というB4の横長の一番最後のページに「ファンドに関する措置の概要」という、やや字が細かくて恐縮ですが資料がございます。

これ、それぞれのスキームがいつできたか書いていないのですが、かつては有価証券に投資する契約型の投資信託、一番左側のものですね。これしかございませんでした。しかし、小口の資金をまとめプロに運用してもらうというニーズそのものは有価証券に限る必要はありませんで、商品や不動産でも同じニーズはございます。そこで、これまでも何度か申し上げておりますように証取法の有価証券概念を拡大してはどうだという議論があったのですが、証取法の体系だとディスクロージャーの負担が重いとか、販売業者が原則証券会社になってしまうというワンセット規制を回避したいということで、この右側にございます商品ファンド法あるいは不動産特定共同事業法という個別の業法が立法されました。

司法上のビークルとして商品ファンドは信託のみならず組合という類型があり、不動産特定共同事業は組合に加え、共有不動産の賃貸という類型があることは前々回触れさせて頂きました。

その後、ビッグバンに際しましてアメリカ型の市場の競争条件や投資商品の品ぞろえという意識が強くございましたので、ミューチュアルファンドは会社である。信託の受益権のみならず証券投資を行う会社の持ち分権という選択肢を用意しようということで、この左から3番目、会社型投信、投信法人という仕組みを作りました。

同時にこのとき、この投資信託の銀行での販売や証券会社の業務参入規制の自由化を行いましたので、証取法の体系もこのとき相当に柔らかくなったということでございます。

また同時に、さらにその右にございます資産流動化法、SPC法を作りまして、よく投信は運用型スキーム、SPCは流動型化スキームと言われます。投資信託は小口の資金まずありきで、それを集めてプロが運用する。SPCは不動産や貸出債権といった特定の資産まずありきで、それを所有者から切り離して小口化して販売すると説明されます。レディメイド型とオーダーメイド型とも言われましたが、いまだに言われているかもしれませんけれども。

これは投資商品の品ぞろえという意識でどちらかというと当時の大蔵省証券局が仕事をしておりまして、銀行局は銀行の不良債権や担保不動産処理のツールという意識で仕事をしておりました。担い手が分かれていたということで、いずれも資産から生まれるキャッシュフローを組み換えて投資家に還元している点では同じでございます。現にビッグバンの施行から2年ほどして、金融商品販売法の制定と同じ時期にこの2つの法律はまた手直しをされました。投資信託法では頭についておりました証券という文字が取れまして、不動産などに運用対象が広がりました。

SPC法のほうも対象を財産権一般に広げて、会社のみならず信託、さらにその右にありますSPTという選択肢も用意し、かつ証取法に指定されるということになりました。

ですから、この手のスキームは当初の動機はどうあれ、使い勝手を求めて改善していくと似てまいりまして、そうなると原資産が違うからといって、かつて個別に作った業法の意味は今に至ると何なのだろうかとか、名前は違っても事実上当初ファンドであるものは同じように扱うべきだといった議論が当時からございます。

さらに投信法で言えば信託と投資法人という選択肢だけを用意しておりますから、投資法人以外の会社、あるいは組合といったビークルを使えば仕組み規制なしに同じことができてしまうということでございます。

資料2に文書で整理をしておりますので、今申し上げたことが大体これまでの経緯でございまして、具体的には2ページの(1)にありますように、まずビークルの範囲は、これはアメリカやイギリス同様にファンドの法的類型を問わず、横断的に最低限の規制を課すということが必要になってきているのではないか。次のページのマル2、投資対象というのは広いほうがいいのではないかということでございます。

マル3のその他はファンドの運営についてですが、これまでの議論と同じ構造で、お金を出す人と運営する人が一致するのならばこれは私的自治の問題ですが、運用を委ねるという要素があるのなら一定の規制が必要であろうということでございます。

そして、その規制の具体的な内容として(2)のマル1はファンドの届出や登録といったファンドそのものの当局による把握が必要かどうか。その次のページのマル2はファンドが運用している資産の分別管理義務、マル3の運用者の資格は、現在は資産の種類ごとの投資顧問業者になりますが、投資サービス法において運用業者の資格をどう規定していくかということでございます。また、どう規定したところで資格を持つ運用者の義務付けになじまないという運用対象もあろうかと思います。

