金融審議会金融分科会第一部会(第28回)議事録

平成17年3月30日

金融庁 総務企画局

午前10時01分開会

○神田部会長

予定の時間がまいりましたので始めさせて頂きたいと思います。ちょっと集まりが悪いようでして、まだこれからいらっしゃる方もいらっしゃるようですけれども、始めさせて頂きたいと思います。

ただいまから金融審議会金融分科会第一部会の第28回目になりますけれども、その会合を開催させて頂きます。

年度末のお忙しいところ、皆様方にはお集まり頂きましてどうもありがとうございます。また、3月は今日で3回目の部会ということで何度もお集まり頂きましてありがとうございます。

いつものことですが、本日の会議も公開とさせて頂いておりますので、その点をご了解頂ければと思います。

本日でございますが、まず前回ちょっと時間が不足したと思います。議論中に時間が来てしまいました「ルールの実効性の確保(エンフォースメント)について(1)」というものについて引き続きご議論をお願いしたいと思います。それから、新しいテーマといたしまして、「市場のあり方について(1)」というものを用意して頂いていますので、これについてのご審議もお願いしたいと思います。

それでは、お手元の議事次第に従いまして、まず事務局から「ルールの実効性の確保(エンフォースメント)について(1)」につきまして、追加的なご説明をお願いいたします。

○大森市場課長

狭い意味でのエンフォースメントの議論は、つまるところ行政としてしっかりやれというところに帰着してあまり広がりがないので少し前回と別の視点から補足させて頂きますと、最近起こっておりますことは、日本の資本主義における経営権移動のあり方にとどまらず、そもそもの法律のつくり方とか行政と司法の関係にも論点を提起していると思います。事件が起こると後から制度改革がついていくのは万国共通ですけれども、制度のつくり方が違っていますとついて行き方も違ってまいります。

これまでにお出しした国際規格の資料も、日本では法律に規定していることがSECやUKFSAの規則に規定しているといった例がたくさんあったかと思います。この投資サービス法の議論が始まった背景の一つが、常に制度が後追になってしまうのは投資者保護上何とかならんかということだったのでこれまでも部分的にご意見、ご議論頂いておりますけれども、法律で規定するレベルについて改めてご意見があればお願いいたします。

アメリカでは何か問題が起こるとSECが機動的に規則改正して対応しておりますので、還元すれば法律改正という民主的プロセスに要する時間をどう評価するかということかと思います。今回の応急手当では、どういう性質の取引が新たに公開買付規制の対象になるかという基本論を法律で規定し、ToSTNeTなどの具体的なものを告示で規定することにしております。

また、法律にせよ、行政の規則にせよ、大まかに書いてあるほど現実の問題は裁判所が判断しなければならなくなって判例法が形成されるわけですが、裁判所が民事や刑事の責任を問うことも当然広い意味でのエンフォースメントの一環になります。制度もつくってから時間がたちますと、当然つくったときには想定していなかった現実が生じますので、その現実を踏まえて制度をよりきめ細かくつくり直してくれという要請が実務家サイドからなされるのがこの国であります。自己責任で解釈して行動して、問題が起これば裁判所で判断すればいいというメンタリティーにはなかなかなりません。

そういうすき間をついて行われた時間外取引について、私ひょっとしたら直ちに裁判所に持ち込まれるかとも内心感じたのですけれどもそうはなりませんので、その後の対抗策の差し止め訴訟において論じられるにとどまりました。この経営権取得を目指した時間外取引という手法につき、金融庁は全うではないが監視委員会が摘発し、刑事告発するという意味での違法性はないと当初から表明しておりましたことについて、三権分立の観点からの疑問を呈する意見もございます。ただ、今申し上げたように裁判というものは訴える人がいないと判断しませんし、行政処分とか、あるいは明後日から施行される課徴金といったエンフォースメントは行政限りで違法性を判断しなければならないわけでございます。同じくこれを違法ではないと判断した東京地裁の判決では、江川の空白の一日みたいなと表した我が副大臣の国会答弁が引用されていまして、何だか司法との関係もインタラクティブになってきたのかとちょっと感じました。

続く高裁の判決では、どういう場合に対抗策が不公正発行に当たらないかという類型を挙げておりましたが、こういった目安もあらかじめ経済産業省にガイドラインをつくってほしいというのがこれまでのこの国なものですから神田先生はいつだって忙しいということになります。いずれにしても、一つの行為を行政上、民事上、刑事上、3つの側面からどう評価するかとか、行政と司法の役割分担というのはこれまでそんなに突き詰めて考えてこなかったことだと思いますので追加して申し上げました。ご意見があれば、金融庁で伺えるかどうかはともかくこのエンフォースメントの折衝において併せて頂ければと思います。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、今大森課長から追加的にご説明頂きました点も含めまして、また前回ちょっと最後の方急いでしまいましたので積み残しでのご発言があるいはあろうかと思います。お手元の資料でいいますと、前回の資料と同じ資料1というものが論点4の資料でありまして、参考資料として1-2から1-6のマル2までが参考資料ということになります。どなたからでも、どの点についてでも結構でございますので、ご意見、ご質問等をお願いできればと思います。いかがでしょうか。

原委員、どうぞ。

○原委員

恐縮です。前回ここまでの議論に至るかどうかというのがちょっとわからなかったので準備不足で臨んでおりました。重なる部分もあるかというふうに思いますけれども、意見を述べさせて頂きたいと思います。

今の大森市場課長からありましたように、やはり民事上、刑事上、行政上、どういうエンフォースメントをかけていくかというのは非常に重要で、私もこれまでいろんな法律作成に加わってきておりましたけれども、最終的にそこの部分がどのように書かれるかによって法律が生きてくるかどうかというところは大変大きく感じておりまして、今回の資料の提出の仕方は、非常に全般的にこういうことについてどう考えるかになっているので、個別の行為について、個別のどういうエンフォースメント、実効性の確保をかけていくかというところではもっと丁寧な整理というのが必要かと考えておりますので、これで終わりということではなくて投資サービス法、第2ラウンドの検討のところではそこを非常に丁寧な議論をお願いしたいというのが全体であります。

それから、個別についてなのですが、一つ前回のときに私、民事効のところについて少し、3ページにあります2.の(2)の民事責任規定の整備のところが、もう少し書き加えて頂きたいという話をいたしましたが、大変市場課もお忙しいところでして同じ文章のままで出てきていますけれども、私としては、考えている点は、今の偽造カードのところでも問題になっておりますけれどもやはり消費者の立証責任というところですね、このあたりの軽減を考えると業者過失とか因果関係については推定規定を導入できないかとか、それから金融庁とか、それから監視委員会に集められた情報というものを民事訴訟の方にも利用できないかというあたりは考えて頂きたいと思います。

それから、民事責任規定を拡大して考えていくと、クーリングオフ規定の話も検討の俎上に上がってくるかと思います。今、保険ではクーリングオフ規定というのが設けられていますけれども、いろんな民事責任を問う、損害賠償責任を問うというふうになると立証責任が消費者側に大変重いですので、商品内容によってはクーリングオフ規定、例えば変額個人年金保険なんかは、保険という商品名をとっていることもあって販売の現場では混乱をしているというようなところもありますので、そういったものを導入の手がかりにクーリングオフ規定というものの設定ということが考えられないかどうかということをお願いしたいと思っております。

それから、行政がかかわっていく実効性の確保の部分なのですけれども、今日は黒沼委員がお見えになっていらっしゃらないのですけれども、前回の黒沼委員のご発言のとおりと思っておりまして、不当利得の吐き出し、それから、有価証券の継続開示の虚偽表示についての課徴金の導入、そして懲罰的賠償、それからそういった得られた課徴金を被害者へ還付をするという仕組みですとか、それからクラス・アクションですね、これは消費者団体でも1970年代から導入を検討しておりまして、ドイツなどではクラス・アクションを導入されておりますので、ぜひそのクラス・アクションというところも検討をお願いしたいと思います。

あと2点なのですが、前回申し上げたとおり登録制をとるということ、また、事業者は登録制をとるということにしても、登録をしない事業者に対して調査権限を持てる仕組みにして頂きたいということと、それから苦情処理について、苦情とか紛争解決についても責務規定で投資サービス法の条文の中に盛り込んで頂きたいと思います。

それから、今回のぺーパーの中で、3で自主規制機関の機能強化の中に掲げられている紛争解決についての部分なのですが、4ページから5ページにかけて書かれている部分なのですけれども、ここのあたりにかかわってくると思うのですが、実際に事業者団体がADRという裁判外の紛争解決の仕組みということをお持ちになっていらっしゃるわけですけれども、そこのメンバーの方々を集めて金融トラブル連絡調整協議会というのが4年目にかかると思いますけれども、この金融庁の場を借りて年に4回ぐらいですか、集まって検討を重ねておりますけれども、この金融トラブル連絡調整協議会ももともとは金融審議会の中で金融サービス法を検討できないかというときに、時間が足らずにその部分について金融トラブル連絡調整協議会の方に場を設けるということで預けたという経緯がありますので、私としては金融審議会の中に戻して、この金融トラブル連絡調整協議会を含め自主規制機関による紛争解決のあり方というものの今後を、金融サービス利用者相談室が立ち上がるところと併せて苦情紛争解決についての位置付けと役割分担と連携についても検討を深めていって頂きたいと思っております。

以上です。

○神田部会長

どうも、盛りだくさんの内容をありがとうございました。

ちょっと1点だけ確認させて頂きたいのですけれども、最後の方でおっしゃった苦情処理という話と、ADRという名前でおっしゃった紛争解決というのは同じと考えていいのですか、違う話ですか、すみません、ちょっとそこだけ。

○原委員

私として考えていますのは、苦情の解決というのは各事業者がご自分の責務で当然負うべきということで条文に書かれるべきだと思っております。紛争解決というのも同じに考えております。それは責務規定で入りますけれども、それと並行して仕組みづくりを考えたときに、今その各個別金融機関でトラブルになったもので解決が不能というのでしょうか、こじれてしまったようなものというのは各事業者団体がADR機関を設けていますので、そのADR機関は事業者団体の中にあるものもありますし、外に委託していらっしゃるようなものもありますけれども、何らかの今は第三者が入っての紛争解決をやるという仕組みはつくられている。だから、その仕組みのあり方が妥当かどうかということについては、私は再検討が必要ではないかと思っておりまして、条文の中でも責務規定が必要だという話と、それから実際に稼働させていく仕組みということについての検討と両方検討が必要だということを申し上げています。

