金融審議会総会(第19回)・金融分科会(第7回)議事録

日時: 平成17年2月2日(水)10時04分~11時18分

場所: 中央合同庁舎第4号館(9階)金融庁特別会議室

○ 寺田調査室長

おはようございます。それでは、ただいまから金融審議会総会を開催させていただきます。

なお、本日は総会の後、引き続き分科会の開催を予定いたしておりますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、改めまして、本日は皆様ご多忙のところ、ご参集くださいまして誠にありがとうございます。また、金融審議会委員へのご就任を快くお引き受けいただいたことについて重ねて御礼を申し上げる次第でございます。

それでは、総会の開催に当たりまして、金融担当大臣がこの場に出席いたしましてごあいさつを申し上げるべきところでございますが、本日、大臣、公務でやむなく欠席のため、七条金融副大臣よりごあいさつをさせていただくことといたしたいと思っております。副大臣、ただいまこちらに向かっておりますので、しばらくの間お待ちいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

七条金融担当副大臣がお越しになりましたので、ここで副大臣よりごあいさつをちょうだいいたします。

○ 七条副大臣

皆さん、おはようございます。委員の皆様方にはお忙しい中、今日はお集まりをいただいて厚く御礼を申し上げるところでございますが、本日伊藤金融担当大臣、もう皆さんご承知のとおり、今日は衆議院の予算委員会、今テレビでもやっておりますけれども、そちらの方に出席しておりましてこの場に出席することができません。私がかわりまして皆さん方にごあいさつを申し上げる次第でございますが、よろしくお願いを申し上げるところでございます。

では、座らせていただきますが、よろしくお願いいたします。

金融審議会総会の開催に当たり、一言ごあいさつを申し上げます。

初めに、皆さん方には、金融審議会委員のご就任を快くお引き受けをいただきましたことを厚く御礼を申し上げます。本日はせっかくの機会でございますので、現下の金融行政につきまして一言申し述べさせていただきたいと考えております。

我が国の最近の経済状況を見ますとき、一部に弱い動きが見られるものの、基調としては企業収益が大幅に改善をし、設備投資も増加をするなど景気は回復が続いております。また、経済社会の情勢も少子高齢化、グローバル化がさらに進展するとともに、社会経済全体においてインターネット取引の比重が大きくなっておるところでもございます。こうした中、金融行政につきましても我が国経済の持続的成長に資するため、環境変化に的確に対応していく必要があるわけであります。金融庁といたしましては、昨年末、平成17年から18年度の2年間の金融行政の指針として金融改革プログラムを公表いたしました。本プログラムでは、金融を取り巻く局面が不良債権問題への緊急対応から、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向へと転換してきていることやIT化が進展すること等を踏まえまして、今後の金融行政の目標を健全な競争の促進と利用者の保護を図り、多様な金融商品・サービスを国民が身近に利用することができる金融サービス立国を官の主導ではなく民の活用で目指すことといたしておるところでございます。

今後、本プログラムに盛り込まれました諸施策の推進を通じて金融システム、特に金融商品、金融サービスの利用の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られ、地域経済にも貢献できるような金融システムを官の主導ではなく民の力で実現することを目指していきたいと考えております。

これらの取組に当たり、高い見識を有しておられる委員皆様方の格段のご理解、ご協力を賜りますと同時に、よろしくご指導、ご鞭撻をお願い申し上げる次第でございます。

簡単でございますが、私からのごあいさつにかえさせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。

○ 寺田調査室長

ありがとうございました。

副大臣は、公務ご多忙のため、ここで退室されます。

○ 七条副大臣

どうかよろしくお願いをいたします。

○ 寺田調査室長

ここまででカメラの方はご退室をお願いしたいと思います。

それでは、金融審議会総会の審議を進めさせていただきます。

本日は、1月25日の委員選任後、初めての総会でありますので、会長及び会長代理をお決めいただくことになりますが、それまでの間、申し遅れましたが私調査室長の寺田が当面の議事を進行させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、当審議会の委員の皆様をご紹介させていただきます。なお、全体の名簿につきましては、お手元にお配りしております参考資料の方にございますので、適宜ご参照していただければと存じます。

それでは、本日ご出席いただいている委員の皆様をご紹介申し上げます。

委員の皆様から向かって右側から、池尾和人委員でございます。

岩原紳作委員でございます。

翁百合委員でございます。

貝塚啓明委員でございます。

金丸恭文委員でございます。

神田秀樹委員でございます。

木村裕士委員でございます。

小島明委員でございます。

今野由梨委員でございます。

斎藤静樹委員でございます。

佐々木かをり委員でございます。

関哲夫委員でございます。

高橋伸子委員でございます。

田中直毅委員でございます。

西村淸彦委員でございます。

根本直子委員でございます。

野村修也委員でございます。

原早苗委員でございます。

藤沢久美委員でございます。

淵田康之委員でございます。

堀内昭義委員でございます。

水上慎士委員でございます。

山下友信委員でございます。

なお、本日は、総会委員のうち嘉治佐保子委員、島崎憲明委員がご欠席されておられます。

なお、本日は、金融分科会を引き続き開催することといたしております。金融分科会の専門委員の皆様にもご着席いただいておりますので、ご紹介いたします。

越田弘志委員でございます。

長野幸彦委員でございます。

平野浩志委員でございます。

前田晃伸委員でございます。

なお、本日は、専門委員の中で金子亮太郎委員がご欠席されておられます。

続きまして、当審議会の事務局のメンバーをご紹介申し上げます。

皆様方から向かいまして私の左手でございますが、順に、五味金融庁長官でございます。

西原検査局長でございます。

佐藤監督局長でございます。

長尾証券取引等監視委員会事務局長でございます。

財務省より、有吉大臣官房審議官でございます。

道盛大臣官房信用機構課長でございます。

なお、本日は、幹事の白川方明日本銀行理事がご欠席されておられます。

次に、皆様方から向かいまして私の右側から順に、増井総務企画局長でございます。

三國谷総務企画局総括審議官でございます。

恐縮でございますが、総務企画局の審議官の中江は用務で遅れております。

振角総務企画局審議官でございます。

妹尾総務企画局参事官でございます。

河野総務企画局総務課長でございます。

大森総務企画局市場課長でございます。

三井総務企画局信用制度参事官でございます。

以上でございます。事務局のメンバーにつきまして、よろしくお願い申し上げます。

それでは、次に当審議会の会長の選任をお願いいたしたいと存じます。

会長は、金融審議会令第4条第1項の規定によりまして、委員の互選によることとされております。事務局で幾人かの委員にお伺いを事前にいたしましたところ、前体制で会長を務めておられました貝塚委員に引き続き会長をお願いしてはどうかとのご意見がございましたが、いかがでございましょうか。

