金融審議会「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方ワーキング・グループ」(第8回)議事要旨

1.日時:

平成23年11月25日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

3.議題:

保険会社のグループ経営に関する規制の在り方について

  • 報告書案について

4.議事内容:

  • 事務局から報告書案を読み上げた後、討議。

  • 討議における主な意見等は以下のとおり。

「外国保険会社の買収等に係る子会社の業務範囲規制」

  • 一定の期間に処分が困難な事情が認められる場合に、一定条件下で例外的な保有を容認する会社に対しては、定期的にモニタリングして、その都度、継続保有の可否を決定するプロセスも考えられるのではないか。競争力の維持の観点から売却が困難な場合も、当該会社の処分が困難ということに読み込めるという理解で良いか。
  • 保有を認める一定期間については、1年~2年ではなく5年程度という改正をぜひしてほしい。

「保険会社の子会社等への与信に係る大口与信規制」

  • 保険子会社には、海外のいわゆる保険持ち株会社も含むという理解で良いか。
  • 貸付けや債務保証が継続して大口与信規制の対象となるが、これで当面グループ経営の向上に資する形になるのか。
  • 実態として問題となっているケースの大半が株式であり、当面のグループ経営の向上には資することになると考えている。

「保険募集の再委託」

  • 消費者保護上の懸念があることから、同一グループ内の保険会社を再委託者とする場合以外の保険募集の再委託や、保険金の支払い査定業務の委託は今後も認められる余地はないと理解して良いか。
  • 保険会社以外の者が再委託者になる場合について、将来にわたって認められないということまで決まったわけではないと理解。募集の委託と保険金の支払いの委託は異なるということを意見として申し上げたが、ワーキング・グループとして当然にその意見でまとまってはいないのではないか。
  • 顧客利便性が向上する場合に限って再委託が認められること、大規模会社同士の再委託や、大規模会社が小規模会社に再委託を行う場合は顧客利便性の向上が認められないことから、再委託の活用を排除すること、及び所属保険会社が生保、再委託者が損保、またはその逆のケースなど、商品や募集人の管理体制が大きく異なる場合に、所属保険会社による代理店に対する教育や管理体制を確保すること、のそれぞれについて制度的な手当てをお願いしたい。困難な場合は、それぞれ認可の際に確認し、問題あるものは排除することが必要。また、商品の変更等、再委託に重要な変更があった場合には、再度の認可取得が必要と認識している。
  • 認可に際し確認する要件について、前回の資料と質的に同一のものであるか、確認したい。
  • 認可の要件について細かいことを法令に定めるのは困難であり、ガイドラインや基準のようなものを金融庁で作成して示してほしい。

