金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」(第7回) 議事録

  • 1.日時:

    令和5年2月2日(木曜日)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室


【神田座長】
 ただいまから、令和4年度の金融審議会の「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」の第7回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の会合も前回に引き続き、オンライン会議を併用した開催とさせていただきます。会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせていただきます。また、議事録は通常どおり作成して、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、大変恐縮ですが、カメラの方はこの辺りということでお願いできればと思います。

(報道退室)

【神田座長】
 それでは、議事に移らせていただきます。本日でございますが、まず事務局から前回皆様方からいただきました御意見等を踏まえた報告案の修正点等について説明をしていただきます。その後、本日、お取りまとめを目指した御議論を皆様にお願いするということになります。
 それでは、事務局からの説明をお願いいたします。大来さん、よろしくお願いします。

【大来信用制度参事官】
 座長、ありがとうございます。
 それでは、お手元の資料を御覧ください。本日は報告書案ということで資料を一本化してございます。前回でいいますと資料1だったものから、前回1月25日の御議論を踏まえて発展をさせております。
 
 11ページを御覧ください。注32でございますが、受託者が一般債権者等の受益者に対してどのような義務を負うかについて前回御議論がありました。実行までは、一般債権者等は不特定ですが、受託者はそういう一般債権者等である受益者に対して公平義務を負うものと考えられると。
 もっとも、信託契約において、受託者の業務を定型的・非裁量的なものに限定するような場合には、受託者がこうした義務に照らして判断すべき機会は少なくなるのではないかと。
 また、いずれの受益者の利益も、配当可能額の最大化という点で共通すると考えられるため、受託者においても、その観点で行動する限りにおいては、公平義務に照らして問題になることは基本的にはないと考えられるということを注に追記してはどうかということを御提示申し上げております。
 
 続きまして、21ページにお進みいただきまして、やはり注でございます。注68になります。担保目的財産に処理に費用のかかる、すなわち負の価値を有するような財産が含まれていた場合について前回御討議をいただきました。現行の破産手続等の実務を参考とすると、その処理に係る費用は、事業成長担保権の実行手続の中で事業成長担保権者への弁済に先立ち支出されるものと整理されると考えられることを参考となるような文献について紹介をする形で御提示申し上げております。
 
 それから、22ページが「簡易な実行手続」でございます。第3回以降、多く時間を割いて御議論をいただきました。報告書では、比較的簡素に結論部分を記載してはどうかということで、黄色い部分のように御提示申し上げております。
 主要な債権者間で実行手続中の弁済猶予が合意されているような場合などを念頭に、迅速かつ債務者の信用・事業価値の毀損のより少ない手続を設ける意義があるのではないかという観点から、簡易な実行手続を設けることとし、その開始要件については、事業の承継までの間、資金繰りが継続する見込みであることなど、開始要件は加重しつつ、管財人による全ての債務者への弁済は停止されない、設定者の個別財産に対する強制執行等の停止等については行わないこととするということを御提示申し上げております。
 また、同じページの注75におきまして、商取引関係への影響等を最小限とし、事業価値を維持しやすくするため、民事再生と同様のDIP型の手続を可能とするというような論点を御提起いただきました。これについて将来の課題として明記することとしてはどうかということを御提示申し上げております。
 それから、24ページから25ページにかけまして、実行手続において共益の費用とする(ⅰ)から(ⅲ)以外のものを(ⅳ)と打ちまして、ここについてどのような考え方で、どのようにしていくかというところでございます。
 黄色いところの29行目からでございますが、まずは今実務上行われている別除権の目的財産が破産手続の中で任意売却されたときに財団組入が認められる根拠となる考え方を一旦整理しています。
 それから、34行目以降、財団組入の割合については、ケース・バイ・ケースであるということを記載してございます。
 