マル4に書いてあるのはおそらく投資サービス法に基づく運用業者であれば受託者責任や利益相反の防止は義務づけられることになると思いますが、ファンドであるということに特有の運用制限やガバナンスについてどう考えるかということでございます。

そもそもこの集団投資スキームというのは高度な知識やノウハウを持たない普通の個人の資金をまとめてプロが運用することにより、相対的に高いパフォーマンスを求めるものですから、仕組みの基本を決めるのは大事なことですが、普通の個人にとっては何がいいことなのか、必ずしも自明でないように思われます。

マイカルでMMFが元本割れになるのはよくないことですけれども、再発防止のために例えば組み入れ証券は一定の格付け以上のものにするといった運用制限をしますと、元本割れのリスクは低下しますけれども、パフォーマンスも同時に低下する。こういった規制の主体は行政か自主規制機関か業者自らかという論点もございます。

昔、投資信託の約款というのは個別に行政が審査して承認しておりまして、いまだにそういう金融商品もあるみたいですけれども、どう考えても投資家のためになるような審査をする能力が行政にあるとも思えなかったものですから、先ほど申し上げたようにビッグバンに際して届出制にしたわけですが、こういった行政関与の度合いというのがまたファンドそのもののガバナンスと裏腹の関係だと思います。会社の形態だったら総会とか、信託なら約款変更への異議申立、買取請求といった仕組みが一部にありますけれども、その次のマル5ディスクロージャーともどもたくさんいる投資家が現実には何を望んでいるのか。また、結局、コストは投資家が負担するということを踏まえて妥当な線を検討していくということではないかと思います。

以上が白地に絵を描くとすればということで並べてある論点ですが、2の既に存在する各業法についても基本的に考えなければならないことは同じでございます。時々のニーズに基づいて自己完結的に作られておりますので、作りに若干の違いはありますが、スキームの構造と監督、運用、販売のルールといった主な要素は共通でございます。そうすると、前回までに議論してきたようにスキームの法的類型をなるべく広く投資商品とし、投資サービス業として運用業を正面から位置づけていくのであれば、こういった集団投資スキーム法制というものも投資サービス法の中に横断的に規定していくことが可能ではないかということでございます。

もちろん5ページの注にありますように、どこまでがスキームの構造の話で、どこからが監督の話かとか、実務上は大変に重要な税制といった論点がございます。

その下の今後予定されております信託法改正というのは当然投資信託という類型を用いるファンドにも影響すると思いますし、その他にもこの集団投資スキームをめぐってご意見があれば何でもお願いしたいということでございます。

なお、投資サービス法の規制内容をめぐる議論、まだ完全には尽くしておりませんけれども、いずれにしてもこの議論というのは1つのテーマについて完全に結論を出さないと前に進めないというといつまでたっても進めないようなところがありますので、とりあえずこのアジェンダを本日はお願いいたしました。また、規制内容の話については後ほど戻ってくるということでよろしくお願いしたいと存じます。以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。それでは、今ご説明頂きました資料2、それからその参考資料として資料2-5までお手元にあると思いますけれども、集団投資スキーム(ファンド)については今日初めてであると思いますので、残りの時間、これについてどなたからでもご自由にご意見等をお出し頂ければと思います。

ビッグバンの中でも比較的後のほうにというか、いつビッグバンが終わったのかよくわかりませんけれども、2000年にも大きな改正がなされている分野ですので、比較的新しい分野なのですけれども、投資サービス法との関係でのご議論をお願いできればと思います。

