金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ」(第4回)議事録

1.日時:

平成23年9月26日(月曜日)14時00分~16時10分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○洲崎WG座長

出席ご予定の方は皆さんおそろいのようですので、ただいまより保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ第4回会合を開催いたします。

皆様、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。本日は木下委員、村木委員、米山委員がご欠席となっております。また、吉野会長にもご出席いただいております。

なお、本日は、保険契約の移転単位規制のあり方に係る議論の際の参考人として、アクチュアリーであります、日本生命の川崎様、東京海上日動火災保険の田口様にもご出席いただいております。

それでは、議事に移らせていただきます。本日の議事ですが、保険募集等の委託のあり方及び保険契約の移転単位規制のあり方についてご議論いただきたいと考えております。

それではまず、保険募集等の委託のあり方を議題としたいと思います。事務局より、前回の委員からのご質問に対する回答も含め、資料の説明をお願いします。

○伊野保険企画室長

保険企画室長の伊野でございます。

では、資料のご説明をさせていただきたいと。まず、資料1からご説明させていただきます。おめくりいただきまして、1ページ、保険募集の再委託の是非を検討する際の論点でございまして、これまでの議論を踏まえまして、少しまとめさせていただきました。想定される再委託の形態でございますが、保険募集の再委託については、グループ内の中核的な保険会社を再委託者とすることで、グループ内の他の保険会社にその販売代理店網を有効に活用させたいとする意見がありました。一方で、再受託者に対する十分な監督が行われるのか、再委託を可能としなくても、現行の代理代行の制度を活用することで対応可能ではないかとの意見もございました。主ないただいたご意見につきましては、7ページに記載させていただいておりますが、既に前回ご議論いただいた内容ですので、ご説明は省略させていただきたいと存じます。

次に2つ目のポツでございますが、保険募集の再委託については、これを幅広く認める形態と、今申しましたように、再委託者をグループ内の保険会社に限って認める形態が考えられますが、このうち後者の場合、再委託者である保険会社はみずからが直接委託している代理店に対して適切な監督を行うことが可能であり、これまで出されている規制緩和の要望もこういった形態でございます。このように点にかんがみれば、今後の議論については、再委託全般ということではなく、グループ内の保険会社を再委託者とする形態に限定した上で進めていってはどうかと考えております。

2ページ目に図がございます。前回のワーキング・グループの際に、こういったことが具体的に考えられるという事例としましては、グループ内の中核的な保険会社Aに対して、グループ内で新設した小規模な、例えば比較的ニッチな商品を扱う保険会社Bが保険募集の委託をして、中核会社であるA社の代理店網を使って保険募集を行っていくということが考えられるのではないかというようなご意見がございました。

続きまして、3ページでございます。再委託者をグループ内の保険会社に限定した場合の論点でございます。まず1つ目が、再受託者の選定に当たっての委託者の関与のあり方でございます。再委託をする場合にあっても、保険募集に伴う保険商品の引き受け責任は委託元の保険会社が負っていることを踏まえれば、委託者の許諾を必要とすることにより、委託者も再受託者の選定に関与させることが必要かどうか。

2つ目、再受託者に対する指導・監督のあり方としまして、再受託者に対する直接の指導・監督は再委託者が原則として行うことが想定されますが、この場合、委託者には再委託者、再受託者を適切に監督する上でどのような措置が求められるのか。

3つ目としまして、損害賠償責任のあり方でございます。現行の保険募集人制度では、保険募集人が保険契約者に加えた損害については、所属保険会社が賠償する責任を負うこととされていることを踏まえれば、再受託者が保険契約者に加えた損害についても、より資力があり、かつ、再受託者における適切な保険募集を確保する責任を有している委託者及び再委託者に損害賠償責任を負わせることが適当かどうか。

4として、このほかに、契約者保護の観点から検討すべき論点があるかどうかということでございます。

参考としまして、4ページに現行の規定について記載してございます。まず、現行の保険業法の保険募集の一次的な代理の部分の損害賠償規定が283条でございます。所属保険会社が損害賠償責任を負うということになっております。あと、銀行代理業のほうでございますが、まず所属銀行が、銀行代理業者が加えた損害を賠償する責任を負う。これは一次代理、二次代理ともに負うということになっております。それと、3項のほうで、代理業再委託者も、再受託者の与えた損害について賠償責任を負うという形になってございます。

それぞれに前回少しご指摘がございましたが、所属銀行がしっかりとした注意をして発生防止に努めたときは、その責任を免れるという規定が書いてございます。具体的にどんな場合が該当するのかということのご質問がございましたが、銀行関係の担当にも確認し、我々もそうかなと思いますが、実際問題として、しっかりした監督が行われている場合にはそもそも問題が発生しないんだろうということで、現実的にこうは書いてあっても、責任を免れることは極めてまれではないか、実際は責任を負うのではないかというのが一応我々の考え方でございます。

ページをめくっていただきまして、5ページでございます。業務の委託等に当たり保険会社及び銀行が講ずべき措置としてどのようなことがあるのかということでございます。保険業法においては、保険会社が第三者に業務を委託する場合、銀行法においては、銀行がその業務の一部を銀行代理業者に行わせる場合に、その業務の適切性等を確保するため、それぞれここに書いてある措置を講じるということになっております。

一々読み上げることは省略させていただきます。銀行のほうで下線が引いてございますが、「銀行代理業の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要があると認めるときには、銀行代理業者との間の委託契約・銀行代理業再委託者と銀行代理業再受託者との間の再委託契約の内容を変更し、または解除するための措置」となっておりまして、再委託をする場合には、再委託者と再受託者との契約内容の変更、解除を所属銀行が行うように措置をしなければならないとなってございます。

6ページのほうでございますが、これまで述べさせていただきましたものを、絵も含めて少し説明をさせていただいています。所属銀行、銀行代理業再委託者、真ん中の下でございます。それから、銀行代理業再受託者、これが真ん中の上、そして、顧客といった、そういった順番になってございます。基本的に所属銀行は、代理業の再委託者、再受託者それぞれに健全性の確保措置を図る必要があり、再委託者は再受託者に対して、健全性の確保措置を図る必要がある。損害賠償責任という意味では、所属銀行、再委託者、再受託者すべてが、顧客に対して賠償責任を負っているという形になっております。

下のところに点線で囲いがございます。ここで具体的に、委託契約書、再委託契約書ということで、こういったものが記載例としてありますということでございますが、今まで述べたことが具体的に書いてございますという説明でございます。

7ページは、先ほど申しましたように、これまでいただいたご意見を簡単にまとめさせていただいています。

8ページ以降は、これまで使わせていただいた資料を一部ご参考でつけさせていただいております。

私からの説明は以上でございます。

○洲崎WG座長

続きまして、瀧下委員から、本議題に関して追加の説明を求められておりますので、瀧下委員、よろしくお願いいたします。

○瀧下委員

ありがとうございます。まず、この問題に関する、私ども外国損害保険協会の考え方について、まとめてみました。

私ども外国損害保険協会としては、保険会社にとって、グループ代理店ができることによって、業務の効率化、経費の削減等が図れるとともに、消費者にとっての利便性の向上、商品選択範囲の拡大等のメリットがあるものと考えておりまして、これは私どもの開かれた市場と自由な競争という考え方に合ったものということになります。

自由な競争、開かれた市場という観点からは、さらにいわゆる乗合制度の改革も必要ではないかなと私どもは考えております。特に乗合承認制度というのが商法に規定があることは承知しておりますけれども、私どもの会員である事業者にとって時として障害となっているということでございまして、この辺を含めてさらに改革が必要ではないかと考えております。これが私どもの考え方でございます。

次に、類似の制度がアメリカにもございまして、これのご紹介をしたいと思います。Managing General Agent、MGAということで、アメリカ市場においては広く知られているものでございます。もともとはアメリカの保険会社は東部のほうにありまして、これが西部開拓に従って顧客、市場を西に広げるわけですが、急激な市場の拡大で追いつかない、また通信等も不便であるということで、西部の町の有力者に代理店を委託した。この場合、代理店といいましても、いわば支店の業務を代替するような代理店、これがMGAの淵源となっております。

当初は代理店として普通の代理店と同じ監督をされていたようなのですが、保険会社の監督が適切ではない事例が散見されたということで、これの制度改革がアメリカで行われました。アメリカ保険長官会議でいわゆるモデルアクト、モデル法をつくって、各州に導入を呼びかけたということでございます。

ニューヨーク州では2002年に改革を行いまして、Regulation120ということで知られている条項でございます。まず、MGAの定義をしておりまして、保険会社の業務の全部または一部ということで、全部も含まれております。保険代理店の業務、これは販売を行う。それにさらに、保険金の査定、支払いを行うこと、あるいは再保険の交渉を行う、こういう権限を持っているところをMGAと呼ぶと定義されております。

要件としては、代理店の免許を要する。アメリカの場合、保険の販売はライセンスと呼ばれて、免許制でございます。委託する保険会社が保険当局、監督当局に届け出ること、それと、委託契約書に法律の定める条項が含まれているという、この条件がございます。

何を記載しなければいけないかというのが、(3)以下に書かれているところでございます。引き受けた契約の明細を月1度以上送ること、あるいは保険料も月1度以上送金すること、契約の記録とか会計記録を保持して、保険会社が要求するときはこれが閲覧できること、保険会社の定める引き受け基準に従うこと等々が定められておりまして、この条件を満たさないといけないということになっております。

したがいまして、監督のスタイルからいいますと、代理店。保険販売のところに関しては当局が直接監督しますけれども、いわゆる再委託の部分については保険会社が基本的に監督するという、そういうスタイルをとっているということでございます。

次に、資料5でございます。保険会社が代理店に関してどんなこと、どんな業務を行っているかということを私なりに整理しましたのが、この資料5でございます。右左は観点を変えて整理したということでございます。別のものではなくて、同じことを観点を変えて整理したものでございます。

左側は、どんな業務をやっているかというところで整理しました。まず、代理店。これは当局への登録が必要ですが、そのためにいろいろな業務がございます。委託契約書作成から、代理店登録、募集人の届け出とか、募集人の管理、あるいは資格取得の支援とか、継続教育の実施とか、この辺のところがまずベースになっているわけでございます。

あと、業務の指導がございまして、これは販売の指導。これも、商品の説明、料率の算出の方法から販売の方法等についてのいろいろな日常的な業務指導がございます。

あと、事務指導。契約書の書き方とか、最近いろいろな書類がございますけれども、これはこういうときにこういうふうに渡すんだとかいうような指導をしております。

さらに、お金の管理、保険料の管理ということで、保険料領収書の管理、これはかなり厳しくやっているわけです。

コンプライアンスの関係では、教育研修もやりますし、日常的にこういうふうにやらなければいけません、こういうことはしてはいけませんというような指導もする。

さらに、そのルールどおりに業務ができているかどうかという業務の点検というようなこともやっておりますし、さらに、日常的ではありませんけれども、代理店に行って、きちんとルールに従った業務ができているかどうか監査するというようなことをやっております。

以上のような業務が保険会社のどんな部門で行われているかというのが右側でございます。本社で行われているような業務、あるいは現場で行われている業務というようなところで整理したものが右側でございます。ということで、これには既にいわゆる代理代行で委託されている部分もございます。

この中でどこまでが委託元の保険会社が業務の効率化を図れるかというご質問が出るかと思うのですが、これはその会社の方針等によるかと思います。商品の開発販売だけで特化するんだと考えていれば、ここに書かれているすべてのことは委託可能かと思います。ただ、マーケティングとか、自分のところに留保したいというものがあれば、それはその考えに従って契約上留保していくことはできるのではないかなと思っております。

以上でございます。

○洲崎WG座長

ありがとうございました。

ただいま説明いただいた資料の中、特に資料3と4については、保険会社が再委託者になる場合に限らず、復代理一般についてのお話であったかと思いますし、アメリカの制度も、復代理人に対してどのような監督が行われているかということについてのご紹介であったと思います。事務局からのご説明の最初のほうにありましたように、再委託全般についてではなくて、とりあえずはグループ内の保険会社を再委託者とする形態に限定して議論を進めるほうが議論がしやすいかなと思いますので、さしあたり、今後の議論については、グループ内の保険会社が再委託者となるような形態に限定して進めていただければと思います。

