金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(第5回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年12月27日(火曜日)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

【神田座長】
 それでは、定刻になりましたので始めさせて頂きます。
 金融審議会の「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」の、本日は第5回目の会合となります。皆様方には年末の押し迫った中、本日も御参加を頂きまして誠にありがとうございます。
 本日の会合も前回と同様、オンライン会議を併用した開催とし、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂きます。また、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させて頂く予定ですので、よろしくお願い申し上げます。
 
 早速ですが、議事に移ります。本日でございますが、前回、先週の会合の一番最後に事務局から御説明を頂きましたお手元の事務局説明資料、資料2で言いますと、7ページ以降ですかね、実質は8ページ以降だと思いますが、にあります追加的な論点(担保権者の範囲)について、メンバーの皆様方から御意見を頂戴できればと思います。説明は先週の会合で済んでおりますので、早速皆様方から御意見をお伺いしたいと思います。
 
 ちょっと忘れてしまっておられるかもしれませんが、どなたからでも、オンライン会議システムのチャット欄に、いつものように全員宛てで「発言希望」とお名前を入力・送信して頂ければありがたく存じます。こちらで確認をさせて頂き、私のほうから御指名をさせて頂きますので、お名前をおっしゃった後、御発言頂ければと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。
 
 ちょっと急でなかなか発言がしにくいかと思うのですが、資料を御覧頂きますと、8ページのところ、前回説明があったところなのですが、これまでの御指摘を左側に書いて頂いていて、担保権の信託というものを使うことによって右側に書いてあるようなことになるということで、あと、欄外の注もございます。
 
 それから、次の9ページは、上が信託を使わないというか、これまで議論をして頂いたもので、今回信託の仕組みを使うと、その下の図のようになるということでありまして、さらに設定時における通常の根抵当権との差が一番下にまとめてあります。
 
 あとは御参考になるかと思うのですが、10ページには、時間に応じた進行というのでしょうかね、特にその中で一般債権者の取り分確保ということが書かれているところでありまして、以上が大体①というのですかね、今日の論点で言えば、①になるかと思います。
 
 11ページに行って頂きますと、今度、②という論点になりまして、設定後の当事者の主な権利・義務等ということになりまして、先週の御説明と重複しますので、御覧頂ければと思います。
 
 さらに関連して、12ページが最後のページになるかと思いますが、信託を使うということでありますと、信託業の規制というのでしょうか、そこのところが問題になり得るわけかと思いますので、そのイメージで、特に先週の御説明では、一般の信託と比べると、12ページの言葉で言うと、軽減したものとすることが考えられるでしょうかということで、担保付社債信託の信託業というのでしょうか、受託者の規制が御参考として一般の信託業と並べて下にまとめているところです。
 
 こういった点について、あるいはこれまで既に御議論頂いた点に関連することもあるかと思いますので、多少そういう意味では、幅広い点についてでも結構なのですが、皆様方から御意見を、御質問でも結構ですが、お出し頂ければありがたく思います。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。
 ありがとうございます。何人かの方からチャットを頂きましたので、その順番で御発言をお願いできればと思います。まず最初は、伊藤社長、どうぞお願いいたします。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。ちょっと説得力のない発言かもしれないのですが、これって信託を設定するかしないかという二者選択はできないのですか。人によってというか、案件によって選べるというのもあっても良いのかなと思ったのと、あともう一つ、今まで担保を設定するときに信託ってぴんとこなかったので、説明されているとおり、お金と、多分ちょっと時間がかかっていくことが懸念材料である一方で、新しい制度であり、少し今までとは複雑な制度なので、信託を活用したほうが、揉め事とかトラブルがあったときに逆に起きづらくなるのかなという印象を受けています。ちょっと的外れかもしれないのですが、質問と意見でした。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございます。御質問の点について、大来さん、お願いします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。
オプションなのかという点に関しましては、結論から申しますと、今御提示をしている御提案は、信託契約はオプションではなく、この事業成長担保権の設定をする場合には信託契約を必須とする方向で考えてございます。
 御指摘のとおり、信託報酬の問題とか、あるいは時間の問題とか、あるいは心理的ハードルについての御懸念を伊藤委員のほうから表明頂きました。仮にこの形で制度化ということになった場合には、私ども、制度の分かりやすいPRや説明をしっかりすることで、そうした懸念をなるべく払拭をしていきたいと思っておりますし、御指摘頂いたとおり、マイナス面ばかりではなくて、いろいろな受益者を設定することができる、あるいは信託行為の中でいろいろと定めることができるといったプラス面もあろうかと思いますので、そういうことと併せてしっかり説明をしていきたいと考えてございます。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。
 ごめんなさい、一般的にあまり信託って聞き覚えが少ないというか、今相続とかそういうのであるのかもしれないのですが、その辺の、躊躇しないで行動に起こせるような仕組みづくりというのですか、前回も申し上げたように、活用しやすくするために何が必要かという上でのスタートかなという印象を受けました。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。大変重要な御指摘ですよね。
 信託の仕組みというのはやはり分かりにくいと思うので、それがどうメリットを発揮できるかということについての広報というのですかね、が必要というか重要になると私も感じました。ありがとうございます。
 それでは、次にチャットを頂いている順番で、井上委員、どうぞお願いいたします。

【井上委員】
 井上です。ありがとうございます。
 先日の御説明によりますと、この事業成長担保権について信託の仕組みを使う理由としては2つほどあるのだろうと理解しています。1つには、債権者の範囲をある程度広く、金融機関のみならずファンドやサービサーなどにも広げつつ、担保権の管理・実行は金融機関等に担い手を限定して適正化すべく一定の規制の下に置く必要性です。それからもう一つが、事業成長担保が、のれんを含めて企業価値全体を把握するということで、優先債権以外の一般債権者に何も残らなくなってしまうのではないかということに対応する必要性です。この2つ目については、資料で言うと、8ページの注のところに書いてあるのかなと思います。この2つの理由から、セキュリティトラスト、信託の仕組みを使う理由を理解したつもりです。
 
 そのうち1つ目の点については、案件ごとに、例えば、そんなにローン債権を流通させるつもりはないので、債権者の範囲を担保権者の範囲とそろえても良いよ、という案件であれば信託を使わないという選択肢もあり得ると思うのですが、2つ目の点をもし重要だと考えるのだとすると、これは信託の仕組みを使わないと実現できないと思いますので、先ほど伊藤委員の質問に対する事務局の回答で、現時点では必須と考えているということでしたが、この2つ目の理由で、必ず信託の仕組みを使うということになると理解しました。
 ただ、セキュリティトラストは、平成18年改正信託法が施行された後、シンジケートローンなどで使われることがあるにはあると思うのですが、債務者にとってなじみがない、あるいはレンダー側にとってもやや重たい印象があって、それほど利用が広がっているわけではないと理解しています。ですから、この事業成長担保が使われる担保になるためには、金銭的なコストや時間的なコスト、それから資格要件、あるいは受託者となることのリスク、こういったものを全て軽くする必要があります。軽くするというのは、信託を使わずに普通に担保を設定するのと異ならない程度まで軽くするということです。信託を利用することによって追加的な負担にならないようにすることが非常に重要だろうと思います。
 
 金銭的なコストについては、これは大がかりなシンジケートローンなどであれば、信託銀行や信託会社に入ってもらってフィーを払うことも十分あり得るのだと思いますが、シンプルな一行融資が典型的だと思いますが、中小規模のローンについては、これはレンダーが受託者を兼任できることが必要になってくると思います。今、そういう前提で御提案されていると理解しているのですが、そうであれば、信託報酬は払わなくてもよいし、信託事務の中身も自分で担保を取って担保管理をすることとかなり近い負担で済むはずで、強いて言えば、一般債権者のためにも自分のためにも実行するという点で、一部、他人のためという要素が入るわけですが、やること自体は変わらないはずなので、その点では金銭的なコストは、工夫によっては抑えられるかなと思います。
 時間的なコストも重要で、毎回、信託契約の条項を交渉したり、信託のガバナンス、実行に関する意思決定などについての仕組みを交渉したり、ということであると、案件ごとに、時間的なコストも含めてコストがかかってしまうので、独禁法の問題が生じない限度ではありますが、標準的な仕組みをつくっていく必要があると思います。
 