西村委員、どうぞ。

○西村委員

非常に広範な内容の提案というか問題提起なのですが、1点、最後に本当にちょろっとご指摘があったのですが、実は非常に重要な点も考えなければいけないと思っていますのは、税制との問題があるわけです。もちろん投資家に対しての公平性、それから効率性ということもさることながら、税制が入りますと当然ですが、政府の財政資金、最終的には税金の投入という部分も絡んでくるわけです。もちろん税制がすべてに中立で、何の特別の配慮がなされていないというのであれば、それでかまわないのですが、そうではないということがありますので、したがってファンドに関するものも税制のいろいろな優遇措置が入ってきているものがありますので、そこら辺のいわば政府としてのある種の責任といいますか、そういうものとも絡めた形で考えないと、金融審議会としての説明責任というものが入ってくるのではないかと思います。この点についても考える必要があるのではないかというのが私の考えです。

それから、仕組み規制のないファンドの点につきましては、これは全くそのとおりでありまして、結果のほうからこういうのを見ていかなければいけないわけですが、そういう中で考えたときに、特にこれからいろいろな新しいファンドがおそらく出てくると思います。その中でそのファンドに対する対処ができるためには、やはり原資産がどうのこうのというよりかは、結果としてどういうことがなされているのかというところから見て判断しなければいけないのではないかと思いますが、この点については法律の方と私のような経済学者とは考え方が違ってくるかもしれませんが、何かそこら辺を考えていく必要があるのではないかと思います。

以上2点です。

○神田部会長

ありがとうございました。後者のほうは法律をやっている者の考え方も違わないと思います。そう言っていいと思います。細かいところではさらに詰めなければいけないかもしれませんが。

原委員。

○原委員

金融ビッグバンということが言われて、それが進行中と思いますが、その観点から言うと消費者から見ると大変多くのファンドが登場してきた。多様なファンド、よく言えば多様ですが、悪く言えば何かわけがわからないファンドもたくさん登場してきているというのが現状だと思います。そういう意味では、ファンド規制の範囲についてということで、3ページ冒頭にありますように横断的に最低限の規制を課すことが必要というところは、同意をいたします。ぜひこの方向で整理をして頂きたいと思います。

3ページの下にファンドの届出や登録を義務づけということも、当局による監督が及ぶようにしておくということについても、この方向で整理をして頂ければと思います。そういう意味で、具体的に書かれている4ページにありますが、匿名組合による形態をとってのファンドですね。ファンドもどきと言うのでしょうか。こういったものがかなり新聞広告などにも登場してきたりしておりまして、たしか前々回あたりでも発言はしたように思うのですが、電電会社のこういった利用券的なものだったと思いますけれども、商品の形態をとって、金利表現として年利8%とか10%という非常に高率の年利を表現して、消費者を勧誘しているというような広告も出てきておりますので、ぜひこのあたりを範囲に含めて検討をして頂きたいと思っております。

1つひとつの審査は以前のようには、大変で必要はないかとは思いますが、そういう意味では監督とか調査が及ぶようにしておいて頂きたいし、ディスクロージャーの充実というところも検討を深めていって頂きたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

集団投資スキームということで、若干普通の投資サービス、それ以外の投資サービスに比べて上乗せ規制は乗せるものの対象ということで言うと、一言で言うと広く、あるいはその機能に注目してということに尽きると思いますので、それ以上のところは技術的な決め方ということになるのかもわかりません。ただ、まだその定見がないのですけれども。

今日聞きたいなと思いましたのは、このペーパーでいいますと4ページのマル4のところということになるのですが、まずこれ以外のものも含めて投資サービス全般にいわゆる受託者責任的なものであるとか、あるいは忠実義務、利益相反防止の措置なりあるいは義務がどのように設定されるかとの関係はあるのですが、やはりそのプラスアルファのことがこういう類型のものにあるだろうと思います。

ただ、大変発言しにくいといいますか、今日も私、最初に手を挙げるのをちょっとためらったのは、これはどこまで細かく決めればいいのか、ある意味では細かく決めたいのですが、まだなかなか残念ながら日本では前例そのほかが十分にない。あるいは先例があったように商品のほうが先ほど原さんが言われましたようにいろいろ新しいものが出るので、また考えていかなければいけないということで、それこそ個別列挙的に決めますと、またそれ以外はいいのか。

