金融審議会金融分科会第二部会(第27回)・「信託に関するWG」(第14回)合同会合議事録

日時:平成17年12月15日(木)13時00分~15時00分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

○ 岩原部会長

それでは、時間がまいりましたので、ただいまから第27回金融審議会金融分科会第二部会と第14回信託に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、ご多忙のところをお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開ということになっておりますので、その点ご了解頂きたいと存じます。

また、本日は後藤田大臣政務官にもご出席頂いております。

どうもありがとうございます。よろしくお願いします。

それでは、議事に入ります前に、事務局よりご連絡がございます。

○ 大森信用制度参事官

この合同会合、先週の金曜日、12月9日にも委員の皆様に予定を入れて頂いておりましたが、キャンセルということで大変ご迷惑をおかけましたことをまずおわび申し上げます。

○ 岩原部会長

それでは、議事に入りたいと思います。

本日の予定でございますが、大きく分けて2つございます。第1は、これまでのご議論の中で海外における信託の活用事例はどういったものがあるかというご質問、ご意見を頂いておりますので、海外の信託制度を研究しておられます金融庁金融研究研修センターの杉浦宣彦研究官にご説明を頂きたいと思います。第2は、前回までに出されましたご意見を踏まえまして、各論点ごとにまとめた資料について、事務局からご説明を頂き、それに基づいてご議論を頂きたいと考えております。

それでは、お手元の「議事次第」に従いまして、まずは杉浦研究官より「米国商事信託の最近の状況について」、ご説明を頂きたいと思います。

どうかよろしくお願いします。

○ 杉浦研究官

ただいまご紹介に預かりました金融庁の研究官の杉浦でございます。よろしくお願いいたします。

それでは、時間も限られておりますので、早速、私の方から「米国商事信託の最近の状況について」ということでご説明を差し上げたいと思います。

先だって申し上げますと、事務局から具体的にどのような形で、今、信託が海外で使われているのかということを説明してほしいというオーダーを受けておりまして、樋口先生を含め本日大家がいらっしゃる前でアメリカの信託法を論じるつもりはございません。むしろ、法律論ではなくて、彼の地において監督機関が信託業に関してどういうふうな監督姿勢を持っているのか等について、小職が、過去3年間ぐらいにわたっていろいろと聞いてきた結果を今回は簡単にご説明差し上げるということで進めさせて頂ければと思います。

事務局より、事前にこの辺の分野が各委員の先生方のご関心のエリアだという指摘もございましたので、今回はビジネストラストの現状についてと、参入(兼業)規制についての2つを重点に申し上げたいと思います。

3ページ目をお開き頂ければと思います。まず、歴史の話をしますと、アメリカもビジネストラストに関しては、18世紀から19世紀の初めに……。ごめんなさい、これは20世紀にご訂正ください。19と20が、18と19にずれています。すみません。アメリカの大規模企業がこの時期(19世紀から20世紀のはじめに)、信託形態で創設されているところから、ビジネストラストはスタートしています。例えば、かのジョン・ロックフェラーがつくったスタンダードオイルとかいったものが、コモンロー上のでのビジネストラストという形態で創設されました。

これはプロの経営者とか投資家たちの巨額資金のプールに使われたり、信託という枠組みを悪用して、信託と言ってその下にいろいろな産業を全部入れ込むというやり方をやって、実際的に一つの組織の下にグループとして取り込んで運営するという形の傾向がここであらわれてくるわけですが、当時の会社法は、会社設立の要件等が細かくて、手続き・コストとかいろいろな面を考えていくと、信託会社を設立する方が法的にも簡単であったという事実があり、実際に起業を行う場合はビジネストラストを立ち上げる方が便利だったということが背景にあると思います。

結果として、これは何につながってしまったかというと、カルテル・トラストという方向に進んでいってしまって、現在の経済法の分野になりますが、アンチトラスト法(独占禁止法)の制定につながりました。また、そのことにより、それ以降、アメリカの会社法制定整備の大きな進歩につながったという経緯があります。また、余談ですが、幾つかの文献を見ますと、この時期にガバナンスという言葉が初めてちらほらと見えてくるというところがございました。

そのような経緯のもと、こういう使い方のビジネストラストはよくないという判断が生まれ、現在では、ビジネストラストは、ミューチュアルファンドとかストラクチャード・ファイナンス・流動化に活用される方向に変化していますが、こういったミューチュアルファンドとかストラクチャード・ファイナンスに関するビジネストラストを、コモンロー上のビジネストラストという、あまりはっきりしない形ではなくて、法的に明確化するためにデラウエア州等ではビジネストラスト法の制定される方向になったわけです。

そういう中で、5ページ目に入りますが、これまではデラウエア・ビジネストラスト法のように州ごとでビジネス・トラストの法整備が行われてきました。デラウエアの州政府当局、並びに、かつて州政府の中では金融局の局長までやって、今、ワシントンで弁護士をやっている方がいますが、その方たちのインタビューも既に行っておりまして、彼らが明確に言っていることは、ビジネス・トラスト法をつくった大きな理由は、(信託を活用した)ミューチュアルファンドとストラクチャード・ファイナンスを州に誘致することにあるとのことでした。1988年、デラウエア・ビジネス・トラスト法ができて以降、6つの州でビジネス・トラスト法が制定されました。これはデラウエアと同じ目的でミューチュアルファンドのようなもの州へ呼び込もうという、それぞれの州の目算があったわけであります。しかしながら、実際には、実は、思ったほどファンド等は集まっていないようで、デラウエアが一人勝ちに近い状況にこの分野はなっています。

それはなぜかというと、州の裁判制度もそうですけれども、会社法制度というか、設立の制度という会社をめぐるいろいろな制度が、投資関係も含めてデラウエアは他の州より非常によく整備されているということがあると思います。例えば、何らかの証明や免許、商人が必要と州当局に言うと、デラウエア州は翌日に出てきますが、ニューヨーク州に同じような行政サービスを受けようとすると、ものによっては約2週間かかるという事実があります。それから、全体的に会社法関係の裁判をやろうとすると、裁判官とか弁護士も含めてその分野に慣れているので、紛争が起きてもダラダラと長くやらないといった傾向は明らかにあるのだそうです。つまり、どちらかというとデラウエアのベネフィットは、税とかどうこうという話ではなくて、会社とかコーポレーションをめぐるリーガルサービスが充実していることにあるということが一般的に言われています。以上が現在のビジネストラストの状況ですが、ビジネストラストは、主にミューチュアルファンドとストラクチャード・ファイナンス用に使われているんですということがポイントになるかと思います。

それから、参入規制の問題がどうなっているのかということをお伝えしたいと思います。現実には、各州の州法の信託法を見ていると、どんな会社は信託をやってもいいとか、このような条件をクリアしていないといけないというような表現の中で、実質的な参入規制がうかがえるような条文になっていると思います。書きぶり的にはあまり統一化されたものはありません。確か、前回の信託業法の改正を行ったときに、ここにいらっしゃる山下純司先生にも参加いただいて、金融研究研修センターでもいろいろ信託の研究をやったわけです。当時、東京大学の図書館等も利用させていただいて、全部の州のトラスト法を、今、シカゴに行っていらっしゃる森田東北大学助教授と読んだりしましたが、書きぶりがそれぞれ違うものの、全体としては参入規制がある形でした。つまり、各州の信託法は、わが国のそれとは違い、どちらかといえば事実上の業法としての存在があるというふうに特徴づけられると思います。

既存の銀行が信託業を行う場合は、追加的に免許をとるという形で認可申請を行うことになっております。普通の銀行が、国法銀行の場合もそうなんですが、州政府に信託業をやりたいのでというと、信託業の免許を付加してくれるという形になっています。

現状、例として、カリフォルニア州の金融法の第12章、条文でいうと1500条以下では信託会社という章がありまして、信託会社の設立は事実上認可制になっており、資本金とか設立条件、兼業の範囲については、どのような信託業を行うのかということによって、州政府が指導するという形になっています。私はこの件に関しては、いくつかの州政府の担当者にどのような基準があるのか聞き出そうと試みましたが、1回たりとも成功したことはございません。それぞれケース・バイ・ケースなんだということが、彼らの返答で、いまだに基準がよくわかりません。

ただ、州政府全体としての認識はどうなんだということを聞いてみると、7ページ目になりますが、そもそも信託業というのは、彼らの認識は基本的に財産管理を行って、インベストメント、投資をする組織であると解釈しています。したがって、金融業との関連性が非常に強いんだと。人の財産管理に使われるケースが多いんだから、その人たちが使い込んだりとか、いろいろなことをされたら困るわけですし、ましてや、信託会社がつぶれてしまっては困るという観点から、財産的基盤がしっかりしているところにすべきであるという認識は非常に強いということが上げられるかと思います。

したがって、信託会社関連の許認可に関しては、各州の金融局が所管しているというのが実態です。そして、彼らが銀行等の金融機関を中心に認可を出すという方向性が明らかになっています。実際、ほとんどの信託会社は銀行が兼業しているという形で、カリフォルニア州でも純然たる信託会社は数社のみというのが実態であります。例えば、カリフォルニア州の今年の3月の統計を見てみると、30社ほど、州が認めている信託会社があります。これは国法銀行が経営している部分を除きます。そうすると、30のうちの25は完全に州外の銀行、つまり、カリフォルニア州での銀行免許を持っていない銀行が信託だけをやりたいから、カリフォルニアで信託会社をつくってきているというようなケースが大半であり、実際、リストを見ていると3つぐらいの会社しか銀行とは関係のない普通の信託会社はなく、そこでは富裕層の方たちの財産管理をやっているというのが実態です。

また、8ページにいかせて頂きますが、各州の監督当局たちのマインドとしては、信託業は銀行と同様の監督をすべきという認識が非常に強いということが上げられると思います。実際、カリフォルニア州もそうですし、ニューヨーク州もそうなんですが、そういう州の銀行監督をやっているセクションに信託業に関してどういうふうにやるんだというと、OCCがつくっている資産管理ビジネスに関するガイドラインがあるので、そこに沿った形で監督や検査等を行っていると言っていまして、先ほども申し上げましたが、監督当局である各州の金融局の裁量による部分が非常に大きいと思います。ですから、入口参入のところのハードルが非常に高くなっているのが実態かと思います。

