金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第4回)議事録

1.日時:

平成24年11月7日(水曜日)16時02分~17時11分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

それでは、予定の時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。本日は、インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第4回目の会合ということになります。

皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

早速ですけれども、議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、大臣からの諮問事項が3つありますけれども、そのうちの2つ目に当たります、「課徴金額の計算方法」について、皆様方にご審議とご議論をお願いしたいと思います。

それとともに現在、金融審議会の別のワーキング・グループとして、「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」というのがございまして、そこにおいて「上場投資法人に係るインサイダー取引規制の導入」について議論がされております。

そこで、このワーキング・グループとも関連する事項でもありますので、その内容を事務局から説明をしていただいて、質疑応答をさせていただきたいと思います。

それではまず、「「他人の計算」による違反行為に対する課徴金額見直し」につきまして、事務局から論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、資料1の論点メモ(2)でご説明をさせていただきます。

諮問事項の2つ目の項目の「他人の計算」による違反行為に対する課徴金額の見直しです。

まず、改正の経緯でございますが、不公正取引に対する課徴金制度は、平成16年の改正により導入されたものでございますが、平成20年の金商法改正により、それまでの「自己の計算」による不公正取引に加えて、「他人の計算」による不公正取引についても課徴金の対象とされたところでございます。

近時の状況ですが、一連の公募増資に関連したインサイダー取引事案におきましては、資産運用を業として行う金融機関が、投資家から金銭の拠出を受けたファンド、例えば、外国投資信託などの運用で、これがまさに「他人の計算」として違反行為を行っていたことが認められています。現行の金商法におきましては、「他人の計算」でインサイダー取引を行った場合、当該取引に係る課徴金は、「手数料、報酬その他の対価の額として内閣府令で定める額」となってございます。

公募増資に関連したインサイダー取引事案におきましては、2ページでございますが、この規定に基づきまして、5万円から37万円の課徴金勧告の命令が行われています。

しかしながら、あわせて参考資料の1ページもご覧いただければと思いますが、インサイダー取引として、3千万円から5億円の取引金額の売付けが行われており、ファンドが得た売買差益も5百万円から6千万円に上っているという状況でございます。

また、「他人の計算」でインサイダー取引を行った資産運用業者を見てみますと、違反行為によりファンドの運用成績を向上させることで、結果として自らの評価を高め、既存顧客との継続的関係の構築や、潜在顧客の開拓に結び付けることにより、将来的な運用報酬の維持・増加といった利益を得ることが可能になっているという現状がございます。

また、違反行為者の中には、いわゆる「ブローカー評価」で、証券会社に対する取引発注分量等を決定しまして、それに応じて多額の手数料を支払っていることを背景に、証券会社に対する影響力を強めることで、いわゆる「耳寄り情報」、インサイダー情報を提供させて、取引を行った者も認められるという現状もございます。

こうした取引や違反行為者の実態を踏まえますと、現行の違反行為による直接の対価を計算して課徴金額とする方法は、資産運用業者が違反行為によって享受する便益に見合った適切な課徴金の水準となっていないのではないかと、違反行為の抑止効果が十分期待できないのではないかというのが問題意識です。

3ページですが、以上を踏まえて「他人の計算」による違反行為に係る課徴金の計算方法について、見直しを行うことが適当ではないかというのが論点です。

では、現行の課徴金額の計算方法ですが、平成20年の改正により次の場合について、課徴金の対象にされております。(1)と(2)、大きく2つ分かれまして、(2)のほうが違反行為者を問わず、親族や親子会社等の計算で違反行為を行った場合、これにつきましては、課徴金額の計算方法というのは親族や親子会社等が経済的に同一の利害を持つことが一般的であるということで、「自己の計算」で違反行為が行われたものとみなして算定することとされております。

今回、問題になっております件におきましては(1)のほうでして、金商業者等が顧客等の計算で、マル1資産運用として違反行為を行った場合、マル2それ以外で違反行為を行った場合ということで府令が規定されております。

(1)の計算方法におきましては、マル1の資産運用として違反行為を行った場合については、「違反行為が行われたときの報酬額×運用財産の総額に対する対象銘柄の割合」という形で計算がされているところです。(2)については、違反行為の対価という形で定めが分かれております。

次の4ページですが、これは金商業者等が違反行為者である場合につきましては、違反行為により顧客との契約を維持することができていると考えられたことから、業者に支払われる手数料、報酬その他の対価の額を基準として、課徴金を賦課することとされております。

さらに、平成24年の改正におきましては、金商業者等以外の者、具体的には例えば海外のファンド運用業者等につきましても違反事案が認められたということで、改正がされまして、「他人の計算」による違反行為に係る課徴金の対象者について、金商業者等から違反行為者全般に拡大されているところでございます。

続きまして、二重処罰の禁止との関係でございますが、金商法の課徴金制度につきましては、違反行為の抑止という観点から、違反行為者に金銭的負担を課す行政上の措置であるとされていますが、課徴金に加えて刑事罰の対象となる可能性があるために、「他人の計算」で行われた違反行為に対する課徴金額を見直すに当たりましても、二重処罰の禁止、憲法39条との関係に留意する必要があるとの指摘がございます。

二重処罰の禁止に関する主な判例ということで、第1回のワーキングでもご説明をさせていただきましたが、ほ脱犯に対する刑事罰と追徴税との併科についての最高裁が示した判断でございますが、「ほ脱犯に対する刑罰が脱税者の不正行為の反社会性ないし反道義性に着目し、これに対する制裁として科せられるものであるに反し、法43条の追徴税は過少申告・不申告による納税義務違反の発生を防止し、以って納税の実を挙げんとする趣旨に出でた行政上の措置であると解すべきである」ということでございまして、「追徴税のかような性質にかんがみれば、憲法39条の規定は刑罰たる罰金と追徴税とを併科することを禁止する趣旨を含むものでないと解するのが相当である」と判示がされております。

