金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第1回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年7月8日(金曜日)10時00分~11時16分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

○増田市場機能強化室長

ワーキング・グループの開催に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。資料1としまして「メンバー名簿」、資料2は「諮問事項」の抜粋でございまして、資料3が「インサイダー取引規制の概要」、資料4は1から3までございます。資料4-1が「審議事項」、資料4-2が「純粋持株会社に係る重要事実」、資料4-3が「企業の組織再編に係る規制の適用関係」でございます。ご確認をお願いいたします。

○神田座長

資料のご確認、よろしいでしょうか。

それでは、ただいまからインサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第1回目の会合を開催させていただきます。皆様方には大変お忙しい中、また暑い中お集まりいただきましてありがとうございます。

申し遅れましたけれども、私は吉野直行金融審議会会長兼金融分科会会長からご指名をいただきまして、このワーキング・グループの座長を務めさせていただきます東京大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。

それでは、まず最初にこのワーキング・グループについて若干のご説明をさせていただきたいと思います。このワーキング・グループですけれども、今年の3月7日に開催されました金融審議会の総会兼金融分科会というか、合同会合と呼んでおりますけれども、同会合におきまして大臣から諮問されました事項が3つございます。その3つのうち、インサイダー取引規制に関する検討について調査審議を行う。そのために設置されましたものであります。

諮問の内容に沿いまして、上場会社が純粋持株会社である場合のいわゆる軽微基準など、企業がグループ経営を行っていく上でのインサイダー取引規制に関する課題につきましてご検討いただくというのがこのワーキング・グループの目的であります。

それでは、次に、初回でございますので、このワーキング・グループにご参加いただきますメンバーの皆様方のご紹介をさせていただきたいと思います。お手元に名簿がございますけれども、事務局からご紹介をお願いします。

○増田市場機能強化室長

総務企画局市場課市場機能強化室長の増田でございます。

それでは、当ワーキング・グループのメンバーの方々をご紹介させていただきます。座席順にご紹介させていただきます。メンバーの皆様の右側から阿部泰久様でございます。

○阿部委員

よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

それから、上柳敏郎様です。

○上柳委員

どうぞよろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

川口恭弘様です。

○川口委員

川口でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

川田順一様です。

○川田委員

川田でございます。よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

神作裕之様です。

○神作委員

神作でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

黒沼悦郎様です。

○黒沼委員

黒沼でございます。よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

小林繁治様です。

○小林委員

小林でございます。よろしくお願い申し上げます。

○増田市場機能強化室長

佐伯仁志様です。

○佐伯委員

佐伯でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

静正樹様です。

○静委員

静でございます。よろしくお願い申し上げます。

○増田市場機能強化室長

田島優子様です。

○田島委員

田島でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

田中浩様です。

○田中委員

田中です。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

平田公一様です。

○平田委員

平田でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

綿貫治子様です。

○綿貫委員

綿貫でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

次にオブザーバーをご紹介申し上げます。法務省刑事局刑事課長和田様です。

○和田オブザーバー

和田でございます。よろしくお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

このほか、本日はご欠席ですが、当ワーキング・グループのメンバーとして、大崎貞和様、柳川範之様にもご参加いただくこととなっております。

なお、事務局につきましては、時間の都合もございますので、お手元の配席表をもってご紹介に代えさせていただきます。

○神田座長

ありがとうございました。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

次に、議事の進め方について幾つかご確認いただくことがございます。このワーキング・グループでございますが、原則公開ということにさせていただき、議事録も公表ということにさせていただければと思います。したがいまして、皆様方には公開、公表を前提としてご意見、ご発言をいただくということにしていただければと考えております。

このような形で議論を進めたいと思いますけれども、ご承認いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○神田座長

どうもありがとうございます。

それでは、そういうことにさせていただきます。

それでは、次に事務局から諮問事項とインサイダー取引規制の概要についての説明をしていただきます。よろしくお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、資料に沿ってご説明させていただきます。まず資料2でございますが、「諮問事項(抜粋)」でございます。「四」とございまして、こちらに書いてあるとおりでございますが、近年、金融機関を含め、企業の合併・再編が進んで、子会社等から構成されるグループ経営が一般化してきております。こうした実態を踏まえて、企業が円滑なグループ経営を行っていく上での金融に係る制度の見直しが必要になります。このうち、取り組むべき課題ということで、当ワーキング・グループにおきましては、(2)でございますが、「第二に、上場会社等の単体ベースの決算値を基準としている現状のインサイダー取引規制のうち、合併等の重要事実に係る軽微基準及び決算情報変更に係る重要事実について、上場会社等が純粋持株会社である場合には連結ベースの決算値を基準とするような特例を設けること等について、検討を求めます」ということで諮問事項をいただいております。

それから、資料3でございますけれども、「インサイダー取引規制の概要」ということでございます。資料、大部でございますので、ちょっと端折りながらご説明させていただければと思います。

1ページ目でございますが、「総論」「インサイダー取引」ということでございます。有価証券の発行会社の役員等は、投資家の投資判断に影響を及ぼすべき情報について、その発生に自ら関与、または容易に接近し得る立場にあると。これらの者がそのような情報であって未公開のものを知りながら有価証券に係る取引を行う場合は、一般にインサイダー取引、内部者取引の典型的なものということを言われております。

このような取引が放置されますと、証券市場の公正と健全性が損なわれて、証券市場に関する投資家の信頼を失うことになるということで、証券取引審議会の報告が出されております。

続きまして2ページでございますが、その報告を受けまして、まず昭和63年の5月に改正証券取引法が成立しておりまして、今の報告を踏まえる形でインサイダー取引に着目した規制が設けられるとともに、刑事罰則を整備してございます。

その後、大きな改正を挙げさせていただきますと、平成10年の6月には、特に独禁法の改正がございまして、持株会社の解禁と連結ベースのディスクロージャーへの移行ということで、会社関係者等に親会社や子会社の会社関係者を追加する。それから、重要事実に子会社に関する重要事実を追加する。上場会社等の決算情報に企業集団の売上高等の差異を追加するといった改正がなされてございます。

さらに平成13年6月におきましては、商法が改正されたということで、いわゆる金庫株の解禁に伴いまして、インサイダー取引規制の整備、具体的には自己株式処分を重要事実に追加するなどの改正が行われてございます。

