金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第6回)議事録

1.日時:

平成24年9月28日(金)16時30分~18時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○藤本信用制度参事官

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。

資料としまして、資料1-1と振ってあります事務局説明資料、それから、資料1-2と振ってございます前回の事務局説明資料、それから資料2と振っております、森下委員の米国出張報告というものを配付しております。ご確認をお願いいたします。

○岩原座長

よろしいでしょうか。

それでは、ただいまより、第6回会合を開催いたします。

皆様、お忙しいところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

早速本日の議事に移らせていただきたいと思います。本日、第6回は、まず前回の第5回に提示させていただきました金融機関の破綻処理の枠組みに関する論点につきまして、当ワーキング・グループにおきまして各委員から出されましたご意見等を踏まえまして、金融機関の破綻処理の枠組みにつきましてさらにご議論をしていただきたいと存じます。

それに先立ちまして、森下委員から米国財務省やFDIC等への出張のご報告をいただきたいと存じております。

それでは、森下委員、よろしくお願いいたします。

○森下委員

先般岩原座長からご紹介をいただきましたように、金融庁金融研究センターでの本件に関連する特別研究員を拝命いたしまして、その関係で、お手元の資料2にございますような日程で米国に出張してまいりました。

本日は、そのうちドッド・フランク法における金融機関の破綻処理に関する部分に関しましてご報告をさせていただきたいと思っております。

訪問先は、ここに書いてございますように、Treasuryですとか、FRB、FDIC、預金保険公社などでございます。

お手元の資料の冒頭に書いてございますTitle IIということが今回ご報告の対象となります。これはドッド・フランク法におけるTitle IIということでございます。

ドッド・フランク法のTitle II、Orderly Liquidation Authorityというタイトルがついておりますけれども、そこでは、銀行持株会社やFRBの監督対象となっているノンバンク金融会社などにつきまして、当該銀行持株会社、金融会社などの破綻が米国の金融の安定に深刻な影響を与えるとの財務長官の決定、これをsystemic risk determinationと呼んでおりますが、を経て適用される特別の破綻処理手続でございます。

手続が開始されますと、対象会社について、FDIC、預金保険公社がreceiverに選任されまして、当該会社の清算手続が行われます。

FDICには、銀行破綻処理において与えられているような承継銀行への資産や業務の移転など多様な権限が与えられておりますほか、FDICは当該会社などに流動性を供給するために、Treasuryから資金を借りて、当該会社や承継銀行などに融資などをできるというようなさまざまな手法が盛り込まれております。

では、具体的にお話をさせていただきたいと思います。

このようなTitle IIが設けられた背景ということで4点挙げさせていただきました。

まずはリーマン事件に対する反省ということでございます。このTitle IIは、何よりもリーマン事件で浮き彫りになった様々な問題に対処できるようなツールを備えることを目的としているといえます。

まず、1930年代の大恐慌以後、銀行につきましてはFDICが大きな権限を持ってさまざまな破綻処理ができるような制度が整備されてまいりましたが、リーマン事件では、銀行でないリーマンの破綻に際しまして、FDICがとれるオプションが非常に少なかったというようなことへの反省が前提としてございます。そこで、銀行以外の破綻処理手続に関しまして、もう少し多様なオプションを持って破綻処理ができるようにしたいというのが今回のTitle IIの背景となっております。

また、このTitle IIの対象となるような金融機関はグループで活動していることが殆どですが、グループを構成する個々の法人格の単位と、実際に業務を行う上でのビジネスラインというようなものには違いがあるということがございます。各法人が独立してビジネスを行っているわけではなく、法人格を超えてビジネスラインとして効率的な構成は何かというような観点からグループ内の各法人が再構成されているというのが通常であるかと存じます。また、業務に必要なインフラ、ITですとか、人材なども、グループ内の一部の企業に集中させるなどのことで効率化を図っているということが多く見られます。

しかしながら、いざ破綻処理となりますと、法人格単位でばらばらに処理がなされてしまいます。そして、これがそのグループの活動の継続をより困難にしてしまう要因になってしまうという問題意識がございます。

その結果、一番下にございますが、金融グループとしての価値が、フランチャイズ・バリューが失われるというような言い方をされていましたけれども、価値が損なわれてしまうことになってしまいます。その結果、破綻処理に必要なコストが非常に高まってしまうという問題意識があるようでございます。

また、そのような金融グループに関しましては、グループ企業間の複雑な取引関係ですとか貸借関係もあって、法人格単位での破綻処理というものはそのグループ全体としての処理を非常に困難なものにしてしまうということもございます。また、相互に関連していますため、どの子会社を処理してどの子会社を生き残らせるのかということの選別もなかなか困難であるということもあるようでございます。

このような問題意識に対応するものとして現在検討されております破綻処理の基本的なスキームというのが、そこにございますSingle Entity Receivershipという考え方でございます。

このSingle Entity Receivershipという考え方は、金融グループの頂点にあるホールディングカンパニーを適切、迅速に破綻処理することによって、その下にある子会社などをできるだけ生かしたままで破綻処理を可能にしようということにございます。ホールディングカンパニーという1つの主体、Single Entityの清算を通じて、グループ全体の価値と機能をできるだけ維持しよう。そのような形で清算をしようということで、Single Entity Receivershipとか、Single Entityモデル、Single Entityアプローチと呼ばれているようでございます。

そして、ここの図にございますように、破綻処理手続が始まりますと、ホールディングカンパニーの清算処理手続をし、ホールディングカンパニーの株式等をブリッジカンパニーに移します。そのブリッジカンパニーのもとで、銀行、証券、あるいはその他の子会社などの経営をなるべく継続しながら破綻処理を行い、そして承継会社のもとでめどがついた段階で、新たな持株会社、民間の持株会社に持株会社の持分を移転していくというような形で処理をしようというのが基本的な考え方であります。

このように、持株会社の持分を移転していくことによりましてグループとしての経営を継続していく。それによって破綻処理の金融システムへの影響をなるべく小さくするとともに、グループとしてのフランチャイズ・バリューをできるだけ維持したまま、破綻処理を実現しようというのが基本的な考え方であります。

2ページ目にお移りいただけますでしょうか。

子会社の業務などに関しましては、承継会社のほうに移転していくことによって継続するということですが、債権者などの権利につきましては、FDICが管財人に選任されまして、その管財人の手続のもとで縮減されるということが行われます。

先般来ベイルインというような考え方がKey Attributeとの関係で示されておりますけれども、Title IIの手続におきましても、例えば無担保債権者ですとか劣後債権者の権利を株式に振りかえるというようなこともできるようでございます。

また、裁判所の関与を特に経ることなく、法令に定められた手続に従って債権者の権利を縮減するというようなことも可能であるようでございます。

また、フランチャイズ・バリューを維持することによってグループとしての価値をできるだけ保ったまま破綻処理を行う結果、権利の縮減等があったとしても、債権者への配当額は、破産手続の場合よりは大きくなるものでなければならないというのが基本的な考え方ということになっております。

次に、こういった手続に要する手続費用のファンディングに関してでございます。米国の方々が盛んにおっしゃられていましたのは、こういった金融機関の破綻におきましては、特に大事なのは流動性供給であるという点です。アセットが劣化するということもあるかもしれないけれども、破綻するというのは、必要な流動性が供給されなくなる、マーケットから調達できなくなるからであるというようなことをおっしゃっていました。

一般の事業法人の破綻処理との関係ではDIPファイナンスなどの手法も用いることも可能かもしれませんけれども、これぐらい大きな金融機関グループの破綻処理になりますと、そういったような形で事業に必要な資金を調達するということも難しいと考えられます。そのため、今回の手続に関して必要な費用に関しましては、Treasuryからの借り入れができるということが規定されております。

