金融審議会総会(第13回)・金融分科会(第3回)合同会合議事録

日時: 平成14年9月9日(月)15時00分~17時10分

場所: 中央合同庁舎第四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 貝塚会長

ただいまから、第13回金融審議会総会・第3回金融分科会合同会合を開催させていただきます。

皆様、ご多用のところ参集くださいましてありがとうございます。

本日は議題が2つございまして、一つは「中期ビジョン」と証券市場改革についてでございます。それぞれ1時間程度を目処として議論を願いたいと思います。

まず、前回延期しました「中期ビジョン」についての議論を行い、引き続き事務局より8月6日に公表されました「証券市場の改革促進プログラム」などについて説明していただいた後、証券市場改革の進め方について議論したいと思います。

なお、議事は公開となっておりまして、報道機関の方などのために後ろの方の席を確保しております。本日は柳澤金融担当大臣もご出席であります。開会に当たりまして、大臣からごあいさつをお願いいたします。

○ 柳澤金融担当大臣

第13回金融審議会総会・第3回金融分科会の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。

本日、ご議論を予定されております「中期ビジョン」につきましては、去る7月31日の総会でご検討の開始をお願いしたところでございますが、これにつきまして引き続き精力的なご議論をお願い申し上げる次第でございます。今回、これに加えまして、証券市場の構造改革につきましてご審議をお願いすることとなりました。この点につきましては、昨年8月に「証券市場の構造改革プログラム」といたしまして、とりあえず第一弾というものを発表させていただいたところでありますが、その後におきましても引き続いて、より幅広い視点から、証券市場全般の抜本的な見直しを行いたい、このように考えまして、先月6日にそのいわば各方面のアンケートを取りまとめたような「証券市場の改革促進プログラム」、いわば証券市場の構造改革第2弾としてこれを発表させていただいております。

今回のプログラムの視点につきまして、特徴のある点を何点か挙げさせていただきますが、まずこのプログラムは証券市場を市場機能を中核とした我が国金融システムの中心を担っていくべきものと位置づけました上で、従来より証券市場に参加していただいた投資家にとどまらず、今後参加が期待される投資家の視点を大きく盛り込むということをいたしますとともに、制度の枠組みだけにとどまらず、市場仲介者等の意識や行動にまで焦点を当てて考えると、こういうことになっております。

次に、昨年のプログラムは税制改正要望を控えまして、とりあえず政省令事項を中心とした直ちに行うべき措置を盛り込んだものであったのに対しまして、今回のプログラムは金融システム改革後の動きにも対応した、広範かつ思い切った制度改正を盛り込んだものとなっております。

さらに、盛り込まれている具体的な施策につきましては、スピード感を持って実施することが重要であるという観点から、実施や検討の時期を極力明示しておるところでございます。また、今回のプログラムは多くの法律改正事項を含んでおるのでございますが、これらにつきまして、今回この金融審議会に審議をお願いし、できる限りその成果を次期通常国会へ法案として提出させていただく方向で検討をお願いしておるところでございます。

このプログラムは、改革の基本的な柱として3つ挙げております。1つ目は誰もが投資しやすい市場の整備、2つ目は投資家の信頼が得られる市場の確立、3つ目は効率的で競争力のある市場の構築、これを掲げておりまして、この視点に基づきまして具体的な施策が、この方向性が盛り込まれているところでございます。こうした迅速かつ着実な実施によりまして、証券市場の構造改革が一層促進されまして、幅広い投資家の参加が促進されることを、私といたしましても強く期待をしておるところでございます。

本日の総会・金融分科会合同会議におきましては、以上申しましたとおり「中期ビジョン」、それからまた「証券市場の改革促進プログラム」とその進捗状況を踏まえた今後の証券市場改革などについて、委員の諸先生の忌憚のないご審議を行っていただきますよう重ねてお願いをして、私のごあいさつとさせていただきます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

なお、大臣は公務ご多忙のため、退席されます。

それでは、本日の議論に入りたいと思います。

まずは総会・金融分科会合同会合として「中期ビジョン」についての議論を行いたいと思います。中期ビジョンにつきましては、7月31日の総会でご了承いただきましたように、スタディグループを設けて検討を進めさせていただいております。スタディグループのメンバーは、お手元の資料のとおり蝋山委員を座長として6名で編成されております。本日は事務局より資料「『中期ビジョン』に盛り込むことが考えられる事項」について説明していただいた上で議論を進めたいと思います。

それでは、事務局よりご説明をお願いします。

○ 山沖調査室長

それでは、お手元にあります「『中期ビジョン』に盛り込むことが考えられる事項」ということで4枚の紙を見ていただけますでしょうか。

まず、1ページ目から3ページ目までが将来ビジョンということで書いておりまして、4ページ目の方は将来ビジョンへの架け橋として取り組むべき課題ということで1枚用意してございます。簡単にご説明をさせていただいてご議論していただければと思います。

最初の1ページ目の将来ビジョンという部分については、複線的金融システムへの再構築の必要性ということで、まず必要性を書いています。金融システムを取り巻く経済環境の変化と今後の金融システムに求められる諸機能ということで、3つほどまず経済環境の変化等について説明しています。

1つ目が、我が国経済は1980年代に既にキャッチアップ段階を終えてフロントランナーに位置し、産業分野での不確実性は増大している。さらに、近年グローバル化やIT化が急速に進展し、国際競争が激しさを増す中で、既存産業の空洞化が進行する等、我が国経済の活力は低下していると、このような状況のもと、金融システムが対応しなければならないリスクが増大ということです。

2つ目が、金融システムの基本的機能としては決済機能・資金仲介機能があり、このうち資金仲介機能については、リスクシェアリングが適切に行われることが必要であるが、現状増大するリスクを支えきれていない。また、企業の成長段階等に応じて適切に資金仲介が行われ、その過程で情報の提供機能が発揮されることが期待されているものの、これらの機能についても十分に発揮されているとは言えないということです。こうした金融システムの諸機能を十分に発揮させることが、産業分野の再生に貢献し、ひいては我が国経済の活性化に資するものと考えられる。

3つ目が、資金供給サイドの話です。資産運用については、個人等の資産蓄積が進んでいるが、預金等の安全資産への志向が依然として強い。市場に対する信頼性を確保するとともに多様なリスク・リターン関係を有する金融商品が提供され、金融システム全体で幅広くリスクテイクが行われることが必要。

以上、3つ挙げておりますが、それらの経済環境の変化を受けまして必要性を書いています。

上述したような金融システムに対する要請にこたえるため、今後の金融システムにおいては、産業金融モデルも存続するが、リスクを発見し、管理し、配分するためには、市場金融モデルの役割がより重要になるという意味で、市場機能を中核とする複線的金融システムへと再構築する必要がある。いずれのモデルにおいても、適正なリスク評価に基づくリターンの確保が必要としております。

ただ、ここで2ページの上の方にそれぞれ産業金融モデル、市場金融モデルをこれは何かということでそれぞれ呼び方を書いてございます。産業金融モデルは銀行中心の預金・貸出による資金仲介であり、市場金融モデルは価格メカニズムが機能する市場を通ずる資金仲介と。

次に、複線的金融システムへの再構築に向けた取り組みということで、それぞれの経済主体ごとにまず取り組み方向を書いています。

金融仲介機関の基本的方向性ということで、ここで金融仲介機関というのは、銀行などの預金取扱金融機関以外にも証券会社や投資信託、保険などの機関投資家等をここでは指しておりますけれども、金融システム改革を初めとする制度改革により、環境整備が進められてきており、そのような金融仲介機関自身がさまざまな課題に積極的に取り組む必要があると。

3つの基本的方向性ということで、適正なリスク評価に基づくリターンの確保、2つ目が金融仲介機関の機能の分化・専門化、3つ目が多様な金融商品の提供、アクセスの改善というふうに述べています。

次に、企業・個人ですけれども、多様化する資金調達、資金運用ニーズに対応する金融商品やサービスが提供されていく必要があるが、企業個人についても新たな金融システムに対応した行動が求められる。個人投資家の意識改革や利用者保護が重要ということです。

次に、行政ということでその取り組みですが、金融仲介機関の競争促進のための環境整備、2つ目が市場機能を中核とする金融システムの将来を十分に担える市場とするよう、信頼性確保や効率性向上等のための市場環境の整備、それから3つ目に複線的金融システムの早期構築に資する施策への積極的取り組みが必要と言っています。4つ目に従来の業態を主軸とした金融行政から、機能を主軸とした金融行政への一層の転換が必要と言っています。

次のところは、それでは複線的金融システムの姿はどうなるかということで、複線的金融システムへの転換ということで、与信面にまず着目としてホールセール金融等、それからリテール金融、それぞれホールセールは大企業・中堅企業、リテールは中小企業とか個人だとかそういうものですが、そういうものにまず着目した姿を書いています。ホールセール金融の姿ということで、市場金融モデルへの一層の転換が望まれる。それから、ホールセール金融においては、企業による市場からの資金調達の他、貸出債権の証券化が進展、これにより金融仲介機関はリスクの視点という機能を果たすとともに、市場の持つ価格メカニズムを通じて適正なリスクとリターンの関係を確保することができると。

一方、リテール金融の姿ということですが、そこについては中小企業や個人等を対象とするリテール金融については、リレーションシップを重視する産業金融モデルが依然として有効、ただし産業金融モデルに基づきながらもリスク管理の処方と能力を高めていくことが必要であるというふうに言っております。

あとその他何かあればということです。

次に、市場における資金仲介を担う機関投資家みたいなものについての話ということで、複線的金融システムにおける市場型間接金融の役割という項を立てております。市場における資金仲介は、機関投資家が仲介する市場型間接金融が大きな役割を果たす必要があると。それから、機関投資家は市場取引に係る技術的専門性の他に規模の利益を追求し得ること、分散投資を通じたリスク低減効果を利用し得ることなどから、個人と市場を結びつけるものとしてより大きな役割が期待される。3番目のところで、市場機能を中核とする複線的金融システムにおいて、機関投資家は株や債権への投資の他、銀行が組成した証券化された貸出債権等の引き受けを行うものとしてその存在が大きくなっていくことが考えられ、最終的な受益者のエージェントとしての責任を果たすとともに、その過程で投資対象に対してガバナンス機能を発揮することなどが必要。

最後に、国際協力の確保、アジアとの共生ということです。国際的な市場間競争の中で、金融システムの国際競争力を確保する必要がある。それから、次は金融面・実態経済面でアジアの地域統合の軸となる役割を担うことが、この意味でも一層重要ということです。

4ページの方は、それではということで、将来ビジョンへの架け橋として取り組むべき課題、これは項目を羅列しておりますが、まず基本的考え方ということで、複線的金融システムの構築に向けてということで、複線的金融システムにおいて機能を適切に発揮できるよう金融仲介機関のビジネスモデルの転換等が必要と。それから、2つ目が複線的金融システムにおいて重要な役割を担う証券市場の改革を促進する必要がある。このような1番目、2番目がプレイヤー、あるいはそのプレーする場所を指しておりますが、3つ目は複線的金融システムの早期構築に資する施策への積極的な取り組みが必要ということを言っています。