それでは、ご異存ございませんようですので、貝塚委員のご承諾を待って会長就任をお願いしたいと存じますが、貝塚委員、いかがでございましょうか。

○ 貝塚委員

長い間委員を引き受け過ぎているのかもしれませんが、お引き受けいたしたいと思います。これからいろいろまた新しいことが起きてくることと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

○ 寺田調査室長

どうも、大変ありがとうございました。

それでは、貝塚会長におかれましては会長席の方にお移りいただきたいと思います。

それでは、貝塚会長よりごあいさつをちょうだいいたしまして、その後の議事を貝塚会長からお願いしたいと存じます。

○ 貝塚会長

先ほど、お引き受けするというふうに申し上げたんですが、私はかなり以前から、大蔵省の時代から金融審議会を関係しておりまして、その後ずっと今日まで、元来ならば蝋山さんがお元気であれば私はそろそろ退陣すべきところでありますが、というやや冗談めいたことで恐縮ですが、先ほど副大臣も説明されましたが、一応ある程度の1990年代以降の金融システムを悩ませてきた、端的に申せば不良債権その他の問題がある程度めどがついた段階で、これからやはりもう少しちゃんと先の展望をすべき時期に来たように思います。したがって、またメンバーの皆様もある程度おかわりになったと思いますので、何分にもよろしくお願いいたしたいと思います。

それでは、議事に入らせていただきます。

金融審議会令第4条第3項によりますと、会長代理は会長が示すこととなっておりますが、私からは関委員を会長代理に指名させていただきたいと存じますが、いかがでございましょうか。

○ 関委員

それでは、お引き受けさせていただきます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

続きまして、議事運営についてでありますが、お手元に配付させていただいております議事規則は以前からこの議事規則だと思いますが、引き続き今後ともこれに従って行っていきたいと思います。会議は原則として公開したいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

それでは、ご異論ないというふうにお伺いしましたので、あとは金融審議会令の第6条第1項の規定により、現在の総会のもとにいろいろ設置されておる部会がございますが、1つは自動車損害賠償責任保険制度部会ですね、自賠責のことを取り扱っている部会と、それから公認会計士制度部会の2つの部会を引き続き設置することにいたしたいと存じますが、よろしゅうございますでしょうか。

それでは、ご異論ないと存じますので、今申し上げました2つの部会を引き続き設置することといたしまして、私の方で事務局と相談の上、これらの2つの部会の委員の選任と具体的な事務につきましてはこれから始めさせていただきたいと考えておりますが、この点よろしゅうございますでしょうか。

それでは、以上でもって総会における議事は終了いたしました。これで、何か特段ご発言があればあれですがフォーマルな議事はこれで終了したという、特にご発言がなければ、総会の今後の日程などにつきましては事務局より後日調整の上、ご連絡させていただきたいと思います。

以上で総会は終了いたしたいと思います。

それでは、引き続き総会のもとにあります金融分科会を開催させていただきます。

本日は、委員選任後初めての会合でありますので、分科会長をお決めいただくこととなります。分科会長は、金融審議会令第5条第3項の規定により、委員の互選によることとされておりまして、事務局で幾人かの委員にお伺いいたしましたところ、前の金融審議会の第二部の部会長を務められております堀内委員に金融分科会長をお願いしてはどうかという意見がございましたが、いかがでございましょうか。

ご異存がございませんようですので、堀内委員のご承諾を待って分科会長のご就任をお願いいたしたいと思いますが、堀内先生、いかがですか。

○ 堀内委員

お引き受けします。

○ 貝塚会長

お引き受けいただいたということでございまして、堀内分科会長……

○ 寺田調査室長

堀内分科会長、こちらの方にお願いいたします。

それでは、堀内分科会長よりごあいさつをいただきまして、分科会の議事を堀内分科会長の方からお願いしたいと存じます。

○ 堀内分科会長

堀内でございます。微力でございますけれども、分科会長を務めさせていただきます。よろしくお願いします。

それでは、これも従来のやり方ということでございますけれども、分科会の会長の代理を指名させていただくということになります。それで、これは金融審議会令第5条第5項の規定によって、分科会長が分科会長代理を指名するということになっているようでございます。私から田中直毅委員にお願いしたいと、ご不満でございましょうか。ぜひお願いしたいんですけれども。いや、あんまり迷惑かけないということで、大丈夫だと思いますのでよろしくお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。

では、ご快諾いただいたというふうに思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

それでは、続きまして議事運営でございますけれども、お手元に配付させていただいております金融分科会議事規則に則りまして引き続き今後とも行っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

また、会議は原則として公開にしたいということでございます。よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

それから、現在、金融分科会のもとに第一部会、第二部会、それから特別部会、さらに金融税制に関するスタディグループというものが置かれておりますけれども、引き続きこれを設置していくというふうにしたいと考えておりますけれども、これもよろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。

それで、これらの部会の委員の選任、あるいは具体的な事務につきましては、私の方で事務方といろいろと相談させていただきまして始めさせていただくということにしたいと思いますので、これもご了承いただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

それから、これは今度の金融改革プログラムですか、これで一つの重要な項目としてうたわれております金融システムのIT化につきまして、これはどのように我々というか、金融庁としてはかかわっていくかということについてはいろいろ重要な問題があり得るということでございますので、これをワーキンググループを立ち上げまして、この金融システムのIT化につきましてどういう政策的な方策があり得るかというような点について、実務的あるいは専門的に検討していくというふうにしたいと考えております。

それで、私の方からはそのワーキンググループを設置したいということで、ぜひとも皆様にご承認いただきたいということをご提案したいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