○神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。田中委員、どうぞ。

○田中委員

この資料の2ページの一番下の行、「関係省庁との連携強化」、この部分なのですが、その3ページ目の方には、「横断的な投資家保護法制・ルールを策定していくことを考えると、今後ますます関係省庁との連携強化が重要となる」、と書いてあります。政府の方針である貯蓄から投資へということを促進しようとした場合、個人の投資家の方々から見て安心できる投資商品、あるいは安心できる投資市場の構築ということを考えた場合、これは素直に考えると、商品によって省庁が分断されているというのはどうもわかりづらい。単に関係強化というのにとどまらず、自然に考えれば、ここのところは統一されたところできちんと管理されるというのが素直な考え方だと思います。そういう面でここでは連携強化と、それで最後の「どのような連携が図られるべきか」というふうな書きぶりについては、事務局の方が非常に苦労された書き方であることは十分承知しているのですが、やはりここのところはかなり踏み込んで考えて頂くというのが結果的には国民にとって一番いい方法なのではないかと思います。是非その点はご検討願いたいと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

原委員、どうぞ。その後、高橋委員。

○原委員

すみません、一言だけ今のところに関連してなのですけれども、実は内閣府の中に国民生活審議会がございますけれども、そちらで消費者基本法というのが去年の6月から制定、施行されています。その中に消費者基本計画の策定という項目がありまして、この消費者基本計画の中では、私としてはこういった分野、各省庁にまたがるものの連携ということをぜひ盛り込んで頂くようにという、横断的なテーマを盛り込んで頂くようにと発言もしておりますので、ぜひそういった消費者基本計画との連動も考えて頂きたいと思います。

○神田部会長

ありがとうございました。

では、高橋委員、どうぞ。

○高橋(厚)委員

先ほど大森市場課長からお話のあった点については前にも申し上げたことがあるのですけれども、ぜひそういう後追いにならないような仕組みというのをつくっておく必要があるだろうと思います。基本論、あるいは基本的な考え方を法律で示して、それを行政の仕組みの中で、もちろんその公正な判断ができる仕組みをつくるという前提だろうと思いますけれども、仕組みをつくっていくことが必要だろうというふうに思います。予見可能性ということを非常に大事にしていかなければいけないということも確かでございますので、それとの調整をどういうふうにしていくかということは一つの課題だと思いますけれども、そういう仕組みが必要だろうと思います。

それから、このペーパーの順で申し上げますと、今田中委員から発言あった点につきましては私も全く賛成でございます。統一的な監督の枠組み、ルールを横断化し、監督あるいはそのエンフォースメントについても統一的なものにしていくということが必要なのではないかというふうに思います。

それから、民事責任のところで、先ほど原委員から立証責任の転換というようなお話がありました。これは一部立証責任が転換されている規定もございますし、最近改正された事例もあるわけであります。その事案に応じて慎重に審議されて、これは虚偽の表示をした開示書類だったと思いますけれども、そういう制度改正が行われたわけでありますけれども、この立証責任の問題は非常に幅広い問題だろうと思います。民法の基本原則というものがあって、そういうもので考えていくべきものを特例的に変えていくということでありますのでそれを考えるのは相当慎重に考える必要があるだろうと思います。消費者の方で立証するのは難しいではないかというだけの議論でいいのかと。そうだとするとあらゆる局面でそういう、これは証券取引だけではなくてあらゆる局面でそういう問題があるわけであります。その中で民法の原則がきちっとできているというようなことをどういうふうに考えるかということではないかというふうに思います。証券取引だけの分野だけで考えていいのかという疑問であります。

証券取引に関しましては、その取引の安定性ということからどう考えるか、あるいは証券取引というのは当然リスクがつきものでありますので、そういうことが悪用されるというようなことがあっては、そういうことというのは立証責任が転換されているということが悪用されるということであってはかえって市場の混乱を招くのではないかという感じがいたします。

クラス・アクションにつきましても、証券取引だけの問題として議論するのではなくて、クラス・アクションそのものについての司法制度としての検討がいろいろされているわけであります。そういう全体の中での検討ではないかというふうに思います。

それから、自主規制のあり方、4ページでありますけれども、自主規制機能の強化、ガバナンスの強化についてどう考えるかという問題提起がされております。自主規制の証券市場におきます役割というのは何回か申し上げたことがありますのであえて繰り返しませんけれども、こういう全体の制度を整えていく中で自主規制の役割、重要性というものを強調していくということは必要なことであろうと思います。もとより、その場合に自主規制機関自身のガバナンスのあり方についてもさらに検討をしていくべき課題、あるいは強化をしていく課題があるだろうと思います。そういうものには真摯に対応していかなければいけないと思いますけれども、自主規制の役割というものが重要であるという位置付けを法律体系上もしていくということが必要であろうというふうに思います。

その場合に、一つだけ今の制度で問題があるとすれば加入は任意になっているのですね、今の制度は。ということは、どれかの自主規制に入っていなければいけないということになっていない、どこにも入らないということが可能になっている、このことは投資家が安心して市場に入ってくる、あるいは安心して仲介業者と接触していくという中で非常に投資家の不安を呼ぶ仕組みになっているのではないかと思います。もちろんそれはフリーライダーでありますよということを言っているのではなくて、行政が直接その社内規程等を整理させるという対応になっているわけでありますけれども、現実問題として非常に数が多い仲介業者をそういうことだけで対応できるかということでありますので、いずれかのSROに加入を義務付けるということによってエンフォースメントの全体としての仕組みを確保していくということが必要ではないかというふうに思います。

それから、投資サービス法で横断的なルールができてきたときに自主規制機関がどうあるべきかというのが非常に一つの課題だと思います。同じような業務を行う、業務にかかわる自主規制については一つの自主規制が対応するのが望ましいという感じもいたしますけれども、いずれにしてもこの点につきましては自主規制機関側での努力なり検討なりというものも必要なのではないかというふうに思います。

それから、5ページのコンプライアンスのところで、前回斎藤先生からもお話がありました公認会計士による監査をコンプライアンスについて入れたらどうかと、入れることについてどう考えるかということでありますけれども、斎藤先生もおっしゃいましたけれども、公認会計士の監査というものがコンプライアンスの強化ということに結びつけるというのは実際問題としてはなかなか難しいのではないかと思います。コンプライアンスの強化は非常に重要なことでありますので、これにつきましてはまさに内部体制の強化ということで自主規制機関がいろいろな分野で果たしていくべき課題であるというふうに思います。

いろいろ申し上げて恐縮でございますけれども、以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかに。それでは、岩原委員、お願いします。その後、石橋委員、高橋委員の順でお願いします。

○岩原委員

民事責任の問題と、それから自主規制機関の問題について一言申し上げさせて頂きたいと思います。

民事責任の問題については、原委員、それから前回黒沼委員がご指摘のありましたように、エンフォースメントを強化するためにできればクラス・アクション等の制度を整備する必要があると、私もそのとおりだと思うのですが、一方であまりにも現実の壁が厚いので言う元気がなくなってしまうのですけれどもやはり本来はあるべきものであるし、それから、とにかく日本の場合、民事責任を実際追及した事件があまりにも少ないので、外国、例えば最近ですと中国などからよく調査の方お見えになるのですけれども、何件事件がありましたかと聞かれて答えるのに詰まってしまうことがあるわけでありまして、少しでもこれはエンフォースされるようにしなければいけないので、壁は厚いけれども努力して頂きたいということと、それから、少しでもできることをやるということで、アメリカの網かけ、スクリーニングまではいかないにしても、証券については監視委員会があるわけですから、そこでの摘発されたりした資料を一般の民事責任の際に提供できるようにする、そこで収集した証拠を一般の民事責任を追及する被害者の方が利用できるようにするようなことを考えるとか、少しでもできる範囲で金融庁としてもやれることをお考え頂きたいということをお願いしたいと思います。

それから、もう一つの自主規制機関のことですけれども、先ほど高橋委員がご指摘になったのと同じことを考えておりまして、確かにここに、4ページから5ページにかけてSECの提案をされた案が出ておりますけれども、確かにこれ理想なのですけれども、日本はその前の前の段階ではないかと思っていまして、現在の法制上、ある程度は自主規制機関的な性格を与えられているのは証券業協会ぐらいではないかと思っていまして、それ以外の分野においては自主規制機関的なものがそもそもない場合が多い。それから、さらにさっき高橋委員がご指摘のありましたように参加が任意になっているものですから、少しでも業界の方で自主規制をして健全化しようとするとかえって会員がどんどん逃げて行くということが現に起きている。例えば、貸金業協会などは会員数がどんどん減っているわけでありまして、貸金業者の中で協会に参加している方の数が傾向的に減っているわけでありまして、そうすると幾ら自主規制機関が努力されようとしても、努力すればするほどどんどんどんどん実際には非会員の方が増えていくという結果になってしまうわけであります。

最初に書いてありますように現在の金融庁の監督、そしてエンフォースメントの体制が極めて不十分であることは明らかでありまして、やはり自主規制機関に大きく頼らざるを得ないところがあると思っていまして、それを考えますと自主規制機関を整備していくということがぜひ必要であって、そのために証券業協会以外の他の金融分野においても自主規制機関的なものがつくられる必要があるし、しかもそこにはできれば参加強制をする、弁護士会のようなところまで行くかどうか別にしてそういうことも考えられるべきだというふうに思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、お隣の石橋委員、お願いします。

○石橋委員

恐れ入ります。田中委員、それから高橋委員のご意見の関連で一言述べさせて頂きたいと思いますが、2ページ下の関係省庁との連携強化ということはもちろん私も大賛成ですけれども、真の実効性の確保という面から見てまいりますと、例えば変額保険の場合、届出、それから商品関係については保険関係、そして販売規制はこれからそういう投資サービス法というふうに本当にきれいに分けることができるだろうかと。したがって、EU指令とか、ドイツでは変額保険が保険関係規制にとどまっているということもこういうこともあってではないかというふうに推測をしております。