最初のところは金融仲介機関のビジネスモデルの転換等ということで、まず金融仲介機関のビジネスモデルの転換、金融機関、これは預金取扱金融機関を指してますが、それと次に証券会社、保険会社、そのあと合併促進策、決済機能の安定化、不良債権問題という項目を立てています。それから、証券市場の改革促進ということで、本日2番目の議論にもなりますけれども、8月6日に公表されました「証券市場の改革促進プログラム」、これがビジョンの先取りとして発表されておりますので、そういうところが一つ考えられる。それから、3つ目のところが複線的金融システムの早期構築に資するその他施策への積極的な取り組みということで、簡保・郵貯・政策金融機関を含めたこれらを指す公的金融、それからもう一つは金融商品に関する税制、これら等々と。

一応、本日ご議論いただくための論点として、こういうものをとりあえず出させていただきました。

もう一つ資料が配られておりますが、本日ご欠席の原委員からご意見が書かれたメモが提出されておりますので、お手元に配付しております。

原委員の方からは消費者、利用者保護のルールづくりが重要であるというところから、横断的・包括的金融サービスの法制定の検討を盛り込むことが必要ではないかというご意見が出されております。全部で4枚の紙が出ております。

私の方からの説明は以上ですけれども、最後にちょっと事務的な話で恐縮ですが、マイクにつきましては電源がすべて入っておりますので、何も触らなくてもそのままマイクの方に向かってご発言いただければ大丈夫なようになっております。

私の方からは以上です。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

今のご説明は、7月12日に出されました「金融システムと行政の将来ビジョン」の報告書にある論点と今後の課題について概略ご説明いただきました。

それでは、どうぞご自由にご意見、ご質問などお願いいたします。

○ 井口委員

この報告書に関しまして、損害保険事業の観点から考え方を述べさせていただきたいと思います。

市場機能を中核とした複線的金融システムの再構築ということがうたわれておりますけれども、この再構築に当たりましては、余り単純化してはいけないのかもしれませんけれども、私は大きく5つの要素がかかわっていると思っています。その5つとは、1つ目はリスク、2つ目は証券化、3つ目は資本市場、4つ目は機能別分化・専門化、最後の5つ目は販売の融合でございます。

一般に損害保険は保険料をいただきまして、一定の事故による損害を填補するということを機能にしておりますので、金融の世界では非常に狭い分野の機能を果たしているに過ぎないと思われているかもしれませんけれども、現在の損害保険会社は貯蓄性の保険も販売しておりまして、貯蓄機能、それから保険料によって形成される資産の運用を通じまして、金融仲介機能も果たしております。こういう点から言いますと、決済機能以外の金融機能は損害保険会社もすべて持って、それを日々果たしていると、このように考えておるところでございます。

以上を前提にいたしまして、5つの要素について損害保険会社のかかわりについて以下簡単に述べさせていただきます。

5つの機能に対しましては、損害保険会社は主体的、積極的に関与している部分と補助的消極的に関与している部分と二通りございます。

まず、最初の「リスク」でございますけれども、もともと損害保険会社は火災ですとか自動車事故ですとか台風等の自然災害、こういった事故性、あるいは静的なリスクを中心に引き受けてきておりますけれども、最近では市場リスク、システムリスク、風評リスク、天候リスク等のリスクの引受け、あるいは処理も行っておりまして、ほぼ世の中にあるすべてのリスクを取り扱っていると言っても過言でございません。さらに、このようなリスクの引受け、処理を通じまして、リスクの分析とか評価、これだけを一つの機能として確立しているところもございます。

2つ目の「証券化」でございますけれども、現在は損害保険の技術のみならず、証券化によりまして、巨大なリスクや損害填補の概念では処理できないリスク、こういったものの引受けを行ったり処理を行っております。さらに、他の証券化商品、例えばデリバティブでございますが、このような他の証券化商品の流通促進のために、その保証を行うなどをいたしまして、補助機能を果たしております。

次に、資本市場との関係でございますが、資産の運用を通じまして、資本市場の一員であります機関投資家の役割を果たしているというのはご案内のとおりでございますけれども、巨大リスクなどの証券化をもちまして、証券化を通じて資本市場にリスクを配分する、あるいは証券化を通じて資本市場に配分されたリスクを引き受ける、こういったかかわりを持っております。この過程におきまして、当然のことながら市場における価格機能が発揮されているということは当然でございます。

次に、「機能分化・専門化」とのかかわり合いでございますが、先ほど少し触れましたが、リスクの分析・評価、あるいはリスクマネジメント、リスクの証券化、それからこれは再保険の技術を使って行う部分でございますが、リスクの再配分、あるいはリスク処理、こういったものにかかわる一連の事業を行っている中で、その一部の機能を取り出して機能分化、あるいは専門化して機能の提供をしているということが行われております。今後はさらに進みまして、リスクの引受けと商品の販売の分離、それからバックオフィス機能とフロントオフィス機能の分離等、サービスの効率化、ひいては価格の低下に役立つような機能分化、専門化を図っていくということが我々の一つの使命と考えております。

最後のファクター、「販売の融合」でございます。これにつきましては、損害保険、生命保険、証券化商品、投資信託等のすべての商品を損害保険の代理店を通じまして販売することが可能でございますし、既にかなり行っております。このことは、お客様の利便の向上、販売の生産性の向上に役立つ、つまりワンストップショッピングを実現するという、そういう機能を果たしておりまして、損害保険代理店の役割はこの点では大きいと、このように考えております。当然のことでありますが、我々の作っております商品も他の金融機関に提供して、他の金融機関のワンストップショッピングに役立つ、そのような機能も果たしております。

以上申し上げましたようなことを取りまとめて考えてみますと、損害保険会社の果たす機能も明らかに市場金融モデルの構築の一つの担い手としてやっていけるのではないかなと、このように思います。したがいまして、報告書に示されております将来ビジョンの実現について、中核的な位置づけで参加するということではないにしましても、この考え方に積極的に従って参加をしていくと、このようにいたしたいと思っておりますし、またそうすることが損害保険事業の効率性の向上に役立つと、このように思います。

損害保険会社は、損害保険固有の機能であります損害填補を核としつつ、あらゆるリスクについての解決を提供する「リスクソリューションビジネス」へと進化いたしまして、市場金融モデルが目指す姿で多くの金融サービスを提供する、そういった金融事業を遂行する、これを我々のビジネスモデルにしたいと、このように考えております。

以上でございます。

○ 貝塚会長

それでは、どうぞ他の委員の方、ご自由にご発言。

○ 寺西委員

銀行としての考え方といったものを少し散漫になるかもわかりませんが、述べてみたいと思います。

ここに論じられております従来の産業金融モデル偏重の金融システムに限界が生じているということは、我々銀行で働いている者もそういうふうな認識でございまして、ある意味で金融機関の収益力の向上とか金融システムの安定確保のためにも、産業金融モデル、市場金融モデルがバランスよく併存する新たな複線型の金融モデルへの移行が求められていると、このような認識に立っております。ただ、ビジネスモデルの転換といったものは、基本的には各金融機関の経営判断によって進められるべきだと、このように考えておりますけれどもそれを後押しするための環境整備も非常に大事ではないかなと、こういうふうに思っておりまして、この中で特に3点お願いをしたいなと思っております。

1つは、この中で盛られておりますけれども、公的金融の抜本的な見直しであります。民間でできることは民間でという骨太方針にもございますように、ぜひその辺を貫いていただければと、このように思っております。ある意味で、公的金融機関をアンバンドルして、新しい概念とか目的規定の中でリバンドルをしていくと、例えば住宅金融公庫の例があると思いますけれども、そういったことも含めまして、ぜひ抜本的な見直しをお願いしたいということであります。

2つ目は、業務規制についての不断の見直しをぜひ行っていただきたいということであります。ある意味でこれまでの狭義の金融サービスといったものに加えまして、我々金融機関はこれまで内部で蓄積しております例えばネットワークだとか人材だとか、それから情報といったものを活用できるようなものにやっていただければと、このように思います。具体的には、例えばコンサルティング業務に参加できるとか、例えば人材派遣、我々銀行から企業には派遣しているわけでありますけれども、我々の情報量からしますと、企業から企業への人材派遣にもいろいろな役割が担えるのかなと、こういうふうにも思っております。

3点目は、投資家の育成といった観点でございます。これはある意味で非常に息の長い話だろうと思ってますし、学校教育も含めた投資家教育の取り組みといったものが不可欠かなと思っております。ディスクロージャー制度の充実だとか会計制度の充実といったことで投資家の信頼の向上といったことが必要ではないかなと思っています。いずれにせよ、こういった3点、環境整備をぜひ中期ビジョンの中に盛り込んでいただければと思っております。

以上でございます。

○ 貝塚会長

他にご意見ございましたらどうぞ。

○ 宇野委員

損保さん、銀行さんが言った以上、生保が言わんとちょっと何か変な感じがします。言うまいと思ったんですけれども、先ほど調査室長からご説明のあったこのビジョンというのは僕は非常にいいと思います。一番いいのは、国でも会社でもそうですけれども、明確な方向感を持たない集団というのは閉塞感の中で衰弱してしまう。このビジョンというのは明確に堂々と掲げてほしいというのが第1点です。

それと、この中で私はちょっとつむじを曲げているのは、市場型間接金融の役割に占める生命保険経営の位置ということでございますけれども、今この問題は実は独特の因縁がございまして、生保の歴史の中に身を置いた私としては、機関投資家という言葉はまことに違和感がございます。貝塚先生も思い出していただきたいんですけれども、昔生保は何と言われたかと、資金の限界供給者と言われました。そういうふうにして片隅の金融機関として位置づけられてきた。金融が逼迫しているときには、最後の最後までお呼びでなかった。金融が緩和されたら、真っ先に金を返される機関が生命保険会社だったわけです。機関投資家というそんな厳かな、まして仲介機能を持つというような存在では全くなかったわけですね。そういう原体験の中で成長してきた。

その中で、どういうふうにやったかというと、国家が主導する基幹産業、例えば製鉄だとか公団住宅だとか、そういうところにシンジケートローンを組む以外は株を買うか、当時はベンチャーという言葉はなかったですけれども、みずからの責任でベンチャー企業を発見し育て、長いつき合いをして育てて、そこを融資先として確保したと、それが今日の含みをつくったという現実を持っているわけです。それ以後つき合った会社は含み損を抱えております。

実はそういう中で、生保というのは独特の、ある意味では間接市場というものに対する思いを持っておりまして、実は仲介者という言葉というのは短期的な感じを受けますけれども、生保の仲介機能というのは産業を育てるとともに産業を育てることによって生保の責任である20年、30年の成長を確保するという、そういう轟然とした体質と哲学を持った仲介機能であるということを、まず理解していただきたいという感じがいたします。