それでは、事務局の方からワーキンググループの設置についてご説明いただきたいと思います。

○ 寺田調査室長

ただいま分科会長からお話のございました、IT、情報技術ワーキングの設置に関しまして、事務局より簡単にご説明申し上げます。

金融改革プログラムそのもののご説明は後ほど河野総務課長の方から説明させていただきますが、ちょっと触れさせていただきますと参考資料で配付させていただいています資料2の2ページ、同プログラムの冒頭のところでございますが、将来の望ましい金融システムのあり方としては、行政主導ではなく民間の力でいつでも、どこでも、誰でも、適正な価格で、良質で多用な商品にアクセスできることが考えられるというふうに述べられております。このような金融システムをつくっていく上におきまして、ITが極めて大きな役割を果たすということは申すまでもないことでございまして、このプログラムにおきましても、中ほど以降、「今後ITの戦略的活用により販売チャネルの多様化等に伴う利便性の向上、事務コストの低減等を通じた金融機関の収益性の向上等が進展し、望ましい金融システムが実現していくことが期待される」というふうに述べられておるところでございます。

こうした金融システムにおけるITの活用に関しましては、皆様ご承知のとおり民間では既にさまざまな多用な形で電子的な金融取引の手法が取り入られております。申すまでもございませんが、インターネットを通じました多用な金融商品の提供でございますとか、さらに今日ではモバイルを活用いたしました決済でございますとか取引、そしてそうした決済自体につきましても電子的な取り扱いが進展いたしております。

こうした環境変化に対応いたしまして、当庁におきましても本審議会のご指導のもと、累次の関係制度の見直し等を進めてまいりました。昨年6月には、株式等の取引に係る決済の合理化を図るための証券等の振替に関する法律等の一部を改正する法律が公布、成立いたしまして、いわゆる有価証券の電子的振替決済に係る法制整備というものが一つの完成を見たところでございます

しかしながら、こうした電子的金融取引はITの技術的な進歩等によりまして、現行の法制度では必ずしも対応し切れない局面というものが生ずる可能性があるのではないかと考えられます。電子的金融取引等が拡大する中、利用者の法的安定性の確保などの観点から電子的金融取引に係る法的枠組みのあり方につきましては、しっかりとした法的な対応を構築すべく早急な検討を進めていく必要があるというふうに認識しているところでございます。

また、企業の資金調達等の面におきましても、従来の手形では紙ベースで流通することからくる手形の保管、取り立てなどの安全性やコストの問題、また加えまして売掛債権の担保としての活用を図るといった観点から、従来の紙の存在を前提とした法制ではなく、電子的な手段による債権譲渡の対抗要件付与のための法制的な検討が必要であるとのご指摘もあるところでございます。

こうした観点から、この金融改革プログラムにおきましては、「我が国金融機関のIT投資が国際的に見て遅れ、ITコストが高止まりしている一方、インターネット取引の比重が増している現状を踏まえ、ITの戦略的活用を促す。これにより、利用者ニーズに対応した金融商品サービスが誰にでも安く、早く提供されるようになることを目指す」とした上で、「技術革新の成果を積極的に享受し、金融インフラの利便性とコスト競争力の向上を実現するためのe-バンキングに関する法制の整備の検討」を行うといたしておりまして、具体的には、「電子的な資金決済支払い、電子的金融取引に関する法制の整備に向けた検討」というものが打ち出されております。

こうした法的な枠組みの検討につきましては、先ほど申し上げました利用者の利便性や取引の安全性を確保し、金融においてもIT技術革新の成果を享受するため、この電子的金融取引と金融システムの決済機能との関係、それから電子債権等の流通性向上といった枠組みを考える場合には、有価証券の電子的振替決済法制とのバランスなどの電子的金融取引と金融システムの資金仲介機能との関係、また、日進月歩のこのIT分野におきまして技術的に対応できる論点については今後の技術的革新による対応可能とすべく、法制上の技術的中立性を確保することなど、電子金融分野の特性に基づく総合的かつ専門的な検討が必要と考えられます。

したがいまして、ただいま分科会長のお話がございましたように、事務局といたしましては電子的な資金決済支払い、電子的金融取引に関する法制の整備に向けた検討の場としてITワーキングの設置ということをご提案している次第でございます。

なお、具体的な課題といたしましては、昨年2月に示されております「e-Japan戦略 II 加速化パッケージ」におきまして、「電子的な手段による債権譲渡(「電子手形サービス等」)を推進するための制度の見直しについて、現行法上、原則として確定日付のある通知日承諾が必要とされている債権譲渡の対抗要件のあり方を含めて検討し、2004年中に結論を得る」ことと政府全体としてされていることを踏まえまして、金融インフラとしての電子手形、もしくは電子債権といったものに関する法制度のあり方について早急に議論に取りかかる必要があるものと事務局としては認識している次第でございます。

以上でございます。

○ 堀内分科会長

ただいま寺田さんの方からご説明ありましたけれども、今のような事情ということがありまして、金融システムのIT化についてワーキンググループを立ち上げたいということでございますが、よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございます。

それでは、ワーキンググループを設置するということにいたしまして、その座長と、それからメンバーの選任につきましては私の方にご一任いただきたいというふうに思います。よろしゅうございますでしょうか。

それから、具体的なワーキンググループの事務につきましては早速始めさせていただくということにさせていただきます。以上、ご承認いただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは、ワーキンググループの設置ということはご了解いただきましたので次に進みまして、金融改革プログラムにつきまして事務局の方からご説明がありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。河野さん、よろしくお願いします。

○ 河野総務課長

総務課長の河野でございます。改めまして、よろしくお願い申し上げます。

それから、本日ご出席の委員の皆様方にはずっと以前から大変お世話になっております。改めまして御礼を申し上げます。

また、この金融改革プログラムの取りまとめに当たりまして、当審議会の委員の皆様を初めといたしまして、いろいろな場で本日ご出席の皆様方から貴重なご意見をちょうだいいたしました。厚く御礼申し上げますとともに、ここはやっとスタート台に立ったという気持ちでございますので、引き続き今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。

