金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第2回)議事録

1.日時:

平成24年9月25日(火曜日)10時01分~12時01分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

それでは予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。ただいまから、インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第2回目の会合を開催いたします。

皆様方には、いつもお忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。議事に入ります前に、前回ご欠席のメンバーをご紹介させていただきます。

大崎貞和委員です。

○大崎委員

大崎でございます。よろしくお願いいたします。

○神田座長

よろしくお願いいたします。

あと、柳川範之委員もいらっしゃると伺っておりますが、ちょっと遅れておられるようです。

それから、本日は参考人としてフィナンシャル・タイムズ東京支局副支局長の中元三千代様にご出席いただいております。

○中元参考人

中元です。よろしくお願いいたします。

○神田座長

よろしくお願いいたします。

それでは議事に移らせていただきます。お手元の議事次第にありますように、本日は盛りだくさんなのですけれども、まず、経団連の阿部委員、それから東京証券取引所自主規制法人の武田委員、日本証券業協会の平田委員、そして参考人としておいでいただきました中元参考人から、インサイダー取引規制に関する要望ですとか取組み等についてヒアリングをさせていただきます。その後、質疑応答をしていただきまして、続いて事務局からインサイダー取引規制の海外調査の結果についてのご報告をいただいて、質疑応答をするという流れで進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

では、早速ですけれども、ヒアリングから始めさせていただきたいと思います。最初に阿部委員、よろしくお願いいたします。

○阿部委員

ありがとうございます。

お手元の資料1が私の説明資料でございます。今回、経団連の中でも議論をさせていただきまして、正式な手続を経ているものではございませんが、それなりに経団連会員企業の意見を踏まえたものとして述べさせていただきます。ただ、経団連の中で証券会社も重要な会員でございますが、今回は発行会社を中心にした意見ということでご理解をいただければと思います。

非常に簡単なもの2枚でございまして、1枚目が諮問にありました事項について、私どもの考え方でございます。2枚目はそれ以外ということでございますが、私どもとしては、今回の議論を考える大前提といたしまして、我が国のインサイダー取引規制のあり方というのは、規制が非常に厳し過ぎるのではないのかと考えております。後ほど海外の事情のご説明があるかと思いますが、従来は専ら米国だけを見て、それと見比べた形で規制の強化を進めてきたわけでありますが、本当に国際標準だったのかというと、それよりさらに厳し過ぎたのではないかと思っております。そういう意味で、この機会に、従来から私どもが国際標準に比して厳しすぎるといろいろと指摘しておりましたような問題点等についてご検討賜れればと思っております。

資料の1枚目でございますが、諮問にございました2点についてでございます。まずは情報伝達行為に対する対応でございますが、情報伝達行為そのものが規制の対象になりますと、会社の関係者は非常にものを言いにくくなり、また、マスコミの報道等も不自由になります。そこで、何とかならないかと考えまして、当初は、例えば157条を直接適用して、その教唆犯、幇助犯という議論もできないかと考えました。しかし、現状、166条と167条がインサイダー取引規制の具体的な規定として存在している以上、157条を持ち出すのはやや無理があるのではないかと判断いたしました。そういう意味では、情報伝達行為に対して何らかの規制がかかることはやむを得ないという前提の上で、3点ほど述べたいと思っております。

1つは、これがいわゆる通常の経済活動に対する萎縮にならないようにしてほしいということでございます。それから2点目、これが重要でございますが、仮に情報伝達行為に対する規制を導入するとしても、そのこと自体が規制対象になるというのではなく、あくまでもインサイダー取引が行われるきっかけとなった情報伝達行為を規制対象とするべきということでございます。すなわち、伝達された情報に基づきまして、実際にインサイダー取引が行われたということを要件とすべきと考えております。

それから、横並びということでございますが、情報伝達がなされていなくても、未公表の重要事実と知りながら取引推奨した場合についても同じように考えなければいけないかと思いますが、これも当然ながら、その取引推奨行為によって実際に売買が行われたことを要件とすべきであると思っております。そういう意味では、情報伝達行為そのものが規制対象になるという考え方ではなくて、あくまでもインサイダー取引を起こすきっかけとなったということについて、どう考えればいいかということかと思っております。

2点目は課徴金額の計算方法についてです。特に他人の計算による行為についてでございますが、私どもは、今の課徴金というものは、別途刑事罰がある以上、ペナルティ、制裁ではないというものです。あくまでも不当利得をはく奪するという趣旨のものと考えております。と申しましても、昨今の事例を見ますと課徴金額が数万円程度ということでありまして、課徴金として実効性があるかと言われると、さすがに無理があります。それでは不当利得のはく奪という基本的な考え方を外れずに、どう考えれば実効性が足りるような水準になるかということでございます。

1つの考え方でございますが、今回の事例を見ておりますと、その都度の手数料が実際の不当利得と考えたわけでございますが、その取引の手数料に限らず、ある程度継続的な取引関係がある場合については、一定期間の取引の手数料というような考え方もできるのではないか、これはひとつのアイデアでございまして、決してこれが望ましいということではございません。ただ、課徴金は不当利得のはく奪であるという考え方を維持したまま、現状の水準を大きく見直す場合における一つの考え方として受け止めて頂けますと幸いです。

以上2点が、諮問にございましたものに対する私どもの意見でございます。

2枚目をお開きください。せっかくの機会でございますので、今までの規制のあり方について、私どもより申し上げたいことがございますので、幾つかお聞き取り願いたいと思います。大きく4点、それからその他でございます。

1点目、知る前契約・計画に関する適用除外ということでございます。現在、売買の契約が締結されましてから、実際に実行されるまでかなり期間があくことが多いわけでございますが、現状、その間について、内閣府令59条1項で限定列挙されている事項以外について、要はその間の適用除外がないという解釈になっていると考えております。この限定列挙された事項に限られる場合でない限り、契約の締結・実行までの期間内に重要事実が発生した場合については売買ができなくなってしまいますので、これは非常につらいことかと思っております。実際に重要事実を知る前に当事者間で締結された契約、いわゆる知る前契約が成立すれば、これは広く適用除外を認めてもいいのではないでしょうか。現状の内閣府令59条1項の列挙事由に限らず、知る前契約が成立したということを以って、これを適用除外ということで考えていただければと思います。その場合、知る前契約の範囲というのは、当然でありますが、重要事実を認識することなく、売買当事者間で契約を締結したと、その履行として実行するということだということで、一般的に考えていただきたいと思っております。これが1点目でございます。

また、自社株買いにつきまして、会社というのは常に未公表の重要事実を持っておりますので、具体的に「何かを知っているか」と言われると、「何かは知っている」ということになってしまいます。ただ、自社株買いにつきましては、一定の幅とか枠を考えて、取引や売買内容を決めていますので、ある意味機械的に行っております。そういうものについては、重要事実を仮に知っているとしても、適用除外としていただければと存じます。

それから従業員、あるいは役員持株会でございますが、ここは広く適用除外ということができないかということをお願いしたいと思っております。当然、それぞれの仕組みによって違いがあるかと思いますが、基本的な考え方は、従業員あるいは役員の株式保有を進めるために、一定の条件はあるとしても、ある意味で機械的に参加した方については、株を持てる、あるいは積み増していけるようにすべきだと思っております。また、資格を喪失して持株会を退会するときの、いわゆる端数の持ち分処理についても、インサイダー取引の対象になるとされておりますが、これは非常に時間も手間暇もかかって大変でございますので、ここは適用除外としていただきたい。

それから特に役員持株会に多いと思うわけでありますが、役員になったときには、役員持株会に入って、一定の掛金を出すことがあらかじめ決まっている場合が多いかと思いますが、それに従って、機械的に新たに株を買い増す、いわゆる役員持株会として株を買い増しすることについては適用除外にしていただきたいということでございます。従業員持株会、役員持株会というのは、非常に数は増えております。普及は進んでいるわけでありますが、非常に使いづらいところがございますので、ぜひこの機会に見直していただきたいと思っております。

2点目は公開買付けに関する規制緩和でございます。TOBの実施を決定した者からその事実を伝達された他の者、競合他社等でございますが、ただ、知っていても、TOBの実施を決定した者が当該事実を公表しなければ買うことができなくなる。要は、競争相手には買収の実施を教えておく一方、対外的に公表をしないでおけば、競合他者はその間手出しはできなくなるということでございますので、これはおかしいのではないかと前から思っておりました。市場の公正性・健全性を害しない範囲ということにはなるかと思いますが、公開買付けに関する規制緩和ということで、実施を決定した者から事実を伝達された者については買付けをできるようにしていただきたいということでございます。

それから(3)、いわゆる「クロクロ規定」と呼ばれる、知っている者同士の取引についてでございますが、これは166条と167条とで規制の在り方に違いがあるということを、私どもは前から指摘しておりました。今の166条の適用除外規定は、会社関係者と第一次受領者間の取引に限られておりますが、167条は第二次以降の情報受領者も含めて、知る者同士、いわゆるクロクロであれば適用除外になっております。これと同じように、166条においても、お互いに情報を知る者同士の取引は適用除外としていただきたいと思っております。これが3点目でございます。

4番目、これが非常に難しいと思っておりますが、いわゆる公表というものをどう考えるかということでございます。現行法の公表概念は、2以上の報道機関に公表し、それから12時間が経過した場合、TDnetで、日本語で公衆縦覧に供した場合、あるいはプロ向け市場において英語で公衆の縦覧に供した場合と、非常に限定されておりまして、狭過ぎるのではないかと思っております。

一方、ライブドア事件の最高裁判決におきましては、これは有価証券報告書虚偽記載においてではありますが、公表というものについては実質的な判断をすべきだということの見解が示されております。これを1つの参考に、インサイダー取引についての公表概念を実質的に考えていただきたいということ、なおかつその趣旨をできるだけ明確に規定していただきたいということでございます。

この後で外国制度の紹介があるかと思いますが、例えば英国の刑事司法法の58条では、非常に広い公表概念が列記されております。例えば、投資者及びその専門的助言者に情報を示す目的で規制市場の規則に従って公刊された場合という当たり前のことから、他にもいろいろなものがありまして、要は、マスコミ報道等によりまして、知り得る場合になったことまで含めていると読めるような条文になっております。公表というものについて、今のような狭い概念ではなくて、実質的に考えていただきたいということと、その趣旨を踏まえて明確化を図っていただきたいということがお願いでございます。

以上4点が、私どもなりに、今回、ぜひご議論願いたいと思っていることでございますが、それに加えまして、その他、幾つか細かいところについて口頭でざっと申し上げます。

1つは規制当局に対してさまざまな相談をさせていただきたいということでございます。現状も行われているわけでございますが、必要に応じて的確にお答え願いたいということでございます。

