金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年11月2日(水曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

【神田座長】
 令和4年度の金融審議会の事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループの第1回会合を開催させて頂きます。皆様方には大変お忙しいところを御参加頂きまして、誠にありがとうございます。

 このたび、当ワーキング・グループの座長を務めさせて頂くことになりました学習院大学の神田と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は初回の会合でございますので、会議の運営と議事の公開、そして議事録の取扱いについて、まずお諮りをさせて頂きたいと思います。会議ですが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今後も、当面は、本日のようにオンライン会議を併用した開催とさせて頂き、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂きたいと思います。また、議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁のウェブサイトに掲載をさせて頂きたいと考えております。
 以上のような取扱いとさせて頂きたいのですが、皆様方、そういうこととさせて頂くということで御了解頂けますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】
 どうもありがとうございます。お手を挙げて頂いたり、ありがとうございます。それでは、御異議がないということで御承認とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

 後ほど事務局からも説明がある予定なのですが、このワーキング・グループは、お手元の資料1にあります大臣からの諮問を受けて設置されたものであります。お手元の資料1を御覧頂きますと、2つ目の丸になるのですが、ちょっと読み上げるような形で恐縮ですが、2つ目の丸で、「スタートアップや事業承継・再生企業等への円滑な資金供給を促す観点から、事業性に着目した融資実務のあり方も視野に入れつつ、事業全体を担保に金融機関から成長資金等を調達できる制度について検討を行うこと」、これが大臣からの諮問でございます。

 皆様方から御意見を頂きつつ、幅広い観点から議論を進めて頂ければと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。それでは、次に、事務局から、メンバーの皆様の御紹介をお願いします。大来さん、よろしくお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。信用制度参事官の大来です。よろしくお願いいたします。

 メンバーの皆様を御紹介いたします。
 資料2のメンバー等名簿を順に、伊藤麻美様、井上聡様、大澤加奈子様、大西正一郎様、沖野眞已様、倉林陽様、志甫治宣様、菅野百合様、堀内秀晃様、水町勇一郎様、村上陽子様、安井暢高様、山内清行様でございます。また、本日は御欠席ですが、星岳雄様、山本和彦様にもメンバーをお引受け頂いております。

 オブザーバーの皆様につきましては、メンバー等名簿をもって御紹介に代えさせて頂きます。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に移ります。本日でございますが、まず事務局から、このワーキング・グループの設置の趣旨や現状の融資制度の課題、そして、新しい担保制度に係る論点などについて説明をして頂きます。

 続きまして、PwCアドバイザリー合同会社のパートナーでいらっしゃる奥総一郎様から、現在の融資実務から見た課題についてお話をして頂きます。
 
 その後になりますが、株式会社野村総合研究所金融デジタルビジネスリサーチ部シニア研究員の川橋仁美様から海外の融資実務について御説明をして頂きます。
 
 これらが全て済んだ後で、全体についてまとめてメンバーの皆様方から御意見、御質問をお出し頂くという流れで進めさせて頂きたいと思います。
 それでは、まず事務局からの説明をお願いいたします。大来さん、よろしくお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。資料3から御説明させて頂きます。

 3ページを御覧ください。現行融資実務の課題といたしまして、スタートアップや事業承継、再生などの局面にある事業者が行うミドルリスクの資金調達は、依然として課題が見られているところでございます。この点、金融機関が不動産担保や経営者保証等に過度に依存せず、企業の事業性に着目した融資に取り組みやすくなるよう、環境を整備することが重要であると考えられるところでございます。

 4ページ、しかしながら、現行の担保法制の下では、こうした課題を前に課題も見られるところでございます。
現行の担保法制、担保権の対象は、土地や工場等の有形資産が中心となっておりますし、企業価値への貢献を問わず、担保権者が最優先で弁済を受けられるということで、課題といたしまして、スタートアップ等の有形資産に乏しい企業の資金調達に支障が出やすいのではないか、あるいは、融資先の経営改善支援を金融機関等が行うインセンティブが十分に湧かず、貸出先の事業改善・再生の着手がそれより遅れるおそれがあるのではないかといった問題が指摘されております。この点、事業全体に対する事業性に着目したような担保権が仮に新設されれば、無形資産を含む事業の将来性に着目した融資が促進され、例えば、創業・第二創業を容易にし、また、融資先の経営改善支援を行うインセンティブも湧き、経営悪化時の早期支援も実現しやすくなるのではないか、このようなツールの一つとして新しい担保権が寄与できるのではないか、そういうアイデア、考え方が存在するところでございます。

 5ページでございますが、こうした問題意識等を背景といたしまして、各種閣議決定ございますが、3つあるうちの一番上を御覧頂きますと、「金融機関には、不動産担保等によらず、事業価値やその将来性といった事業そのものを評価し、融資することが求められる。スタートアップ等が事業全体を担保に金融機関から成長資金を調達できる制度を創設するため、関連法案を早期に国会に提出することを目指す。」こととされているところでございます。
 
 データ等でございますが、23ページを御覧頂きますと、時価総額に占める無形資産の割合の日米比較を図示してございます。米国市場においては、無形資産に対する評価が大宗を占めるようになってきております一方で、日本市場では依然として有形資産に対する評価の比率が高く、無形資産によるプレミアムが少ない。捉え方によっては、金融市場が不動産などの有形資産に目が行きがちで、無形資産の価値を発見できていないことなどが一因とも考えられるのではないかというデータでございます。
 
 24ページ、経営者保証が外れている新規融資案件の割合、左側のグラフでございますが、民間金融機関で改善傾向にはございますが、依然、足元で3割程度に留まっているという数字がございます。
 
 28ページにお進み頂きまして、そんなこともありまして、企業にアンケートで聞くと、事業性を評価した、担保、保証によらない融資、これを利用しているという声は26%程度にとどまっており、一方で今後希望するかどうかということに対しては、47%ぐらいの企業の方が利用したいと、そのような意見があるところでございます。
 
 資料4に進ませて頂きまして、本日御討議頂きたい事項を記載してございます。

 1ページ目からは「検討の背景」でございまして、資料3と重複する箇所もございますが、第2段落目、スタートアップや事業の成長・承継・再生等の局面にある事業者の場合には、不動産等の有形資産担保や経営者保証等がなければ、資金を調達することが難しい、といった課題が今もなお指摘されているところでございます。
 
 2ページ目にお進み頂きまして、またさらに足元を見ますと、4つ矢羽根がございますが、経済の牽引役となるスタートアップ等の成長企業の支援、経営者の高齢化を含む経済社会構造等の変化に適応して生産性を高めようとする事業者への経営改善、事業転換、事業承継支援、さらに最後ですが、コロナの後、例えば事業再生に取り組もうとする事業者への支援、こうしたものが足元の課題としても強く意識をされているところかと存じます。
 
 したがいまして、3ページ目にお進み頂きまして、「期待される融資実務のあり方」、3ページ目の一番下の辺りでございますが、これらの課題に対応するための選択肢の一つとして、事業性に着目した融資実務を支えるような担保制度を創設してはどうかというアイデアが生まれ、これまでも各方面で議論をされてきたところでございます。
 
 4ページにお進み頂きまして、「事業成長担保権」とこの会議では仮称しておりますが、仮にそうしたものができれば、有形資産を持たない成長企業等でも事業の成長可能性があれば融資が可能になる、融資後についても、金融機関が伴走支援に十分なリソースを投入し、業況の悪化局面においてこれを早めに察知し、経営改善に向けた支援を行うことができる、事業再生局面においても、事業への深い理解に基づき、事業者支援ができるほか、経営者保証が付いている場合と比べて経営改革が着手されやすいといった改善点が期待できるのではないかという考え方を示してございます。
 
 以上を踏まえまして、制度の創設趣旨に係る論点1として、「事業性に着目した融資実務に係る今日的な課題、期待について、足下の情勢に照らし、どのように考えるか。」、論点2として、「事業者の資金調達の選択肢を広げるため、事業者の実態や将来性を理解し、継続的に把握することを金融機関に対して動機付け、事業性に基づく融資を促進できるような新たな選択肢(事業成長担保権)を創設することについて、どのように考えるか。」、論点3として、「事業者の資金調達の選択肢を広げるため、事業者の実態や将来性を理解し、継続的に把握することを金融機関に対して動機付け、事業性に基づく融資を促進できるような新たな選択肢(事業成長担保権)を創設することについて、どのように考えるか。」を示しているところでございます。
 
 5ページ目以降は、事業成長担保制度を創設していく場合の主要な論点について一定の方向性を提起し、御討議を頂く用に供することを考えております。(1)は、設定における論点、その中でも「①担保目的財産」でございます。3段落目辺り、担保権の目的となる「総財産」を担保とすることをベースとしつつ、ただ、この事業成長担保権は、のれん等も対象に含むのが制度趣旨に合致いたしますので、それだけでは足りず、事業活動から生まれる将来キャッシュフローも担保の目的とすることを明確化してはどうかということを示してございます。
 
 6ページに飛んで頂きまして、「②設定者(債務者)」でございますが、設定者は法人に限定することとしつつ、公示制度等との関係を踏まえまして、会社法上の株式会社や持分会社など、まずは営利を目的とする法人であって、商業登記簿において公示がされる者から制度をスタートすることとしてはどうかという方向性を記載させて頂いております。
 
