金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第6回)議事録

1.日時:

平成24年12月11日(火曜日)14時00分~14時50分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

それでは、予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。ただいまから、インサイダー取引規制に関するワーキング・グループの第6回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつもお忙しいところをお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

それでは、早速ですけれども、議事に移らせていただきます。

本日でございますけれども、2つありまして、1つ目は、第3回のワーキング・グループでご議論をいただきました「情報伝達行為への対応」のうち「市場仲介業務を担う者に関する規制」、それから「重要事実の要求行為」、この2つにつきましてさらにご議論をお願いしたいと思います。

それからもう1つは、このワーキング・グループの報告書の取りまとめの時期になってきているわけですけれども、その前段階として、これまでご審議いただいた事項について資料を取りまとめておりますので、それについてご確認をいただきたいと思います。

なお、経団連が本日、インサイダー取引規制の見直しに関する提言を公表しておられますので、ご参考としてお配りさせていただいております。

それでは、まず最初に「市場仲介業務を担う者に関する規制」と「重要事実の要求行為」に関する事項について、事務局から論点メモの説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

資料1の論点メモ(4)ですが、1つ目の項目は、「I.市場仲介業務を担う者の情報伝達・取引推奨行為に関する規制」でございます。

まず、「1.これまでの議論等」ですが、第3回ワーキング・グループでは、主に次のような議論が行われたところです。市場仲介業者は、公正な市場を確保することに責務を負っており、一般の投資家と比べて重い処罰の対象とすることは考えられる。

また、本来であれば、業法や自主規制等で対処すべき問題のようにも思われるが、それらが十分にワークしていないというのであれば、法規制をすることもあり得る。 

証券会社に対しては業規制が存在しており、それに加えて重畳的に過度の規制を設けることは厳し過ぎるのではないかといったご意見をいただいております。

また、市場仲介業務を担う者であっても、主観的要件がない場合や情報伝達・取引推奨が取引に結びつかないような場合にまで処罰の対象とすることは、萎縮効果が生じ、本来必要な情報の流通まで妨げることになるのではないかとのご指摘もいただいております。

「2.論点」ですが、市場仲介業務を担う者の性質として、証券市場がその機能を十全に発揮するためには、公正な取引環境が備わり、市場に対する投資家の信頼が確保されていることが不可欠であり、上場株券等の仲介業務を担う者は、このような証券市場のゲートキーパーとして公共性の高い役割を担っており、市場の公正性・透明性に対する投資家の信頼を損なうことのないよう業務を遂行すべき立場にあるのではないかということでございます。

また、このような仲介業者の役職員が、仮に、その職務に関し、一部の顧客に対して企業の内部情報の伝達や内部情報に基づく取引の推奨を行った場合には、単に当該業者に対する不信が生じるだけでなく、我が国証券市場全体に対する信認の失墜につながるおそれがあるのではないかということでございます。

一方、仲介業者については、業規制や自主規制により法人関係情報の管理に関する一定のルールが存在している。また、規制が過重なものとなることによって、市場仲介業務に萎縮効果が生じ、必要な情報の流通に支障を来たすことになれば、かえって証券市場の機能を低下させ、有価証券の円滑な取引を妨げることになり得ることも留意する必要があると考えられます。

以上を踏まえ、3ページですが、仲介業者の役職員の情報伝達・取引推奨行為については、一般の会社関係者と同様の主観的要件や情報伝達・取引推奨の結果としての取引要件を設けることとした上で、上述のような仲介業者の役割の重要性等に鑑み、違反行為に対するエンフォースメント手段については、より実効性のある抑止が図られるよう検討すべきではないかということでございます。

例えば、仲介業者の役職員がその職務に関し不正な情報伝達・取引推奨を行い、インサイダー取引等を引き起こした場合の課徴金額については、当該職務に関連して得られた収益、右の備考に書いてございますが、幅広い利得(引受手数料・売買手数料など)が考えられますが、こういった職務に関連して得られた収益に基づいて算出することを検討すべきではないかということでございます。