また同判決を引用した形で、独禁法上の罰金刑が確定して、かつ国からの不当利得返還請求訴訟が提起されている場合におきましても、併せて課徴金の納付を命じることは憲法39条に違反しないと判示した例がございます。

他法令の例ですが、独禁法の課徴金制度は、違反行為の防止という行政目的のために行政庁が金銭的な不利益を課す行政上の措置でございますが、違反行為による不当利得相当額を徴収する制度とされていたわけです。しかし、違反行為が後を絶たず、当時の算定基準では違反行為防止の観点から不十分であるということで、違反行為防止の実効性を確保する観点から、平成17年の改正によりまして、違反行為による不当利得相当額を超えて金銭を徴収する制度に改正されているところです。

6ページですが、一方、金商法の課徴金制度につきましては、インサイダー取引等の違反行為の抑止、ディスインセンティブを図り、規制の実効性を確保するという行政目的を達成するために、違反をした者に対して金銭的負担を課す行政上の措置とされているところです。

課徴金制度自体は、違反行為の抑止が目的だということですが、現行法上、その金額は基本的に違反行為者が違反行為によって得た経済的利得相当額が基準とされているところです。

二重処罰の禁止に関する主な学説としましては、「行政制裁と刑事罰の併科については、併科が立法者の意図である限り、その制約は、二重処罰の禁止ではなく、罪刑均衡の原則からなされるべきである」といった考えや、「二重処罰の問題は当該不利益が実質的にも刑罰に当たる程度のものであるかという観点から考慮する必要がある」といった主張がなされているところです。

7ページです。では、どういうふうに考えていくべきかですが、課徴金額の計算方法を検討するに当たりましては、違反行為の抑止、ディスインセンティブを図り、規制の実効性を確保するという課徴金制度の目的を踏まえる必要があるのではないかということで、特にこの点、「他人の計算」によりまして違反行為を行う者がどのようなインセンティブに基づいて違反行為を行っているのかを考える必要があるのではないか。他人から何らかの便益を得られるからこそ、それがインセンティブとなって、違反行為を行うことにつながっていることが一般的に考えられるのではないかということです。

こうした観点に基づきますと、「他人の計算」による違反行為に対する課徴金額の計算方法については、違反行為者が一般的に得られる便益が何であるかを中心に考えていくべきではないかということです。

「他人の計算」による違反行為を行った者の便益でございますが、現行の府令の建付けでもあります、マル1運用委託契約等に基づき運用業務を行う者や、マル2その他業者以外の者も含め主に単発の取引を行う者が類型的に考えられるということです。マル2につきましては、当該違反行為に基づく直接的な報酬等が違反行為者の得る一般的な便益と考えられるのではないかということで、マル2に関しては、違反行為の対価を課徴金額とする現行の計算方法は、基本的に適当とも考えられるのではないかということです。

マル1につきましては、次の資産運用を業として行う者の特性・実態を踏まえる必要があるというところです。先にこの資産運用を業として行う者の特性・実態、どういう点を踏まえる必要があるかということを、その中ほどですが、こちらのほうを先にご説明させていただきます。

業として「他人の計算」で資産運用を行う者については、次のような特性が考えられるのではないかということでして、競合他社に比して相対的に優れた運用成績を上げることができれば、既存顧客だけでなく潜在顧客からの評価も高めることができるということで、既存契約の維持及び新たな契約の確保による将来的な運用報酬の維持・増加といった利得に結びつけることが可能になるということです。

また、資産運用の委託契約は継続的な契約であり、投資家と資産運用業者の間で契約が締結されますと、資産運用業者は相当の期間、運用報酬を継続的に得ることが可能になるということがございます。

また、特にアクティブな運用を行う資産運用業者につきましては、運用資産残高に応じて管理報酬を得るほか、運用成績に応じた成功報酬を得ることが一般的です。また、先ほどもご説明させていただきましたが、「ブローカー評価」に基づいて、証券会社に対していわゆる「耳寄り情報」を提供させている例もございます。こういった場合には運用報酬を高めるために、違反行為が反復して行われているおそれがあるものと考えられます。

1ページ戻っていただきまして、8ページの上ですが、以上の資産運用を業として行う者の特性・実態を踏まえますと、違反行為によって将来にわたり継続的に運用報酬を維持・増加させることが可能であり、また、その便益は当該銘柄に対応する部分だけでなく運用報酬全体に及んでいるのではないかと考えられるのではないかということです。

参考資料の10ページをご覧いただけますでしょうか。今般問題になりました増資インサイダーの関係でございますが、5件の課徴金額の計算方法を挙げさせていただいております。現行は報酬額、これは具体的には違反行為が行われた月について、違反者に当該運用財産の運用の対価として支払われ、または、支払われるべき金銭その他の財産の価額の総額ですが、これに売買銘柄の最大額を掛けまして、運用財産の総額で割るという計算方法になっています。

この売買銘柄の最大額については、注2にございますように、違反行為が行われた日からその月の末日までの当該運用財産である違反行為の対象銘柄の総額のうち最も高い額となっています。運用財産総額については、違反行為が行われた月の末日における当該運用財産の総額となっています。こうした計算方法で現行では計算がされているところです。

資料1の8ページですが、このため、マル1に関し、資産運用を業として行っている場合ですが、月額報酬に運用財産の総額に対する対象銘柄の割合を乗じて計算する現行の課徴金額の計算方法は、資産運用を業として行う者が一般的に享受する便益を十分に捉えたものとはなっていないのではないかというところが論点です。