 7ページ、「③担保権者(被担保債権、極度額)」でございます。これも3段落目辺りですが、反復継続する意思が推認される金銭消費貸借契約から生ずる債権を含むことを条件とすることで、担保権者を金融機関等に限定するという考え方と、金融機関等に限定するのではなく、濫用的な取得や行使を防止する体制整備を求める観点から、一定の登録制のようなものを創設するという考え方とを2つ記載してございます。
 「また」のところでございますが、極度額を必須事項とすることは、この担保権の性質上、意義に乏しいと考えられますので、下3分の1辺りですが、事業成長担保権の極度額は、任意設定事項とし、さらに、設定者において必要と認めたときに、事業成長担保権者に対する意思表示により、極度額を定めることができることとしてはどうかという方向性を記載させて頂いております。
 
 9ページに飛んで頂きまして、「④対抗要件(優先関係)」でございますが、これも3段落目辺り、対抗要件については、商業登記簿への登記によって具備するものとしてはどうかという方向性を記載させて頂いているところでございます。
 
 10ページでございますが、2段落目、「このほか」としまして、他の担保権との優先関係については、質権や抵当権、譲渡担保権と同様とすることとしてはどうかという方向性を記載してございます。
 
 11ページ、「⑤経営者保証等の制限」ということで、金融機関が事業者の事業の価値に着目した伴走型の融資を行い、モニタリングすることを通じて、経営者による事業の拡大や承継等のリスクテイク、早期の事業再生等を支えることを目的としておりますので、経営者等の個人保証契約あるいは経営者等の生活に欠くことができない財産に対する担保権設定契約については、基本的には事業成長担保権とは相並び立たないという整理としてはどうかと。ただし、粉飾決算や背信行為などが行われた場合にはその例外とすることとしてはどうかという方向性を記載させて頂いております。
 
 12ページ以降、実行前における担保権の効力や実行手続等について、全部記載したものを席上配付させて頂いておりますが、本日は11ページまでを基本的には御討議の対象にさせて頂ければと考えており、12ページ以降の御紹介については次回の第2回に譲ることといたしまして、本日は省略させて頂きます。
 
 なお、資料5といたしまして、11ページまでの本日御討議頂きたい事項の論点一覧を2枚紙としてお配りしているところですので、御参照ください。
 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 
 続きまして、PwCアドバイザリー合同会社パートナーでいらっしゃる奥総一郎様からお話を伺います。お忙しいところ御参加頂きまして、どうもありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【奥氏】
 よろしくお願いいたします。PwCの奥でございます。

 本日、私が御報告させて頂くのは、この1年間ぐらい、私が大変苦戦をしたLBOファイナンスの再生案件からの教訓、問題意識について共有をさせて頂きたいというものです。その意味で、このワーキング・グループの目的のど真ん中でないお話になる可能性もあり、私がトップバッターで御報告して良いのかという懸念もございます。
 ただ、キャッシュフローを担保に取るという考え方にもとづき事業全体を担保に取るという融資形態は、まさにLBOファイナンスの全資産担保ストラクチャーそのもので、既に日本に山ほど存在しているものです。そして、既に多数存在するストラクチャーに対する制度上の手当てが十分になされていないために先般の案件では大変苦労しました。当該案件は事業再生ADRに代表される私的整理の全員同意を求める枠組みの問題で難しかったのではないかと誤解されている方もいらっしゃるかもしれませんが、実は事業再生ADRや簡易再生等、日本の事業再生フレームワーク自体は非常にしっかりしていて、我々実務家は安定感のあるプロセスだと思っており、問題の9割方は、この全資産担保に係る法的手当が不十分であることに起因するものであったというのが偽らざる実感でした。
 従いまして、本件の教訓が何らかの御参考になればということでお時間を頂戴することをお許しください。
 
 では、資料の3ページに移って頂けますでしょうか。もともとLBOファイナンスはアメリカで開発されたストラクチャーです。しかし担保に対する概念が日本の場合、個別資産を売却して回収するために取得するものである一方で、LBOファイナンスの全資産担保は全く異なる概念であることがマーケットで十分に共有されないままに導入されていることが現在の日本のLBOファイナンスの最大の問題ではないかと思います。
 
 別紙1の1ページ目項番の2をご覧ください。この辺りは今日御参加のプロの先生方には釈迦に説法の話になろうかと思いますが、アメリカにおける全資産担保というのは、資産を個別に登記していくものの、担保は事業から生み出されるキャッシュフローであり、個別資産を売却して回収しない、すなわち個別資産は売りませんという意思表示であります。これは、かつてチャプター11申立時に金融債権者が裁判所に対して、個別資産をばら売りしない、キャッシュフローしか見ないから債権放棄をするときの債務超過額の計算を純資産価値ではなく事業価値で出してくれと交渉する際に全資産担保を取得しているとその主張が通りやすくなったので広く使われるようになったと言われています。当然、事業価値で計算した方が価値が高くなる可能性が高いから、そちらで評価して債権放棄額を減らしてほしいという一つの交渉材料としてこういうストラクチャーが編み出された訳です。ですから、全資産担保を取ることは、個別資産は売らない、少なくとも営業用資産は売らない代わり、事業から流れ出るキャッシュフローのウォーターフォールの順番は厳格に規定して、その優先劣後を決めていくという考え方になります。
 一方日本においては、キャッシュフローの絶対優先ルールは必ずしも守られません。私的整理で上位債権者が債権カットしても、劣後する株式をワイプアウトせずに上場を維持させる実務に代表されるように、キャッシュフローの絶対優先ルールはなかなか日本になじまないのではないかということで、私個人としては長らく全資産担保導入にはネガティブでした。
 ところが、3ページに戻ってください。近年、日本でも全資産担保を含むLBOファイナンスが多数組成されており、しかも全資産担保に対する考え方が債権者間で共通認識が醸成されていない節がございます。したがって、結果として債務者が債務超過に陥ったときに、債権者がどう動くべきかについてコンセンサスが取れていないために再生着手が遅れるという非常に悩ましい事態が起こったわけです。

 4ページ、お願いいたします。したがいまして、何らか、まずLBOファイナンスのルールを明確化する必要があると思っております。これは全資産担保というルールの共通概念を構築することにつながります。全資産担保の最終手段としてのエグジットは、債権者にとっては、担保実行により事業全体を第三者に事業を売却するしかありません。アメリカでは、債務者(および支配株主であるファンド等)が自ら法的整理を申し立てる権利行使を行うケースが日本よりも一般的で、それによって債権者との間に緊張関係が生まれて自主再建を含めて双方にとって許容可能なゴールに収斂する力学が働くのですが、日本のように債務者の債権者に対する善管注意義務履行の意識が相対的に低いために、債務者が債権者の損失を抑えるべく自ら法的整理を申立てるインセンティブが弱く、また商業銀行がローン・トゥー・オウンのような考え方を取り入れづらい国では、最終的には事業を売却できる体制を構築しておかないといけない。実際にそれを売るためというよりも健全なレンダーガバナンスが機能する環境を整える必要があるからです。ですから、その実行蓋然性を確保するために、債務超過の定義・算定手法の明確化、典型的なLBOストラクチャーであるファンドが保有する事業の場合、債務超過になったときにはウォールを立てて株主(ファンドから派遣された取締役等)に出ていってもらうルールの明確化、あるいは、担保実行のときの債権者への情報提供義務の明確化といったルール規定が重要になると考えるものです。
 中でも一番重要なのは、再生プロセスを走らせる時間を確保するために不可欠なプレDIPファイナンスの優先性、すなわち万一法的整理に移行した場合でも実質的に共益債権と同等の優先権を得られることを明確化することだと思います。今回の案件でも、それが不透明だったがゆえにプレDIPファイナンスの協議が非常に難航し、これが本件最大の難関だったといっても過言ではありません。そしてキャッシュフローを担保にするわけですから、やはり債権者間協定で定められたキャッシュ獲得の優先劣後順位が必ず維持されることが重要になります。万一、法的整理に移行することでこの協定がどう扱われるか分からないとなると、ファイナンス・ストラクチャー自体が崩壊してしまうからです。
 したがいまして、担保法改正に伴い、事業全体に対する担保権とその概念規定が明確に制度化されることが、LBOが今後存続していくための生命線になると強く感じる次第でございます。また、ローン契約内容も、例えばJSLAが中心となってきちんと標準化するとか、あるいは債権者も、適格機関投資家等の信頼できる債権者の方に絞るとか、そうした保守的な前提を置くことによって、法的整理時でも裁判所がこれを尊重する予見を得られることが極めて重要です。これらはすべて簡単ではないかもしれませんが、既に存在するLBOファイナンスのサステナブルな存続を展望すれば、この手当ては待ったなしだと思っております。

