金融審議会金融分科会第二部会(第29回)・「信託に関するWG」(第16回)合同会合議事録

日時:平成18年1月26日(木)10時00分~11時10分

場所:中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

○岩原部会長

それでは、ただいまから第29回金融審議会金融分科会第二部会と第16回信託に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、ご多忙のところをお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開ということにさせて頂きますので、その点をまずご了解頂きたいと存じます。

それでは、議事に入ります。

本日の予定でございますが、前回の審議において事務局提出の「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて(たたき台)」をもとにご議論を頂き、ご意見を多数頂戴したところでございますが、そのご意見を踏まえまして私と事務局で相談いたしまして、修正したものを報告書(案)として作成いたしました。

本日は、第二部会報告書として取りまとめさせて頂きたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて(案)」につきまして、保井信託法令準備室長よりご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○保井信託法令準備室長

かしこまりました。ありがとうございます。

それでは、お手元にございます縦紙第二部会29・信託WG16「信託法改正に伴う信託業法の見直しについて(案)」というペーパーをお手元におとり頂けますでしょうか。

前回、委員の先生方から頂きましたさまざまなご意見を盛り込ませて頂いており、部会長の方からご指示を頂いて修正いたしましたものを、前回のたたき台ペーパーを台にして作ってございます。

それでは、恐縮でございますが、順次読み上げる形でご説明をさせて頂きます。

1.今回の信託業法見直しの考え方について。

(1)金融審議会金融分科会第二部会・信託WG合同会合においては、法制審議会における信託法改正の検討を踏まえて、信託法改正に伴う信託業法の見直しについて審議を行った。

法制審議会においては、「信託法改正要綱案」(18年1月20日)において、信託法において、信託宣言等新たな形態の信託を認めるとともに、受託者等の義務に関する見直しを提示したところである。

(2)法制審議会の検討内容に沿って信託法が改正された場合、それに伴う信託業法上の対応に係る基本的な考え方については、以下のように整理することが適当と考えられる。

これは、前回ご議論頂きました5点でございます。

マル1信託業法の基本的枠組みは、一昨年の抜本改正で信託業の担い手や信託財産対象を拡大した際に、受益者等の保護や信託業に対する信頼確保の観点から構築されたものである。

今回の改正においては、信託法改正に伴って追加される新しい信託類型等について、信託業法上、十分活用可能となるよう配慮しつつ適切に位置付けるために必要な措置を早急に講じることを基本とする。更なる信託業法上の規制の見直しについては、まずは新しい信託類型の活用状況やニーズを十分に見極めた上で、その必要性を議論することが適当と考えられる。

マル2信託の一般ルールである信託法によって受益者等に一定の保護がなられているが、これに加えて信託業法の規制を課す趣旨は、業者(受託者)と不特定多数の顧客(受益者等)との間には情報量や交渉力の差が生じ得ることに加え、受託者等の信頼に基づき信託された財産を受託者が自己名義で管理運用するという信託の特質も踏まえ、業者(受託者)に対して管理運用上の義務を確実に遂行するよう一定の義務を課すことによって、顧客(受益者等)を保護するものであり、こうした考え方は今回の信託法改正後も同様と考えられる。

マル3現行の信託業に対する規制の対象は、信託の引受けの「営業」と規定され─これは信託業法の規定でございますが─反復継続性・収支相償性が要件と解されているが─これは商法等のコンメンタールで言われているところでございますけれども─この反復継続性の要件については、不特定多数委託者・受益者との取引が行われ得るかという実質に則して判断されているところである。委託者と受益者が同一となる新たな信託類型である信託宣言の場合にも、現行の通常の信託に対する規制の考え方を踏まえ、不特定多の受益者を予定しているかどうかに基づいて判断する。

マル4新しい形態の信託類型に対する規制の内容については、適切に参入が認められるように、現行の兼業規制等については必要な見直しを行う。ただし、参入後の行為規制等については、従来の信託形態との相違に基づいて、受益者等の保護の観点から必要であれば、通常の信託形態に対する規制に加え、実態に則した適切な措置を講じる。

マル5信託の一般ルールたる信託法において善管注意義務等の受託者責任が見直されたとしても、業者対不特定多数の受益者等の関係を前提とした信託業法上においては、受益者等の保護のため、受託者責任を規律する義務付けは維持する。ただし、実務上不都合が生じている部分については、受益者等の保護の要請を勘案しながら個別に検討する。

2が、新しい形態の信託の類型に対する信託業法上の規制の対象範囲でございます。

ここでは、ご議論を集中的に頂きました信託宣言、それから弁護士預かり金等について記載をしております。

(1)信託宣言形態に対する規制の対象範囲。

信託制限は委託者と受託者が同一のものであるが、受益者保護の必要性は通常の信託と同様であり、信託業法上の規制の対象範囲については、現行の通常の信託と同様に考えることが適当である。

従って、信託宣言にかかる信託業法上の規制の対象範囲については、現行の通常の信託の規制対象の考え方に沿って、不特定多数の受益者を予定しているかどうかによって判断することが適当である。この場合、不特定多数とは、具体的には、一定の人数を超える受益者を予定しているかどうかによって判断することが考えられる。

例えば、事業会社が自社の事業の一部を信託宣言して不特定多数の投資家から資金調達を行ったり、自社の債権の一部を信託宣言して不特定多数の投資家に受益権を販売することにより債権流動化を行う場合には、一度の信託設定により不特定多数の受益者が発生し得るため、規制の対象とすることが適当である。

一方、自社の事業の一部を信託宣言し、他社に受益権を譲渡することにより、事業提携や企業再編のツールとして活用するケースにおいて、受益者が特定少数に限定されている場合には、信託法の適用に委ね、信託業法上の業規制の対象外とすることが適当である。

(2)預かり金等に対する規制の範囲。

弁護士の預かり金、工事代金の前払い等、他の取引に付随して決済用の金銭の管理を行う形態が信託法上の信託と認められる場合における、信託業法の適用の可否については、信託業法による顧客保護の必要性を踏まえて判断することが適当である。

すなわち、これらの形態の中でも、他の取引契約や規制に基づき受託者義務の適切な遂行が確保し得る場合や、他の取引に基づく業者と顧客の関係を踏まえれば情報量・交渉力に差が生じるような関係とは考えられない場合については、信託業法による顧客保護が必要とされないことから、信託業法の適用の対象外とすることも差し支えないと考えられる。

3.新しい形態の信託類型に対する信託業法上の規制の内容でございます。

(1)規制内容に関する考え方でございまして、ここで基本的な考え方を整理させて頂いております。

信託宣言など新しい形態の信託類型にかかる規制の内容については、以下のような考え方に基づいて措置することが適当である。

マル1受益者等の保護の必要性は通常の信託と同様であることから、基本的には通常の信託と同様に、管理運用上の義務を確実に遂行するよう行為規制を課すとともに、参入規制や兼業規制によってその実効性を担保して顧客からの信頼性を確保する。