 3つ目が資格の話ですが、これは既に御説明頂いているとおりで、いろんな財産を管理・処分するために、いろんな信託事務をする前提で受託するという一般的な信託業についての信託業法上の信託免許と違って、この信託は、基本的には担保権の信託であり、担保目的物は企業の事業全体であり、信託事務、すなわち受託者の仕事は担保の管理と実行ですので、その点で、金融機関であれば、おおむね能力が備わっていると考えられますから、極力スムーズに免許が取れるようにするべきだと思います。
 
 最後のリスクの点ですが、これも信託契約上の意思決定の仕組みを標準化していく際に、受託者となることによって重い責任を負わないようにする。できれば、比較的裁量が狭い範囲で意思決定できるような仕組みを工夫する必要があると思っています。この詳細については今後の課題だと思いますが、今申し上げた4点をしっかり検討して、軽いといいますか、採用しやすい仕組みにして頂ければ、信託の利用を必須としても、なお事業成長担保の利用を阻害することにはならないのではないかと考えます。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、沖野先生、どうぞお願いいたします。

【沖野委員】
 ありがとうございます。沖野でございます。井上委員の御指摘とかなり重なる部分もあるのですが、重複を恐れずに申し上げたいと思います。
 
 今回、信託を使うというのは、確かにあまりなじみのない御提案ではあるのですが、なぜこういう形にするかというと、既に説明はされておりますが、2つのことを実現する。それもこれまでに指摘されていた2点を実現する制度として用意されているものと理解しております。
 
 1点目は、担保権者の範囲と与信者の範囲とのずれという点でございます。私自身もこの担保が全財産を対象とする強い、広いものであるということから、担保権者の規律づけが非常に重要ではないかという意見を持っており、その利用範囲というのは、少なくとも最初はかなり限定すべきではないかと考えておりました。その一方で、与信者の範囲を同じぐらいに限定するということが果たして望ましいのかということもございまして、実績を見て見直す形で時間的に少しずつ広げていくことでどうかということも考えられますが、この両者のずれを解消するというか、許容しつつ、いずれも適切な範囲に絞り込んでいく、そういうことを可能にする制度として担保権信託という、既にある制度でございますが、それを利用するというのが1つです。
 もう1点は、全財産を優先的に押さえてしまうということから、一般債権者のための原資というものまで取り尽くしてしまうということに対して、いわゆるカーブアウトの要請があり、それを受益者に取り込むことで実現するという点です。この2点を一気に実現する制度として今回、しかも既存のあるもの、枠組みを使った上でそれに工夫を重ねるということで御提案になっているものと理解しております。ですので、そういう制度としての提示であることは十分理解ができると思いますし、可能な考え方ではないかと思いますが、総論的に3点と、ごく細かい技術的な点ですが、3点を申し上げたいと思います。
 
 1点目なのですが、信託を使いますと、全体としてかなり単純に担保権というよりも、もう少し複雑な制度になることは確かですので、やはり全体としてコスト増になるということが懸念されます。ですので、これを抑えるような仕組み、あるいは、そのための標準化というのは非常に重要だろうと考えております。
 2点目なのですが、信託を使うことによって、一方で法制度として設計する部分と、信託行為の中で書く部分という2つが出てまいります。信託行為の中で書く部分、例えば受益者のつくり込みですとかが考えられますが、ある事項をどちらでやるのかという問題があり、信託行為で書く部分が広がると非常に柔軟であるということになるのですが、一方で標準化という点からすると難があるということにもなります。そうしますと、法制度のほうに入れていくのか、信託行為のほうで対応するのかということも考えつつ、信託行為のほうで対応するとしても、モデル信託行為というものも充実していかないと、うまくいかないのではないかと思っております。
 3点目が、信託ですので、受託者が鍵になるわけですが、信託会社が一般的に担保権管理をするということになりますと、信託報酬の問題も出てまいりますし、かなりコストも大になってくる。それはいろいろな意思決定のためのコストということもあるかと思います。その一方で、今回考えられておりますように、担保権者が受託者となるということになりますと、恐らく報酬は抑えられるのか、無報酬ということになるのかということかと思いますが、一方で、担保権者が受託者になるということは、担保権者の利益だけを考えることはできないということになります。受益者の中には、カーブアウトによって保護される一般債権者というのも入ってまいりますので、そうした主体を含めた受益者のために忠実に、また公平に行動するということになりますので、そうした点については徹底するというか、そういうものだということで徹底する必要があるのだと思います。ただ、そのことは必ずしもマイナスではなくて、事業価値の最大化を結局図らなければならないということになると思いますので、むしろ制度としては、目的をより実現しやすいという方向になるのではないかと考えております。

 それから、技術的な点3点なのですが、今回は大枠を示して頂いたので、個別にはこの制度で詰めていくとすると、いろいろ考えていく必要のある点が出てくるかと思います。例えばということで3点を申し上げますが、1つはカーブアウトで、御提案の中にも一体どのぐらいの割合でというような話が問いとして書かれているのですが、一体どこからこのカーブアウトをしてくるのか。特に今まで考えられていたような事業担保権者自身が複数というような場合に、どのような形でカーブアウトを切り出すかという問題があるかと思います。
 それから、2点目なのですが、これはそれぞれの、従来、事業担保権の優先範囲として考えられていたところからそれぞれ一部を切り出すということになりますと、事業担保権者も一部分は一般債権者というか、優先権が及ばないということになりますので、その後に予想される破産手続に参加するということが出てまいりまして、単純にカーブアウト部分を破産管財人に交付するということだとしますと、配当原資に普通に充てられてしまって、事業担保権者であった債権者にも回るのかといった問題も出てまいりますので、事業担保権者であった与信者、被担保債権者の破産手続参加の在り方というものとカーブアウトで用意する原資の配分の仕方というのは考えておく必要があると思います。
 3点目が、これまで事業担保権にも複数がつけられて優先劣後がつくと想定していたものですが、それをどのようにつけていくのか。最初から複数の与信者が事業担保権の被担保債権そのものとして順位をつけるということであれば、最初から受益者としてつけていけば良いのですが、途中から追加していくというようなときに、信託の変更になるのか、それをあらかじめ組み込んでいくのかといったようなことが問題になるのではないかと思っております。大変技術的な点で恐縮ですが、今後検討の必要があるかと思っている点でございます。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、星先生、どうぞお願いいたします。

【星委員】
 先ほど伊藤社長がおっしゃった点に近いのですが、事業成長担保権の設定を信託契約にするのかどうか。これがもしオプションだとすれば、信託契約のほうが適している場合があるかもしれないので、そのオプションをつくっておくというのは良いことだ。しかし、オプションではないとすると、必ずこれをやらなきゃいけないとすると、どういう利点があるのかという議論が重要になってくる。これは井上先生が整理されましたが、1つは担保権者・被担保債権者の拡大のために役に立つというそういうことだと思います。ただ、それはちょっと説得的ではないところがあるかなと思います。
 というのは、もともとこの事業成長担保権というのをどうして導入するかというと、成長企業などで、物的担保はないのだが将来発展が見込まれる場合、その事業の内容や発展の可能性がよく分かる貸手に利用してもらうためです。そして、運悪く業績が悪くなっても、きちんと支えてくれるような資金が出てくるように、事業成長担保権というのをつくるのだと思います。そのときに、実際に与信をする金融機関以外に担保権の受益者を拡大する必要があるのか、疑問です。
 