 その次の6ページに行って頂けますでしょうか。少し論点がずれるように見えますが、先ほどもご説明した通り、このプレDIPファイナンス優先化の問題は全資産担保と不可分の関係にあります。全資産担保を取ってしまうと、その後、事業が窮境に陥ったときの資金供与が極端に難しくなりますが、その原因は、やはりプレDIPファイナンスの優先性が確保できないことに起因しています。日本の場合は、そもそも破綻寸前企業に対する融資のハードルが極めて高く、一般企業の善管注意義務よりも銀行の取締役の義務の方が重いというのが最高裁意見です。したがって、事業存続のための融資であっても、それが法的整理時に優先弁済されるためには個別担保を取得していることが絶対条件というのが今の日本の実務、判例です。
 繰り返し申し上げているとおり、全資産担保は資産を売却せず、資産を全部一塊と見て、キャッシュフローしか担保と見ないという宣言です。しかしプレDIPファイナンスに個別資産を担保に取らなければならないという日本の実務慣行は、全資産担保の概念と完全に相反します。このような状況で、本件においてもプレDIPファイナンスを獲得するために、最終的には個別に担保を提供して優先性を確保するという手法を取らざるを得なくなった。それによって、本来全資産担保ストラクチャーが想定していない債権者間の担保権の付け替えという作業をしなければいけなくなった訳です。これらは欧米のLBOファイナンス契約が想定していない事態である一方で、本件ファイナンス契約は日本特有の法制度を考慮しないまま欧米のLBOファイナンスの標準契約内容を踏襲していたため、セキュリティーエージェントからは担保権を付け替えるためには最低でも90%の債権者同意を求められました。つまり、簡易再生で60%の同意が取れれば再生計画が成立するにもかかわらず、つなぎ資金を得るための担保の付け替えの契約規定に縛られて、最後まで90%以上の同意が必要になるという非常に悩ましい状況に追い込まれたのです。
 しかも、欧米の全資産担保は個別に資産を売らないという合意なので、一々個別担保物件を登記して第三者対抗要件を具備しなくても、債権者と債務者の合意で無駄なコストを省くことができる規定があった。しかしそうした考え方の共通認識が醸成されないままに、その形式だけが日本の契約に盛り込まれてしまったがゆえに、いざ問題が顕在化したときに、これは登記してないから担保ではないとか、いやそういう問題ではないとか、急いで第三者対抗要件を具備しなければ保全が確保できない、でもイタリア等の海外資産にどうやって対抗要件を具備したらよいのかといった、本来の全資産担保の本質からかけ離れた非常に不毛な議論が起こってしまい、結局海外資産を含めて登記、価値評価を行うことになり、そのための登記費用や評価コスト等が膨大にかかって、債権者にも債務者にも利することのない事態に陥ったものです。
 余談になりますが、本件は特にLBOファイナンスに詳しい海外債権者にとっては、当然のことながらどうして全資産担保でこのような全資産担保概念と相反する担保付け替えが発生するのか全く理解できず、日本の法制度、実務慣行の特殊性を理解して頂き、同意取得するのは困難を極めました。

 7ページのAppendixに行って頂ければと思うのですが、そもそもプレDIPファイナンスを共益債権化するのは、債権者間の公平性等を勘案すれば、伝統的なバイラテラル融資が数多く残っている一般コーポレートファイナンスでは極めて難しい話です。ただ、日本においても、全資産担保LBOファイナンスに限れば、債権者間の公平性は確保されており、また事業性維持のために商取引債権や労働債権が金融債権対比で優先的に保護されることが一般的ということもあって、ファイナンスに優先性を認める要件を満たす数少ないケースになると思います。繰り返しになりますが、全資産担保ストラクチャー案件の事業再生時にプレDIPファイナンスが供与できないことは死活問題となりますのでここについても制度上、何らかの担保をして頂くことで、再生事業の存続に資する形にして頂きたいと切に願うものでございます。
 
 時間が超過して申し訳ございませんが、私からの発表は以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 奥様、どうもありがとうございました。
 続きまして、野村総合研究所金融デジタルビジネスリサーチ部シニア研究員でいらっしゃる川橋仁美様から御説明をお願いいたします。お忙しいところ、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

【川橋氏】
 よろしくお願いします。ただいま御紹介にあずかりました野村総合研究所の川橋でございます。
本日は、昨年度、金融庁の委託を受けて実施した米国調査の結果について御説明いたします。
 
 スライドの1ページの表にある通り、米国では全資産担保権は、多様な融資商品に用いられています。向かって左端にあるクレジットラインは、米国銀行の伝統的な融資商品で、運転資金の提供を目的としています。その隣のAsset Based Lendingは、売掛金、在庫を担保とした融資です。なおDIPファイナンスは、その一形態と考えられています。そして、ベンチャーデット、これはベンチャー企業に向けた運転資金の提供です。そして先ほど奥様から御説明がございました、レバレッジド・ファイナンス。これは、バイアウト、買収・合併、事業売却を目的とした融資です。このように全資産担保権は、様々な融資商品に用いられています。
 違いは、各商品が中核とする担保資産にあります。例えば、Asset Based Lendingは、売掛金と在庫、ベンチャーデットでは知的所有権が重要な担保としてみなされています。また、レバレッジド・ファイナンスでは、借手が保有する株式を担保として徴求することが一般的です。
 
 今回は、このうち、米国の全ての商業銀行が提供しているクレジットラインという融資商品を対象として調査を行いました。このクレジットラインという商品は、米国ではキャッシュフローレンディングと呼ばれています。
米銀が審査とモニタリングにおいて重視している指標は、業種を問わらず事業キャッシュフローとレバレッジです。なかでも事業キャッシュフローに成長性と安定性があるかどうかが最も重要な判断基準となっています。
 米銀が事業キャッシュフローを重視する理由は、事業キャッシュフローが第1の返済原資であることにあります。担保は、事業キャッシュフローに問題が生じた場合の返済原資という位置づけになりますので、事業キャッシュフローに問題が生じるまでは、担保の評価は、財務諸表上で担保の存在と価値を確認することが中心になります。

 次に、全資産担保のことについてですが、基本的に全資産担保を設定する際には、銀行は第1順位担保権を取得することが一般的になっています。また契約上、後順位担保権の設定は制限されています。銀行が第1順位担保権にこだわる理由は、担保資産に対する銀行の権利を確実なものとし、担保権の実行を円滑に実施することにあります。なお担保権者の数が多くなると問題債権処理プロセスにおける借手企業の倒産確率が高まるという経験則も、銀行が後順位担保権の設定を制限する理由の1つとなっています。それでは、借手が他社から借入れを望む場合はどうするか。融資契約書には、他社からファイナンスを受ける場合や後順位担保権を設定する場合は、銀行から承諾を得る必要があることが明記されています。承諾を得た場合は、担保権者間で話合いを行い、権利関係について合意を得た上で後順位担保権を設定します。
 
 続きまして、モニタリングから担保権実行までの流れと銀行の対応についてですが、基本的な対応は邦銀と大きく変わりません。米銀に特徴的な点の1つは、延滞発生前に事業キャッシュフローの脆弱性を検知することを最重要視していることです。もう1つは、中小企業取引の場合は、裁判所外処理が好まれていることです。
 米銀は、90年代の不良債権問題と先の金融危機という2回の大きなクレジット危機を経験して、基本的に問題債権の発生を早期に検知して、借手の事業継続を確実なものとすることが、借手にとっても銀行にとっても一番良いことであるという考えを持っています。インタビューした全ての米銀が、延滞したらどうしますかという問に対して、延滞してから対応したのでは遅過ぎると回答しました。モニタリングでは、延滞発生前に事業キャッシュフローの脆弱性を検知することに力点が置かれています。またこのためには、借手と良好な関係を構築・維持することが重要であるとの認識を持っています。なおその責任は、銀行のリレーションシップ・マネジャー(以下、融資担当者)にあると考えられています。

 次に、中小企業取引において、裁判所外で問題債権を処理することが好まれている理由ですが、1つは、裁判所を介した処理に比べて費用が低いことにあります。更に、迅速かつ柔軟な対応や処理ができることです。先ほど、米銀は、第1順位担保権にこだわっているという話をしましたが、その理由は、この3点にあります。

 2つ目の理由は、日本と同様に、裁判所を介した場合、それを理由に取引先が取引を断ってくることがあり、借手の事業継続が困難になることにあります。

 3つ目は、これは非常に日本的だなと感じた点ですが、借手に経営上の問題が生じたときに、借手自身やその関係者、例えば、家族、親戚や取引先が問題解決のために担保を差し入れる、追加資金を提供してくれるなど銀行に非常に協力的であることにあります。

 最後に、日本の銀行と異なると感じた点について、米銀では、融資担当者が非常に専門性の高い職種として位置づけられていることです。融資担当者の役割は、大きく3つあります。1つ目は借手の金融ニーズに対応すること、これは営業です。2つ目は、借手とのリレーションシップを構築し、維持すること。3つ目は、借手の経営上の問題を早期に検知することです。3つ目の融資担当者のリスクマネジャーとしての役割は、金融危機以降、大きく高まりました。

 次に融資担当者のキャリアパスについてですが、融資担当者の望ましいキャリアパスは、審査業務を何年か経験して融資担当者になることと考えられています。このためある程度の年齢にならないと融資担当者になれないというケースもあります。これは、融資担当者が企業の経営者や財務・経理担当責任者に対する立場にあることにあります。つまり財務アドバイザーとしての役割が重視されているということです。財務アドバイスができるので、効果的なクロスセルができると考えられています。

 また、過去に2回のクレジット危機を経験し、融資担当者の評価基準も量と質の両面をバランスよくカバーしたものに変化しています。スライドの8ページにあるとおり、融資担当者は、営業だけではなく、審査、リレーションシップマネジメント、ポートフォリオマネジメント、チームワークやリーダーシップなど、多様な評価基準に基づいて評価されています。特に金融危機以降は、すぐに他行に借り換えてしまうお客様ではなく、長く取引ができるお客様を取り込むインセンティブが導入されるようになったとのことでした。なお、御参考までにスライドの9ページに今回の米国調査の概要を添付しましたので、御覧ください。
 私からは、以上です。