これはまた業者さんなり作られる方から見れば、セーフハーバー的に書いていないものについて、またその後で規制するのはけしからんみたいなことになりますので、大変難しいということがあるかと思いますが、今の時点でぜひ指摘したいなと思いますのは、普通の会社のことを思いうかべてしまうので、これまたまずいのかもわかりませんが、やはりファンドが今どういうふうにお金が使われて動いているのか。どこにどの程度のお金がいっていて、そこが損益をどのように出しているかというPL的なものと、それから資産の配分のものとが両方あるのですが、それが利用者あるいは買い手、あるいは潜在的なファンドを買おうとしている人たちにどのように見えていくのかというところと、それからその流動性といいますか、仮に見えてもすぐに一般の株式のように手放せればいいのですが、市場が十分でないときにはあまり入れられないというときにどのようにするのかということで、言い出すと本当にガチガチになってしまうような感じがするのですが、なるべく常に資産あるいは運用の状況が見えていて、少なくとも手数料に幾ら使われているとか、運営費に幾ら使われているとか、それがわかるのは当然なのですが、さらにもう少し突っ込んだことがわかるようになっている点と、それから売り逃げやすさと責任とがまた絡まるような、何かそういうイメージを持っているのです。

ということで、具体的にはなかなか言い難いのですが、大変工夫のしどころですので、よく考えなければいけないと思います。

○神田部会長

どうぞ、東委員。

○東委員

1つ目は、ファンドで公募と私募をはっきり分ける必要があるだろうとまず思っています。公募の場合は投資家保護というのが第一に重要なことになると思います。その中でここに書かれていることはそのとおりだと思うのですが、さらにディスクロージャーあるいは運用方針というところで、先ほどのいろいろなファンドが出てくるわけですが、それぞれのファンドの買う側にとってのリスク・リターンを明確にしなければなりません。商品の中身を細かくいくら説明されてもわからないというのが普通だと思うのです。結果として何を期待して、どの程度のリスクがあるのかという点を明確に知らしめることがまず公募の大前提だろうと思います。

その上で2つ、今度は私募のほうですが、ヘッジファンドをどう考えるのかということと、そのヘッジファンドを組み込んだファンド・オブ・ファンズ、これはすでに公募されているわけですけれども、ここをどう考えるかというところが重要なポイントにもなってくるのではないかと思っています。

ここは私自身も悩ましいのですが、SECがヘッジのファンドの登録をさせようということで動いています。ただ、これは報道によれば100兆円以上の残高になったといわれているヘッジファンドが、未登録ではシステム的にも心配だということで出てきたのだろうと思います。したがって、日本で登録をしようというのはいいのですが、大きな市場でないのに、登録をした場合に、これまでヘッジファンドがどれだけ金融のイノベーションに貢献したか、よくわかりませんが、少なくともさまざまなヘッジ手段を生んできたのは確かと思います。そういう意味では日本ではそういう技術的な進化のスピードを少し鈍化させてしまうという心配も出てくるのではないかと思っています。

したがって、1つの考え方としてはヘッジファンドについても当然プロ、私募であるわけですが、登録自身も要らない。ただし、一定の市場の育成を見るまではというような何らかの考え方があるのではないかと思います。

もう1つはファンド・オブ・ファンズでヘッジファンド入りの投信がすでにあるわけですけれども、ここについての規制あるいはディスクローズというのは早めに考えたほうがいいのではないかというのが結論であります。

つまり、目論見書等を見ると相当多層構造でファンドが組成されていますので、つまるところどういう商品なのかよくわからないという説明書が見受けられます。したがって、ファンド・オブ・ファンズの場合、公募でこれからどんどん出てくるだろうと思うのですが、限りなくファンズのほうの1つひとつのディスクローズをどこまでさせるかという、ファンズが何層にもなっている場合には最後まで追いかけていくというような考え方が必要だと思います。そうでないと公募でファンド・オブ・ファンズをどんどん売っていくというときには、投資家保護という意味で障害が将来出てくる可能性があるのではないかと考えております。以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

