金融審議会総会(第9回)議事要旨

1. 日時:

平成12年12月21日(木)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館 共用第1特別会議室

3. 議題:

  • 第一部会について

  • 第二部会について

  • 金融の基本問題に関するスタディグループについて

  • BIS規制の見直しについて

4. 議事内容

<要点>

  • 第一部会報告「銀行業等における主要株主に関するルール整備及び新たなビジネス・モデルと規制緩和等について」が総会に説明され、同報告が貝塚(かいづか)会長から柳澤(やなぎさわ)金融再生委員会委員長に手交された。その後、柳澤委員長が挨拶を行った。

  • 「金融分野における個人情報保護・利用の在り方に関する今後の検討の進め方」が了承された。

  • (1)第一部会について

    • 蝋山(ろうやま)第一部会長より、第一部会報告「銀行業等における主要株主に関するルール整備及び新たなビジネス・モデルと規制緩和等について」の説明があった。説明の要点は以下のとおり。

      • 異業種の銀行業参入の動きについては、金融市場の活性化や消費者利便の向上等につながるものとして基本的には評価すべきとの共通認識の下、一方で、バーゼル銀行監督委員会の「実効的な銀行監督のためのコア・プリンシプル」等も踏まえ、銀行経営の健全性確保のための措置を議論してきた。その結果、銀行株式の一定割合以上を保有する株主を「主要株主」と位置付けて、当局の監督対象とすることが適当であるとの結論に至った。このようなルール整備は銀行業に対する信頼を高めることが期待される。ただし、ルール整備に際しては異業種の銀行業参入意欲を阻害することがないよう配意してきた。

      • 銀行の新たなビジネスモデルと規制緩和に関しては、金融取引におけるIT化の促進と消費者保護、銀行の支店に関する認可制の見直し、銀行の業務範囲の弾力化のための措置などについて幅広く議論を行った。こうした議論の中で横断的な金融サービスのあり方など、今後検討を行うことが望ましいとされた課題も存在している。

      • 保険業に関しても、銀行業における主要株主に関するルール整備や業務範囲などに関する議論はほぼ適用可能であると考えるに至った。なお、証券業についても株主をチェックする仕組みが必要との意見があったが、これに関しては今後の検討を望むこととしたい。

      • 本報告で具体的な提言を行っている事項については、金融庁にその速やかな実現を要請したい。

    • 以下のような質疑応答があった。

      • 第一部会報告中3(2)の「チェックの対象となる株主の範囲」のところで、5%超保有の株主は銀行経営への影響力のチェックの対象とし、20%以上(人的関係や融資等の取引関係等を通じて重要な影響を与えることができる場合は15%以上)保有の株主は「主要株主」と位置づけられ認可の対象となるとあるが、5%超株式を保有していて人も送っている場合には実質的影響力があるとするのか。

      • 単体で5%超保有の株主から、相応の影響力を及ぼしうるものとして行政によるチェックの対象とする。5%超保有の株主が「主要株主」と判断される具体的な基準については、企業会計の実質影響力基準を念頭には置いているが、今後検討を深めていきたい。

  • (2)第二部会について

    • 倉澤(くらさわ)第二部会長より、「審議状況の報告」の説明がなされた。

    • 「金融分野における個人情報保護・利用の在り方に関する今後の検討の進め方」について、金融審議会として了承した。

    • 以下のような質疑応答があった。

      • 個人情報保護基本法制の弱点として、適用除外が多いこと、事業者の「正当な利益」を害するおそれがあるときは例外となることがある。これらにより金融業から相当程度基本法の適用が排除されるおそれがあり、金融分野における個別法の検討が必要である。また、個人情報の第三者との共有について、個人情報の管理を本体で付随的に行っている場合、子会社や関連会社を通じて行っている場合、個人情報の売買のみを行う者に委託する場合があるが、この3番目の場合について実態を把握すべきである。特にインターネット上の売買について、まずは情報収集を行うべき。

      • 個人情報保護基本法制における適用除外項目を、金融分野にあてはめた場合に適切かどうかも踏まえて考えていくことも、「今後の検討の進め方」の中の「基本法制の各規定との整合性の確保」という文言に含意されており、金融分野において付け加えるべきことがあれば付け加えるということである。

  • (3)金融の基本問題に関するスタディグループについて

    • 貝塚(かいづか)会長より、スタディグループにおける議論の状況について説明があった。説明の要点は以下のとおり。

      • これまで、スタディグループにおいては、3回の会合が開催されており、第一回会合では、我が国金融システムの今後の方向性を展望していくためには、どのような事項をどのような視点・切り口・問題意識等で考えていくべきか、フリーディスカッションが行われた。その議論では、