【神田座長】
 川橋さん、どうもありがとうございました。

 それでは、本日、今までの説明を踏まえて、メンバーの皆様方に討議をお願いしたいと思います。なお、オブザーバーの方々には、メンバーの皆様方から御発言頂いた後で、もし時間があれば時間を設けたいと思っております。主に、先ほど御説明させて頂きましたが、事務局からの説明資料4で言いますと、論点5まで、11ページを念頭に置いております。それを資料5としても用意させて頂いております。ただ、本日は初めての会合でございますので、諮問事項や本ワーキング・グループの検討課題をめぐって幅広い観点から御意見を頂くということにさせて頂ければと思います。もちろん説明についての御質問がございましたら、併せて御発言頂ければと思います。なお、本日御欠席の星委員からは、資料8の意見書をお預かりしておりますので、適宜御覧頂ければと思います。

 御発言頂ける場合は、オンライン会議システムのチャット欄に全員に宛てて御自身のお名前を入力して送信をお願いいたします。発言希望と、お名前を入れて頂ければと存じます。それを確認させて頂き、私から御指名をさせて頂きます。そうしましたら、御自身のお名前をおっしゃって頂いた上、御発言頂ければと思います。
 どなたからでもお願いしたいのですが、本日は先に所用で途中退席されると伺っております委員の方が何人かいらっしゃいます。まず、伊藤社長がそろそろ退室されると伺っているのですが、もし御発言があれば、伊藤社長、お願いいたします。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。日本電鍍工業の伊藤でございます。分かりやすい説明、ありがとうございました。

 率直に言うと私は、事業成長担保権に関しては賛成です。理由は、世の中の流れが変わってきているにもかかわらず、お金を借りなければなかなか成長できなかったり、新たなステップ、投資をすることで成長を促すきっかけづくりができない企業にとって、必ず土地でなければいけないとか有形資産でなければいけないというと、チャンスを逃してしまうことが多々あると思いますし、そろそろコロナも落ち着き始めて、皆さん海外などに行かれて気づかれると思いますけど、日本がどれだけいろんな意味で遅れているかというのを改めて感じる昨今なので、本当にグローバル市場との闘いであったり世の中の価値観が変わってくる中で、過去のもので大切にすべきこともたくさんあるのかもしれませんが、やはりどんどん、どんどん変化に対応して、日本企業が競争力をつけるような環境づくり、環境整備がとても大切だと思います。
 ただし、全ての企業を救うのではなく、救うべき企業、救わなければいけない業種があると思うのですが、やはり努力している企業さんと、先ほど川橋さんの方でも御説明がありましたように、アメリカの銀行のように、融資担当者との良いパートナーシップ、お互い分かり合った上で、こういうところは即座に動かなければいけないと、本当にスピードある対応ができるような仕組みづくり、そういう意味では、奥様の説明もありましたけど、まだまだ日本の中では課題がたくさんあるので、今回発言されている専門家の方たちと一緒に丁寧に物事を進めて、より良い日本の成長のために法整備ができればと思っております。以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、チャットを頂いている順番で、次に水町委員、どうぞお願いいたします。

【水町委員】
 ありがとうございます。労働法を専門としております水町と申します。
 労働法の観点から、幾つか注意すべき点についてお話をさせて頂ければと思います。
 
 日本で、こういう事業成長担保権という制度を設けること自体については、中小企業、スタートアップ企業、さらにはそこで働く方々にとっても望ましいのではないかと私は思っております。

 ただし、労働法の観点から大きく3つ、注意すべき点を申し上げさせて頂きたいと思います。事務局の論点で①から⑩、次回の分も含まれていますが、次回欠席なので、次回の分も含めて3点お話しさせて頂きたいと思います。

 まず1つ目、①の担保目的財産のところですが、担保目的財産となる総財産の中に、契約上の地位というのがあります。この契約上の地位の中に恐らく、労働者の労働契約上の地位や労働組合の労働協約上の地位も含まれることになると思われますが、この担保の対象となる労働者や労働組合にそれぞれの地位が含まれていると、事業成長担保権の中に含まれていることを認識させるための手続が必要ではないか。その制度設計のあり方はいろいろあり得ると思いますが、これがまず第1点。
 
 2点目が、論点⑥、次回の範囲になりますが、⑥の設定者の権限、実行する前に設定者がどこまで処分ができるかという権限についてですが、この点について、通常の事業の範囲内であれば処分権限ありという考え方が示されていますが、その通常の事業の範囲をめぐって、担保権者とあらかじめ取決めがなされたり、実際に協議をして処分をすることがあると思います。そういう場合に、その対象が場合によっては人件費、賃金原資であったり、解雇、労働契約上の地位の処分などが含まれることもあると思いますが、そういう労働者の権利、利益に関わるような場合には、労働者にそのこと、設定者と担保権者の間の取決めや協議の内容について認識させる手続を設けることが必要かどうか検討することが必要ではないかというのが2点目。
 
 3点目が、実行手続、これは論点だと⑧になるかと思いますが、実行手続の基本的性格についてですが、原則として一体としての換価ということになるかと思いますが、原則として一体としての換価のときに、事業譲渡、特定承継という考え方が示されています。一体としての換価の場合、仮に特定承継、事業譲渡という形式が取られるとしても、承継を望む労働者が移転、承継の対象から外されるということは、労働者自身が承継されたくない場合には承継されないことになると思いますが、承継を望んでいる労働者が承継の対象から外されることはないのかどうかというのが1つと、また、実際に裁判所の許可を得て個別換価を行う場合には、実際に事業や労働者の切り分けが行われることが想定されますが、その際には、会社分割制度をかつて創設する際に検討されたような労働者の不承継の不利益や承継の不利益などについて、どのようなケアをすることが考えられるか、恣意的な選別がなされないような一定のルールづくりを考えることが必要ではないかという点が労働法の観点から留意すべき3点です。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、山内委員、どうぞお願いいたします。

【山内委員】
 日本商工会議所の山内でございます。
 私は、金融の専門家ではなく、産業経済を担当し、日々、事業者の経営支援に協力する立場から、事業者からの生の声をベースに、事業者サイドからの意見を申し上げることが期待されていると思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、制度趣旨につきまして意見いたします。現下、弊所におきましては、毎月景況調査を実施しておりますが、コロナ禍、物価高、深刻な人手不足に伴う賃上げの影響もあり、企業は収益が圧迫された非常に厳しい状況にあります。このような状況の中でも、業績の良い企業と悪い企業がはっきり分かれている状況であります。先ほど伊藤様からもご発言ありましたように、本当に伸びゆく可能性がある企業については徹底的に伸ばしていくことが必要であると思っております。今まで業種・業態変化に取り組まなくとも何とか対応はできていました。しかし、もはや新しい商品やサービスの開発、新事業のドメイン再構築といったものに挑戦しなければ生き残れないという転換期を迎えております。このような状況において、新しい時代の担い手でもあるスタートアップや技術のある中小企業などの成長のためのニーズに応えるような金融支援の選択肢は多い方が望ましいところです。そのため、ぜひ金融支援という面におきましても、現在における環境変化に合わせた形で対応頂ければと思っています。ミドルリスクの資金調達手段につきまして、課題であるいうことは御指摘のとおりかと思います。
 今回、経営者保証や不動産に過度に依存しない形で、知財、技術、ノウハウ、将来の成長性キャッシュフローなどに基づくような事業性評価を通した融資には期待をしたいところでございます。ただ、これまでこのような制度が存在していないことには理由があることは十分理解しております。ニアリーイコールの制度である知財金融も、なかなか価値評価がされないということで進んでおらず、大変難しい課題であることでもございます。ぜひとも事業者と金融機関の双方が使いやすいような形に、専門家の皆様の御意見も聞きながら、制度構築をお願いしたいと思っております。また、ほかの担保権にもないような形の、過度な規定がされてしまうと、使いづらくもなってしまうので、この点も十分配慮して対応頂きたいと思っております。
 また、金融機関との連携につきましては、先ほど奥様からの御意見が大変参考になりました。事業者とのリレーションシップも含めて、金融機関によるモニタリングをしっかりやっていくことは大事であると思っております。また、今回、まずはスタートアップにおける創業局面や成長承継局面での活用を想定しての対応が大事になると思っております。スタートアップからも、エクイティだけではなく、ベンチャーデットで開始の資金を持ちたいという声も聞いております。今回、論点1等でも問題提起がされていますが、担保目的財産の範囲が、総財産ということになっています。もともとアメリカで活用されているような形での制度に非常に可能性を感じてご説明を聞いておりました。やはり、事業成長担保権という名前でもありますので、価値ある事業を残すという観点から、切り分けがなかなか難しいことは十分承知しておりますが、事業単位での担保権設定についての企業のニーズに即した形での議論も排除せずに、御議論頂きたいと思います。
 また、対抗要件の商業登記につきましては、企業からも風評リスクを懸念する声も非常に多くあります。今ある制度を使っていくのは非常にリーズナブルだとは思うのですが、このような観点から、実際に使われる制度とするために、公示のあり方についても慎重な御検討をお願いいたしたいと思っております。私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、安井委員、どうぞお願いいたします。

【安井委員】
 ありがとうございます。
 私は、経団連でスタートアップの課題を議論させて頂いておりまして、その立場で述べさせて頂きます。

 創設趣旨全体についてなんですが、経団連でも今年の3月に「スタートアップ躍進ビジョン」というものを出させて頂いて、事業成長担保権を含むベンチャーデットの拡大には期待をしております。議論に参加しているほかの事業会社ですとかVCなどと、どのように活用できるかなという議論をする中でも、例えば、ある程度事業形態が固まったスタートアップがさらに成長していくとか、資本調達のシリーズの間で、もう少し頑張って経営指標を上げてから次の資本調達をしたいときに投資に使うとか、いろんなアイデアが出てきておりまして、期待がされているところかと思っております。熱心に検討して頂いている商業銀行さんもあると聞いておりまして、もちろん丁寧な議論が前提ではありますが、早期に制度化をして、良い活用事例を作っていくことをやっていきたいと思っております。
 全体に言いますと、成長企業をさらに成長させるという観点からは、できれば投資局面がずっと続いているとか、場合によっては赤字でも投資を続けるといった企業も、成長の期待がある場合には使っていけると、より意義が大きな制度であったり実務になっていくのかなと思っております。
 