それからもう一つ、業務執行を決定する機関による決定の時期についてです。現行の166条2項1号では、業務執行を決定する機関が決定をしたことという趣旨でございますが、この業務執行決定機関について、非常に厳格に考えられているのではないかと。企業によって、定款あるいは法令に基づきます組織に加えて、実際に業務執行の意思決定をしている組織等があります。それが、それぞれの企業の中で、社内規則等で明定されていれば、当然それも決定機関としてもよいのではないかと思っております。

それから決定の時期につきまして、これは逆に広過ぎるというか、準備段階でも決定になり得るということでございますので、ここは非常に、企業にとっては厳しいと思っております。決定をする機関、それから決定の時期について、それぞれ、狭過ぎる、広過ぎるという問題があるかと思います。この点について何とかしていただきたいというお願いです。

それからこれは私どもが前から言っている話でございますが、業績予想開示における基準についてです。昨年のWGの議論の中で、重要事実の中でも特定の要件に限りまして、いわゆる連結の考え方が入ってきたわけでありますが、業績予想に関しては、広く連結ベースで考えてほしい、投資家も連結で考えているということでございますので、ここについては基本的に連結でいいのだということに、ぜひともお願いしたいと思っております。これは従来から言っているわけでありますが、この機会にご議論賜れれば幸いであります。

あと2つだけでございます。1つはバスケット条項でございます。166条2項の4号、8号でございますが、これが非常に困りものであります。なければ困るので置いてあるというご趣旨はわかりますが、これが非常に漠然としておりまして、法的安定性を欠いていると思っております。企業で、さまざまな行動につきまして法律事務所等に相談いたしますと、これがあるから危ないと言われるケースがあると思います。ここはもう少し明確にしていただきたいと思っております。例えば一定の影響を考える上での軽微基準を設けるとか、実務の参考となりますようなガイドラインや事例集を出していただきたいと思っております。

最後でございます。166条2項5号の、業務上の提携又は業務上の提携の解消について、一体これは何のことかよくわからないということでございます。有名な解説書等で、「単なる資本提携や人事提携は含まれない」と書かれているわけでありますが、では何のことだということでございます。あるいは軽微基準の中で、子会社株式の5%取得というのは低過ぎるのではないかと思っております。ぜひこの際、明確な定義、基準ということの議論をお願いしたいと思っております。それとともに子会社株式取得の軽微基準、これをもう少し上げていければと思っております。

以上、本日の会合の主要テーマに限らず、私どもの普段からのお願いも含めまして説明させていただきました。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、武田委員、よろしくお願いいたします。

○武田委員

東証自主規制法人の武田でございます。資料2「インサイダー取引に係る東京証券取引所の取組みについて」という資料でご説明をさせていただきます。なお、私ども東証は持株会社のもとに、市場運営会社であります東京証券取引所、それから自主規制法人がありまして、三者が一体となって業務運営をしておりますので、総称して東証という形で呼ばせていただきたいと思います。

資料3ページをご覧ください。まず、東証のインサイダー取引予防のための取組みというテーマをいただいております。(1)証券会社の法人関係情報管理態勢に係る考査ということで、私どもは市場の公正性・信頼性の確保のために、金商法及び東証諸規則等の遵守状況の調査、いわゆる考査と申しておりますけれども、これを行っております。

2番目の矢印でございますけれども、実地考査、これは証券会社に出向いて行う検査のことでございまして、臨店考査とも申しておりますけれども、その中での法人関係情報管理態勢の整備や運用状況の調査ということについて、3つの観点から実施をいたしております。1点目が規則の整備状況に係る調査、社内規程や運用ルールがきちんと整備されているか。それから2点目といたしまして、その運用状況に係る調査ということで、社内規程、運用ルール等に基づいてきちんと管理をされているかということで、登録漏れがないかとか、公表前に管理を解除していないかといった観点から調査を行っております。それから3点目といたしまして、不公正取引があったかなかったかの調査でございます。各証券会社が法人関係情報として管理している銘柄の中から、既に公表されたもののうち、抽出をいたしまして、当該事案の公表前後にタイミングよく売買を行っているお客様であるとか、役職員の方がいなかったかどうかを精査しております。ご参考までに、直近の不備指摘件数ということで記載をさせていただいております。

4ページをおめくりください。こちらは実際に法人関係情報管理態勢に不備があったというようなものについて処分を行った事例を9件記載させていただいております。詳細な説明は割愛させていただきますけれども、備考欄にございますように行政処分でありますとか、課徴金の納付命令が出されたもの、あるいは4番目のドイツ証券のように取引所独自の調査で見つかったようなもの、こういったものについて、過怠金なり戒告を課していくというような仕組みになっております。

5ページをご覧ください。ご参考までに考査の業務フローという形で、原則、日本証券業協会様と合同検査という形で実施をさせていただいておりますけれども、こういった流れで、財務状況でありますとか業務状況を審査させていただいているということでございます。

次の取組みといたしまして、6ページでございますが、上場会社に対する取組みということで、(2)重要な会社情報の適時開示ということでございますが、1つ目の矢印でございますけれども、適時開示は参考に記載のとおり取引所の上場規程で決められておりまして、正確性が求められる法定開示に対しまして、迅速性あるいは適時性を重視する速報版として位置づけているものでございます。上場会社が投資判断に影響を与える重要な開示情報を適時適切に開示することで、公正な価格形成を確保し、投資者保護を図る、これを目的にやっております。

2つ目の矢印でございますが、昭和63年、インサイダー取引の規制が導入された年になるのですけれども、その年に検討された証取審の報告におきまして、取引所についてはインサイダー取引の未然防止のために、上場会社に対して適時適切な情報開示を要請することとされておりまして、それを受けて以来、インサイダー取引規制上の重要事実に該当するような会社情報が生じた場合には、直ちにその内容を開示するよう義務づけることが、インサイダー取引の未然防止に寄与するという形で扱っております。

(3)の上場会社への要請、情報管理の要請ということで、参考にございますとおり、上場会社の役職員等による内部者取引の未然防止に向けて、必要な情報管理体制を整備するよう努めることを規則で定めているという点がございます。それから、従来からやっておりますけれども、本年4月には、上場会社向けにインサイダー取引未然防止のための情報管理の徹底のお願いということを改めて発信をいたしまして、情報管理の再徹底ということをお願いしているところでございます。

7ページをご覧ください。次は売買審査でございます。1つ目の矢印でございますけれども、売買審査の目的は、インサイダー取引の違反等を発見し、未然防止を図り、市場の公正を守ることでございます。参考のイメージ図をご覧いただきたいのですけれども、取引審査の流れといたしましては、左側の証券会社から顧客の売買データを頂戴し、あわせて上場会社からは、右側にありますとおり重要事実の公表に至るまでの経緯を記載いただいた報告書をご提出いただいて、会社関係者等の取引がなかったかどうかということを調査しております。

2つ目の矢印でございますけれども、今ご説明いたしましたとおり、審査に当たりましては上場会社、それから証券会社の協力が必須ということになります。その審査結果につきましては、証券取引等監視委員会に報告をさせていただくなど、当局と連携をさせていただいているということでございます。それから黒丸が2つございますけれども、それと並行いたしまして、売買審査の過程で上場会社の計算によるインサイダー取引でありますとか、役職員の方が届出をしないで自社株売買を行ってしまって、社内規則を遵守していないというようなことが明らかになった場合については、我々独自として、管理態勢の整備、改善を促す観点から注意喚起をさせていただいているという流れになります。

8ページでございます。こちらは上場会社とか証券会社の研修のお手伝いを積極的に推進させていただいているということで、自主規制法人の中に、平成20年にコンプライアンス支援を目的といたしまして、コンプライアンス研修センター、東証COMLECという団体を設立いたしております。活動状況といたしましては、ここから次のページに記載の5つございまして、まず、上場会社向けのコンプライアンスフォーラムの開催ということで、インサイダー取引の未然防止をテーマに5会場で毎年開催をしております。例年1,500名以上のご参加をいただいているということでございます。

2点目といたしまして、東証主催のセミナーでありますとか、講師派遣という形で、出張セミナーというようなことも取り組んでおりまして、年間400回以上開催をさせていただいているということでございます。

それから9ページでございますけれども、取引相談の受付けの窓口を設けておりまして、上場会社、証券会社等から年間1,000件以上のお問い合わせをいただいておりまして、右側の円グラフの左側の図を見ていただきたいのですけれども、その問い合わせの内容は、75%がインサイダー取引に関するものとなっております。

4点目といたしまして、教育コンテンツのご提供という形で、冊子でありますとかウェブを使ってご提供させていただいているものがございます。それから、取引相談に寄せられるいろいろなご質問に対するFAQをまとめまして、ホームページに掲載をして、お使いをいただいているというようなことでございます。

以上が、我々の普段の取組みについてのご説明でございます。

それから10ページでございますけれども、最近のインサイダー取引事案の状況を踏まえた今後の取組みということで、7月の中旬に公表させていただいたものが大きく分けて3つございます。第1点は、法人関係情報管理態勢検証の更なる強化ということで、検査、考査の部分を強化させていただいております。まず、特務考査チームの編成でございますけれども、専門的に法人関係情報の管理態勢を考査するチームを編成いたしまして、本年8月以降、会社の規模に応じて順次考査に投入をさせていただいております。

それから2点目といたしまして、考査先選定方針の変更ということで、従来我々は、過去の考査結果でありますとか、委員会の検査結果、あるいは前回の考査からの経過日数等を考慮して、必要性の高さに応じて順次考査を行っておりまして、年間約30社の証券会社に考査に入らせていただいているのですけれども、今般の事案を踏まえまして、法人関係情報の取得の可能性の高い取引参加者、証券会社を重点的に選定していくという形で対応させていただいております。当然、選定に当たりましては関係機関との調整、それから当局との連携ということも念頭に置いてやらせていただいております。

11ページ、考査手法の改善ということでございますけれども、法人関係情報管理態勢に係る考査手法の充実・強化を目的に専門の検証チームを立ち上げまして、新しい手法について、本年の7月から順次適用を開始しております。主な内容は4つございまして、担当考査員を増やして細かい考査をやっていこうという点。2点目といたしまして、営業担当者の方へのアプローチ強化ということで、従来はコンプライアンスの窓口の方を対象に、いろいろヒアリングをさせていただいておったのですけれども、実際、もう少しフロントの部分に出て、ディーラーであるとか、外務員の方へのヒアリングも積極的に実施をしていきたいと考えております。それから内部の話でございますけれども、売買審査部が持っているデータ等も考査に活用していこうという点、それから4点目といたしまして、7月3日付で金融庁が実施をされました証券12社に対する点検命令の公表結果を踏まえて、いろいろ分析をさせていただいて、継続的に手法を改善していきたいということでございます。以上が考査に係る部分でございます。