それと、もう一つちょっと変わった話ですけれども、生保というのは金融機関の中では郡を抜くほどのリテール産業だと思います。 1,200万以上の契約者がいます。これに6万名の営業職員が展開している。それで、生保もベンチャーキャピタルという仕事をやっています。ところがこのベンチャーキャピタルで、これは大変びっくりする話ですけれども、ほとんど成功案件に結びつくベンチャーキャピタルを持ち込んでくる職員は営業職員です。私のようにスーツを着た総合職は間違ったものしか持ってこない。というのは、人間をどう見るのか、マーケットの情報にどう通じているかということは、投資の知識、そういう企業経営の知識と関係ない。人間をどう見るか、その人をどう仲介するかという機能が非常に大事である。そういう意味で、この生保というのは、産業とともに成長するという側面、それからリテール展開の情報網という側面でこの間接金融市場というものに対して独特の関係を持っているし、これからも末永くそれを続けなければ、30年、40年の健全な資産運用はできないというのが我々の宿命です。ですから、これは何としてもきっちりと仕上げてほしいし、守っていかなければならない。

しかし、それにしても現在の株価の低落、それから社債市場なんかはアメリカの10分の1に過ぎないわけですけれども、この問題というのは基本的に真剣になって考え直さなければいけない。世の中では例えば投信を買ってもらうとか、そんなことがすぐ短絡的に出てきますけれども、そういうことでなしに、そういうことでは全く解決しないんです。株価をどう上げるかでなしに、株を売らないで済む仕組み、それから株を買いやすくする総合的な仕組みというものが大事じゃないかというふうに私は思います。

我々は産業を守らなきゃいかんというギリギリのところがあります。そのときに、時価評価なんて出てきたら売らざるを得ない。何で評価というつまらんことで大事な企業を手離さなければいけないのかというようなこと。アメリカの大恐慌のときに時価評価を捨てて原価法にいって、またよくなって時価法に帰ったときでも、かつて日本にありました84条評価益とか86条準備金に準ずるようなAVRというものをつくって、要するに生保の長期性を守るという、健全性を守るという、そういう措置で迅速に対応してマーケットと生命保険経営との矛盾をそこで迅速に解決するという行動が行われておりますけれども、そういう手を迅速に打つ必要があるのではないかと思います。

それと、先ほど寺西委員が言ったように、本当の市場型金融の役割を活発化するには、すべての金融機関がフェアでなきゃいかんと思うんですね。全くフェアじゃないですよ。例えば、私は簡保を取り上げますけれども、10年間に日本生命が国家に納めた税金の総額は1兆 3,000億円です。10年間に税を逃れた簡保は3兆何千億円なんです。簡保は9兆円ほどの追加責任準備金を積みましたけれども、これらに対する免税額は3兆円ですよ。これは全部民間の場合にはかかってきます。こういうものが市場競争力、オープンなマーケットを形成するはずがない。そういう中で、社債市場が育つかということを、我々はすぐできないということはわかってます。私も子供じゃないですからわかってますけれども、そういうことは明快に理解しておかないと、せっかくの方向感が生きてこないような感じがします。

以上です。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

それでは、関委員。

○ 関委員

今、宇野さんからもお話が出たので、私の感じ方をお話ししたいと思いますが、今は喫近の課題で一番重要なのは複線的市場金融システムをつくっていこうというのは、これは当然のことでありまして、それを担う証券市場がこのまま放っておけば、これは機能不全に陥るという危機的な状況に来ているということだと思うんですね。ですから、きょうは証券市場の構造改革というのが後のテーマに出てくるんですけれども、しかしこの証券市場の構造改革というのは証券市場だけを議論しても、これはどうにも私はならないんじゃないかと。つまり公的金融の問題もあれば、間接金融の問題もある。公的金融の問題は今簡保という話が出ましたけれども、郵貯の問題があって、これもなかなか思うように進まない。間接金融についても実質ペイオフは延期だということになっておりますし、最近では国債の利子は無税にしていこうと、こういうような動きもどんどん出てきている中で、それは証券市場、例えば次に出てくる改革を全部やっても、本当に証券市場が活性化するかどうか、私は大変疑問なんではないかと実は思っております。したがって、証券市場改革はもちろんそうなんですが、ビジョンという以上は公的金融と間接金融と全部横にらみにして、そして端的に言うと直接資本市場がなぜ育たないのか、一体何が阻害要因になっているのか、その大きさはどうなんだと、相互関係はどうなんだということを全部明らかにして、大きい問題も小さい問題もあると思うんです。今損保の方も言われたわけですけれども、しかし何が資本市場を活性化する上で一番大きなネックになっているんだと、それぞれの問題の相互関係はどうなんだと、解決の優先順位はどうなのかということをもう一遍原点に立ち返って、その俯瞰図といいますか、鳥瞰図といいますかというのをきちっと整理するということをやらないと、幾ら複線的な金融システムをつくろうといったって、掛け声ばかりで何も進まないということになるのではないか。現に資本市場というのは本当に機能不全に陥っているわけです。そういう深刻な反省に基づいて、他の金融手段、公的金融の問題、あるいは間接金融の問題含めて、きちっと問題を整理してもらいたいなと私は思います。

○ 貝塚委員

他にご意見がありましたらどうぞ。

奥本委員。

○ 奥本委員

今、関さんがおっしゃったことにつきましては、基本的といいますか、全く賛成でございます。いわゆる複線的金融システムへ移行するという必要があるという、この金融ビジョン、懇話会の主眼というのは、当然のことなのかもしれませんけれども、それが主張の根底にあるということについては、大いに評価できる部分であるというふうに思いますし、全体像の鳥瞰図というのも当然必要なんだと思います。

ただ、ここでいろいろ考えなくてはならない問題もまたいろいろあるのかなという気もします。販売チャネルの多様化という問題についても、それが投資家層の拡大につながることであるならば、大変望ましい、歓迎すべきことなんだというふうに思います。ただ、投資家層の拡大に最も重要なことは、証券市場自体の本質的な魅力の向上であるはずですし、販売チャネルの多様化という問題は二次的な問題ではないかというふうに思います。

また、この報告書の中にございます銀証分離の一つの根拠であった銀行による産業支配云々、つまり懸念を持たれるほど強い存在ではなくなっているという指摘もあり、顧客へのワンストップサービスに向けた検討を進めていく必要があるという表現があるのですが、この中で顧客の、利用者の問題、利用者の立場というものの議論が余りできていないのではないかというふうに思わざるを得ません。つまり、銀行そのものは確かに現在体力的に弱っているのかもしれませんが、しかし預金の取扱いとか決済機能を提供し、給与の振込みとか資金決済口座を使っていることから、顧客の資金状態等に関する莫大な情報を知る立場にあるわけです。もし仮にその情報が軽々に使われるとすると、大変大きな問題、つまり利用者にとって本当にそれが利便性が高いだけで、本当に良いことなのかどうかという問題があるような気がします。また、取引先企業であるとか大株主の企業の情報を利用した利益相反の危険性というのも当然あるというふうに思いますし、その辺のところはもうちょっと突っ込んだ議論が行われるべきじゃないかというふうに感じます。

それと、証券会社のビジネスモデルにつきまして、これは恐らく多様なビジネスモデルというものが考えられていくと思います。免許制から登録制に変わった後、新規参入会社は93社ございます。そのうちの19は外国証券の東京支店でございますが、その他実際の本店機能を日本に持ってきているものを含めまして74社になります。その反面、合併等を含めまして退出した証券会社もまたそれに近い数があるわけでございますが、この新加入の93社は、ビジネスモデルをいろいろ豊かに展開しております。従来の証券会社のイメージと違ったようなビジネスモデルを持った証券会社が多数参加しておりまして、今後ともこの傾向は続くと思いますし、既存の証券会社自身もそれぞれいろいろなビジネスモデルを使っていくと思います。

ただ、現在一番の問題は、従来型の証券会社、つまり対面営業しているような証券会社が本当に顧客に対して親切な営業をしているのだろうかというような部分があるような気がします。つまり、いろいろなルールとかいろいろな過去における問題点のために、これもやっちゃいけない、あれもやっちゃいけないという規制が多分に多過ぎて、本当の顧客の相談相手、つまり資産管理型運用という展開がそのためにできにくくなっているのではないかということを懸念するものであります。後でまたその問題につきまして、いろいろ議論もあるかもしれませんし、また今回の金融庁の一つのモデルの中にはその問題も取り上げていただいております。ぜひひとつ、その辺のところはどうしてやればいいのかということについて、真剣な議論をしていただけるようにお願いいたします。

以上です。

○ 貝塚会長

それでは、長野委員、どうぞ。

○ 長野委員

ごく簡単にお話しさせていただきます。

中小企業専門金融機関、そして協同組織金融機関の立場から、3点、4点ほどこの中期ビジョンに折り込むことが考えられる事項について申し上げます。

その1は中期ビジョンでもホールセール金融とリテール金融の違いをもとに、あるべき姿を明示していますので、今後ともこの方向でお取りまとめをお願いしたいと存じます。

なお、この資料の中には地域金融機関、さらには協同組織金融機関についての記述はありませんが、地方銀行と協同組織金融機関では、同じリテールといっても制度発足の歴史、経緯、組織構造の違い等から、その意味合いが異なっておりますので、その書きぶりについても懇話会報告にあるような区分けが必要であるというふうに存じております。

次に、信用金庫のビジネスモデルについてでございますが、この点につきましては預貸ビジネスをコアビジネスとするものの、そのビジネスの展開については、これまでの審査手法や貸出金利の設定方法、さらにはモニタリング手法等、リスク管理の面からの高度化が必要であると考えております。

さらに3番目、合併促進策についてでありますが、現在金融庁でその環境整備を図るべく検討を進められていると聞いておりますが、この件につきましては、懇話会報告で合併・統合さえすればよいという一律の施策はとるべきではないとあるように、あくまでも経営の選択肢の一つとして考えており、これがすべての経営課題を有効に解決するものではないと考えております。

次に、不良債権問題でございますが、大手銀行が保有する大企業向けの不良債権と私どもが保有する中小企業向けの不良債権とでは、その債権の性質が異なっております。具体的に言いますと、中小企業向け債権の不良化は、バブル時に本業以外の投資をした等といったものではなく、90年代後半の長期不況や地価下落、さらにはデフレ経済といった経済の基礎的条件の悪化に伴うものであります。したがいまして、不良債権問題の記述に当たりましては、その性質の違いに応じた書きぶりが必要であるというふうに考えております。

最後に、追加すべき事項として、協同組織金融の将来的位置づけについてぜひ項目を設け、具体的な書き込みをいただきたいと考えている次第です。

以上です。

○ 貝塚会長

他にご意見ございましたらどうぞ。

○ 江頭委員

1点質問ですが、例えばベンチャー企業への資金供給などということも今後非常に重要なことだと思いますが、例えばベンチャーキャピタルによるベンチャービジネスへの資金供給は、ここで2つ挙がっている産業金融モデル、市場金融モデルのどちらに属すると考えておられますか。

