金融審議会公認会計士制度部会(第2回)議事録
平成14年9月27日
金融庁 総務企画局
- ○ 片田部会長
-
おはようございます。予定の時間でございますので、ただいまから金融審議会・公認会計士制度部会の第2回会合を開催いたします。
本日はご多用中のところご参集いただきましてありがとうございます。
まず、開会に当たりまして、村田金融担当副大臣よりご挨拶をいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
- ○ 村田副大臣
-
皆さんおはようございます。
第2回の公認会計士制度部会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。
当部会におきましては、昨年10月から、公認会計士をめぐる制度全体につきまして、監査の一層の充実・強化、環境変化に適合した制度の整備に向けてご審議をいただいているところでございまして、この場をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げたいと思います。
この間、改めて申し上げるまでもなく、米国においては、不正会計事件を受けた対応策を取りまとめ、去る7月末には、監査法人に対する監督や監視の強化、企業経営者の責任の厳格化などを主な柱といたします企業会計改革法が成立したわけであります。
我が国におきましても、金融庁が先月公表いたしました証券市場の改革促進プログラム、いわば証券市場の構造改革の第2弾でありますが、この中の3つの柱の1つとして、投資家の信頼が得られる市場の確立を重要課題と位置づけまして、米国における不正会計事件の対応策を教訓としながら、会計・監査の充実・強化に向けた検討を深めていくこととしております。
会計制度・監査制度・開示制度は、資本市場のインフラとして重要な機能を担っております。
そして、特に、最近のニーズの質的・量的な拡大を背景として、制度の担い手であります公認会計士に求められる社会的責任も大変厳しいものとなってきております。
このような状況のもと、我が国の公認会計士をめぐる制度改革は急務の課題であると改めて考えております。当部会におきましては、制度全般にわたりまして、幅広い観点から、委員の皆様の忌憚のないご審議を引き続きよろしくお願いしたいと思います。
簡単ではございますが、以上をもちまして私のご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございました。なお、村田副大臣は公務ご多忙のためこれにて退席なさいます。ありがとうございました。
さて、当部会は、ただいまの副大臣からのお話にもございましたように、昨年の10月の第1回会合の後、委員の皆様方には監査制度と試験制度の2つのワーキンググループにおきましてご審議をいただいてきたところでございます。改めて私からも厚く御礼を申し上げます。
本日は、当部会における公認会計士制度見直しの今後の進め方につきましてご審議をお願いいたしたいと考えております。
なお、本日の議事は公開となっておりますので、念のため申し添えます。
最初に、これまでの審議等の状況及び公認会計士制度を取り巻く状況について事務局から説明をお願いいたします。
- ○ 羽藤企業開示参事官
-
お手許に資料をお配りを申し上げております。まず資料の確認をさせていただきたいと思います。
資料の1-1 、公認会計士制度部会のこれまでの審議状況、それから資料の1-2 、証券市場の改革促進プログラムの概要、そして資料の1-3 ということで米企業会計改革法成立までの経緯、そして資料の2が横長のものでありますけれども、公認会計士制度見直しにかかる検討項目について、資料の3がスケジュールというふうにお手許に配布をさせていただいておりますので、もし不足の点ございますれば事務局の方までお申し出をいただければと思います。
それでは、まず、これまでの検討状況を中心にしまして、資料の1-1 でございますけれども、簡単に振り返らせていただきたいと思います。
昨年の1月に金融審議会の総会で、総理大臣、それから金融庁長官による諮問がございました。公認会計士制度を取り巻く環境の変化を見据え、公認会計士監査の一層の充実強化及び環境の変化に適合した公認会計士制度の整備に向けて、公認会計士制度の改善に関する事項について審議を求めるということでございます。
昨年の10月にこの制度部会を開催していただきまして、公認会計士制度の概要、それからこれまでの議論の状況ということで、これに先立って平成12年の6月に、当時の公認会計士審査会のもとで調査が行われました2つのレポートをご紹介をさせていただきながら、この制度部会のもとでは、ワーキンググループを2つ設置をして、それぞれ監査制度・試験制度についてのご議論をお願いするということで、去年の10月にこの部会を開かせていただいたわけであります。
今回はそれ以来の第2回目の部会ということで至っておるわけでございまして、この間、その下にございますように、ワーキンググループを、監査制度・試験制度それぞれ開かせていただいたわけでございます。
監査制度につきましては、平成13年、去年の11月に、これまでの議論の背景、それから自由討議というところから始まりまして、会を合同のものも含めまして、次のぺージにもなりますけれども、合計で5回開かせていただいたわけであります。
それから試験制度につきましても、同様に、試験制度についての概要、諸外国の状況等々を含めまして、合同のものも含めまして5回開かせていただいたわけであります。
そして、昨年から議論をいただいております過程で、米国のエンロンの事件を中心といたしましたアメリカでの一連の動きがございましたものですから、そちらにつきましてはこの6月と9月という形でご紹介をワーキンググループの場でさせていただいた。そういうふうなことで今日に至っているわけであります。
そして、金融審議会の総会が9月9日に開催されました。金融審議会の総会においては、全般的に、資本市場の信頼性を我が国においていかに確立させていくのかという点、それから証券市場の活性化ということについて、それぞれ金融審議会の中の担当する部会における審議を深めていくべしということがございまして、金融庁といたしましても、8月に、資料の1-2 でございますけれども、証券市場の改革促進プログラムということで、包括的な取り組みを迅速に実施するということを打ち出してきておるわけでございます。金融審議会の総会におきましても、この具体的な検討を急ぐという方向で、年末までにそれぞれの第1部会、それからこの公認会計士制度部会での論点を集約して報告をする、そういうふうな流れになっておるわけでございます。
この公認会計士制度部会のワーキンググループにつきましては、加古委員それから江頭委員にそれぞれ、試験制度・監査制度について座長ということで務めていただきまして本日に至っておるわけであります。後ほど改めてご説明をさせていただきますけれども、今後の議論をこの部会の場でご審議をいただきながら、集中的、精力的に年末に向けて集約をし、深めていくというふうな段取りで、私ども事務局としても各委員の皆様方のご協力をいただきながら作業を進めさせていただきたいというふうに思っている次第であります。
なお、お手許には資料の1-3 ということで、米企業会計改革法成立までの経緯の資料をお配りをさせていただいておりますけれども、こちらにつきましては、後ほど検討項目をご説明させていただく際に触れさせていただくことといたしまして、そのときの参考にしていただければというふうに思っております。
私の方からは以上でございます。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明にもございましたとおり、去る9日に開催されました金融審議会の総会におきまして、公認会計士制度の見直しについて、当部会での審議を深めまして、年内を目途に金融審議会総会に報告することとされているところでございます。
ただいまの事務局の説明に関しましてご質問、ご意見などございましたらご自由にご発言いただきたいと思います。挙手をしていただくとありがたく思います。ございませんでしょうか。
それでは続きまして、今後の取りまとめに向けて事務局からの説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
- ○ 羽藤企業開示参事官
-
今後の取りまとめにつきましては、これまでワーキンググループでご議論をいただきました論点を集約して、そしてこの部会で報告をしていただくという方向で審議の方をピッチを上げさせていただきたいというふうに考えております。
そして、ベースとなる検討項目を、これまでワーキンググループの場で取り上げられたアイテムを中心にいたしましたお手許の資料の2ということでまとめさせていただいております。それぞれの検討項目について、これからこれまでのご審議の概要を口頭で補足をさせていただきながらご説明を申し上げてまいりますけれども、今後につきましては、これらのアイテムについてワーキンググループの場で論点を集約をするということを順次具体的に行っていただいてはどうかというふうに事務局としては考えておるところでございます。
そういうことも含めましてこれからご説明を申し上げるわけでありますけれども、まずお手許の資料の2の構成でございますけれども、大きく検討の項目というものについては、まず基本的な考え方として、最初のぺージをめくっていただきますと「監査のあり方」、公認会計士監査というものは一体どういう位置づけであるのかという基本論があろうかと思います。
それから、2ぺージ、次をめくっていただきますと「独立性の強化」ということで、公認会計士監査が被監査企業との関係で独立性をきちんと保つということが前提になるのではないかという点。
それから、3ぺージ目は「人数の拡大と質の向上」とありますけれども、この公認会計士資格者についての基本的な考えの整理の中で、これを担う人材としての数をふやすことと同時に、クォリティーを高めていくこと。