それから3ページも、改正が行われておりますが、具体的に4ページに会社関係者のインサイダー取引規制、法律166条の要件でございますけれども、書かれてございます。会社関係者が、上場会社等の業務に関する重要事実を、その者の職務に関し知りながら、当該重要事実が公表される前に、当該上場会社等の株券等の売買等を行うことということになってございます。その際には会社関係者からの重要事実の伝達を受けた者についても該当するということになってございます。

5ページでございますが、「会社関係者」ということで、大きく5つに分かれてございますが、上場会社等の役員等、それから帳簿閲覧請求権等を有する者、法令に基づく権限を有する者、契約を締結している者または契約の締結交渉中の者と、それからその同一法人の他の役員等ということで会社関係者が定義されてございます。

6ページでございますが、「重要事実」。当該重要事実を知るということが重要なわけでございますが、これにつきましては、軽微基準というのが政令または府令で定められてございます。具体的には1の「決定事実」の中で特に今回の審議事項に関係するところを中心にご紹介させていただきますと、例えば下から2段目でございますが、「合併」とございます。合併につきましては、合併自体は重要事実に該当するわけでございますが、吸収合併存続会社となる場合につきましては、合併による資産増加額が直近の純資産額の30%に相当する額未満と見込まれること、かつ、売上高、2期分の増加額が直近の売上高の10%に相当する額未満と見込まれること。または完全子会社との合併と。こういったものが軽微基準ということで、これに該当する場合には重要事実に該当しないということでございます。

それから7ページでございますが、一番下の段ということで、「業務上の提携その他の上記に掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項」。ここでは具体的には子会社の異動を伴う株式・持分の譲渡・取得についてご紹介させていただきますと、既存会社の子会社化、または既存子会社の非子会社化の場合につきましては、既存会社・既存子会社の総資産の直近の帳簿額が会社の直近の純資産の30%に相当する額未満、かつ、次の8ページでございますが、会社の売上高の10%に相当する額未満の場合には軽微基準に該当するとされております。

それから、2「発生事実」、それから3が「決算情報」ということでございますが、8ページの一番下の段、「売上高」と書いてございます。これについては、売上高については、単体と連結ベース、両方でございますけれども、新たな予想値または決算の数値の公表された直近予想値からの増減額が10%以上のもの、これについては、重要事実ということで、逆に該当するということになってございます。それから経常利益、それから純利益、剰余金の配当については単体ベースで適用をするということになってございます。

それから9ページの4でございますが、「その他」ということでバスケット条項が置かれてございます。

5につきましては、子会社に係る重要事実であっても、同様に当てはまるものがあるということでございます。

それから10ページでございますが、重要事実につきましては、公表がなされた場合についてはインサイダー取引規制の適用がないということでございます。

次に、「売買等」ということで、売買その他の有償の譲渡・譲受けというものが該当するということでございますが、今回のワーキングとの関係について申し上げますと、上場株券等について有償で所有権を移転することであり、売買のほか、交換、代物弁済、現物出資等が該当するわけでございますが、いわゆる有価証券の発行とこれに対応します原始取得については、ここでは売買等には該当しないと解されております。新株発行等の場合は原始取得に該当しますけれども、後ほど議論で出てまいります、対価として自己株式を交付する場合については、有償の譲渡に該当するものと解されてございます。

それから11ページ目でございますが、1から10まで、適用除外に該当する場合ということで、例えば1でございますが、「株式の割当てを受ける権利の行使による株券の取得」。こういったものについては適用除外ということになってございます。

それから12ページでございますけれども、「インサイダー取引に対する制裁」ということで、インサイダー取引を行った者については、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはこれらを併科するということになってございますし、法人の代表者、従業員が行った場合、法人の業務として行った場合については、法人も両罰規定の上、重課ということで、5億円以下の罰金が課せられることになっております。また、犯罪行為により得た財産については必要的な没収・追徴の規定が置かれてございます。

それから、課徴金については、違反者の経済的利得相当額ということになってございます。

13ページでございますが、「近年のインサイダー取引に対する執行状況」ということで、課徴金納付命令と告発が近年増加傾向にあるということでございます。

それから14ページでございますが、今回直接はそれほど関係しないかもしれませんが、公開買付者等が関係者の場合の禁止行為が具体的に定められておりまして、15ページにその関係者、公開買付けの定義、それから16ページに適用除外ということで、規定がされております。

インサイダー取引の規制の概要については、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。続きまして、今回皆様方にご審議をいただく事柄につきまして事務局から説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、資料の4-1でございます。大きく3つございますけれども、順番にご説明させていただきます。まず1でございますが、「純粋持株会社に係る重要事実」ということでございます。これにつきましては資料4-2も併せてご覧いただければと思います。資料4-2の左側でございますが、売上高が1,500億円の場合につきましては、例えば売上高の10%が基準ということになってございますので、売上高の150億円未満の会社を子会社とする場合には、軽微基準に該当するということで、重要事実には該当しません。また、売上高に関する決算予想値の変更につきましては、やはりこれも10%が基準でございますので、150億円未満の場合には重要基準には該当しないということで、重要事実に該当しないということになってございます。

右側でございますが、今回審議いただく純粋持株会社につきましては、通常グループ会社からの配当が主な収益、売上高ということでございますので、この場合、例えば甲乙ホールディングスということでございますが、配当が60億、配当が40億、それぞれ上がっている場合に、売上高の10%が軽微基準の該当の有無を判断するものでございますので、例えば売上高が10億未満であれば軽微基準に該当するということでございますけれども、具体的に売上高が1,500億といった子会社がいる場合について、さらに例えば子会社をつくるような場合については、その子会社の売上高が10億円以上であれば、10億以上というのに直ちに当てはまってしまうという点がございますので、グループ会社からの配当ということだけを考慮している純粋持株会社について、果たして単体の基準だけで判断するのがいいのかという点がございます。決算情報について申し上げましても、これについては、単体と連結、両方で見ているわけでございますが、やはり単体ベースで見た場合には、決算予想値の変更増額が10億円以上の場合には、重要基準に該当するということになってございます。

具体的に、売上高が10%、10億について変動があった場合については重要基準に該当してしまうということで、こういった純粋持株会社について、単体ベースで判断するのが果たして妥当かどうかということで、連結ベースの基準とすることについてはどう考えるかということをご議論いただきたいというのが1点目でございます。

