金融審議会総会(第12回)・金融分科会(第2回)合同会合議事録

日時: 平成14年9月5日(木)10時00分~12時05分

場所: 中央合同庁舎第四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 貝塚会長

時間が参りましたので、第12回金融審議会総会・第2回金融分科会合同会合を開催いたします。

皆様、ご多用のところご参集くださいまして、ありがとうございます。

本日は、まず金融分科会に取りまとめをお願いしております決済機能の安定確保のための方策について議論をいただき、その後、中期ビジョンについての議論を行いたいと思います。

なお、議事は公開となっておりまして、報道機関の方などのために後ろの方の席を確保いたしております。

それでは、決済機能の安定確保のための方策についてですが、これは金融分科会、ちょっと複雑ですが、今日は総会と金融分科会と両方一緒にやっておりますので、これは形式上、金融分科会の審議となりますので、蝋山分科会長に司会をお願いします。

どうぞよろしくお願いします。

○ 蝋山分科会長

蝋山です。どうぞよろしくお願いします。

まず、議事に入ります前に、異動がございました専門委員の方をご紹介いたします。山本惠朗委員に替わりまして寺西正司委員にご就任いただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

また、本日ご議論いただくテーマ、決済機能の安定確保という問題ですが、これにつきましては大変関係が深い預金保険機構の渡辺達郎理事にご出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、本日は、先ほど貝塚会長からご紹介がありましたように、まず金融分科会として、決済機能の安定確保に関するプロジェクト・チームが取りまとめました標記の課題、決済機能の安定確保という問題に対する報告書についてご説明いただき、その後、委員の皆様から質問や意見を頂戴したいと考えております。

そこで、このプロジェクト・チームは私を座長として池尾委員、翁委員、神田委員、吉野委員、それとオブザーバーとして日本銀行から大泉琢さん、預金保険機構から渡辺達郎さんからご参加いただいております。こういうメンバーで議論したわけでありますが、その点につきまして、神田委員の方からご報告していただきたく思います。よろしくお願いいたします。

○ 神田委員

神田でございます。

それでは私の方から、お手元にお配りしておりますプロジェクト・チームで取りまとめました報告について、簡単にご説明させていただきます。

お手元の資料でございますけれども、まず「プロジェクト・チーム開催実績」という一覧表です。全部で6回やりまして、今週月曜日の最終回で取りまとめをいたしました。そのほかに「決済機能の安定確保のための方策について」という報告、一番ぶ厚いものでございます。今日の日付になっております。それから、その概要、4ページからなっております。そして最後に、横長の、いわゆるポンチ絵などと呼んでいる2枚の図表がございます。

委員の皆様方には既に、ざっとかもしれませんが、お目通しいただいていると伺っておりますので、今日はご議論の時間を長くとる方がよいと思いますので、私の方からは、今、申し上げましたうちの概要に沿ってご報告させていただきたいと思いますが、適宜ポンチ絵あるいは本体の方もご参照いただければと存じます。

まず、概要の「1.はじめに」のところですけれども、第2段落にありますように、今回のプロジェクト・チームは、前回のこの場でもご紹介がございましたように、総理大臣からの指示を受けて、金融機関を中心とした決済のネットワークが社会インフラとして十分堅固なものかどうかを点検し、決済機能の安定確保のために必要な方策を検討いたしました。

「決済」という言葉は非常に多義的な意味ですけれども、私どもの問題意識としては、銀行あるいは金融機関が、最後にその差額を例えば中央銀行の当座預金を通じて受け渡すという、よく英語でセトルメントなどと呼んでいますけれども、そういう部分だけではなくて、リテールの部分というのでしょうか、つまり、普通に庶民が物を買ってその支払をする、いわゆるペイメントなどと呼んでいる部分までを広く含めて、この決済機能の安定ということを考えております。

次に「2.決済機能の安定確保の現状と課題」ですけれども、(1)は基本的な考え方でありまして、最初の三角印は、我が国経済におけるほとんどの決済が金融機関の関与する決済機能を通じて行われており、その安定確保を図ることは公共性の観点から必要不可欠であるという認識であります。

「支払」という言葉を使わせていただきますと、ある人が物を買って、その代金を支払う。その支払の方法は、現金で、それを現金書留で郵送してもいいわけですけれども、実際には、多くの場合、金融機関がその「支払」という取引を仲介しております。そういう意味をここでは言っております。

2つ目の三角印ですけれども、我が国においては、小切手を主要な決済手段とする欧米主要国と異なりまして、金融機関の口座引落し、口座振込等が決済方法の主流であります。また、破綻処理手続等の法制の違い等があります。この点は後で申し上げます。

このため、3点目にありますように、他国の例にとらわれず、我が国の実態に即した方策を検討しようという考え方で臨みました。

次の「(2)決済機能の安定確保に向けたこれまでの対応と課題」につきましては、そこに書いてありますとおりですので、時間の関係で省略させていただきます。

そこで「3.新たな決済機能の安定確保策」であります。

まず(1)基本要件、これは基本の考え方です。ちょっと下3行を読ませていただきますと、金融機関―「金融機関」というのは預金取扱機関という意味で使っております―が破綻した場合の決済機能の安定確保においては、問題のある金融機関の早期発見・早期是正、それから破綻した場合の迅速処理、これは俗に「金・月処理」―金曜に破綻しますと迅速に処理して月曜日には金融機能はもとへ戻るというのでしょうか―、新しい金融機能が復帰するというようなことでよく言われていますけれども、そういうものができれば、決済等の金融機能に与える影響は最小限にとどめることができるわけでして、そういう考え方を基本にしております。

概要の2ページに行っていただきまして、上から2行目ですが、今般の決済機能の安定確保策といいますのは、「金融機関の健全性確保を基本としつつ」というのは当然のことですが、それが損なわれた場合に備えた方策として、制度設計することが適当であるということであります。

ちょっと比喩的に申させていただきますと、お金を支払う人から見ますと、例えば私がある物をあるところから買って、その代金を支払う。それは現金書留で送ってもいいわけですけれども、金融機関を通じた支払をする。これは、いわばお金を運んでもらう。そうだとしますと、例えばミカンやリンゴを運んでもらう。その運んでもらう人の健全性が万が一損なわれますとミカンやリンゴが運ばれないということで、到着しないわけです。つまり、買ったものの代金が払えない。払えないという問題と同時に、その場合、普通はどうするかといいますと、それならミカンとリンゴを私は返してもらって、今度は自分で現金書留で送るわけですけれども、お金の場合はいわばミカンとリンゴに相当するお金が返ってこない。預金を通じた決済をし、かつ預金が全額保護されない、そういうことになるわけです。

今の比喩が適切かどうかわかりませんが、ここで言っていることは、金融機関の健全性が損なわれた場合に備えた方策としての制度設計ということであります。

次の三角印ですけれども、以上を踏まえますと、今回の安定確保策の基本要件は、金融機関が関与する決済のためのセーフティネットとして、現金以外に安全確実な決済手段を確保し、それを誰でも容易に利用できるようにするということであります。

ここの考え方は、今回のプロジェクト・チームの素案でありますが、「決済」と言う場合には、決済手段と、それを使った決済取引とでもいうもの、そういうものとを区別して物事を考えております。前者は、現在、現金という決済手段がありますけれども、これは、例えばお札で言えば日銀券という形で、中央銀行の信用を裏付けとする安全な決済手段になっているわけであります。

後半の「誰でも容易に利用できる」というのは、現金の場合で言いますと、私が物を買った代金を現金で支払う場合には、現金書留という制度がありますので、書留という制度を制度として用意しているということになります。すなわち「現金」という安全な決済手段を提供する制度と、それから、それを使った支払取引あるいは決済取引をサポートする制度として書留という制度があるわけです。

ところが、最初に戻りますけれども、我が国の場合、金融機関の預金を決済手段とする支払取引、決済取引が多いわけですので、現金以外に安全確実な決済手段を用意しようというのが今回、そういう意味では現金以外にもう1つと言ってもいいのかもしれませんが、今回の基本的な考え方です。

そこで「(2)具体的枠組み」ですけれども、まず最初の三角印が問題で、2つ目の三角印が解決策です。

問題点は、特例措置終了後、これはペイオフ解禁後という意味ですが、大口決済資金について全額保護されなくなる結果、決済を履行できない状況が生じ得る。また、仕掛かり中の決済取引については、破綻処理が迅速に行われても履行が困難な場合がある。

ちょっと分かりにくいかもしれませんので、また後で申し上げますけれども、これが問題でありまして、それに対する解決策として、安全確実な決済手段として、いわゆる決済用預金、全額保護される預金を制度として用意する。それから「また、」以下の問題に対する解決策として、仕掛かり中の決済取引を円滑に結了させるための措置を講じるいうわけであります。

「また、」の前と後とは別の問題でして、先ほどの比喩で言いますと、「また、」の前は、現金あるいはそれと並んでもう一つ安全な決済手段を用意するという意味でありまして、「また、」の後は書留制度の方に当たるわけでして、決済取引の安全を確保するという意味であります。

前者の方ですけれども、日本の特徴といたしまして、普通の個人が利用する例で言いますと、預金口座からの自動引落しと呼ばれるやり方が非常に多いです。これは電気代、ガス代、水道代等であります。この場合、引落しがなされる前、法律家はこういうものを、例えば「電力会社からの振替の指図」などと言っていますけれども、その言葉はともかくとして、引落しがなされるまでは決済取引は起動いたしません。いわゆるイニシエイトしません。しかし、普通は、例えば自動引落しの日が27日だとしますと、それより前に預金口座にお金を入れておくはずであります。そこで万が一その金融機関が破綻いたしますと、決済取引が起動する前におよそもう支払は行われないことになりますし、その預金が、特例措置終了後であれば、1,000万円までは大丈夫ですけれども、それを超えては保護されないという問題があるわけです。

そういうことから言いますと、支払とか決済取引が起動した後だけ制度として何らかの措置をするのでは足りないわけでありまして、起動する前のそういう状態も視野に入れなければいけないということであります。そのことが、ここの言葉で言う「決済用預金」という制度を現金以外に安全な決済手段として提供してはどうかという答えになっているわけであります。

