金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第2回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年8月2日(火曜日)9時57分~11時44分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館12階 共用第2特別会議室

○神田座長

おはようございます。まだ、予定の時間に1、2分早いようですけれども、委員の皆様方は全員おそろいでございますので、始めさせていただきたいと思います。

本日は、インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第2回目の会合になります。皆様方には大変お忙しいところ、またお暑い中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

議事に入ります前に、前回ご欠席であられたメンバーをご紹介させていただきます。柳川範之委員でございます。

○柳川委員

柳川でございます。よろしくお願いいたします。

○神田座長

よろしくお願いいたします。

また本日は、参考人といたしまして、東京海上日動火災保険経営企画部部長の半田禎様にもご出席いただいております。

○半田参考人

半田でございます。よろしくお願いします。

○神田座長

よろしくお願いいたします。

なお、本日事務局に人事異動がございましたので、事務局からご紹介をお願いします。

○増田市場機能強化室長

本日の人事異動に伴い、担当者の変更がございましたので、ご紹介させていただきます。

前市場課長の藤本拓資が総務企画局信用制度参事官に異動となり、後任として古澤知之が市場課長に着任いたしました。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは議事に入らせていただきます。

お手元の議事次第にございますように、本日はまず、企業の方と取引所のほうから、インサイダー取引規制について、グループ経営の観点からの実務上の間題点、それから適時開示との関係等につきまして、それぞれ恐縮ですけど15分程度ということで、ヒアリングといいますか、ご意見をいただきたいと思います。その後で、事務局から参考資料について説明をいただきます。そして自由討議をしていただく、そういう流れで本日の議事を進めさせていただきたいと思います。

それでは、まずヒアリングと申しますか、ご意見をいただきたいと思います。

企業ということで、まず最初にJXホールディングスの川田委員からご意見をいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○川田委員

川田でございます。

それではお手元の資料に基づきまして、私から純粋持株会社に係る重要事実、特に軽微基準との関係につきまして、実務上の観点からその問題点を整理し、ご説明申し上げたいと思います。

まず、資料1の2ページをお開きいただきたいと思います。純粋持株会社に係る重要事実(1)といたしまして、純粋持株会社の収益構造とはどういうものか、当社の例で申し上げたいと思います。それから2点目としまして、株主・投資家の関心事項とはどういうところにあるのかというのを、私どもの会社の例をお示ししたいと思います。そして最後に軽微基準が単体ベースであることの実務上の問題点につきまして、ここで述べたいと思っております。

3ページをお開きいただきたいと思います。そもそも私どもJXホールディングス、純粋持株会社であるわけですけれども、どのような事業構造になっているのかというものをご説明申し上げたいと思います。

まず、そこの括弧に書いてありますように、これは定款上の営業目的でございますが、事業を営む会社の株式を所有することにより、当該事業会社の経営管理及びこれに附帯する業務を行うということが、私どもの事業目的でございます。

具体的に、その経営管理及びこれに附帯する業務とは何かといいますと、書いてございませんけれども、まずグループ全体の経営戦略、技術戦略の策定及び中核事業会社をはじめとする子会社の事業戦略の策定に関する指導、助言でございます。それから2つ目に、CSR、監査、企画、法務、総務、経理等の全体の調整及びそれらの事業会社に対する指導、助言、これが主な経営管理、附帯する業務の中身でございます。

そしてその私どものホールディングスの下に、大きく分けて3つの中核事業会社がございます。左から、石油精製販売事業といたしまして、JX日鉱日石エネルギーという会社でございます。もちろん100%子会社でございます。石油精製能力が152万バーレル、これは全国に8製油所ございまして、国内1位でございます。また国内の燃料油の販売につきましても、シェアが33%から35%ございまして、これも国内1位でございます。これはENEOSブランドで全国に1,300カ所ほどのサービスステーションを持っている、そういう会社でございます。また、石油化学品としまして、パラキシレンの供給能力も262万トンということで、アジア第1位でございます。これらが中核事業会社の1つです。

それから真ん中、石油開発事業としまして、JX日鉱日石開発という会社を持っています。これは石油・天然ガスの開発でございますが、14万バーレルほど生産・販売しています。これは世界15カ国で展開してございます。

それから金属事業。この金属事業というのは非鉄金属でございます。JX日鉱日石金属という会社でございまして、これは鉱山の銅の生産でございますが10万トン、チリ、ペルーで行っておりまして、電気銅の生産、製錬をいたしますが117万トン、これは世界第2位でございます。ちなみに、チリ国営銅公社のコデルコ社というのが世界第1位でございますが、それに次いで第2位でございます。そのほか、電材加工製品では世界シェア第1位の商品群も幾つか持っています。ここに書いてございませんが、環境リサイクル事業も手がけております。

そのほか右でございますが、NIPPO、これは道路・舗装工事会社、上場会社でございますが、これもシェアが日本では第1位でございます。40%のシェアを持っています。

それから東邦チタニウム、これも上場会社でございますが、金属チタンの製造・販売、航空機用のチタンの販売が主たるものでございますが、その営業を行っています。

そのほか連結グループ群がございまして、下にございますが、連結子会社の数が130社、そのほかの子会社、関連会社、合計593社という事業規模でございます。

なお、資料4-1に、事務局の方からの持株会社の一覧表がございます。この8番目に私どもJXホールディングスがございます。これは見ていただければわかりますように、連結売上高の規模、後ほどご説明しますが、これでは純粋民間企業として最大でございます。また、メーカー、製造業としても売上高はトヨタに次ぐ第2位の規模でございます。

次に4ページをお開きいただきたいと思います。これは先ほど申し上げた規模感でございますが、純粋持株会社であるJXホールディングスは営業収益が109億円、従業員は119名でございます。またエネルギー、左下の石油精製販売事業は売上高が8兆1,318億円、資産が4兆1,674億円、従業員数が1万4,000人余り。石油開発事業は売上高が1,487億円、資産が5,277億円、従業員が650名。金属事業につきましては売上高が9,405億円、資産が8,148億円、従業員数が4,767人。その他事業につきましてはご覧のとおりでございます。

ここで申し上げたいことは、ホールディングス会社というのはいかに規模的に小さいかということでございます。事業会社に比べていかに小さいかというところにご着目いただきたいと思います。

続きまして5ページでございます。これは当社、JXホールディングスの決算の概要でございます。2010年度決算はここにご覧のとおりでございます。単位は億円でございますが、単体では売上高が109億円、連結では9兆6,344億円。経常利益は単体は12億円、連結が4,137億円。純利益は単体では1,294億円、連結では3,117億円。総資産、純資産につきましてはここに書いてあるとおりでございます。

これは実は私どもが、昨年4月1日に共同の株式移転により設立した新会社でございまして、統合初年度の特殊要因がこの決算に含まれております。どういう要素かといいますと、例えば抱合せ株式消滅差益というものがありまして、これは1兆2,700億円のプラスを計上してございます。これは事業会社の合併に伴いまして発生する実現差益でございまして、いわゆる簿価と時価との差額を利益として初年度は計上できますので、その利益を計上したということで、実はこの売上高の単体、連結決算につきまして、若干いびつなところがございまして、そういう特殊要素を除いた通常年の決算イメージというのを次の箱に書いているものでございます。

これを見ておわかりのとおり、これは中期経営計画、あるいは直近の業績予想から策定したイメージでございまして、単体では売上高が500億円、経常利益400億円、純利益400億円。連結では売上高が10兆円、経常利益が3,000億円、純利益が1,800億円ということでございまして、対連結単体比率は売上高においては0.005、パーセントにすれば0.5%、経常利益では0.133、13.3%、純利益では0.222、22.2%、総資産では0.469、46.9%、純資産では0.650、65%、このような連単の比率になっているということでございます。

下に書いていますように、単体の売上高、我々は営業収益と呼んでいますが、子会社からの経営管理料100億円―これは経費見合いでございます―と子会社からの内部配当400億円、これは株主配当16円で25億株が発行済み、株式総数でございますが、25億株とした場合の合計額、これが売上高になっているということでございます。

なお、ここではそのほかの売上高には、実は中核事業会社以外の直接子会社からの配当とか、あるいは営業外におきましては、投資有価証券からの配当とか受取利息等がございますが、この表ではそれはオミットして、典型的な決算のイメージを書いたものでございます。

6ページが収益構造でございます。単体の収益構造はこのようになっております。まず、JXホールディングスが株主に対して400億円の株主配当。これは年間1株当たり16円。先ほど申し上げたように発行済みが25億株でございますので400億円。この400億円に見合う金額を、中核事業会社その他のグループ事業会社から受け取る。そのほか経営管理料、右に点線がございますが、100億円を受け取るという構造になっております。

すなわち、この下の※に書いてありますとおり、JXホールディングスの単体の売上高、(営業収益。500億円)は、経営管理業務のコスト分100億円―これは人件費が中心です―を除くと、株主への配当に充当するための事業会社からの内部配当のみであります。そのため、この額といいますのは、持株会社が連結決算をベースとして任意に決定する株主配当額に伴い、常に変動するという構造にございます。

ここに書いてございませんが、何を申し上げたいかといいますと、要は、JXホールディングスはまず最初に株主の配当額400億円を決定するわけです。その見合いの400億円を、中核事業会社からの内部配当という形で吸い上げるという仕組みになっています。つまりJXホールディングスの売上高利益、400億円でございますが、これはJXホールディングスの配当方針に沿って上下します。400億円のこともありますし、あるいは利益が出ますとこれが500億、600億円になりますし、利益がなければそれが300億、200億、100億円と、こういうように、常に配当政策に伴って売上高、利益は変わるんだということをここでは申し上げたいと思います。