 25ページにずっと議論が続きまして、具体的な割合については、こうした破産手続における実務の積み重ねや上記の観点を踏まえて法定することが適切と考えられると記載してはどうかということと、注81におきまして、この割合を検討するに当たっての視点ということで、1つは、事業成長担保権の実行手続の中では、一般債権者にも共益の費用として、(ⅰ)から(ⅲ)において、幅広く優先的に弁済されることを踏まえると、(ⅳ)での取り分確保は必須ではないという考え方や、事業成長担保権の実行手続が終われば全て手続が終わるわけではなく、少なくともその後の法人格の清算のための費用を用意する必要があり、また、法的な手続を利用する場合には担保権者が期待すべきでない割合があってしかるべきという考え方、そして、仮に政策的に一般債権者等への配慮が必要だとしても、破産手続における担保不動産売却手続における財団組入の理由のうち、当てはまるのは担保権者と一般債権者の公平性の観点ということ、そして、一律の割合とするのではなく、法定の上限の中で裁判所が決定するという枠組みも考えられるということを記載してございます。
 
 それから、29ページ以降が労働者保護に係る論点でございます。まず(イ)といたしまして、「総論的な視点」ということで、事業価値を高めていくためには労働者からの労務提供が不可欠であり、また、価値ある事業を継続及び成長させていくことは労働者の雇用の安定の観点などから労働者保護は極めて重要である。
 そして、考慮要素として、伴走型支援による事業の継続等を実現するためには、労働者の協力は不可欠であること。
 それから、事業成長担保権の設定自体は設定者と労働者の間の労働契約に何か追加的な制約を加えるものではないと。
 それから、実行手続について個別財産への担保権のように個別資産の売却によって事業を解体させるものではなく、事業そのものを承継させるという観点。
 そして、実行手続における管財人は、労働組合法上の使用者に該当すると解されることから、各種の義務を遵守する必要があるということ。
 それから、実行手続における労働契約の承継においても、労働契約の承継に係る労働法制上のルール等が適用されるといったような考慮要素をまずは記載してはどうかと。
 そして(ロ)に入りまして、「具体的な制度設計」でございますが、(ⅰ)事業成長担保権の範囲・効力について、総財産の管理処分権が設定者から管財人に移った後にも、労働者が継続して事業に従事する必要があるため、事業成長担保権の担保目的財産に労働契約の使用者の地位も含まれると整理するのが望ましいのではないか。
 そして、(ⅱ)でございますが、未払賃金の話でございまして、この取扱いについては、31ページの2行目にありますように、実行手続の中でも随時・優先弁済をするということを記載してございます。
 (ⅲ)実行時における労働契約の承継のあり方ですが、労働者を手厚く保護する観点と、一方で早期のスポンサー選定を可能にする等の観点を踏まえまして、①以下のところでございますが、実行手続における管財人は、労働者も含めた利害関係人全体に対して善管注意義務を負い、事業を解体せずに雇用を維持しつつ承継することを原則とし、その事業の承継等については、裁判所が、労働組合等の意見を聴取した上で許可をすることとすると。
 そして、裁判所の許可に当たっては、譲渡金額の多寡のみを問題にするのではなくて、雇用の維持や取引関係の維持、その他多様な事情を考慮して最も適切な承継先を選定することが求められるということを記載しております。
 
 32ページの20行目以下の(ⅳ)実行時の情報提供・周知徹底についてですが、ここも事業の継続という制度趣旨、あるいは労働者の理解と協力の必要性、他の制度等とのバランス等を踏まえて、実行手続の開始に際して、労働組合等にその旨を通知することとした上で、裁判所は事業の承継等の許可に当たっては労働組合等の意見を聴取すると。
 加えて②でございますが、労働者には各種権利が保障されていて、こうした権利を必要に応じて適切に行使することができるようにするため、管財人は、開始決定後、遅滞なく必要な情報を提供する手続を設けると。
 管財人は、労働者との合意に向けて、事業譲渡指針等の留意事項を参考にするということを記載してございます。
 (ⅴ)設定・活用に係る情報提供・周知徹底についてでございます。労使間の紛争を予防する必要性、労働者の地位に与える影響、あるいは他の制度等とのバランスを踏まえまして、34ページですが、経営者から背景も含めて説明を受けたほうが、第三者からの伝達に比べて協力のインセンティブが高まるという御指摘。
 それから、ルール・ベースで特定の事項の伝達等を義務づけてしまうと、伝達の在り方が硬直的となり、かえって、コミュニケーションの質の低下の懸念があるという視点を記載した上で、企業の状況に応じたコミュニケーションが行われることが重要であるが、例えば、もとより、経営者と労働者の間で労働者にも関係がありうる経営方針等々、日常的に適切なコミュニケーションが確保されることが望ましいところ、その一環として他の重要事項と同様に資金調達やそれに伴う事業成長担保権の設定に際しても労使間の情報共有が重要と考えられると。
 また、労使間のコミュニケーションの改善を図ろうとする取組は、日常的な経営の中で実現されることが望ましいと考えられるものの、資金調達やそれに伴う事業成長担保権の設定を契機になされることがあっても良いと。
 このため、事業成長担保権の設定の際に、労働者の理解と協力を得るべく、担保権の内容を含め、企業が置かれている環境や経営課題などを併せて労働者とコミュニケーションを図ることが考えられるという旨を記載してはどうかということでございます。
 それに加えまして、22行目辺りから、事業成長担保権者は労働条件等について決定する等の権限を有するものではないことや、事業成長担保権設定の目的が労働条件等に影響を及ぼすものではないこと、設定の際における労働組合等への説明を行うことが望ましいことなどについて、政府において積極的に周知・広報を図ることとしてはどうかという点。
 
