金融審議会金融分科会第一部会(第20回)議事要旨

1. 日時:平成16年9月28日(火)10時00分~12時10分

2. 場所:中央合同庁舎第4号館11階 共用第一特別会議室

3. 議題:

  • ○  今後の金融審議会金融分科会第一部会の進め方について
  • ○  開示制度をめぐる論点項目について

4. 議事内容:

  • 事務局より「今後の金融審議会金融分科会第一部会の進め方について」について説明

  • 事務局より「開示制度をめぐる論点整理について」について説明

  • 「今後の金融審議会金融部会第一部会の進め方について」についての主な意見は以下の通り。

    市場型の間接金融が中心になると考えると、委託関係、エージェンシーの関係が従来以上に重層的なエージェンシー関係が生まれることになる。そうした時に、受託者責任というものが極めて重要なポイントになってくると思われるが、その受託者責任の問題と市場法との関連が良く分からないところがあるので、その辺りを法律家の皆様がどのように考えるかお教え願いたい。

    金融サービス法との関係について、議論の最初の段階で一定の整理の必要があると思われる。今日のペーパーに記載してあるような切り口であれば、投資サービス法と金融サービス法の射程距離が、それほど大きくは違わないのではないか。これから、日本の金融の流れがどういうルートを通ってあるべきかという、その仕組みを作っていくというもので、もっと広く論じられるものではないかと思う。

    2つ目は、あらゆる人達が公平に、開示された、あるいは効率的な市場の中でプレーできるという意味での市場の整備の問題。さらに、資金の出し手と仲介機関との接点にあたる、従来の勧誘規制の部分の問題がある。最終的には、受託者責任というか、仲介機関の中でも直接に顧客の意向を市場に伝えるのではなく、専門家等が間に入り、その人達がどのように儲かるのかという部分の不信感を無くし、投資家が信頼できる専門家を利用できるというのが大きなポイントだと思う。

    今までは、色々な商品にその都度対応してきたが、一定の共通のルールを作っておくというのは非常に大事なことだと思う。特に、今ある商品だけでなく、新しい商品を誘導するという意味でもルールを予め整備するための検討は必要だと思う。さらに、ルールは弾力的であり、かつ、予見可能性があることが必要だと思う。セーフハーバールールやガイドラインといったような色々な仕組みも含め、予見可能性がありながら、かつ弾力的なルールの整備が必要であると思う。

    もう一点は、ルールを作成した時に、そのルールが遵守されるという体制を確保しなければならないと思う。これは業者だけではなく、市場ルールの確保というものも必要だと思う。資料でも触れられているが、市場監視はかなりの体制強化が必要だと思われる。

    これと関連して、自主規制機能はどうあるべきかという問題もある。現在は、自主規制機関に加入していない業者については、政府が直接指導するという法体系になっているが、このような法体系のままでいいのかという点も検討する必要があると思う。

    投資サービス法の適用範囲はできるだけ広く考えなければならないと考えているが、広くなればなるほど、先ほどもお話しのあった予見可能性がなくなってしまうという問題がある。そうすると、こまごまとした規制というのは非常に難しくなる。その兼ね合いをどうするかというのを、これからここで考えていかなければいけないと思う。

    逆に言えば、投資サービス法で全てを捕らえるということはおそらくできないと思うので、重層的に体系を作っていくということを最初から頭に入れて、作らなければいけないのではないかと思う。

    横断的に規制をかけるというのは非常に重要であるが、もう一方で、個別の業者法で規制をかけた方が効率的な部分も多々あると思われる。そういった意味で、投資サービス法と個別の業者法との兼ね合いも大変重要だと思われる。投資サービス法が担うべきところと、業者法が担うべきところを分担しながらやっていくことが重要だと思う。

    過去、金融サービス法の立法を目指して、大変な努力を行い、審議会の中でも色々な検討を行っていた。その時の蓄積を是非生かしていただきたい。

    私の記憶では、前回は金融サービス法を視野に入れた議論だったので、より広いアプローチを取った時に、どのような整理の仕方になるかという議論が行われ、大きく取引ルール、市場ルール、業者ルールに分けて、それぞれについてどういった横断的なルールが可能かということを検討したと思う。

    最初の取引ルールについては、受託者責任の問題や情報開示についてのルールについての検討がなされた。その他に、倒産法の問題を踏まえて分別管理の問題についても検討が行われた。次に、市場ルールについては、開示のルールにおいて、証券取引法のタイプと商品ファンド法や不動産特定共同事業法等のタイプの2つがあり、それぞれ、米国的な開示ルールとEUなどの開示ルールにある面対応しているところがあり、それをどう調整するのかということが課題になっていた。それから、不公正取引ルールについても、共通性は多いものの、この2つのタイプの問題があった。価格形成に関するルールについて、証券取引法では良く整備されているが、その他の業態ではあまり整備が進んでいないというような問題点があった。最後に業者ルールの整備について、金融サービスの類型を横断的にいくつかに分け、それごとに応じた業者規制のあり方を分けて考えようとした記憶がある。例えば、金融サービスの中に、販売・勧誘、売買等、仲介、引受け・売出し、資産運用、カストディーサービス、アドバイスサービス、そして仕組み行為といったような、いくつかのサービスの類型に分けて、それごとに業者の規制のあり方を考えていくべきではないかというような議論があった。