 例として、信用保証協会の利用も併用させてリスクテイクを後押しするとかいうのが出てきますが、そもそも僕は、いわゆるリスクマネーというのは基本的にはエクイティとかで出てくるべきだと思いますので、信用保証協会の保証を取っておけば安心だというような金融機関がリスクマネーを提供するというのはちょっとまずいかなと思います。きちんと事業を分かって、それで企業をサポートするという、そういうインセンティブがある人の与信を助けるというのが重要だと思うので、担保権者の範囲というのを拡大する必要はないのではないかと思います。
 もう一つの例は、事業の再生局面において、債権の譲渡を受けて再建に当たる人たちのためにということなのですが、ここはそもそも最初に貸していた金融機関が企業の再生を諦めて債権を譲渡するという、そういう状態を考えているので、そこでまた別の貸手が入ってきて、それで再生をうまくやりますと言い、さらに事業全体を担保にとりたいと言うのは、状況として考えにくいかなと思います。考えられたとしても、そうして入ってくる新しい貸手に再生を任せて本当に良いのかどうか、疑問に思います。
こう考えると、オプションでなくて信託契約によらなければならないとするのは、利点が明らかではないと思います。
 さらに、伊藤社長、井上先生、そして沖野先生からもご指摘がありましたように、信託にすること自体によって新たに起きてくる問題というのもあります。一般的にエージェンシーコストと呼ばれるものや利益相反の問題などがいろいろと発生してくる。そこまでして、信託契約にしなければならないのか、ちょっと理解できないところがあります。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして安井委員、どうぞお願いいたします。

【安井委員】
 ありがとうございます。これまで手続とか手間を軽いものにということを申し上げていた立場からすると、ちょっとここは悩むところがあって、これ自体が負担だなという部分と、あと御提案頂いている反面、新しい手続というか取引形態なものですから、これのためのライセンスを持っている方が必ず関与することで、全体として不確実性とか濫用みたいなものを防げて、もしかしたら全体としては手間がより少ない設計になっていく可能性もあるのかなという期待もあって、一つ合理的な御提案なのかなと感じております。
 その上で、井上先生がもう既に趣旨としてはおっしゃったのですけど、実態面から私の期待を補足させて頂くと、新しい資金の出し手という意味で、最近出てきている人で言うと、例えば匿名契約とかLPSの形式で資金を集めて貸付けに充てる、よく業界ではデットファンドというような呼び方をするのですが、伝統的な金融機関というのは、業態だったりとか審査のノウハウが違っている資金の出し手って徐々に増えてきていまして、こうした方々が参加してくるとか、あるいは最近、実際に検討されている例で言うと、そうしたファンドが貸し付けたものを金融機関に一部、例えば譲渡されるとか、そういう連携の形も検討されていたりして、間口を広げて参加する方を増やしていくことで、これまでの金融機関の方の審査ノウハウみたいなものをより生かしたりとか、役割を広げていくというような意味でもすごく価値があるかなというふうに思っています。
 そういう観点で、信託によるのかどうかということ自体、ちょっと悩ましいものはあるのですが、一つ合理的な御提案だという立場に立った上で、ここの免許の要件のところで既存の業態であまり狭く絞らずに、適正性だとか財務の部分をよく見て頂いて、業態によらず、実態に沿って入るべき人が入れるという設計にして頂けることを期待したいなと思っております。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして大西委員、どうぞお願いいたします。

【大西委員】
 大西です。よろしくお願いします。
 まず、今回の信託を用いるスキームにつきましては、事業成長担保権の内容を理解せずに設定をすることによって濫用等があるリスクを遮断することと、一方で、与信者兼担保権者による債権譲渡等によって担保権者が替わっていくケースもあるということから、それの解決策として妥当なスキームだと思います。特に、シンジケートローンで事業成長担保権を設定する場合は、そもそも与信者と担保権者が分かれているケースですので、その点を考えると今回のスキームは非常に妥当なご提案だと思います。
 
 その上で幾つかコメントを申し上げたいのですが、1つは、かつて事業信託制度が創設され、事業に信託を設定されたときに、これが場合によっては事業再生とかに使われるのではないかというような議論を10年以上前にした記憶があると思います。しかしながら、結局、なかなか信託制度というのが分かりづらいし、コスト負担も問題となったことにより使われない制度になった経緯がありました。よって、今回のようなスキームを採用した場合、特に金融機関にとって事業成長担保権を使う際の現実的な支障にならないように、先ほど井上委員もおっしゃられたような、いろんな手続きの簡素化や、マニュアルの策定もしくはパターン化により、利用のためのハードルを下げることが非常に大事なのかなと思っております。
 
 その上で、11ページについてコメントなのですが、期中において受託者が受益者に対して公平忠実義務を負うと記載があるところ、ここに書かれている記述の中で、通常の事業活動の範囲外の取引について受託者が同意を与えるケースがあります。この場合、当該取引に同意をすることは、メインバンクとしてモニタリングをしている立場でないと難しく、なかなか与信者と違う主体が判断するのは難しいように思います。
 それから、ここで想定されているのは、担保権設定者から同意を求められそれに対して同意を与えるケースですが、その他にあり得るのは、そもそも同意を求められていない中で、与信者がモニタリングをしている際に通常の事業の範囲外の取引か否かが問題となるようなケースもあります。このような場合は、そもそも受託者が被担保債権者と分かれているスキームですと、なかなか受託者にその取引の状況は分からないと思います。このような場合も想定すると、与信者兼被担保債権者がきちんと受託者に対して何らかの具体的な指示をできるような枠組みがないと、現実的には対応が難しいのかなと思います。
 今回の事業成長担保権というのが、メインバンクが事業者に寄り添って、その事業会社の成長を支えるというのが本来の趣旨ですので、その中で受託者と被担保債権者が分かれることによって、それが阻害されるようなことにならないように留意した枠組みをつくるべきと考えます。
 
 それから、もう1点ですが、一般債権者が受益者の一人として挙げられていますが、これは確かに最後のカーブアウトのお金を受け取るという意味ではそうですが、受託者の義務において、一般債権者に対しても担保権者である受益者に対する義務と同じような義務を負担するのかどうかという点は少し疑問に思いました。ここは多分、カーブアウトされたものをきちっと破産手続で一般債権者に取っておく業務を受託業務の内容として捉えるのであれば分かるのですが、それ以外に、期中において事業者の管理とか、こういうものを含めた義務まで一般債権者に対しても負担することとなった場合、受託者と被担保債権者、メインバンクが両方を兼ねるとすると、受託者であるメインバンクが一般債権者のために受託者としての義務を負う関係性になってしまい、なかなか考えにくい状態になってしまうと思います。よって、この点の法的構成というのも検討が必要なのではないかと思いました。
 
 それから、戻りますが、10ページのところの手続で、ここはこういうふうに書かれているのですが、簡易な実行手続だと、カーブアウト部分がない随時弁済がされるというケースになるので、その場合は、このフローとは異なる構成になると思います。
 コメントは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして大澤委員、どうぞお願いいたします。

【大澤委員】
 大澤でございます。ありがとうございます。幾つかコメントと、あと質問をさせて頂ければと思います。
 まず、9ページのところ、信託そのものについてですが、担保権者である信託会社をコントロールすることで適正な担保権者の在り方を示せるというお考えだというふうに理解はしました。ただ、与信者についてその意味で、特に範囲の限定を置かないというふうに理解はしておりますが、与信者が引き続き乗っ取り等の危険がないのかということは懸念をしております。
 その意味で、与信者である被担保債権者、貸手ですね、貸手が信託会社との間で信託行為ということで信託契約を設定する際の与信者の絞り込みというのはある程度必要ではないかと。私が申し上げているのは、病理的な現象を考えておりますので、別に金融機関等を絞り込めというつもりではないのですが、一方で、そうしたそれこそ貸金業のような許可も一切持たないような者まで入ってくる可能性は信託会社のところで排除できるということであるのならば良いのですが、そうした与信者をある程度、濫用防止という観点で変な与信者が入ってこないというような形での縛りというものを信託行為の中で行うのか、法改正の中で行うのか、それはちょっと私のほうで今どうこう申し上げるお話ではありませんが、そうした問題意識は引き続き持って頂けたらというふうに考えております。それが1点です。
 
 それから、先ほど大西委員からも少しありましたが、担保権者と与信者の分属ということになりますので、先ほどの伴走というか、モニタリングをして会社の成長を支えるというその役割分担が複雑になり過ぎないように、そしてそれを受託者がきちんと理解できるようにというところの整理を引き続きお願いしたいというふうに考えております。特に設定者のほうとすると、それほど、中小企業等が基本的には対象というふうに考えられていると思いますので、あまりそうした法的な知識、あるいは仕組みに対する知識というものは期待できないという中で、担保権者である信託会社が丁寧な説明等をしていくということが非常に大事になろうかというふうに思っております。
 
