金融審議会金融分科会第一部会(第12回)議事要旨
1. 日時:平成15年11月21日(金)14時00分~17時00分
2. 場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室
3. 議題:
- ○ 市場監視機能・体制強化
- ○ 投資教育のあり方について
- ○ 投資サービスにおける投資者保護
- ○ 金融機関による市場誘導ビジネスと証券仲介業
4. 議事内容:
○吉野委員、国際銀行協会ジョン・マクファーレン会長及び同協会角田理事及び事務局より、「市場監視機能・体制強化」についての説明が行なわれた。
○長崎大学川村教授より「投資教育のあり方」についての説明が行なわれた。
○事務局より「投資サービスにおける投資者保護のあり方」についての説明が行なわれた。
○事務局より「金融機関による市場誘導ビジネスと証券仲介業」について説明が行なわれた。
(「市場監視機能・体制強化」に関する主な発言は以下のとおり)
大きな流れは課徴金制度あるいは差止命令等により、投資者の市場に対する信頼を高めていこうということでよい。ただ、例えば法令の解釈とか、そういうことも含めて安心して市場に参入していくためには、その解釈に対する予見可能性、安定性があわせて措置されるということが非常に重要。例えば、ノー・アクション・レターという制度があるが、証券取引に関しては、2件程度で、ほとんど使われていないのはなぜかというようなことについての分析も必要。
日本では違反した場合の規定は証券取引法にいろいろあるが、証券取引法が用意している民事規定はほとんど使われていない。刑事罰の規定は少しずつ使われているが、それは非常に極端な場合に限られ、また、行政が出ていく場面というのは、ほとんど業者に対する行政処分というもののみ。諸外国を見ると、課徴金があり、差止めがありというところで、ルール違反というものに対するサンクションという形でルールがエンフォースされている。
日本でなぜ違反の摘発事例が少ないのかを考えると、一番大きいのは、企業の立場からすると、日本の場合は、資本市場を使った資金の調達は非常に少ないことが基本的にあるだろうなということがある。また、証券取引や企業経営に対する倫理観が大分違う、さらに、個人が参画していないという問題がある。
米国と比較してアンダーエンフォースメントの状態なのかどうかということであるが、そもそも違反行為が少ないとも考えられるし、国民性というか、証券取引にかかわる分野以外のことにおいても訴訟がたくさん起きている国との比較は、必ずしも正確ではないのではないか。
経済的に考えれば、金融システムというのは、大きな意味での制度資本になるわけで、制度資本を崩すような行為に対しては、何らかの形で的確な対処をしなければいけない。そういう形で考えれば、不当利得の剥奪という形になっているが、例えば社会的損失というのは、経済的に考えれば本当は重要な論点。ただし、これをはかるのが非常に難しいが、それに対応するような何らかのロジックを立てて、社会的損失をはかれるようなシステムにしなければいけないのではと考える。
規制緩和で自由にいろいろな取引ができるようになっていく場合には、違反行為についてのペナルティーの制度が充実していないと、そこに一般の投資家が参入していくというのは、なかなか躊躇せざるを得ないところがあるので、課徴金制度というのはぜひとも新たに設けるべきものである。
刑事罰の罰金刑等が非常に軽くて、しかも検察当局等による積極的な摘発も、日本の非常に慎重な刑事手続の中では難しいということになってくると、どうしてもそれ以外のエンフォースメントということで課徴金という話が出ているのだと思う。もっと罰金を重くしたりする方が本筋だと思うが、現在の日本の実情を考えれば、こういう案が出てくるのはやむを得ないと考える。
昔のように行政当局が広範囲に裁量権を有していて、変な言い方をすると、江戸のかたきを長崎で討つ能力を行政が持っていれば、これはフォーマルな意味での罰金とかが小さくても、ルールを守らせる力は非常に高かった。現在は、そういう行政スタイルを放棄し、事後チェック型のルールに基づいた行政をやるということで切りかえているので、そのような新たな行政スタイルに適したエンフォースメントのメカニズムを備えないと、エンフォースメントの面で空白が生じることになる。
日本では、当局の検査というのは、人員も増強され、どんどん検査の頻度が高まっているという話も聞いたことがある。それは今までそういうことが必要だというふうな認識があったと思うが、足りない部分は補うと同時に、自主規制機関というのがそれなりにメリットがあると考えるのであれば、監視委員会なり金融庁との一種役割分担的なものをもっと明確にして、前衛、後衛なのか、どういう役割分担なのか、考えていく機会であると思う。