それでは、ただいまの事務局説明等を踏まえまして、ご質問、ご意見をお願いできればと思います。

水口委員。

○水口委員

ご説明ありがとうございました。いろいろ実際の業務のあり方についてもより具体的な事項を整理する余地があると思いますけれども、大枠では、保険契約者保護の観点からの懸念事項を払拭する措置を講じた上でグループ内の保険会社を保険募集の再委託者とすることは、保険グループの総合力の発揮とか、コスト効率の向上とか、サービスの向上につながることも想定されると考えています。

再委託者をグループ内の保険会社に限定して、銀行法の勘案した形で、委託者と再委託者両方が賠償責任を負うこと、所属保険会社の許諾を必要とすること、再受託した代理店についても、所属会社が再委託者と連携して指導し、監督責任を最後まで負うことなどを要件とすることで、委託者による再受託者に対する監督や賠償責任に係る懸念は相当までは払拭できる可能性があるのではないかと思います。

また、こうした制度の改定を生かすグループの経営体制の整備が非常に重要だと考えております。昨今は、複数の保険会社が並列しているグループなどにおいて、IT改革を中核とした業務革新が進んでいて、グループの経営管理の一体性が高まる方向性にあると認識しておりまして、こうした制度改定を生かす、保険グループの経営管理体制の整備を行うということに際して、今はよい機会という考え方もできるのではないかと思います。

委託者による再受託者の適切な監督に向けて、代理店の管理のあり方にかかわる基準などが相応にグループ内で共有化されることを期待するところでありまして、実務的にどこまで落とし込んでいただけるかということには注目するところではございます。以上です。

○洲崎WG座長

小島委員。

○小島委員

前回も発言しましたが、これまでの説明だけでは、再委託で契約者本人にどのようなメリットがあるかが必ずしもはっきりしないところがありました。その点、今回、経営の効率化、事務の効率化という形で、結果的に契約者にメリットがあるというご説明がありました。また、以前にも復代理の問題でいろいろ議論があったため、今回はグループ内に限定するということで見直しが要望されているのだと思います。

これも前回、発言しましたように、現在の銀行代理業を参考にして、委託者が再委託する場合には、委託者の許諾を必要とする、また、再委託者に対して委託者が適切な措置、管理監督も含めて責任を負う、最終的には損害賠償も委託者が責任を負うという要件をつけることであれば、限定的な見直しができるのではないかと思います。ただし、もし問題が出てくれば、直ちに見直しを行うということをも含めた対応が必要ではないかと思います。

○洲崎WG座長

丹野委員。

○丹野委員

前回も意見を申し上げましたが、資料の中の2ページの図で、Bの保険会社、新設の小規模な保険会社が、グループの中核会社に保険募集の再委託をして委託・再委託という構図になるということは、問題がクリアになりましたので、非常にわかりやすくて、ある意味、受け入れやすい部分があるかなと思うんですが、それでも、なおかつ懸念が残っているのではないかと思っています。

というのは、例えばこの図で申し上げれば、保険会社Bが保険会社Aに保険会社Aの代理店を使って保険会社Bの商品を売らせるということなのでしょうが、結局は保険会社Bの商品を知っているのは保険会社Bであって、そういう意味では、保険会社Bの教育なりサポートなしで、代理店にきちんと情報が伝わって、最終的に顧客にきちんとした募集が行われるのかという意味では、遠くなれば遠くなるほど、コントロールがきかないというのは世の中の常でございます。

問題がグループを超えないことがわかったので、そこの部分はクリアになってよかったんですが、今も募集上のトラブルは非常にたくさんございます。それを考えれば、やはりBの商品をBとの委託契約なしにA社の代理店が売るというのが、本当にきちんと適正な募集が行われるのだろうかという、契約者側の観点から見て大変心もとないというのがまずございます。

それから、もし万が一代理店のほうが何かトラブルを起こせば、それはBという会社も引受責任を持つんだというお話は非常によくわかりますが、トラブルは、起きてから防ぐ方法を考えることももちろん大事ですが、問題が起きる前に事前に防ぐのが本来正しいわけで、当然予測されるのであれば、そこの懸念はやはり残ってしまいます。

それから、前回の例で、小規模な保険会社がグループの中核会社にニッチな商品を云々かんぬんとありましたけれども、ほんとうにこれが、保険会社が今、必要なニーズですか。こんなことをしたいために、これだけ面倒なことをやりたいのかがわからない。例えば保険会社Bが非常に複雑難解な商品を販売すれば、保険会社Aが、説明責任をきちんと果たせるのか。ニッチな商品を売る会社がグループの中核会社の販売網を使ってこういうことをやることが消費者側に利便性があると言われると、そうなのかという意味で非常に抵抗感がございます。それから、今まで保険会社が不払い以降とってきた施策の中で、やっぱり募集人、代理店の質の向上が一番に挙げられていたと思います。そして実際には、代理店の数を増やしていくのではなくて、絞っていって、適切なレベルの代理店を維持していこうという方向に今、世の中動いているのだと認識をしています。ポストの数ほど代理店は要らないと。適正な代理店を絞っていくという観点から考えると、このスキームでほんとうに顧客に適正な募集が行われるかに関しては、やはり懸念を持たざるを得ないと考えております。

○洲崎WG座長

後藤委員。

○後藤委員

ありがとうございます。私の考えているところも、今の丹野委員のご発言と基本的に同じなのですが、それをどういう形で実現していくのがベストかというところは少し違うかもしれないところがございます。

私には保険会社にどういうニーズがあるのかということを評価する能力がありませんので、その点は置かせていただきますけれども、保険会社Aがグループの中核会社であって、そこに一番人的資源もノウハウもあるということであれば、リソースの面ではひょっとしたら劣るかもしれない保険会社Bにすべてをやらせるのがいいのかというと、そこには懸念もあるように思います。そうすると、むしろ保険会社Aにしっかり自分が全部を見るんだという責任を課した上で、それで、代理店群を監督させていくのがむしろいいのではないかなということを考えて前回ご発言をさせていただいたわけです。

もっとも、保険会社Aは他人である保険会社Bの商品がどういう内容のものかわかっていないのではないかという懸念があるのは丹野委員のおっしゃるとおりです。そうすると、このような形での募集の再委託をやるのであれば、中核会社であるAは、Bの商品開発であれ、また、最終的には支払うところが一番大事かと思いますので、保険金の支払時に、何を払うべきなのかよくわからなかったということが今後も繰り返されることがないようにするためには、商品の企画の段階から募集はもちろん、支払いの段階まで、全体をひっくるめてAがちゃんと責任を持って代理店をコントロールしていくんだということを要求していくべきではないか、そして、これはおそらく当局による監督によって、確保していくのが適切ではないかと思っております。そこまで手当てがなされることを前提に、こういう制度はあってもいいのではないかと私は思っている次第でございます。

○洲崎WG座長

家森委員。

○家森委員

事務局からの原案に賛成であります。グループ内の保険会社ということに限定して、今ご提案になっている枠組みのどういうところに問題があるかをきちんと捉えて、その弊害をなくす形で進めていくべきだろうと思います。特にそのときには、関与する保険会社AとBの双方がきちんとやるというインセンティブを持つようにするという意味で、トラブルが起こった場合にA、Bにペナルティーが返ってくるということをきちんと仕組みの中に入れていただいたらよいと思います。当局の監視・監督というのも重要ですけれども、基本はやはり保険会社の自己責任でやっていただけるように、悪いことをしたときには非常に厳しいペナルティーがあるという形で進めるのがよいのではないかなと思っております。

○洲崎WG座長

岩井委員。

○岩井委員

2ページの図でございますけれども、お話がありましたように、もともと私ども保険会社間の販売委託ということで2ページの図を想定して、議論させていただいてきたということは前回申し上げたとおりでございます。

今も少しお話がございましたけれども、この図をご覧いただきますと、中核の保険会社Aが、日ごろからしっかりと管理している販売基盤を活用しながら保険会社Bの商品を売る仕組となっており、この点が本件の肝でございます。したがいまして、全体の指導・管理とか再委託者の選定についての委託者の関与の仕方等、3ページの観点がございましたけれども、そこの論議についてはもちろん消費者の方の保護という点ではしっかりした論議が必要でございますけれども、実務的にリーズナブルなものとなるように、慎重にご議論いただき、ご配慮もお願いしたいと思っております。

損害賠償のあり方につきましても、前々回にお話ししたとおりでございます。

今、ニーズの話がちょっとございましたけれども、やはりこれからグループ経営をやっていく中で、どういった形で解決策を見出していくという観点からいろいろな論議がございますので、ぜひとも選択肢を広げさせていただきたいと考えている次第でございます。

○洲崎WG座長

この新しいスキームに対してご懸念もないわけではないようですが、しかし、全体としては、事務局からご提案いただいたような、グループ内の保険会社に限って再委託を認める、また、指導・監督のあり方、損害賠償責任のあり方について、銀行法における銀行代理業での再委託のルールを参考にして考えるというあたりについては、ご賛同の意見が比較的多かったように思います。

ただ、実務的なメリットという点では、損害保険協会のお話では、保険会社Bが代理店と一々と委託契約を結ぶのが大変である、非常にコストもかかるということだったと思いますが、この新たなスキームを使うとすると、保険会社Aと代理店の間の現在の委託契約のままでは多分無理で、保険会社Bが、保険会社Aと代理店の間の契約内容について何か口出しをできるような、そのような再委託契約でなければならなくなると思うのです。つまり、再委託契約はもう1度、全部の、何万あるいは何十万とある代理店と保険会社Aとの間の委託契約を結び直すというか、おそらくは契約内容を修正する必要が出てくると思うのですが、その点は仕方のないことと考えておられるということなのでしょうか。

○岩井委員

中身によると思います。1点ご認識をお願いしたいところは、現在、保険会社Aが代理店に対して販売委託をしている保険種目、この種目については代理店としてしっかりと管理、販売、対応ができるという種目に限ってということであれば、内容によると思いますけれども、大がかりな変更ということはないのではないかなと感じております。

○洲崎WG座長

その点に関してご意見……、じゃ、沖野委員、お願いします。

○沖野委員

その点に関して、資料の3ページの「残される論点」の中で、例えば「再受託者に対する指導・監督の在り方」というのが2の(ⅱ)にありますけれども、この例として、前回、銀行の場合にも挙がっている、Bと代理店の間の契約内容を変更したり、あるいは解約することを少なくとも求めることができるという措置を設ける必要があることが指摘されました。

そのような措置の実現や実効性を確保するためには、まず保険会社AとBとの間で委託契約の中にその条項を入れることは必須です。しかし、A・B間だけ入っていても、Aに解約や変更を実現させることはできません。間接強制なども考えられなくはないでしょうけれども。結局、代理店のほうもそれを承知している、つまり、保険会社Bから解約請求があったときには、Aと代理店の間の契約が解約されてもそれは文句は言いませんというような条項を入れる必要があると思います。

したがって、Aと代理店での間の契約については、そういう再委託を前提とした契約内容へと切りかえる必要がありますし、また、解約の場合も、保険会社A・Bの契約と、それから、Aと代理店の契約が単純に1対1対応であれば、比較的簡単ですけれども、おそらく保険会社Aと代理店の間では、保険会社Bもあれば、Cもあれば、Dもあればということになる中で、Bだけから解除請求が来たときに、その後の保険会社Aと代理店の間の契約関係をどのようにしていくかということもあります。

それから、保険会社Aによる代理店の監督とは、保険会社であることを前提とする限りにおいて、現行法のもとでと同じレベルの監督等が確保されるということですけれども、そうはいっても、既に丹野委員や後藤委員のご指摘のように、保険会社Bの商品を売るということですから、その商品の説明について十分な説明が尽くされるかという点は、再委託の形で1段階踏むことによってやや懸念が出てきます。そうしたときに、情報提供をしっかりと行うための確保措置を保険会社Aと代理店との間でも盛り込んでいかないといけないということがあります。それに、場合によっては、代理店のほうから、保険会社Bの商品についてもう少し説明してほしいとか、もう少し情報をとりたいとか、そういうような話が出てくる可能性もあると思いますので、単に一方方向ではないと思うのです。それを保険会社Bへダイレクトに言えるようにできるのか。この局面でも、いずれにせよ、保険会社Aとの間の契約関係をベースにしますので、その契約関係の見直しは必須ではないかと思われます。

そうしますと、おそらく現在の契約は、少なくともすべて変更する必要があるのではないでしょうか。

○洲崎WG座長

おそらくそうなんだろうと思うんですね。ただ、一たん保険会社Aと代理店の間の再委託契約を、ここでは例えば保険会社Bのほかに、C、D、Eと出てくる可能性があるわけですけれども、再委託契約を、わりと一般的なというか、特定の商品についてのみ再委託契約をするのではなくて、総括的なというんですかね、そういう再委託契約をして、そこにBの商品、Cの商品、Dの商品を加えることができると定めておけば、一度再委託契約を新しく結び直せば、契約の結び直しは1回で済むということでよろしいのでしょうかね。そのあたりは?