12ページでございますけれども、こちらは内部者取引調査機能の一層の充実ということで、売買審査に係る部分でございます。まず第1点は、7月20日付で公募増資審査室を新設させていただきまして、公募増資に特化した調査を行うための専門部署として、弁護士にも入っていただいて対応しているところでございます。それから2点目といたしまして、公募増資に関わる引受証券会社に対するヒアリングの実施ということで、引受証券から法人関係情報の発生経緯、あるいは社内伝達の経緯等を記載した報告書をデータとして提出していただきまして、社内の情報フローを細部まで把握して審査に役立てようというものでございます。③は社内外の連携強化ということで、証券会社、ご当局とも連携を強化していきたいということでございます。それから(3)の部分は、先ほど申し上げました研修のお手伝いを引き続き実施、積極的に取り組んでいきたいということで、セミナーとか出張セミナーのことを書かせていただいているということでございます。

次が4点目、ライツ・オファリングの利用推進への取組みということでございます。ご承知のとおり、13ページになりますけれども、公募増資をめぐりましては、一連のインサイダー取引、発行決議から条件決定までの株価の下落、既存株主の持分の希釈化といった問題が指摘されておりまして、海外の長期保有をされている機関投資家などからは厳しい評価を得ていることはご存じのとおりだと思います。

一方で、海外からは、かねてから既存株主に優先的に新株引受権を付与して、持分の希釈化を回避する手段としてライツ・オファリングという増資の方法が望ましいというようなことを評価される声も伺っております。ライツ・オファリングは、公募増資をめぐって指摘されている問題の構造の幾つか、例えば海外のヘッジファンドに対するプレ・ヒアリングの問題などを解消する可能性があると思っております。こういった背景を受けまして、私どもとしても、従来から既存株主にやさしい増資手法といたしまして、今申し上げましたとおり、強い要望が寄せられているライツ・オファリングの利用を提唱・推進させていただいているところでございます。既に行われました金商法の改正でございますとか、今後行われる会社法の改正によって、さらに環境整備が進むことが考えられますので、公募と同等、又はそれ以上の利便性を有していると言われている資金調達手段としてライツ・オファリングが定着するように、一層、関係各方面に働きかけを実施させていただきたいと思っております。

14ページでございます。こちらは今回の諮問事項の2点でございますけれども、まず、情報伝達行為への対応ということにつきましては、市場開設者、私どもの立場からすれば、インサイダー取引の原因となった不適切な情報伝達行為は許されるものではないと考えております。ただし、新たな規制を設けるとしましても、情報伝達行為の規制は、職務遂行上正当な情報伝達までも妨げることになりかねませんので、社会・経済活動を萎縮させることのないよう留意する必要があると考えております。

それから課徴金の計算方法についてでございますけれども、インサイダー取引防止の徹底につながり、市場の信頼回復・公正性確保に通ずるよう、いわゆる「やり得」を防ぐ効果が期待できるような額の課徴金とする必要があるのではないかと考えております。

最後の、その他見直しに関する部分でございますけれども、私どもは従来から、セミナーや相談受付におきまして、先ほどもご紹介がございましたけれども、上場会社から、役員、あるいは従業員持株会に係る意見を多数頂戴しております。説明が重複してしまうかもしれませんけれども、持株会による定期的な自社株購入については、インサイダー取引規制の適用除外となっておりますけれども、持株会への加入でありますとか拠出金の減額は対象外となっておりまして、重要事実に接することが多い立場にある役員の方、社員の方による持株会の利用には非常に制約が多いというような声が寄せられております。また、当該適用除外においては、拠出金に上限が課されているというようなところもご指摘があるところでございます。

吹き出しの部分でございますけれども、これについて、前者の部分でございますけれども、例えば持株会の加入は、加入申込みから買付けまで、ある一定期間を空けることを条件とすることなどによりまして、インサイダー取引規制の適用除外にするというようなことも考えられるのではないかということを社内で議論してきたところでございます。

私からの説明は以上でございます。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、平田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

○平田委員

証券業協会、平田でございます。よろしくお願いいたします。

資料3-1及び3-2を用意しておりますので、これに基づきまして話をさせていただきます。

資料3-1、1ページおめくりいただきますと、現在、協会でインサイダー取引防止のための取組みをしてきたことにつきまして紹介させていただいております。まず、自主規制規則を制定してきております。資料3-2、1ページおめくりいただきまして、参考1をご覧いただきたいと思います。「協会員における法人関係情報の管理態勢の整備に関する規則」、平成22年4月に制定しております。会員証券会社はこの規則に従いまして、法人関係情報を利用した不公正取引が行われないように、法人関係情報を取得した際の手続、あるいは取得した者における情報の管理手続などの社内規則を制定するということを義務づけております。また、この法人関係部門について、他の部門から物理的に隔離するなど、法人関係情報が、業務上不必要に他の部門に伝わらないよう管理しなければならないとしております。この規定に基づいて、各社がきちんとそのルールを履行しているかどうかにつきましても、定期的に検査を行うことを規則上義務づけております。

また1枚おめくりいただきまして、参考2でございますけれども、当然ながら、証券業協会の協会員の従業員に関しましては守秘義務を課しております。この7条3項17号において、業務上知り得た秘密を漏えいすることに関しましては、禁止行為として明確に規定しております。当然ながら義務規定ですので、これに違反した場合には、外務員の資格に関する処分の対象にもなり得るということになっております。

また、後ほど触れさせていただきますけれども、今回、アナリストに関して問題となっている部分がございますが、アナリストに関しても、「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則」を参考3として掲載しております。この8条の情報管理の徹底では、協会員においては情報を適切に管理するということで、法人関係情報を持ったアナリスト・レポートを執筆する者に関する管理の規定を設けている状況です。このような形で、協会においては従来からこの法人関係情報の管理に関して、当然ながら漏えいが行われないように規定を整備してきております。

資料3-1の1ページにお戻りいただきまして、2番目の「監査の実施」ということでございますが、こちらは先ほど、東証の武田委員からお話がありましたように、証券取引所と連携して監査を実施しております。また、証券取引所と同様に、ルール違反を行った協会員に対しましては自主制裁を行っており、こちらは、協会の場合においては会社処分と従業員処分と2つございます。会社処分につきましては、従来、インサイダー取引事件においてはかなり多額の過怠金を課すような事案も発生しておりますし、また、法人関係情報漏えい事案に関しましても、直近、SMBC日興証券の事案に関しましては、2億円というかなり高額な過怠金を課しているということで、十分な処分を行っているのではないかと考えております。

一方で、事件を起こしてしまった役職員に対しましても処分を課しております。こちらは2つございまして、1つは行政から委託を受けております外務員の処分がございまして、外務員登録の取消し、外務員の職務を一定期間停止させるという処分を課しております。あるいは、我々は資格試験制度を持っておりまして、その資格に係る処分がございます。過去、法人関係情報の漏えいに関しまして、あるいはインサイダー取引の事案に関しましては、証券会社に5年間復職できないというような不都合行為者という指定を行ったり、この不都合行為者に関しては、無期、いわゆる証券界から永久追放といわれているような処分も行える状況になっております。

続きまして、2ページをご覧いただきたいと思います。今般の事件を受けまして、こういう形で従来からルールを整備し、エンフォースメントを行ってきた状況の中でこのような事件が起こってしまったことに関しましては、我々として非常に遺憾に思っているわけであります。このような一連の事件を踏まえまして、我々としても現在取組みを行っているところでございます。

1点目としましては、東京証券取引所、大阪証券取引所と合同で、現在、金融庁から報告徴求命令を出された12社以外の証券会社においても、適切な法人関係情報の管理を行っているかどうか、点検を行うよう要請しております。今週の金曜日までに、その状況について報告を行っていただくようにお願いしております。

この点検結果報告を踏まえまして、さらに今後、法人関係情報の管理に関する自主規制規則の見直しを考えているところでございます。今般、法人関係情報の取扱いにおいては、法人関係情報そのものでなく、法人関係情報を持っていることを示唆するような情報の提供、あるいは他の情報と総合して、いわゆる法人関係情報となるような情報を提供しているようなケース。例えば「うわさ」と称して情報を提供しているケースですとか、あるいは、社名を言わなければ情報を提供してもいいのだといった誤解が一部にあったというようなことが言われておりますけれども、法人関係情報を100%提供しないまでも、それを持っていることを示唆するような情報提供も、やはりある程度管理をしていく必要があるのではないかと考えておりまして、そのような管理の方法を検討していきたいと考えております。また、営業部門が、この法人関係情報を取得している法人関係部門に対して執拗に情報を要求するようなケースが散見されております。このような部分に関しましても、厳に規制を行っていく必要があるのではないかと考えております。

一方で、情報を要求するような顧客との対応に関しましては、不当に法人関係情報を要求された場合の取扱いについて、一定のルール化を図るような検討を行っていく必要があると考えております。また、そもそも法人関係情報を持ってしまった営業部門がもしあった場合について、その管理について見直すといったような対応についても一定のルール化を図っていく必要があろうと考えております。

それからその下にございます自主制裁の強化に関しましては、今、十分な制裁を行っているつもりでありますけれども、その運用基準の明確化等、例えば民主党等からも要請されておりますので、検討を進めていきたいと考えております。

監査及び売買管理に関しましては、証券取引所で定められた新しい取組みに関して全面的に協力をしていくという対応を図らせていただきたいと思っております。このようなルールが規定されている中で起こってしまった事件ですから、ルールをいかに強化しても再発する可能性もあります。この辺については、いかに従業員の質の向上、あるいは知識の向上、意識の改革を進めていくかが重要なのではないかと考えております。研修あるいは資格試験制度の見直しを、全面的に力を入れてやっていきたいと考えております。特にコンプライアンス、企業倫理に関する分野に力点を置いた研修の実施を進めていきたいと考えているところでございます。

続きまして、このワーキングにおきまして論点となっております2つの事項につきまして、若干意見を申し述べさせていただきたいと思います。

1点目、情報伝達行為に対する規制を設けることをどう考えるかという点でございます。3ページ目をご覧いただきたいと思います。基本的な大前提としまして、市場において情報は非常に重要なものでございます。例えば会社のIRから流れてくるような情報、アナリストの分析、あるいはメディアの情報など、当然ながら資本市場に関わる者としては、様々なチャネルから発信される情報は非常に重要であると考えております。これらの様々な情報が適正な価格形成につながるベースになっているということを考えると、過度に情報伝達行為に対する規制を設けることに関しては、慎重な取扱いをしていくべきだという基本的な考え方を持っております。

