金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ」(第3回)議事要旨

1.日時:

平成23年8月30日(火曜日)10時00分~11時40分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

保険会社のグループ経営に関する規制の在り方について

  • 保険募集等の委託の在り方
  • 保険会社の子会社等への与信に係る大口与信規制

4.議事内容:

  • 「保険募集等の委託の在り方」及び「保険会社の子会社等への与信に係る大口与信規制」に関して、それぞれ事務局から資料に基づいた説明を行った後、討議。

  • 座長より、これまで本ワーキング・グループにおいて議論を行った検討事項の他に、追加で議論すべき論点があった場合には、9月13日までに事務局へ意見を寄せてほしい旨の提案があり、了承。

  • 討議における主な意見等は以下のとおり。

「保険募集等の委託の在り方」

  • 現行、契約者利便の増進などの観点から、合理的であるものについては既に一定程度、業務の代理・事務の代行が行われているが、保険募集の再委託を可能とするメリットをより具体的に示してほしい。保険会社による、外部チャネルの教育の資質の向上や、十分な監督という観点に関しては、いまだ一定の改善の余地がある可能性も考えられるので、これらの諸懸念事項を払拭するための措置と、保険募集の再委託を認めた場合のメリットの程度について、具体的なイメージを知りたい。
  • 保険グループの総合力を高めるために、シンプルな保険商品を新たに扱おうとするケースにおいて、システムコストを低廉なものにしたいという理由で、小規模の保険会社を設立したり、買収したりすることが今後、特に出てくることが想定される。現在、保険業法で認められている業務の代理、事務の代行では、これらの保険会社でも、多数の保険代理店と個別に代理店委託契約を結ばなければならず、ロードやコストの観点からもやや違和感がある。そのため、グループ内の保険会社間に限り、募集委託の在り方について規制の緩和を検討いただけないか。これにより、契約者に対しより幅広い商品選択肢や保険料面でのメリットを提供できる可能性が広がる。加えて、保険会社における経営の選択肢があるということ自体が、グループの企業価値の向上として、投資家へのインセンティブにもつながってくる可能性もある。
  • 懸念される事項については、契約者に対し、募集時に販売の代理であることを十分に説明すると同時に、契約のメンテナンスを商品提供会社が行う体制をしっかり整備した上で、その窓口をきちんと案内することを考えている。募集販売時に問題が生じた場合の、商品提供会社と販売受託会社との責任関係を明確にするための手当てを行うことで、問題の発生防止に向け、何らかの整理ができるのではないか。
  • 保険募集の再委託を認める場合の、指導・監督・教育を含めた責任や、損害賠償責任の所在が曖昧になるという懸念に対しては、所属保険会社の許諾を必要とし、再委託された代理店についても所属保険会社が、指導・監督責任を最後まで負い、損害賠償責任も負うという要件を課せば、問題をある程度払拭できるのではないか。グループ内で再委託を認める場合、保険会社の代理店や募集人に対する教育・管理・監督の徹底の強化を前提とする観点からの検討が必要。そのことが、結果的に保険契約者の利益保護にもつながっていくのではないか。
  • 銀行の預金や定期積金は比較的シンプルな商品である一方、保険は比較的複雑な商品で、端的には再加入困難性等の要素があるため、募集についてはかなり丁寧な取り扱いが必要であり、規制も非常に厳格にされている。銀行代理業で認められている再委託が、そのまま保険に認められて良いというものではないのではないか。元受会社がすべての監督責任及び損害賠償責任を負っている法の建付けを前提とすると、中間段階の再委託者に様々な物事を背負わせることは課題があるのではないか。
  • グループ経営の効率化の観点で、復代理を認めることについては、かなり限定的な要素として考えられれば良いと思うので、賠償責任の問題等にも留意しつつ、方向性としては前向きに検討いただきたい。
  • 再委託におけるコスト削減を念頭に置いた場合に、IT化や契約締結事務の処理コストを抑えられれば、一段階目、二段階目の委託者がともに責任を負うという対応が十分考えられるのか確認したい。銀行の場合における規律の内容は非常に参考になると考えるが、保険にも同様の規律をかけ、募集についての丁寧な説明を行わせることとしても、なお問題点があるのか。
  • 責任関係については、銀行法における趣旨もベースに、保険契約者は、委託者と再委託者の両方に対して責任を追及できるような形になるのではないのか。