マル2信託業法が適用されると事実上新しい形態の信託類型が活用できなくなるということのないよう、参入規制・兼業規制等について配慮する。

マル3信託宣言については委託者=受託者となることから架空の信託設定等の懸念が指摘されていることなどを踏まえ、参入後の行為規制等について、受益者等の保護の観点から必要であれば、通常の受託者形態の場合に加えて適切な措置を講じる。

4ページ目でございますが、なお、参入規制について、信託は倒産隔離機能をはじめとする受益者保護に資する機能を有することを踏まえ、信託の円滑な利用を阻害しないように配慮することが適当であるとの指摘があった。

(2)が、ご議論を集中的に頂きました兼業規制についてでございます。読み上げさせて頂きます。

(2)新しい形態の信託類型にかかる兼業規制について。

マル1兼業規制は、信託会社の他業の状況が悪化する場合に、信託会社が分別管理義務・忠実義務(利益相反行為の防止等)等の管理運用上の義務を適切に遂行せず、信託財産を毀損する事態となることを未然に防止するため、他業が信託業の適切な運営を阻害しないものであることを求めるものである。こうした観点から、今後新しい形態の信託類型が導入されても、何らかの形で兼業に対する規制は必要と考えられる。

その際、受託者の管理運用上の義務の遂行といった規制目的のためには、行為規制・参入規制・兼業規制を総体として活用すべきであり、その中で兼業規制についても内容・程度を検討することが適当である。

マル2兼業規制については以下のような指摘があった。これはご指摘頂いた事項3つでございます。

・信託業のように本業とリスクの異なる事業を行う場合には、会社設立のコストはかかるものの、子会社形態をとることが可能であり、あえて事業会社本体に信託業を兼業させる必要はない場合が多いことから、兼業規制の緩和の必要性は少ない。

・同一法人で信託業と他業を行わせると、法人全体の健全性を保つため、他業の健全性まで監督する必要が生じることを考えれば、子会社形態を活用した方が全体として自由な事業運営ができる。

・ただし、事業会社が信託宣言を活用するニーズも想定され、現行の兼業規制のままでは事業会社本体による活用が難しくなるため、現行の兼業規制は見直しが必要。

マル3これらを踏まえれば、信託宣言については、受益者保護の要請も踏まえつつ、兼業規制については、例えば、他業について収支が良好であること、流動性資産が十分にあること等、何らかの指標により他業の健全性が客観的に担保されていることを求めるとすることも考えられる。

(3)が行為規制等でございます。新しい形態の信託類型にかかる行為規制等について。

(a)は信託宣言についてでございます。

マル1信託宣言については、資産調達や債権流動化のための活用可能性もある等の有用性が指摘されている一方で、事業目的で用いている海外事例も乏しく、通常の信託に比べて、委託者による牽制効果が期待できず、信託財産の二重譲渡が容易に行われたり、第三者の検証がない信託の設定による信託受益権が販売される懸念があるとの指摘がある。

これらを踏まえれば、信託宣言については、受益者保護のために通常の信託形態の場合に加えて適切な措置を講じることが必要と考えられる。その内容としては、

・信託受益権販売業者の顧客への受益権販売に際して、信託宣言の内容について一定の説明義務を課す。

・信託会社の内部で固有財産を信託財産とする信託の設定が真正になされたことの第三者のチェックを求める

ことなどが考えられる。

なお、第三者によるチェックについては、いわゆるデュー・ディリジェンスの確保が必要ではないかとの指摘があった。また、信託宣言の設定時だけではなく、設定後の管理運用上の義務の遂行についても第三者によるチェックの必要性を検討すべきとの指摘があった。

1点補足でございますが、このデュー・ディリジェンスの確保につきましては、単に弁護士等だけが行えるもの、あるいは形式的なチェックというだけではなくて、実質的なデュー・ディリジェンスのプロセスが確保されることが必要という趣旨でございます。

マル2なお、信託宣言については、改正信託法上、事後的に詐害行為取消権が認められ、受託者の義務に関するルールも整備されているので、通常の信託と同様の対応で十分であるとの意見もあった。一方、これについては、信託法上認められている措置は事後的救済にとどまり、業者対顧客の取引の場合には顧客保護のため信託業法により十分な事前規制を置くことが適当との意見もあった。

(b)は、いわゆるネットマイナス信託についてでございます。信託設定時における消極財産(債務)の引受け・事業の信託。

マル1信託法の改正により、設定時から消極財産(債務)が積極財産を上回るような信託の設定も可能となり、受益者が出資した元本の額以上の損失を被る可能性があるなどリスクの高い商品の販売も考えられることを踏まえ、受益者保護の観点から、純資産額など信託財産の内容、事業計画、レバレッジ比率の説明義務などを受託者に求めることが必要と考えられる。

マル2また、今回の信託法改正において、信託の意思決定の仕組みが契約に委ねられ自由に設定できることが検討されているが、事業の信託が行われ、多数の受益者が発生する場合には、受益者と信託勘定との関係は、株主と株式会社との関係に類似するとも言える。

これを踏まえれば、信託業法上、受益者の保護の観点から、例えば重要事項の意思決定については、受益者の多数決など、受益者の意見を十分に反映させる仕組みを求めることが適当と考えられ、この点は事業の信託以外の信託も同様と考えられる。さらに、受益者に対し、意思決定に必要な情報が事前に開示されるようにすることが適当との指摘があった。

なお、この点については、信託においては個々の受益者に詐害行為取消権など事後的に行使できる強い権限が与えられており、必ずしもガバナンスの水準を株式会社と単純に比較できないとの意見もあった。一方、これについては、信託法上認められている措置は事後的救済にとどまり、業者対顧客の取引の場合には顧客保護のため信託業法により十分な事前規制を置くことが適当との意見もあった。

マル3さらに、事業の信託については、信託対象となる事業に属する労働者の地位(雇用関係、給与)や会計上の取扱いを明確にするべきとの意見があった。

(c)が目的信託でございます。

目的信託については、受託者を監視する受益者がいないことを踏まえて、受益者が存在する通常の信託よりも、委託者の監督権限を強化することが適当と考えられる。

(d)が限定責任信託でございます。

信託会社が限定責任信託を設定する場合や、投資家がその信託受益権を購入する場合に、受益者保護の観点から、例えば、その信託が限定責任信託であり受益者への財産分配規制が課されることや、財産分配規制の内容について説明義務を課すことが適当である。