それから、4ぺージ目は「監査法人のあり方」、そして5ぺージ目は公認会計士監査に対する監視あるいは監督といったものの機能をどのように高めていくのか、大体このような形で公認会計士監査をめぐる制度の論点というものを集約をしていただくというのが一案ではないかと思っております。
もとより、この前提としては、企業経営者サイド、それから投資家に対して公認会計士制度といったものが一体どういうかかわりであるべきなのかという、さらにその手前の議論もありますし、それから、証券市場の中でどのように具体的に現れていくのかということになっていくわけでありますけれども、それぞれにつきましては、個々の検討分野の項目の中でそのような理念を反映するような形で具体的な議論をワーキンググループの場では展開をしていただいて、論点を集約していただければというふうに思っておるわけであります。
それでは、もとに戻っていただきまして、まず1ぺージ目の「監査のあり方」のところでございますけれども、これまでの議論では、公認会計士監査というものが、特に公認会計士に求められる資質も含めまして、ギルド的な会計技術者集団ではなくて、高い倫理性と見識をあわせ持った専門家集団であるということを前提として、そういう人材が証券市場それから企業経営活動というものを支えている、我が国全体の経済の競争力の厚みにもつながっていくのだ、そういう趣旨のご議論がまずございました。
そういうふうな観点から、まず最初に公認会計士の使命そして監査の目的は何かということを、ある程度スコープを絞りながら、それから隣接する問題等の整理をしながら、それを制度上どういうふうに反映させていくのかという議論が必要ではないかと思いますので、まずこういった点についてクリアにしていくことが必要ではないかと考えております。
それから、「業務範囲のあり方」でありますけれども、現行の公認会計士法上は、いわゆる第1項業務ということでご案内のとおり、財務書類の監査又は証明をすることを業とするということ、これが監査としての基本的な位置づけとなっておるわけでありまして、そしていわゆる第2項業務という形で、財務書類の調製をし、それから財務に関する調査もしくは立案をし、それから相談に応じるということを公認会計士の名称をもってこれも業とすることができる、そういう位置づけになっておるわけであります。監査という業務、そして今申し上げましたような業務の広がりの中で、特にレビューという業務を一体どういうふうに位置づけるのかという点についてはこれまで議論があるところであります。レビュー、これが証取法やあるいは商法特例法に基づく監査とは水準を異にするのであるという前提での議論、あるいは中小会社ということを視野に入れた場合の議論、またアメリカではさらにコンピレーションと言われているようないわゆる財務諸表を調製をしていくというところまで携わっている、そういったことの関係で、監査、レビューというものを峻別をしながら、これにどのような制度的なかかわりを持っていくのかと、そういうふうな議論が整理としてまず必要になってくるのではないかという点がこれまでのワーキンググループなどでの議論の中でも見られたかと思います。
それから、「守秘義務の明確化」とありますけれども、この点はFATFでも現在、いわゆる専門資格士が携わる業務については一定の守秘義務の解除をそれぞれ各国の国内法において認めるべきであるという議論が現在進められております。この点につきましては詳細を改めて個別具体的な議論の場の際に紹介もさせていただきたいと思いますけれども、こういったことと、それから現行の制度、それから公認会計士協会でのいわゆる自主的なルールの中での規制のあり方との関係でこれをどういうふうに位置づけるのかという点があろうかと思います。
それから「発行体との関係」でありますけれども、これは改めて申し上げるまでもありませんが、何よりも経営者のサイドでの内部監査制度との関係でこの公認会計士監査の問題をとらえなければならないということでもありますので、発行体に公認会計士制度の改革の中で何を求めていくのかということについても論点を集約していただく必要があるのではないか、そのようにまず考えておるわけであります。
監査のあり方については、この下の「参考」にありますけれども、繰り返しになりますが、公認会計士監査の基本的な位置づけについては、これまでも、平成12年6月でありますが、当時の監査制度小委員会の中で「公認会計士監査は、その充実・強化を通じてディスクロージャーの適正性を確保し、もって証券市場の信頼を高め市場機能の活性を維持することにより公益の目的に資することができる。法が公認会計士に監査証明業務の独占を認めている理由もここにあり、公認会計士監査制度の改革も、このような公共性の視点に立って進められるべきであると考える。」こういう基本的な視点に立ち返りながら、まず監査のあり方についての、ここでは例示として挙げさせていただいていますけれども、それぞれの項目について整理が必要であろうと考えております。こういう論点の集約もまずお願いしたいと思っております。
それから、次のぺージへ移っていただきますけれども、いわゆる「独立性の強化」ということで、監査をする立場と、それから監査をされる企業のサイドとの間での距離感というものをどのように適正に保つのかという点がございます。この点については、これまでもそうですけれども、ワーキンググループの場でもいろいろな観点からのご議論があったと承知をしております。
まずこの「独立性の要件の明確化」ということですけれども、そもそも独立性とは一体どういうことを指すのか、あるいはどういうことを考えていくのかという点から出発をしまして、2番目に、「被監査会社への非監査業務の同時提供の禁止」というものがございますけれども、これはご案内のとおり現行の制度上はこの非監査業務の提供という点については禁止をされていないわけですが、一定のファイヤーウォールを監査業務と非監査業務の間に設けるべきではないかという議論、あるいはむしろ内部監査業務の充実という観点からは積極的にアドバイスをしていくべきではないかというご議論もあったと承知しております。また、非監査業務というものが逆に監査業務を補完するということは実務上はよくあるので、ファイヤーウォールということを設ける必要はないのではないかというご議論もあったと承知しております。
先ほどのアメリカの企業会計改革法の関係で幾つか示唆に富む点がこの独立性の強化については行われておりますので、ちょっとそちらの方をあわせてご覧をいただければと思うのですけれども、先ほどの資料の1-3 の2ぺージ目以降に、このアメリカの企業会計改革法の概要を骨子としてご紹介を申し上げております。この監査法人の独立性の確保というのがこのアメリカの改革法の大きな柱の中の1つとして位置づけられておりまして、この1.のにありますように、監査を行っている企業に対してコンサルティング業務を提供することを原則として禁止するということが打ち出されております。これはアメリカの法律の 201というセクションで、コンサルティング業務を初めとする8つの業務が、記帳業務などを含めまして原則として禁止をするということが法定化されたわけでありまして、一部の税務業務などについては監査委員会の承認ということを前提としてこれが行い得るというふうになっておるわけであります。
こういう形で、アメリカにおいてはこの監査業務と非監査業務の峻別というものが、法律が非常にクリアな形で打ち出されるというのが一方の議論としてあるわけですが、現行の制度では禁止されていないこの点について、これをどのように考えていくのかというのが一つあろうかと思います。
それから、(3)に戻らせていただきますけれども、「監査法人における関与社員による継続的な監査」について、これは監査法人の関与する社員の交替制というものが議論の一つとして挙げられるのではないかということで、現行の公認会計士協会の自主規制では7年ごとに交替をする、そしてそれを品質管理レビューで状況をチェックをするということが行われているわけでありますけれども、これまでのご議論あるいは平成12年にまとめられた報告書の中では、アメリカと同様に最長7年とするといった、そういう自主規制の充実や強化が必要ではないかということが当時提言をされているわけであります。
アメリカの法律では、先ほどの「骨子」というこの資料で紹介をさせていただいております1.ののところにございますように、会計士が同一企業の監査を5年以上行うことを禁止するということが、これが法定化されて打ち出されております。
これまでのワーキンググループなどの議論においては、この点について、むしろ同一監査人の継続的な監査よりも、監査責任者が長く監査を担っているといったことが問題ではないかという議論から始まりまして、監査法人内でたらい回しになっても元も子もないのではないかというふうなご趣旨の発言、あるいは個人の公認会計士に交替ルールを義務づける、あるいは監査法人についての交替制を法定化すべきではないかというふうなご指摘もあったというふうに記憶をしております。
こういった形で、まず関与社員の交替制、これをどのように位置づけるのか。あるいは(4)のように監査法人自体の交替制というのをどのように位置づけるのか。もちろんこういうことについて位置づけるべきでないというふうな議論もあろうと思いますが、これがそれぞれ一つの課題になろうかと思います。
それから、(5)でございますけれども、「大規模企業に対する公認会計士単独の監査の禁止」という点でありますけれども、これは法令による規制は現在ございませんけれども、補助者もなく1人で監査をするということに対して、一定規模以上の証取法の適用会社の監査については、そういった単独監査というものを制限することが必要ではないかといった議論がこれまでございました。また、その点については、そもそもそういう監査を行うということを審査をする体制によってカバーをすべきではないかといったご指摘もございました。この点についてこれをどう考えるのかという点があると思います。