上限額が定まっていまして、当初の30日間に関しましては、例えば連結ベースで総資産の10%というようなことですけれども、大規模な金融機関グループということになりますと、相当な金額を借り入れることができるということになります。

ただ、こういったお金は納税者の負担にすることはできませんので、破綻金融機関の資産を処分をしていくことによって返済をしていく必要があるわけですが、資産処分などによってこうやって借り入れた手続費用が返済できないということになった場合には、それをTitle IIの対象となる持株会社などから事後徴収するということが定められております。

ただ、お話を伺ったところによりますと、このTreasuryからの借り入れの返済資金というのは、破綻処理においてかなり高順位を与えられておりますので、多くの場合回収できなくなることはないのではないかというような見方がされているようでございます。

また、このような資金負担との関係では、検討段階では事前に集めるといったような考え方も一部ではあったようでございますけれども、事前に集めるといったような考え方は採用されなかったということでございます。その理由としましては、事前の額を集めるとしても、幾らであればよいかわからないという点と、あらかじめ基金のような形で存在していますと安心してしまい、あるから使っていいんじゃないかというような感覚が生じて、モラルハザードになってしまうのではないかということで、事後的に徴収することにしたというようなご説明がありました。

次に、デリバティブ取引契約などの取り扱いでございます。デリバティブ取引に関しましては、リーマンの際に多くの契約が解約されたことによって大きな混乱が生じたというような問題意識があるようでございます。先ほど申し上げましたようなTitle IIの考え方からしますと、承継会社への円滑な業務の承継というものが必須であるということになりますから、Title IIの手続が開始されましたら、その時点でデリバティブ契約は解約されてしまうというのは大変好ましくないということになります。そのため、デリバティブの解約を一時停止することは非常に重要であるといったようなことが言われております。

とめることができるのは事実上2営業日なわけですけれども、そのような短期間とめるだけでも十分であると考えられております。それは、FDICが選任されてReceivershipの手続が開始するまでの準備の段階で、多くの場合承継の候補が決まっているということがあります。もし決まっていなくても、自分たちでブリッジカンパニーをつくって、そこに移すというような形で処理ができるので、これだけの時間停止できることで十分ではないかと考えられているということであるようでございます。

取引先単位でこのデリバティブ契約を移すか、移さないかということを判断できるというようでございまして、Aという取引先のあるポジションは移すけれども、別のポジションは移さないといったようなチェリー・ピッキングのようなことというのはできないと考えられているようでございます。

最後に、国際的な協力ということでございます。この手続の対象となるような大きなシステム上重要な金融機関というのは、多くの場合国際的にも展開しているということがあります。ですから、こういった破綻処理手続の際に国際的な問題をどう考えるかということは非常に重要になってくるわけですが、この点はKey Attributeの中でも強調されていることであって、Title IIの制度設計との関係でも非常に重要であると認識しているとのことでした。

国際的な破綻処理を円滑にするためにはホスト国にどういうことが求められるのかということをここで4点挙げております。

1つは、例えばアメリカの金融グループであって、ホールディングカンパニーがアメリカという場合、ホーム国であるアメリカで清算手続が開始されたのであれば、アメリカで行われている手続をその拠点が所在する国々、ホスト国が承認してくれるということが必要であるというのが1点目でございます。

また、子会社などの事業が継続されるということが重要ということになりますと、ホストカントリーにある現地法人や支店にも流動性が供給されるということが必要になりますので、ホスト国内での拠点への流動性の供給ということについても、ホスト国の環境整備、あるいは協力というものが望ましいというようなことでございました。

あとは、ホームカントリーで手続が開始したことを理由として、引き金として、例えばホストカントリーの当局がライセンスを取り上げてしまう、あるいは拠点の閉鎖を命じてしまうということがありますと、事業をなるべく継続しながら破綻処理をしようということが難しくなりますので、そういったこともできればやってほしくないというようなことが3点目です。

あとは、各拠点がばらばらに清算されることを回避するために、情報交換を密にして協力をしながら手続を進めていくというようなことがホスト国に求められるという点です。アメリカに拠点がある外国金融機関についてそういった手続が開始された場合にも、アメリカとしてもぜひそうしたいというようなことをおっしゃっておられました。

そうした観点から、平時において、各国とMOUやCooperation Agreementの締結を進めまして、円滑な情報交換ですとか協力を可能にできるような体制を整えていきたいというようなことをお話になられていました。

逆に国際的な協調の障害になり得るような事項としてどういうことを懸念しているかということについてでございますけれども、ホスト国について求められることとして申し上げた点とも若干重複しますけれども、1つはホームカントリーでなされました経営権の移行について、例えば当局の認可が必要だけれども、その認可が得られないとか、あるいは、ホームカントリーでなされた経営権の移行が関係国法によって承認されないというのは1つの障害であるだろうと考えられています。

次に、各国が自国債権者保護のために、清算、あるいはリング・フェンス、囲い込みのための措置をとってしまうことです。

あとは、ホスト国が、適格金融契約、典型的にはデリバティブなのですが、のネッティングの停止のための法的枠組みを欠きますと、先ほど申し上げたように、事業の継続が難しくなる、障害が生じるということでございます。

あとは、倒産法制の調和がないということから来る不都合です。

以上、簡単ではございますけれども、破綻処理に関することについてのご報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○岩原座長

どうもありがとうございます。それでは、今の森下委員のご報告に関しましてご質問、ご意見があれば、伺いたいと思います。井上委員、その後大崎委員お願いします。

○井上委員

大変興味深いご報告をどうもありがとうございました。何点か質問差し上げたいと思います。リーマンショック後の教訓が反映されて、流動性の欠如に大きな問題があるという前提に立った考え方が示されているようです。それはもちろん間違っているわけではないのですけれども、日本の過去の例を見ましても、流動性の欠如だけではなくて、もともとのところではやはり資産の劣化があったはずで、その問題が流動性の欠如によって大きく増幅されていったということだと思います。ご報告によれば、流動性の欠如というファンディングのところの問題意識が1ページ目の図に反映されているように思うのですが、Single Entity Receivershipという処理スキームは、一番上の会社を通じた資金の供給とかリファイナンスとかいう観点では非常にわかりやすいのですが、実際にアセットあるいはビジネスを持っている銀行とか証券会社の不良資産・不採算事業がこれによってどう変わるのかが必ずしもよくわかりませんでした。アメリカでこのSingle Entity Receivershipが予定している劣化資産の処理は、上をすげかえただけで、どういうふうに進むのかを、もしおわかりになれば教えていただきたいというのが1つ目の質問です。ファンディングのところに書いてあるように、資産処分によって返済していく中で不良資産も処分していくのかもしれませんが、そうすると、子銀行や子証券会社の中には、そのままの形でビジネスを維持できないところが結構出てくるのではないかという問題意識です。

もう一つお尋ねしたかったのが、国際的な協力のところに出てくるMOUとかCooperation Agreementについてです。これは前回でしたか、私自身申し上げた、複数の法域にまたがった管財人間の協力の手段として最近取り上げられているプロトコルの当局版なのかと思ったのですが、ここのMOUとかCooperation Agreementの当事者は、監督当局なのか、それとも、各国のいわゆる受け皿機関のようなところなのか。そして、その中身として、情報交換を円滑にするということがおそらく定められているのだと思いますが、そのほかにどんなことが定められるものなのかをおわかりであれば教えていただきたく存じます。