(e)がその他の規制内容でございます。

参入にあたって、信託業務に一定年数従事した経験者を配置しなければならないとの要件については、新規業者の円滑な参入の観点から見直しが必要であるとの指摘があった。

7ページでございます。

(4)規制内容のさらなる類型化について。

新しい形態の信託類型にかかる規制の内容については、不特定多数の受益者等を予定する形態の中でも、受託者の裁量、受益者の知識・能力(いわゆるプロ顧客に該当するか)、信託財産の性質等に応じて、更なる類型化を検討していくことが適当との指摘があった。これについては、まずは改正信託法施行後の実際のニーズをよく見極めた上で、引き続き制度的対応が必要かどうか検討を進めることが適当と考えられる。

4.が受託者等の義務についてでございます。

(1)善管注意義務。

信託会社の善管注意義務は、顧客に管理運用を託される信託業の最低限かつ共通の義務である。また、信託会社と顧客の間の情報量・交渉力格差を考えれば、善管注意義務の水準を当事者間の契約に全て委ねると、信託会社に過度に有利な契約となり、顧客保護が確保されない可能性がある。従って、今後とも、善管注意義務については、現行規定どおり信託会社に課すことが適当と考えられる。

マル2なお、善管注意義務に関しては、従来より実務上、信託契約において義務の具体的内容・範囲を規定することがあるが、これは合理的な範囲内であれば信託業法上許容されるものと考えられる。

(2)分別管理義務。

マル1分別管理義務は、信託財産の倒産隔離機能の確保や、受託者の忠実義務の履行を担保する観点からも重要であり、信託業法においても、信託会社に対して、信託財産の分別管理のための体制を整備する義務を課すことを維持することが適当と考えられる。

マル2他方、信託法上、受託コストの軽減等の観点から、動産・有価証券等については、物理的分別管理の代替として帳簿上の管理を認めることが検討されているが、帳簿上の管理による場合でも財産滅失の際には固有財産・信託財産で損失を按分することができ、物理的分別の場合と同様に倒産隔離機能が働くことを踏まえ、信託業法においてもこうした措置を認めることができるものと考えられる。

8ページ目でございます。

(3)忠実義務。

マル1信託会社の忠実義務は、受託者の権限濫用や利益相反行為を防止するとともに、それによって信託の倒産隔離機能を確保する観点から重要なものであるが、このうち、信託目的等に照らして不必要な取引や通常と異なる条件で信託財産に損害を与える取引については、今後も禁止を維持することが適当と考えられる。

マル2利益相反行為の禁止については、免除要件(「信託財産に損害を与えるおそれがない」)について実務に支障をきたさないように要件の明確化が必要であるとの指摘や、取引が制限される相手方である利害関係人の範囲が広すぎるとの指摘もあり、受益者保護の観点から問題がない範囲で対応を検討することが適当と考えられる。

(4)いわゆるプロ顧客との取引における取扱い。

マル1これら信託会社の受託者としての管理運用上の義務については、プロ顧客との取引については軽減を認めるべきとの指摘もあるが、これは不特定多数の受益者等に係る信託財産の健全性を担保する信託業の本質的な義務であって、一定の顧客に対して軽減を認めることについては、今後とも慎重な検討が必要である。

なお、忠実義務の遂行は、信託の本質の一つである倒産隔離機能を確保するために不可欠であり、信託業法上もいわゆるプロ顧客相手であっても忠実義務の軽減は認めるべきではないとの指摘があった。

マル2なお、受託者としての管理運用上の義務が適用される場合において、実務上支障を来たしていると指摘される点については、プロ顧客との取引について軽減を認めることにより対応すべきとの指摘もあるが、上記マル1を踏まえれば、(1)~(3)で述べたような個別の措置によって対応することが適当である。

(5)信託業務の委託先。

マル1現行信託業法においては、受託者から第三者に信託業務が委託された場合の委託先についても、受託者と同様の善管注意義務や忠実義務等を課している。これは、信託業については、顧客(委託者)が信託会社への信頼に基づいて財産を信託し、信託会社が財産の運用・管理を行って顧客(受益者)に原則実績払いを行うものであることから、委託先は顧客との関係では実質的に信託会社同様の機能を果たし得ることに基づくものと考えられる。

一方で、委託先の行為については、受託者の損害賠償責任によって最終的に受益者等の保護は担保されており、また、委託内容や委託先にも様々なものがあることから、一律に受託者同様の義務付けを行うことは見直すべきではないか、との指摘もある。

マル2これらを踏まえれば、今後とも、信託業務の委託先の義務については、現行どおり信託会社と同様の善管注意義務・忠実義務等を課すことを原則としつつ、委託先が信託財産の保管を委託されるにとどまる場合など、信託財産の運用・処分について実質的に受託者(信託会社)と同様の機能を果たしているとまでは考えられないような場合には、委託先に受託者と同様の義務を課す必要はないと考えられる。

マル3信託契約における委託先(委託先が確定していない場合には、その客観的な選定基準等)の明記を求める範囲も上記の整理と同様に考えることが適当である。

マル4委託先の行為に係る信託会社の損害賠償責任については、信託業務は委託者・受益者が信託会社への信頼に基づいて運用管理を行わせるものであることを踏まえ、信託会社には委託先の行為について厳格な損害賠償責任が課されているが、今後とも、受益者等の保護を最終的に担保する観点からは、例えば委託者が自らの関係者を委託先に指名した場合や受益者の指図がある場合など限られた場合を除き、この枠組みは維持することが適当と考えられる。

マル5信託業務の外部委託化が進んでいる現状にかんがみ、銀行、保険会社と同様に、信託会社の健全性確保のために必要な場合に限って、委託先に対する検査も可能とすることが適当と考えられる。

マル6なお、これらの措置について、委託の取引実態として再委託が相当程度利用されていることから、再委託先についても十分な措置を講じることを検討することが適当と考えられる。

脚注もございまして、お時間をとって恐縮ですが、脚注の方もちょっと読み上げさせて頂きます。1ページにお戻り頂けますでしょうか。

1ページの(2)マル2の脚注でございます。読み上げさせて頂きます。

なお、今般の信託法改正により信託受益権の有価証券化が認められて転々流通性が高まり、一つの信託財産のリスクがマーケットを通じて不特定多数の者に伝播し得るようになると考えられることから、受託者の管理運用上の義務を確実に遂行させる必要性は、より一層強くなるものと考えられるというのが1つ目の脚注でございます。

2ページをおあけ頂けますでしょうか。下の方でございますけれども、業概念の整理のところの注2でございます。

現行の通常の信託については、特定少数の委託者から複数回信託の引受けを行う場合には、反復継続性があるとは考えず、信託業の対象とはしていないが、これは、反復継続性を不特定多数の委託者ひいては受益者との取引が行われ得るかという実質に則して判断していることによるもの。例えば、今後、事業会社が他の会社の事業を複数回受託する場合についても、不特定多数の委託者を予定していない場合には、信託業の対象とはならないと考えられる。