しかしながら、今般行われたような不公正な取引を招くような情報提供に関しましては、一定の規制が行われることはやむを得ないものであると認識をしております。ただし、その場合におきましても、これは阿部委員がお話をされたのと全く同じでございます。情報提供自体が不公正な行為だということではなく、やはりインサイダー取引が悪いということを考えますと、教唆、幇助といった観点で規制を行っていくべきではないかと考えているところでございます。そういうことを考えますと、やはり規制される主体は会社関係者、規制される情報は未公表の重要事実とすべきであると考えております。

ただし、ここで1点付言させていただきたいことは、未公表の重要情報といっても、その情報の範囲というのは一体どこからどこまでなのだろうか。今回の一連の事件を見ておりましても、例えば未公表の状況下で、どこの会社において、いつ、どんなファイナンスが行われるかということを丸ごと100%情報提供しているケースはありませんでした。つまり、会社のIRですとかアナリストの分析ということをベースに、機関投資家自身も相当程度の情報を持っている中で、例えば「あるかもしれませんね」ですとか、あるいは「来週ですね」というような情報提供をしただけで、未公表の重要事実の提供になっているということを考えますと、この「未公表の重要事実」の範囲をどこからどこまでに置くのかという、この情報の範囲の議論に関しましては、十分に議論していただきたいと考えているところでございます。

一方でファイナンスの情報とか、あるいは重要事実を構成するような、さまざまな情報に関しましては、いわゆるアナリストのリサーチ、それから、会社からのIR情報をベースに、証券会社においてはリサーチセールスが機関投資家にお伝えする業務を一部担っているということもございます。引受証券会社以外の証券会社であれば、そういう情報を提供することは認められますが、引受証券会社は、後ろに引受部門を背負ってしまった途端に言えなくなってしまうということになります。当然ながら、今回、引受部門と営業部門の間の壁をより高くしようという努力をしているわけでありますが、壁を高くすれば高くするほど、他の引受部門を持っていない証券会社と同じ立場になるはずではありますけれども、この情報の規制が強化されればされるほど、引受証券会社は何もしゃべれなくなるという状況が起こってくる可能性がありますので、この辺をどう考えるのか。極論しますと、万が一営業部門が重要情報を知ってしまったら何もしゃべれないということになるわけですが、機関投資家は相当程度知っています。従いまして、何か聞かれたときに「それはしゃべれません」と言うこと自体、この営業員はしゃべれないということは、逆に何かあるのだというふうに知られてしまうことにもなりかねません。それがアウトだということだとすると、証券会社は営業行為というものが一切できなくなるということもございます。その辺は十分留意の上、ご検討いただければと考えているところでございます。

4ページ目でございます。課徴金の計算方法につきましては、まさに阿部委員がお話をされたとおりだと考えておりまして、我々も全く同じ意見であります。基本的には、今回の事件の課徴金が数万円というのは低過ぎるといった観点から、課徴金の引き上げの検討は必要であると考えておりますが、具体的にどういう形で掛けていくのかに関しましては、技術的な問題があるので、ここで十分な議論を尽くしていただきたいと思っております。

一方でこのペーパーには記載しておりませんけれども、前回、川口委員も一部ご指摘されておりましたけれども、日本における刑事罰が低いのではないかということに関しましては、我々もそのように思っております。後ほど海外の状況をご説明いただけるとのことですけれども、その中でも、海外の罰則はかなり重いものと認識しておりますので、刑事罰の強化ということに関しましても、ご議論いただけるとありがたいと考えております。

最後に5ページ目でございます。その他の論点としまして、幾つか掲げさせていただいておりますけれども、時間の関係で重要な部分だけ指摘させていただきたいと思います。

1点目、会社関係者の「職務に関し知ったとき」の取扱いでございますけれども、先ほど申し上げましたように、ウォールを高くすれば高くするほど引受部門、いわゆる法人関係情報を持っている部門と営業部門は隔離され、情報を知り得ない立場になっていくはずであると考えた場合において、当該営業員が、万が一、同一会社の中で情報を受領した場合に関しては、これは、「職務に関し知ったとき」となるのかどうか。基本的に同じ証券会社の中だから、「職務に関し知ったとき」になるのだろうとは思っておりますけれども、本当にそうなのか。証券会社以外の発行会社とか、あるいは関係者の間ではどうなるのだろうか。その場合における二次受領者の関係をどう考えるべきなのかという論点があるのではないかと考えております。本件ワーキングにおいて検討いただければありがたいと思っております。バスケット条項に関しましては、先ほど阿部委員からお話をされたとおりでございますので、割愛させていただきます。

それから投資家サイドの行為に関しましては、先ほどもお話をしましたけれども、機関投資家においては、様々な情報を既に入手していると、証券会社が機関投資家に対して行う営業行為の中で、当然ながら、証券会社に対しても情報を要求するような場面が出てきております。一連の事件の中でもそういう行為が行われたということでありまして、証券会社を情報提供の面でもその良し悪しを評価するという慣行があるようです。こういうことが情報提供してしまうインセンティブにもなっているといった観点で、こうした機関投資家の行為に関しましても、何らかの規制が必要なのではないかと考えているところでございます。

最後にアナリスト・レポートの取扱いでございますけれども、一定の増資前の期間においては、アナリストに関してはアナリスト・レポートを書かないという期間を設けております。通常ですと、セールスで使うためのメモランダムを、このアナリストに書かせているということで、増資公表の一定期間前にアナリストをウォールクロスさせて、インサイドの者として認定すると、それ以降はアナリスト・レポートが書けないというような状況が起こっております。これが今回、営業員から、アナリストがレポートを書かない期間の存在を察知して、増資案件などがあるのではないかという推測が行われていたということでございます。この期間を短くする努力を、今、各証券会社で行っておりますけれども、逆に短くすればするほどピンポイントで増資やその決議日がわかってしまう問題が出てくる。従いまして、セールス部門の利用のためのレポートの記載をアナリストにさせないという証券会社も現在出てきております。一方で、ずっとアナリスト・レポートを書けるかというと、募集期間に入ると、これは目論見書として利用されなければならないので、逆に使えないということになります。したがって、このアナリスト・レポートを書かない期間のいわゆるブラックアウト問題を解消するためには、ある程度法的な対応として、目論見書ではない形でも、通常のセカンダリーの売買のためのアナリスト・レポートの利用についてご検討いただかなければいけないのかなと考えております。

説明が足りていない部分については、後ほどご質問があれば、質疑の中でお答えをさせていただきたいと思います。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、参考人としておいでいただきました中元参考人からお話をいただきたいと思います。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

○中元参考人

中元でございます。本日はお招きいただきましてありがとうございます。

多くの専門家の方たちを前に私からお話しできるのは、ルールですとかそういったことよりも、やはりこのインサイダー問題が、海外の投資家、海外の方からどのように見られているか、これは市場だけの問題ではなく、やはり日本全体について、ある印象を与えるようなことだと思うので、その辺のお話をさせていただきたいと思います。

まず、このインサイダーの問題がフィナンシャル・タイムズで取り上げられるようになったのが2010年の秋なのですけれども、その背景といたしましては、外資系のアナリスト又は投資家、あるいはバンカーの間で随分問題提起がありまして、これは公にというよりも、市場関係者の間で、「一体どうなっているんだ」というような話が随分されていたようで、そういったことが私たちのほうにも聞こえてきたので、取材を始めることになったのですけれども、外資系の市場関係者からそういった問題提起があったというのは、1つの大きなポイントだと私自身は感じています。そして、その当時彼らが言っていたのは、増資のときには必ずインサイダーの情報が漏れて、必ずヘッジファンドなりがショートして、1つのパターンができてしまっていると。これは非常に悪いこと、とんでもないことではないかというような話が随分されていまして、いろいろ取材をしていくうちに、一部というよりも、かなり広くこういったことが行われているという印象を受けました。

例えば、香港にいる、あるヘッジファンドのファンドマネージャーに、たまたま電話をして、「こういうことが言われているのだけれども、どう?」というようなお話をしましたら、自分のところにも、ある証券会社、日本の大手証券会社の営業の人が来て、こういう増資がありますと、参加しませんかというような話があったと聞きました。その人は非常に怒っていまして、米国のファンドだったので、コンプライアンスがかなり厳しいということで、それを聞いただけで売買を全く停止してしまわなければいけないという状況にあったので、本人は非常に怒っていまして、こんなことをしていたら日本の市場は絶対だめになると。そのときのファンドマネージャーのお話が大変印象的でした。それだけ外資系の投資家の間では大きな問題として認識されていたのです。

ただ同時に、私にとって非常に不思議だったのは、そういうことが外資系の投資家の目にははっきり見えていて、問題視されていたにもかかわらず、日本の投資家などにお話を聞こうとしますと、全くそういうことは認識していないというような返事が返ってきたりしましたので、これは一体どういうことなのかと、当時はちょっと不思議に思いました。ただ、今考えてみますと、もしかしたらそれはあまり不思議なことではなくて、そういうことがあるというのは、日本では当たり前に受けとめられていたのかなというふうにも考えられます。これは増資インサイダーにかかわらず、日本で長くメディアに携わっていますと、いろいろな情報がよく漏れます。ただ、日本に長くいる私にとっては、それはあまりびっくりすることではなくて、またそういうことなのかというような印象しかないのですけれども、ロンドンなどから新しく日本に派遣されてくる記者などは、最初のうちは大変びっくりします。なぜ、誰も知るはずのないことが連日のように日経に出ているのかとか、なぜ、こういったことがこんなに簡単にメディアに漏れているのだろうというのは非常に不思議に映るようです。

そういうことがあるので、この増資インサイダーの件は、日本の投資家にとってはそれほど、怒りをもって見るものではなくて、あまり認識されていなかったのかもしれないというふうに今は思うのですけれども、いずれにしても、外資系の投資家というのは、ご存じのとおり、今や東京市場では非常に大きなプレゼンス、なくてはならないプレゼンスになってきていますので、そういった方たちの声というのはかなり重要なのではないかと思いますし、当時も、日本の投資家はあまり言っていないけれども、やはり外資系の人たちがこれだけ問題視しているということは何かあるんだろうというふうに思って取材を続け、記事化をすることになりました。