「また、」以下は決済取引が起動した、イニシエイトした後の話でありまして、この点はちょっと分かりにくいかもしれませんが、決済用預金を使った決済取引が起動した後だけに限定されません。後で申し上げますけれども、そうでないものを使った、でも決済取引がいったんイニシエイトされた、起動した後は、これは書留制度を用意しようというわけであります。したがって、書留の中には現金を入れてもいいけれども、それ以外の、例えば小切手を入れてもいい。現金書留の制度とそうでない書留の制度は一応区分されていますけれども、大きな意味で書留制度を用意しようという意味でありまして、「また、」以下は、決済用預金を使った場合の決済取引に限定されません。

この具体的な枠組みとしてはもう1点、報告書本文には出ていると思いますけれども、いわゆるシステミック・リスク対応と呼ばれるもの、金融システム全体が麻痺したような場合に緊急に措置をとるという預金保険法第 102条の規定が置かれておりますけれども、そういう措置とは別の次元のものとして整理してあります。

つまり、繰り返しになりますけれども、ここでは決済の安定という見地から、システミック・リスク対応の緊急措置とは別の制度を用意しようという考え方であります。

以上、申し上げました具体的枠組みをさらに具体化するとどうなるかというのが(3)から(5)でして、「また、」の前の部分ですね。すなわち安全な決済手段を用意しようというのが(3)と(4)であります。そして「また、」以降、すなわち仕掛かり中の決済取引、いわば書留制度に当たるものをきちんとしようというのが(5)になります。

そこで、(3)は現金に加えての安全な決済手段をどう制度設計するかということですけれども、一言で言えば「決済用預金」とでも呼ぶ概念を概念として構築して、それを制度化するということであります。これは機能的に定義しているわけでありまして、下の(注)にありますように、現在存在しているどの預金がここで言う決済用預金に当たるかというのは、当てはめの問題であります。

物事の考え方として決済用預金を定義しますと、3つの要件というか、条件があると考えられます。第1が要求払いであること、第2が通常必要な決済サービスを提供できること、第3が金利を付けないことであります。

このうち第1と第2の要件はロジカルに出てくる要件だと思いますが、第3の要件は必ずしもロジカルに出てくるわけではありません。私の理解では第3の要件は、現状に鑑みて、制度化に当たって政策的にこういう要件が望ましいということかと思います。すなわち、決済に使う預金であれば普通は金利は低いはずでありますし、これは本文の方に書いてありますけれども、実際問題としては手数料を徴収しないと成り立たない筋合いのものであります。しかし、その辺りをどういうふうに制度化するかはなかなか難しいわけであります。

それからもう1点、言うまでもないことですけれども、モラル・ハザードの防止という観点があります。これら2つの観点から、制度化するに当たっては第3の要件、すなわち金利ゼロという要件で制度化するのが適切であると私どもは考えました。

次に、3ページに行かせていただきまして、ちょっと時間をとっておりますので、早目にさせていただきます。一番上ですけれども、そういう決済用預金を用意する。用意するという意味は、安全なものとして用意するわけですから、全額保護ということですけれども、その負担、財源を納税者に求めるのは適切ではありません。したがいまして、預金保険料で制度設計するということであります。

その次のマルですけれども、こういった決済用預金の提供を法律上、全金融機関に義務付けるべきかという問題があります。これは結論としては、これを金融機関に義務付けるのは適切ではないという考え方に立っています。つまり、そういう預金の提供をするかどうかは金融機関の選択で決まるということであります。

この辺は、もうちょっと議論があり得るところであるとは思いますが、先へ進ませていただきまして、次のモラル・ハザードは、お読みいただければわかります。

(4)ですけれども、今、申し上げました提案と別の考え方、第2の考え方であります。制度化する方向としては異なる選択肢として、いわばナローバンク勘定とも呼ぶべき考え方もあり得るということであります。

すなわち、具体的にはこの決済用預金は他の預金から分離して、それを安全資産にのみ運用する。そういうことであれば、これは当然全額保護されるというか、全部セーフなわけです。そうだとすると、これは預金保険料への負担もほとんどありません。こういうやり方も第2の選択肢としてはあるわけでして、(3)に書いてある第1の選択肢と第2の選択肢、両方を制度化して、金融機関は両方を選択してもいいし片方を選択してもいいし、両方選択しなくてもいい、こういう考え方も十分筋は通っていると思います。しかし、今回は、(4)についてはなお中期的課題として検討してはどうかということであります。

以上が安全な決済手段の提供でありまして、それに対して、先ほどの言葉で言う書留制度に当たるものが、(5)仕掛かり中の決済の結了であります。

これは(5)の第2パラグラフにあります「しかし、」というところですが、現時点ではちょっと制度的に十分でないということがありますために、「したがって、」ということで最後の3行、読み上げは省略させていただきますけれども、それをきちんとやるということであります。

4ページ、最後のページでありますけれども、一番上の「(6)破綻処理の迅速化措置」は当然のことでありまして、先ほど申しましたが破綻処理が迅速化できれば、その分、決済安定策というものは必要性が薄まるわけでありまして、本来、破綻処理の迅速化というのは常にしなければいけないことであります。

最後に「4.制度改正に当たっての留意点」といたしまして、まず「(1)将来に向けての課題」ですけれども、以上、申し上げましたような考え方は暫定的な、一時的なものではないわけでありまして、そういう意味では、恒久という言い方がいいかどうかわかりませんけれども、制度として用意してはどうかということであります。ただ、そこにも書いてありますように、もちろん必要に応じての見直しは必要であると思います。

それから第2段落は、先ほど申しましたナローバンクという第2の方法は、今、制度化してもすぐ使われる可能性はほとんどゼロではないかということ等もありまして、中長期的な課題として、将来の制度化を視野に置きつつ引き続き検討してはどうかということであります。

「(2)実施に当たっての留意点」ですけれども、言うまでもないことですが、金融機関におけるシステム対応等に十分配慮が必要であるということ、新しい制度をつくるに当たっては、混乱を招いてはいけませんので、まず顧客に対する配慮は一番重要ですけれども、政府としても十分な広報活動が必要だということであります。

(注)が点線で囲んでありますけれども、個人を中心とする多くの預金者にとっては、特例措置終了後、すなわちペイオフを解禁しても1,000万円までの元本とその利息は保護されておりますので、そういう意味では影響はないということであります。

最後に、「5.おわりに」の文章ですが、概要の方には直接出ていない言い方で2点だけ申し上げて、終わりたいと思います。

私どものプロジェクト・チームの基本的な考え方は、今まで申し上げましたけれども、その基礎となるところがあと2つあります。1つは、セーフティネットというのは小さい方がいいということであります。ただ単に小さければいいわけではなくて、小さな、しかし強固なセーフティネットを制度として用意するのが望ましいという考え方に立っているということであります。

第2点は、こういった決済機能の安定確保のための方策は、少なくとも金融機関が関与する決済取引に関する限り、決済サービスというのは金融機関にとってはビジネスであります。したがいまして、決済機能の安定確保というのは、本来はそのビジネスに携わる金融機関自身が対応すべき問題であるわけであります。したがって、今回の措置は我が国が現在置かれております状況を鑑みまして、今この時点で政府として最小のことをやるとしたら何か、制度として官でやれることは何かという見地から考えて提案しているものであります。したがいまして、繰り返しになりますけれども、本来、こういった決済機能の安定確保というものは、あくまでビジネスの主役であります金融機関において考えられてしかるべきものでありまして、そういうことが行われないと、なかなか決済機能の安定確保が実現しない、そういうことを基本に据えた上での制度化の提言でございます。それが2点目です。以上です。

○ 蝋山分科会長

どうもありがとうございました。

それでは、今日ご出席の皆様方から、このプロジェクト・チームの提案に関しまして、さまざまなご意見があろうかと思います。ご意見なりご質問なり歓迎したいと思います。浜委員、どうぞ。

○ 浜委員

ありがとうございます。

意見が1つと質問が2点ございますが、まず意見を申し上げる前提として、このプロジェクト・チームのご努力を非常に多とし、非常に短期間に密度の高い内容をまとめられたプロフェッショナリズムに敬意を表したいと思います。

それを申し上げた上で、あえてといいますか、今さらながら原則論的なところに戻ってしまう感じで大変恐縮ではあるんですけれども、正直言って私としては、この「ペイオフ解禁下」という条件のもとで決済の不安定化を回避するというこの発想自体、どうしても納得がいかない面がございます。ペイオフ解禁を前提にすれば、これはその問題が出た折々に、決済に支障を来すということがいわば当たり前といいますか、前提になっている。そのペイオフ解禁ということをやりながら、それを徹底的に封じ込むというのは、言ってみれば定義矛盾ではないかという気がいたしますし、そういうリスクがあるということが、いわば外圧になって、金融システムの健全化、金融機関経営の健全化が進むということが、このペイオフ解禁という動きのそもそもの趣旨ではないか。そういうところから考えると、納得がいかないところがある。

決済に支障を来すリスクが生じるということは当然であって、その場合において、いかにしてそれが連鎖的に波及していくことを回避するかという観点から、この問題は考えるべきなのではないかという気がしています。

そういう意味で、私、率直に申し上げて、今日ここに出席することが非常に気が重いというか、やめようかなという気がした面が多分にございます。なぜかなれば、ここに出てくればこれをOKしたということになってしまうという面がある。新聞にも今日ここで決めるんだと書いてあるので、決まってしまうんだろうと思いますが、それでちょっと気が重かったんですが、いないというのもまずいので参りました。来た以上は、こういうことを申し上げておきたいと思ったということで、以上が意見でございます。

それを踏まえた上で質問が2つあるんですけれども、1つは、概要の3ページのモラル・ハザードの回避でございます。

モラル・ハザード回避ということが入っているのは大変結構なことだとは思うんですが、ただ、付利しない、ゼロ金利であるということ、そのオポチュニティ・コストが果たしてモラル・ハザード回避の対策になるのかどうか。今の状況では、明らかにならないわけですよね。もともとがゼロ金利状態ですから、そのオポチュニティ・ロス自体がないわけなので、そういう状態であれば、全額保護してもらえるようにどっと預金がシフトしてもおかしくないだろうと思います。

さらにまた逆に、そういう状況で今度は、世の中の金利が上がってきたときにはまた付利された預金の方にどっとお金がシフトするというように、非常に混迷を招く状態が出てくるのではないかと思いますし、金融機関サイドについては、高い預金保険料率を設定するというのは確かにしかるべきことだと思いますけれども、もし本当に大きな預金シフトが起きたときに、その支払負担が問題にならないのか、逆に金融機関の経営を圧迫すると、そこまで高くするおつもりではないんでしょうけれども、そういう問題はないのかなと思うところで、その辺はどういうふうにお考えになられたのか、ちょっとご説明を伺えればと思います。