○ 山沖調査室長

これは一回スタディグループで議論になりました。それを紹介しますと、ベンチャーキャピタルというのは、起業時にガバナンス機能を発揮して、例えば経営指導であるとか情報提供とかそういうことをやる、通常の産業金融モデルとは違う意味でのリレーションを大事にした金融モデルではないか、という話が出ておりました。

○ 蝋山分科会長

どちらでもないと思いますね。宇野さんがご指摘のように、昔からベンチャービジネスというのはあったわけでありますし、また昔からそういう企業に対する資金供給というのは行われてきた。そういうふうに、広く役割とその形態を考えてみれば、ベンチャービジネスへのベンチャーキャピタルの提供ということは、どちらでもないというふうに言えます。しかし、産業金融モデルにおけるベンチャービジネスに対するベンチャーキャピタルの供給というのは、それなりのやり方があったと思いますね。恐らく、現在成功しているかつてのベンチャービジネス、例えば松下とか、あるいは現在成功していると言うかどうか知りませんけれども例えばソフトバンクとか、そういうケースの銀行との関係を考えてみると、非常に典型的にリレーションバンキングというものがうまく発揮された例として考えられるのではないかというふうに思います。

しかし、今後そういう従来の産業金融型のベンチャービジネスへのベンチャーキャピタルの供給というのが今後も同じようなやり方で成功するかというと、必ずしもそうじゃないんじゃないと、もう少し市場金融型のモデルの中でのベンチャービジネスに対するキャピタルの資本の提供ということを考えたらいいんじゃないかと。それが今、山沖さんが説明されたような情報の提供とか評価づけとか、あるいはもう少し分散投資の考え方を一将功なりバンクを使うのでというわけですけれども、ベンチャーキャピタルのマネジメントの問題とか、幾つか新しいタイプの問題があるのではないか、そこのところはまだ日本の場合には吹っ切れていないというふうに私は思っています。

○ 貝塚会長

ちょっと私も補足しますが、ベンチャーというのはリスクの要因が非常に大きい。実際の金融機関が対応するのとはかなり違ったタイプのものだということは確かにあるということは、ちょっとそれだけつけ加えておきます。

どうぞ、江頭先生。

○ 江頭委員

蝋山先生、貝塚先生がおっしゃったとおりだと思います。要するに、サラリーマンがやってたらこれはだめなんです。

○ 蝋山分科会長

僕はそうは思わないんですけれども。

○ 江頭委員

銀行とかとはまったく別の世界です。

○ 蝋山分科会長

宇野さんのご紹介があったケースというのは、たびたび宇野さんのご意見をちょうだいして申しわけないわけですが、ネクタイは締めてないかもしれないけれども、サラリーマン、あるいは月給をちゃんといただいている方なんじゃないんでしょうか。そういう点では、サラリーマンだからだめだというふうに決めつけるわけにいかないんじゃないかと思うんですけれども。

○ 江頭委員

サラリーマンというのはあいまいな言い方でしたが、ベンチャーキャピタルファンドの運営者は、ものすごいインセンティブ報酬とものすごいリスクの中に生きている人たちです。アメリカのベンチャーキャピタリストの本を読みましたが、不安で毎晩寝る前に10キロぐらい走らないと眠れない。そういうのがベンチャーキャピタリストだそうでありまして、銀行に勤めていて、おまえ5年間ベンチャーを担当してこいとか、そういう世界ではないように私は認識しております。

○ 貝塚会長

他にどうぞご自由にご発言ありましたら。

○ 高橋委員

消費者の立場から発言させていただきます。

先ほど奥本委員の方から、中期ビジョンには利用者という観点がないのではないかとか、利用者にとっては利便性が高いだけではだめではないかと、利用者の立場に立った議論を行うべきというご意見があったというふうに思います。また、寺西委員の方からも投資家の育成とか投資者教育の話がございました。今日欠席の原委員の方からも、同様の趣旨の意見書が提出されているようでございます。

こうした問題は、実は3年前に大蔵省の管轄下の金融審で議論をしていたことでございます。私は当時のホールセール・リテールワーキンググループの委員でございましたけれども、事実上時間切れという形で中断した経緯がございます。前回、7月31日の会議のときにそれをそろそろ再開した方がいいのではないかという意見を出させていただきました。それに対しまして、蝋山先生の方から、まだ日本の金融システムがそういう段階にないのではないかというふうにとれるようなご趣旨のご回答をいただいたのですけれども、消費者保護、あるいは消費者政策というものを降順位にしていいのだろうかということを、私は大変に疑問に思っております。中期ビジョンには、ぜひ消費者という観点を入れていただきたいと思います。今回のワーキンググループの委員の中に、消費者保護の専門家の方々が入っておられないというのは非常に懸念するところなのですけれども、大きな場でぜひ議論していただきたいというふうに思います。

中期ビジョンの方では、企業に対して個人とか個人投資家という言葉が使われているんですが、消費者という言葉は一切出てきません。以前の金融審のホールセール・リテールのときでも、どういう用語、概念を使うかということは大分議論をしたんですが、当時イギリスの方で消費者という概念がよいのではないかという議論がございました。投資家というのは投資をする人で、売ったり買ったりする人なんですが、預金者とか保険契約者というのは契約をした後のことを言いますので、消費者保護の観点から言いますと、勧誘段階、これから何かをしようとしている者、先ほど証券市場の方の改革プログラムの方のお話でも、そういうこれからの人たちというようなことも考えるというようにご発言があったというふうに思うんですけれども、是非そういう広い意味での消費者という概念での議論というのを金融審議会で展開されるということを期待しております。

私は、国民生活センターの方で投資型金融商品の取引における消費者保護の研究会に昨年から1年参加しておりまして、8月に報告書を出しました。金融庁さんの方にも提言という形でお届けしてあると思いますので、それらをご参考に議論していただければ幸いに存じます。

以上です。

○ 貝塚会長

福井委員、どうぞ。

○ 福井委員

ビジョンに盛り込まれた内容そのものについては、前回申し上げましたとおり私はこれを全面的にサポートし得ると思っておりますが、ちょっと気になりますのは、「ビジョン」ということと「中期」ということです。ビジョンの中身について、その多くは随分以前から既に確認済みのことではないかというふうな気がすること、特に96年のビッグバンのときにかなり具体的にデザインされたことではないかということです。したがって、今改めてビジョンというからには、ビッグバンとどこが違うのかということをもう少し明確にした方がよいのではないか。今全面的に新しいビジョンを持つということでは多分ないのだろう。そこを明確にしてほしいということが一つです。

それから、中期といいますけれども、本当はビッグバンは96年に始まって、昨年の春までに実現しているべきことだったわけで、今後中期というほどそんなに我々に残された時間的余裕があるのかという気がするわけであります。したがって、新しく描き直された部分を含むビジョンについては、単にビジョンを描くというのではなくて、その実現のための戦略的ポイントというふうにもう少し議論の対象を絞った方がよいのではないか。先ほど関委員がおっしゃったとおり、大きなオブスタクルにまともに対応するという部分がないと、またビジョンが単にビジョンで終わってしまうということでは、これは非常に大変なことではないかという気がしております。

○ 貝塚会長

他にご意見。白川幹事さん、どうぞ。

○ 白川幹事

日本銀行は金融市場の一角でプレーをしてますので、そういう立場から金融資本市場の改革というのはどういうふうに見えるかにおいて3点意見を申し上げたいというふうに思います。

今、福井委員のコメントがありましたけれども、過去10年間随分我々はいろいろな金融制度改革に取り組んできて、○×をつけますと随分いろいろ進んできたという感じはいたしますけれども、しかし今到達した姿を見ると、どうも想定したイメージと違うなということを多くの委員がお持ちだと思います。我々がとってきたアプローチというのは、改革を要する項目を洗い出してそれを見直していくという、そういうアプローチであったというふうに思います。それ自体は非常に重要なことですけれども、しかし外部環境が常に変わっていっていますから、その時点では望ましいとされた改革項目も急速に変化していきます。従って、内在的に改革が進む、そういうメカニズムが必要だというふうに思います。そのためには、金融市場の参加者が改革の必要性を実際にマーケットで認知し、それが最終的に具体的な制度改革として当局の方につながっていく、そういうメカニズムがもう少しうまく作用しないだろうかという感じを持っております。これは、多分あらゆる段階で問題があるんだろうというふうに思います。私自身も国債のいろいろな改革にある時期携わっておりましたけれども、いろいろな改革をしようと思いますと、例えば長期的には利益になるけれども目先的にはマイナスだとか、たくさんシステムの開発がかかるものといろいろなものがございまして、なかなか理解を得にくいということがしばしばありました。また、市場改革に向けて専門家の知恵がうまく伝わっていくメカニズムが十分ではありません。日本では基本的にはまず業態をベースとした団体、あるいは個別金融機関が従来そういう役目を果たしていたわけですけれども、海外を見てますと、例えば債券にしてもスワップにしましても、業態ではなくて業務に即してトレーダーの団体、そういう市場の団体が存在していて、それが当局にうまく伝わっていくというメカニズムもございます。また、情報の受け手、これは日本銀行自身も含むことでございますけれども、当局自体が市場の新しい動きを理解していく、そういう実務的な力を持っていくことも大事だと思います。どうしてもビジョン懇談会の報告書ではなかなか取り上げにくいような、そういうふうにどうやって市場参加者の知恵として実現していく、その内在的なメカニズムをつくっていく、これは抽象論ではございますけれども、これは非常に大事なポイントかなというふうに思いました。

公的セクターの話も随分意見が出まして、私自身その意見にほとんど同じでございます。1点追加しますと、先ほど郵貯、簡保の話がございましたけれども、あと公的な年金というものも今日本は年金の中で非常に公的年金が大きな役割を占めておりますので、株式市場であれ社債市場であれ、資本市場がどういうふうに機能するかというときには、公的年金も含めて公的セクターの役割というのが非常に重要で、この点も報告書でぜひ議論していただければというふうに思います。

最後は税制でございます。株式については再三論じられておりますので、ここでは国債を例にとって申し上げますと、国債というのは資本市場が発達する上で、プライシングのベンチマークにおける重要な商品でございます。前回、この席でナローバンクの議論がされました。この点で、現在金利はゼロではありませんけれども、極限的にゼロに近い安全、確実な短期の商品として、現にTB、FBがございますが、しかしこれは今一般の個人、あるいは個人類似法人が必ずしも取得できるというわけではありません。ごくごく素直な発想をしますと、どうやって安全、確実な短期の資産を確保するのかとか、あるいは長期の国債をどうやってレポで活用するのかということがありまして、いずれも最終的には税金の問題とも絡んでおりますので、そういう意味で税制の問題というのは非常に大きな役割を果たしているということだと思います。

○ 貝塚会長

あと余り時間ございませんが、後で蝋山委員長に多少いろいろご質問がありましたので、お答えしていただくことがもしありましたらお願いします。

何かほかにご意見、ご質問ございませんでしょうか、よろしゅうございますか。

いろいろな形の問題提起、あるいはご質問がありまして、私がちょっと証券市場の問題をあるいは戦略的という話がありましたし、それから公的金融問題というのは、側面は非常に広いんですが、もう少しそういう問題がないか、あとは消費者の立場といいますか、そういう点をどう考えるか、ちょっと思いつくままにですが、何か今の段階で。

