金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」(第7回)議事録

1.日時:

平成24年10月10日(水)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○藤本信用制度参事官

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、資料の確認をさせていただきます。本日は資料として事務局説明資料というのを1つ配付させていただいております。ご確認をお願いいたします。

○岩原座長

それでは、ただいまより「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方に関するワーキング・グループ」第7回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきましてまことにありがとうございます。

それでは、本日の議事に入らせていただきたいと思います。本日、第7回はまず「金融業の機能強化」につきましてご議論をいただきたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

○藤本信用制度参事官

お手元の資料の表紙をおめくりいただきます。1ページ目でございます。銀行法によるいわゆる5%ルールの概要が書いてあります。

この規制の目的でございますが、「銀行が本業以外の事業により健全性を損なうことがないよう」ということが目的となっております。規制の内容でございますが、真ん中の左にございます絵をごらんいただきたいと思います。銀行というものがございます。ここに業務範囲制限というものが健全性の確保という観点からかかっております。下にぶら下がっておりますのは子会社ということでございまして、一定の業務を行う者を子会社として持つことができることとなっております。この子会社の定義といいますのは議決権の50%超のものを持つということでございます。ここで定まった銀行の業務範囲制限、あるいは、子会社の業務範囲制限以外の業務を行っている会社の議決権をどのぐらい持っていいのかというのがこの規制でございます。矢印の下でございますが、こういう子会社対象以外の会社、どんな業務を行っているかということは問わないわけでございますが、矢印の右側に出ておりますように、この上の点線で囲っております銀行とその子会社の合算で、相手先の会社の5%超の議決権の保有を原則禁止ということとしております。左側に※印がございますが、協同組織金融機関の場合は、それが10%超という規制になっております。右側にございますのは銀行持株会社の関連の同様の規制でございます。銀行持株会社も持てる子会社の業務に一定の制限がございまして、こういうものを子会社として持つことができるわけでございますが、この点線の四角で囲ったものを合算して15%超の議決権保有を原則禁止しているというのが概要でございます。

2ページに参ります。ただいま申し上げましたのが5%ルールの概要、原則ということでございますが、幾つかの例外が定められております。この規制が入りました平成10年当時より定められております例外というのが4つございます。1つは、銀行が証券子会社を持つ場合に、その証券子会社が業務として所有する株式というのは例外となっています。2番目に、銀行が貸付債権の回収等に関連して担保権を実行することがございます。そのときに株式、あるいは議決権というものを取得することがございます。こうしたものは例外になっております。ただ、法律の建て付けと申しますか、基本的な考え方は速やかに処分をしなさいというものです。ただ、1年間は猶予をしましょう。どうしても1年間で処分できないものは承認制のもとで1年超保有してもいいですよという建て付けになっております。ただ1年超える場合には子会社になるようなもの、50%超の議決権を持つことはできないということになっています。

3番目の例外でございますが、今度は銀行が子会社として投資専門子会社というのをつくります。そこが持つ議決権である類型のものは適用除外になっておりました。どういうものかといいますと、ベンチャービジネス会社でございます。保有は10年と書いておりますが、導入されたときは、きのう気がついたんですが、当初は5年でございました。修正いただきたいと思います。さらなる1年超保有は承認制でございます。4番目は、組合財産として持っている場合でございます。組合財産は組合員全員で合有といいますか、持っているものですから、必ず議決権を持つことになるわけですけれども、一定の場合は除外となっております。まず銀行が有限責任組合員であること。それから、議決権が行使できないこと。それから、無限責任組合員に対して議決権の行使に係る指図を行えないこと、さらに、10年を超えないことという前提のもとで例外となっております。

それが平成11年に少し拡大されました。上のマル2というものにデット・エクイティ・スワップの場合を追加しております。この場合も法律の考え方は速やかに売却しなさい、1年間は猶予しましょう。どうしても一年を超えるときには承認です、そういうものの延長線としてマル2のラインで入っております。それから、平成20年、マル3のところに投資専門子会社を通じて持つ場合として、ベンチャービジネス会社に加えて事業再生を行う株式というものも入りました。それから、先ほど間違って10年と書いていたと申しましたが、5年というのを10年未満に拡大しております。この平成20年の改正というのは金融審議会の第二部会報告を受けてなされたものでございます。

1枚めくって3ページ目は、今申し上げたものをややちょっと詳細にしたものでございます。参考1はデット・エクイティ・スワップがどういうものかというのを書いておりますが、2行目に債務が消滅する、それから、株式等を取得するとあり、経営の状況が改善さることが見込まれるといったものが対象となっております。参考2でございますが、投資専門会社を通じて議決権を持つことができるベンチャービジネス会社の要件というのが書いてあります。1つは非上場のものであるということ。それから、中小企業者であること。設立は今は10年未満、それから、試験研究費の割合というものについてもある程度あるという類型があります。または設立1年未満で研究者が複数人以上いる等の要件があります。あとは中小企業政策の関係で認定等を受けている会社というものも含まれております。参考3でございますが、これも投資専門子会社を通じて持つことができる事業再生をしている会社がどういうものかというのを書いています。マル1は中小企業の政策の観点から承認を受けている会社、マル2は産業活力という観点から認定を受けている会社、マル3がいわゆる法的整理といいますか、再生過程にある会社、マル4は私的整理といいますか、銀行が中心となって、あるいは銀行などともに経営改善計画を実施している会社ということでございます。

4枚目は参考でございます。独占禁止法に議決権保有制限の記述がございます。独禁法の目的の中に「事業支配力の過度の集中を防止して」ということがございます。こういうことを受けて、銀行等は国内会社の議決権をその総株主の議決権の100分の5、5%でございますが、を超えて所有しまたは保有することが禁止されているということでございます。これは独禁法の規制は銀行単体規制ということになっていまして、何か子会社と合算するといったものとか、持株会社といったようなものの規制はございません。あと、協同組織金融機関も規制対象でございません。例外というのが四角で書いておりまして、ごらんいただきますと先ほど銀行法で申し上げたものとほぼ同じものが1番目と2番目、組合財産の関係、それから、担保権の実施等、デット・エクイティ・スワップというのが書かれておりまして、その他、公正取引委員会の認可を受けた場合という個別の認可という制度がございます。

以上が現行の制度ということでございまして、5ページでございます。こういったものについて今までどういう考えをとってきたか、あるいは、どういう検討をするべきかということが求められているかということでございます。5ページでございますが、これは金融審議会の「金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」、「在り方ワーキング」の報告書、取りまとめでございます。ここには下線の部分でございますが、「例えば、金融機関が事業再生局面にある中小企業等に出資する場合、議決権の取得に関するいわゆる5%ルールがあるため、企業が少額の出資しか得られないことがあり得る。同ルールを緩和することが地域金融の向上に資する場合もあり得よう。健全性維持等の政策目的を踏まえつつ、同ルールを緩和する場合の程度や条件などについて更に議論を深めていくことが考えられる」と、こういうような記述がございます。

1枚おめくりいただきまして6ページでございます。「日本再生戦略」と政府で閣議決定をした文書でございますが、これも下のほうに線が引いておりますが「ベンチャービジネスの育成や事業再生支援等の観点から議決権株式のより一層の活用等の金融機関による資本性資金の供給促進」といった対策を講じるとありまして、別表に中に2012年度に実施すべき事項として「金融機関による資本性資金の供給促進策(5%出資規制の見直しを含む)の検討」というのが盛り込まれているところでございます。

7ページでございます。ここから「5%ルールに係る主な論点」というものに入ってまいります。まずは議決権保有の上限というものについてでございまして、点線で囲っておりますのは5%ルールを簡潔に描写したものでございます。次に金融機関または経済界からの意見というのをその下に載せております。まず主に金融機関の目ということでございますが、地域経済の再生・活性化を促す観点から、地域金融機関の役割として地域密接型金融の推進が求められている。そうした中、金融機関による資本性資金の供給機能が強化されることによって、地域活性化の事業あるいは新規産業の創出、事業再生の支援といった効果が期待されるのではないかということであります。次は、どちらかといいますと経済界の目ということでございますが、金融機関からの出資が安定株主の増加につながって、企業の信用力強化や円滑な資金調達等の効果が期待される。企業は金融機関からの出資に対して基本的に好意的だけれども、金融機関から役員派遣等の経営への過度の介入がある場合には難色を示す場合もあるという見方でございます。次は、これもどちらかといいますと金融機関の目ということだろうと思いますが、金融機関の財務・経営の健全性、リスク管理に影響を及ぼす可能性もある。緩和に当たっては出資目的や対象企業等を限定するなど慎重に検討する必要もあるのではないかといった意見もあります。

こうしたことを踏まえまして矢印でございますが、議決権保有の上限についてどう考えるか。あるいは、健全性確保という目的でありますと自己資本比率規制ですとか大口信用供与規制とかいうのもありますが、そういったものとの関係、役割分担というものについてどう考えるかというのがございます。参考のところですが、自己資本比率規制上、ちょっとスペースの関係で標準的手法についてのみ書いておりますけれども、保有株式は100%のリスク・ウェイト、貸し出しの場合は中小企業向けであれば75%といったような関係でございます。あと、大口信用供与においても信用供与等には株式出資といったものが含まれるところでございます。