○沖野委員

商品ごとに委託する場合に、包括的に委託するということであれば、それぞれ基本的な契約は1本だと思います。多少気になりましたのは、保険会社Aと代理店の間で、今までですと保険会社Aの商品をとにかくまとめてということであったのが、B、C、Dと重なってまいりますと、B、C、Dも含めて大きく1本というふうになるのではないかと。そうしたときに、例えばBだけをその後解約する必要があるということになると、変更の可能性がその後さらに出てくるのではないかというつもりなのですけれども。

○洲崎WG座長

Bの商品を排除する、今後はBの商品は売らないということにしたいという場合に、もともとの再委託契約の中に具体的にB、C、Dの名前が挙がっていると、確かに再委託契約を修正する必要が出てくると思うのですが、B、C、Dの名前を具体的に挙げないような再委託契約を最初にしておくことが可能であれば、再委託契約としては、一括というか、総括的なものを1つ置いておいて、あとは、A・B間、A・C間と委託契約が出てくるたびに、代理店が扱える商品も増えていくと。

そういう総括的なものが可能かどうかというのはよくわからないですが、ただ、それができないとすると、つまり、B、C、Dが増えていくたびに、再委託契約を全部結び直さなければいけない、契約を修正しなければいけない、そのたびに例えば印紙税を払わなければいけないということになると、おそらくこれは損害保険業界の方が考えておられるようなメリットはほとんどないということになってしまうのかなという気はしますので、そのあたりはもうちょっと詰めて考えたほうがいいのかもしれないですね。

はい、岩井委員。

○岩井委員

ありがとうございます。もともと私どもはA、Bとの間でどういう代理店を選ぶかということについて、ある程度包括的な契約を結ぶことを想定しておりました。これは、銀行法と比較される部分もございますけれども、6ページの表と比べますと、何度も申し上げますが、保険会社・保険会社の販売委託ということで、銀行・銀行代理業・銀行代理業とは少し質的に違う部分がございます。例えば、個別に一店一店というのではなくて、包括的に何か取り決めを持って対応できないのかというふうに業界として議論してきた部分がございます。

ただ、今のお話の中で、これが再委託という表現ですと定義の問題もございますが、例えばAと損害保険代理店との間で追加委託というのでしょうか、何かそういったことを委託契約書にする必要があるのではないかというご指摘だというふうに承りましたので、少しこちらについては業界で議論させていただきたいなと思います。

○洲崎WG座長

松山委員。

○松山委員

すみません、実務委員として。去年まで私も実は代理店本部長をやっておりましたから、契約については、今、岩井委員がまさにおっしゃったように、包括的にできるかどうかというのはやや疑問に感じております。少なくとも、現行やっているのは、一つ一つの商品が変われば、その都度その都度契約を結び直していくと。そうすると、経費節減とか効率化というのは一体どの程度とれるのかということは少し疑問が残ります。

それから、申しわけありません、少し議論を戻させていただきますが、それに関連してですが、保険というものは、別に募集だけやっているわけではございません。もちろん募集は極めて大事ですが、募集の後に、収納があり、保全があり、それから、支払いがあると。この一連の流れの中で、安全なり安心なり、これを保障すると、こういう商品でございます。

したがいまして、そういうことの中で、いわゆる元受がきちんと管理できるかとか、あるいは再委託先がきちんと教育できるかという、ここらあたり、募集の教育だけではなくて、保全や収納までしっかりできるかということをどうやって担保するかということが非常に大事な視点であると思います。

我々業界にとってみれば、そのことは、効率化とか、あるいはメリットがあるかもしれませんが、やはり従来の規制緩和の議論の中で必ずもう一方で着目されてきたのは、消費者の目線であると思います。消費者のメリットあるいは消費者の利便性、これがあって、かつ、業界もそのことに対して規制緩和をしていくことによって、お互いにもっとビジネスチャンスが広がると、これが基本であると思いますが、今回のこの復代理に関しまして、どの程度消費者のメリット、これの前進感が持てるかというあたりは、私、業界の実務家の立場としても、いま一度考えなければならないと思っております。

○洲崎WG座長

ほかにご意見ございませんでしょうか。

それではまた、本題については、ほんとうに銀行法のようなルールを採用した場合に、損保業界が考えておられるようなメリットがほんとうに出てくるのかどうか、実務的なところもまた詰めていただければと思います。それでは、本項目についてはここまでとさせていただきたいと思います。

そこで、次の議題であります「保険契約の移転単位規制の在り方」に移りたいと思います。本議題については、後ほど事務局より説明がありますように、さまざまな論点がございますので、本日は本議題を検討する上での前提となる責任準備金の適切な算定について議論し、残りの論点については次回議論をしたいと思います。

また、後藤委員が、本件について最近ご論文をおまとめになっていらっしゃいますので、この場での議論の参考にもなるかと思います。そこで、この機会にご説明をお願いしようと思っております。

それではまず、責任準備金の適切な算定について、事務局より資料の説明をお願いいたします。

○伊野保険企画室長

では、資料2をごらんください。まず、1ページ目、更に検討すべき論点についてということで、論点を事務局なりに整理させていただきました。まず、丸1移転対象契約に係る責任準備金の適切な算定でございます。移転対象契約の集団と残存する契約の集団との事故率の差異等を反映した責任準備金の適切な算定が必要であるが、当該算定の方法等がどのような条件を満たせば、保険契約者間の公平性や保険会社の健全性の観点から問題がないと言えるか。この点についてしっかりとしたことができるということでなければ、そもそも一部に限った移転が成り立たないわけですので、この議論の大前提という論点ではないかと思います。これについては、後ほど田口参考人からご説明をいただけると聞いております。

続きまして、丸2移転後の両当事者の支払余力、丸3有配当契約における配当の取扱いといったものを掲げさせていただいております。これにつきましては、必ずしも全部か一部かということではなく、もともと責任準備金の算定の根拠になるところの全部を移転したとしても生じ得る問題かとは思いますが、こういった形で一部の移転も可能とするという形で契約の移転がよりやりやすい仕組みになると、こういった問題もよりクローズアップされてくるかということで、論点として掲げさせていただいております。

まず、丸2の移転後の両当事者の支払余力ということでございますが、移転後の支払余力について何らかの要件を求めるか。移転元、移転先の、例えばソルベンシー・マージン比率について差があっていいのか、いけないのかといったような問題でございます。

丸3有配当契約における配当の取扱いでございます。これは移転対象契約者の保険契約が寄与した剰余金の取り扱いについてどう考えるか。すなわち、これまで既に生じている剰余金を残る人、移る人でどう分けるのかという問題でございます。2つ目が、移転後に生じ得る将来的な配当水準の差についてどう考えるか。これは移る方の問題だと思いますが、移る前の保険会社と移った先の保険会社で例えば運用力に差があると世の中で認識されているような場合それをどう考えるのかという問題があるのかと思います。

次に、丸4で異議申立手続の在り方。これは手続面の論点でございます。異議申立手続の際、保険契約者に与えられるべき情報(現行は移転契約に係る契約書やその要旨、移転会社及び移転先会社の貸借対照表等)及びその方法、現行は公告という方法が用いられておりますが、これについてどう考えるのか。2つ目が、移転対象契約者以外の保険契約者等は異議を述べることができないことについてどう考えるかという論点でございます。

丸5でございますが、これまた後で少し述べさせていただきますが、販売停止規定というものがございます。移転手続中は移転対象契約と同種の契約の締結を禁止するという販売停止規定がございますが、その存在により、必要な保険の更新等ができず、かえって保険契約者の保護に欠けることとなっているので、当該規定を見直してほしいという要望がなされております。販売停止規定の趣旨に照らした場合、このような指摘についてどう考えるかということについてもご検討願えればと思っております。

2ページ目、移転対象契約に係る責任準備金の適切な算定についてでございます。これまでの主なご意見ですが、移転元の保険会社から移転される契約群団に相当するリスクを適切に算定し、それに見合った責任準備金や資本を確保する必要があると考えるというご意見、現時点でも、技術的には、分割移転される保険集団についてそれぞれの責任準備金を計算することは可能と考えるが、さらに当局の審査において、2つに分けた各集団の損害率等を審査することで適正な責任準備金の算出は確保できると考えるというご意見、破綻とか、撤退といった事例にかかわる包括移転に加えて、健全な会社にかかわる包括移転を視野に入れた適正な責任準備金の算出を担保する仕組みについて議論する必要があるのではないかというご意見でございます。

論点でございますが、現行の責任準備金制度においては、計算の基礎となる予定死亡率等の基礎率につきましては、原則として契約時のものが契約期間にわたって用いられることとなりますが、毎決算期において将来収支分析を行って、不足が見込まれる場合には、追加責任準備金を積み立てるということにされております。このような制度のもとで、保険契約の移転をしようとする際には、責任準備金の計算の基礎となる基礎率を含め、移転時点の状況を責任準備金にどのように反映するのかが問題になると考えられます。

2つ目です。また、同一の予定発生率をもとに責任準備金が算定されている保険契約の一部を移転する場合であって、当該一部の集団の予定発生率が移転前の集団の予定発生率よりも相当程度乖離することが見込まれるような場合には、移転前に積み立てを行っていた責任準備金と同額を移転したのでは将来的に問題が生じることも予想されます。

上記のような場合には、移転対象となる集団の予定発生率を勘案して合理的と認められる責任準備金を算定して、それに対応する資産を移転する等の対応が必要と考えられますが、適切な責任準備金の算定を行う上で具備すべき要件についてどう考えるのかということが論点として考えられます。

3ページに補足で少し書かせていただいておりますが、保険業法では、保険計理人は、毎決算期において、責任準備金が健全な保険数理に基づいて積み立てられているか確認することが義務づけられております。責任準備金の十分性の確認は、日本アクチュアリー会の実務基準に基づいて行われる将来収支分析によって行われ、責任準備金の不足相当額が発生すると見込まれる場合には、追加責任準備金の積み立てが行われるということになっています。まさに、決算期ごとにアクチュアリーの方がこういった作業をされて、しっかりとした準備金が積み立てられているかというのを確認いただいているということでございます。以上が、責任準備金の適切な算定でございます。

4ページは、販売停止規定についてでございます。これは先ほど座長からありましたように、今日というよりは、また次回以降ご議論いただく内容でございますが、これまであまり明確には議論してこなかったものでございます。外国損保協会さんから、これを明確に論点として位置づけてほしいというご要望もいただきましたので、まず内容の簡単な説明だけ本日はさせていただこうと思います。

まず、現行制度でございますが、契約の移転会社は、契約移転の決議があったときから保険契約の移転をしてしまうときまで、またはしないこととなったときまでは、移転をしようとする保険契約と同種の保険契約を締結してはならないとされております。この趣旨でございますが、移転対象契約者を固定するとともに、新たに同種の保険契約を締結する保険契約者が移転会社のほうに残されてしまって、その利益が損なわれることを防止するものという趣旨とされております。

これにつきましては、包括移転の移転手続中は同種の保険契約の締結を禁止する必要があるために、例えば自動車保険で自動車を入れかえた場合の異動処理とか、建物の建て増しで火災保険の保険金額を引き上げるといったことが結果としてできずに、消費者の利便を損なっているのではないかというご指摘がございます。

