金融審議会総会(第11回)議事要旨

1. 日時:

平成14年7月31日(水)16時00分~17時55分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館 共用第1特別会議室

3. 議題:

「金融システムと行政の将来ビジョン」について

4. 議事内容

  • 貝塚会長より、福間年勝委員及び松原亘子委員の金融審議会委員退任が報告された。

  • 柳澤(やなぎさわ)金融担当大臣より挨拶があった。挨拶の要点は以下のとおり。

  • これまで、不良債権問題やそれに伴う金融機関の破綻など、極めて大きな課題への対応に全力を傾けてきたが、一方で、現下の課題に取り組むに当たっては、日本の金融システムが将来どのような姿になっていくべきかというビジョンをしっかり持った上で取り組むことが望ましいと、かねてから考えてきた。

  • このような問題意識のもと、私的懇話会である「日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会」において幅広くご議論いただき、7月12日に「金融システムと行政の将来ビジョン」として報告書がまとまり、公表されたところ。

  • 一方、6月25日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」では、金融庁において中期ビジョンを早急に取りまとめることとされたところ。そこで、今後ビジョン懇の報告書を基礎として金融審議会でご議論いただき、秋頃には答申をいただきたい。

  • また、昨日、蝋山(ろうやま)懇話会座長と総理のところへ報告書を説明に伺った際、総理より、ペイオフを予定どおり実施すべきであるが、一方、決済機能の安定確保のための方策を検討し、必要な改革案を取りまとめるようにとの指示を受けた。こちらについても集中的に検討を進めていただきたい。

  • 蝋山座長より、「金融システムと行政の将来ビジョン」について説明があった。説明の要点は以下のとおり。

  • 金融機能の中で最も基本的なものである資金仲介機能は、これまで、銀行への預金や銀行による貸出しを通して資金仲介が行われる産業金融モデルであった。それに代わる新しいモデルとして、価格メカニズムが機能する市場を通じて資金仲介が行われる市場金融モデルを実現させなければならないのではないか。もちろん、地域金融等いくつかの重要な部門においては今後も産業金融モデルが有効な役割を果たすが、全体の動向としては市場金融モデルの役割がより重要となる。

  • 報告書の後半は「ビジョンへの架橋」というタイトルでまとめられており、現下の不良債権問題を克服する上でも、産業金融モデルを離脱して銀行が収益力を強化させ、新しいビジネスモデルの転換に取り組むことが不可欠であるということを述べるとともに、証券化のプロセスを推進していくことが、不良債権処理のためのツールの提供にもなり得るということを強調している。

  • 市場における競争の枠組みは、97~98年の日本版ビッグバンで基本的には整理されており、今回のビジョンでは、こうした制度を前提にプレイヤーの意識や行動が変わらなければならないことを強調している。このビジョンに対する的確な認識が金融に携わる様々なプレイヤーに共有され、改革に向けた意識、行動が前向きになることを期待したい。

  • 自由討議の発言で主なものは以下のとおり。

  • 報告書においては、金融仲介機関が個人のリスク選好やライフサイクルに応じ一つの窓口で多様な金融商品を提供するのが基本的方向とされているが、これは従来から言われ続けていることではないか。また、市場型間接金融を展開していく中で機関投資家の役割が重視されているが、具体的にそこで論じられているのは投資信託についてである。むしろ、年金基金等の重要性が増していくのではないか。

  • 報告書は、必ずしもユニバーサルバンキングを推奨するものではなく、今後の金融機関のあり方について、機能分化、専門化していくとともに、それらを組み立てて、金融システム全体としてみると立体的で重層的な分業構造ができるという方向を示している。

  • 報告書は、健全な金融市場の育成を目的とするというよりは、現在の金融システムを何とかしたい、金融機関を助けたいというトーンになっているのではないか。健全な金融市場育成を目的として議論を進めてほしい。