さて、この中身でございますけれども、時間の制約もございますので、個々の項目というよりはむしろ全体的なコンテクストと申しますか、これまでの経緯なり、あるいは基本的な考え方のご紹介をさせていただきまして、あと資料といたしましては、このプログラムのポイントをご説明しました簡単な横長の4枚紙と本文の方を資料としてお配りしてございますので、また必要に応じましてご覧いただければと存じます。

まず、このプログラム策定の経緯といたしましては、昨年6月に閣議決定をされましたいわゆる骨太2004という、この経済財政運営と構造改革の基本方針ですか、基本方針2004とも呼んでおりますが、これにも基づきまして昨年末を目途に新たな金融行政のプログラムを策定するということがうたわれまして、それを受けたものとしてこのプログラムを12月24日に公表させていただいたわけでございますが、このプログラムの基本的な考え方というのは大きく3つに集約できると思います。

1つは、要約と言うべきかもしれませんけれども金融をめぐる局面、フェーズと呼んでおりますが、これが転換をしたと。不良債権問題への緊急対応に追われておりますようなフェーズからやっと将来の望ましい金融システムというものを目指していろいろ改革を加速していく局面へと転換したという認識を持ちまして、金融行政においても金融システムの安定を重視した行政から金融システムの活力を重視した行政というものへ積極的に転換をしなければならないと、安定から活力へというフレーズもございますが、そういった転換を図るという必要があることを認識しております。そこからいろいろ先ほどのITの話も含めまして我が国の金融サービスの競争力をどうやって強化していくかとか、民間活力をどうやって引き出していくか、そのためにあるべき制度設計はどういうものかといったようなことを考えていきたいということでございます。

ここであるべき金融システムということを申しましたけれども、それをどういうものと考えるかということでございますが、これはやはりこれからの時代、利用者ということを中心に考える必要があるのではないか、このプログラムの中ではその利便性、価格優位性、多様性、国際性、信頼性というような言葉を挙げましたり、あるいはこの横長の紙にもちょっと大きくうたっておりますけれども、いつでも、どこでも、誰でも、適正な価格で、良質で多用な商品にアクセスできるというようなことを挙げておりますが、一言で申しますと利用者の満足度が高い金融システムをつくっていく必要があると、その実現を目指すということで、これをいわば金融サービス立国という言い方に言いかえておるということがございます。金融サービス立国という言葉は一見唐突にお感じになるかもしれませんけれども、それは金融サービスというものが真に利用者を満足させて国民経済を支えてくという気持ちで、そういうものに挑戦をしていきたいということでございます。

したがいまして、この金融サービス立国への挑戦というのが2番目の基本的な考え方ということで、そしてその3番目は、先ほど副大臣のごあいさつにも申し上げましたように、こういった望ましい金融システムを官の主導ではなくて民の力で実現したいということでございます。やはりこれまでの金融行政のあり方に対しましては、一方でこういう緊急対応の中で必要やむを得ざる面もございましたけれども、やはり今後のあり方として官主導で本当にいいんだろうかと、やはりこれからは望ましい金融システムを実現していくのはあくまで民の力であるということを再認識しなければならないということから、このプログラムの中では金融行政当局の基本的姿勢ということで3つ挙げておりまして、金融市場における市場規律を補完する審判の役割に徹すると、それから現行規制を総点検し、不要な規制を撤廃するとともに金融行政の行動規範を確立すると。そして、その一方で必要な利用者保護ルールについては整備と徹底を図るということを明確にしております。

こういった考え方を打ち立てましたけれども、もともとこういった課題はここで急に生じたものではございませんで、ずっと以前からこの当審議会を初めとしましていろいろな場でご提言をいただき、あるいはご意見をちょうだいしてきたものでございまして、特にその中で一つの長年の課題としては、「貯蓄から投資へ」というキャッチフレーズがございますけれども、我が国の金融システム、あるいは資金循環、マネーフローを間接金融中心のものから直接金融や市場型間接金融を活用した形に変換していかなければならないという、こういう課題があったわけでございます。こういった課題にこたえていくために今申しましたような3つの基本的な考え方で改革を加速していくということがございますし、また、いろいろな諸施策を実行していくことでそういう転換がなされて、経済のリスクが銀行システムに過度に集中するような構造というものが是正できるんではないかと、それを目指したいということを基本にしております。

こういった考え方をあえてこのタイミングで打ち出すということにつきましては、またいろいろご意見なりご指摘もあろうかとは思いますけれども、やはりそれはようやく不良債権問題を克服してきたという中で、いわば長年の宿題が積み重なってきたと、そのことを忘れていたつもりはございませんけれども、ここらで何とかしたいという強い気持ちを込めてあえてこういうものを編成をさせていただきました。

今後は、ここにうたっておりますのはあくまで金融行政の基本構想とでも言うべきものでございますし大きな考え方はございますけれども、細目につきましてはこれからまだまだ詰めていかなければならない点が多々ございます。このプログラムの実施に向けた具体的なスケジュールはこれから工程表というものを策定をしまして、今年度中のできる限り早い時期というふうに申しておりますけれども、これから2月、3月に向けまして、もう既に2月に入っておりますけれども、3月に向けまして工程表を策定をし公表させていただくということにしております。

そして、その中で、また当審議会の皆様を初め、これから法案関係につきましては与党とも十分な調整が必要でございます。いろいろその過程におきましてさらにご指導をちょうだいできればと思っておりますのでよろしくお願い申し上げますとともに、こうした改革が実現することで何とか我が国の金融システムが国際的にも高い評価が得られて、それからこの中で一つ柱を立てておりますけれども地域経済にもきちんと貢献ができる、そういうシステムが実現していくことを切に願っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

簡単でございますが、以上とさせていただきます。

○ 堀内分科会長

どうもありがとうございました。

ただいま事務局の方からご説明がありましたが、金融改革プログラムにつきまして、あるいはこの機会でございますのでその他の金融行政に関するご意見等、あるいはご質問等ございましたらぜひお出しいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