これにつきましての論点でございます。移転対象契約者を固定しつつ、移転対象契約者と同種の保険契約者が移転元に残されるといった問題を防止するために、現行の販売停止規定にかわる具体的な方策としてどのようなことが考えるのか。仮に販売停止規定にかわる具体的な方策がある場合に、現行の販売停止規定のあり方についてどう考えるのか、必要なのかどうかという点が論点ではないかと考えております。

5ページ以降は参考資料で、これまで使わせていただいた資料を参考につけさせていただいています。私からの説明は以上でございます。

○洲崎WG座長

続きまして、日本損害保険協会より、前回までの議論を踏まえた補足説明及び本日の論点であります責任準備金の適切な算定について、それぞれご説明をいただければと思います。

○岩井委員

それでは、前回、7月にご質問をいただいた点へのご回答と若干の補足をいたします。

資料を1ページめくっていただいて、1ページをごらんください。7月にごちょうだいいたしました質問は上の2点でございました。その際には、各社の機能を再編したり、分割することで、効率化や専門性を高めることは可能であること、また、効率性や専門性が高まることによって、保険料面のメリットやサービス面の向上が可能になっていくと考えていることをご回答させていただきました。

若干補足をいたします。2ページをごらんください。第2回目のワーキングでも取り上げさせていただきました顧客属性別の機能分化を例に挙げまして、ご説明いたします。右の図は総合保険会社であるA社とB社が法人契約と個人契約とに機能を分化した例でございます。

皆様ご存じのとおり、法人と個人のお客様ではお客様のニーズも異なっておりまして、個人のお客様は、わかりやすい商品やライフプランに応じた商品をお求めになられるのが一般的だと思います。一方、法人のお客様は、お客様の業務内容によってニーズにも差がございますので、お客様のニーズに合わせて補償内容を作り込むことが要求されるケースもままございます。また、昨今のお客様のグローバル化の状況もあり、海外進出等に対応させていただくケースもございます。

3ページでございます。このように、お客様のニーズや業務内容が異なりますので、保険会社の社員につきましても、担当させていただくお客様ごとに異なった商品知識やスキルが求められるということになってまいります。具体的には、一覧表にまとめさせていただいております。個人のお客様を担当させていただきますと、家計分野を中心に扱わせていただくこととなり、ファイナンシャルプランナー系の知識などが要求されることになります。また、専業代理店さんの経営相談やご支援をさせていただくケースも多くなり、こういった知識も必要になってまいります。

一方、法人のお客様を担当させていただきますと、お客様のニーズに合致する特約条項をいかに作成するかといったスキルが必要になってまいりますし、語学力や企業財務の知識も重要でございます。また、必要となる契約処理量や確認すべきデータ内容も異なってまいりますので、こういった差は、社員のスキル面だけではなく、システム面にも及ぶことになってまいります。

それでは、4ページをごらんください。法人、個人といったケースを例に取り上げさせていただきましたが、今申し上げましたような差がございます。現在は、1人の社員がそれぞれのお客様に対応できるよう能力開発をしているような状況でございますし、システムも両方に対応できるように設計している現状にございます。仮にお客様の属性別に会社機能を分化することが可能になりますと、社員のレベルアップが図りやすくなり、組織としての専門性も向上してまいりますし、システムをはじめとする各種コストも削減できる部分が増えてまいります。

お客様のメリットは、図の右側に記載させていただきましたが、再編や機能分化による効率性の向上の結果、お客様ニーズに合致した商品やサービスの提供が今以上に受けやすくなるといった直接的な部分と、保険会社の企業価値が向上することによって保険会社の健全性が向上するといった間接的な部分の両方があると考えております。

5ページでございます。お客様のメリットの点で触れさせていただきましたが、ここで、企業価値の向上という点について若干補足させていただきます。経営資源の選択と集中を行わないと企業としての生き残りが難しいといったことが言われてから随分たっておりますが、事業買収や事業譲渡は選択と集中を行う際の有効な手段であります。ページの下に部門の買収・譲渡、会社分割による機能分化の例を挙げさせていただいておりますが、保険業界では、破綻や撤退といったケースを除いた平時では、アリアンツ火災がアクサ損害にペット保険を移転したのが唯一の事例となっております。

6ページでございます。海外との比較を若干行いました。欧米諸国ではもちろんご当局の認可や裁判所の承認等の手続を前提とはしているものの、例えばアメリカでは、州単位で規制が異なっていたり、規程もいろいろございますが、包括移転の単位に制限はないものと私どもは認識しております。また、欧州では、EU域内とはいうものの、国境を超えたクロスボーダーの移転も可能であります。

この2ページで見てまいりましたように、我々日本の保険業界は相対的に自由度が少ない状態になっておりまして、企業価値向上の選択肢も限定されている状況にございます。グループ内の販売代理のときにも申し上げましたが、保険会社にこういった経営の選択肢があるということ自体が企業価値向上や業界への投資インセンティブにつながると思われ、投資家にとっての本業界の位置づけの向上にもつながるのではないかと考えております。

資料7ページをごらんください。ここでは、海外の保険会社の例を挙げさせていただいております。こちらには、わかりやすい例として、全米6位の損害保険会社であるTravelers社と、同じく全米9位のProgressive社のグループ構成を掲載させていただいております。前者は、幅広いラインナップの商品を取り扱う、日本の損害保険会社に近いイメージの保険グループとなっております。後者は、自動車保険、中でも通信販売や、違反や事故を起こした方向けの事故率の高い自動車保険を主力としている保険グループになります。

両者ともそれぞれ顧客属性や保険種目に応じ機能を分けたり、販売チャネルや販売地域別に機能を分けているというような特徴が見られます。先ほど申し上げましたとおり、社員や組織の専門性を分け、お客様のニーズにこたえるため、グループ内の効率性を向上させるために、欧米におきましてはこのような機能分化が広く行われているものと認識しております。

最後に、8ページでございます。この問題につきましては、移転単位の細分化により新たに生じる課題と現行制度でも生じる課題がやや混在しがちなテーマでございますので、ご参考までに、各種課題について、8ページに一覧表の形で私どもなりに整理をさせていただきました。

この中で、「細分化による影響がない」という表現になっておりますのは、新たにマイナスの要素はないと、こういう趣旨でございます。ごらんいただきましたとおり、移転単位を細分化することによる影響も若干ございますが、私どもが以前ご提案させていただいた対策によりまして、手前味噌な面がございますけれども、現行制度の課題と考えられる部分についても、結果として改善に貢献できるところがあるのではないかと考えております。以上でございます。

○洲崎WG座長

それでは、続きまして、田口参考人、よろしくお願いいたします。

○田口参考人

東京海上日動の田口と申します。本日は、損保協会の参考人として出席させていただいております。私からは、「責任準備金の公平な分担に関する論点」をテーマにご報告させていただきたいと思います。

お手元の資料7の1ページをごらんください。ここでは、損害保険会社の責任準備金の体系を整理しております。損害保険会社の場合、大きく分類して4種類ございます。東京海上日動社を例にとって大体の残高の割合を申し上げますと、普通責任準備金が約3割、異常危険準備金が約2割、積立保険等の責任準備金が約5割を占めております。なお、現在のところ、危険準備金の残高はございません。

1つ目の普通責任準備金は、未経過部分に対応する保険金等の支払いに備えるための準備金です。丸1の未経過保険料は、収入保険料のうちの未経過部分でして、丸2の保険料積立金は、長期第三分野に関して、保険数理に基づき計算したものです。これらの合計額と丸3の初年度収支残のいずれか大なる金額を普通責任準備金として積み立てております。

2つ目の異常危険準備金は、地震、台風等の異常災害に備えるための準備金です。

3つ目の危険準備金は、予定利率等の特定のリスクに備えるための準備金です。

4つ目の積立保険等の責任準備金は、積立保険の満期時の支払いに備えるための準備金でして、払戻積立金は満期返戻金のファンド、契約者配当準備金は契約者配当のファンドになります。なお、後者は個別の契約者に割り当て済みの部分と未割り当ての部分とに区分されます。

2ページにお進みください。ここでは、責任準備金の算出方法と分割計算の可能性を整理してございます。なお、算出方法については技術的な内容になりますので、ごく簡単にご説明させていただきます。まず、1の普通責任準備金のうちの未経過保険料ですが、これはいわば収入保険料を期間按分したものです。これは現行決算の中で契約単位別に計算しておりませんが、簡単な算式ですので、契約単位別に計算することは可能です。これを丸印で表現いたしました。

次に、保険料積立金ですが、これは複雑な保険数理に基づきまして、契約ごとに算出しております。すなわち、現行決算の中で契約単位別に計算しております。これを二重丸印で表現いたしました。

一方、初年度収支残は、責任準備金の算出単位、これを一体として見た計算、いわばバルク計算を行っておりまして、契約単位にひもづけるために、何らかのみなし計算が必要になります。これを三角印で表現いたしました。

次に、2の異常危険準備金と3の危険準備金ですが、これらの責任準備金の算出単位を一体として見た計算を行っておりまして、契約単位にひもづけるために何らかのみなし計算が必要になります。

最後に、4の積立保険金等の責任準備金ですが、払戻積立金と契約者配当準備金の割り当て済みの部分につきましては複雑な保険数理に基づいて契約ごとに計算しておりまして、現行決算の中で既に契約単位別に計算しております。ただし、契約者配当準備金のうちの未割り当ての部分につきましては、契約単位にひもづけるために何らかのみなし計算が必要になります。

なお、先ほどのご説明のとおり、損害保険会社の場合、二重丸と丸が大部分を占めておりまして、東京海上日動の場合では約8割がこれに該当いたします。

3ページにお進みください。ここでは、責任準備金の分割計算の可能性についてさらにご説明申し上げたいと思います。先ほどのページで三角印、すなわち、みなし計算が必要なものとして、ここに記載しました4種類のものがございましたが、ここでは初年度収支残と異常危険準備金の分割イメージを記載しております。

初年度収支残ですが、ある責任準備金の算出単位において、仮に丸3初年度収支残が、丸1未経過保険料と丸2保険料積立金の合計額を上回る場合であっても、これは契約単位に分割することが可能な丸1丸2のかわりに積み立てているものですので、例えば当該上回る金額を丸1足す丸2の金額で比例按分することで、適切に集団別に分割できると考えます。

次に、異常危険準備金ですが、例えば過去の収入保険料等をもとに、分割後の集団別の寄与度を計算し、それに応じて集団別に分割することができると考えます。

最後に、4ページにお進みください。ここでは、先ほどお話のございました、恣意的なリスク選択を防止するための追加措置について考えてみました。私どもといたしましては、包括移転時に移転単位を細分化する際に、ここにございます措置案の内容を認可の条件にしてみてはいかがかと考えます。

具体的には、ある責任準備金の算出単位について、包括移転の対象となった集団、包括移転の対象とならなかった集団別に算出した責任準備金のいずれかが不足する場合、例えばどちらかの集団の損害率が高い場合、当該集団について、包括移転の直前に追加的な責任準備金を積み立てるとともに、移転先の会社または移転元の会社の保険計理人がこの部分も含めて責任準備金の適正性を確認するということにしてみてはいかがかと考えます。

なお、これは下段に参考として記載させていただきましたが、現行の決算における制度を参考にしたものでして、現行、責任準備金が不足する場合に、会社決算の中で追加責任準備金を積み立てるとともに、保険計理人が責任準備金の適正性を確認することになっております。お時間の関係もありますので、詳細は省略させていただきます。

私からのご報告は以上です。ご清聴ありがとうございました。

○洲崎WG座長

ありがとうございました。

それでは、責任準備金の適切な算定に関して、ご質問、ご意見をお願いできればと思います。

阿部委員。

○阿部委員

非常にわかりにくい話なのですが、2つご質問させてください。先ほどご説明の資料で、3ページの異常危険準備金の分割イメージですが、これはみなし計算をもとにまたみなしをするという、みなしが重なるということになるのではないかということです。

それから、4ページに、いずれかが不足する場合については追加的な責任準備金を積み立てる、とございます。この追加はいいのですが、全体の総和は分けた方と残った方で常に同じであればいいはずなのに、片方だけプラスしてしまうと、全体では過大な積み立てになるのではないでしょうか。