それから、9ページですが、以上を踏まえますと、資産運用業者が違反行為によって得る利得は、当該行為に係る直接の対価にとどまるものではないと考えられ、このため、課徴金額については、違反抑止の観点からやり得を許さないものとするため、こうした資産運用に関する業務の特性・実態を踏まえた利得の計算方法に見直していくことが適当と考えられるかどうかというところです。

さらに、もう1つ、追加的な論点でございますが、違反行為者の得る利得の計算でございます。例えば、違反行為者が複数のグループ会社が組成・関与する海外ファンドの運用を行うような場合につきましては、違反事案の調査におきましては、課徴金額の計算のため必要となるファンドの詳細な内容や違反行為者の得る利得の細部が必ずしも明確にならないケースが生じてまいります。こうした場合につきましては違反行為を行った事実が明らかであっても、課徴金額の計算ができず、課徴金を課すことができないため、違反行為の抑止が十分図られないという面がございます。また、そういうことを前提に、課徴金調査を逃れるための潜脱的なスキーム作りが行われるおそれもあります。そのため、こうした違反事実が認められたにもかかわらず、課徴金額の計算のための計数が直接把握できない場合につきましては、適切に課徴金額を計算することができるような計算方法もあわせて検討していく必要があるのではないかというのが論点です。事務局からの説明は以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは今、事務局から説明いただきましたことにつきまして、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければありがたく思います。どなたからでも、どの点についてでも結構ですので、よろしくお願いいたします。

どうぞ、綿貫委員。

○綿貫委員

どうもありがとうございます。いただいた資料について、グループの中の資産運用業を行っている関係会社にちょっと見てもらった結果、資料の8ページ目の資産運用を業として行う者の特性・実態というところの、下の2番目のポツで始まるところですが、資産運用業者は「相当の期間、運用報酬を継続的に得る」という記述がございますけれども、資産運用の委託はなかなか長期継続とはいかないというのが実態のようでございます。パフォーマンスですとか、その他懸念が生じれば、1年契約であってもすぐに解約ということになりますし、投信等ですと即日引き出されてしまうということがあるので、この「継続的」というところにちょっと違和感があるというのが1つ目のコメントです。

それから、9ページ目の次のポツですけれども、「アクティブな運用を行う資産運用業者は」というところですけれども、これにつきまして、成功報酬は絶対収益型スタイルの一部のヘッジファンド運用に限られているのが一般的でありまして、当社のグループ内の資産運用業者などはこういった報酬体系になかなかなっていないということで、この2点、ちょっと気になりましたのでお伝えいたします。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

先ほどの事務局のご説明は、課徴金のあり方として、経済的利得という基本的な考え方は変えないけれども、実際にこの経済的利得の計算方法を拡充するというご趣旨かと存じます。その場合、今の計算方法の中で、対象銘柄の割合を掛けたものというところを改めるのか、違反行為が行われた月の報酬額となっている期間を横に広げるのか、あるいは両方なのか、どちらなのですか。

○増田市場機能強化室長

そこについて本日ご議論いただきたい点でございます。

○神田座長

阿部委員、名案はありますか。

○阿部委員

考え方として、参考資料10ページにありますけれども、実際にその報酬額として得られているものを縦横に拡充するという考え方、わからないでもないのですが、やっぱり実際に対象になった銘柄を掛けたのでは少ないということであれば、報酬額全体を何らかの基準に従って区切り方を変えるのであればともかく、期間を今の1カ月を1年とか2年にするという話は違和感があります。

○神田座長

ありがとうございます。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

この事務局で書いておられる基本的な考え方、私もなるほどと思ったのですね。つまり、そもそもの違反をする動機が継続的に運用報酬を獲得したいということだろうということで、そういう意味では、ある銘柄1個で幾ら売買をしたということにあまりとらわれるのもおかしいだろうというのは、そのとおりだと思うのですが、他方、先ほど、綿貫委員からもご指摘があったとおり、そもそも1年続くとか3年続くというようなことが、それほど安定的ではないということだとしますと、例えばその月額報酬に見合ったというようなところが1つの妥当な線なのかなという気が私は何となくしました。

ただ、あとはそれがどのくらいダメージになるのかという話なのだと思うのですけれども、そこのところは逆に今回の一連の事案の事実関係にあわせて痛そうな金額になるかどうかということにあまりとらわれ過ぎるのも問題じゃないかなと思った次第です。

それから、この月額報酬とか、あるいは年でもいいのですが、そういう運用報酬を基準にして課徴金額を計算すると、1つの問題は、ものすごく多くの株数を売買した場合と百株売買した場合と、別に幾ら売買したかに関係なく課徴金が取られてしまうということになるのですけど、それをどう考えるかというのはあまりいいアイデアがないのですけど、どなたかに教えていただけるとありがたいのですが、事務局ではどうお考えですか。

○増田市場機能強化室長

そこについてもご意見をいただければと思います。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。

池永委員、どうぞ。

○池永委員

大崎委員が指摘されたところについては、私はこう思います。少なくともインサイダー情報を取得して、取引をやるということを決断した場合には、百株とかそういう単位では絶対やらないと。まずかなり大量の株を取引することは間違いないので、あまりその点は心配ないのではないかなというふうに思います。

それから、報酬額に連動して考えるという考え方については、非常に私自身は納得感があるやり方だと思っていまして、確かに現実に運用成績については、委託者側からかなり厳しく見られているのが事実ですけれども、私が知る限り、そんなに簡単に1年でぱっと変えるという事例がどれぐらいあるのかなというふうに思います。