質問の2点目、これで最後でありますけれども、最後の方に「小さな預金保険制度」という文言がございました。これがよく分からないといいますか、預金保険制度というのは小さければいい、あるいは小さい方がいいのかというところにやや、保険制度である以上は、やはりリスク回避の、リスク対応のための万全な、潤沢な基盤が必要なんだろうと思います。そういう意味では、小さければいいというものでもないだろう。政府は小さい方がいいんだろうと思いますが、預金保険制度も小さければいいということなのかなと。その辺について、どういう発想であるのかということを確認したいと思います。以上です。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。

1つ1つお答えすることも可能かと思いますが、恐らく浜委員と似たようなご意見をお持ちの方がおられるかと思いますので、重複はできるだけ避けていただきまして、一通りご意見を頂戴した後で、まとめてプロジェクト・チームの方でお答えすべきところはしたいと思っております。あるいはそれが途中になるかもしれませんが。岡部委員、どうぞ。

○ 岡部委員

一番最後のところの「実施に当たっての留意点」というのは非常に重要なポイントだと思います。金融機関におけるシステム対応が十分かどうか、十分に配慮できるかどうか、それから預金者の混乱や動揺を招くことのないよう積極的な広報活動ができるかどうか。これは「留意点」とありますけれども、ここがむしろ最大の要件ではないか、これができなければ、むしろこういう新しい、せっかく皆さんが衆知を集めてつくった制度の見直しも混乱の種になってしまいかねないということがあるので、ここが担保されなければ、この制度の実施そのものも何らかの見直しが必要になってくるだろう。

したがって、そこのところを、今の金融情勢も踏まえて総合的にシミュレーションをした上でこういう案ができているのかどうか、あるいはいろいろなヒアリングの中で金融機関なり、あるいは預金者の反応がどうなるのかという点についての考え方とか見通しをお持ちなのかどうか、その辺をちょっとお聞きします。

○ 蝋山分科会長

ほかに。福井委員、どうぞ。

○ 福井委員

私は、来年の春、ペイオフ完全解禁ということは非常に重要だという立場をとっております。小泉内閣の構造改革をさらに強力に進めていく上で、その金融面での非常に大きな関門の1つということで、ぜひこれは完全無欠な姿で実行していく必要がある。「完全無欠」という意味は、金融機関の経営基盤の健全性確保にぎりぎりまで最大限の努力をして、その面から、内外の金融市場からの信任を確立しながらやる。あくまでこの本筋を徹底してやっていただきたいと真剣に考えているものであります。

逆に言いますと、ペイオフ完全解禁実施の前の段階で、実質的にそこに、抜け道と言うと言葉は悪いんですけれども、そうなるような懸念のあるものは、なるべく少なくしながらやっていくということにもなるのではないかと思います。

今日のご提案は、プロジェクト・チームの大変精力的なご検討の結果でありますので、その点は高く評価いたしますが、私も、若干の疑問点はどうしても拭い去れない。私が積極的に評価いたしますのは、先ほどご説明のありました決済の仕掛かり品の部分ですね。中2階に上がった部分は結了させる。これは全面的に正当性を持った提案ではないかと思いますけれども、それを超えて、金利ゼロの決済性預金について全額保護しなければならないということまで踏み込んだときに、疑問が浮かんでくる。

それは、例えば1年前、要求払い預金については1年延期するという措置がとられたときに、それは非常に分かりやすく言うと、定期預金を持っている人は普通預金との金利の差額をエントリー・フィーとして払えば、そういう安全地帯に行けます、実質的にはそういう措置だったと思いますが、今度のご提案の場合は、定期預金を持っている人は、定期預金の金利を犠牲にして払えばエントリーできます、普通預金を持っている人は普通預金の金利を犠牲にして、エントリー・フィーとして払えば安全地帯に行けます、非常に単純化してそう理解すれば、ペイオフ実質延期の抜け道にもなりかねないという懸念をどうしても拭い去れないわけでございます。そこの考え方をプロジェクト・チームではどう整理されたかが非常に重要なポイントで、そこをぜひお伺いしたい。

それから、本来お金は無色透明なものですが、決済性預金という口座に入った途端にお金に色を付けて見るというふうなところが入ってきますので、これは明確なロジックで説明し切れるものではないと思いますが、そうなりますと、すべての金融機関がこれを採用することを実質的に強く期待といいますか、強制するとかそういうことではなくて、今日の第2のテーマで議論されますように、新しい金融ビジョンということは、商品設計の自由性は金融機関あるいは新しい金融システムの生命線を成す部分でありますので、あくまで金融機関の自由のある経営判断としての選択性の中にかっちり入れておく、少なくとも行政的なプレッシャーは掛けないという一線を置いていただくべきではないかという気がしております。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。寺西委員、どうぞ。

○ 寺西委員

当事者の1人として、今回の提案について我々がどういうふうに考えているかということを、総論としてではございますけれども申し述べてみたいと思います。

今般のPTにおきます検討も含めまして、いわゆるペイオフをめぐる議論がなかなか決着しないということは、残念ながら、我々金融機関の経営健全化に向けた経営努力といったものがまだまだ道半ばであることの裏返しであろう、こういうふうに思っておりまして、当事者として大変心苦しく思っているところであります。金融機関の経営を預る者といたしまして、預金者、それから市場の信頼回復に向けた経営努力といったものを鋭意継続してまいりたいと考えております。

決済機能は、ある意味で経済の根幹を成すインフラでありまして、その安定が確保されることの重要性は我々金融機関としても強く認識しておりまして、本報告書の提言なりといったものも重く受け止めるところでありますが、いわゆる新たな決済用預金といったものを短時間で導入することに関しましては、社会的なコストが小さくないというのが率直な印象であります。新型預金がどのような形をとるにせよ、まずもってお客様に切替えの事務負担をお願いしなければならない、これが一方ありますし、金融機関サイドでもシステム対応、預金の切替えのための事務負担といったものが新たに発生いたします。また、来年4月1日までに対応することを前提とした場合、限られた期間の中で混乱を招くことなくお客様のご理解とか対応が進むのか、正直なところ懸念も持っております。

したがいまして、仮に本提言どおりに新制度の導入が決定され、新型預金に関する具体的な検討に入る際には、何よりも利用者の方々の混乱を回避して、社会的なコストを極小化していくことが大変重要ではないか、このように考えております。まず政府としては今般の政策につきまして、世の中全体に対して十分な広報活動、周知活動を行っていただきたいと思います。

また、新型預金を導入すると決定した金融機関は、商品性の検討に際しまして預金者の利便を最優先する必要があろう、このようにも考えております。

また、各金融機関のシステム面を中心とした実務面のフィージビリティに関しましては、ぜひ十分な配慮を施していただきたいと考えております。

いずれにせよ、今般の報告書の趣旨も踏まえまして、民間金融機関としても決済機能の安全性の確保のために、自らの経営の健全性の向上、一方で業界レベルでの決済リスクの削減策等、一段の対応に努めてまいりたいと考えているところでございます。

業界を代表しまして、総論でございますけれども、意見を述べさせていただきました。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。片田委員、どうぞ。

○ 片田委員

プロジェクト・チームが今日ご提示いただきました決済機能の安定確保のための方策について、異論があるわけではなく、賛成でございます。

ただ、私は、国民の間に政策に対する信頼が広がることが大変重要なんだと考えておるわけでございます。なぜペイオフ解禁の6月前になって急にこの決済性預金保護の問題が提示されるのか。2年前、3年前に2002年4月から定期預金がペイオフ解禁されて、2003年4月からは普通預金が解禁されると分かっていたわけですから、「そのときには決済性預金は保護されるんですよ」ともっと早くから決めておけば、何の混乱もない。今なぜというのが国民一般の非常に素朴なクエスチョンマークなんですよね。そういう意味で、政策に対する信頼といいますか、行政に対する信頼というものが非常に重要だと私は思っております。

それから、1,000万円までの個人の預金者には関係ないことなんでありますけれども、実際は、200万円の預金を持っている者もこの問題については非常に大きな関心を持っている。だから国民1人1人、市民1人1人が当事者だという考え方でPRもしなければいかんし、取り扱っていかなければいかん問題だと考えております。

もう1つ、経済のマクロの動向、あるいは昨日、今日の株式相場の極端な低迷と無関係な政策論議というのは、私は現実的ではないと思うんですね。もちろん、この決済機能を確保するという理論的な問題と、株式相場がどうかということは関係ないんですけれども、全体の、そういう経済の実態の中で論じられるべきではないかと思っております。以上です。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。長野委員、どうぞ。

○ 長野委員

全国信用金庫協会の会長、長野でございます。

ご案内のように、私どもは地域金融機関であり、主として取引対象は中小企業、さらには地域の住民、こういうところにあるものでございますから、そういうような立場で考えを述べさせていただきたいと思っております。

先般、全国各地の代表者を集めまして、このペイオフ問題、なかんずく決済機能の安定確保についての議論が進められている段階でございましたので、いろいろと意見を交わしたわけでありますが、その中で、強く訴えてほしいというような意見があったわけです。それは、ペイオフ問題を巡る実態が、現状がどうなっているかという認識をぜひ深めていただきたいということでした。

先ほどもお話がございました、現在の日本の景気の状況がどうなっているか、これはもう今さら私が申し上げるまでもございません。それからいま1つは、資金シフトの状況がどうなっているかということを1つしっかり見極めていただきたいとの声も多数出ていました。去年の暮れごろから今年に入り、特にペイオフの一部解禁前後の3月、4月をピークに、ご案内のような資金シフトが急激に起こっているわけであります。定期性から要求払いへ、あるいは中小金融機関から大銀行、ないしは郵貯へと大幅な資金シフトが行われております。今回この金融分科会において決済機能の安定確保のための方策について急遽ご検討いただいているのも、こうした資金シフトの状況をご覧になって、これが落ち着いているのか、現状ではどうなっているのか、そして将来はどうなのかというようなことを多分大変お気にされて、この問題をご検討されているのではなかろうか、そのような気がいたしておるわけであります。

