金融審議会金融分科会第一部会(第2回)議事要旨

1. 日時:平成13年11月29日(木)15時00分~17時00分

2. 場所:金融庁9階特別会議室

3. 議題:

  • ディスクロージャーWGからの報告
  • 古賀委員レポート「ビッグバンの検証と今後の課題」
  • 自由討議

4. 議事

  • ディスクロージャーWGより、「投資信託目論見書の記載内容の改善について」の報告が行われた。

  • 報告に対する質疑応答の主なものは以下のとおり。

  • リスク情報に関する説明が定性的なものにならざるを得ない面があるとあるが(報告書4頁)、どのような説明をイメージしているのか。投信そのもののリスク度を5段階に分けているが、ここでいうリスク情報と整合性をとる必要があるのか。また、リスクという言葉は「危険」と訳されるが、もう少しいい言葉にならないか、何か知恵がないものか。その方が広く投資家に訴える際にも有効ではないか。

  • ファンドによりリスクの内容は違うのであり、例えば信用リスク・価格変動リスク・為替変動リスク等のようにパターン化するだけではなく、内容に見合うリスクをファンドの個性に応じて、情報を記載することが望ましいということ。リスク度については、かつて投資信託協会が5段階に分けて整理していたが、目論見書になってからはそういうパターン的なものはやめており、ここでそのような分類によるパターン化を復活させるわけではない。

  • 目論見書への記載事項は内閣府令で具体的に規定されるようだが、内閣府令で規定する事項については、その記載が義務付けられるのか、それ以上書いてはいけないのか。

  • 内閣府令に規定する事項については義務付けるもの。投資家にとっての情報は詳しく書くべき。また、基本的には有価証券届出書に記載されている事項を目論見書にも記載するということであり、目論見書に追加事項を書こうとすれば、まず届出書にその旨を書いておくことが必要。

  • このような情報提供やある種のデザインに関するようなものについては、それぞれの創意工夫に委ねるべきではないか。

  • 誤解や不公正な競争を招くディスクロージャーは望ましくない。独占禁止法上の公正競争規約と同じようなものが望ましいが、現時点ではその一歩手前の段階として、投資信託協会に一定の役割を期待している。

  • 内閣府令で義務付けられていない余分なことをどこまで書いていいかは主観的判断による。わかりやすいものにしたつもりが、結果的に余分なものとなり、誤解を与えてしまうということにもなる。府令で詳細に縛ってもらうのか、縛らずに裁量を残してもらうのか、どちらがいいのかはよく分からないが、いずれにしても最前線のところで自由な工夫の余地を残す工夫をしてもらいたい。

  • 各社ごとに同じ内容のものを違う言葉で記載するということになれば、非常にわかりにくく、投資家にとって商品の比較が困難になる。投資信託協会がガイドラインを作成することによって、商品の比較が容易になるのではないか。

  • ディスクロージャーWGの報告に関して、第一部会として承認された。

  • 古賀委員より、「ビッグバンの検証と今後の課題」についてのレポートが行われた。

  • 自由討議の発言で主なものは以下のとおり。

  • 直接金融イコールエクイティ・ファイナンスではなくCP、ボンドもあり、全体としては、ビッグバンを始めた時とはずいぶん違い、直接金融は相当進んだのではないか。エクイティ・ファイナンスが活発化していないのは、企業収益が悪く株価が低迷しているため。市場のインフラ整備はせねばならないが、市場参加者全体で努力しないとエクイティ・ファイナンスの復活は難しい。また、ビッグバンに関して、企業へのインパクトという意味では、適債基準や財務制限条項の撤廃が大きかった。

  • ペイオフの解禁については、リスクが非常にはっきりしてくる。今までリスク・プロファイルがあまりにもなかったのが問題。また、やはりディスクロージャーをしっかりする必要があり、それがあればマーケット・ディシプリンが働く。日本企業全般において計上外の損失、特別損失が大きすぎるのは、ディスクロージャーに問題がある。会計ビッグバンも大きな柱であり、現在8合目ぐらいまでは来ていると思うが、ペースが遅かった。

  • 監督・規制については、イギリスのFSA型、アメリカのSEC型のどちらがどうとは言わないが、業界規制でなく、市場ディシプリンを働かせるべき。

  • 今後の銀行は、ローカルバンクは別として、マネーセンターバンクの方向であり、証券化(diversification、liquidity)が主要な哲学になるべきで、ビジネスモデルの転換が必要。証券会社にしても、ビジネスモデルがあまりにもインベストメントバンク化していないのではないか。