「保険契約の移転に係る規制のあり方」

  • 異議申立てを行った契約者への対応としての、解約によって不利益な取扱いとならない措置を明確にする余地がある。移転対象となる商品の特性を十分精査して、契約者保護に資する保険契約の移転に係る制度の枠組みの考察が必要。例えば、低解約返戻金商品の契約者が加入時に認識できなかったデメリットに対する手当てをするために、解約率に関しての前提を見直した形で、再計算した解約返戻金の見合い額を返却すること等も考えられ、専門的・技術的な諸事項について議論する場を持つことも考慮に値するのではないか。
  • 責任準備金の算出の適切性については、現行の将来収支分析では不十分であり、ソルベンシー・マージン規制の中期見直しにおいて現在検討中の経済価値ベースに関する考え方が、監督レベルで確立されることが必要。経済価値ベースの算定にしても、現在、責任準備金の安全割増に関する複数の手法が容認されており、大きなレベルで恣意的な評価が行われる懸念がある。移転単位規制を撤廃するのであれば、現行の将来収支分析のみで、責任準備金の算出の適切性が確保できるかどうか、専門家等による慎重な議論を行い、その結果を踏まえて法制化の可否を判断すべき。
  • 既に株式会社化の事例において、財産の分配がある程度行われているという状況を考えれば、徐々に精緻化をしていく必要性は別として、現段階で一定の計算を行って、財産の分配を行うことは不可能ではないと考えられる。
  • 経済価値ベースでの合理的な手法が確立するには相当時間を要すると考えられ、現在の段階での責任準備金の考え方をもとにして議論を進めることには、不都合はないと思われる。
  • 株式会社も相互会社も内容的にさほど変わらないような流れになっている一方で、こういった企業形態の違いに基づいた記述となっている点にやや違和感がある。今までの変化の流れを考えて、契約者保護の観点を入れるという考え方もある。その場合には、商品を重視した書きぶりも可能ではないか。
  • 株式会社における剰余の記述について、株主の自己資本となっている部分にまで保険契約者の権利がある訳ではないこと等も踏まえると、株主に帰属するように書かざるを得ないのではないか。
  • 株式会社での有配当契約に関して、会社が保有している内部留保が、株式、株主のものであるという前提は重要なポイントであると思われる。保険契約の移転によって、事業や契約を継承する移転先会社はそのビジネスを継続すると考えられるため、実際に出た剰余の使われ方までは保証できないが、競争上明らかに不利になるような配当政策はとらないのではないか。
  • 例えば相互会社の株式会社化など、相互会社と株式会社に差異があることは認められており、基本的な方向性として、移転元が株式会社である場合は当該会社に割当済みの剰余が帰属すると考えて差し支えないのではないか。また、消滅時配当を行う商品設計のものが現実に存在した場合であっても、金融庁が保険契約の移転に係る認可の中で、当該商品の約款についての適切な契約解釈のあり方を踏まえて判断するということが、事務局の案では考えられているのではないか。
  • グループ経営を超えた、一般的な契約の一部移転を認めることをなぜ議論せざるを得ないのかということに関して、何らかの説明を入れて頂きたい。平成19年の金融審議会の報告書では、「直ちに保険契約移転時における移転単位を見直すことは適当ではない」と書かれているが、今度はそれを認めるために、グループ経営の実態が変化したという理由の他、変わった事情について何らかの記述がないと、前回の審議会と議論が断絶するのではないか。
  • 従来非常に限定的に認めてきた保険契約の移転を、もう少し拡げようというときに、グループ内に限ってしまうと、メリットも非常に限られたものになってしまうのではないか。
  • 法律学の観点からも保険契約の包括移転は例外的な制度であるが、例外的な手続を認めるための手当てが十分かという問題がクリアされれば、包括移転をグループ内に限る必要性がないのではないか。また平成19年の審議会においては、まだ様々な意見があったため、その時点で結論を出すべきではないとされたものであり、その後特段大きな事情の変化がなければ、その結論を変えていけない訳ではないと思われる。
  • 契約者側に落ち度がない以上、少なくとも通常の解約より有利な形で解約ができないと承服しがたい。再加入困難性への対応としては、当局が認可をする際、その移転の必要性や必然性を要件とする必要がある。少なくとも、保険会社が商品を粗製乱造して都合が悪くなったらやめるようなことは厳に謹んでほしいと考える。
  • 責任準備金の算出の基礎が同一であれば、認可をもって移転できるというのが現行制度だが、そのときの単位をどうするかが現在の議論である。過去からの責任準備金の算出の困難性と切り分けの申請の問題について、今回の議論で大分整理されたこと等が非常に大きいと思われる。
  • 異議を述べた保険契約者の対応として、現行法とは随分違ったものが出てきている他、異議を述べる前の手続としての個別通知や異議成立要件の引き下げのように、現行法上可能である包括移転をむしろ制約するような形での議論が今回行われていることが、19年当時との大きな違いであるという印象。
  • 契約を移転させて、商品に内在する問題が直せるというためには、現行法上契約条件の変更を行うことが筋である。移転させればサービスの向上が見込まれるのかどうかについては、制度間の比較、役割分担を少し精査する必要。例えば将来的に収支の見込みが悪く、移転先でも現在以上にソルベンシーを厚目に持っておかなければならないようなものについて、剰余を移さず、持ち分だけを移すというルールのもとで、その契約が合理的に維持できるのか、少し疑問がある。保険契約の移転に比べて会社分割における認可要件が緩いため、後者を厳しい要件の方に合わせてほしい。
  • 移転した場合にきちんとしたアフターサービスが期待できるようなものが、サービスの向上と言えるのではないか。販売体制と保険商品のミスマッチングが起こっているようなときに、当該保険商品から撤退して、販売体制がしっかりした会社に移すことが特定分野から撤退するということの意味であると考えられる。
  • 保険契約の移転について当局が審査する事項として、契約者にとっての利便性向上の確認が必要。また、異議を述べた契約者への対応として、再加入困難性の問題が懸念されるため、契約者保護の観点からしっかりとみて頂くことが必要。現実に無保険状態になる契約者が発生する懸念があるほか、健康上の理由等で解約したくてもできない契約者や、解約後に他社の保険に加入できない契約者も存在。
  • アフターケアが行き届かないことが理由であれば、募集の再委託を活用することで十分対応できる程度のものであり、認可の際に、契約を移転させる必要性がないと判断されることになるのではないか。
  • 保有契約のメンテナンスコストが捻出できない会社がずっとそのサービスを行っていくよりは、スケールメリットを追求して、高いサービスができる会社に契約を移した方が、経営の効率化や、徐々に縮小するマーケットでの契約者の保護にもなるのではないか。
  • 移転後のメンテナンスに関するサービス提供の体制を含め、顧客の利便性の観点から、メリットがあるかどうかについて認可申請の審査がなされる趣旨と考えている。グループ内で活用する包括移転には、事業再編だけではなく保険契約者の利便性やサービスの向上につながっていくことが期待されている趣旨と理解。
  • ある保険分野の商品について、全体ではなく一部を切った、その部分が賄えないから移転させることの必要性、相当性が理解できない。
  • 将来の保険給付がより確実になることが、保険論的には一番の契約者のサービスではないかと思われる。必ずしもリスクを持てない契約がすべて不良契約ではなく、それが持ちきれない場合には、売りどめにしたり、リスクを持ち切れる会社に移転し、それを継続して販売したりすること等を考える必要。
  • 今回の見直しによって、これまで以上に契約の移転が頻繁に行われていくことも考えられ、審査の中で移転に伴う深刻な雇用問題、不当解雇をいかに回避するのかといった観点からの問題意識もぜひ共有して頂きたい。契約者の利便性や契約者保護の観点から、制度がスタートした後、想定外のことがあれば、速やかに見直しを行うことも当然重要と思われる。

以上

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総務企画局企画課保険企画室(内線3557)

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