注3でございます。これは業概要と人数のところでございますが、他制度においても、現行証券取引法上の有価証券の「募集」「売出し」に該当するのは「多数の者を相手方として行う場合として政令で定める場合」とされ、政令で50人と規定している例がある。

それから3ページをおあけ頂きまして、弁護士預かり金等のところの注4でございます。

こうした形態の中には、従来より判例上、信託法理を適用し倒産隔離の効果は認めるものの、信託業法の適用対象外とされてきたものもある。

恐縮です、4ページ目でございます。

これは、倒産隔離機能と信託の円滑な利用のところでございますけれども、注5、現在検討されている投資サービス法(仮称)上は、信託受益権の販売については、投資サービス業としての規制が適用される予定であるが、信託の受益者の管理運用上の義務については、信託された財産を受託者が自己名義で管理運用を行う信託の特質に基づいて、受益者等の保護のため確実な遂行が求められるものであり、今後も信託業法において措置が必要と考えられる。

注6でございます。これは、兼業規制の意義のところでございますが、信託法上は、受託者の破綻時には信託財産が倒産隔離されることとなっており、受託者が信託財産を費消したとしても、受益者は事後的に損失填補責任を追及できることとされているが、信託業法上の兼業規制は、受益者等の保護のため、兼業内容をチェックすることにより他業リスクが信託業に波及することを防ぎ、万一の破綻時においても倒産隔離が確実に機能するように措置されているものと考えられる。

それから、恐縮でございます、5ページでございます。これは、兼業規制に係る客観的な指標の担保のところでございますけれども、注7、一方、事業会社の信用力が低下して通常の借入れ等による資金調達が難しくなる場合に信託宣言を活用して資金調達を行うインセンティブが生じることも想定されることから、兼業規制により法人全体の健全性を十分に担保するべきとの指摘があった。

それから、飛ばして頂きまして8ページ目の注8でございます。これは、忠実義務、利益相反行為の禁止のところの注でございますけれども、例えば、証券取引所における上場有価証券の取引など、市場において価格の公正性が担保されているものの取引については、利益相反行為に該当しないとすることなどが考えられる。

それから、同じところの注9、いわゆるプロアマ論のところの注でございますけれども、「投資サービス法(仮称)の整備に向けて」においては、投資サービス法については、業者と特定投資家(いわゆるプロ顧客)との取引においては、説明義務、書面交付義務等について適用所除外することが適当とされている。

それから、9ページ目でございます。最後でございますけれども、これは委託先に対する健全性の確保のところでございます。この点、「投資サービス法(仮称)の整備に向けて」においては、投資サービス業(仮称)については、業務の外部委託を巡る内外の動向等を勘案し、業務委託先への監督について所要の整備を行うことが適当とされている。

以上、お時間をとりまして恐縮でございました。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして、ご意見がございましたらお願いいたしたいと思います。

土井委員、どうぞ。

○土井委員

1ページ目の脚注の1のところで、信託法改正により有価証券化が認められるというような形で書いてございますけれども、これは非常に期待しておるところでございますが、信託業法上も何らか新たな措置をされるおつもりはあるのでしょうか。

○岩原部会長

保井さん。

○保井信託法令準備室長

信託業法上は受託者としての義務を担保する措置を講じるということでございまして、実際の有価証券が出た場合の開示規制等につきましては、現在の証券取引法、あるいは引き続いて投資サービス法の中で規定して頂けるというふうに考えております。

○寺本法務省民事局参事官

法務省でございます。

信託法の改正におきましては、基本的に、受託者の行為規制につきましては相応の合理化を図っているところでございますが、ただ、この信託受益権の有価証券化が認められるもの、すなわち受益証券発行信託につきましては、受益者が不特定多数に及ぶという点を考慮いたしまして、信託法上もある程度受託者の義務を強化するという方向で考えているところでございますので、補足させて頂きます。

○岩原部会長

ありがとうございます。

何かほかに。

木村委員、どうぞ。

○木村委員

6ページのマル3ですが、これまでも発言をさせて頂いた内容が記載されております。ありがとうございます。

労働者の地位とか労働条件の扱いについては、私どもは一番関心の高いところでございますので、改めて発言をさせて頂きたいと思いますけれども、事業の信託において所属の会社が変わってしまうとか、あるいはそれに伴って労働条件なりいろいろな雇用条件が変わってしまうということが安易に行われないように、既存の労働法制等におけます労働者保護はしっかりと担保されるようお願いをしたいところでございます。

それから、事業の信託が信託宣言で行われるケースもあろうかというふうに思いますけれども、この場合は所属する企業は変わらないと、すなわち地位は変わらないということになろうかというふうに思います。

しかし、新たな仕事は、信託宣言されてほかの事業と隔離をされますと、その場合、受益者に利益還元をたくさんしなければいけないので、この業務の人に限って賃金は下げさせて頂きますとか、一方的に労働条件を下げるようなケースもあり得るかもしれないということでございますので、財産を隔離して管理する必要はあると思いますけれども、労働者まで隔離して一方的に別の扱いをするようなことがあってはならないということで、その点もぜひ留意をすべきだということでございます。

それからちょっと戻りますが、2ページのところで、2.の信託宣言における業の範囲のところ、この信託業の範囲ですけれども、原案どおり反復継続性のない1回限りの信託宣言でも、不特定多数を対象に受益権が販売されるケースは、これは受益者保護の観点から業とみなすべきだと思います。

事業会社が資金調達のために信託宣言を使う場合には、そう何回も信託宣言という手法は使わないのではないかというふうに思いますが、それが不特定多数に受益権として販売される場合は1つの商品として見るべきであって、金融庁がしっかり監督をすべき信託業として位置付ける必要があるというふうに思っております。

それから2.の(1)の上から5行目ですが、「不特定多数の受益者を予定しているかどうかによって」というくだりがございますけれども、ちょっと確認したいんですが、とりあえずは特定少数への受益権販売ということだけれども、その対象が証券会社などであって、当然不特定多数への受益権を転売といいますか、再販するケースというのはどうなるのかなというところでございます。

事業会社の場合には、いきなり一般の投資家に販売をするということも難しいでしょうから、証券会社等が仲介に入るというケースも多いと思います。そういう場合も、当然、私どもとしては業としてみなすべきだというふうに思いますけれども、この文章にそういう意味合いが含まれているのかどうかということも確認をさせて頂きたいと思います。

それからもう一つ、8ページから9ページにかけての委託の関係でございますけれども、不動産信託などの一部の信託では相当外部委託が進んでいるというふうに聞いておりますが、財産を託された信託会社は当然ですけれども、やはり委託先に一定の義務を課すという必要性は十分にあろうかというふうに思います。特に、財産の毀損につながるような可能性のある運用で、委託をするというような場合は、受託者と同レベルの義務を課すということは当然だと思います。

