金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第5回)議事要旨

1.日時:

平成24年11月27日(火曜日)14時00分~15時39分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 1.開会

  • 2.事務局説明

  • 3.討議

  • 4.閉会

4.議事内容:

  • 事務局からの説明後、討議が行われた。

  • 討議における主な意見は以下のとおり。

  • 1.公開買付け等事実の情報受領者に係る適用除外

    • 見直しの方向性については賛成。166条の重要事実についても、敵対的買収者に故意に告げて買収を妨げるという行為が行われることは考えられるので、検討してはどうか。また、買集め行為についても、大量保有報告書や変更報告書に伝達を受けた事実を記載すれば、適用除外を受けられる仕組みを考えてはどうか。また、「情報の有用性が失われていると認められる場合」には、取引を行う者について公開買付者に限定する必要性は必ずしもなく、一般の投資家を含めてもよいのではないか。さらに、ここでの適用除外の定め方については、「知る前計画」の適用範囲をもう少し広げることによって図るのが筋ではないかと思う。

    • 情報受領者が自ら公開買付けを行う場合、伝達を受けた情報を公開買付届出書等に記載しなくても適用除外とすることとすると、全くの部外者から見ると、当該公開買付けが行われている理由についてミスリーディングなことになりかねない。

    • 情報受領者が自ら公開買付けを行う場合、その動機が何であれ、公開買付けが行われていることは既に公表されているので、公開買付届出書等で重ねて情報を持っていることを書く必要があるのかどうか。

    • 情報の有利性の解消という観点から言うと、公開買付け等事実の情報受領者を適用除外するためには、伝達を受けた情報の開示が要件となると思う。極端に言うと、ある者の公開買付け等事実を知った者が、先に公開買付けで集め、その株式を応募すれば利益が得られると思って公開買付けを始めることも考え得る。

    • 「対抗買い」に係る適用除外について、実務面で利用しにくいとの観点から、「対抗買い」の要請について適時開示を求めないこととした場合、例えば、会社関係者等による便乗買いといったインサイダー取引の発生リスクを高めることにもなるため、そういった副作用も考慮していただきたい。

    • 「対抗買い」に係る適用除外についてなぜ利用しにくいのか、なぜ開示しては要請買いができないのかが理解できない。

  • 2.いわゆるクロクロ取引に係る適用除外

    • 第一次情報受領者と第二次情報受領者の間における「クロクロ取引」について、適用除外の対象としてもいいと思う。ただ、そもそも「クロクロ取引」がなぜ許されるかという根本的な問題は残っており、「クロクロ取引」の適用除外が悪用されないよう気をつける必要がある。そこで重要なのはどういう価格で取引が行われるかという点。規制をしろと言うつもりはないが、場合によっては、「クロクロ取引」の適用除外には該当しても、例えば157条に触れるようなことも、理論的にはあり得るのではないか。

    • 知る者同士の市場外での取引について特段の規制を設ける必要はない。また、取引される価格の適正性を担保することは実務的に無理ではないかと思う。

  • 3.いわゆる知る前契約・計画に係る適用除外

    • 基本的な全体の流れはこれでよいと思う。捏造という観点でいくと、契約がある分、契約のほうが確認しやすいのかなと思うが、計画の場合は、その計画が事前にあったことをどうやって確認するのかという問題が出てくると思う。潜脱防止の観点から、証券会社による確認を得ることについては、あまり煩雑な手続にならないようガイドライン等を定めていただければと思う。

    • 社内ルールがきちんと固まっていて、それに基づいて、計画的・機械的に行われているものについてはすべて適用除外にしてほしいが、この案で整理していただいて、ガイドラインがわかりやすいものになれば十分と思う。

    • 包括的な適用除外の規定を設け、これまで煩雑に行われていたものや、かえって制約的な取引になっていた部分を活性化していくというのは非常に重要。ただ、適用除外とすべきもののプリンシプルを明確にして、逆に身動きがとれなくなってしまわないようにしていただければと思う。

    • 公開買付け等事実を知らされた者の適用除外との関係で、例えば、買集め者が大量保有報告書を提出して、いつごろまでに何%程度まで市場で購入する予定であると、そういうことを明らかにしたとしても、「当該計画の中で具体的な内容が定められている」ことには当たらないように読める。この計画の具体性については、もう少し要件を緩めてもいいのではないか。

    • 方向性は賛成だが、持株会について、ある程度の裁量を許すことになった場合、価格操作そのほかの問題が生じないように外部から監視していく必要性も高まってくると思う。

  • 4.その他の課題

    • 課徴金事案について、監視委員会で出されている勧告文を読んでも、どういうやり取りが重要事実の伝達と認定されたのか分からず、市場の活動を萎縮させるだけで、非常に非生産的だと思う。事実関係の認定について詳しく書いてもらうと、コンプライアンス態勢を作っていく上で大変参考になると思う。

    • スクープ報道について、報道内容を実質的に肯定するコメントの開示が行われたケースについては、実際の報道された情報と相まって、重要事実の公表に該当すると考えることができる場合もあると思われるので、解釈上の要件の明確化について検討をお願いしたい。また、上場会社から要領を得ないコメントが開示される背景について、例えば、エクイティファイナンスの局面において、事前勧誘規制に抵触するのではないかという懸念があり、そういった周辺の環境整備も考慮いただきたい。

    • 金融機関がコンプライアンス態勢を整備する際、主観的要件等の客観的な線引きが難しい場面では保守的な運用に振れやすいので、ガイドライン等でセーフハーバールールのようなものを示していただきたい。

    • 上場会社が重要事実の決定後に速やかに適時開示をしていくような案件について、わざわざ当日の朝刊で報道するような慣行自体が何とかならないものかと思う。正式決定するまでは守秘義務を負っていたり、いろいろな契約上の制約もあり、かえって、その開示自体が市場を混乱させてしまうこともあるのではないか。

    • 直近の違反事例について、できるだけ早く、必要な重要な情報について開示していただきたい。

    • 自主規制ルールに基づくエンフォースメントの強化について、各自主規制機関が過怠金等を科し、さらに課徴金が課せられると過剰規制かと思うので、それをどう統合して配分したらよいのかというのは、検討課題かと思う。

    • 形式的・抽象的にしかルールは書けないので、それに対応して未然に不公正な取引を防ごうとすると、どうしても抑制的になるので、それを解消しようとすると、形式的・抽象的なものに、具体的・現実的にどこで線が引かれているのか明らかにしていく以外にはない。そうすると、具体的な判断の事例の積み重ねによりどこで線が引かれているか説明していく以外に解決策はないと思う。

以上

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