 以上の観点から、今日の論点について幾つか申し上げますと、1-2の担保権の設定範囲というところは、この方向がよろしいのかなとは思っておるのですが、スタートアップを前提にしますと、事業の状況ですとか、事業の内容が変わっていくことは大きくあり得るかなと思いますので、そこは条件設定やどれぐらい変わり得るのかということを、使われる事業者さんと金融機関の間で上手く認識が共有できていると良いのかなと思っております。
 論点の3、4の主に関係なのですが、成長期のスタートアップというのを一つ前提としますと、コーポレート機能があまり充実してない社は結構多いものですから、手続負担があまり重くならないように整理をして頂けるとありがたいと思っております。会社運営のリソースといいますか、余力が限られている中で手続負担が重いというのは、頑張ればできますねということではなくて、使う、使わないを分ける決定的な要素になり得ると思っております。今回の点で言うと、例えば3と4が主な関係なのですが、今後の検討される論点との関係も含めて、既存の融資実務や担保権と比べて、あまり重くならないとか、特定の手段、絶対やらなければいけないということではないのですが、手続負担が使われる、使われないを分けるということを前提に御検討頂けると幸いと思っております。
 
 論点5の制限については、制度の創設の趣旨に沿ったものかなと思っております。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、倉林委員、どうぞお願いいたします。

【倉林委員】
 よろしくお願いします。DNX Venturesの倉林と申します。
日本とアメリカでアーリーステージのBtoBのスタートアップに投資をしておりますので、そうした立場から少しコメントさせて頂ければと思っております。

 今回の取組に関しまして、私も大変素晴らしい方向性だなとは思っておりまして、ぜひこうした形で経営者の調達手段が広がるということが起これば良いなと思っておりますし、無形資産のお話がありましたが、世界は完全にデジタルの時代に移っていて、ソフトウエアとインターネットのGAFAと言われるような会社がBtoBにおいてはSalesforceみたいな会社が事業を拡大する中で、そうしたデジタル時代に即した融資というか、そうしたものが増えてくるべきかと思いますし、金融事業者様の方での関係づくりとか理解というところでも、もちろんまだ課題がある、新しいビジネスモデルなので、そこを理解しながら、融資先の状況を判断していくというところで、まだまだ改善の余地はあろうかと思いますが、現在、我々のファンドに御出資頂いているみずほ銀行様との取組を少しお話しさせて頂くと、元テクノロジー業界の方を採用されていて、そうした方がテクノロジースタートアップの評価を御担当されて、我々、LP出資しているVCと定例を持って、それぞれの会社をどのように我々が見ているのかというのも聞いて頂いたりしながら御判断されているかなと思いますので、こうした取組を通じて理解が深まっていくことがあれば良いなと思っています。
 
 1点だけ、今回の趣旨に大賛成した上で、少しだけ気になった点というところで、まず大きいところでは、やはりダイリューションを防止できるところ。これは経営者にとっても大変素晴らしい部分で、そうした手段があれば良いということは先ほど申し上げたとおりなのですが、一方で、日本のスタートアップエコシステムを全体で見ると、やっぱり創業者の持分というのが、上場時の単純比較だけで見ても、米国の2倍以上持ったままエグジットまで行く。これは日本に非常に上場しやすいといいますか、グロース市場がありまして、割とスモールキャップ、小さな時価総額でも上場できてしまう、そうしたエコシステムがあるので、経営者の持分が相応に多い状態で上がることができると。その後、しっかり成長するかというところにもこの話が絡むのですが、結果から見ると、なかなかそうした大きいテクノロジー企業が生まれてこないというところがあるのですが、これは持分というものが意味するところが、特にスタートアップの段階において日米で異なりまして、アメリカは創業者が持分を持っていたとしても、VCからファイナンスを受けるときに、主要な意思決定機構がボードミーティングになるということで、かつそのボードミーティングに、シリーズAの段階であっても外部が過半数を占めるケースが多いので、そうした意味でガバナンスがかなり効いているということがあります。
 
 ベンチャーキャピタルの仕事の大きなものの一つは、やはり経営者を交代させることと言われているぐらい、しっかり経営者の能力についてモニタリングされている状態、一方で日本ですと会社法というものがあって、創業者の持分が多いので、基本的には経営者が意思決定できるという状態が今も続いているところがあり、これが一つ、日本のテクノロジースタートアップの成長の阻害要因になっているのではないかと思っています。なので、使い方次第かなとは思うのですが、経営者のダイリューション防止というところが前に出てしまうと、スタートアップエコシステムの発展に少しネガティブな可能性もあり得るかもしれないところが少し心配な点というところになります。
 
 もう1点申し上げると、これは質問という形なのですが、論点1-2のところ、VCの立場からすると、M&Aとかプライベートでもマージャーがあるときに、これが担保権保有者の合意がなければできないという座組みですと、少し売却の選択肢を狭めるものになりやしないかというところは、VCからすると気になるところですが、こちらは米国の実務でも、こうした形で確認が行われるということであれば、上手くやっているのだろうなと思いますので、そこだけ少し気になりましたという、小さい質問ですが付け加えさせて頂きます。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。質問が最後にありましたけど、どうしましょうか。
 事務局から後でまとめてお答えをさせて頂くということにさせて頂きます。

【倉林委員】
 よろしくお願いします。

【神田座長】
 次に、大西委員、どうぞお願いいたします。

【大西委員】
 フロンティア・マネジメントの大西と申します。弁護士でもあります。
 私は、この1年間、法制審議会の委員にもなって、この件を担当させて頂きました。
 
 その中でまず、この事業成長担保権というのは、特に製造業よりもサービス業が中心になっていく時代において、その時代に則した担保権であり、そういう意味では導入の意義が非常に大きいと思っております。特に、先ほどお話もありましたように、ベンチャー、事業承継もしくは成長支援の場合、資産が乏しい企業もある中で、金融をきちんと得られるということは企業価値向上にも資するという意味から非常に意義が大きいと思っております。
 
 そのような中で、やはりポイントとして気になる点ですが、1つ目は金融機関が事業キャッシュフローに着目した担保ということはありつつも、その価値をきちんと評価する実務であり、これが定着しないと、事業成長担保権で全資産は押さえたものの、融資が期待通りに出てこないという事態になりかねないので、こういう事態にならないよう、評価実務を定着させることは大変重要であると思います。
 
 2つ目は、先ほどの米国の事例にもありましたとおり、これによって、必ずしも倒産に至らないうちに、業績が厳しい企業について、早期のM&A、事業譲渡によって破綻に至らないように早期の再生が進む、という意義であり、これも非常に大きい意義であると思っております。
 
 論点につきまして、1つだけコメントさせて頂きます。論点1から5までについては概ね賛成なのですが、論点3-1、担保権者の対象の資格要件のあり方でございますが、これは事業成長担保権が濫用的な扱いの危険を伴うものですので、そのような濫用の可能性がない金融機関に限定すべきかと思います。
 
 ただ一方で、事業成長担保権が根担保だとしても、確定後、譲渡により随伴するとを考えると、通常金融機関が債権を譲渡するような先、例えば、サービサーやファンド等の適格な金融機関、又は投資家にまで対象を広げるべき必要性はあるかと思います。そういう意味では、担保権者の対象を制限はするものの、上記のような趣旨により一定の範囲で金融機関以外にも資格要件を認めるべきと考えます。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、村上委員、どうぞお願いいたします。

【村上委員】
 ありがとうございます。労働団体、連合の村上でございます。よろしくお願いいたします。
 私も、大西委員同様、法務省の担保法制部会に参加をしておりまして、そちらでも申し上げている点を、まず総論的な点で申し上げたいと思います。
 
 中小企業の資金需要のニーズや仕組みの必要性は十分認識をしているところでございますが、事業担保権にしても事業成長担保権にいたしましても、基本的に消極的、否定的な意見を申し上げてまいりました。それはなぜかと申し上げれば、労働契約や労働協約や労使関係はどうなっていくのか、また、労働債権は確保されていくのかということに対しての懸念があるからでございます。今後もそうした点を中心に申し上げていきたいと思っております。
 
 今回、第1回の資料を拝見いたしまして、事業成長担保において従業員がどのように位置づけられているのかという点が不明でございまして、ステークホルダーとしての労働者からどのようにして理解と協力、納得を得ていくという点がやや薄いのではないかということを非常に残念だと考えております。多くの皆さんに関わる点でございますので、ぜひ丁寧な議論をして頂きたいと思います。丁寧な議論というのは、回数を重ねることはもちろんでございますが、期間にしましても、ぜひ御配慮頂きたいと思います。
 
 また、今後の運営に関してのリクエストでございますが、本日、奥様や川橋様からヒアリングをさせて頂き、大変理解が深まって、有益な、ありがたい機会でございました。従業員サイド、あるいは労働側の弁護士の先生方にも、課題などについてお示し頂くような機会をぜひ作って頂ければと思っております。お願いいたします。
 