どなたかありませんか。どうぞ、高橋委員。

○ 高橋委員

意見を申し述べさせていただく前に、金融改革プログラムについて1点ご質問をさせていただきたいと思います。

プログラムの具体的施策の冒頭に利用者ニーズの重視と利用者保護ルールの徹底が挙げてあります。この利用者という言葉がどういう対象を指しているのか、それについて少しご説明をいただきたいと思います。

○ 河野総務課長

誠におっしゃいますとおりなんですが、利用者というのはここではどこまで定義をされているかということになりますけれども、当然消費者は念頭にございます。ただ、金融サービスの利用者はもちろん消費者だけではなくて中小企業、あるいは中小企業だけではなくて大企業も利用者でございますので、ここはあえて利用者という言葉を使いましたのは、そういう幅広い金融サービスの利用者の方々をそれぞれ違ったニーズもございますし、また違った立場にもありますので、そういったものを全体的に含み得る言葉としてあえて利用者という言葉を使わせていただきました。

ただ、中身をご覧いただきますと、例えば利用者保護ルールの中に特に投資サービス法もそうかもしれませんけれども、いろいろな今日議論になっております偽造カードの問題を初めとしまして、消費者に身近に生じております問題についての対象も含めております。それから情報提供、相談等の枠組みといったような観点では、やはり消費者からのいろいろなお問い合わせなどを意識して書いておりますので、そういう幅広い中で幅広い利用者というものを意識しているということをお答えにさせていただきたいと思います。

○ 高橋委員

ありがとうございます。

私は、大蔵省時代から当審議会にかかわらせていただいているわけですけれども、金融行政の転換の中で、いわゆる業者行政から消費者行政に目を向けたものにしていただきたいと申し上げてきました。消費者という言葉はこれまでの金融行政の中では使われてこなくて、利用者という言葉は金融サービス法の検討をしたときから使われている言葉だと思います。ただ、そのときの利用者という概念は一般の個人であったり、中小事業者であったり、あるいは機関投資家でもプロとは言えない人たちなどに対してどういう手だてを講じていくのか、その人たちが市場で役割をどういうふうに果たしていけるんだろうかという検討をしてきたと思います。今お話を伺いまして、対象がかなり広がったというふうに理解させていただいたんですが、それでよろしいのかいうことが1点です。

もしそうだとしますと、具体的なプログラムの中で、例えば既にテレビ等で報道されて一般の方にも知らされております金融サービス利用者相談室は問題がありそうです。一般の消費者には、金融に関する苦情や紛争処理にいよいよ金融庁が着手、ととらえられているのですけれども、概念が非常に広いとしますと、今までの貸し渋り貸しはがしホットラインとも合体することでもあり、事業者など一般の消費者以外の利用がかなり多くて、一般の消費者がなかなか利用できないかもしれないという危惧を抱いているんです。あまりに利用者という概念を広くとってしまいますと、数年前から必要性が言われてきましたいわゆる消費者、国際的な概念での消費者に対しての目配りが足りなくなるのではないかと懸念しておりますが、いかがでしょうか。

○ 河野総務課長

まず、そういうご懸念には全くご心配いただかないようにお願いしたいと思います。それはなぜかと申しますと、今の例えば利用者相談室は確かに利用者という言葉は使っておりますし、これまでの貸し渋り貸しはがしホットラインの機能もそこに引き継ぎをさせていただこうとは思ってはおりますけれども、まさに一般の方の電話相談に応ずることを基本に人員を増強し、またそのための特別の部屋も今設置工事を始めようとしておりますので、そこは確かに高橋委員には前からお世話になっておりますし、以前からご指摘いただいていることも重々承知でございますけれども、いわばその宿題にお答えする気持ちでこの作業を始めておりますので、そこは消費者という言葉をあえてもし使わなかったとすれば、それは確かにそういう消費者という言葉だけで包含できない方々の中からも金融サービスについてのニーズなり、あるいは利用者保護という観点からの対応が必要かと思われましたのでそういう言葉にいたしましたけれども、消費者を意識していることは間違いございませんので、ぜひそこはもちろんこの先の対応で不十分な点がございましたらご指導いただきたいと思いますけれども、消費者対応をきちんと意識をしてこういうものを打ち出しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

○ 堀内分科会長

それでは、原委員、どうぞ。

○ 原委員

今日はたくさんの方々がいらっしゃるので簡潔にと思っておりますが、私所属が大学の名前になっておりますけれども消費者団体に長く所属をしておりまして、ここの会も消費者の立場から参画をしております。今も金融オンブズネットという消費者グループ活動を展開しておりまして、消費者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

1つは、今高橋委員がおっしゃられたように、やはり消費者の概念の確立をぜひ金融行政の中で図っていただきたいと思っております。今回のこのプログラムの冒頭に、こういった利用者ニーズの重視と利用者保護ルールの徹底というのがトップに書かれるということは非常に時代が変わってきたということを感じておりまして、そのこと自体は私評価しておりますけれども、やはり消費者という言葉にならなかったというところではいま一歩だと思っております。

前回の第一部会で私ちょっと発言したので重複する方には大変恐縮なんですけれども、なぜ消費者という言葉を使っていただきたいかというと2つの意味がありまして、1つは、契約者とか一般投資家になってしまうと、その当事者同士としての関係性しかあり得ないですけれども、例えば広告なんかを取り上げると、広告は一般の消費者に向かって発信されているわけで、そういう消費者という広がりを持たないとなかなかどういう対応をとっていくのかというのがとりにくい。

それからもう一つは、事業者と消費者との力の格差ですね。交渉力とか資金力とか情報力とかという、非常に力の格差のある存在だということです。このことを意識して今後も、利用者という言葉になっておりますけれども、消費者ニーズの重視と消費者保護のルールの徹底をぜひ図っていただきたいと思っておりまして、その視点はぜひ共通化をしていただきたい。

それから、簡単に3点なのですが、今投資サービス法の制定、第一部会が精力的に検討を進めておりますけれども、これは証券概念の拡充ということを図るということで、一応今伝統的な保険と、それから銀行というのは除外をされておりますけれども、今回具体的なプログラムの中に保険のルールの適正化という話が入っておりますけれども、こういった保険分野は約款にしても契約についても会員についてもまだ非常にトラブルがありますので、こういった銀行とか保険も含んだ金融サービス法の制定の議論に次はぜひ進んでいただきたいと思っております。それが1点です。