したがって、商品誕生から販売まで、できればやはり1本の監督というような形ということも本当の意味でのエンフォースメント、それから池尾先生が使われた言葉のインプリメンテーションという面では妥当な面もあるということも十分議論もして頂きたいというふうに思っております。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、オブザーバーの高橋委員、お願いします。

○高橋(伸)委員

論点3点目の自主規制機関の機能強化で苦情のことについての部分で意見を申し上げたいと思います。

先ほど岩原先生からご意見ありまして、岩原先生が座長をしていらっしゃいます金融トラブル連絡調整協議会の会員でございますので、その点から申し上げたいと思います。

これができる前に、前回も他の委員の方からご発言がありましたけれども、金融の裁判所的なもの、第2裁判所的なものがあってもいいのではないかと、こういう議論も99年、2000年にあったわけなのですが、機関間連携でとりあえずやってみましょうということでスタートして今5年目に入っているという状況でございます。これでトライしてみてのまとめとして2点申し上げたいと思います。

1点目が、この部会にFXであるとか、あるいは第二部会にも無認可共済のルールづくりが上がりましたように監督官庁もないような商品、そういうものをどうしていくのかというのが協議会での議論であったわけなのですけれども、今後もそういうふうに金融審議会に一つずつ戻していく形というのは非効率であるというふうに思っております。この辺の機能は、多分7月に金融庁でスタートする利用者相談室の方である程度負担することになるのではないかと思っておりますが、これも前回発言しましたようにあっせんがないという形でいいのだろうかということを問題意識として持っております。その利用者相談室の結果を企画・立案のみならず検査、監督に生かしていくということなのですが、この検査、監督に生かしていく上でのルールづくりというのも行われないと、やはり事業者にとっても消費者にとってもその利用者相談室というものの信頼性が得られないのではないかというふうに思っています。

2点目は、自主規制機関はごく一部にとどまっていると、これは岩原先生からご説明がありましたけれども、金融トラブル連絡調整協議会に参加している団体のほとんどが自主規制機関もどきと言ったらいいのでしょうか、事業者団体がほとんどでございまして、会員組織ですので話し合いのテーブルに強制的に着けさせることができなければその紛争解決のあっせん等々の結果に関してもイギリスのオンブズマン制度とか、あるいはオーストラリアでやっているような平面的仲裁という形にもなっていないということで、実際上は消費者としてはそこに相談しても、逆に裁判に行くまでの時間がかかり過ぎるというような今問題も出てきております。日証協のあっせん制度のように、やはり法定化すればそれなりの機能がついてくるのですけれども、現在ある組織それぞれ法定化していくのか、あるいはそれは非効率だからここのオンブズマン制度のように一元的に管理していくのか、この1点目の利用者相談室と含めて議論をして頂きたいというふうに思っております。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、池尾先生、どうぞ。

○池尾委員

4番目の投資サービス業者のコンプライアンス強化の点に関連して意見を述べたいのですが、ちょっと私前回欠席してしまったものでちょっと議論を十分踏まえないで発言することになるかもしれないので不適切な点があったらお許し頂きたいのですが、私自身の理解としてコンプライアンスのあり方に関する現代的な考え方というのは、規制当局が直接個別にルールが守られているかどうかをチェックするというよりは、基本は業者自身のコンプライアンスであってルールを遵守する体制、内部統制とかコンプライアンスの体制を業者がきちっとつくって、それが実効的に機能しているかどうかを監督当局がチェックするという、そういう形が新BIS規制の考え方なんかも含めて、エンフォースメントについての現代的なスタイルではないかというふうに私は理解しているのですが、そうすると、当然投資サービス業者のコンプライアンス体制について強力なものを求めるというのが自然な発想なのですが、そういうふうに考えていたのですがちょっと別の場で指摘を受けて、こういうのは業者がある程度の規模の大きな組織である場合はこういう考え方で問題はないと思うのですが、事実上個人事務所のような形でアドバイス業務とかをやるようなビジネスモデルというのはあるわけですね。特にアメリカとかだとそういうスピンオフして、お客さんを引き連れて事実上1人で商売をしているとかという人が全米に何千人とかいるわけです。

そういう人たちの存在がある種市場の活力を支えているというような面もあって、ここの記述だと業者の規模にかかわらずかなり強い要件を求めるべきではないかという書きぶりになっているのですが、その業者の規模にかかわらずというところで、金融サービス業における多様なビジネスモデルの展開ということにかなり障害となってしまうような側面があるのではないか。どういう解決を考えればいいのかというのは私自身ちょっといいアイデアはないのですけれども、金融業において大規模な組織しか存在できないような産業構造がいいかというと私はいいとは全然思わなくて、規模の経済が非常に大きく働いて集約化した方がいいような業務のレイヤーというのは事務処理を中心にしてあると思うのですけれども、サービスを実際打ったりするインターフェイスの部分というのはむしろ非常に俗人的で、別に大きな組織が強いとかということではなくてほとんどそれぞれの人の問題になるような面が強いと思うので、そういう人たちが個人レベル、事実上個人企業のような形で金融サービス業の中で活動することを許容しながらこういうルールの徹底をやっていくという、そういう枠組みもやはり考えなければいけなくて、やはりある程度規模の大きな業者だけをイメージしてここを議論してしまうとちょっと抜け落ちる部分があるのではないかというのを感じましたというか、指摘を受けましたので、少し意見として述べさせて頂きたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

鮎瀬さん、どうぞ。

○鮎瀬幹事

ありがとうございます。行政体制の整備に関しまして1点申し上げさせて頂きます。

事務局で整理されている資料を拝見しますと、人員増強の必要性といった点につきましては非常に具体的にわかりやすく書かれているかと思うのですけれども、組織のあり方といいますか、業行政と市場行政と、それから制度の企画・立案といった機能の関係についてどう考えるのか、組織のあり方についてどう考えるのかといったところは事務局の立場でなかなか書きづらい面もあるのだと思いますけれども、ややそこは具体的に書き込まれていない部分があるのかという感じがいたします。日本版SEC論に代表される問題意識に正面から答えていくという意味では、やはり、そういった組織のあり方論、あるいはその中での権限配分のあり方論、そういったところについてもより具体的なご議論をお願いできればと思っている次第であります。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

こちら側はなかなか気がつきませんけれども、ご遠慮なくご発言頂ければと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

田島委員、お願いします。

○田島委員

課徴金のあり方についてなのですけれども、事前規制から事後監視に舵を切りました以上は市場に参入してきたものがルールを守らない場合にきちんとした制裁を科していかないと制度自体が維持できないということになると思います。それで、その制裁のあり方として刑事罰は反社会的で極めて悪質な行為に限定して科せられるものという扱いになっておりますので、それに至らない重大なルール違反については行政罰としての課徴金を科していく必要性があると思います。

課徴金の対象範囲も広げていくべきだと思いますけれども、その課徴金の額として不当利得の剥奪ということに限定するのみならず、懲罰的で一般予防的な効果を持つような金額に引き上げていくということも必要だと思います。それで、課徴金の制度ができましてもそれが運用できなければ絵にかいたもちで無になりますので、運用していくお立場の監視委員会の職員の体制を充実して頂きたいと思います。

それと、公務員の定数を削減するというような今逆風の中で、金融庁といえどもこれ以上の増員は無理ではないかというような意見も聞こえてまいりますけれども、政府全体を見渡しますと、まだまだ時代の変化とともに不要になっていながら既得権に守られて維持されているようなポストも多々あると思いますので、そういうところも見直して整理していけば監視委員会に振り向けられる定員というのも必ず確保できると思いますので、それにひるむことなく増員のご努力はして頂きたいと思います。

以上でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

高橋委員、どうぞ。

○高橋(伸)委員

先ほどの石橋委員のご意見につきまして私の考えを述べさて頂きます。

ドイツの例を挙げられて、販売に関しても保険業の規制でいいのではないかというご意見でございました。私の認識では、ドイツというのは公的保険制度の改革でこれから変額年金 401Kの市場が活性化するところでございますので日本と同じような形になっているという理解でございます。ですので、私どもとしましてはやはりアメリカとかイギリスとか既に導入されて、そこできちんとした規制がつくられているもの、ここを参考にしながら考えていくのが適切ではないかと思っております。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

それでは、吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

自主規制機能の連携の件でございますが、自主規制機関の、これは前回も発言させて頂きましたけれども、本日は連携の強化に当たっての具体論を申し上げておきたいのですが、実はSECにもこのような規則があるようでございますが、2つ以上の自主規制機関に加入している場合には、やはり自主規制は他の自主規制機関と情報の共有を図ることができるような規定があるように聞いておりまして、こういう連携というのは当然投資サービス法で幅広い規制をしていくという話になりますと自主規制機関の要請に応じて他の自主規制機関、2つ以上に加入している業者さんの場合、情報の提供を求めるようなことが法律的に手当がされることが重要なことだろうと思っておりますので、その辺はぜひお考え頂きたいと思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、水上委員、どうぞ。

○水上委員

今回の論点(ルールの実効性の確保)の中で、先ほど岩原委員がおっしゃられたこととも関係してくるのですけれども、資料の中で立てられている議論の柱(マル1資本市場行政、マル2市場監視機能、マル3自主規制機関、マル4コンプライアンス)については、内容自体が非常に重層構造になっているわけです。我々今それぞれ1番については、2番についてはというような形で議論を行っているわけですが、先ほど岩原委員がおっしゃられたような監督官庁の体制の整備と自主規制機関の機能との問題など、現状、重層構造のどこが一番弱いのかということなどを踏まえた上で全体の構造を議論していかないといけないという気がしています。一つ一つ取り上げて平面的に議論をすると、どれも重要で強化しなければいけないということになって過剰取組の可能性が高まるので、現状を踏まえた上で考えていくということが必要だと考えています。