 次に、各論点についてございますが、論点1のところで、先ほど申し上げましたように、目的財産の範囲が総財産にかかっていくと、労働債権、労働契約が含まれてくるということで、その点を大変心配しております。また、期中管理において、「事業の状況について金融機関と目線を合わせつつ、必要に応じて事業計画等を見直す」ということ、また「目線をしつつ、必要に応じて追加の融資や支援を提案、実行」とも書かれております。この目線を合わせつつという点でありますが、融資を受ける設定者が、担保権者と対等な立場で目線を合わせることができるのかという点については疑問もございます。

 先ほど、川橋様からの例示にもございましたように、金融機関の皆さんと経営者の皆さんが同じような方向を向いてやっていけることが大変重要だと思っております。そういう関係ができていればよろしいのかもしれませんが、できないと、担保権者による強い関与というものがそこに働く労働者にも及ぶということで、担保権者に強力な担保権を付与することのコントロールをどのように考えていくのか、力関係をどのようにコントロールしていくのかもぜひ検討頂きたいと思っております。

 次に、論点3についてでございます。論点3は設定時の話でありますが、資料を拝見すると、事業者と金融機関の関係が関係者と認識されているようですが、先ほども申し上げましたが、設定時あるいは実行時においても、労働者、従業員の協力が極めて重要だということを考えれば、労働組合への情報提供や説明及び協議というものは必須だと考えております。労働者が理解して納得して働くためにも、労働者への説明や労使協議の手続はぜひ必要事項として頂きたいと考えております。

 また、論点3-1の担保権者をどのように限定するのかということについてでございます。ここは私ども、専門的な知見があるわけではございませんが、濫用的な設定・行使がされかねないことを非常に心配しておりまして、そうした点から、貸金業者、投資ファンド等の法人等も念頭に置かれているということについては、十分な配慮・検討が必要と思っております。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、大澤委員、どうぞお願いいたします。

【大澤委員】
 大澤でございます。
 私も、大西委員、村上委員と同様、法制審におきまして、この議論につきまして検討を重ねてまいりまして、今般、こちらの委員としても御意見を申し上げたいと思っております。
 
 まず、私はどちらかといいますと、やはり倒産局面における事業清算という案件に多く関与しておりますので、そうした観点から、全体的な側面についてのお話をまずさせて頂きまして、その後、多少個別の論点についてのコメントをさせて頂ければと思っております。
 
 まず、全体的な観点で申し上げますと、事業における中小企業あるいは成長局面における資金ニーズというものに対する適切な融資という形で担保が形成されるということであるとするならば、それは一つの融資のあり方として十分考慮に値するものですし、進めて頂くべきことであろうとも思っております。ただ、大西委員からも少しお話がありましたが、現状、倒産局面でこうした融資のあり方というものを見ておりますと、先ほどから、伴走する、あるいはアメリカの御報告でもありましたが、プロフェッショナルな形の銀行員の方が評価をしていくというようなことを今の日本の金融実務が、倒産局面の会社においてできていたかというと、なかなかそうではなかったところがございます。
 
 そうした意味で、この担保を当初意図したとおりに運用していく、あるいは、そうした適切な融資がなされるという観点からは、貸手側についての大きなこれからも努力と、あと評価実務に対する研鑽が必要になってくると考えております。そうした意味で、個別の論点のところについても申し上げますが、論点3-1ですかね、資格要件のところになりますが、資格要件に関しても、資料の方では、金融機関あるいはそうした相当なもの、プラス、あるいは登録制というようなお話がございます。先ほどの観点から申し上げますと、貸手の側については、やはりある程度絞るべきだと考えておりまして、評価実務が継続してできる、そしてモニタリングをして、きちんと債務者に伴走できるだけの体力と知見を持った方たちにやって頂きたいと。その意味では、金融機関あるいは適格投資家という資格要件だけではなくて、その中でもさらに登録という形で絞ることも一つ選択肢として十分あるのではないかと考えております。逆に、そうした形で貸手を絞ることで金融が阻害されるかというと、制度目的との関係では、それでも十分機能すると考えておりますので、論点3-1、債権者側の資格要件についてはそうした形で絞ることを検討したいと考えております。
 
 それから、債務者側に関しましても、たしか営利目的というところでの絞りがかかっておりましたが、そこについては私も賛成をいたします。株式会社等の営利目的の法人であるべきですし、それ以外のところにまで広げるというと、それはそれで最初の制度目的とどのような関係にあるのかという気もいたしますので、債権者、債務者ともに、設定者ですかね、ともに適切な形での絞りをかけた上で使いたいと考えております。
 
 また最後に、冒頭で奥様からお話がありましたが、倒産局面においてDIPファイナンスの融資のあり方についての大きな提言がございました。私どもも、完全に、残念ながら倒産に近い形で民事再生等に入った会社に関して、やはりファイナンスが早く簡易につけば、事業が再び復活して、利害関係人の適正なあり方が整うように思っております。そうした意味でも、こうした倒産局面におけるDIPファイナンスについては、引き続き積極的に検討して頂ければと考えております。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、堀内委員、どうぞお願いいたします。

【堀内委員】
 ゴードン・ブラザーズの堀内と申します。
 私はアメリカに長かったことと、ずっと担保権者としてやってきたので、そちらの観点からの発言を期待されているかと思いますが、どちらかというと債権者、債務者の両側に立って考えたいと思います。というのは、動産譲渡担保とか債権譲渡担保というのは、あまり良いイメージで使われていないところがありまして、この担保権がもし成立していくのであれば、使用頻度が高く、いろんな人が使える担保権もしくは融資になれば良いなと考えているからです。使用頻度が高くなると悪いイメージは必然的になくなると考えています。

 もう一つは、本担保権が追加的選択肢であることが私の中で非常に大事だと考えております。別に現状の他の担保権を否定しているわけではなくて、こういう事業成長担保権のような包括担保の方がフィットするケースではそれを使えば良いのではないかと考えています。その端的な例としては、先ほど奥さんがおっしゃったようなLBO、それからプロジェクトファイナンスとか、既に全資産を担保に取っているものが挙げられます。今回の主たる目的ではないですが、副次的効果として使用が割とスムーズにいくのではないかと考えます。
 
 ただ、そのためには、いろいろ御発言頂いた中でも、手続負担を少なくして欲しい、少なくとも、現状の個別資産を積み上げる形の全資産担保よりも手続負担が少ない形であることが大事ではないかと思っています。取りあえず個別にやるよりは、一本でやれるというだけでも少し楽だという点はあると思いますが、それ以外の追加負担はない方が良いという点に私は同調いたします。
 
 もう一つ大事なことは、法制度を入れれば、そのまま金融の発展につながるかというと、なかなかそうとも言えないのではないかと思っております。ベンチャーデット、中堅・中小企業の成長資金、再生ファイナンス、いろんなところで使われ得るとは思いますが、では、全資産担保を入れたら必ずベンチャーデットが全資産担保でどんどんされるかというと、これは金融慣行が変わらないといけないと思います。大西先生とか大澤先生が評価実務の件についてもおっしゃっていましたけど、これも同様に、実務面や金融慣行も併せて変わらないといけないというところに一つのハードルはあるかなと思います。一方で、法制度そのものが使いづらいと、そこまでいかないで使われなくなってしまうと考えています。

 そういう観点から言いますと、水町先生とか村上先生がおっしゃった点は大変重要な点ではあるし、十分気をつけないといけない、配慮しないといけないのは分かるのですが、例えば労働者の方々や労働組合に事前の通知が要るとか、そういう手続負担が起こると、諸外国は分かりませんが、アメリカだとそういう手続はございませんし、それでも特に大きな問題は起こってないし、個別に積み上げているケースでも、担保権者の何かによって労働者が被害を被るということはあまり聞こえてきてないので、個別対応で良いのではないかと思われます。配慮することには配慮しないといけませんが、追加の手続は特段必要ではなく、何か問題が起こった場合には個別に対応するということで良いのではないかと考えております。

 今、大澤先生が言われた適切な担保権者というのは私も賛成でございますが、どこが適切かというのだけが問題で、冒頭申し上げましたように、幅広い融資者が使えるようにしてあげるという方向に賛成ですが、では、消費者金融をやっている会社が使えるようにするべきですかと言われると、それは別に要らないのではないでしょうか。そもそもコーポレートが念頭に置かれているのでということで、使える人で良識のある方ということでは賛成ですから、どちらかというと利用者の範囲は広い方がいいと思っております。

 あとは、今日の議題ではないですが、再生ファイナンス、特に再生で使われるときは、既存の無担保の融資の保全を高めるように使われることもあるかもしれないですが、それよりはニューマネーが出る担保権になったら良いなと思っております。1つがDIPファイナンスだと思いますが、一旦全資産を担保に供してしまうと、その後行き詰まりかけたときに、担保に差し出す資産がないので資金調達ができなくなって破産してしまうという議論があるかと思います。ここはアメリカでもありますように、上に少し乗っかっていくプライミングリーエンという概念を入れることで再度チャレンジできる、つまり、過去に全資産担保を入れて融資を受けてチャレンジして、それが上手くいかなくても再チャレンジができる形にすることで乗り越えられるのではないかと考えております。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、志甫委員、どうぞお願いいたします。

【志甫委員】
 志甫と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 倒産事業再生実務の観点から、論点1-1と3-1についてコメントさせて頂きます。若干次回の範囲も含まれているかもしれませんが、御容赦頂ければと思います。

 まず、論点1-1ですが、今回の担保は総財産を対象とするところに大きな特徴があろうかと思います。これにより、事務局の資料で御説明頂いております設定時及び期中管理において目指すべき姿を実現することができ、実務もそのような運用になってくるのであれば、それは本制度のよい面だと思います。