それから、2点目でございますが、「企業の組織再編に係る規制の適用関係」ということでございます。これにつきましては、これも資料4-3を併せてご覧いただければと思いますが、企業が最近、合併、会社分割、株式交換、事業譲渡等を行う場合に、具体的には、例えば資料4-3の左側から見ていただければと思いますが、B社が存続会社ということで、A社の事業を吸収合併する場合に、A社の事業bにおいて取引先の上場株式を有している場合がございますが、これについては、合併に当たるということで、全財産が包括的に移転するということで、包括承継の形をとることになってございますので、いわゆる売買等には当たらないという整理がなされております。

下でございますが、これが事業譲渡の場合については、個別の財産の移転ということでございますので、特定承継ということで、売買等に該当するとなってございます。同じ合併という手続と、事業譲渡という目的が同じ手続につきまして、法的性質、特定承継か包括承継かということで差が出ているということについて、中立的ではないのではないかというご指摘をいただいているところでございます。

それから、右側の例でございますが、吸収合併の例でございますけれども、上の例からご説明しますと、E社という会社がF社に吸収合併される際に、対価を新株の発行という形で交付する場合につきましては、新株発行は、先ほど申し上げましたように、原始取得ということで、売買等には該当しないという整理がなされてございます。

一方で、下の例でございますが、今度は自己株式を交付する場合については、これは有償の譲渡ということで、売買等に該当するという整理がなされてございます。同じく吸収合併を行う際に、会社側でとられる手続が新株発行なのか、自己株式を交付するのかという点で、法的な性質の違いがあるとはいいましても、取り扱いに違いが出てきているということでございますので、このあたり整理をしなくていいのか、中立的ではないのではないかというご指摘をいただいているところでございます。

これが2の「企業の組織再編に係る規制の適用関係」ということでございます。

最後、3につきましては、今回グループ経営について検討を進めることになってございますので、グループ経営とインサイダー取引規制についてほかに議論すべき事項等がありましたらご指摘をいただいて、ご議論させていただければと考えてございます。

事務局からの説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。ということでございまして、資料の4-1で言えば、1、2、そして今付言されましたその他、グループ経営との関係で何かあれば3ということでこのワーキング・グループでご議論をいただければということであります。

それでは、今日は初回でございますので、あと残りのお時間は、今事務局からいただきました説明等につきまして、皆様方からご質問、ご意見、それから今後の進め方等についてでも結構ですけれども、ご示唆等をご自由にご発言いただければと思います。どなたからでも、どの点でも結構ですので、お願いします。田中委員、どうぞ。

○田中委員

質問なんですが、1の純粋持株会社に係る重要事実、この考え方には賛成なんですが、純粋持株会社の定義、範囲、これを今どのように考えられているのか、質問したいと思います。

○増田市場機能強化室長

今のところは特に限定をかけてはおりません。独占禁止法の規定などもございますが、純粋持株会社をどのように考えていくか、また、その範囲も、例えば純粋持株会社に限定するのがよいのかというところあたりは、逆にご議論いただければということでございます。

○田中委員

最初にそういう質問をさせていただいた背景として、法律の定義でいうと、独禁法上の持株会社の定義がありますので、それを直ちに適用されるということでありますと、ちょっと範囲が狭いだろうなと考えています。特に当社、野村ホールディングスのような場合ですと、実態上は純粋持株会社なんですが、独禁法上の持株会社の定義を適用されますと、国内の子会社株式の取得価額が総資産の半分超でないといけないということで、現在当社のように海外のオペレーションが大きい場合ですと、それに該当いたしませんので、このあたりのところを、狭い範囲ではなくて、なるべく広く考えていただきたいと思います。これをやっていただかないと企業は機動的な対応ができない場合があると思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。どうぞ。

○阿部委員

同じような意見でありますが、もともと独占禁止法の持株会社の定義は非常に狭くなっているので、これを一般論でほかの場面に使うことは想定してないと考えられるところ、今回こちらで議論するのであれば、定義できるかどうかは難しいと思いますが、改めてそれを考えていきたいということが1点です。それから、審議事項の2の組織再編にかかわる問題ですが、意図は、包括移転をする合併の場合は、「売買等」にあたらないのは、当然であると思うのですが、そうではない事業譲渡についても同じように「売買等」にあたらないものとしようとするのか。あるいは、合併であっても、資産の移転と考えて規制を及ぼすのか。どちらの意図なのですか。

○藤本市場課長

ここで出していますのは、とにかく規制が中立的ではないということでありますので、そこはどうしたらいいのか。どっちかに寄せるというのもあるとは思うんですが、ほかの解決法もあるかもしれませんし、そこら辺をご議論いただければと考えております。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

質問というか、これまでの経緯を私、あまりよくわかってないのですけれども、売上高の予想値がぶれたときの軽微基準の考え方で、10%となっているのは、これはいろいろ今まで議論があってのことだろうとは思うんですが、どんな感じの議論なんでしょうか。投資家なり消費者の立場から見れば、軽微基準の範囲が狭いほうが一見いいように見えるんですけれども、やっぱり売上げの10%というのは、結構今の経済状況だと、予想が外れるといいますか、予想から範囲を逸脱することがあるのではないかと思います。とはいっても、幾らにすればいいのかという意見があるわけではないんですけれども、今までここの点についてもしご議論があったら教えていただきたいと思いました。

○藤本市場課長

これはインサイダー取引規制を導入するときに、証券取引の公平性、信頼性というものを確保しなければいけないという要請が一方であり、他方で、経済活動の円滑という観点からどういうものを適用除外にするかという論点もある。もう1つは、当初は刑罰を課するという制裁だけだったわけですが、どういうものであれば刑罰を課すことが適当かということをいろいろ勘案して、10%ということになったと承知しているところでございます。

○上柳委員

すいません。これは外国も大体このぐらいなんでしたっけ。

○藤本市場課長

外国の場合はこのような軽微基準というものを具体的に売上高の幾らというように定めるということには必ずしもなっていないと承知しております。我が国の場合は、当時インサイダー取引規制というものを新たに導入するに当たって、どういうものが規制の対象になるのかというものと、それから、どういうものが適用除外になるかというものを明確に定めたほうがいいのではないかという議論が行われて、そういう数値が具体的に定まっていると承知しております。

○神田座長

では、黒沼委員、それから静委員、お願いいたします。

○黒沼委員

純粋持株会社に係る重要事実の論点なのですけれども、これは純粋持株会社の場合に、子会社からの配当が売上高になっているという点で、通常の会社と違うという点が1つの論拠になっており、そこをきちんとしたほうがいいのではないかという議論はできると思います。

