金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第1回)議事要旨

1.日時:

平成24年7月31日(火曜日)10時00分~11時38分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 1.開会、メンバー等の紹介

  • 2.事務局説明

  • 3.自由討議

  • 4.閉会

4.議事内容:

  • 冒頭、神田座長より、ワーキング・グループの設立経緯について説明があり、続いて、事務局より、メンバーの紹介があった。

  • 事務局からの説明後、討議が行われた。

  • 討議における主な意見は以下のとおり。

1.情報伝達行為への対応

  • どのようなものが規制対象となるかという構成要件の明確化、何がそこから例外として除かれるのかについて議論を深めたい。また、チャイニーズ・ウォールが働いていなかったという事実がないにもかかわらず、悪意を持った従業員により情報伝達が行われた場合に、法人に対する両罰規定はどうなるのかという点も明確にしていきたい。
  • 証券会社の行為として、情報を伝達しなければいけない場面が多々出てくるので、どういう情報伝達が悪いのか明確な議論をしていただきたい。
  • 情報伝達行為に対する規制は設けるべきであり、その場合の規制の趣旨・保護法益は、市場の信頼を害する独自の犯罪行為であると構成すべき。規制主体については、会社関係者、情報受領者、公開買付者等関係者といった現行法の枠組みに乗っかる者で良いのではないか。規制対象とする行為については、何らかの除外事由を設けなければならないのは当然。インサイダー取引自体は抽象的危険犯であり、そのさらに抽象的な危険を取り除くということであるので、インサイダー取引が行われたことを要件とする必要はない。推奨行為についても、伝達と同じような効果が生じるので、規制の対象に含めるべき。エンフォースメント手段として、刑事罰についてはインサイダー取引を行った者より重くすることは難しいのではないか。また、課徴金については、情報受領者の利得により処罰に軽重を付けることは、抑止効果からいっても、あまり効果的ではないと思うので、定額にすべき。
  • 伝達行為自体を独自の犯罪行為とすることには賛成できない。情報伝達行為について、インサイダー取引が行われた場合には、その教唆犯、幇助犯として処罰できるので、それで十分とも思われるが、その点を明確化して、独自の正犯行為として規定するということは考え得る。投資家の信頼はインサイダー取引が行われることにより害されるものであり、その前の段階であるインサイダー取引の未遂が処罰されないにもかかわらず、そのさらに前の段階にまで刑罰を課すということは行き過ぎではないか。
  • 情報伝達行為については、独自の類型としてきちんと位置づけ、インサイダー取引があったとき、あるいは、それにかなり近い伝達行為だけを罰するということが良いのではないか。
  • 最近問題になっている情報伝達者は、いずれも証券会社の営業社員等であり、本来知るべきでない情報を持っていたということ自体が問題であって、まずは、証券会社の情報管理や営業政策のあり方について見直すべき。仮に情報伝達行為について規制を設けるのであれば、インサイダー取引が行われた場合の教唆犯、幇助犯として考えるべきであり、もし独自の犯罪行為として構成するのであれば、例外規定や、セーフ・ハーバー・ルールを適正に設けるべき。
  • インサイダー取引につながるような不適切な情報伝達行為については、諸外国と同様にきちんと規制をしていただきたいが、過剰規制になることによってマーケットが萎縮するようなことがないようにご検討いただきたい。
  • 違法な内部者取引規制の前段階となる情報伝達行為をどの範囲でどのように規制するかということは、資本市場の信頼を確保するという観点から検討されるべき、極めて政策的な問題。EUの場合、推奨行為も含め、広く情報伝達行為を規制しているのは、内部者取引として第2次情報受領者以下の者も規制するとともに、内部者情報を「利用して」行った取引であることを要件としており、内部者取引を実効的に規制することが難しいことと関連していると思われる。このように、情報伝達行為について検討する場合には、内部者取引の要件が何であるのか、内部者取引の対象者の範囲はどこまでかということとの関係を認識しながら、議論していく必要。方向としては、独自の類型として、情報伝達について明確に規制していく方向で議論することが必要。
  • 情報伝達者に対する独自の規制は市場の公正を守る観点から必要であると思うが、正当な業務に影響を与えるような規制では、市場に対して非常にネガティブなインパクトが出てしまうおそれがあるので、適切な除外規定を念頭において検討する必要。
  • インサイダー取引の悪性は、市場への悪影響、投資家への信頼喪失にあるので、情報伝達によるインサイダー取引が行われて、初めて規制の対象にすべき。
  • 発行体の実務面への影響も十分に検討の中に盛り込んでいただきたい。
  • 今、問題になっている類型に限り、不公正な取引の一つの類型として取り出して規制することは考えられる。

2.課徴金額の計算方法

  • 課徴金について、利得相当額を吐き出すだけでは、抑止効果が働かないように思う。利得相当額を基準としながらも、例えば、アメリカのように、利得相当額の2倍、3倍といった機械的に算定可能な制度で課徴金の額を増やすという方向で検討してはどうか。
  • 課徴金額の計算方法については、2つの考え方があり得ると思う。1つは、他人の計算でインサイダー取引を行った者について、他人の利得を基準にした課徴金を課すということである。しかし、それは、行為者の利得相当額という考え方から大きく外れて問題があるということであれば、定額の課徴金を課すという方法が考えられる。もう一つは、他人の計算でインサイダー取引が行われた場合には、計算の帰属する本人に課徴金を課すこととし、抑止効果を高めるために、課徴金を課された本人が、行為者に対して求償ができるような仕組みを整えるということも考えられる。
  • この際、課徴金を制裁と位置付け、罰金との関係は調整する。また、手続的なことを整備した上で、正面から独禁法と同じように課徴金の性格は見据えるべき。ファンドマネージャーが何か問題を起こした場合、ファンドの本体はそのこと自体知らないかもしれないが、抑止効果の点からいっても、ファンドマネージャーを選任したということからいっても、一定の場合については、ファンドの利得を基にして課徴金を計算するなり、ファンドからも一定の財産を吸い上げても良いのではないか。

以上

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