それから、(6)でございますけれども、「関与社員であった者が被監査会社の幹部に就職した場合の当該会社に対する監査の禁止」という点でありますが、これはアメリカの法律、先ほども「骨子」でご紹介をしておりますけれども、というところにもございますが、アメリカでは、監査をする前1年間にその監査法人の出身者がその被監査企業の役員などを務めているといった場合には、その監査法人による監査が禁止されるということが法律で打ち出されているわけであります。
現在我が国では、監査法人のいわゆる退職者について就職の制限等がないわけでありますけれども、いわゆるクーリングオフというふうな規定を導入すべきかどうかという点もこの独立性の確保、独立性の強化という観点からは一つの課題になろうと思います。
このように、独立性の強化については、特にアメリカの企業会計改革法の中で幾つかのことが法律上明記もされて、強化されているというふうなことも背景としながら、我が国では我が国の実情などを踏まえて、どのように受けとめながら考えていくのかといった点について、早急に論点をワーキンググループの場で集約をしていただければというふうに思っております。
それから、3ぺージ目、次のぺージでありますけれども、「人数の拡大と質の向上」であります。これは試験制度ワーキンググループの場を中心にしてこれまでご議論をしていただいているわけでもありますけれども、基本的な考え方として、この公認会計士の数の大幅な増加が必要ではないかというふうな指摘がどちらかというと大半であったというふうにこれまで認識をしております。冒頭にも申しましたように、その担い手である公認会計士の位置づけ、そしてその公認会計士が担う業務というものが本来業務としてまず監査それ自体であるということ、この監査以外の業務で公認会計士をふやす必要はないのではないかといったご指摘もあったようでございます。他方、最近の経済状況に鑑みると、数をふやす必要性は乏しいのではないかという議論も一方ではございました。数年前にいわゆる会計士補の就職難というものが社会問題化したというご指摘もあったと記憶しております。
また、この試験制度、この後の(2)の「人数の拡大」に具体的に入っていきますけれども、この試験制度のあり方全体について、いわゆる企業の中での人材、あるいは社会的な経験といったものをどのように生かしていくのかという観点からのご議論が多くございました。
まず試験制度のあり方について、この(2)のですけれども、まず受験者をふやすことを考える。それからイですけれども、一定の専門資格者に対する試験を免除するという形で、いろいろな形で実務経験というものを中心としながら、あるいは専門資格者ということでその登用の道を開くという点、それからウは、いわゆるロースクールなどの例を参照しながら、専門職大学院といった教育機関との連携を図る、そのような指摘がございました。
特に、まず最初のこの受験者の大幅な増加を図ることが必要であるという点については、現況では使命感を持ちながらも、試験制度について、特に社会人にとっては働きながら受験をするということがかなりハードルの高いことである。したがって、ある程度そういう社会人に対してチャレンジする機会を与えるような、そういう試験制度にすべきではないかといったご指摘もございましたし、また、この試験制度の拡大で公認会計士の数をふやしていくということでまず大事なことは、受験者の数をふやすということであって、受験者の数をふやせばおのずとそこに質の高い合格者ということも生まれてくるのではないかといったご指摘もございました。
そういう意味では、まず受験者の増加を図るべきではないかという議論。それから一定の専門資格者、実務経験を積んだ方について一定の厳しい条件のもとで第3次試験の受験をダイレクトにできるようにといった、そういった形で資格を取得する道を広げることが大事ではないか、この実務経験の中では、高度な専門知識を有する人材というものは結構おられるのではないか、こういった方の登用を導入をすべきではないかという観点から、この試験の免除のあり方という形でご指摘がございました。
また、とはいえ、公的な資格による資格の取得のプロセスにおいては、試験によるということがこれは原則ではないかといったご指摘もございました。資格取得の試験の目的を数合わせということで考えていくのはいかがなものかといったご趣旨のご指摘もございました。
そういうことも含めまして、この試験の免除というものをどう考えていくのかという点についての論点を整理をしていただきたいというふうに考えております。
それから、専門職の大学院など教育機関との連携という点ですけれども、先ほど申しましたように弁護士資格に関してはロースクール、そして法科大学院というものを具体的に司法試験の試験制度の中に取り入れていくという方向で現在法案化の作業が進められているというふうに承知をしております。そういったことを参照しながら、ビジネススクールであるとか、あるいは商学専攻の大学院の会計についての専門的な教育機関、こういったものの充実をまず図りながら、そことの連携において、この修了者の取り扱いを試験制度の中に盛り込むということが一案ではないかと、そういったご指摘がございました。
そして、「量的な規模」についてでございますけれども、これはこれまでも議論を深めていく必要があるということであるわけですけれども、平成12年の6月の公認会計士審査会による取りまとめにおいては、「例えば」という形でありますけれども、ストックとしての資格取得者を現在の4倍程度にする必要があるといった指摘。また監査時間というものを必要時間を確保して充実をしていくということになると、どうしても5年間で6, 000人程度増加させる必要があるのではないか、そういった指摘が平成12年当時ございました。
そして、昨年からのご議論の中でも同様に、当面の増加としての一つの目標というのでしょうか、目安として5年間で6, 000人程度増加させるといった必要性を肯定をされるご意見とか、具体的な規模についてはともかく、アメリカのように30万から40万人程度のそういった規模がトータルとして必要で、そういう方向で大幅な増加を図るべきではないかといったご議論。また監査業務に従事していない、そういう公認会計士のウエートがかなりあるのではないか、そういうことも配慮しながら数の問題についても考えていくべきではないか、むしろ現行の規模においても、全員を監査業務に従事させればかなり供給不足というものは解消するのではないかといったようなご指摘もあったわけであります。
そういう意味で、この2つの議論ですけれども、そもそも当然マーケットの原理でこういうものが決まってくるのではないかといったご指摘もございますけれども、資格制度の試験として運営をしていて、その中で合格者が決まっていくという現行の制度の中で、ある程度量的に拡大をするという方向で一体どういう具体的な方策があるのかという点を、ご議論を深めていただければというふうに考えております。
それから、(3)の「質の向上」の関係でありますけれども、この点についても幾つかいろいろな課題があろうと思いますが、そもそもその前提としての公認会計士の質やモラルといった点については、これは公認会計士協会でも相応の手当てが行われているところでありますけれども、こういったものを現状を評価をしながら今後どう考えていくのかという点。
それから、この資格登録と業務登録の分離といった議論ですけれども、いわゆるインターン制度のような形を導入をし、資格を登録をするということとそれから業務を登録するということとは分けて、そういったインターン制度などを経た者について業務登録を認めるべきではないかといったご議論。また、資格だけの公認会計士を誕生させるということについては余り意味がないのではないか。そういう形だけで制度改革を議論しても意味がないのではないかといったご議論もございました。
また、「登録更新制の導入」というところですけれども、この点については、いわゆる有効期間を設けて、そして常に、その後にございますけれども、研修というふうなこととパッケージで考えながら資質の向上ということを図っていただくということが重要ではないかといったご趣旨のご意見もございました。
現行では、継続的専門研修というものは公認会計士協会で実施をされておるわけでありますし、この義務づけというものはこの4月から導入されたと承知しております。こういう点についてはむしろ、研修というものはみずからの専門能力をみずから向上させることにあるので、他律的にこの義務づけというふうな形はなじまないのではないかといったご意見であるとか、あるいはそもそも研修の内容をどう考えるのか、そのクォリティーが充実したものでなければ登録制度といったものをいわばちらつかせる形で研修を行わせようといっても余り効果が上がらないのではないか、そういったご指摘もございました。
以上が人数の拡大、それから質の向上ということを中心とした議論でございまして、すべてを今日ここでトレースできないわけでもございますし、口頭で限りがございますけれども、以上のようなご指摘を中心にあったわけでありますが、総じて人数の拡大、質の向上については、増やしていくこと、そして質の向上が重要であるという点についてはおおむね異論がなかったのではないかというふうに思います。
次の4枚目ですけれども、「監査法人のあり方」については、これは現行法上、監査法人ということで一つの章立てがございまして、幾つかのことが法律上定められておるわけでありますけれども、いわゆる合名会社という会社形態をベースとして現行の制度ができ上がっておるわけであります。
この監査法人の位置づけについては、まず大きなご議論としてございましたのが、責任の問題でございました。すなわち、現行の制度は合名会社に準じた形で社員が無限連帯責任を負っているという、そういう制度になっているわけでありますけれども、最近では実際に大きくなっている組織形態の現実ということを考えて、また我が国の会社法制、損害賠償請求の履行といったこととの関係も踏まえて考えていくと、こういった無限連帯責任を負う社員からだけ構成されている合名会社形態に加えて、有限責任のパートナーシップ制といった形で有限責任形態の導入ということを検討すべきではないかといったことがそもそも平成12年当時の取りまとめで位置づけられておりました。