もう一つ、そのときに非常に印象的だったのが、これはある外資系のバンカーのお話だったのですけれども、普通、インサイダー取引といいますと、ある投資家が誰かから情報を聞いて、その人が売買をして儲けると、割と個人なりグループなりの行為だと思うのですけれども、この場合はそうではなくて、もっと構造的な問題で、ある特定のヘッジファンドとか、特定の投資家というよりも、そういう仕組みになっていたというふうに、お話を聞いているうちにそういった仕組みが明らかになってきました。それはどういう仕組みかといいますと、日本の企業が増資をするときには、引き受ける証券会社がありますけれども、彼らにとっては、引き受けたものをさばかなければいけないという事情があって、今、日本の証券市場はそれほど、世界からもあまり注目されていなくて、それほど日本に投資したいという盛り上がりのない状況の中で、どうやってそれをさばくかという問題があります。その中でやはり、ヘッジファンドなり、確実に買ってくれる、そういうお客さんがいるというのは、引受けのほうにも非常に重要なことでして、彼らにとってそういうヘッジファンドを確保していくということは、彼らが引き受けるための前提になっていたというような状況がうかがえました。そのとき、いろいろお話を聞いていく中で、あるバンカーが言っていたのは、そういうことをする投資家にとって日本は、これはあまりきれいな表現ではないのですけれども、「It's a no brainer」と、要するに、全く頭を使わなくても儲けられる市場だというふうに見られていたというお話がありました。

つまり、増資があります、そしてその情報をヘッジファンドが得て、ショートをかけます。それで、増資があったときに買い戻して儲けるわけなのですけれども、当時の話を振り返りますと、それが1つのシステムとしてでき上がっていた状況になっていたようです。なので、そういったことができるヘッジファンドなりファンドマネージャーにとっては、何も考えなくても簡単に儲けられる市場。そういう意味では、日本という市場が非常に甘く見られていたと言ってもおかしくないと思います。

これに対して、やはりこんなことをしていたのでは、日本の市場というものはだめになってしまうと非常に心配していたファンドマネージャーたちから、いろいろな声が上がって、何とかこれを改善していかなければいけないというメッセージが強く私たちのほうに届いていました。もちろん彼らは、自分たちではできないので、「self interest」(自己の利益)というところもあるのですけれども、ロングオンリーのファンドですとか、コンプライアンスが非常に厳しいヘッジファンドですと、そういうことができませんので、自分たちの投資したものの価値が下がってしまうということで、ただでさえ東京市場で利益を出すのが難しい人たちにとっては切実な問題であったかと思います。

外資系の人たちが言っていたことの1つとして、非常に大事だと思いますことは、要するにそういうパターンができていた。そのパターンを断ち切ることが大事だということと、それから日本というのは非常に情報が漏れやすい市場であり、国であるというイメージが強くあります。それに対して日本の当局はどうするのでしょうかというのが、私が記事を書いたりしている中での、ロンドンのフィナンシャル・タイムズでの、非常に大きなポイントでした。これによって、日本の当局は何もしないと思っていた人たちもいます。彼らに言わせてみれば、こんなインサイダーの問題を取り上げても、日本の当局が何もしないのであれば意味がないという意見もありました。ただ、そうはいっても、やはり外資系の投資家にとっては、どんなことをしてでも、これを問題提起して取り上げてもらわないと日本から去るしかない。もう日本に投資する意味がないとまで言っていた人たちもいました。2010年のそういったモメンタム、インサイダーに対する批判ですとか、日本市場のそういった構造的な問題に対するモメンタムができたわけなのですけれども、2年経って、いろいろな摘発があったり、金融庁のほうでもルールを変えて、日本版レギュレーションMというようなものができてきたり、いろいろな動きがあったので、ある程度投資家の中でも評価はされていると思います。

ただ、それでも海外から見ますと、どうして課徴金がこんなに安いのか、どうして情報提供をした人たちが罰せられないのか、それは日本の市場、あるいは関係者のいろいろな理由はあるでしょうけれども、やはり海外から見ると理解するのは難しい、理解に苦しむというところはあります。日本は日本なのだからという意見もあるとは思いますけれども、いろいろな理由があって課徴金が低くなっていて、情報提供者も罰せられないということは、メディアとして海外に発信していくことはできるのですけれども、印象としては、やはり当局は真剣ではないのではないかと、どうしてもそういった印象を与えてしまうリスクはあります。

そういったいろいろな問題の中で、もう一つ、このインサイダーの問題が浮き彫りにしている問題があるのですけれども、それは何かといいますと、そもそも増資をして、確実に買ってくれる、ショートをかけられるヘッジファンドがなぜ必要かということなのですけれども、やはり増資をする企業が、きちんとしたエクイティストーリーがないまま増資をして投資家から資金を集める、これが本当の根本的な問題であるという指摘もあります。その資金は、本当はもっと画期的なベンチャー、新しいビジネス、これから成長性のあるビジネスに向かっていくべきなのに、そうではなくて、あまり成長性がないのに増資をして、投資家によっては無駄な投資をしてしまう。日本の企業にそういった資金を向かわせている仕組みが一番大きな問題だと指摘している方もいらっしゃいます。

今、皆さんのお話を聞いていて、それなりに、いろいろ言い分があってというのは理解できるのですけれども、やはりここで、日本は真剣なのだという一つの大きなメッセージがないと、また違った形で、同じような問題が表面化しないとは限らないというのが、今の私の、個人的な印象で恐縮ですけれども、それをもってお話を締めくくらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、これまで伺いましたお話につきまして、委員の皆様方からご質問、ご意見等をお出しいただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構です。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。

大変多岐にわたるお話をいただいたのですが、2点について何人かの方にご意見をお伺いしたいのですが、まず第1点は、情報伝達行為を規制する場合に、インサイダー取引が実際に行われたことを要件とするべきだというようなお話が阿部委員からございまして、同じような指摘が平田委員からもあったわけですが、これはもしかしたら佐伯先生にお伺いしたほうがいいのかもしれませんけれども、仮に情報伝達というのを犯罪行為としてとらえた場合に、その実行行為に着手した段階で犯罪が成立するかしないかが、伝えられた人が取引するかしないかによってしか決まらないというような犯罪というのは、非常に考えにくいような気がするのですけれども、その辺についてどうお考えなのかというのを、平田委員は先ほど教唆、幇助というようなこともおっしゃったので、もしかするとそれは、教唆や幇助に対して課徴金を課すべきだというようなご意見なのかなと思ったのですが、その辺、もう少しご説明をいただければというのが第1点でございます。

それからもう一つは、これは本筋とあまり関係ないかもしれないのですけれども、ただ、非常に本質的な問題ではないかと私も思っていまして、先ほど中元さんのお話の中で、例えば香港のヘッジファンドに、増資に参加しないかという話があったということを聞いたというお話もございました。これ、中元さんはそもそもそういう話をしたことがけしからんというニュアンスでお話しされたのかなと思ったのですが、考えてみれば、守秘義務契約があったのかなかったのかとか、その辺の事実関係はわかりませんけれども、恐らくプレ・ヒアリングの一環であったのだろうと思うのです。また、よってその取引をやめたというのは、これは全く正しいことで、重要事実を伝達された以上取引しなかったという、そのファンドは世界標準に則った行動をされたと思うのですが、一方で、中元さんが最後のほうでおっしゃった、ヘッジファンドに声をかけざるを得ないような増資の計画がたくさんあったというところに構造的な問題があったのではないかというのは、これは別に個別の発行企業を批判するということではないのですが、1つ、問題の大きな要因なのではなかったのかなと、私も思っているのです。

ただ、この点について単純に、情報伝達をうんと厳しく規制すれば、そういう問題が一切解消するのかというと、私は全然そうは思っておりませんで、むしろ、需要についての正確な情報がないままに増資計画を作ってしまうと、そこにより大きなギャップが生じて、結果的に、いわば簡単に儲けようとするヘッジファンドの人を巻き込むということでしか処理する方法がなくなってしまうという問題があるのではないかというふうに感じているのです。実は東証のお話の中で、今後ライツ・オファリングを推進していきますというお話があって、私も、それはそれでもっともなことだと思っておりまして、ライツ・オファリングそのものに、私、個人的にも大変関心を持っているのですが、2年ほど前に英国、フランスに行きまして、ライツ・オファリングの実務についていろいろインタビューをしたのですが、そのときに伺った話ですと、やはりライツ・オファリングの場合でも、ライツを行使してくれるかどうかというのは、これは引受証券会社にとっては物凄く大きなリスク要因になりますので、やはりプレ・ヒアリングは行っていると言うのです。英国なんかではさらに、サブ・アンダーライターとしての契約まで、大手の機関投資家と結んで、必ずライツを行使するかわりに手数料を払うということまで行っているという話で、私は、ライツ・オファリングができるようになればプレ・ヒアリングの問題がなくなるというようなこともないし、また、ライツ・オファリングであれば、ヘッジファンド等による、いわば機会主義的な行動を排除できるというのはちょっと違うのではないのかなと思っております。

それから、情報を遮断すればするほど不正がなくなるというのではなくて、むしろ、引受証券会社が、わからない需要に対して大きな引受けをすることでリスクを感じて、価格を大きくディスカウントして、その結果、情報公表後の機会主義的な空売りなんかをよりやりやすくするというだけの結果に終わるリスクもあるのかなと、こんな気がしまして、そういう意味では、中元さんは日本は特殊だとおっしゃるのですけれども、世界的に資本市場の状況が非常に悪くなっていく中で、英国やフランスの2009年とか10年の増資でも、インサイダー取引として立件はされなくても、ヘッジファンドにヒアリングをかけた結果、公表後に相場が崩れたとか、いろいろなことはあったと聞いておりますので、相当程度、別にそれは実際に立件された人たちを擁護するつもりでは全くないのですが、構造的な問題であるという認識を持って取り組まないと、規制を強化して、かえって市場の機能を弱めてしまうというようなリスクもあるのかなと感じた次第です。

すいません、ちょっとまとまらないことをいろいろと言って、かつ、長くて申しわけないのですが、阿部委員と平田委員にご意見を伺いたいのと、プレ・ヒアリングについてはどなたからでも結構なので、少しコメントをいただければと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは1点目について、阿部委員と平田委員、お願いします。

○阿部委員

情報伝達行為そのものが規制対象になるとはどういうことかと言いますと、会社関係者は会社の話をどこでもできなくなってしまうような話であります。問題は、インサイダー取引につながるような情報伝達行為がなされたかどうかということであって、そういう意味では、当初私どもは157条を直に使って、まさに教唆犯、幇助犯で刑事罰をかければいいではないかということを考えていましたが、専門家にいろいろ聞いてみますと、166条、167条がある限り、インサイダー取引に157条を直に適用というのはないだろうということで、その考えは改めました。

ただ、インサイダー取引をしそうな人に情報を与えることによって、そのきっかけを起こすという行為は規制対象になるべきですので、非常に線引きは難しいのでありますけれども、実際に売買がなされなかったら、それは規制の対象とすべきではないと思っております。直接に情報伝達行為が規制対象になるのではなく、あくまでもインサイダー取引のきっかけとなったものが問題だということでございます。