基本的には、運用業者さんというのは、よい運用成績を上げて、長い間その特定の顧客から月額の定額報酬をもらうというところが一番の目的ですから、やはり現実の問題で、その1年で切られるとか、そういうところよりはむしろモチベーションといいますか、そういうところにフォーカスしたやり方のほうが、課徴金の計算としては合理的かなというふうに思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

私は、基本的には事務局から提示されたことについては、1つのよい工夫ではないかと思います。

阿部委員が指摘されましたけれども、その範囲といいますか、対象銘柄だけに限らず、その顧客との関係での取引全体とすべきかという問題と、期間の問題とがあります。範囲の問題については、やっぱり基本的にはそのお客様との関係を大事にしていて、インサイダー情報の利用という、危険を冒してまであえてやろうということですから、関係を維持したいというところが動機だろうと思うので、ここは大きな納得感があると思います。

期間のほうは結構難しいと理屈では思うのですが、ただ、やっぱり実際の問題としては、その一定期間の報酬を期待するというところが大きいと思いまして、そういう意味では、少し納得がいかないといいますか、さらに考えるべきだと思いますのは、将来の話だけではなくて過去の実績もあって、やっぱりこのお客様とは続けていけるのではないかとか、あるいはこのお客様の期待には応えなければいけないのではないかということがあって、私は、将来だけではなくて、過去のほうにも戻れるのではないかと、全部戻るべきか、期間を限定するかというのは難しいところだと思いますし、その期間がどのくらいなのか。全然分野は違いますけれども、いわゆる社外役員について、2年とか4年とか6年とかありますけれども、何らかの期間を定めなければいけない。それがもちろん最大額で、これがまた課徴金を最大額取るのかどうかという論点とも、あるいは裁量があるのかという論点と結びついているような気もしますけれども、やっぱりそこは抑止効果という点と、それから、立法事実と両方とも考えなければいけないと思います。

さらに、この時点で言うのがいいのかどうかよくわかりませんが、私はこのファンドの人たちが、そのまま放置されているとなると問題だと思います。論点をずらしますが、それこそ意思の連絡があるような場合は、その教唆とか共同正犯として捕捉できるのかもしれませんが、それに至らない、暗黙の意思の連絡、意思の連絡と暗黙とはちょっと矛盾しますけれども、そのあうんの呼吸でやるような形のものについても、捕捉する必要があるのではないか、そこをどう考えておられるのか、本日の議論の範囲外かもわかりませんけれども、検討されたことがあれば教えていただきたいのと、それから、さらに言えば、ファンド側では期待していなっかった場合、余計なおせっかいになり、棚からぼた餅式にファンドのほうに利益があったという場合も、その利益を保持されていることは、本当は潔しとされないのではないかと、最後のところはさらに付け加える話ですけれども、そんなふうに思いました。以上です。

○神田座長

ありがとうございます。

○増田市場機能強化室長

先生ご指摘の場合につきましては、例えば共同正犯的なものであれば、現行でも課徴金も課し得る部分があるのかなというふうに考えております。また、ファンドに対して課していくというのは、諸外国を調べさせていただいた際も、一例もそういう例はないということでございましたので、事務局としてもそこは難しいのかなというふうに思っております。

○古澤市場課長

1点だけ補足いたしますと、暗黙というものがありますが、その重要事実を伝えなくても、取引推奨だけでもいけるのではないかという議論は前回提案させていただいたので、さらにそれを超えてというのが先生のご趣旨なのかどうか、もしわかれば教えていただければと思います。

○上柳委員

私が暗黙と申しましたのは、情報の中身の問題というより、そのインサイダー情報を利用してでも成績を上げてくれというふうに正面からおっしゃられないとは思いますけれども、取引のスタートのところを申し上げておりまして、いわゆる内部者情報についても連絡があったかどうかというところまでではないので、少し違う類型かなと思っています。さらに、拡大する話をしているのかもしれません。

ただ、共同正犯としての摘発事例は過去にもないようであれば、これからそういう事例が積み重なった上でのさらに将来の話かもわかりませんけれども、いわゆる刑事的に共同正犯が立証できるようなものというのは、そう簡単にはないのではないかと思います。実態としては、以前WGでもご指摘はあったと思うのですけど、日本のいろいろな取引慣行の中でのその暗黙の連絡型が相当数あるのではないかというふうに思います。

○神田座長

ありがとうございます。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

事務局からお示しいただいた基本的な考え方には私も賛同いたします。ただ、課徴金額のベースとなる対象期間を考えていく場合には、8ページ目に事務局のほうでもお示しされていますように、その期間をただ延ばすということですと、既存の顧客を対象としているのかなと思うのです。新たなお客さんとなる潜在顧客を呼び込むためのインセンティブやその運用成績を上げることをどういうふうに考えるのかということについても少し検討する必要があるのかなと思いました。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

柳川委員、どうぞ。

○柳川委員

基本的な考え方はこの事務局の示していただいた案でいいのだろうと思います。それで大崎委員のほうからご指摘があった点ですけど、あまりいろいろな問題が起きた直後にこういうことを考えるのは本当はあまり適切ではなくて、今、目先にあるものにどうしても縛られてしまうのであまりそれを念頭に置かないほうがいいのだろうというふうに思いますけれども、現状、今示された案はそこにあまり縛られている感じはしないので、これで結構なのではないかと思います。

幾つかご意見が出ていたような話でちょっと感想めいたことを申し上げますと、課徴金は、その抑止効果を持たせるためにあるわけなので、そうするといろいろな違反行為のパターンの中での公平性ということまで考え出すと、ものすごく細かくファインチューニングができていれば別なのですけど、そうでない限りはやっぱり違反行為のある程度の蓋然性のある行為すべてに関して、抑止力を持たせるように結局するしかないということになると、どちらかというと保守的といいますか、かなり問題を起こした場合にも抑止効果があるという形で作っておくしかないのだろうと思います。そうすると、先ほど取引数が多い場合と少ない場合という例を出されましたけど、確かにその2つで差が出てきてしまうのですけど、だから多いときにも少ないときにも抑止効果があるというふうにしていくしかないのだろうと思います。