○洲崎WG座長

では、田口さんよろしゅうございますか。

○田口参考人

異常危険準備金のみなしのところの計算ですが、異常危険準備金は、例えば収入保険料の一定率というような形で積み立てておりまして、今現在積まれている異常危険準備金がどういった集団から生じたものかというものについて、ある程度合理的なみなし計算ができるのではないかと考えております。

それから、全体としての総和が同じではよいのではないかというお考えについてですが、確かにそういった考え方で整理するというのが1つだと思います。あともう1つは、個別の契約者について積み立てた責任準備金について、会社としての総額を一定にするために、個別の契約者単位で積み減らすということになりますと、契約者の保護の観点から問題がもしかすると出てくる可能性があるので、ここではどちらにすべきかとは書かずに整理をさせていただいたものであります。以上でございます。

○洲崎WG座長

阿部委員。

○阿部委員

契約者保護のために多少多目に積み立ててもいいとは思いますが、その場合、課税の問題が生じるのではないでしょうか。

○田口参考人

その点については、現行の決算の責任準備金においても、損金算入がされている部分とそうでない部分とがございます。例えば追加責任準備金を積み立てた場合には、その部分については有税扱いになるのではないかと思います。

○洲崎WG座長

よろしゅうございますか。

では、水口委員。

○水口委員

移転対象契約にかかわる責任準備金の算定の適切性の確保に向けて、本来であれば、経済価値ベースで責任準備金を算出することがよいのではないかと思います。移転される契約集団の契約時の計算基礎となる予定発生率を移転時の発生率が相当程度上回る場合などについては、将来に問題のあることも想定されるので、足元の発生率などを用いて算出した責任準備金額とそれに対応した資産を移転することが重要だということだと理解しています。

とはいっても、経済価値ベース評価についてはフィールドテストを実施している段階であり、制度化には至っていないことから、その代替策として、実務家のほうからご提示された追加責任準備金のアプローチも一定の妥当性はあると考えます。このアプローチを適用する際に、責任準備金の算出が適正であるかどうかは、一部移転に際して、移転先会社及び移転元の会社双方の保険計理人が確認することで、その判断の独立性が一定程度強化されることもあるかもしれないと思います。

将来収支分析の結果、お話が先ほどありましたように、一部包括移転の対象となる責任準備金の算出単位のうち、包括移転対象となった集団と包括移転の対象とならなかった集団のどちらかにおいて積み立て不足が判明した場合に、移転前に積み立て不足を追加責任準備金によって充当した後に一部移転することは、それなりにそうかなと思います。

一方で、経済価値ベース的な発想からいたしますと、一部移転にかかわる契約集団の契約時の基礎率に基づく責任準備金額が移転時の将来収支分析に基づく評価額を上回った場合、その余剰部分というのはリスクバッファと位置づけることも可能だと考えておりまして、この余剰部分をどう取り扱うべきか整理する余地はあると思います。

ここは責任準備金の適正な計算ということとまたちょっと話は別になってしまいますけれども、先ほど有配当契約についても一応ご指摘はありましたけれども、消滅配当の原資となる移転対象契約の過去からの保険契約の寄与分計算とか、未割り当ての配当を含む移転後に生じ得る将来的な配当水準についての公平性の確保に向けた考え方の整理というのは容易ではないと思いますので、今回の審議における有配当保険の取り扱いをどうするかについては考える余地もあるのかなと思います。以上です。

○洲崎WG座長

瀧下委員。

○瀧下委員

細かな点までいろいろご議論いただいているんですけれども、私が考えているのは、移転する側も移転を受け入れる側も経営者ですので、お互い損をしたくないはずですので、事細かく決める必要があるのかなと。場合によると、ある保険会社のある保険種目についてはうまくいかずに赤字を出していますと。それをその専門会社に移転することで利益が出てくるということもありまして、そうした場合は、保険契約者にとってもそのほうが有利なはずですし、その辺のいわゆるポートフォリオとしての価値というのは必ずしも基準の価値ではないのではないかなということで、基本的にむしろ市場に任せるほうが妥当かなと私としては考えているところです。

○洲崎WG座長

移転会社と移転先会社が完全に独立したアームズレングス取引であれば、確かにどちらも損をしたくないということで、市場に任せるというのも1つのやり方かもしれませんけれども、必ずしもそうではなくて、グループ間で移転させると。親会社と子会社で、親会社の意向に従って子会社が損を引き受けざるを得ないというようなこともありますので……。

○瀧下委員

そのとおりです。

○洲崎WG座長

むしろこの問題が出てきたのはグループ内のお話だったと思いますので、そのあたりはやはり慎重に考えていく必要があるかなと思います。

それから、ただいまの責任準備金の話は、責任準備金以外の自己資本をどういうふうに分けるかということとは全く別の話で、本日のご説明では自己資本の話は出てきていないということです。これは水口委員もご指摘になられたところですが。

○水口委員

そうですね。まさに経済的実態としての実質な自己資本当たるようなバッファをどう分けるかというところにもつながっていくところではあると思います。

○洲崎WG座長

それはおそらく保険業法の規定だと、これは認可のところで全部やると。それも、当該保険契約の移転が保険契約者等の保護に照らして適当なものであることという一般的な基準で考えましょうということなのかなという気がするのですが、果たしてそういう一般的なルールだけ済むのかというのがおそらく今、問題になっているところなんだろうと思います。

責任準備金のお話はかなりテクニカルなお話で、また今後疑問点が出てくることもあるかと思いますけれども、そのときはそのときでまたご質問いただくということで、とりあえず本日はほかにもまだ予定しているところがございますので、責任準備金のお話についてはここまでとさせていただきたいと思います。

先ほども申し上げましたように、後藤委員が本件に関して論文をまとめておられまして、近々正式に公表される予定であるということを伺っておりますので、そのご研究についてご説明をお願いできればと思います。それでは、後藤委員、よろしくお願いいたします。

○後藤委員

お時間をいただき、どうもありがとうございます。生命保険文化センターさんのほうで2年ぐらい前から保険会社の事業再編に関する研究会がありまして、私もそこに出席させていただいていたのですけれども、そろそろ報告書をまとめろということになり、私がたまたま包括移転に関する論文を執筆しましたので、そのお話を洲崎先生にしたところ、せっかくなのでということで報告の機会を頂いた次第でございます。

資料が事前の配付に間に合わずまことに申しわけございませんでした。資料8を席上で配付していただいているかと存じますので、適宜ごらんいただければと存じます。

お話しさせていただくのは、まず保険契約の移転単位規制がそもそも何のためにあるのかということについて、現在もそれなりの議論はあるわけですけれども、それを立法当時にさかのぼって、どういうことが言われていたかということを調べたというのが第1点でございます。これに加えて、外国、とりわけ規定が整備されている、ドイツ、イギリス、アメリカについて、これらの国で日本の保険契約の包括移転に相当する制度についてどういう規律が今現在なされているかということを概観した上で、今回の議論に際してどういう論点を考慮すべきかということを私なりに整理させていただければと思っております。

まず手始めに、現在、保険契約の移転単位規制についてどういう趣旨のものであると理解されているか、また、その緩和をめぐってどういう議論がこれまでなされてきているかということを簡単に確認しておきたいと思います。

何代か前の保険企画室長であられたかと思いますが、安居孝啓さんのご著書においては、移転単位規制の趣旨は、保険契約集団を維持して、また、保険契約者間の公平性を確保する点にあると説明されております。その他の文献も大体同じような説明がされているわけでありますけれども、これらは何となくわかるような気もするのですが、具体的に何を問題にしているのかいまひとつよくわからない、不明瞭な説明であるように思われるところでございます。

また、もし契約集団を維持し、また、契約者間の公平を確保すると、それが重要なことなのであれば、保険契約の包括移転によらずに、移転させたい契約者と保険会社が個別に合意をすることによって、一部の保険契約だけを移転するということも禁止されなければならないようにも思われるわけです。安居さんのご著書では、だから禁止されるという解釈が一般的であろうとされつつも、保険業法の文言上はそういうことは禁止されていないということなどを理由に、これは禁止されていないのだという解釈も十分に成り立ち得るとさせていきたいというところでございます。

安居さんは、現実にこういう個別の同意をとるということは実務上あり得ないので、問題はなかろうとされていて、それはそのとおりなのですけれども、移転単位規制の趣旨とその射程が不明瞭であるということは、移転単位規制の緩和の是非を考えるに際しては問題となってくるように思えるわけでございます。

また、平成19年の金融審議会金融分科会第二部会でこの問題が取り上げられたことがあるのですけれども、そこでの議論は既にこの部会でもご紹介があったかと思います。契約集団の維持や公平性の確保という趣旨に即した議論として、資料8の2頁の下側に掲げた1つ目と2つ目のようなものもあったのですが、それ以外にも、保険契約者の意思に反して契約移転ができるという包括移転制度のそもそもの意義を問題とするような意見、3つ目と4つ目などですが、そういうものなどもありまして、どのように議論していくべきかがやや錯綜していたようにも思われるところでございます。

そこで、3ページ目になりますけれども、まず、移転単位規制はそもそもどういう目的で設けられたものであるのかということを調べてみたところでございます。移転単位規制は、明治45年の保険業法改正において包括移転制度が導入されたときから存在しているのですけれども、驚くべきことに、当時の文献、帝国議会の議事録や当時の所管省庁である農商務省の担当官による解説、またその他の学術論文などですが、それらを見ても、どこにも移転単位規制の趣旨がこれだというのは説明しているものは存在しておりませんでした。契約集団の維持とか公平性の確保という説明は、立法当時にはなされていなかったわけでございます。

唯一手がかりになりそうなのが、そこに掲げました、松本烝治博士の保険契約の包括移転制度が導入されたことの意義に関する説明でございます。当時は、経営状態が苦しくなった保険会社が少なからず存在したようですけれども、その当時の保険業法によると、保険会社が苦しくなって解散すると、保険契約は一定金額の払い戻しがなされるだけで当然に消滅してしまうこととされておりました。それだと保険契約者は困ってしまいますから、保険契約者を保護するためには保険契約を他の事業所に移転する必要があると。この場合に個々の契約者の承諾を得て移転するということはもちろん可能なのだけれども、これは大量の契約がある場合には面倒であるということが指摘されていたわけでございます。この松本博士の議論は、保険契約の移転単位規制に特別の意義を認めていない一方で、個別の承諾による契約移転を認めているという点で、現在の議論と好対照となしているようにも思われるわけです。

ここから、あくまで私の推測なのですけれども、保険契約の包括移転制度に移転単位規制がかけられているのは、民法上の原則からすると、やはり契約の移転には本来、契約当事者の承諾が必要であるところ、それを不要とするという非常に例外的な手続、例外的な制度をつくるに当たっては、例外なのだから、その利用は、当時の観点からして必要性の高い場合に限定しようとしたのではないだろうかと思われるわけでございます。

また、明治45年の改正時にも外国法を参照していたと思われるわけですけれども、その当時の外国法の中では、ドイツだけが保険契約の種類ごとの移転単位規制を設けておりました。日本の移転単位規制とは規定ぶりがちょっと違っておりますので、このドイツの規定が沿革であるとは明言されていないんですけれども、影響を受けていた可能性は低くないと思われますので、念のために当時のドイツの議論を見てみました。

しかし、ドイツにおいても、立法草案の理由書や当時の注釈書などですが、そこでも移転単位規制の趣旨の説明は存在しておりませんでした。当時のドイツにおいては、包括移転のような手続を利用する場合にも個々の契約者の同意が必要であるという解釈論が主流だったようですので、先ほどの松本博士のような意義づけもできないので、結局、ドイツが何を考えていたのかということはわからずじまいなわけでございますが、ドイツでも日本のような集団の維持とか公平性ということがこの当時に言われていたわけではなかったということでございます。

また、ドイツはその後、ECの指令を国内法化する際に、移転単位規制をあっさりと廃止しております。その当時に移転単位規制を廃止するということをめぐって大きな議論があった形跡もあまり見受けられませんでした。

ただ、その際に1つだけ指摘されておりましたのは、移転対象契約は自由に選べるのだけれども、そうはいっても、客観的な基準で選別されている必要があって、恣意的に構成されたものであってはならないという説明がございました。これは先ほどの損保協会さんからのご説明にもございましたが、日本でも契約者間の公平性という趣旨に絡めて議論されることのあるような、リスクの高い契約だけを残してほかの契約だけを移すのか、もしくはリスクの高い契約だけを移すのか、そういったことを問題とするものではないかと思われるところでございます。