それから、売上高10%以上の会社を子会社とする場合には軽微基準に該当しないという点も、子会社については、通常の売上高の金額を問題にして、それが何%に当たるかは純粋持株会社の売上高である配当についての基準を問題にして、本来比較すべきでないものを比較して10%かどうかを決めているから、整合性がとれていないというのはよくわかります。しかし、この問題は、そういった整合性をとるように変えるということのほかに、上柳委員も言われたように、その基準が投資者判断にとって重要な影響を与えるような軽微基準になっているかどうかという、より実証的な見地からも検討しなければならないのではないかと思います。例えば純粋持株会社で、これを連結にした場合には、配当の10%に当たるからといって重要事実にならない場合があるのはわかるのですけれども、本当に配当が10%変わってきたら、それは投資者判断にとって影響を与えないのかどうかというのをきちんと調べないと、簡単に整合性がないから外していいというだけの話ではないと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。静委員、どうぞ。

○静委員

まず1点目でございますけれども、純粋持株会社関係のことを申し上げたいと思います。先ほど事務局のご説明にもございましたように、インサイダー取引は、上場会社が重要事実を公表することによってインサイダー取引規制が解除されるという仕組みですので、要は、会社の公表と裏腹にあります。私が本日出てきたのも、実は、会社が公表する適時開示の担当だから出てきているわけでございます。

適時開示の世界では、既に、軽微基準の建て方を連結ベースを中心に移しているということがございます。つまり、投資家の投資判断が連結ベースで行われることが多くなってきている、そちらが主流になってきているという考え方に立って、取引所ではそういうことを一歩進めてやっているという経緯がございますので、方向性としては、純粋持株会社のような極端な場合につきまして、連結ベースに基準を改めていくというのはよろしいんじゃないかと思っております。できれば、もうちょっと純粋持株会社の範囲、連結ベースで重要事実を定める会社の範囲を広げていく方向で検討されるのがよろしいと思いますので、1つ申し上げておきたいと思います。

それから、先ほどの売上高の10%が何で10%なのかということでございますが、これにつきましては、私もその当時直接携わっていたわけではございませんが、法令を初めてつくった平成元年のときは、それまでの東証で行われていた適時開示の目安のようなもの、それは何十年にもわたる実績を積んでいるものなので、これを流用しようかという話だったのではないかと推測をいたします。当時から適時開示につきましては、売上高の10%以上ぐらいのものが株価に大きな影響を与えるという経験的な部分がございまして、10%ぐらいの水準で適時開示をしていただいたというのが法令の参考になったのではないかと理解しておりますので、補足させていただきました。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。川口委員、どうぞ。

○川口委員

純粋持株会社について、お話を聞いていると、やっぱり問題がありそうで、この改正の方向で検討すべきかと思いますが、先ほど純粋持株会社の定義が確かに問題になったということに加えて、事業持株会社であっても、かなり配当の割合が大きいような会社もあるわけで、そことの線引きを今後はどうしていくのかというのが検討課題かなと思います。

それともう1点、論点の2つ目の新株発行と自己株式の交付の問題ですけれども、本日は企業再編に係るところだというところでこういうのが取り上げられていますが、実はこれは企業再編に限らず、インサイダー取引全体にかかわる問題で、企業再編以外の場合にでも、自己株式を交付した場合と新株発行を交付した場合とで規制が違っているということになりますので、ここだけの問題ではおそらく限らずに、166条全体の大きな問題になるだろうと思います。だからといって、ここで検討すべきでないと言っているわけではありませんで、ぜひ検討をすべきだと思います。証券取引法時代の名残りで、自己株式と新株発行は、既発行と新規発行で分けているわけですが、ディスクロージャーの部分では随分それが解決されてきていますし、そろそろインサイダー取引についても検討すべきなのかなと思います。

長くなりましたけれども、もう1点、1988年の立案担当者の解説を読みますと、商法の規制が新株発行には存在している、あるいはディスクロージャーが存在しているから新株発行規制はここで外しているという解説がありますけれども、ご案内のように、自己株式の処分については会社法のルールは同じですし、ディスクロージャーにおいても、売出しに該当すればディスクロージャーが必要なわけですから、規制の内容は変わらないということになると、やはり整合性がとれてないので、その点をここで検討すべきかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。川田委員、どうぞ。

○川田委員

川田でございます。私ども、純粋持株会社でございますので、その立場でご説明申し上げたいと思います。

私どもの実態を申し上げますと、売上高は連結ベースで9兆6,000億円でございます。一方単体になりますと500億円でございまして、これは先ほどご説明あったとおり、単体の売上高といいますのは、子会社からの配当とあと経営管理料、この2つで構成されておりまして、500億円だという実態でございます。純粋持株会社でございますから、当然事業は行っておりません。あくまでも子会社の経営管理が主たる業務になっているという実態がございまして、そうしますと、今回のインサイダー取引の一番ポイントであります投資家の投資判断に影響を及ぼすべき情報につきましては、これはほとんど子会社の情報でございます。もちろん決算につきましても連結ベースで投資家は判断をされておりますし、9兆6,000億円のところに関心を持つのであって、500億円の売上高には関心はないという実態がございます。また、事業の再編、あるいは事業の拡大、業績につきましても、子会社それぞれについて関心を持っております。先日、株主総会を私どもやったわけでございますけれども、株主総会はあくまでホールディングスの株主に対する説明でありますけれども、株主の関心事はすべて事業会社の事業活動に関するものであったという実態があるということをまずご説明申し上げたいと思います。

したがいまして、この重要事実につきましても、あくまでも投資家の投資判断に影響を及ぼすべき情報という観点から言うならば、当然これは連結ベース、あるいはグループベースでお考えいただくべきじゃないかと、私ども、そういうふうに思っております。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございます。神作委員、どうぞ。

○神作委員

神作でございます。審議事項の第1の純粋持株会社に係る重要事実につきましては、純粋持株会社の定義ともかかわってまいりますけれども、基本的な考え方としては、投資家としてグループ全体に投資しているという実態がある場合には、―これは黒沼先生ご指摘のとおり、本来は実証的に調査されるべきかもしれませんけれども-、少なくとも抽象的にはグループ会社全体に投資していると言い得る場合には、重要事実の考え方も基本的には連結ベースでとらえていくことが論理的であると思います。現在のインサイダー取引規制の考え方が、単体の規制の上にグループの場合には子会社についての重要事実をいわば重ねているという形で原則として規律されているものと理解しておりますけれども、基本的な方向としては、連結ベースで考えるということが適切であると思います。

