金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第5回)議事録

1.日時:

平成24年11月27日(火曜日)14時00分~15時39分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。若干遅れて来られる委員の方々もいらっしゃるかとは思います。

本日ですけれども、インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第5回目の会合ということになります。皆様方には、いつも大変お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。

早速でございますけれども、議事に移らせていただきます。

本日ですけれども、大臣からの諮問事項は3つありましたけれども、そのうちの3つ目といいますか、最後になります「近年の違反事案の傾向や金融・企業実務の実態に鑑み必要となるインサイダー取引規制の見直し」ということについて、ご議論をお願いしたいと思います。

お手元の議事次第にございますように、事務局からお手元にお配りいたしました論点メモについて説明をしていただきます。その上で、それぞれの論点について皆様方にご審議をいただくという流れで議事をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

お手元の論点メモ、これは資料1ということになるのですけれども、大きく言いますと4つの項目に分かれます。まず最初が、1ページから7ページまででありまして、Iとして「公開買付け等事実の情報受領者に係る適用除外」、それから、次が2番目ですけれども、8ページと9ページ、IIとしまして「いわゆるクロクロ取引に係る適用除外」、それから、3つ目が、10ページから13ページまででありまして、IIIとして「いわゆる知る前契約・計画に係る適用除外」、そして、最後は、14ページ以降、Ⅳとしまして「その他の課題」、こういうことになっております。それぞれちょっとテーマは違いますので、全体をこの4つに分けて、1つずつご審議をさせていただきたいと思います。

それでは、まずIの「公開買付け等事実の情報受領者に係る適用除外」に関係する事項につきまして、事務局から論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、説明をさせていただきます。

まず1つ目の「公開買付け等事実の情報受領者に係る適用除外」でございます。

公開買付者等関係者に係るインサイダー取引規制では、公開買付者等関係者に加えまして、公開買付け等事実の伝達を受けた者(情報受領者)についても、その公表前に公開買付け等の対象者の株券等を買い付けることが禁止されております。

この禁止が解除されるのは、公開買付者等が公開買付け等事実を一定の方法により公表した場合、又は、法に定める適用除外の規定に該当する場合に限られております。

このため、公開買付け等事実の情報受領者については、例えば次のような実務上の支障が生じているとの指摘がございます。

例えば、ある上場会社の買収の実施を決定した者が他の潜在的な買収者に対して未公表の当該決定事実を伝達した場合、当該他の買収者が情報受領者となり、原則としてインサイダー取引規制が適用されるため、当該上場会社の買収の実施を決定した者は当該他の買収者の買付けを妨げることができることとなります。

また、公開買付けの実施を決定した者(提案者)が他の者(被提案者)に共同公開買付けを提案したものの協議不調となった場合についても、当該被提案者が情報受領者となり、原則としてインサイダー取引規制が適用されるため、競争関係にある提案者が公開買付け実施の公表を行うまで、被買付企業の株券等の買付けができないということになります。

これらを踏まえますと、企業買収に関する公正な競争や、有価証券取引の円滑を図る観点から、証券市場の公正性・透明性に対する投資家の信頼を損なうことがない場合には、公開買付け等事実の情報受領者であっても、被買付企業の株券等の買付けを可能とすることを検討すべきではないかというのが問題意識でございます。

次に、現行規制でございますが、現行法上、公開買付者等関係者から公開買付け等事実の伝達を受けた情報受領者については、インサイダー取引として買付けが禁止されているわけですが、この禁止規制については、公開買付け等事実の「公表」により解除される場合がございます。「公表」は、次の3つの方法に限定されておりまして、「公開買付者等」が公開買付け等事実について2以上の報道機関に公開し、12時間経過したこと、また、「公開買付者等」が公開買付開始公告を行ったこと、「公開買付者等」が提出した公開買付届出書が公衆の縦覧に供されたこととされております。

このように、公開買付け等事実の「公表」については、あくまでも「公開買付者等」が行うものに限定されております。これはインサイダー取引規制による売買等の禁止を一般的に解除するものとして正確性が求められるため、その主体を、「公表」内容を正確に把握し得る者、すなわち「公開買付者等」に限定する趣旨と考えられます。

一方、このような「公表」が行われない場合につきましても、現行法上、情報受領者につきましては、適用除外規定が設けられておりますので、これに該当する場合には、被買付企業の株券等を買い付けることができることとなっております。

1つ目が、いわゆる「対抗買い」でございまして、公開買付け等に対抗するために被買付企業の取締役会が決定した要請に基づいて買い付ける場合、それから、2つ目が、いわゆる「クロクロ取引」でございまして、公開買付け等事実を知っている者から、市場外で買い付ける場合でございます。

しかしながら、1つ目の、いわゆる「対抗買い」につきましては、法定要件を満たした被買付企業の要請がないと買付けができないこととなっております。また、2つ目については、市場外での買付けに限られておりますし、公開買付けの場面におきまして、売主となる多数の株主全員が、いわゆる「クロクロ取引」の要件である、「公開買付け等事実を知っている者」に該当するかというと、実務上はなかなか想定されないのではないかということでございます。

「3.論点」でございますが、金商法上、未公表の公開買付け等事実を知った者について、被買付企業の株券等の買付けが禁止されている理由は、公開買付け等を実施する場合には、通常、その対象となる株券等の相場が上昇するものと考えられますが、こうした未公表の事実を知る特別な立場にある者は、それを知り得ない一般の投資家に比べて著しく有利な立場となるため、そうした者により買付けが行われた場合には証券市場の公正性・健全性に対する投資家の信頼を損なうことによるものと考えられます。

こうした観点から、次のような場合に該当すれば、情報受領者による買付けが許容されるものと考えられないかということでございます。

まず1つ目が、情報受領者の取引の一般投資家の取引に対する有利性が相当程度解消されていると認められる場合(一般投資家との間の情報の非対称性が解消されている場合など)でございます。

2つ目が、情報受領者が伝達を受けた情報が投資判断を行う上で有用性を失っていると認められる場合でございます。

1ページおめくりいただきまして、まず、取引の有利性が相当程度解消されていると認められる場合でございます。

金商法上、公開買付けを行おうとする場合には、公開買付開始公告を行うことによって、手続が開始されます。公開買付開始公告はEDINET又は日刊新聞においてなされますが、原則としてその公告を行った日に内閣総理大臣に公開買付届出書が提出されまして、公衆縦覧に供されることとなっております。

未公表の公開買付け等事実の情報受領者が、自ら公開買付けを行おうとするときは、上記の公開買付規制によりまして、公開買付開始公告及び公開買付届出書の提出が行われることとなっておりますので、情報受領者が伝達を受けた情報をこれらに記載すれば、一般投資家との情報の非対称性は解消されるものと考えられるが、どうかということでございます。

さらに、未公表の公開買付け等事実の情報受領者が自ら公開買付けを行う場合につきましては、この情報受領者の公開買付けの開始に伴い、伝達の対象であります当初の公開買付けが並行して行われるか否かが不確実なものになるなど、伝達を受けた情報の重要性に変化が生じているのではないか。

このような場合には、(伝達を受けた情報を公開買付開始公告及び公開買付届出書に記載するまでもなく、)インサイダー取引規制の対象としなくてもよいのではないかとの指摘もあり得るが、どう考えるかということでございます。

参考資料をあわせてご覧いただければと思います。3ページでございますが、適用除外のイメージ①でございます。今申し上げましたのは、「P1」から「P2」に、「P1」による公開買付け等事実を伝達した場合には、「P2」は買付けを禁止されますけれども、この場合につきまして、例えば、公開買付開始公告・届出書に「P1」からの「公開買付け等事実」の伝達内容を記載する場合には「P2」による買付けを認めてはどうか。あるいは、「P2」が公開買付けを行う場合については、インサイダー取引規制の対象としないということも考えられるがどうか、ということでございます。

論点メモの6ページでございますが、2つ目の、情報の有用性を失っていると認められる場合でございます。

これにつきましては、公開買付け等事実の情報受領者が伝達を受けた後、相当な期間が経過しても公開買付者等により当該事実が公表されていない場合には、伝達を受けた情報の価値が劣化しており、情報受領者が過去に伝達を受けた公開買付け等事実に基づいて投資判断をすることは想定されにくいのではないかということでございます。

このため、情報受領者がいつまでも取引できない不安定な状況に置かれることがないように、実務における公開買付け等の検討開始から公表までの期間等を参考に、情報受領者が最後に伝達を受けてから相当の期間が経過した場合には、情報受領者による取引を可能とすることを検討してはどうかということでございます。

参考資料ですと3ページの適用除外のイメージ図②でございます。公開買付者等である「P3」から「P4」に情報伝達があった場合に、情報受領者である「P4」が最後に伝達を受けてから相当の期間が経過したときは買付けを可能としてはどうかということでございます。