このように、今現在言われている保険契約集団の維持という趣旨は、昔は言われていなかったわけですけれども、それが初めて指摘されたのは、昭和14年の保険業法改正にも関与された三浦義道さんという方による、昭和14年改正の解説かと思われます。そこでは、保険契約集団を細かく分けると、分けることによって危険の集積度合いが少なくなり、そのことによって大数の法則の効きが悪くなって、その結果として移転会社に取り残される保険契約団体の危険が増加して、移転会社の経営状態に影響してしまうということがあるので、移転単位規制があるという説明がされていたところでございます。

昭和14年の改正では、移転単位規制自体については何も変更されておりませんので、このような観点が突然示されるに至った経緯は明らかではございません。1つの可能性としては、同年の改正で、包括移転があれば十分であろうということで、保険会社による営業譲渡が禁止されたのですけれども、この営業譲渡の禁止によって、営業譲渡プラス保険契約者の個別の同意という形での契約移転をする余地がなくなったことがひょっとしたら影響しているのかもしれませんが、これもあくまで私の推測でございます。

またその後、1986年の時点での当時の大蔵省銀行局保険部のスタッフによる解説書の中では、保険契約者間の不公平を防止するという趣旨が移転単位規制の趣旨として掲げられるようになっています。すべての文献を網羅できているわけではありませんので、ひょっとしたらもっと早い時期からこういう指摘があったのかもしれませんが、このような理解が登場した経緯もあまり明らかではありません。

以上のように、保険契約の移転単位規制の趣旨は結局不明瞭なままなのですけれども、立法時の包括的な制度の必要性に関する議論をあわせて読むと、保険契約者の同意がなくても保険契約を移転できるという例外的な手続を必要性の高い範囲で限定的にのみ認めるという点にあったようにも思われるわけでございます。

そうすると、今回の議論に際しては、まず保険契約者の同意によらずに保険契約を移転できるという例外的な手続をどの範囲で利用できるようにするかということを考える必要があると思われます。今回の損保業界さんからご指摘のある、販売チャネルとか、顧客属性などを単位とした事業再編等は、それによって保険会社の効率性が向上して、その結果、保険料の低下などが行われる余地はおそらく理論上はあり得るところでして、それは十分意義のあることかと私自身は考えておりますが、それは明治45年当時に指摘されていた、経営状態の悪化した会社から契約を移してもらわないと契約が消えてしまう、それは契約者にとっても困るという問題と比較すると、やはり保険契約者の享受する利益が間接的ではあるように思われるわけでございます。

そこで、このような場合にも例外的な手続の利用を認めるべきかどうかということが問題となってくるわけでございますが、ただ、例外的な手続の利用をどの程度広く認めることができるかということは、その例外的手続が原則からどの程度乖離したものであるかということにも依存する問題であると思われますので、例外的手続の例外の度合いもあわせて考える必要があるかと思われます。平成19年の金融審議会においてなされていた議論は、このような観点から評価することができるのではないかなと思われるところでございます。

また、これまでの検討からは、保険契約集団の維持や契約者間の公平性の確保という観点は沿革的にはどこから出てきたかわからないものであると指摘をさせていただきましたけれども、これらの契約集団の維持や契約者間の公平性の確保という観点を考慮する必要性自体がなくなるというわけではないとは思われます。

ただ、やはりこれらの観点は、移転単位規制に元来期待されていた機能ではないとすると、これらへの対処の方法が移転単位規制に限られるわけではないということも同時に示唆されるかと思われます。特に公平性の確保という観点については、具体的に何に関する公平性をどのように問題としているのかが明らかにされないと、具体的な代替的な規定を検討することもできませんから、その点を具体化する必要があると思われるところでございます。

そこで、どういった対処の仕方があるかということを見るために諸外国を見てみる必要があるわけですけれども、まず、ドイツを見てみたいと思います。ドイツでは保険監督法14条において保険契約の包括移転が規律されているわけですけれども、そこでは、保険会社は監督当局の認可を受けることで、有する保険契約の全部または一部を移転できるとされております。先ほどもご説明した移転対象契約の選別基準に関する客観性の要請はあると解されているようなのですが、それ以上の移転単位規制は存在しておりません。

また、先ほどご紹介した1901年の時点の古い学説では、当局の認可があっても移転される保険契約者の同意が必要であると解されていたようですが、その後次第に学説が、当局の認可があれば保険契約者の同意は不要であるというように変わってきて、現在はその旨が条文上明記されているところでございます。また、日本のような異議申立手続も存在しておりません。他方で、個別の同意によって保険契約を移転することは排除されておらず、その場合には当局の認可は要らないとされています。

そうすると、ドイツで重要になってきますのは、当局の認可がどういう場合に認められるのかということですけれども、条文上は4点規定されております。まず伝統的に規定されていたのが、8頁の1つ目の被保険者の利益が保護されていること。その例として、注釈書などでは、移転される契約に対応する引当金とそれをカバーする資産がともに移転されていること、日本でいえば、責任準備金とそれに対応する資産の承継という観点かと思いますが、そういうものが挙げられています。

また2つ目が、保険から生じる義務が永続的に履行可能であることということで、具体的には、移転先の会社が契約移転後にソルベンシー・マージンをしっかり持っているかということが問題とされているようでございます。

以上が伝統的にあったものですけれども、これだけでは移転先の会社に強制的に移転されることとなる被保険者の財産権の保護として不十分であるという連邦憲法裁判所の判決が2005年にありまして、それを受けまして、2007年に丸3と丸4という2つの要件がつけ加えられるに至っております。

3つ目は、相互会社の社員の契約が移転されるときに、その移転によって社員権を失う場合には、その社員権の代償が必要であるというものです。おそらくより重要となってきますのが4つ目で、配当のある保険契約について、その配当を受ける権利の価値が減少しないことというものがつけ加えられるに至っております。

配当については、先ほどの憲法裁判所の判決は、移転先会社に移転されてしまう被保険者の権利を問題としていたのですが、立法化するときに、ついでに移転先会社に元々存在していた被保険者の配当についても保護するという立場がとられたようでございます。

この配当に関する保護は、少なくとも文言上は非常に厳格なものとなっておりまして、政府草案の理由書を見ると、将来の期待利益による配当までもが保護されているようでありますが、ただ、実際の認可でどのような場合にこの保護があると判断されているのかというところについてまでは、申しわけありませんが、調べるに至っておりません。

以上のドイツの制度は、個々の保険契約者、被保険者に異議を述べる機会は全く与えていないという点で、非常に強力な民法上の原則の例外を認めている手続なのですけれども、その利用は目的や移転単位規制によって制約はされておりません。このような強力な手続を正当化する役割を担っているのが当局の認可になるわけですけれども、認可の要件に関する条文上は、移転元の会社に残る契約者とか、または移転先の元々の契約者の利益も保護されているようにも読めるのですけれども、これらに関する具体的な議論を見ますと、主に移転会社から移転先会社へと移転されてしまう保険契約者の保護、特に保険金支払い可能性の確保や、また、移転元にとどまっていたとすれば受けられたであろう配当の確保に主眼が置かれているように見受けられるところでございます。

次に、イギリスでございます。イギリスでは、保険契約の移転は保険事業の事業譲渡という形で行われるようでして、これを記述するのが金融サービス市場法の第7編と、それについて具体的な手続などを定めているFSAハンドブックによって規律されることになっておりますが、移転単位規制はここでも存在はしておりません。

イギリスでは、事業譲渡については、その事業譲渡計画について裁判所の承認があることが効力要件だということになっております。では、裁判所の承認がどういう場合に認められるかというと、先ほどのドイツと同様で、まず譲受会社が事業譲渡後に必要なソルベンシー・マージンを有していること。これはEUのディレクティブで要求されているものなのですが、それに加えて、あとは裁判所がすべての状況を考慮して適切であると判断したことという、非常に茫漠とした要件が定められているわけでございます。

また、重要な仕組みといたしまして、譲渡会社や譲受会社から独立した専門家――会計事務所やアクチュアリーファームが選任されることが多いようですが、こういう独立専門家が事業譲渡契約について評価をした報告書が提出され、裁判所はこの報告書の内容を見て、承認するかどうかを判断するという建付けとなっております。どういう報告書であるかということは、すぐ後でご説明をすることにさせていただきまして、先に制度の全体像を見ておきます。

裁判所に承認申請をした会社は、まず譲渡会社及び譲受会社のすべての保険契約者に対して、こういう事業譲渡をしますという事業譲渡計画の内容と、あと、先ほどの独立専門家による報告書の要旨を記載した通知をしなければならないということになっております。これを見て、みずからに不利益があると考えた契約者には、裁判所の審問を受ける機会が確保されているということでございます。

また、裁判所が承認をした場合であっても、移転される契約者が移転したくないという場合には、裁判所の定める期間内に解約をすることが認められております。これらの点で、保険契約者の意思を反映する仕組みを備えていないドイツとはかなり異なっているのですけれども、ただ、保険契約の継続を望む場合には、契約を移転するしかないという点では、ドイツと大きく異なっていないという評価も可能かもしれません。

では、イギリスの裁判所の承認がどうなっているかということですが、裁判所の承認の要件は、先ほど申し上げたように、移転先会社のソルベンシー・マージンの点以外は、裁判所が適切と思ったときというだけでやや不明瞭になっているわけですが、イギリスの制度がどういう点を重視しているのかということは、事業譲渡報告書に何が記載されているかというところからうかがい知ることもできると思われます。

事業譲渡計画報告書の内容の詳細は、FSAハンドブックで定められています。そこには、独立専門家がほんとうに中立的な人かということなど、いろいろな項目があるのですが、重要であると思われますのは、資料の文字が細かくて恐縮ですけれども、10頁の上に書きましたように、譲渡会社から譲受会社に移転される保険契約者、移転されずに譲渡会社に残る保険契約者、譲受会社の元々の保険契約者という、3つの主体のそれぞれについてこの事業譲渡計画がどういう影響を与えるのか、その影響に関する独立専門家の意見を書けということになっている点でして、これが非常に重要であろうと思われるわけでございます。

この意見は、さらに細かく分けてつけることになっております。10頁に列挙させていただいた項目ですが、例えば上半分の丸4で、保険会社の保険金の支払能力のようなものが問題とされているほかにも、上の丸5として、保険契約者に対するサービスの水準がどう変わるのかというような点とか、また、生命保険の場合には、保険契約者の配当に関する期待、上の丸5の保険契約者の合理的な期待というところとか、または下半分の丸1番から丸5番までといったあたりで、配当に関する期待への影響も考慮すべきものとされているのが注目されるところでございます。

ただ、もっとも、配当の点についていいますと、先ほどのドイツでは、認可の要件として非常に厳格に保護されているように見えたわけですけれども、イギリスでは、先ほど申し上げましたように、承認の要件自体は、裁判所が適切と思ったかどうかということだけでして、配当などに対する考慮も、考慮要素であるということは十分にわかるわけですが、裁判所がどの程度であれば適切であると判断するのかということはちょっとわからないところでございます。

比較法の最後にアメリカを取り上げたいと思いますが、アメリカの保険に関する法規制は州や法域によって異なっておりますので、これをすべて網羅的に紹介することはできません。ここでは、17の州で採択されております、全米保険監督長官協会、NAICの総括引受再保険モデル法というものをご紹介したいと思います。

ここでいう、総括引受再保険契約というのは耳なれない言葉なのですけれども、移転会社の保険契約上の債務を移転先会社に移転して、移転元のほうの債務が消えて、移転先会社だけが保険契約者に対して直接的に負うようになる契約のことで、結局、保険契約の移転と変わらないわけですけれども、アメリカでも移転単位規制は存在しておりません。

アメリカの特徴的な点としては、総括引受再保険や当該州の保険監督長官の事前の承認が必要であるということ、こういう当局の認可のようなものは各国ともあるわけですが、当局の認可のほかにも、保険契約者に契約の移転を拒絶する権利が認められていて、拒絶をすると、移転が行われずに、元々の移転元の保険会社のところで保険契約が継続するということになる点がドイツやイギリスとは大きく異なっているところでございます。