そういう議論を踏まえまして、新たに責任限定という形で一定の規模以上の監査法人については社員の責任の一部を限定すべきであるといったように、そしてその限定と具体的にだれがその責任を負うのかという社員を特定をするといったこととパッケージで考えるべきである、そういうご指摘がございました。
他方、投資家の信頼というものを損ねるような結果をもたらすというふうなことを考えていくと、基本的に無限責任であるべきではないかといったご指摘もございました。
この点については、監査法人になってはいるものの、同時に例えばコンサルティングのようなものが中心になっている場面においてまで責任の限定といった議論を一律的に考えていくのは適当ではないのではないかといったご趣旨の議論もございました。
この責任のあり方については、今申しましたように、まずだれが負うのかといった議論、それから損害賠償の請求といったところに、仮に限定するとした場合に、年間の報酬の3年から5年分ぐらいを限度としてはどうか、といった具体的なご指摘もございました。
これらを裏づける担保措置についてもご議論がございました。現行も、こののアですけれども、協会が窓口となって職業賠償責任保険というものがあるわけですが、現行ではこれが強制加入ではなく、こういうものに対する加入の義務づけということを検討すべきじゃないかとか、あるいは会社の役員と会計監査人の比例的な責任制度の導入ということを検討してみてはどうかとか、あるいは最低出資金といったものを法定したり、損害賠償のための準備金の積立制、これらは今ないわけでありますけれども、こういった点を導入するということで検討してみてはどうかといった議論がございました。
ただ、あわせて、先ほども申しましたように、そもそも損害を与えたものはそれを償うのが筋であるので、こういった点で上限を設けたり、責任を限定するべきじゃないといったご議論もございました。
以上、法的な制度として有限責任というものをどういうふうに具体化していくのか、あるいは法的な制度でないにしても、保険制度などといった形でどうカバーするのかといった点を含めて、この有限責任の導入というのが一つの大きな課題として議論がございました。この点を中心にしながら、以下監査法人についての具体的な構成、成り立ちも含めて論点を集約をしていただく必要があるのではないかと思っております。
そういう意味で、例えば(3)でございますけれども、社員の資格についてですが、現行法上は監査法人は公認会計士のみから成り立っており、使用人を使うということは可能とされておるわけでありますけれども、むしろ監査意見を形成するに当たっては、会計士以外の専門家との共同、協調というものを志向するというのが、これがふさわしいのではないかといったご議論がございましたし、他方、むしろ監査法人の社員として公認会計士以外の者が入ってくるとなると、いろんな意味で不透明化をするといったご指摘がございました。そういう意味で、社員資格についてどう考えるかといったご議論がございます。
また、監査法人の財務内容については現在公開することにはなっておりませんが、この公開についてどう考えるのかといった議論。
それから(5)ですけれども、「監査法人の署名のあり方」という点については、現在監査法人名の記名と、それから関与社員の署名捺印というものが必要となっておるわけでありますけれども、この点については監査法人としての責任と、そして実際に業務を執行した関与社員の責任、こういった所在を明らかにするといった観点から、関与社員の自署押印といったものの必要性、そういうふうなことを中心として、関与社員名というものをどう位置づけるのかといったご議論がございます。むしろ監査法人の成り立ち自体がパートナーシップということで、前提として組織監査ということを考えていくと、監査法人名だけでの署名とすべきじゃないかといったご指摘もございましたし、他方、当然それは個人が行っているのであるので、個人名をなくすということになると、これは責任の所在を不明確にするといったご指摘もございました。ここは有限責任の導入の議論と密接に関係をしてくるところだと思います。
それから、(6)でございますけれども、例えば税務業務との関係で、現行の監査法人は税理士業務を行えないわけでありますけれども、こういったものについてはむしろ公認会計士の名称や監査法人の名称をもって税務業務を行うようにすべきではないかといった意見もございますし、逆にそういったものとあわせて業務提供を行うこと自体が、冒頭も触れましたけれども監査法人の独立性の確保との関係で問題になるのではないか。そこには当然峻別があってしかるべきであるといった議論。
また、自然人である個人については当然複数の異なった資格を持ち得るわけであって、これは当然であるけれども、法人については特定の目的のためにつくられているものであるので、専ら監査法人は、これは監査業務を行うといったところに存在の意義が認められ、そこに本旨があるのではないかと、そういったご指摘もございました。
このほかにも、(7)ですけれども、監査法人の活動をめぐってのいろいろな手続を中心として、広告の規制について、これは虚偽や誇大広告といったものを除いては、規制は廃止をすべきではないかというご指摘を始めとして、会則の記載事項については、例えばその中に標準報酬規定というものが盛り込まれているわけでありますけれども、こういったものについては削除をしてもいいのではないかといった議論がございます。
また監査日数・監査報酬について、特に現行ではこれらの規定がないわけでありますけれども、これを何らかの形で開示をするということが適切ではないかといった指摘がございました。
ただ、監査報酬との関係では、監査報酬だけではなくて会社の内部監査の、例えばグループの人数であるとか、そういったものも開示していかないと、監査報酬が多い会社というのがリスクアプローチの観点から質が悪いというふうにとられてしまうのではないかといった、そういうご指摘もございました。
また、監査報酬の開示というものは、コーポレートガバナンスの観点から取締役あるいは監査役の報酬の開示と同列に扱われるべきものではないかといったご指摘もありましたので、こういった課題については、そういうコーポレートガバナンスについての情報の開示とあわせて議論をすべきではないかといった指摘もございます。
また、「監査法人の会計年度」これは3月と法定されているわけですけれども、弾力化すべきではないかといった指摘がございました。
以上が監査法人のあり方をめぐっての論点であります。最後の5ぺージ目でありますけれども、これは「監視・監督機能の強化」という点でありますが、資料のアメリカの企業会計改革法にまたちょっとお戻りをいただければと思いますけれども、今回のアメリカの法律では、先ほど来触れてまいりました監査法人の独立性の確保と並んで、監査を行う監査法人に対する監視体制を強化をするということが強く打ち出されておりまして、このために新しい機関、PCAOBというものが設置され、そしてこのPCAOBが、この「権限等」というところに書いてございますとおり、登録をまず監査法人に対して義務づけをし、そして監査の基準、倫理規則というものをSECの承認を経て策定をするというふうになっておりますし、また懲戒処分を執行をする。そして大手に対しては年1回、その他に対しては3年に1回という形で調査を実施する、こういった権限を持つ新しい機関が設立されるというふうになっておるわけであります。
翻りまして、我が国での現状、それからこれまでのご議論でございますけれども、5ぺージ目に戻らせていただきますけれども、まず品質管理レビューという形で公認会計士協会が組織としての品質管理、それから個々の監査業務、こういった品質管理を現在チェックをされておられるわけであります。
また、公認会計士協会では監査事務所外の公認会計士に審査担当員という形で審査を委託するというふうなことを通じて、監査証明業務に対する内部管理あるいは審査体制というものを充実・強化するといったことに取り組んでおられるわけでありますけれども、こういった品質管理レビューの位置づけを、この平成11年からの実施の実績などもどう評価をして位置づけていくのかという点は、一つ議論の前提としてあろうかと思います。
そして、その上で(2)でありますけれども、「公認会計士協会による監視・監督機能のあり方の問題」と、それから(3)「行政による監視・監督機能のあり方」というふうに大きく分けることができるのではないかと思います。
そもそも公認会計士協会は公認会計士の強制入会制になっておりまして、こういうステータスのもとで、また法律に基づいてこの公認会計士協会が、一定のコントロールのもとに置かれているわけでありますけれども、それを前提として、そこが行う監視・監督という点について、ここに書かれておりますように処分の透明性というものをさらに向上させていくべきじゃないかとか、あるいは個別事案の公表、それから財務状況等の公告の義務づけ、その点については、公告は官報の公告などされておられるわけでありますけれども、こういったものをさらに一層充実をさせていくべきじゃないかといった議論がございます。
そして最後に、行政のかかわりでございますけれども、まず公認会計士審査会は、ご案内のとおりこの公認会計士の制度について、懲戒処分に関する調査審議、それから試験を行うために設けられている機関でございます。会長は内閣総理大臣の任命によって、現在この部会の部会長を務めていただいております片田部会長にこの会長を務めていただいているわけでありますけれども、この公認会計士審査会というものの機能のあり方を、この監視・監督機能の強化といった議論の中でどのように位置づけて考えていくのかという点が一つの論点になろうと思います。
またご案内のとおり証券取引等監視委員会については、その機能、体制の充実強化ということに日々努力をして取り組んでおるわけでございますけれども、この証券取引等監視委員会との連携というものを図りながら、この監視・監督機能というものをどう位置づけていくのかという点も大きな論点だろうと思います。