  • ビッグバンに関しては、今になってみると、ああすればよかったというものもある。証券という概念を広く捉えようとしていたが故に、証券の中身についての戦略的な位置づけをしなかった反省がある。中長期的に個人のポートフォリオを変えるための方法をについて、今まできちんと議論しなかった。様々な証券が考えられる中でどこに力点を置いて施策を展開していくのかを戦略的に位置づける必要がある。

  • 個人金融資産に占める株式の比率は一定のままであり、本当の意味での直接金融の拡大には至っていないのではないか。また、間接金融の中身を見ても、公的部門に向かうお金が有効活用されているか、銀行に向かうお金がどうなっているかを考えると、むしろ悪くなっているのではないか。また、リスクに見合った貸出レートの設定についても、道半ばで逆行していないかとの危惧がある。確かにCPの発行は進んでいるが、それを保有しているのは銀行であり、マーケットに出ているとは言えない。

  • 監督体制については、日本は日本としてやればいいが、インサイダー取引や相場操縦で証券会社は処罰されたが、投資家(機関投資家)が取り締まられた例は数えるほどしかない。証券、銀行、保険を通じて、縦割りではなく、投資家という観点から「横串」の規制の方向性が必要ではないか。

  • 古賀委員の説明の中で、個人が現状に満足している面があるとあったが、個人は決して現状に満足していない。ポイントはリスク・プロファイルが明確でないことに尽きる。リスクの大きさを計るベンチマークがなく、安全資産の収益率を何で計ればいいのか。リスク・リターンに関して比較できるディスクロージャーがないのが、個人が証券投資に向かわない理由ではないか。

  • ビッグバンはかなり思い切ったものだが、不幸にして時期が(景気が)悪く、効果が表に出にくかった面がある。また、個人は賢明で合理的な資産選択をしているのであり、デフレ下でリスクの高い商品や土地を買わず、公的部門に資金が行くのは当然。現在の金利はゼロに収斂しており、1年物債券でも10年物債券でも同じような金利だというのは異常であり、まずは正常な経済状態に持っていくことが必要。

  • 市場の監督については、日本では風説等で企業の信用毀損を起こした時の処罰が非常に甘い。実名入りの記事が書かれても、誰も罰せられず、こういう国は先進国のどこにもない。信用を毀損する者に対しては厳しい処罰があってしかるべきではないか。

  • コスト面から見ると、手数料の引下げはずいぶん進んでいる。一方、マーケットのインフラでもあり、投資家行動にも大きい影響を持つと思われる税制をどうするかがビッグバンで積み残された大きな課題であり、大声でアピールしていくことが必要。税はこれからの証券市場の命運を握っている大きなもの。

  • ビッグバンでいろいろ新しい商品なり大きな新しい取引ができているが、経済状態が悪かった面もあるが、本来の目的である金融の安定化、活性化についての議論が改めて必要ではないか。国債残高が増大する中で、国債、政府の債権債務について金融市場の中でどう考えなければならないのか。公的資産・負債、企業のファイナンス等全体の中で、金融資産の価値の安定化について議論する必要がある。

  • 証券のビジネスモデルをどう構築するかが大きな問題。ビッグバンの検証といった時、期待した新しい商品、新規参入は進んでいるが、影の部分も考えねばならない。こうした観点から、投資信託目論見書のディスクロージャーの話は非常にタイムリーであり、これまでの制度が実際は投資家にとって十分なものではなかった面があったということだろう。また、本当に登録制で自由な参入を認めることで良かったのか、株主や経営者のチェック体制は必要なかったかなど、前向きの検討の他に、ビッグバンで予想した結果になっていないものが他にないかの検討も必要。

  • 証券市場の活性化・効率的な市場がなぜ必要かというと、市場のメッセージが正しく伝わる機能を持つことであり、そのためにはより多くの参加者(個人)の呼び込みが大切になる。また、ビッグバンが意図した通りに進んでいない理由として経済環境の悪化があるのはそのとおりだが、仮に環境が良くなったら、期待通りのスピードで資金シフトが起こるのか、市場への参加者が増えるのかを考えることが必要。市場参加者を増やし、資金シフトを起こさせるためには、大きな仕掛けが必要ではないか。

問い合わせ先

金融庁 総務企画局 企画課
電話03(3506)6000 (内線3514,3515)
議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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