論点メモの6ページに戻っていただけますでしょうか。適用除外が認められている「対抗買い」のケースについてですが、公開買付け等事実の情報受領者による取引を可能とする適用除外規定として、現行法上、「公開買付け等に対抗するため被買付企業の取締役会が決定した要請に基づいて株券等の買付け等を行う場合」が定められてございます。

参考資料ですと4ページの適用除外のイメージ図③ですが、例えば、「P5」が公開買付けの事実をCに伝達した場合をイメージしております。

この「対抗買い」の適用除外については、被買付企業(C)にとりましては、「P5」が公開買付けをするかどうかというのは他者情報であるため、Cが「公開買付け等」に該当する事実が存在するか否かを確実に把握することは難しく、どのような場合に、「公開買付け等に対抗するため」という要件を満たすかが分かりにくいという指摘がございます。この点の解釈を明確化することについてどう考えるかというのが論点でございます。

また、被買付企業(C)が「対抗買い」を要請する場合につきましては、「P6」に要請をするということになりますと、Cの取締役会で「対抗買い」の要請決定を行うことになります。

この点につきましては、論点メモ7ページですが、「取締役会が決定した要請」という要件に関しては、当該要請の決定が適時開示事項となっているために、「対抗買い」を行うにあたって実務面で利用しにくいとのご指摘がございます。この点についてどう考えるかということでございます。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

本日は若干細かい項目が並んでおりますので、集中しないとちょっと分かりにくいかとは思いますけれども、1つずつ審議いただきたいと思いますので、今ご説明いただきました項目につきまして、皆様方からご質問、ご意見をご自由にお出しいただければありがたく思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

4点ほど意見を申し上げたいのですけれども、この項目についての方向性については大賛成です。

まず、今回の検討の範囲を公開買付け等事実に限定していますけれども、例えば、166条の重要事実についても、敵対的買収者にそれを告げて買収を妨げるという行為が行われることは考えられますので、166条の重要事実についても検討したほうがいいのではないかというのが第1点です。

第2点は、ここで適用除外を定める根拠として、2つ挙がっていまして、1つ目の根拠として、「取引の有利性が相当程度解消されていると認められる場合」として、伝達を受けた事実を公開買付届出書等に記載した場合という考え方が挙がっています。これは、法定開示書類に記載をすれば、その正確性がある程度担保されるということだろうと思います。しかし、これが適用されるのは公開買付者に限定されますので、株式の買集めを行っている者は、この適用除外を利用できないということになります。そういった場合、確かに、法定開示書類はないのですけれども、例えば、大量保有報告書や変更報告書に伝達を受けた事実を記載すれば、適用除外を受けられるという仕組みを考えてはどうかと思いました。

第3に、2つ目の根拠として、「情報の有用性が失われていると認められる場合」なのですが、この点は、仮に公開買付け等事実に限定して今回の改正を行うとしても、取引を行う者については、公開買付者に限定する必要性はないのではないか。他の一般の投資家であっても、伝達された事実の有用性が失われている場合には、取引の悪性はなくなっていると考えられますので、そのような考え方をとってもよいのではないかと思いました。

最後に、このように考えていくと、適用除外の定め方は、ここで議論しているような2つの根拠を理由として広げていくのではなくて、後で議論する「知る前計画」の適用範囲をもう少し広げることによって図るのが、筋ではないかと思うのです。つまり、株式の買集めとか公開買付けを計画していて、その計画に従って買おうとしているときに、ほかの者から情報を伝達されたら、公表する手段がなく、買うことができないというのが不都合な点でありまして、これに対処するには2つの方法があると思うのです。1つは、情報受領者に公表手段を認めていく方法。それは今回、限定的にとっているのですけれども、もう1つは、情報を伝達されたことと無関係に取引が行われているわけですから、「知る前計画」の範囲を広げて、知る前から公開買付けを計画していたとか、あるいは、株式買集めを計画していたことがある程度客観的に認められる場合には、情報の取得と取引との間に関係がないとして、取引を認めていくという方向性が考えられるのではないかと思います。

ここに書いてあること自体には賛成ですけれども、より広げるべきだという意見を申し上げました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

本件は、かねてから指摘されていたことでもありますし、経団連からも要望してまいりましたので、この方向でぜひお願いしたいと思います。1点質問ですが、資料1の6ページの「②情報の有用性を失っていると認められる場合」の相当の期間というのは、「実務における公開買付け等の検討開始から公表までの期間等を参考に」と書いてありますが、どのぐらいの期間を考えておられるのでしょうか。

○増田市場機能強化室長

具体的に、これからいろいろ実務を調べてということになるかと思いますけれども、例えば6ヶ月とか、1年とか、期間としてはいろいろあるかと思います。我々のほうで調べたところによりますと、公開買付けの検討開始から公表まで大体6ヶ月程度というデータもございますので、そのあたりも踏まえて検討しようかと思っております。

○阿部委員

どうもありがとうございます。

○神田座長

よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

武田委員、どうぞ。

○武田委員

事務局のほうでご提示をされている見直しの方向性、全体的には私どもも異論はございませんけれども、最後の7ページの(2)の「取締役会が決定した要請」について、適時開示事項になっているためという部分がございます。ここにつきましては、今ご指摘いただいたとおり、現状、東証では有価証券上場規程に基づきまして、上場会社の業務執行を決定する機関が、その「対抗買い」の要請というようなことについての決定を行われたときには、その内容を適時開示してくださいということを求めております。

これは、「対抗買い」の要請に基づいて、相手方によって行われます買付けが、市場の需給に影響を与えるという意味で、投資者の投資判断情報としての重要性があるからであり、その証拠に、「対抗買い」の要請の決定というのは、施行令で、インサイダー取引規制上の重要事実としても規定されているということは、ご承知のとおりだと思います。

私どもの適時開示制度では、平成元年のインサイダー取引規制の導入時より、インサイダー取引の未然防止の観点から、インサイダー取引規制上の重要事実に該当する事項につきましては、原則として、その内容の適時開示を求めているところでございます。

東証として、「対抗買い」の要請の開示を求めている趣旨におきましては、「対抗買い」そのものを、ここにご指摘があるように、実務上困難にするというような意図が存在しているわけではございませんけれども、仮に、その一方で、「対抗買い」の要請について、取引所が適時開示を求めるべきではないというふうなことでお考えになるようであれば、適時開示を求めないこととした場合に、例えば、会社関係者等による便乗買いといったインサイダー取引の発生リスクも高めることにもなり、万一、そういった事態が生じた場合には、証券市場の公正性に対する投資家の信頼が毀損されてしまうといった副作用もあわせて考慮いただきたいなと思います。

繰り返しになりますけれども、インサイダー取引規制と、重要な会社情報の適時開示というのは、表と裏の関係にございまして、そういった形で運営をされてきたところでございます。本件については、慎重なご検討をお願いしたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

全体として、特に異論がないといいますか、こういう弊害があるという話はいろいろ伺いますので、そうかなというふうに思います。ただし、本当にどの程度買集めなり、あるいは公開買付けを防ぐためにこういうことが行われているのかとかいうことはよく分からないので、関係されている方の事情説明がもし追加であるようであれば、いただきたいなと思っております。

今の私の立法事実に対する認識が影響しているかどうか分からないのですが、ちょっと行き過ぎかなというように思うところがありまして、5ページの下のほうの部分で、どなたかが公開買付けをすれば、もとの人たちがそのようなことをする必要性がなくなるというか、やる気がなくなるというか、そういう意味で、有用性がなくなるというようなことなのかなと思いますけれども、本当にそうなのかなという感じもしますので、5ページの下のほうまでは除外しなくていいのではないかというのが私の感覚です。

それから、あと2つですけれども、6ページの2つ目の黒丸のところ、先ほど阿部委員からご質問があって、標準的といいますか、6ヶ月というのは何となく相当な期間のような気はしますけれども、6ヶ月と1日ならよいのかとか、期限を決めることに伴い、必ずそういうぎりぎりのところの問題例が起こるわけですけれども、もう少し事実が知りたいなと思いました。

それから、7ページの(2)のところも、これは、取締役会の決定の開示をしていただいて、それでいいのではないかと。これも、私の最初の立法事実に対しての認識のところが影響しているのかもわかりませんけれども、やや疑問に思いました。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。立法事実のあたり、どうでしょうかね。

○増田市場機能強化室長

まず、立法事実ということで申しますと、こういう問題が具体的に生じているというのは、弁護士事務所からもよく聞いている話でございます。

先ほどちょっと申し上げましたが、我々のほうで調べた限りでは、検討開始から公開買付の公表までが大体6ヶ月程度というのは9割ぐらいになっているということですので、大体その6ヶ月以内に収まってくるのかなというところでございます。