また、仲介業者の役職員がその職務に関し違反行為を行った場合、課徴金の対象は、実際に情報伝達・取引推奨を行った役職員ではなく、当該仲介業者となります。この場合、当該役職員は違反行為を繰り返すおそれもあることに鑑み、将来の取引相手となり得る証券会社や投資家等に対して注意を喚起する観点から、当該役職員、この場合、補助的な役割を担った者を除くということですが、その氏名を明らかにすることが考えられるのではないかということでございます。

4ページですが、なお、仲介業者の役職員は、上述の主観的要件や取引要件に該当するか否かにかかわらず、その業務の推進等を図るため不当に情報伝達・取引推奨することがあってはならないと考えられる。この点については、現行の業規制では、法人関係情報を提供した勧誘が禁止されており、基本的には、このような業規制により、そうした行為の抑止が図られていくべきではないか。ただし、今回導入する情報伝達・取引推奨行為に対する規制との整合性の確保は必要ではないかということでございます。

5ページですが、「II.エンフォースメント」の「1.重要事実の要求行為」ですが、近時の公募増資に関連するインサイダー取引事案においては、ヘッジファンドのファンド・マネジャーが、証券会社のブローカー評価に基づき取引発注分量等を決定することを背景に、証券会社に対する影響力を強め、いわゆる「耳寄り情報」の提供を継続・反復して求めていたことが認められています。

他方、重要事実の要求行為は、それにより情報を得て取引を行えばインサイダー取引規制の違反となるものであり、インサイダー取引の予備的な行為としての性格に過ぎないとも考えられます。

また、投資家が、有価証券投資を行う上で、証券会社の営業職員に対し、有益な投資情報や銘柄の推薦を求めることは一般的にありえ、通常の行為を萎縮させないよう配慮が必要との指摘もあります。

これらを踏まえると、「重要事実の要求行為」自体を直接的に罰則等の対象とすることについては慎重に考える必要があるのではないか。ただし、同時に違反行為の抑止の観点から、特定の運用担当者が取引上の立場を利用して要求行為を行い、これがインサイダー取引につながったことに着目した適切な違反抑止策を検討する必要があるのではないかということでございます。

6ページですが、論点ということで、これらを踏まえ、機関投資家等の運用担当者等による違反抑止を図るため、取引上の立場を利用して重要事実を要求するなどにより、インサイダー取引を行ったような悪質性の強い課徴金事案についても、違反行為において中心的な役割を担った者等の氏名を明らかにし、将来の取引相手となり得る証券会社や投資家等に対して注意喚起していくことが考えられるのではないかということでございます。

その他一般的に公表をすべきケースということで、上記のケース以外についても、インサイダー取引など不公正取引を反復して行った者については、違反行為を繰り返すおそれがあることに鑑み、将来の取引相手となり得る証券会社や投資家等に対して注意喚起していくという観点から、違反行為を行った者の個人名を公表することが考えられるのではないかということでございます。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、今ご説明のありました論点メモにつきまして、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

質問ですが、氏名を公表するということについて、現在も氏名を公表しないということが何か決まっているわけではないように思いますが、実務的に氏名を公表することを、一種の抑止策としてやってみようという、そのご趣旨はよくわかるのですが、制度的にどのようなものとしようとお考えでしょうか。

○増田市場機能強化室長

現行の課徴金制度の運用におきましては、法人名は公表しておりますが、個人名については原則非公表という扱いにしております。個人名を公表している事例としては、例えば、独占禁止法において、課徴金事案でも個人名を公表しております。したがって、必要な法律改正も含め検討していきたいと考えております。

○大崎委員

逆に今、氏名を公表できない何か法律の根拠があるのですか。

○増田市場機能強化室長

個人情報保護法やプライバシーの問題など、いろいろ配慮をしたものと聞いております。

○神田座長

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

市場仲介業務を担う者についての扱いも一般の会社関係者と同様の要件を設けていただいた上で氏名公表ということはわかります。一方、「2.その他一般的に公表すべきケース」というのは、上記のケース以外全てですか。具体的に何か対象を考えているのでしょうか。