そして、この決済機能の安定確保そのものは非常に重要なテーマでありますし、個々にいろいろな考え方、条件はありますけれども、これはもう基本的に重要なことでありますから、このことについて何らかの措置が必要だろうということは十分承知をいたしているわけであります。ただ、そのためにはいろいろな条件があるわけで、その前提条件として、先ほど申し上げたように、このような大きな資金シフトが行われている、そういたしますと、我々地域金融機関、中小企業専門金融機関といたしましては、中小企業に対する資金の円滑な提供は非常に難しくなっていくわけであります。長期資金についてはほとんど対応できない。そして今後を展望すると、なかなか中小企業の資金需要に応えていけないという状況にあります。

さらには、こういうようなことが結果的にいろいろな問題を引き起こすことが想定されます。そのことについて、どうぞ1つお考えいただきたいということがまず第1でございまして、場合によってはこの決済性預金(この決済性預金の範疇には、当座預金、普通預金及び別段預金のすべてが入るものと考えている)の解禁については、これも無期限とは申し上げませんが、例えば不良債権の整理がほぼ完結した段階まで、あるいは現在の不況というものがどうにか目途が立ち、自立的に回復する見込みが出るところまで、どうでございましょう、具体的には3年、場合によっては3年から4年、それだけの期間があれば私は対処、対応できるのではないかという気がするわけであります。そこでその期間は普通預金等の全面解禁を延期していただきたい、そういう思いがいたしているわけであります。

なお、今さらそういうことはできないんだということ等であれば、現在の保護限度額である1,000万円というものを、中小企業の決済等を勘案し、場合によっては3,000万円まで保護限度額を引き上げようというようなことも考えられるのではなかろうか、こういう気がいたしているわけであります。

それでも、どうしてもご提示された案で行くというようなことであれば、これまたこのことについては非常に重要なことでありますから、ただいま寺西全銀協会長がお話になったように、こういうものを作るについてのシステムの問題、コストの問題、あるいは預金者に対する説明の問題など、十分に注意しながら、進めていただきたいということであります。

特に、その制度の導入に当たっては、これは金融機関の選択だよ、一斉にやらせるわけにはいかんよ、こういうことでありますが、やるところとやらないところが出てきた場合に、これまたいろいろな混乱が出てくるわけであります。金融機関の信頼性という観点から言いますと、「金融機関はしっかりしないといかんよ」と言いますけれども、お客様は実際問題として金融機関についての信頼性、あるいは金融機関を選択するすべは持っておりません。我々も一生懸命ディスクローズして、膨大なディスクローズの資料を出しているわけでありますが、不良債権の内容1つ見ても、お客様にはなかなかわからない。かといって比較的に説明するわけにもいかない。そうすると、お客様は何をもって金融機関を選択するんだろうか。ただ「何もわからない」という不安感が醸成される、そして右往左往する。「何かここでまた決済機能云々ということについていろいろ検討されているようだ」、そうすると、「金融システムは不安定なのではないか」、ということからここでまた不安心理というようなものが醸成される。私どもとしてはそういう状況になることを非常に危惧しているわけであります。そのことをぜひ1つ念頭に置いて検討していただきたい。

結論を申し上げますけれども、決済機能の安定確保のための考え方、あるいはその取扱いについては、条件付でありますけれども、非常に重要なことであると考えているわけであります。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。

ほかにも、どうしてもと言われる方、短くお願いします。高橋委員。

○ 高橋委員

少々細かい点で恐縮なんですけれども、利用者の商品選択という観点から、決済性の預金についてお伺いします。

まず、安全確実な決済手段ということで、新たに決済用預金が用意されるのが望ましいという結論に至られたということなんですが、来年、定額保護に移行する予定の決済性の預金、すなわち現行の普通預金との違いは全額保護か否か、つまり大口決済がOKかどうかと、そこだけなのかどうかということを確認させてください。

例えば、決済途上にある取引を完了させるための措置については定額保護に移行する普通預金には適用されないということがあると、これもまた大変だと思いますので、確認なのですけれども、お願いいたします。付保預金の範囲内であれば決済に支障が出ることがないという判断をもって、一般の人たちは、その預金が金利ゼロのものなのか、金利がつく普通預金なのかという選択を行うのではないかと思います。

それから、新しい決済用預金というのが従来の普通預金の分類に入るものであれば、1口座当たり60万円を限度とした仮払いの対象になるのではないかと思われるんですけれども、これについても確認をお願いいたします。

さらに言いますと、これまで国民の多くは「決済性預金」という表現に慣れてまいりました。金融審の平成11年12月の答申をベースに、今回の報告書などは「流動性預金」という言い方がされていますけれども、預金保険機構の消費者向けの説明とか、金融庁の説明とか、そういう文字ベースになっているものは皆、今まで来年には定額保護に移行すると説明されている普通預金等は「決済性預金」という表現が採られているんですね。今回「決済用預金」という1字違いの紛らわしい表現が出てきますけれども、昨今の新聞報道を見ていましても「決済預金」「決済性預金」「決済専用預金」この3つぐらいの表現が採られておりまして、「決済用預金」という表現は余り採られていない。まずもうここの段階から、私は非常に混乱しているのではないかと思います。

決済に使える預金に定額保護のものと全額保護のものがあって、全額保護のものが新たに決済用預金に入るということだと思いますけれども、混乱を避ける意味では、むしろ新しい分類名称は「決済専用預金」としていただいた方が、金融機関のモラル・ハザードを防ぐ意味からもよいのではないかと思います。

それから、「決済性」とこれまで分類してきた普通預金を今後どう呼ぶかというようなことにつきましても、金融審の方で何らかのコンセンサスを得た方がいいのではないかと思います。金利のある、だけれども決済に使える預金が今後、ほかにも出てこないとは限らないわけですから、そういう部分の分類はきちんとしておいていただきたいと思います。

「4.制度改正に当たっての留意点」に「預金者の混乱を招かないように」という文言がございますけれども、一般の消費者の目というのは、こういうことが非常に気になることでございますので、よろしくご検討をお願いしたいと思います。以上です。

○ 蝋山分科会長

ほかには。原委員、短くお願いします。

○ 原委員

消費者の立場からということで発言させていただきます。

今、高橋委員の方からもご意見が出ておりましたけれども、消費者は今回のことを新聞とかマスコミの報道で知ることになりましたけれども、当初、やはり決済機能の安定化は大事であろうという議論の出発点は理解していたんですが、1,000万円以下の人たちは関係ないと思いつつも、徐々に「決済性の預金」、「決済専用預金」という言葉が出てきて預金の選択の話が出てくれば、将来的には金利がどう変わっていくかも分かりませんので、「どういう形になっていくのだろう」ということで、この1か月、大変関心を持って見ているテーマです。

私自身はここで意見として、金融の行政の方にも、それから金融機関の対応に対しても、両方とも消費者は不満を持っているということを述べておきたいと思います。

行政なんですが、実は私自身も責任があるとは思っているんですが、こういう決済機能の安定化の話は本当はもう2年、3年前から議論としては出ていて、もっと前から検討すべきであったところを、現場の資金のシフト状況を見て慌てて対策として立てられてきているという部分が、大変短期間でまとめられたというところは敬意を表したいとは思いますけれども、本当はもっと時間をかけて丁寧な議論をしてくるべきではなかったかということを、金融行政に対しては強く申し上げておきたいと思っております。

それから、私として、もっと大きく意見として言っておきたいのは、金融機関に対してです。金融機関に対しては大きな不満があります。ここ数週間の報道を見ていて、今もご発言があったんですが、資金シフトの状況が、金融庁なり委員はよくわかっていないのではないかというふうな声が出てきているんですけれども、それでも私は、金融機関の声というのは金融庁にも、それから世の中にも随分出されていると思っていて、最も出されていないのは国民の意見だと思っております。ペイオフを延期するだけでは単なる先延ばしで、根本的な解決にはなりませんし、公的資金をこの段階で、将来的にはどうか分かりませんけれども、公的資金を導入するというような解決の方法というのも、私は、今後はとるべきではない。やはり金融機関の責任でやるべき問題だと考えておりまして、金融機関の「私たちの声が届いていない」という声を聞いたときに、国民の声はもっと届いていないという感想を持ちましたことを申し上げておきたいと思います。

それから、これがどういう形で導入されるかというところ、高橋委員がちょっと懸念をおっしゃいましたけれども、どういう形で世の中に出ていくのか、そのきちんとしたPRをしていただきたいと思っております。やはり消費者は大変混乱している状況です。以上です。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。首藤委員。

○ 首藤委員

私は、今の段階での新しい制度の導入ということには非常に疑問を持っております。現状から考えた決済機能の保護、保全という点から、新しいタイプの決済性の預金の導入が必要だというご趣旨は十分にわかりましたが、個人口座も含むような広範な新しい型の預金を恒久的な措置として導入することが、なぜ今の段階で必要なのかどうか、私はこれが非常に疑問でございます。

と申しますのは、問題になっていますのは大口の決済だと思います。ですから当座性の預金あるいは、もしも中小企業がそれでカバーできない部分があるとすれば、そういった中小企業に関しての一種の特別な預金を導入する方が、むしろ導入のコストは非常に少ないのではないか。さらに、これをもっときちんと恒久的な措置として考えるとすれば、ナローバンク口座も含めて、恒久的な措置として決済システムの保全に実効性を持つような、そして十分にみんなが納得できるような制度がどういう形で導入できるか議論すべきではないんだろうか。私は、これを緊急措置として何年かの間、導入するのであればまだ分かりますけれども、恒久的な措置として、こんな短期間にこういう形で新しいタイプの預金、全部の預金者をカバーするような非常に大きな制度を導入することに対しては、非常に大きな疑問を持っております。この点について、どのようにお考えになるのかお伺いしたいと思います。

○ 蝋山分科会長

ほかにも恐らくご意見あろうかと思いますが、今たくさんの方々から非常に積極的なコメントを頂戴いたしまして、プロジェクト・チームの座長としても、どういうふうにお答えしたらいいか、うまくサッときれいにお答えすることが難しいわけですが、とりあえず私の方から申し上げて、あと神田委員にお願いします。

1つは、今日の委員のご意見の背後にある事実認識と、それと結びついた、どういう措置によってこの状況を打開すべきかという点について、大変意見が分かれているという現実があることを、まずご認識いただきたいと思います。

一方では、ペイオフ解禁を断行すべきであるというご意見の方がおられました。他方では、それ自体がおかしい、現状ではペイオフを解禁、私は「ペイオフ解禁」という言葉は余り使いたくないんですが、政府による全面的な流動性預金の保護、さらに預金全体の保護を継続すべきだと、こういうご意見の方もおられます。まさにそこでは正反対、両極に意見が分かれていると思っております。