以上です。

○岩原座長

森下さん、お願いします。

○森下委員

それでは、比較的簡単な最後のご質問からでございますけれども、MOUとかCooperation Agreementで想定されているのは破綻処理がない平時の段階から当局間で協力ができるような体制を整えるためにということでお話しになられていたかと存じます。

その具体的な内容については、主に情報交換があげられていました。私の聞き方が悪かったのかもしれませんが、具体的なそれ以上の内容ということについては特に伺っているものはございません。

1点目の点というのは、私も少し疑問にも思った点なのですけれども、先方のご説明の中では、リーマンの場合にはさほど全体としての資産の悪化の割合が大きくなかったのではないか。だから、資産の悪化というのは、無担保債権者などを株式に転換することで比較的吸収できるのではないか、といった考え方を前提としてお話になられたと記憶しております。それでも例えば子会社の資産が悪化した場合にはどうするのか、と伺ったところ、おっしゃっていたのは、ホールディングカンパニーが子会社に対して持っている債権などを株式に転換するとか、そのような形で処理をしていくというようなことで、まずその段階で何とか処理をしていけるのではないかということをお話になられていました。ただ、それでも足りなかったらどうするのかということは、井上委員のおっしゃられたような問題としてあり得ることなのかなと思います。

○岩原座長

井上委員、よろしいですか。

○井上委員

理解したつもりです。ありがとうございます。

○岩原座長

大崎委員。

○大崎委員

ファンディングについて1つ教えていただきたいんですが、基本的には政府からの借り入れで流動性供給をして、その政府債権は優先度が高いので、回収できなくなる可能性は低いけれども、しかし、回収できない場合はその分を事後徴収するというご説明だったかと思うんですが、この事後徴収の取り立て先といいますか、いわば奉加帳のようなものを回される先というのは、ここにある銀行持株会社及びFRB監督ノンバンク金融会社全部ということになるのかどうかという点と、また、どのような分担をするということについて何らか事前に決まっているものなのかということを教えていただければと思うんですが。

○岩原座長

森下さん。

○森下委員

奉加帳を回す先ですけれども、これは基本的にこの手続の対象となるような、FRBの監督対象となるようなそれなりの規模の金融機関グループ、金融持株会社に回すというようなことでございます。

分配の仕方が、取り立ての仕方が決まっているかということですが、これはたしか聞いた記憶があるんですけれども、まだ決まってないということでした。すべての細かなルールが現時点で全部できているわけでもないようでございます。ただ、おっしゃっていたのは、実際にそのような事後的な取り立ての必要がある事態というのは基本的に想定しがたいという認識があるので、急いで最初の今の時点でそこまで決めていなくてもよい、というようなことのようでございます。

○大崎委員

ありがとうございました。

○岩原座長

川波委員、お願いします。

○川波委員

すいません、1点教えていただきたいんですが、やはりファンディングのところなんですけれども。私の理解ですと、欧州の場合には、6月のサミットで、たしか、ESMのような形で、銀行への資本注入をやるというような、ベイルインといいながら、ベイルアウトへの道を開くような、そういう議論もなされていたと思うんですけれども、アメリカの場合は、銀行への資本注入ということについては何かご議論があるんでしょうか。もしご存じであれば教えていただきたい。

○岩原座長

森下さん。

○森下委員

今回のこのTitle IIは銀行を対象としたものということではないのですが、少なくともTitle IIとの関係では、納税者のお金は使わないということが大前提となっていますので、納税者のお金を使う形での資本を注入というような考え方は、この手続との関係では今のところないのではないかと思います。

○川波委員

ありがとうございました。

○岩原座長

小野委員、お願いします。

○小野委員

2点教えてください。1つ目の質問ですが、仮にSingle Entity Receivershipの枠組みにより破綻処理が行われることとなると、例えば子会社銀行の資産が傷んでいる場合には、既存の銀行の破綻処理の仕組みも並存すると思うんですけれども、それとこのSingle Entity Receivershipとの関係はどうなるのでしょうか。

2点目ですが、先ほどの奉加帳の話と関連しますが、例えば持株会社の下の証券会社がすごく傷んでしまっているが、銀行や他の金融子会社は健全である場合、そのグループ内の銀行や他の金融子会社は、持株会社を通じた関係以上の負担は求められないのでしょうか。要は、グループ内の金融子会社とグループ外の金融機関の負担は同じになるのでしょうか。

○岩原座長

森下さん。

○森下委員

まず1点目ですが、グループ内にある例えば銀行についての破綻処理がなされるときに、そこでなされる手続との関係をどう整理して理解したらいいのかという点ですが、その点に関しましてはやや難しい問題が残っているというのは現実のようでございまして、例えば州法に基づいて設立されているような金融機関もあるわけで、そうなると、それだけでも州の監督当局との手続如何の調整というようなものも出てまいりますので、この下にある銀行などの破綻処理とほんとうにうまく整合性をとって進めていけるのかというような点については、少なくとも私がお伺いした限りは、理路整然と決まっているというわけでもないのかなというような印象です。

○小野委員

そうすると、Single Entity Receivershipの破綻処理の枠組みと既存の銀行の破綻処理の枠組みのどちらが優先するかは決まっていないという理解でいいですか。

○森下委員

銀行の破綻処理自体も、できるだけ事業を継続するというような前提でできていますので、事業をできるだけ継続しながら破綻処理をしていくという基本的なコンセプト自身は一致していると思います。ただ、銀行部門において大変アセットが傷んでいて、債権者の債権を処理していったとしても、何ら清算が進まないといったときに、具体的にどういうことが発生するのかという点は、ちょっと私自身も不勉強で、ここでお答え申し上げることはできません。

あと、2点目の奉加帳というか、資金負担の点でございますけれども、資金負担先というのは、ホールディングカンパニーなどに資金負担を求めていくということになっていますので、ホールディングカンパニーに対して資金負担を求めた後、ご質問の趣旨を正確に理解しているかどうかわからないのですけれども、その中でどう分担されるかというのはTitle IIの手続の中で決まっている話ではないのかなというような理解でおります。

○小野委員

すいません、すぐ終わりますのでもう少しお尋ねしていいですか。そうすると、例えば持株会社の下に銀行が入っているが、その子銀行の持分を持つ持株会社以外の少数株主がいる場合、その少数株主は、ホールディングカンパニーとは関係ないので、負担を求められることはないという理解でいいですか。

○森下委員

要は、FDICの負担の求める相手方というのがこの破綻処理手続の対象者ですので、個別の銀行の株主が資金負担を求められる直接の相手方となるわけではないという理解でおります。

○岩原座長

川口委員。

○川口委員

今のファンディングの話と関係するんですけれども、きょうのお話で、アメリカで、なぜ事前に集めるのではなくて事後に徴収することになったかという理由がよくわかって参考になりました。おそらく銀行や持株会社がしょっちゅうつぶれるのであれば、事前に集め資金をプールして、その都度出していくというのがよいのでしょうけど、今回はかなり規模の大きいものを想定しているようですので、そのような大規模破綻はそんなにしょっちゅうは起こらない。起こらないのであれば、事後的にその都度徴収するというようなことでよいのではないか、というような考えがあると思うんですが、インタビューされて、そういう視点をお感じであれば教えてください。もう一つは、最初幾らあれば足りるのかわからないから事後的に集めるのだというのはよくわかるのですが、2つ目におっしゃられたモラルハザードを起こすというのがもう一つよくわかりませんでした。これは、救済するわけではないですよね。そういう点で安心してしまうというのはどういうことなのか、もう少し詳しく教えていただければ幸いです。