そうしたことを考えるときに、私自身は次第に企業にしても、行政もそうだと思うのですけれども行動規範が要求される傾向にあり、先ほどの話ですと貸金業協会ではメンバーが減っていくというような状況の中で、それであれば行政面を強化しなければいけないのかというと、恐らくそうではなくて、やはり民間の中での自浄作用が働くような形でやっていくためにはどうしたらいいかという枠組みで制度設計をやっていかなければいけないと思うのです。どうしてもそこの出発点としての重層的な現実の部分というのが、こういう企画の段階ではなかなか認識の共有化が難しいというところがあるので、そういった問題点の整理があると大変助かると考えています。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

たくさん大変貴重なご指摘を頂きまして、いろんな問題があることがわかりました。ありがとうございました。全部やるのもなかなか厳しそうですけれども、いずれにしてもまず考え方をきちんとまとめる必要があると思いますので、岩原委員や今水上委員からご指摘頂きましたように、ずぐやれそうなものといった順番付け、そういう角度も踏まえた上で幅広く頂きましたご指摘についての整理をしてはどうかというふうにも感じますけれども。このあたりで次のテーマに移らせて頂いてもよろしゅうございますでしょうか。

それでは、どうもありがとうございました。次のテーマに移らせて頂きます。

論点5という資料2、「市場のあり方について(1)」というものについて事務局からのご説明をお願いします。

○大森市場課長

この資料もかなり平面的かもしれませんけれども、これまでの議論では投資商品の範囲にしても投資商品を提供する投資サービス業の範囲にしてもその業に対する規制にしても、可能な限り分立した制度を横断化していくのが望ましいという前提に立って、基本的には証取法のルールを一般化してよいのかどうか、場合によっては証取法のルールそのものを見直すべきかどうかといった意見を頂いてまいりました。その意味では、この市場のあり方という論点も分立した制度を横断化していくのが望ましいのではないかというのが基本的ストラクチャーになります。ただ、これまでの論点に比べますと、この市場という取引の場をめぐってはアメリカもEUも足元で試行錯誤を続けておりますし、それぞれが異なる歴史や取引慣行を抱えてどのモデルが最も望ましいのか、より断言しにくい傾向が強いように思われます。

例えば、明後日から最良執行義務が施行されますが、一昨年の秋、池尾先生のワーキングでこの議論をしていましたとき、ルールか裁量かという場合の裁量執行義務の導入という報道がなされまして、かつほとんどの人が間違いに気づかなかったものですからあまり笑っていられないという気がしました。伝統的な取引上の外に電子取引システムが形成されどんどん大きくなっていったので、顧客にとって何が最良執行かという問題が提起され、それ自体は日本にとっても重要な問題ですが、問題が形成されてきた背景が異なるところで制度としてどう仕組むかというのはなかなか難しいと思います。

ちょっと一々細かく資料を追っていくと時間がありませんので、3ページの(1)にこの点、幾つか問題提起をさせて頂いておりますが、EU指令では、注文執行サービスだけではなく資産運用サービスにも最良執行が義務付けられ、かつデリバティブを含むすべての投資商品に及ぶものとされております。明後日からの制度の細目をつくっておりましたときに、ある投資商品は、現実にはプロの間でしか取引が行われていないのだから最良執行義務をかけなくてもいいではないかと主張するのが実務家で、かけておいた方がアマが参加するときに安心ではないかと主張するのが行政官で、ここにも鶏、卵の一つの事例がございます。

真ん中あたりにありますアメリカのトレード・スルー規則におけるSECと業界も似た構図になっていまして、複数の市場で取引できるときに顧客にとって最も有利な価格の市場で執行するのはもちろん顧客にとっていいことですが、現実にはニューヨーク・ストック・エクスチェンジが圧倒的に大きいですから、そこでの価格とマッチするまでほかの取引システムは待っていなきゃいかんという実態に業界の不満が強いということもあるようでございます。価格とスピードの兼ね合いですね。そもそも値幅制限のないオークションで個別銘柄を割り当てられたスペシャリストに流動性確保を依存しているような取引所と、完全に自動化された東証システムという違いを踏まえて市場間競争を実行あらしめる制度を考えていくのはなかなか微妙な課題だと思われます。

マーケット・メイクでは、顧客注文の指値が自分の提示している気配よりよければそちらを出さねばならないのがオーダー・ハンドリング・ルールで、日本でもマーケット・メーカーが相互に競争して顧客に有利になるという面はあるのでしょうけれども、日本よりはるかにマーケット・メーカーの多いアメリカでこういうルールが存在することの意味は重いと思います。

(2)は、この最良執行義務を担保するための価格公表のあり方をどう考えるかでございます。

2の市場制度の最初は、冒頭申し上げた取引所における上場投資商品の範囲でございます。一昨年の改正で証券取引所と金融先物取引所は持株会社や親子形態での統合が可能になっておりまして、それぞれの投資商品が同じ法律に規定されれば本体の統合も可能になるのが自然だと思います。あと数カ月しますと東京金先では外国為替の上場商品が登場すると思いますが、どこかで申し上げたと思いますけれども、商品取引所が例えば外国為替8割、他の商品2割といったハイブリッド商品を開発しますと、それは現行法の脱法行為であるから認められないと言わなければならないわけです。あるいは外国為替取引の将来性に着目して、商品先物業者の方が大阪に金融先物取引所をつくろうという動きも報道されております。さらに、欧米では出てきたが日本ではまだないさまざまなタイプのデリバティブ取引がどこの取引所の仕事なのか判然としないこともございます。

昨年、釜山の総合取引所の発足を記念するKBS放送のインタビューを受けましたら、日本ではまだ取引所や根拠法や監督官庁が分立したままだそうですけれども我が国の制度はどう思いますかと聞かれまして、内心むっとしながら褒めてあげなければいけませんでした。もちろん政策的に一緒にしようという話ではなくて、制度的に持株会社統合が可能になっても東京金先はどこかの証券取引所とということにはなっていないわけで、投資サービス法が分立した制度を横断化して投資サービス業の類型を多様化しても、その中でうちは資産運用業だけやりますということは当然あるので、取引所についてもそれと同じではないかということでございます。金融庁の所掌替えの論点を含んでおりますが、法律に規定された縄張りの範囲内で商品を開発するよりは相互乗り入れ可能であった方が国民の利便にかなうことはかなり自明ではないかと思います。

ちなみに、この延長線上で前回頂いた(7)ですか、6ページMTF私設取引システムがあって、ここでは現行法を前提にした記述になっておりますが、投資サービス法の私設取引システムにおいて、投資サービス法の投資商品の扱いが統一されているのは当然だろうと思います。

次に、(2)でございます。上場制度や上場企業のガバナンスという論点です。

ソフトバンクも出てきたころは今のライブドアみたいな言われ方をしていましたけれども、最近は総体的に評価する論調が目立つような気がします。2年で失敗したとは言え、ナスダックジャパンという構想が東証マザーズの開設を早めて、従来からの店頭市場、ジャスダックの改革を促して新興市場活性化の契機になりました。一方、ここに書いてありますようにIPOが増えた当然の帰結として上場企業としての資質を問われるようなケースも増えておりまして、上場や上場廃止の基準、取引所における審査、管理の重要性が一層高まっております。後の方に書いてあるグリーン・シートも含め、発展途上企業への投資につき、システムとしてさらに対応すべきことがあるかどうかということでございます。

次のガバナンスについては従来からいろいろな議論があって、東証でごく当たり前の原則をまとめるのすら大変に難航いたしました。西武鉄道以来、一体誰の方を向いて経営しているのかという意識が高まって、加えて経営権の移動をめぐる最近の出来事がそれに拍車をかけていると思います。そういう意味で何年かたって冷静に振り返ると、日本の上場企業のガバナンス向上の功労者はライブドアだったなんてことになるかもしれないですね。

商法と証取法の関係はこれまでも当部会で部分的に議論がありましたが、当然に相互作用がありまして、経営権の移動については仕掛けられる側、仕掛ける側の――仕掛けられる側、失礼しました、防衛策だけでは完結しないので、仕掛ける側に何を求めるのかという入り口の公開買付制度と併せて考えていく必要がございます。アメリカですと連邦法である証取法が州法たる商法を引っ張っているように見えますけれども、日本では役所が違うなんていうのは国民に対する言い訳にならないので一層強調して仕事をしていかなければならないということだと思います。

以下、株式の大幅分割、転換価格の下方修正される転換社債、いわゆるMSCB、親子上場、IPO銘柄の販売手法などをめぐる議論がございます。市場で起こるさまざまな現象はそもそも市場である以上やむを得ないことなのか、是正すべきことなのかから始まって、是正すべきだとしたら誰の仕事になるのかが必ずしも自明でないケースが多々ございまして、特に行政と自主規制の役割分担は、先ほどもちょっと議論がありましたが私ども日常的に試行錯誤しているところでございます。例えば、経営権取得を目指した時間外取引というのは、やはりそれ自体を今後は違法であるということにしないと公開買付制度が形骸化してしまいますので、自主規制ではなく行政が応急手当で法律改正しようとしているわけです。

一方、百分割といった大幅な株式分割をしますと、これまでのところは新株発行までの間に必ずバブルになって崩壊をしますので逃げ遅れた人は大けがしますし、そもそもこれほど大幅な分割というのは投資単位を引き下げて投資しやすくするというよりは、身の丈を超えた時価総額に膨らますために話題づくりの自転車操業をしなきゃいけなくなっているようにも見えます。

また、ここにありますMSCBも借株を売り崩してさやを稼ぐといった明らかに既存株主の利益を損なう使われ方をしているケースも見られます。この両方を組み合わせたりしますと監視委員会が仕事をすべきケースもあると思いますが、制度論として企業の資本政策に法律で線を引くということではないだろうというのが私どもの感覚でございまして、したがって、取引所として発行体の姿勢をただすとか、証券業協会として弊害のない少ないシステムの構築を促すといった自主規制サイドの問題として取り組まれているわけでございます。分割しただけで企業価値が向上しないという当たり前のことにいつまでも投資者が気づかないはずはないだろうとか、MSCBでも調達した資金によって希薄化を補って余りある企業価値向上の可能性という意識が背景にございます。あと、親子上場、IPO銘柄の販売手法、先週からは貸株ですか、誰がどう対応するのかしないのか、問題の性質に応じて考えていくのだと思います。