また、2番目の企業の組織再編に係る規制の適用関係でございますけれども、規律が中立でないという点は、まさしくご指摘のとおりかと思います。そのような観点からは規律をそろえていく方向に議論することが望ましいと思われますけれども、内部者取引の規律全体のあり方と相互に影響を受けることにならざるを得ないと思います。つまり、例えば諸外国のように、内部者取引の要件として内部者情報を「用いて」という要件、内部者情報が存在していることがまさに因果関係と申しますか、そのような情報があるからこそ内部者取引を行う動機になっているというルールが確立しているのであれば、問題提起されているような企業再編等も含む形で全体として適切な規律ができる余地も十分にあると思いますけれども、現行の規律のほかの部分はあまり動かさずにこの部分だけ譲受け等の場合と同様の規律を課す方向に動かすということになると、非常に問題が生じてくるようにも思われます。企業の組織再編に係る規制の適用関係については、内部者取引の全体の見直しの中で検討されるべき問題ではないかと考えております。

○神田座長

どうもありがとうございました。では、小林委員、それから田中委員。

○小林委員

小林でございます。最近私ども大阪証券取引所でコーポレート・ガバナンスレポートということで上場会社の実態を調査したレポートを発行しておりますが、数字を少しご紹介して皆様のご参考にさせていただければと思います。

市場第一部におきまして10社以上の連結子会社を有する企業、私ども見ますと、69.6%の374社という数値でございました。また100社以上の連結子会社、かなり多い子会社でございますが、これを有する企業というのは12.5%の67社という状況でございます。また、比較的中堅・中小成長タイプの企業が多いと言われるJASDAQで見ますと、JASDAQ企業の場合、親会社を有する会社の割合というのは比較的多ございまして、JASDAQのスタンダードと言われる基準の企業群では15.3%の143社という状況でございます。より小型企業の多いグロースと言われる企業群でも11.1%の6社ということで、親会社を有する中堅企業会社も多いということで、公開会社の中ではグループ経営がかなり広く、企業規模の大小にかかわらず活用されているという現況を見ますと、企業の状況をグループ体で認識するということは大変重要だと考えておりますし、また私ども、先ほど東京証券取引所からもご紹介頂戴されましたように、開示におきましては、適時開示の基準といたしまして連結ベースを採用しているということで、やはり投資者の投資判断に重要だという観点に立って開示を行っていただいている状況でございます。

そういった意味で、投資判断の重要事実ということからも、またグループ型経営にとっての重要度を反映した観点という点からも、連結主体で見ていくということは大変時宜にかなったものだと考えております。

以上、簡単なご紹介でございますが、申し上げさせていただきました。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、田中委員、綿貫委員の順でお願いします。

○田中委員

1の純粋持株会社にかかわる重要事項の事実のところで追加的に要望したいことがありますので、話をいたしますが、合併等の軽微基準という、この等の中身なんですが、合併に関しては、もちろんこれ、連結ベースにしていただきたいんですが、それ以外の決定事実、発生事実、これらに関してもぜひ加えて対象にしていただきたいと考えます。例えば持株会社に訴訟が提起された場合、訴訟金額が比較的小さく、連結で考えたら小さいものであっても、持株会社だけで見ると非常に大きくなってしまい、この軽微基準に該当してしまうというようなこともございます。したがいまして、合併等の「等」の中には、その他の決定事実、発生事実、これらもぜひ加えていただきたいと思います。

それから2番目の企業の組織再編に係る規制の適用関係、これに関しまして、法的にはいろいろな見方、見解があると思いますが、もともと今回の金融審のところで、グループ経営が一般化している中で、それを円滑に行うためにということが大前提であると理解しています。そういう意味で、経済的に実態面では変わらないというときに、片方は売買という形の規制がかかり、片方はかからないということでは、円滑なグループ経営というものに支障を来すことになりますので、ここは円滑なグループ経営ができるように両方とも適用除外にしていくというふうにしていただくのが適当ではないかと考えます。

それから、3番目のその他の事項ということで1つ検討願いたいことがあります。現在公開買付けの公表措置に関してなんですが、自社株の公開買付けに関しては、TDnetを使い、即時それが公表措置という形になります。ただ、これが例えば他社株を公開買付けするようなケース、その場合には2社以上の報道機関に対して公開し、それが12時間たたないと公表措置とならない。つまり、その間は情報がインサイダー情報に取り扱われるという形になります。通常この引け後に公表できればいいわけなんですが、それ以前の段階でマスコミ等に一部リーク記事のようなものが載ったりする場合、取引所サイドのほうは、発行会社に対して事実関係の有無を確認すると。それで発行会社のほうは速やかにプレスリリースをして、それが事実であれば事実ですということを認める。ただ、今の規定ですと、12時間たたないとそれが公表措置をとったことにならないと。実態的にはマスコミで報道されていますので、ある意味では実態的にはもうインサイダー情報でも何でもないんですが、ただ、法的にはそういうふうに取り扱われていて、実際当事者の事業会社の対応としては非常に中途半端な形になる。例えばいろんな投資家等に対しても適切に説明しなければいけない。したがって、例えばアナリストを呼んで、事実関係を明確に説明したい。でも、これはまだ法的には未公表の状況なので、それをやるのがいいのか悪いのか。当社としては、それに対して、それはやめるようにということを事業会社に対して申し上げるわけなんですが、ただ、これがほんとうにマーケットにとって適正な処置であるのかというところは甚だ疑問だということです。

ただ、では、どうすればいいのかというのに関しましては、買い付けする会社が上場会社であればTDnetを使えますので、TDnetに買収会社がそれを掲載し、それが公表措置として認められるように考える。また、買収会社が非上場会社の場合はどうするかというのは、これは直接は上場会社はアクセスできないわけですが、これは取引所と連携をとり、TDnetに載せられるように対応を考える。あるいは、非買収会社のほうで適切な措置をとる。今のやり方では仕組み的にはちょっと難しいところもあるんですが、ただ、そういう措置をとることによって、公表措置をもっと柔軟に行わないと現状ではいろんな矛盾を抱えているということなので、ぜひこの点に関してご検討願いたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、綿貫委員、お願いします。