○ 蝋山分科会長

私は金融審議会におきまして、この中期ビジョンに関するスタディグループの座長ということで、先生方や事務局と協力して、この中期ビジョンをつくるという仕事に今取りかかっているわけですが、先ほど山沖さんから中期ビジョンに盛り込まれることが考えられる事項ということを考えたのは、このスタディグループであるわけです。十分皆さんご認識されてますとおり、私が座長として作成いたしました大臣に対するいわゆる柳澤ビジョン、懇話会の報告書というものがこの中期ビジョンのある種の下敷きになっていることは確かでありますけれども、私どもとしては、これのサマリーをつけて中期ビジョンですよというふうに出すつもりは余りありません。どうしてもこの下敷きになって、これがこだわりがちでありますけれども、可能な限り柳澤ビジョンから少し自由に、政府の中期ビジョンでありますから、政府らしさというものを出したいというふうに考えております。それがうまく成功するかどうかはこれからのまとめ方いかんにもよるわけでありまして、今日のこの考えられる事項のリストは、やや柳澤ビジョンのサマリーという性格が強いようにも思います。柳澤ビジョンは半年をかけて議論をしました。そして、その議論の過程の中でも事態の深刻さはますます深まってきているわけでありまして、しかしその辺の事態の深刻さに関するいわゆるデフレ不況に関する認識の度合い、あるいは証券市場の機能不全といった点に関する認識の度合いは必ずしも柳澤ビジョンにおいて強くあらわれているかというと、必ずしもそうではないんではないかというふうに思います。私個人としては、中期ビジョンの中にはそうした強い現在のデフレ不況に対する問題意識を折り込みたいと、そこにおいていわば経済の活性化、そのために金融が何ができるかと、証券市場が何ができるかということを、どういう金融にすればもっと活性化につながり得るのかということは申し上げたいというふうに思います。

2番目は福井さんからのご質問なんですが、96年のビッグバンとどこが違うのと、こういう問題提起であります。これは全然違います。私は96年の証券取引審議会における証券市場の改革プログラムに書かせていただきましたけれども、一生懸命書いてもどうせあれは証券局だったんです。証券局のビジョンとしてしか通用しなかった。初めは、全体の金融行政の勢いの中核に位置づけられるかという意気込みで出発したわけですけれども、残念ながら証券局どまりでありました。銀行局は銀行局で、国際金融局は国際金融局でそれぞれのいわばビジョンをおつくりになって、ビッグバンとして足し合わせてそれでおしまいと、それを統合して何が一番重要かというような判断を、残念ながら大臣をはじめ当時の行政当局はなさいませんでした。私はそんなふうに認識しております。

しかし、今日の例えば柳澤大臣のごあいさつにもありますように、この証券市場改革プログラムのところで証券市場を市場機能を中核とした枠に金融システムの中心を担っていくべきものと位置づけた上で云々と、こういう明確な表現があります。いわば従来のさまざまな業務分野の、業態のそれまで保全として証券市場を位置づけるのではなくて、証券市場を日本の金融全体の中核として位置づけるという方向でやっていこうというのは、私は大変新しいアプローチではないかと。そういう点では、かつてのビッグバンといわばビッグバンのそれぞれの業態、市場の取引の場のいわば寄せ鍋のようなものから、もう少しきちんとした、すき焼きであるのかしゃぶしゃぶであるのかわかりませんけれども、明確なものに一つに変わっているのではないかというふうに思います。

それから、もう一つ公的金融については、率直に申し上げると、公的金融しか今日本の金融の変革の主体として残された期待を担える主体はないんじゃないかというのが、私の個人的な感想です。これは、作業グループの感想ではないと思います。作業グループでは、変革の主体として、活性化の担い手としてまだ考えられる主体はあるよというご意見が出てくるだろうとは思いますが、私個人としてはそんなふうに考えています。96年以降の枠組みの改革としては、制度の改革としてはほぼ実現いたしましたけれども、残念ながらプレイヤーが新しい枠組みを十分に活用するような活気がなかった。このビッグバン以降の証券市場の中心としたものを新しい金融の中核に位置づけることで、そこでその場をフルに活用して何とか金融を新しいものにしていこうという動きのプロセスの勧誘する担い手として、今一番期待できるのは公的金融ではないだろうかというふうに思っております。

そういう点では、先ほどどなたかが、寺西委員でしたか、お触れになりました住宅金融公庫のようなものの変貌というものを評価したいというふうに思っております。ただ、これが次にいわば市場型の政策金融機関の変貌がさらに民間の力を引きずり出して、そしてここで考えられているような複線型の金融システムの完成につながっていくかどうかということについては、まだもちろん不確実性はありますけれども、一番総体的に高い確実性があるのはそういうものではないだろうかというふうに思います。ですから、公的金融の改革というのは、田中さんは重要な役割を担っているわけでありますけれども、少しスタンスは似ているところと似てないところがありますが、我々なりに複線型の金融システムへの変革の担い手の候補の一つとして、もちろん公的金融をそのためには変革せざるを得ないわけです、変革しなければいけないわけですが、そういう改革のプロセスにある公的金融というものについて、私はもう少しプラスに考えております。

以上です。

○ 貝塚会長

一言だけ私から蛇足に近いことですが、マクロ経済の動向というのは非常に、この話は金融の中で話がいろいろ書いてあるんですが、マクロ経済全体の動向が非常に日本の結果的に、もちろん原因と結果は非常に結びつきが複雑ですが、1990年代の日本経済というのはいかなるものであって、その中で金融システムといいますか、その点が多少マクロ的な視点がどこかで最初の方にちょっと書かれていた方がいいんじゃないのかなと、余り金融機関がすべて責任を負わなくてはいかんとか、あるいはそうではないとかということじゃなくして、そういう広い観点からの多少その視点が必要ではないかと思います。

それから、もう一つは、これは昔から蝋山さんが今から10年以上前から主張されてきた市場型間接金融、ですから直接金融と間接金融という分類ではなくして、間接金融であっても市場を通じていろいろやることが非常に重要だというのは、私の理解するところ間違ってなければ蝋山説の一番おもしろい点でありまして、それがまさに今のポイントとして入っているんじゃないかというふうに私は理解しております。その点だけちょっとつけ加えまして、これは蛇足でありますが。

いろいろご意見いただきましてどうもありがとうございました。

○ 田中委員

私は蝋山さんが言われた公的金融の位置づけは根本的に反対であります。今、世界のニューヨークとかロンドンとか、そういうところで運用している人たちが日本にやって来て言うのは、日本はダイナミックな、要するにアメリカに部分的に代替するマーケットを担うというダイナミックな姿が一つあると。もう一つは、とてもそんなことは無理だけれども、しかし効率的で安定して、しかし退屈なマーケットになると、これは2つのケースがあって、しかし今はそこにもいけないのではないか、公共債の発行残高が多いというのはみんな言っている話ですが、それ以外に暗黙の政府保証で政府がかんで資源配分に関与している分野が極めて大きい。もし蝋山さんが言われるように、住宅金融公庫の後継である独立行政法人が暗黙の政府保証の下に、要するに例えば民間銀行がつくる住宅ローンを買って、それをバンドルして何かマーケットに出すというのは、政府保証を背景として価格をつけるというのは、そんな価格は今後21世紀においてあるべき資産市場におけるベンチマークにならないわけです。しかも背景に暗黙の政府保証があるといえば、それは名前がいいですから通るでしょう。通るということはどういうことかというと、その分野における資源配分がゆがめられるということなので、そんな公的金融の後継者にそういう美名を与えて、資源配分上大きな役割を与えるということは、21世紀における日本の資源配分の根底を覆すということなので、とても私はそんなものが日本のあるべき金融のビジョンというか、その骨格に位置するとは到底考えられない。住宅金融公庫は廃止されるのであって、独立行政法人で何か新しい業務を担って、政府信用の名の下に、暗黙の政府保証の名の下にその部分が拡大したなんてとんでもない話だというのが私の考え方で、もしビジョンがそういうふうに、まだこれから議論するんでしょうけれども、もしそうだとすれば全然違うというのが私は今の時点で申し上げたい。

○ 貝塚会長

1点だけ申し上げますが、先ほどの蝋山さんのご意見は全くの個人的な意見だと私は理解しておりますので、その点はそうですよね。

○ 蝋山分科会長

もちろんそうですが、田中さんの意見は……。

○ 貝塚会長

蝋山・田中論争をここでやると大変でありますので、ここの報告書にはそういう趣旨は……。

○ 蝋山分科会長

それはわかりません。それはこれからスタディグループでどういう議論をするか、そういうことにもよるわけですが、一言だけ申し上げますと、ビジョンとしてそういうことを書いているわけではありません。ビジョンへの架け橋として書いているわけです。どういうふうにビジョンを実現させるか、将来の姿というものについては恐らく田中さんと私とではほとんど意見が違わないというふうに思いますが、それをどう実現させるかというプロセスについて、ぜひオルタナティブがあれば教えていただきたいと思います。田中さんのホームページを私も愛読しておりますので、ストリートジャーナルに出たキンドルバーガーのコメントからの発言だというふうに私も理解しますが、キンドルバーガーもやや間違っているところもございます。そういう点も含めて、私はビジョンとして申し上げているんじゃなくて、ビジョンとしての架け橋として申し上げているということだけはご理解いただきたいというふうに思います。

○ 貝塚会長

この辺で論争は一応中断ということにいたしまして……。

○ 蝋山分科会長

こういうものはすごく大事なんですよ。こういう場でなければなかなかできないわけなので。

○ 貝塚会長

わかりました。

これは、今司会者としてはここでそのままやっていただくと大変だということもあるんですが、一応とりあえず今までの段階で各委員のこの報告書に対するリアクションといいますか、ご意見を伺いましたので、それをスタディグループで報告書を取りまとめていただく際に、今日のご意見を非常に踏まえて総会にご報告いただけることと考えております。

以上で金融システムの将来ビジョンについての議題は終わりまして、続きまして今度は全く違うことでございますが、8月6日に公表されました「証券市場の改革促進プログラム」及びこれを受けました今後の証券市場改革についての議論を行いたいと思います。

まず、事務局より、「証券市場の改革促進プログラム」及びプログラムの一部である「銀行と証券会社の共同店舗、銀行の有価証券売買等の書面取次ぎ、信用取引に係る価格ルールの導入に伴う内閣府令及びガイドラインの改正」の案でございます。それから、「公認会計士制度をめぐる議論」についてご説明をお願いいたします。その後に、今後の証券市場改革について幅広く議論を進めたいと思います。