それから、適時開示につきましては、実際に例がないということで、立法事実がはっきりしないといいますか、例がないのが、支障になっていてやっていないということかもしれません。

○神田座長

池永委員、どうぞ。

○池永委員

全体の方向性について、全く異議はございません。ぜひこちらの方向でやっていただきたいと考えております。

それで、上柳委員が指摘された5ページの下のところは、これは実務的には最も問題になっているところなので、ぜひこれは実現していただきたいというのが、まず第1点であります。

もう1点、質問になるのですが、「対抗買い」のところなのですけれども、現実の場面で起こり得るのは、被買付企業が、公開買付けを実施するというふうに言われて、防戦に動くということで、親しい会社の社長のところにその社長さんが赴かれて、「協力してくれないか」とまず言うプロセスが一旦入って、それから、「わかりました」と言って、じっとこの対抗手段を準備する、こういうプロセスに多分なるのだろうと思います。そうすると、いわゆる取締役会が決定するという要件がどれぐらい重要なのかというのが、実は前から、私、疑問に思っていまして、その辺はどのようにお考えになっているのかということをお聞かせいただければと思っております。

○増田市場機能強化室長

これは立法当時、「対抗買い」の適用除外がインサイダー取引規制を免れる目的で濫用されることのないよう、取締役会の「対抗買い」の要請決定を要件にしていると解説されていたと思います。

○神田座長

よろしいでしょうか。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

上柳先生がおっしゃった、いわゆる立法事実があるかということについては、これは顕在化しているというよりも、実際にそういうことがあると不都合であるということでお願いしているのですが、具体的な会社の名前を言えるかどうかまでは、相談してみなければわかりません。もし必要があれば、そちらと相談して、現にこういうことがあったということをお知らせできるようにいたします。

○神田座長

ありがとうございます。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

上柳委員のご意見と阿部委員のご発言に関連するのですけれども、最後の適時開示の面ですが、実務面で利用しにくいとの指摘があるとされています。なぜ利用しにくいのか、なぜ開示しては要請買いができないのかが、私にはよく理解できません。それがない以上は、利用しにくいから変えろと言われても、納得できない話だと思うのです。その点をやはりご説明いただく必要があるかと思います。

○神田座長

ありがとうございます。どうぞ。

○増田市場機能強化室長

一般的に、弁護士事務所にもお聞きしていると、やはり相手方の意思が明確でない状態で適時開示させられるのはなかなか難しいのではないかというようなお話とか、逆に、不確定な情報が出回って市場が混乱するようなことにならないか、というようなご指摘をいただいているところでございます。

○神田座長

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

公開買付けに対抗するための公開買付け等の意思が必ずしも明確になっていないということですね。明確になっていない場合には、もしそれが「公開買付け等に対抗するため」に該当しないと判断される場合であれば、「対抗買い」の要請をしても適用除外にならないわけですから、適時開示する必要はないわけです。それが「公開買付けに対抗するため」の要件に合致すると認められる場合には、もし「対抗買い」をしてもらいたければ、その要請をして、適用除外にしてもらうということですから、どちらかに転ぶだけであって、念のため適時開示をしておくというような事態は生じないと思うのです。そうだとすると、これは利用しにくいということを意味しないと思います。

○神田座長

ありがとうございます。今の点で、ほかの委員の皆様、もしご発言があれば。よろしいでしょうか。ほかの点でももちろん結構です。

川口委員、どうぞ。

○川口委員

別な点なのですけど、企業買収場面での問題提起で、公開買付開始公告で書いてはどうかという点に関連して、黒沼委員と同じなのですけれども、私も買集めについても対応を何か考える必要があるのではないかと思います。すなわち、5%を超える株式を買い集めるということを伝達された場合に、その人は第一次情報受領者になるのですけれども、公表がなされるまで自社株をも買えなくなるということになって、自社株買いの計画がうまくいかないというようなこともありますので、追加的な理由ですけれども、その点の検討も必要ではないかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。今の点はいかがですか。

○増田市場機能強化室長

先ほど黒沼委員からご質問があった点ともあわせて、事務局のほうで考えておりますことを申し上げますと、166条も対象にすべきではないかという点につきましては、公開買付者というのは上場企業でない場合も多くございますし、公開買付けとは基本的に一方的な行為であるということで、166条の重要事実に比べますと、より不確実性が強いと。そういう不確実性が強い情報の中で上場会社が取引できなくなるというのは、弊害が非常に大きいのではないかというのが1点でございまして、166条の重要事実というのは、そもそも上場会社の事業、財務等の内部情報であるため、外部の者が他者に内部情報を開示する制度を設けるのは馴染みがたいかなと。逆に言いますと、発行体である上場会社に公表をお願いすればいい話かなと思っております。

また、相当の期間を設けることについて申し上げますと、166条の重要事実というのは、基本的に事業、財務に係る事実であれば、半期、四半期報告書等において定期的に開示されておるということで、一定期間開示後に取引を認める必要性に乏しいのではないか。また、一方、コーポレートアクションであります組織再編や公募増資などの場合につきまして申し上げますと、決定から公表まで長期にわたるということがあり得るために、不正な取引が想定されないと考えられる合理的な期間、例えば先ほど申し上げました6ヶ月とか、そういう設定自体が非常に困難ということもございまして、166条を対象にするのは難しいかなと思っております。

また、買集めを対象にすることについては、確かにそういうご意見もあるかと思うのですが、今回の件に関して申し上げますと、やはり公開買付規制という中で、公開買付公告・届出書を通じて、仮に不正な虚偽の記載等が行われた場合については、刑事罰・課徴金の対象になるとか、あるいは、そういうことによって、虚偽の記載をするといったリスクが抑えられているのではないかということです。確かに大量保有報告という考え方もあり得るのですが、今回、公開買付けの場面に限定をして考えますと、公開買付けの伝達を受けたことに対応することとして、公開買付け規定の中で対応するというのが、1つの方法としてはいいのではないかと思っております。

さらに、黒沼委員から、公表主体の問題として、一般的に公表まで扱っていいのではないかというご意見もございましたが、インサイダー取引で解除する公表については、これまでの公表主体を限定することによって、公表事実の正確性を担保してきたというところもございますので、情報伝達を受けたことを開示すれば、一般的に公表と扱うことまではなかなか難しいのかなと考えております。

○古澤市場課長

若干補足をさせていただきます。最後に川口先生から御指摘いただきました自社株買いの取扱いは、黒沼先生がおっしゃったこととも重なると思いますが、「知る前契約・計画」の取扱いの中で議論していく問題かというのが、まず1つです。

その上で、「知る前契約・計画」の拡大で、必要な規律をカバーできるかというと、必ずしも、今の公開買付けの局面ですと、その前から計画していたものばかりでなくても、やはり実務としては対抗する必要があるとの指摘もございましたので、我々もそれだけで整理するところまでは踏み込めていないという状況です。

さらに1点補足いたしますと、今回の資料の5ページ、6ページに3項目あり、1つ目の「取引の有利性が相当程度解消されていると認められる場合」というのは、公開買付けの場面に限定した対抗手段ということですが、6ページの「情報の有用性を失っていると認められる場合」については、必ずしも公開買付けとは関係ない、買集めも考えている規律です。それから、「対抗買い」に係る適用除外の部分ですが、これも「公開買付け等に対抗するため」とある「公開買付け等」には買集めも含まれるとの理解です。

用語の使い方が行き来して恐縮ですが、若干補足させていただきました。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

重ねてになるかもわかりませんが、先ほど池永委員からご説明いただいたのですけれども、5ページの1つ目の黒丸と2つ目の黒丸との関係ですけれども、私は、5ページの下のほうまで認める必要はないのではないかという趣旨で申しあげたのですけれども、上のほうだけだと、やはりすごく具合が悪いですか。もちろん、手続を簡素化するという意味では、下まで認めるというのは分かるというか、都合がいいだろうなということは理解するのですけれども。公開買付届出書の中に当該情報を記載するというのは、手間であることは分かりますが、それをやればよいということで、今まではほとんどこういうことができなかった部分を解禁するわけですから、対応できているような気がするのですけれども。

○神田座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

私は、上柳先生のその問題意識は正直分からないところがありまして。つまり、これは解禁というのは、今禁じられているのを認めるという意味では確かに解禁なのですけど、そもそも悪性なるインサイダー取引を規制するべきかどうかという問題から出発しているはずで、何ヶ月も前に聞いた情報を持っている人が、たまたまその銘柄を買うからといって、それが果たして市場の信頼を損なうような行為と言えるのかという、そっちの問題だと思うのですね。だから、私は、これを認める必要があるとかないとかいうのがちょっとおかしな感じがして、逆に、そういう取引は非常に市場の信頼を損なう、許されざるものであるというご意見であれば、そういう意見もあるのかなとは思うのですが、おそらく上柳先生もそういうことをおっしゃっているのではないと思うので、これは技術的に、やっぱりこういうものも認めるというふうにしないと都合が悪いのだと思いますね。