8ページでございます。「有限責任組合員として取得・保有する議決権」ということで、これは組合に金融機関が組合員となります。組合に財産に株式は入っています。どうしても議決権を持つことに形式的にはなってしまいます。ただ、一定の場合にその株式は持ってもいいですよと、5%ルールの適用除外にしますよというのがあります。一言で言いますと、その議決権が使われないようになっているということが条件となっているということです。ただし「除く」になっていますのでちょっとネガに書いているんですけれども、有限責任組合員であることが条件になっていて、議決権を行使してはいけない。それから、自分が行使しなくても無限責任組合員にこうやってこうしてくださいという指図を行うということができる場合も、自分で議決権を行使するのと同じようなという趣旨で、それはだめだということになっています。あと期間の制限がありまして10年を超えて保有することはいけないということになっています。

これについての意見でございますが、各種ファンドの出資については10年以内に運用を終了する、あるいは、持分を処分するというのは難しいケースがあるので、期間の10年という延長を要望があります。あるいは、一方、ファンドの成績にはばらつきが大きいため、金融機関に新たなリスクが蓄積される可能性もあるのではないかという意見もございます。この10年という期間を延長することについてどう考えるかということでございます。

9ページでございます。先ほどは議決権を行使しない場合ということでございまして、9ページのほうは議決権を行使できる場合でございます。要件がかかっていまして、まず投資専門子会社というのをつくることになっています。自分でみずから、つまり本体が持つのではなくて子会社が持つ。それから、その子会社が投資する先というのが2つの種類のものに限定されている。1つはベンチャービジネス会社、2つ目が事業再生会社ということです。そういったものであれば議決権は行使していいわけですけれども、例外になっているということです。ただし保有期間は10年以内というふうにされていまして、その場合も1年の更新、10年以内に処分できない場合には1年更新というものが承認制のもとあります。

これについての意見ですけれども、銀行法上のベンチャービジネス会社の要件を満たさない企業からの出資要請があるため、そういう要件を拡大してくれないかというのがございます。次でございますが、地域活性化に資する事業は、観光・再生エネルギー等々でございますが、一地域のみでの出資の募集が困難であることが多い、そうしたときに地域の金融機関の役割が期待されている。加えて金融機関が出資を通して当初から経営に関与することによって、事業に対する社会的認知とか信用補完が得られるのではないか、その成功も期待できるのではないかといった金融機関の積極的な支援といったことに着目した意見があります。また、例えば信金・信組では投資専門子会社をわざわざつくるというのが、人材とかノウハウといった観点から少しハードルになっているので、直接出資を行えるようにならないだろうかということでございます。一方、金融機関の財務・経営の健全性、リスク管理に影響を及ぼす可能性というのを指摘する声もございます。これについてでございますが、投資専門子会社を通じた議決権の所有・保有のあり方についてどう考えるか。あるいは、投資専門子会社はつくるんですが、その投資先の範囲をどうするか。それから、10年という期間の縛りがあるんですが、これをどうするのか。それから、今、投資専門子会社を通じて保有することはできるんですけれども、一定のリスクの遮断という考え方かもしれませんが、これについて金融機関みずからが所有・保有することについてどう考えるかということがございます。

10ページでございます。デット・エクイティ・スワップでございます。これは担保権の実行と同じように同列にデット・エクイティ・スワップの場合に所有することになったときに、法律の建前は速やかに処分しなさい。1年間は猶予しましょう、1年超える場合は承認制ですということになっています。デット・エクイティ・スワップの場合はこういう縛りがあるために無議決権株式を利用することにどうしても現場ではなっていることが多い。本来は議決権を取得した上でやったほうがより有効な取り組みができるんではないか。それから、デット・エクイティ・スワップのときに1年で出口というのはあまり考えられないのではないか。経営改善ということであれば3年、5年かかるのではないかということで、そういう期間の延長というのがあるのではないか。あるいは、承認制から届出制にすることを要望している。このデット・エクイティ・スワップについてのあり方についてどう考えるか、期間1年というのをどう考えるか、経営改善の計画はもっと長いんではないか。それから、1年を超える場合の当局の承認となっているんだけれども、承認以外の枠組みは何か考えられるのか、ほかの主体であるとか、あるいは、承認以外の方法とかいうのが考えられるかということでございます。一方、参考1でございますが、デット・エクイティ・スワップの利用がより促進されるためには、この5%ルール以外にも課税リスクの問題ですとか、あるいは、実態の問題として長期的な展望を描けない先が多いとか、そういう問題もあるということも参考で載せております。

11ページ目です。事業承継についてです。地域金融機関がよく最近直面している問題の大きなものの1つだと言われております。中小企業の経営者の高齢化ですとか、そういうものに困っているものだと思いますが、そこの四角の欄に担保権の実行とか、デット・エクイティ・スワップというのが列挙されているんですが、事業承継関係は列挙されていません。これについて金融機関からは後継者の資金的な問題等から、円滑な事業承継が困難である場合というのがあります。そうしたときに、分散している株式を集約しなければいけない、新たな後継者が株式を集約しなければいけない。将来はキャッシュがあるかもしれないけれども、現時点ではお金、資金的な余裕がない。そうしたときに、金融機関が一時的に株式を取得して適切なタイミングで後継者に売却するという、何ていいますか、隔時者間といいますか、インターテンポラルといいますか、そういうものの関係で金融機関が役割が果たすことがあるんじゃないか。一方で金融機関の財務・経営の健全性、リスク管理に影響を及ぼす可能性があるということで、こういった事業承継の支援に伴うものというのを例外として列挙することについて、どう考えるかということがございます。

12ページでございます。銀行法施行規則ではいろいろ担保権の実行とかデット・エクイティ・スワップといったようなものが列挙されているわけでございますが、それに加え、個別に金融庁長官の承認を受けた場合、合理的な理由があることについてあらかじめ承認を受けた場合には、1年間ということですが保有が認められるということとなっています。1年超える場合にはまた承認制ということであります。これも承認を受けた事例は過去5年間においてゼロ件ということでございまして、こういう承認制の活用促進ために承認基準を明確化するとした場合にどのように承認基準が考えられるか、また、このほかにどのような対応が考えられるかという点がございます。

13ページは、今いろいろ列挙されているといったものの条文を写しておりまして、例えば1号というのが担保権の実行、3号というのがデット・エクイティ・スワップ、それから、個別の承認といいますのが1項の11号というところでございます。

14ページに参ります。今までは地域金融ですとか、地域密着型金融ですとか、あるいはベンチャー会社の支援、あるいは事業再生への支援といったような話でございましたが、ここから少し違う話題でございます。信託勘定で取得・保有する議決権ということで、信託銀行が信託勘定で所有・保有する議決権というのがございます。受託を受けていると信託財産に入りますので、信託銀行が基本的には議決権を行使するわけです。それはつまり銀行勘定と合算して5%ルールの対象になっています。次のものは除外されているというのですが、それは信託銀行が行使するのではなくて委託者や受益者が議決権の行使を何か留保しているものというのがございます。あとは元本補填のない信託に係る信託財産として取得・保有する議決権ですが、1年を超えないものについては例外となっています。ただ、1年超える場合は承認が必要ということです。

これについては、元本補填のない信託に係る信託財産は、信託銀行の健全性に影響を与えないのではないか。5%ルールというのは健全性の観点からの規制だったんじゃないか。それから、インデックス運用を行うときにどうしてもこれが形式的なネックになっている部分もありまして、適切なポートフォリオを組めない場合があると。3つ目が、そういうものを未然に防止するためにいろんなコストがかかっていて負担になっている。信託銀行は信託財産に係る議決権を行使に当たっては、受益者の利益のためにやっているもので、銀行勘定とは別であるといった意見が出されております。こうしたものを適用除外にすることについて、どう考えるかという点がございます。

15ページ目でございます。参考で「5%ルールを巡るその他の論点」ということでマーチャント・バンキング業務として取得・保有する議決権というのがございます。ここで言っているマーチャント・バンキング業務といいますのは、四角の中の一番下で、例えばこの要望・意見を出している金融機関の考え方からしますと、「投資家への販売又は自己の資産運用のために一般事業会社の株式等を保有すること」ということでございます。こういったマーチャント・バンキング業務の大幅な拡充というのは、キャピタル・ゲインの獲得手法の多様化ですとか、国際競争力等の観点から重要ではないか。一方、いろいろ想定する懸念については克服しなければいけないけれども、それをした上で大幅に拡充してほしいということがございます。下に平成19年の金融審議会の第二部会の報告がございまして、銀行グループによるエクイティ保有の拡大というのは、制度趣旨の非整合とか、株式持ち合いの復活とか懸念が指摘される一方で、現状においてもある程度できる。大幅な拡充については本来の趣旨を踏まえて、5%ルールの本来の趣旨を踏まえて整理していく必要があり、引き続き検討を行っていくことが必要だというふうに整理されているところでございます。