  • 仮に再委託に係る規制緩和として、再委託者を保険会社に限定する新しいスキームを設けなくても、現在の業務の代理・事務の代行のスキームを活用すれば、例えばシンプルな商品を保険契約者に届けることができるのではないか。新しいスキームを設けることについては、指摘のあった契約の手間やコストが省けるというメリットと、同時に発生する契約者保護や消費者保護にどのような影響があるのかという懸念を、比較考慮して判断されるべきものではないか。
  • 現在の代理・代行の場合は、委託によって、募集者の教育や管理等が保険会社の外に出てしまっており、その場合にも問題はあるという見方も有り得るのではないか。委託者と保険会社に限定した再委託者の両方に責任を課すのであれば、再委託者が再受託先に対する教育等をしっかり行っているかということも、保険業法の監督の中でチェックが可能になることから、むしろ正面から再委託を認めた方が、事務の代理代行などで済ますよりも本筋なのではないか。
  • 募集人がどこに再委託するか、委託者である保険会社の承諾を必要とするという形にして、両者がつながるようになっていれば、問題がないのではないか。
  • 総括代理店としての保険会社において、委託者である保険会社が締結する契約に関し、代理店等に問題があった場合に負う責任が仮に緩和されていれば、むしろ再委託を認め、責任をきっちりかけるほうが良いということにもつながるので、現行法制を確認したい。
  • 銀行法を参考にした場合、直接募集委託契約を結ばない者が、顧客に対して損害発生の防止に努めないと免責されず、それに努めていると評価されれば免責されるということと、元受の保険会社が当然責任を負うということとは、かなりスキームとしてずれがあるのではないか。当該保険会社が責任を負うことを前提に議論して良いかということについて、少し注意を促したい。
  • 銀行法施行規則の第34条の63で規定する所属銀行が講じなければならない措置の一つとして、同条第3号で「銀行代理業再委託者と銀行代理業再受託者との間の再委託契約の内容を変更し、又は解除するための措置」が挙げられている。委託者である保険会社は、再委託者である保険会社と代理店の間の委託契約の当事者ではないが、この点について、直接の法律関係はなくても、再委託者と代理店との間の法律関係を変更し得る措置が、銀行代理業では考えられているのではないか。
  • 銀行代理業の再委託には、委託者が再委託者と再受託者の契約を解除させるための措置を講じることが規定されているが、保険会社の場合には、委託者よりも再委託者の交渉力が強いこともあり得、同様のことを規律として求めることと、それが実際に機能するかどうかは、銀行代理業と比較してかなり印象が異なると考えている。
  • 委託者が小さな保険会社で、再委託者である保険会社の方が強くなるような事態は考えられ得る。その場合には、その再委託者がしっかり募集人を管理監督できるような、行政による監督をどのようなものにするか考えていくべきではないか。
  • 預金等に比べ、保険商品の難解さ、複雑さはその数倍に及び、消費生活センターに寄せられる苦情件数も後者が圧倒的に多く、保険募集時の説明責任が果たされていないと感じている。不払い問題以降、保険会社の姿勢は180度変わったということだが、トラブル件数は減少していない実態を踏まえれば、再委託を導入しなければ得られない消費者利益がどの程度あるのか考えなければならない。再委託者がグループから離脱する可能性があり得るという意味においてのグループの強固さがどの程度あるのか懸念されることに加え、再委託先にガバナンスが効くのかというのも非常に疑問。
  • 保険会社と代理店が委託契約を締結しているケースと、別の保険会社が総括代理店となっているやや特殊なケースで、問題の発生頻度に差異があるのか。仮に当該確率が同じであれば、後者において、総括代理店である保険会社による代理店への監督や監視が、問題の発生を抑えていることが実現されているかどうかが分かるのではないか。
  • グループ内での再委託に限定することと、元受会社に賠償責任を最終的に負わせることができれば、グループ外に子会社が売却されるリスクはかなり落とせるのではないか。損保セクターに関する事業費率が、ヨーロッパの平均27%程度に対し、日本の場合35%と、非常に高コストな体質になっており、これを圧縮するツールとして再委託が使えれば、契約者あるいは株主双方にとってメリットがあるのではないか。
  • 再委託のメリットが明確に分かると、経済的な立場から考える材料内容になると思われる。形式的に元受の保険会社が代理店契約をし、実質的に総括代理店である保険会社が募集等に係る事務を行っているケースと、再委託によって可能となることと実務的にどう異なるのか。
  • 業務の代理・事務の代行による場合に、代理店委託契約を締結している保険会社が、どの程度代理店に対する管理等において前面に出てくるかは、認可の内容次第である。一方で、再委託が認められる場合でも、委託者である保険会社がメンテナンスや事故処理において直接対応を行うことを前提として考えている。この辺りについては商品内容によってもケースバイケースであるが、その部分を捉えて、実態として差がないケースも有るという見方も有り得る。