 そして、最後、35ページですが、労働組合法上の使用者性の論点については、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、労働組合法上の使用者性を有する可能性がある旨を、金融機関等に対して周知をするということを記載してはどうかと考えてございます。
 前回からの追記部分は以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、今の御説明を踏まえて、メンバーの皆様方から御質問、御意見等をお出しいただきたいと思います。
 いつものように、御発言いただける場合は、オンライン会議システムのチャット欄に全員宛てで御自身のお名前を入力し、一言で結構です、送信してください。それを確認して私のほうから御指名をさせていただきます。そうしましたら、御自身のお名前をおっしゃった上で御発言いただければありがたく存じます。
 どなたからでも結構でございます。御発言ございませんでしょうか。まずメンバーの方に御質問、御意見をお出しいただく。その後、オブザーバーの方々でもし御発言があれば、承りたいと思います。
 それでは、メンバーといいますか、委員の皆様方、いかがでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、星先生、お願いします。

【星委員】
 すいません。発言する質問はないのですが、全体的にすごくよく書かれていて、これ以上コメントを付け加えることは僕からはありませんので、これで良いのかと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 ありがとうございます。安井委員、どうぞお願いします。

【安井委員】
 私も本当に付け加えることはないのですが、ちょっと前回、大変申し訳ありません、出席できませんでしたので、一応一言だけ。
 本当に実態面から、企業の実態が様々ある中で、そういう面も、技術的な面も本当にうまくまとめていただいたと感謝しております。
 前回議論されたとお聞きしています労働者保護のところは、コミュニケーションをかなり取られている会社もあれば、必ずしもそうではないところもあるというような御懸念もある中で、今、うまくいっているものの実務を損ねないような形でまた底上げもしていけるというような考え方を示していただけたのかなと思っていまして、ここは実際使っていく中で経済団体として説明をしていく中においても、そういった趣旨のまとめだよということは、私だったりとか、あと当局の皆様と連携してお伝えしていけると良いなと思っております。
 今回は大変ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 ありがとうございます。連合の村上委員、どうぞお願いします。

【村上委員】
 ありがとうございます。これまでと重複する部分もあるかと思いますが、改めて労働組合、労働者側の立場で意見を申し上げます。
 私自身は事業成長担保権制度の導入について、初回にも消極的な立場であるということを申し上げましたし、それは現在も変わっておりません。
 しかし、その制度が導入に向けて議論されるのであれば、労働組合、労働者に対するマイナスの影響がないようにとの考え方で今回議論に参加させていただきました。
 ほかの委員の皆様方の御理解もいただきまして、事業価値を高めるためには、そこで働く人の理解と協力が不可欠であること、そして労使コミュニケーションが重要であるということも書き込んでいただきました。このような報告書案の書きぶりを前提に3点申し上げます。
 