16ページです。これは5%ルールの関係ではありません。日本の企業、中小企業などが海外に進出するに当たって、金融機関がどのようなサポートができるかといったことに関連したものでございます。外国銀行の業務の代理・媒介といったものが銀行の付随業務として認められています。これは下のほうのポンチ絵を見ていただきますと、左下に邦銀というのがありまして海外に現地法人をつくっています。顧客は国内にいたんですが、顧客が、中小企業等ですが、あるいは一般企業ですが、それが海外に支店を設けました。この支店と現地法人で商品・サービスのやりとりの提供を受けるわけでございますけれども、そのときの代理・媒介というのを国内の邦銀と顧客の間でするということが付随業務で認められたということがあります。こういうことでございますので、上のほうのマル1マル2マル3とありますように、顧客の利益の保護の確保を図る観点から、委託元の外国銀行を次の者に限定しているということです。邦銀のグループ内子会社ですとか、そこに現地法人と書いていますが、こういったものから委託を受けてその顧客にサービスを行うといったものに限定しているというのが現行の制度でございます。

17ページに参ります。最近は、邦銀がいるわけでございますが、お客さんのほうは真ん中の図でございますが、外国に支店とか現地法人を設けまして、邦銀とは資本関係のない外国の銀行と取引を行いたい、あるいは、邦銀はなかなか外国で実態的な金融サービスをみずから提供するのは難しいけれども、外国銀行にお客さんを媒介するとか、取り次ぐとか、代理をするといったことはできるといった場合があるようでございます。そうしますと、この邦銀と外国銀行の間には何の関係もないわけですが、こういったものについても外国においてサービスが行われるのであるから、これは認めてもよいのではないかという意見でございます。主な論点でございますけれども、外国において行われる取引には我が国の銀行法の規制を直接適用することはできないが、現地の法制度に即して行われるため、国内の顧客保護を図る観点からは特段の問題は生じないと考えるのか、その場合に我が国の銀行法で認められる業務に限定する必要はあるのかといった論点がございます。

18ページは、外国銀行の業務の代理・媒介といったものを平成19年に認めたときの考え方がありまして、アンダーラインを引いているところは、やはり我が国の顧客の保護というのが1つと、あるいは、本来は日本で行われる取引が海外で行われるようなことにならないようにする必要があるといったようなことが重視されているようなものでございまして、海外で行われる場合については一定の緩和が考えられるのではないかという論点でございます。

19ページでございます。最初に我が国の銀行あるいは銀行持株会社が持つ子会社には一定の業務範囲がある、一定のものに限られているという話がございました。5%ルールは国内の会社についてのものですが、子会社の業務範囲規制というのは外国の会社を例えば買収する場合にもかかってくるものでございます。ところが、銀行が外国の金融機関を買収する際に、その金融機関に例えば不動産会社がぶら下がっているといった場合に買収交渉上不利に、日本の銀行法を守らなければいけないので、まず不動産会社はグループ外にしてくださいとかいろいろ事前に交渉する必要がある。あるいは、ほかの海外においてはそのような規制がないので、買収合戦とかでビットに参加できないとか、そういった問題が生じて不都合が生じているという指摘がございます。これについては保険会社につきましては本年の保険業法の改正で一定のものについては原則として5年間は保有が認められているということでございまして、こういったものを銀行が海外の金融機関を買収するときにも同様に認めるのかどうか。その場合、銀行の買収だけについて認めるのか、それともほかの業態にわたる場合にも認めるべきかといった論点があるということでございます。20ページは保険についての規制緩和の内容を述べたものでございます。

ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

○岩原座長

どうもありがとうございました。

それでは、議論に移りたいと存じます。まずは5%ルールに関しましてご質問・ご意見があれば承りたいと思います。委員の皆様どなたからでも結構でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

それでは、小出委員、その後、小野委員、お願いします。

○小出委員

初めに前提といいますか、確認させていただきたいんですけれども、今、事務局のご説明では現状の5%ルールというものの趣旨というのは、健全性を損なうことがないようにということで、銀行自体の経営の健全性というところを中心にご説明いただきまして、そのとおりだろうと思いますし、そうやって考えられてきたんだろうとも思うんですが、他方でこの規定というのが銀行による一般事業会社に対する影響力の行使というものが過度に大きくなる、これはあるいは独禁法の問題というふうに整理されたのかもしれませんが、そういった要素を銀行規制のほうでは全く考えなくていいだろうかという点が若干気になった点でございます。といいますのは、銀行自体の経営の健全性ということで考えるのであれば、まさにご紹介があったとおり、大口信用規制なり自己資本比率規制なり、ほかの制度もあるわけでございますし、そもそも事業会社の5%の議決権保有という基準でこういった規制を設けることというのは、なかなか直接には出てこないだろうというふうにも思われるわけです。

例えばですけれども、大口信用規制と似ているかもしれませんが、銀行全体としてどれだけ株式を持っていいか、つまり資本性の資金を供給していいかという規制を置くですとか、あるいは、一定の分散投資を義務づける規制というようなものを置くとか、そうであればある程度わかるんですが、ある個別の一般事業会社の議決権の5%以上を持ってはいけないというルールになっているというのは、果たして健全性の観点だけを考えていいのかというところでございます。もしほんとうに健全性だけ考えればいいのだとすると、例えば途中出てきましたけれども、信託の問題なんかは、信託勘定で持っているものについては、当然分別管理もされているわけですし、信託銀行の固有財産に直接に影響を与えるわけではないので、こういったものについては明らかに5%ルールの対象外にするべきだろうということで大賛成なんですけれども、銀行による影響力の行使も考える必要があるといった話になってきますと、もちろん信託だけの話ではありませんが、例えば信託銀行においても銀信間のファイヤーウオールのようなものが完全に機能している状況であって、信託銀行全体として不当な影響力行使ができないという条件がある場合については5%ルールの対象外とすることを認めてもいいといった方向になるでしょうし、今のは一つの例で、信託に限った話ではなくて、おそらく全ての5%ルールに関する問題に関連してくるだろうと思いますので、まず前提としてそこを確認させていただけばということでございます。

○岩原座長

それでは、小野委員、どうぞ。

○小野委員

関連するご質問になるんですけれども、今、小出委員がおっしゃった点、私も賛成です。銀行の健全性という観点から考えると、千差万別でリスク・リターン・プロファイルも違う個別企業に対して、その株式を5%以上持ってはいけないという同じ網をかけるのはなかなか理屈が立たないのかなという気がしています。

その上でちょっと幾つか教えていただきたい点があるんですけれども、まず、今日は、銀行が一般事業会社の議決権を5%までしか持てないというお話だったんですが、逆に事業会社が銀行の議決権を保有する際の規制の現状というのがどうなっているのか。また、その規制の現状を踏まえたときに、それは銀行の健全性を損なうことがないようという法律の趣旨に照らして、どういうふうに問題整理がなされているのかというのを教えてくださいというのが1点目です。それから、これは後段の話ともかかわっているかもしれないんですが、海外における規制というのがどうなっているのか教えてくださいというのが2点目です。大ざっぱに言うと、ヨーロッパはほとんどこの種の制限というのがなくて、アメリカは、従来は業務範囲規制が非常に厳しい国でしたので、特に事業会社との持ち分という意味では、厳しく制限してきたというふうに理解していますけれども。以上です。

○岩原座長

それでは、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

まず小出委員と小野委員から規制の目的はどういうものかというご質問がありました。健全性という観点からすれば、自己資本規制とか大口信用供与規制、その他健全性の規制で大体カバーできるのではないかというご趣旨だったかと思います。この規制の根底にありますのは銀行あるいは銀行グループには業務範囲規制といのを形式的に定めていて、それに専念させることによってリスク管理をやりやすくし、リスクを限定するという考え方もあるわけでございまして、その延長線で5%ルールもあるといったところが現行の規制の考え方ではないかと思います。ただ、ここでも論点で出しておりますけれども、一定の部分については自己資本規制ですとか、大口信用供与規制といったものとの関係で整理といいますか、分担を考えられるものもあるかもしれないといったことで提出しているところでございます。

2番目に、事業会社が銀行の所有することにつきましては一般的に主要株主規制というのがかかっております。基本的に議決権の20%を超えるときには主要株主規制がかかっております。そこでチェックするのはいわゆるフィット・アンド・プロパーと言われているものでございまして、自分がやっている事業のための機関銀行とならないかとか、株主が何かリスクを生じさせるような問題がある人物ではないかとか、そういったことをチェックしております。持ち分がまた50%を超えますと主要株主自体に対していろいろな命令とかも、行政上の処分をすることもできるようなことに一定のものについてなっております。それから、主要株主がまた持株会社のようなものになりますと、また特例になまして、子会社に持てる会社が限定されたりするといったような体系になっているわけでございます。

それから、海外でございますけれども、アメリカにおきましては銀行単体について見ますと基本的に自己勘定での株式の保有が禁止されております。これはちょっと伝統的にそうだということです。ただ、例外もございまして中小企業向け投資会社の株式、投資会社については銀行の資本金の5%まで保有することはできる、ベースは銀行の資本ということになります。それから、銀行持株会社についていいますと、原則は銀行業以外の業務に従事する会社の議決権の保有は禁止されているところですが、ただ、一般事業会社の総議決権の5%以内の保有などは可能であるということで、事業会社の議決権に着目している。金融持株会社というのもちょっと広いものがございますが、これは子会社を通じて一般事業会社への投資が可能ということになっています。それは金融持株連結のTier1比で30%とか、そういう一応の健全性の基準がございます。欧州の方は、ちょっとご指摘いただいたように、相手の議決権というよりも自分の銀行の自己資本の15%まで、1社当たり銀行の自己資本の15%までとか、あるいは、一般事業会社を全部寄せ集めてみて、それが銀行の自己資本の60%までは保有可能ということで、どちらかというと、銀行の自己資本との関係で考えているということのようでございます。