結果として、事実上、一般事業会社が信託業を兼業するケースはほとんど見られないと言ってもいい状況にあるかと思います。あえて言うなら、事業会社の兼業ニーズが少ないということもあるのかもしれないと思います。かつて、信託業法の改正を検討したときに知的財産の話がよくて出ておりましたけれども、土井委員がやっておられるビジネスと関連しますが、デビット・ボウイ債とかドリームワークス債、ドリームワークス債というのはスピルバーグ監督の映画の放映権をベースにした債権といった、無体財産権を基礎にした信託ですけれども、これらの債権は版権とか映画の放映権から上がってくる金銭債権をベースにした流動化であって、知財そのものの信託ではないんですが、特許等はその価値の不安定さからスキーム的にはありえても、ビジネスとしては成立しにくいようです。本年2月にカリフォルニア州に行ったときに、日本では知財信託は出てきたのかと聞かれたので、土井委員のビジネスのお話をしたら、アメリカの方で「それはすごい」と言ったという話があって、スキーム的にはあり得るんだけれども、そういうふうな形はなかなか難しいんだよねという話がありました。また違いがあるとすれば、投資の規模のレベルが違っていて、たとえ話ですが、日本で映画とかいろいろなものをつくるときに必要な経費のそれは、アメリカでは、流動化してまでお金を集めるのではなくて、三、四人とか幾つかの会社が集まってポンと出せるというレベルのところでやっているところと、わが国のみんなが集まってお金をかき集めて1つの映画なり1つのコンテンツ物をつくるというような、資金力の差のようなものがあるという印象を私は受けています。そんな無体財産の部分も含めて、事業会社が信託業をニーズがあるから兼業したいといっていることは、ほとんどないようです。

最後に、信託宣言と監督との関連と書きましたが、1つは、信託宣言に関して、信託宣言をしてはいけないということはなく、信託宣言をするということに関して別に違法であると言う人は誰もいないということを指摘したいと思います。ただ、信託宣言がされるケースは民事のケースで、生前信託の場合が比較的多く、コーポレートのレベルで信託宣言が行われるケースは非常に少ないのが現状です。

デラウエア州の当局に聞くと、もしデラウエア州の会社が信託宣言をするとしたら、信託宣言のイメージ的に詐害的であるとか、いろいろなことを言われることもあり、また、デラウエア州そのような詐害的行為は起こらないはそこをきちっと見ている州だからこれだけ投資してきてくれるんだから、一応理由を確認しますと言っています。その理由に何らかやましいところという言い方はしませんでしたが、ちょっとあやしい理由があるならば、それは州政府としては何らかのことを言うと思いますと。ただ、言うということはやってはいけないという権利があるのかといったら、それはそうではないんだけれども、そういったプレッシャーをかけざるを得ないケースがあり得るかもしれないということは彼らは言います。それをもとに考えてみると、各州がきちっと投資信託全体を監視しているという現状があるのかなと思っています。

そんな背景があるものですから、ニューヨークに本店を置くアメリカのメガである銀行、例えばシティとかJ・P・モルガン・チェースとかいった幾つかの銀行の本店本部にこういったことを取材して、例えば「アドバイザリー・ビジネスかなんかをやっているときに、自分のお客さんが信託宣言をしたいと言ってきたら、どう答えるのか」とたずねると、「自分たちとしては絶対勧めない。普通の流動化スキームでやってください」と普通は言いますと回答がかえってきます。無論、信託宣言することに正当な理由があるならば、それを拒む権利は銀行にはありませんが、信託宣言を使った流動化についてはポジティブではないという現状があろうかと思われます。

ということで、トータルで考えてみると、信託そのものはアメリカでは活発に使われているのですが、とりわけ商事信託の場合、州政府を中心とした監督・監視ののもとでさまざまなものが営まれている傾向が見られるということを強調させていただき、このご説明の最後とさせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございます。

それでは、次に、前回までに各委員から頂きましたご意見を踏まえて、各論点ごとにまとめました「主な論点」について、保井信託法令準備室長よりご説明頂きたいと思います。

よろしくお願いします。

○ 保井信託法令準備室長

かしこまりました。それでは、前回までにご議論頂きました「主な論点」につきまして、部会長からのご指示もございましたので、ご議論のたたき台といたしまして、縦紙で「主な論点」と書きました5枚紙のものを用意させて頂いております。順次、ペーパーに沿ってご説明をさせて頂きます。

「主な論点」の1ページ目、1.今回の信託業法見直しの考え方でございます。前回のご議論の中で、今回の改正の基本的な考え方を明らかにすべきというご指摘がございましたものですから、このような整理をさせて頂いております。5点ございます。

マル1、信託業法の適用の意味でございますが、信託会社と不特定多数の投資家、顧客が取引を行う際の情報力・交渉力の格差があるものでございますから、顧客を保護し、信託業者に対する信頼性の確保という観点から、信託業者に一定の義務を課すというものでございまして、これは前回、また今回の信託法改正後も同様でございます。あるいは、これを言い換えますと、情報の非対称性が存在するという経済実態の中で、経済取引は自由であるべきではありますけれども、非対称性から例えば外部不経済といったものが発生するときに、社会的なコストの発注ということでありますが、一定の規制をかけることによって経済取引の自由化・活性化を維持していくという考え方でございます。

マル2でございますけれども、信託業法の基本的な枠組みにつきましては、昨年の抜本改正でも担い手の拡大、信託財産対象の拡大といったことが行われたわけでございますが、これにつきましては、信託業に対する信頼確保の観点から構築されたものでございまして、今回の改正におきましては、信託法が改正されることに伴って新しい信託類型が追加されるということでございますので、これを信託業法上どう適切に位置付けていくかという観点からの改正でございまして、このために必要な措置を早急に検討するというのが基本でございます。その上で、新しい信託類型の活用状況あるいはニーズを十分に見極めまして、さらに信託業の規制を見直す必要性をご議論頂きたいということでございます。

3点目は、新しい信託類型、例えば信託宣言等でございますけれども、これについて信託業の対象範囲を整理するということでございまして、今後とも引き続き信託業規制の範囲につきましては、不特定多数の受益者等を予定しているかという考え方に基づいて判断するということは変わらないわけでございます。他方、基本的には受益者等が限定されている場合については、信託業規制の範囲外とするということではどうかということでございます。

マル4でございますけれども、したがいまして、新しく入ってまいります信託類型を信託業として取り扱うことを否定すべきではないということで、むしろ従来の信託形態との相違に基づきまして、顧客保護の観点から必要であれば、いわば追加的に信託会社がこれらを取り扱う際のルールを設定してはどうかという点でございます。

5点目といたしましては、いろいろな組み合わせがございますけれども、基本的には一対一といった対等な当事者間の契約関係を想定している信託法においては、受託者等の義務が緩和されたといたしましても、不特定多数と申しますか、業者対顧客の関係を前提とした信託業法上は、顧客保護のための必要な義務付けは維持してはどうか。ただし、実務上いろいろ不都合が生じている部分があるとすれば、それは顧客保護の要請を勘案しながら個別に検討してはどうかと。

以上、5点の考え方でございます。

2枚目、2.の新しい形態の信託の導入に対応した信託業の範囲・内容の整理の観点でございますが、6点ございます。

(1)といたしまして、従来どおり信託業法上は受託者としての業務に反復継続性が認められ収支相償うよう行う場合は信託業に該当するという整理でございますが、今回新しく信託宣言が導入されることによりまして、企業自らが自己の財産を信託設定する場合につきまして、どういった場合を信託業の規制の対象とすべきかという観点がございます。

(2)といたしまして、この点につきましては、信託業法が業者対顧客の情報力・交渉力の格差を踏まえて、信託に対する信頼性の確保ということを目的としておりますので、不特定多数の受益者等を相手方とする場合には信託業規制の対象とすることとしたらどうかという考え方でございます。括弧の中でございますけれども、具体的には、例えば企業における特定の事業部門や債権等を信託宣言により信託設定する場合の当該企業については、その受益権を多数の投資家に販売することを前提に信託設定する場合、信託業規制の対象となることになるという考え方ではどうかということでございます。

(3)は、前回議論の(C)の類型に当たったものでございますけれども、弁護士の預かり金等、金銭等を預かる場合でございます。こうした形態につきましては、予め当事者に信託設定の意思がない場合もございますし、さらに、取引に付随して決済用の金銭の管理を行う形態が中心でございまして、受託者の裁量が小さいことを踏まえた制度的な対応が必要ではないだろうかという論点でございます。

(4)でございますけれども、信託宣言などの新しい類型を信託業として取り扱う場合、前回のご議論でもございましたように、兼業規制が参入障壁となるという指摘がございました。兼業規制につきましては、信託業への他業リスクの遮断、あるいは、利益相反行為の防止等の趣旨から課しているものでございます。確かに信託会社は銀行・保険とは異なり、破綻しても信託財産は倒産隔離されるわけでございますけれども、他方、信託会社は自己の名義・計算で顧客財産を管理運用することと、分別管理を怠り財産が混同されたまま金銭等が費消された場合には倒産隔離は完全には働かないことも踏まえまして、信託財産の流用等を避け、信託業の信頼を確保する観点から、今後も基本的には兼業規制は必要と考えられるかどうかという論点でございます。

5番目でございますけれども、さらに、そもそも信託業のような本業とリスクの異なる事業を行う場合には、会社設立のコストはかかるものの、子会社形態で行えばよく、あえて事業会社本体に信託業を兼業させる必要はないので、兼業規制の緩和の必要はないというご指摘がございましたが、これについてどうかという論点でございます。また、そもそも同一法人で信託業と他業を行わせると、法人全体の健全性を保つため、他業の健全性まで担保する必要が生ずることを考えれば、子会社形態を活用した方が全体として自由な事業運営ができるのではないかというご意見もあったところでございます。