そして、現在罰則という点については、公認会計士法上、それから証券取引法、商法特例法といった観点から罰則が定められているわけでありますけれども、こういった点をどう考えるのかといった点も論点になろうと思います。アメリカでは、この捜査妨害で書類を破棄をしたり改ざんをするといったときに、今回の企業会計改革法では、最高20年の禁固刑という形で罰則を引き上げておりますし、会計士については監査書類を5年間保存をする、故意、悪意で違反をした者については罰金や禁固刑ということで、今回の法律の中でも、この公認会計士監査の観点から罰則の強化というものが一部盛り込まれております。そういうことも参考にしながら、この罰則の強化の問題というものをどう考えていくのかという点が一つあろうかと思います。
また、懲戒処分についてですけれども、現行、監査法人などに対する懲戒処分については、行政処分として行われているわけでありますけれども、こういったものを多様化をしていく、それから特に自主的な規制の中で行われている処分との関係をどういうふうに考えていくかということを当然視野に入れて検討する必要があるのではないかといったご議論がございました。
大体以上、細かい点にも及びましたけれども、これまで平成12年の取りまとめとして指摘されております点と、それからワーキンググループの中でご指摘をいただいております点、繰り返しになりますけれども、今日すべてをご紹介ができませんので、個々の議論をこれからワーキンググループで深めていただくに当たりまして、そういったものをもう少しきちんとリファーをさせていただきながら、事務局としての一つの考え方をお示し申し上げたいというふうに考えております。今日はこの部会の場で、これまでのご議論を踏まえながら、大きな論点としてまだこういう点が不足をしておるといった点、あるいはこれらの論点の中で特に重点を置くべき点、あるいはその際に私が先ほど来申し上げてご紹介をさせていただきました点についての、特にどういった視点から本件を取り上げていくかという点ということで、まずこの部会での委員の皆様方のご意見、ご指摘というものをいただいて、そしてそれを踏まえる形で今後の論点の集約作業を事務局としては進めさせていただきたいというふうに考えております。
以上長くなりました。
- ○ 片田部会長
-
どうもありがとうございました。
ただいま事務局から本件の制度見直しにかかわる検討項目について、それぞれの項目について、従来のワーキンググループにおけるご議論あるいは論点について、かなり詳細に説明がございました。
ただいまの事務局からの説明に関しましてご質問、ご意見がございましたらいただきたいと思います。特に事務局から説明のありました5つの検討分野についての具体的なご意見、あるいは検討項目に追加すべき事項等がございましたら、あわせてご指摘をいただきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。ご自由にご発言いただきたいと存じます。
- ○ 江頭委員
-
監査制度ワーキンググループの座長をいたしておりますが、大変委員の皆様に熱心なご議論をいただいているところであります。
今事務局がまとめられました検討項目を拝見して、個人的に感じている点を申し上げたいと思います。
監査制度ワーキンググループの課題は、帰するところ監査の独立性の確保、もうちょっとはっきり言えば公認会計士および監査法人の経営者からの独立の確保ということだろうと思います。その独立性の確保といった場合、これは実は2面あると思っております。
第一は、公認会計士・監査法人には発行体経営者との間の力関係において対等あるいは対等以上の力があるのに、癒着しているといいますか、投資家との間で言えば利益相反があると言ってもいいかもしれませんが、そういう状態にある形で独立性が欠けている場合であると思います。
アメリカの今回の企業会計改革法で問題になっているのはそういう面が主ではないかと思います。例えばエンロン事件で言えば、アーサー・アンダーセンは結構力はあるのだけれども、エンロンの経営者と癒着をしており、結局そういう形の独立性が欠けていたということなのではないかと思います。したがって、米国ではそれに対する対処ということを中心に考えられていると言ってよいのではないかと思います。
日本の場合は、その問題はもちろんないわけではないのですが、それだけではなくて、経営者との力関係において、これは相対的に、米国に比べてということですが、力関係において弱いということが正直言ってあると思います。こういう審議会の場等でしょっちゅう報酬が安過ぎるという話が出てくるのは、力関係において弱いという面があるのだと思います。そういう面で独立性が欠けているというところがある。
何でそういうことになるのかということですが、これはかなり根深い問題ではないかと思っています。というのは、監査制度ワーキンググループでもレジェンド問題について相当時間を割いて議論いたしましたけれども、そのときに私の印象に残っております話は、どうしたらレジェンドがとれたかということをある委員が紹介され、結局は監査の時間等をうんとかけさせて、報酬もうんと払って、それだけの監査をさせてようやくレジェンドがとれたということだったと思います。
要するにアングロサクソンの物の考え方というのは、内部の人間がやっている限り信用しない、外部の人間がそれだけのコストをかけてやったということがあって初めて信用するというものである。そういう風土があるから公認会計士・監査法人の経営者に対する力関係も強くなってくる。投資家の期待があると言ってもいいかもしれませんが、そういう世界であるのに対して、日本の場合は、公認会計士制度も言ってみれば上から与えられたものであって、証券取引法ができたからこの制度はつくらなければいけないという形でできてきた。
日本の場合、そういう制度が実際多いのだと思います。例えば社債発行市場を自由化するためには格付機関というものが必要だ、だからつくろうというので大蔵省が音頭を取ってつくらせた。至るところにそういうことがあるので、かなりこの力関係の話は根深い問題ではないかと思っております。
しかしながら、そうした面の改善もできるところからやっていかなければいけないわけで、その場合に重要なことは、監査法人等の組織のあり方等も重要でありますが、1つは、そういう公認会計士あるいは監査法人直接の話ではなくて、その周辺の制度のあり方ということが力関係の上では重要なのではないかと思います。
具体的には、この検討項目で申しますと1ぺージ目の(4)で発行体との関係というのが書いてありますが、この辺の問題が1つは重要なのではないかと思います。制度的には独立性を確保するために、現在でも相当なものがあるわけです。現在でも会計監査人の選任については、監査役会の同意が要るわけでありまして、新しい制度によればそれは監査委員会の同意が要る。そういう形で経営者からの独立性が図られることになっているのですが、問題は運用であると思います。
以前私どもの学会で監査論の先生をお招きして監査問題をシンポジウムで議論したことがあるのですが、その先生がそのとき言われたのは、自分の教え子の公認会計士はしょっちゅう監査役と議論している。会計方針の決定は経営者の専権であるから、公認会計士は口を出すべきではないと主張する監査役としょっちゅうやり合うというような話をされておりましたけれども、そこに見られるように、制度よりもむしろ運用の点がこの発行体との関係で重要なのではないか。
それから先ほどの責任の問題、監査法人の責任のあり方の問題というものも、こういう制度にすることがそういう監査法人・公認会計士と経営者との力関係というものにどういう影響を及ぼすかというような観点から考えていくことが必要なのではないかというふうに考えております。
以上であります。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございました。
ほかにございませんでしょうか。加古先生、試験制度のワーキンググループはいかがでしょうか。
- ○ 加古委員
-
試験制度ワーキンググループの座長を務めさせていただいております加古でございます。
きょう「人数の拡大と質の向上」ということで、3番目の論点としてかなり詳しい議論がなされております。ただ、これは項目としてこれらの項目が挙げられてはいますけれども、目下のところ全く解決のめどがついていませんで、まさにこれからの課題であるわけです。一層の審議を進めていく必要がありますが、ただいまの江頭委員のご発言は、私どもの方の試験制度とも密接に関連がありまして、先ほども話に出ましたレジェンドの問題ですが、各国に比べて日本の監査の関与する人数が少な過ぎる。外形的にもごく少数の監査では十分な監査ができないのじゃないかという会計に対する不信感、監査に対する不信感がある。これを払拭するためにも監査人の人数をもう少しふやすべきじゃないか、こういう議論があるわけで、このレジェンドとの関連において監査人の数の問題を一層考察していく必要があるのじゃないかというふうに考えております。
それから、これもまさに江頭委員と私、同感でございますが、監査のあり方、独立性も監査の問題ですが、監査の側からの視点は十分論点として掲げられているのですが、監査を受ける側の企業責任の問題、これを大きな論点の1つとして取り上げていく必要があるのではないかということであります。
アメリカの改革法でありますが、ここではまさに2ぺージ目の3番目でありますが、「企業責任の強化」という問題が論じられております。罰則を強化するなどということも1つの問題でありましょうけれども、内部統制組織の一層の充実のためにも企業責任に目を向けていく必要があるのではないかというように考えております。
そこで、大項目の1つとして、発行体といいますか、被監査会社の側についての検討も重要な検討の課題になるのではないかというふうな感想を持っている次第です。