そういう意味では、現状のエンフォースメントの仕組みの中で抑止効果を働かせるとすると、やっぱりそういう形で組んでおくしかないのだろうというふうに思います。

それから、もう1つはこういうところで課徴金が高くかかり過ぎると、いろいろな日頃の取引だとか、営業活動に支障が出るのではないかというご意見も時々あるのですが、これは、本質的には違う話なのだろうと思っていまして、要するに、間違って課徴金がかかる可能性があるということを前提にすれば確かにそういう話になるのですけれど、そこはきちんと見て問題があったということでもって初めて課徴金がかかるというのであれば、そこに多少いろいろな営業活動の差によって、課徴金のかかり方が違ったとしても、そもそも課徴金がかからないという前提で営業活動をすれば、そこにゆがみは生じないはずなので、何か課徴金のかかり方でもって日頃の営業活動に縛りが出るのだとすると、それは結局、きちんとつかまえられないとか、エンフォースメントのところで間違って課徴金をかけてしまうことのほうがむしろ問題であって、そういうことがない限りはそういう話はあまり持ち込むべきではないのではないかなと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

川口委員、どうぞ。

○川口委員

今のエンフォースメント、抑止効果のお話しですが、課徴金が利益の吐き出しにとどまっていると、もともとエンフォースが効いていないと思うのです。見つかったときに利益を吐き出したらおしまいであるというのであれば、抑止効果はありません。これは、課徴金が従来からかかえる悩ましい問題です。

この点については、私自身は利得に限らず課徴金の額を拡大していくべきだと、日頃から思っておりますけれども、それを今回やりますと、課徴金はインサイダー取引以外にも、いろいろな制度にあるわけでして、たとえば、ディスクロージャーのところも全部直さなければならないことになるので、手に負えなくなると思います。

将来的には、課徴金制度は見直していただきたいとは思いますけれども、現実的には、今回は利得の範囲に留めておき、そして、その範囲で、なるべく効果が出るようにそれを拡大するというような事務局の案は合理的なものと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、池永委員。

○池永委員

先ほどの上柳委員のご指摘の中でファンドの利益をどうするかというお話があったと思うのですけれども、少なくとも私が今まで経験的に見てきたところでは、一任をとりたいというのが運用業者の本音でございまして、なぜかというと、そちらのほうが助言よりずっと高い報酬がとれるからであります。一任契約のもとでどのように運用するかというと、運用方針を示して、かつ運用ガイドラインのもとで定められたやり方で、業界で言うユニバースの中から投資銘柄を選定して運用していくというやり方になっているわけであります。私が知る限りにおいては、一任をとった後に運用業者とその委託者の間で頻繁なコミュニケーションが起こるというのはむしろまれであると理解しております。せいぜい運用成績の報告のときにそういうことが行われるだけでありますので、したがって、その点から見て上柳委員が懸念されるような事態というのはほとんどないのではないかというふうに思っております。もしご懸念の事態が起きた場合には、幇助、教唆という形での規定を使っていくほうが正攻法なのかなと思います。また、そのファンド自体の利益の吐き出しというのはかなり難しい話ではあると思いますから、これはなかなか踏み込めないのかなというふうに思っております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、武田委員。

○武田委員

私も、事務局の方でご説明いただいた総論には賛成でございます。

この一連の問題が起こって以降、日頃、いろいろな場でマーケット関係者の方とか、投資家の方から様々なご意見をいただくのですけれども、そもそもファンドの利益が何千万でもあるにもかかわらず課徴金の額が何万だと、これがおかしいのではないかというような指摘が非常にベーシックなものとしてございますので、感覚的には自己の計算であろうが、他人の計算であろうが、ある程度、抑止効果が実効性をもつような形にしなければいけないという意味でいいますと、運用報酬というものも基準にできるでしょうし、あたかも自己の計算でやったというような考え方をとられる方もおられるのではないかなというふうに、いろいろなご指摘を伺っていて感じていた次第でございます。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

なかなか選択肢があまりないというか、これは川口委員がおっしゃったとおりの制約というのでしょうかね、現在の議論の仕方としてはそういう面が避けられないのだとは思いますね。しかし、実際の事案にあまりとらわれてはいけないとも思うのですけど、資料2の1ページと10ページですが、これは今、武田委員がおっしゃったこととも共通しますが、やはり5万円では、幾ら課徴金制度だといっても、ないのと同じですよね。

しかし、川口委員がおっしゃったとおり、現在の課徴金制度というのは利得相当額となっていまして、そもそも抑止効果があるか、やり得になっているではないかという話を抱えながら平成16年にスタートして、それを本当は見直すべきなのかもしれませんけど、それは大きな課徴金一般の話になってしまいますので、ここでは、利得相当額というフレームワークは維持しながらも、抑止効果をというやや矛盾しているようなことをしなければいけないというところだと思うのですね。

それで他方、上柳委員のご指摘と池永委員のご指摘も、それに対するものでもあったと思うのですけど、おそらくファンドのほうもこの銘柄についてインサイダー取引をやってくださいと言ってくるわけではなくて、これは上柳委員がおっしゃったように、要するにリターンを高く上げてくださいというわけなので、個別の銘柄を言ってくるわけではないというような状況の中で、ファンドを基準にするのは非常に難しいという状況ですよね。