○綿貫委員

ありがとうございます。このお話をいただいたときに、社内でこういったことで今度ワーキング・グループができるということを話したときに、私ども証券会社なものですから、重要事実というふうになれば、それをきちんと社内のプロセスに従って管理していくということで、それは粛々とやっているわけなのですが、実際いただいた資料で、どういう不都合があるんだろうかということ、ちょっと私ども不勉強でぴんと来てないんですね。今いろいろお話を伺いましたけれども、これ、結果によっては、あるいは1つの見方をすると、軽微基準を広げる議論、あるいは重要事実の範囲を狭める議論ととられるおそれというのもあるのではないかと。そうしますと、インサイダー取引規制というのは、いろいろ世情を騒がせるわけですし、情報の不均衡が生じているときにいかに投資家を守っていくかという話が根本なので、どういう不都合があって、だから、例えば軽微基準を広げるだとか、重要事実の範囲を狭めるということが、今ご説明いろいろ出ました連結ベースで見ることの合理性ですとか、グループ経営の円滑化ということがいかに重要で、投資家保護も妨げない形でこういったいいところがあるんだというのをどういうふうに説明していくかというところがすごく難しいのではないかと思っております。繰り返しになりますが、それは私どもがわかってないだけなんだと思いますけれども、これを議論の過程でどのように投資家さんに説明していくかということをぜひ入れていただきたいと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。田島委員、お願いします。

○田島委員

今のご意見、重なるところがあると思うんですけれども、今回のこの審議事項の問題意識が、インサイダー取引規制の論理的整合性がとられているのかどうかといったような純粋に理論的な問題意識から生じているのか。あるいは、現在の規制では純粋持株会社あるいは企業の組織再編といった具体的な企業行動の中で大きな支障が生じているので、それについて解決するためには今の規制のあり方を見直さなければいけないといった具体的な背景があるのかどうか。その辺のところがちょっとよくわからなかったものですから、もし後者であるとすれば、そういった具体的な今生じている支障についてご開示いただいたほうが今後の審議に資すると思います。

○神田座長

ありがとうございました。今の点は、事務局から多少補足していただけますか。

○増田市場機能強化室長

具体的に1、今お話ありました純粋持株会社、それから2の企業の組織再編の関連について、具体的に弁護士事務所といった方々から具体的な要望が寄せられているのも事実でございます。また、例えば先日国民の声ということで要望が寄せられている中にも、具体的に1の件については要望が寄せられているということもございますので、今後の審議の中で、特にどういった点が支障になっているかというあたりも、ヒアリングをさせていただいたりしてより明らかにさせていただければと考えております。

○神田座長

よろしいでしょうか。確かに言われてみますと、1と2を卒然と読むと、何が問題なのですかというのがぴんと来ないということは確かにあり得ますよね。おそらく1は、先ほど川田委員の例でいうと、純粋持株会社は売上げが非常に小さいわけですね。下に非常に大きなオペレーションをして実際に活動をしている子会社がある。ですから、これは川田委員がおっしゃったことですけれども、実際問題として投資家は傘下の子会社のことを見て、純粋持株会社、それが上場会社であれば、投資家はその株式への投資判断をしているという状況のときに、10%動いたら重要事実ですといったものを、グループ全部で見るならいいけど、上の持株会社だけで見ると、すぐ10%になる、全体から見るとほとんど軽微なのだけれども。それをインサイダー取引の規制対象にするということでいいのですかと、そういう意味では規制緩和の要望ということかと思います。2は、そこに書いてありますように、中立的でないというお話なので、先ほどの図でいいますと、上と下とがそろってない、これでいいのでしょうかという問いなので、阿部委員や田中委員も今おっしゃいましたけれども、そろえるという話と、それとはまた別の次元で、グループについて、ではどうなのですかという話と2つあるということかと思います。

皆様方から非常に貴重なご指摘をいただいて、なかなか難しいところなのですけれども、1つには、おそらく今後議論していくと、この話はここでの審議事項である1、2、あるいは3、つまりグループに関することにおさまらない話にどうしても関係してくるというか、グループの文脈を超えてインサイダー取引規制一般の話として整理しなければいけないという課題も出てき得るかなと思います。それからさらに言うと、インサイダー規制を超えて、金商法のその他の規制との整合性、一貫性というものを考えなければいけない。そういう示唆を与えるような話も出てくるように思います。それからもっと言うと、金商法を超えて、金融・証券市場法制一般の中での整合性とか一貫性というものにも影響してくるような話も出てき得るかなとも感じられます。

例えば今日のご発言順で、純粋持株会社の話というのは、最後のカテゴリーになり得るわけですよね。金融とか証券の分野で持株会社というものをとらえる場合に、どういう定義がいいのかと。現在では独禁法に従っているわけですけれども、私も個人的に昔からなぜ銀行持株会社の規制の銀行持株会社が独禁法上の持株会社でなければいけないのか若干疑問に思っているのですけれども、そういう広がりがある話でありまして、しかし、ちょっとここでのワーキング・グループの議論の仕方としては、与えられた審議事項を議論して、それがさらに外に影響を及ぼし得るような場合には、整合性とか一貫性というのは当然考えなければいけませんので、それは必要な範囲で、何と言うのでしょうか、提言をするというか、問題提起をするというようなことで、ここでの議論はその対象範囲をあまり制約しなくていいと思うのですけれども、いかがですかね。それでよろしゅうございますかね。皆様方からお出しいただく意見は、狭くお考えにならず、広くお考えいただき、むしろ広い視点から整合性とか一貫性という議論を含めてご指摘いただければと思います。

それから、1はそういう問題なので、事業持株会社であっても実際持株会社の次元では非常に小さいオペレーションであって、実態は下の傘下の子会社のオペレーションであるという場合には、ここの言葉でいう純粋持株会社と同視できるわけだと思いますので、そういう線でのご意見をいただければと思います。

それと、論点の全部をここで私が言い直しますと時間がかかってしまいますけれども、2の問題は、やや繰り返しになりますけれども、ふぞろいでいいのかというまず基本論があって、これはインサイダー取引規制だけに限らず、川口委員がおっしゃったように、多分金商法全体に関係する話でして、開示のほうも、法律上の手当てがなされているわけではないのですよね。法律上の手当てはしないで、府令で一生懸命頑張って合わせているというようなことがありますし、公開買付けとか、そのあたりはまだ手当てされてないところもありますので、そういう問題があると思います。そして、ふぞろいを合わせたとして、次に、メーンの質問だと思うのですけれども、あるいは田中委員からご指摘ありましたように、組織再編という文脈においては、いわば両方について特例が必要ではないかとか、あるいは必要でないとか、そういう多分2つの次元での問題があるように思います。