それから、2つ目は、今回ITについてワーキングが設けられて精力的な検討が進められますけれども、消費者側から見ると非常に不安なところがございまして、それは販売、勧誘、勧誘はないというふうに言われてもネット上では大変多くの情報が流されておりまして、そういった情報の流され方、それから契約のあり方、それから偽造カードですとか、それからフィッシング詐欺といった犯罪に利用されるということも大変多くありまして、こういった犯罪に利用された場合の被害の補償について法制化を図るとか、ぜひこれも消費者の視点からの検討を加えて尽くしていただきたいと思っております。

それから、3点目なんですが、全くここの中に触れられていないことで私自身も、それから神田先生もなのですが今ちょっと考えておりますのが、お金を出して預けるとか増やすとかということだけではなくて、消費者からするとお金を借りる側というのがありまして、ここの信用の部分なんですけれども、今金融庁の中で見ていると貸金業というのはもちろん大きな一つのブロックとしてあるわけですけれども、住宅金融公庫が段階的縮小になって、住宅ローンがほとんど民間の金融機関に来ていると。それから、銀行業務の拡大の中で個人向けの融資ということも大変広がりを持ってきていると。そうすると、消費者信用の横断的な法制化ということも私としてはぜひ念頭に置いて検討の課題ということでつけ加えていただきたいと思っております。

以上の3点、ちょっと長くなりまして恐縮ですけれども、よろしくお願いします。

○ 堀内分科会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでございますか。池尾さん、どうぞ。

○ 池尾委員

ちょっと質問ですけれども、先ほどITに関するワーキンググループの設置を承認したわけですが、設置それ自体は結構なことだと思うんですが、もう一つ、このプログラムの記述もそうですけれども私から見ると抽象的で、どういう検討課題を具体的に取り上げてワーキングをやるのかというのがよくわからないんですが、もちろん議論をし始めてみないと、やってみないとわからない部分は当然あると思うんですけれども、とりあえずもう少し具体的にどういうアジェンダを考えて議論をしようとしているのかというところを補足説明というか、少し教えていただきたいなという気がするんですが。

○ 寺田調査室長

本日の段階で申し上げました中で、若干最後に申し上げたんですけれども、確かにITの問題について考えるといった場合に大変幅広い広がりございます。ただ、視点としてはやはりITについては決済との関係、それから資金仲介との関係という点が非常に重要だと考えると、まず電子債権の法的な枠組みというところをまず第一課題として議論してはどうかというふうに考えております。

この電子債権については、当然のことながら法的枠組みとして先ほどの対抗要件の付与についての問題等々議論していきますと、さらにそれを超えまして電子的債権譲渡の安定的な金融システムの中での位置づけ等を議論するということになりますと、その中では電子決済法制のような問題も出てくるかと思います。それらについては、他方で電子債権についてはe-Japanの中で早急な結論が求められておりますので、電子債権について一端まとめた上で、さらにその後それらの中で出てきた例えば電子決済でございますとか、ある意味では電子債権の移動も債権の移動に伴ってお金が動くという意味では、広義に考えれば電子マネー的な議論も可能かと思っています。そこは電子債権の議論を行った上で、さらにその中で抽出された幅広い課題の中から電子決済一般の課題というふうに持っていくのか、もしくは電子マネーの法制に持っていくのかという点は、今後ワーキングの座長等とご相談の上決めてまいりたいと思いますが、ただいずれにいたしましても、お話しのように切り口の切り込み方というのは非常にたくさんあると思っております。

したがいまして、電子債権はあくまでも入り口でございまして、その議論をしていく中で例えば債権の譲渡について、例えば電子債権そのものも民商法的な議論の中だけではどうしても解決し得ない決済の安定性等の問題が出てきますれば、それは次の第二フェーズでというふうに考えておりますが、今の段階ではちょっとまだ座長等のご指名ございませんので、事務局としては今日申し上げたような段階にとどまっております。

以上でございます。

○ 堀内分科会長

ご意見ありますか。

どうぞ、田中委員。

○ 田中委員

このプログラムの中で望ましい金融システムで例えば出ているのが、いつでも、どこでも、だれでも、適正な価格でと、こういうふうに出ているんですが、これ効率市場のことを述べておられると思うし、金融が先ほど来、出ていますように消費社会、あるいは消費者の視点で見られているというのはここに反映していると思うんですが、現実にしかし日本で金融立国を考えたときに国際社会でどういうことが起きているのか、そして高い収益率をにらんで動いているお金、またそこに金融機関がかかわってどうやって利益を上げるのかというのは非常に重要なわけですね、当たり前のこととして。なぜならば、我々が高齢化社会を迎えていまして、勤労時に拠出した年金基金というものがどういうリターンをもたらすのかでもって高齢化社会の内容が決定的に変わってくるという時代ですから、日本という金融市場でもってどういう金融取引が行われて、その中で日本の居住者が高い収益率を手にできるのかと、そこに金融機関の競争もあるということではないかと思うんですが、それからいくとちょっとイメージ違うなというか、もう少し別の視点も要るなと思うんですね。

市場間競争というのはもう、淵田さん来られていますけれども、最初に紹介されたときはそういうことかというふうに皆思ってジ・エンド・オブ・ヒストリーと言っていたんだけれども、実はマーケットエコノミーにもいろいろあると。マーケットを相互間で競い始めたということだったんですが、現実の世界の資本市場を見てみますと新しく設立される企業、あるいは新しく株式公開する企業をどこの株式市場が受け入れるのかをめぐって設計競争が現実に起きているわけですね。

アメリカの場合は、たまたまエンロンその他があったものですからサーベンス・オクスリー法等、内部統制に至るまで非常に厳しい発行企業に対して要請をすると、それはそれで一つの流れなんですが、世界は必ずしもそういう株式市場だけではなくて甘めのといいますか、発行者に対してそこまではディスクロージャーとか内部統制について言及しないところもあります。そういう企業が現実にどこの株式市場で資本調達をしようとしているのか、投資家の金がどこに回るのかをめぐって、僕は完全な設計競争等が現実起きていると思うんですね。ニューヨーク証券取引所とロンドン証券取引所と例えば香港証券取引所、そういうときに東京はどういう立場をとるのかと。あるいは、そのときにどういうのをとれば日本の21世紀の課題にこたえられるのかというのが議論されるべきだと思うんです。