そこで、どちらに与すべきかというところで、まず出発点から、事実認識と、それから事実認識に基づく政策の基本的なところでプロジェクト・チームも随分議論をいたしました。そして結局は、ここに示されたような結論、いわば中間の道を歩んだわけであります。すなわち、金融機関の健全性というものは、預金保険制度の第 102条を適用するほどひどいものではない。もちろん今後の市場の動向その他、経済の動向いかんでは、そうなる可能性はゼロとは言いませんよ。可能性はあるかとは思いますが、しかし、システミック・リスクを云々するというような非常に厳しい状況では必ずしもないだろう。

それでは、この本文にもありますように、いわゆる早期発見・早期是正、そして迅速な破綻処理ができるほど銀行システムは強い状況なんだろうか、良好な状況なんだろうか。銀行産業は正常な状況なんだろうかと考えますと、そうとも言い切れないというのが私どもの事実認識であります。

そういう状況の中で、長野委員がご主張のようなペイオフ解禁の全面延期をいたしますと、相当なコストを今後も潜在的に国民が被らなければいけないことになる。それは大きな、小さなという話より、ご質問がありましたけれども、「小さな預金保険制度」というのは、同じ効果を持つならば、国民にとってのコストを可能な限り小さくするようなという意味でありますけれども、そういう観点からすると、全面解禁の延期というのはコストがかかり過ぎると我々は判断したわけであります。

しかし、そうかといって、幾つもの破綻銀行の事後処理がまだ十分に、例えば金月処理といったものは行われた例がない。こういうことから見ても分かるとおり、銀行産業は必ずしも正常な状態には戻っていない、いわば脆弱な状況であると考える立場からすれば、銀行の基本的な機能である決済はどうなるんだという問題が出てくるわけでありまして、我々は、経済のいかなる状況においても金融の公共的な役割として、少なくとも決済は円滑に行われるという保証を確立する必要があるのではないか。そこで、決済機能の安定化を図るための方策という形でこの問題をとらえ、そのための新たな概念の設定に入っていったわけであります。

「決済用預金」、高橋委員の「決済専用」ともっとはっきり言った方がわかりやすかったという点は、今後、考えるべきかと思いますが、決済専用のための預金というものを概念的につくり出した。しかし、これは現実のものでは……、預金というのは皆さんどういうふうにお考えになっているか。預金という商品、何ですかというと非常に困るんですね。法律的には何も規定されておりません。消費寄託という点だけの規定でありまして、ほかはそれぞれ慣行の中で、現実の商売の中で、ビジネスとして預金という概念が1つ1つ積み重ねられたものと私は考えております。

したがって、現実のそうした積み重ねられた預金の中で、決済用預金、決済専用預金とは何かと考えてみると、現状では、当座預金は明らかにこの条件に合います。そういう意味で、当座預金は役割として決済用預金であります。1、2の最近できた銀行を除きましては、ほとんどの銀行は、そういう意味ではもう既に決済用預金をお持ちであるわけです。それに対しては保護を加えましょうと。しかし、それ以外にも必要だと、この保護の仕組みが必要である、それを活用してさまざまな新商品を作りましょうということも結構だと思います。そうご判断の方は、この条件に合うものをお作りになったらいかがでございましょうか、こういう仕組みにすることによって、決済機能というものが相当に保全されるのではないだろうか、このように考えた次第であります。

したがって、義務化ということは言うまでもなく、行政指導によって決済用預金を創設することがねらいだとは1つも書いてありません。恐らく「強く期待される」というところに行政指導という、これは本文で言いますと11ページでありますが、「金融機関においても預金者に適切な情報を提供し、「決済用預金」の適正な利用を促すことが強く期待される」、こういうところで、恐らく行政指導で全行一斉に、こういうふうにお考えなのかもしれませんけれども、ここは「決済用預金の適正な利用を促す」ということであって、決済用預金の創設とか、そういうことを書いているわけではありません。やや修辞上のことで、逃げるつもりはございませんけれども、我々としては、少なくともプロジェクト・チームとしては、各行一斉になんていうことは毫も考えていなかったということを申し上げたく思うわけであります。

確かに、ここには新聞記者の方がおられるので、私としては言いにくい面もありますが、どういうわけか、金融庁の行政がぐらぐらしているんだと、プロジェクト・チームもぐらぐらして方針が固まらないで、時間の流れの中で、この1か月の間でエイヤッとこういう結論を出したんだと、こういうふうに理解の仕方がされているようでありますけれども、私どもの考え方は、事実認識の段階からここに至るまで、一貫して1つの筋を追っていったと考えております。もちろん、結論が先にありきでもございません。そういう点では、大げさに言えばプロジェクト・チームの名誉にかけましても、少なくとも議論は混迷していなかったということであります。

しかし、なぜこういうものが必要なんだろうかということについて、当初、委員の間に意見の違いがあったことは確かですし、この決済用預金というコンセプトと、それの実際への当てはめという点について、私などは初めは当座預金というものを念頭に置き過ぎていた。ほかの方々は普通預金を念頭に置いていたというようなところで、やや意見のかみ合わなかったところもあったことは事実でありますけれども、何か、初めから「新型預金をつくらせるんだ」というようなことは全くなかったということを申し上げておきます。

岡部委員のご質問で、留意点の中でシステム対応云々というところ、これは私どもは、こういう新しい決済機能の保護、安定化という制度を活用して、それをどういうふうにビジネスとして、例えば商品開発に使うか。それはそれぞれのビジネスのご判断であって、当然そこではシステム対応ということは考慮の中に入ってくるものだと考えております。したがいまして、一斉に義務化するというようなことになれば、確かに岡部委員のような留意点が先だ、担保されなければならないというご意見になるでしょうが、私どもはそういう考え方を採っておりませんので、留意点ということにとどめられるのではないかと思っております。

以上、私の気がついたところだけ、申し上げたいところだけ申し上げましたけれども、神田委員、ちょっとよろしくお願いします。

○ 神田委員

私もプロジェクト・チームの末席に座っておりましたので、若干お答えする責任があると思います。

いろいろ申し上げたい点はありますが、時間の関係もあると思いますので、大きく2つぐらいのことを申し上げたいと思います。

いずれも事実認識に関わることだということでは、蝋山分科会長のおっしゃった点と重複するかと思いますけれども、2点目の方は、むしろ制度の仕組みを中心にお話ししたいと思います。

第1点目は、まさに現状認識なのですが、98年以来、預金の全額保護ということを政府が宣言して、これまで不良債権処理その他に懸命に官民を挙げて日本は頑張ってきている。報告書で言うと、その結果、金融機関の経営基盤は今なお強固なものとなる途上にあるというのが最初の文章であります。

私などは、金融機関の方々から、「今回のような措置は余計なお世話だ」と、「もう単純に来年4月からペイオフを解禁してもらえばいい」と、「あとの決済サービス等は自らいろいろ工夫して守る」というふうにおっしゃっていただけると本当は一番嬉しいのですけれども、なかなかそうはおっしゃっていただけないわけでして、中にはペイオフの解禁をそのまま全面延期してほしいという要望があるわけです。これは私個人の意見ですけれども、来年4月1日にきちんと解禁すべきだと思っていますけれども、そこはその時のいろいろな事情で、多少の延期ということはあり得ないわけでもないでしょうし、それは最終的には然るべき場で然るべき判断がされる筋合いのものだと思います。

ただ、ペイオフを何年も延長をしてきて、この点は私、福井委員と同じ意見なんですけれども、ペイオフをこのままただ延期するのでは何の規律も働かない。金融機関の体力は、残念ながら今なお強固なものとなる途上にあるということは、大丈夫だとは言えないのではないかというのが現状認識としてあります。そこで、ペイオフをそのまま延期いたしますと、もうただでさえ預金保険機構は現在赤字です。しかし、将来さらに全額保護するわけですから、もしどこかが破綻しますと、どんな赤字を出してでも預金保険を払い続けていかなければいけません。これは預金保険制度そのものが破綻するということであります。制度的には、どんなに赤字になっても預金保険は払われ続ける。巨大な赤字になってどうして払うのかというと、制度的には、それは預金保険機構が借金をして、国がそれを保証して、いつまででも払うことになっているわけです。そういう事態になれば、最終的には公的資金で負担するでしょうし、そういう事態になっていけば、これは今いる人たちは、私を含めて今ある目の前の人を守れていいのかもしれませんが、つけはすべて将来、次の世代ということになるわけでして、そういう状況を作り出すのは好ましくないことは明らかだと思います。下手をすると、今度は破綻すべき金融機関の破綻処理すらできなくなる。トゥー・ビッグ・トゥー・フェイルのみならず、およそ破綻処理ができないという最悪のことにもなる。私は、現状はそのぐらい予断を許さない状態にあると思っております。これは私だけではなくて、恐らくプロジェクト・チームのメンバーで共有したものだと思います。

では、どうするかということが今、問題になるわけですけれども、これは浜委員が2点目でおっしゃったことにも関係しますが、小さな預金保険制度に戻るという意味は、大きな預金保険制度というのは今言ったようなシナリオであります。これは、そういった大きな補助金というか、納税者負担というものをなぜ銀行業だけに与えるのかということの説明がつかないと思います。したがって、方向観として、セーフティネットは小さなもの、しかし強いセーフティネットをという考え方でプロジェクト・チームは臨んだわけであります。

このあたりは蝋山分科会長がおっしゃったことと同じことを、別の角度から申し上げたつもりです。

第2点目ですけれども、では、今なぜか。これは片田委員から、突然こういうことを慌てて検討して、こういう案が出てくるのか。首藤委員からも同じようなご指摘があったと思いますが、今なぜかというのは、これはやはり私は理由があると思います。

それは、現状においては、先ほどご指摘ありましたように、この4月からは特例措置がちょっと変わって、いわゆる普通預金、流動性預金だけを全額保護するという段階に入り、来年4月にペイオフを控え、その中で資金シフトもある、国民の不安もある、そういう現状の中で、決済の安定確保ということの切り口で何か整理できないかということがあるからです。この点について、どうもそういう切り口は理解できないというのが浜委員の冒頭のご指摘だったと思いますけれども、その点については非常に難しい問題だと私も思っています。しかし、少なくとも私の理解では、決済機能の安定確保という切り口で問題を整理するのは、日本の現状においては正しいし、そういう切り口で整理可能だと思います。