○増田市場機能強化室長

不公正取引を反復して行った者については、その後も違反行為を繰り返すおそれがあるので、そういったものについて対象にできないかと考えております。

○阿部委員

原則全てということですね。

○増田市場機能強化室長

不公正取引については、ということです。

○神田座長

よろしいでしょうか。

ほかにいかがでしょうか。平田委員、どうぞ。

○平田委員

金商業者は、ご説明いただきましたように、法人関係情報に係る法令の規制、あるいは自主規制において相当程度の規制が行われております。我々のほうでも自主規制強化の検討を行っているところですが、今回の事件を踏まえますと、このような情報伝達・取引推奨行為の規制が導入されることは、致し方ないことと思っております。

しかし、既に何度もお願いしておりますとおり、証券会社の営業活動では情報提供、あるいは取引推奨行為が大きな比重を占めております。正当な行為と不正な情報提供あるいは取引推奨行為との峻別が難しいようですと、現場の実務に支障が生じる懸念もございます。これらの解釈、判断につきましては、例えば法令やQ&Aにおいて明確にしていただければありがたいと考えております。

また、一部海外でのファイナンスで認められております、例えばプレヒアリングのような情報伝達行為に関しまして、後から取引推奨行為に見えてしまうような実態もございますので、例えば適用除外を法令に盛り込むことについても、今後お考えいただければと考えております。

いずれにしろ、今後これらの規制が導入された際には、証券会社の業務の実情を十分に踏まえていただいて、規制の運用を行っていただきますようにお願いしたいと考えております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

今のご発言で、改めて気になったのですが、取引推奨行為を情報伝達とは別に規制しないとまずいのですか。というのは、取引推奨を行うときには、情報伝達しますよね。そこは、どうお考えですか。

○古澤市場課長

本件に関する議論のスタートは、第2回WGで、欧米、特に欧州における規律において、「伝達」と「推奨」とを分けて考えていた点が背景としてあります。その際、米国の議論も紹介いたしましたが、「伝達」と「推奨」、特に「一部の事実の伝達」と「推奨」の境界線が実際のエンフォースメントの上で問題となる事例があり、そこでまた潜脱のおそれも生じてくるとの論点があったかと思います。

その意味で、今回、ご提案させていただいているのは、「推奨」について、実態に鑑み規律の対象にする必要があるのではないかという考え方です。

ただ、最終的にどういう構成要件にするか、主観的要件、それから取引要件を挙げておりますが、実際の書きぶりについては、これから調整したいと考えております。

○大崎委員

とすると、情報伝達と取引推奨というのは質的に異なるものだという考え方もとり得ると思うのです。そういう考え方をとると、その一番の違いは、取引推奨の場合には重要事実そのものを伝達しないで、要するに重要事実を知った上で取引推奨するけれども、重要事実を知っているということを伝達しないというケースもあり得るという、そこが一番の違いのような気もするのです。

そうだとすると、今度は取引推奨を受けて取引する者は、情報伝達を受けていないということがあり得るわけですよね。その場合は、取引推奨を受けた者の取引行為そのものは不可罰だけれども、取引推奨を行ったことが、実際に推奨に従った取引が行われて初めて可罰性を帯びる、こういう理解ですね。

○神田座長

今の点はよろしいですか。それでは、ほかにいかがでしょうか。

池永委員、どうぞ。

○池永委員

市場仲介業務に対する規制のあり方について、ほかの場合と一緒にする、主観的要件プラス取引行為を付け加えるというお考えですけれど、私はこの方向性は賛成したいと思います。

今回のもともとの改正の目的というのは、公募増資インサイダー事件に見られるような悪質事案に対応しなければならないということがございます。

ただ、情報提供行為そのものを、それだけを取り上げて処罰対象としますと、インサイダー取引の防止の観点からは会社関係者間、あるいは会社関係者と第一次情報受領者間の情報提供というものをより厳しくコントロールしなければいけないのではないかという懸念がいろいろな方面から聞こえてくるわけです。

それでは、まさに今までできた、可とされたものを、逆に萎縮させる懸念がどうしてもぬぐえないと思っておりまして、したがって、この点からもやはり取引行為というものを加えることは、現段階ではバランスのとれたところなのかなと感じております。