以上です。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございました。
ほかにございませんでしょうか。千代田委員よろしくお願いいたします。
- ○ 千代田委員
-
今ご説明いただいた資料のタイトルは「公認会計士制度見直しにかかる検討項目について」ということですが、当然のことながら、公認会計士制度というのは、なぜこういうのが問題になるかというと、それは我が国の財務ディスクロージャー全体をやはり高めていくという視点からこの問題は取り上げられているということは当然のことであります。とはいえ、その中で中心的な課題としてこれを設定しているわけですけれども、その意味ではきょういただいたまとめの骨子の中で、1ぺージには、1つはやはり発行体との関係というのがここに指摘されております。最後のぺージにはやはり行政との関係もここに出てきているわけですね。それをこのテーマが中心的なものとしては公認会計士、それから監査法人、それから日本公認会計士協会、それを中核にしながらも発行体との関係、行政との関係という意味で今までの議論というものを整理され、まとめられているという意味では、検討の課題としては適切な課題ではないかな、失礼な言い方ですけれども、そう思っております。
ただ、いつも思っているのですけれども、そういうディスクロージャー制度の中で、証券取引所というのはこういうものに対して一体どういう見解なのか、あるいはどうあってほしいのかという点が、何かご意見なり、そういう見解なりを聞きたいなと思っているのは私だけなんでしょうか。
そんなところです。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございました。
富山委員いかがですか、公認会計士の立場で。
- ○ 富山委員
-
先ほど江頭先生から監査法人の立場は非常に弱いという指摘を受けまして、非常にがっかりしているところです。我々も多分数年前にはそういうふうに言われてもしようがない時代があったと思いますが、いろいろな不祥事を経験しまして内部の品質管理あるいはリスク管理を非常に強化してきています。確かに担当の関与社員個人としては非常に弱い立場だと思いますが、関与社員1人で対応するわけではなくて、内部の審査を受けて、そこで決められたことはやるしかないので、そういう意味で組織全体で動いていますから、決してそんなに弱い立場で動いてないつもりだということを申し上げたいと思います。
- ○ 片田部会長
-
泉本さんいかがですか。
- ○ 泉本委員
-
この論点はどうしても監査の強化それから監査法人の規制とか、今そういう方にいろんな話の中心が行っちゃっているのですけれども、私は試験制度の方に参画させていただいていて、やはり公認会計士をふやすには受験生をふやすという、そういう方向で行かなくちゃいけないのですけれども、余りにもきついことばかり言われると新しい受験者がふえないのじゃないかなというところを1点危惧しております。何のためにこういうところを強化するのか、いい制度をつくるという、そういう心を入れていただいた制度づくりをしていっていただきたいなということが1点ございます。
- ○ 岸田委員
-
前も申し上げたことで、繰り返すのは恐縮なんですけれども、私、商法の立場から申しますと、ことしの5月に商法が改正されまして来年から施行される予定なんですけれども、その中で計算書類等の規定が変わりまして、省令化されて、商法と証券取引法の規制を統一しようという動きがあるわけでございますけれども、この監査につきましても現在では証券取引法の監査と商法上の監査という二重の監査を行わなければいけないので、その間の調整はどうかという、いろんな問題がございます。
そして、今度の商法改正でみなし大会社というか、商法上の大会社ではなくとも監査法人の監査を受けることができるようになったわけでございますから、ここで申し上げるのは適当かどうかわかりませんけれども、この機会にもし抜本改正ならば、商法と証券取引法の監査の統一と申しますか、調整というのを図られてはいかがかと存じます。
以上でございます。
- ○ 脇田委員
-
脇田でございます。
企業会計審議会でこの1月に監査基準の大幅な見直しをいたしました。それだけに私の立場からは、その担い手である会計士の方々の充実ということが非常に望まれるわけでございます。この「人数の拡大と質の向上」のところの非常に局限的なことでございますけれども、「公認会計士の人数の拡大」ののア、イ、ウがございまして、そのウのところで「専門職大学院など教育機関との連携」ということが書かれております。
私の立場で今思いついたところを申し上げたいのですけれども、先ほど参事官もおっしゃいましたように、法科大学院が現在つくられております。会計大学院という声も聞いております。まず第1は、大学における会計教育というのが、いわゆる経済学部や経営学部、商学部の中での会計教育の位置づけが、法科大学院の基盤とは違うようにも思っております。それは、法曹人を養成することについて、法学部は非常に畏敬をもって情熱を傾けられる。そしてまた国家的な政策として進めていられる。その点が公認会計士の場合はちょっとが違うのではないか。あるいはそういう制度になじまないと思いまして、思いついたところを申し上げたいと思います。今、公認会計士の養成につきまして、まず、文部科学省の設置基準によって、ここにご提案になっておりますように専門職大学院をつくる、これは前提として必要だろうと思います。専門職大学院の中に、例えば会計専門職養成課程といったようなものを設置をするということがまず第1段階にあるだろう。
第2段階といたしまして、その会計専門職養成課程もしくは公認会計士養成課程でもよろしいですけれども、そういった専門職養成課程の適格性について評価をする。そのための会計専門職教育評価機構というようなものを設置いたしまして、その大学院が設置している課程が公認会計士養成教育として適格なものであるかどうかということを判定する。そしてその判定を受けた養成課程の修了者につきましては、例えば2次試験修了者とみなすとか、あるいは補習期間を短縮するとかという形で3次試験に合流されていく。このような形の教育課程での会計士の養成という方向を探るのも1つなのではないかと思っております。
そして、大切なことは、この教育評価機構というのをつくる場合に、例えば1つの例でございますけれども、日本公認会計士協会などが主体となって基金をつくり、そういった評価機構をつくる。そして各大学院における養成課程の評価を行う。と同時に、これは公認会計士試験という国家資格の試験を受けるわけでありますから、当然認証が必要だと思います。公認会計士審査会、あるいは金融庁の認証を受ける。このような形での会計士試験の受験の道を広げていくという方向も1つあるのではないか、一言述べさせていただきました。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございます。
どうぞ、山浦委員。
- ○ 山浦委員
-
せっかくの脇田委員のご指摘であるし、私自身も今の会計大学院なり専門職大学院のプロセスを経て会計士資格者を育てていくということに対しては大賛成であります。
実は少し国際的な動向を申し上げますと、先般国際会計士連盟、IFACですね、そちらが6月に公認会計士の資格取得者の、資格取得前教育のプログラムに関する国際基準を公表しております。これは単に会計の知識・技術だけではなくて、例えばコミュニケーション能力であるとかエシックスの問題であるとか、そのほか経営管理一般、それから経済学とか、非常に幅広いカリキュラムを求めております。
そういうカリキュラムの中身を見ますと、今公認会計士が監査人として企業に赴いて監査をする、そして高度の監査判断あるいは会計判断をするに当たりまして、そうした資質が非常に重要である。それを育てるための今の監査法人の、例えば会計士補をジョブインターンという形で受け入れて3次試験を合格させるという、そのプロセスでは到底足りない。やはり高等教育機関としての役割というか、教育に関する役割というのはこれから先もっと高まるのじゃないかと思います。
我々大学人もその点については非常に、今般の中教審の専門職大学院の構想を、一種の啓発されたような形でありますけれども、ある意味での教育の現場での危機感も持っております。したがいまして、もし何らかの形でこの制度とリンクさせることができるのであれば、大学の方もこういういった会計に関する専門職教育については非常に積極的に対応するのではないかと思っております。
ちなみに、今国際的な動きということをお話しましたけれども、米国では2003年の公認会計士の試験から 受験資格として150単位を求める。というのは、通常学部レベルでは124から 128単位ぐらい、これが平均的な学部取得での単位数ですけれども、それ以上の教育機関での単位を求めるということでありますので、結局大学院のカリキュラム、れを単位として得て、その上で 150単位を前提にして米国CPAの資格試験を受ける、こういう仕組みになっております。これはカナダであるとか、そういうところでも同じような仕組みがとられております。いずれにしても、ヨーロッパでは大学の試験日が違いますのでちょっと制度的には違うのですけれども、諸外国においてやはり公認会計士の資格試験の制度改革というのは非常に急であります。この点やはり、今般もし入れることができればご検討いただきたいと思います。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございます。
中條さん、先ほど挙手しておられました。
- ○ 中條委員
-
少し漠然としているかもわかりませんけれども、この監査制度をいろいろ変えていかなければいけないということが社会的にどこまで認知されているかという問題。例えば今加古先生が企業体の問題を取り上げられましたね。企業体の方で、例えばファイナンシャルディスクロージャーの重要性がわからない企業が今いるとは思わない。例えばIRの重要性を認識するというふうな、そういう問題も随分出てきた。しかし、そのIRとかファイナンシャルディスクロージャーの前提になっている財務諸表の質の問題についてまで企業が一生懸命考えているという状態にまでちゃんとなっているかどうかということ。