    こういった、かつての検討を十分踏まえた上で、今回、可能な範囲でそれを取り入れて、検討を進めていって頂ければと思う。

    エンフォースメントの問題で、人数問題以外にも2つの問題があるように思う。一つはルールはあるけれど使われていないというもの。これは規定が悪いのか、体制が悪いのかという側面がある。もう一つは、ルールを具体的な事実に適用する際の問題がある。事実認定があってそれに法律を適用したときに、きちんと納得感があり、きちんとしたエンフォースメント体制がとられているということ。この両者を整理して議論した上で、初めて人員の問題についても考えられると思う。

    金融サービス法との関係では、業者がリスクのある商品を顧客に販売・勧誘するという局面を見れば、投資サービス法という枠組みよりも金融サービス法が広い枠組みであるということは間違いないが、「貯蓄から投資へ」という政策で整理したときの投資には、銀行や伝統的な保険は含まれていない。仮に法律が一つにならなくても、販売・勧誘については、横断的な業者ルールが必要であることは疑いのないことだと思う。この一部会で議論しようとしているのは、まず、貯蓄から投資へという場合の投資サービスをきちんと整備するときに、どういう考え方でコアの部分を作るかということだと思う。

    もう一つ、米国型なのか、英国型なのか、豪州型なのかといった問題がある。米国型には社会的コストが高いという批判があるが、米国に言わせれば、規制の目的が投資家保護、市場の維持・発展をめざすもので、英国型の規制とはその目的が違うということになる。これは、法律を一本化すると、市場の強力な番人という点からすると弱くなるのではないかという論点である。これは非常に難しい問題で、投資サービス法を構想するときは、今の段階ではつめて議論する必要もないかもしれないが、そういった問題もはらんでいる。

    投資サービスの範囲について言えば、大きく金融とそうでない分野について線を引かなければならない。不動産そのものは入らないけれども、何らかの形を取れば入るというようなこと。法律も柔構造化しすぎると予見可能性が落ちるという問題があるので、基本的な類型は維持しながら、ルールのコアの部分は法律に書くという難問がある。例えば、市場で変動する商品を扱っている業者とそうでない業者は、区別して考えられるのかどうかとか、そういった切り口から整理していく必要があると思う。

    受託者責任については、業者は委託を受けたのではあるけれども投資リスクは投資家にあるという、そういう市場型間接金融における受託者責任とは何かという根本論を整理する必要があると思う。

  • 「開示制度の論点項目について」についての主な意見は以下の通り。

    ディスクロージャーについて、徐々に、信頼性・充実が進んでいる点は評価している。

    確認として、アナリストの中立性の問題に関して、協会としての自主ルールから一歩進めるのかという点を確認したい。また、ファイナンシャル・プランナー(FP)による投資アドバイス機能について、どう考えるか。なお、FPについては国際標準化機構(ISO)において国際標準化の議論がなされている。

    その他に2点、これまでの開示制度の整備で入り口の整備は進んでいるが、途中の運用報告書の部分が不十分であると考えている。是非、検討して欲しい。

    また、広告について、目論見書の取扱いについては議論が進められたが、広告、要約目論見書の部分が残されている。雑誌、新聞、ネット等の広告について、問題意識として追加して頂きたいと思う。

    四半期開示については、現在、東証のルールにより行われている。現在は、簡便的な開示が認められているが、実際には9割弱の企業がフルの開示をしている。そのような流れにあってなぜ法制化が必要なのかという問題について、今の東証のルールでは何が問題かという点を詰めておく必要があると思う。

    四半期の業績の開示は、マーケットなり、取引先のステークホルダーからの要請があり、そういう企業側の必要性もありフルの開示を行っているし、開示のタイミングも年々早くなっているなど、企業も自主的にやっているという流れが一方ではある。

    今の四半期の業績開示は何が問題かという点は、良く検討して頂く必要があるが、やはり会計制度、監査のレベルというような開示している財務諸表の質にバラつきがある。均一性を求めるなら、監査のあり方、会計制度など、そういったものを整理すれば足りるのか、もっと違うところに法的な強制力を働かせる必要があるのかという点を検討して頂く必要があると思う。