 他方、実行などの場面においては何点か留意するべき点があり、一つには、日本の特徴として、商取引債権のサイトが長いことを考慮しておく必要があると思っております。さきほどご説明を頂きました米国などでは、商取引債権のサイトが短いということも仄聞しますが、日本においては、商取引債権のサイトが長く、私どもが倒産事件をさせて頂くに当たって、商取引債権が3か月分以上たまってしまっている事例があるところです。現在の実務では、御承知のとおり、商取引債権を含む一般債権、これを全額弁済できる場合には私的整理とし、あえて裁判所の手続を使うことなく、金融債権者のみを対象として私的整理を進めています。他方、商取引債権などを全額払うことができない場合においては、法的な倒産手続に入りますが、現在の担保制度は個別の資産ごとに設定されるものですので、無担保の資産があれば、これをもって商取引債権を含む一般債権者に対する弁済原資にとしてきました。これが全資産担保になった場合にどうなるのかですが、サイトが長い商取引債権が溜ってしまい全額払えない場面において、全資産が担保に入っていますので、商取引債権や労働債権を含む一般債権者に対する配当原資が基本的にはなく、これに対する手当てとして、カーブアウトなどが必要になってくる、と思います。また、商取引債権のサイトが長いことから、商取引債権全額を払えない事態は生じ得るのであって、そのような状況において、商取引債権をいわば引っかけてしまいながら、事業譲渡への協力と取引継続を得るためには、事業譲渡を実行する手続主体に対する信頼が必須だと思います。そのためには、担保権者が選任した立場の実行主体ではなく、裁判所が選任して、担保権者のみならず利害関係人に対して善管注意義務を負う管財人が実行する方が円滑に進むのではないかと考えております。

 また、資金調達の観点では、再生局面におけるDIPファイナンスにおいて、これまでは、無担保資産を担保提供することが多いところです。全資産を担保とした場合に、既存の事業担保権者を出して頂くのであればそれで足りるわけですが、そうでない場合における手当てとして、堀内さんがおっしゃったようなプライミングリーエンなどが必要になってくるのではないかと思います。

 続いて論点3-1の資格要件のところでございますが、たまたま私がコロナ明けの事業会社の管財人をさせて頂いた案件があり、同社の株主は創業者から投資ファンドに代わっていたところ、コロナ禍における判断として、積極的な事業継続よりも、保守的な事業停止・清算の方が、投資家の方々の理解が得やすかったようなことも伺いました。同事案におけるそうした判断自体はやむを得ないものと思っておりますが、この担保の趣旨に照らし、できる限り事業継続の方向に伴走して頂けるような方に、資格要件等を持ってコントロールして頂きたいと考えております。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、井上委員、どうぞお願いいたします。

【井上委員】
 弁護士の井上です。よろしくお願いいたします。今回は、第1回ですので、大きな枠組みを中心としてコメントを差し上げたいと思います。
 
 全体として、今回、事務局から御説明頂いた点に関しては、基本的に賛成あるいは共感するところが多いです。ただ、担保制度の整備によってできることには限りがあるというのも、既に何人かの委員がおっしゃったとおりです。事業担保は、あくまでも追加の手段であって、既存の担保制度あるいは既存の融資実務を否定するわけではないことを前提として、こうした事業担保制度を追加的に作っただけで大きく物事が変わるわけではなくて、新しい制度に見合った新しい融資実務、担保実行実務、あるいは再生実務といったものと併せて、新しく融資が広がるようなエリアができないかを考えるべきで、担保制度だけをいじることには限りがあるので、全部併せて考えなければいけないということをまずは申し上げたいと思います。
 
 それとともに、融資側だけではなくて、借り入れる側、すなわちビジネスサイドの受け止め方というのでしょうか、どの段階で話合い、事実上の事業の任意売却、さらには担保の法的実行の検討を始めるかといったことの受け止め方についても、今後変えていく必要があるのではないかと思っております。
 あと、デットですからアップサイドを取ることにはどうしても限界があります。ですので、特にスタートアップなどを想定しますと、エクイティをどう供給するかといったことも併せて考えないと、デットだけでは上手くいかないと思います。もちろんベンチャーデットのような、リスク資金の供給の厚みを日本はもっともっと大きくしていかなければいけないということもありますが、その中に、例えばワラントを組み合わせるなど、エクイティも加味して、経済的に合理性のあるリスク資金の供給の枠組みを考える必要があろうかと思います。
 
 あと、今回の諮問にもございましたが、スタートアップあるいは中小企業への融資に目が行きがちで、そうしたところに広く事業担保が使われるようになることが望ましいことだとは思いますが、ただ、全資産担保は、現時点では日本ではLBO、あるいはプロジェクトファイナンスといった分野で使われておりますので、当初のユースケース、あるいは良い使われ方を浸透させるという意味でいうと、事業成長担保をLBOとかプロジェクトファイナンスにも使っていけるようにすることは重要ですし、本日奥様からいろいろな問題意識、現在の日本の融資実務との関係などを御説明頂きましたが、そこからあぶり出される問題意識をしっかりと受け止めて、事業成長担保を考えることも重要になってくるのではないかと思います。
 
 その上で、個別の点についても1点だけコメントを差し上げようと思います。論点1-1ですが、これは、設定者に属する将来の財産も含めた総財産ということで、それはそのとおりだろうと思いますが、これがややもすると、とにかく債務者の財産を全部押さえて、将来入ってくるものも全部担保に取るとだけ受け止められるとすると、それはややミスリーディングだという印象を持っております。事務局によれば、そこはきちんと整理されていて、設定者が事業活動の中で財産を処分していくことは当然あって、その形で、言わば将来のアウト部分もあるということです。つまり、将来入ってくる全財産を対象にしながら、将来事業活動の中で処分される財産は全部外れていくという、当たり前の前提があることと、それから、先ほど商取引債権のお話が出ましたが、事業継続に必要な支出は、無担保債権であっても当然きちんと確保されるということです。事業担保は、こういう形で事業価値、その意味ではプラスとマイナスの差分であるフリーキャッシュフローを将来にわたってつかまえるということになります。どこかのタイミングで切り取った全財産を把握し続けるのではなくて、継続的ではありますが、あくまでもキャッシュインフローとキャッシュアウトフローの間のフリーキャッシュフロー、すなわち金融債権者への弁済に本来充てられる部分を、担保権者として排他的・優先的に確保するものとして捉えるべきです。当たり前のことですが、ここでの「総財産」は、そういう意味合いで捉えたいということを確認したいと思います。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、菅野委員、どうぞお願いいたします。

【菅野委員】
 弁護士の菅野と申します。
 金融庁の事業成長担保権に関する研究会の委員をさせて頂いておりまして、その関係で今回、ワーキング・グループにも入らせて頂いております。
 
 まず全体として、今回の事業成長担保権は、オプションというか、追加で新たな担保権制度として設けられるということであって、必ずしも従来の個別担保を基にした融資実務がなくなるわけではない。新たに追加されるものだということで、オプションが増えるということでは前向きに考えて良いのだろうと私自身は思っています。
 
 特に、今日、奥さんやNRIからの御説明もありましたが、金融機関と設定者との関係の中で並走していき、モニタリングをしていく中で、早期に、延滞になる前に両者協議で考えていくことができるのであれば、私も事業再生の専門家なのですが、早期の再生を促す・経営者保証に対する依存が減らせるという非常に前向きな効果があるのではないかと思っています。
 
 あとは、私は労働分野も専門としているところ、労働法の観点も注目はしております。それで本日、水町委員、村上委員からも御示唆があったように、労働者の権利がどうなるのかというのは重要な関心事だとは思います。ただ、事業成長担保権が当初の想定のとおり運用されていくのであれば、これは事業を生かすという前提の担保権でありますので、当然その中の利害関係人である労働者にもいてもらわないと事業は継続できない、労働者の契約が承継されることは、ある意味前提になるのだと思いますし、総財産の中にもちろん労働契約も入りますが、事業継続のために必要な処分、支払いはできるわけですから、労働者に対する支払いもなされていくと。ですから、事業価値がある段階で第三者に承継される等されていけば、事業に紐づいた労働者の権利も維持されるということが、ある意味、前提なのではないかとは思っていて、そうした前提の中でどのようなバランスで労働者の権利保護をしたら良いのか、そのバランス感を考える必要があるではと思っています。
 
 また、濫用的な使い方がなされてしまうと労働者の権利にも影響するので、やはり担保権者には一定の制限というか縛りがあっても良いのではないかと私も思っています。ただ、それを金融機関だけにするかと言うと、私はどちらかというと大西委員と同意見でして、事業成長担保権の承継先になるようなサービサーだとか信用保証協会だとか、そうしたところは必要性があるのでしょうし、それから、たくさんの方々に使われて、少しずつ実務が固まっていくことも重要かと思いますので、そうであれば、ファンドのように、こういう新しい制度を積極的に利用していくところも、登録制にするなどある程度の審査を経て対象範囲を広げていった方が、この制度自体が積極的に活用されていくのではないかと思っています。特にグローバルな案件になってくると、担保権の承継先だとかファイナンスの当事者というのが、ファンドを入れないと、対象範囲としては、設定者側の選択肢としても狭くなってしまう可能性があるのではないかと思っております。
 
 それから、労働者保護のところも一つ追加で申し上げますと、実行の場面だとか実行前、正式な実行でなくても、この事業の処分として第三者への承継を考えるときに、承継者がたくさん集まってきて、もうどんな条件でも買いたいというのだったらまだしも、M&Aにおいても、事業再生の場面ではなおのこと、承継してもらうのに苦労するという場面のときに、やはり厳格な手続が取られているがゆえに、処分先、承継先が見つかりにくくなるというような、その辺りのバランス感は考えていかなければいけないと思っております。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 次に、沖野委員、どうぞお願いいたします。