また、これはちょっと観点が違いますけれども、マスコミ関係者からも、特に証券会社からの取材が全然できなくなってきているというような声も聞いておりまして、そういう意味では思わぬところに萎縮効果が波及しつつあるという現状があるようですので、このレベル感でいいのではないかなと思います。

それからもう1つ、やはり今回のような社会的に大きな非難に値する事案に対しては、最低限の対応というのはもちろんとらなければならないわけですけれども、そういう意味で、悪質事案を放置しないという形で、今回、立法の方向性というものを考慮した点は、やはり正しいと思いますが、他方において、やはり規制を導入するときの弊害というものも十分注意しておかなければならないだろうと思います。

また、欧州との関係では、資料にもおまとめいただいているようですけれども、欧州の現状では確かに法文上は情報提供そのものを罰するという規制になっておりますけれども、実態はイギリスの、たしか1例だったと記憶しておりますけれども、現状では取引行為が行われないとエンフォースメントはされないという体制がとられていると理解しておりますので、この点においても、我が国の法制が一段見劣るというようなことには多分ならないのではないかと考えております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。神作委員、どうぞ。

○神作委員

ありがとうございます。

私も基本的な方向性には賛成いたしますけれども、ご質問として、氏名の公表について伺わせていただきたいと思います。資料の3ページにおける、仲介業者の役職員が情報伝達・取引推奨を行った場合の氏名の公表についてと、それから6ページに記載されている、重要事実の要求行為として、ファンド等がインサイダー取引を行ったという場合の氏名の公表とでは、6ページのほうには「悪質性の強い」ですとか、「反復して行った」という要件があって、3ページよりも要件が加重されているように思うのですけれども、そのような理解がまず正しいのかどうかが第1点目のご質問でございます。

第2点は、もしそのような理解が正しいとすると、3ページのほう、すなわち仲介業者の役職員の情報提供や取引推奨については、次の4ページにもございますように、むしろ仲介業者全体としては法人関係情報を適切に管理する、あるいは役職員による情報伝達行為をブロックするための内部的な組織上の義務があるのではないかと思いますけれども、そういたしますと、3ページのほうの役職員も、例えば証券会社の先ほど述べたような内部管理体制が不十分であり、情報伝達の誘因が非常にあるというような場合であっても、当該職員の氏名が常に公表されるとなると、それはスケープゴートになってしまうような印象がございまして、当該職員の情報伝達行為等についても、どのような状況のもとでそれがなされたか個別の事情を総合的に考慮して氏名を公表するかどうかを判断するといった観点が必要になるような気がいたしましたので、その点について伺わせていただければと思います。

○増田市場機能強化室長

まず、3ページと6ページでは、書きぶりは分けております。ただ、3ページの証券会社のほうも、補助的な役割を担った者を除くということで基本的には悪質性の高いものをイメージしておりまして、違反行為を行った者であるということが大前提でございます。また、今お話にありましたように、業法上もいろいろと管理体制を整備した上でやっておりますので、そういったものに違反しているという部分でも責任は重いかなと思います。今回、証券会社については、一般の会社関係者と要件を特に区別していませんが、違反行為に対するエンフォースメント手段という観点から、厳しく公表をしていく必要があるかなとは考えております。

○古澤市場課長

1点補足させていただきます。今、増田室長から申し上げたことと重なりますが、実際にこれからどう規律していくかということでは、「名前の公表」も、インサイダー取引なり、不公正取引の規律のエンフォースメントの一種と考えております。すなわち、先ほど先生からございました、業規制の延長で「名前の公表」があるということでは必ずしもなく、3ページと6ページについて、同じ不公正取引、インサイダーの枠組みの中で法律の根拠を作って公表していくことを考えられないかということです。

○神田座長

ありがとうございます。

私も1点、悪質性と言っても倫理的なものではなくて、ここでは市場の健全さを害するという、その程度が甚だしいというか、それとの関係での悪質性です。ですから、3ページのほうは、そういうことで言うと、仲介業者の役職員が職務に関してしたような場合というのは、類型的にここでいう悪質性があるという、「原則として」と言うべきなのかもしれませんが、例外的な場合があり得るのかもしれませんけれども、考え方としては、そういうあたりではないかと思います。

ほかにいかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

このワーキングが設置された当初の動機でもあるわけですけれども、日本での一連の問題が国際的にも取り上げられて、それに対してきちんと答えていく。もちろん法律的な枠組みの中で、ですけれども。しかも、けじめをつけたことについてメッセージ性のあることをしなければいけないと思っています。

ですから、特に仲介業者の問題については、本当に真面目に対処するのだということが必要だと思っております。そういう点から言いますと、先ほど大崎委員から整理がありましたけれども、いわゆる推奨行為についても、ここではインサイダー取引と結びつく類型の高いものという前提ですけれども、きちんと手当てをすることが必要だと思います。

それから、課徴金の考え方について、利得にとどまるのかどうかという問題は、ここでは引き続き議論ということにならざるを得ないとは思いますけれども、ただ、少なくとも今の利得の考え方について、きちんとまた見直すことも必要でありまして、本日のペーパーで言いますと3ページの備考になりますが、仲介業者がどのような利得を得ているのか、あるいは得ている可能性があるのか、あるいは期待している利得が何なのかということをきちんと分析する必要があると思います。その点で、特に引受手数料についても検討の対象にする、あるいは法制の対象にするということが極めて妥当と思うところです。

さらには、氏名の公表の問題ですけれども、これも、金融庁関連の法律以外では、かなり導入されている手法でして、今まであまり意識されてこなかったのはどうしてかなと思ったりしますけれども、ぜひこの機会にきちんと導入すると言いますか、明確化するということが必要だと思います。

もっとも、特に個人の問題ということになりますから、比例原則というのか、悪質性の高い方について公表する、再発防止性の面が基本だとは思いますけれども、サンクションという意味でも、比例原則があることが前提だと思いますし、あるいは濫用がないように、一定の争えるような手続保障も必要だと思います。

ただ、これも繰り返しになりますけれども、やはり仲介業者の役職員の方の事例は、今回のワーキング・グループの設置趣旨等も考えると、やはりきちんと対処すべき類型ということになろうかと思うところです。

それから、資料1の4ページで、十分留意していただいておりますけれども、いわゆる法人関係情報の関係は、業規制が前提ですので、忘れないようによろしくお願いしたいと思います。

先ほどご発言がありましたけれども、いわゆるプレヒアリングの実務については、なかなか微妙なところがあると思いまして、もちろん資本市場で、特に日本にお金が回ってくるようにということのためには必要な慣行だろうとは思いますけれども、何か潜脱行為であるとかインサイダー情報の周辺にあるようなことにならないように、ここは運用のしどころということかもわかりませんが、注意が必要だという問題意識を持っております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

いろいろ貴重なご指摘をいただきまして、ありがとうございました。皆様方のご意見については、もちろんニュアンスの違い等がありますけれども、概ね事務局の論点メモの線で先へ進むということで賛同いただけたのではないかと思います。

それでは、次へ進ませていただきたいと思います。資料3「これまでのワーキング・グループでの議論の整理」についての審議をお願いしたいと思います。事務局から資料の説明をお願いします。

○増田市場機能強化室長

資料3ですが、これまでの論点メモでご議論いただいたところ、方向性の出たものについて結論ベースで取りまとめております。

まず、「I.情報伝達・取引推奨行為に対する規制等」ですが、情報伝達行為に対する規制について、上場会社の未公表の重要事実に基づく取引を助長する情報伝達行為は、重要事実に基づく取引が行われる蓋然性を高めるとともに、内部者に近い特別の立場にある者にのみ有利な取引を可能とする点等で、証券市場の公正性・健全性に対する投資家の信頼を損なうものであり、適切な抑止策を設けることが適当ということでございます。

取引推奨行為に対する規制については、情報伝達行為を規制する場合には、潜脱的な行為が行われるおそれがある。また、内部情報を知り得る特別な立場にある者が、内部情報を知りながら不正に取引推奨すれば、取引を行う誘因が働くため、一般投資家の証券市場の公正性・健全性に対する不信感を惹起するおそれがあるということで、これらを踏まえると、不正な取引推奨行為についても規制対象とすることが適当ということでございます。