 それから、引き続きまして、9ページの法定の指定というところ、参考というものの右側のところですね、事業成長担保権の信託による設定(案)というところで、一番下、被担保債権の範囲のところでございますが、「左記の債権の指定に加え、一般債権者の取り分確保のため、法定の指定が必要」というふうに書いて頂いてございます。カーブアウトの議論だと思いますので、法定の指定が必要ということで、こういった指定を法文で書いて頂いて、そうした指定がない信託行為は無効というような整理になろうかというふうに思っておりますが、そのような理解でよろしいかというところは質問でございます。
 といいますのも、先ほどの力関係ではありませんが、やはり委託者に関して言えば、事業者である以上、信託行為の中身をきちんと完全に理解をして、どこまで、どんな義務と権利と、あるいは受益者が誰かというところを把握できるためにも、かなりの担保権者側での説明と、あと法文での助けが必要になるのではないかというふうに考える次第でございます。
 
 それから一つ、ちょっと技術的なお話をさせて頂ければと思います。10ページですかね、「一般債権者の取り分確保のイメージについて」というところに関係しますが、事業成長担保権が実行されている最中、あるいはその前でも良いのですが、対象となる会社について会社更生手続の申立てがあったというふうになった場合には、更生担保権という扱いになるというのは、たしか説明が、1回目でしたか、どこかであったかと思いますが、一方で今回の信託行為というものを考えますと、被担保債権者に与信者と一般債権者、今申し上げましたカーブアウト債権のほうですが、被担保債権者ということになります。他方で、今の会社更生法の考え方では、更生担保権というのは、更生会社の特定財産に対する担保権そのものではなくて、目的財産の時価の範囲内の債権を意味するということになります。
 そうしますと、更生担保権者というのは、10ページのCの1、⑨と書いてある「一般債権者の取り分を被担保債権とする(不特定)」という、この不特定の債権者という者も更生担保権者になるというふうに考えられると思っております。ただ、そうしますと、会社更生手続において、不特定の債権者が更生担保権であり、かつその債権の額も不特定のような形の更生担保権者の在り方というのは、それでよいのかと。現在の会社更生法の考え方と整合性が取れるのかという極めて技術的な問題について、どのように事務局のほうでお考えかということを教えて頂ければと思います。
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。質問が2点あったかと思います。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。まず、質問に入る前に、大澤委員から頂いた担保権者が免許に服するということを前提として、与信者が乗っ取りをするとか、あるいは場合によっては、モニタリングをさぼるといったようなときをどう考えるかとか、与信者の属性というか、そういうものをどう考えるかといったような御指摘があったかと思います。
 基本的には、担保権者が広い意味で公平忠実義務とか善管注意義務を総受益者に対して負っていて、担保目的財産の価値を高めていくということがあるので、そこが一つ、ど真ん中ではないのですが、あるだろうということと、与信者は、恐らくは多くの場合においては、反復継続して金銭消費貸借を行っていることになるので、ごくレアなケースを除いては、基本的には何らか金融庁の業に服するような業者であろうということを踏まえて、そういう中で、この枠組みの中での与信者として適正なモニタリング等をしているかということが問われてくるということになって、総体的には、事前規制という意味ではあまり、何かすごく重くするということではないですが、総体としては、濫用というのはかなりレアケースになり、事後において本当に著しいものがあった場合には、そこは多くの場合には、行政的な手段はあり得るのだろうというふうに思っております。
 
 それから、9ページの一番下のところの被担保債権の範囲について法定の指定が必要ということで、法律において、10ページで言うところのCの1みたいなところをしっかりと被担保債権の範囲に含めるような信託契約を結んでおいてくださいということを想定するという方向で考えているというのが9ページの表の趣旨でございますので、そういう信託契約でない場合には、基本的には信託契約は無効となるであっても、方向で制度を考えていこうというふうに考えてございます。
 
 それから、最後の質問は、会社更生法が仮に同時に走っているような場合のことかと思います。うちのチームからもしあればと思いますが、かなり技術的・専門的な御指摘を頂いたので、今後の法制化の中で具体的に検討していければというふうに思ってございます。

【玉川室長】
 今、大枠は大来からお答え申し上げたとおりですが、会社更生法に取り込まれた場合においても、カーブアウト分について実質的に一般債権者の方に渡るようにするため、法技術的にどのように整理をしたら良いのかというのは事務局のほうで今後整理をさせて頂ければというふうに思っております。

【神田座長】
 ありがとうございました。会社更生法の手続での取扱いとの整合性という御指摘というか御質問だったかとも思いますが、私、間違っているかもしれませんが、いろいろな制度設計は可能だと思います。1つは、取り分がXという金額になったとすると、大澤先生のおっしゃった更正担保権に近いというか、制度の整合性ということで言えばそういう扱いにするということになりそうですよね。
 
 あと、沖野先生がおっしゃったことがあって、カーブアウトがある場合でもない場合でも同じなのかもしれませんけど、事業成長担保権者の被担保債権の額が実際の担保権の対象となっている財産を超えているような場合に、超えている部分は一般債権になるのかという点があって、一般論としてはもちろんそうなのでしょうが、技術的にそこの処理は決めないと面倒くさいことにはなりますね。そこは整理する必要があると感じました。
 
 すみません、ちょっと私が余計な発言をいたしましたが、先に進ませて頂いてもよろしゅうございますでしょうか。それでは、次は志甫委員、どうぞお願いいたします。

【志甫委員】
 志甫と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私も、信託の仕組みと、目指されている趣旨との関係に関して、コメントと質問をさせて頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
 
 まず、既に議論がされております被担保債権の範囲についての質問です。私の理解が追いついていないからだと思いますが、今回のスキームでは、担保権の設定と、成立した担保権を信託に入れる信託行為、という2つの行為があるとして、被担保債権は担保権の設定において決めていくものでしょうか。担保権設定契約において被担保債権を定める場合において、債権者が誰か分からない不特定の債権であっても、被担保債権に含めることができましたでしょうか。民法上、金額が不確定な債権を被担保債権とすることはできるとして、債権者も不確定でよかったのか、私の理解不足で恐縮なのですが、教えて頂きたく存じます。
 
 もう1点、本日の事務局のご説明ですと、信託の利用は選択的ではなくて必要的ということのようです。そうすると、事業担保設定契約を締結したにもかかわらず信託を利用しない場合には、その事業担保設定契約を無効とすることが、濫用防止等の趣旨に適うのだと思います。法文で書けば、信託を利用しない限り効力が生じない担保権、という仕組みができましたでしょうか。
 以上、担保債権の範囲と、信託を必要的とする点をどのように制度的に確保されるのか、という質問をさせていただきました。
 
 もう一つは、趣旨との関係の質問でございます。今回の事務局説明資料の10ページでは(C)の換価代金の配当において、①一般債権者の取り分となる被担保債権(不特定)を第1順位とし、②事業成長担保権の被担保債権(特定)を第2順位、③事業成長担保権に劣後する担保権の被担保債権を第3順位として頂いています。これは、カーブアウト部分の支払いを制度的に確保する趣旨と理解しております。この観点で、実行場面を考えてみると、事業担保権の実行管財人が、事業担保権の取分である上記の①と②を、信託受託者に対して配当しますが、信託受託者が、事業担保実行管財人から受け取った配当金を、そのまま受益者に対して配分をするのであれば、受益者である一般債権者に分配がされ、カーブアウトの趣旨が果たされると思います。しかるに、今回のご提案では、信託受託者は、①の部分を受益者である一般債権者に対して分配することなく、何らかの方法で破産手続開始後の破産管財人に渡していく、ことが予定されているようです。さきほど、沖野先生もカーブアウト原資と配分の仕方を挙げてらっしゃいましたが、私も、信託受託者が破産管財人に渡した後の配分が重要かと思っておりまして、これは、破産法上の優先順位に従うことになるのでしょうか。そうであれば、例えば、事業担保権に劣後する租税債権が残っている場合、破産手続において、一般債権者よりも優先的に弁済を受けることとなり、また事業担保権実行手続においては第3順位であった③事業成長担保権に劣後する担保権の被担保債権についても、破産手続においては、一般債権者と同順位で配当に加わってくることになり、必ずしも意図する趣旨が実現できない場面も出てくるのではないかと思います。この点について、例えば、破産手続の中でも事業担保権の実行手続における順位を尊重するような仕組みや、何らかの手当を御検討頂ければと思いました。
 前提として、私が申し上げたような、例えば、事業担保権に劣後する税金が残ってしまっている場合には、事業担保権の実行手続においてカーブアウト部分があるとしても、破産手続の中では、破産法上の優先順位に従うこと、すなわち税金から弁済されることが想定されるのか、教えて頂けますでしょうか。
 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。最後の点はいかがでしょうか。