○神田座長

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

解禁という言葉は、不適切だったような気がします。禁じられるべきものであれば、ずっと禁じられるべきですので、その意味では不適切だったと思います。ただ、5ページの下のほうの黒丸まで認めると、関係の方々が濫用されていないことはそうなのでしょうけど、やっぱり全くの部外者から見ると、何となく、何で今こういう公開買付けが行われているのだろうと、いろいろ推し量るのでしょうけれども、そのときに、かえってミスリーディングなことにならないのかなというふうに思う次第です。ちょっと抽象論をやっているのかもわかりません。

○神田座長

いえいえ、おっしゃっていることは正当だと思いますよ。大崎委員のおっしゃっているのは、6ページのほうはそうだと思うのですね。相当の期間が経過すれば。でも、5ページのほうは、すぐできるという話ですから、上だけでいくのか、上柳委員がおっしゃるように、下をとれば上は不要というか、含まれますので、どっちがいいでしょうかという話で、これはすぐに「対抗買い」を対象企業の要請に基づかずに行う場合ですから、これはまさにおっしゃるように、もとはインサイダー取引を適用しない場合をどう決めるかということではあるのです。ですから、そこは、どちらでいくかはお決めいただかないといけないということに最終的にはなると思います。

今の点で、もしさらにご意見があれば、お出しいただけるとありがたいところですけれど、ほかの点でも結構でございます。

○神田座長

どうぞ、大崎委員。

○大崎委員

もう一回申し上げますと、結局、公開買付けをどう評価するかという問題に多分なってくるのではないかなと思いまして。5ページの下のケースについてはですね。公開買付けが行われているということは既に公表されているので、公開買付けの動機まで公表しないといけないかという、そういう問題ですかね。だから、そこは、公開買付けという方法をとることで、ある意味では、情報を持っている、持っていないというのを超越するようなことがあるような気がして。つまり、情報を持っている人がこっそり買うと、いかにも、ほかの一般の人から見て不利な感じはするわけですが、公開買付けは、やっぱり大声で値段を決めて買うわけですから、その動機が何であれ、ある意味、その人が買っているということは、すべての投資家に見え見えになっているわけですよね。だから、そこで、言ってみれば、ほかの投資家が、その人が言っている価格が適正かどうかとかいう判断だけをすればいいので、重ねて、実は情報を持っていますということを書く必要まであるのかどうかと思うのですが。

○神田座長

どうぞ。

○古澤市場課長

若干補足いたしますと、参考資料の3ページの局面で、我々が念頭に置いているのは、まず、名前の出てきていない、まだ公開買付けが始まるということを言っていない「P1」という人がいて、「P2」が、その「P1」から、「買います」という話を聞いたという場合に、先ほど神田先生からもございましたけれども、「P2」は、先ほどの6ヶ月ということなく、TOBを始められる。こういう中、大崎委員からございましたのは、別に「P2」がTOBを始めたのは、「P1」から聞いたことが動機だったのかもしれないけれども、それを言う必要はないのではないかという御主張かと思います。

さはさりながら、「P2」が「P1」から情報を聞いて、そういう動きがあることを知ってTOBを始めているわけですから、このことを書かずに一般のマーケットの参加者とこの情報受領者との間で、「取引の有利性が相当程度解消されている」とまで果たして言えるかどうかというところが論点で、先ほどございましたように、この場で御議論いただけるとありがたいということかと思います。

○神田座長

ありがとうございます。それほど大層な話ではないのですけれど、上に一言書けばいいのにと。公開買付けをやるのであればということですけどね。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

私が当初申しあげたいくつかの根拠のうち、「知る前計画」に準ずるか、「知る前計画」として適用除外としていくという考え方からすれば、情報の非対称性の解消ということは問題になりませんので、それをしなくていいということになると思います。

しかし、そういう考え方ではなく、情報の有利性の解消という観点から言うと、この場合には、伝達を受けた情報の開示というのが要件となってくるのだろうと思います。極端なことを言うと、ある者が公開買付けとか買集めを決定した。その者は相当本気である。じゃあ、先に公開買付けで集めておいて、その株式を応募すれば利益が得られると思って公開買付けを始めるということも考えられると思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

5ページの要件につきましては、私どもの発想としては、もともと友好的な買収者の動きを封じられないようにしたいということですので、正直なところを申し上げますと、上の項目だけあれば、その点は解消されると思います。別に、敵対的買収者がたくさん現れてきてという話を考えていませんので、大崎先生がおっしゃることは発想としてはよく分かりますが、実情としては、上の項目だけあれば十分かと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかの点も含めて、いかがでしょうか。

大体よろしいでしょうか。そうしましたら、この1つ目の点は、基本的には事務局のメモの線で、5ページのところはご意見が分かれましたけれども、上のほうでいいのではないかという感じではないかと思います。それ以外のご指摘もありました。

それから、適時開示のところですけれども、なかなかこれを変えるというのは難しいし、必要性もないとは言いませんけれども、それほどではないかという感じかと思います。本日いただきましたご指摘を踏まえて、さらに必要に応じて、また今後、報告書取りまとめのプロセスの中でご議論いただくかもしれませんけれども、そのようなところかと思います。次の事項に進ませていただきます。ありがとうございました。

8ページからのII「いわゆる「クロクロ取引」に係る適用除外」であります。事務局からの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、「クロクロ取引」に係る適用除外でございます。参考資料の4ページの④のイメージ図もあわせてご覧いただければと思います。

現行規制でございますが、金商法は、上場会社に係る未公表の重要事実・公開買付け等事実を知っている一定の者の間で取引所等の外において行われる相対取引(いわゆる「クロクロ取引」)を、インサイダー取引規制の適用除外としております。

現行法上、会社関係者のインサイダー取引規制に係る「クロクロ取引」につきましては、会社関係者と第一次情報受領者との間で取引が適用除外の対象とされておりますが、第一次情報受領者と第二次情報受領者との間での取引は適用除外の対象となっておりません。

右側の備考に書いてありますとおり、公開買付者等関係者のインサイダー取引規制に関しましては、第一次情報受領者と第二次情報受領者との間の取引も適用除外の対象となっているところでございます。

〔論点〕のところでございますが、実務上、例えば次のような適用除外の対象とする必要があるとの指摘がございます。

例えば、上場会社の大株主が持株比率を下げる等のために、保有株を大口で売却する場合に、価格変動リスクを下げる観点から、市場外で相対でブロックトレードを行うことがございますけれども、その際に、当該大株主が当該上場会社に係る未公表の重要事実を知っていた場合には、買手にその重要事実を伝えた上で取引を行うことがございます。

現行の実務では、この場合につきましては、上場会社が大株主からの依頼に基づいて、買主に重要事実を伝達することで、あえて第一次情報受領者にしておりまして、第一次情報受領者間の取引とすることで、迂遠な手続が必要になっている現状がございます。

このため、上述のようなニーズを踏まえて、会社関係者のインサイダー取引規制に係る「クロクロ取引」について、実務上の支障を解消する観点から、第一次情報受領者と第二次情報受領者との間における「クロクロ取引」についても適用除外の対象とすることを検討すべきではないかということでございます。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。皆様方から、ご質問、ご意見等をお願いいたします。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ここに書いてある内容については、こういうことで適用除外の対象としてもいいのではないかと、結論は思うのですが、そもそもこの「クロクロ取引」はなぜ許されるのかという根本的な問題はやはりあるような気がしていまして、本当に重要事実を知っている人が取引をすることそのものが市場の信頼を損なうという考えを徹底すれば、クロクロというのは一番損なうのではないかとも言えるわけですよね。

ただ、今のインサイダー取引規制が、テクニカルにこういう状態となってしまうものも範囲に含んでしまう可能性があるからこそ、こういうクロクロの除外というのができているんだというふうに思うので、この除外を第一次情報受領者と第二次情報受領者とに適用されないというのは妙だというのは、そのとおりだと思うのですけれども、一方で、やっぱり考えなければいけないのは、こういう「クロクロ取引」の適用除外をいわば悪用する形で取引が行われたりすることがないのかということについては、十分気をつける必要があると思っていまして、私は、ここで重要なのは、やっぱりどういう価格で取引が行われるかなのかなと感じております。その辺は、規制をしろとか言うつもりはないのですが、場合によったら、「クロクロ取引」の適用除外には該当しても、例えば157条に触れるようなことも、理論的にはあり得るのではないかなと思う次第です。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