次の(3)取引所の制度、自主規制についてはほとんど既にカバーをしてしまいました。毎年のように見直してきた制度を現時点でどう評価し、今後どういう方向観を持つのが望ましいかでございます。

その次、(4)の一部残っております上場商品の認可制度も行政と取引所の役割分担の一つで、かつて行政がすべての有価証券を個別に上場承認しておりました時代に、それによって何か付加価値が国民にとって高まっていたかというとそんなこともないような気がしますが、取引所における審査がより慎重になっていたということはあったかもしれません。先ほど申し上げましたように上場商品化がよりリスキーになってきていますから行政が関与するというのは理論的にはあり得るでしょうし、UKFSAもロンドン・ストック・エクスチェンジの公共性がますます怪しげになっているので、上場商品の承認権は留保するということでした。ただ、日本の制度はもう後戻りできないところまで来ていまして、やはり上場審査というのは取引所が責任を持って行う、事後的に審査上の問題が発覚すれば行政のサンクションということしかないのではないかという気がしております。平時には届出制で何が上場されているのか把握をしておくということではないかと思います。

あと、残っております地方証券取引所とグリーン・シートについては、一昨年の取引所ワーキングでも議論されて、前者についてはなかなか決め手がなく、後者については所要の改正を昨年行いましたが、併せて投資サービス法を前提としてご意見があればということでございます。

最後に、ディスクロージャー、これはアメリカでもEUでも日本でも不断に見直され、岩原先生のワーキングで精力的に検討されていますが、人々を興奮させる事件が起こるとルールの不在というようなことを言われるのはちょっと残念な気がいたします。証取法にはいろいろなタイプのルールがあって、前回までの適合性原則とか誠実公正義務とかは人の道に根差しているようなルールですけれども、立場上、知った情報に基づいてもうけちゃいかんという今では当たり前になったルールは昭和63年にできまして、同じく今では当たり前になった損した顧客に補てんしちゃいかんというルールは平成3年にできまして、いずれも市場における公正性とは何かを考えさせられるような事件を契機にしております。これに比べますと、ディスクロージャーのルールは一見テクニカルに見えたりルールの目的がわかりにくいものもありますけれども実態経済への影響は非常に大きいものが多いです。したがって、現在起こっていることを契機として考えなきゃいかんことはたくさんありますが、世の中が興奮しているときにばたばたやると往々にして過剰な制度をつくってしまうのも万国共通なので、公開買付については経営権の移動に関する基本的な考え方あたりから始めるのがいいような気もします。仕掛ける側にかなりの覚悟を求めるEU型の入り口のハードルの高い制度がいいのか、仕掛ける側も守る側もいろんなツールがあって何を使うかによって見識を問われるアメリカ型がいいのかといったことでしょうか。

なお、資料を個別に参照している時間がないのですが、EUのTOB指令につき、現在来日されておりますライト金融市場局長は、ポリティカルな議論の最大公約数は弱者保護に帰着して競争力という視点に欠けるとかなり酷評されておりましたことをご紹介しておきます。

大量保有報告についても、買収目的なら提出期限の特例は認めるべきでないといった内心の動機で制度化しようのないような主張が出てくるというのはまだちょっと興奮が冷めていない状況を反映しているのかもしれません。80年代のアメリカで敵対的買収が盛んに行われた結果、それが企業価値の向上に必ずしもというか、かなりの場合つながらないということが認識されてM&Aの動機も手法も多様化した、その四半世紀の経験を日本人は今回の1点だけで短期間に急激に学びつつあるので、その帰趨も見ながら冷静に検討していくということではないかと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

この論点5が、一応一通りご審議頂く大きな整理で言うと最後になると思うのですけれども、いろいろまた難しい問題が含まれているように思います。今日は時間のある限りご質問、ご意見を頂き、もし時間が不足した場合にはまた次回以降に引き続いてのご審議ということでよろしいのではないかと思います。

それでは、どなたからでも結構ですのでお願いします。

田中委員、どうぞ。

○田中委員

まず、最初のポイントの市場の透明性・公正性のところで、マーケット・メイク制度の件ですとかいろいろと書いてあります。欧米ではこういうことになっているので日本もこうしませんかという、そういう書きぶりになっているのですが、市場そのものに関しましてはちょっとアメリカと日本の成り立ちというのは全然違っているというのが私の認識です。アメリカの場合は基本的に純粋なオークション市場が存在せず、基本、ほとんどがマーケット・メイク絡みというか、ナスダックの方はマーケット・メイク、それからニューヨーク証券取引所に関してはスペシャリストがいますのでこれもマーケット・メイク類似市場みたいな形になっています。したがって、そのマーケット・メーカーというのは流動性を強調する反面、当然業者としての収益を取ろうとします。そこで投資家の立場に立った形の保護規定というのが必要になってくる。一方、業者の方は何とかその既得権益を守ろうということでそれを手放さないので、その辺のいろいろな攻防によってアメリカでは複雑なルールになっているというのが私の解釈です。

それに対して日本の場合は、東京証券取引所を初めとしてほとんどがオークション市場でマーケット・メーカーが介在せず、売り手と買い手が同一の値段で売買が成立する、これが基本パターンになっています。現状、日本の株式市場でマーケット・メイクによる売買量がどのぐらい1日に発生しているかというと、平均すると大雑把に言って0.2%、99.8%がオークションで売買が成立しているという現状があります。マーケット・メイクをどうする、こうするという問題は0.2%の取引について皆さん議論しましょうということになります。

それから、あと日本のマーケット・メイク制度は、スタートしていろいろなじみがなかったということで相当批判を浴びて、その結果2年前から日本のマーケット・メイクのやり方はちょっと欧米とは違って完全にオークションに近い形になってしまっています。つまりジャスダックでの取引形態というのは、個々のマーケット・メーカーが注文を抱えることなく全部それがジャスダックの方の市場に注文が流れてしまいます。したがって、例えばここで、この資料に沿って若干説明しますと、3ページ目のところの最初の最良執行義務のあり方というところで、上から8行目あたりにあります「また、欧米において一般化してきているマーケット・メイクにおける指値注文表示ルール(オーダー・ディスプレイ・ルール)を我が国でも取り入れることなどについてどのように考えるか。」とあります。このオーダー・ディスプレイ・ルールというのは、アスクビッドの間に注文が入ってきたとき、その委託注文を表示するルールですが、実際のマーケット・メイクでは、表示せずにそこまでビッドなりアスクをその瞬間だけ上げるという構造をとります。これはあくまでもマーケット・メーカーが委託注文を自分のところでコントロールできると、コントロールするということはそれを経済的にも持続できるという前提のもとに成り立っている仕組みになっています。それに対して今のジャスダックのマーケット・メイクの仕組みというのは、先ほども申し上げましたようにすべての委託注文が全部ジャスダックの方に行ってしまいます。マーケット・メーカーという名前はついていますけれどもその注文を自分でコントロールできるという性質のものではないので、これ自体どういう趣旨でここに書かれたのかが、ちょっと理解に苦しむようなところになっています。

したがって、殊にマーケット・メイクに関して何かマーケット・メーカーが不当利益を上げるような余地が今存在するかというと、制度的には存在しません。仮にこういう制度を導入しようという議論を始めた場合、今後何が起こるかというと、2年前にセントラル・オーダー・ブック方式にしたことによってマーケット・メーカーの収益性というのがほとんどなくなってしまってマーケット・メーカーをみんなやめようとしています。そういうことでこのあたりのところをアメリカの例を倣って何か導入しようというのは何を引き起こすかというと日本でのマーケット・メーカーがいなくなると。したがって0.2%の取引そのものをやめようということであれば、それはそれで意味がある議論かと思います。いずれにしてもマーケット・メイクというのはそういう存在です。

それからもう一つ、MTFに関しまして、この議論に関しても現在MTFでの売買量が、1日の売買量がどのぐらいあるかというと、先ほどマーケット・メイクは0.2%と申し上げたのですが今度これは0.02%の議論になっています。ほとんどですからないに等しいものです。これが今後拡大していくのかということに対しては、答えはノーだと思います。だからこの一番世界で最良であり、最大のMTFは何かというと東京証券取引所という答えが返ってくるというのが客観的な分析なので、先ほどのマーケット・メイクの議論にしても、MTFの議論にいたしましてもちょっとそのマーケット構造が全然違うので、アメリカがこうだから日本もこうすべきだとかというのは実態とは著しく乖離しているというふうに思います。

1番目の論点については以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

いかがでしょうか。今の論点についてでも結構ですし、それ以外の論点についてでもご自由にお出し頂ければと思いますけれども。

特に何か、急に難しい話が出てきたようにも思いますので、ちょっと時間つなぎに私から田中委員にご質問させていただきます。アメリカでオーダー・ディスプレイ・ルールを入れたことによってマーケット・メイク制度はなくなってしまおうとしているのか、全然そういうことはないのかということが一点と、それから、日本でそのジャスダック市場におけるマーケット・メイク・システムという話がありましたけれども、ジャスダックへつながないで注文をつなぐことも今後は認められるようになるわけですよね。そういう場合の最良執行義務の話と、それからそういうジャスダック市場なり、あるいはもちろん東証なら東証の市場もそうですけれども、そっちへ行けばオークション・システム、あるいはほとんどそれに近いおっしゃったようなマーケット・メイク・システムで、その辺はどう整理したらいいのかということと、もう一つ、すみません、最後に0.2とか0.02というのは多少大きな目で見たときにどうしていったらいいのか、増やしていくような政策がいいのか、それは自然にそうなるものはそうなので、0.2とか0.02であればそれはやっぱりそういうものだと。今の実態はそうではあるとして、ちょっと将来的に最初におっしゃった貯蓄から投資へというような大きな視点から見た場合にどういうふうに物事を考えたらいいのかというのが3点目です。教えて頂きたいと思います。

○田中委員

今の質問に全部的確に答えられるかどうかわかりませんが、まず1番目の質問に関しましては、アメリカの売買取引、ほとんどが先ほど申しましたようにマーケット・メーカー制度になっています。アメリカの、これは憶測なのですが、ニューヨーク証券取引所でも実際はオークション取引の方に変えたかったけれども、基本的にはスペシャリストの利害があり、既得権益を剥奪することが不可能だったのでそのままできていないという状況だと思うのです。ヨーロッパに関してもどんどんオークションの方に一部変わっていることを考えると、投資家サイドのニーズからすればそれが合理的だと思います。