しかし、その状況で運用業者が他人の計算でインサイダー取引をした場合、そもそも選択肢は、武田委員がおっしゃるように、大きくいうと自己の計算というか、やはり運用業者自身の利得ということで、事務局のメモの線で、どこまでどういうふうにいくのかという、それ以上はなかなか難しいことだとは思うのですけれども、皆様方の意見も大体その範囲におさまって、いろいろご指摘がありましたけど、しかし、基本のところはそういう枠組みで考えるという意味では事務局のメモの線で、本日いただいたご指摘をさらに入れて先へ進めるかなという印象を持つのですけれども、いかがでしょうか。

どうぞ、阿部委員。

○阿部委員

その点は神田先生のおっしゃるとおりでいいと思いますが、確認させていただきますと、今回は課徴金の議論しかしていませんので、刑事罰は触らないという趣旨でしょうか。

○増田市場機能強化室長

前回、インサイダー取引の刑罰の引き上げについては議論をしましたので、今回は他人の計算の係る課徴金ということで議論しているということです。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

その課徴金について川口委員からご整理があったのですけれども、それこそ独占禁止法については、利得相当額を超える規定も結構前に実現しているわけですけれど、金商法の世界では、そこが厳しいというのは、これはどういう経緯なのでしょうか。私も関与しているはずですけれど、もう1回、今の段階の法制的な問題の整理を教えていただけますでしょうか。

○増田市場機能強化室長

平成20年に課徴金の見直しを広範囲にわたって行って、その際にいろいろ関係機関とも協議をして、やはり課徴金の場合については、経済的利得を基準としつつ、必要な見直しをした上で、大体2倍ぐらいの引き上げになったという経緯がございまして、現在においてもそれを引き継いでいるということではないかと思っております。

○神田座長

過去の経緯はそういうことだと思うのですけれども、このワーキング・グループで皆様方が、やはり抑止効果という本来の趣旨からいえば、そこのところも本当は将来にわたっていえば見直すべきではないかというご意見が多いようであれば、報告書にそういうことを書いて将来の検討課題としていただくということはあり得ると思いますね。今回、他人の計算のところだけ利得相当額ではない基準を持ち込むわけにはいかないと思いますけれども。どうでしょうか。

川口委員、どうぞ。

○川口委員

そう書いていただくのでしたら、ぜひ書いていただきたいと思います。

○神田座長

ありがとうございます。

どうぞ、田島委員。

○田島委員

私もやはり抑止効果を生み出すためには、その利得の剥奪ということにとどまらず、将来的にはやはりそれにまた制裁を加えるような形での課徴金のあり方を検討していただきたいと思います。

ただ、今回のまとめとしては、事務局のほうでご整理いただいた素案に賛同いたします。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

そうしましたら、大体事務局のこの線で本日いただいたご指摘をさらに踏まえて、また必要に応じてご議論をお願いするかもしれませんけれども、そういうことで先に進ませていただくということでよろしゅうございますでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは、次に、「上場投資法人に係るインサイダー取引規制の導入」につきまして、事務局からのご説明をお願いします。

○横尾企画官

金融庁総務企画局市場課の横尾と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私はふだんは本ワーキング・グループとは別のワーキング・グループ、「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」の事務局をさせていただいております。いろいろな論点をそのワーキング・グループのほうでも議論しているのですけれども、一つ、こちらのワーキング・グループと関連する項目として、投資法人、いわゆるJ-REITに対してインサイダー取引規制を導入してはどうかという議論をしております。その検討状況につきまして、関連の深い本ワーキング・グループにもご報告させていただきたいと思っております。

資料3をご覧いただければと思います。1枚おめくりいただきまして、インサイダー取引規制に関するJ-REITの適用の現状でございます。

まず、現行制度でございますけれども、上場投資法人、多くはJ-REITでございますけれども、その取引はインサイダー取引規制の対象とはなってございません。その理由はいろいろ考えられるわけですけれども、現行制度の中の枠に書いてありますように、投資法人、こちらは株式会社である一般の上場会社とは異なりまして、非常に簡素な仕組み、投資ビークルとして最低限の仕組みということで設計されておりますので、非常に簡素な仕組みとなっているということが1点あろうかと思います。

それから、投資法人は、本来背景となります原資産がございます。その原資産から算出される価格というものが市場で取引される際の投資口価格を根拠づけるのではないかと、当初そういうふうに考えられていたのだろうと思います。そういうことで特定の内部情報といったものが投資口価格に影響を与えるというのは想定されていなかったということかと思います。

他方で金商法の157条、不正行為の禁止に関する規定、こちらは上場投資法人の投資証券にも適用がございますので、そういう一般規定の中で不正行為については禁止されていたということでございます。

それで、今現状どうなっているかということでございますが、当初の想定以上に上場された投資法人の投資口価格にはボラティリティが存在しておりまして、そういったそのボラティリティを利用して、不公正取引で利益を得るという可能性も排除できないという現状かと思います。

さらに、諸外国でも同様の不動産投資法人類似の取引が行われておりますが、通常はインサイダー取引規制の対象となっておりまして、我が国だけがその対象外となっていること自体を国際的に、例えば海外投資家などから問題視される場合もございます。

あと現在、こうしたインサイダー取引規制がかかわっていないということを1つの投資リスクとして投資側に有価証券報告書等で明示している場合もございますけれども、それとあわせて、内部的には自発的にJ-REIT側で情報管理していると、そういった取組みを行っているという場合もございます。

こういう現状を踏まえますと、上場投資法人(J-REIT)に係る投資証券の取引をインサイダー取引規制の対象としてはどうかということで、投資信託ワーキング・グループのほうで議論したわけでございます。