(6)、ただし、特定の類型、例えば事業会社が信託業を兼営して信託宣言などを活用するニーズも想定されているわけでございまして、それに対応して現行の兼業規制は見直すべきというご指摘もございました。これについてどう考えるかということで、例えば、一つの考え方といたしまして、信託業務のリスクが少なく利益相反のおそれがすくないといった一定の類型の場合には、一律に事業会社本体による信託業への参入を禁止する必要性は低く、他業の健全性が客観的に担保されていればよいとも考えられるがどうかという問題でございます。

3ページ目にまいりまして、3.以降は各個別の類型に関する新しい信託の論点でございます。ざっと簡潔にご説明させて頂きます。

(1)は債務の引受け・事業の信託、ネットマイナス信託、ビジネストラストの問題でございますけれども、5点ございます。

1つは、債務が積極財産を設定時から上回るような信託の設定をどう考えるかということで、受益者保護のために純資産額など信託財産の内容、事業計画、レバレッジなどの説明義務について、特段の措置が必要ではないかという論点。

2ポツ目でございますけれども、設定時から債務が積極財産を上回るような信託である場合には、資産評価をどうするかという問題でございます。

3ポツ目でございますけれども、事業信託の場合は、受益者と信託勘定の関係は、株主と株式会社との関係に類似するとも言えるわけでございます。したがって、信託業の規制においては、受益者の保護の観点から、例えば、重要事項の意思決定については、受益者の意見を十分に反映させる仕組みを求めるべきではないかという論点。

ただ、この点につきましては、信託においては個々の受益者に詐害行為取消権利など事後的に行使できる強い権限が与えられており、必ずしもガバナンスの水準を株式会社と単純に比較できないのではないかというご意見もあったところでございますが、それはどう考えるかということでございます。

さらに、事業の信託については、信託対象となる事業に属する労働者の地位が不明確であるという意見がございますが、これについてはどう考える。あるいはまた、会計上の取扱いをどう考えるかといった論点もご指摘頂いたところでございます。

(2)は信託宣言でございます。信託宣言につきましては、事業提携や資産流動化における活用可能性もあるという有用性が指摘されております。他方、事業目的で用いている、先ほど杉浦研究官からのご説明もございましたが、海外事例も乏しいのではないかというご指摘もありまして、委託者等の牽制効果が期待できず、信託財産の二重譲渡が容易に行われたり、第三者の検証がない信託の設定による信託受益権が販売される懸念があるというご指摘があったところでございます。

これらを踏まえれば、信託宣言については、受益者保護のために特段の措置、例えば受益権販売業者に信託宣言の内容について一定の説明義務を課す、あるいは、信託会社の内部で固有財産を信託財産とする信託の設定が真正になされたことへの第三者のチェックを求める、などのことが考えられるがどうかという論点でございます。

3番目でございますが、他方、この信託宣言については、改正信託法上、事後的に詐害行為取消権が認められておりまして、受託者の義務に関するルールも整備されているというご指摘もございましたので、通常の信託と同様の対応で十分であるという意見もございましたが、これについてどう考えるかと。

(3)は目的信託。この目的信託につきましては、受託者を監視する受益者がいないことを踏まえて、委託者の監督権限を強化すべきではないかということをご意見として頂きました。

(4)の限定責任信託につきましては、例えば、その信託は限定責任信託であり、受益者への財産分配規制が課されることや、財産分配規制の内容について説明義務を課すべきではないかということが論点として上げられております。

4.受託者等の義務でございます。1つ目が善管注意義務でございまして、信託会社と顧客の間の情報力・交渉力格差を考えれば、善管注意義務の水準をすべて契約に委ねると、信託会社に過度に有利な契約となり、顧客保護が確保されない可能性があるのではないか。そもそも善管注意義務は顧客に管理運用を託される信託業の最低限かつ共通の義務であり、現行規定どおり信託会社に一律に課すことが適当ではないかというご意見もあったところでございます。

(2)の分別管理義務でございますけれども、信託財産の倒産隔離機能の確保、あるいは、受託者の忠実義務の履行を担保するということから重要であるというご指摘がございまして、信託業法においても、現行どおり、信託会社に対して信託財産の分別管理のための体制を整備する義務を課すことを維持すべきではないかというご指摘があったところでございます。

他方、受託コストの軽減等の観点から、動産・有価証券等については、物理的分別管理の代替として帳簿上の管理を認めることが信託法上検討されているところでございますが、信託会社にもこうした措置を認めることができるのではないかというご意見もあったところでございます。(3)、忠実義務でございます。これは信託目的等に照らして不必要な取引あるいは通常の条件と異なる条件で信託財産に損害を与える条件での取引の禁止については、今後も一律に禁すべきではないかというご指摘を頂いているところでございます。

また、利益相反行為の禁止の免除条件、例えば「信託財産に損害を与えるおそれがない」というような文言でございますが、これの明確化など、実務上支障をきたしているというご指摘のあったものについては、受益者保護の観点から問題がない範囲で対応を検討するべきではないかという論点でございます。

(4)はいわゆるプロ・アマ論でございます。プロ顧客との取引における取扱いでございますが、信託会社の受託者としての管理運用上の義務については、プロ顧客との取引について軽減を認めるべきだというご指摘もあったところでございますけれども、これは信託業の本質的な義務でございまして、実務上支障をきたす点については個別に工夫を施すことで対応できるのではないかという論点でございます。括弧のところでございますが、幾つか投資法についてのご指摘もございますけれども、投資サービス法については、業者と特定投資家(いわゆるプロ顧客)との間の取引においては、説明義務等の軽減を認める方向で検討が行われていると聞いているところでございます。

(5)の信託業務の委託につきましては、信託業務の性質に応じ、運用権限が委託されている場合など、実質的に受託者と同様の役割を担っていると考えられる場合については、現行どおり、信託会社と同様に善管注意義務・忠実義務等を課しまして、これ以外の場合については義務を課すことは不要としてはどうかという類型分けの議論でございます。

それから、信託契約における委託先の明記を求める範囲も上記の整理と同様に考えればどうかということでございます。

3ポツ目は、委託者からの信頼に基づいて運用管理を行う信託会社が信託業務を第三者に委託した場合、現行でございますと、損害賠償責任が課されているわけでございますが、受益者保護を最終的に担保する観点からは、例えば委託者又は受益者が自らの関係者を委託先に指名した場合など限られた場合を除き、この枠組みは維持すべきではないかといった論点もあるところでございます。

以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明内容について、皆様からご質問、ご意見を頂けたらと存じます。どうぞご遠慮なく。樋口委員お願いします。

○ 樋口委員

せっかくの機会ですので、一言だけコメントをさせて頂きます。

今回の信託業法見直しの考え方についてという最初のページの基本的なスタンスをどうとるか。信託をどう考えるかという話と、信託業をどう考えるかという話になると思うんです。まず信託に対する考え方というのが、信託業法の前提にあるので、言葉尻の問題であれば恐縮なんですが、マル5の「基本的には対等な当事者間の契約関係を想定している信託法」というのが私にはちょっと引っかかります。

信託というのは、明らかに受託者に、あらゆるというと何ですけれども、自分の財産であれ何であれお任せしてやってもらおうというわけなので、これが対等であるわけがないんですね。委託者と受託者の初めの契約のところでは、気に入らないなら、信用できないなら、初めから頼まなくていいという意味では対等なのかもしれませんが、入った後は本当に全部監督できるのか。全部監督できるようだったら自分でやった方が早いわけで、お任せになってしまうので。日本では契約ということになっておりますから、それでいいんですが。

契約にもいろいろな類型があって、典型的な契約は当事者間対等かもしれませんが、例えば民法では任意後見契約というのを認めています。後見人になる人と被後見人の間が対等だなんていうことは考えてもいないわけですよね。だから、それに類似したような、フィデューショリーという点では同じなんですね。信託はそういうものではないので、私法でもそこで幾つかの特徴的な話をつくるわけですね。1つは、信託財産は倒産隔離されています、大丈夫ですよという話をつくる。これも結局受益者、一方当事者の保護である。だから、他方当事者の受託者だけに特別な義務、典型的には忠実義務とか分別管理義務ですが、そんなものが発生して、受益者の方には発生しませんから、非常に偏頗なものなんですね。そういうのも結局受益者の保護。そういうことでないと危ないというシステムなんです、基本的に。

3つ目が、救済のところでも、普通の契約関係では発生しないような利益吐き出し的というのを信託では認めるというのが大きな特色になっているわけです。日本の信託法でどれだけのものができるかというのは次の問題で、まだ論争中というか、審議中のものではありますけれども、そういう信託法で、私法上も一定の保護はあるが、しかし信託業法は必要だというスタンスで書いて頂きたいと思うんです。ここは言葉尻だけで、そんなことはみんなわかっているよということであると私は思っておりますけれども、あえて一言申しました。

ついでに、次のページに入っていって、ではどうして信託業法が必要かというのは、池尾先生も繰り返しいろいろなところでおっしゃっている、「一体なぜこういう信託業法、そもそも業法というのは規制が必要なのか」というのは重要な論点だと私も思っておりますが、私自身は信託業法の必要性は十分理解できるというか、当然あってしかるべき。私が専攻しているアメリカでも商事信託の分野、投資信託と年金信託が典型的ですけれども、非常に強い規制が入っているということだけは申し添えます。それがなぜというのはなかなか難しい問題かもしれませんが。

ありがとうございました。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。

関委員、どうぞ。

○ 関委員

私の問題意識は、今度、信託法が改正されて新しい信託の類型が入ってくるということで、その中に事業信託というコンセプトが入るわけですね。事業信託という新しいスキームが、従来の会社法によるスキームに加えられてくるわけですけれども、これが果たして日本のいろいろな事業会社が事業を活性化していく上で有用かどうかということなんですね。有用かどうかというのは、先ほどニーズが本当にあるのかどうかはよくわからないという話がありましたが、有用だとしたときに、それが使えないということにはならないようにぜひしてもらいたい。前回、も申し上げたんですけれども、考えてみますと、事業会社が事業の再生、例えば新しい事業に参入する場合に、新しい事業を能力の高い専門の会社に信託という形で委託するというケースはあるのではないかと思うんですね。