ここのところを変えないと、例えばアメリカ系の監査法人の話なんか聞きますと、日本の監査というのはやはり、監査報酬は10分の1ぐらいと言われますよね。ここのところについてどうやっておくのか。それがないで会計士という職業に対する魅力がちゃんとついてくるのか。
そこのところが、やはり経済界のところを部会長が音頭を取って、例えば会計基準委員会すら財政的に困窮しているという話を聞く。そういう問題も含めて経済界のこの問題に対する認知度、支援体制を強化するという手だてを組んでおかないと、ごくクローズドの中でディスカッションが進んでいる。投資家サイドも、要するに企業体、経済界、いわゆるそういうところの認知度をいかに上げていくか。今の現実の監査法人と企業とのかかわりが、監査法人の代表社員が大企業において社長と本当にディスカッションしていますかとか、せいぜい経理担当の役員レベルでとどまっている状況じゃありませんかとか、その辺も含めなければいけないのではないかと思うのですが、ですから経済界の会計と監査、これをセットにしたものについての認識を高めるために何ができるのか。これは部分的には制度が変われば企業体が影響を受ける、それはあるのですけれども、そういう状況を変えようというもっと能動的なアクションは何かということを考えておかないとうまく転がっていかない、そういうおそれをすごく感じますね。単なる漠然とした意見ですけれども。
- ○ 片田部会長
-
それぞれ貴重なご意見を伺っております。まだほかにご発言の方もおられますので、今いただいているご意見を今後の審議に反映していくとして、もう少しご発言をいただきたいと思います。
関委員。
- ○ 関委員
-
今の中條さんの意見、大変私は大事な意見ではないか。かなり本質的な議論で、その議論をなしにはなかなか進めないのじゃないかという感想を持ったのですが、私は試験制度の方の部会で、かなりこれは大蔵省時代から議論してきたのですけれども、2つぐらい感想がありまして、それを申しておきたいと思うのです。
やはり世の中が相当変わってきて、企業会計をめぐる環境が変わってきたので、会計士に求められる役割というか、期待も大きく変わってきているという、そこなんですけれども、そこに照らして、本当に公認会計士の質というのはどうなきゃならないのかという議論が十分できてないのじゃないかという気がしているのです。量の議論は相当したのですけれども、本当にどういう質が求められているのだ、どういう能力と知識が求められているのだということですね。
例えば今の中條さんの話で言うと、企業経営者と本当にダイレクトにきちっと話ができるだけの資質と能力が求められているというようなことであれば、きちっとそれをスペシファイしなきゃいかぬと思うのですね。そこのところの議論を私はもう一度きちっとしないと、そこを特定すればかなり後は解けてくることは随分あると思うのですね。
ですから、どんな要件を満たさなきゃいかぬのだ、それに対して、これも非常にやりにくくて、やり方は難しいと思うのですが、今の公認会計士集団というのは一体評価としてどうなるのだ、十分なのか不十分なのか、量の面じゃありませんで質的な面ですよ。本当にどう評価していいのだというところを、これは非常にやりにくくて、一遍くぐり抜ける必要があるのじゃないかなという印象を私は持っています。それができるとすっといく。これは恐らく業界団体の人自身では評価できない話だと思います。これが1つ。
それからもう1つ、量の問題は、さっきも羽藤さんがらいろんなお話がありまして、量の問題は、いわゆる公認会計士協会といいますか、協会のニーズというか監査の必要性という、今の延長線上の議論で、いわば公認会計士協会として採用規模は一体どうするかというたぐいの議論だと私は思うのですけれども、ですから食えるとか食えないというような話もあるわけで、これで量を決めるという議論で果たしていいのかどうかという、じゃそういう考え方でなくて、違った原理で決めるとすると一体それは何だという、私は公認会計士協会で出ている採用規模ということから決めるという、その考え方に対する評価というか、それでいいのかどうか。この量の話はそこが1つのポイントになるのじゃないかなと思って、そこは十分に整理されきれてないと思うのですね。
私はこの試験制度についてそういう印象を持っております。以上です。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございました。
渡辺委員。
- ○ 渡辺委員
-
今のご発言とも関連するのですが、公認会計士の方が、なったのに仕事がない、あるいは生活できないということを、僕は金融庁が考える必要ないと思うのですね。そもそも何で証券取引法に関連して公認会計士制度、それから試験というものを国費を使って、要するに税金を使ってそういう制度をやっているかというと、証券市場をちゃんとするためにということですが、もっと具体的に言うと、機関投資家とかあるいはアナリストを守る必要なんかないのですね。彼らはプロですから、どこかの会社がうその会計報告を出して、それで損をしちゃった、そうするとお前の責任だということですから、お前はプロじゃなかったのだからそのファンドマネージャーは首になる、こういう世界です。これに対して国が制度をつくってちゃんとした会計報告を出させるという必要は僕はほとんどないと思うのですね。
そうじゃなくてだれを守るのかというと、町を歩いているおじいさんとかお母さんとか、そういうプロでない、普通の人たちも株を買ったり売ったりしてもらいたい。だからそういう人たちにすべて会社を訪問して分析をして株を買いなさいというわけにはいきません。だから国が、政府が税金を使って、そういう人たちが安心して売ったり買ったりできるような市場にしましょうということで、金融庁あるいは我々もそうかもしれませんが、税金でこういう制度を維持する。
そういうことを考えると、公認会計士になった方が仕事がある、あるいは食える食えないということを税金を使って我々考えているわけじゃないので、そういう観点から見ると、需給調整というのは、法律を全部見たわけではないですけれども、公認会計士関係の法律を見ても、公認会計士の人数については需給を調整するという条項はないわけですから、それは今回のというか、これからの審議で考える必要は私は全くないし、もしそれを考える必要があるということであれば、我々の審議会委員の側もそうですが、金融庁の側もそういう裁量というのは一体どこから出てくるのかということを明確にして次のステップに進むべきだというふうに思います。
- ○ 高橋委員
-
先ほど羽藤参事官から市場改革促進プログラムのご説明がちょっとあって、その中に公認会計士制度の位置づけがあるというご指摘であって、全くそのとおりだと思います。
今証券市場改革促進というのが、先ほどのプログラムのご紹介にありましたように非常に多方面からアプローチしていく大事なときだと思います。仲介業者あるいは市場の役割が大事であるということで、私どもとしても大変これを重く受けとめているわけでございますけれども、そのときに、やはり市場とか仲介業者と同様に大事なのは、そこに出てくる商品が国民の魅力のある、あるいは安心して購入できるようなそういうものであるということは言うまでもないことであります。そのために、そういう観点からこの会計士制度あるいは監査制度の重要性というのが大事だと思います。また取引所の上場基準とか、そういうアプローチも大事だと思います。
と同時に、先ほど来ご指摘がありますように、発行体の方がどういうふうに受けとめるのだという中條委員のご指摘もあったわけですけれども、そのいろんなアプローチがあると思いますけれども、直接発行体がどういうふうに対応すべきかという、発行体の企業責任というような切り口というのもあっていいのかなという感じがいたします。もとよりこういう監査制度から入っていくアプローチ、取引所の上場基準とか、あるいは取引所の上場審査とか、そういう方から入っていくアプローチはあると思いますけれども、直接企業責任という切り口、これは具体的に今どういうふうにするということではありませんけれども、考え方としてそういう制度もあっていいのかなという感じがいたします。
- ○ 片田部会長
-
内田さん、お願いします。
- ○ 内田委員
-
先ほどの中條さんのともつながるのかもしれないのですけれども、監査制度というもの自身の、米国では多民族が集まっていろんな方が入ってきている中で、自己で正しいと言ってもそれは認められないということに対してだれかに見ていただく。それも専門的な方に見ていただいて、自分の責任を、いわゆる受託責任のアカウンタビリティー、説明責任としてやっているものを、自分の説明しているものをそれによって確認していただくという、そのもともとの機能、ですから文化的にも土壌的にもそういう多民族国家の中でそういうものが根づいていた。
ただ、日本の場合やはりそこの部分で、社会とは言わないですけれども、仲間の中でやっている。ですからそういう意味でも経営者自身の自覚というものがまず必要であって、経営者が今実際に企業を証券市場から資本調達してきて、それの資本を受託して経営を行った結果をディスクロージャーしてやっている。それはやはり経営者の倫理観が高い経営者がそれを行って、こういう形でやりました、その結果こうなりますという報告をしたことを、必ず第三者によって監査をすることによっていわゆるアカウンタビリティーをディスチャージしてもらうという、この基本的な構造をやはり徹底していただく。