○小野委員

じゃ、ちょっと、すぐ終わります。

○岩原座長

では、小野さん。

○小野委員

今の2点目の、事業会社が銀行の議決権を持つ場合のご説明についてなんですが、そうすると、銀行が事業会社の議決権を持つケースと、事業会社が銀行の議決権を持つケースとでは扱いが対称的ではないという理解でいいですか。

○藤本信用制度参事官

事業会社が銀行の議決権を持つといった場合には、銀行の業務に何らかの悪影響が、銀行が行う業務の健全性・適切性といった観点から問題がないかどうかという観点から規制を課しているものであります。一方、銀行が一般事業会社の議決権を持つということは、その持っている事業の内容で何かリスクが高いとか、あるいは、健全性の状況、その事業自体の健全性といった観点から、銀行に財務に悪影響がないかといったような観点からの規制だというふうに思っています。質問にお答えするとすれば、ちょっと違ったものだという、観点は違ったものだということであります。

○岩原座長

先に手を挙げられたのは大崎委員で、その次に井上委員、それから、川口委員、お願いします。

○大崎委員

ありがとうございます。私は銀行法の5%ルールについては、先ほど藤本さんが言われたとおり他業禁止の延長線上というんですかね、に設けられている規制なんじゃないかなというふうに理解しておりまして、その意味では、先ほどちょっと小出先生が気にされていた銀行の優越的な経済力みたいな話と結びつけるのは、あまり適切じゃないんじゃないのかなという気がいたします。その点について独禁法、独禁法の現在の規制の内容自体、私自身個人的にはちょっと疑問も持っているんですけれども、それは独禁法のサイドから検討していただくことなのかなと。最近では優越的地位の乱用についての監視につても、昔に比べると厳しくやっておられると聞いておりますので、そういう対応の仕方が望ましいんじゃないのかなという気がしております。

この5%ルール自体については、本来の目的が他業禁止と同じようなものだというふうに考えると、なぜ50%とかいうようなところに規制値がないのかなというのが率直に疑問ですし、それから、他業を行うことで事業全体の健全性が損なわれるという話であれば、子会社の大きさが問題にならずに、相手の5%ということが単純に問題になるというのも非常に疑問だなと思っております。いろんな例が出ておりましたけれども、例えばベンチャービジネス会社なんていうのも、この定義だと多分サービス業とかの場合はなかなか該当しにくいんではないのかなと思ったり、果たしてそういうふうに制限する必要があるのかどうかとかいろんな疑問が出てきますんで、全部一まとめに意見を言うのはあまりよくないのかもしれませんが、私は基本的にはここで挙げられているような問題は、規制を基本的に撤廃する方向で検討すべきではないかなと思います。

○岩原座長

井上委員、お願いします。

○井上委員

似たような話ですけれども、この5%ルールの趣旨が銀行の健全性のみかどうかはともかくとして、私もやはりこれを中心に考えるべきかなと思っています。ただ、ここで言う健全性は、バランスシート全体がどのくらい傷むかということだけではないと思うのです。それだけであれば、もちろん信用供与規制ですとか自己資本比率規制でもカバーできるわけですが、おそらく、今、大崎委員がおっしゃったことともかかわりますけれども、銀行の業務がどのような形で適切に行われるかという意味の健全性の観点から、他業禁止に関わってくるように思います。前半のほうでご説明されていたように、非上場会社の株式を持つということになりますと、それぞれの企業の経営にコミットしていくことになります。他業禁止は他業禁止で別にルールがありますし、そちらは会計上の子会社あるいは関連会社の業務の範囲が銀行の業務規制の範囲に入っているかという形で、別途解釈論として規制が及んでいると理解していますけれども、それに加えて、5%という比較的明確な議決権の保有形態でコミットメントの程度を画しているという枠組みを、今の時点でどの程度維持するかという、そういうアプローチで考えるべきかなと思います。

この点、非上場会社の株式の一定程度以上のパーセンテージを保有することによって、企業との関係がなかなか抜き差しならないことになることもあり得ると思っております。想定としては、貸付先の企業に対して、そういった株式保有が問題になるのだと思いますが、役員の派遣その他貸付先の経営に対するコミットメントがどんどん高まっていく中で、貸し手として権利を行使すべき局面になった場合に、どのタイミングで支援できなくなるのか、あるいは、それを利益相反状況としてどのように管理するのか、それを各銀行の裁量に委ねるべきなのか、あるいは、規制により一定の線引きをするのか、こういったことを考えるべきなのかなと思います。結論としては、そういったことを考えた上で業務の健全性の観点から問題ないものについて、規制を緩和していくことに賛成なのですが、規制を緩和するときの考慮点としては、認識しておくべきことがあるというのが、ご説明に関する主たるコメントでございます。

ただ、先ほど藤本参事官からも別途の趣旨だとご説明いただきましたが、信託勘定で取得する議決権については、これはわりと実務でよく問題になることがございます。これは地域金融の問題とか、非上場会社株式の保有による経営に対するコミットメントの問題は、考えにくいことが一般です。むしろパッシブ運用など経営参加とは無関係に、機関投資家として、それもすべて顧客のために運用しているにもかかわらず、議決権について行使裁量があるという理由で、これを自分の固有の保有分と合算してなお5%におさめるということになりますと、非常に管理コストもかかりますし、健全性という意味でも問題が見当たらないので、撤廃するほうがよいと思っております。以上です。

○岩原座長

それでは、川口委員、お願いします。

○川口委員

今までの委員のおっしゃったことと重複してしまうのですが、私もこの規制の趣旨といいますか、目的というのは、健全性というのもいろいろあるとは思いますけれども、株式の数ではなくて議決権ベースで規制しているということからも考えて、やっぱり会社の支配という点に注目したものではないかと思います。独禁法が他方でありますので、それとは違う趣旨、すなわち、他業禁止という規制を徹底するための規制ではないかと考えております。その点からいきますと、先ほど会社の規模と関係なく5%というのはおかしいのではないかという意見がありましたが、規模と関係なく他業は禁止されているわけですので、現行法上の規制は合理性はあるのではないかと思います。

7ページのところで自己資本比率規制と大口信用規制とで同じような目的があるのではないかということですけれども、今のような点で区別できるんではないかと思います。自己資本比率規制でリスク・ウェイトをかけているのは、まさしく財務における健全性の維持からで、これは適切なものなんだろうと思いますし、大口信用規制の場合に株式が含まれているということについても、それは破綻したときに銀行の財務への影響が非常に大きいからかと思います。株式は債権に比べると劣後するわけですから、より銀行の財務に対して影響が大きいわけですね。このように、趣旨が違うので同じように比較しながら検討していく必要はないのではないかと思います。

それから、1点だけ質問なんですが、今の趣旨から考えますと、有限責任組合として取得・保有する株式について議決権がないというのであれば、それは支配の問題はないということになるのでしょうが、それが10年を超えたらだめというもともとの立法趣旨はどういうものであったのか教えていただきたい。それがわかれば10年延長するということの妥当性を判断できるかと思います。

○岩原座長

藤本さん。

○藤本信用制度参事官

資料で言いますと8ページでございます。おっしゃるように議決権を行使しない場合でございます。この10年というのは当初この制度が導入されたときに、ファンドというものが大体10年ぐらいの存続期間というものを念頭に置いていたので、10年というものを設定しましたというのがまず期間についてのものです。じゃ、そもそも何で期間制限を課したかということでございますが、これはどうもいろいろちょっと調べてみてわからないところもあるんですが、こういったものはキャピタル・ゲイン狙いのものでしょう。組合に投資して議決権を持たずに持っているのはキャピタル・ゲイン狙いという意味において認められるんだけれども、10年超えて例えば非常に長い間持つことになると、幾ら議決権を持っていないといっても何かキャピタル・ゲイン狙いという趣旨から外れてしまうのではないかといった説明を書いてあるものを見たことはあります。わかったのはそういう点でございます。

○岩原座長

はい、大崎委員。

○大崎委員

今の点についてなんですけれども、投資事業有限責任組合を通じた保有について、これが直接株式を保有するというふうになるのは、結局いわば法形式上そうなっているだけであって、実際に保有しているのはファンドなわけですので、私はこの規制は全く合理性がないと思います。10年という期間にも合理性がないし、これを5%ルールに当てはめるということ自体にも全然合理性がないんじゃないかなと率直に思いますんで、これは期間延長といいますか、全くの例外で構わないんじゃないのかなと思います。

○岩原座長

はい、和仁委員。

○和仁委員

5%ルールについて、今、諸委員からいろいろコメントがありまして、それぞれ正しい指摘をされていると思うのですけれども、問題はもう少しちょっと違うのかなと思います。例えば銀行に対する他業禁止の趣旨から5%を設けたと、確かにそういうふうに見ることはできるんですけど、他業って何ですかといった場合にこの範囲がよくわからない。殊に固有的銀行業務の外にある付随的銀行業務というか、付随業務ですね。そこから行くと一体はっきりと線を引くことができるのですかねということで、必ずしも他業禁止だけではなくて諸要素、要するに支配される会社のことも考えろよということでの配慮もあったんだろうなと思います。それで、大崎さんは独禁法は独禁法でやってもらえばいいんじゃないのということをおっしゃいますけど、今の銀行法のたてつけでは、銀行法の中で独禁法に関する優越的地位の乱用等を規制するようにしていますので、それはちょっと今のシステムには合わないと思います。