それに対してアメリカの方では既得権益があって、それが剥奪できないとなった場合、どうしたら投資家の利益を守れるかという形でマーケット・メーカーに対してより厳しい要求をつきつけている、その一つのあらわれがここに書いてあるオーダー・ディスプレイ・ルールなどになっているということです。したがって、そのマーケット・メーカーがなくなるかという質問に対しては、マーケット・メーカーは既得権益を守ろうとしているのでどんなに厳しいルールを導入してもマーケット・メーカー制度そのものをなくさない限りなくならないというのが私の見方です。

それから、すみません、2番目が……

○神田部会長

日本のマーケット・メイク制度というのは今後どうあるべきかということで。

○田中委員

そうですね、ジャスダックの場合は、

○神田部会長

ジャスダックへ出さないで店内執行とかも可能であると思うのですが。

○田中委員

もともとこの96年か7年にかけての証取審の総合部会で日本の店頭市場が何で拡大しないのかというところから、日本でもマーケット・メイク制度を導入したらどうかという議論があり、その結果、98年秋から日本店頭証券でこのマーケット・メイク制度が導入されました。その当時は、私どもの方も積極的にそれを普及すべく広める努力をしてきましたが、日本での投資家の認識として、やはりオークション制度が合理的で使いやすいという認識が非常に強かった。マーケット・メイク制度によって流動性の本来ない銘柄、オークションだとそのままでは流動性ができない銘柄、これに対してマーケット・メーカーが入ることによって流動性を強調できる、ただそのかわりスプレッドをとられると、こういうことを繰り返しいろいろ説明はしてきたのですが、現状、オークション制度に100%慣れ切った日本の投資家の目から見ると、やはりオークション制度が一番使い勝手がいいという認識になっています。

その結果、どれだけいろいろと、これを推奨してもなかなかいかない。それで本来のマーケット・メイク制度である個々のマーケット・メーカーがそれぞれ値段を提示するという形に対して、まず投資家のサイドの方がマーケット・メーカーによって値段が異なるのはけしからんという批判が高まって先ほど申し上げたようなセントラル・オーダー・ブック方式に移行という現状を考えると、神田先生が今言われたように「ジャスダックに出さない形でのマーケット・メイクという可能性もあるのではないですか」という質問に対しては、可能性は論理的にはありますけれども、投資家はそれを利用したり、あるいはそれが合理性があるというふうには思わないのではないかというふうに考えます。

それから、3点目の今後のことですが、今までの過去7年間の経験を踏まえて申し上げますと、やはり日本の投資家というのは、これは個人もほかの投資家も含めてそうなのですが、やはりオークション制度のよさというものを120%認識していますので、今後もそのオークション制度中心でいくんだと、そこでの取引形態を望むということになるのだと思います。したがって、放置すれば自然に何か拡大するとかそういうものではないと思います。別の言い方を申し上げれば、何か制度なり対応、行政が遅れていたのでマーケット・メイク制度が育たなかったということではなくて、もともと経済合理性から見て発行会社や投資家にとって今の制度が、オークション制度が望ましいという結果になっている、そういうふうに理解しています。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

そのオークション制度一本でやっている中で、先ほど課長さんがおっしゃったようないろんなまた問題があるということだと思うのですけれども、なかなか難しい点が多いと思いますけれども、ほかの委員の方々いかがでしょうか。

はい、どうぞ。

○田中委員

1つ重要なポイントを言い忘れてしまったのですが、したがって、オークション制度をとる取引所で取引されるなかにおいては、最良執行義務のあり方ですとか価格公表義務というのはそれほど難しい問題ではないということになると思います。

○神田部会長

ありがとうございます。

どういった点でも結構ですので、今の点以外の点でも結構ですので何かございますか。

それでは、高橋委員、どうぞ。

○高橋(厚)委員

別なことなのですけれども、最良執行義務、先ほど来ご説明がありましたように、4月から導入されるということでいろんな準備ができているのだろうと思いますが、その中でEUの制度のように対象を広くとると、今は上場株券ということで適用されているわけですが、広くとることについてどう考えるかということが1つの検討課題だろうと思いますが、いろんな意味でなかなか難しいことが多いかというふうに思います。

そもそも最良ということの定義が、さっきもちょっとご説明ありましたように必ずしも価格が最良だというだけではなくて執行の可能性、あるいは執行のスピードでありますとかいろんなことの中で総合的に考えなきゃいかんということでありますが、それに加えましてこの範囲を広げていくことによって例えば非常に比較が難しい定型的なものではないので比較が難しいようなものが入ってくるというようなことにもなってくるわけでございますので、この対象を広げるというのは相当慎重に考えていかなければいけないのではないかなというふうに思います。いずれにいたしましても、この紙にも書いてありますように上場株券を対象として導入された制度の遵守状況というものを見守っていく必要が当面はあるのではないかというふうに思います。

それから、最後にグリーン・シートのあり方についてどう考えるかという問題提起があります。発展途上の企業に市場を活用する場を提供するという大きな目的というのは全くそのとおりでありまして、いろいろグリーン・シート制度につきましては改革をしながら利用しやすく、かつ信頼のある制度にするということでいろいろ努めているところでございます。今後、したがいましてこのグリーン・シートの活用について、今非常にグリーン・シートの利用は少ないと思いますのでもっと活用されるような制度にしていくために周知を図っていくというようなことが必要かと思いますけれども、ただもう一つ大事な点は、グリーン・シートを非公開株式でありますけれども、これについての規制コストいとうものをあまり高くして、今上場株式と同じような規制がかかっちゃうということでありますと結局は利用が減ってしまうということになります。コストとの関係ということも考えながら、規制コストということも考えながら、自由な上場予備軍としての位置付けというものを今後も保っていくということが必要なのではないかと思います。ただ、そういうことを前提といたしましても、このグリーン・シートというものをもっと広く発展途上企業、大森課長の言葉で言えば発展途上企業が利用して頂いて市場の層を厚くしていくということが必要だろうと思いますので、そういう面での今後のいろんな関係者の努力が必要だろうと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

どうぞ、今野委員。

○今野委員

冒頭に大森市場課長さんが触れて頂きました時間外取引の合法性とか、その後M&AやTOBなど、そういう金融工学的に見てそれぞれの合法性云々の議論がありました。これはマスコミの影響もあって一般市民にも大変興味をもたれるようになっていると思っておりますし、それをめぐっての価値評価も二分されているのかと思っております。そういう新しい動きを歓迎する傾向がある一方で、もう一つはやっぱり企業というものは生き物であって、長い時間をかけて生命力や魂を持って社会と共に生きている存在であって、ゲームのような手練手管や新しい金融工学バトルの対象になるべきものではないという考えがあります。私は両方正しいと思っておりますが、今回時とするとおびただしいステークホルダーズの存在というのが忘れられがちで、こういういろんな表面的な金融工学的な手法が目立ってしまったということがあると思います。

でも、私たちは今金融サービス立国とか金融改革とかというものを目指して頑張っていくわけですから、初めて新しいこういう動きが出てきたときに混乱するというのはある程度やむを得ないと思っております。なぜならば、改革というのは全くこれまで見えていないものに挑戦するわけですから。でも避けられる混乱とか不安とかというものはできるだけ排除していく知恵が必要ではないかと思っております。敵対的というのが本当に日本のメンタリティーにかなってエネルギーを発する手法であるものなのかどうなのか、敵対的であっても日本的敵対的という新たな形も模索する必要があるのではないかと思っております。

せっかくこういうことが始まったわけですから、これを目指すべき、あるべき本物の改革につなげていくトリガーとするのか、それができるのか、混乱と不安で終わってしまうことになるのか、世の中は大変な関心を持って見つめていると思います。そんな中でこの審議会の果たすべき役割というのは決して小さくないと思っておりますので、ぜひともこの大きな国民的な関心を上手く生かしながら金融の秩序ある、そしてまた市場とか経済界の現場と整合性のとれた金融政策インタラクティブにつくっていくことが大事なのではないかと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、岩原委員、どうぞ。

○岩原委員

4ページのこの上場企業のガバナンスのあり方についてちょっとご質問になるのかもしれませんけれども、この第2パラグラフのところに「会社法、経済団体等の制定する原則、証券取引法上の自主規制機関規則、証券取引法等による役割分担のあり方についてどのように考えるか。」という問題提起がなされた形の文章になっているのですけれども、広く知られているとおり、アメリカの場合には実際上の大企業のガバナンス・ルールは証券取引所のルールで規定されているということが非常に大きいわけです。サーベンス・オックスリー法も実際の具体的なガバナンスのルールについては、証券取引所にルールを規定することをいわば命ずる形の法規定になっているわけです。

アメリカの場合は、連邦と州の権限の問題がありますからそういう形をとるというのもある程度理解できるのですが、さらにイギリスを見ますと、ご御存じのとおりガバナンスのルールについてはコンバインド・コードという形で、やはり証券取引所のルールの形で規定されていて、そういうふうに外国を見ますと証券取引所のルールという形で、法律はベースのところのガバナンスのルールを定めて、実際の具体的なルールはむしろ証券取引所が上場している以上はこういったガバナンスのルールを備えておいてくださいという形で規定しているところが大きいわけですね。アメリカの場合は、さっき言いましたように連邦と州の問題がありますからそういう形にならざるを得ない部分もあるのですけれども、イギリスなんかは別にそういう問題がなくてもそういう形をとっていると。いわば法律というのは最低のところを用意して、あとは市場の中でそこのマーケットの力というか、証券取引所のルールで具体的なところはガバナンスをきちんとやるようにしましょうという考えをとっているわけですが、どうも日本はなかなかそうはなっていないわけです。

これは吉野委員、あるいは神田部会長ご自身それにかかわっていらっしゃいますのでむしろ教えて頂きたいのですけれども、日本でなぜなかなかそうはならないのか、そもそもそういう証券取引所の方のルールでそう決まってこないものですから商法自体の方でいろいろ決めざるを得ないと。そうなると法律が社外取締役なんかを強制するのかと、それが適当なのかというような批判も出てきてなかなかガバナンスのルールの形成が進まないところがあるわけですけれども、そこら辺どうしたらいいのか、そこら辺を部会長あるいは吉野委員に教えて頂ければありがたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございます。