○平田委員

基本的には、今、阿部委員がお話をされたことと同じでございます。ただ、私の立場は証券界ということですので、若干違う部分があるとすれば、証券会社に関しましては既に、法人関係情報を提供して勧誘する行為に関しては禁止されているという業規制があります。その中で、当然ながら法人関係情報を持っている者がしゃべることは現に禁止されているわけですから、それ以外の者の行為として情報伝達したときに、それに類似するようなことを話してしまっただけでアウトになると、情報提供行為が非常にやりにくくなるのではないか。その部分の恐れということなので、基本的に、適正な情報提供は問題ないという原則のもとに、やはり、悪いのは市場を混乱させるインサイダー取引ということを考えれば、インサイダー取引を引き起こした情報提供を規制すべきではないかという考えに基づいて、今お話をさせていただきました。

そういう意味では、ちょっと阿部委員からは異論があるかもしれませんけれども、教唆だとか幇助だとか、そういう関係なのではないかと理解をしております。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

○大崎委員

ちょっと今の点で、よろしいですか。

○神田座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

別にここで各論に立ち入ることを考えているわけではないのですが、どういう故意を持った行為を罰するのかというので、今のお話はすごく難しいなという感じがしたという感想を、ちょっと申し上げておきたいと思います。

○神田座長

それから、大崎委員の2点目も大変重要な点だと思います。情報伝達を禁止したらそもそもプレ・ヒアリングができなくなってしまうが、情報を伝達して、受け手がインサイダー取引をすると、これはまた、当然のことながら悪いことなので、そこを一体どういうふうにするのかというのは、どこの国でも抱えている問題だというのは、そこまで抽象度を高めて言えばそのとおりだと思うのですけれども。もし、ご感想とかご意見があれば伺いたいと思いますけれども、とりあえずよろしゅうございますか。また後で言っていただいてももちろん結構です。

それでは、続いてほかの委員の方からご意見、ご質問をいただきたいと思います。上柳委員、お願いします。

○上柳委員

関連するかもしれません。平田委員にお伺いしたいのですけれども、プレ・ヒアリングについて、証券業協会は今までも規則を持っておられるのですけれども、その見直しというのをどのように考えておられるのか、今アイデアがあれば教えていただきたいのです。お伺いする理由は、そちらのほうが整備されれば、インサイダー取引といいますか、刑事罰をもってどこまで臨むかというところの必要性にも影響するのかなというのが1つです。が、やはり根本的には、私は中元さんが言われたこと、ほとんど全部、なるほどと思って聞いていたのですけれども、やはり全体として日本では、あうんの呼吸で、ある程度の人たちはみんな知っていて、最後はそれこそ、この社については何も言えませんと言ったり、社内にファイアーウォールができたりした途端に、それが内部者情報発生のシグナルになってしまうというようなところの域まで達しているというような観察もあるようですので、本当に難しい問題だと思うのです。

加えて言えば、大崎委員が言われたように、他の国でもいろいろな問題があるのではないかと、LIBORの問題であるとか、日本だけが悪いという感じはしないのです。が、とはいっても、この問題については、私は大崎委員と違って、きちんと、こんな一方的な、あるいは不公平な情報の伝達はやめるべきだと思っています。そういう意味からも、プレ・ヒアリング等の問題はすごく難しいと思うのですけれども、お考えがありましたら教えてください。

○神田座長

ありがとうございます、平田委員、どうぞ。

○平田委員

プレ・ヒアリングにつきましては、私が用意させていただきました資料3-2の参考4にございますが、「協会員におけるプレ・ヒアリングの適正な取扱いに関する規則」を平成18年に制定しております。これは国内の証券会社あるいは発行会社のファイナンスにおいて、海外でプレ・ヒアリングを行った結果として、インサイダー取引が行われたことを契機に、プレ・ヒアリングのやり方について整理をする必要があるのではないかという観点でルールを定めたものでございます。

大きく分けると中身は2つございまして、1つ目は、国内におけるプレ・ヒアリングは禁止されております。また、海外においてプレ・ヒアリングを行う場合には、相手方の機関投資家と守秘義務契約を結び、かつ、売買につながらないような管理をしなければならないということで、海外ではプレ・ヒアリングを行ってもいいという内容になっています。どうして国内と海外を分けたかというと、国内に関しましては、届出前勧誘の禁止という項目があって、プレ・ヒアリングを行った会社は、結果として株式を売らなければならないというのが今までの慣行でもあります。当然ながら、プレ・ヒアリングの話を聞いた機関投資家には株式を買ってもらわないとプレ・ヒアリングの意味がないということでございます。

一方で、後から見たときに、あの段階でもう勧誘をしているだろうと言われてしまうことが問題だということで、届出前勧誘が禁止をされている以上は、届出書が出る前にヒアリングを行って、予約みたいな形に見える行為は厳に慎むべきと考えているため、行っていないのが現状であります。少なくとも届出書が出た段階でブックビルディングが行われるので、そこで意見が聞けるのではないか。そういう考え方のもとに、プレ・ヒアリングに関しては今まで禁止してきております。

ここに関して、ライツについては、このプレ・ヒアリングを解禁しないとやはりできないのではないかという非常に強い意見がございまして、現在も当局と相談させていただいております。なかなか届出前勧誘の禁止の適用除外という形で明確化することが難しい一方で、開示ガイドラインで、第三者割当に関しては届出書の中に割り当て先を書く必要があることもありますから、その辺の流れの中で少し整理ができないかということに関しましては、引き続き検討させていただきたいと思っています。実務上どうなるかというと、幾つかの機関投資家にヒアリングをさせていただいたところ、国内の機関投資家に関しましては、やはり未公表の重要事実である増資情報を取得してしまうと、公表されるまでの期間、当該銘柄の運用を止めざるを得なくなるから、ヒアリングをしないでくれという声が非常に多いという実態がございました。この辺をどう整理していくのか、今後の課題だと認識しております。

○神田座長

ありがとうございます。

池永委員、お願いします。

○池永委員

これは阿部委員にお聞きしたいのですけれども、日本の企業は、海外市場で盛んにM&Aなんかをやっているわけですけれども、その場合には、海外における情報伝達行為そのものを規制する中でそういうものをやられているわけなのです。そういたしますと、先ほどからご指摘のあるような会社関係者同士の情報伝達というのは非常に難しくなるのでしょうか。海外においては正当な、職務上必要な情報伝達はオーケーという制度のもとでやられているわけですから、特段、海外におけるM&Aについて特に支障を感じられているようなことはないのではないかなという印象を受けているのですがいかがでしょうか。また、その観点からみますと、日本において、取引をした場合だけ罰するというふうにしなければいけない理由を、企業の方々は感じておられるのかどうなのかという点についても、ご存じでしたら教えていただきたいと思うのですが。

○神田座長

どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

わかる範囲でお答えします。海外でのM&A等について、特段支障はないことはご指摘のとおりかと思います。では国内で、いわゆる会社関係者が会社情報を伝達するということはどういうことかについてですが、これは非常に幅が広くなってしまうのではないかと思います。例えばそれぞれの会社の、資金調達のために内部情報を明らかにするような場合は限定できるかと思いますが、例えば、特許部の方が今どういう案件を扱っているとか、あるいはもっと極端なことを言いますと、研究開発テーマはどういったものかというような話にまで、特定の業界によっては重要な事実になりかねませんので、単に会社関係者、自分たちの会社がこういうことをやっている、ということを外で話すこと自体が規制対象になってしまうと、これは非常に困ると思います。特定の目的、特にインサイダー取引規制について言えば、最終的には不正な取引・売買が行われたことに対するペナルティを科せられるような規制をすればいいわけですので、いわゆる大きな網をかけるのではなくて、必要な範囲で網を絞っていただきたい。そういう意味では単なる情報伝達ということではなくて、少し言い方が難しいのですが、やはり考え方で言えば教唆犯、幇助犯のような構成になるのではないかと思います。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。それでは先へ進ませていただきましてよろしいでしょうか。

本日、参考人としてお越しいただきました中元さんには、この後のご予定がおありだということで、11時半ごろにご退席と伺っております。もし、皆様方からご質問、ご意見等がこの時点でないようでしたら、次の議事に進ませていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

それでは中元さん、お忙しいところ、どうもありがとうございました。

○中元参考人

ありがとうございました。

○神田座長

それでは続きまして、インサイダー取引規制の海外調査の結果につきまして、事務局からのご報告をお願いいたします。

○増田市場機能強化室長

資料4でございます。インサイダー取引規制の各国比較ということでご説明をさせていただきます。

まず、規制の概要でございますが、米国につきましては、根拠法と規制対象行為のところでございますけれども、SECの定める規則に違反して、相場操縦的又は欺瞞的な策略又は術策を用いることを規制するということで、具体的なSECの規則におきましては、規則10b-5のほうで、証券の売買に関連して詐欺を行うこと等を禁止ということで規制がされてございます。

その下でございますが、公開買付け等に関連しまして、同じく詐欺的、欺瞞的又は相場操縦的な行為又は慣行を行うことを規制ということで、規則の14e-3におきまして、規制公開買付者等から入手した公開買付けに関する非公知の重要事実を保有する者による売買が詐欺的な行為に該当すると、それから情報伝達についても禁止ということが書かれてございます。後ほどご説明させていただきますが、ただ、この規制につきましては、通常10b、それから10b-5の違反とあわせて適用というふうにSECのヒアリングでは聞いております。制裁につきましては書いてあるとおりでございます。

EUでございますが、市場阻害行為指令ということで、この指令に基づきまして各国で規定を整備しているということで、順次ご説明をさせていただきます。まず、英国でございますけれども、英国につきましては、大きく刑事司法法と、それから金融サービス市場法というのがございまして、刑事司法法については、内部者として情報を保有する者が行う次の行為が刑事罰の対象ということで、実際の取引と、それから他人に推奨すること、それから他人に開示すること、これにつきまして刑事罰ということで規定がされてございます。

金融サービス市場法につきましても、内部者が取引を行うこと、それから開示をすること。ちょっと規定振りが違いますけれども、自身が行った場合には、市場阻害行為につながったであろう行為を、他の者に強要又は助長する行為も行政上の措置の対象ということになっております。

次のページでございますけれども、これにつきましては行政上の措置ということで、制裁金又は、行為者が市場阻害行為に従事した旨の公表を行うというような規定がございます。これにつきましては(注1)に書いてございますように、制裁金については、違反行為により得た利得の吐き出し、及び違反行為の重大性を反映した制裁を考慮要素に算定しております。

(注2)でございますけれども、公表によって抑止が効果的に達成されるか、違反によって利益を得ていないか等を勘案して制裁金又は公表の措置のいずれかを決定というふうに、FSAの作成しているハンドブックで書かれてございます。