ここで挙げられている5%ルールをどうするか、5%という切り口だけで単純に見てしまうことが問題なのですよね。書いていらっしゃることを見ると、要するに地域経済をどうするか、地域のビジネスをもっと伸ばすためにはどうするかということになると、じゃあ、地銀だけについて、この規制を外すかという発想もあっていいと思うのです。ただ、逆にもう一つ言いますと、じゃ、地銀にそれだけのリスク・マネジメント能力あるか。殊にエクイティに出資させるということになると、これは簡単に逃げられませんからなかなか大変で、何も不安をあおる気はないですが、昔の郵政のときの母体行責任のような議論が地銀に対して発生するのは嫌だなということを考えております。ですから、そういう意味で決済システムに影響を与えるような倒産を銀行はしてもらっては困るのですから、銀行業務をどう制限するのかということでこの5%ルールを考えるということで判断していけばいいのではないでしょうか。じゃ、そのときに持株比率だけでいいのか、数量規制ですね、幾らまでとか、そういう考え方も入れていいんじゃないかということも考えられると思います。

それでもう一つここで問題になるのは、今こういう場合には認められます、例外ですというように書き分けてありますけれども、やっぱりそこで、対応しきれないときのカーブアウト条項をつくっておいて、そこは金融庁が判断するというような逃げのシステムをつくっておけば、実務で問題になっているということは、そんなに大ごとにならずに済むんじゃないかなと思います。あと、信託勘定のところは私より信託をよくわかってらっしゃる井上先生がおっしゃるとおりだと思います。これは現行の規制が論理的に説明がつかないということでして、これちょっと異質だと思いますので、信託銀行がちゃんと信託勘定を運用していただいているという前提であれば、外しても問題はないということに同調したいと思います。以上です。

○岩原座長

はい、翁委員、どうぞ。

○翁委員

今、経済環境のお話があったんですけれども、私もやはり特にこれ日本成長戦略などを見ますと、事業再生やベンチャーもそうなんですが、を念頭に置いた5%ルールの緩和ということになっておりまして、本来、やっぱり事業再生などをやっていく上では、やっぱりファンドの育成とか、または事業スポンサーを探すとか、そういったことをまずやるべきであって、どうしてもそれで見つからない、多く地方の場合はなかなかエクイティを再生段階で出してくれるところありませんので、そういったところに対して銀行がエクイティを出すということは、どうしてもその事業を再生するために必要だという判断があれば、やるということなんだろうなと思います。その意味では、やはり、今、円滑化法の終了に向けて事業再生一生懸命皆さんやろうとされていますけれども、結構長期的展望の難しい中小企業も多い中で、やっぱり例えば地銀なんかがこういった5%ルールを緩和してエクイティを持つとするとすれば、その前提としてしっかりとした再生計画があって、アップサイドがきちんと狙えるというようなことができるような環境を整備していくことも、同時にすごく重要なんじゃないかなと思います。

これで書いてあります今までの実績を見ると、事業再生4年間で四十数件ということで、比較的少ないんじゃないかなという印象をすごく持つんですね。それはなぜなのかということをちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、やっぱり円滑化法ということがあったので、そういった規制環境があったのでなかなかなかったのか、事業再生に本格的に取り組むという機運があまり今まで少なかったということがあったのか、それとも何か手続面で、ここにも幾つか書いてありますけれども、こういうことがネックでなかなか活用されなかったのか、そのあたりのところを少し教えていただけないかなという感じがいたします。

それと、あとDESに関してはここに書いてあるとおりで、1年というのは再生を考えても全然短くて、やっぱり3年ということで考えていくというのが必要ですし、議決権も当然再生にきちんとコミットするということであれば必要になってくると思います。いずれにせよ、やっぱり健全性の観点というのは、その意味でちゃんとよく勘案する必要があると思いますので、5%ルールを緩和するに当たってはやっぱりしっかり統合リスク管理をできる体制をとっていくとか、きちんとした再生計画をつくって事業再生を、必ず確実ということはないんですけれども、確実なものにしていくということを側面的にサポートしていくことが必要だと思いますし、あとやはりどうしてもデットとエクイティを持つということに伴う利益相反の問題というのは出てきますので、内部管理体制をきちんと構築するということも必要な課題になってくると思います。信託勘定のことについては私も皆様と同じ意見でございます。

○岩原座長

はい、森委員、どうぞ。

○森委員

5%ルールにつきましては幾つかの視点があると思います。例えば金融円滑化法が終了するということで、出口戦略を考えた意味でもこの見直しが必要ではないかと思います。この5%を見直す際に例えば大口信用規制でも、連結の見方がありましたが、連結の範囲を考える場合は支配力基準、影響力基準で考えていくわけですが、事業により健全性を損なうことがないようにという目的で5%ルールを見直す際に上限をどこまで見直していくのかと。10%でいいのか、あるいは、銀行持株会社ですと15%以内ということに、現状なっていますが、これを超えていいのかどうか、そういった点も検討する課題として入ってくるのではないかと考えています。

また、会計の連結の範囲の支配力基準、影響力基準は議決権だけではなくて例えば人事的な支配であるだとか、取引関係、金融機関には、特別の除外規定はありますが、まさに金融での影響力は持っているわけで、そういった点も勘案をしてということになります。例えば取締役会の過半を支配している場合、一定の条件によっては支配力があるということで連結の範囲に加えることもありますので、5%ルールの見直しに当たっては、こういった視点の検討も必要ではないかと考えています。

○岩原座長

翁さんの御質問について藤本さん。

○藤本信用制度参事官

翁委員からありました資料でありますと9ページでございます。上に事業再生会社43件というのがあって、これは少ないのではないかというので、私もこの結果は金融機関にアンケートをとって出てきたものですが、少ないんじゃないかという印象を持ちました。その要因というのはちょっとまだ調査の途中でわからないんですが、今後もいろいろヒアリングをする機会はございますので、そこら辺も聴取しようと思っています。多分、これは投資専門子会社というのをつくらなければいけないものです。以前から、ベンチャー関係の子会社というのは幾つか地銀なんかも含めて既にこの規制が入る前から持っていたものがあって、それを規制上も認めたというような、そういう流れにあるんじゃないかと思います。事業再生会社のほうは平成20年に新たにこういうものを認めたということでありますので、認めたというときにこれをほんとうにつくるかという経営判断がやっぱりあって、そこで中にはちょっといろいろな人材の面とか、リソースの面でそういう専門のものをつくるというところまでには至っていないというものがあるのかもしれませんが、引き続き調査したいと思います。

○岩原座長

大崎さん、簡潔お願いします。

○大崎委員

すみません、ちょっとさっき、私、基本的に規制は緩めたほうがいいんじゃないかということを申し上げたんですが、それはある意味では規制の本来の趣旨に照らしてということで申し上げたんで、むしろ、今、事業再生のためにという政策目的に照らした場合どうかという議論が何人かの方から出ておりましたので、その点についてちょっと申し上げたいんですが、そういう観点からすれば私はむしろ5%を緩めるというだけではなくて、全面的な支配を認めるというふうにしないとむしろうまくいかないんではないかと思うんですね。例えば事業再生目的で株式を取得するような場合に、10%とか、15%とかいうような少数株主の地位では、事業再生にちゃんとコミットできないんじゃないかと。それから、むしろ50%超あるいは100%まで認めてしまったほうが、先ほど翁さんが言われたような利益相反の問題もなくなるわけですよね。債権者であるとともに主要株主であるわけですので倒産されたら困るわけですから、その辺は私はむしろ平時で5%規制を緩めた上に、そういう事業再生等々政策目的がある場合にはもっと特例を認めるぐらいに考えないといけないんじゃないかなと。中長期のワーキングでも話題が出ておりましたが、例えば地方銀行のコンサルテーション機能を強化せよみたいな話があるんですけれども、実際にデータ見ると同じ中小企業に10行ぐらいがみんな同じぐらいの割合で貸しているとかいうのがあって、そんな状態でコンサルテーションとか提案とかいっても、企業側としたら聞く耳持たないんじゃないかなと率直に思うわけですね。むしろしっかり支配力を持った上で再生にコミットしていくという制度がほんとうは必要なんじゃないかなと思います。