佐々木委員。

○佐々木委員

全く視点も規模も違う質問ですが、例えば今出ているヘッジファンドとかという、いわゆる今までのファンドの流れと違って、例えばイーウーマンというインターネットのサイトに集まる人たちが証券会社などを通すのと違って、私たちのサイト、これは過去からやりたかったことの1つで質問なのですが、例えばファンドマネージャーを私たちがいろいろなところから集めてきて、今法律的にできないのは知っていますが集めてきます。証券会社とかプロのということではなくて、株式を学習するためによい企業を働く女性の賢い消費者の目で選んで、みんなでディスカッションしながら投資をしていくリーダーを決めて、じゃあ私たちがインターネットで公募をして、皆さん自分がなくなってもいいということを宣言して10万円でも何どもここに集めてください。これを運用するのはこの人たちです。この人たちがどこに投資するかというのは、全部サイトで公表します。ディスカッションもしていきましょう。最後にはこの人たちがマネージャーで運用はするけれども、その過程や考え方、みんなでディスカッションしていきましょう。これで投資の勉強もしていきましょうということというのは、過去から私はやりたいと思っていたし、法律が許されるのならそういうことは常にみんなが望むようなことだと思うのです。いきなり証券会社の方に何か難しいことを言われるよりも違う器の中でそういうことを学びながら投資をし、そして健全な企業にみんなが1票を投資という形でお金を入れていく。

こういうようなものがインターネットという場で公開でするというのもあるだろうし、これを極論にしてしまえば小さく街中のどこかのおばさんが私はいい投資家を知っているのよと言って、5人で集めましょうというものから、すごく大小、集団投資スキーム、私はまだ不勉強でキャッチアップできていないのですが、人数やお金の規模や、どういうルールだったら集団と呼んで、どこまでだったらいいのかという、ここのあたりはさまざまな可能性で考えて決めていかないと、先ほど来話されているように法律の穴が出てしまったりします。

あるいは、本来だったらとても消費者視点の新しい動きで投資に参加できたり、市場ということを考える機会があったはずなのに、やはりどうしてもそれは法的に不可能で、過去からのプロの目、あるいは過去からできてきた市場だけでプロと言われる人たちが係わっていかなくてはならないという、なかなか一般の人たちがわかりづらいという分断された世界が引き継がれていってしまうという危険性もある。

このあたりは質問であり、皆さんがこれから話していく中で頭の隅に置いておいて頂きたいことだし、現に何年も前から私などはそういうことができないのかなということを考えてきているので、このあたりは質問であり、提案なのですけれども。

○神田部会長

どうもありがとうございます。重要なご質問で、私が知る限りはアメリカなんかですと、これはノーアクションレターという話になりますが、ブルテンボードシステムというのが顧問業法の適用除外というか、ノーアクションレターで一定の規模まではいいということになっていますので、今日の問題意識から言うと、形式の問題と実質の問題と両方あると思います。実質のほうが重要かもしれませんけれども、こういったものは投資クラブのところが一番近いのでしょうか、今日の紙でいいますと。適用除外という話であって、一定の規模に達すれば業務になる。業務になるのかファンドになるのかという問題があるのですが、どちらかというと顧問業法との関係になるという、そういう話だと思うのですが、事務局のほう、よろしいでしょうか。

○大森課長

まさにそこの議論をお願いしているという本質的なご質問だったと思うのですが、私の記憶では平成8年ごろに日本でも投資クラブというのが始まって、当時、アメリカの主婦の方が何人かで集まって、非常に高いパフォーマンスを上げたというような本が出回っていたような記憶がございます。現在、相当普及はしてきていると思うのですが、まさに5人で集まって、その5人だけで相談してやっていくというのであれば、その私的自治の話ですが、ウェブサイトで広く人を募って、またやり方もこの人はパフォーマンスがいいから、この人に預けましょうよなんていうことになってくると、全く私的自治の問題とも言い切れなくなってくるのではないかという、そのあたりの議論をまさにお願いしているということでございます。

○神田部会長

ありがとうございます。では、高橋委員。

○高橋委員

今の佐々木委員のお話、まさにそういうふうにして投資家を育てていきたいというのが私どもの強い願いでございまして、今、大森課長から話があった投資クラブというのがずいぶん普及しています。