【大来信用制度参事官】
 最後の点につきましては、今、10ページでお示ししている基本的な考え方は、あまり残る場合が多くないという御指摘も以前頂いたように思いますが、(D)配当後の残余部分と合わせて基本的には破産管財人に渡されることになります。事業成長担保権の実行後に破産手続に進む場合に何か特別の規律を設けることは、現段階では事務局としては考えておらず、一般的な破産手続の中でその配当順位のとおり弁済していくことを御提案申し上げているところでございます。
 なお、租税債権との優先劣後関係が気になるとのことで、相当滞納している場合には、御指摘のようなケースも出てくるのだろうとは思っておりますが、基本的には(A)(ⅱ)で源泉徴収所得税等は共益債権として随時弁済していくということになりますので、その辺も踏まえてお考え頂ければというふうに思ってございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。

【志甫委員】
 被担保債権について、不特定の債権者の被担保債権となるその担保権というのが、今回の立法により定めれば問題なく認められるのか、という点について、可能であればコメント頂ければと思います。

【大来信用制度参事官】
 申し訳ございません。1つ目の御質問ということだと思います。こういう不特定の債権、あるいは債権者について、こういう信託の受益者にできるかというのは確かに論点としてあるかと思っております。別途私ども、ここは信託法の専門家などに個別にいろいろと見解なども伺っている点で、基本的には、不特定だが存在はするという債権について、そういう債権者について受益者としていくことは可能なのではないかという感触を今の段階では持っておりまして、そこのところを確信に変えていくべく、さらに作業をしていきたいというふうに考えているところでございます。

【志甫委員】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 ありがとうございました。それでは、続きまして村上委員、どうぞお願いいたします。

【村上委員】
 ありがとうございます。信託の仕組みを必ずしもよく分かっておりませんので、何点か質問させて頂ければと思います。
 
 11ページのスライドにつきまして、まず、設定時のところなのですが、信託契約において一般債権者の範囲を指定する場合、あまり考えられていないのかもしれませんが、そこに労働債権者は入るのかどうかということをお伺いしたいと思います。
 また次に、期中において、受託者は、総受益者に対して公平忠実義務及び善管注意義務を負うということですが、複数の与信者の利害調整を受託者が行うという理解でよろしいでしょうか。また、利害が異なる場合に、事業への影響はないのかという点もお伺いしたいと思います。
 さらに、既に設定された信託契約に対し、契約を変更して後から与信者として加わることは可能という理解でよいのかということについてお伺いしたいと思います。
 
 また、11ページの注2では、事業のモニタリングに関して、与信者、受託者ともに可能とあり、専門性等の事情次第では、ほかの者が担うということについても御提案されていますが、この「ほかの者」というのは具体的にどのようなプレーヤーが想定されているのでしょうか。
 また、そもそもこの事業成長担保権は、銀行等が事業性を評価して融資する制度を後押しするということで御提案されていると承知していたのですが、事業性の評価は、受益者である与信者が行うのか、誰が行うことを想定されているのかということについてもお伺いしたいと思います。
 よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。お願いします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。5点御質問頂いたと思います。
 1点目が、もし認識が間違っていれば御指摘頂ければと思いますが、設定時における担保権者の説明義務の相手方ですが、ここに書いておりません。そこは基本的には委託者との間で信託契約を結ぶことになりますので、当事者としては、法人で言えばそれを代表している社長さんということになるのかもしれませんが、契約当事者となる債務者、委託者に対して事業成長担保権の内容について説明をするということでございます。
 
 2点目は、仮に与信者が複数いる場合に、受託者がその利害関係などを調整するのかということでございます。ケース・バイ・ケースで、事実行為としては、与信者間での話合いみたいなことも生じ得るというのは当然だと思いますが、法的に見ると、受託者が一義的にはそういう役割を担っているとお考え頂くということで良いのかなというふうに考えてございます。
 
 3点目、既に信託設定がなされているところに追加的に与信者が加わることもできるかについては、基本的には可能なのだろうと考えております。冒頭、伊藤委員の御質問に答える中で、プラス面もあると申しましたが、成長資金の段階等に応じてそのようなこともできる柔軟性もセキュリティトラストの特徴なのかなと思っております。

【玉川室長】
 4点目、注2でございますが、金融機関のグループによっては、例えば事業者支援を専門にする子会社とかをお持ちのケースもありますので、そうした場合には、そのモニタリングを専門子会社がおやりになるようなこともあるのかなというのを念頭にこうした記載をしております。

【大来信用制度参事官】
 5点目、与信者がモニタリングを行うことが想定されているのかについて、11ページの期中の与信者のところに記載しておりますとおり、与信者が事業のモニタリングをしていく主体ということを想定して制度を組んでいこうと考えているところでございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。村上委員、よろしゅうございますでしょうか。

【村上委員】
 ありがとうございます。1点目についてですが、説明の相手方として労働者が想定されているのかということを伺ったではなくて、一般債権者のほうで、例えば社内預金、退職金、自社株などもございますので、そうした観点で労働者が受益者となり得るのかということをお伺いできればと思います。
 また、お答えの中で、期中において与信者もモニタリングして、委託者に対して様々な話合いなどをすることもあるとのことでしたが、会社としてはいろいろなプレーヤーから、その事業についての助言や指導がなされるということになり、少し煩雑さもあるのではないかという懸念を持ったところでございます。
 以上です。ありがとうございます。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございました。申し訳ございません。
ここの設定時の一般債権者というのは、どちらかというと10ページで御覧頂きますと、(C)1のように、従来ずっとカーブアウト分と俗称してきておりましたような、先ほど志甫委員とか大澤委員の御指摘の中でもあった、事前の段階では、(A)とか(B)が進んだ後にどれだけ残るかは、不特定だが存在する債権者というのを念頭にしております。設定時においてはそういう人がやや潜在的な存在ではあるのですが、そのような人たちを受益者に指定するということでございまして、基本的には、労働債権については、(A)の中で随時弁済をしていくので、Cの段階でそんなに残るものがないケースのほうが多いのかなと思っています。全くないとは申しませんので、そういう意味では、潜在的に残り得る商取引債権が主だとは思います。その中で可能性として労働債権が入るケースがあることも排除はされないということでございまして、不特定性が分かりにくくしている部分はあるのかもしれませんが、そういうことだと思います。
 
 それから、モニタリングを、複数の主体が行うことが煩雑というのは、会社側から見るとそう見えるということの御指摘がありまして、あくまで注2の最後にありますように、当事者間の合意ということですので、信託契約等の中で誰がどのような役割を担うかということをあらかじめ決めておくということで、そのケースにとって一番企業価値なりを最大化できるような定めをしていくと。合意の当事者の方は当然、委託者(債務者)でございますので、その中で窓口が一本化のほうが良いというふうに思えば、そういうことにしておくということかなと考えてございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。村上委員、よろしゅうございますでしょうか。

【村上委員】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に進ませて頂きます。
 次は山本先生ですね。どうぞよろしくお願いいたします。

【山本委員】
 ありがとうございます。私からは、かなり技術的なところですが、倒産手続との関係で3点コメント申し上げたいと思います。
 1つ目は、今出ている11ページの上から3段目、左の段の上から3つ目ぐらいのところに参考というのがあるところですが、私が理解を間違えているかもしれませんが、ここで問われているのは、任意事項等で事業の全部譲渡等がされた場合に、一般債権者の取り分を害して事業成長担保権者が多く取ってしまったというような場合に、破産手続において否認の対象になると考えられるかという問いですが、私自身の理解では、当然この一般債権者の取り分というのは、いわゆるカーブアウト分というのは被担保債権になっているところですので、その部分を侵害する形で事業成長担保権者が取ってしまうと。言い換えれば、事業成長担保権者に弁済してしまうというのは、受託者の義務違反になるのではないかというふうに思います。
 したがって、少なくとも受託者に対しては、一般債権者集団ということになりますが、破産の場合には、それは破産管財人が代表するということになると思いますが、破産管財人が受託者に対してその部分の弁済請求権というか、どういう構成になるか分かりませんが、本来カーブアウトされた部分を請求するということができるのだろうというふうに思いまして、多くの場合、少なくとも受託者がちゃんとしている限りにおいては否認の問題にはならずに、受託者に対する請求権という形で処理がなされるのかなという印象を持ちました。