○岩原座長

これは非常に根本的な問題だと理解しておりまして、バンキングとコマースの分離という原則をどこまで維持するかということ、それとの対応で、今、日本でエクイティを供給する主体がない。そういうこれはまた非常に根本的な問題があって、その両者をどう折り合わせるかというのが今ここで問われている問題だろうと思います。多くの方からご指摘ございましたが、この5%ルールなり、その前提になっております銀行の他業禁止原則というのは、歴史的なものでもあり、かつ、先ほどご指摘ありましたようにアメリカもそういう考えをとっております。5%ルールの意義については、第一に、多くの方がおっしゃったように銀行のリスクを限定するということが、まず大きい問題としてある。第二に、銀行が、銀行さらに言えば金融業を超えた事業に進出するということが、社会にとってほんとうにいいのかどうか、という問題があると思います。これはさっきの独禁政策にも関係しますけれども、銀行という規制産業として国により保護されたものが他業に参入していくということは他業との間で平等の競争ができるか、という意見があります。さらに言えば日本やアメリカの歴史を見ると、金融業が事業会社を支配するといった問題がありました。日本の場合は銀行による産業支配が、産業全体の在り方や競争政策等の観点からシステムとしてとして問題とされました。アメリカでも19世紀末から20世紀初めに同様の議論があって、金融機関への経済力集中への懸念等から、banking と commerce の分離という原則が立てられました。第三に、金融監督当局は金融業についてはある程度監督ができるかもしれないけれども、銀行等が事業会社に投資して、さらには事業会社を支配してみずから事業会社を経営したときに、それを金融監督当局としてちゃんと監督してチェックして一定のリスク管理をやらせることができるのか、そういう問題もあり得ると思います。実際の経験としてはさっき和仁委員からのご指摘もありましたけれども、我々は平成9年~10年にかけての金融危機のときにそれをほんとうに経験したわけです。当時は5%の株式保有規制というのは銀行法の条文には書いてなかったのですが、独禁法11条を受けた関連会社通達等の行政指導でやっていたわけですけれども、そのもとでもいわゆる母体行主義ということが言われて、表面的には5%以下の株式保有であっても、関連会社を含めた株式保有や役員の派遣その他によって実質的に銀行が経営を支配等している会社については、その会社の負債全部を銀行が最終的に負担させられてしまいました。そういうことから結局、北海道拓殖銀行ですとか、日本長期信用銀行や日本債権信用銀行の破綻につながっていったわけで、そういう反省を踏まえて現在の5%ルールなりが平成10年の銀行法改正等で整備されたわけで、その歴史は決して忘れてはいけないと思います。

しかし、一方でまさに日本経済はもうずっと沈滞を続けているわけで、エクイティの出し手がなくなってしまっている。確かに金融資産として見て、現在は株を持つということが家計(ハウスホールド)にとって決して合理的な選択ではなくなっている。さらに言えば、特に、事業再生等のリスキーなエクイティを出す主体というのが非常に少なくなっているし、さらに言えば、それだけでなくて一般的なエクイティの出し手そのものが日本ではあまりなくなっている。それが日本経済全体の活性化を妨げているという面があることは否定できません。そのときにどういうエクイティの出し手を用意していくのかが今問われている問題で、さっき申し上げましたようないろんな理由から、ほんとうに深刻な経験を経てできたバンキングとコマースの分離という原則を、アメリカの場合もそうでしたけれども、この原則をエクイティの出し手がないという現状を考えて、どこまで見直すのか、見直すとすればどのような手当をしながら見直すのか、というのがここで問われている問題ではないかと思われます。どういう手当てをして、何とか banking と commerce の分離の制度目的を達成しながら、他方でいかにエクイティの出し手を生み出していくか、両方実現するような手段・方法はないのかというのが、ここで問われていることではないかと思います。どうも済みません、私が余計なことをいろいろ言いまして。

ほかにいかがでしょうか。小野委員、どうぞ。

○小野委員

今の岩原先生のお話を踏まえてということなんですけれども、確かに銀行業と商業との分離というのをどう考えるのかというのはすごく大きな問題だと思います。先ほど私がちょっとご質問申し上げたのは、例えばアメリカの場合ですと、ウォールマートが銀行を持つといったときにやっぱり大論争になったわけです。銀行が事業会社を所有する場合でも、事業会社が銀行を保有する場合でも、どっちの方向であれ原則論は同じはずです。しかし、日本の場合はそうじゃなくてもう既に一般の事業会社が銀行業に参入しているわけです。そうした状況が、ある意味で定着していて、それを前提にしたときに、銀行が一般事業会社を持つことについてどこまで警戒しなきゃいけないのかということについて若干疑問を持っています。いずれにせよ、もし規制をかけるのであれば、両方向で整合的にすべきですし、規制を緩めるのであれば両方向で緩めるべきではないかと思っています。個人的な意見としては基本的に緩めてよいのではないかと思っています。

金融業と一般事業との境目というのは、よくわからないところがあるんですけれども、ただ、例えば証券業は免許業種になったり登録業種になったりと変遷がありましたが、登録業種であるというのは、あるいは、証券会社は一般企業の株式保有に制限がないということからすると、もう既に銀行業が証券業もできます、保険業もできますと規制緩和した時点で、その壁自体は一旦乗り越えたものというふうに整理できるのではないかと理解しています。また、銀行としても、株式あるいは一般事業のほうが、伝統的な融資よりリスキーでないというふうに言い切れる根拠があるのかというと、日本だけなくて今の世界の金融危機などを踏まえても、どこにリスクが潜んでいるかというのは本質的にはわからないわけで、一般事業会社の株式だけを特別扱いする必要はないのではないのかという意見を持っております。

○岩原座長

日本において、さっき藤本さんからご紹介ありました銀行株式を所有する側の規制が入ったのはこれまた最近の平成13年のことで、それまでの銀行法は事業会社が銀行を支配するということをあんまり想定してなかったわけです。銀行のほうが強いに決まっているという前提があって、銀行の株主のほうの規制が完全になくて、事業会社が銀行の過半の株を持てば銀行を事実上経営しているのと同じことになるという解釈によって、そのような場合についてだけはチェックをするということでした。しかし、それではまずい。むしろ戦前の機関銀行からの歴史を考えてみると、日本はそれについて苦い経験を持っているわけで、戦後だって幸福銀行等の例があったわけです。そこで平成13年の銀行法改正で主要株主規制等が入ったわけです。ただしそのとき、私、その審議にも参加しましたけれども、おっしゃるとおり銀行による事業会社の株式、議決権保有に比べると、主要株主規制は甘いのです。これは当時、既に事業会社に支配された会社があったのを否定できないということもあり、金融機関をより活性化するためには、ある程度事業会社が金融業務に参入したほうがいいという非常に大きな暗黙の判断があったためです。そこで完全に対照的な規制にはなっていないのです。それを今後どうするかということはまさに小野委員ご指摘のとおり大きい政策課題としてあると思います。

いかがでしょうか。はい、小鷹さんですか。

○小鷹三井住友トラスト・ホールディングス業務企画部長

信託業界ですけれども、14ページのところに掲げていただいていますが、信託勘定のルールにつきましては業界のほうでも長年規制緩和要望としてお願いしているテーマでして、今回テーマとして掲げていただきましたのでぜひご検討いただければと思っております。14ページのほうにも記載していただいていますし、委員の方からもご発言いただきましたけれども、健全性という観点からも影響はないということと、受託者として保有しているということで、制度目的からしても除外とするということに問題ないと考えておりまして、ぜひご検討いただければと思っております。

○岩原座長

はい、和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

どなたも聞かれないんですけど、済みません、11ページの事業承継のときに銀行が出てきて株を買い集めしなくちゃいけないという理由がもう一つよくわからないです。これ別にSPCを使ってブックしたっていいわけだし、あるいは、証券会社がやるべき話だと思うんですよね。そして、そのような取引について銀行がファイナンシャル・アドバイザーとしてからむということも可能だと思うんですけれども、どういうところからこういう要請があるのでしょうか。お教えいただければと思います。

○岩原座長

小野さん。

○小野監督局参事官

いろいろ金融機関にヒアリングした結果なのですけれども、例えばオーナー家、地方の伝統的な昔からのしにせのような会社を想定していただければいいと思うんですけれども、そういうところから一部オーナー家から株式を買い取ったり、分散している株式というものを集約化するために株式を買い取るとか、あと、経営に関与しない創業者から買い取る。しかしながら、一時的なもので、銀行が一時的に買い取って、それを承継者の方に徐々に渡していく。特に承継者の方がなかなかまとまってお金がないというときで、かつ、その企業が地域で伝統もあって結構雇用もあるようなところですと、銀行は支援するためにそういう承継者の方に成りかわって、一時的に株式を買い取るというようなことがあるのではないか、あそのようなニーズがあるというふうに聞いています。

また、今ちょっとご指摘ありましたけれども、証券会社、または、そもそもそんなこと言ったって、じゃ、事業の譲受人に融資すりゃいいじゃないかというようなお話もあるのかもしれませんが、それに対しましてはそもそもやっぱりなかなかその譲受人にお金を融資するということがほんとうにいいのか、また、そういうのを承継者の人が嫌がるという場合もあると聞いています。また、あとなかなか次の後継人がすぐに見つからない、非常に老舗でバリューもある企業なんですけれども、なかなか次の承継人が見つからないというときに、一時的にその銀行が1回買い取っていって、それで次にその事業を承継してくれる第三者にブリッジ的に株式を取得していくというような、そういうケースもあるというふうに聞いております。

○岩原座長

和仁さん。

○和仁委員

いや、そういう誰かがブックして持ってあげてブリッジしてあげる必要性あるんですが、何で銀行がしなくちゃいけないのかがもう一つよくわからないのと、それから、我々の業界ですとまさにLBOの世界でありまして、それを銀行がアレンジャーとして、あるいは、ファイナンスとしてローンをつけるということで工夫すればできる分野であって、5%ルールをいじらなくちゃいけないのかなということがよくわからないところなんですが、お教えいただけますでしょうか。