1ページ目に戻っていただきまして、仏国でございます。仏国はちょっとわかりにくくなっておりますけれども、まず、刑事罰による規制の対象ということで、通貨金融法典のほうで定めがございます。これにつきましては、会社の業務執行者、それからその職業又は職務の執行に際し内部情報を有する者が、公衆が内部情報を知る前に取引を行うか、又は行うことを許容した場合について、2年以下の自由刑及び150万ユーロ以下の罰金ということで定めがございます。また、その下でございますが、その職業又は職務の遂行にあたり、内部情報を有する者が情報の伝達を行った場合について、1年以下の自由刑及び15万ユーロ以下の罰金となってございます。

その他ということで、その他事情を知りながら内部情報を有する者が、情報を伝達した場合でございますけれども、これについても1年以下の自由刑及び15万ユーロ以下の罰金ということで定めがありますけれども、それと別に通貨金融法典、下の丸でございますが、行政上の措置による規制対象ということで、インサイダー取引を行い、若しくは行おうとした者、それから通貨金融法典又はAMF一般規則等に違反する行為を行った者は、行政措置の対象になるということでございます。

次のページに、AMF一般規則を載せてございますけれども、2ページでございますが、AMF一般規則では、内部情報を用いて売買を行った場合、それから伝達した場合と推奨した場合が禁止されてございます。内部情報を有する者ということで、一般規則の622-2を挙げさせていただいております。

1ページ目に戻っていただきますと、上記の、先ほど刑事罰の対象になりました通貨金融法典違反、それからAMF一般規則違反等に関して、1億ユーロ又は得た利益の10倍以下の制裁金というのが行政上の措置として定めが置かれてございます。

独国でございますけれども、次の行為は禁止ということで、内部者情報を利用して、内部者証券の取得又は譲渡を行った場合、それから権限なく第三者に内部者情報を知らせる、又は入手し得る状況に置くこと、それから内部者情報に基づいて第三者に推奨、又はその他の方法で誘引することが禁止行為でございます。独国の場合は、このいずれかに違反した場合について、刑事罰が下の欄に書いてございますけれども、5年以下の自由刑又は罰金となってございます。それから、次のページでございますが、行政上の措置の対象になることになっております。

では、刑事罰と行政上の措置はどう適用が分かれるのかということで申し上げますと、刑事罰については、インサイダー取引を行った場合は一律刑事罰、それから発行者の役職員等が故意に情報伝達や推奨を行った場合は刑事罰の対象となっておりますが、次のページでございますけれども、発行者等の役職員が故意で行った場合以外で、一般的に情報伝達を行った者、取引推奨を行った者については、行政上の措置の対象という形で適用が分かれております。これがおおむね、規制の概要でございます。

続きまして2ページでございますが、情報伝達行為への規制ということで、各国にヒアリングに行った際に、まず規制の趣旨等を聞いてございます。米国につきましては、規定上、証券等の売買に関連した詐欺的行為の規制ということでございますが、英国につきましては市場への信頼の確保、それから仏国については市場の公正な運営の確保、独国につきましては、組織化された市場機能を守る、あるいは市場参加者の平等性を守る、資本市場機能への投資家の信頼を守るといったことが規制の趣旨であると聞いております。

次の3ページでございます。情報伝達行為について、どういった規制がなされているかということでございますが、まず米国でございます。現在の判例によりますと、重要な非公知の情報を有する者が、信認義務又は信頼義務に違反して、当該情報を他の者に伝達し、当該伝達により情報伝達者が一定の利益を得、かつ、情報受領者による取引が行われた場合には、当該情報伝達行為は規則違反に該当するということでございます。この一定の利益については(注1)に書いておりますように、判例上、広く解釈をされてございます。また、(注2)に書いておりますように、情報受領者が処罰されるのは、あくまでも情報提供者の情報提供行為が信頼義務に違反することを知っていたか又は知っているべきであった場合に限られるとされてございます。

公開買付けにつきましては、公開買付けに関する非公知の重要情報を伝達することによって規制違反の行為が行われる可能性があることが合理的に予測される状況下で、情報を伝達する行為が禁止とされております。ただ、先ほども述べましたように、こちらの規定は基本的には10b、それから10b-5の違反と併せて適用していると聞いてございます。

情報伝達に関しまして、不当利得の吐き出し・民事制裁金の基準となる利得につきましては、SECのヒアリングによりますと、インサイダー取引行為者の利益を基準にしていると伺っております。

英国でございますが、まず刑事司法法につきましては、職務上の役割の適切な遂行として行う場合を除き、情報を第三者に開示する行為については禁止でございます。ただし、以下のいずれかを立証した場合、罪に問われないということで、情報伝達時に情報受領者によってインサイダー取引が行われることを予期していなかったような場合などが挙げられてございます。

金融サービス市場法でございますが、こちらもほぼ同じような規定で、義務を遂行する適切な過程で行われた場合を除き、内部情報を第三者に開示する行為ということで挙げられておりまして、適用除外につきましてはFSAのハンドブックで具体的に、規制市場等のルールで許容されたものか、守秘義務を課した上で雇用・職務等の適切な機能を果たすために、又は取引・TOBのアドバイス等を得るなどのために行われたものかが判断要素になると明記されてございます。その際に、先ほどから議論に出ておりましたけれども、いずれも英国の場合、情報受領者によるインサイダー取引が行われることは要件とされてございません。情報伝達が行われたことのみでインサイダー取引が行われた事案について、行政上の措置がとられた例があるということで、(注3)に例を挙げさせていただいております。6ページでございますけれども、(注3)の英国、大手証券会社の幹部職員が行った情報伝達行為につき、情報受領者による取引が行われたことを示す証拠が一切ないにもかかわらず、同職員に対して45万ポンドの制裁金の支払いが命じられたと、こういった事例があると聞いております。

3ページに戻っていただきまして、仏国でございますが、職業又は職務の通常の範囲外において第三者に伝達する行為、これが通貨金融法典の違反行為とされてございます。それからAMF一般原則につきましては、職務又は義務の通常の過程内で行う場合や、自らに伝達された目的で行う場合を除いて第三者に内部情報を伝達する行為というのが禁止対象になっております。英国と同じでございまして、情報受領者によるインサイダー取引が行われることは要件としないとなってございますが、AMFのヒアリングによりますと、情報伝達が行われたことのみでインサイダー取引が行われなかった事案について、刑事罰・行政上の措置の対象になった事案はないとのことでございます。

独国でございますが、独国の場合は権限なく第三者に内部情報を知らせること、又は第三者の入手し得る状況に置くことを規制ということで、独国につきましても、情報受領者によるインサイダー取引が行われることは要件とされておりません。また、情報伝達が行われたことのみで、インサイダー取引が行われなかった事案について刑事罰・行政上の措置の対象になった事案はないと聞いてございます。

英国の備考でございますが、制裁金は情報伝達者の得た利得額に、違反行為の重大性を反映した制裁金を加えて算定とハンドブックに記載されてございます。

独国でございますが、先ほどご説明したとおりでございます。制裁に関しては、発行会社の役職員等であって、内部者情報を有して、故意に情報を伝達した場合には刑事罰の対象とされてございます。故意又は重過失により内部者情報を伝達した場合については、過料、行政上の措置の対象ということで、情報伝達者が利益を得ていた場合については過料金額の算定の際の考慮要素とすると伺っております。

取引推奨行為の取扱いがどうなっているかということについて、4ページでございます。米国につきましては、法令上、明確には規制対象とされておりません。これはSECのヒアリングに基づくものでございますけれども、非公知の重要情報を知る者が関連銘柄の取引を推奨して、被取引推奨者による取引が行われた場合には、取引推奨者は規則違反に当たり得るということでございまして、判例で、傍論で述べたものもあると聞いてございます。もっとも、実務上は伝達行為の事実認定の問題として処理されることが多くて、重要事実の具体的な内容が伝達されることまでも必要がない、また、黙示の伝達も認めているのが運用であると聞いてございます。

英国につきましては、取引が行われることを知りながら、又は行われることを信じるだけの合理的な根拠を有しながら、他の者に推奨する行為が刑事司法法の違反行為とされてございます。ただし、いずれかを立証した場合罪に問われないということで、例えば、その情報が価格に影響を及ぼし、当該取引により利得が生じることを取引推奨時に予期していなかった場合といったような事由が定められてございます。

また、金融サービス市場法につきましては、先ほど少しご説明させていただきましたが、自身が行った場合には、市場阻害行為につながったであろう行為を、第三者に対して強要又は助長する行為、これが違反行為であるということでございます。

仏国につきましてはAMF一般規則で、内部情報に基づいて、第三者に対して、当該情報に関連する有価証券の売買を行うよう推奨し、又は別の第三者をして売買を行わせるよう推奨する行為が違反行為とされてございます。

独国についても、内部者情報に基づいて内部者証券の取得若しくは譲渡を第三者に推奨すること又はその他の方法で誘引することを規制ということで、いずれも注に書いてございますように、仏国、独国については取引推奨が行われたことのみで、刑事罰・行政上の措置の対象になった事案はないと聞いてございます。英国については、このあたりについては明確に聞いてございません。備考については先ほどの情報伝達と同じ形で規定をさせていただいております。

それから5ページでございます。今回、特に問題になりました、他人の計算による違反行為への制裁金、これについて各国でどのような定め方、決め方をしているかということでございますが、例えばファンドの利益で、ファンドの計算で違反行為を行った場合ということで申し上げますと、米国については、基本的にファンドマネージャー及び投資運用業者に対し、ファンドの利得額に基づいて民事制裁金を課すことにしているということでございます。

英国につきましては、取引行為者自身の利得額に加えて、制裁目的と抑止効果を加味して制裁金を課すことにしていると伺っております。

仏国でございますが、行政上の制裁措置は先ほど述べさせていただきましたが、1億ユーロ又は得た利益の10倍以下の制裁金となってございますけれども、ファンドマネージャーの実現利益が低い場合が多いということで、この場合には運用で、1億ユーロ又は得た利益の10倍以下のいずれか高い方の制裁金を課すのが前提なのですが、ファンドマネージャーに対する制裁金については、1億ユーロという基準を用いて、行為の重大性に応じて個別に判断をしていると聞いております。

独国につきましては、いずれも、自己の計算であっても、他人の計算であっても、インサイダー取引を行った場合は刑事罰の対象ということで、行政上の措置の対象外でございます。また、他人の計算で行った場合、これは具体的にはファンドでございますが、ファンドについても刑事罰・行政上の措置の対象外ということで、これはほかの国でも、基本的には他人に当たるファンドに対して何らかの制裁を科すことはないと聞いております。