7ページをお開きいただきたいと思います。まずそういう収益構造にあるわけでございますが、株主・投資家の関心事項はどういうものがあるかということの分析でございます。私どもはIR活動を当然行っているわけでございますが、そのIR活動の分析結果がそちらでございまして、要は、株主・投資家の主たる関心というのは、連結決算、連結グループ各社の事業展開・結果及びグループ全体の今後の見通しでありまして、ホールディングスに関する関心というのは配当、それから持株会社のガバナンスについてのもののみでありまして、単体の決算についての関心はございません。

ここに四角で書いてございますように、純粋持株会社の場合、投資家は、単体の決算、特に売上高・利益というものが株主配当相当額であることを承知しておりまして、単体の決算数値について「投資家の投資判断に影響を及ぼす」重要事実との認識はないのではないかと私どもは思っております。それゆえ、社内においても、単体の決算数値について重要性の認識は役職員ともありません。これは配当率が変わるという数字でございますので、その決算自体には興味、重要性の認識はないということでございます。ここが最大のポイントだと私どもは思っております。

8ページでございます。これは参考までに、私どもが今まで国内機関投資家、海外機関投資家、あるいはアナリスト、次のページは株主総会における個人株主の質問事項について分析したものでございます。

ご覧のとおり、ここでわかりますように、単体の決算に関する質問は皆無でございます。主に連結グループの事業内容とか、連結グループ各社の個別事業の業績とか見通し、今後のコスト削減、あるいは連結グループ全体の連結業績、中期経営計画であります。配当も、配当政策であるとか、増資計画であるとか、あるいはガバナンスというのは、親会社、持株会社の役員の人数であるとか、社外役員の動きであるとか、報酬であるとか、そういうものでございまして、単体の決算についての興味はないということがここのポイントでございます。

次に10ページでございます。軽微基準が単体ベースであることの実務上の問題点についてここに記載してございます。要は、投資家の投資判断の基準が連結ベースになっている現実を踏まえ、東証適時開示基準上の軽微基準は、既に原則として連結ベースの数値に移行しています。他方、内閣府令に基づくインサイダー取引規制の軽微基準は、依然として一部は単体の数値基準のままです。例えば、合併の場合の両軽微基準は、私どもは通常年のモデルを前提とすれば、次のとおり大幅な乖離があるというのはご覧のとおりでございます。

下に書いてありますように、親会社が合併する場合は2により、また子会社が合併する場合は1によることとなっており、その数字の違いというのは一目瞭然であるということでございます。ここに書いてございませんが、決算上の変更についても同様の乖離がございます。こういう実態があるということでございます。

そこで11ページでございます。連結と単体の売上高。これは売上高と言っておりますが、経営利益についても同じことが言えるわけですけれども、質的、あるいは量的にも違いがあるんじゃないかということでございまして、まず質的相違でございますが、事業会社の売上高といいますのは、事業遂行の結果として計上されるのでありまして、事業規模を示す客観的尺度になり得るだろうと思いますが、他方、純粋持株会社単体の売上高は、会社が配当政策に基づき、配当原資相当額として任意に決定するものでありますから、事業規模を示す客観的尺度にはなり得ない、そういう性格の違いがあるというのがまず1点。

それから、先ほど来申し上げているとおり、量的にも、純粋持株会社の単体の売上高と連結の売上高では大きな差があるということがここにございます。

そして12ページでございますが、そういう問題点があるゆえに、私どもとしては連結、単体の売上高の質的・量的相違に鑑みれば、純粋持株会社単体の売上高を軽微基準に用いるのは適切ではないのではないかという思いをしております。

なぜかといいますと、まず質的相違があるということからの問題点ですが、純粋持株会社単体の売上高には任意性が介在しているといいますか、任意性だけなんでございます。でもそれを定量的・客観的であるべき軽微基準とするのは適切ではないのではないかということです。

それから量的違いに由来する問題点としまして、連結とは質的に異なる単体軽微基準の適用結果である単体の重要事実は、会社関係者のみならず、先ほど申し上げたように投資家の一般的意識とも乖離しています。つまり投資家は重要だと思っていないということから、その認識が乖離しているのではないかということでございます。

このような実務上の違いがあるということから、13ページでございますが、実務の問題点として、私どもは2点ほど申し上げたいと思います。

1つは四角にありますように、会社は、インサイダー取引規制に関する理解不足に起因する違反行為、いわゆる「うっかりインサイダー」を防止するために、役職員の自社株売買に関する規程の制定とその周知徹底、未公表の重要事実に関する情報管理体制の充実を図っているところでありますけれども、その役職員、これは投資家を含む世間一般の重要事実の認識と、インサイダー取引規制上の重要事実の認識とに乖離があることから、実務上、以下のような問題が生じております。

まず1つが、自社株売買を事実上禁止せざるを得ないということであります。これはどういうことかといいますと、そういう軽微基準というのは内閣府令の場合、非常に厳しくとっておりますので、絶えず動くと言われる危険を感じておりまして、しかもこのインサイダーの場合には、いわゆる悪意がなくても違反があれば罰せられるという性格がございます。

また、証券取引等監視委員会も今は、金額の多寡を問わず、自動的に課徴金を命ずるという措置をとっていることから、非常にインサイダー取引は大変だという意識がございます。これは会社としましては、もちろんコンプライアンス上の姿勢が問われる、あるいはレピュテーションダメージがある、営業上の損害が出るということから、非常に厳密に適用すべきという考えを持っていまして、先ほど申し上げたように、自社株売買については事実上の禁止措置を講じざるを得ないという実態もございます。

私どもとしては、参考にございますように、役員について―この会社役員といいますのは、ホールディングス、あとは中核事業会社の取締役、監査役、執行役員でございますが―原則自社株売買を禁止しております。それから会社社員、これもホールディングスと中核事業会社の社員でありますけれども、原則自社株売買の際には事前届出を義務づけております。

これは原則でございまして、いずれも持株会であるとか、あるいは累投による買付けは除いておりますけれども、売る場合については厳密に禁止をしている実態にあるということでございまして、下に書いてあるように、資金に窮した事例も実は2、3件、実例としてはございます。

それから14ページでございます。実はこれもまた非常に大きくて、先ほどの禁止措置の裏腹にある問題でございますが、情報管理が複雑化し、あるいは明確化していないということから、基準を社内に徹底するのが非常に難しくなっているということでございます。インサイダー取引規制の例外を画する基準は、客観的、かつ単純でわかりやすいものであるべきところ、複雑かつ性格の異なる二重の基準―二重の基準というのは東証基準でございますが、内閣府令と東証の二重の基準は、社内管理上徹底が難しいという実務上の問題があるということでございます。

特に私どもは、純粋持株会社の事業分野が異なる企業群、あるいは社員層を持っております。エネルギー会社だったり金属であったりという、全然事業分野が異なるところを持っていまして、そういうグループでの統一的基準というのは非常に単純にあるべきところでございますけれども、その重要情報の重要基準とか軽微基準、あるいは適用除外の該当性に関する判断基準が実は統一的じゃないというところから、グループ内においてその管理基準を周知徹底するには、非常に支障がある実態にあるということでございます。

要は、こういう基準というのは単純であれば単純なほどよろしいわけで、我々2万5,000人の社員、あるいはその家族を含めると5万人以上いるわけで、こういう基準というのは、徹底するために非常に単純化したいところでございますけれども、このような二重の基準というのは、その周知徹底を難しくしている実態があるというところでございます。

ちょっと時間が過ぎましたが、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、東京海上日動火災保険の半田参考人からお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○半田参考人

東京海上日動経営企画部の半田でございます。本日は貴重なお時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

本ワーキングで検討されております事項のうち、純粋持株会社に係る重要事実に関連しまして、実態上どのような支障が生じているのか、なるべく具体的な例をお示ししながらご紹介を申し上げたいと思います。

それではページをめくって、1ページ目をご覧いただきたいと思います。本ワーキングにおきまして、インサイダー取引規制のうち、重要事実に関する軽微基準及び決算情報変更に係る重要事実につきまして、上場会社等が純粋持株会社である場合には、連結ベースの決算値を基準とするような特例を設けることにつきまして、検討されているものと認識しております。この点につきまして、損保協会では、規制改革要望におきまして、次の2点をご要望申し上げておるところでございます。

まず1点目でございますけれども、重要事実に係る軽微基準に関するものでございます。重要事実に係る軽微基準におきましては、上場会社単体ベースでの純資産額や売上高等が使用されておりますけれども、上場会社が純粋持株会社である場合には、連結ベースの純資産額や売上高等を使用した軽微基準を適用するよう、見直していただきたいというものでございます。

2点目は、決算情報変更に係る重要事実に関するものでございます。上場会社単体ベースでの売上高、経常利益または純利益につきまして、公表されました直近の予想値と、新たに算出しました予想値に一定以上の差異が生じました場合には、重要事実となりますけれども、上場会社が純粋持株会社であります場合には、連結ベースの売上高、経常利益または純利益に差異が生じた場合のみ、重要事実とするように見直していただきたいというものでございます。

次のページをご覧ください。2ページでございますが、ここで対象となります規制の概要は、以下に記載のように、金商法に定めるインサイダー規制、それから決定事実及び発生事実に係る重要事実の軽微基準、決算情報変更といいました諸点に関するものでございます。

3ページをご覧いただきたいと思います。それでは私どもの業態、保険持株会社の売上高等の特徴がどのようなものかということについて、ご説明申し上げたいと思います。保険持株会社の業務範囲でございますけれども、保険業法によりまして、原則として子会社の経営管理等のみに制限されておりまして、持株会社単体での売上高等につきましては、主に事業を行う子会社からの配当金で成り立っておるというところでございます。