それで、9ページのマル4の損害賠償責任のところでございますけれども、事務局案で例外を規定していると思います。こういう場合は当然例外でもいいと思うんですけれども、投資家保護だとか受益者保護の観点から、余り例外を多くしてしまうのは問題だと思いますので、解釈も含めまして、余り例外を広くしないようにしていくべきではないかと思います。

それから、マル5の委託先の検査、これにつきましても、当然、財産を託された信託会社には忠実義務を初めとしましていろいろな義務が課されるわけでございますので、委託先の検査についても導入すべきだということで、これは支持の表明ということでございます。

以上です。

○岩原部会長

幾つかのご意見のほかにご質問もございましたけれども、ご質問について、保井さんからお願いします。

○保井信託法令準備室長

ご質問が1点ございましたので、事務局の方から説明をさせて頂きます。

2ページ目の不特定多数についての考え方でございますけれども、実はこれは前回もご議論を集中的に頂いたところでして、従来の信託であれ、現在導入される信託宣言であれ、不特定多数の受益者を予定しているかどうかということが業判断のメルクマールになるということでございまして、そこは最初の信託の設定のときに、不特定多数の受益者に販売を予定しているかどうか、あるいはそういう体制を組んでいるかということを判断して、これまでも業概念の整理が行われてきているところでございまして、従来と全く変わらないということでございますので、まさに先生がおっしゃったような意味で書かせて頂いているところでございます。

○岩原部会長

よろしいでしょうか。ほかに、何か。

池尾委員、どうぞ。

○池尾委員

本日の案は、前回と実質的には大分変わっていると思うんですよね。要するに、今もちょっと出ていましたけれども、業としてみなすかどうかという切り口というよりは、信託業法上の規制の対象とするかしないかという切り口に整理し直されているというふうに私は理解しておりまして、そういう整理のし直しをされたことによって、私自身にとっては非常に納得性の高い内容のものになっていって、基本的に現時点ではこういう形で取りまとめをされることに対して賛成したいといいますか、結構だというふうに思っております。

私は経済学者のせいもありますが、要するに機能的な効果が重要なわけでありまして、だから業者概念を見直すのかとか、再定義するのかとか、余りそういう議論に拘泥しても始まらないというふうに思っておりまして、きちっとした規制がかけられるということが担保されれば、それがいいということで、今回はそういう言い方になっていると思うんですね。だから、そういう点を踏まえて、このペーパーについては基本的に賛成したいということです。

ただ、細かいところで3つほどですが意見がありまして、1つは今申し上げたことに関連して、信託業法上の規制の対象にする、信託業法上の規制という表現がずっとされているんですが、1カ所だけ、3ページの上から5行目のところだけ、「信託業法上の業規制」というふうに「業」という言葉がそこだけ入っているんですね。そうすると、こういう場合は信託業法の適用にならない、信託業法上の業規制の対象外とするということは、信託業法上の業規制以外の規制の対象にはなるということなのかという話ですから、信託業法上の規制という、これは誤植なのか、それとも意図があって入れているのかというのが1点目です。

それから2点目が、前回及び前々回から申し上げている兼業規制の話で、4ページですが、これは前回、最後のところで岩原先生から兼業規制の理解の仕方についてご説明を頂いて、そういう理解なら私もよくわかるという感じなんですが、私は岩原先生と同い年のはずなんですが、ちょっと古いのかもしれないですが、兼業規制という言葉を聞くと、80年代の金融制度改革の議論とかのイメージがあって、証券業と銀行業の兼業を認めるか認めないかのときの兼業規制というイメージがあって、前回申し上げましたが、コストの大きい、重たい規制をどうしても言葉からイメージしていたので、機能的なもので中身の問題なので、言葉として兼業規制という言葉を絶対使ってはいけないとか、そういうことを申し上げるつもりはないんですが、兼業規制の内容が、4ページの一番最後のところにありますように、信託宣言の場合には他業について収益が良好であるとか、流動性資産が十分である等というのが兼業規制の内容であるとすれば、私はこれは財務健全性規制と呼んだ方が適当なような感じがしますが、結構だと思うんですが、前回申し上げた定量的な話ですが、兼業規制という表現の内容として、前回の岩原先生のご説明を含めたような理解でよければこれで結構だということで、決して80年代の金融制度改革のころの兼業規制ではないでしょうねというのが念押しです。

それから3点目が、6ページの真ん中あたりと、その前の5ページの下の信託宣言のマル2のところで、これは「意見もあった」だから、それはそれで結構なのかもしれませんが、十分な事前規制を置くというのは、少なくとも金融庁発足以来の金融行政の理念とは明らかに違うスタンスではないかというふうに思いまして、事後的チェック行政に切り替えるというのをキャッチフレーズでやってこられたはずなので、こういう意見があったということは事実として書くのはいいのかもしれませんが、私も、事後救済だけでは不十分だから、「一定」の事前規制が必要だというぐらいだったらわかるんですけれども、「十分」な事前規制と言われると、これまた80年代の金融制度改革の悪夢がよみがえってきて、余りいい気持ちがしないということです。

以上です。

○岩原部会長

ありがとうございます。

私も池尾先生と同じ年としてご発言のご趣旨はよく理解できるつもりでありますが、池尾先生ご指摘のとおり、まさに中身が問題で、一定の言葉が兼業規制なり事前規制が、実際の中身を超えた一種の特定の象徴というか、意味を持ってしまっていることから、いろいろご疑念が出てき得るところだと思いますけれども、そういうことは考えていないと思いますね。そこら辺、保井さんからご説明をお願いしたいと思います。

○保井信託法令準備室長

すみません。私、実は昨年7月に海外から東京に帰ってきたばかりで、日本語がとても不自由になっていまして、日本語を大変に間違えておりまして申しわけありません。まずおわび申し上げます(一同笑)。

その上でなんですが、3ページ目、池尾先生からご指摘のあった「信託業法上の業規制の対象外」、確かに、別にここに何か特別なインプリケーションがあるわけではなくて、何かリダンダントな感じがするものですから、「信託業法上の業規制」の「業」というのは特段要らないわけでございますので、もしこの場でご了解頂けるのであれば、「信託業法上の規制の対象外」ということで、さらっと書かせて頂ければと思っております。

それから、ご指摘頂きました5ページ目の「意見もあった」、これは実は両論、ご指摘あったところを書かせて頂いている、まさにご意見のあったところでございまして、それを忠実に再現しているつもりなんですが、確かに十分な事前規制というのは、どうもサフィシエントということで連想が入ってしまったものですから、そういう意味で、先生おっしゃるとおり、一定の事前規制ということに直すということで、この場でご了解頂けるのであれば、ぜひそのようにさせて頂きたいと思っております。

あとは、戻りますが、兼業規制について、昔のような兼業規制ではないでしょうねということについては、もちろんそのとおりでございまして、時々刻々と私どもも兼業規制と言われるものについての概念を新たにしているということでございますので、ご指摘を重く受け止め、もう一度いろいろと考えてまいりたいと思っております。