ちょっと長くなって恐縮ですけれども、先ほど私、リンゴとミカンの例、余りいい例ではないかもしれませんが、私が物を買って代金を支払う、銀行を通じて支払うわけです。これは、言ってみればリンゴやミカンを銀行に運んでもらうのと同じであります。そこで、運んでくれる人の健全性に問題があって、潰れてしまったという場合、私が失うべきものは、リンゴやミカンを運ぶ運送料、これは払ったものは返ってこない。倒産しているわけですから、本来は返してもらえるわけのものでも一般債権になるのは仕方ないですけれども、リンゴとミカン自体は、やはり私は返してもらって、今度は自分で郵便で送るとか、別の方法で渡し直したい。

ですから、先ほどもちょっと申し上げたと思いますけれども、物を買った買い主は、売り主にお金を払わなければいけません。それは現金書留で払ってもいいですけれども、銀行を通じて預金を使って払っているわけです。銀行が倒産した。リンゴとミカンは返してもらって、今度は別の、現金書留で払いましょう。ところが、預金を通じた決済の特徴として、リンゴ、ミカンとは異なりまして、銀行が破綻しますと、そのリンゴ、ミカンすら返ってこない制度になっている、これが現状なのですね。これはちょっとおかしいのではないかということであります。

現在、唯一安全な決済手段は現金であります。そこで、今回のプロジェクト・チームの考え方は、現金に加えて預金についても、安全な決済手段としての性格のついた預金を用意しようということであります。このことは、福井委員がご指摘になった、なぜ中2階だけでないのかということにも深く関係します。中2階というのは既に決済途上に入ったものですので、高橋委員のご指摘がありましたけれども、これは決済用預金に限られません。どういう預金であれ、それで決済取引が始まったものについては今回の、いわゆる仕掛かり中ということになります。しかし、日本の場合は口座引落しのような形で、決済取引が法律的には始まっていない。けれども、その前日、あるいは2週間ぐらい前、あるいは1か月前に、将来の電気代や水道代を払うために普通預金―ですけれども、今で言えば―にお金を置いておくということが起きるわけでして、この場合、中2階の保護だけでは、決済取引が起動して仕掛かり中の状態になるまでは保護されないわけでして、先ほどの私の比喩で言うと、決済取引が起動する前に破綻が生じるとリンゴ、ミカンそのものを失ってしまうわけであります。

これは、現在は現金という形でたんすに入れておけばいいわけですけれども、預金という形をとれば、1,000万円を超えたら安全な手段ではないわけです。そこで、安全な決済手段ということで物事を考えようというのがプロジェクト・チームの当初から一貫した考え方であります。重要な点は、預金というものを決済手段として見る以上は、当然その裏側には金融機関への信頼というか、健全性というのがあるわけです。両者は表裏の関係です。つまり、金融機関が万全であれば、当然その預金は現金と等しいくらいの安全性が出てくる。したがいまして、今、金融機関は盤石の状態にあるわけではないという現状において、であるからこそ、今こういう考え方が出てきた。すなわち、これは金融機関が完全に健全であるとはいえないという前提の中で完全な決済手段を現金以外に用意するということになると、ここで言う決済用預金というようなものを制度として用意するのが現状ではベストではないかということです。

細かい点もいろいろお答えすべきかと思いますが、とりあえず以上にさせていただきます。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。

私と神田委員から、主要な点についてはお答え―ご納得いただけたかどうかは分かりませんが、お答えさせていただきました。

ト書きによりますと、11時20分過ぎまでに議論が終わらなければ、今日の金融審議会・金融分科会合同会合の第2の議事として考えました中期ビジョンについては次回に回すということなので、金融審議会の進行役である貝塚会長のご了解を頂戴して、この問題をもう少し議論したいと思いますが、よろしゅうございますか。

○ 貝塚会長

全く賛成であります。

○ 蝋山分科会長

それでは、会長のお許しを得ましたので、予定された12時まで30数分、この問題をさらに議論したいと思います。

○ 貝塚会長

30数分ぜひとも議論しなくてはいかんということではありませんので、区切りが来たところで終わるということで。

○ 蝋山分科会長

私の事実認識が間違えていれば幸いですけれども、事実認識としては、それぐらいの時間をかけても、まだご不満なりご疑念は残るのではないかと思います。

繰り返しになっても結構です。前のこういう問題については何も答えていないではないか、そういうご意見でも結構でございますが、さらにご質問なりご意見がございましたら、どうぞお願いします。福井委員、どうぞ。

○ 福井委員

今、神田委員のご説明を承っておりまして、金融審議会として本当に真剣に、重要なポイントを確認しておく必要があると思います。それは金融機関の規律という問題です。

つまり、決済機能というのは金融システムの中で要を成す生命線、最も重要な機能。それを預金取扱金融機関が担っている。しかるがゆえに、金融機関については他の職業以上に強い規律が求められる。これが大原則になっているのであり、今後、議論される新しい金融ビジョンという場合にも、一番根幹の部分をなすと思います。そこに公共性というレッテルを貼って保険でカバーするという思想が入ったときには、基本的にはここに矛盾が起こるので、この矛盾をどこまで許容するかという点については、やはりこの金融審議会としても一番生命線に触れる部分として徹底的に議論すべきではないかと思います。今後のビジョン討論につながる意味でも、私はそう思っております。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございます。まさにそのとおりであります。

ただ、福井委員とは違った、別の極の議論をさせて……、私がそれに賛成であるかどうかはちょっと置きまして。それは、今の福井委員のご意見は、銀行という金融機関を非常に重視したご意見だと思います。いわば銀行というのは不滅の存在であるというわけですね。そして、その銀行とは何か。決済サービスを提供する、決済機能を担う中核である。その銀行が今後も金融機関全体の言わば中心として規律をきちんと持つのは非常に大事なことだ、これは1つの考え方だと思います。

しかし、決済機能を持つ金融機関である銀行が、これからの金融において本当にいつまでも中心になり得るのか。決済機能というのは、中核にある種の決済機能を提供しながら、さまざまな形でだんだん多様化していく。したがって、規律が必要なのは金融機関全体についてであって、改めて決済機能を持つ銀行にのみというよりも、むしろ金融サービス業全体について一定の規律の体系が必要なのではないか。

そういう中で考えておくと、むしろそれを徹底させるためには、決済サービスをベースに、とりわけ決済機能の部分は公的なものとして、公共性の高いものとして切り離してしまった方が、例えば他の機能、資金仲介機能、その他の面での規律の徹底という点で、しかも他の業との間のいわばイコールフッティング、そういう面でもやりやすくなるという考え方もあり得るだろうと思います。

こういう点は、今、福井委員がご指摘のように、これからの金融システムのあり方を考えるときの基本的な論点の1つだと思いますので、ぜひ次回の、今日は延期してしまいましたけれども、中期ビジョンを議論する中においても議論していただければと思います。

浜委員、どうぞ。

○ 浜委員

まさに繰り返しにもなってしまう面がありますけれども、今の福井委員のご指摘と、今のお答えにも関係してくると思いますが、この決済機能の安定確保というときに、その決済機能というものをどこのところで区切るか。つまり、個別決済ということまで入れてしまうということになりますと、これはモラル・ハザードになり、「公共性」という名のもとに個別金融機関を何でもかんでも救っていかなければいけないことになるのではなかろうかと思います。

決済機能の安定確保というときには、そういう狭いレベルではなくて、まさに連鎖の体系の中でシステミック・リスクが生じていくということを、どういうふうに食い止めるかという問題だろうと思うんですね。そういう観点から考えますと、冒頭に申し上げたことに戻っていってしまうんですけれども、断じてすべての決済において支障が生じないようにするという発想になっていくのは、やはりおかしいのではないかと。それは逆に、まさに公共性という名のもとにモラル・ハザードだけが一人歩きすることになってしまって、ここで議論している本来の金融システムの安全性、健全性ということにむしろ反していくことになるのではないかと考えます。

○ 蝋山分科会長

どうぞ、神田委員。

○ 神田委員

今の点、非常に難しい問題だと思います。これはプロジェクト・チームの考え方はちょっと違うと思います。私は専門は法律なものですから、そういう意味では素人の意見なのですが、ちょっと申し上げさせていただきます。

繰り返しになりますけれども、プロジェクト・チームの考え方は、今こういう措置をしなければ、本来は、そのままペイオフ解禁をするのが望ましいわけですが、その場合に、安全な決済手段というのは現金と1,000万円までの預金ということになるわけです。今の制度で申しますと。それでいいか。そういう意味では個別のレベル、リテールと言ってもいいかもしれません。銀行間のセトルメントのことを念頭に置いているのではなくて、そういう足元というか、そこの部分での国民の不安も含めて、今、制度的な対応が必要だし、それこそ政府がすべきことであろうという認識に立っているわけです。

そういう意味では、私は原委員のご意見に非常に近いんですけれども、気持ちの上でも。では、どうするかということなのです。繰り返しになりますけれども、何もしないで済めばそれが一番いいことで、破綻処理を迅速にするということ。それから、安全な決済手段というのは現金と1,000万円までの預金です。多分それでいいのかもしれません。そこは現状認識の問題で、それでは今はいいとは言えないのではないでしょうかというのがプロジェクト・チームの認識なわけです。

端的に申しますと、例えば中小企業にせよ、あるいは地公体にせよ、ある程度1,000万円というオーダーというか金額とは全然違う金額を、主として決済目的のために預金という形で持っている。そういうところに「これはもうやめて、現金で引出しか金庫に入れておいてください」と言うことがいいのかどうか。繰り返しになりますけれども、預金という決済手段の裏側には金融機関の信用があります。したがって、両者は密接な関係にあり、金融機関が健全である、あるいはこれは迅速な破綻処理法制も含めてですが、あればあるほど決済手段の安全性は高まります。

しかし、今はそこに、残念ながら自信を持てる状態にはない。そういう段階で制度として現金、1,000万円までの預金以上に、決済手段そのものとして安全なものを用意しましょうという今回の考え方は、逆に言うと今だからこそ出てきたわけでありまして、本来、冷静に考えれば2年前に議論されるべきだったことなのかもしれません。しかし、今、置かれた状態を前提にして、しかも今後ペイオフ解禁をそのまま延期して膨大な将来世代へのつけを残す、あるいは規律もおよそ効かない、さっきの福井委員の言葉で言えばですね。そういうどれを選択するかという中で考えた結果として、提案されたものであります。