このため、次の2つのような特徴が出てまいります。1つは、保険持株会社単体の売上高、これがグループ全体の連結の売上高に比べて非常に小さくなるという点でございます。もう1つの特徴は、専らこの売上高が持株会社の資金需要に左右されますために、グループ全体の経営成績とは連関性が薄いものになっているという点でございます。

次のページで具体的な例を見ていただきたいと思います。4ページでございます。このページは東京海上グループの過去5年の例をお示ししてございます。

1点目の特徴、すなわち単体は連結に比較して規模が非常に小さいという点でございますけれども、黒い網かけをした部分を中心にご覧いただきたいと思います。例えばでございますが、平成23年3月期の数字を追わせていただきたいと思いますけれども、単体の売上高ですと1,278億円、同時期のグループ連結でございますと3兆2,886億円、それぞれの単体、連結の比率で見ますと、単体の売上高は3.9%にすぎませんで、どの年次を見ていただいても非常に小さいということがおわかりいただけるかと思います。

ここでちなみに、論点となっております軽微基準につきまして、同じ年度で見てみますと、平成23年3月期の売上高で、単体ベースで見ますと128億円なのに対しまして、連結で見ますと3,289億円まで上昇してまいるということになります。

売上高の2つ目の特徴でございますが、すなわち連結との連関性が薄いという点は、同じ4ページにちょっと大きめの丸印を3つほどつけておりますが、ここを中心にご覧いただきますと、売上高自体が毎年大きく上下しておりまして、この上下連動が、連結の動向と必ずしもリンクをしていないということがご覧いただけるのではないかと思います。

ページをめくっていただいて、5ページをご覧いただきたいと思います。損害保険業界では、保険持株会社が複数の保険会社を傘下に置くグループ経営が進んでおります。持株会社単体の売上高は、主に子会社からの配当金で構成されておりまして、グループの連結売上高と比較しますと非常に小さな規模となっております。このため、単体ベースで見る場合の軽微基準は、小さな、すなわち厳しい基準が適用されてしまっております。

次の6ページをご覧いただきたいと思いますが、こちらで支障のあります例をご案内申し上げたいと思います。この6ページでは、投資家の利益となる行為の制限が発生する場合があるという例をお示ししてございます。

この下に記載の例でございますけれども、このケースではC会社の異動事由につきまして、この会社の売上高が約200億円でございました。連結ベースで見ますと10%以下になるわけでございますけれども、現在の規制、すなわち単体ベースで見ました場合には128億円が基準となりますために、重要事実に該当してまいります。

このようなケース、こうした場合に、当該M&A等の異動事由の公表までは、保険持株会社自体が未公開の重要事実を知っていることになりますので、自己株式の取得を行えず、投資家の皆さんへの機動的な利益の還元に支障をきたすというケースがございます。

7ページをご覧いただきたいと思います。2点目でございますけれども、決算情報変更に係る重要事実についてでございます。保険持株会社単体の売上高等が増加している事業年度というのは、おおむね自己株式の取得でございますとか、あるいはM&A等によりまして資金需要が生じたために、子会社からの受取配当を増額した結果であるということが多い現状にございます。

かように保険持株会社の売上高は、グループ全体の戦略と資金需要によって大きく左右されますために、その企業グループ全体の経営成績と、必ずしも連関性を持ったものではございませんで、毎年、年度ごとに大きく変動しております。実際に株主総会や、あるいはIRにおきましても、投資家の皆さんの関心は、専ら保険子会社を含めたグループの経営成績全体に向けられているものと認識しておりまして、持株会社の単体ベースの売上高等に係る投資家の皆さんからのご質問は皆無といっていい状況にございます。

続きまして次の8ページ、支障のある例をこちらでもご紹介申し上げたいと思います。下記のケースでございますけれども、ここでは自己株式の取得の原資としまして、受取配当金を増加させました。その結果、上場会社単体の業績予想の上方修正が重要事実に該当いたしましたために、適時開示を行った次第でございます。

一方でこのときに発生しておりますのは、連結の業績予想を下方修正いたしましたけれども、重要事実に該当しなかったため、その点につきまして独立した適時開示は不要だったケースでございました。

このように、グループの経営実態とは必ずしも連関性のない上場会社単体の売上高等の上方修正のみが独立して開示されまして、投資家の皆さんにとって必ずしも有益でない情報開示が行われていると考えられます。

投資家の皆さんにとりましては、資金需要の原因となる自己株式の取得でございますとか、M&A等の決定、これこそが有益な情報でございまして、これらは適時開示のルールにのっとって開示されておりまして、ここで持株会社単体の諸要素の変動は、必ずしも有益な情報ではないと考えられます。また、上記のようなケースにおきましては、その開示が、場合によっては投資家の皆さんに誤解を与えるおそれもあるのではないかと考えております。

最後に9ページになります。まとめでございますが、インサイダー取引規制に係る重要事実につきまして、純粋持株会社も一般事業会社と同様に、上場会社単体ベースの基準で判断をされております。このため、自己株式の取得という投資家の利益につながる行動が制限されますとか、また、投資家にとって必ずしも有益でない情報や、むしろ誤解を与えるおそれのある情報が提供されるといった問題点があるのではないかと考えられます。

上場会社が純粋持株会社であります場合には、決定事実や発生事実につきまして、連結ベースの純資産額や売上高等を使用しました軽微基準を適用するよう見直していただきたいということ、及び上場会社が純粋持株会社であります場合には、決算情報変更につきまして連結ベースで見た売上高、経常利益、または純利益に一定以上の差異が生じた場合のみ、重要事実とするように見直していただきたいと要望するものでございます。

なお、10ページ、11ページに参考の資料をおつけしておりますけれども、10ページのご参考1につきましては、手前どものグループで自動車保険の通信販売の子会社の設立を開示いたしました際の株価の動きを、ご参考までにお示ししたものでございます。

それから11ページ、ご参考2につけておりますものでございますけれども、こちらは、持株会社単体の業績予想の上方修正、及び自己株式の取得決議を開示しました際の株価の動きの具体例をおつけしているところでございます。

私からのご説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、東京証券取引所の静委員からお話をいただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

○静委員

それではお手元の資料に沿ってご説明させていただきます。私ども取引所では、ご存じのとおりですけれども、インサイダー取引とは切っても切れない関係にある、適時開示の制度を運用しております。本日はその立場から、この2つの関係ですとか、その間にある問題について、幾つかお話をしたいと思います。

まず、1ページでございます。こちらでは、インサイダー取引規制と適時開示の違いを比較しております。

左側が適時開示でございます。こちらは取引所の上場ルールが根拠になっている制度でございます。投資家のための情報提供の枠組みだと言ってよろしいかと思います。その目的についてはその下、ボチのところに書いてございますけれども、全国の取引所に上場している会社は現在4,000社近くあり、毎日毎日さまざまな企業活動をしておりますので、そのプロセスで時々刻々と情報が発生して、投資者の投資判断に影響を与えるような重要な情報もあるわけでございますので、これを適時・適切に開示していただくことで、公正な価格形成を確保する、そして投資家の保護に資する、これが適時開示の目的でございます。

2つ目のボチに書いてありますのは、それでは金商法に基づく法定開示とはどう違うのかということでございます。有価証券報告書ですとか臨時報告書といった法定開示につきましても、基本的には同じ目的のものだと理解しておりますけれども、現実に果たしている役割には違いがあります。法定開示のほうは、開示内容の正しさを確保するということが、制度上一番期待される部分でございますので、正確性が最重要視されるというのに対しまして、適時開示のほうはむしろ、マーケットに対してタイムリーに情報を織り込ませるということが、一番期待されている役割でございますので、迅速性ですとか、あるいは適時性といったものが最重要視されるということでございます。いわば、正式版と速報版のような違いとご理解いただければよろしいかと思います。

そして3つ目でございますけれども、Always Disclose、「常に開示」と書いてあります。適時開示の世界では重要な会社情報が発生すると、上場会社にはそれを開示する上場ルール上の義務が生じます。ここが実は後でお話しするインサイダー取引規制とは構造的に異なるところでございます。

右側に参りまして、インサイダー取引規制のほうについて申し上げたいと思いますけれども、こちらは先ほどから何度か出ていましたように、市場の信頼性を確保するための法律に基づく制度でございまして、違反しますと刑事罰まで用意されています。

その目的につきましては、1つ目のボチと2つ目のボチのところにございますように、内部情報を知り得る立場にある方が、一般投資家が知り得ないような情報を知って行う取引は不公正だということで、そのような証券市場の信頼性と健全性を損ない、市場への信頼を失わせる行為を取り締まることが主な目的かと思います。

3つ目のところに、Disclose or Abstain、「開示または断念」と書いてありますけれども、インサイダー取引規制のほうは、重要事実が発生してから会社がそれを開示、発表するまでの間、内部者は取引を禁じられるということです。つまり、会社に開示を義務づけるわけではなくて、内部者に取引を禁じる構造になっておるということでございます。

この両者の歴史につきましては、それぞれ欄の下のほうに書いてございます。簡単に言いますと、適時開示のほうは、おそらくは戦後の取引所再開以来、ずっと実務上の経験を積み重ねて、その経験を踏まえた制度改正を重ね、長い時間をかけて一歩ずつ進化してきた、こういう歴史なんですけれども、インサイダー取引規制のほうにつきましては、そういった適時開示の進展を横目に見ながら、1989年に、現在の姿の基本的なところを確立しているということでございます。その1989年の際には、法令で重要事実と呼んでおりますけれども、どのような情報をこの規制の対象にするのか、あるいは法令では公表という言葉を使っていますけれども、何をもって取引を解禁するのかといった点につきましては、おそらく既に定着しておりました適時開示の実務が、相当程度参考にされたものと想像されますし、その後も実際両者は、相互に影響しながら発展してきたという歴史がございます。