 それから、第2点は、その左の段の一番下の四角にあるところです。「実行後、配当を一括受領し、与信者に配当し、一般債権者のための破産管財人等に交付することとするか」という設問で、これは今まで沖野委員をはじめ、複数の委員から問題提起というか御指摘があったところです。そんなに付け加えるところはありませんが、恐らく政策判断としては、破産管財人等に交付をするということは一つであって、その場合は当然、配当も破産手続の順位に従って配当が行われるということになり、そうすると志甫委員が指摘されたように、租税債権者は財団債権者として先に持っていくということになりますし、沖野委員が指摘されたように、担保割れの債権者は一般債権者ということで、他の債権者と比例弁済になると。また、無担保の金融債権者というのもいるかもしれませんが、それも当然入っていけると。その結果として、カーブアウトが想定していたというか、保護の対象としようとしたと思われる不法行為債権者等の債権者の取り分はほとんどなくなる、あるいはゼロになる場合もあるということで、それで良いと考えるのか。先ほどの金融庁のお答えは、私の理解する限りではそういうお答えだったように思いますが、それは一つの政策判断ということになるのかなと思います。
 もう一つは、やはり一般債権者というのは保護すべき債権者というものにこのカーブアウト分は行くようにするという考え方を取って、先ほどのような債権者、金融債権者とか租税債権者とかは除いていくという考え方を取れば、これはやはり破産管財人に交付するのではなくて、受託者が自分で弁済をするということにならざるを得ないのかなというふうに思います。どちらの方向で行くのかということは今後議論をする必要があるところだと思いますが、前者のような方向で行くのだと、そうなり得るということはしっかりと明言して、説明して、それでも良いですねという説明はしていく必要があるのだろうと思います。
 その場合の法律構成としては、恐らく破産管財人に交付するので、何らかの形でそれを破産財団に帰属する財産とみなすというような規定を置いて、それを破産手続の配当に乗せるというのが一番シンプルで分かりやすいのではないかというふうに私は思っています。これはもちろん、担保権者が受益者のために受けた、受託者がそれを保管している財産ですので純粋に破産財団には当たらないわけですが、信託契約等でそれが破産手続と同じ順序で弁済がされるということが前提のカーブアウト分であるということであるとすれば、実質的にはそれは破産財団帰属財産とみなすという規律を置くことは、それほどおかしなことではないのだろうというふうに思われるということです。以上が第2点です。

 最後、第3点は、大澤委員が指摘された会社更生の問題です。事業成長担保権が実行される前の段階で会社更生が開始されるということはもちろんですが、事業成長担保権の実行後に会社更生が開始されても、今までの議論ではこれは更生担保権に当たりますので実行は止まってしまって、基本的には、あとは会社更生で進むという形になるということで、いずれにしろ会社更生が優先する形になるのだろうと思います。その際に、やはり事業成長担保権者の被担保債権、これはもう更生担保権に当たることは明瞭だと思いますが、一般債権者、いわゆるカーブアウト分は、大澤委員が指摘されたとおり、不特定の債権者なので、要するに更生担保権者が不特定ということになるというところが一つ問題としてあるのだろうと思います。ただ、そこは、結局は実質から見れば、それは更生債権者に更生担保分を割り振っていくと。更生債権者の債権額に応じて割り振っていくという一種の割りつけを行って、その割りつけ分を更生担保権として更生債権者が持っているという構成になるのかなと思います。もちろん、これは法律の規定がなければできませんので、何らかの法律の規定が必要だろうというふうには思います。
 それから、余計なことを申し上げれば、カーブアウトを何%にするかということにもよりますが、通常は、事業成長担保権者は恐らく単独で更生計画の議決、更生担保権者の組については、少なくとも単独で議決できるぐらいの評価額を持つことになるのではないかというふうに思われますので、事業成長担保権者の意に反して会社更生手続が遂行されるということは現実にはあまり考えにくいのかなというふうには思いまして、結局、更生手続をやるにしても、事業成長担保権者の同意の上でやっていくということになるとすれば、あまり問題は生じないのかもしれないという感じはしますが、法律的には幾つか整備しなければいけないだろうというふうに思われる点はあるように思います。
 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に堀内委員、どうぞお願いいたします。

【堀内委員】
 堀内です。よろしくお願いします。
まず、全体的にこの信託ストラクチャーというのは、色々な方がおっしゃっていますように、債務者、債権者の中にちょっと面倒くさいなというイメージがあるという点は否めないので、それを使い勝手が良いという観点からすると、なるべく簡素なやり方で受託者に、ある程度の金融機関であれば、申請すればすぐなれるようにして、手続負担は減らさないといけないと思います。いずれにしても、諸般の事情を勘案して、こういうやり方でやむを得ずというふうに感じています。あまり、これはすばらしいというところまでは行かないですが、諸般の事情を勘案したら、これしかないのかなと思います。それは与信者と担保権者を分けて与信者を広く募るのだというふうに言いましても、一方ではわけの分からない人たちが与信者になれるということになると、当初の趣旨には反します。極端な話、法制審議会で言われていた隣のおじさんですが、占有改定以外に事業成長担保権が使えるようになりましたというのが売りになるのであれば別ですが、そういうことをやる必要は特にないと思います。それで与信者のほうを制限的にやっていくと、結局、担保権者の適格者とだんだんだんだん近づいていくということになり、その差額がなくなっていけば、このストラクチャーを使うという意義もあまり大きく認められなくなると思います。
 あとは、繰り返しになりますが、一般債権者のカーブアウトについてですが、私は個人的には、そこで例えば倒産法、つまり、更生法なり破産法なりを変えてもらったり、事業成長担保権のときはこういうふうに読み替えてもらったりというのはあまりやらないほうが良いと思います。既存の法律に、そのままに従うのが良いというふうに考えています。
 
 そういう観点から一番良いのは、あまりたくさんの金額は一般債権者には行かず、無視できるほどの金額だというのが良いと思います。だから別に大した金額ではないのだというのであれば良いのかなというふうに思います。既にもう色々なところで共益的な債権者、つまり、再生に資する債権者、例えば労働者等が特にそうなのですが、そういう人たちに払うべきものはお支払いしていると思います。商取引債権者も保護されているということであれば、それ以外の金融債権者とか、そういう無担保の金融債権者をどこまで保護するのが必要なのか疑問に思います。これ以上に一般債権者に配分するのは、あまり良くないのではないかというのが私の意見でございます。
 
 あとは、実際問題として、このストラクチャーを使ったときに、例えば一行貸しでメインバンク1行が融資者、与信者で、かつ受託者になっていたケースで、それを融資者、与信者としては適格ですが、担保権者としては不適格な方に債権を譲った場合というのは、引き続き、受託者としてだけ残らざるを得ないということになるのでしょうか。そうするとどういうことになるかというと、全額債権を譲ってエクスポージャーはないので信託業務だけを、信託を業としている信託銀行ならまだ良いのですけど、信託を業としていない人が、誰か他人のための受託者としての行為を無償でやるというのもどうなのかなとちょっと思ったので、その辺りがどういうふうになるのかと思います。もしくは、そういう場合はそういうところには譲れませんというのが回答なのか。それだったらローンの流動性を狭めることになるかなと思ったのが1点と、あとは担保権実行の必要多数というのは、制度ではなくて各個別の契約で決めるというふうに考えておられるという理解で良いのかどうかという、その2点だけ教えて頂ければと思います。よろしくお願いします。