したがいまして、何が決済かということについて浜委員と私ではちょっと認識が違うかもしれませんけれども、それはむしろ今回は、リテール・レベルというんでしょうか、個別の支払ということも念頭に置いているわけです。ただし、銀行を保護しようとか、そういうことは全くありません。そうではありませんで、決済手段を提供するという意味においては、その保護の相手は、あえて「保護」という言葉を使わせていただきますと、保護の相手は国民であり、利用者であります。

○ 蝋山分科会長

貝塚会長、どうぞ。

○ 貝塚会長

私の個人的な意見ですが、先ほど福井委員がおっしゃった点、預金保険の問題をおっしゃいましたが、私、アメリカの金融史を昔いろいろ読んだところによれば、1930年代に預金保険機構ができたんですが、それ以前の銀行はどうしていたかというと、何といいますか、フリー・バンキングの時代というのがあって、自己資本比率が30%とか、そういう水準でやっておりまして、システミック・リスクもそんな大きなことがないという昔の時代があって、1930年代に入って大不況のときに銀行がたくさん潰れて、その後、預金保険制度ができた。

ですから私は、どちらかというと福井委員のご意見に賛成なんですが、要するに、元来もし自由にしておけば、すごい厚い自己資本比率で銀行は仕事をしていて、アメリカの金融史上でもシステミック・リスクもほとんど起きていないというのがどうやら定説のようですね。

しかし、時代はもうすごく変わってしまって、今や全然違った状況下にあって、今の問題を考えていて、預金保険機構自身がある意味で非常に重要な役割を潜在的に果たしているという状況にあって、非常に、何といいますか、金融の長年の歴史の中では、やはり現在は自己資本比率も先進国、押し並べて低くなってきて、それで預金保険機構を世界中みんなが使って、ほとんど世界各国に渡ってあるようです。実際にどの程度使うかは別問題ですが、そういう状況にあるということで、今の日本はまさにその1つとしてあって、どうすべきかということを考えているのが現状ではないか。

金融の歴史から言えば、そういうことで来ましたよということだけ申し上げて。ちょっとつまらんことでありますが。

○ 蝋山分科会長

預金保険機構という非常に現代的な、近代的な仕組みが、乱用されてはいかんと思うんですね。この新しい我々の提案を乱用と見るかどうか、恐らくその差だろうと思います。それは現実をどう見るかということと同時に、やはりトータルとしての対案がきちんと考えられて然るべきである。残念ながら、私どものプロジェクト・チームの中の議論では、これに勝る、現実の問題を乗り越えていく対案は生まれなかったということを申し上げたく思います。

倉沢委員、どうぞ。

○ 倉沢委員

恒久的な制度として決済機能の安定確保の方策というときに、概要の2ページでアンダーラインが引いてあるところですけれども、現金以外に安全確実な決済手段を確保するということが目的である。その場合に、現金と決済用預金の2つだという限定がなぜあるのか。3つでも4つでもあるはずなので、この決済用預金というのは「預金」という概念の中の一部ではないので、決済機関機能というのは、例えば商法では交互計算なんていう制度もありますし、あるいは信用ある会社が決済を受託する商売を始めたりするかもしれない。そういうときに、決済手段に銀行の預金を使うことをそう呼ぶのであって、預金の中の一部というような受け取り方がされる文章だと、ちょっと、先ほどからいろいろ言っているように、新しい種類の預金を強制するのではないかというような議論になってしまうと思うんですね。

ですから、分科会長がお話しのように、預金は金銭消費寄託契約だけれども、例えば決済の受託義務みたいなものを負う商売が出てきて、それが非常に信用があって使い勝手がいいというようなこともあり得るので、そのときに、「預金を決済のために使った場合にこういう概念で呼ばれる」という趣旨が必要だと思うんですね。そのためには、現金以外の安全確実な決済手段は預金に限るというような、2つというような形ではない方が正しい伝え方になるのではないかと思うんですが。

○ 蝋山分科会長

私が倉沢委員のご意見を誤解していなければいいんですが、現金以外に安全確実な決済手段を確保する。確かにおっしゃるように、本文においても幾つかメンションしてありますけれども、考えられるわけですね。非常に現実的なものから言えば、スウィープ口座といったものも1つ考えられるでしょう。しかし、それは確保するというところにまでなっていないわけですね。今、現実的に考えるならば、預金というものの中にそうした安全確実な決済手段を用意するということが、全体としての決済機能の向上、安定化につながるのではないかと判断しているわけです。

したがって、現実には当座預金というものが当然含まれるわけですが、当座預金以外にもいろいろな形の預金が登場してきて、そして、場合によってはこれと結びついた形で突拍子もない新商品も開発されるかもしれない。ともかく、ここでは「預金以外はに安全確実なものがあってはいかんよ」というようなことは1つも申し上げていません。ただ、確保するという意味で、制度的なバックアップのあるものが必要で、それがここで言う決済用預金、決済専用預金というコンセプトではないか。

○ 倉沢委員

そういうことですと、やはり一つの批判として、結局ペイオフ解禁を控えた臨時の制度ということにとどまってしまいはしないかという批判が出てくるのではないかという気がしましてね。

○ 蝋山分科会長

私、ちょっとその辺がよく理解できないからこそ、こういうものを書いたのかもしれませんが、理解できちゃったら、こういうものを書かないと思いますので、神田委員、どうぞ助けてください。

○ 神田委員

私も理解できたわけではありませんけれども、一言だけ感想を申し上げます。

ポンチ絵の最初で、「ペイオフ解禁」と「決済機能の保護」が真ん中で交差していて、「政策目標の両立」と書いてあります。したがって、蝋山分科会長がおっしゃったことの繰り返しですけれども、これは今回は預金というものが決済手段として使われる場合、ペイオフを解禁しますと1,000万円を超える部分は、これは銀行の健全性次第ですけれども、安全ではない。少なくとも現金と比べれば安全ではない。そこを現金と同じレベルに高めましょうという発想をしているわけです。

なぜそうかというと、繰り返しになりますけれども、ここのポンチ絵的に言えば、そういうことをしないと、現下の日本の状況ではペイオフ解禁ができなくなる、規律が効かなくなる、莫大なコストが将来の国民負担になる。それは適切でないという発想ですね。

倉沢委員がご指摘のとおり、決算の手段となり得るものは現金、預金のほかに幾らでもありますし、今後どういうものが出てくるかというのはそもそもわからない。しかし、ほかの決済手段について今、何か政府が動いて制度的な手当てをしなければいけないというようなものが今あるとは、私には思えない。このことは、蝋山分科会長がおっしゃったとおりでして、ほかのものはどうでもいいということでは決してありません。いろいろなものが決済手段として用いられるような世の中にいずれなると思います。しかし、今、私どもプロジェクト・チームが着目したのは、実際問題として支払取引の手段―それを決済手段と言っているのですけれども―として銀行の預金が非常に多く使われているという現実があるのは事実であります。その預金が、決済手段としては、残念ながら現金と比べると安全でないという状態になる。ペイオフを解禁しますとですね。そういうことを認めざるを得ないという現状認識があるわけです。

そこで、このポンチ絵のように、そこの部分については支払取引というもののインフラを確保するという意味から、手段として安全性を制度的に付与しようという考え方であります。

したがって、先ほど高橋委員が混乱があるといけないとおっしゃいましたけれども、「決済用預金」と「用」という言葉を使ったのは、今の考え方を明らかにする意味で、これまで使われていた概念と違う言葉をあえて使ったので、それがかえって混乱を招くのかもしれませんけれども、私どもプロジェクト・チームは、第1回目からこの発想は一貫しておりまして、ただ、どういう用語がいいのか、これは誤解を招かない用語の方がいいということは言えますが、今回の安全な決済手段、すなわち決済用預金の定義に当てはまる以外の預金、その他預金以外のものも含めてですけれども、を使って決済を行うことは、もちろん何ら妨げられませんし、それはそれでまた結構なことであります。

お答えになりましたでしょうか。

○ 蝋山分科会長

ありがとうございました。首藤委員。

○ 首藤委員

非常に素朴な質問なんですけれども、普通預金の1,000万円、これは決済手段に使うんですよね。普通預金というのは貨幣ですから、当然のことだと思います。では、それと新しいタイプの決済性の預金をどうやって区別するのか。例えば、本当は決済手段として使っていなくても、金利がゼロであればそちらに口座を開設するというようなことも当然起きると思うんですね。ですので、そういった全額保護される預金とそうではない部分をどう区別するのか。あるいは区別しないでそのままもう認めてしまって、その点でのモラル・ハザードが生じてしまっても仕方がないと考えるんでしょうか。

○ 蝋山分科会長

金利ゼロですか。

○ 首藤委員

現実問題としては、今、普通預金もほぼゼロですので。それは将来、金利が大きく上がれば別ですけれども。

○ 蝋山分科会長

現在から言えば、仮にUFJ銀行が普通預金の中で約款を修正されて金利ゼロのものをつくりました、そして多くの預金者がそこにシフトしました。それはまさに保護の対象になるわけです。

そういう点では、預金者に今までとどこが―今日の現実を考えてみれば「今までとどこが違うの、余り違わないわね」ということで、寺西さんの窓口、一時的には大変混雑するかもしれませんね。しかし、将来、金利が上がっていったときには、また普通預金に戻す人がいるかもしれない。それはそうでしょう。

○ 首藤委員

ですから私は、金利を犠牲にすれば……。

○ 蝋山分科会長

使われなくなります。

○ 首藤委員

犠牲にすれば、価値保存の手段として利用できるわけですね。恒久的に保護されるわけですので。

○ 蝋山分科会長

そうそう。

○ 首藤委員

ですね。ですので、非常に金利が低い段階では、そういう問題提起が大きく出てくるのではないかと。

○ 蝋山分科会長

どういう問題ですか。

○ 首藤委員

決済手段として使わないで、価値保存の手段としてその預金を利用すると。そして、その機会コストは非常に低いというような問題が出てくるのではないか。

○ 蝋山分科会長

出てくると思います。そういう点では副次的に、我々は正面から取り上げてはいませんけれども、長野会長がご心配のような事態をある程度は回避することができるだろう。いわば同じ銀行の中で、同じ金融機関の中での資金の移動はあるかもしれないけれども、それが業態を超えてとか、小から大へとか、そういうようなご懸念は、ある程度は回避できるだろう。しかし、これは主たるねらいではありません。