もともと166条と167条の枠の組立が違う趣旨もよく分からないのですが、知る者同士の市場外での取引について、特段の規制をする必要はないかと存じます。大崎先生がおっしゃるような理屈はあるかと思いますが、そうすると価格の適正性をどのように担保するのかというと、実務的には無理ではないかと思いますので、ここはご提案されているような方向でお考えいただければと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

166条と167条で規律が違うというのは、変な感じがするので、それをそろえるというのは合理的かなと思います。ただ、この点について、先ほど大崎委員がおっしゃった問題意識は、根本的には私も持っていまして、とは言っても、なかなか制限は難しいとは思うのですが。濫用がないようにお願いすると言っても、なかなか難しいと思いますけど、大崎委員に賛同します。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。

そうしますと、ご発言いただいておられない委員のほうが数の上では多いのですけれども、その意味は、この資料ではいけないという意味ではないと思いますので、今ご発言いただきました委員の皆様方から、ご注意もいただきましたけれども、そういったご注意を十分留意して、資料にある線で進めていただくということでよろしいかと思います。

それでは、次のIIIに移らせていただいてもよろしいでしょうか。10ページからのIII「いわゆる知る前契約・計画に係る適用除外」でございます。事務局から、論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

では、10ページの〔現行の制度〕ということで書いておりますが、上場会社に係る未公表の重要事実を知った者が行う売買等であっても、重要事実を知ったことと無関係に行われる売買等が明らかな場合につきましては、証券市場の公正性、健全性に対する信頼を損なうことがないと考えられるということで、金商法は、上場会社に係る重要事実を知る前に締結された契約の履行として売買をする場合(いわゆる「知る前契約」)、それから、上場会社に係る重要事実を知る前に決定された計画の実行として売買等をする場合(いわゆる「知る前計画」)で、内閣府令の個別列挙に該当するものをインサイダー取引規制の適用除外としております。

これは参考資料の5ページに、現在の類型を挙げさせていただいており、公開買付けに関する167条についても、同様の規定が置かれているところでございます。

本規定の経緯でございますが、平成元年のインサイダー取引規制の施行当初は、大蔵省令のほうに6項目が規定されておりましたが、その後、実務上の必要性等から順次規定が追加され、現在は13類型となっているところでございます。

11ページの〔論点〕というところですが、未公表の重要事実を知った者が行う売買等であっても、重要事実を知ったことと無関係に行われる売買等であることが明らかな場合には、現行の13類型に限らず、必ずしもインサイダー取引規制を適用する必要はないのではないかというのが論点でございます。

実務上支障が生じている例ということで、例えば、上場会社との間で「知る前契約」を締結した者が行う一定の売買等については、インサイダー取引規制が適用除外されておりますが、上場会社以外の者の間での「知る前契約」に基づく売買等は適用除外されていないという現状がございます。

また、持株会や累投による「知る前計画」に従った一定の買付けは適用除外となってございますが、それ以外の「知る前計画」に基づく買付けについては適用除外されていないというところでございます。

「知る前契約」「知る前計画」につきましては、インサイダー取引規制が創設されて以来、適用除外範囲の明確性の確保の観点から、適用除外となる類型を個別に定めてきておりますが、取引の円滑を確保する観点から、単にルールベースとするのではなくて、「知る前契約」「知る前計画」として適用除外すべきもののプリンシプルを明確にして、必要に応じて適用除外となる類型をガイドライン等で示すことが考えられるのではないかというのが論点でございます。

12ページでございますが、重要事実を知ったことと無関係に行われる売買等であることが明らかな場合か否かというのは、例えば次のような判断の視点に基づいて判断することが考えられるのではないかということでございます。

1つ目が、重要事実を知る前に締結・決定された契約・計画であること。

2つ目が、当該契約・計画の中で、それに従った売買等の具体的な内容が定められており、裁量的に売買等が行われるものではないこと。

それから、3つ目でございますが、当該契約・計画に従った売買等であることということでございます。

ただし、上述のような視点に基づく場合につきましても、事後的に契約や計画を捏造することによって規定が潜脱されることとならないよう留意する必要がございますので、例えば、反復継続して取引を行うことを内容とする「契約」や「計画」であれば、事後的に捏造されるおそれは類型的に低いと考えられるのではないか、また、単発の取引を行うことを内容とする「契約」や「計画」であっても、重要事実を知る前に締結・決定されたことが明確であるような措置、例えば、証券会社等による確認を得るということを例示させていただいておりますが、そうした措置がとられるならば、「契約」や「計画」が捏造されるおそれは低いと考えられるのではないか、ということでございます。

13ページでございますが、こうした観点からインサイダー取引規制を適用する必要性の乏しいものにつきましては、より包括的な適用除外の規定を設けることによりまして、その上で必要に応じて、ガイドライン等でこれを補っていくことを検討すべきではないかというのが問題意識でございます。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見をお願いいたします。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

基本的な全体の流れは、これでよろしいかと思います。

ただ、12ページにありますように、契約や計画の捏造という観点でいくと、契約書がある分、契約のほうが確認しやすいのかなと思います。一方、計画の場合は、その計画が事前にあったことをどうやって確認するのかという問題が出てくると思います。その確認について、12ページの最後の3行目に、「例えば、証券会社による確認を得る」と記述されています。それはおそらく、いろんな形でお客さんに対してサービスをするのが証券会社の役割ですから、そのような取決めができるのなら確認しましょうということにはなると思うのですが、あまり煩雑な手続にならないように、ガイドライン等を定めていただければと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

非常にありがたい話でありまして、特に実務的には、いわゆる持株会の運用について、非常にグレーゾーンが多くて困っております。私どもなりに考えているところでは、それなりの社内ルールがきちんと定められていて、それに基づいて、ある意味、計画的・機械的に行われているものについては、すべて適用除外にしてほしいと申し上げたいところであります。

少なくとも、この中身で整理していただいて、ガイドラインなるものがきちんと分かりやすいものになれば、これで十分かと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、柳川先生。

○柳川委員

やはりこういうガイドライン、包括的なところを作って、煩雑に行われたり、あるいは、かえって制約的な取引になっている部分を活性化していくというのは非常に重要なことだと思うので、この方向で結構かと思います。

ただ、逆に、こういうふうに包括的になるがゆえに、かえってやりにくくなってしまってはいけないので、やはりここのところではプリンシプルを明確にしてと、ここのところが非常にそのとおりということなのですが、どういうプリンシプルにするのかということは、やはりかなり詰めていかないと、かえって、逆に身動きがとれなくなってしまわないようにしていただければなということは思います。

それで、それに関連すると思うのですけれども、やっぱり先ほどの公開買付けのところでもちょっと感じたことですけれど、知らされてしまったというような行動に関して、どういうふうに考えるかということですよね。だから、そこは、結局、計画は立っていれば、「知る前計画」だということになるのだと思いますけれど、そういうようなところの情報を知ったという事実と計画との関係は、実はかなりグレーなところがいっぱいありますので、そのあたりの整理の仕方というのが1つ重要なのかなと思います。

それから、もう一つだけ申し上げると、あまりこの観点で、最初のところで整理していただいたように、情報の優位性を持っていることを使って取引をしたということが問題だということが基本なのですけれども、これを突き詰めていってしまうと、本当に身動きがとれなくなる。誰でもある程度のところは優位性があったりしますので。そのあたりのところを、原則論と実際問題、アウト、黒白をつけていくときの囲い方の問題をプリンシプルでどこまで詰めるかというのは、趣旨は非常によく分かるのですけど、なかなかいろいろこういう個別事例を見るにつけ難しいなと思うので、結局、そのあたりの線引きの問題だろうと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

私も、先ほどの公開買付け等事実を知らされた者の適用除外との関係で、気になったのですけれども、例えば、買集め者が大量保有報告書を提出して、いつごろまでに何%程度まで市場で購入する予定であるということを明らかにしたとしても、12ページの当該計画の中で具体的な内容が定められているかというと、これには当たらないように読めるのです。そうすると、そういうふうに公表した後であっても、重要事実、公開買付け等事実を知らされてしまうと、市場で買集めることはできなくなる。やや酷かなという感じがするものですから、計画の具体性については、もう少し要件を緩めてもいいのではないかなと感じています。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

特に持株会については、気になります。持株会について一番需要が多くて、しかも、まじめな持株会が身動きがとれなくなっているというふうにも伺いますので、そこのところを合理化するのは賛成です。