ただ、まさにこの紙に論点として書かれているように、投資クラブは全員参加で決めてください。だれかに委託するのではなくて、全員参加で決めて頂くような、そういう仕組みにしてほしい。ですから、人数の制限はありませんが、全員参加という前提にふさわしい人数、例えば10人あるいは20人というぐらいが、そういう意味では限度かなというふうに思っております。

全員参加であれば、当然この論点に書いてあるように集団投資スキームの規制の対象外ということになるだろうと思います。

それ以外の点で、問題点として提起して頂いた、例えば横断的に最低限の規則を作るべきだ。今仕組みについて規制がないものも含めて、これは何が仕組みかという定義の議論が必要だろうと思いますが、今の全員参加はどうかというのもその1つの論点になろうかと思いますが、そういうものを前提として横断的に規制の対象として、最低のルールを作っていくという、最低限の共通のルールを作っていくということがぜひ必要だろうと思います。

その場合に先ほどご指摘のあった公募か私募かという議論がありましたが、広く募集をするようにファンドと、一定の人数に限って、あるいは一定のグループに限っているというようなものをどうするかというのは、むしろ規制の内容の中で弾力的に工夫をしていくことではないかというふうに思います。

それから、既存のファンドの規制法との関係で、アンバンドリングの流れに沿った整理がいいのではないかというご指摘もそうだと思います。その業務の中身に応じた横断的なものをそれぞれ作っていくということで、ここに問題点として提起がありますように、アンバンドリングの流れに沿って機能別に横断的なルールを作っていくというような方向がいいのではないかと思います。

○神田部会長

ありがとうございました。原委員。

○原委員

たびたびで恐縮です。佐々木委員からご発言があったように、世の中全体にそういった、少しお金を集めて気に入った投資をしたいという動きがあって、1つがその投資クラブだと思いますし、もっと大きなファンドを構成するというふうになって来ているのがここ数年だと思っております。

重ねてで恐縮ですが、私は情報開示、ディスクロージャーの充実を基本に据えてくださいと発言いたしましたけれども、ディスクロージャーというのも信頼性というのが根底にないとどんな情報が開示されているかというところでは不安な部分もありますので、やはりそれだけではなくて、先ほど上柳委員から出ておりました受託者の責任について、今日は1つの単語だけしか出ておりませんが、もう少し具体的にして頂きたいと思っております。

よくこういった投資の世界に入ると自己責任の強調をされて、特にネット取引はそうなのですが、自己責任と言われる前に私ども消費者としては受託者責任、それを一体どこまで果たしていらっしゃるのか。

高い手数料を取りながらほとんど果たしていないのではないかという、実際に投資した金額の半分ぐらいになったりしていると、やはり受託者責任のところの明確化というのは必ず求められると思っておりますので、ぜひお願いしたいと思います。

それから、先ほど公募と私募の話が出ましたけれども、数年前は公募と私募と分けた形での議論も成立したように思いますが、今私募で出たものが公募の市場に出て行っているというようなものがあるのではないかと思っておりまして、そこは厳密に、今も区別された市場とは言えないのではないかと思いまして、そこはもしもきちんとした正確な情報がありましたらお願いしたいと思います。

○神田部会長

受託者責任とプロアマみたいなものは次の回だと思います。資料3で十分ご議論頂くテーマになっていると思いますので、最後の点は法制度的にはきちんと分かれているのです、少なくとも。例えば証券取引法の適用がある世界であれば、私募から公募になってもらっては困るものですから、公募のルールに服してもらわないといけないということだと思いますけれども、ご指摘を踏まえてまたさせて頂きます。

藤沢委員、どうぞ。

○藤沢委員

全体の話について少し申し上げたいのですが、私も統一的規制というのは必ず必要だと感じております。ただし、この統一規制において改めて、私が今までの議論に参加していなかったので確認という意味で、運用スキームの規制と販売をする業者の規制というのは、英国の場合は一緒だと思いますが、日本においては別に考えていくという前提で議論をされているのかどうかというのは質問であり、私自身は分けて考えるべきだと考えておりますということです。

では、運用スキームに関する規制においてですけれども、そのビークルの範囲につきましてはこの資料にありますように幅広いものにしていくということも、私は賛成なのですが、その際に業者さんというのもいろいろあるわけですが、必ず届出という形だけはここで作っていくべきではないかというふうに考えております。