神田委員、どうぞ。

○ 神田委員

今の点は、実はプロジェクト・チームでも非常に問題になりましたし、世の中との関係でもなかなか分かりにくい面があると思います。基本的にはプロジェクト・チームではどういう言葉で議論したかというと、退職金をもらって、それを決済用預金に置いておけば、別に決済するつもりはないけれども―まさに保存・貯蔵の手段ですね―、これを全額保護するのはおかしいのではないかという議論がありました。これは1つの目的に1つの手段、1対1対応で規制を掛けることができれば、多分その方が望ましいと考える人がいるのかもしれません。すなわち決済用預金というのは決済目的にしか使ってはいけない。でも、これは事実としても無理ですし、そういう規制を掛けるのは、私は適切でもないと思います。それは、退職金をもらった人が家の中に現金としてたんすの中に置いておくということも、もちろん自由なわけですし、それを何らかの支払、例えば土地か何かを買った支払に充てる、決済に充てることも自由なわけですから、決済用預金というものは、安全な決済手段であるという意味では現金と同じなのですけれども、それを決済目的以外に使うことを禁止するということは、およそできないことであって、例えば、ある人が退職金をたまたまたんすに置いておいた結果、たまたま全額保護される。「たまたま」という言葉がいいかどうかわかりませんが、これは制度としては、やむを得ない。1つの目的に対応して1つの手段という規制を掛けることは適切でもないし、現実的でもない。したがって、結果としておっしゃるようなことは起きるわけですけれども、そういうことをエンカレッジするために制度を作っているわけでは決してありませんで、繰り返しになりますけれども、私ども今回考えているのは安全な決済のための手段の提供、「確保」という言葉の方が正しいと思います。それは1,000万円を超える預金であってもいい。

○ 首藤委員

非常に大きな社会的なコストを生み出す0のではないでしょうか、そういうことが広く起きればですね。

○ 蝋山分科会長

どういうことですか。

○ 貝塚会長

私、首藤さんの同僚なのでちょっとあれですが、私が反論申しますと、やはり預金というのはいろいろな分類があるんですが、実際に何の用途に使われているかということは、非常に多義的なんですね。だから、もともとファンクションとしての決済というものと、実際にある預金の商品がきちっと合うはずがないので、もともとそういうものとしてあって、だから普通預金もまた、実を言うと貯蓄というか、あるいはいろいろな目的で使うということになる。そういうのと同じようなあれがあり得るということであれば、別にそういうものではないかというのが首藤委員に対する私の反論でありまして、神田委員と……。

○ 蝋山分科会長

具体的なイメージとして、郵便貯金の振替貯金というのがございます。これは、それに非常によく似ているんですね。もちろん、郵便局には当座預金というのはないですが、当座預金と振替貯金を足したようなもの、こういうものをどういう形でいつ実行するか、これは個々の銀行にお任せいたしますけれども、そういうものをお作りになるときには、預金保険制度を使って安定性を確保することにしましょうよと、こういうことなんですね。

それが、振替貯金の存在が、もしも首藤さんのような形で多大な社会的コストを生み出す。私はそうは思わないんですが、そして現実に振替貯金が、先月は少し減少したらしいですけれども、一時期うわっと膨らんだというのは、むしろご承知のとおりかと思います。

成川委員、どうぞ。

○ 成川委員

質問なんですが、この決済用預金が一時的なものではない、恒久的な制度で決済機能の安定確保にという提言なんですが、そのときの決済用預金の要件として3要件挙がっていまして、先ほどの神田委員のお話ですと、前者2つについてはロジカルですけれども、金利を付さないというのは今の状況の中で総合的に考えた、そういうお話なんですが、今後、経済状況等が変わって金利も一定程度付くという状況になったときにもこの3要件というのはそのまま続くのか、あるいは当然これは見直しされなければならない課題なのかについて、プロジェクト・チームとしてどういうふうなお考えでしょうか。

○ 蝋山分科会長

私どもは、このままの形と考えます。ただ事実上、例えば、ある一定の金額を超えれば自動的に利子の付く普通預金の方に回しますというような契約を銀行と預金者が行っていくようなことは、十分考えられます。

どうぞ、奥本委員。

○ 奥本委員

質問で申しわけございません。この制度そのもの、これからいろいろな格好で運用されたとき、将来いろいろなバリエーションも出てくるのではないかと思われる面もあるわけです。例えば、ここに書いてありますけれども、いわゆるナローバンクですね。これ、ご検討されたけれども、現実的でないということで云々となっていますが、この辺のところのご議論はかなり突っ込んでされたんだと推測されますけれども、将来こういったものも併用するということは、当然あると考えていいわけですか。

○ 蝋山分科会長

中期的な検討課題として残してあるわけでありますから、いずれ議論していただくことは、私どもプロジェクト・チームとしては希望しております。

いろいろたくさんのご意見を頂戴いたしまして、お顔つきを判断いたしますと、まだ全員の方が「なるほど」というふうには必ずしも思っておられないようでありますけれども、ここでご提案させていただきたいのは、プロジェクト・チームが取りまとめました今日付の報告書、これを金融分科会として了承するという点に関してはいかがでございましょうか。ご了承いただきたいと思いますが。

○ 浜委員

もし了承しないと言ったらどうなるのかというのがありますが、一委員の意見として言えば、私は個人としては、了承したくないということが記録に残ることを希望いたします。

○ 蝋山分科会長

もちろん、1つの対応は、これは議事録が作られるわけですから、その議事録に今のご発言はノートされるということが考えられます。しかし、同時に、やはり私どもは浜委員の反論には納得できないということもご理解いただきたいと思います。

そのようなご発言は、私は構わないというか、むしろ歓迎したいと思いますが、いかがですか。高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

私は、この新型の預金に決済用でないお金が大量に流れ込むというのは、このプロジェクト・チームが検討した趣旨からも不適当だと思います。個人が自己の判断でやるケースはまだしも、金融機関自体がそういうような預金移動で事実上のペイオフ延期につながるような行動をすること自体が、もうペイオフ解禁の精神といいますか、今まで金融審議会が検討してきた精神にも反するわけですから、やはり金融庁にモニタリングをきちんとしていただいて、そういう勧誘行動とか、あるいはそこのお金が非常に増えて、そのお金は貸出しもできないお金で、いつ引き揚げられるか分からないお金なわけですから、その辺を健全性のためにきちんと監視していただくことが必要だと思いますので、できましたらば、この報告書の一文に、その辺の金融庁の役割を書いていただきたいと思います。以上です。

○ 蝋山分科会長

先ほど「適正な利用を促す」という表現がありましたけれども、まさに今の高橋委員のご発言、そういう事態が起きればこの報告書の趣旨にまさに反するわけであります。その点はご了解いただきたいと思います。

ほかにございませんか。

それでは、金融分科会としてご了承いただいたということにさせていただきたく思います。

それでは、この場でこの報告書を総会に提出させていただくということで、貝塚会長、よろしくお願いいたします。

○ 貝塚会長

この場は合同の会合ですので、総会に提出いただいたところで金融分科会は一応終了して、総会としての審議に移らせていただきます。

ただいま金融分科会から提出されました報告書に対して、総会のメンバーの方で何かご意見あれば承りたいと思いますが、何かございますか。

大体非常にオーバーラップして、委員が重複しておりますので、私自身としては、先ほどの分科会で出ましたご議論が、実質的には総会で議論されたこととある意味では重複しているというふうに了解させていただきたいと思います。

今のことにつきまして、特に総会としてご議論なければ、総会として、この報告書を金融審議会答申として正式に了承いたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

ただ、私ちょっとだけ脚注を付けておきますと、いろいろな議論があったことは当然念頭に置いて、その上で今の形で了承させていただければありがたいというのが私の希望でございますが、そういう形で処理させていただいてよろしゅうございますでしょうか。簡単に言えば、少数意見がいろいろあったことを踏まえた上で了承したということですが、そういうふうにさせていただきたいと思います。

以上で総会は終わりたいと思いますが、最終的には、それでは、柳澤大臣に今の報告書を提出させていただきたいと思います。

新聞記者の方が入られると思いますので、ちょっとお待ちください。

〔貝塚会長から答申を柳澤金融担当大臣に提出〕

それでは、柳澤大臣からご挨拶をいただきたいと思います。

○ 柳澤金融担当大臣

答申をいただきましたこの機会に、一言ご挨拶を申し上げます。

委員の皆様方におかれましては、日頃よりご多忙のところを金融審議会の活動にご参加、ご尽力いただきまして、我が国金融システムの諸々の重要な課題について熱心なご議論をいただいておりまして、この機会に改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。誠にありがとうございます。

さて、今般答申をいただきました決済機能の安定確保のための方策につきましては、去る7月31日の総会におきまして検討をお願いいたしましたものでございます。その後、金融分科会に設置されましたプロジェクト・チームにおきまして集中的、精力的にご議論をいただきまして、その上に立って本日、報告書を取りまとめていただきまして、それを先ほど金融審議会の答申として頂戴いたしたわけでございます。

今後、本答申の内容をベースにいたしまして、特に先ほど来ご議論にありました、金融機関におけるシステム対応等に十分配慮するようにというようなこともございまして、それらを中心に、ご指摘いただいた留意点には十分配意をいたしまして、政府として引き続き十分な検討をして結論を得てまいりたいと、このように考えております。

最後になりますが、貝塚会長、蝋山分科会長をはじめ委員の諸先生方には、これまでのご尽力に重ねて深く感謝を申し上げますとともに、今後ともいろいろ引き続いて重要課題が山積いたしておりますので、これらにつきましてもご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、簡単でございますが、本日のお礼のご挨拶にさせていただきます。

どうもありがとうございました。

○ 貝塚会長

それでは、カメラは退室してください。

○ 柳澤金融担当大臣

それでは私、所用で失礼いたします。

〔柳澤金融担当大臣退席〕

○ 貝塚会長

それでは、本日の会合をこれで終わりますが、最初に予定しておりました中期ビジョンにつきましては、9月9日に予定されております次回の金融審議会総会・金融分科会合同会合の議題に延期させていただきます。

それから、本日の分科会の状況につきましては、蝋山分科会長の方から記者会見を行っていただきたいと思います。

どうも、今日は問題の性格上、予定した時間を超過してご議論いただきましたが、本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合はこれで終わらせていただきます。

どうもありがとうございました。

以上

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