○森下委員

ありがとうございました。安心してしまうというところは先方の方がおっしゃっていたんですけれども、誰がどのように安心するのかも含めて、それ以上の点は私もよくわかりません。

1点目ですが、お話をお伺いしたり、あるいは書かれたものを見たりして私が持っております印象は、このシステムのもとにおいては、政府の債権はスーパープライオリティーのようなものを与えられているので、流動性供給のために出された資金が回収できなくなるということはほぼないだろうということについての安心感が、事前、事後ということを決める上での1つのポイントにもなっているのかなというような気がいたします。

ただ、このTitle IIをつくっていく過程で、事前にするか、事後にするかということはいろいろかなり議論された点のようでございます。

○岩原座長

ほかにございますか。よろしいですか。

それでは、ご質問、ご意見等がさらにあれば、事務局からの説明の後にお願いすることとさせていただきたいと思います。

それでは、続きまして事務局からの説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

資料の右肩に1-1と書いております事務局説明資料でございます。まず表紙をめくっていただきます。

1ページ目でございます。左上にFSBの主要な特性のポイントを書いております。左下に預金保険法における預金取扱金融機関に対する金融危機対応措置の概要を書いております。右上にこれまでいただいた意見というものを書いております。右下にそういうものも踏まえた上での論点というのをご提示しているところでございます。

まず、1ページ目でございますが、破綻処理制度一般ということで、主要な特性では、深刻な金融システムの混乱回避等の確保をしながら、金融機関を破綻処理することを可能にするという目的となっております。

これまでの主なご意見等でございますが、銀行の破綻法制、我が国の場合でございますが、銀行の破綻法制は、金融危機の経験もあり、比較的整備されているが、改善の余地がある。

それから、リーマンブラザーズの経験というものを踏まえれば、新しいタイプのシステミック・リスクにどのように対応するのかという点がある。

また、具体的な制度設計に当たっては、各業界の特性を踏まえた議論が必要であるというような意見が出されております。

こうした意見を踏まえまして、右下でございますが、預金保険法上の金融危機対応措置において、システミック・リスクの認定というのは、高度な判断ということでございますので、金融危機対応会議の議を経て内閣総理大臣が決定を行うこととしており、今回のKey Attributeを踏まえた枠組みということについてもこうした点をどのように考えるかということがございます。

1-2という別冊をつくっておりますが、今まで配った資料でございますが、12ページをお開きいただきたいと思います。これが預金保険法の金融危機対応制度ということでございます。今申し上げた金融危機対応会議と申しますのは、ここにありますように、総理、官房長官、金融担当大臣、日銀総裁、財務大臣、金融庁長官といったメンバーで構成される会議で、この手続を経るということにされています。

それから、システミック・リスクのおそれというのは、その矢印の下でございますが、金融機関の破綻等が我が国あるいは地域の信用秩序の維持に極めて重大な影響を生ずるおそれということを書いています。これは法文上も大体こういう文言になっております。

預金保険法のこの制度できる前に、我が国の金融危機の後、金融再生法ですとか、早期健全化法というのが作られました。当時はシステミック・リスクとはどういうものだろうかというのをいろいろ書き込んでいた経緯がございます。例えば、他の金融機関等の連鎖的な破綻を発生させることとか、我が国における金融機能に極めて重大な障害が生じるおそれとか、国際金融市場に重大な影響を及ぼすとか、あるいは、経済の円滑な運営に極めて重大な支障を生ずるおそれというのが書いてありました。預金保険法で恒久的な措置として書くときに、いろいろ検討した結果、なかなか書き切れない面があるということで、信用秩序の維持に極めて重要な支障が生じるおそれというふうに今書かれているわけです。そのかわりといいますか、そういうものを認定するときには、金融危機対応会議といった、我が国の政策を担うトップが決定をするという手続を経て、それでシステミック・リスクあるかどうかというのを認定するという制度に今預金保険法上はなっているということでございます。こういう点も含めまして、どのように考えていくかということがあろうかと思います。

こちらの1-1のほうの資料に戻っていただきまして、1ページをおめくりいただきまして、2ページでございます。対象となる金融機関ということで、主要な特性では、あらゆるシステム上重要な金融機関に対し適用されるべきとされているところであります。

これまでいただいた意見でございますが、銀行に限らず、持株会社等を含めてシステム上重要な金融機関について検討を行う必要があるという意見が出されております。

次は、客観的にそういうものが決まるのか、それとも、やや環境依存的に市場のセンチメントとか経済の状況などによってシステム上の重要性というのが決まる場合もあるのではないかということで、コンストラクティブ・アンビギュイティ、建設的な曖昧さというものがあってもよいのではないかという意見が出されています。

それから、リーマンショックの際に、マーケット型のシステミック・リスクというものが連鎖的に金融市場の混乱をもたらしたということも踏まえて、金融商品を大量に保有している金融機関が、例えば商品を売る圧力によって売って、相場を変動させて、それが悪循環になっていくということもある。

一方、特定の業種のみを排除するというのはどうかというような論点があります。

それから、個々の金融機関は重要性というのが低い場合でも、例えば同じ行動をとってしまう。それはいろんな場合があると思いますが、リスク管理の手法が同じだったり、何かの状況によって同じ行動をとってしまうということで、全体として何か危機のトリガーとなるのではないかというような考え方があります。

投資運用業というものについては、清算機関の機能強化等という考え方もあるのではないかというような意見も出されております。

こういうのも踏まえまして、金融業全体を対象にし得る枠組みを構築しておくことが必要ではないか、対象となる金融機関をあらかじめ定めることは適当かという論点をここで提出しております。

もう1枚めくっていただきます。3ページ目でございまして、当局の権限と書いていまして、主要な特性の記述が実は2ページにわたっております。途中で分断されているのでございますが、最初は、どういう時点で破綻処理が開始されるべきかということでございまして、もはや存続が可能でないか、もはや存続が可能でないと思われる場合であって、という存続関係のことを書いています。

次のページめくっていただきまして、4ページでございますが、左上に当局の権限として広範な権限を有するべきということで、経営陣の選解任ですとか、財産の処分権、ブリッジ金融機関の設立、ベイルインといったことが書かれています。

1枚戻っていただきまして、3ページ目でございますが、今まで出された意見でございます。我が国の金融危機の経験を踏まえれば、過小資本という早い段階で資本増強措置が講じられるということは、モラルハザードの問題等もあるけれども、重要ではないかという意見。

それから、今も出ましたが、グループ単位での処理というのをどう考えるかという点がございます。次ですが、リカバリー・プランといったものの段階ではグループ全体で考えているんですけれども、処理ということになりますと、やはり債権者にどれだけ分配するかということもございます。債権者というのは、1つの法人、それぞれの法人に債権者がいるということでございますので、伝統的な考え方からすると、エンティティー単位ということになるんですが、そういった点をどう考えるかということがございます。

次は、民事再生手続の中であれば、破産手続の申し立てとか強制執行との関係というのは民事再生法の中で整理されているということです。仮にこれが民事再生法とか倒産手続の外であれば、こういった手続等の関係をどう考えるかというのがあるということでありますが、民事再生法の中で言えばそういうものはそもそも問題にならないでしょうということです。

それから、我が国法制上、債権カットなどを行政手続のみで行うのは難しいのではないかというご意見をいただいています。

こういったものは、ベイルインに関し出てきた論点でございます。ベイルインといいますのは、下の備考に書いております。マル1で書いておりますのは、株式をまず償却しなさい、債権をカットしなさい。マル2は、債権を株式に転換しなさい。こういったことで損失を吸収しましょう。マル3では、その他、契約上、コンティンジェント条項ですとか、契約上のベイルインというものがあれば、まずそれで対応しましょうというようなことが書いております。