現実にお金の流れを見ていると、例えば日本で社債を発行されている企業がある、しかしその社債のクーポンレートと、それからクーポンレートに反映する格付けにかかわるので言うと、本来だったら内部統制も相当いいかげんらしい、ディスクロージャーも十分でないというところを売り込んで、結果として大体そういうところは何か隠しているわけですから、昨今出ているような事例は先物で売りを立てていて、それで後で結果が出て買って大きく利益を上げる、ヘッジファンド的手法とでも言っていいと思いますけれども、そういうことで言うと日本のマーケットというのはおいしいマーケットだと、情報というものが投資者にとってふさわしいような形で開示されてはいないし情報分析も相当遅れている。だから、金融インフラの遅れ、ナリッジ(knowledge)までなっていないところは少し勉強して、少し努力するとえらいプロフィットがとれるというマーケットとしてどうやら見られているようなんですね、お金の流れを見ていると。

ということはどういうことかと言うと、我々が発行者の情報、発行者がマーケットでどこまで情報開示して、それは一体どういう意味を持っているかについての分析というのか、それを分析して並べ立てるアルゴリズムをどこまで持ち得ているかということが極めて重要で、一部の人はそのことのゆえにえらいプロフィットをとっている、ところが日本の平均的な年金基金はどうにもならないといってそういうところではお金がつくれないというか、お金がもうけられない、リターンがめちゃくちゃ低いというのに甘んじている。これを放置すれば、少なくとも日本のこれまで努力されてきた金融機関のチャネル以外のところを通じて、自分たちの年金持ち分を増やしたいという人が出てくるのは間違いないわけですね。そういう状態をどうするのかと。ですから、日本の資本市場のデザインを世界で行われているいろんなデザインとどう差別化するのかとか、それがどれが望ましいのかと、現実に起きている一部の、ですからここで出ているいつでも、誰でも、どこでも何か情報ってあるもんだというのは嘘で分析した人だけが、読み取りのアルゴリズムを持った人だけが情報というのは持つ面があるわけですね。

だから、何でも何かある、どこかへ行けば誰か教えてくれるとか、いいものがあるとかというふうに金融の世界というのはそういう世界ではないし、少なくとも投資社会というのはそこのところをどう埋めるのかと、埋める中で利益を上げ、新しいチャネルができ、チャネルが整っていけばそこでは効率市場が結果として実現すると思いますけれども、そのプロセスというものの中で金融機関もまたあるというのがどこか視点としてないと、いつでも、どこでも、誰でも、適正な価格でと言われると情報解析ってどうなっているんですかと、そういうことにかかわって金融機関というのはどうやってアドバンテージをつくろうとしているんですかと、それと例えば監督当局との関係はどうなるんですかというのは、やっぱりどこかで議論されるべきじゃないかと思うんですが、貝塚、堀内、池尾と日本を代表する方がおられますので、これはやっぱりちょっと発足に当たって少なくとも3先生からは聞きたいというふうに。

○ 堀内分科会長

大変興味深いご意見をいただきました。

もちろん私がここで何か金融庁を代弁するなんてことはあり得ないんですが、私の考えではおっしゃるとおりな面がありますね。この金融改革プログラムでも、例えばややわかりにくい面がありますけれども、ITの戦略的活用等による競争力の強化及び金融市場のインフラ整備という中に、例えば情報の不完全性、不完備等々、市場を含めた不完全な状況に関するさまざまな手当てといいましょうか、これはややここには書かれていることは通り一遍等と言っては語弊がありますけれども、まだまだこれから詰めていかなきゃいけないけれども、とにかくそういうアジェンダは上げてあると。

これは田中さんが最初の方におっしゃった東京、あるいは日本の金融システムにおける情報のより強い不完全性と、それを利用する人と、それからそれを利用されてしまう人たちと、これは両方が偏っているということですよね。そういう状況をできるだけ排除しようという意図はここに見られるんじゃないかと。もちろんこれで完全だというふうには思いませんし、これはそういう見方をすればニューヨークは完全かと言えば、ご承知のようにニューヨークだって決して完全ではないし、絶えず現状のルールのもとでそれをアビューズ(abuse)すると言いますか、悪用して他社をエクスプロイット(exploit)する人たちも絶えずチャンスを狙っているわけで、それは犯罪に近いことも含めてあり得ることであります。できるだけそういうものをなくすというのが金融インフラにとっては必要であり、それがなければご指摘のように一般の利用者、消費者を含めていいと思いますけれども、当然安心してそういうマーケットに我々の資金とか、あるいは金融サービスのいろんな提供を依存することはできたかなというのはお話のとおりです。したがって、金融改革プログラムの中にはそういうご心配の点についての、完全とは言えないまでも視点はあるのではないかと私は思います。もちろんご指摘のとおりでそれは非常に重要だと。

さて、それで私的企業としての金融機関がそれにどうやって対応するかですが、これは今日専門委員の方がいらっしゃるのでぜひご意見いただければと思いますけれども、私はそれはインフラが整備された後では、いかに日本なら日本の私的企業としての金融機関が広い意味での利用者の需要にこたえていくかというその能力に依存しているわけであって、もしそういう需要に対して対応できないとなれば、我々は日本の金融機関からサービスを受けなくてもいいという選択ができると、そういうものを我々は用意しなきゃいけないということになるわけですね。現にご指摘のようにそうなりつつあるという面もあるわけですから、当然そういう国際間の競争、あるいは市場間の競争を通じて日本の私的な企業としての金融機関に対してさまざまな圧力がかかっているというように私は認識しています。

ですから、そういうものを受けてディシプリンが働いて我々の期待に対してこたえてくれるんではないかと。もしこたえられないとすれば、我々はいろんな幅広い選択をしていく必要があるということも私はこのプログラムの中で読み取ることができるんじゃないかというふうに思いますけれども、これはちょっと読み過ぎ?