以上です。

○岩原部会長

ほかに何かご質問、ご意見ございますでしょうか。

それでは寺本さん。

○寺本法務省民事局参事官

今、池尾先生からご指摘があったところも含めまして、ちょっと資料を拝見いたしまして、信託法の改正で予定されている内容につきまして、念のため二、三点補足させて頂きます。

まず、ただ今ご指摘のありました6ページ目の事前規制の話でございますが、マル2のところで、「信託法上認められている措置は事後的救済にとどまり」と、これはご意見ということではございますが、今般の信託法の改正によりまして、受託者の違反行為によりまして信託財産に著しい損害が生じるおそれがあるときには、いわゆる差止請求権が認められるという規律を新たに導入いたしました。したがいまして、新しい信託法におきましては、決して事後措置だけではなくて、適切な事前措置も導入される方向でございますので、その点もご留意頂ければと思っております。

それから、(c)の目的信託につきましても、「委託者の監督権限を強化することが適当」というくだりがございますが、この点も、新しい信託法におきましては、いわゆる受益者の定めのない目的信託におきましては、委託者の監督権限を強化するという規律を導入する方向で考えておりますので、この点もお含みおきを頂ければと思っております。

あと、1ページ前に戻りますが、マル2でございますけれども、「信託宣言については、改正信託法上、事後的に詐害行為取消権が認められ」と書いてございますが、これも非常に細かい話でございますけれども、正確に申し上げますと、信託宣言につきましては、いわゆる濫用のおそれという指摘があることにかんがみまして、通常のような訴訟による取消権の行使までは必要がなくて、委託者の債権者というのは、訴訟を提起することなく信託財産に対してかかっていくことができるという方向で改めているところでございまして、それに対して異議があれば詐害意思の立証が必要になるわけでございますが、通常の詐害行為取消権に比べると、かなり委託者の債権者の保護というものを重視しているところでございます。

最後に、総論的なことを一言だけ申し上げますと、このペーパーに書いてございますとおり、新しい信託類型等につきまして、「信託業法上、十分活用可能となるよう配慮しつつ適切に位置付ける」ということですとか、現行の兼業規制等について、しかるべくご配慮を頂けるというふうに書いて頂いておりまして、その点は私どもとしてもありがたく思っているところでございます。

信託法におきましては、先ほど申し上げましたように、一定の特殊な類型の信託につきましては、受託者の行為責任を厳格なものにするということも含めておりますが、基本的に現行の規制的な内容を若干修正いたしまして、いろいろな信託の導入が可能となる方向で規制を緩めるというところも考えているわけでございます。そういう精神というものをぜひともご配慮頂いて、しかるべく内容の合理的な規制を図って頂ければというふうに考えておりますので、補足させて頂きます。

以上でございます。

○岩原部会長

ありがとうございます。

ご指摘のとおり、私どもも新しい類型の信託のサービスが活用されることを願っておりますので、基本的な考えは変わらないと思います。

今ご指摘頂いた表現に係る点、細かい点で必要があれば、見直して頂きたいと思います。

原委員、どうぞ。

○原委員

欠席しがちで、大変白熱した議論が展開されているということはお聞きしていたのですけれども、既に議論が済んでいることでしたら申しわけありませんが、意見を述べさせて頂きたいと思っております。

信託については、冒頭、ここでヒアリングをやりまして、そのときの私の印象としては、事業者の方の非常にやる気があるというか、何でもやってみたいというような感じの印象がとても強くて、信託の今後の活用というところが期待されるわけでありますけれども、その一方で、どういった新しいルールにしていくかということも非常に重要だと考えております。

信託は信じて託するという言葉に分解されるように、詐欺もどきの金融商品とは違って、消費者としては非常に信頼を持って接している分野ということをまず念頭に置いて、整理して頂けたらと思っております。

3点、確認ですけれどもお願いしたいと思っております。

全体に私はこのまとめ方で賛成ですが、実効性の確保というところから意見を述べさせて頂きたいと思っております。

その1つは参入規制のところです。参入規制と兼業規制のところは十分に手を施すようには書かれておりますけれども、この要件についてはどういう定め方をするのか。特に、財務状況ですとかガバナンスですとか、こういったあたりの要件を充実させていく必要があるのではないかと思っておりますので、参入規制の要件の充実を求めます。

2点目は、木村委員からも質問が出ていて、これまでの議論の中でも十分検討が尽くされたことだとは思うのですが、不特定多数の受益者を予定しているかどうかというところで、規律をどういうふうにかけていくかということが考えられているわけなのですが、不特定多数の受益者を予定しているという部分について、先ほどの保井さんのご回答では、当初予定をされているかどうかみたいなところをメルクマールとして考えておられるような感じがしたのですが、当初はそう予定していなかったけれども途中でというようなときとか、信託の形態によっては変わっていくというようなことも考えられるので、事後についても、この不特定多数の受益者にわたっていないかどうかということもチェックできるような仕組みになっているのかどうかというところです。

3つ目については、2ページのマル5のところなのですが、見直しの考え方の基本的な整理のところの一番最後になると思いますが、最後に、「ただし、実務上不都合が生じている部分については、受益者等の保護の要請を勘案しながら」という言葉が入ってきていて、4ページの下から2行目のところにも「受益者保護の要請も踏まえつつ」という言葉が入ってきております。ここで受益者の保護の要請ということが文言として明確に入ってきているわけなのですが、これについてはどのように担保しようと考えていらっしゃるのかというところをお聞きしたいと思っております。

こういったものについては、いずれもまた政省令の改正ということも順次行われていて、そこで消費者側は意見を述べる機会は確保されているかということもお願いしたいと思っております。

最後に、行為規制については、善管注意義務とか、分別管理とか、忠実義務とか、このあたりの行為規制についてはしっかりやって頂きたいと思っております。これは意見ということです。

よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

それでは、保井さんお願いします。

○保井信託法令準備室長

かしこまりました。3点、確認ということでご質問頂いております。

1つ目の、参入規制の実効性確保のためどういうふうにしてやっていくのかということなんですが、今後引き続き検討していくことではございますけれども、参入規制については2つございます。そもそも私ども、信託という非常に使い勝手のいい、自由な、かつ経済的にも非常に効果の高い取引形態をどうやってうまく活用していくかというのが1つあって、他方、私どもの逆サイドといいますか、受益者の方から見れば、それは十分信頼に足る、まさしく原先生がおっしゃったような信じて託すという信じる部分、そこがどう担保されるかということもございますから、新しく入ってきた信託類型がうまく使われるように、かつ適切な参入規制ですね。参入規制をなぜやるかというと、それは信じて託すという信託の信用を維持するという装置付けなものですから、そこをうまくバランスさせながらということで検討してまいりたいと思っております。