契約上のベイルインといったものは、我が国も含めて、こういった手法というのはあり得るということは当然のことでございます。バーゼル3でも、一定の商品につきまして、その他Tier1に入る。こういうコンティンジェント付き商品で、あるトリガーが引かれれば債権がカットされるとか、債権が株式に変わるというようなものでございますが、そういうものについては、バーゼル3上、一定のものがその他Tier1に入ることとされています。

一方、欧州とかではどういう考え方がとられているかといいますと、破綻処理当局がベイルインの権限を行使して債権をカットする、または、株式に転換するといったようなことがなされるようであります。

それについては、我が国法制上債権カットなどを、行政手続で行うこと、裁判所以外の手続でできるかどうかといったような論点があるということでございます。

一方、欧州型のベイルインとはちょっと違ったものとしてアメリカのベイルインというのがございます。アメリカの場合は、先ほどもございましたが、FDICが清算を行う。清算を行うに当たって、債権をカットするとか、債権を株式にかえるといったところで、比較的倒産手続により近いほうのような感じもします。

そうすると、アメリカは倒産手続に近いということであれば、我が国の民事再生手続に近い面もあるんですけれども、ここら辺の関係をどう考えるかということがございます。

4ページ目でございます。右上でございますけれども、管財人など、だれかがこういう処理を担うわけでございます。普通、管財人といいますのは、債務者にいかに平等に分配するかといったことを考える、あるいは事業をいかに再生するかということを考えるわけでございますけれども、金融システムの場合は、金融システムの安定といったマクロ的な機能を有するということがある。

それから、こういった破綻処理にノウハウというものが重要でありまして、預金保険機構にはそういうものが蓄積されているのではないか、新たに大きな組織をつくることは避けるべきではないかということがございます。

また、常日ごろから監督当局と連携するという要請もある。しかも、迅速に行う必要がある。体制の整備が必要であります。その点、預金保険機構というものを念頭に置くとしても、機能を強化していくべきではないかということがございます。

こうした中で、秩序立った処理はどのような主体が担っていくか、あるいは当局の権能として具体的にどのような措置が必要かということでございます。

諸外国を見ますと、アメリカはFDICが主体として、その役目を担っているということでございますし、欧州においては、各国の事情でいろいろな公的な機関が担うということとされているところでございます。

次に5ページでございます。早期解約条項の発動の停止ということでございます。これはまた別添のほうの資料の9ページをご参照いただきます。デリバティブ取引等における「自動的期限前終了特約」の概要ということでございますけれども、左側の点線で囲っている、解散した場合ですとか、規制当局により倒産手続を申し立てられた場合、あるいは管財人の選任を申し立てた場合、選任が行われた場合といったときに、ISDA Master Agreementのもとでの契約は即時に自動解約されて、ネッティングして、清算となるということでございます。

これは同じ別冊のほうの20ページをごらんいただきますと、一括清算ネッティング法の説明がございます。我が国でこういった条項は有効だとした上で、ネッティングがなされるということが取引の安定に資するという考え方でつくられたものでございます。

自動解約条項はそういう趣旨のものでございますけれども、こっちの事務局資料の5ページでございます。主要な特性では、破綻処理の手続が開始されたというだけでこういうものが発動されると市場にさらなる不安定化をもたらすおそれがあるということでございます。

今までのご議論でございますけれども、こういった条項について制限をかけるのであれば、破産法、民事再生法、会社更生法の規律を排除するということになるのではないか。

一括清算法の考え方というのは、破産法等でも取り入れられているところでございまして、こういうところとの関係があるのではないか。これに対して、倒産法制の特例を規定するという技術的な方法はあるのではないかということでございまして、こういったものについてどのような手立てを考えることができるかというのがございます。

6ページ目でございます。費用負担でございまして、1つの考え方は、下から3つ目、右側でございますが、だれを制度の対象とするかという点とだれから費用をとるのかという点のバランスをとりながら検討するということがありまして、それは基本的な考え方の1つだと考えております。

これに対して大きく別の考え方もあり得るわけでありまして、秩序立った破綻処理ということで、例えば金融システムが安定するということであれば、金融システム全体で負担するという、受益をする人が負担するという考え方もあるということかもしれません。そういったものが上から2つ目でございまして、外部不経済の問題があって、社会コストを社会全体で負担するという観点から議論する必要があるといったものがございます。

その他、一番上ですが、納税者負担を回避することは現実には難しく、納税者負担を最小化するという観点が重要ではないか、金融業界からの徴収では足りない部分について、公的資金による手当てが必要ではないかといった意見もございます。

それから、上から3番目ですが、ベイルインする場合でも、損失を吸収できない可能性があるのではないか。そうした場合どうするか。

下から2つ目ですが、費用負担について、預金保険との関係を考慮する必要があるのではないかとか、モラルハザードの問題。

7ページでございます。先ほど出ましたが、事前か事後かといったような論点がございまして、一番上のは、事後負担にすると経済が苦しいときに徴収しなければいけないので、なるのではないかといったような論点でございます。

2番目は、事前負担ということはモラルハザードとかといったことを考えれば適当である一方、事前負担とする場合に、拠出された資金をどのように運用するかという問題がある。

次の3つ目ですが、事前負担にすると必要額の算定が難しいのではないか、今ある預金保険等の関係をどう考えるのか。それから、リスクベースとした場合にどのように算定するかといった点が、これは事前、事後両方でございますが、ある。

矢印、論点でございます。必要となった費用はどのような考え方に基づいて負担を求めることができるかということです。

アメリカについては、先ほど森下委員からございましたが、事後負担ということでございますし、欧州においては、事前徴収とされているけれども、賄うことができない場合には事後負担といったようなことになっております。

8ページでございます。再建・処理計画というもの、主要な特性においてはG-SIFsというものに求めているわけでございます。これについて、右側でございます。再建・処理計画の策定など、事前の制度をどのようにするかあわせて検討を行う必要がある。

それから、クロスボーダーの協力のための法的枠組みということで、右側でございますが、実務上どのようにしていくかについてシミュレーションするなど、あらかじめ検討しておくことが必要であるといったような議論が出されております。

以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。それでは議論に移りたいと思います。ただいまの事務局からのご説明に関しまして、ご質問、ご意見があれば、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。委員の皆様、どなたからでも結構でございますので。家森委員、お願いします。

○家森委員

1つ教えていただきたいんですけれども、預金保険法についての12ページの説明からすると、金融機関に何らかの形でシステミック・リスクが起こって、広い意味で救済をしないといけないときには、まず第2号の措置で、預金の全額保護という措置で対応できるかが考えられて、それでは無理なときには、さらに3号に行くということでしょうか。そうすると、預金者は守らずに市場の参加者だけを守るということは銀行の破綻処理についてはあり得ないということでよろしいでしょうか。このことをお伺いしたいんです。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

別冊のほうの12ページでございます。資料のほうは3ページを、お開きいただきたいと思います。2号措置というのは、ペイオフコスト超の資金援助というふうにされておりまして、条文を見る限りにおいてはそれしか書いていないんですけれども、広くは2号措置も全債務保護というふうに考えられているところでございます。

ただ、それでもシステミック・リスクを回避できない場合は、一時国有化ということに、ご指摘のとおりでございます。

1点、ISDA Masterといいますか、自動解約条項との関係がちょっと違いがございまして、2号措置の場合は金融整理管財人を任命することになるものですが、そこで自動解約条項が発動するのではないかと言われています。