もう1つは、おそらく日本のインサイダー取引の特徴というのですかね、あまりうまく言えませんけれども、それを維持しながら、今与えられた具体的な課題にだけこたえればそれでいいのかという問いも当然あると思うのですね。基本のところは、黒沼先生がおっしゃったように、もともとは投資判断に影響を及ぼす。そういうものを重要事実とする。それを、例えば公表されてない時点で内部の人が自分だけそれを知って取引をする。これは公正でないと。こういう考え方でできているはずなんですけれども、このルールは昭和63年の改正で初めて日本に入り、そのときは刑事罰、しかも6カ月という、それ1本で対応しようということで、さあ、どうしようかというときに、当時の関係者の方々が集まって、では軽微基準だねというので、先ほど静委員がおっしゃったように、適時開示の基準を参考に軽微基準を書いたのですね。それがその後、刑事罰等は引き上げられたり、現在では課徴金の制度も入り、またそのエンフォースメントも始まったわけです。いずれにせよ、形式的な数値基準というか、軽微基準というものを書いて、これに当たればセーフ、当たらないとアウトということでやってきているわけです。

そして、もう1点、多分これも日本の特徴と言っていいと思うのですけれども、本来はインサイダー取引の規制というのは、情報を持っていたって、別にディスクローズする義務はないので、よく英語で「disclose or abstain」と言うのですけれども、その場合には、しかし、取引はしてはいけないというルールなのです。しかし、日本の場合はそれをちょっと変えて、やはりディスクローズせよという、適時開示とリンクさせてきたという特殊な、特殊なと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、歴史があるわけです。ですから、それで、昭和63年の制定、平成元年の施行から二十数年たっているわけですけれども、諸外国と比べますと、具体的な姿はユニークなものになっているといえそうです。もちろん趣旨とか狙いは共通しているわけですけれども。

ですから、そうした枠組みの中で今回与えられた問題に対応するということで、うまくいけばもちろんそれでいいと思うのですけれども、場合によっては、基本のところ、先ほど若干の方々からご指摘ありましたけれども、そういう仕組みのところについても必要に応じた微調整というのですか、見直しというのでしょうか、が求められるということが、グループという今回の切り口を機に出てくるかもしれません。皆様方からは、ぜひその辺も、昔規制をつくったときからもう二十数年たっているわけですから、踏まえてのご意見をお出しいただければありがたく思います。

それで、まだ時間がございますので、さらにご意見をいただきたいと思います。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

ちょっと中身に踏み込みますれども、審議事項の2の後半について、新株の発行と自己株式の交付の扱いなのですが、これは私どもの立場からは両方とも売買等にあたらないと言っていただければ大変ありがたいと思っております。しかし、そのような単純な話ではなくて、ここではもう取り上げ切れないのではないでしょうか。もともと商法改正で金庫株を解禁したとき、議員立法だったこともあり、やや無理のある建て付けになっておりまして、自己株式の処分を新規発行と混同したような議論をしています。その結果、今の会社計算規則も、あるいは会計も全部混乱しています。もしかしたら、今のインサイダーの扱いも、ありうるかもしれないと実は思っています。資本取引と資産取引の峻別ということを考えたら、ひとつの考え方かもしれないと思っているんですが、いずれにせよ、ここだけで議論していても始まらない。もうちょっと金商法も含めて全体をさかのぼっていただかないと、結論を出せないなと思うんです。そういう意味では、議論は当然させていただきたいんですけれども、何か手に余る課題ではないかという気がいたします。

それから、審議事項の3ですけれども、どこまでやれるかということは実はまだわからないのですが、例えば子会社に係る重要事実そのものの問題も議論していいのでしょうか。

○神田座長

ありがとうございます。前の方はどうしますかね。事務局で資料をつくっていだたくということにしますか、それとも阿部委員から一度話をいただくことは可能でしょうか……。

○阿部委員

過去の主張とはやや矛盾するかもしれませんが。

○神田座長

これは結局、自己株処分と新株発行ですよね。阿部委員から一度整理してお話しいただけますか。

○阿部委員

わかりました。以前の商法改正の反省を含めてやります。

○神田座長

ありがとうございます。よろしくお願いします。

それから2点目は、それはインサイダー取引一般について問題提起はいただいていいと思うのですね。ただ、どこまでここで審議を尽くして、いわば最終的な報告書というか、提言に入れられるかは別ですよね。先ほど田中委員がご指摘になった公表問題というのも同じですよね。昔から指摘されてきた問題であり、以前に一度改善されたのですが、結局今も残っている点があるということですよね。そういう点も含めてぜひ日ごろお感じのことはご指摘いただいてと思います。3に含めてお考えいただいていいかと思います。

ほかにいかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

審議事項2の関係で、また次回以降できれば教えていただきたいということになるのかもわかりませんけれども、例えば吸収合併と事業譲渡について、内部者取引の関係ではなくて、ほかの開示などの関係で区別される規律があるのかどうか、そこのところ、自分で勉強せよということかもわかりませんけれども、できれば整理していただきたいなと思いました。このインサイダー取引の問題というのは、なるべくインサイダー取引というような不公正なことがないようにということがもちろん主眼ですけれども、先ほど来ご指摘ありますように、一方ではなるべく企業に起こった出来事を開示するという方法ともいえ、多分実際のところは後者の開示の方が多くの投資家には影響を与えている。というふうに言うと、またインサイダー取引自体をどう思っているのかと言われるかもわかりませんが、両方とも大事だと思います。例えば吸収合併と事業譲渡で、ここだけ見ると確かに整合性がとれてないんですけれども、ほかのことで開示されるならいいんじゃないかとかいうふうに思いますので、お願いしたい。

また、検査当局、あるいは監督当局の方で、今までのインサイダー取引、監視委員会かもわかりませんが、疑わしい事案について何かご苦労されたようなことがもしありましたら、ご事実として教えていただきたいなと思いました。以上です。

○神田座長

ありがとうございます。この問題は、言うまでもないですけれども、先ほどの売買等に当たらないという次元の問題ですね。当たらなければそもそも規制の適用はないわけなので、確かにインサイダー取引規制のときだけの問題ではないのですけれども、上と下が違っていいのかと言われると、それだけ見ると、あまり説明がつかないなと普通は思うと思うのですけれどもね。ただ、それで話はすべて終わりかというと、それはそうではないと思うのですけれども。