それから、2点目の不特定多数の当初前提のところなんですけれども、ここはまさしく木村先生に申し上げたのと同様でございますが、当初、不特定多数の受益者に販売していくかどうかということを、外形的にいうと体制を見てということになるんですが、そこで判断させて頂いて、かつまた、今度は受益権が販売されるということになったらば、販売サイドの方で例えば説明義務とか適切な規制をかけていくということになっております。

それから、3番目の受益者保護の要請につきましては、先ほど申し上げたように信託というのは使われることが望ましいわけですから、実務の世界からあまりにもここは規制が過剰で使えなくなっているとか、あるいはあまり合理的ではないというふうにおっしゃっている点については、個別に検討しながら、かつ、それであっても受益者保護という要請はきちんと担保できるような、そういった制度設計をしてまいりたいと思っております。

まずは、今回もしお取りまとめ頂けるのであれば、この報告書をもとに、今度は法律の準備作業に入りまして、立法府のご意思をうかがいまして、その後、もし順次そういうふうになっていけば政省令ということになるわけですけれども、もちろん行政手続法等もございますので、パブリックコメント等の手続については順次行ってまいりたいと考えております。

○岩原部会長

よろしいでしょうか。ほかに何かご意見等ございますでしょうか。

金丸委員、どうぞ。

○金丸委員

特別な意見ということはないんですけれども、今回ご用意頂いたこの案につきましては、設計思想というか、当初は信託法の上に何か大きな業法が乗るのかなという危惧もあったんですけれども、総じて非常に薄くなりそうな感じがしているということと、規制等についても形式的なものよりも、本質的な効果のあるような規制という方向が私自身は読み取れますので、すごくよくなったと思っております。

ただ、質問がちょっとあるんですけれども、例えば信託法違反したときの罰というのは、今どんなふうになっているのかということと、信託業法違反というと刑事罰みたいなものがあるのか、ご質問なんですけれども、参考のために教えて頂けますか。

○岩原部会長

では保井さん、お願いします。

○保井信託法令準備室長

信託法については、恐らく法務省の方から説明があると思いますけれども、現行の信託業法上には、行政処分と直罰規定がございまして、具体的に申しますと、信託業法の第8章に罰則というのがあって、第111条以下、「次の各号のいずれかに該当する者は」ということで、例えば懲役ですとか罰金が課せられるという規定がございます。

○金丸委員

その罰金って幾らなんですか。

○保井信託法令準備室長

現行規定は300万円以下の罰金ということになっております。「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」という規定でございます。

○金丸委員

その辺は、ちょっとあれなのかもしれないですよね、こういう……。

○保井信託法令準備室長

これは免許営業の場合だそうです。すみません。

○金丸委員

全体とのバランスが多分あるんだと思いますけれども、さっきの皆さんの一方の危惧というのは、信じて託したお金が相当な金額があって、でもペナルティは300万円以下というと、そちらの方にむしろインセンティブが働く人も出ないとも限らないというのが今日の情勢だと思いますから、そういう点もぜひ検討されればいいのではないかと思います。

○保井信託法令準備室長

1点補足ですけれども、もちろん信じて託すという本質にかんがみて、社会的な信任というのは重要で、この罰則規定も3年以下の懲役というのが、体系があるわけでございますし、かつ翻って考えてみますと、私ども、最終的には刑事罰で担保してあるのだとしても、やはり信託会社というものは社会的に非常な信用を負って商売をしているものですから、一たび何か芳しくないことをして社会的な信用を失墜してしまうと、世間的に顔が上げられなくなるということが非常なサンクションでありますで、恐らくそういうことでも規律ある、それは信じて託すということの業の本質が担保されるのではないかと考えております。

○岩原部会長

信託法について、では中原さん。

○中原法務省民事局局付

金丸委員のご趣旨を踏まえましてお答えをさせて頂きたいと思いますけれども、何らかの罰則という観点から申し上げますと、会社法とか、民法とか、投資事業有限責任組合法といったような法律で設けられております過料等の規定を参考に、新たに立法において措置されることになろうかと思います。

それで、今のご指摘の中で、罰金が例えば300万円だったら、300万円しかサンクションを負わないのだから、悪いことをしてしまうのではないかというような、受託者がそういうふうにインセンティブが働いてしまうのではないかというようなご懸念に対しましては、これはむしろ過料とか刑事罰というところで、罰金の額を幾ら上げていっても、現行の経常の体系という中には限度というものがございます。

むしろ、そういう観点からしますと、受益者が受託者に対して民事的にいかなる責任追及ができるかというところを、そういった規定を整備していくということが、受託者に対して行為を規範付けるということになるのではないかと思います。

そのような観点から申しますと、例えば受託者が善管注意義務に違反しておかしなことをしてしまった、信託財産に損害を与えてしまったというときには、受益者は受託者に対して損失填補請求をすることができまして、受託者は善管注意義務違反をしたこと、悪いことをしてしまったことについて、故意とか過失がない限りは原則として填補しなければいけない。これは単独受益者権ですので、受益者1人でそういうことを行使することができるということが信託法上は担保されているわけでございます。

あるいは忠実義務に違反しまして、受託者が自分の計算で、本来であれば信託財産に効果を帰属すべき取引を自分の方にしてしまったというような場合におきましては、いわゆる介入権と申しまして、その取引は信託財産にしたものとみなすよというふうに受益者が受託者に対して主張すれば、その取引の効果は信託財産の方に帰属するというような手当てをさせて頂いております。

それから、信託事務に当たって、信託財産で得た情報を利用して受託者が何らか固有財産を膨らませてしまったというか、こんないい情報があるのかと、これはおれの商売にも使えるな、しめしめというような形で、固有財産を膨らませてしまったというときには、受益者の方で得た利益を証明すれば、受託者の方で、そんな損害は生じていませんという反証が生じない限りは、受託者はそれを損失填補として信託財産の方に戻さなければいけないというような規律もございます。

それから、信託財産と固有財産で、財産を受託者が間違ってぐちゃぐちゃに管理してしまって、識別不能になってしまったというような場合には、一種の物権的といいますか、有無を言わせない効果としまして、一定の範囲のものについては信託財産とみなすことができる。それぞれの識別不能となった財産について、信託財産と固有財産とで共有みなしというルールがあるというような形で、受益者から受託者に対する事前、事後の規律というものはほぼ、会社法等々他の手法であるメニューはすべてそろえたと思っております。

○岩原部会長

保井さん、どうぞ。

○保井信託法令準備室長

1点申し忘れたことがありまして、今申し上げた111条の規定は個人に対するもので、法人としては、117条で3億円以下の罰金刑等の量刑があるというのがありますので、補足でございます。すみません。