このように、保険契約者の意思の反映を非常に重視しているわけなのですけれども、他方で、手続を円滑に進めるために、保険料を移転先の会社に支払ったとか、または一定期間が経過しても何の文句も言ってこないという場合には、移転を承諾したものと擬制するという制度が存在しています。また、経営状態が悪化した保険会社の清算や再建のために総括引受再保険が行われる場合には、迅速な手続が必要であろうということで、保険監督長官の承認や保険契約者の拒絶権なしに移転をするということが認められているところでございます。

アメリカで保険監督長官の承認がどういう場合に認められているかというと、イギリスと同様に、要件という形ではなくて、あくまで考慮要素という形なのですけれども、この要素としては、移転会社及び移転先会社の財務状況とか、また、12頁の丸3のあたりですが、移転先会社に移転される保険契約がどのように管理されるのか、そういったものが挙げられているところでございます。

次の13ページですけれども、アメリカでは、先ほど申し上げましたように、移転される保険契約者に対して拒絶権が与えられているわけでして、その拒絶権を適切に行使できるようにするために情報提供をする必要があるということで、移転するよという移転の通知を行うことになっているのですけれども、その通知に記載すべき事項もしっかりと定められております。

例えば丸10で、拒絶を簡単にできるようにするために、印をつけて送り返せば済むようなはがきを同封しなさいということが定められています。このほかにもさまざまな情報の記載が要求されておりますが、それを見ると、保険契約者が移転を拒絶する理由としてはさまざまな観点――支払い可能性のほかにも、配当とかサービスとかいろいろなものがあるとは思われるのですが、移転通知に記載されている情報としては格付とか四半期の貸借対照表とか、またMD&Aなど、移転会社及び移転先会社の財務状況に関する情報が多く、そういう点からは、モデル法自体は、保険金の支払可能性が低下してしまうのではないかということが保険契約者の主たる関心事であるはずだと想定しているものだと思われます。

以上で、駆け足で、ドイツ、イギリス、アメリカの制度を概観したわけですけれども、まず、いずれの国においても移転単位規制は存在していなかったということは確認されるべきかと思います。また、その利用場面も、特に保険会社が破綻するときに限るということは言われておりません。ご紹介はしませんでしたけれども、グループの再編などにも使えると認識されているようでございます。このように、諸外国では保険契約を包括的に移転するニーズとしてはさまざまなものがあると認識されていると思われるわけでございます。

また、規制の内容としましては、どのような主体――移転させられる契約者なのか、残される契約者なのか、それとも、移転先に元々いる契約者なのか、そして、どのような利益――保険金の支払可能性がなくなるのか、サービスが悪化するのか、配当がもらえなくなるのか、そういうどのような主体のどのような利益を問題とするのかということをかなり具体的に意識して、それを考慮した規制を組み上げていると思われるわけでございます。

我が国の保険業法の規律も、認可の要件はそれなりに具体的になっているように思われるわけですけれども、保険契約の移転単位規制の趣旨に関しますとやや抽象的な議論がなされているきらいがございまして、今回の部会でそれが相当具体的になったかとは思うわけですが、やはり保険契約集団の維持とか保険契約者間の公平性といった抽象的な観点から出発するよりも、何をそもそも問題とすべきかということを具体的に考えたほうが制度を設計しやすいのではないかなと思われるところでございます。

また、諸外国を見ると、特に移転されてしまう保険契約者に対してどういう形での保護を与えるかという点については各国ともバリエーションがあったわけですけれども、日本の現在の異議申立手続のように、5分の1という一定数の異議が集まらないと何の効果も生じず、逆に5分の1を超えた異議が集まると、反対していない保険契約者についても移転できなくなってしまうという効果を認めているものは存在しておりませんでした。

明治45年改正時の文献によりますと、日本の現在の制度は、その当時のスウェーデンの法律を参照したということのようです。スウェーデンが現在どうなっているかということは、スウェーデン語が読めなかったので調べていないのですけれども、当時もなぜこの制度にしたのかという理由は明確に述べられてはいないところでございました。

以上のような沿革と若干の比較法的考察を前提として、若干の論点整理を試みたいと思います。整理に際して、私の意見が多少まじってしまうこともあるかもしれませんが、ご容赦いただければ幸いです。

まず、移転先会社に移転させられる保険契約者の保護についてですけれども、これについては、個々の保険契約者の意思を反映する仕組みをどのように設計するかということが重要となってくるかと思われます。やや乱暴な整理になってしまいますが、アメリカが最も契約者の意思を反映していて、ドイツがほとんど重視していないと言うことはできるかと思います。

これをどうするかということを考えますと、我が国の立法者は、明治45年当時ですけれども、主に想定されていた保険会社の倒産や再建という場面においても、現在の異議申立手続という、やや変わった形ではありますが、少なくとも保険契約者の意思を反映する仕組みを何らかの形で入れようとしていたということからは、保険契約の包括移転制度の利用を拡大するということに考えるに際して、ドイツのような立場に今から行くということは難しいように思えるわけでございます。

そうすると、今度はどこまで保険契約者の意思を反映するかということが問題となってきます。先ほど申し上げましたように、5分の1集まらないと何もできないというのではなくて、個別の契約者の意思をどのように反映していくかということを考えていくべきかと思いますが、この点については、まず保険契約者の何に関する意思を尊重するかということが、個別の契約者の異議申立にどういう効果を認めるかということとの関係で問題となってくるのではないかと思われるところでございます。

また、先ほど申し上げました、5分の1を超えると、反対していない契約者についてまで移転ができなくなってしまうという現在の異議申立手続ですが、個々の保険契約者の意思を反映させられるようにするとした場合には、このような形の異議申立手続を維持する必要があるかということもあわせて考える余地があるように思われるところでございます。

また、保険契約者の意思の反映は、契約法理論上は重要な観点であるとは思うのですが、問題状況の複雑さを考えますと、特に消費者向けの保険については、保険契約者の意思にゆだねればすべてよいとは言えませんので、やはり当局の認可による保護の充実もあわせて考えていくべきではないかと思われるところでございます。

そこで、個別の保険契約者の意思をどのように反映していくか、どういう効果を認めるかということなのですけれども、基本的には保険契約上の最も重要な権利である保険金請求権の支払可能性の確保をどうやって考えていくかということが、これは各国とも意識していた問題であり、ここを中心に考えていくのが自然ではないかと思われるところでございます。

そうはいってもいろいろな方法があるわけですが、まず契約移転時には、まだ保険事故が生じていない以上、会社法の債権者異議手続のように、異議申立をした時点で弁済とか担保提供をさせるというのはやや過剰な保護になってくるかと思われますが、他方でイギリスのように、異議申立時の解約権を認めても、そもそも日本の保険契約法上は任意解約権が約款で排除されていない限り存在しておりますし、また、解約を認めても、保険契約の継続を求める保険契約者の保護にはならないところでございます。

考えられますのは、異議申立者に対しては、移転会社と移転先会社の両方が保険支払いの責任は連帯して負うとすることですが、これだと、保険契約者は異議を申し立てるだけで債務者が増えるという利益を受けることになりますので、異議申立のインセンティブが過剰になってしまう可能性がございます。

そうすると、移転会社と移転先会社のどちらかを選びなさいということにして、異議を申し立てると、アメリカのNAICのモデル法のように、移転会社のもとに契約が残るという仕組みが考えられるところでございます。ただ、今回のこの議論が始まった経緯を考えますと、事業運営の効率化等のニーズが移転会社のもとに契約を残した形で実現できるのか、私にはこの点を評価する能力はありませんが、そこはちょっと大丈夫なのかなという懸念もあるところでございます。

そうすると、技巧的なことを考えますと、契約は移転先に移るのだけれども、支払責任は移転元が負うという仕組みも考えられなくはありませんが、工夫をすれば何とかなるのかもしれませんが、やや複雑かなという気もするところでございます。

また、たしか第2回の会合で、ソルベンシー・マージン比率が一定以上下落する場合にのみ連帯責任とするという異議を認めてはどうかという趣旨のことを私自身が申し上げてしまったかと思うのですけれども、その後、論文を書きながら考えてみたところ、一定の基準値を設けてしまいますと、例えばソルベンシー・マージンが200%以上落ちた場合には異議を言うと連帯責任になるという形にしてしまいますと、ソルベンシー・マージンの下落幅が100%でしかないという場合にも、それでも私はあそこには移転したくないんだという保険契約者の意思を反映することにはなりません。

また、そもそも当局において、一定以上ソルベンシー・マージンが下落するということはやはり問題があると認識しているのであれば、その場合には、契約者の異議を待つのではなくて、認可の中で対応すべきであるようにも思われるわけでございます。ソルベンシー・マージンが一定以上下落した場合にのみ何らかの対応するという制度を妥協の産物としてつくることは十分考えられるところでございますので、このような仕組みは一切あり得ないということを申し上げる趣旨では全くございませんが、いろいろと考えるべきポイントはありそうだなというところでございます。

また、保険金の支払可能性確保以外の問題点として、まず保険契約者に対するサービスの水準が落ちないかという問題もあるわけですが、これはイギリスやアメリカでは、裁判所や当局の承認の中で考慮されておりまして、これも先ほど損保協会さんからのご提案の中にもありましたように、我が国においても認可の中で対応すればよいことかなと思われます。

難しいのは、配当の水準の確保をどうするかという点でございます。ドイツでは、少なくとも文言上は、契約者の配当に関する利益を認可の中で要件として厳格に保護しているのに対して、イギリスでは、考慮はしているのだけれども、どこまで厳格にやっているかわからないというところでございました。

この点についてはさまざまな考え方があり得るところかと思います。まず、制度上配当に回すことが予定されている社員配当準備金、社員配当平衡積立金、契約者配当準備金に組み入れている額については、これは先ほど参考人の方からもご紹介のありましたように、契約者ごとにみなし計算をするなりして、ちゃんと移転するということを認可の中でしっかりと要求すべきかと思われます。

難しいのはそれを上回る部分でして、これについては、制度上は、保険会社が財務状態の安定性などを考慮して、経営判断によって、配当するか否か、するとしてもどれだけ配当するかを決めるということになっております。保険契約者側は法的な権利は有しておらず、単に事実上の期待を有するに過ぎないということになっているわけですが、他方で、状況によっては、事実上の期待の中にも、合理的な期待と言える部分として保護に値するものがあるかもしれません。

何らかのわかりやすい切り方としては、例えば契約が終了したときには、それまで念のためにとっておいた分について終了時の特別配当をするということが約款で定められているような場合には、契約移転がある場合にはその会社のもとでの契約は終了したものと考えて、終了時と同じような特別配当を義務づけ、もしくはその分の資産を移転するという考え方もできるところでございますけれども、そういった契約上の措置も行われていない場合、それを超える部分については、合理的な期待を保護するとしても、それがどれだけあって、それをどうやって判断するのかという点が問題となってくるかと思われるところでございます。

また、これについて注意しておく必要があるのは、事務局からのご説明にありましたように、期待を保護する必要があるとしても、何についての期待を保護するかという点です。これはドイツやイギリスにおいてはあまり明確ではないのですが、移転会社と移転先の会社が別の法人である以上、異なる発展経路をたどるのは当然のことであるでしょうから、そうすると、保険契約の包括移転を認める以上、移転後に獲得された利益の配当について差異が存在しても、そこまでを公平性という名のもとに保護していくというのは、ドイツではそうしているのかもしれませんが、そこまでする必要があるのかということは、やや慎重に考えたほうがいいような気もするところでございます。

これに対して、契約の移転時に存在していた剰余金に対して期待を持つことはあり得ることでして、それについて合理的な期待と言えるものについては配慮がなされるべきなのかなと思われるところでございます。

また、移転させられる保険契約者に対する情報提供についてですけれども、現在は移転会社と移転先会社の貸借対照表等が公告されるのみとなっておりますが、詳細は省略させていただきますけれども、アメリカやイギリスの制度を参考に、両者の財務状況に関するより詳しい情報の提供などを考えていくべきかと思われるところでございます。

