金融審議会金融分科会第一部会(第1回)議事要旨

1. 日時:平成13年10月3日(水)16時30分~18時15分

2. 場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3. 議題:

  • 部会委員の紹介
  • 部会運営について
  • 事務局説明
  • 自由討議
  • ワーキング・グループの設置について

4. 議事内容

  • 委員等の紹介が行われ、金融庁側を代表して村田金融担当副大臣から挨拶があった。

  • 神田 秀樹(かんだ ひでき)部会長の指名により、太田 宏(おおた ひろし)委員が部会長代理に就任した。

  • 事務局より、部会の運営についての説明があった。

  • 事務局より、「証券市場の構造改革プログラム」及び「平成14年度税制改正要望」の説明があった。

  • 部会に、「ディスクロージャー・ワーキング・グループ」及び「証券決済システムの改革に関するワーキング・グループ」を設置することが了承された。また、部会長より、「ディスクロージャー・ワーキング・グループ」の座長に岩原 紳作(いわはら しんさく)委員が、「証券決済システムの改革に関するワーキング・グループ」の座長に池尾 和人(いけお かずひと)委員が、それぞれ指名された。

(自由討議での主な発言は以下のとおり。)

  • 金融市場・証券市場の役割は資金を流すものだという認識が強すぎる。今後は、企業部門も外部資金調達に大きく依存するのではなく、内部留保の範囲で設備投資を行うのがノーマルな姿ではないか。そうした中で、資本市場の役割は、(1)リスク評価、(2)情報の集約・情報の効率性の観点から考えるのがポピュラーであり、価格形成が適正に行われているかどうかが主眼であるべき。

  • 「証券市場の構造改革プログラム」について、(1)その実施によって、いつ、どの程度の資本構造の変化が生じると想定したら良いのか。(2)投資家教育に関しては、運用に対する投資家の自己責任をどう教育するかという視点も必要ではないか。

  • 「構造改革プログラム」のサブタイトルは「個人投資家が主役の証券市場の構築に向けて」となっているが、調達する企業側の都合・発想から議論されている感じがする。 個人投資家が主役になるのは、個人投資家のためだという視点が必要。

  • 「構造改革プログラム」では、証券とは何かを論ぜず、間接金融がうまくいかないから直接金融へという通念を繰り返している。また、国債、債券の話が出ていない。個人が主役の市場と言ったときに大事なのは、リスクプレミアム等の判断基準となる安全な収益率(pure rate of interest)であり、英米におけるTB等のような社会全体の評価を反映した金利が日本にはないのではないか。もっと証券市場を幅広くとらえるべき。

  • 貯蓄重視から投資重視にする中で証券市場にとって大切なのは、ディスクロージャーと公正取引の規制の2つではないか。「構造改革プログラム」にある「発行企業の株主重視の経営姿勢の確立」や「不公正取引に対するルールの明確化」についても、必要に応じて法改正も検討すべき。

  • ディスクロージャーは大切だが、投資家の自己責任の観点は重要。経営者と投資家が同じ立場でしか知り得ない情報も、最近はともすれば経営者が開示し、それに責任を持つべきとの議論となりがちだが、ディスクロージャーに過度な期待をかけすぎてはいけない。

  • バブルで失ったものをどう取り戻すかという中での議論が必要。現在、日本の個人投資家の株式保有ウエイトは一桁との話であったが、バブル当時は11~12%、投信も入れるともっと多かったのではないか。証券市場は、各プレーヤーがそれぞれの分野から、皆で育成することが必要で、市場はインフラ、共有財産であるという共通認識が必要。

  • 「構造改革プログラム」に必要な論点は入っているが、too little, too late。税制も日本的には思い切っているとは思うが、ドイツのシュレーダー政権の時のようなパラダイムの転換にまでいくのかどうか疑問。また、プログラムに盛り込まれたものについては、実現を大前提としてそのスピードを上げる必要がある。

  • 現在は事後監視の時代になっているが、市場のプロセスを監視するところがない。今の証券取引等監視委員会は、何かが起きないと動けない。保護行政に帰るわけではないが、プロセスを監視する仕組みもあって良いのではないか。

  • 最近、上場会社の信用を意図的に毀損しようという動きがある中で、誰も罰されないということでいいのか。極めて未成熟な資本市場である。また、これだけ文明・教育が進んだ中で、先進国で、自己責任に関してこのような審議会の場で議論している国があるのか。

  • 新しい会社が入ってきたりしてビッグバンの成果は上がっているが、不適切な経営者・株主をどう排除できるかという面も出てきた。ディスクロージャーも、目論見書でリスクに対する説明が十分にできているか。インサイダー規制等との関係で、株はもたない方が安全という意識もできているのではないか。いろんなアプローチがある中、現実の問題をできるだけ機敏に解決する必要がある。

  • ビッグバンの時の審議会報告には、今後は資金調達から資金運用の場として議論していく必要があると書かれていた。その中で様々な制度改正をしたし、今でも通用する考え方である。「構造改革プログラム」には足りない部分もあるだろうが、スピーディーに対処することが必要。また、自己責任とディスクロージャーに関する議論は、ディスクロージャーや公正取引の観点からのインフラ整備があって初めて自己責任を問えることになるのではないか。

  • 「構造改革プログラム」の中には、(1)行政の監視・監督の改善で解決すべきもの、(2)競争の活発化で解決すべきもの、(3)市場環境(不良債権問題等)が整備されないと解決できないものがある。(1)については、今回のプログラムは適切といえる。(2)については、特定のビジネスモデルを行政が奨励するのには違和感がある。例えば、投資単位の引下げやROEの目標設定等は、本来は企業が競争の中で自主的に決めるべきことである。「競争」の文言が、「構造改革プログラム」には出てこないが、市場、企業、参加者の意思に委ねるところは行政が介入する必要はない。

  • 「構造改革プログラム」のサブタイトルにある個人投資家が主役の証券市場というものが本当に個人のためになるかは疑問。高齢化が進み、資産分布が偏っている中、そうした人達にリスクの高い投資を直接やらせるのが望ましい政策なのか。個人投資家にとって望ましいのは、個人の代理人としての機関投資家が健全に競争し、個人の利益を実現することが基本ではないか。直接個人が市場に参加するのも重要だが、それには時間がかかることを認識する必要がある。

  • 今後主役となるべき個人投資家(家計)にどういう変化が生じてきているかをまとめる必要があるのではないか。一つには、家計がポートフォリオを考え始めたということがあるだろう。日本は遅れているといわれるが、変化を始めたと実感する。10月からは401kが始まり、年金に自己責任が入ってくるのは大きな変化である。

  • 「個人」をどうイメージするか、様々な気がする。毎日好きで売買する人、相続した遺産で取引する人、起業家としての活動の成果として果実を得る人もいる。どういう個人を想定して議論していくかについての共通認識が必要。

  • ビッグバンで取り残したものにどのように取り組んでいくかという点からは、(1)担い手である証券会社にのびのびと活躍をさせる必要がある。やや乱暴であってもそれをやって、不正や違反を強力に排除することが必要。(2)コスト(税)も大きい問題であり、政治の側をどう動かしていくかという議論も必要ではないか。

問い合わせ先

金融庁総務企画局企画課
電話03(3506)6000(内線3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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