○岩原部会長

ほかに何か。

原さん。

○原委員

申しわけありません。法務省の方に1点確認させて頂きたいのですが、一番最後におっしゃった、分別管理をしていなくてぐちゃぐちゃになった場合は一定の範囲で損失填補の請求ができるというようなお話だったのですが、今回、この信託業法では分別管理は厳格に適用するということになるので、信託業法ではぐちゃぐちゃになることはないという整理でいいんですね。

○岩原部会長

では保井さん、どうぞ。

○保井信託法令準備室長

実はこれはペーパーの中にも実際に書かせて頂いていることなんですけれども、恐縮です、おめくり頂きまして、分別管理義務、7ページのところで、従来、信託業法上は信託会社に対して分別管理のための体制を整備しなさいという義務を課しているわけで、これは維持をいたします。したがって、信託会社はきちんと分別する体制を維持しなければいけない、これはこれまでどおりでございます。

他方、信託法上、今回、例えば動産・有価証券等につきましては、物理的に分別しなくても帳簿上の管理で足るという規定もございますので、ここについては信託法の規定にあわせて、私どもも信託会社には体制を維持していくことを求めるという規定になっているところでございます。

○岩原部会長

よろしゅうございましょうか、何か。

○原委員

私としては、やっぱり分別管理の徹底でお願いしたいと考えます。

○岩原部会長

そのためにも、新しい信託宣言についても、一定の分別管理等の信託業法上のルールが適用されるようにするというのが、今回の主な目的だと理解しております。

ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。

本当に皆様、短期間でございましたが、大変集中的に密度の濃いご議論を頂きまして、誠にありがとうございます。

道垣内さん、どうぞ。

○道垣内委員

議事進行に口出しして大変恐縮なんですけれども、保井さんがおっしゃった2点の文言の修正をするかどうか、プラス寺本さんがおっしゃったところについてどういう修正を施すかということについて、もちろんお任せしてもよろしいんですが、お任せするならお任せするということでお決め頂ければというふうに思います。

○岩原部会長

表現について本日幾つかご指摘頂き、寺本参事官からもご指摘頂いて、もし表現ぶりがご指摘から見て適当でない点があるとしたら、それはこの後で修正させて頂ければと思っております。

いずれも、大きい考え方の違いとかそういうことではなくて、事実を正確に反映しているかというようなことでございますので、それは私どもの方にご一任頂いて、文言を修正するということでお認め頂ければと考えております。よろしいでしょうか。(異議なしとの声あり。)

それでは、ただいま申し上げましたように、本日頂きましたご指摘に従って、表現ぶりを一部変えさせて頂きたいと思いますけれども、それは私どもの方にお任せ頂くことにいたしまして、本日の審議を終了させて頂きたいと考えております。

皆様からは、本当に熱心かつ非常に根本的なご指摘を頂きまして、そもそも信託業法というのは何のために存在するかという本当の根本にさかのぼったご意見を頂き、特に池尾委員からは、非常によく整理されたそういう点でのご指摘を頂いたように理解していますし、私ども今後見直していかなればならない課題がいろいろあることは、恐らくここの委員の方全員が了解されていることと思います。柔構造化その他いろいろ貴重なご指摘も頂いております。

ただ、繰り返し申しておりますように、今回の作業は、信託法の改正法案が本通常国会に提出されるのにあわせまして、整備法という形で最低限それに見合った信託業法の手当てをして、信託法が速やかに新しいサービスの提供ができるような体制をつくるということに目的がございますので、根本的な制度全体の構造の見直しというとを現時点で行って、整備法の中に入れるというのは時間的にも難しいことでございますので、今回、本当に皆様にご無理をお願いした上で、最低限必要な見直しを行い、ただ、その中で不特定多数の受益者を保護するという基本的な考え方は十分出して頂いているように思いますので、今後はそれに従って今回の整備法を経た上で、信託業法のさらなる改善の見直しをしていくということになっていくのではないかと私は考えております。

そこで、そのような理解の上で、今回の第二部会、それから信託のワーキンググループとしての意見の取りまとめ、先ほどの表現の点はこの後若干の手直しをお許し頂くことにして、お認め頂きたいと思います。よろしゅうございましょうか。

それでは、私どもの審議はこのようなことでまとめるということでよろしゅうございましょうか。

それでは、事務局を代表して畑中審議官から、もしくは可能であればごあいさつ頂ければと思います。よろしくお願いします。

○畑中審議官

審議官の畑中でございます。

本来であれば、局長の三國谷がごあいさつ申し述べるところでございますが、国会関係の用務がございまして、どうしても出席できないということで、かわりに一言お礼を申し述べさせて頂きたいと思います。

岩原部会長及び委員の先生方におかれましては、日頃よりご多忙のところ、短期間で集中的に大変熱心に充実したご審議を頂きまして、誠にありがとうございました。

今回のご審議は、信託法の改正に伴う信託業法の見直しにつきまして合計5回にわたりご審議を頂きました。具体的には、信託宣言等の新しい類型の信託に対する対応、そして受託者の義務等の内容についての合理化などといった論点を中心に、幅広い視点から信託業法のあり方についてご議論頂き、委託者及び受益者の保護の観点も踏まえながら、新たな信託に対する幅広いニーズにも応え得る信託業制度の制度設計ということで、こうした報告を取りまとめて頂きました先生方に厚く御礼申し上げます。

今回おまとめ頂きました報告の趣旨を十分に踏まえまして、今後、法制化の作業に鋭意取り組んでまいります。その過程で、部会長をはじめ先生方のご意見を承る機会あるいはご相談させて頂くこともあるかと存じますが、何とぞよろしくお願い申し上げます。

今後とも引き続きご指導、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

本当にどうもありがとうございました。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

三國谷局長はご存じのような事情で、国会等でお忙しいので、残念ながらごあいさつ頂けませんでしたが、事務局の皆さんには大変努力して頂きまして、この報告書がまとめられたことについて大変感謝しております。

そして、何よりも委員の皆様に大変熱心なご議論を頂きまして、このように非常に短期間ではございましたけれども集中的な議論を行って、報告をまとめることができましたのは、まさに皆様のおかげと考えておりますので、厚く御礼申し上げます。

それでは、事務局の方からお願いします。

○大森信用制度参事官

それでは、最終的な報告案は部会長とご相談の上、修正させて頂きまして、後ほど委員の皆様にお届けをいたしますので、よろしくお願いいたします。

なお、第二部会本体の委員におかれましては、連日になって恐縮ですけれども、明日以降、貸金業制度についての議論も若干ペースアップして頂きたいと考えておりまして、1つのテーマが区切りを迎えたばかりで別のことを申し上げるのも何なのですが、なかなか金融制度改革の必要性というのは途切れませんので、よろしくお願い申し上げます。

以上でございます。

○岩原部会長

どうも皆様、本当にありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会合を終了させて頂きます。

どうもありがとうございました。

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