一方、3号措置、一時国有化の場合は、いろいろ議論はあるようでございますが、長銀のとき等は自動解約条項というのは発動しなかった、しないということではないかというふうに考えているところでございます。

○家森委員

要点としては、預金者が守られずに市場の大口の方だけが守られるという事態は基本的にはあり得ないと思うということでよろしいですよね。

○藤本信用制度参事官

はい。

○家森委員

次に、今回問題になっているのは、従来型ではなくて、マーケット型のシステミック・リスクによって危機が起こるという場合にどう対処するかということですね。例えば生命保険を考えてみると、生命保険に関しては、今、保険契約者は、破綻のときに一定の負担をするということになっています。ところが、そういう保険会社が破綻したときにシステミック・リスクがあり得るんだということになると、一般の保険契約者は保護しないけれども、プロの人たちを保護するということがあり得るように思えます。制度としてはそのようなことはあり得ると想定されるんでしょうかということを次にお尋ねしたい。海外ではそういうことはあり得るとされているのか。あるいは、全部守るという仕組みをつくらないと、なかなか保険契約者の納得がえられないような制度になる心配はないのかというあたりはどうでしょうか。

○藤本信用制度参事官

主要な特性の考え方では、株主とか債権者には負担させるとあるんですが、ベイルインなどにおいて除かれているものがありまして、預金者といったような、あるいは保険契約者というのは守るといったような記述がございます。

○岩原座長

よろしいですか。ほかにご質問。森本さん。

○森本総務企画局長

ちょっと誤解を避けるために申しますと、主要な特性で、深刻な金融システム混乱回避のために、主として、市場取引について混乱を回避するようないろんな措置をとるということが想定されているわけですが、その措置をとるのは、預金を全額保護してからやるという意味ではないということだと思います。預金を全額保護しないと信用秩序が維持できない場合は、それは金融危機対応会議で認定して預金を全額保護すると思いますし、新しい仕組みでは、市場型のシステミック・リスクに対処するために、必要であれば、新しい措置がとられる、そういう関係だと思います。

○家森委員

そうすると、現実的な可能性はわかりませんが、理屈としては、預金者は全額保護はできないけれども、市場参加者は全額保護することは論理的にはあり得るということですか。

○森本総務企画局長

それぞれ認定する材料が違うということだと思います。

○岩原座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

今の話については、何となく保護するという言葉を使っちゃうと誤解が出てくるような気が私はしまして、今議論している制度は別に大口債権者を保護するわけではなくて、突然何か契約がとまっちゃったり、債務不履行が申し立てられたりして大混乱になるということを避けるというだけで、最終的に損失を負担してもらうということは予定されているわけですよね。だから、これはやっぱり預金者の保護という話とは全く切り離して考えないといけないんだろうなという気がいたします。

それで、私、1ページの問題提起で書いてあった金融危機対応会議を経て云々のこととの関連で申しますと、現在の信用秩序の維持という言葉は、小口の預金が取りつけになるとかいうようなことをものすごく想起させる言葉だと思いまして、これの中に読み込むのはちょっと難しいのかなと。先ほどいろんな言葉がそれに至るまでに検討されたというご紹介もありましたけれども、市場とかいう言葉を安易に使っていいのかどうかもちょっとわからないところがあるんですが、つまり、いわゆる取引所とか、そういう組織された流通市場みたいなものにおける混乱だけが想定されるわけでは必ずしもないと思うのですね。ただ、信用秩序というのとは何か違う、もう少し広がりのある言葉をもう1本立てて、それがあるときに認定をするというような仕組みにしなきゃいかんのだろうなと思うんですね。その場合、認定対象となる機関というのは、かなり事前には前広にやっぱりとっておかなきゃいけないんだろうなと思うんですが、ただ、金融庁の監督対象じゃないものまで含むのかどうかということになると、定義のしようがなくなってしまうので、やはり基本的には金融庁の監督対象の中で絞っていくという、アメリカでFRBが監督しているかどうかというところで切っているみたいにですね、という話なのかなという気がいたします。

○岩原座長

小出委員、その後、井上委員。

○小出委員

大崎委員の言われたことに似たことなんですけれども、お伺いをしていまして、新しいタイプのシステミック・リスク、すなわち伝統的なシステミック・リスクに限らず、例えば保有している金融資産等がマーケットに対して影響を及ぼすような、非常に大規模な金融資産を持っているような会社というのが新しいタイプのシステミック・リスクを巻き起こすということについてはよくわかりました。やはりそれに対する対策をとっていかなければならないだろうと。その場合については、銀行のみならず、証券や保険も含めて、広く見るべきだろうということもそのとおりだろうと思います。

ただ、他方で、そうしますと、例えば商社とかも、これは非常に大きな金融資産やデリバティブのポジションなどを持っている可能性があるわけで、商社がもし仮に破綻しますと、マーケットに対して非常に大きな影響が及び、新しいタイプのシステミック・リスクの元となるということも当然あるのだろうと思います。ただ、そこまで、例えば預金保険機構がかかわっていくというようなことまではなかなか難しいだろうと思いますので、新しいタイプのシステミック・リスクについて幅広く規制の対象とするということは総論としては大変賛成なのですが、どこまで規制の対象を広げるかということについては、その線引きというのは非常に難しいのだろうということがまず1つでございます。

もう一つは、仮に金融庁の監督対象となるところ、例えば銀行、証券、保険というところについて考えると、預金保険機構はこれまでもノウハウを持っているということがありますので、そちらのほうのノウハウを生かしながら、つまり預金保険法のシステムを使いながらやっていくというご意見があったところだと思いますけれども、確かに預金保険機構は、これまであったような銀行の破綻については非常に大きなノウハウがあり、したがって、今後も銀行については、システミック・リスクを起因するような破綻についての対応というものもあるいはとれるのかと思いますが、証券、保険の破綻について預金保険機構というものがノウハウを持っているか、なかなかちょっとよくわからないところがあるということもありますし、それに加えまして、預金保険法というものが、目的規定や法令の名称も含めて、全般的にさまざまな見直しが必要になってくることだろうと思います。総論としては決して反対する趣旨ではありませんが、そういう問題提起ということでございます。

○岩原座長

それでは、さっき手挙げた井上委員、どうぞ。

○井上委員

今、小出委員におっしゃっていただいたので、繰り返す必要はないと思いますが、実際、マーケット型のシステミック・リスクという観点を導入してしまうと、結局、取引当事者としての重要性・存在感ということになるだけに、セーフティーネットのメンバーかどうかで線引きできなくなるので、商社もそうかもしれませんし、一体どのあたりまで取り込むのか、大崎委員のおっしゃるように前広に対象とすべきだと思いつつも、難しいと感じています。ヘッジファンドあたりは限界的なところかもしれませんが、その中には、金融監督の対象になっているものもあれば、なってないものもあるでしょうから、金融監督の対象か否かという線引きも、実は考え出すと難しい問題なのかなというのが1つ目の、これは感想です。

もう一つは、その次のページでご説明いただいたリカバリー・プランとリゾリューション・プランの違いのところですけれども、これは原則そのとおりで、再建計画の段階ではグループ単位で再建するにしても、処理計画の段階になってしまうと、倒産は基本的には単体ベースです。ただ、この部分についても、そうではないようにする工夫も一定程度は可能かなと思っております。外国では、親会社の子会社に対する債権は、子会社の倒産処理において、他の一般債権者に比べて劣後化させるという形で、実質エクイティと見て、グループ会社を一体処理した場合に近づける工夫がなされることが多いと理解しています。また、グループ各社に対する重複債権を、それ以外の債権とは区別して処理したり、処理の過程でグループ会社間の合併をしたり、あるいは、パーレート弁済となるように弁済率を調整したりして、できるだけ単体ベースの手続における弁済率がグループ一体処理をしたと仮定した場合の弁済率とあまり離れないように、できれば同じにするという努力もなし得ます。このように、再建計画と処理計画の違いを小さくする努力は、一定程度可能なのかなと思います。