そうなってくると、経営者自身が自分の経営責任を遂行していく中で会計士というものが機能として切っても切れないものになっている。ですから今日本の社会での監査というのはどちらかというと、極端な言い方をすれば必要悪みたいな形で、痛くもない腹を探りにきている人たちで、早く帰ってもらえばいいみたいな形になっているのですけれども、本来であれば経営者が経営人、会社としてそれは受け入れて、それを見てもらって、ちゃんと自分たちの遂行責任をきちっと全うするという意味、そこが確立されてくると、経営者から会計士に対する要求度というのが高まってくると思うのですね。もっとこういう形で監査をしてそれをきちっと報告してくれと。それによってやはり質であるとか量的な要求度というのは、会社が、発行体側から本来出てこなきゃいけない部分という問題が非常に根本的にあるのじゃないかなという感想は持っております。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございます。ぼつぼつ予定の時間には参っておるのですけれども、まだ追加のご発言ございましたらどうぞ。山浦先生。
- ○ 山浦委員
-
今回の見直しの検討項目について、若干項目を加えていただきたいところがありますので、ちょっとご提案したいのですけれども、今まで幾つかのお話には出てきたのですけれども、企業責任のあり方、これは大事な項目でもありますし、最初の1ぺージのところの「監査のあり方」のところに(4)という小見出しでありますけれども、できればやはり、これは何らかの形で大きな項目として挙げる必要があるのではないか。
例えば発行体の虚偽表示に関する責任の問題というのは、例えば証券取引法なり商法なり、さまざまの法律等にもかかわってきますし、これはやはり独立して検討する必要があるのではないか。
それから、一番最後の5ぺージなんですけれども、「監視・監督機能の強化」というところは、大きく分けますとこれは自主規制のあり方と、それから行政のあり方、こういう2つですけれども、できればこれは2つの大項目として挙げていただけないかと思っております。
これまで大蔵省時代からこのワーキンググループについてずっと検討を重ねてきたのですけれども、かなりの自主規制に関する改善がなされております。会計士協会の方もそれぞれ努力をして、自主規制のための品質レビューとか、あるいはCPEであるとか、そういった制度改革を進めてきているのですけれども、やはりこれからもこれはもっと全うというか、強めていっていただきたいと思います。
それから、もう1つは、常にこの種の席で問題になってきたのは、行政の監督がもっと的確なもの、あるいは強化されたものがあっていいのではないかという問題が常に指摘されてきております。このごろ日経新聞等で米国の規制機関に相当するものをつくったらどうかとか、そういった議論がありますけれども、そういう議論はまた別としまして、いずれにしてもやはり行政の方がディスクロージャーの監督あるいは監査についての何らかの関与、これはあってしかるべきだと思いますし、それだけ大事な項目ではないかと思っております。
それから最後に、これは千代田委員の方からご指摘だったのですけれども、証券市場は実は、特にアングロサクソン系の証券市場の場合には、証券取引所自体が非常に大きな役割を持っております。証券取引所自体も、やはり自己の証券取引所に登録された企業に不祥事がありますと、その証券取引所全体が大きな影響を受けるわけでありますね。
例えばイギリスなんかでは、もともと19世紀から、ロンドン証券取引所というのはまさに自己規制というか、ギルド集団でありまして、そのころから自分の市場に登録をする企業に対してはもっと積極的にコーポレートガバナンスのあり方から何から、非常に関与してきているわけですね。
実は日本の証券取引所というのはそういった意味での力が見えないのですね。何かそういう存在があるけれども、単なる取引の場所という印象しか受けません。もっと積極的に証券取引所も、自分のところに登録している企業はどうあってほしいのか、どういうディスクロージャーしてほしいのか、あるいはどういう監査をしてほしいのかという、こういったことについてもっと積極的な提言があっていいと思うのですね。そういうことも含めまして、できればこれを大きな項目として挙げていただきたい。
以上でございます。
- ○ 片田部会長
-
ありがとうございました。ただいま山浦先生からは、検討項目の追加として、1つは経営責任のあり方の問題、それから監視・監督、自主規制的な部分と行政の監督を別立てにしてというふうなお話、それから最後は証券取引所の役割ですね。私個人としては全部非常にリーズナブルなご提案であると思っております。これから事務局の方で今後の検討スケジュール等の説明もいたしますが、その中に含めて取り上げていきたいというふうに思っておりますので、ご了解いただきたいと思います。
それじゃ、事務局の方から今後の検討スケジュールに関しまして説明してください。
- ○ 羽藤企業開示参事官
-
今いただきましたご意見も、それぞれそういう方向でこれから、この資料の3にございますけれども、年末までのスケジュールの中である程度ウエートをつけながらご議論をお願いできればというふうに思っておりますし、またそういう形で我々事務局としても用意させていただこうと思います。
特に、資料の3をご覧いただきましておわかりいただけますように、ちょっと日程がタイトにはなりますけれども、私どもとしましてはできればこのワーキンググループということで、これまで加古先生、江頭先生にそれぞれ座長を務めていただいておりますけれども、今日のお話でもございますように、試験制度、それから監査、これはそれぞれ論点としてここまでこういう形で項目としては括らせてはいただいておるわけですが、密接不可分な議論にもなっておりますものですから、合同の会合ということで年末までにできるだけ時間を、お忙しいところは大変申しわけないのですが、いただきながら、この大きな項目に沿って、特に10月の3日には「監査のあり方・独立性の強化」とありますけれども、今日のご指摘も踏まえて考えますと、例えば発行体、経営責任の問題、企業責任の問題といった当たりに少しウエートを置きながら論点も整理をするということも重要なことではないかと思っておりますし、またそれぞれのテーマに従いまして、「人数の拡大」それから「監視・監督機能の強化」についても、いわゆる自主規制、そして行政の関与の仕方、ただ自主規制やあるいは行政の関与の仕方であれ、そういう前提となるのは一体どういった業務に対してというふうな議論があって、その上での行政の関与の仕方あるいは自主規制をどう評価するのかということになってくると思いますので、それに先立ちまして、この独立性の強化であるとかあるいは監査法人のあり方であるとかいったところの議論があった上での議論ではないかというふうに思っております。
そういうふうに考えておりまして、ワーキンググループを11月の下旬ぐらい、あるいは12月の上旬ぐらいにかけて、取りまとめをワーキンググループでまずしていただいて、そしてその取りまとめの中身をこの制度部会に報告をしていただくという形で集中的、精力的にご議論をお願いできればというふうに思っております。
またその過程におきましては、きょうもお話がありましたけれども、投資サイドといったところからのこの議論、あるいは企業サイドでどう社会的なニーズを高めるかといったご議論もございましたので、そういう観点からも、さらに分野的に広がりを持った、これまでの議論に参画をされていない方々にまた参画もしていただくことも一案ではないかというふうにも思っております。
そういう形でワーキンググループの合同会合を再開をしていただいて、年末に向けて我々事務局としても準備の方を急ピッチで進めていきたいというふうに考えております。
以上でございます。
- ○ 片田部会長
-
今事務局から検討スケジュールの説明がございましたが、かなりハードなスケジュールをお願いしたいということと、それから着地点といいますか、12月の2週、3週のことでご了解いただきたいという意味だと思います。それからもう一つは、この括弧内に書いてある検討項目のことは、本日の皆様方のさまざまなご意見によりまして、追加、ウエートのつけ方等につきましては今後検討いたしますので、表現不十分な点についてはお含みおきいただきたいというふうに思います。
この検討スケジュールにつきまして何かご質問、ご意見ございましたらご発言いただきたいと思います。――特にございませんようでしたら、終了の時間も近づいてまいりました。このスケジュールにつきましては、事務局から説明がございましたとおり、当初の5つの分野並びにそれに追加されるべき項目を含めて、検討スケジュールに沿った形でお願いしたいと思います。
また今後の議論につきましては、基本的に合同会議という形でお願いして、集中的、精力的な論議を深めていただいた上で、当部会にご報告お願いしたいと考えております。よろしゅうございましょうか。――それではご了承をいただきましたので、今後は年末に向けましてご多忙のところ大変恐縮でございますが、頻繁にワーキンググループの合同会合を開催させていただきまして、ぜひ委員の皆様のご協力を得て、取りまとめに向けた議論を深めていきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。
また、次回以降のワーキンググループの合同会合におきましては、今事務局からも触れましたが、きょうの皆様のご意見等々も含めて、新しいメンバーの参加も得ていきたいと考えております。第1回の当部会におきまして承認いただきました議事規則に基づきまして、新たなメンバーの参加も含めまして、次回以降のワーキンググループの合同会議の具体的な進め方につきましては、私、部会長にご一任をお願いしたいと考えております。よろしゅうございましょうか。――ありがとうございました。
それでは、会議の終了の時間でございますので、これをもって本日は終了したいと思います。なお、次回は、先ほどございましたように10月3日木曜日に当会議室で開催の予定でございます。
またこの後、記者会見を行いまして、本日の部会の方々の議論の様子をメディアの方々に紹介させていただきたいと思っております。
本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。これで終わります。ご苦労さまでございました。
(以上)