 1点目は、実行時に関しまして、32ページ及び33ページに、管財人から労働組合等への情報提供を行うに際しての参考として、事業譲渡指針や労働契約承継法指針を挙げていただいております。前回申し上げた点を汲み取っていただき、ありがとうございます。
 これらの指針の内容は、労使慣行をベースとして作成され、その内容は実務においても有益であると認識しています。労働者との合意に向けた場面にとどまらず、労働組合等との意思疎通を図る際にも参照、活用いただきたいと思います。
 
 2点目に、設定時についてです。33ページから34ページにこの間の議論を整理いただいております。前回、経営者から直接説明していただくことと登記を見て知るのでは雲泥の差であると申し上げた点は34ページに記載いただきました。これは言い方を変えれば、ほかの手段で見聞きした場合には、働く人たちは不安と不信を抱いて、労働組合であれば団体交渉を申し入れて説明や資料の提示を求めるケースも生じるであろうということです。労働組合などと話すのは重い負担との御発言が相次いだのは、労働団体の役員として大変残念な思いですが、改めて労使関係について広く御理解いただき、労使協議が様々な制度に組み込まれるよう、私自身、もう一段ギアをチェンジして取り組んでいかなければならないとの思いを強くいたしました。
 
 3点目です。同じく設定時の問題で、設定時の労使コミュニケーションの促進について申し上げます。34ページの後段の①では、制度に関して積極的に周知・広報を図る内容を記載いただきました。あわせて、同じページの15行目の「このため」の一文では、労働組合等への情報提供の促進に向けて取り組むことが望まれると政府の取組も記載いただきました。
 30ページにおきましても、法令・ガイドラインその他の実効的な手当てを広く検討することが必要とされておりまして、金融庁をはじめ、政府におかれては、周知・広報にとどまらずに、法令・ガイドラインなども含めて、労働組合等への情報提供の促進に向けて取り組んでいただくことをお願いいたしたいと思います。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に、志甫委員、どうぞお願いいたします。

【志甫委員】
 よろしくお願いいたします。大変バランスの取れた報告書の案を仕上げていただいて、どうもありがとうございます。その上で、幾つかコメントさせていただきます。

 まずは1点目として、労働関係について、前々回に倒産・事業再生実務の観点からコメントをさせていただきました。報告書案に対する改めてのコメントということで、29ページの脚注100にある解雇権濫用法理の適用と、31ページの脚注104にある管財人の団体交渉応諾義務の2点について、簡単にコメントさせていただきます。事業成長担保権の実行場面として、どういう場面が想定されるかによるとは思いますが、これまでの議論のとおり、一定程度、倒産状態に近いことも想定されると思います。そこで、現在の倒産実務における議論を検討すると、1点目の解雇権濫用法理について、裁判例においても、解雇権濫用法理が適用されるとはしつつ、具体的な当てはめとして、例えば、東京地裁平成24年の3月30日判例タイムズ1403号149頁(JAL事件)におきましても、解雇の必要性において、「いわば一旦沈んだ船であり、二度と沈まないように大幅な事業規模の縮小に伴う適正規模の人員体制への移行を内容とする計画を策定することが必要不可欠であったということができる。」と判示され、会社の状態が考慮されています。脚注100におきまして、当該観点も盛り込んでいただいても良いのかなと思いました。また、脚注104の団体交渉義務につきましても、更生管財人の団体交渉応諾義務自体は認めつつ、応じるべき事項については無制限ではないというように解されているところかと思います。労働者の皆様をできる限り保護することは当然のことですが、事業成長担保権の実行管財人が、できる限り高い価値でスポンサーに対して承継することが、労働者を含む利害関係人の利益を最大化するという面もあります。事業担保権の実行段階は、完全な平常時とは異なるという観点から、記載ぶりを検討していただいても良いのではないかと思いました。   以上が労働者関係でございます。