○小野監督局参事官

全ての議論に言えることだと思うのですけれども、様々な事態を想定するわけでありまして、そのような様々な事態に対応できるオプションというものを広げておくということが必要ではないか。確かに5%ルールが全てではなくて、例えば事業再生についてもこの5%を見直すということが打ち出の小づちであるとは全然思っていません、いろんな方法があるのだと思います。ただ、様々なアレンジをしていく中で、最終的にどうしても銀行が一時的にでも株式を取得せざるを得ないというケースが想定されるときに、5%ルールがネックとなって、それ以上物事が先に進まないということがあることがほんとうに良いのかということを考えたときには、やはりこの5%ルールというものを今の段階でご検討いただいて、銀行がある一定の場合においては5%を超えて議決権株式を持てるというオプションを広げておくということが、日本経済、特に地域経済のためになるのではないかという、そういう観点からご議論いただければと思っていまして、別に事業承継が全てだと申し上げるつもりはありません。

もう一つだけ申し上げると、今、私どもは来年の金融円滑法の期限到来を受けまして、中小企業庁や内閣府と一緒になって中小企業の支援パッケージを進めておりまして、様々な環境整備を整えているところであり、その過程で例えば中小企業支援協議会や企業再生支援機構の機能強化や両機関の連携強化も図っております。このような機関は、中小企業の経営改善を図っていくために債権者の調整ですとか、企業再生支援計画を作成していくことになりますが、その中でも結局そのような支援の計画を作成していくことと、実際その計画を実行していくということはまた別でございまして、その計画を実行していく過程でどうしても場合によっては、銀行が5%以上の議決権株式を持たざるを得ない、そのような選択肢しかあり得ないという場合も十分想定されているところでございまして、そのようなことを視野に置いてオプションを広げておくということが必要ではないかと考えております。

○岩原座長

今の事業承継もそうですし、さっきの事業再生その他もそうですけれども、要するに日本ではインベストメント・バンキングをやる主体が育ってないというのが根本問題で、それがないからかわりに銀行にやってもらおうかということかと思います。しかし銀行による株式保有にはさっき申したような問題があります。本来はバンキングとコマース分離して、そういうことにはかかわらないはずだった銀行に、日本でインベストメント・バンクが育ってない中で、どれだけやってもらえるのかというのがここの問題だろうと思います。

川波さん、どうぞ。

○川波委員

事業承継から前の問題に戻りますけれども、今、何人かの先生方がおっしゃったことを繰り返すことになるかもしれません。とりわけ翁委員のご意見などにはほぼ賛成でございます。岩原先生がおっしゃった非常に根本的なバンキングとコマースの関係については、明快な整理というのはなかなか私もできませし、難しいんですが、基本的にBIS規制のような全体的な規制の枠がかかっていて、とりわけ景気が悪くなっているようなときにそれを増幅させてしまうような問題であるとか、あるいは、来年3月の円滑化法の期限が来るとか、そういう状況の中で非常に地域の金融と地域経済と申しますか、ここが相当疲弊している。そういう状況を考えるときに、例えば単に返済猶予といったようなことだけでなくて、新たな設備投資なり、あるいは、事業再生も含めてやっていくときに、このルールというのがやっぱり足かせになっているのではないかと私も考えますので、そこのところをどう新たな機会をつくっていくかという意味では、やはり緩和の方向で基本的には考えるべきであろうと思っております。

とりわけファイナンスの問題というだけでなくて、今の金融なり銀行に求められていることというのは、ファイナンスに情報であるとかソリューションをくっつけて提供するというのが、今、先生がおっしゃったようなインベストメント・バンキングの機能も持ったそういうことが求められているわけでから、そう考えたときに一定程度資本性の資金を供給するということが、むしろ銀行にそういう変化を促すのではないかと。銀行の機能自体を変えていくのではないかなというふうに思いますので、そういう意味では基本的に5%ルールの枠を、これを例えば10%とか何%にするかという具体的な数字の議論はなかなか難しいんですけれども、少なくとも5%という枠を取っ払って銀行自体も変えていくという、リスク・マネジメントも含めてそういう方向性が望ましいのではないかという。何人の方がおっしゃったこと、再生を支援するというだけでなくて新産業を創生するという意味でも、そういうビヘービアを銀行にもたらすという意味では望ましいのではないかと考えます。

○岩原座長

はい、ここで問題になっているのは規制のプロシクリカリティかなという気がします。経済がヒートアップしているようなときはこういう5%ルールなんかで、金融機関がそういう中に飛び込んでいってみずからリスクをとるというようなことをしないようにするということは非常に重要で、現にさっきも例に挙げました北海道拓殖銀行なんかは、バブルの頃にインキュベーション路線と称して中小事業会社を育てることを目指すとして、実質的にノンバンクを通して不動産・観光事業会社等への投資をして、それが非常に大きい傷になって破綻に至ったわけです。一方で現在みたいに逆に沈滞し切った経済の中で、現在の安全性を重視した規制が、さっき申しましたようにエクイティを供給して新しい産業を起こすことの足かせになっているのかというのが、ここでの問題かと思います。規制のプロシクリカリティというのはどの国でも問題でうまくいかないのですね。どうしたらいいか、皆さんのよいお知恵をぜひいただきたいと思っております。

和仁さん、どうぞ。

○和仁委員

確かにそのとおりなんですけれども、何かここで議論していることというのは制度をいじることであって、それで銀行員のマインドが変わるとは思えないんですね。小野さんのおっしゃることを非常によくわかるんです。でも、地銀の方々って、安全資産と考えられるJGBかリパッケージ物しか買われません。そのマインドの変え方ですよね。バンキングをやればお金がもうかる、お金を貸したらちゃんとそれでももうかる、あるいは、こういう投資をやることでもうかるという、むしろそっちの基盤整備の議論をしたほうがよろしいのではないかなという気がしております。私の感想で、済みません、余計なこと言いました。

○岩原座長

ありがとうございます。確かに制度を変えればよくなるというものではないのです。むしろ制度は一度変えてしまうと、それをまた後で変えることは大変です。むしろヒートアップしたときに規制強化しようとしてできるものではないということも経験しているところです。はて、ここでどこまで……。

はい、井上さん。

○井上委員

ごめんなさい、もうそろそろこの話題は終わりかと思いますが、ちょっと最後に技術的な点だけ、確認させてください。先ほども少し申し上げたんですけれども、現在の銀行法の解釈としては、5%ルールを定める条文とは別の他業禁止の条文の解釈として――監督指針に示されている解釈だと思うのですが――会計上の子会社あるいは関連会社を通じて、子会社でできる業務以外の業務をすることが禁止されていると理解しています。したがって、仮に5%ルールの規制を撤廃しても、会計上の子会社なり関連会社の範囲では、なおも規制がかかることになると思うのですが、そのあたりに手をつけるのかつけないのかについて、どのようなお考えでいらっしゃるのか教えていただけますでしょうか。

○藤本信用制度参事官

この5%ルールに関するご議論を踏まえて、それと整合的になるように付随業務のほうも考えていく必要があると思っております。

○岩原座長

はい、川口委員、どうぞ。

○川口委員

元本補填のない信託の場合に銀行の健全性に影響がないのだからいいのではないかという点ですが、5%ルールの目的が他業禁止の規制を補完するというものであるとするならば、元本補填がなければ財務には影響がないかもしれないですが、議決権があれば他業禁止の趣旨に反する懸念というのはあるのではないでしょうか。そのため、これだけではやはり外すという理由にならないように私は思います。この点、受託者の立場で保有するということが重要というふうに思います。委託者から例えば議決権の指図があるというような場合は、もちろん問題はないということになります。この点で、実態がよくわかっていないところもあるのですが、ある程度銀行に裁量があるというのであれば、非常に曖昧になるんじゃないか。ドイツなどでは寄託議決権制度のもと、銀行は企業に大きな影響力を持っているという議論もあるようです。銀行の裁量という点があるならば、今少し慎重に議論してはどうでしょうか。

○岩原座長

そのためにドイツはデポットシュチムケゼッツみたいな法律つくって、なるべく委託者の意思が反映した運用がなされるようにしようとしているわけで、当然そういう手当てなしにやっていいのかという問題があると思いますね。

ほかに、はい、井上さん。

○井上委員

今の点について申し上げますと、そこはむしろ信託業務としてのやり方が不適切だということだと思います。信託としてやっている以上は当然に受益者のために議決権を行使しなければならないわけですから、それをあたかも自分のものであるかのように行使しているような実態があれば、それは保有自体の問題というよりは、むしろ信託業務自体の問題として監督するなり、問題として捉えるべきかなと思っております。

○岩原座長

はい、ほかにいかがでしょうか。はい、小野さん。

○小野委員

済みません、ちょっと感想めいたことになって恐縮なんですけれども、「在り方ワーキング・グループ」で私もこの議論には参画させていただきました。ちょっとそのときの議論をご紹介いたしますと、日本の中小企業の収益性は、今たいへん落ち込んでいて、企業規模別に見て一番落ち込んでいるのが零細企業だという事実があります。それについては、そもそも金融機関がだらしないからそうなっているのか、企業自体の問題なのか、あるいは、企業自体に問題があるとして、それに金融機関がどの程度踏み込めるのかという点について、「在り方ワーキング・グループ」の中でも、皆さんかなり意見が分かれていたと思います。