それでは、事務局、お願いします。

○ 乙部市場課長

市場課長の乙部でございます。

手元の資料の「証券市場の改革促進プログラム(概要)」、2枚の紙でございます。これに沿いまして説明させていただきます。

プログラムの基本的な構造、それから特色につきましては、大臣が冒頭のごあいさつでお話しされたとおりでございます。証券ビッグバンを初めとする一連の制度改革の結果、日本の証券市場をめぐる制度といたしましては、ほぼアメリカ並みのものが既に整備されておりますが、またその成果としましても、競争を通じまして株式に対する委託手数料が大幅に低下しておりますし、ネット専業証券会社といった特色のある企業も出てきております。また、銀行でも投資信託を販売して成功しているという成果は出てきておりますけれども、他方で実態経済の停滞に大きな原因があるとは言いましても、証券市場は現状では非常に活力に乏しいものになっておりますし、それから個人の金融資産に占める株式ですとか投資信託の比率を見ましても、両方足して7%という状況でございまして、金融制度改革前と比べて増えているわけでもございません。制度改革がねらった結果が実現していないわけでございます

こういう現状を踏まえまして、金融関係者からのヒアリングですとか、それから内閣広報室が 2,000人余りの人に対して行いました対面調査の結果を踏まえましてまとめたのがこのプログラムでございます。先ほど関委員からご指摘もございましたが、これは証券市場に直接関係する方々及び制度についての広範なプログラムではございますが、間接金融ですとか公的金融の問題を扱っていないという限界はございます。中身は3つの柱からなっておりますが、1つは誰もが投資しやすい市場の整備ということでございまして、この中に5つの項目がございます。1つは、証券会社による販売チャネルの拡充でございます。何といっても投資家が証券市場にアクセスする一番のチャネルでございますが、この拡充ということで証券会社を設立する際に要する最低資本金、今1億円でございますが、これを引き下げ、多様な特色ある証券会社が参入してこれるようにしたいと思います。同時に、不適格な株主については排除できるよう、ルールの導入も検討いたします。また、現状証券会社には販売代理店制度が認められておりませんけれども、これについても導入できるよう、法律改正を考えております。

それから、信頼性の向上に向けた業務のあり方の検証というわかりにくい柱がございますが、内閣府の世論調査によりますと、証券会社を身近な存在でないと思う人は70%弱、信頼できるとは思わないという人が50%弱いるわけでございます。この大層は今まで証券取引をしたことのない人でございますので、そういう前提で考えていただく必要があろうかと思いますが、イメージの問題としてこういうふうに思われているということは大変遺憾であろうと思います。証券会社ご自身大変努力されているとは思いますが、行政としても実態がどうであるか、どこに問題があるか、検証してみたいと思っております。

取引一任勘定の見直しにつきましては、損失補填の温床になっているということで、厳しく制限されておりますけれども、他方で利用する顧客の利便性向上という観点から、問題のないものについては緩和できるのではないかと考えております。

2つ目が銀行による有価証券の販売でございます。これも先ほどの世論調査によりまして今まで証券投資をしたことのない人に今後証券投資をするとすれば、どこと取り引きしたいかというご質問がございました。証券会社と取り引きしたい人が12%、銀行と取り引きしたい人が22%、どちらでもいいという人は15%ぐらいいたわけですが、銀行も一つの販売チャネルとして有望でございますので、この活用ということで、1つは銀行と証券会社が共同店舗を持てるようにしたいと、一つのフロアで利用できるようにしたいと思います。

資料3-1に資料がございますが、瑣末でございますので、口頭で説明させていただきますが、現行のガイドラインでは、銀行と証券会社が共同で店を持つ場合は固定された壁がなければいかんとか、出入り口は別でなければいけないと、要は共同店舗は持てないような形になっておりますが、こういうものを廃止いたしまして、同一のフロアで営業できるようにいたします。ただ、窓口は別にするとか、一定の誤認防止措置は必要でございます。

それから、銀行が有価証券売買の書面取り次ぎを今法律上できますけれども、現実に扱っているところは少ないわけでございます。これができますようにガイドラインを策定いたしたいと思います。概要は資料3-2につけてございますが、銀行が行っている業務内容の説明ですとか、ポスターを備えることができるとかということもできるようにいたしますし、それから最初契約を結べば一定の時期に一定の金額で同じ株を買い増していくというようなこともできるようにいたします。

投資信託・投資顧問につきましても、証券会社と同じように特色ある業者が参入しやすいように、資本金の引き下げ、それから主要株主ルールの導入を検討いたします。

それから、投資知識の普及・情報の提供でございますが、これも世論調査によりますと、株式投資を今後ともするつもりがないという人が80%、投資信託についても投資するつもりがないという人が9割弱、その方々に理由を問いましたところ、3つの大きな理由がございまして、1つは十分な知識がない、それから損失の発生するリスクがある、まとまったお金がないということでございまして、損失発生リスクというのは裏返してみればリターンとの関係でございますので、これもある意味では十分な投資知識の問題とも関係してくると思います。まとまったお金につきましては、株式の場合は大体50万円ぐらいのお金が投資に必要でございますが、投資信託ですと1万円単位から投資できるのが現実でございますので、この点についても投資知識の十分な普及・情報の提供がなされれば、かなり改善していこうかと思いますので、文部科学省への教育分野での要請とか、それから業界団体、NPOとの連携を図って地道に努力していきたいと思います。

それから、投資家の積極的な参加を促す税制措置の要望でございますが、既に15年度の税制改正要望を幾つかやっておりますけれども、昨年措置していただきました措置、複雑でわかりにくいという声もございます。その原因の一つには、いろいろな特例措置が非常に短期間のものに限られているということがございますので、これを長期のものに変えるよう要望しております。1つは、株式の譲渡益課税で3年間の特例として税率を10%に引き下げる、100万円までは非課税という特例が今ございますが、これを10年間の措置に延長していただきたいという要望をしております。それから、 100万円まで今非課税でございますが、これに上乗せいたしまして、入門的な投資商品であるETFについて、上乗せで 100万円の非課税枠を要望しております。それから、長く保有していただくというのを促進するために、配当課税の軽減も要望しておりますが、現行制度では1銘柄年間10万円までは20%の源泉徴収で済んでおります。それを超えますと総合課税になりますが、これについて改正要望として1銘柄50万円まではこの20%の源泉徴収で済むように要望しております。

それから、2つ目の柱は投資家の信頼が得られる市場の確立でございます。これも内閣府の世論調査でございますけれども、証券市場を活性化して多くの個人投資家に市場に参加してもらうために、政府がなすべきことは何かという問いに対して、一番上に上がってきたのは景気の回復でございました。その次が不正行為の規制監視をやってもらいたい。3番目が企業に財務状況、証券に関する情報をわかりやすく公表させてもらいたいということでございました。

公正な取引への要望は投資をしている人、それからしていない人にとっても非常に関心の深い事項でございます。当局といたしましても、監視委員会の体制・機能の強化を図って、ディスクロ違反に対する監視の強化とか、悪質な市場仲介者に対する検査・調査の充実を行ってまいります。

それから、米国の不正会計事件を踏まえた会計・監査の充実・強化も図ってまいります。この点は後ほど開示担当参事官の方から説明いたしますので、ここでは省略いたします。

3番目が市場における公正な取引の確保を加えておりますが、一番上に信用取引について公正な取引を確保するための価格ルールの導入というのがございます。資料3-3にございますが、これは大変技術的な仕組みでございますけれども、実際に株を持たない人がどこかから株を借りてきて空売りをするというのがございます。このとき生保とか、それから信託銀行のような機関投資家、生保を機関投資家と言うと異論がある委員もいらっしゃるかと思いますが、こういう機関投資家の方から相対で借りてきて売るというやり方もございますし、それから証券金融会社を通じて自動的に貸してくれるシステムがあるんですけれども、この2つのルートで借りて売るというのがございます。

現行の制度では、機関投資家から相対で株を借りて空売りをする場合は直近についた公表価格以下の価格で空売りをしてはいけないというルールがございます。相場操縦の予防的措置として不当な売り崩しを防止するルールでございます。

他方で、証券金融会社から借りて売る場合には、こういう価格ルールがございません。証券金融の利用は本来的には個人投資家を想定していたわけでございますが、現実を見ますと半分以上を証券会社が利用しています。プロからすれば、機関投資家から借りようが証券金融会社から借りようが同じでございまして、片方についてだけ価格ルールがあって、片方にないと、それは価格ルールでできないことはルールのかかってないところでやるのは当然でございます。これではマーケット全体として公正な価格形成はできませんので、今回の内閣府令の改正によりまして、証券金融会社を利用した空売りについても同じような価格ルールをかけることにいたします。これは米国でも同じように導入されているルールでございます

その下に小さなポツがございますが、店頭登録市場における見直しでございますが、店頭登録市場では、証券会社がマーケットメーカーとなりまして、売値・買値を提示して、個人投資家はそこに行って売り買いするわけでございますが、マーケットメーカーによってその提示する価格が違う場合がございます。この場合でも、現在のルールでは顧客が行った証券会社の値段で執行されてしまいますので、隣の証券会社でもっといい条件の価格が提示されていても、顧客はそれを知らなければそこと取引できないという問題がございます。これは大変苦情が多うございますので、小口の取引についてはどこの証券会社に取引を持ち込んでも、一番条件のいいところで執行できるような仕組みに改めることにいたしております。

それから、4番目、5番目がディスクロージャーの充実とコーポレートガバナンスでございます。これは、証券市場における投資対象とでも言うべき企業に対する投資家の信頼の向上を図る施策でございます。ディスクロージャーについては、有価証券報告書にありますリスク情報の開示を充実したいと思います。企業の将来に暗い影を投げかけるような情報について詳しく開示していただく。

それから、上場企業については四半期開示を行っていただきたいと思っております。現在我が国は半期開示、6カ月ごとの開示でございますが、アメリカでは四半期開示になっておりますし、アジアでもシンガポール、マレーシア、中国も四半期開示がどんどん進んできております。今年の6月に閣議決定いたしました「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」におきまして、この四半期開示の充実というのが盛り込まれまして、これを受けて証券取引所におきましては、16年4月に開始する事業年度から諸外国と遜色のない四半期開示を義務づけるというアクションプランを打ち出しまして、現在その財務要領を準備中でございます。

企業におかれましては、その製品開発ですとか事業努力に競争の中で大変な努力を行っていると思いますが、この努力と同様のウエートをこういう投資家の方にも向けていただきたいというのが、これらの施策の背後にある私どもの気持ちであります。

4番目が、効率的で競争力のある市場の構築ということでございます。世界に目を向けた中長期的な我が国市場のあり方の検討、これは現行の取引所をめぐる法制は基本的には一つの国の中の取引を想定しておりますけれども、現実を見ますとグローバル化ですとかIT化が進展しておりまして、ヨーロッパ、アメリカでは取引所の提携とか、それからITのネットワークを使った取引というのも進展しておりますが、これらの動きについて非常にルールが追いついていってない面もございますので、総点検をいたして所要の改正を行いたいと思います。

それから、直ちに行うべきこととしてはマル2でございますが、上場廃止基準を厳格化して取引上場銘柄に関する信頼性の向上を図るとか、あるいはベンチャー企業の資金調達を容易にするため未公開企業の株式売買市場を拡充する、あるいは私募債市場の拡充を行うこういった検討を行うこととしております。

