金融審議会総会(第12回)・金融分科会(第2回)合同会合議事要旨

1. 日時:

平成14年9月5日(木)10時00分~12時05分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

3. 議題:

  • (1)決済機能の安定確保のための方策について

  • (2)「『中期ビジョン』に盛り込むことが考えられる事項」について

    ※但し、(2)は次回会合で議論。

4. 議事内容

  • 貝塚会長より、開会の挨拶があった。

  • 蝋山金融分科会長より、専門委員の任免等について報告があった。

  • 神田委員(決済機能の安定確保に関するプロジェクト・チームメンバ-)より、「決済機能の安定確保のための方策」について概要説明があった。説明の要点は以下のとおり。

  • 我が国経済におけるほとんどの決済が金融機関の関与する決済機能を通じて行われており、その安定確保を図ることは公共性の観点から必要不可欠である。

  • 我が国においては、小切手を主要な決済手段とする欧米主要国と異なり、金融機関の口座引落し、口座振込等が決済方法の主流。また、預金の保護や金融機関の破綻処理手続に関する各国での法制の違いにより決済機能の安定性に差異がある。このため、他国の例にとらわれず、我が国の実態に即した方策を検討した。

  • 決済機能の安定は基本的には金融機関の健全性を確保することにより図られるものであることから、今般の決済機能の安定確保策は金融機関の健全性確保を基本としつつそれが損なわれた場合に備えた方策として制度設計することとし、その基本要件は、「現金以外に安全確実な決済手段を確保し、それを誰でも容易に利用できるようにすること。」とした。

  • 安全確実な決済手段として、金融機関破綻時にも全額保護される預金(「決済用預金」)を制度として用意すること、また、仕掛かり中の決済取引を円滑に結了させるための措置を講じることが必要である。

  • 安全な決済手段としての「決済用預金」については機能的に定義することとし、第一が要求払いであること、第二が通常必要な決済サービスを提供できること、第三が金利を付さないこと、の三条件を備える預金と定義した。

  • 仕掛かり中の決済を結了させるため、仕掛かり中の決済資金のみを明確に分離したうえで、預金保険機構による資金貸付等の必要な措置を講じることが適当である。

  • 決済機能の安定確保にとって、破綻処理の迅速化は引き続き重要。破綻処理をより一層円滑かつ迅速に進めることができるよう必要な措置を講じることが適当である。

  • 将来に向けての課題として、決済機能の安定確保の必要性は一時的なものではないが、小さな預金保険制度という理念等を踏まえ、必要に応じ見直しを図る必要がある。

  • 実施に当たっては、金融機関におけるシステム対応等に十分配慮すること、金融機関は「決済用預金」の提供に当たり、顧客の利便性に配慮すること、預金者の混乱や動揺を招くことのないよう積極的な広報活動を行うこと等が重要である。

  • なお、個人を中心とする多くの預金者にとっては、少額預金者保護制度のもとでいわゆるペイオフ解禁後も一預金者当たり1,000万円までの元本とその利息は保護されることをここで改めて確認する。

  • 意見交換、質疑応答での発言で主なものは以下のとおり。

  • ペイオフ解禁は、何かがあれば決済に支障をきたすということが前提なのに、これを封じ込むことは定義矛盾である。決済に支障をきたすリスクがあるのは当然であり、それが連鎖的に波及することを回避するということを考えるべきではないのか。
     また、高い預金保険料率設定は当然だが、預金シフトが起きたときに保険料負担が経営を圧迫するという問題がでるのではないか。

  • 新制度導入において混乱を防ぐため、概要にある実施に当たっての留意点、「システム対応に十分配慮すること」、「預金者に混乱等を招くことのないよう預金者に十分な説明を行うこと」を最大の要件とするべきである。

  • ペイオフ完全解禁は、完全無欠の構造改革を行うために重要である。完全無欠の意味は、金融機関の健全性の確保に最大限の努力をして、内外の金融市場からの信任を確立しながらやる。ペイオフ解禁の実質的な抜け道となる懸念のあるものは少なくするべきである。
     決済の仕掛かりの部分の提案は評価するが、決済性預金の保護に踏み込んだことには疑問が浮かんでくる。

  • いわゆるペイオフをめぐる議論があるのは、金融機関の健全化が道半ばということの裏返しであり、預金者及び市場からの信頼獲得のための経営努力を鋭意、継続してまいりたい。
     決済機能は経済の根幹をなすインフラで、安定が確保される重要性は金融機関としても強く認識しているが、決済用預金を導入する際には、商品性の決定に預金者の利便性を最優先する必要がある。システム面のフィージビリティにも十分配慮してほしい。