ちょっと頭の体操ということで実例を上げた方がわかりいいと思うんですけれども、私は新日本製鐵なんですが、新日鉄が事業多角化をやる上で半導体に何としても出たいと思って、半導体の会社を買った実例があるんです。そのときに半導体の会社を買ってやろうと決めたのは、日立に半導体の指導を受けてもらうということを前提にやったわけです。結果的には技術提携契約にしたんですが、そのときのことを考えると、新日鉄が日立に半導体事業を信託という形でお任せするという選択肢があったのではないかと私は思っております。

そのときには新日鉄が受益権を取得するということになるわけですけれども、それはその受益権を将来新日鉄のイグジットとして、一般の人たちに販売するということもあり得べしということでなければいけないと思いますが、いずれにしてもそういう実例が考えられるのではないかと思います。そのときに、兼業規制の議論なんですけれども、日立は信託事業なんてしてはいけないんだということになってしまえば、まさに事業信託を使うという、信託という形で事業信託を使えるスキームはなくなるわけですね。したがって、不特定多数の受益権を販売するということを含めて、受益権が信託業法で規制されるか、あるいは、投資サービス法で規制されるかはともかくとして、それが投資商品として横並びできちっと制御されるというのは当然のことだと私は思うんです。

事業信託という新しい形式、少なくともそういうスキームの可能性が出てきたときに、兼業規制というハードルで全くそれができないというようなことにはしないで頂きたい。わかりやすくというとそういうことでありまして、2ページの(4)と(5)とか(6)、特に(5)の議論になるんですけれども、子会社形態であればいいという議論は違うと思うんです。結果はそうなるかもわからないんですけれども、少なくともそういう新しいスキームが出てきた以上、そういうことが兼業規制という規制で頭からできないということにはぜひしないで頂きたいと思っているんですが、どういう工夫があるか。我々が事業信託を委託する相手の会社はそれなりの専門家ということになるわけですから、それは決して信託会社ではないわけで、事業の専門家に信託を委託するということになるというわけですから、その辺のところで工夫ができないのかなという問題意識もあるわけでございます。よろしくご検討頂きたいなと思います。

○ 岩原部会長

池尾委員、どうぞ。

○ 池尾委員

前回拙い言い方で申し上げた問題意識は、信託法に上乗せした形で信託業法で規制をしなければいけないのはどういう状況かと。先ほど樋口委員からお話がありましたけれども、信託法の中でも受託者保護には意を配しているわけですから、信託法の規律の世界というのがある。だけど、信託法の規律の世界だけでは不十分で、なおかつ信託業法という上乗せの規制が必要になるのはどういう状況なのか、そこをしっかり確認した上で議論をスタートさせるべきではないかということを申し上げて。今日の整理で、不特定多数の顧客と取引するような場合には、情報上の非対称性とか交渉力の差という問題が極めてシリアスなので、信託法の規律に加えて、業法としての規制が必要になるということで整理されていて、その点は私のような者にも非常にわかりやすい整理の仕方で、基本的に賛成という言い方は変ですが、妥当だと思うんですね。

したがって、1ページのマル3の最後のところに書いてあるように、基本的に受益者が限定されている場合は、信託業規制の範囲外、要するに信託法の規律で十分であるということで、上乗せ規制は必要ない。それに対して、2ページ目の(2)のところで、不特定多数の受益者等を相手方とする場合には、信託業法規制の対象とすると。これは微妙な書き方だなと思うんですが。要するに、1回限りなんだけれども、不特定多数に販売するときも信託業法の規制の対象にするということを含んでいるわけで、反復継続で不特定多数に売っていれば当たり前に規制されるんだけれども、1回限りでも、最初に確認した出発点からすれば、やはり不特定多数の受益者を相手にするということがあれば、信託業法の対象とならざるを得ないだろうという点は、私もそうだと思います。

そこまでは整理に同意というか同感なんですが、今、関委員がおっしゃった点に関連しますが、2ページの(4)の部分については、この前申し上げたことに比べると納得感がないんですね。というのは、ずっと読んでいきますと、受託者責任を確保する必要がこういう場合もあるというのはよくわかるわけです。その受託者責任のうちの一部としては分別管理義務を果たすとか、そういうことを確保することは必ず必要だと、私もそのとおりだと思うんですね。だけど、だから兼業規制が必要だというのは論理としてジャンプしているように思うんです。

分別管理をはじめとして受託者の義務についての議論が4ページ以下にありますが、こういうものは本当にきちんと守ってもらわなければいけないと思うんですけれども、受託者責任を守らせる方策として兼業を禁止するというのは最後の手段という感じだと思うんですね。兼業を禁止する以外に受託者責任を確保する方策がほかにないというのだと、兼業を規制するということになると思いますが、ここでは、本当に受託者責任をしっかり守らせるという実をとるために、兼業規制以外のやり方がないのかという点について全然検証がないと思うので、いきなり兼業規制が必要だというのは、先ほど関委員がおっしゃったようなことを考えて、趣旨からいって納得感がちょっと乏しいのではないかと思いました。

○ 岩原部会長

この文書は確かにご指摘のような問題もあると考えられますが、おそらくこれは分別管理がきちんとされていないときの、その後の財産が混同的に扱われているときの当該信託会社の財務の健全性を確保するために兼業規制が必要ではないかと、そういう趣旨で。したがって、そういう一般的な信託会社の財務の健全性を確保する方法として兼業規制が妥当かどうかと、多分そちらの問題になってくるのだろうと思います。

ほかに何か。今野委員、どうぞ。

○ 今野委員

先ほど関委員がおっしゃったこと、私もよく理解できます。2ページの(5)に関してご意見がございましたが、私も(5)ではなくむしろ(6)の意見を採択して頂きたいと思っております。先ほどのご意見は、新日鉄さんという大企業の中の話でしたが、私たちベンチャーという立場から見ますと、まだよくは理解していないんですけれども、今後さまざまなニーズにこたえる形で新しい信託類型が生まれてくるということに対して、期待したいと思います。よくはわかりませんが、こういう信託類型がさまざま生まれてくることで、今、ニュービジネスベンチャー、中小企業経営の現場でいろいろ問題になっていることがうまく活用できるのではないかという気持ちを持っております。

例えば、私がこの10年ぐらい一生懸命かかわってきたことの一つとしてベンチャー、主として個人の発明家が開発した知的財産があります。これは日本ではなぜか本当にうまくいっておりません。特に知財を一個人とかまたは中小企業が持った場合、それが非常に優れたもので、世の中に与えるインパクトが大きければ大きいほど、結果的にはつぶされるというようなことがあります。そういう日本の現実というか、知財をめぐる大きな企業社会の問題も、もしかしたらそれは一個人で戦ってきたことでうまくいかなかったのではないか、としたら、それはたとえば知財信託みたいな形でなら守ることそして活かすことができるのではないかというような、期待が持てるのですが。その他にも中小企業がみんな持っている事業再生とか後継者問題にも、このスキームは生かされるのではないかと思っております。

そうであるならば、そうした中小企業の経営現場で今どういうことがどんな形で問題になっているか。また、そうした具体的な一つひとつの課題が今後どのようになっていけばいいのかというあたりをつぶさに理解して頂いた上で、それに信託が活かされるように、また中小企業活性化に寄与できるように考えながら、規制とか信託業に対するあり方を考えて頂きたいと思っております。よろしくお願いします。

○ 岩原部会長

では、山下委員。

○ 山下(友)委員

この分野はあまり勉強したことがなかったんですけれども、お話を聞いておりまして、信託法の法制がかなり変わるということなので、信託業法では想定していなかったような新しいタイプの信託が可能になる、それに対して信託業法で業としての規制をどういうふうに変えていくべきかという議論がなされているかと思います。ビジネストラストをはじめ新しいタイプの信託が可能になるということのようでございますので、活用のしようによっては社会的に非常に有意義な方法になり得るのだろうと思うんですね。

そういうときに、先ほどからの議論で兼業規制等によって信託法上は可能であるけれども、業法で押さえられてできないようにするのはいかがなものかという議論があって、それは抽象的には何となくわかるんですが、問題はそれをどういう範囲で具体化していくかというところだろうと思うんですね。業としては危なっかしいけれども、それにもかかわらず何らかの事情で規制をなくすか最小限のものでやらせていくという分野があるかどうかということかと思います。

そういう観点から見ると、先ほどから議論になっている2ページの(5)から(6)のあたりですが、(6)でそういう一定の規制をかけないでゆるやかにする分野を絞り出していこうという発想が出ていると思いますし、そういう方向は私自身も賛成していいかと思っているんですが、ただ、下から3行目の「信託業務のリスクが少なく利益相反のおそれが少ないといった一定の場合」とある部分は果たしてどういうところまで考えておられるのか。それから、例えばビジネストラストのようなものに仮にこういう基準を当てはめるとして、本当にああいうものはリスクが少ないんだろうかと思いますし、この表現とはちょっと違ったいろいろな考察が必要なのではなかろうかなと思います。そのあたりを少しずつ具体的に検討していって頂いてはいかがなと思っております。

以上です。

○ 岩原部会長

はい。何かここのところで、事務局はいいですか。

○ 保井信託法令準備室長

はい。

○ 岩原部会長

それでは、土井さん。

○ 土井委員

先ほど杉浦研究官から知財の信託についてお話が出たので、一言申し上げますと、欧米においても著作権についてはABSの形での証券化はなされております。これは当然ながら、杉浦さんがおっしゃられたようにキャッシュフローをベースにしてのことは事実なんですが、その裏で実際には著作権を管理信託しておりまして、キャッシュフローが生まれる財産権はしっかりとした形で管理されているということは欧米も一緒でございます。単純に私どもは信託受益権を販売してしまうという形態のところが若干違いがあるということは言えます。