笑ってないで一言だけ多少……(笑)。参加したことがありますので。参加したことがありますのでというのは、東京証券取引所で上場会社コーポレート・ガバナンス原則というのをつくったことがあるのですけれども、そのつくる過程に私も一メンバーとして参加しましたので、ちょっとここの第一部会の委員の立場を離れる形になりますけれども、今岩原先生のご指摘について一言だけ申させて頂きます。その場ではいろんな意見がありましたけれども、今の点に直接関係する点としてよく言われたのは、日本はアメリカやイギリスと違うと。商法で細かく規定していると。だから証券取引所で規定する必要はないと。ですから何か鶏と卵になっちゃっていて。今のお話を伺って。ですからこの第一部会としてはそれをどういうふうに今後考えていったらいいのかというところをご意見を承れれば非常にいいように思います。

吉野委員、何かございますか。

○吉野委員

日本でコーポレート・ガバナンスという言葉が、日経新聞上で初めて出てきたのは1991年でございまして極めて新しい問題でございます。そこから数年の間は日経新聞の記事の検索をいたしますと年間にわずか2桁の言葉でございまして、ここ四、五年ですね、3桁になったのは、ここのところは毎日コーポレート・ガバナンスなり、いわゆる企業統治という言葉が新聞記事にならない日はないという状況になってきたということでございます。数年前までは、極めて関心が薄い分野でございました。神田部会長がおっしゃられたように初めて取引所でその問題に取り組んだというのは一昨年からのことでございまして、極めて広範な意見がございました。最後のところは、ごく当たり前のことしか書いていないねとか、OECDなんかと比べるとどうも随分遅れた書き方しかされていないではないかのような評価を受けておりました。今度の事件がきっかけになりいろんな議論が沸き起こって、ある意味ではいろいろやりやすい環境は整ったのかなという感じはしております。今後のところは我々としてもこの問題にはまさに大きなテーマとして取り組んでいきたいと考えております。

特に今回、西武鉄道事件以来、上場会社の方から宣誓書というものを出して頂くというようなことで、ある意味では経営者に対する啓蒙活動を中心にやっていかなければならないと認識しております。ディスクロージャーワーキングにおいても、いわゆる有価証券報告書に対する確認書の提出の問題とかいろいろな議論があり、任意の提出になったということがございましたけれども、上場規則上ではこれは強制にしようではないかということをやったりとか、それから、経営者が署名したものを出して頂きたいということをこの度お願いをいたしまして、これについては、私どものホームページに掲載をいたしております。いろいろな意味で経営者の方々の意識も少しずつ向上しつつあるのかなと認識しております。それで我々が満足することではないのですが、これから一層そういう問題に取り組んでいきたいと考えております。ただこれは有価証券報告書等の法定開示の問題と、それから内部監査の問題とか、会計監査人の問題とか、それから開示のあり方に対する体制の問題とかいろいろな問題を含んでおりまして、単に取引所がこの部分だけつつけばこれが解決するかというと決してそうではないという問題も多ございますので、そういった意味でいろいろな分野でこれに取り組む必要性があるのかなという感じを持っております。感想めいた話で恐縮でございますが以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、原委員、どうぞ。

○原委員

今日は、後半は少しお勉強させて頂こうというつもりだったのですが、いろいろとご意見お聞きしておりまして、質問とそれから意見ということになります。

今回のライブドアとか、それから西武鉄道の案件というのは、私たち一般の消費者にとってもこれまで販売とか勧誘のところだけしか目が行っていなかったところがやっぱり市場ルールというところまで、日常用語に公開買付やTOBの話なんかをするようになって本当に一気に関心が高まっている、そういう興奮しているところでつくるのはあんまりいいものができないということもありますけれども、やはり検討を尽くして頂くいい機会ではないかと考えております。

それで、質問と意見ということなのですが、3ページに最良執行義務のあり方ということで、この4月からということで、私のような小さな投資家のところにも証券会社からこの最良執行義務についての、これに基づいてやりますというような文章が昨日、一昨日あたりから届いております。中身を見ますと大変立派な言葉が書かれていて、このようにやって頂ければという感じはしているのですけれども、何も問題はないというような感じで見るような文章なのですけれども、ここの2行目から3行目にかけて「その遵守状況を注視していく」というふうに書かれて、それから「対象をより広く取ることについてどのように考えるか。」というこの2つなのですが、この遵守状況を注視するというのは何か金融庁の方で検査とか、それから監視委員会でもいいのですけれども特段に考えていらっしゃるのかどうかということと、それから対象をより広く取るということについてはそのようにぜひ検討を進めて頂きたいと思います。

それから、(2)に価格公表義務のあり方のところで、第2段落目のところで外国為替証拠金取引についてどのように考えていくのかということが書かれていますが、外国為替証拠金取引については、この問題ちょっと1年半ぐらい、2年近くかかわっていて思っていますのは市場が非常に不透明で見えにくい、ですから実際に取引を市場につないでいるのかどうかとか、それからどのような価格形成になっているのかというのが全く不透明で見えないというようなところがありますので、ぜひここは透明性の確保というところで検討の中に加えて頂きたいと考えております。

それから、4ページ目ですが、(2)のところで株式上場制度と上場企業のガバナンスのあり方というのが書かれています。第1段落目で、今後の上場基準・上場廃止基準のお話が出ていますけれども、私の知っている方も、例えばその東証のマザースとか、それからそういったところに上場できましたと、ようやく上場できましたとかというようなご案内を頂いたりすることがあるのですが、上場するための基準というのはかなり厳しいというのでしょうか、そこに乗るというのは大変な高いハードルなのだなというような感じがして見ているのですが、上場した後、これ上場廃止基準というふうになっていますけれども、何か後についてどのようにきちんと規制の網がかかっているのかというところでは、気になるところもありまして、このあたりについては現行どのようで、今後どのように考えていらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。

それから最後に、今コーポレート・ガバナンスのお話が出ましたけれども、ぜひこれは前回も私発言をいたしましたけれども、イギリスなんかに比べると非常に日本の市場ルールの中では弱いと感じておりますので、やはりここの強化はぜひお願いしたいと思います。

以上です。

○神田部会長

ありがとうございました。

ご質問が2つほどあったと思いますが、1つは最良執行義務の遵守状況の注視ということと、それからもう一つは、上場企業についての上場基準、上場した後の基準のチェックというか……。前者は大森さんから。

○大森市場課長

当然、証取法上の義務になったということでございますので、監視委員会検査に行きますとその適合性原則に則って仕事をしているかとか、誠実公正義務を果たしているかどうかという検査はするわけですけれども、最良執行についても同じということでございます。

○神田部会長

よろしいでしょうか。

○原委員

言葉どおりのご回答という感じがしないでもないのですけれども、消費者関係政策のいろんな法律から見ると、証取法とかこういった金融関係はとても立派過ぎる言葉が使われているのですね。誠実公正とか最良執行とか、適合性も徹底すればすごい立派なものなわけですね。すごい立派な割にはそうでない実態というのがあるので、いつもどういうふうにして監視していらっしゃるのかというのが疑問なのです、長年の。なので、ぜひ十分人数も少ないと思いますけれども監督を尽くして頂きたいと思います。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、吉野さん。

○吉野委員

上場基準と廃止基準のご質問がございましたけれども、おっしゃるとおり上場基準の方は、非常に高いなと、こういうようなことを言われておるのですが、上場基準と、廃止基準はイコールかというと決してそうではなくて、いわゆる退場ルールとはかなり落差があることは事実でございます。3年前でしょうか、久方ぶりに上場廃止基準を改正したのですが、いわゆる上場基準というのは投資対象としての適格性があるかどうかどうか、したがって上場廃止基準の方は投資対象物件としての適格性を失ったかどうかと、こういうことで考えているのですが、幾つかルールがあって、具体的にわかりやすいことを言えば流通対象が非常に少ないということで、今も新聞で話題になっているニッポン放送で90%の固定株主がいたらどうなってしまうのだという基準があります。これは非常にわかりやすい基準で、流通が少ないと価格形成上問題があるからという観点であります。それから破産したときなんていうのは、これは会社が存在しなくなるのでこれは投資対象としてなくなると、極めて明示的な基準があります。

それから、それ以外に今度の西武鉄道のときに発動した基準がございます。会社の姿勢としてガバナンス上いろいろ廃止基準の抵触している事象がありながらそれを隠して云々とかいろいろなことが積み重なってやっていたこととか、判断基準が具体的ではない基準がございます。私どもが有価証券市場の開設者として、投資家保護上投資対象として不適切と認められた場合には重大な違反事項があればこれは上場を廃止することがあるということであります。三、四年前改正しましたのは、1つはボリュームという点で時価総額基準を導入したというのがございます。

アメリカのナスダックのように、非常に入り口も易しいし、出口も易しいし、どんどん退場していくという新陳代謝が激しいマーケットもあるのですけれども、日本の場合は伝統的にやはり株主保護という観点から、会社がつぶれてしまうような場合は極めて明確ではあるのですけれども、この間の西武鉄道みたいな話のときは、会社が存続しながら株主権の保護はどのように図るのかというふうな議論が過去からいろいろございまして、その扱いが非常に難しいところがございます。

またそれが、マーケットの受け皿というのが、退場した場合の受け皿というのがないというふうなことも一つの大きな原因かなということがございまして、そういった点ではおっしゃるように上場の基準は厳しいのだけれども退場ルールは案外易しいというふうなことになっていることは事実でございます。現実に我々とすればここ数年起きている事象を参考にしながら廃止基準の適用についてはかなりいろいろ見直しをしているところだということでご理解を頂ければと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