おそらくいろいろなものが生まれてきて、公募されるものが増えてくる中で、あとでトラブルというのが必ず起きてくると思います。そのときに行政の側においてどのようなものがあったのかということを確認する術というのはあったほうがいいと思いますので、登録は少々重いと思いますので、せめて届出だけはルールの中にきちんと入れておくべきではないかというふうに考えております。

さらに共通のルールの中に入れるべきこととしましては、やはりディスクロージャー、これに関しては個人から見れば、立派な投資家から見れば、同じ土俵で商品を選んでいくことができるようなディスクロージャーを用意すべきではないかと考えています。

その際に投資判断で求められるものというのは、最悪どのような負担があるかということである。とすれば1つはコスト、これを明確に出すこと。そして、もう1つはやはりリスクなのですが、どこまでリスクがあるかというのは詳細に明示することは大変難しいことではあると思いますけれども、最大大きな損失が発生するというときは、どのような環境の変化、どのような事故が起きたときに大きなリスクを損失するのかということ、発生するのかということを明確に表示する共通のルールのようなものが必要なのではないかと思っています。

ただし、このディスクロージャーに関してはどうしてもコストがかかってしまいます、製作する側に。有価証券の投資信託のようなものであれば大規模なファンドですので、少々のコスト負担というのは可能かと思いますし、大量の投資家にペーパーを作ることに関してはわりと低コストでできるものでありますけど、最近出てきているコンサートファンドであったり、映画ファンドであったり、ああいったものはワンロット1億未満というようなものもたくさんありますので、そこでペーパーでディスクロージャーをきちんとやりましょうとやると、結果的には投資家の負担を増やすだけになると思いますので、ディスクロージャーはきちんとやらなくてはいけないけれども、電子配布部分をきちんと明示するなど、投資家のためにディスクロージャーのコストをいかに低減した形でルールづくりができるかということも考えていかなければいけないのかなというふうに考えています。

あと、先ほど税制のお話もありましたが、ここも一度考えるべきだな。特に映画ファンドというようなもの、コンテンツファンドのようなものの場合には投資家から見ると雑所得になるようなものが幾つかありまして、その関係上、いかにしてこのファンドスキームを使った節税をするかというときに、結果的に海外でファンドを作って、別の形で持ち込んでくるということも幾つか出てきているように思いますので、税制については一度、私もまだ不勉強なのですが、一度議論しておくべきことではないかというふうに思っております。

あと公募と私募のお話もあったのですが、ここにおきましても最近の証券化商品などを見ておりますと、スキームの中に優先劣後の仕組みを作っていて、ある部分は私募のような形であり、ある部分は公募のような形になっておりますので、こういった1つの商品で私募と公募が混じってしまっているような商品をどのようにディスクローズするのか。どのように規制するのかということも改めて考える必要があるのではないか。

そして、最後の信託法のことに関してですが、この金融審議会に入るときに、あくまでも投資信託協会の理事であることを忘れて話をしてくださいと言われておりますので、あくまでも理事ではない立場で申し上げますが、信託法におきまして投資信託も同じルールの中に入れていくことについては少々無理があるのかな。

一般の信託というのは受益信託であり、投資信託の場合は待機信託ということで委託会社も入っておりますので、多数決の議論など信託法の中でされておりますが、投資信託というのは仕組上別に考えておく必要性があるのではないかと考えております。以上です。

○神田部会長

多数重要なご指摘をありがとうございました。一番最初におっしゃったことは非常に重要な話だと私は思っていまして、現在の法制度を組み換えていくときの1つの大きな課題は何かというと、商品の規制と業の規制を切り離して整理できるかということだと思うのです。

投資型スキームとかファンドの議論というのは、これまでここの第一部会では最初頭出しから始まって、だんだん考えてみると最初は仕組み行為というのは業の1つではないかという、前の流れ懇談会なんかではそういう整理をしていたのですが、だんだん整理していくと、これはどうも業とか行為の規制というよりは、仕組みというのは商品の規制ではないだろうかというふうになってきただろうと思うのです。今日のペーパーもそういうことで、その場合に商品の規制にも程度問題がありますから、ご発言がありましたように今届出あたりからいくのか、もちろん適用除外もあると思いますが、そういう商品の規制とする。