それからもう一点、アメリカにおいては連邦著作権法が日本の著作権法とは違っておりまして、向こうは独占的使用権が著作権には認められております。ところが、日本はライセンシーの保護が全くございませんので、非常に多くの使用権が混在する。それを使用している人たちもどこまでが自分たちの権利になっているのか、契約が非常に曖昧であることも事実でございます。

そういう中で、先ほど日本の著作権は規模が小さいという話が出ましたが、これを例えば信託宣言で、1回こっきりとは言え不特定多数ではないところにやると。不特定多数ではないところにやってしまうというのは金額的に十分可能なわけでございますが、非常に危ないわけですね。先ほど申し上げたように、連邦著作権法と日本の著作権法は違いますので、中身は本人もわかっていない。当然ながら、特定少数の人たちはそういう知識がない。そういう状況でやって本当にいいのかという感じは持ちます。

それから、コンテンツビジネス、今やっとマーケットをつくろうという動きになっている最中でございますが、一昔前、コンテンツビジネスで一番危ない点は何かというと、会社の形態をとって何となくそれらしいところをつくっておいて、投資を受けたとたんにみんな霧散して誰もいなくなると。こういうケースが非常に多かったわけでございます。今後そういうものが出てこないとは限らない。そういうものは1回こっきりなんですね、実は。せっかく健全な資金調達マーケットをつくろうとしている状況で、不特定多数ではないというところまでいいのかと。私、自分のビジネスを長年やっておりますけれども、非常に危惧を感じるところでございます。

以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございます。

松谷委員、どうぞ。

○ 松谷委員

それでは、少しお時間を頂きまして、信託業界の実務の立場から各項目について意見を述べさせて頂きたいと思います。

まず、1ページ目の「見直しの考え方」のところで5点ありますけれども、マル1マル5に関連する部分について述べさせて頂きます。先ほどから議論になっておりますマル1の業法を適用することの意味というところでございますけれども、資料にございます情報力あるいは交渉力の格差というものは確かにございます。しかしながら、信託独自の仕組みを申し上げますと、委託者から受託者に財産権が移転するということ。それから、受託財産の管理処分権が完全に受託者に移るということ。こういった点では、民法でいうところの委任とは違う責任の重い制度であるといえます。また、年金信託に代表されますように極めて超長期にわたって信託業務の遂行が求められているということでございます。したがいまして、こういった業務の特性を踏まえて受託者のあるべき資格要件、あるいは、体制整備などが定められているということで、信託業法を適用する意味はあるだろうと考えております。

今回、信託法の改正によりまして、受益者によるガバナンスが飛躍的に向上するというところが改正の大きなポイントと聞いております。現状の実務に照らして見たときに、現行の信託業法での過度な規制の見直しを図るというところにつきましても、我々信託業界といたしましては、今回の信託業法の改正も信託法の改正と同じ方向で見直しをお願いしたいと考えておりますし、むしろ今回の信託業法の改正の一つの大きな目的ではなかろうかと考えております。基本法でありますところの信託法が変わりまして、受益者によるガバナンスが整備されるというところが今回の業法の受託者義務にかかわる改正の出発点ではなかろうかと思います。もちろん、受益者保護は重要でございますので、受益者保護上信託業法で追加的に義務付けが必要な規制は何であるのかという観点からの改正をお願いしたいということでございます。

続きまして、各論について申し上げますと、2ページ目の(2)の不特定多数の受益者を対象とする場合の業規制につきましては、基本的に記載のとおりと思います。ただ、一点だけ補足させて頂きますと、受益者が単独の場合であっても、その後ろに不特定多数の投資家が存在するというスキームも世にはございます。具体的には、受益者としてはSPC1社だけでもそのSPCが不特定多数の投資家にファイナンスを行うというスキームもございますので、受益者保護あるいは投資家保護の観点からいきますと、スキーム全体の中で投資家保護が図られなければならないのではないかと考えます。

それから、3点目の弁護士預かり金等につきましては、当事者に信託設定の意思がなくて、信託法理が適用されるようなケースは当然信託業には当たらないと思います。しかしながら、信託業法の免許あるいは登録を受けて行われていることと全く同じような経済行為が、他方で業法の適用を受けずに行われるという、いわゆる脱法的なことにならないようにお願いをしたいと思います。

それから、(4)から(6)までのいわゆる兼業規制のところについて申し上げたいと思います。先ほどから兼業規制の必要性といたしまして、受託者が破綻した場合の倒産隔離ということが議論されております。それはもちろん大きな論点でございますが、それに加えまして、受託者が急に破綻しますと、信託業務が止まってしまう。止まったことによって信託目的が達成できなくなる可能性が高いということを申し上げたいと思います。我々受託者は日々信託財産の運用管理を行っているわけでございまして、信託目的を達成するためには継続的かつ安定的に業務を遂行する必要がございます。

信託業のほかに別の事業を営んでいて、ある日突然その事業に失敗して倒産してしまったということになりますと、倒産隔離の点は別にいたしまして、信託業務が止まってしまうというリスクがございます。当然、新しい受託者を探すという手続きに入るわけでございますが、受け入れる側の体制の整備、あるいは、受けるかどうかの受託の可否の判断ということを考えますと、速やかに受託者交代が必ずしもされないのではないかと思います。

そういったいわゆる信託業務以外のリスクを受益者に判断させる、あるいは、負わせるというのは適当ではないということがこの兼業規制の趣旨ではないかと認識しております。ちなみに申し上げますと、現行の信託業法におきましても、兼業自体制限はされておりますけれども、完全に禁止をされているわけではございませんで、問題がない場合には行えると認識しているところでございます。

それから、(5)でございますけれども、子会社方式につきましては、昨年の信託業法の改正により既に何社かが参入されているところでございますが、この点で申し上げたいのは、特に信託宣言を本体で行いまして、資産の流動化によってファイナンスを行うケースは、先ほど杉浦調査官から米国では商事信託においてほとんど活用されていないという事例の紹介がございましたけれども、我々が夏に米国で調査を行いました際も、実例としてはほとんどなく、かつ、会計上の問題、真正売買であるかどうか、あるいは、格付機関から格付がとれないのではないかという懸念、いわゆる投資家がつかないという懸念で活用されていない。いわば流動化に限っては信託宣言で行うのは受益者保護に極めて問題があるスキームであると考えております。

長くなって恐縮ですが、(6)でございます。先ほど委員の方からご質問がありましたが、信託業務のリスクが少なくて利益相反のおそれが少ないという事例を書いて頂いておりますけれども、事業の信託とか流動化といったことを想定すると、なかなかこんな事例には当たらないのではないかと考えます。事業会社が本体で事業の信託を行うと、それが社会的、経済的に価値があるということであれば、今申し上げましたような他業のリスクを受益者に負わせてもなおかつ受益者保護に欠けないということになるのかどうかというところは、個別スキームあるいは事例に応じて判断、検討を行う必要があるだろうと考えております。

それから、3ページ目のそれぞれの信託形態について業法上考えられる措置について簡単に申し上げます。信託宣言につきましては、今日の場では反対は繰り返しませんが、重要なのは、信託宣言という形態でありましても、信託法あるいは信託業法の規律が適切に守られるかどうかというところが一番大きなポイントであろうと思います。

ページをおめくり頂きまして、4ページの4.受託者等の義務のところでございます。まず、善管注意義務について申し上げます。基本的に善管注意義務は受託者が行う個々の業務内容に応じて義務の内容が変わってくると考えております。我々実務の観点からいきますと、後々のトラブルを回避するために具体的な受託者の義務の内容、あるいは、受託者の責任の範囲を契約書で確認的に記載しております。こうした記載自体は善管注意義務違反ではないと思っておりますが、何らかの形でその旨を明確化して頂けるとありがたいと考えております。

分別管理義務につきましては、記述のとおりであろうと思います。

それから、5ページの忠実義務でございますが、1つ目のポツのところは一般規定としての忠実義務の禁止規定でございますので、これは基本的にこのとおりであろうと思いますが、一点だけ申し上げたいのは、受託者に裁量のない取引については受託者の忠実義務の範囲外であるということは明確にして頂きたいということをお願いしたいと思います。

2つ目のポツにつきましては、信託法で予定されている例外規定の一部のみしか認められないという書き方になっております。これにつきましては、営業、非営業を問わず、私法上認められる例外規定が業法で認められないということはないようにして頂きたいと思います。前回のプレゼンでも申し上げましたけれども、利益相反行為の禁止規定は形式要件でございますので、受益者の利益になるという場合の自己取引であっても、形式的に一切できないというのが実務上支障となっている点でございます。

また、現行の利害関係人の範囲につきましても、広範にすぎる部分がございますので、見直しをぜひこの機会にお願いしたいと思います。

4点目のプロ・アマ議論について申し上げます。受託者としての管理運用上の義務の過重軽減につきましては、顧客がプロかアマかという問題とは違うのではないかと考えます。信託の場合は、基本的に個別のスキームあるいは契約によって受託者が果たすべき役割が定められているわけでございまして、その中で受託者の義務が当事者間で決定できるということであろうかと思います。その際に、情報力あるいは交渉力の差があるということであれば、それは投資サービス法の考え方のように、説明責任で調整すべき問題ではないかというふうに考えるところでございます。

最後でございますが、信託業務の委託について申し述べさせて頂きます。ペーパーを拝見いたしますと、かなり現行実務にご配慮頂いた内容になっておりますので、ぜひこの方向でご検討をお願いしたいと思っております。

長くなりました。以上でございます。

○ 岩原部会長

はい。

では、翁委員、どうぞ。

○ 翁委員

この「論点」のメモについてのコメントをさせて頂きます。私も、信託法だけでは何が不十分かという視点に立って、今回示されました、受益者等が限定されている場合は信託業規制の範囲外として、不特定多数の受益者を扱う場合には信託業の規制の対象とするという考え方については、基本的にはこういう考え方でいいのではないかと思います。むしろ反復継続性というような、比較的形式的なことでそういった規制の有無を考えるというよりは、より合理的な考え方なのではないかなと思います。一方で、こういった受益者保護の観点で信託業法を考え直していくとしますと、現在議論しています投資サービス法のフィロソフィーというか、そういったことを参考にして柔構造化とか、そういったことで考えていくことが重要なのではないかなと感じました。