次に、2ページでございます。今、2つの違いについてお話を申し上げましたが、この2つの制度の制度的な関連性についてお話をしたいと思います。

まず1つ目でございます。1と書いたところでございますが、上場会社がインサイダー取引規制上の重要事実と言われる情報を適時開示いたしますと、その瞬間にインサイダー取引規制上の公表があったと認められまして、インサイダー取引規制が解除される、それから先は内部者が取引しても構わないことになるということでございます。

このことにつきましては構造を少しご説明したいので、8ページをご覧いただきたいと思います。仕組みを図にしてあります。

8ページには上場会社、取引所、報道機関、投資家と左から並んでいるわけですが、その1と書いてあります開示資料の登録というのが一番最初の起点でございます。上場会社は適時開示の資料、つまり、プレスリリースを、TDnetというシステムに電子的に登録いたします。

そうしますと、2-Aと書いてありますけれども、その資料は私ども取引所担当者のチェックを経た後に、多数の報道機関に一斉同時に配信されます。それと併せて全く同時に、2-Bと書いてありますけれども、取引所のウエブサイトにすべての上場会社の分がまとめてアップされまして、一瞬にしてだれでも見ることができるようになります。この仕組みは東証だけではございませんで、全国の取引所で、この仕組みで適時開示をするということを、上場ルールで決めているということでございまして、この方法で適時開示をされますと、先ほど申し上げましたように、法令上はインサイダー取引規制上で言う公表に当たって、内部者取引規制が解除される、こういうことでございます。

実はこの方法だけが公表ではございません。8ページのところでご覧いただきますと、右上、報道機関の上のところに少し書いてありますけれども、記者会見ですとか資料配布を、2以上の報道機関、複数の報道機関に対して行いまして、それから12時間たつと、それでも公表だと認められる仕組みになっております。

一方で、下のほうの点線で、上場会社が自分の会社のウエブサイトにこの情報を載せたらどうなるかという問題でございますが、この場合には、これだけでは何時間たっても公表とは認められないということでございます。したがって、記者会見、資料投函をして12時間経過させることで公表に持ち込む、あるいはTDnetを通じて即時に公表に持ち込むといった形が考えられるわけでございまして、現実には上場会社は上場ルールにのっとって、すべてTDnetのルートで適時開示をすることになっている、こういうことでございます。

そして8ページの一番下、「ただし」というところに少し書いてあるんですけれども、ここは、今日ご欠席でいらっしゃると思いますが、前回田中会員が問題視されたところだと思います。TDnetを通じた適時開示の方法が、実は法令上、公表と認められるのはインサイダー取引規制の重要事実を公表したときだけでございます。逆に申し上げますと、公開買付けの際には、インサイダーと同様の取引規制が関係者にかかりますけれども、仮に上場会社が公開買付けをしようとしたときに、この方法でそれを開示したとしても、その場合には法令上は公表と認められない、こういう差があるということだけを申し上げておきたいと思います。

2ページへお戻りいただきます。2ページの2でございます。先ほどからインサイダーと適時開示の関連についてお話ししておりますけれども、2つ目の関連としては、インサイダー取引規制上の重要事実というものと、適時開示を要する会社情報というものとの2つの間では、規定の仕方が非常に似通った建て付けになっているということです。図にありますように、どちらも具体的な個別条項というのがありまして、その中で個別の項目と、必要に応じて軽微基準も定められております。

例えば、災害に起因する損害といったような個別項目があって、それが売上高の10%未満だったら軽微だよという、そんなことがそれぞれ多数書いてあるということです。さらにその個別条項では足りないという場合に備えまして、バスケット条項と言われる一般条項も用意されています。このワーキングでは、右のほうに書いてありますように、審議事項1として、この軽微基準が1つの論点になっているということだと思います。

最後に、3つ目の関連でございますけれども、先ほど申し上げました、2の個別条項というところに列挙されておりますそれぞれの項目につきましては、どちらの規制につきましてもおおむね共通しています。しかしながら関係性で言いますと、適時開示のほうが内部者取引の重要事実を包み込むように、広い範囲をカバーするようにつくっています。

どの部分が広くなっているのかということですが、それは一番右下の重要事実との差異と書いてあるところに、具体例を3つほど書いています。例えばということで申し上げますと、会社の商号変更、こういう項目につきましては、項目自体が適時開示はありますけれども、インサイダーにはありません。このような違いがあります。投資家にとってみれば、業績に影響はないのでしょうけれども、適時開示してもらわないと商号変更の事実がわかりませんので、投資家に対する情報提供として必要だということでやってもらっているわけでございます。

2つ目が、「利益の基準あり」と書いてありますけれども、適時開示のほうでは、利益に大きな影響がある場合には開示を求めるという個別項目がたくさんあります。しかしながらインサイダーには、ごく一部を除いて利益基準を持っている個別項目がありませんので、利益に大きな影響があっても、それだけではインサイダー取引規制上の重要事実にはならない、こういう違いもございます。

3つ目でございますけれども、合併ですとか株式交換のような項目につきましては、適時開示のほうでは軽微基準を設けておらず、どのような合併でも開示してもらうことになっていますけれども、インサイダーのほうでは軽微基準がありまして、軽微であれば重要事実にはならないといった差が、微妙な差ですけれどもございます。

主な差はこの程度ですけれども、いずれにせよ、適時開示のほうが範囲が広くなるように、制度上は工夫してあるということをここではご理解いただければと思います。

次に3ページでございます。3ページはちょっと話が変わりまして、連結ベースのディスクロージャーの進展についての年表でございます。今日は単体ベース、連結ベースというのが非常に問題になりますので、基礎的なところをおさらいいたします。

左が法定開示、右が適時開示ですけれども、もともとどちらの世界でも、財務諸表と言えば単体ベースのことと決まっていたわけでございます。そこへ最初のターニングポイントがやってきたのが、左で見ると1977年でございます。有価証券報告書には本体に単体の財務諸表が載っていたわけですけれども、添付書類のほうに連結の財務諸表の開示が義務づけられることになりました。これを受けまして右側、私どもの適時開示のほうでも1978年に、単体の決算発表と別に連結の決算発表もしてください、しかもできれば同時にしてくださいということを上場会社に要請して、いわば連結時代の幕が開いたのがこの時期だと言ってもいいと思います。

次のターニングポイントは、左で見ますと1998年でございまして、法定開示制度が単体と連結のうちの連結のほうを主体にするという形に移行いたしました。このときは、有価証券報告書の本体のほうに記載されていた単体の財務諸表を、添付書類だった連結の財務諸表と入れかえて、主従が逆転したという形になっております。

そのもとになった企業会計審議会の意見書が左下に抜粋してございます。企業の側でも投資者の側でも、連結情報に対するニーズが一段と高まっている、とした上で、連結中心のディスクロージャー制度への転換を図るべしというような内容になっておりまして、これを受けて連結主体にディスクロージャーが転換していったということだと理解しております。

右側にもそれに関連する項目がございまして、これを受けて2000年に、私どもの適時開示でも、決算発表に用いる決算短信というプレスリリースの様式を、連結中心に変えました。連結の情報のほうをむしろ決算短信と呼ぶことにして、単体の情報はもう決算短信とは呼ばないということにしたり、あるいは決算発表まで何日かかったという発表日の集計も、これもこれまでは単体だったんですけれども、連結の発表日でもって集計するようにしました。

また、2007年には決算短信の総合的見直しを行い、さらにその流れが推し進められたという経緯になっております。

そして最後のターニングポイント、ここからが本ワーキングに直接関係してくるのですが、2010年でございます。これはその上に書いてありますように、2007年に上場制度整備懇談会という私どもの諮問機関から、適時開示の軽微基準についても単体ベースから連結ベースに転換すべしという提言をいただきまして、2010年にそれを実施するに至ったということでございます。これが3番目のターニングポイントに差しかかったところと理解していい、と私は思っております。

次に4ページでございます。2007年に、先ほどご紹介しました決算短信の総合的な見直しというのを行いました。それに先立ち、本ワーキングの委員でもある黒沼先生に座長をお願いいたしまして、決算短信に関する研究会というところでご議論いただいた際に、主に機関投資家に対してヒアリングをいたしましたので、その一部をご紹介したいと思います。

4ページの下のほうの四角で囲まれている部分がその意見でございますが、まとめて申し上げますと、個別の情報は不要、あるいは基本的に重要でないという意見がほとんどでして、特に持株会社について申し上げますと、単体は見てもいないといったような意見がありました。ただし、それでは、単体の情報は要らないかといいますと、配当に関する情報は絶対に要るという意見ですとか、ほかにも何らかの留保をつけて、全く要らないわけではないという意見も少なからずあったということがおわかりいただけるかと思います。

次に5ページでございます。5ページは先ほどもご紹介しました私どもの諮問機関で、本ワーキングの座長でもあります神田先生に座長をお願いしております、上場制度整備懇談会という会議体の中で、適時開示の軽微基準を連結ベースに直すということについてご議論いただいたときの、最終的な取りまとめの要約でございます。大きく2つポイントがございます。