【神田座長】
 ありがとうございました。最後のところはいかがでしょうか。

【玉川室長】
 1点目の与信者=受託者のケースで、被担保債権を譲渡した場合にどうなるかについては、ここは債権と受益権が一緒に移転するだけということなので、引き続き、受託者としては当初の方が残るということになるかと思います。
 
 すみません、2点目の質問だけ趣旨について、もう一度御説明頂いてもよろしいでしょうか。申し訳ございません。

【堀内委員】
 担保権を実際に実行するという意思決定を――基本的には、受益者である与信者の指示に基づいて担保権を実行していくという理解でいるのですが、それがシンジケートローンの場合、与信金額の50.1%なのか、ユナニマスなのか、または66.7%なのか、そういうのは契約で決められていくというべきものなのでしょうか。最初から制度的に何%以上の賛成または、そういう要求があった場合は、自動的に担保権の実行を推進というか進めていくという形になるのか、どちらでしょうかという質問です。

【玉川室長】
 ありがとうございます。御指摘の点は、まさに信託契約の中で適切な定めを置いて頂くということかと思っていまして、多数の受益者の意思に従う、もしくは特別多数みたいな、そこはある程度自由な設計をして頂けるようにすることを考えております。

【堀内委員】
 ということは、最初のほうの質問については、そのまま被担保債権を担保権者、つまり、受託者として非適格な人に譲った場合は、受託者としての業務はそのまま行う義務が残っていくという、そういう理解で受け取ったのですが、そういうことでしょうか。逆にそれをやりたくなかったら、担保権者適格者にのみ売却してくださいという、そういうメッセージということでよろしいでしょうか。

【玉川室長】
 少なくとも受託者になる、今回、免許制を御提案しているわけですが、その免許を持っていない方に譲られる場合には、新しい受益者の方は受託者になれないということだと思いますし、あと、信託契約でそもそも受託者が替わるというのは、恐らく信託契約の変更になるような気もしますので、そこはどういう処理になるかというのは、事務局としてももう少し整理をさせて頂ければというふうに思います。

【堀内委員】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 今の点は、受託者が交代するということも可能で、交代後の受託者は免許が必要ですが、信託契約の変更にもなるかとも思います。何もしないとそのままだというのは、建前はそういう立てつけになるということではないかと思いますが、リファイナンスの場合には、要するに事業成長担保権者が1行あったというときには、それは替わるというのが自然だとは思います。
 それでは、次に進ませて頂きまして、山内委員、どうぞお願いいたします。

【山内委員】
 日本商工会議所の山内でございます。皆様の御指摘を踏まえての意見とお願いを申し上げます。
 まず、信託という方法は新しい切り口であり、大いに検討に値するものと考えております。手続を簡素なものにして、負担を減らしていくことを目的とするものと理解しております。しかしながら、銀行にとって信託が活用しやすいものなのかは、1点気になっております。実際に信託がどの程度役立つものなのかということが十分に理解できておりません。信託が必須となると理解しておりますが、それによるコストや手間がどの程度かかるのでしょうか。それほど負担にはならない形に制度化できるのではないかという御意見もお聞きしましたが、金融機関の方々の御意見を聞きたいと考えております。繰り返しの意見となりますが、せっかくの制度が選ばれなくならないように、信託によるコスト負担を最小限にするべきです。この観点から、金融機関をはじめとした関係者の意見をよく聞いていただき、金融機関、事業者双方にとって使い勝手のよいバランスの取れた設計にしていただきますようにお願いいたします。
 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に水町委員、どうぞお願いいたします。

【水町委員】
 ありがとうございます。2点申し上げます。
 1つは、信託のみの制度設計とするか、信託は1つのオプションとして、金融機関、銀行を担保権者イコール債権者とすることも認めるかという選択の問題ですが、中小企業の資金調達と中小企業における人材育成というのは密接に結びついている。これからの中小企業の労働者の中長期的な成長と利益という観点からしますと、どちらの政策的な選択が中小企業の健全な資金調達の可能性を広げるかということは労働法の観点からも非常に重要なポイントだと思っています。山本委員等がおっしゃった制度設計上の留意点も考慮した上で、極めて重要な政策判断を行うということになりますので、制度選択のメリット・デメリットのもう少し緻密な分析を踏まえた検討を行って頂きたいということを希望しておきます。
 
 もう1点目。2点目は、これまで私が会議で述べてきた労働法の観点からの考慮というものの多くは、強行法的な規律やそれに基づく要請ですので、契約の形式ではなくて実態に基づいて及ぶものという性格であります。したがって、仮に信託という形式が取られた場合にも、これまで述べてきた労働法の観点からの規律や要請というのは、相手方である債権者等が変わるにしても、裏でどういう人が実質的な権限を持つようになるかという点は変わるかもしれませんが、基本的には強行法的な規律や要請に基づいてやらなければいけないことがあるという点は同様に及ぶものと考えております。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に菅野委員、どうぞお願いいたします。

【菅野委員】
 皆様の議論でおおむね論点は出ているのではないかなと思って聞いておりました。それで、私も堀内委員と感想というか、感触は似ていまして、信託という構成にすることによって利用者の心理的ハードルというのは上がるのだろうなと。あとコスト面の問題もあって、信託だとより簡易だよねとか、より使いやすいよねという印象はやっぱりないと思うので、そこのところは実務面と、それから関係者の皆様への周知、それから、ひな形の契約を用意するなどの工夫で何とかしていくということなのだと思っております。ただ、受託者の範囲を限定しつつ、与信者は範囲を限定しないということから来て、法律的にこの選択肢なのだということで理解をしております。
 
 コメントは1点だけ、カーブアウトのところでして、これは実務的な意見ということなのですが、確かにカーブアウトの趣旨を貫徹しようとすると、この被担保債権全体が弁済されないときに、配当は管財人に渡すのではなく、受託者に渡して破産手続の従前の優先順位とは別に処理するが、それを破産手続において配当とみなしていくということも一つあるのだと思います。ただ、できるだけそうはならないで、商取引債権もその他の債権も弁済できる程度に事業価値が維持されているところで処分する、早期処分・早期弁済ということを考えるのであれば、それが貫徹できないときには、もう破産手続の順序に従うというような設計の仕方は、割とシンプルで理解が得られやすいのではと個人的には思っております。
 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。以上で、本日御参加の委員の皆様方全員から御意見を頂くことができました。大変貴重な御意見を、基本的な考えのところ、それから細かな技術的な点についても頂きまして、大変ありがとうございました。
 
 私も1点だけ、信託が分かりにくいというか、なじみがないというのは確かにそうではないかなと思うのですが、これは沖野先生も御指摘されたと思いますし、事務局の資料の最後のページにもあるのですが、既に担保付社債信託という制度がありまして、担保付社債信託法というのが、明治38年だったと思いますすが、随分古くにできていまして、戦後の金融制度というのは、ちょっと私、古い人間なものですから、有担原則と言っている企業への貸出しについて融資は担保つきで行うという実務慣行が存在していました。銀行による融資だけではなくて、社債には発行制限があった時代が長く続きましたが、社債についても有担原則で担保をつけるということで、高度成長期の社債というのは、事業債と言っている事業会社が発行する社債は全部担保つきでした。担保つきという場合、担保付社債信託法に基づく担保付社債信託以外の形の担保付社債は認めてきませんでしたので、結局、全て社債は担保つきであり、そこで受託者を務めたのはメイン行というかメインバンクであったということがあります。そういう意味ではなじみがあるというか、実務も経験も豊富であった分野だと、少なくとも担保付社債の運用については言えるかと思います。
 ただし、これは細かな話で恐縮ですが、明治時代に制度をつくったときは、アメリカやイギリスと同じように、担保権だけではなくて社債自体も信託財産という形で法律をつくったわけですが、その当時は信託法が存在しませんで、その後信託法と信託業法が大正11年にできてからは、その信託の定義との関係で社債は信託財産ではなくなって、それで担保権だけが信託財産という形で、今日の言葉で言えば、被担保債権と担保権が分離するということになり、それを2006年ですかね、今の信託法を制定するときに、井上先生がおっしゃったセキュリティトラストという形で担保付社債信託以外のというか、信託一般にも使用可能な姿を設けて今日に至っているということかと思います。
 そういう意味では、信託法理の使われ方は、もともとのイギリスとかアメリカとは離れてしまったという言い方が良いかどうか分からないのですが、そういう歴史はあるのですが、なじみということで言うと、担保付社債信託というのはずっと使われてきて、銀行がずっと受託者を務めてきたという歴史があります。そのときの受益者というのは社債権者なので今回のスキームとはその点は違うのですが、そこにおける受託者の実務ですとか、義務ですとか、そうしたものについては相当の蓄積があると言うこともできるようにも思います。
 