「保険会社の子会社等への与信に係る大口与信規制」

  • 本業である保険事業の拡大・強化を目的とした大型買収などが行われる際の、大口与信規制の適用のあり方の妥当性を議論することに意義があると考える。一方で銀行、及び保険会社における純粋な資産運用にかかわる信用リスクの集中等の観点から、それぞれに対する大口与信規制の存在意義は変わらないことから、連結ソルベンシー・マージン比率等の手段による健全性の確認に加え、監督当局によって、保険会社の大型買収を検討している保険グループにおける十分なグループベースのガバナンスやリスク管理体制が確認できた場合、議決権の過半を所有する保険子会社に限って大口与信規制の対象外とすることも選択肢として考え得るのではないか。
  • 保険会社グループとして、事業リスクを含め子会社をしっかり見ることが求められているところに、連結ソルベンシー・マージン規制による管理が加わることから、大口与信規制の対象外としては、よりしっかり管理することが可能な保険子会社を想定している。
  • 現実のニーズを踏まえ、保険子会社に限って、早急な制度整備を図ってはどうか。
  • 自分がコントロールできない先に大量に貸し付けすぎて、その相手がつぶれた場合に困ることを防止する観点から大口与信規制があるため、自分の子会社であれば、この規制が想定する与信先とは異なると思われるため、特にニーズの高い保険会社に限って規制の対象外とするのは良いことではないか。
  • 大口与信規制の対象外とするかどうかは、リスクの種類に応じて峻別して考えた方が良い。具体的には、非金融関連業務を営む子会社と、金融関連業務を営む子会社、その中でも特に保険業を行う子会社において、規制緩和に係る一定の違いがあっても良いのではないのか。
  • 大口与信規制の緩和を基本的には考えているが、国内の主力保険会社Aと海外の保険会社Bについて、AがBを子会社化するケースと、同じ持株会社傘下にAとBが並ぶケースで整合性を取る必要。Bの経営が悪化した場合に、Aの契約者が晒されるリスクは、両方のケースで異なるのか。また、持株会社のガバナンス機能は、当該持株会社か、傘下の主力保険会社のどちらに置いておくのが望ましいのか。
  • その点は極めて法律的な論議なので、保険持株会社の傘下の損害保険会社がM&Aを行っている理由について説明すると、現在は、多くのリスクを抱えて販売基盤、契約者及び契約を保有している損害保険会社が多くの資産を持っている。そのために、その資産力や資金調達力等をベースにしながらM&Aを行っているのが実情である。この実情を踏まえて、大口与信規制に係る規制緩和を要望している。
  • 今のような円高はまさに海外のM&Aのチャンスであり、保険会社各社においては、連結ベースでのソルベンシー・マージンの計算等によるしっかりした資本充実のもとで、なるべく早いときに、海外に進出してほしいと考えている。

以上

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総務企画局企画課保険企画室(内線3557)

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