証券会社を検査する主体の数がかなり多くなっている。その中では重複した項目についての検査等も行われている。協会と取引所と調整しながらやっているようだが、さらに一段とそのような工夫が検討されれば現場における過剰な負担感みたいなものは減ってくると思う。
(「投資教育のあり方」に関する主な発言は以下のとおり)
学校レベルでの投資教育を実効性のあるものにするには、金融庁等の関係省庁との連携をとりつつ、文部科学省が積極的に関与していかないと効果はなかなか望めないのではないか。例えば、英米等では、それぞれやり方が違うが、具体的なある学年なりレベルなりの到達目標というものを示しながら、それに沿ったカリキュラムづくりというのが行われている。現在、日本の場合、指導要領の中に文言としては出てきても、そこまで明確ではない。文部科学省がかなり前面に出た関与というのが必要なのではないか。
社会人に対する投資教育は、例えば金融庁等、それに金融広報中央委員会、業界、企業等がジョイントのチームとして中立的な機関、組織を組成し、既存の実績あるカリキュラムを活用しつつガイドラインをつくるというようなことが必要なのではないか。また、そのような中立的な機関による公的認定講座というものを設け、消費者が選択基準を持つための一つのガイドラインとして位置づけたらどうか。
投資教育は、非常に偏見を持たれるので、逆効果ではないかという見方が一方で強くあるが、この問題は、ある意味で価値観とトートロジーの繰り返しみたいなところがあり、私は、こういう時期であるがゆえに、むしろ正面から投資教育ということを打ち出していっていいのではないかという気がする。
(「投資サービスにおける投資者保護のあり方」に関する主な発言は以下のとおり)
日本のベンチャーキャピタルの市場が欧米に比べて小さいという指摘が前回もあったが、その中で感じるのは、逆にプロの育成も遅れているのではないかという点である。これは既に適格機関投資家等々、枠が広がっているわけだが、適格機関投資家について、例えば事業会社であれば、有価証券の運用残でたしか100億円を適格機関投資家とするというような縛りがあったと思うが、プロを育てるという意味でもう少しそのハードルを下げるようなことも検討してよいのではないか。
論点に書いてあるベンチャー・ファンド等の組合型スキームを利用した投資ファンドに対する投資家保護ルールの整備は、前回私が発言した方向性と一致していると思うので、ぜひこの方向で進めていってほしい。できれば外国為替証拠金取引のような新しく出てくる商品についてもカバーできるような包括的な仕組みを今後つくっていくのが望ましい。
(「金融機関による市場誘導ビジネスと証券仲介業」に関する主な発言は以下のとおり)
今でも銀行は、証券会社への単純な紹介だけであれば可能であるが、フィー・ビジネスにはならない、したがって、発行体と証券会社の間の仲介業のようなものが銀行によりフィー・ビジネスとして行うことができるようになると、ものすごい勢いで動き出す可能性がある。また、個人投資家の育成という観点からも、銀行の窓口に来る人達に対して、株式投信を販売する場合には、1人当たりかなりの時間をかけて説明している。さらに個別株等も扱えるようになれば、投資家教育の一部にもなるので、銀行による証券仲介業の解禁を検討していただきたい。
市場活性化あるいは個人投資家の参入促進という意味での一つの提案だということは十分認識しているが、65条の発想の原点の一つは、利益相反だということだったと思う。例えば、重荷になった融資先に、銀行がグリーンシートで資金調達させて、貸し付けを回収するというようなことが起きると、投資家にとって大変な損失になるし、大事に育てようと考えているグリーンシート、新興市場の活用を進めていかなければならないときに大きなダメージになってしまう可能性がある。また、銀行の職員が仲介業の職員として対応するということになるので、投資家の混同を避けるための工夫というものが要るのではないか。また、貸し付けを前提として有価証券を勧誘するというようなことが起こってしまう危険がある。進めるに当たって、逆作用ということが起こらないように配慮しながら、慎重に進めていく必要があると思う。
銀行へ証券業を解禁することにより情報の流用の問題が生じることになる、例えば、この人は預金をいっぱい持っているから、預金口座解約の用紙と株式の仲介業としての申し込み用紙をセットにして、「いかがですか」とやるとか、いろいろ具体的な事例というのは想像し得るので、証券業の解禁をしていく上で、このような弊害が起きないような枠組みが整理されれば、安心して銀行への証券仲介業の解禁に期待できる。
以上
問い合わせ先
金融庁 総務企画局 市場課
電話 03(3506)6000 (内線 3614)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。