 すみません、長くしゃべり過ぎましたが、とはいえ、本日数々御指摘頂きましたように、細かな技術的な点はたくさんあると思いまして、本日頂きました御指摘を踏まえてさらに検討をさせて頂きたいと思います。

 本日はまだ若干時間に余裕はございますが、もし皆様方でさらに追加の御発言、あるいはオブザーバーの皆様方で御発言があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 ありがとうございます。オブザーバーのみずほ銀行の日比野さん、どうぞお願いいたします。

【日比野オブザーバー】
 ありがとうございます。先ほど委員から金融機関の意見もというお話がございましたので、少しだけ述べさせて頂ければと思います。
 信託を使う仕組みということだと、利用する側の金融機関としては、極力簡易な仕組みを希望するところではありますが、これが選択的なものというよりかは、基本的にはこの方向性でということが前提だと思いますので、それを踏まえてということでお話をさせて頂ければと思います。
 
 まず、使い勝手として、ユースケースの一つとして考えておりましたLBOなどの局面では、むしろ担保権信託という形で債権譲渡などが簡便にできるようになるというメリットも一方ではあるのかなと感じているところでございますが、他方で、もう皆様から御意見が出ておりますとおり、特にスタートアップ企業向け融資のようにシンプルな設計でこの制度を導入したいという場合ですと、特にレンダーが単独で受託者が完全に一致している場合には受託者としての固有の責任というものがどのくらいあるのかとも思いますので、この辺りはもう少し整理をして頂ければありがたいと思っております。
 受託者の義務、責任については、法律で定めるものと信託契約で定める部分と両方あるかと思いますし、金融庁様のほうからも、契約による設計の部分というのもあるというお話がございました。どのような設計をすることによって責任の範囲が定まるのかといったところは、契約書式の定式化などの検討に御協力を頂ければと思います。
 あと、最後に、信託の仕組みについては、免許制を導入するということを御提案頂いているかと思います。免許制の下でできるだけ簡便な制度設計での運用ということであれば、例えば監督における指針などと併せて、受託者の行為規範、責任範囲が明確になるような仕組みを導入して頂ければというふうに考えております。
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、信託協会の高橋さん、どうぞお願いいたします。

【高橋オブザーバー】
 信託協会の三菱UFJ信託、高橋です。御提示頂いた事業成長担保権の設定を信託契約による方向性について、既存の担保権信託の実情等も踏まえて、個社としての見解ではございますが、コメントさせて頂きます。これまでの委員の方々の御指摘等と重なる点があることを御了承ください。
 
 担保権信託は一部のシンジケートローン等において利用されている事例があります。ただし、シローン全体で見ると、現状では信託の方法によらない担保エージェントによる担保管理が多く利用されております。シローンのアレンジャー兼レンダーたる金融機関が担保エージェントも担う場合が多く、単なる受託者よりも、レンダーのほうが契約内容や前提条件等、案件を熟知し、企業のモニタリングも実質的に担っていること等がその背景にあります。
 本件において、免許制による新たな信託業を創設する案が示されておりますが、受託者についてはそのような観点で、委員の方々からも御指摘ありますが、企業との交渉等を通じて貸出し内容や前提条件等のスキーム、事業内容や事業計画を熟知するローンのレンダーたる銀行等の金融機関が担保付社債信託法と同様に受託者になることが望ましいのではないかと思っております。
 
 次に、受託者の実務の観点を想定すると、本件はレンダーに加えて、一般債権者も受益者になることが示されており、破綻時の実行手続において、受益権の複層化、優先劣後構造が生じることになります。受益権が複層化する場合は、全体最適が各受益者にとってベストとは限りませんので、受託者が裁量権を有すると仮定すると、その判断が難しくなる可能性があることに留意が必要と思われます。
 また、受託者には善管注意義務が課されますが、通常の担保権とは異なり、事業成長担保権の管理をどのように行うべきか。例えば、不動産抵当権であれば、担保物件の実在のチェック等が挙げられますが、その管理すべき内容やレベル等、事業者ごとあるいは案件ごとに異なる可能性があり、どこまで行えば善管注意義務を果たしたと言えるのか明確にしていく必要があると思われます。
 
 最後に、もっと皆様方に信託をきちんと知って頂けるように、信託協会、信託銀行がもっともっと頑張らなければいけないことを痛感しました。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかに御発言の御希望はありますでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
 どうぞ、尾﨑さん。

【尾﨑参事官】
 すみません、金融庁の尾﨑です。
志甫先生と山本先生から、カーブアウトした後に破産手続に入ると租税債権が優先してしまうのではないか、あるいは、担保にカバーされていない部分、恐らく他の金融債権者ということになるかと思うのですが、そうした方々と按分になってしまうことによって一般債権者の取り分がなくなってしまうのではないかといった点がございました。
 税に関して言いますと、源泉徴収所得税等については、共益債権というか、随時弁済されるということに分類されております。残りは法人税ということになるかと思います。突発破綻のように黒から急に赤になってしまうといったような場合については、確かに法人税の滞納といったようなことが考えられるわけですが、こうした点については、まさに事業成長担保権の目的であるしっかりとモニタリングによって防いでいくということが大事なのではないかと思います。そうでない場合には、通常、税金を払っていけば滞納が残っているというようなことがないことが期待されるのではないかと考えておりまして、税に関してはそうした形で、一般債権者の取り分がなくなってしまうといったようなことを、このスキームをうまく活用してなるべくなくしていくということが重要なのではないかなというふうに考えています。
 それから、他の金融債権者に関しては、事業成長担保権者に劣後する債権者ということになるわけですが、一般債権者として入ってくる場合はもちろんあり得ますし、他の劣後する抵当権ということももちろんあり得るわけですが、このような劣後債権者が生じる可能性は、事業成長担保権を使う場合には通常よりは少なくなるといったようなことが考えられます。事業者に寄り添ってしっかりと丸ごと支援を行うという事業成長担保権の趣旨から考えれば、そうしたような債権者が存在しないといったようなことも当然想定されるのではないかというふうに考えております。
 したがって、以上のことを考えますと、一般債権者の分がなくなってしまうといったようなことをあまり過度に心配し過ぎるのはどうかなというふうに考えているところでございます。
 
 それから、星先生がちょっとおっしゃった点についてなんですが、何でこの信託のスキームを使うのかといった点につきまして、我々のほうから2点御説明させて頂きまして、同時に沖野先生などからもこの点については解説頂いたところであります。1つ目のカーブアウトを行うということについてなんですけど、これは当然、一般債権者を弁済順位で優先させるということは、通常の実体法上の順位とは異なってくるということになりますので、こちらを優先させるような制度設計をするということ自体が、それなりにかなりしっかりとした民法の議論をしなければいけないといったようなこともありますので、信託という構成とすることで一般債権者の優先順位を上げるといったようなことが取りやすかったということがまずあるので、1つ目の理由というのはそれがあるのかなと思っています。
 もう一つのほうは、星先生の、あまり債権者の範囲を広げるというのはどうなのかという点についてですけど、これも途中で議論がございました。もちろん、債権者のほうをしっかりと面倒見るというのが重要なことではあるのですが、例えばグループ内でサービサーを持っていて、かなり劣化してきた場合には譲渡した上で、そちらのほうでしっかりと再生のための手続を取るといったようなことが望ましい場合ももちろんあり得ますので、その辺は柔軟な制度設計という観点から、与信者の範囲を広げるといったようなことが制度の円滑な運用のために重要なこともあるのかなというふうに考えているところでございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは、本日はこの辺りとさせて頂ければと思います。本日も活発な御議論を多数頂きまして、誠にありがとうございました。最後に事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 ありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループの会合を終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。皆様方、よいお年をお迎えください。


 

―― 了 ――

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線:3579、3535)

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