まず、上のほうでございます。1つ目ですが、投資者の投資判断は連結の情報に基づいて行われることが一般的になってきており、有価証券報告書等の法定開示も連結中心になっている、しかも上場会社の経営も連結ベースで行われているということから考えまして、適時開示の軽微基準については、連結ベースに見直すべきだという提言がまず行われました。

ただし、制度改正に当たっては、実務上の問題を考慮する必要があったというのが、実はこの話のみそでございます。それは2つ目として下のほうに書いてございますけれども、適時開示が、インサイダー規制解除のための最も重要な手段として世間では認識されております。また、適時開示の範囲がインサイダー規制の対象範囲を含んでいるということは、先ほどもご説明しましたけれども、実務上の常識になっているというわけでございます。

にもかかわらず、適時開示のほうだけ軽微基準を単純に連結ベースに直したということになりますと、その関係性が崩れまして、適時開示は必要でないけれども重要事実ではある、という情報が、制度的には当然に存在するということになってくるわけでございまして、実務上の混乱を招くことが大変心配されたということでございます。

そこで、そうした事態を避けるために、適時開示の軽微基準につきましては、こちらは連結ベースに直すけれども、そのためにはみ出してしまうインサイダー取引規制上の重要事実については、今後も適時開示をしていただく、というようにルールを改正いたしまして、混乱を避けたというのが実情でございます。

6ページでございますが、それを図にしたもので説明したいと思います。まず左側でございます。単体ベース時代と書いてあるところをご覧ください。縦軸は連結ベースの財務数値で見た場合の影響度の大小、横軸は単体ベースの財務数値で見た場合の影響度の大小をあらわしております。斜線を引いてあります、その右側の2、4というところが、インサイダー取引規制上の重要事実の範囲でございまして、破線で囲ってあります、これも同じく2、4ですけれども、こちらが適時開示を要する範囲でございます。

かつてはどちらも連結ベースでの影響度は関係なくて、単体ベースでの影響度の大小で、範囲に入るかどうかということを判断していましたので、カバーする範囲は基本的には一致していたというのが左側でございます。

一方右側、連結ベース化後というほうをご覧いただきますと、適時開示の軽微基準を連結ベースに直しましたので、連結ベースで影響度が大きい情報について開示していただくということになります。これは1と2の範囲を開示するということでございます。しかしながら、インサイダー規制上の重要事実は単体ベースで軽微基準を定めておりまして、そのはみ出した部分についても適時開示が必要というルールに変更しましたので、上場会社の立場から見ると、破線で囲ったこの4の部分も加えまして、1、2、4の部分の情報を開示する形になっているということでございます。

最後に7ページでございます。これらを踏まえた問題意識について、簡単に触れさせていただきたいと思います。連結ベースと単体ベースの財務数値の差が大きくなっている会社ほど、投資判断上重要と思われる情報と、インサイダー取引の軽微基準で使っている単体ベースの軽微基準でとらえた重要な情報との間で、ずれが大きくなっているのではないかということを、この図は示したいということでございます。

図の一番下に矢印があるのをご覧いただきますと、この矢印は連単の財務諸表の財務数値の差の大小を示しております。左へ行くほど差が小さい、右へ行くほど差が大きいということでございます。

一番左側にあります事業会社というのは、端的に言えば連単の差が小さい会社のイメージでございます。内側にインサイダー取引規制上の重要事実に該当する情報というのがありまして、それを包む形で適時開示が必要な情報というのがあります。さらに、この全体が投資判断上重要な情報と書いてありますけれども、これと一致していると考えていいのではないかと思います。

一方、その逆の一番右端の純粋持株会社でございます。こちらは連単の差が極端に大きい会社のイメージです。投資判断上重要な情報というのは、基本的には連結ベースで判断したほうが適切という声が強いので、右の矢印のところに記載してありますように、一部で重要性のあまり高くない情報が、軽微基準が単体ベースで残っているために重要事実になってしまって、適時開示も必要だということになっているのではないかと考えられます。

前回事務局の方からも、純粋持株会社単体で見た場合に、売上高の10%の変動を招くような情報であったとしても、連結で見れば重要性が低いのではないか、こういうことが起こっているというご説明がありましたが、まさにそういう部分だろうと思います。

実は私が申し上げたいのは、純粋持株会社と事業会社だけがこの世に存在するわけではありませんで、この両極端な間に位置する会社もたくさんありまして、ある意味連続的なグラデーションを描いているという部分があると思われますので、純粋持株会社、この図の一番右端の部分について見直すという場合には、どこでこれを切ればいいのかというあたりにつきましても、実証的に検証していくのが1つのポイントになるのかと思われる、ということを申し上げたいということでございます。

私からのご説明は以上でございます。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、ここで3つのお話につきまして、もし委員の皆様方からご質問があれば、お出しいただきたいと思います。なお、この後、審議事項の検討に当たっての参考資料について、事務局からの説明をお願いしますので、委員の皆様方からのご意見は、できればその後でお出しいただければと思います。この時点で3つのお話につきまして、もしご質問があれば、ここでちょっとお出しいただきたいと思います。いかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

どうもありがとうございます。資料2の8ページのところについて、少し伺いたいんですけれども、ご趣旨は、例えば自己株式を取得するときに、後で静委員からもお話がありましたけれども、適時開示の対象になる例がほとんどと伺っていいんですかね。そちらで十分じゃないかと。そこに、余分にといいますか、単体の上方修正をつけると、何となくグループ全体でも調子がいいように見えてしまうという誤解を、子会社のほうの減収というか、自己株式取得のひょっとしたら原因になったかもしれない、その事象のほうが、カバーされるという意味での誤解を生じるという意味なんでしょうか。

私の受けとめですと、確かにこの単体の適時開示は、ひょっとしたら要らないのかもしれないけど、別にあってもいいんじゃないかと思ったんですが、かえって弊害になるというところをもう一度だけご説明いただければと思います。

○半田参考人

半田でございます。ご質問のところでございますけれども、まず自己株の取得と投資家に誤解を与えるんではないかというところは、私のご説明で別の事象としてご説明をしたつもりでございます。すなわち自己株の取得のところにつきましては、当該M&A、その他の該当するような事象が出ましたときに、どこからどこまでのスパンが禁止されるかという問題はあるものの、検討に入りまして開示されるまでの間、やはり数カ月にわたって等、かために見ました場合に、その間機動的な自己株取得ができないというようなことから、投資家にご迷惑をかけるんではないかという趣旨で申し上げた次第でございます。

誤解を与えるおそれがあるというところでございますが、先ほど来の議論から、やはり皆様方からもう既に、単体を見ている人はないというお話はございましたけれども、ここで申し上げているのは比較的単純に申し上げたつもりでございまして、単体のところの大きな上下を見て、投資家の方もいろんな方、ご経験、あるいは知見等幅広い方がいらっしゃいますので、プロに近い方、あるいは慣れている方がここで誤解をすると申し上げているわけではございませんのですけれども、幅広い投資家のおられる中で、もし誤解する事例が出てこないかというような観点から申し上げた次第でございます。

以上でございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。川口委員、どうぞ。

○川口委員

お話を聞いていまして、持株会社の規模が非常に小さい場合、すぐ重要事実に該当してしまう、加えて、投資家は事実上そんなものは重要事実としては見ていないというお話はよく分かりました。そのため、理論上、規定を修正すべきということは理解したのですが、実際に発生している弊害として挙げられた幾つかの例について確認させていただきます。まず、川田委員がおっしゃいました役員等の会社株式の取得が事実上禁止されてしまうというところです。各会社において、役員とか社員の会社株式の売買規制を置いておられると聞いています。それは今回の持株会社の問題に限らず、会社にはインサイダー情報がいつでもどこでもあるのだから、予防的にこういう措置をとっていると理解しています。そうであれば、今回、これを直したからといって、ただちに、役員等の株式売買が解禁されるということにはおそらくならないのではないかと思いました。

このことは、本日、もう1つの弊害としてのべられました、会社による自己株式の取得についても同じように言えるかと思います。自己株式の取得をする場合も、会社には必ずインサイダー情報があるので、予防的に、信託を使ったり、いろいろ工夫されていると思うんです。おそらく自己株式については、今回の改正をすれば、かなり使いやすくはなるとは思うんですけれども、抜本的な解決にはならないのではないか・・・。その辺のところご意見をお教えいただければと思います。

○川田委員

まず第1点目でございますけれども、実は資料1の14ページの情報管理の複雑化・不明確化の裏腹の関係にございまして、軽微基準というのは2つの、法的な性格が違うものを、証券取引所の基準と内閣府令の基準、2つあることによって複雑化して徹底ができない、その結果どうするかというと、予期せぬうっかりインサイダーを防ぐために、より厳しめの扱いにせざるを得ないということでございまして、軽微基準が統一的に、あるいは考え方を統一できるならば、こういうところは軽微基準だと、したがって、軽微基準に関しては、インサイダーじゃないんだということは明確にできるであろうと。それが明確にできないところに、このような禁止措置をとらざるを得なかったと。ですから、14ページの社内の情報管理、あるいは周知徹底の表裏の関係として、より厳しめにしなきゃいけないという例でございます。

それから、自己株の取得につきましては、今、川口委員がおっしゃったとおりでございますけれども、実は自己株の取得に関しましては、その内部情報、比較的法律を知っている者たちが扱うという点がほかと違うところでございまして、これは非常にインサイダーというものについて意識をしておりますので、必ず重要情報があるかないかということを認識してやっていますので、軽微基準がそれだけクリアできれば自己株できるんだという意識は持っておりますので、これはあまり実は心配しておりません。