他方で、多くの企業で、今、持株会のシェアというのはかなり大きいように思いますし、一番インサイダーであるわけです。事前の計画といっても、本当にそんなに詳しいことまで計画で示すと、また身動きがとれなくなるので、多分、かなり包括的な、あるいは裁量を許す、どのタイミングで、あるいはどの程度買うのかということは、裁量がないと、これまた運用ができないでしょうから、計画の詳細さにも限度あると思います。とすると、濫用がないようにと申し上げるしかないのかもしれませんけれども、価格操作そのほかの問題が生じないように外部から監視していく必要性も高まってくると思います。

筋としては、もうこれは13項目もの列挙がありますから、それを貫くプリンシプルを示すことは、むしろ立法技術的にも必要だと思いますので、方向性は賛成ですが、懸念はございます。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

そうしますと、これは13項目を残して、最後にバスケット条項を書いてガイドライン等で補うのか、13項目をやめて、バスケット条項だけにしてガイドライン等で補うとするのか、どちらなのでしょうかね。

○増田市場機能強化室長

そこは両案あり得るかと思いますので、さらに検討させていただければと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。そうしましたら、基本的には論点メモの線で先へ進めると思います。いくつか重要なご指摘をいただきましたので、その点も十分注意して、先へ進めていただければと思います。本日は順調にご審議いただきましてありがとうございます。

最後に、14ページ以降、Ⅳ「その他の課題」に関する事項に審議を移したいと思います。事務局から論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

14ページの「その他の課題」ということで、インサイダー取引等の未然防止に向けた取組みでございます。

インサイダー取引及びそれにつながる不正な情報伝達を防止していくためには、法令による規制のみではなく、各関係者がそれぞれの立場において求められる役割を適切に果たして、不公正な取引等を未然に防止するような市場環境を醸成していくことが必要と考えられるということでございまして、まず1つ目でございますが、こうした観点から、インサイダー取引規制に関する予測可能性を向上させていくことが必要ではないか。具体的には、違反行為の一般予防を図るとともに、不必要な企業活動の萎縮を回避するという観点から、例えば、現在の課徴金事例集について、過去のインサイダー取引事案がより実務の参考になるような取組みが必要ではないかということでございます。

それから、金融業界における取組みでございますが、市場仲介機能を担う証券会社においては、各社において法人関係情報の管理態勢の点検が行われ、必要な改善に取り組んでいるところであるが、引き続きこうした取組みを継続して、投資家の信頼回復に努めていくことが求められるのではないか。また、自主規制機関においても、金融業界全体のコンプライアンス態勢や情報管理の質的向上に向け、自主規制ルールの見直しや、自主規制ルールに基づくエンフォースメントの強化、営業姿勢等に係る実務慣行の見直し等に取り組んでいく必要があるのではないかということでございます。

それから、取引所における取組みでございますが、インサイダー取引が行われたような場合につきましては、企業の情報管理の実態を広く把握し得る取引所におきまして、例えば当該会社関係者の所属する上場会社に対し、情報管理に関する先進的な取組み事例等の情報提供や注意喚起を行うなどの取組みを行うことによって、市場の公正性を確保し、適正な取引環境を整備していく必要があるのではないかということでございます。

また、取引所においては、例えば、スクープ報道がなされた場合、当該報道に関する事実について、より踏み込んだ情報開示が行われるような対応が検討されるべきではないか。

右側の備考欄に書いてございますが、実務上、例えば朝刊でスクープ報道がなされた場合に、一時的に「当社から発表したものではない」といった適時開示が行われ、一方、当日の大引け後に改めて正式決定がなされた旨の適時開示が行われる事例が生じてございます。

こうしたことを踏まえますと、より踏み込んだ情報開示が行われるような対応が検討されるべきではないかということでございます。

なお、そうした適時開示に関する実務慣行の改善に向けた検討を踏まえながら、そうしたより踏み込んだ情報開示を進めていく中で、インサイダー取引規制が解除される重要事実の「公表」措置への該当性についても検討がなされるべきではないかということでございます。以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。では、皆様方から、ご質問、ご意見をお願いします。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

金融庁・証券取引等監視委員会における取組みというところに書いてあることに関してですが、私は、これはいろんな事件を1つの反省材料として、その後のコンプライアンス態勢を作っていく上で、ここに書かれているようなことは非常に重要ではないかと思っております。

アメリカの場合、もちろん、制度のバックグラウンドが全然違うので、単純比較すべきではないのはもう百も承知でありますが、民事制裁金と呼ばれるものが科されるケースであっても、裁判所における民事訴訟手続を経るという関係で、SECが把握しておる極めて詳細な事実関係が、一般に手に入る形で明らかになっておるわけですね。もちろん、最終判決までいかないで和解するケースが多いので、それがどうだったのかというのは、評価はいろいろあると思うのですが、ただ、そこに書かれているような事実関係であれば、これはインサイダー取引で制裁金が科されるのだなというのは、当事者以外の人にもよく分かるようになっておるわけです。

残念ながら、現状の日本の課徴金事案について、監視委員会で出されております勧告文を読んでも、どこでどういうやりとりがなされたことが、例えば重要事実の伝達というふうに監視委員会によって認定されたのかということは、少なくとも外の人間には分からないわけですね。そうしますと、どうしても今回の審議の背景になっているような、ああいった悪質な事件が起きますと、一部の運用会社では実際にあったようですけれども、例えば、証券会社の営業マンに会うと、そもそもインサイダー取引をしたと言われてしまうようなことになりかねないから会うなとか、あるいは、増資の可能性というようなことをディスカスすること自体がインサイダー取引の危険を呼ぶから一切やるなとか、今は多分、もうちょっと正常になっていると思うのですけど、非常に極端なことも一時的には行われたやに聞いております。

これは本当に市場の活動を単に萎縮させるだけで、非常に非生産的だと思いますので、今回のものとか、あるいは、もっと昔のものも全部細かくというのはなかなか難しいと思うのですが、ぜひ今後、詳しい、こういう事実関係を認定したので、これは166条、167条違反であるというふうに、少し長目に書いていただけると大変参考になると思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

武田委員、どうぞ。

○武田委員

ありがとうございます。15ページに、取引所における取組みということで、ご指摘を2点いただいております。私どものほうからも、それぞれについてコメントさせていただければと思います。

まず一番上の、不正な情報伝達をした方が上場会社の役職員であったというケースでございますけれども、私どもでは、これまでも、不公正取引の調査と申しますか、有価証券の売買等の審査の結果、会社情報に係る不公正取引の防止のための社内体制が十分でないというふうに認められた場合において、必要があると認めたときには、上場会社に対して改善を求めているところでございます。

今回の本論点にもございますように、今般、新たに情報伝達行為に法的規制が設けられるといったようなことを踏まえまして、私ども取引所といたしましても、当該規制に違反した者、具体的には、不正な情報伝達を行った者が所属する上場会社についても、情報管理態勢の点検、整備、または改善が求められるというふうに考えております。

具体的には、当該違反行為者が所属する上場会社に対しまして、自社の情報管理態勢の確認を求めさせていただいた上で、その態勢が十分でない場合については、その整備、改善を促すことを目的として、当該上場会社さんに情報管理態勢に係る点検をお願いし、改善措置等について文書によるご報告をいただきたいなということを今検討しております。

もとより、従来から私どもは、上場会社さんへのコンプライアンス支援ということを目的といたしまして、各種セミナーの開催でございますとか、研修講師の派遣、それから研修教材のご提供といった啓発活動を実施してきておりまして、今後、こういった改正、見直しを踏まえまして、さらに上場会社さんの社内体制の整備、あるいは、上場会社さんご自身に自浄作用を発揮していただくためのサポートをしていく、そういったお手伝いはこれまで以上にやっていきたいなと考えております。

それから、2点目の、スクープ報道の部分でございます。まず現状をご説明いたしますと、私ども東証では、上場会社ご自身の正式な発表によらずに、マスコミ等によって重要な会社情報に関する報道というようなことが行われた場合につきましては、私どもの有価証券上場規程に基づきまして、上場会社さんに対して、事実関係の正確かつ迅速な報告ということをお願いするとともに、報告を受けた事実関係について、必要に応じ適時開示をしてくださいということを求めているところでございます。

実務的には、上場会社さんにおける意思決定手続が完了しているときについては、正式な内容の迅速な開示を求めておりますし、意思決定手続の途上にある場合ですとか、全くの事実無根といったようなときには、報道されている情報の真偽等について、上場会社さんの簡潔なコメントの開示を求めております。

実際の例を申し上げますと、開示されたコメントの中には、「そういった事実はない」といった形で報道内容を否定するケース、それ以外には、「現在検討中であり、本日の取締役会に付議予定である」といったような形で肯定されるケースもございます。