それを踏まえて、じゃあ、今回の問題をどう考えるかということなんですけれども、先ほど岩原先生がおっしゃったとおり、あるいは、和仁先生がおっしゃったとおり、制度改正は基本的には恒久的なものですので、一時期の経済の波に沿っていじるのは、本来あってはいけないことなんだろうと思います。ですので、私自身の基本的な考え方としては、そもそも5%ルールというのはどういう目的で存在しているのか、銀行の議決権保有による弊害があるのかないのかを検討し、ないのであれば緩めてしまって、金融機関として創意工夫できるオプションを1つ増やす、というスタンスで臨むのがいいのではないかと思います。「在り方ワーキング・グループ」でもこういうスタンスの答申が出ているんですけれども、これをやったからすぐ物事が劇的に変わるとは、多分メンバーの皆さん、少なくとも私は全く思っていなくて、ただ、1つでも2つでも小さな成功事例があれば、それはそれで成功とみなすべきだろうと考えています。逆に言うと、その程度の効果しか期待できないものだというふうにも理解しております。

○岩原座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。特にございませんか。

特になければ、少し早いようですが……。

○鳥海国際銀行協会ディレクター

申しわけありません、済みません。

○岩原座長

ごめんなさい、もう一つテーマがありました。鳥海さん。

○鳥海国際銀行協会ディレクター

ありがとうございます。ちょっと話題が変わりまして申しわけないんですけれども、資料の後半のほうですね、16ページ~18ページまで外国銀行の業務の代理と媒介というのが記載されておりますので、この点についてこういった規制の弾力化あるいは緩和がもし導入されるんであれば、私どものような外国銀行にもメリットがあるのかなと思われますので、そうした観点から事務局の方々に3つほど質問させていただきたいんですけれども、まず資料の17ページの記述を拝見しますと、この前段の部分、金融機関等からのご意見ということで、出資関係のない業務提携先外国銀行とございまして、これは先ほど藤本参事官のお話でも出資関係のないという言いぶりだったと記憶しているんですが、これは出資は50%以下の外国銀行だけでなくて、全く出資関係がないものも含まれているのでしょうか。いずれにせよ50%以下ということになりますと、例えば1つの業務提携先外国銀行を見た場合に、代理とか媒介を手がけたいという銀行が邦銀と外国銀行支店と複数出てくるといった事態もあり得るのかなと思うんですけれども、そういった事態についてはどのようにお考えになってらっしゃるのかというのが1つでございます。

2つ目のご質問は同じく17ページの図なんですけれども、真ん中の図でこれだとやや判然としないんですが、当該現地において支店形態ではなくて現地法人を、邦銀さんの場合、支店形態でなくて現地法人を開設していて、そこが代理・媒介をするということを想定されているのか、それともそうした営業所が全くない国においても、日本国内の営業所を通じて代理・媒介を行うことを想定されているのかというのが2点目でございます。

3点目ですけれども、後段で諮問されているように我が国銀行法で認められている業務に限定する必要があるのかどうかということなんですが、おそらく海外現地で完結する活動ということであれば、この外国銀行代理業務に該当しないと考えられますので、特にそういった限定をする必要性はないのではないかと思われますし、国内の拠点を通じた場合であっても、実質的に国内顧客に向けた代理・媒介ではなくて、海外の顧客に対する代理・媒介ということであれば代理制度に該当しないと考えられますので、業務を限定する必要性というのは低いのではないかなと考えております。いずれにしましても具体的にどのような業務範囲の拡大というのを念頭に置かれているのかというのを、もし何かイメージがございましたらお聞かせいただければと思います。

最後、これはちょっと要望めいたことになりますけれども、その業務提携の提携の主体なんですが、私どものような外国銀行支店の場合ですと提携の主体というのが本店ですとか、海外の兄弟会社といったケースがほとんどでございますので、もし提携の主体というのが我が国の銀行法のもとで免許を受けた銀行だけということに限定されてしまいますと、競争条件の公平性の観点からやや私どもとしてはいかがかなとも思われますので、ぜひその辺、提携主体については外銀の本店とか関連会社といったところも広く含めていただければなというふうに思っております。以上でございます。

○岩原座長

はい、それでは、藤本さん。

○藤本信用制度参事官

資料の17ページの図をごらんいただきたいと思います。この左側にあります外国銀行と邦銀との間には、先ほどのご質問ですが、特に出資関係はないものでもいいということでございます。イメージとしますと、結局、日本に顧客がいます。海外に進出しようとしています。中小企業とか中堅企業とか大企業もあるかもしれませんが、海外進出しました。現地において何らかの金融サービスを受けたいと思っています。国内で邦銀と書いていますが、国内の銀行と顧客との間には何か取引関係がありました。ところが、国内の銀行というのはなかなかこの顧客が進出している現地においては、フルで金融サービスを提供するようなリソースがないといった場合に、外国の銀行との間で業務提携を結ぶことによって、照会するとか、契約を媒介するとか、代理をするとかいったサービスを提供するということでございます。そういうことでございまして、この外国銀行が必ず何かに限られるとか、あるいは、間に立つ金融機関は誰かに限らなければいけないというような制限を加えることを考えているものではありません。

あとは邦銀と書いていますが、日本の銀行ですが、上に何か人の形というか前方後円墳みたいな形がありますが、(笑)ここが何といいますか、考えてみますと支店というのは入るでしょう。実務上の取り扱いによっては何か例えば長期出張とか、そういう場合も何かあるようでございまして、そういったいろんな形態があるのかなというふうには考えております。ただ、それは主な論点の一番下にちょっと薄字で書いていますが、外国における拠点設置義務との関係等もありますので、必ずそういう形態で現地で認められるかどうかという問題はあるかと思います。それから、最後のここに邦銀とか書いてありますけれども、それが例えば外国銀行がこの絵の中でどのように活躍されるようなものにするかというのは、ちょっとここでの議論も踏まえてまた検討したいと思っております。

○岩原座長

はい、それ以外にも外国銀行の業務の問題のところでいかがでしょうか。

大崎さん、どうぞ。

○大崎委員

今の点についてなんですけれども、基本的には私こういうことを認めることについて大きな問題があると思わないんですが、ただ、ちょっと留意しないといかんなと思うのは、外国銀行が日本の免許を受けるということを潜脱するような目的で行うことにも利用されかねないという点は、留意する必要があるんだろうなと思うんですね。そこは監督上気をつけて見ていただくということにおそらくなんだろうと思うんですが、大事な点かなと思います。

○岩原座長

はい、和仁さん。

○和仁委員

17ページの図なんですけれども、これは代理ばかりでなく媒介を海外において行うって書いてありますが、これ日本国内で作業することが出てくるのですが、そこはどうお考えですか?

基本的にはお客さんの意思決定機構というのは、形式的な意思決定は現地なんでしょうけれども、財務とか、経営企画とか、そのような機能は全部東京に置いている場合が多いと思います。だから、そこのところをどうカーブアウトしてあげるのか。基本的にはこれはもう今の時代にこういうことでフレキシビリティを認めなくてはいけないのは事実だと思うのですが、具体的にどう対応するのか。日本国内での媒介業務が起こるところをどう上手に対応するのかということでしょう。やっぱりここでお願いしたいのは、金商法との平仄をとっていただきたいと思うんです。金商法でもここは結構問題になりましたので、日本国内での行動ということも考えていただきたいと思います。

あとはその業務について17ページの場合には代理・媒介が我が国の銀行法で認めている業務に限定する必要はあるかという点ですが、必要がないということになってしまうと、じゃ、それを日本国内で取り次いであっせんする行為ってどう考えればいいんでしょうかねという話になり、10条の付随業務で見ますかという話になります。そうすると、逆に言うと外銀の外国銀行代理店の場合には付随業務はたしか届け出だったと思うんですけれども、そこのところのバランス、ちょっとそこは記憶が今あやふやなのですが、そことのバランスをどうするのかという問題も起きてくるのではないかなと思います。その辺も配慮していただければと思います。

○岩原座長

はい、藤本さん、何かありますか。

○藤本信用制度参事官

おっしゃるように「外国において行われる取引」というふうにシンプルに書いておりますが、一部が日本で行われたらどうするのか、外国で何が行われるからいいのか、ということにつきましては、我が国の顧客の保護も考えつつ、なるべく円滑な取引が行われるように検討していきたいと思います。

○岩原座長

はい、ほかにこの「外国銀行の業務の代理・媒介」及び「海外M&Aに係る子会社の業務範囲規制」について、何かご質問・ご意見ございますでしょうか。よろしいですか。

それでは、本日は皆様に活発なご議論をいただきましてまことにありがとうございました。ほぼ時間も参りしたので本日の審議は終了させていただきたいと思います。

金融業の機能強化につきましては、今回、第7回、委員の皆様よりご指摘いただいた点を踏まえ、主要な論点について事務局に議論を整理していただきたいと存じます。次回、第8回は「大口信用供与等規制」及び「外国銀行支店」につきましてご議論をいただくことを考えております。

それでは、事務局のほうから連絡等ございましたらお願いします。

○藤本信用制度参事官

次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえながら、座長と相談の上、別途案内させていただきます。開催頻度が少し詰まっておりますが、よろしくお願いいたします。

○岩原座長

それでは、以上をもちまして本日の会議を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3692)

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