  • 国民は今の金融システムに不安を感じている。従って、その不安の原因、それに対する行政、金融業界の対応や新たな金融の発展の方向をきちんと示すことが重要。

  • 人為的政策的に産業金融モデル離れを生じさせるというハードランディングな改革を目指すのであれば、その趣旨で報告書全体を貫いた方がよい。

  • 金融機関が原則自由に自らの機能やビジネスモデルを選択できることを、行政が世間に対して確認すべき。また、行政のあり方として、縦割りをやめて市場横断的なものに変えていくことが必要。最後に、自己責任原則をベースにした投資家保護の実現が重要。

  • ビジョンは個人に様々な役割を期待しているが、消費者に対して何をあと押ししてくれるのかが具体的に書かれていない。ペイオフ解禁後の消費者保護の取り組みを、具体的に記述する必要があるのではないか。また、個人がワンストップで多様な金融商品にアクセスできること自体は望ましいが、その担い手として、従来の金融機関だけでなく乗合代理店やブローカー制度等に対する期待も大きい。

  • これまでは、産業金融モデルを人為的政策的に有利にしてきたのではないか。そうだとすると、それを中立化するだけでも非常に大きなインパクトがあるし、また中立化するところでとどめるのか、逆に市場金融モデルに有利な状況を人為的につくり出すというところまで行くのかという話もある。ただ、報告書では市場金融モデルを特に有利にするということまでは要求していないと思う。

  • 決済機能が不安定になれば、仲介機能にも影響が及ぶこととなるが、それを防ぐための手段は幾つもある。明確なコスト比較に基づき手段を検討することにより、決済機能と仲介機能との間にあるべきバランスを明確に出すべきではないか。

  • 現時点では、ペイオフを解禁するという筋は守りながら、これと決済機能・決済制度の安定性確保の両立を考えていくというのが現実的ではないか。住宅ローンの証券化については、政府が政策的にこれを実現するという姿勢が重要。

  • 理想論で市場型とだけ言っていても、国民を納得させることはできない。なるべく弊害の少ない形で、かつ国民の多数がむしろ安全性を重視しているときにそれを大きく裏切らない形でよりよい方向に持っていくにはどうしたらいいか考えるべき。

  • セーフティネットは絶対に確保する必要があるが、限定されたものであるべき。政府の信用を利用するのはコスト負担の伴うことであるということを国民に理解してもらうところからスタートすべきで、保証の範囲だけの問題として議論するべきでない。

  • 日本は債権の証券化の手法にまだ慣れておらず、色々と不安を感じるところがあり、また知的財産の所有権の話なども登場してきたりしているので、証券化の手法の議論もしっかりと行うべき。セーフティネットについては、コストの明確化と比較、その手法について、もっといろいろな議論が必要。なお、今の日本の現状からしても横断的な金融サービス法が必要であり、金融サービス法の再提案をしたい。

  • 数年前のビッグバンの議論で最も欠落していたのは、取引コストや手数料以外の最大のコストである税をどのように扱うかという点。中立性あるいはその促進をどうするか、政策的誘導のために税をどのように扱っていくか考えていくことが必要。また、証券業界と銀行業界に対する国民の見方の差というのものは非常に大きく、これが資金がなかなかシフトしないことの要因ではないか。

  • 貝塚会長より、次回は総会と金融分科会の合同会議とし、まずスタディ・グループにおいて中期ビジョンについての検討を行った上でそれを踏まえて議論する旨、また決済機能の安定確保については、金融分科会にて早急に検討を行ってほしい旨発言があった。

  • 蝋山委員(金融分科会会長)より、決済機能の安定確保については、メンバーを何人かお願いし、決済機能の安定確保のためにはどのようなセーフティネットを張るのが望ましいのか精力的に議論していきたい旨発言があった。

問い合わせ先

金融庁 総務企画局 企画課調査室
電話 03(3506)6000 (内線 3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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