それから3番目でございますが、証券決済システムの改革ということで、現在社債まで新しい法制を整備いたしましたが、今後株式も含めた証券決済システムを一刻も早く完成させたいと思っております。

最後に、証券化・流動化の促進でございまして、住宅金融公庫の住宅ローン証券化を支援するため、これらの証券化された商品が円滑に流通するよう、金融庁としても支援していきたいと思います。

最後になりますが、ここに挙げられたプログラムの並んでいる順番については、特に重要なものが先に来ているというわけでは必ずしもございません。まとまりのいいものでくくってあるということでご理解いただければと思います。

○ 羽藤企業開示参事官

それでは、「公認会計士の制度をめぐる議論」についてご報告申し上げます。

お手元に、資料4として「米企業会計改革法成立までの経緯」と題する紙から始まる資料がございますけれども、これの後ろから2枚目に「公認会計士制度部会のこれまでの審議状況」がございます。このこれまでの審議状況につきましては、昨年1月の総会で諮問がございまして、昨年の10月から片田委員を部会長とする公認会計士制度部会の下で2つのワーキンググループを設けていただいて、一つのワーキンググループは試験制度について加古委員に、もう一つのワーキンググループは監査制度について江頭委員にそれぞれ座長を務めていただいて審議に取り組んでいただいているところであります。適正・公正な監査の確保、あるいは公認会計士の質の向上、それから環境の変化に合わせた監査法人制度のあり方、こういった課題を中心にアメリカを初めとする内外の制度比較や、あるいは国際的な動向などを踏まえて、幅広く議論を重ねていただいているところでございます。

本日、午前中も合同のワーキンググループの開催がございまして、事務局としてはアメリカの企業会計改革法のご説明を申し上げながらも、専門的、具体的な取りまとめに向けた審議を加速化していただくということでお願いをしているところでございます。

アメリカの企業会計改革法は、そういう意味ではちょうどこういうタイミングで、我が国における公認会計士、あるいは監査法人の制度のあり方を検討していく上で非常に重要な示唆をもたらすものだというふうに思っております。

それで、資料4の冒頭に戻らさせていただきますけれども、ポイントをご紹介を申し上げます。

この法律の成立に至る経緯については、既にご案内のとおり、7月30日、この一番下にございますけれども、大統領が署名をするというふうに至るまで、エンロン社の事件、それからブッシュ大統領が3月に10の提案をしたということで、企業統治の強化、監査の充実、経営者の不正行為防止といった、公認会計士の分野にもちろんとどまらない幅広い議論がアメリカの中で行われ、そして議会では下院において法案が可決をされ、そして上院においても法案ができ、両者が協議を経て罰則の強化という点が非常に強く打ち出された、そのような経緯をたどっておる次第であります。

そして、7月30日の署名成立をして以降、SECが関連するルールを、例えば先般も報道がございますけれども、財務諸表に対するCEO、CFOによる署名というものを義務づけていくということについて、詳細なルールの策定をしたりということで、現在、この法律の施行に関係するいろいろな規則などが検討されておると、そういう状況でございます。

この法律でございますけれども、1ページめくっていただきまして、骨子と書いた紙が4枚ございます。柱は大きく3つございまして、1つは監査法人の独立性の確保、それから2つ目が監査法人の監視体制の評価、そして3つ目の柱が次のページからでありますけれども、企業責任の強化と、以上の3つの柱から成り立っております。

特にまず監査法人の独立性の確保についてでありますけれども、監査法人がコンサルティング業務などを初めとして、8つの項目が法律で挙げられていますけれども、監査を行っている企業に対して、非監査業務の提供を原則として禁止をするということが法律で明記をされているということであります。もっとも税務業務などの一部の業務につきましては、監査委員会の事前承認を条件に認めるというふうになっておりますけれども、コンサルティングなど非監査業務と監査業務を分けるということが、これまでのエンロンと監査法人との不明朗な関係というふうな教訓の中で法的に位置づけられたということであります。

また、マル2でありますけれども、会計士が同一企業の監査を5年以上行うことを禁止するということで、現在でもアメリカの公認会計士協会では、クライアントの監査パートナーというのは7年を超えて同一クライアントをアカウントできないというふうにされていますけれども、これを5年を限度として交代をさせるということで、これを法的に位置づけたということであります。

それからマル3ですけれども、これまで規制が全くございませんでしたが、監査法人の出身者が経営陣となっている企業の監査を行うことを1年間禁止するということです。

それから、2番目が組織・体制の話に関係をしてくるわけでありますけれども、監査法人の監視体制の強化ということで、新しくPCAOBというふうに省略をされていますけれども、こういうSECの監督下に置かれる独立の監視機関が設けられ、そしてこの監視機関が、資料に権限というふうに下に書いてございますけれども、監査法人に対する登録を義務づけ、そして監査の基準、倫理規則といったものを策定し、懲戒処分を執行するといった一連の権限を持つ新しい機関を設置するということが打ち出されております。また、この機関の運営については、一番下でございますけれども、資本市場における資金調達額に応じて公開会社から運営資金を徴収するというふうになっております。この監査法人に対する登録義務付けについては、外国の監査法人との関係で、その外国の監査法人についても一定のケースにおいては登録がなされるということが打ち出されておりまして、この点についてはSECが適用除外条項を定めるというふうにあわせて法律で書いてあります。外国の監査法人の適用問題については、重要な課題であると認識しております。

それから、次のページをおめくりいただきますと、企業責任の強化という点で罰則の強化をはじめとしながら、幾つかのことが打ち出されております。

まず、第1に郵便・通信詐欺罪の禁固刑の刑期を最高20年に引き上げるということがありますけれども、現在のアメリカの証券法、あるいは証券取引所法においても、虚偽記載に対する刑事罰の規定というものがあるわけですが、州を越えて郵便の手段、あるいは通信の手段ということで詐欺罪を働き、そして株主を欺いたといったような手口、これを重罪と位置づけて、これまでの刑期を現行の4倍の20年に引き上げたということでございます。また、不正関連の書類の破棄による捜査妨害という点についても刑事罰の強化をする。

それから(3)でございますけれども、自社の開示内容の適切性に関するCEO等による証明の義務ということですが、これは自社の開示の適切性について、財務報告書に自ら署名をするということで、既に8月の中旬の段階で一定の企業に対しては、この法律の制定に先立ちまして、SECが義務付けということでそれぞれ宣誓書の提出を求めたということが行われておりますけれども、これが法律的には明示をされ、かつこの保証の義務というものが、SECのこれまでの行政処分であるとかあるいは民事制裁金だけでなく、刑事罰によって担保されるようになったという点が今回の措置の特色であると思います。

また、不正行為を働いた企業幹部が他社の幹部に就くことについて、SECによる無条件または条件付での禁止命令が可能になったという点でありますけれども、現行の制度はSECが申し立てることによって裁判所が命令をするといった制度になっているわけですが、この点をさらに一歩進めまして、SECの権限の強化を図ったということが言えます。

次のページをめくっていただきますと、公開会社による自社幹部への融資というものが今までは規定はなかったわけですけれども、新たに禁止をされるということで導入されてございますし、またいわゆるブラックアウトピリオドということで、従業員が年金で保有する自社株の売買を禁止されている期間に自社株を経営陣が売買するといったことが禁止されております。さらに、損害を被った投資家への保障のための基金の設立、そして内部告発者の保護、それからオフ・バランス取引の四半期開示、ディスクロージャーの強化と、こういった観点から、企業責任、特に経営者、経営に携わるCO・CEOの責任の強化というものが、刑事罰で担保をする形で措置が打ち出されております。

また、資料にその他とありますけれども、幾つかのことについてはSECが調査をし、あるいは検査をして議会などに報告をするということで、例えば証券アナリストの利益相反防止についてのルールを1年以内に策定をするよう、法律で要求をしたりと、あるいは格付会社の役割等に関する調査を行うよう要求をしたりといったことが打ち出されています。そして、あわせてSECの予算・人員の拡充ということで、現行では予算については4.7億ドルという規模でありますけれども、2003年度はそれを7.8億ドルにするといったような措置が人員の拡充とともに打ち出されております。

先ほど申しましたけれども、外国の監査法人に対しても本法が適用になるということでありますけれども、もう一つの域外適用の重要な問題があります。

すなわち、最後になりますけれども、アメリカのマーケットにおいて証券を発行する発行者に対しても、この法律が適用になるという点がございます。先ほど決算書類についての宣誓書の証明というものがございまして、これはSECのルールが先般検討されましたけれども、これに基づいて外国企業についても年次報告書をフォーム20Fという形で提出をする企業についてはその宣誓が義務付けられているという点がございますけれども、監査法人に対する適用の問題とあわせて企業がこの法律でどこまでカバーをされるのかという点が、課題になっております。特に、企業責任の強化にあわせて、監査委員会など、内部でのチェックをきちんとやるということが法律の中でも打ち出されておりまして、そういう意味では監査委員会の設置というものを前提として、そしてその構成についてもしっかりやるようにというのがこの法律でございます。

つまり、米国市場における証券の発行者にも、そのような監査委員会の設置を前提としたようなルールが適用になるのかどうかという点が、大きな課題になっております。いずれにしましても、このアメリカの法律そのものについては、幾つかのルール、細則がこれから定まっていくという過程で、よく状況を注視しながら必要な事項をSECにもいろいろ働きかけていくことが必要かと思っております。

こういったアメリカの例も踏まえながら、先ほど冒頭にご紹介をいたしました公認会計士制度部会での議論については、引き続き専門的、それから集中的な審議を精力的に深めていただくということで、月内にも公認会計士制度部会の開催を事務局としましてはお願いをして、これまでのワーキンググループでの議論を踏まえた形で審議項目、あるいはスケジュールなどを整理して確認をしていただく、集中的な審議を引き続きお願いをしたいというふうに思っております。

先ほど市場課長からご紹介をいたしました「証券市場の改革促進プログラム」の資料2でございますけれども、ページをめくっていただきますと、5ページの(2)のところでございますけれども、会計監査の充実・強化というところで、監査法人等に対する罰則の強化、公認会計士のあり方の見直しといったところについては、検討結果を早急に取りまとめる、あるいは早急に結論を得ると、こういうふうに打ち出しておるところでもございますので、事務局としては、これまでの議論を踏まえた形で取りまとめに向けた審議を活発化していただくことが不可欠であるというふうに思っております。

以上であります。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

余り時間はございませんが、ただいまの証券市場の改革、あるいは公認会計士制度の今後の見直しの部分、ご説明がありましたので、どうぞご自由にご発言。

○ 関委員

時間がありませんから、ごくかいつまんでお話ししたいと思いますが、基本的な方向というのはこれで私は異論がないんですけれども、具体的な詰めを例えば東京証券取引所だとか証券業協会、いろいろなところにお願いしているわけですけれども、詳細が詰まってこれでいこうということではなくて、片田委員がいらっしゃいますけれども、経済界にもよく相談していただきたいなというのが全般的な話です。