        • マル1現状認識として、金融システム全体としてリスク負担が適切に行われていないのではないか、ビッグバンの開始から4年が経ったがマネーフローはまだ銀行部門から市場に十分に移ってきていないのではないか、銀行の収益性が低いのではないか、

        • マル2今後の方向感として、金融システムにおける市場の役割が大きくなっていく中で、機関投資家のエージェントとしての役割が重要になってくるが、そのガバナンスのあり方等が問題となってくるのではないか、金融セクターの寡占化・巨大化をどう考えるか、国際化の進展の中で、国際競争力の問題についてはどう考えるか、

        • マル3また、政策手段等として、今後のインフラ整備をどう考えるか、金融システムへの公的な関与はどうあるべきか、民間金融機関等はどのように経営強化を図っていくべきか、金融行政に産業政策的な視点を持ち込むべきか、

        などの指摘がなされた。

      • 第二回会合及び第三回会合では、メンバーからのプレゼンテーションとそれに基づくフリーディスカッションが行われた。第二回会合では、

        • マル1顧客のために投資情報を加工するとともに、金融機関に対する規律付けの役割を担い、投資家と市場を結びつけるものとして、将来的には、いわば購買者の代理人のような仕組みを考えていくことができないかとの問題提起を巡っての議論、

        • マル2また、ビッグバン開始から4年経った現在においても、金融市場の運用・調達の両面において、市場商品に対する預金、社債・CPに対する貸出の優位が依然として続いているのではないかとの問題意識を巡っての議論、

        が行われた。

      • 第三回会合では、

        • マル1今後の公的規制の枠組みを考えていく際には、規制当局と民間側の情報ギャップや、規制当局の情報収集コストを踏まえて考えていくべきではないか、との問題意識を踏まえた議論、

        • マル2また、このような中で、銀行の内部的な統制がますます重要となっていくが、一方で金融機関が巨大化する中で、これをどのように適切に確保していくかとの議論、

        • マル3さらに、金融機関に対する規制の根拠に関する議論、規制当局のガバナンスの議論があった。

      • 今後、年内は、本日の総会の後にもう一回会合が開催される予定。その後、来年1月以降においては、審議会統合による新たな金融審議会において再設置されることを前提に、その進め方について改めて座長と事務局とで相談の上考えていくこととなると思われる。

  • (4)BIS規制の見直しについて

    • 事務局より、「BIS規制」見直し作業の現状について説明があった。

    • 以下のような質疑応答があった。

      • 1988年のバーゼル合意のプロセスでは、日本も、国策としての戦略的観点から一定の役割を果たしたと思われるが、今回の見直しにあたって、金融庁はどのようなスタンスで取り組んでいるのか。

      • 世界共通の資本規制として、バーゼル委員会参加国だけではなく幅広い国を念頭においた全体的な見直しであり、国際的な流れに沿ったものでなければならないが、我が国としては、我が国の金融機関のリスク管理等の実態に照らし、一律規制は望ましくなく、金融機関の選択をできるだけ認めるべきと考えている。また、小口融資によるリスク分散の効果や、オペレーショナルリスクとの関係では日本の金融機関の特性が、見直しの中に反映されるよう主張している。格付け機関の利用についても、日本の実態に則した形になるよう努めたい。

      • 協同組織金融機関、中小金融機関についてもきちんとした規制が行われるよう要望したい。

      • ヨーロッパで、携帯電話への入札のために10兆円ぐらいの金額を大手銀行が融資したという話があったが、情報産業はリスクが高く、このように大きな貸金が回収できないことになれば、世界的なリスクが発生する。こうしたリスクについてはどう扱われているのか。また、信用格付けと債券格付けが混同されているような印象を受けるが、きちんと区別して議論されているのか。

      • そもそも、自己資本規制は信用リスクすなわち倒産リスクの規制である。しかし、証券化が進むと、債券発行者の倒産だけではなく、債券の値段の変動が大きなリスクとなりうる。こうした証券化の進展にどう対応するかは大きなテーマとなっている。なお、自己資本規制は、個別の貸出のリスクではなく銀行全体のポートフォリオに着目するものである。

  • (5)その他

    • 総会の終わりにあたって、貝塚会長から挨拶があった。

問い合わせ先

総務企画局企画課
電話 03(3506)6000(内線 3514)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


(資料)

第9回金融審議会報告

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