我々が心配していますのは、まさに法律のことをあまり知らない社員層というのは、今たくさんいるわけでございまして、そういう者たちがうっかりしたインサイダーをしてしまうというのが非常に危険です。そこに網をかけざるを得ないという例でございます。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございます。よろしいでしょうか。

ほかにご質問、この時点でございますでしょうか。どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

今の関連で、川田委員に資料1の14ページについて確認をお願いしたいんですけれども、このグループ会社の中での、いろいろなコンプライアンス上の基準も含めて統一したいというのは、どちらかというと、力点としては、取引所の適時開示基準とインサイダー取引の問題とをもう少し統一的にしたらという、静委員の問題提起に近いんでしょうか。持株会社のほうの軽微基準を外すと、むしろ持株会社だけが別の基準になるような感じもします。傘下の子会社の方々が、連結でも単体でも考えているということであれば、それはそれでコンプライアンスが統一されているような気もするんですけれども。投資家との関係での、証券取引所の基準との関係というふうに伺ってよろしいでしょうか。

○川田委員

そのとおりでございます。実は、純粋持株会社でございますが、グループ統一的な経営管理を行っているわけでございますので、先ほどおっしゃったようなコンプライアンスに関するもの、あるいはインサイダーに関するものというもの、グループで統一的な基準というのをつくっているわけでございまして、当然、浸透させるのも各事業会社が従業員を浸透させていくわけでございますけれども、そこにはJXグループとしての統一的な考え方、基準というものを採用していくという仕組みになっておりまして、それだと各事業者ばらばらな対応をしていますと、グループとしての統一感がないということで、そのような扱いをしています。

その場合に、我々としては、一番わかりやすいところは実は東証の基準でございまして、また社員そのものも重要の認識というのが、多分、単体は頭にないはずでございますので、急にホールディングスの単体という基準を持っていますと、彼らは事業会社というのは、全部それぞれの売上高、売り上げどころを持って事業をやっておりますので、ホールディングス単体の決算、売上高、純資産というのは頭にないんです。

そこで、しかしそれではインサイダー規制上問題があるので、そういうことをたたき込まなくちゃいけない。そうすると、自分たちの実態と乖離したところに基準が出てしまうということで、できるならば、東証なりの開示基準と平仄を合わせてもらったほうが、社内の周知徹底が図りやすいし、さらに先ほど話に出たような自社株売買についても、より基準をクリアにできれば、自由な参加ができるんじゃないかということでございます。

以上でございます。

○神田座長

ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

それでは、また後ほどご質問もあわせてお出しいただいても結構かと思いますので、時間の関係もございますので、先へ進ませていただければと思います。

半田参考人には大変恐縮ですが、本日、最後までおつき合いいただくということで、よろしくお願いいたします。

それでは、続きまして、審議事項の検討に当たっての参考資料につきまして、事務局から説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、事務局のほうからご説明をさせていただきます。まず、資料4-1でございますが、「単体と連結での財務規模の比較」ということでございます。これは、資料4-2の「現行の我が国法制における主な持株会社制度」、こちらと併せてご覧いただければと思います。

まず、資料4-1でございますが、独禁法上の持株会社ということでございまして、3枚目の※で注がついてございますが、この3枚にわたりまして、いわゆる公正取引委員会のほうに独禁法上の持株会社として報告がされているもの、具体的には当該会社と国内の子会社の総資産の合計額が6,000億を超える持株会社のうち、上場会社ということで挙げさせていただいております。

1枚目に戻っていただきますと、先ほどお話がございましたJXホールディングスさんのお名前が8番に出ておりますが、見ていただきますとわかるとおり、基本的には売上高の内訳ということで、関係会社の受取配当金なり経営管理料、経営指導料というのが基本的な売上高ということで計上されているものでございます。

それから、2枚目に銀行関係、それから3枚目に保険関係、22番に先ほどお話しいただきました東京海上ホールディングスさんの話が出ております。

こういうことで、主に、いわゆる独禁法上の持株会社、資料4-2の一番上に出てまいりますが、子会社の株式の取得価額、国内の株式の取得価額の合計額の会社の総資産に対する割合が50%以上ということでピックアップしたものでございます。これが最初の例ということでございます。

前回の議論の中では、独禁法上の持株会社では幅が狭いんではないか、特に国内の子会社しか含まれていないということでご指摘がございました。そういうこともございまして、4枚目に別に資料をつけさせていただいておりまして、2ということで、放送法上の認定放送持株会社、こちらも資料4-2にも出てまいりますが、挙げさせていただいております。

それから、3がその他でございますが、これが実はちょっとわかりにくうございますので、下の注をご覧いただければと思います。いわゆる一般事業会社、これは当該会社と国内の子会社の総資産の合計額が2兆円を超える額ということでとらせていただいておりますが、一般の大きい事業会社さんが大体ここに入ってきまして、トヨタさん、日産さん、パナソニックさんとか、いろいろな会社が挙がってくるところでございます。ここではわかりやすさということで、社名が持株会社に類似するものということで挙げさせていただいております。キリンさん、ジェイ・エフ・イーさん、それから大和証券さん、野村さんということで挙げさせていただいておりますが、こういうものについて、例えばどうなっているかというと、やはり収入の内訳について、関係会社の配当収入が多いとか、そういうあたりは似ているところがございます。

また、全体を通じまして、売上高、それから売上高についての単体と連結の比較を見ていただきますと、やはりかなり大きい規模の差があります。純資産額については、規模が同じであったりする場合も多うございます。という傾向が見られるということをご紹介させていただきました。

資料4-2については、もう一度ご覧いただければと思います。

それから、資料4-3でございますが、こちらにつきましては、前回、委員の方々からインサイダー取引規制の趣旨については、投資家の市場に対する信頼を害する可能性があるんじゃないか、そのあたりをもう一度立ち返って検討する必要があるんじゃないかとか、あるいは、投資家なり消費者の立場から見てどうなのかというご意見がございました。

「インサイダー取引規制の趣旨」ということで、改めて図にまとめたものでございますが、真ん中に書いてありますように、一般投資家が念頭に置かれた上で、証券市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼が失墜する、この信頼の確保が保護法益であるということで整理されておりまして、具体的には次のページに参考で挙げさせていただいておりますが、例えば証券取引審議会報告の資料の下から2行目のところでございますが、「証券市場の公正性と健全性が損なわれ、証券市場に対する投資家の信頼を失うこととなる」ということが挙げられております。

それから次の横畠さんが書かれた本の中で、真ん中あたりでございますが、「したがって、インサイダー取引は、そのような行為が投資家の証券市場に対する信頼を著しく損なうものであるという観点から規制する必要があり、そのような行為自体を処罰すべきものと考えられる」ということで挙げておられます。

1枚目に戻っていただきまして、今回の取引規制の見直しに当たりましては、インサイダー取引規制の対象範囲を考える上で、どのような取引が行われれば、証券市場の公正性・健全性に対する一般投資家の信頼が失墜するかがポイントではないかと思っておりまして、前回、特に議論になりました企業の組織再編に当たっての場合について、例えば株式の承継、これは組織再編当事者間の関係でございますし、それからまた交付に当たっては、消滅会社の株主と存続会社との関係ということで、いわゆる合併契約の当事者は消滅会社と存続会社。後者も含めて契約当事者とはならない当事者間の関係であることは挙げられると思いますので、こういったものについて、いわゆる一般投資家の信頼が失墜するという保護法益との関係でどのようにとらえていくべきかというご議論もいただければと考えております。

それから最後、資料4-4でございますが、前回、委員の方々から、新株発行と自己株式の交付の話につきましても、ディスクロージャーの関係と、会社法の手続の関係、どうなっているのかというご質問もございましたので、資金調達と組織再編の面に分けて整理をしております。

大きく言いますと、基本的には違いがないというのが今の新株発行・自己株式の交付についての資金調達、それから組織再編に当たっての手続の関係でございます。

特に、資金調達の関係で申し上げますと、募集事項の決定ということで、新株発行の際に、資本金、資本準備金が増加するという違いはございますが、それ以外につきまして、募集事項の公示についても同じでございますし、それから金商法の手続でいいますと、有価証券届出書の提出が行われるということで、このあたりについても同じ手続ということでございます。

それから、組織再編につきましては、ここでは特に吸収合併の場合を取り上げておりますが、合併契約の締結、それから事前の開示、それから株主総会による承認、事後の開示ということで手続は同じ形で行われております。金商法上は、今回、議論の対象になっておりますような上場会社については開示が行われておりますので、存続会社となった場合であっても、改めて開示を行うための新たな届出は不要という形で整理がされてございます。

それから、参考資料に前回、ご議論いただいた資料を併せてつけさせていただいております。事務局からの説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、本日、残りの時間で委員の皆様方からご意見をいただければと思います。先ほどの3人の方々からのお話についての追加のご質問も、もしあれば併せてお出しいただいて結構でございます。

なお、今、ご説明がありましたけれども、このワーキング・グループの審議事項というのは、前回配付されました、そして今日、参考資料として、最後におつけしてありますものの最初のページというか、表紙をめくっていただきますと、「純粋」になるかどうかはともかく、持株会社に関する重要事実の問題、これが1であります。それから2として、今日、3人の方からのお話には含まれていなかったと思いますが、今、事務局からのご説明で、前回に引き続きありました、企業の組織再編に係る規制の適用関係、とりわけ新株発行と自己株式の交付の場合の平仄の問題。それから、3として、グループ経営に関するその他の事項ということになっております。

どの点につきましてもご自由にご発言をいただければと思います。どなたからでも結構でございます。よろしくお願いいたします。阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