もう一点、参入規制、兼業規制のところでございますが、前回も申し上げたんですけれども、参入規制、兼業規制といったものはむしろ緩和し、倒産隔離といった行為規制をしっかりと確保していくという考え方に立つべきではないか。それから、先ほどご発言がありましたけれども、倒産隔離をしていても、万が一破綻した場合のことで考えるべきことがあるということであれば、そこにおける機能の維持をどう確保していくかという観点で検討を進めるべきではないかと思います。

以上でございます。

○ 岩原部会長

山下委員、どうぞ。

○ 山下(純)委員

先ほどの関委員のご発言を伺っていていろいろ考えてみたんですが、新日鉄と日立という例があったので、その例を上げさせて頂きますけれども、半導体事業等が日立に移るという形で、受益権を新日鉄が取得して、一般投資家にも販売したいというニーズがあるというお話でしたが、例えば半導体事業が採算がとれるようになった場合に信託を終了させて、その事業をまた新日鉄に戻すというようなケースを考えた場合、新日鉄の方では性質の違う受益権を、一般投資家とは異なるような性質の受益権を持つことになるのではないかと思います。

採算がとれるようになったら信託を終了させて、一般投資家への受益権は消滅させて、事業を戻せば、新日鉄の利益にはなるわけですけれども、一般投資家の受益者保護というのが問題になってくると。ですが、信託法の中には受益者の公平という一般原則がありますが、そういう一般原則だけで一般投資家の保護が図られるのか、あるいは、投資サービス法の中でリスクの高い受益権なんだということを認識させれば、それで問題が解決するのかといった点が一つ問題になるのではないかという意見です。

○ 岩原部会長

鳥井委員、どうぞ。

○ 鳥井委員

私は協同組織金融機関という立場でこの会に参加させて頂いていると考えておりまして、今までの議論の中で私ども本来業務の貸出をした後の資金については、一定の機関投資家という立場で有価証券並びに信託受益権等に投資をしておりますので、その立場から今回の議論についての意見を申し述べさせて頂きたいと思います。

新しい事業信託なり信託宣言という、本来の信託のビーグルとして活用されるという可能性を持った制度がもともと信託制度にありますので、そういった観点で柔軟性を生かした形のものができるということは、投資家としては歓迎するものではありますけれども、一方、不特定多数の問題で論点になっておりますけれども、その商品が安定的に発展していくためには、一定の投資家が評価するといったことが必要ではないかなと思っております。その場合には、スキームの健全性とか公平性とか取引の安定といったあたりが、投資家としてはポイントになると思っておりまして、そういったものが信託業法の中で担保されていると我々は考えておりまして、そういった点の疑義が発生するような場合は、かえって商品の広がりが阻害されるというふうに考えております。

したがいまして、事務局の「主な論点」の中にあるような不特定多数の保護といったものが図られるべきではないかと考えております。営利の目的とか、反復継続の如何を問わず、信託会社が服している忠実義務なり、信託財産にかかる行為準則といったものがきちっと担保されることが必要だろうと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○ 岩原部会長

それでは、和仁委員、どうぞ。

○ 和仁委員

二、三点、コメントさせて頂きます。

実務家の方とか経産省の意見を拝見していますと、信託法と信託業法がごっちゃになっている感じがします。信託業法というのは信託のお手伝いをする人たちの行動を律するものでありまして、信託業法で業者を規制したからといって、やりたい信託ができなくなる、先ほどの新日鉄と日立の話も当事者でおやりになればいいわけでありまして、信託業法の世界の話とは私は思いません。要するに、お手伝いを何回もやる人たちについて、その行動をどうやって律していくのかというのが信託業法の目的だと思います。

いわゆる池尾先生のおっしゃる上乗せ規制でありまして、その上乗せの方が重くなってしまって、下の信託に影響を及ぼすなら、それは問題でしょうけれども、現在考えられている新しい信託法での信託、あるいは、その外にある民事信託という可能性も考えれば、あまり議論を広く考える必要はないのではないか。また、信託業法が信託の広がりを妨げるということが実際に起こってきたならば、そこで考えればいいのではないかというのが、実務をやっている人間としての考えでございます。

その意味で非常にいいと思いましたのは、信託業法の適用範囲を不特定多数の受益者が出てくるか、それを予定しているかどうかという場合に限ると。「収支相償う」というのも外してしまうという形で、極めて明快に限定して法律に書いて頂ければ、業とは何かということに関して、極めて明快な解決がほかの業法にも関してもできると思います。ということで、この考え方でいいのではないかと私は思います。

先ほど土井さんから「1回限りで雲散霧消してしまう場合があって、それはどうするんだ」というお話がありましたけれども、私募型のものですね。しかし、そこは来るべき投資サービス法で当然にカバーされる話でありまして、別に心配する必要はないと、第一部会にときどきお手伝いに行っている人間として私は思っております。

ですから、さっきのところで、信託と会社を対比される方もいらっしゃるんですけれども、新しい会社法でどこまでできるのかということが議論されずに、信託の間口を広げるべきだという議論がなされておりましたけれども、実際に信託をやって買い手がつくか、投資家がついてくれるか、格付機関がちゃんと判断してくれるか、税制上の問題がクリアできるか、問題はいっぱいありまして、できる限り間口は大きくしましょうというふうな議論では、箱はつくったけれども何も利用されていないではないですかというふうな形の話になってしまうと思います。

ただ、一点、兼業規制のところは、お手伝いをする人でも何回もお手伝いをして、そういうふうな事業を延ばしていかれる方が出てくるのは誠に結構なことなんですが、大切なのはリスクの遮断であって、それが信託宣言方式でやっていたときには、「本当に大丈夫なんですかね」ということは誰でも思うことだと思います。殊に格付機関が許してくれないと思います。

リスクの遮断に関して言えば、今の信託銀行だって、信託銀行が倒産したことは過去にないわけですよね。この間のジェイコム株みたいなことで、突然大間違いをして損失が発生する、本体の自己勘定の方でロスが出て、信託の方はちゃんと維持できるのかと、そこのところのシミュレーション、あるいは、どういうことをやればいいのか、それに備えて何をやればいいのかということについての手続きをきちんと定めておいて頂いた方が良いのではないか。要するに、分別管理をしています、こうなっていますと言いますけれども、実際に何か起こったときにデーワンにちゃんといくんですかねということを、信託業法が通った後で詰めて頂きたいなと思います。

それから、私、弁護士ですので、弁護士法の話も少しさせて頂きます。要するに、弁護士が脱法行為をするような場合は信託業法の規制をかけるべきだというお話がありましたけれども、一つ申し上げておきたいのは、我々も弁護士法という業法で縛られておりますので、そこから飛び出すような行為は信託業法の世界にきますので、ここに書いてあるとおりであって、通常は弁護士法の世界で決めればいい話ではないのという形であって、問題は今まで弁護士として何の事故も生ぜずにやっていた業務が信託業法の適用対象だということでリキャラクタライズされ、不必要な負担が増大するというおそれがないということだけを確認して頂ければよろしいのではないかと思います。

以上でございます。

○ 岩原部会長

まさに弁護士は最も高い倫理規範を持って自律していくということを示して頂くのが一番大事ではないと思いますが。

道垣内委員、どうぞ。

○ 道垣内委員

つまらない質問で恐縮ですが、日本語の読み方についてなのです。

「主な論点」の2ページ目の2.の(2)の「これについては」という言葉なのですが、私は、説明を伺ったり読んだりしたときに、「企業自らが自己の財産について信託設定をするような場合については、不特定多数の受益者を相手にする場合について規制の対象とするので、受益権を多数の投資家に販売することを前提にしたとき信託業の規制の対象となることになる」というふうな意味だと読んだのです。ところが、今までの皆さんのご発言を聞いておりますと、信託業法の規制対象そのものが今とは変更され、「不特定多数の受益者を相手にする場合」のみにすると読んでいらっしゃるようなのですけれども、これはどういう文章なんでしょうか。

○ 岩原部会長

では、保井さん、お願いします。

○ 保井信託法令準備室長

基本的には、道垣内先生ご指摘のとおり、信託宣言等自らの財産を信託設定する場合ということなんですけれども、これまでやってきた業の概念というのは変わらないという考え方でございます。

○ 道垣内委員

そうしますと、例えばある金融機関がプライベートトラスト部門みたいなものをつくりまして、富裕層との間で個別具体的に信託のスキームの設計をしまして、信託サービスを提供すると、これは信託業法の規制範囲なわけですよね。

○ 保井信託法令準備室長

そこは1回であっても多数の受益者を相手とする場合は業法の範囲とするという考え方なんですが。

○ 道垣内委員

多数の受益者を相手にするのか、多数の顧客を相手にするのかという問題があるような気がするのですが、受益者という概念そのものは信託と結びついた概念ですので、信託を設定するときに受益者が不特定多数であるならば、その行為については信託業法の対象になるという話なのか、それとも、多くの人に対して門戸を広げた形で信託業務を提供するならば、その人自体には信託業法の網が被るという趣旨なのかということなのです。

私個人といたしましては、仮に一対一でオーダーメイドでつくっていく信託であり、受益者が一般的に拡大するものではないといたしましても、例えばAという金融機関なら金融機関が信託のサービスを提供しているということになりますと、そこに、私は残念ながら富裕層ではございませんが、何かの拍子に富裕層となり、その金融機関を訪ねるときには、それはAというところが業者としてしかるべき規制を受けているということを信頼して訪ねるわけですね、仮にオーダーメイドの信託をするとしても。そうすると、一般論として不特定多数の受益者等を相手にする場合に、信託業の規制対象と限ることにするというのは必ずしも妥当では思えないわけであって、そのあたりの議論の前提をもうちょっと確認した方がよいのではないか、人によってとらえ方が違っていたのではないかという気がするのです。