概ねかけるべきだという意見が多かったというふうに認識しておりまして、次の問題としては、どのようにかけていくかという課題でございます。資料3ページには、まず、現行のその通常の株式会社に対するインサイダー取引規制の概要、こちらのワーキングではご承知のことと思いますけれども、書いております。

これとパラレルに考えて、会社関係者の範囲をどうJ-REITについて規定していくかというところでございますけれども、4ページをご覧いただければと思います。

これは先ほどの株式会社と投資法人というものをパラレルに考えて、会社関係者や一次情報受領者の適用を試行実験してみたものでございます。真ん中に投資法人がございますけれども、実は、投資法人というのは、投資ビークルでございまして、その従業員としては役員会の執行役員、監督役員があるのみでございまして、その他の業務というものは全部外出しが義務づけられております。したがって、資産運用に当たってのその実際のオペレーション等は運用業務を委託した資産運用会社で行われますし、その他の資産の保管であるとか、その他の一般事務、こういったものも外出しされております。

そういった方々が株式会社並びで考えると、会社関係者の範囲ということで、規制の対象とはなってくるということでございます。

J-REITについて、特徴的なところは図の上のほうにございます、スポンサーというものの存在かと思います。これは一般には、大手不動産会社であるとか、商社であるとか、そういったところがスポンサーとなって子会社の資産運用会社を使ってJ-REITの運営を行っているというケースが多くございます。

スポンサーは資産会社の親会社ということで、株式会社並びで考えても、一次情報受領者として規制の対象とかかわってくるのですけれども、例えばそのスポンサーから情報を得た方、それがインサイダー取引に該当するようなことを行う場合といったことになりますと、二次情報受領者として規制の対象外になってしまうと、こういう問題があろうかと思います。

それぞれのこのJ-REITに絡むプレーヤーをどのように考えるかということなのですけれども、資料5ページをご覧いただきますと、いろいろなプレーヤーが出てくるわけですけれども、それを投資法人の契約締結先とするか、あるいは投資法人それ自体、あるいはその親会社と同等の位置づけとするか、そういったことで規制対象となる取引主体の範囲が異なってきます。

そういうことで、そのプレーヤーの役割を改めて見てみますと、例えば資産運用会社ですと、投資法人では構成上、主として資産運用会社が重要情報を取得・保有・管理する構造となっております。といいますのも先ほど申し上げたように、すべて資産運用のオペレーションは資産運用会社に外出しを義務づけられているということに起因しているわけでございます。この資産運用会社を契約締結先としますと、資産運用会社の投資法人関連の契約締結先が会社関係者に該当しないといったような規制範囲が不十分となるおそれもございます。

それから、先ほど申し上げましたスポンサーの役割、位置づけでございますけれども、実際に投資口の市場動向を見てみますと、スポンサー企業の変更とか、そういったことによって投資口価格が相当変動している場合がございます。また、実態的にもその運営上、人員であるとかノウハウ、それから、投資対象物件の提供といった面でスポンサー企業が大変大きな役割を果たしているという側面がございます。

これに対しまして一般事務受託者、資産保管会社のほうでございますが、一般事務受託者についてみますと、不動産物件の取得・保有・管理、そういったことに絡んで投資法人から得られるその情報の範囲というのは、契約ごとに異なってくるのですけれども、例えば投資口の募集事務の委託に関して、一般の上場会社から募集事務の委託先、例えば投資口の募集事務の委託、こういったことに関して一般の株式会社でございますと、その募集事務の委託先というのは契約締結先として規制されると。ところが、投資法人に対して同じように考えると、委託の場合のみ異なる規制の枠組みとなって過剰な規制となるのではないかと、こういった問題があろうかと思います。

それから、資産保管会社について考えてみますと、これは通常、不動産の権利書、それから、契約書等の保管業務を行っているわけでございまして、ここにその特別な投資法人に関する意思決定に関する機能というものはなく、重要事実の適時開示が行われた後に、投資法人の情報を保有・管理する場合が多いというふうに想定されます。

このようなそれぞれのプレーヤーの特性を踏まえまして、あり得る規制対象としては、6ページにあります図のようなことが考えられるのではないかということで、投資信託ワーキング・グループでは議論しております。

まず、投資法人とその運用に、そしてその業務の重要な中核であります資産運用を外出ししている相手、資産運用会社につきましては、通常の株式会社におけるインサイダー取引規制におけるその会社と同じように考えまして、ここは株式会社並びで規制するべきではないかと。

そこからの契約相手、例えば資産保管会社とか一般事務受託者、それから、金融機関ですとかそういったところは、株式会社におけるインサイダー取引規制と同様に契約相手先ということで規制すべきではないかと考えました。

それから、スポンサーについてですけれども、これは通常のインサイダー取引規制でも株式会社の親会社まで含めて会社関係者に入っておりますので、資産運用会社、通常の株式会社と同視する資産運用会社、その親会社であるということで、会社関係者に含めてはどうかと考えているところでございます。

こういった範囲を会社関係者と考えまして、そこから情報を受領する一次情報受領者、ここまでをインサイダー取引規制の取引主体規制対象範囲と考えてはどうかというふうに議論しております。

7ページは、重要事実の範囲でございます。J-REITのどのような事象が投資者の投資ファンドに重大な影響を与えるか、それを検討するに当たって、投資法人に関する情報が公開された後に投資口価格が変動した事例を参考にして、以下のような整理が考えられるのではないかということでございます。

投資口価格に影響な与える主な場合といたしましては、例えば投資口の内容及び条件の変化を通じて投資口価格に影響を及ぼす場合ということで、次の8ページをご覧いただきますと、例えば公募増資を発表して、情報が公開された後に投資口価格が変動した事例というものがございます。これはインサイダー取引のその蓋然性が高い事象を取り出しているのではなく、あくまでもその背景資産以外の情報がどのように投資口価格にインパクトを与えているかということを検証しているものでございます。