それから、規制対象については、インサイダー取引規制の規制対象者である会社関係者(公開買付者等関係者)が情報伝達・取引推奨する行為を原則として規制対象とするが、上場会社等の健全な活動に支障が生じないように留意するとともに、金商法の目的も踏まえ、主観的要件と結果として取引が行われたことの要件を付すことが適当ではないかということでございます。

2ページですが、まず主観的要件について、健全な活動の中で行われる情報伝達・取引推奨に支障を来たすことなく、他方で、未公表の重要事実に基づく取引を引き起こすおそれの強い不正な情報伝達・取引推奨を規制対象とするため、立証可能性にも留意しつつ(ここは田島委員と川口委員からご指摘がありましたので、付け加えておりますが)、取引を行わせる目的等の主観的要件を設けることが適当ということでございます。

それから、結果として取引が行われたことの要件について、情報伝達等が現実の取引に結びつかない場合にまで制裁等の対象とする必要性は必ずしも高くなく、また、情報伝達等が行われたのみで直ちに処罰・課徴金の対象にすると経済活動に萎縮効果を与えてしまうおそれがあることも踏まえて、不正な情報伝達等の結果として取引が行われたことを要件とすることが適当ということでございます。

さらに、違反行為の抑止を図り、規制の実効性を確保するため、現行の不公正取引規制と同様のエンフォースメント手段(刑事罰・課徴金)の整備を検討することが適当ということでございます。

次に、「他人の計算」による違反行為に対する課徴金の見直しですが、現行制度と課題ということで、金商法の課徴金制度は、違反行為の抑止という観点から、違反行為者に対して金銭的負担を課す行政上の措置であり、課徴金額の水準は違反抑止を図り、規制の実効性を確保する観点から十分なものであることが必要ということでございます。

3ページですが、現行制度においては、資産運用として違反行為を行った場合と、それ以外の場合について規定が置かれており、最近の違反事案を踏まえると、現行の「他人の計算」による違反行為に係る課徴金については、違反行為に対する抑止効果が十分に期待できないものとなっているため、違反行為者が一般的に得られる便益を適切に捉えた計算方法になるよう見直しを行うことが適当ということでございます。

「他人の計算」による違反行為を行った者の便益について、マル1運用委託契約等に基づき資産運用業務を行う者の場合は、違反行為によって将来にわたり継続的に運用報酬を維持・増加させることが可能であり、その便益は違反行為に係る対象銘柄に対応する部分だけでなく、運用報酬全体に及んでいるものと考えられることを踏まえると、月額報酬に運用財産の総額に対する対象銘柄の割合を乗じて計算する計算方法は、資産運用を業として行う者が一般的に享受する便益を十分に捉えたものになっていないため、その特性を踏まえた課徴金額の計算方法に見直していくことが適当、マル2その他の業者以外の者の場合は、直接的な報酬等が違反行為者の得る一般的な便益と考えられるため、現行の計算方法が基本的に適当ということでございます。

違反行為者の得る利得の計算については、違反行為者が、違反事案の調査において、課徴金額の計算のために必要となるファンドの詳細な内容や違反行為者の得る利得の細部が必ずしも明確とならないケースが生じ得る。4ページですが、こうした場合については、課徴金額の計算ができず、違反行為の抑止を十分に図ることができないという問題がございます。このため、違反事実が認められたにもかかわらず、課徴金額の計算のための計数が直接に把握できないような場合については、適切に課徴金額を計算することができるような計算方法を検討することが適当ということでございます。

その他の課題ですが、田島委員と川口委員、それから今、上柳委員からもご指摘がありましたけれども、課徴金制度は違反行為の抑止を目的とするものであり、抑止効果の観点から違反行為者の利得に必ずしもとらわれる必要はないとの指摘もあり、本ワーキングでは「他人の計算」で違反行為を行った場合の特性等に着目し、現行の利得相当額を基準とする課徴金制度の枠内で課徴金の計算方法の見直しを検討したものであるが、そのような現行の課徴金制度のあり方自体についても、将来的には検討されるべき課題として整理しております。