  • 提案に異論はないが、政策には信頼が大事。もっと早くから議論し決定しておけば、現在のような混乱はなかったはずである。1,000万円までの保護枠に入る預金者まで、大きな関心を抱いているので、国民一人一人が当事者だという考えでPRをしなければならない。

  • 決済機能の安定確保は重要だが、資金シフトは地域への円滑な資金供給を妨げるという問題を起こす。当座、普通、別段を決済用預金とし、経済回復や不良債権問題が解消されるまで、全面解禁を延期してほしい。

  • 最近の報道などでは、決済用預金、決済預金など混乱しているので、全額保護対象のものは決済専用預金としてはどうか。

  • 一番、意見が出せていないのは国民である。今後は、どういう形で導入されるかはきちんと国民に対してPRしてほしい。

  • 新制度の趣旨は理解できるが、恒久的な措置として必要か。これは緊急的な措置であると思う。

  • 事実認識について、現在の金融機関の健全性は預金保険法102条を適用するほどひどくはないが、早期発見、早期是正、迅速な破綻処理が可能な体制になっているかといえばそうでもないと考えられる。

  • 決済用預金を商品設計の中でどう使うかは、それぞれのビジネスの中での判断であって、そこには当然システム対応ということは考慮されるものと考えている。また、決済用預金の導入を義務化するという考えはないので、実施に当たっての留意点として挙げた事項は、あくまでも留意点である。

  • 現状認識だが、98年の預金全額保護以来、不良債権処理等がんばってきたが、「金融機関の経営基盤は今なお強固なものになる途上にあり」という表現にしている。金融機関の人から、「今回の措置は余計なお世話だ」、「来年4月から単純に解禁してもらえればよい」、「決済サービスは自ら工夫して守る」等と言ってほしいところだが、全面延期してほしいという要望もある。このまま延期では何の規律も働かない。そこで、大きな補助を与えるのではなく、小さなセーフティネットで強いものを設計、という考え方で臨んだ。
     今、なぜやるのかという点だが、本年4月以降の流動性預金のみの保護下で資金シフトがおこり、国民の不安もあるという中で、決済の安定確保という切り口で何か整理できないかということであった。我が国においては、物を買ったときに銀行を通じて代金を支払う。これをリンゴやミカンを運送会社に運んでもらうことに例えれば、運送会社の健全性に問題があってつぶれる時、手数料は諦めねばならないが、リンゴとミカンは返してもらえる。しかし、銀行が破綻すると、リンゴやミカン、すなわち送金しているお金が返ってこない。これはちょっとおかしいのではないか。そこで、唯一、安全確実な現金決済に加えて、安全な決済手段としての預金を用意することがベストではないかと考えた。

  • これからも銀行が決済機能の中心かというと、これからは様々な形で多様化していく。規律が必要なのは金融機関全体であって、金融サービス業全体について一定の規律が必要なのではないか。

  • 決済機能の安定確保は何処で区切るのかということになる。個別決済まで含めるとこれはモラルハザードになり、個別金融機関を公共性という名のもとに何でも救っていかなければならなくなるのではないか。

  • スウィ-プ口座もあるが、安全確実な決済手段を確保するというまでになっていない。預金の中に安全確実な決済手段を用意することで、全体的な決済機能の安定化につながるというのではないかと判断した。

  • 退職金をもらい、決済用預金に入れておいて全額保護されるのはおかしいのではないかという点も議論したが、決済用預金を決済目的以外に使うことを禁止することはできない。結果として、そういう問題が起きるとしてもやむを得ないが、そういうことをエンカレッジするために制度を作ったわけではない。

  • 決済用預金に決済用でない資金がシフトし、金融機関自身がペイオフ延期につながるような行動をするということは、金融審議会が検討してきた精神に反することなので、ここは金融庁がモニタリングを行い、貸出しできない資金が集まるということのないよう、健全性の面からも監視していただきたい。

  • 議論の後、「決済機能の安定確保のための方策について」は金融分科会で了承され、総会に提出された。

  • 総会において、少数意見があったことを踏まえたうえで、同報告書が答申として了承され、柳澤(やなぎさわ)金融担当大臣に提出された。

  • 柳澤金融担当大臣より挨拶があった。挨拶の要点は以下のとおり。

  • 答申をいただいた決済機能の安定確保のための方策については、去る7月31日の総会において検討をお願いしたもの。その後、金融分科会に設置されたプロジェクト・チームにおいて集中的・精力的に議論をいただき、本日、報告書を取りまとめいただき、それを先ほど金融審議会の答申として頂戴した。

  • 本答申の内容をベースに、特に先ほど来、金融機関におけるシステム対応等に十分配慮するように等の指摘いただいた点には十分配意をして、政府として引き続き、十分な検討をして結論を得てまいりたい。

問い合わせ先

金融庁 総務企画局 企画課調査室
電話 03(3506)6000 (内線 3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る