参考事例1で申し上げますと、中ほどの点線のところで公募増資の発表が行われたわけですけれども、折れ線グラフにあります投資口価格は低下し、その低下に伴い、棒グラフの取引も増加しているということで、この間、背景資産、不動産のその価値等は変動していないのですけれども、当然その公募増資の発表ということで、その持ち分の変化、そういうことを織り込んで投資口価格が動くということでございます。となりますとその増資に関する内部情報は、規制対象とすべきではないかという議論が成り立つかと思っております。

参考事例の2-1でございますけれども、9ページ、こちらは投資法人の財産が変化した場合、そういった情報が投資口価格に影響を及ぼすのではないかという事例でございます。例えば投資法人の背景資産であります不動産、それをどこかのテナントに賃貸契約して、貸し出されているわけですけれども、その解約通知が行われたということで、大手テナントが退去するという情報が市場に出た場合、これも投資口価格は下落して、それに伴う取引というものは大変増加しているという状況でございます。ですから、こうした情報も内部情報として規制すべきではないかという議論が成り立つかと思います。

資料10ページは、同様に背景資産の変化と財産の内容の変化ということでございますが、これは業績予想の修正をした場合に、投資法人の投資口価格が変動した例でございます。直前期の実績を上回る翌期の業績予想を発表して投資口価格が上がるといった事例は、J-REITについても観察されているということでございます。

資料の11ページ、こちらは投資法人の運営、あるいはその業務の変化を通じて投資口価格が変動する事例でございます。これは極端な例でございますけれども、当該投資法人が倒産手続きの申立てをするという破綻した事例を取り上げてみました。左側の点線時点で売却損の発生を発表して、その後、投資口価格は下落し続けたわけですけれども、2番目の点線、ここで倒産手続きの開始の申立てをします、そうしますと投資口価格はさらに急下する一方で、出来高は大きく伸びるという状況が観察されております。ですから、そういう投資対象である投資法人自体、そのオペレーションの状況に関する情報、これも重要事実として規制すべきではないかと考えられます。

資料の12ページでございます。これは投資法人それ自体ではなく、スポンサーの移動、スポンサーが交代した場合に、投資口価格が変動した事例でございます。もともとこのケースでは、旧スポンサーが破綻状態にあったわけですけれども、それで新スポンサーが見つかったということで、その変更を公表いたします。そういたしますと取引は増加するし、投資口価格も上昇したという事象が観察されております。ですから、投資法人それ自体というわけではなくて、運用会社、あるいはそのスポンサーに関する情報、こういったことも投資口価格に影響するのではないかと考えられます。

こういった観点を整理しますと、7ページに戻っていただきまして、投資口価格に影響を与える主な場合として、5つぐらい整理できるかなというふうに考えられます。1つ目は先ほど申し上げたように、投資口の内容、あるいは条件の変化を通じて投資口価格が変動する場合、そういった変動を引き起こす情報を規制対象とする、それからマル2は、投資法人の財産の変化を通じて投資口価格に影響を及ぼす場合ということでございます。それからマル3、投資法人の運営・業務の変化を通じて投資口価格に影響を及ぼす場合、それから、投資法人自体でなくて、むしろその運用を外注を受けている資産運用会社、その運営であるとか業務の変化、あるいはその資産運用会社の親会社であるスポンサーの交代、そういったことを通じて投資口価格に影響が及ぶ場合ということが類型的に考えられるかと思います。

こうした事例に基づきながら、そして、一方でその現行の金商法のインサイダー取引規制との平仄も考えながら、重要事実を定めていくという方向で検討していきたいと思っております。私のほうからは説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。このワーキング・グループの委員の皆様方からも、もしご質問とかご意見をいただけるのであればいただきたいと思います。いかがでしょうか。どなたからでも、どの点でも何かありましたらお願いいたします。

どうぞ、武田委員。

○武田委員

今回のご対応本当にありがとうございます。私どもも当然、今ご説明いただきましたように、実際に取引価格が動くわけですから、インサイダー取引ということではなくて、不公正取引の観点から、取引の調査は行ってきております。当然、現場サイドの証券会社さんのほうでも、法人関係情報ということではないのかもしれませんけれども、情報の管理、実際にそういう情報が発生したときの管理にかなり苦慮されたり、工夫をされていた部分がありましたので、今回のようにはっきりしたということで、我々もさらにきちんと取り組んでいきたいと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、内田委員。

○内田委員

質問させていただきたいのですけれども、スポンサーの定義について、ジョイントベンチャー等でメジャーなところとマイナーなところがある場合があると思うのですが、この辺の区別はございますでしょうか。

○横尾企画官

まだそこは検討中でございます。どの程度をもって、資産運用会社の親会社と定義するか、そこは現行のインサイダー取引規制の定義も踏まえつつ、他方でJ-REITの実態ということもございますので、その両者を考えながらこれから検討していくつもりでございます。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

それでは、本日のご審議をお願いしたい点は、これですべて終わりということでございまして、前半部分の点については、皆様方からご意見を多数お寄せいただきまして大変ありがとうございました。先ほど申しましたように、基本的にはこの事務局のメモの線に沿って、本日いただきましたご指摘を踏まえて先へ進むということにさせていただきたいと思います。

なお、さらに、本日お帰りになった後、何かお気づきの点が出てきたということであれば、ぜひ事務局のほうにお寄せいただければと思います。

それでは、最後に事務局からのご連絡がありましたらお願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

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総務企画局市場課市場機能強化室(内線2644、3943)

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