事務局からのご説明にもありましたように、報道内容を実質的に肯定するコメントの開示が行われたケースについては、実際の報道された情報と相まって、重要事実の公表に該当するということを考えることができる場合もあるのではないかと思われますので、解釈上の要件の明確化については、私どもといたしましても、ぜひご検討をお願いしたいなと思っております。

それから、現状の問題点といたしましては、私どもの立場としましては、投資家に適切な投資判断を促す観点から、できる限り事実関係を明らかにするように上場会社さんには求めているわけでございますけれども、いろいろなご事情がございまして、事務局からもご指摘があったように、備考欄に書いてございましたが、上場会社さんが開示するコメントの中には、「当社から発表したものではない」といったような形式で、報道の内容の真偽には言及せず、その後に報道された内容と同様の情報を上場会社さんとして正式に決定をし、開示をされているケースがございまして、結果として、投資家に誤解を与えかねないといったような場合もあると認識をしております。

一般に、報道された内容に対する上場会社さんのコメントについては、そういった報道がされた後、関係先との必要な調整であるとか、法律専門家のアドバイス等を踏まえ、短時間で準備されるというようなことでございますので、必要かつ十分な内容を確保することは実務的には非常に難しい、容易ではないという面もございますけれども、重要事実の公表に該当するための解釈上の要件が明確化されることは、こうしたコメントの開示の実務慣行を考える上では、極めて重要な意義を有することになると思われます。

なお、そうした曖昧、要領を得ないコメントが開示される背景の1つには、例えば、エクイティファイナンスの局面において、法令に基づいて有価証券届出書を提出するより前に、ファイナンスに対する開示を行うことが、事前勧誘規制に抵触するのではないかというようなご懸念があるようにも伺っております。ぜひ、具体的な検討に際しましては、そういった周辺の環境整備につきましても、あわせてご考慮いただきたいと思っておりますし、仮にそうした点が放置されたままだとすれば、結果として、資料にあるように、曖昧、要領を得ないコメントを上場会社さんが開示するということが正当化されてしまうといったことも懸念されますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

池永委員、どうぞ。

○池永委員

仕事上、証券会社とか金融機関のコンプライアンス態勢の整備について相談を受ける立場にあって、その観点からお願いしておきたいことがございます。

まず、こういった会社においてコンプライアンス態勢を作っていかれている方は、非常にまじめな方が多くて、まず、ここにあるように、不公正な取引等を未然に防止するということに力点が置かれますとしたら、かなりの確率で、99.9%起こらないような態勢を作るにはどうすればいいかという発想で態勢を作り上げるという行動パターンに入ります。

それは決して悪いことではないのですけれども、その場合に、実務家がやはり一番悩むのが、特に主観的要件だとか、そういったものが入ってくる場合に、要件を満たすのかどうなのか、客観的な線引きが難しくなるという場面でありまして、どうしても保守的にコンプライアンス態勢を組むということがしばしば起こります。今回のインサイダー規制でも、情報伝達のところについては、いろんなご懸念が実務界であるようですけれども、要件が非常に不明確なままだと、どうしても保守的なほうに振れる。そうすると、実態としては、今までできたこともできないというようなことが起きるということが、懸念されるわけです。そういう例は、実は、実務界ではかなり昔から結構起きていました。例えば、法人関係情報について、金融商品取引法改正のときに、もうちょっとはっきりしてくれないかという要望が非常に強く出たと思うのですけれども、これも諸般の事由で、金融庁としてそれは難しいということで終わりました。実務の運用は広めに法人関係情報として拾い上げるという方向に流れ、コンプライアンス部門の負担は重いままとなっています。

ということで、オーバーリアクションといいますか、そういうやや保守的な運用に振れやすいということがございます。ここから先が具体的なリクエストなのですけれども、なるべくガイドライン等で、金融庁サイドでも、こういう場合にはセーフということを示すセーフハーバールールのようなものをできれば示していっていただきたい。自社株買いについてはおやりになりましたけれど、そういう方法で、適用の明確性というのが非常に図られて、コンプライアンス態勢の運営にあたる方々も、態勢づくりが容易になってくるということがございますので、ぜひこの点はお願いしておきたいと思います。以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

内田委員、どうぞ。

○内田委員

スクープ報道に関してのところですが、上場させていただいている会社で実務をやっている身といたしましては、もちろん、すべてのケースに当たるわけではありませんが、この右側に挙げられているようなケースの場合には、私が理解する限りは、ほとんど会社内で適切な内部統制プロセス、あるいは意思決定プロセスを通じて、重要事実の決定後には速やかに適時開示をしていくという案件であり、わざわざ当日の朝刊に報道するような慣行自体を、この場が適切かどうか分かりませんけれども、まずそこが何とかならないものかというふうに思います。もともと何か重要な事実を隠蔽している、あるいは開示をしていないものに対して、そういう報道等を通じて、外部からそれを促すということであれば、正当な意義があるとは思います。それから、ご指摘のとおり、できる限りのことはしていかなければならないと思うのですが、やはり正式決定するまでは守秘義務を負っていたり、いろいろな契約上の制約もございまして、かえってその開示自体が市場を混乱させてしまうこともあるのではないかと考えております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

意見というよりはお願いです。取引所における取組みとか、自主規制機関における取組みも、確かにこのとおりかと思います。そこで、特に自主規制機関や取引所でペナルティを考えていただいているかとは思いますが、その全体の水準と、金商法の課徴金なり刑事罰の水準と、調整してほしいと言うわけではありませんが、全体としての社会的な納得感というものはあると思いますので、自主規制機関あるいは取引所で何をされるかということもよく見極めた上で、課徴金の在り方、あるいは刑事罰の在り方を考えていただきたいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

今ご指摘いただいたところを、まさに発言させていただこうと思っていたところです。14ページに、自主規制機関の取組みについて、いろいろ記載されています。自主ルールの見直しに関しましては、すでに2回目のプレゼンの機会をいただいた際に、日証協において何をやるかというお話をさせていただきましたが、現在、日証協のワーキングで法人関係情報の管理ルールの見直し等を一部スタートしています。特にルール自体を見直すよりは、もう少しきめ細かいガイドラインを定めて、運用を明確にしていくという議論をしているところです。

エンフォースメントの強化のところで、不都合行為者制度の見直し等について記載されています。ここは、今阿部委員がおっしゃったことと全く逆のことを考えています。例えば、法令上の罰則がどうなるのかによって、自主規制の罰則をどこまで引き上げるのかという議論もしていく必要があるのではないかと、協会において議論になっています。

例えば、ご存知のとおり、会社処分に関しては、今、過怠金上限5億円になっています。こちらについては、インサイダー規制の刑事罰、法人に対する刑事罰と同じ上限が設けられています。これを、刑事罰の引き上げがないにも関わらず、協会の罰則を引き上げるのかという議論にもなってくることもございますので、ここら辺は、逆に、法令での議論を見据えた上で検討していきたいなと思っています。

また、不都合行為者制度の見直しについて記載されていますけれども、制度自体は、2010年に大幅な見直しをして、永久追放という考え方も導入しているところです。よって、むしろ運用基準の明確化について、今後ワーキング等を組成して、検討していきたいと考えています。全く制裁の強化について触れないというわけではありませんけれども、どちらかというと、より明確に制裁を適用できるような基準を考えていければと考えています。

○神田座長

ありがとうございました。

武田委員、どうぞ。

○武田委員

少し補足をさせてください。ペナルティというような形で阿部委員からご指摘ございましたけれども、あくまでも取引所の取組みのところにつきましては、ペナルティというよりは、再発防止ということで、前向きに上場会社さんと取り組んでいきたいというようなことでございますので、そういうふうにご理解いただきたいのと、それから、今、平田委員のほうからお話ございましたけれども、取引所のほうの処分、制裁といった点につきましても、当然、ここでの議論、あるいは協会さんでの議論を踏まえながら、過重にならないような形で、バランスをとって検討していきたいと思いますので、その点は十分留意していきたいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

綿貫委員、どうぞ。

○綿貫委員

ありがとうございます。大崎委員がおっしゃったこととすべて重なって、大変恐縮ですけれども、私どもの立場からすると、お願いごとは現在ただ1つでございまして、やはり直近の違反事例について、できるだけ早く、必要な重要な情報について開示していただきたいということです。

理由は2つございまして、1つは、投信会社などとも最近の話をするのですが、投信会社の経営のトップの人が言うのは、こういう状況だと、どうやって他社と差別化するかと言えば、情報の収集力であり、分析力であり、他社さんが扱わない商品の開発力なのだけれども、そのためには、いろんな人とお話しして、いろんな情報を集めるけど、これでは怖くて何もできないではないかということを言われるわけですね。一体どういう事実がどういう法令違反なのかということを、コンプライアンスも一生懸命考えるのですけど、何せ情報が少ないので、社内の手続とか、プロシージャーを見直そうと思っても、何を基準に見直していいか分からない、ちょっと右往左往しているというのがございます。