【沖野委員】
 ありがとうございます。沖野でございます。
 私は、民法を専攻する立場から申し上げたいと思います。既に御意見のあったところとかなり重複するところがありますが、重複を恐れず申し上げたいと思います。
 
 制度の導入自体については、まさに選択肢を増やすという観点から望ましいことではないかと思います。もっとも、使われるべき案件に適切な利用がされるようになっているかという点から、制度自体の設計や、また、それを支える、担保制度からすれば周辺のということになりますが、周辺の制度や仕組みについても十分考えなければいけないと考えております。
 
 その点で、担保権者となるべき者については、貸手側に非常に能力が問われる制度だと考えておりますし、また、貸手側のdisciplineといいますか、適切な運営も求められるところですので、この制度による目的達成を担うにふさわしい主体であるのかが担保されているのかという観点から、担保権者となるべきものを絞り込むことはやはり必須ではないかと思っております。具体的にどうするかというのはもちろんそれぞれ考えていく必要があると思いますが、その際になのですが、立法の時間軸もあり得るのではないかと考えておりまして、まず、最初については、手堅く作っておいて、ここは大丈夫というような、あるいはこここそが必要であるというようなところは対象とした上で、立法というか、法律レベルではなくて下位規範を含めてですが、機動的に、制度が動き出して大丈夫であると、あるいは、当初想定していた以外の適正化の仕組みが用意できるとかそういうことがあるのであれば、そのような実際を見つつ広げていくとか修正していくことも考えて良いのではないかと思っております。
 
 今回、資料5に幾つか検討を頂きたい事項が書かれておりまして、個別になってくる面がありますが、幾つかについて申し上げたいと思います。1つは、論点1-1でして、井上委員がおっしゃったように、担保権を持つとはどういうことか、あるいは担保権が何を把握しようとしているのかというのは、まさにそのイメージを共有しておりますが、論点1-1につきましては、設定者に属する将来のものを含めた総財産はそれで結構だと思うのですが、設定者の総財産という切り口なのか、事業あるいは事業に関連する財産なのかという切り口なのかは1つあるかと思われまして、形式的、技術的には設定者の総財産としつつ、事業とのずれをどのように埋めていくか、対応していくか、必要のないものは外すとか、そういうことが考えられることになるのではないかと思っております。
 
 技術的に、設定者という一つの法人格の総財産という形で対象にすることと、狙いとしているのは事業なのだというところのずれが出てき得ますので、それをどうするかということは考えておかなければならないと思います。また、今のような理解からすると、やはり当然設定者は法人に限らざるを得ないのではないかと思うところで、個人ですとかなり複雑な問題が出てくるだろうと思っております。
 
 それから、論点3-2の点の極度額でございますが、これ自体は、事業全体について融資をしていくタイプのものが想定されますし、いろいろな状況がありますので、極度額は基本的に必須とする必要はないと考えておりまして、ただ、必要な資金提供がされないときに一定の対抗措置も考えられるかと思っております。ですので、任意設定事項ということがよろしいのではないかと思っております。ただ、公示に載せるかどうかについては、さらに極度額の有無、あるいは、それがあるときに極度額をさらに登記事項として定めるべきかどうかということがもう一つ論点になるのではないかと思っているところでございます。
 
 論点4-1ですが、商業登記簿への登記で具備するということで結構かと思うのですが、登記登録制度がある個別財産について及ぶかどうかというのは、商業登記簿の場合は人的な単位で情報を集約するのに対して、個別財産については財産単位で情報を集約するということですので、具体的に対抗が問題となってくる第三者というものがどのような局面で出てくる、どのような仕組みなのかということについて、もう少し分類して考える必要があるのではないかと思っております。商業登記簿への登記で十分であるというタイプばかりなのかというのは、必ずしもそうではないかもしれません。不動産の場合の追及効があるような場合はどうなるのかといったことも問題になってくるかと思われます。
 
 最後の論点5なのですが、経営者の個人保証や経営者の生活の居住用の不動産ですとかそういうものについての担保設定については、これに依拠するのは望ましくないと考えられるわけですが、他方で規律づけというようなこともある中で、経営者の保証や物上保証に期待される役割を適切に発揮するにはどうしたら良いかという観点から考えますと、論点5のような方向は十分考えられるところです。むしろ事業成長担保だけの話なのかと、一般化されるような考え方ではないかと思っています。
 
 最後に、これは水町委員がもう退席されているのですが、実行手続について労働者の保護ということを言われまして、非常に重要だと思っております。他方で、事業譲渡や特定承継という仕組みに乗った場合に、労働者の保護をどうしていくかという点は大変重要なことだと思っておるのですが、一方で、既存の法制の仕組みに乗るときに、それよりも手厚い保護をすべきなのかどうか。するとすれば、なぜ事業成長担保の場合はそうなるのかということも考えていかなければならないのかと思っております。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。以上で、本日御参加の委員の皆様方全員から御発言を頂きました。貴重な御指摘、御意見を多数頂きまして、誠にありがとうございました。
 
 次に、オブザーバーの方々でもし御発言希望があれば承りたいと思いますし、もちろん委員の皆様方で2回目の発言を御希望される方には、また御発言をお願いしたいと思いますが、一旦事務局の方から、よろしくお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。倉林委員から、事業成長担保権が設定されている者が絡む組織再編について御質問がありました。説明では省きましたが、ここに記載している事務局の考えている御提案ということで、合併の場合には、一方だけが設定者である場合には、合併後の存続法人、設立法人の総財産がその担保権の目的となると。双方が設定者の場合には、担保権者の間における協定が必要ということ。
 それから、分割については、分割承継できないこととするといったような方向性が書いてございまして、それぞれに、細かいのですが、注19と注20にございまして、これは企業担保法という前例を踏まえて記載をしているところでございます。日本の法制ですので、そういう可能性として、どちらか、あるいは両方が事業成長担保権設定者である場合の組織再編の際の関係を整理しておくことは必要なのだろうと思っておりまして、アメリカがこの場合まで規定を細かく置いているかどうかは分かりませんが、ただ、注19の6ページの注の頭のところで、「もっとも、実務上の対応としては、合併前に任意の弁済等により、一方の事業成長担保権を消滅させる、若しくは一方の後順位の担保権を消滅させる」等々、そうした対応の方がより簡便で現実的であることも考えられることを記載しておりまして、恐らくアメリカのプラクティスは、この「もっとも」というところに近いのではないかと思っております。
 したがいまして、御指摘を踏まえまして、国際的な目線は大事だと思います。そこを制度の中で何か工夫していくのか、あるいは、この「もっとも」に書いてあるようなプラクティスの積み重ね、あるいは最初の金融庁も絡むような周知の中かもしれませんけども、その中で考えていくのか、いずれにせよ、御指摘の点はよく考えて検討してまいりたいと思っております。以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。
 それでは、オブザーバーの厚生労働省の青山審議官、どうぞお願いいたします。

【青山オブザーバー】
 オブザーバーの厚生労働省の労働基準局の青山でございます。発言の機会を与えて頂き、ありがとうございます。労働者保護や労使コミュニケーションを政策として担当しております。内容としては、総論や次回の事項にわたるお話を多少差し上げます。委員の皆様の御発言の中で、労働者への影響、保護や手続についての御意見が複数あったのを拝聴しておりました。我々は、政策としまして、事業譲渡や会社分割といった事業再編における労使協議や説明を法令や指針で促進するといった政策を行っておりまして、今回、その関係でも関心を持って聞いております。

 我々が政策を講じていますのが、労働者を不利益から守るということもありますが、会社と労働者の互いの理解と協力を促し、円滑な事業再編などにつなげるという目的もございます。今回の事業成長担保も、事業価値を向上させるものとして労働者を位置づけて頂いている御意見も頂きましたし、実際、会社の成長に労働者も貢献するべきだと思いますので、むしろそのためにも円滑な労使コミュニケーションは必要かと思っております。もちろん不利益からの労働者の保護を図ることも重要でございます。

 バランスという御意見も言われましたが、我々、労使間のコミュニケーションのルールを持っているものといたしまして、今回の事業成長担保におきましても、設定時や期中、実行、あらゆるところで両者の理解、協力が促進されるようなことを、どのようなものが適切かということも含めて、皆様の御議論を受け止めながら一緒に考えていきたいと思います。以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかのオブザーバーの方々で御発言はございますでしょうか。委員の方で2回目の発言を御希望の方は承りたいと思いますが、いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。それでは、討議は差し当たり以上にさせて頂きます。

 繰り返しになりますが、委員の皆様方全員から御発言を頂きまして、活発な御議論、御指摘を多数頂きまして、誠にありがとうございました。本日頂きました御説明、御意見を踏まえ、今後、皆様方にさらに議論を深めて頂きたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 今日の御発言の中にも、今後の進め方等について若干の御要望とか御指摘もございましたので、その点も事務局で可能な限り御検討を頂くことにさせて頂きたいと思います。また、何分、何回もやるというのは、いろいろな理由で難しいかと思いますので、追加でお気づきの点や言い足りなかった点がございましたら、事務局の方に、私宛てでも結構ですが、お電話、メールその他、適宜の方法で、御意見、御指摘等をお寄せ頂けますと大変ありがたく存じます。それでは、最後に事務局からの連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。
 

(以 上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線:3579、3535)

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