    要望としては、現在は、東証の決算短信用などにかなり詳細な資料を作成しているが、あのタイミングで、そこまで詳細な資料が必要なのかという点について議論して頂きたい。また、現在行っている企業による業績予想について、四半期決算が定着してきたときに、業績予想が必要なのかどうかという点、これはアナリスト機能も絡むが、こういったことなども検討していただければありがたい。

    四半期ディスクロージャーについては、即時性というものが非常に重要だと思う。もちろん、比較可能性が大事なので、一定のルールなり、チェックが必要ではあるが、それによって提出が遅くなってしまうのでは意味がない。そのへん、非常に難しいが見ていく必要があると思う。

    「使い勝手のよい」開示制度についてであるが、規制改革という点だけにとらわれず、現場において使い勝手が良くなるよう、もう少し広く拾い上げていきたいと思う。

    内部統制、アナリストの問題については、是非、早急に実現して頂きたい。特に、内部統制については、各企業で色々努力しているので、その努力が分かるような形で開示して頂いて、その後の監査につながるのかもしれないが、是非、実現していただきたい。

    四半期開示については、法律で決めるべきだと私は思っている。もちろん、東証できっちりやっているので、実態としてはそれでいいのかも知れないが、せっかくきっちりやっているのだから、それを法律の形で、世界中にきっちりやっているということが分かるようにすることが、良いのではないかと思う。、さらに、将来の方向性としては、どんどんリアルタイムでの開示につながっていくのだと思う。監査や信頼性の確保に時間がかかるのは分かるが、普段から情報の信頼性について、監査人の目が入っていれば、時間としては短縮できると思う。

    使い勝手の良い開示制度であるとか、開示制度全体を見直そうという議論は大変意欲的な記載だと思う。理想としては、一定の知識のある国民が、企業、ファンドがどういう状態にあるのかということを、インターネット等を通じてなるべく早く、なるべく分かりやすく見られるということが目標だと思う。場合によっては、若干見難い法律の体裁の見直しも含めて、やるべきではないかという風に考えている。

    実務的には圧倒的に決算短信を使っており、有価証券報告書は事後チェックのために使っている。短信は過去に比べて参考資料を含めると数倍の厚さになっており、そこまでの必要があるのかということと、もう少し有価証券報告書と共通化できないかということを印象として感じる。

    業績予測については、四半期の開示が定着するならば、個人的にはやめてもいいと思う。ただ、米国ではガイダンスが細かくなってきており、しかも毎月修正しているという側面もあり、そこは日本としてどういう格好で作っていくかということについて議論して頂ければと思う。

    内部統制については、より経営者が責任を持つという形で強化すべきと思う。ただ、きちんとやっている会社はコストがかかり、ルーズな会社はそのまますっと流れるということでは不公平なので、その辺りをどうするか考えなければならない。

    四半期開示については、速さと質の問題が当然出てくるので、四半期開示後の業績修正をどういう形でルール化するのかという点について、是非議論して頂きたい。

    また、取引所でルールがあるものについて改めて制度化する必要があるのかという点については、複数の取引所があれば、取引所間のルールに差がつくことが考えられるので、制度的に最低限のルールは決める必要があると思う。

    論点の整理をして頂き、これをワーキング・グループで議論して頂くことについては賛成です。大幅に開示制度が改善されているということについては、マーケットサイドから言うと、まさに情報がタイムリーに開示されているということで、貯蓄から投資へという政策課題を抱えている中で、大変重要なことなので、是非、大いに議論して頂きたいと思う。

    東証の開示制度において重要視しているのは、適時開示制度というものであり、タイムリーなものが必要だろうという観点から、常々発行会社さんにもお願いしているところである。また、投資家のニーズもそういうところにあり、それが段々改善されてきて、半期報告から四半期報告へと改善をされてきたと認識している。適時開示を推進してきた立場からすれば、これをさらに進める必要があるという認識である。

    例えば、四半期開示の問題について言えば、会計基準の整備、財務諸表のレビューの問題などに改善の余地がある。より良い開示制度を作り上げるために積極的な議論をして頂き、実効ある結論を導いて頂きたいと思う。

    また、業績予想や決算短信について、委員からご発言があったが、これは、タイムリーなディスクロージャーについて投資家サイドのニーズがあり、作成者側もIT技術の進歩などもあり、これが可能になってきたと認識している。発行会社にご負担をかけながらも、そういったものの中身が充実できたということについては、一定の時点として評価すべきものと考えており、そのあたりご理解頂きたい。

    業績予想については、開示のインターバルが短くなるなら業績予想はいらないのではないかという議論が以前からあるが、これは全く別の問題である。一定時点の静止した状態の開示である四半期開示と、将来情報である業績予想開示とは、全く別のディスクロージャーであり、代替的な関係ではないと我々は捕らえているので、その辺りもご理解頂きたい。

以上

問い合わせ先

金融庁 総務企画局 企業開示参事官室
電話 03(3506)6000(内線3669)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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