また、情報提供の手段についても、保険契約者が消費者である場合のことを考えると、少なくとも平時においては、イギリスやアメリカにおいても行われておりましたように、保険契約者に対する個別の通知を行うべきかと思われるところでございます。その観点からも、先ほどの損保協会さんの資料の最後のほうにありましたご提案は非常によろしいのではないかと思われるところでございます。

他方で、保険会社が清算や再建の段階にあるというときに包括移転をするという場合には、明治45年当時の議論が想定していたものでありますし、また、アメリカのモデル法も考慮していたように、簡易な手続を認めておく余地があるのかなと思われるところでございます。

次に、移転会社に残される保険契約者の保護です。現在も認可の要件の中で139条2項3号によって保護がそれなりに図られているのですけれども、それ以上にどういう保護が必要かということが問題となってくるわけでございます。この点について、最初に契約集団の維持ということを言われた三浦さんの議論で言われていたのは、分割をすることによって危険の集積が低下してしまい、そうすると、かえって危険が増加するので問題であるということでして、現在問題とされている責任準備金の分割の可能性という論点もこの観点から取り上げることができるように思われるわけですが、各国の制度を見ますと、移転会社に残される保険契約者の保護について、責任準備金をしっかりと分割しなければいけないということがあまり正面から問題とされていなかったように思われるわけでございます。

この点については、おそらく基本的に移転会社の健全性の確保の問題に還元することができるということでしょうから、先ほども参考人の方からご紹介のありましたように、責任準備金をみなし計算などによって単純に分割した上で、それで将来収支分析をして、危険の集積度合いが低下することによる積み立ての不足分があるのであれば、その不足分をカバーするに足る資産の存在を認可でチェックして、追加積み立てを要求していくということをしていけばよいのかなとも思われるところでございます。

この責任準備金の分割の問題については、残される契約者の保護のところでご紹介しましたけれども、移転される契約者の保護についても、同じように、移転先のところの健全性が十分かということが、移転される準備金の部分もあわせて、認可と、さらには個別の契約者の意思の反映という中で考慮していけばよいのかなと思われるところでございます。

また、ドイツにおいて問題とされておりました、リスクの高い契約だけを恣意的に分離するという問題については、これも移転会社や移転先会社の健全性の問題に還元することができると、その分の追加積み立てを要求してはいかがかというご提案が、先ほど損保協会さんのほうからありまして、それも1つかと思われます。また、そもそもそういう分割の仕方に合理性がないのであれば、ドイツで言われておりましたように、そもそもそういう恣意的な分割はしてはならないとすることもありうるのかなと思われるところでございます。

なお、事務局からもご指定がありましたように、我が国においては、移転会社に残される保険契約者に異議申立手続がないということが問題視されることがしばしばあるわけでございます。異議申立手続は、元来、保険契約をみずからの意思に反して移転されてしまう契約者に対する救済という建付けでしたので、移転元に残っている契約者、つまり、自分の契約が移転されるわけではない契約者にこの異議手続がないことは不思議なことではないように思われます。また、保険契約者の意思の反映をそれなりに重視していると思われるイギリスやアメリカにおいても、移転元に残る保険契約者の意思の反映は特に議論されておりませんでしたので、私見を述べさせていただければ、この点は対処する必要はないのではないかと思われるところでございます。

最後になりますが、移転先会社の元々の保険契約者の利益については、移転先会社が包括移転を受けることによる影響は、保険会社の通常の経営判断によって保険契約者が影響を受けるということと変わらないようにも思われるところですけれども、イギリスやアメリカにおいては当局の承認の中で考慮されておりますので、我が国においても、保険契約の包括移転契約の条件の適切性とか、移転先会社の健全性への悪影響がないかということを認可の中でチェックするということが考えられるように思われますが、先ほど瀧下委員からもご紹介のありましたように、独立当事者間の組織再編なのであれば、その点は基本的に市場にゆだねてもよいようにも思われるところでございます。

駆け足になって、大変恐縮でございますけれども、私からは以上でございます。

○洲崎WG座長

ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明に関しまして、ご質問がありましたらお願いできればと思います。

沖野委員。

○沖野委員

非常に情報の多いご報告をいただきまして、ありがとうございました。今回のご報告を伺うまでは、現行の規律というのは、一定の単位でなければ移転することができないことを前提にしたもので、契約法理よりも団体法理に近い規律である、つまり、単位となる当該集団全体として、移転について、イエスかノーかという選択肢しかなく、その意思決定を多数決で行う、その多数決の基準が5分の1であるという規律と理解しておりました。

ただ、それにしても、本来であれば、積極的に移転に賛同するということについての決定であるところを、反対の意思の表明のほうを要求する、消極同意という形での同意の意思決定としているということが特殊であって、団体法理的な処遇としても、移転のほうへと推し進めるような決定の仕方になっているのが、保険の場合なぜそれが正当化されるのかということを疑問に思っておりました。

今回の後藤委員のご報告によって、集団でのみの移転による団体法理のような考え方自体も保険に必須ではなく、これは契約の問題であるのだということが示されたのだと思います。そうなりますと、本来、個別同意で移転していくべきものであるところ、現行法のもとでは、この個別同意は実質的には非常に薄いものです。すなわち、消極同意という形になっていて、それは同意みなしに近いわけで、しかも消極同意の前提となる情報提供が公告による情報提供であるためにいっそうその実に疑問が生じます。そうまでして契約の移転を容易化する、移転のほうへと推し進める、その正当化や必要性が気になります。

従来の規律はもともとは、破綻の場合とか、事業の撤退とか、実質的な選択肢として移転するかやめるかしかないというような場合であったから、それは消極同意でよかったということだと思うのですが、そうではない場面だということになりますと、契約の移転について包括移転を要するということについて、あるいは、契約の移転について個別同意が必要であるという規律の例外を認めて、より移転をしやすくするのを基礎づけるような必要性や正当性のチェックをどこかでかけなくていいのだろうかというのがずっと気になっているところです。それは実は現行法の問題でもあるのですけれども。

このような問題意識から、2つお話ししたいことがあります。1つは、事務局説明資料の中で、「更に検討すべき論点について」として丸1から丸5までの項目が挙げられています。これに加えて、包括移転の必要性や正当性の判断をどうしたらいいのか、あるいはそれを確認し、確保する必要はないのかということと、それから、移転の単位について、包括移転である以上、包括性の画し方、集団、単位ということは現行法を改めるにしてもどうしても残るわけで、なぜこの範囲なのかについての正当性なり、客観性なり、という項目を入れる必要があるのではないかと思います。これは項目として挙げることについて改めて検討していただければと思うというものであり、意見です。

もう1つは質問です。後藤委員から詳細な説明をいただいたのですが、今の点についての必要性、正当性、合理性なりの判断が諸外国のルールでは仕組みとして設けられていないのかどうかをおうかがいできればと思います。今まで伺った限りでは、例えばイギリスですと、事業譲渡という形で切り分けられているようですので、そこで既にある程度客観的な絞りになってくるように思うのですが、さらにそれが譲渡されない場合とされた場合との比較という要素があげられていますので、その中で判断されていくのか思われます。ドイツについては、客観基準で団体が切り分けられていくという点についてはご説明があって、そうでない場合にはできないということなのですが、できないというのは、具体的には認可がおりないということなのか、後に争えるということなのでしょう。また、これらの点について、アメリカではこういうことは考慮されないようですが、そうなのだろうかというのが気になりました。散漫な質問で申し訳ないのですが、諸外国の状況について追加がありましたら、ご説明いただければと思います。

○洲崎WG座長

よろしいですか。はい、後藤委員。

○後藤委員

どうもありがとうございます。すぐお答えできそうにもないのですが。

ドイツについては、客観基準で分けなければならないというのは条文にはどこにも書いておりませんので、認可の要件と言えるかというとそうではないような条文になっているのですが、ただ、先ほどご紹介しました、EC指令を採択するときの政府草案の理由書の中に、移転単位規制を廃止するが、これはこういうことだという説明が書いてありまして、それがその後のコンメンタールの類にも反映されていますので、客観基準で分けたとは言えない場合には、おそらく認可をしないのではないかなと思われるところでございます。

イギリスについては、事業譲渡について日本のように事業性の概念とかを議論している国なのかどうかはちょっとよくわからないところもあるのですが、ただ、沖野委員ご指摘のように、やはり事業譲渡と言えるだけの移転の仕方をすることが一般的なので、問題がないと考えられているのかなと思われるところでございます。

アメリカについては、見る限り、そういったところは特に議論されているようには思われませんでして、それがアメリカらしいなという気もするところです。ただ、アメリカは、切り分け方の合理性については、飛ばされる人については、「私は行きたくない」という選択権を持っていますので、それでかなり担保されているのかなと思われるところでございます。必要性については、組織再編が必要かどうかというのを、おそらく当事者が必要だと思ってやっていることを、外部が「それは必要ないからやめなさい」と言うことは、どの国も直接的にはしていないのかなと思われるところでございます。

○洲崎WG座長

沖野委員が先ほどご指摘された必要性、正当性についての第1点目のお話は、ご意見ということでよろしいですか。

今後、場合によっては、そのことも事務局説明の最初のところでの「検討すべき論点」として挙げる必要があるかどうかについて検討したほうがいいのではないかということでしょうか?

○沖野委員

はい。挙げる必要があるかどうかについてあわせてご検討いただきたいということを含めた意見として取り上げていただければと思います。

○洲崎WG座長

はい、ありがとうございます。

○小島委員

じゃ、すみません。

○洲崎WG座長

小島委員。

○小島委員

企業経営の観点からは、企業再編あるいは効率化、事業再編という必要性、ニーズは多分あるのだと思います。しかし、保険契約者の側から見た場合に、どのようなニーズなりメリットがあるかというところが課題ではないかと思います。

先ほどのご説明では、業務の属性をグループ分けして、専門的なスキルアップを通じた情報提供といった、顧客、契約者に対するサービスの質の向上というメリットがあるということでした。果たしてほんとうにそうなのかなという感じがしないでもない。

特に損保商品は代理店形式の販売が中心ですので、契約者にとってのメリットがほんとうに生かされるのか、その保証が必ずしも見えてこない感じがします。確かに保険商品そのものは、属性に応じてグループ分け、再編ができるかもしれませんが、販売をする代理店が果たして専門性の向上にどれだけ対応できるのかに疑問が残るところです。

もう1つは、企業再編、経営効率化を図るということで包括移転を活用する場合に、そこで働いている従業員の立場からすると、コスト削減、人員削減のために使われる可能性があるのではないかという懸念があります。労働組合の立場からすると、雇用への影響が懸念されますので、その点については十分配慮する必要があるということを意見として述べておきたいと思います。

○洲崎WG座長

では、丹野委員。

○丹野委員

時間が超過しているのに意見を言って申しわけないんですが、後藤先生、とても詳細なご説明ありがとうございます。私が全部わかったかどうかわかりませんけれども、頭がクリアになりました。ありがとうございます。

と言いながら、包括移転の正当性、必要性、合理性を考えるときの当事者というのはだれなんだろうと考えておりました。包括移転が必要なのは、保険会社はやりたいと言っているから合理性があるんでしょうというのは、それはあくまで保険会社サイドのご説明でございます。

契約者、消費者側からいって、A保険会社に入っていたのが、突然、「あなたのこれは今度、B保険会社になりましたよ」と言われることは、ほんとうに納得できる正当な理由があるならまだしも、「すみません、この保険は売りどめになったからこっちに行ってください」と言われることがほんとうに消費者にとって好ましい状態なのかと。Aという保険会社を信頼してその保険に入ったのに、「何?売りどめにしたら、別の会社に押しつけるのか?」という感覚が生じやしないかと思っております。必要性、正当性、合理性というのは契約者サイドからはどうなんだろうというふうに疑問を持っておりますということをあえて申し上げます。

○洲崎WG座長

本日は内容が盛りだくさんで、時間も超過しておりますが、本日ご報告いただいた責任準備金の問題、それから、後藤委員からご報告でいろいろ指摘された論点については、また引き続きご検討させていただきたいと思います。

次回は、保険契約の移転単位規制に係る残りの論点について議論をしたいと思っております。

最後に、次回の日程でございますけれども、既にご連絡させていただいているかと思いますが、10月19日の16時からを予定しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課保険企画室(内線3557)

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