この事務局資料4-1で、いわゆる独禁法以外の持株会社ということでご指摘いただいたんですが、何が持株会社なのか実はよくわからないことがあります。名前が適当に持株会社となっているところもありますし、名前が「持株会社」でなくても実態的には専ら持株会社的な機能があるところもあります。

そういう意味では、あんまり純粋持株会社というところの「純粋」にこだわることはないと思います。ある意味で、グループ全体を仕切っている会社があって、それが自ら事業をしているか否かに関わらず、連結の中での単体の規模が一定以下であれば、それは連結と見るというくくり方ができないでしょうか。持株会社と定義をしてしまうと、持っていきようがないところがいっぱい出てきてしまいますし、それを1つ1つまた金商法で決めるのは無理だと思います。もちろん純粋持株会社というのは念頭に置いておくとしても、あまり「純粋」ないし「持株会社」という定義にかかわらず、連結の中での主たる会社のレートみたいなもので考えていければいいのではないかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

今、阿部委員からご発言があった点ですけれども、本当に難しいと思うんです。ですから、おそらく我々に与えられた審議事項も、わざわざといいますか、かなり明確に「純粋」と頭についています。それをきっかけに考えろという趣旨で、これに限定することではないと受けとめるんだろうと思いますけれども、本当に難しい。

今日のヒアリングといいますか、お話しいただいた2社とも、そういう意味ではかなり純粋な持株会社で、基本的に子会社からの配当が主な収入源であるということがかなり明確なので、お話にもそれなりの筋が通ったような気がするんです。2社の方々は、例えば小規模な会社を合併するというときも、多分、何か事務部門であるとか、そういう意味では大きく持株会社の性格に変更を与えないような組織再編しか考えておられないと思います。けれども、そうでない例もあるんじゃないかとか、もっと言えば、全体を連結ベースに変えるということも考えられるわけで、そういう意味での境のところがすごく難しくなるような気がしますので、結構難しい問題ではないかと思いました。

○神田座長

ありがとうございます。いかがでしょうか。

連結ベースにするということを考えるに当たって、どういうふうに基準をつくったらいいのか、何か名案はありますでしょうか。事務局からもご説明がありました、今日でいえば資料4-3でしょうか、要は一般投資家というか、証券市場における投資家の投資判断に影響を及ぼすであろう重要な事実と言えるのか言えないのかと、そこをどう線を引くかということですよね。純粋持株会社というんでしょうか、独占禁止法上の持株会社というのは、独占禁止法上の定義、これは簿価ベースですけれども、あるいは子会社が国内とか、いろいろありますけれども、そういう1つの世界の中で定義されているわけです。それをそのまま使うというのも1つの選択肢かもしれませんけれども、どうも経済実質からは、ずれる感じがあるように思うのですけれども、では、どうするかというところですよね。

柳川委員、どうぞ。

○柳川委員

あまり今の定義づけのところで名案があるわけではないんですけれども、初回、ちょっと欠席したものですから、その点も踏まえて感想を含めてちょっとお話をさせていただきたいと思うんです。

まずは、今お話があった純粋持株会社の純粋というところは、かなり明確に定義されていればそれで済むんですけれども、やはり実態を踏まえた金融審議会としての考え方という意味からすると、ある種の重要度を鑑みた持株会社の中での判断というのが適切なんだろうと思うんです。

そのときに、これが適切かどうかわかりませんけれども、今日のお話を伺っていますと、1つのポイントは、グループからの配当が収入の大部分であるから、結局グループの業績だけを見ていればいいんだというお話が大分あったと思います。もし、そういう形ですっきり切れるんであれば、要するに収入の中のかなりの部分、あるいはほとんどの部分がグループの配当で占められているという判断の仕方が1つかと思いました。

ただ、いずれにしても、その点も踏まえて、あるいはそもそもの軽微基準とか、重要基準を連結ベースにするかどうかというのがもともとの議論になっているわけなんですけれども、こういう軽微基準だとか重要基準を、あまりかりかりきつきつやり出すと、これはなかなか難しい問題になるのは目に見えているわけなんです。しょせんという言い方はちょっときつい言い方かもしれませんけれども、やはりある種のラフな線引きをして、大まかに、この部分はそんなに厳しく見なくても大丈夫だろうということで線を引いているものですから、どの程度までが軽微なのかとかということをきりきり言い出すことは、あまり生産的ではないんだろうと思うんです。

その意味では、その線引きの数字とか云々よりは、コンセプトとして、もともとの趣旨にありましたようなインサイダー取引であるとか、あるいは、投資家が判断を正しくできるような情報開示はどの程度であるべきかということを基準に考えていくべきなんだろうと思います。

その点でいきますと、私はある種の単純さ、明確さということは、投資家の立場から、あるいは一般消費者の立場から見ても重要かと思っておりまして、どうしてもこういう規制をいろいろやっていって、いろいろな基準を設けていくと、かなり複雑になってくるわけなんですけれども、こうやって今日ご説明いただいたものを見ても、かなりいろいろな基準があって、いろいろなところでオーバーラップしていたりしなかったりということがあって、これは事業会社の方々にとってもいろいろなご負担があるという話は今日ありましたけれども、やはり投資家の立場から見ても、あるいは一般消費者の立場から見ても、基準があっちだったりこっちだったりすると、どれを見てどういうふうに判断したらいいかよくわからないという、やっぱりこれはそもそもの市場の健全性という意味からしても、あまりプラスなことではないんだと思うんです。

そういう意味では、なかなかそうはいっても、がさっとシンプルにというわけにもいかないと思いますけれども、1つ単純さ、明確さということも市場の健全性を確保する上では考えていくポイントかとは思っております。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

たしか東京証券取引所の適時開示基準ですけれども、そこでの連結というのは、今の柳川委員のご指摘で、ちょっと頭の体操としてですけれども、一番反対の極端に行こうとすると、連結決算会社ですよね。東証の適時開示が連結基準に移ったときは、連結決算会社はすべて連結基準にしたのですよね。それでよろしいでしたよね。

○静委員

はい、そのとおりです。

○神田座長

どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

東証の静委員の資料3の7ページの図がわかりやすいと思うんですが、単体事業会社から純粋持株会社の間というのは連続的です。このどこかで線を引くというのは無理だと思うので、そういう意味では、あえて純粋持株会社とか持株会社にこだわることなく、連結を前提に考えていくほうがわかりやすい規制になるのではないでしょうか。

○神田座長

ありがとうございます。ほかの委員の皆様方、いかがでしょうか。

どうぞ、川田委員。

○川田委員

川田でございます。今の阿部委員のご意見に全く賛成なんでございますけれども、ただ特徴的なところを申し上げますと、事業持株会社、連結会社の場合は、大体一番大きいところが、実は単体の一番大きい決算になっているところなんです。

例えば当社の例でいいますと、実は去年、統合する前は新日本石油という会社で、事実上、たくさんの子会社を抱えた事業持株会社的な要素があったんですけれども、連結決算と新日本石油の単体決算、ほとんど同じでございます。ここでいう、例えばJFEホールディングスさんを見ても、連結で4兆円あるとすれば、JFEスチールが多分その8割以上の売上げ、利益になっているんです。

したがって、どういうことかといいますと、我々の当初の問題点としまして、純粋持株会社の売上高というのは、そもそも性格が異なる、連結で性格が異なるし、かつ規模も大きく異なるんだということがそもそもの問題点と我々は認識しているわけですけれども、事業持株会社、連結会社にしますと、単体と連結の差は、そんなに大きくなくなるということがございます。

したがって、全部を連結にすると、軽微基準は非常に単純になっていくということになるんじゃないかと思います。

○神田座長

ありがとうございます。いかがでしょう。

何か今のご指摘、確かに連結で見た数字と単体ベースで見た数字の間に落差があるというほうから入ると、そういう1つの話になるし、それからそうでなくて、実態は連結ベースという、そもそも開示制度が連結ベースに移行していって、もう今、そうなったわけですけれども、連結ベースで物事を見たら、それが結局投資家の投資判断というものも、そういうところでなされているでしょうというふうに見れば、同じ問題を違う角度から見ているということになりますよね。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

静委員のプレゼンテーションがある意味でわかりやすかったために、連結ベースのほうに流れているような雰囲気がするので、発言するんですが、川田委員のプレゼンテーションでいいますと、資料1の6ページのところに、ホールディングス会社、持株会社のほうの売上高というのは、基本的に配当額をむしろ株主にどれだけ還元するかということで決めていくと書かれております。

ここで株主には、もちろん配当を決めるためにはいろいろな開示がされるわけですし、外部からもいろいろ見える資料に基づいて決まるんでしょうけれども、何か弊害といいますか、きちんとやっておられた会社だといいのかもわかりませんけれども、株主にとって何が一番関心かといったときに、配当が一番と言われる方もたくさんあると思いますし、それこそ静委員のお話の中にも、投資家からのヒアリングで、やはり配当のことは気にしているというのはもちろん出ているのですが、ここのところが見えにくくなる、あるいは問題が起こるということはないのでしょうか。それとインサイダー取引の軽微基準との関係というのは、少しギャップはあるんですけれども。川田委員あるいは半田参考人のほうから、あえて何かこういうふうにやると、自分の会社だと大丈夫だけれども、事業会社では何か弊害が起こるかもしれない、あるいは濫用のおそれがあるんじゃないかとか、そこは当社としてはこういうふうに防ぐけれどもという、もしお考えがありましたら、ぜひご披露いただきたいんですけれども。