よろしいでしょうか。

それでは、石橋委員、それから太田委員の順でお願いします。

○石橋委員

申しわけありません。6ページのディスクロージャー制度のあり方のうちのTOB制度、それから大量保有報告書制度についてでございますけれども、両制度制定時に予測できなかったようなことへの対応というようなことで今回の証取法改正のように是正すべきところは是正する必要があると思いますけれども、両制度ともに考え方とか、あるいは実務面で大変意義のある制度だというふうに我々理解をしておりますので、中長期的なあり方というような将来の方向として一方的な形で規制強化という方向に向かうことのないようにお願いをしたいというふうに思ってございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、太田委員、どうぞ。

○太田委員

今年夏ごろに外国為替証拠金取引の上場を今準備しておりますので、その関係で外国為替証拠金取引について2点申し上げたいと思います。1点目は、3ページの(2)の第2段落の「また」でございます。先ほど原委員からお話がございましたが、現行の外国為替証拠金取引では、業者の方々の中には、現時点での価格、アスクとビッドを付け合わせるというのではなくて、一旦カバーを取った後に、各顧客に、恣意的にあなたはこの価格で落ちましたよというようなことで配分している実態がございまして、これは大変問題があると思っております。昨年6月の第一部会答申でも、取引価格の提示について売値と買値を同時に明示しなさいとか、過去に顧客に提示した為替レートを提示しなさいと書いてありますけれども、現時点でどういう価格がアスクとビッドで出ているかというのを速やかにちゃんと表示させるとか、それから数量を表示させるということが抜けております。この辺は、きちっと要求すべきではないかと思っています。

それから、2点目は、6ページの(7)のMTFの件なのでございますが、先ほど田中委員がおっしゃいましたけれども、実は今度私どもで外国為替証拠金取引を上場する際にはマーケット・メイク制度を導入しようと思っております。それは流動性を確保するという目的なのですが、為替については世界のマーケットがございますし、日本でもインターバンクの大きなマーケットがございまして、外国為替証拠金取引では全部そこでカバーを取るものですから、私どもとしてはそういうカバー先の金融機関にマーケット・メイクをして頂いて常に流動性を供給するというシステムを考えております。マーケット・メーカーに対しては、できるだけいいレートを提示して競争させようということを考えておりまして、現実に、マーケット・メーカーからは、これでは自分たちの採算が取れないという悲鳴も聞こえているぐらいに厳しく要請しております。外国為替証拠金取引については、実はMTFの実態がございまして、一部業者の方は私設市場を設けて先行しておられます。証券取引法ではMTF制度が認められており、1%基準というのがありますけれども。私どもはまだ上場しておりませんからそういうことで致し方ないのですが、かなりのウエートを占めた私設市場が存在しておりまして、これにどういう対応をするのか、今度の改正金先法では、そこが規定をされておりませんで、認めないつもりなのか認めるのかはっきりしていないということでございます。証券取引法では1%を超える場合にはMTFに証券取引所の免許取得を要請する規制になっておりますが、商品取引所法ではMTFを認めていないわけです。今後これをどうするのかということを議論して頂きたいと思います。

ただ、証取法でも、いわゆる先物取引についてはこういう私設市場は認めていないわけでございまして、レバレッジが利いたりする取引について、一業者が価格形成機能を持つようなことが果たしていいのかどうかということは、私自身は認めるべきとか認めるべきでないとかのスタンスを現時点で決めていないのですが、十分その辺は検討を尽くすべきであると思います。場合によっては、賭博罪との関係もあり、少し慎重にご議論頂きたいなという意見でございます。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかに。淵田委員、どうぞ。

○淵田委員

壊れていないものは直す必要がないという言葉がありますので、例えば上場株式のマーケット・ストラクチャーにおいて投資家が現状満足であるというならばこの論点5の1番、最良執行、価格公表義務云々のところの議論というのはあまり深くこれ以上洗練させる必要はもしかしたらないのかもしれない、欧米でこうだからということで日本も導入といった短絡的なことにする必要はないのかもしれない、という印象を議論を伺っていて持ちました。

むしろ、投資サービス法の議論の一環で市場というものを議論するという観点から申しますと特に2番のところ、2番のマル1のところなどが非常に重要かと思っています。すなわちさまざまな投資商品が出て来るのに対し、それを投資サービス法の枠の中に取り込んでいくときに、当然、相対ではなくて市場的な取引を活用できるようになる方がいいわけだと思いますし、実際海外の例でありますけれども、電子的な取引システムで現物の債券から金融先物、商品先物、それからエネルギーですね、電力とか、あるいは排出権ですとか、さらにはエコノミック・デリバティブという人もいますけれども、例えば物価や失業率が何%以上になった場合にそっちに掛けていた人が利益を得るというマーケットもあります。一種数字の当てっこみたいなもので、これは賭博みたいなものではないかという議論もありますけれども、しかしそれはそれで経済的な意義があるといったような理屈もあるようであります。このように非常にさまざまなものが市場で取引される時代になっていくと思いますので、まさにそういうところまで視野に入れた市場の議論をしていくべきだと思いますし、そういうものが経済的な効用があるのであれば、日本でも円滑に導入できるようにするような枠組みが必要だと思います。

同時に、そういう時代においては証券取引所か先物取引所か、あるいは商品取引所か、といった二分論みたいな世界も考え直した方がいいと思います。さまざまな投資商品が市場という形態をとって取引される可能性をどんどん高めていくと同時に、その枠組みを整備していくということだと思います。その整備においては、例えば少なくとも上場株式においては現行の最良執行義務や価格公表義務で大きな問題はないようでありますけれども、それ以外の商品に関しては、例えば今お話しに出たようにマーケット・メーカー制がとられる可能性もあります。その場合はもうちょっと厳密に最良執行義務が問われていく必要があるかもしれません。逆に時々刻々値段が変わるような商品ではなく、たまにしか取引されないとか、あるいは参加者が非常に限定されていて、一般大衆が被害を被るようなことがあまりないような商品についてはそれほど厳格に、例えば最良執行義務やタイムリー・ディスクロージャーの枠組みなどを上場株式並みに求めていったりすると、そもそも取引自体が極めてコストの高いものになるかもしれませんので、その辺も流通市場につきましても取引の実態とか商品の性格に応じて非常に柔軟な枠組みを考えていく必要があるのではないかと思っております。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかに。岩原委員、どうぞ。

○岩原委員

ごく簡単に申し上げます。

4ページの一番下のところに書いてあります親子上場の問題でございますけれども、これは、私はガバナンスの問題ではないかと考えておりまして、証券取引法が単にディスクロージャー等、あるいはフェアな取引ということだけではなくて、この上場している企業についてはガバナンスがきちんと機能するようにということで委任状勧誘規則等も定めているわけでありまして、そうすることによって投資者を保護しようとしているわけで、そういう観点からこういう親子上場がなされているような場合に、子会社のガバナンスがきちんと機能するかという観点でこの問題は検討する余地があるのではないかということであります。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、藤沢委員、それから高橋委員の順番でお願いします。

○藤沢委員

すみません、もう時間がないのですけれども一言だけ、このままであると恐らく地方市場と取引所と、それから地方証券取引所とグリーン・シートの議論というのがあんまりこの机上に上ってこないのではないかということで一言申し上げます。

ここ3年ぐらい、中小企業を400社ほど回ってきたのですけれども、今そこで起きている問題というのは、やはり事業承継が難しくなってきておりましてM&Aというのが中小企業間でも進んできております。そしてもう一つ感じているのは、中小企業の方々はそういった状況にありながらやはり資本市場についてあまりご理解がないという現状、そして実際問題、中小企業の方々の融資の状況を見ますとデット・デッド・スアップのようなものをご利用されて実際にはもう株式のような資金調達をされている状況がある、その中で中小企業というのがもっとグリーン・シートとか、それから地方市場などを活用してある程度企業価値というものが明確にわかるような状況というのをつくっていく必要性というのもあるのではないかというふうに感じております。そういう意味で、今具体的な方策を私が持っているわけではありませんが、この地方取引所の議論についてもう少し地域金融機関と併せてどのような活用があるかというのを一度考えてみて頂きたいと思っております。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。大変重要なご指摘だと思います。

お隣の高橋委員、どうぞ。

○高橋(伸)委員

私もグリーン・シート制度について申し上げたいと思います。

今巷の金融トラブルは、外国為替証拠金取引から舞台を移しまして、今3大トラブルが生命保険の支払いの問題と変額年金の販売と、そして未公開株への電話勧誘なのですね。どうもIPOブームに乗じて悪質な業者がかなり出てきている状況で、中にはマルチ事業者が未公開株をマルチ・レベル・マーケティングの手法で違法に関与していくと、こんなことも実際には起こっております。グリーン・シート制度のあり方に関しては証取法上のいろいろ手当がされてきているところなのですけれども、よりいいものにして頂きたいというふうに思っております。

一方で、そういうトラブルを見ますと、一般の方々がグリーン・シートに関してご存じないということもあるわけなのです。ですので、もっとその辺を一般の方々にも知らしめて頂くと制度もまたよくなっていくのではないかと思います。

以上です。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

時間が来ているのですけれども、ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。かなり貴重なご意見を広い範囲で頂きましたので、論点の方も大体カバーされたとも思うのですけれども、必要に応じてまた次回引き続きのご議論ということにさせて頂いてはどうかと感じます。

本日の審議はこれまでとさせて頂きたいと思います。この第一部会では昨年の9月から投資サービス法に関する議論を行ってまいりましたが、若干積み残しがありますけれども、おおむね一通りの議論、一通りの論点についてご審議を頂いたのではないかと思います。若干積み残しはありますけれども、それを消化した後に、今後のやり方としましては、基本的な考え方をまず取りまとめたい、考え方のレベルで基本的なロジック、考え方を取りまとめたいというふうに思います。したがって、それへ向けての議論をお願いできればというふうに思います。

したがいまして、今後はその基本的な考え方についての原案を事務局の方でこれまでのご議論、ご審議を踏まえて作成して頂いて、6月をめどにそういった基本的な考え方についての何らかの報告を取りまとめたいというふうに考えておりますので、その点どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、最後に事務局からのご連絡がございましたらお願いします。

○大森市場課長

最近、開催頻度が高まっておりまして恐縮でございますが、次回は4月15日金曜日、午前10時で予定させて頂いておりますので、よろしくお願いいたします。

○神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、これで散会いたします。

午後12時04分閉会

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