それから「III.近年の企業・金融実務を踏まえた規制の見直し」について、公開買付者等関係者の範囲の拡大ですが、最近の「公開買付者等関係者」に係るインサイダー取引事案では、公開買付対象者(被買付企業)の役職員や、その情報受領者によるインサイダー取引が増加しております。現行制度では、こういった被買付企業及びその役職員については、「公開買付者等関係者」に位置付けていないために、一般的に常に被買付企業及びその役職員を「公開買付者等関係者」と認定できるとは限らない状況にございます。

被買付企業及びその役職員については、公開買付け等事実を公開買付者等からの告知により知り得る特別な立場にあると考えられるため、公開買付者等関係者の範囲に加えることによって規制対象とすることが適当と整理しております。

5ページですが、公開買付け等事実の情報受領者に係る適用除外について、公開買付者等関係者に係るインサイダー取引規制では、公開買付け等事実の情報受領者は、公開買付者等が公開買付け等事実を公表するまで、原則として被買付企業の株券等の買付けができないこととなっております。

企業買収に係る公正な競争や、有価証券取引の円滑を図る観点から、被買付企業の株券等の買付けを可能とする必要がありますが、この場合については、一般投資家の取引に対する有利性が相当程度解消されていると認められる場合や、情報が有用性を失っていると認められる場合に許容されるのではないかということでございます。特に「マル1取引の有利性が相当程度解消されていると認められる場合」について、なお書きを追加させていただいております。なお、情報受領者が公開買付けではなく、買集めを行う場合についても同様の枠組みを設けることが論点となるが、公開買付開始公告や公開買付届出書と同様の媒体が考えられないかといったことを含め、後述の「知る前計画」の活用状況やこの適用除外の枠組みに基づく実務の運用状況等を見極めながら将来的には検討されるべき課題ということで、黒沼委員、川口委員からご指摘がありました点について記載をしております。

また、上述の見直しに加え、現行の対抗買いに関する適用除外規定についても、解釈の明確化等を図っていくことが適当ということでございます。

6ページですが、いわゆるクロクロ取引に係る適用除外については、5行目ですけれども、「適用除外規定の悪用が行われないように留意しつつ」ということを付け加えております。大崎委員、上柳委員からご指摘がありましたように、例えば157条で対応するといったことに留意して適用除外規定の対象として追加していくということになるのではないかと思っております。

それから、いわゆる知る前契約・計画に係る適用除外ですが、前回ご議論いただいたとおり、より包括的な適用除外の規定を設けるとともに、必要に応じてガイドライン等でこれを補っていくことが適当ということでございます。

また、上述の見直しを行うに当たっては、事後的に契約や計画が捏造されるリスクに配慮する必要があるが、反復継続して取引を行うことを内容とする場合であれば、類型的に捏造のおそれが低いのではないか。また、単発の取引を行うことを内容とする場合であっても、重要事実を知る前に締結・決定したことが明確であるような措置がとられるならば、捏造のおそれは低いのではないか。これらの観点を踏まえ、適切な制度整備が図られることが必要ということを記載しております。

7ページですが、「IV.インサイダー取引等の未然防止に向けた取組み」について、金融庁・証券取引等監視委員会における取組みとして、現在の課徴金事例集について、例えば、過去のインサイダー取引事案がより実務の参考になるような取組みを行うことが適当ということを記載しております。

また、金融業界における取組みとして、各社における取組みの継続、それから自主規制機関における自主規制ルールの見直しや自主規制ルールに基づくエンフォースメントの強化等について取り組んでいくことが求められるということを記載しております。

最後ですが、金融商品取引所における取組みとして、不正な情報伝達を行った者の所属する上場会社に対し、情報管理に関する先進的な取組み事例等の情報提供や注意喚起を行うなどの取組みを行うということと、上場会社に関してスクープ報道がなされた場合について、より踏み込んだ情報開示が行われるよう検討することが求められるという点と、なお、そうした検討を踏まえながら、インサイダー取引規制が解除される重要事実の「公表」措置への該当性についても検討することが適当という点を記載しております。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

資料3については、これまでご議論いただきましたところを取りまとめへ向けて文章にしたという性格のものであります。そういう意味では、皆様方にご確認いただくという感じではあるのですけれども、お気づきの点がございましたら、どなたからでもご発言をお願いします。