あと1つ、思いつきなのですが、5ページのところで、デリバティブについて早期解約条項を停止する考え方が挙げられています。これは、私法上の合意の効力を停止するという、かなり強力な制度を設けることを意味します。非常に重要な取引においてはこういったこともやむを得ないのかなと思いつつも、このような発想を持ち込むとすれば、デリバティブに限らないことになり得ます。実際上はリーマンのときにデリバティブが大きく問題になったのだろうと思うのですけれども、業態によっては、クロスデフォルト条項のように、ドミノ倒し的な効果を持つ契約条項が他にもある可能性があります。いざというときに、非常に重要な金融機関については、私法上の合意の効力を一定程度停止するというようなことを考えるのであれば、必ずしもデリバティブ契約の早期解約条項に限ることなく、どういう理屈でとめるのかという観点から、その範囲を慎重に考える必要があるのかなと思いました。これは感想にすぎません。

○岩原座長

森委員、その後、翁委員、お願いします。

○森委員

今回新しいタイプのシステミック・リスクについても対応が必要ということですが、伝統的なシステミック・リスクに加え、新しいタイプのマーケット型のシステミック・リスクも非常に重要であるということであります。

伝統的なシステミック・リスク、これは個々の金融機関の健全性の問題から発生する信用秩序の問題であるということだろうと思いますが、このマーケット型のシステミック・リスクですが、これは2ページに記載がありますように、特にということで、金融商品を大量に保有している金融機関とありますが、これはいわゆる金融商品の価格変動リスクを多額に抱えているような、そういったものを想定しているということだと思います。

一方で、一時的な資金供給という考え方も、6ページですかね、一時的な資金提供のコストを賄うためとあり、ここは費用負担のところで出ていますが、そこに関係してくるのかなと思います。そうすると、先ほど米国のドッド・フランクのご説明にもありましたが、流動性リスクの問題ではないかと思います。

ですから、ある意味では金融商品の価格変動リスクと流動性リスクのところをきちっとシステミック・リスクとしてとらえて、どうやって対応していくのかということと思っているわけですが、そうすると、先ほどいろいろ意見がありましたように、金融機関だけではなくて、他の一般事業会社にもそういう問題を抱えているところがあるということで、金融機関の中にもかなり温度差があるんじゃないかと思いますので、1ページに具体的な制度設計に当たって各業界の特性を踏まえた議論が必要であるということが意見として出されておりますが、まさにこのとおりということだと思います。

そう考えると、6ページの費用負担等のところも、先ほどご説明ありましたが、だれを制度の対象とするか、だれから費用をとるか、先ほど受益者負担というようなお話も出ておりましたが、ここも慎重に検討する必要があるのではないかと考えております。

以上です。

○岩原座長

それでは、翁委員、お願いします。

○翁委員

預金保険機構の機能を強化すべきというところに関連して発言したいんですけれども、今回の資料の1-2の21ページを見ますと、預金保険機構以外に保険業法では保険契約者保護機構があり、それから投資者保護基金があると。それぞれセーフティーネットとしてつくられていて、人員は圧倒的に少ないわけですけれども、やはりこういったところと連携して進めていくという必要があると思います。その意味では、今後そういった破綻処理の仕組みをつくっていくに当たっては、こういった今ある機構をどういうふうに連携しながら、どういうふうに全体を見渡せる機能を持った組織をつくっていくのかということが1つの大きな課題なのではないかなと思います。

それから、先ほどの12ページでご質問がありました点ですけれども、証券会社とか保険会社などのどこまでを保護することによってシステミック・リスクを回避できるのか、についての検討というのは非常に重要だと思います。それは裏返せば、どのぐらいの負担が、費用負担が必要なのかという議論とも関係いたしますのでそこが難しいと思いますが、そこの議論が必要だと思っております。とりあえずその2点。

○岩原座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

確認なんですけど、先ほど井上委員からクロスデフォルトについての話があったので、ちょっと確認したいのですけど、私の理解では、こういった措置が発動されるということは、これはデフォルトですよね。デフォルトの宣言ということで言えば。で、クロスデフォルトということについて言えば、デフォルトが宣言されてみんなデフォルトになるので、1つの債務だけじゃなく、全部デフォルトになるから、それはクロスデフォルトを問題にする必要はこの状況ではあまりないように思うんですね。ただ、デリバティブの早期解約条項については、解約されることになると巻き戻しになるわけだから、これは影響が大きいから、それをとめようという、そういう話だと理解したのですけれども、そういうことじゃないんですかね。

○岩原座長

井上さん。

○井上委員

そういう意味では、ちょっと言葉足らずだったかもしれません。デリバティブの早期解約条項に相当するような取引条項が他にもあって、デフォルト、すなわち債務不履行には違いないとしても、そういったデフォルト状況によってトリガーされる契約条項が大きな影響を及ぼすような場合が、ほんとうにデリバティブの早期解約条項しかないのかということです。つまり、何かドミノ倒しのように、ある債務不履行が発生したときに、取引関係、契約関係、業務の継続に何らか大きな悪影響を生ずるようなことも想定しなければいけないのではないかという意味です。そのような問題は、デリバティブ以外にあまり考えられないのだとすると、その他の取引条項を検討する必要はないと思います。

○岩原座長

森下委員、どうぞ。

○森下委員

新しいタイプのシステミック・リスクというふうなことに関連してなのですが、そうしますと、従来考えられてきたような、例えば、金融機関が破綻して連鎖的な破綻が懸念されるような場合の伝統的なシステミック・リスクと、金融商品を大量に抱えている会社が破綻したことによって引き起こされるであろうシステミック・リスクとの間で処方箋がイコールかどうかというのは、ややどうなのかなと思うところです。前者の場合、この金融機関が破綻したら例えば地域経済が困るとか、あるいは、この金融機関が破綻したらこの金融機関も傷んでいるかもしれないといったような部分で、金融機関自身を守らなければいけないという場合の処方箋と、ある金融資産の価格が、マーケットが崩れたら困るという観点でシステミック・リスクが説かれるときに打つべき処方箋とがイコールなのか、異なるタイプの処方箋が求められるのではないか、という問題です。そうだとしますと、例えばシステミック・リスクへの対応を考えるとしても、異種のものが入ってきていることとなり、ひとかたまりでシステミック・リスクを考えたときに、うまく整理し切れるのかなという気がします。処方箋が違うかどうかというのは、自信があって申し上げているわけではないんですけれども、もし違うとすると、かなり異なる性格のものを一緒に議論してしまうと、うまく整理できない場合が出てくるのかなという気がいたします。

○岩原座長

ほかに。森本さん、どうぞ。

○森本総務企画局長

今、大崎委員から、要するに早期解約条項の発動停止が問題になるような状態というのは結局デフォルトだろうというご指摘がありました。ここでデリバティブ取引、あるいはもうちょっと広い取引かもしれませんが、をとめる必要があるわけですけれども、そうした契約は結局どうなるのかというと、1ページで言っている株主や担保で保護されてない債権者に損失を吸収させるなどで、結局は履行できるようにしようというのが、ほんとうにできるかどうかという問題はありますが、そういう精神だと思うんですね。ただ、いろいろソートアウトするのに48時間ぐらい要るからちょっと待ってねというのが基本的な精神だと理解しています。