○ 岩原部会長

不特定多数というときに、不特定かつ多数なのか、不特定なのかという、もう一つ問題があって、今おっしゃるように、仮にプライベートトラストの部門であっても、どのようなお客さんが次に来るかわからない、一般的に可能性としては開かれている場合は対象に入るのではないかと、そういうご意見であり、従来の業概念はそういう場合は当然、業に含まれるというふうに理解してきたと思います。

そこら辺は詰めていく必要はあると思いますが、ここでは1回限りであっても非常に多数の受益者に信託のサービスを提供するような場合は対象にしてもいいのではないかということで書かれていると思います。

濱田委員、どうぞ。

○ 濱田委員

1ページのマル3のところの議論がいろいろ出ておりますけれども、引受けを行う営業という場合に、一般的には業務性、もう1つは営利性があるかどうかというような議論をする場合があると思いますし、信託業法に関しても御庁の出版したものではない、民間の出版物の中にそのようなくだりが最近もあったと思います。先ほど来少し斬新な議論が出ていますけれども、基本的には業務性とか営利性がどうなのかという議論があるのではないかという気がいたしております。これは業法ですから、申すまでもなく、単に裁判になったときにどうかという裁判規範だけでなくて、行為をするときに、この行為はいいのかどうかということの行為規範性が高いので、先ほど議論がありましたが、もう少し明確にしていくべきではないかと。業概念というのは大変難しいと思いますけれども、その辺の整理は私自身の頭の中でも必ずしもきちっとできておりません。

もう1つは、先ほど和仁委員から出ましたけれども、2ページ目の(3)の「弁護士の預かり金」というところに、職業上どうしても話がいってしまうのであります。私は、個人的な意見でございますが、例えば私的整理のときに、債権を弁護士が譲り受けてというような形で確保するとか保全するとか、あるいは、この弁護士預かり金というようなもの、つまり弁護士業務の遂行に伴う信託、あるいは、それが信託と類推されるようなものは、業法の対象外ではないかと長らく考えてきているわけです。

この業法間の問題とかその他の大上段の議論はする能力もありませんけれども、弁護士法の中で先ほど来の話のとおりやっているわけですので、2.の(3)の制度的対応の話もこれあり、業務に支障がないようにして頂くことと、他方、先ほどどなたかお話がありましたけれども、例えば私が一生懸命投資家を集めて何かやるというような、信託銀行と同じようなことを弁護士がやるというような脱法行為があってはならないというふうに考えております。

以上です。

○ 岩原部会長

川本委員、どうぞ。

○ 川本委員

信託業法の存在意義については、情報の非対称性と交渉力の違いがあるために、不特定多数の顧客と取引をするときの信頼の維持ということは説得力があると思います。ただ、だからといって、参入規制を厳しく置いておくということについては、そうするべきではないと思っておりますし、それよりもモニタリングをきちんとして頂きたいというのが意見でございます。それに関連いたしまして、質問ですけれども、杉浦研究官が8ページ目に「信託業は銀行と同様の監督をすべきという意識」と書いていらっしゃって、私もアメリカでフィデューシャリー・デューティーが非常に厳しく定められているというのは認識しておりますけれども、銀行の規制体系と信託業の規制体系というのはそれぞれ別個に発達してきたものであって、銀行と同様の、とお書きになった根拠を教えて頂きたいということ。

それから、2つ下に「事実上、事業会社が信託業を兼業するケースはない。(ニーズが少ないことも背景に…。)」とありますが、実際に禁止されているのかどうか。そこの事実のところを教えて頂きたい。

それから、事務局にもう1つ質問ですが、参入要件について、私は参入要件が厳しいので皆さんがいろいろな工夫をなさらなければいけないのではないかという仮説を持っておりますが、外形標準として、例えば資本金規制とか、人的な要件とか、3年以上の経験者を必要とするといったことについては、今回見直しの対象になっておりませんけれども、この辺についてはどういうふうにお考えか。今後見直しも適宜なさると思いますけれども、その辺のタイムスパンも含めて教えて頂けたらと思います。

○ 岩原部会長

まず、杉浦さん、お願いします。

○ 杉浦研究官

ご質問ありがとうございます。まず、「信託業は銀行と同様の監督をすべきという意識」は、銀行と同じように財産的基盤がしっかりしていていないと、人のお金をデポジットのように預かっているんだから、つぶれてはいけないんだということですね。それから、信託業者には決済にも関連している業務をやっている人たちもいるから、そういう点でも銀行業務と比較的似たような業務をやっているのではないかという認識が強いからだと思われます。

もう1つ、「川本委員の「では禁止しているんですか」というご質問ですが、「事実上」と申しましたように禁止しているのかしていないのかに関しては、禁止されているわけではありません。禁止しているという規定は一切ありません。ないのですが、実際問題として事業会社がやるといった場合に、多くの関門があり、例えば財産的基礎の部分だとか、検査に入られるとか、信託財産の運営・管理のノウハウだとか、いろいろなハードルが出てくるわけで、そうなってくると一般の事業会社さんとしては信託業をあえて兼業してまでやろうという意欲が、結果として発生していないというのが現状だということでございます。

○ 岩原部会長

大森さん、お願いします。

○ 大森信用制度参事官

先ほどの業の概念の話もそうなんですけれども、これまでの信託業法というのは、信託の設定を反復継続して行うのが業ですから、当然受益権も不特定多数に販売されるだろうという、一つのタイプだけを前提に考えていればよかったのが、新しい類型が出てくることによって、例えば事業会社が一度だけ不特定多数の人からお金を集めるというような可能性も想定しなければならなくなったので、それに伴って業の概念をどう考えたらよろしいでしょうかということを、私どもが何か固定的な考えを持っているというよりは、まさにそれをこの場で委員の皆様に議論をして頂きたいということでございます。

ですから、川本さんがおっしゃる、皆さん新たなニーズの芽を摘まないようにしなければいけないということと、新たなニーズに対応することによって受益者保護が後退してはいけないという、その2つの目的自体に異を唱える人はおそらくいらっしゃらないだろうと思いますので、それを両立させるために現行の規制のどこを手直ししていけばいいのかという議論をこの場でして頂きたいということでございます。

○ 岩原部会長

さっきの川本さんのご質問の中に、参入規制について見直しをする意向があるかということがありましたが、その点について簡単に。

○ 保井信託法令準備室長

簡単に。もちろん引き続き検討課題としてあるわけでございまして、おっしゃるとおり、外形的に兼業規制とかあるいは経験のある者を配さなければいけないという、いろいろなレベルの規制がございますけれども、他の金融法令も確かにそういった規定でございますので、実際の法律整備の段階も含めまして、今後引き続き検討させて頂ければと思っております。

○ 岩原部会長

神田委員、どうぞ。

○ 神田委員

大森さんのおっしゃったことと同じような趣旨だと思うのですけれども、ちょっと細かくてつまらないことを2点申し上げて、1つ大きなことを申し上げます。その大きなことというのは類型的なアプローチをぜひして頂きたいということです。細かくてつまらないこと2点ですが、1点は、杉浦さんの大変貴重なご報告を私、聞き逃してしまったのですけれども、川本委員のご質問との関係で。私の理解は、ここに信託業と書くからややこしいので、ここで言う信託会社というのは“リミテッドパーパス・トラスト・カンパニー”と呼ばれているものですから、与貸業務のようなことを銀行以外の形でやろうとした信託会社のことを意味していると思います。これについては、銀行法と同じような規制をかけましょうという話なわけです。

したがって、下の方の「事実上、事業会社が信託業を」とありますが、その信託業を同じ意味に考えれば、アメリカではバンキングとコマースの関係をどう整理するか、そういうことになります。それに対して、ここに言う信託業というのが、一部の方がおっしゃっていますように、例えばコンテンツビジネスを信託形態でやりますというような話の場合には、上の話とは全然違うのですね。細かいことですので、この辺にしておきます。

それからもう1点、つまらないことで恐縮ですけれども、弁護士法があるからいいではないかと言われると、第一部会で「他に業法がありますから、結構です」と散々言われている話を突然思い出しまして。紙に書かれている方向性はそのとおりで、流れはいいと思うのですが、理由はぜひ「他に業法があるから」とは言わないで頂きたい(笑)。つまり、理屈としては、この場合は必要ない、あるいは、この場合には必要だと、そういう理屈で報告書は書いて頂きたいと思います。これは冗談で、議事録からは削除して頂いて結構です。

あまり時間をとってはいけないのですけれども、大きな話としては、信託とは何か、信託業とは何かという問いをするからわからなくなるのだと思います。なされるべき問いは、信託を使って何が行われるかということであります。そういうふうに考えませんと、樋口委員が冒頭におっしゃいましたけれども、信託を使って後見のような、例えば高齢者の財産を管理しますとという場合には当事者は対等なはずがないのですね、樋口先生がおっしゃったとおりです。しかし、信託を使って流動化をしますという場合には、情報の何とかいう問題ではないのですね。議論されるべきは対等でないとかいうことではありません。

もう1つ、信託を使って事業をやりますという話を議論しようとしているものですから、ややこしくなるのですけれども、その場合の事業にもいろいろなありまして、信託を使って自動車をつくりましょう、鉄をつくりましょうという人はあまりいないと私は思います。しかし、先ほどの話ですと、信託を使って年金の運用という例が上がっていました。信託を使ってコンテンツビジネス、あるいは、知的財産を使って何をするかというのはいろいろバラエティーがあると思います。

難しいのは、信託業とは何かという議論をするときも、何をやるかに応じて着目すべき点というのは本来違うはずなのですね。単に信託法上の形式に従って受託者による信託の引受けだけを見ていると間違う場合もある。典型的に言いますと、運用する場合で言えば、現在の日本の投資信託法がそうであるように、運用をする際には引受けのところだけを見ていたのではいけないので、信託法で言えば委託者に当たる人が運用をしているという形態のものもある、そうでない形態のものもあるわけです。