○ 河野総務課長

ありがとうございます。

実は、本文の7ページをちょっとご覧いただきますと、これもまた全く不十分かもしれませんけれども、国際的に開かれた金融システムの構築と金融行政の国際化という中で、金融の国際化・構造変化に対応した制度等の構築、さらにはその中で例えばヘッジファンドへの対応についての検討、あるいはそのページの一番下でございますけれども、あえて市場間競争という言葉を使いまして、これもアンビシャスだというご指摘もあるかもしれませんけれども、我が国市場をアジアの金融拠点にするための方策についての関係者との共同研究等とうたっております。

じゃあ、何をやるんだということになりますけれども、まず私どもとしましては、まさに今の田中委員のご指摘などを踏まえまして、今一体何が起こっているのかという点を十分分析の上、ぜひ委員の皆様方からもお知恵をおかりしまして、何らかこういった面で我が国としてどう対応していくかというビジョンを何らかの場で検討させていただきたいと思っております。その節はまたよろしくお願い申し上げます。

○ 貝塚会長

1点だけ違う視点ですが、要するに日本における金融工学的な教育というのは、実を言うと、これは大学の話ですけれどもあちこちで少しずつやっているわけですから、なかなか一人の非常に優秀な研究者の方がおられても1人だけが突出するというよりも、やっぱり教育というのは多分あるレベルの人が専門的な知識を相当ある意味で提供するということがあって可能になるわけで、多分日本の大学教育、大学の教育はある意味では大分遅れをとっていて、結局先ほどおっしゃった点の私の印象では、やっぱり日本の金融機関の力というのは、もちろん外国人の方を雇用して、そしてやっていく事実はある程度必要ですが、やっぱりこういう日本である程度ちゃんとした金融工学的なそれを持った人がある程度ちゃんといるということがあって、そしてそれを金融機関の方が活用されるか、あるいは市場関係者が活用されて、そういうものがあればいろんな金融のメッセージというのは相当ちゃんと読めるはずなんですね。だから、その辺のところは非常に重要で、必ずしも金融審議会の直接のあれじゃなくて、考えによれば文部科学省の話でもあるんですが、そういう部分がかなり重要だと。

今はもう多分いろんな方のご意見を、私は別に特段あれですが、やっぱりほとんど最終的なチャンスは今これから遅れちゃうともう取り返しがつかないという認識を持っている方がかなり多いと思いますので、そういう点は非常に、ここの議論と直接関係あるとは申しませんが、インフラの一つとしてそういう金融工学的な相当専門知識をちゃんと持っている人が大学院でそれなりに養成できるというのはかなり重要で、それが最終的にはさっき田中委員が言われたようなことにかなり役立つのではないかという気がするという、これは全く別の視点です。

○ 堀内分科会長

ほかに。それでは、時間があれなんで、小島さん、今手をお挙げになりましたね。ですから、恐縮ですけれども小島さんで、あとは次回以降ということに、申しわけございません。

○ 小島委員

今田中委員がおっしゃられたことに触発されてちょっと補足的な、能動的なコメントをしたいんですが、冒頭にこのプログラムの説明を総務課長からいただきまして国際的に高い評価を受ける、あるいは長年の宿題が積み重なっていると、こういう指摘をされました。確かにこれまでバブル崩壊後のいろんなマイナスの問題に対する調整は大きな山を越えたんですが、ようやく日本の金融システムあるいは日本の社会全体もそうですが、21世紀にようやく遅れて向き始めたと、これまでずっと20世紀に向いていたと思うんですよね。

田中さんがおっしゃったとおりこの10年間見て、要するに世界は制度、システムの改革競争、大競争があったわけですね。そのペースがどんどんすごい加速している中で日本は過去の調整にずっと追われていたと。これは仕方がないことですが、だけどその間、その変化の方向、スピード、そのギャップが非常に大きくなっていると。日本の資本市場であり、あるいは金融システム、さらにはほかのそういうシステムもそうですが、いかにグローバルな競争、改革の競争において遅れてしまったかという、遅れているという現実をしっかり踏まえていかないと21世紀の課題に真剣に取り組めないんじゃないかという感じがします。

産業としての金融の競争力、これも重要ですが、金融関係は単に一つの産業の問題でなくて本当に経済社会のインフラです。血液の問題という議論もありますが、やはり日本の社会、新しい企業や新しい産業フロンティアとか、そういうものが開拓できない限りは非常に閉塞した社会にこの21世紀はなってしまうと思うんですね。

それには、例えば少子化の議論は人口の問題じゃなくて日本に新しい企業が生まれないと、企業の少子化、あるいは新しい産業フロンティアがなかなか生まれないという産業の少子化、これが恐らくほかの国と比べて、特に一部の施行している国と比べると遅れてしまっているという、その現実を直視して、金融の分野からそれに対応してどこまで協力、貢献できるのかという視点を絶えず持っていかないと、消費者も結果的にはどう要求しても何もサービスが、重要なサービスが受けられない、雇用の問題もそうですし、年金の問題もそうですし、だからその辺の時代感といいますか、世界の流れの中で制度間競争で日本が遅れてしまっているという現実を改めて、どこで遅れたのか、何が必要なのかということを少しもう一回座標軸をしっかり定めて議論することが各論を議論する前提として重要じゃないかという感じがします。

○ 堀内分科会長

どうもありがとうございました。

事務局の方で何か今のあれですか。よろしゅうございますか。

大変貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。もう少し議論していたいところでございますけれどもちょっと次の会議がまたありまして、大変申しわけありませんが一応これをもちまして本日の金融分科会は終了させていただきたいと思います。

しかし、今出たようなご意見は今後もいろいろな形で提起していただきたいというふうに思いますし、事務局としてはそういうご意見があるということはテイクノートしたということでご了解いただきたいというふうに思います。

それから、今日出ましたご議論の模様などにつきましては、この後貝塚会長と私とで記者会見でご紹介するということにさせていただきたいと思います。

それから、今後の日程でございますけれども、事務局の方から後日調整させていただくということでございますので、何分ご協力をお願いしたいと思います。

それでは、本日はどうもありがとうございました。

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