それから、個別論は1つはさっきの税制が非常に重要で、今考えられているようなことだと、本当にそれがパンチがあるのかどうか、もう少し抜本的な、例えば個人金融所得に関する税はあらゆる商品については一本にするというようなことも早急に検討しなきゃいけないのではないかと思います。

それから、会計ですけれども、会計は今日午前中議論があったわけですけれども、私は日本の会計は相当玉になってきて、いわゆる判断だとか裁量の余地がどんどん大きくなっていると。しかし、そういう裁量や判断を担保する客観的な条件というのは、日本にはかなりないと。例えば、事業用資産の構成価値なんていうのは人によっては恐らく180度違うようなことになるというようなことになると思うんですけれども、そういった時価会計だとか、あるいは税効果会計なんか考えていただければわかるんですけれども、相当裁量の余地が入るようになってきているわけで、その辺のそれを判断の客観的に担保するものをどう考えるのかという議論を是非していただきたいということです。

それから、開示の問題は、四半期開示はマストだというお話がありましたけれども、これは私はかなり違うんじゃないかと思っております。投資家の信頼が一番重要だということは全くそのとおりでありますけれども、開示の本質というのは企業が目標を持って、あるいは予算を立てて、そしてそれを実行して、実行の進捗状況をチェックしてそれをディスクローズするという会社の社内管理と開示が全く一緒だと、そこに二重帳簿はないということが非常に重要でありまして、そういう企業の活動の実態から言うと四半期ということになるかどうか、恐らく金融とか加工組み立て産業はそうだと思いますが、受注産業だとか、そういう産業は私は違うと思います。したがって、そういうことについてもよく議論していただきたいというのがお願いであります。

以上です。

○ 片田委員

税制の問題について、一言だけ感想を申し上げたいと思います。

今度の改革促進プログラムにつきましては、多項目にわたる問題点が挙げられており、そういう意味では敬意を表するわけですけれども、今証券市場を活性化するための重要なキーは、個人マネーを大量にマーケットに動かす税制面でのインセンティブをどう持ってどう誘導するかと、そういう問題であろうかと思うわけです。

そういう面でこの資料を拝見しますと、先ほど市場課長から順序は別だよというお話があったのですが、証券問題というのは9ページに4行しか書いてありません。順序ではなくてウエートの問題だと思います。

関さんがおっしゃったように、今民間では来年1月から変わる税制に対してどう対応するのか、一人一人の個人が全く理解できなくてわからないというのが率直なところです。私にもわかりません。いろいろなコンサルタント担当の方でつくっていただく特定口座を利用するのが、有利なのか不利なのかということが理解できないのです。そういうことが実態であります。したがって、新しい個人はとても参入してこないし、古い株を持っている人は年末までに売って、今度保護される金利なしの普通預金にみんな持っていくんじゃないかということが本当に言われているくらいの状況であります。具体例としては、我々企業人が20年以上にわたって持ち株制度というのを続けてきましたが、その株が今マーケットで株価が下がっておりますから、どういうふうに評価されてどうすればよいのかということがよく理解できないんです。場合によりますと、株価が下がっておりますから、2001年のある時点の評価をしますと逆転的な現象になるということがありまして、関委員は有価証券譲渡益課税の撤廃に触れられましたが、そこまでいかなくても、せめてもっとわかりやすい税制にしていただかないと、とてもお金は動かないと一言付け加えておきたいのです。

○ 奥本委員

税制の問題につきましては、金融庁と一緒になりまして、今主税局とかなりハードネゴをさせていただいております。

時間もないので申し訳ございませんが、今の改革促進プログラムの中に私どもからちょっとお願い申し上げたいことがあります。全体につきまして改革促進プログラムを金融庁に大変精力的に取りまとめていただきまして、一つ一つの詰めをこれからやっていただくわけですが、現在先ほど説明がありましたように、既に幾つかのもの、銀行と証券会社の共同店舗に係るガイドライン等々につきましてパブリックコメントが実施中でございます。

今日突然、共同店舗に係るガイドラインの改正案なるものがその次のページについておりますので、拝見したわけですが、誤認防止という点につきましては、確かにご配慮いただいておるようでございますが、先ほどから申し上げております情報の問題、つまり情報の共有の禁止、非公開情報の授受の禁止という点につきましての態度がなされていないのではないか。特にこれを利用します証券会社、従来の親子関係から持ち株会社の並列の関係になる部分もあるのですが、親会社となる銀行が持っております莫大な利用者情報が乱用されるようなことがあるのが問題だというふうに先ほども申し上げましたが、是非この点につきましての十分な手当をしていただきたい。バブル期に保険会社の商品を銀行が積極的に販売することによってかなりの社会的な問題が起こっている事実が既にあるわけでございますし、ぜひこれに対する配慮をお願いしたいということでございます。

書面による云々につきましては、私は、これは戦後の混乱期の名残として書面による取次ぎが残っていたわけでございますので、これを今のような手数料自由化のオンライン取引が十分発達している中で、こういうものを改めてする必要があるのか、いささか疑問には思いますが、あえてこの点については触れませんが、いわゆる利用者に対する適切な判断ができるようなことに対する配慮はよろしくお願いしたいと思います。

市場取引に関しましては、金融庁といたしまして我々の証券窓口とかなり懇切にディスカッションしていただきました。したがって、基本的な問題について私がここで触れる必要はない、申し上げることもないのですが、ただ一ついわゆるシステムの機械化につきまして、アメリカと同じだとおっしゃいますが、アメリカでは例えば適格なものに合致しない注文を自動的にはねるのではなくて、それをまだ継続して持って、そういうものを実行できるときには実行するというふうになっているのだそうでございます。そういったことを考えますと、果たしてこのような厳格なルールにしてしまってマーケットのボリュームといいますか、そういったものに対する危惧は本当にないのだろうかということを若干危惧しております。

以上です。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

他にご発言。

○ 高橋委員

まず、質問なんですが、投資知識の普及・情報提供というところで、5ページのところに少し詳しく書いていただいてありますけれども、投資知識・情報に関する金融庁ホームページの一層の拡充を行うとともに、教材の開発等を通じた教員の支援や文部科学省への要請と、こういうふうにあるんですが、教材の開発というのはどこで行うのか、今回金融庁の方でかなり一歩進んで教育に携わるということなのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

○ 乙部市場課長

直接金融庁が全部やるというのは現実的ではありませんので、関係者とよく相談しながらやっていくということだと思います。細かい話は今担当者がおりませんのであれですが。

○ 貝塚会長

大学の人間ですので、入試に多少関係しておりますが、社会の中の金融の叙述は極めて不十分でありまして、いろいろその辺は改善すべき余地がありますが。

○ 高橋委員

関連で申し上げます。

2000年6月の金融審の報告では、投資家教育を含めた消費者教育に関しては、日銀に事務局があります金融広報中央委員会が核となって行うと、こういうことになりました。それに従って金融広報中央委員会の方が今中心になってプログラムをつくったり、学校教育、社会教育を進めつつあると思うんですが、今回のビジョンでは2つにポツが分かれておりまして、1つ目の点は、文部科学省に関してです。これは今までは金融広報中央委員会のルートを使って文部科学省の方に要請していたと思います。具体的には、文部科学省の方は教科書を自分たちでつくったりするような余力がないというか、知識・ノウハウも含めてですけれども、金融広報中央委員会の方でつくったものに文部科学省の推薦書きのお墨つきをいただいて、それを持っていくと学校教育の方に普及するこういうようなプロセスを経ていたと思うんですが、ご質問しましたのはあえて2つに分けてあったものですから、文部科学省ルートというのを強力につくってくださるのであれば、それは非常にありがたいことなのですけれども、これは書かれているだけですと非常に誤解を生みますので、ご質問しました。

それと、先ほどの関係者と相談してというのがまだもしかしたらこの1つ目と2つ目は同じところじゃないかというような気もいたします。また書かれていることがお題目に終わってしまうというのは私は非常に残念だというふうに思います。もちろん、金融庁の中で消費者教育というのは議論されてきたわけですし、その前にいろいろ先生がご検討されていたという長い歴史があることだと思うんですが、その割に今進んでないのはなぜかということの問題の方が、私は大変重要なことではないかというふうに思っております。

金融広報中央委員会の方の活動にかかわっております立場から申し上げますと、現在、体系的なプログラムをつくったり、調査活動をしたりとか、いろいろなことをしながらやっているわけなのですけれども、まだ全然投資家教育のところには入れていないと。消費者の主体的な意思決定をするということであったり、金融商品の知識、それからペイオフの知識、ここら辺で止まってしまっているわけで、いきなり証券と言われても、証券の知識をどう入れていくのかと。今までのプログラムは投資家教育を強く意識しないでつくっていたという経緯があります。

それがなぜかとかということはまたいろいろな理由があるのですけれども、少なくとも現行のプログラムをつくった過程の中で、今年の4月に消費者教育フォーラムというのを日銀を場所にして開きました。そこには消費者団体の方とか業界のいろいろな機関の方とか、活発な議論があったのですけれども、最大の批判は文部科学省と金融庁が欠席したということだったわけです。そういう歴史を持っておりますので、今こうやって書かれても実際にやっていただけるのかどうなのかということを、非常に懸念しております。

金融審議会で消費者教育の議論を担当した者としましては、欧米の例からいけば当然行政機関がこういう教育というのは担っていくべきでものであるということから発言をさせていただいております。ただ、新生金融庁の新体制の中で担うことは今すぐにはできないので、当面は財務局も文部科学省もいろいろな業界団体も入っている金融広報中央委員会がイニシアティブをとってやると、そういう結論だったというふうに思うんです。そこに今までどういう関与をされたか、私は詳しいことは存じ上げませんけれども、こういう状況になりましたので、もっと深く議論いただきたいということをお願いしたいと思います。

○ 寺西委員

銀行と証券のファイアーウォールの問題で、銀行の悪玉論が出ておりましたけれども、非常に心外でありまして、その辺についてはぜひもう少し利用者の利便というところに目線を置いてぜひ議論を行っていただきたいというふうに思います。私ども投信については銀行の主力商品で売るようになってまいりまして、それなりのお客様の利便性を高めるとか実績を示してきておりますので、是非消費者というんでしょうか、利用者の目線に立ってその辺の議論は是非やっていただきたいと、こういうふうに思います。

○ 貝塚会長

時間が来ましたので、この辺で今回のご議論を踏まえまして、今後金融審議会第一部会、公認会計士制度部会でより具体的な審議をしていただきまして、年内を目途に総会にご報告と考えております。

何か特段今後の議事その他について。

それでは、よろしゅうございますでしょうか。予定の議事はすべて終了いたしましたので、以上をもちまして本日の会議を終了いたします。本日の模様につきましては、会議終了後、私から記者会見を行わせていただきます。

なお、今後の詳しい日程につきましては、事務局より後日ご連絡させていただきたいと思います。

本日はお忙しい中、皆様にはご出席いただきましてどうもありがとうございました。これで終わります。

以上

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