それから、エンフォースメントの状況でございますが、米国についてはここに挙げさせていただいているとおりでございます。なお、米国については、行政上の措置の件数を、手続を開始した件数ということで挙げさせていただいております。参考情報として、法律事務所が作成したレポートに、実際に手続を開始した件数ではなくて、実際に課された件数が挙げられておりましたので、こちらを参考に挙げさせていただいております。

また、英国、仏国、独国については、刑事罰・行政上の措置の件数、これはESMAのレポートに共通で挙げられておりますので、そちらを挙げさせていただいております。なお、追加の情報としましては、仏国については、情報伝達者の件数については、情報伝達行為については通常刑事罰の対象とはせず、行政上の措置の対象としており、2010年以降の件数でいえば、行政上の措置が5件あったと聞いております。

備考のところでございますけれども、米国の場合でございますが、多くのケースで利得と同額の民事制裁金ということで、先ほど例で出てきておりましたが、不当利得の吐き出しと民事制裁金はその3倍までとなっておりますけれども、利得プラス利得掛ける1倍の民事制裁金ということで、違反行為者には利得の2倍の負担を課すのが通常の運用であると聞いております。

6ページの(注2)でございますけれども、参考情報ということで、欧州委員会により、2011年10月に市場阻害行為規制に係る改正案が公表されてございます。現在、審議中でございますが、欧州理事会と欧州議会の協議による改正案の採択後に24カ月を経て、規則については適用開始とされてございます。これについて、現在は指令ということで、各国で規制を定めることになっているのですが、「市場阻害行為規則」になりますので、一律各国に適用がされることになるということでございます。ただ、刑事罰については、「市場阻害行為に対する刑事罰指令」というのを定めて、各国で定める形になるのではないかということでございます。刑事罰については、2年以内に国内法を整備ということになっております。

主な見直しの論点としては、適用対象となる金融商品の範囲を拡大すること、それから行政上の措置についての制裁金の額は利得額以上でなければならず、その最高額は利得の2倍以上でなければならないと統一すること、それからインサイダー取引に対する刑事罰については、各国に導入が委ねられていたわけでございますが、故意犯については統一的に導入することが定められております。説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、残り時間はあまり多くはないのですけれども、ただいまの事務局からのご説明につきまして、委員の皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければ、ありがたく思います。なお、先ほどのヒアリングに戻ってのご質問、ご意見でも、もちろん結構でございます。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

1点お伺いしたいのですが、情報伝達や取引推奨のみで、実際に取引が行われなかったケースを独自に制裁、あるいは処罰しているケースは非常に少ないというのが今わかった気がするんですが、だからといって情報伝達に対する措置が全くとられていないということではないわけですよね。例えば、仏国の場合だと情報伝達者が受けた行政上の措置というのが2010年以降5件あるというご紹介があったわけですけれども、これは、行政上の措置を課す場合の根拠条文といいますか、根拠がインサイダー取引に対する教唆、幇助というようなことでなされているのか、それとも完全に独立しては処分された例がないというご紹介のあった、情報伝達そのものを禁ずる条文に基づいてなされているのか、その辺の違いはおわかりになりますでしょうか。

○増田市場機能強化室長

仏国では、情報伝達行為は共犯とは独自の類型であると、別の犯罪行為、処罰の対象であるということを聞いております。基本的には、行政上の措置の対象になっておりまして、こちらの行政上の措置の対象という場合は、独自の行為について処罰をしているということでございます。刑事上の処罰についても、共犯で処罰している場合と、情報伝達行為に対して処罰をしている場合、両方あるようなのですが、ほとんどの場合は情報伝達行為の方で処罰されていて、共犯の場合ではあまりやられていないと聞いております。

○大崎委員

それともう1点だけ。日本ですと基本的に課徴金を課さねばならないということですから、違反行為があったと認識されれば、課徴金を必ず課すということになると思うのですが、情報伝達、取引推奨が行われたのみでの事例がないというのは、実際にそういうことは全然認知されていないということなのか、それともある程度、行政処分を課す、課さないということについて裁量があるのか、そこは如何でしょう。

○増田市場機能強化室長

裁量はあると思うのですけれども、聞いていますと、情報伝達行為をなかなか捕まえにくいというのが実状であり、立証するのが難しいことから、本犯の行為があって、それから情報伝達行為を捕まえにいくというのが、パターンになっているということでございます。ただし、英国の場合は、本犯から情報伝達をした者を捕まえて、その情報伝達をした者について、さらにほかの情報伝達行為を捕まえた例があるというのは聞いてございます。

○大崎委員

なるほど。ありがとうございます。

○神田座長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

6ページの(注3)の1つ目の丸の、英国の例についてもう少し伺いたいのです。内部者取引が行われたことを示す証拠が一切ないにもかかわらずと強調して書かれているのですけれども、これはそれこそどうやって発覚したのか、あるいは英国でも初めてのような例なのか、もし、さらに周辺情報がありましたらお願いします。

○山辺市場機能強化室専門官

どのようにこのケースが具体的に発覚したかということは明確には聞いていないのですが、先ほど増田よりありましたように、あるインサイダー取引について、その情報提供者が誰かということを調査している過程で、情報提供者がEメールなどでほかの者にも情報提供行為をしていて、それで発覚した例があるとは聞いております。これもEメールで第三者に伝達した証拠が残っていたということですので、そういうところで発覚した可能性はあるのかなと思います。

このケースが唯一のものなのかについては聞いておりませんが、これが最近の代表的なケースとして教えていただいたものです。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。川口委員、お願いします。

○川口委員

米国の規制をご紹介いただきました。米国のインサイダー取引規制の趣旨は、役員等は、基本的に会社に信認義務を負っており、そこから、役員等が個人の利益を目的に情報を提供したら、それは信認義務に違反する、そういう考え方だろうと思います。そう考えますと、情報提供しただけでそれはいけない行為だとなりそうです。しかし、米国では、実際に情報受領者が取引をしないと規制に入ってこないようなものになっているのですね。それは、規定が取引をすることを禁止するということだからそうなるのでしょうか。規制の趣旨から実際の規定の内容が説明できない気がするのですけれども、ご説明いただければと思います。

○増田市場機能強化室長

1ページ目に書いてありますように、規則10b-5自体が「証券の売買に関連して」と書いてございますので、そこの規定を根拠に、やはり取引が必要だとSECから聞いてございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

○平田委員

よろしいでしょうか。

○神田座長

平田委員、どうぞ。

○平田委員

日本の場合は業規制としてその法人関係情報を提供して勧誘する行為は禁止されていますけれども、海外は別の規定でそういう規定というのは存在しているのでしょうか。インサイダー取引という切り口では今ご説明いただいたような形で情報提供がアウトという形になっているかと思うのですけれども。

○増田市場機能強化室長

法人関係情報をきちんと管理しない場合について、行政上の処分、例えば業規制上の処分をするということは聞いておりまして、例えば米国と仏国ではヒアリングの中でそういうことを聞いてございます。

○神田座長

ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

要するに、日本で問題になったような事案が起きると、海外ではどうなるのですか。

○増田市場機能強化室長

まず、まとめ的にお話しさせていただきますと、情報伝達行為については、日本では刑事罰の共犯の規定は別ですけれども、現在の規定では対象にはなっていないということでございます。米国については情報受領者が取引を行った場合に限りますけれども、情報伝達行為については規制の対象になるということでございます。それで、取引推奨行為については、基本的には、明確には規制対象とはなっておりませんけれども、情報伝達行為として広く認定を行う中で、規制対象になっている部分があるのではないかということでございます。英国、仏国、独国については、情報伝達行為、取引推奨行為ともに禁止されておりますけれども、特に仏国、独国については実務の運用として、インサイダー取引自体が行われてない場合については、行政上の措置の対象と、刑事罰の措置の対象にはなっていないという運用がなされているところでございます。

また、課徴金等に関して申し上げますと、日本の場合は報酬額が基本になっているということでございますけれども、米国については取引自体の利得の最大3倍ということでございますし、それから独国については、今は制裁金はないというお話をさせていただきましたが、英国、仏国については、基本的には報酬額を考慮しつつ、制裁的要素も入れて、行為の重大性に応じて決めているのではないかなというところでございます。

○神田座長

ありがとうございます。いかがでしょうか。委員の皆様方からさらにご質問、ご意見、ご指摘等ありませんでしょうか。神作委員、どうぞ。

○神作委員

欧米の内部者取引規制につきましてご質問させていただきたいのですけれども、どうも各国で法人の処罰についての取扱いが大きく異なるように思われます。法人についての取扱いは、むしろ刑事法一般におけるその国の法人処罰に対する考え方に応じて内部者取引規制のところもその違いがそのまま内部者取引規制に違反した法人に対する制裁のあり方の差異として現れていると理解していいのか、それとも、内部者取引規制については、刑事法の一般原則とは異なる特別ルールが設けられている場合もあるのか、その点について教えていただければと思います。

○増田市場機能強化室長

基本的には、法人ということで一般的な法律の規制にあわせてということではないかと思っております。英国については、ヒアリングをした際には、原則刑事司法法では、法人は対象になっていないということで、刑事罰の対象外ではないかということなのですが、過去の判例を調べてみると、法人が対象になった例もあるようには聞いておりますけれども、基本的には対象外ではないかということでございます。独国についても同じく、基本的には刑事罰について法人は対象外ということで聞いておりますけれども、ESMAのレポートによりますと、別途行政上の制裁のようなものが課され得るということが注に書いてございまして、そこは例外的な措置なのかなというところでございます。

○神作委員

ありがとうございました。

○神田座長

よろしいでしょうか。どうぞ、池永委員。

○池永委員

6ページ目の、情報伝達者に対する制裁、英国の例についてちょっとお伺いしたいのですが、制裁自体は情報を漏らした職員にだけ課されているように読めるのですけれども、証券会社そのものには全く制裁金は課されなかったのかという点はいかがでしょうか。

○増田市場機能強化室長

ちょっとはっきりわからないです。

○神田座長

よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

それでは、そろそろ時間でもございますので、このあたりにさせていただきたいと思います。皆様方も本日お話を聞いて、さらに疑問な点とか、こういう点を調べたらどうかというお気づきの点がありましたら、大変恐縮ですけれども、事務局までお寄せいただけますと大変ありがたく思います。そして、なかなか難しい問題があるようですけれども、本日いただきましたご説明とかご意見等は、次回以降の検討に当たっての参考にさせていただきたいと思います。

次回以降は少し詰めて議論をしていかなければいけないと思いますので、事前に準備できるようなことがあれば、ぜひ事前にご連絡、ご示唆を事務局にいただけますと、ありがたく思います。

それでは、事務局からご連絡等ありましたらお願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキクング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。本日は以上をもちまして終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線2644、3943)

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