そうすると、現在の制度では業の規制と現在の法制度は直線的に結びついていまして、投資信託業であれば投資信託業務になりますし、そうでなければ顧問業になったりとしますので、私がいつもよく挙げている例でいいますと、証券の分野ですとお客さんが1人ですと顧問業、2人以上ですと投資信託委託業、こういうふうにそれぞれ業と商品が結びついているのです。これを切り離して整理できれば、商品は商品の規制、そして業は業で運用をするなら運用アドバイス業ですし、売っていくなら販売業ですしということになります。そういうことやれるのかどうか。私もすぐにはわからないのですが、いろいろ過去の経緯もあるでしょうし。1つの大きな課題だと思います。

最後のほうの点も非常に重要なご指摘だったと思いますので、また検討を深めたいと思います。では、淵田委員。

○淵田委員

今のお話に関係があるのかどうかわかりませんが、先ほど投信は運用型商品で、資産流動化商品という、人からお金を集めて何かに投資していくのと、あるものをキャッシュフローを分けていくというものの区別というのが今まであったと思うのですが、そういう分け方が大事なのか。

もう1つ、例えばアメリカの議論などを見ますと、同じ資産流動化商品でも非常にパッシブでフィックスドアセットを箱に入れて、そのキャッシュフローを分けていくだけで改めて、だれかのお金を、この資産をあるとき買って、それを売って別の資産に乗り換えたりというアクティブな運用がないものについては、これは全然別な規制体系にしてしまうといった形になっておりますので、資産流動化商品とほかのアクティブな運用が伴うものは別に考えるというのがあるのかなという気もしております。

パッシブでフィックストなものに関しては、これは単に箱に入れて、そこからあらかじめ決められたルールによって分けられていくものですから、その箱自体にいろいろな規制をかけてもあまり意味がなくて、むしろ例えばサービサーのクオリティはどうなのかとか、そういうことをちゃんと見ていったり開示していくということが大事ということがありますので、1つそういう区別というのはあり得ないのがという気がしております。

○神田部会長

今の点も重要な点で、前から議論している仕組み性が低い場合と高い場合との商品の規制の問題ということで、これまでも議論しているとは思いますが、この部会にとっては大変重要なご指摘だと思います。

ほかにいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

今日は資料3に入るのは適切でないと思いますので、原委員ご指摘の受託者責任と、それからプロアマは資料3にたくさん書いてありますので、また次回、必要があれば大森課長から補足的なご説明頂きますけれども、ぜひお持ち帰って読んだうえで臨んで頂ければと思います。

今まで延長もしておりますので、たまに時間をお返しするのも悪くないと思いますので、急に言われても困るということもあると思いますが、もしよろしければ今日は多少早いですが、これまでとさせて頂きたいのですが、よろしゅうございますでしょうか。

吉野委員。

○吉野委員

最初のほうのテーマで、池尾委員からの質問に対して、私間違ったことを申し上げたので訂正させて頂きます。新華ファイナンスについて、親会社が新華社ということを申し上げましたが、持ち株はわずか約7%でございまして、親会社に該当しないということで、記憶違いでございます。大変失礼をいたしました。それだけご報告させて頂きます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

では、よろしいでしょうか。それでは今日はちょっと早いのですが、これまでとさせて頂きます。この後記者会見を行いまして、この部会の模様について私からご報告をさせて頂きます。最後に事務局からのご連絡をお願いします。

○大森課長

こちら側の人間がずいぶんいないのですが、国会会期中に応急手当て的な対応をしていることの反映だということで、誠に申し訳ございません。ご容赦ください。

次回は3月16日水曜日10時で予定しております。今月はちょっと多くなっておりまして、申し訳ございませんが、引き続きよろしくお願いいたします。

○神田部会長

それでは、今日はこれで散会いたします。どうもありがとうございました。

午前11時56分閉会

サイトマップ

ページの先頭に戻る