○岩原座長

小野委員、どうぞ。

○小野委員

今のデリバティブの早期解約条項に関連して、初歩的な質問で恐縮ながらお伺いしたいのですが、デリバティブ取引については清算集中にしましょうという話が他方であると思います。そういう措置を施した後でも早期解約条項の発動停止が必要だと理解してよろしいですか。

○藤本信用制度参事官

清算集中義務を課していますのは、例えばプレーンバニラ型の金利スワップですとか、CDSの一定のものというふうになっております。やはりそういう義務を課すに当たっては限定をかけている面もございまして、それですべてがカバーできるわけではないということだと思います。

○岩原座長

ほかにいかがでしょうか。小出委員。

○小出委員

すいません、もう一つ、ちょっと違う点ですが、まだあまり議論をしていないところだと思うのですが、8ページのところに論点6として再建・処理計画の策定が求められるというKey Attributesの話が書いてありまして、具体的にどういう策定を求めていくのか。これは実務にとっては恒常的に行わなければならない作業になりえますので、どういったものを課せられるのかというのは結構重要な問題だろうと思います。

この問題については、破綻処理についての業界の資金負担を事前に課すか事後に課すかということとも関連していて、つまり事前に課すのであれば、幾ら課すのかという算定の基礎材料になるでしょうし、事後に課すとしても、速やかにその処理を行うためには、当局としてあらかじめ再建・処理計画を知っておくことは必要だろう思いますので、こういった問題について検討していく必要があるだろうと思うのですが、これに関しましては、アメリカのドッド・フランク法ではいわゆるリビング・ウィルといって破綻処理計画を提出させる制度というものができていまして、私の記憶が正しければ、ことしの7月1日にまず第一陣が出さなければいけなかったと思うんですが、森下先生に、この件について、もしアメリカに行かれたときに何か情報、つまり、例えば実際に提出がなされ始めて何か問題状況があるとか、ないしは、非常にうまくいっているということであれば、それも興味深いことだと思うのですけれども、もし何かあれば教えていただければという質問なのですが、いかがでしょうか。

○岩原座長

森下さん。

○森下委員

訪問したときに、各金融機関から計画が提出されて見るのが大変であるというふうなことをおっしゃっていたと記憶しております。ただ、見始めた段階なので、具体的な内容についてどうか、という点につきましては、特にコメントはお伺いしておりません。

○岩原座長

ほかにいかがでしょうか。

○吉野金融審議会会長

皆様のご意見を伺っていて、1つは、各金融機関の行動をいろいろ見ることによってシステミック・リスクを減少させるということが1つあると思いますし、もう一つは、今度は商品自身がさまざまな商品によってシステミック・リスクを起こしやすいという、ビークルとしてのシステミック・リスクと。それから、費用負担に関しては、先ほど何人かの方からご意見ありましたけれども、預金保険というのはわりあいきちんと費用負担ができていまして、それで保険で後で積んでいく、あるいは保険料を変更させるという意味では、結局は預金者と金融機関が負担していると思うんですけれども、じゃあ、同じように、証券会社、保険に関してそういう制度になっているかどうかとしませんと、業態によって費用負担がアンバランスになると思うんですけど。

それから、じゃあ、銀行に関してなぜこんなに預金保険制度がしっかりしているかというと、おそらく銀行が一番決済システムに影響を与えて、それが全体のシステムリスクになる。それに対して証券のほうは、わりあいフローとしての動きですから、銀行とは違うという制度だったと思うのですけれども、そういうことが最近の動きによって大分違ってきて、欧米を中心にこういう動きになってきているわけですから、ほんとうに彼らが考えているシステミック・リスクをそのまま日本で考えなくてはいけないのか、それとも、日本はちょっと違った部分があるんだとすれば、そのまま持ってこないで、我々なりのシステミック・リスクを考えておくという部分もあるような気がするんですけど。意見です。

○岩原座長

村田さん、どうぞ。

○村田三井住友海上火災保険経営企画部長

損害保険会社は、前回からこの場に加えていただきましたので、今さらとお感じになる内容かもしれませんが、ひとこと申し上げます。損保はそもそもこの新しい枠組みの対象外であるべきだということを申し上げるつもりはありません。ただ、業態の特性に応じた枠組みや負担の考え方を検討していただきたいと思っています。業態の特性については、言わずもがなかとも思いますが、直近のFSBの会合における議論においても、伝統的な保険の引き受けがシステミック・リスクの原因でないというのは争いのないところのようです。一方で、非保険、非伝統的保険の引き受け、資産運用におけるデリバティブ取引、国際的な再保険取引等におけるインターコネクテッドネス、あるいは今ご議論のあった大きな資産のファイヤーセールによる市場の混乱などは、FSBの議論の中でもご指摘があったように聞いております。

ただ、私どもの知る限り、我が国の損保においては、非保険とか非伝統的保険、あるいはデリバティブの取引等はかなり限られたものです。再保険取引がドミノ倒しを発生させるかというと、信用創造するものでもございませんし、そういう仕組みにはなっていないと思います。また、契約者保護機構の制度があり、破綻処理の際も、この制度を前提とする限り、資産のファイヤーセールをしなければいけないという事態も起きないのではないかと考えています。

以上をもって我々はこの議論とは関係ありませんと申し上げているわけではなく、我が国の各業態におけるリスクのあり方を見た上で制度設計に反映させていただきたいということです。既にご議論済みの観点かもしれませんが、大変恐縮ながら、この場をお借りして申し上げた次第です。以上でございます。

○岩原座長

梅﨑さん。

○梅﨑明治安田生命保険調査部長

前回、私も発言させていただきましたが、誤解を招いたかもしれませんので、補足させていただきます。

生命保険会社としても、制度の対象から外してほしいとは思っておりませんが、前回、唐突に発言してしまいましたので、そのように受けとめられたのではないかと思って心配しております。そういうことではございませんので、その点ご理解いただきたく存じます。また、前回の発言を1ページ目に記載していただいておりますが、我々としては、具体的設計の際に、金融機関の業務の特性や、想定される事象におけるリスクの度合い等を考慮していただきたいということを言いたかった次第です。そのあたりは、きちんとご理解いただければと思っております。どうぞよろしくお願いします。

○岩原座長

何かほかにございますか。

特にございませんか。

いずれもご指摘いただいた点はごもっともであるとともに非常に難しいことばかりであります。抽象論としてのいろいろな課題はまさにご指摘いただいたとおりだと思いますけれども、それを実際上どのような形でどのように新しい市場型のシステミック・リスク等に対応できるような制度として日本の現実に合ったものとして構築していくかというのは非常に困難な課題だと理解しております。

大きい問題点のご指摘は本日していただいたわけでありますので、一応大きい方向性と申しますか、課題についてのご議論は、本日の審議により終了させていただきたいと思います。

これまでご議論いただきました金融機関の破綻処理の枠組みに関し、これまで委員の皆様からご指摘いただいた点を踏まえまして、主要な論点についてどのような対応が考えられるのかにつき、事務局に整理をしていただきたいと思います。具体的な制度論にならないとなかなか議論が進展していかないと思いますので、具体的な形での議論ができるように事務局に問題点の整理をしていただきたいと思っております。この議題につきましては、その整理ができましたら議論を再開させていただきたいと思います。

次回、第7回は、そういう意味で、金融業の機能強化につきましてご議論をいただくことを考えております。

それでは、事務局のほうから連絡等がございましたらお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら、座長と相談の上別途案内させていただきます。以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3566)

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