○川田委員

まず第1点目でございますけれども、先ほど申し上げたように、株主はホールディングスの単体の決算、売上高には着目していないということで、配当にはもちろん非常に大きな興味を示しております。その配当というのはどうやって決めるかといいますと、やっぱり連結決算ベースでございます。連結配当性向であるとか、そういう連結決算をベースにした配当基準というものを親会社は制定、策定するわけでございます。それは適時公表しながらやっているわけでございまして、それで配当額というのはホールディングスが決めていきます。それで金額が出ます。

その後、一定の基準が実はございまして、事業会社間の売上げ規模であるとか、利益規模であるとかということを基準としまして、内部の配当を吸い上げる、そういう仕組みになっているということでございますので、配当には非常に大きな興味を示すけれども、ホールディングスの単体の決算、売上高には、イコールでございますけれども、興味はないという仕組みだということです。だから、要は決算の数値には興味ないんであって、配当には非常に大きな興味がある、しかしその配当というのは、あくまで連結ベースの配当だということでございます。

それから、事業会社等から逸脱する、それがあるかどうか、ちょっと私も考えられないんですけれども、基本的には事業会社におきましても、配当原資をどうするかは別に、配当政策というものは連結ベースで考えているわけですし、当然配当の変更については、重要事実として開示されていくということですので、その点について、あまり大きな差はないのかという思いはしております。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。よろしいでしょうか。

○半田参考人

私にもご質問いただいたかと思いますので、恐縮でございます、半田でございます。

特に、業界として妙案というものを持っているわけではございませんけれども、今、関連の質問で、資料2の1ページ目のところでございます。損保協会による規制改革の要望の2のところで、決算情報変更に係る重要事実ということで、標題のほうはこちらのワーキングでご検討いただいているものに沿いまして、こういう事項になっておりますけれども、確かに配当自体のところについては、投資家の皆さんの関心事かと思っておりまして、この業界でまとめております要望の内容のところをご覧いただきますと、この中には配当の変更のところ自体は省いておるところでございまして、正確に損保協会の要望ということで申し上げますと、業績予想の修正にかかわる重要事実、売上高、経常利益、または純利益というところについてご要望申し上げているというところでございます。事実だけご説明、ご案内申し上げる次第でございます。

○神田座長

ありがとうございます。どうぞ、綿貫委員。

○綿貫委員

すみません、まだ考えがまとまっていなくて、もやもやしている段階なんですけれども、今日、皆さんのお話を聞いていますと、2つ問題点があるような気がして、1つは東証の開示基準との間に乖離があることによって、情報のコントロールが難しくなっているという面が1つ。

それからもう1つ、今日、ご説明いただいたところは、皆さんちゃんとした会社さんでいらっしゃるので、お話を伺っていると、軽微基準を緩めても投資家保護上、問題がないのではないかという気もするんですけれども、ほかの委員の方もおっしゃっていたように、軽微基準を緩めた場合の対象になる持株会社の定義というところがしっかりしていないと、本当は軽微基準を緩めてはいけないような業態の持株会社であるにもかかわらず、軽微基準の軽減を悪用するようなところが出てきたり、あるいはホールディングスとか、わかりにくい名前になっていて、実態は軽微基準を緩めてもいいのに、別に私は過度な開示は悪いとは思っていないんですけれども、不必要な事務負担があったり、投資家がかえって混乱するようなことがあるというところです。ですから、持株会社とは何なのかというところをきちんと決めていかないと、じゃあ軽微基準を緩めていいのかどうかというところが、堂々めぐりで戻ってくるような気がいたしました。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、神作委員。

○神作委員

現行の内部者取引規制の構造ですと、連結ベースで考えるという前提のもとでも、子会社についての重要事実に基づく内部者取引禁止が別途かかってきますから、そういう意味では、連結ベースになり切っているわけではないと考えます。逆に申しますと、純粋持株会社、ないし、その定義はどうするかという問題はありますけれども、純粋持株会社の軽微基準を連結ベースにしたときに、では、例えば子会社のレベルの重要事実についての扱いはどうなるかというと、現行法を前提とすればこれはこれで重要事実として内部者取引禁止の対象になると考えられます。したがって、私は、純粋持株会社の軽微基準を見直して、連結ベースにするといっても、子会社の重要事実に基づく内部者取引規制の存在を前提とするならば、一定の歯止めがかかっており単純な規制緩和になるわけではないのではないかと思っております。

そうすると、純粋持株会社の定義についても、まさに字句どおりの純粋持株会社よりも、もうちょっと広くとらえて、投資家としては、当該持株会社に投資しているというよりも、グループ全体に投資していると投資判断しているという実態がある場合には、その範囲まで広げる、そのような企業グループをうまく括れる定義を考えていく必要があるのではないかと思います。

そのときには、基本的にはグループからの配当等が単体の収入の大部分を占めるかどうかという観点が非常に重要かと思いますけれども、その際に細かな問題かもしれませんけれども、悩ましいと思うのは、配当以外に、例えば経営指導料ですとか、その他の役務提供の対価ですとか、どのようなものまでカウントするのかという問題です。子会社のグループからの収入として、純粋持株会社、ないしは軽微基準の判断基準を連結ベースで見るものとして、子会社から受け取るものをどこまでを含めるのか、この問題が非常に難しい問題なのかと感じております。このことは、ひいては、純粋持株会社の定義自体の困難性に直結すると考えます。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。もう1つの点というんでしょうか、本日の3人の方々からのお話には含まれておりませんでしたけれども、自己株式と新株発行の比較というか、平仄といったような点につきまして、これはまた次回、取り上げさせていただく予定ですけれども、もし本日の時点でご意見やご感触があれば、併せてご発言いただきたいと思います。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

今日、半田参考人に来ていただいているので伺いたいんですけれども、今、神作委員から指摘のあった点に関連するのですが、東京海上の場合は、固定の経営指導料みたいなことではなくて、子会社からの配当金の比重のほうが数字的には大きいように見えたんですけれども、これは何かホールディングス会社として、配当金のほうに重きを置くのか、それとも恒常的にホールディングス会社としていろいろ経費はかかると思いますが、それは固定で子会社さんに負担していただこうとか、何かそういう経営上の議論とかはあるんでしょうか。もしアイデアがございましたら教えてください。

○半田参考人

考え方でございますけれども、経営指導料につきましては、過去数年間のトレンドを見ましても、ほとんど固定でございます。若干の変動はございますけれども、その中でホールディングスの人件費、物件費、こういった最低限のものを賄いながらということでございますので、何らかの政策によって大きく動くというものではございません。したがいまして、スタート時点から非常に薄いといいますか、固定的な薄いフィーになっております。

一方で、配当のところというのは、先ほどご覧いただいた大きく上下しておるところは、経営指導料で上下するということはほとんどございませんで、ほとんど先ほどの表のところで上下しているところ、太宗の部分は、各種、資金の政策判断にかかわる配当の吸い上げといいますか、政策のところに準拠しているとお考えいただければと思います。

○神田座長

どういうふうに線が引けるのかという難しい問題は、次回までに事務局に考えていただくことにするとしましょう。純粋持株会社以外の場合も含めて、子会社からどういう形で親会社にお金が入ってくるのかということを言い出すと収拾がつかないですよね。ここでの問題は、投資家が何を見て投資判断しているかという基本のところではないでしょうか。

どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

当然、純粋持株会社の収入の主たる源泉は配当なのですが、実は日本では子から親に送る際はできるだけ配当扱いに致します。ほかの費目にしますと、受け取ったほうで税金を負担することになります。配当である限り、受取配当は益金不算入制度の前提でやっていますから、本来であれば、経営指導料とかブランド使用料とか不動産等の賃貸料で賄うべきものも、結構いろいろな会社を見てみますと、配当にしているようです。

どういう名前でも、子から親に持ち上げているお金に変わりはないんですけれども、あんまり配当ということばかりに気をとられますと、ほかの名目でもいいんだけど、とりあえず配当は一番便利なので、配当というツールを使っているにすぎないという実態を見落とすことになりかねません。

○神田座長

ありがとうございます。いずれにせよ、そこの取引がどうこうと言い出すと、ここでのワーキング・グループの課題とはちょっと違ってきます。繰り返しになりますけれども、ここではいわゆる軽微基準という、日本に特殊というか、およそ類型的に投資家の投資判断に影響を及ぼさないであろうから、したがってインサイダー取引規制の適用は類型的にしないという線引きを、今回、連結をベースにするものに見直してはどうですかというのがここでのテーマですので、そのときに連結でいいのか、純粋持株会社に限るのか、どこかその中間というのですか、今日も資料を用意していただいていますけれども、放送法上の認定放送持株会社、その他と。その他も資料では持株会社のような名前が使われている会社だけがあげられていますが、ほかにもいわゆる事業持株会社と呼ばれている会社が多数ありますので、そのあたりを含めて中間に線を引くか・・・・・・。連結決算している会社はたくさんあるわけですから、どこかまでというふうにすべきなのかというのが、ここでの問いですね。

特にご発言のない委員の皆様方、よろしゅうございますか。本日は、慎重論とそうでないご意見と両方のご意見があったと思いますので、本日いただきましたさまざまなご意見を事務局のほうで整理をして、また考えていただくということにしたいと思います。

それから、そのほかのこのワーキング・グループの審議事項ですけれども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、自己株式と新株発行の平仄等につきましては、また次回も取り上げたいと思っておりますけれども、本日の時点でご発言とかご注意いただくべき点はございますでしょうか。

それでは、本日も予定した時間よりはちょっと早いのですけれども、大変いろいろと貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。

それでは、次回以降、また、より具体的な詰めに入っていきたいと思います。

最後に、事務局からご連絡がございましたらお願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして散会いたします。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線3607、2622)

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