武田委員、どうぞ。

○武田委員

ありがとうございます。最後の「金融商品取引所における取組み」ということで、前回ご指摘、ご意見等いただきまして、1点目の点と、それから2点目の前段のところにつきましては、再度我々としても担当部署と協議をさらにしていかなければいけないなということで、頑張るつもりでおります。

なお書きの、「そうした検討を踏まえながら、インサイダー取引規制が解除される重要事実の「公表」措置への該当性についても検討することが適当」と記載をいただいておりますけれども、ここの解釈上の要件をきちんと明確化をしていただくということは、我々実務をやる上においても、上場会社が公表されるにおいても、非常にポイントかと思いますので、行政のほうできちんと答えをいただくように、再度お願いをさせていただきたいと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

阿部委員、どうぞ。

○阿部委員

4ページの上から2つ目のポツにつきまして、課徴金額の計算のための計数が直接に把握できないような場合について、適切に課徴金額を計算することができるような計算方法を検討するということですが、要はこれは何かのみなしのような規定を置くということだと思います。その場合に、実はこういう事情なのだから、こういう額にして欲しい、といったような反証はできるのでしょうか。

○増田市場機能強化室長

今後検討させていただきますが、計算方法をまずは定める、推定できるような計算方法を定めるようなことをイメージしております。

○神田座長

よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、佐伯委員。

○佐伯委員

確認ですけれども、2ページの「マル2結果として取引が行われたことの要件」についてですが、情報伝達・取引推奨が行われ、結果として取引が行われたということなのか、情報伝達・取引推奨の結果として取引が行われた因果関係を要求しているのかどうかという点について、条文化するときには、おそらく重要な差異としてあらわれると思いますので、ご確認いただければと思います。

○増田市場機能強化室長

まだ検討中でございますが、因果関係を求める方向なのかなというようなことを議論しております。

○神田座長

表題については、結果としてというのは要らないかもしれませんね。ただ、実質は、今おっしゃったことを決めなければいけないのですけれども。因果関係を要求しているのか、していないのかという両方に解釈される余地がありますよね。

○佐伯委員

客観的処罰条件については、結果は因果関係までは必要ないという判例がございまして、実際上は、そんなに違いはないのかとは思いますけれども、条文のつくり方としては違いが出てくるかと思います。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

2ページの上のほうの主観的要件と取引条件の点ですけれども、今、佐伯委員からご指摘があった点については、私はここの議論は、どちらかと言うと、いわゆる客観的処罰条件であって、因果関係の主張立証までは要しないという議論だったのではないかと認識をしております。もちろんこれは法制の問題ですので、いろいろ難しいことはあるのかもわかりませんが、一方で、マル1の主観的要件があり、かつマル2のほうについても因果関係を要するという、そこまで限定しているという趣旨ではなかったように思っております。

一方、マル1の主観的要件のところに、立証可能性にも留意しつつという言葉を入れていただいて、ぜひ留意すべき点だと思うのですが、とは言っても、やっぱり目的についての主観的要件を設ければ、それの主張立証は必要なわけで、そこについて相当実務的には大変になることが予想されると思います。ですので、ここのところは死んだ条文にならないように、本当に工夫が必要だと思います。

繰り返しですけれども、マル2については因果関係が不要という要件として整理されるものではないかと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。特にありませんでしょうか。

そうしましたら、本日は予定より非常に早いのですけれども、12月の何かとご多忙の時期でもありますし、また将来、余分にお時間をいただくこともあるかと思います。いずれにしましても、今の取りまとめに向けた資料3につきましては、いただきましたご指摘を踏まえて、さらに事務局で次のバージョンを用意していただくということにさせていただきたいと思います。

本日は、若干ご欠席の委員の方々もいらっしゃったこともあるかもしれませんが、ご発言が若干少なめでしたけれども、しかし、貴重なご発言を多数いただきまして、ありがとうございました。

次回は報告書の取りまとめをお願いするということを予定させていただきたいと思います。事務局からご連絡がございましたら、お願いします。

○増田市場機能強化室長

次回のワーキング・グループの日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、以上で本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線2644、3943)

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