黒沼先生、どうぞ。

○黒沼委員

2の論点についてはこれから議論していくだろうと思いますけれども、1つだけ私の考えを話させていただきたいと思います。新株発行と自己株式の交付については、これは本来は経済実態が同じであれば同じように規制すべき話だと思うのです。阿部委員から経済実態が違うから違う規制の方がいいんじゃないかというご議論が、これから出るかもしれませんけれども、私は今のところそう考えております。ディスクロージャーについては、川口委員が言われたように、すでに、そういう方向で少し変化が起きていると認識しています。

それでは両方同じような規制にするとして、じゃあ、全部インサイダー取引の規制対象から外すかというと、おそらく従来、唯一正当化できる説明というのは、新株発行のときにはディスクロージャーが行われているので、すべての重要な情報は開示されているはずである。だから、インサイダー取引は起こるはずがない。だから、インサイダー取引の規制の対象にしなかったのだという説明かなと思います。それがいいのかどうかはまた議論の余地はあると思いますけれども、もしそういう説明で押していくのだとすると、新株発行でも、自己株式の交付でも、ディスクロージャーが行われる場合にはインサイダー取引規制の対象にしないというのが1つの考え方なんですね。ところが、合併と事業譲渡の場合を考えてみますと、これは合併に関する情報開示ではなくて、そこに含まれている財産の中に取引先の上場株式が入っている場合はどうかということですから、その上場株式の発行者の情報が有価証券届出書のような形で開示されているわけではないのです。それは上場会社ですから、有価証券報告書は出しているでしょうし、タイムリー・ディスクロージャーの対象にはなっている。そういうものをどう見ていくかということが議論の1つの切り口になるのではないかと思います。

それから、不整合だからそろえるとか、あるいは、組織再編がしにくくなるからしやすくしてほしいというのも1つの見方で、それはよくわかるのですけれども、そもそもこういった場合に、インサイダー取引のおそれがある、危険性があるのかどうか、それから、そういったインサイダー取引は投資者の市場に対する信頼を害する可能性があるかどうかというところに立ち返って検討していく必要があると思います。

そういう意味では、事業譲渡とか組織再編というのは会社法上の行為であって、取引行為ではないから、というような一刀両断な切り方ではやはり済まないのであって、例えば会社関係者のうち、会社の意思決定に重要な影響を及ぼすような人が組織再編を利用して、会社がインサイダーとしての利益を得るような取引を行うということもやはり十分考えられますので、そこは細かく検討していく必要があるのではないかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。ご発言がない方、特に何かありませんでしょうか。今までお聞きになって、刑事法の観点から佐伯先生、いかがでしょうか。

○佐伯委員

刑事法の観点からということでもないんですけれども、私も黒沼委員のご指摘の点が審議事項をいただいて気になっておりました。理屈の問題と事実の問題とがあるかと思うんですけれども、理屈の問題としては、伺っていると、純粋持株会社について連結ベースにすべきであるとか、あるいは2番目の問題について両方そろえるべきであるということはわかりやすいんですけれども、事実として、黒沼委員がご指摘になっていらっしゃるように、実際に影響を及ぼしてないのか、あるいは濫用されるおそれはないのかという点についてもう少しご説明をいただけると安心して賛成できるというか、意見を決められるという気がいたします。

よく現実を知らないので、これは質問なんですけれども、先ほど取引所では連結ベースで純粋持株会社については適時開示が行われているということをお聞きしたんですけれども、そうだとすると、現在の純粋持株会社の公表というのはどういうふうになっているのか。インサイダー規制に合わせて、取引所の適時開示基準に当たってなくても公表しているのか。それとも、公表しないで、取引をしていないのか。もちろん公表しないで取引するということはないんだと思いますけれども、実際にはどういうふうになっているのかということも、もし差しつかえなければお聞かせいただければと思います。

○神田座長

静委員、どうですか。

○静委員

それでは、補足をさせていただきますが、もともとインサイダーの重要事実を核に適時開示をしていただいているという構造になっていますので、もともとは単体ベースの数字で軽微基準を切って適時開示もしていただくことになっていました。これが最初の姿でございます。その後、ディスクロージャーが全体に連結中心に変わる中で、本来であれば連結ベースの軽微基準に全部切りかえるということが一番よろしいのではないかという方向でずっと議論してきたわけでございまして、実際には、現在、軽微基準は連結ベースで引いていると、こういう事実があります。

したがいまして、それだけ聞くと、では、重要事実に該当する、単体ベースで見て重要な事実が公表されてないんじゃないかということが心配になるわけですけれども、この部分につきましては、単体での重要事実というのは、法令上のインサイダー規制の要件でございますので、これを発表しないで上場会社がずっとリスクを抱え続けることはできないということがありますので、軽微基準そのものは連結ベースで引いたという形になっていますけれども、それプラスアルファ、単体で重要事実に当たるものについても開示が必要ということになっています。ですので、かなり重畳感のある開示が実際には行われているということだと思います。ですから、先ほど川口委員からご指摘ありましたような問題というのは、そういうところから出てきているのかなと思います。

○佐伯委員

ありがとうございます。

○神田座長

ありがとうございます。これは黒沼委員が最初におっしゃったことなのですけれども、本来は何が投資判断に影響のある事実ですかと。この基準から言えば、それは実証的にわかることなのでしょうけれども、それを言い出すと、軽微基準を全部検証しないと大丈夫なのかということになる。難しいところですよね。ただ、制度を変えるときにはそこが気になるというのは全くおっしゃるとおりだと思うのですけど。

他方、当時の経緯は静委員のおっしゃったとおりなのだと思いますけれども、適時開示の基準と現在のインサイダー取引規制の軽微基準というのはどの程度でこぼこになっているのですかね。それを一遍整理したほうがいいですね。

ほかにいかがでしょうか。

よろしゅうございますでしょうか。かなり重要なご指摘いただきましたので、さらに追加での意見等がないようであれば、また将来延長させていただくこともあると思いますので、今日はこのあたりということにさせていただきたいと思います。

本日は非常に活発なご意見をいただきましてありがとうございました。本日いただきましたご意見を踏まえまして、次回以降は具体的な検討ということに入っていきたいと思います。

次回ですけれども、企業の方から、先ほど川田委員からもお話ありましたけれども、グループ経営の観点からのインサイダー取引規制、どういう点が問題なのかというお話を、いわばヒアリングという形でお聞きしたいと考えております。それから、先ほど私も思いつきで発言して申しわけありませんでしたけれども、阿部委員にはそのうち、先ほどの点の話をよろしくお願いいたします。

それでは最後に事務局から連絡があればお願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、本日は以上で会議終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線3607、2622)

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