したがって、大前提としてまず認識しなければいけないのは、信託法と信託業法の関係としては、これまではなぜか信託法が、表現はよくないかもしれませんけれども、厳しく解釈されてきたために、世のニーズに応じて必要なことがやれない。そこで業法で外してきたという歴史があるわけです。あるいは特別法で。今回、そういう意味では信託法が信託の本来の私法上のあり方に戻るというのでしょうか、そういう形でルールを整備し直そうとしているのは、極めて正しい方向であり、直接はこの部会とは関係ありませんけれども、現在の信託法改正の方向はぜひ実現して頂きたいと思います。

その上で信託業法がどう受けとめるかということを議論する際には、業とは何ぞやということも重要ですけれども、信託を使って何が行われるかに応じて類型的に考えて頂きたいというのが私の意見です。運用というのが行われる、年金もそうかもしれません。そういう場合は私どもは比較的知見があるわけでして、先ほどから不特定多数とかいろいろなお話がありました。難しいのは事業とか、こういうものですね。その事業にもいろいろあるからでありまして、自動車や鉄をつくるという話なのか、知的財産の管理なのか、あるいは、コンテンツビジネスをしようとしているのか、それぞれに応じて大森さんが言いかけようとされたような類型が違ってくると思うのですね。そういうことであれば、入口の参入のところの考え方も違えてきてしかるべきですし、私の頭で申しますと、中身の兼業規制を含めたものも違えてしかるべきものだと思います。

兼業規制につきましては、何人かの方からのご発言がございましたけれども、私もどちらかというとこれはエンフォースメントの問題であると理解しております。言葉を変えて言うと、業者ルールの実効性確保のためにどうしたらいいか。ですから、兼業が必要なければ必要ない話だと思います。分別管理が守られない場合とか、破綻したら信託は維持できないとか、いろいろなご指摘がありますけれども、信託機能の維持というのは、ほかの人で務まるなら移転させればいいことですので、これはどなたかがご指摘のとおりなのですけれども、一般には分別管理、それからそのほかに忠実義務とか善管義務の違反があって、例えば損害賠償責任を負うときに負えませんというのでは困りますという、業者ルールのエンフォースメント、実効性確保の問題だと理解されており、そういうことから言えば財務規制があればそれで済む場合ももちろんあるでしょうし、さらに進んで兼業規制というものが必要になる場合もあり得るということかと思います。

全部一律に同じというふうにはとてもできない。まさに信託がこれから広がりを持っていろいろなものに活用されようとしているわけですから、どの辺にどの程度類型を置くかというのは難しいかもしれませんけれども、少なくとも考え方としては、信託とは何か、信託業とは何かではなくて、繰り返しになりますけれども、信託を使って何が行われるかということに応じて、類型的なアプローチをして頂きたいと思います。

以上です。

○ 岩原部会長

どうも。

高橋委員。

○ 高橋委員

個人投資家としての受益者の立場から発言をさせて頂きます。

信託を資金調達スキームの手段として利用する場合、受益権は多数の一般投資家に金融商品として販売されるという形で機能すると思うんですけれども、資本市場での取引の安全と信頼を確保する観点から、今回の事務局ペーパーにあります受益者保護というのは大変重要だと思っております。

投資サービス法のフィロソフィーでいくべきという翁委員と私は同様の意見でございますけれども、一部の委員から「投資サービス法にあるからいいじゃないか」というふうに言われてしまいますと、まだフィロソフィーでありまして、どうつくられるかもわからない段階ですので、丁寧な検討を重ねて頂きたい。

多少細かいことになって恐縮ですけれども、信託宣言につきましては、1回限りでありましても、集団投資スキームとして使われる場合には信託業法に入れるべきと思っております。また、以前論点として示されておりましたけれども、設定時から消極財産が積極財産を上回るような信託の設定が行われる場合、これが一般投資家に販売される場合には不招請勧誘などを課すことが必要だと思っております。

そして、受益者にはガバナンスの確保というのが非常に重要なわけですけれども、積極的な情報開示をして頂きたい。必要な情報を十分に時間的な余裕を持って検討できるような形で受益者に提供して頂くことが必要だと思いますし、その意思決定につきましては、受益者集会等の機会を提供して頂きたいと思っております。

それから、モニタリング、監査手続きの整備に関しても、同様に十分に図って頂きたいと思います。

論点ペーパーの中で受託者の義務について書かれている部分についてですが、善管注意義務に関しましては、一律に課すということで、これを免責するような規定を設けることには反対です。2番目の分別管理も整備する、この方向性で。(3)の忠実義務に関しては、1ポツの方で一律に禁止すべきではないかではなくて、2ポツの受益者保護の観点から問題がない範囲で対応すべきではないかと、こちらを支持させて頂きたいと思います。

以上でございます。

○ 岩原部会長

まだまだいろいろご意見あると思いますが、もう時間になりますので、できれば水上委員を最後にさせて頂きたいと思います。

水上委員。

○ 水上委員

ありがとうございます。ネームプレートを立てていたんですけれども、先に神田先生がご発言になったことと全く同じことなので、簡単なコメントにしたいと思います。

私も信託を使って何をやるかということが非常に重要なポイントではないかと思っています。その意味では、今回新しい信託の形態が入ってきたことも、ストラクチャード・ファイナンスというニーズがかなり出てくるのではないか、あるいは、これまでプロジェクト・ファイナンスというのは日本では限定的であったということもあって、そこら辺がニーズとして信託を使ってもっと工夫できるのではないかというふうになってきている背景だと思います。

その場合に、アセットサイドとか、あるいは、キャッシュフローに着目してファイナンスする場合というのは、そのキャッシュフローの管理とか変動性がかなり高いと思いますので、それを評価できる人たちは専門家になってしまう。そうすると、投資家の領域も専門家になるはずで、あらゆるストラクチャード・ファイナンスでつくられてきた商品を、不特定多数にばらまかれるという状況になることに対して我々は危惧するわけですが、専門知識を持った投資家はメリットを受けることになるわけですから、ここは何らかの工夫を凝らして、そうした投資家が排除されないような形でおまとめ頂くのがいいと思います。

したがって、結論からいうと、1ページ目のマル3の最後の「基本的には受益者等が限定されている場合については範囲外する」ということで私も賛同したいのですが、具体的にそれをどういった形でやるかということについてこれから議論を進めていければと思います。

その関係もあって、3ページの3.の(1)の3番目のポツと4番目のポツですが、信託の場合のガバナンス形態を、株主・株式会社のガバナンス形態と平仄を合わせるような形で信託の制度を工夫すべきではないかということであるとすれば、その必要は全くないだろうと考えています。制度は競争関係にありますので、同じようなものであれば、それはどっちかに集中してしまうということもあるでしょうし、両方使うということもあるでしょうけれども、違いがあることによっていろいろな工夫が生まれることによる効果を期待すべきで、安易に平仄を合わせる必要はないと思います。

最後はちょっと気になっている点ですが、(2)の信託宣言のところで、前回もそういう発言がありましたが、信託宣言については「そもそも事業目的で用いている海外事例も乏しく」という指摘が前回からあるわけですけれども、類型的な判断や業態的な判断ではなくて、ファンクショナルな面を見ていかなければいけないので、その場合に我が国におけるストラクチャード・ファイナンスと言いますか、プロジェクト・ファイナンスのような形で資金調達をしていくということが多かったのかどうか。それに対して海外ではそういう事例も多かったと思いますので、使うビーグルとか、使うスキームが違ったとしても、何らかの満たされている機能があるとすれば、それは並べて観察するべきだと思います。したがって、海外に事例が乏しいということ自体よりも、そういった機能が果たして我が国にきちんとあったのかどうかということを検証する姿勢が重要だと思います。

以上です。

○ 岩原部会長

まだまだご意見がおありだと思いますが、時間もきましたので、特にご発言がなければ、本日の審議はこれぐらいにさせて頂きたいと思います。根本的なご指摘を頂き、議論は深まったと思いますし、一方では皆様のご意見が集約されてきている部分もあるというふうに考えております。ご意見の中では一見対立するように見えるところがございましても、幾つかの部分で書かれているところを合わせますと、問題は解決できるようなところもあり得ると思います。先ほどの関委員の例もそうではないかという気がちょっとしておりまして、そこら辺を今後、事務局でまとめていって頂きたいと思います。

また、先ほど神田委員からご指摘のあった類型論というはそのとおりなのでありますが、一方で今回の作業は来年の通常国会を目指しているわけでございます。しかも、多くの委員からご指摘ありましたように、投資サービス法とかかわるところも多うございますし、信託法がかたまらないとこちらもかためられないというところもございまして、今回できる作業はある程度限られているということを皆様ご了解頂いて、根本論については今後なお継続して検討していくことになると思いますが、来年の通常国会を目指した作業については、今申し上げたような限界の中で作業を進めることをご了解頂きたいと思っております。

本当にありがとうございました。次回は、今申し上げましたように、本日頂きましたご意見を整理し、「主な論点」を修正したものを事務局に提出して頂き、それをもとにご審議頂ければと思っております。

本日の論議も大変多岐にわたって、調整に時間を要すると見込まれますことから、当初は次回会合を12月21日に予定しておりましたが、それは中止させて頂きまして、今回を年内最後の会合にしたいと思います。よいお年をどうぞ(笑)。次回は調整の上、来月中旬に開催したいと考えております。もう一度、法制審議会の検討状況などを踏まえつつ、来月下旬に会合を開き、意見の取りまとめを図っていきたいと考えております。各委員の皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、何とぞご理解頂きますようよろしくお願い申し上げます。

それでは、本日の審議はこれにて終了させて頂きます。この後、記者会見を行いまして、本日の会合の模様につきまして、報道とお話をさせて頂きます。

最後になりましたが、事務局からご連絡等がございましたら、お願いいたします。

○ 大森信用制度参事官

部会長おっしゃるように、多少出口に近づいてきたようでもありますけれども、なるべく多くの委員の皆様により納得度合いを高めて頂けるような整理をさせて頂きたいと考えております。来月の日程については調整の上後日改めてご連絡させて頂きますので、よろしくお願い申し上げます。

以上でございます。

○ 岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会合を終了させて頂きます。どうもありがとうございます。

皆様、よいお年を。

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