それと、もう1つ、コンプライアンス態勢の向上で、これはもう全くおっしゃるとおりで、これは反論することは全く意図しておりません。これは経営のトップも率先して、コンプライアンスは重要だということを言い、必ずしも楽ではない経営環境の中でも、人員もちゃんと確保するということをやっているのですが、コンプライアンスはどういうことをやっているかと言いますと、やはり発表していただいた、過去の違反事例などを一生懸命読み込んで、自分たちが今まで考えてもいなかったようなところに違反事例があれば、社内でもそういったことがないか自主点検し、それで、疑わしいところがあれば、ご報告して、必要に応じて、証券事故であれば届出をし、改善策を講じるということをやっておりますけれど、コンプライアンスの人というのは、こういうことももしかしたら将来起こるのではないか、誰かが悪いことを考えているのではないか、こういうことがいけないのではないかという可能性を考えるというのがやっぱりコンプライアンスの人たちの専門性ではないのですね。

今回、いろんなことが起こったときに、やはり情報を伝達していただければ、速やかに人を割いて、社内で自主点検できまして、何かその可能性があれば、その自主点検の中で、それはやってはだめなのですよということを言えるので、やはりこれは早く言っていただければ、もしかしたら防げるものをきちんと防げる。遅れたがゆえに、結局何が問題点なのか分からず、みんなでうろうろしているうちに、場合によっては違反を起こしてしまうというようなこともあって、これは非常に残念なことなので、ここはぜひお願いしたいと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

川口委員、どうぞ。

○川口委員

自主規制ルールに基づくエンフォースメントの点ですけれども、自主規制機関がつくる独自のルールに違反した場合に過怠金などを科すというのは、それは当然のことだと思うのですが、現行制度のもとでは、法令違反をした場合にも、各自主規制機関が過怠金等を取るというシステムになっています。そうすると、同じ法令違反をしたということについて、協会の過怠金が科せられ、しかも、取引所でも制裁が科せられ、複数の取引所に上場している場合には、またそこでダブルに、トリプルに取られる。しかも、課徴金が課せられる可能性があるということで、それぞれ制度趣旨が違うと言えばそれまでなのかもしれませんが、同じ行為を一回やったということについて、いろんなところで制裁を受けるというのは、過剰規制かなと日ごろから思っています。ただ、それをどういうふうに統合して、配分したらよいのかというのは、なかなか難しい問題ですけれども、そろそろ検討課題かなと思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

これは若干場違いな発言になってしまうかもしれないのですが、いろんな問題が起きて、コンプライアンスを強化しなければいかん、同じような事件の再発は防止しないといかん、これは全くそのとおりだと思うのですが、他方で、現実に、例えば会社内やいろんな組織内の株式取引ルールなんかは、過去に問題が起きた機関なんかでは、例えば職員の株式取引全面禁止とかいうのもあると聞いておりますし、そこまでいかなくても、例えば事前に届出を行って、6ヶ月以上保有を義務づけるとか、そういうようなルールも多々あるわけですね。これらは一切不正でない取引にも全部機械的に適用されていて、極めて一般の投資家として、普通の社会人が行動することを萎縮させているのではないかと思わずにはいられないわけです。変な話ですけど、この席にいらっしゃる方でも、ごく自由に株を取引できる人っているのですかね。弁護士さんたちも、何かルールがあったような気がするので。

やはり再発防止が大事であることは間違いないのですけれども、インサイダー取引を起こさない一番簡単な方法は、株を取引しないことでありますので、どうしてもそういう方向に走ってしまいがちになるということに対しては、何か、そういうことを求めているのではないのだよというメッセージを、それこそ政府としても出していっていただかないと、先ほどの綿貫さんのご発言にもありましたし、それから池永さんも、コンプライアンスの人は非常にまじめであるということをおっしゃっていまして、まさにそのとおりで、うんとまじめにやるのだったら、全部禁止してしまえば一番簡単だというふうになりがちなので、そこはなんとかしなければいけないという、この場なのかどうかというのは、大いに問題ではあるのですけれども、これも1つの課題として認識していただければと思う次第でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

柳川委員、どうぞ。

○柳川委員

今、大崎委員がおっしゃったことだと思うのですけれど、そういう萎縮効果を防ぐための大事なポイントは、最初に大崎委員がおっしゃったことで、綿貫委員もおっしゃったことですけど、具体的なところで、要するに、形式的・抽象的にしかルールは書けないので、それに対応して、未然に不公正な取引を防ごうとすると、どうしてもかなり抑制的になるということなので、それを解消しようとすると、形式的・抽象的なものに、具体的・現実的に一体どこで線が引かれているかということを明らかにしていく以外にはないわけですよね。

そうすると、過去のものをどうやって掘り起こすかというのは、また別に置いておくにしても、やっぱり実質的にどこを見られていて、どこが実質的にセーフであり、どこが実質的にアウトだったのかということを、できるだけ事例をもって説明していく以外に、多分、この話の解決策はないのだろうなと思うのですね。

そういう意味では、できれば、本当は、実質的にセーフだったのはどこかというところも、出せる範囲で、いろいろな形で事例を出していくということでもって、単に形式的にいろんなことを見ているわけではなくて、本当に問題になっているところを見ているのだということがメッセージとして伝わっていくということなのではないかと思います。

その観点からすると、そもそも論の話になってしまうのかもしれませんけど、最後のところは、皆さんそういうことなので、これは不公正な取引等を未然に防止するのですが、本来であれば、やっぱり意図された不公正な取引をどうやって防ぐかということだと思うのですね。インサイダーの話は、やっぱり本質論としては、結局、陰に隠れて不公正なことをやって儲けている者をどうやって捕まえるかというためにルールを作っているのだけれども、なかなかそこはいたちごっこで、実質的には、そこを捕まえるのはなかなか難しく、結局は、あまりそういう悪意のない人のところまでいろいろルールの影響が及んでしまう。ここの話に限らず、ありがちな、大学の不祥事なんかでも、その辺はあるわけですけれども、そういうことだと思います。

だから、そういう意味では、本来、全然何も意図しなかったのにアウトにされてしまうという話があるのは、実は不幸な話ではあろうかと思うので、意図したということがなかなか証明もできないし、客観的には分からないので、結局、形式的なところで捕まえざるを得なくなって、こういうふうになるわけですけれど、最初に戻りますけれども、そこに命を与えるのは、やっぱり具体的な判断の事例の積み重ね以外にないのではないかなとは思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

1つだけ。15ページの最後の黒丸のところですけれども、スクープ報道の問題ですが、先ほど内田委員からご指摘もありましたけれども、スクープ報道自体は、ある意味では推奨されるべきことといいますか、メディアの自由があるわけですし、その人たちが頑張って取材されることは大いに歓迎されるべきことだと思っています。

それを前提に、発行会社のほうでどう対応されるのか、あるいは、その特定のメディアの方々に、早く報道するということよりも、充実した報道をすることのほうがメリットがあるというような、ふだんからのIRといいますか、関係を築かれるとか、そういう対応があるにしても、何かスクープ報道がまずいみたいなことになると、またまずいかなと思っております。

いずれにしても、ここはいろいろ難しい問題もあると思うので、むしろ、お役所というよりも、取引所のほうでいろいろ適切にやられるほうが望ましいと思いました。以上です。

○神田座長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

全体について、さらに追加でご発言があれば、承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。特によろしゅうございますか。

どうぞ、池永委員。

○池永委員

先ほど、一番最初に、上柳委員のポイントについて、私、発言したのですが、今、資料を読み返しましたら、明らかに、6ページと5ページを見間違えて発言していたということに気がつきまして、その点、大変申し訳なかったと思います。私が申し上げたかったのは、6ページのほうが本当に典型的なケースでございまして、これを何とかしないといけないという点でございました。申し訳ございませんでした。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

そうしましたら、本日、非常に貴重なご指摘、ご意見、たくさんいただきましたけれども、4つの論点についての大きな方向感は大体出していただけたと思いますので、本日いただきましたご注意やご指摘も踏まえて、先に進ませていただきたいと思います。

この後は、いずれまた重要な論点でご議論いただくことがあるのですけれども、いずれにせよ、報告書の取りまとめに入っていきますので、その取りまとめに向けたご審議の中で、本日取り上げた事項についても、さらに追加的に皆様にご議論いただく必要があるというものについては、そこでご議論いただくという形にさせていただきたいと思います。

本日は大変活発なご指摘をたくさんいただきまして、ありがとうございました。

最後に、事務局から、ご連絡をお願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは、以上でございます。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線2644、3943)

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