 つぎに、これまで申し上げているところですが、事業成長担保権に優先して支払われる債権について、報告書案の23ページから24ページの(ⅲ)、手続開始前の原因により生じた債権について、コメントさせていただきます。これは、裁判所の許可によって共益の費用とされるとして、「少額」や、「著しい支障」という要件は外した上で広く認めるのだという考え方と理解しております。具体的な条文の書きぶりについては今後詰めていただくところ、これをどのように書くかによって、裁判所の運用において、消極的になるのか、積極的に認められるのかが変わってくるかと思います。手続開始前の原因によるとしても商取引債権を弁済することが事業価値の維持につながり、担保権者の配当にもつながるということは共通認識であり、いかに円滑に裁判所の許可が出るのかという観点で、条文を作成していただければと思っています。これまでの議論ですと、取引を引き続き継続してくれる取引先、今後も協力してくれる取引先に対しては、広く支払うことと理解しておりますので、そういった観点で、条文上、限定的な要件を課していくとか、一見して分かりやすい要件を定めていただければと思っております。
 
 以上、労働の関係と、共益的な支払いについて、コメントをさせていただきました。いずれも、事業担保権の実行手続の場面においては、事実上の倒産状態として倒産・事業再生の場面と重なる部分がありうる、ということが根幹にあり、立法目的において、どういったところまで書き切っていただくのか。担保権者、事業担保権者として回収を図るのは当然としても、事業価値を維持した上で回収を図るためにも、また事実上の倒産状態であることからも、利害関係人全員に対する配慮であるという観点も、できる限り立法目的に入れていただければと考えております。
 どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に大西委員、どうぞお願いいたします。

【大西委員】
 大西です。よろしくお願いします。
 まず全体として、いろいろ私の意見も含めて、よく御整理いただいて、この内容につきまして、おおむね問題ないと思います。どうもありがとうございました。
 その上で、少し細かい点につき若干幾つかのコメントをさせていただきます。まず21ページなのですが、ここで四角の一番上の辺りの中段のところで許認可について触れられています。実際の担保権実行のときに、重要な許認可が承継されないと、事業の承継に支障があるということから、下の69の脚注には触れられているのですが、できれば企業担保法と同じような規定を入れる等、なるべく許認可が承継されるような方向で法案を御検討いただければありがたいです。
 
 それから、2点目は、21ページから22ページにかけての事業成長担保権の配当のところです。ここで、劣後する担保権者に対しては、担保権、倒産手続類似の債権調査確定手続を設けることとされており、それが確定しないと劣後担保権者に配当を実施できないことになります。一方で、この債権調査確定手続で、例えば会社更生と同様に訴訟まで至ると、極めて長期化する可能性があるので、配当手続においては、少なくとも先順位の担保権者には先に配当できるような法案でつくっていただければ実務上は支障がないと思います。
 
 それから、24ページ、25ページのところですが、前回議論になったカーブアウトの割合についてです。カーブアウトの割合を考えるにあたっては、優先の債権ではない一般債権が事案によってどれほどあるのかよく分からない状況にあるということと、共益費用としては分類されていない、破産手続の費用とか、清算手続の費用については、割合ではなく固定額で計算されるものなので、そういうことを勘案すると、カーブアウトの割合は、一定の上限割合を決めて、その範囲の中で事案に応じて裁判所の許可によって決めていくという運用にならざるを得ないのかなと改めて思います。書き方を変えるということではないのですが、前回と同様にコメントさせていただきました。
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、大澤委員、どうぞお願いいたします。

【大澤委員】
 大澤でございます。報告書の取りまとめ案の取りまとめを拝見いたしまして、ありがとうございます。いろいろな議論がある中での取りまとめということで非常な労作だと感じておりますが、幾つか、詳細なところの論点になるかもしれませんが、コメントをさせていただければと思います。
 
 まず、先ほど大西委員からもありましたが、配当に関してのところでございます。こちら、配当手続のところについては、新しくできた注68で、そういった負の資産、例えば土壌汚染等も含めてだと思いますが、そういったものを先立って弁済すると書いていただいて、その上での配当ということになるかと思いますので、配当手続においては、まず、いろんなこの後に出てくるローマ数字の(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)、優先関係のところ、こういったものを払ってからの配当ということに当然なってくるのだろうと考えております。
 その中で、担保実行管財人が種々許可を取りながら、裁判所に許可を取りながら優先弁済をした上で、最後、配当という段階でもまた配当の許可を恐らく取って、この手続の中での配当ということになろうかと思います。
 一方で、私、そういう理解ではおりますが、恐らく法的にもそのような形で進むのだろうと考えておりますが、先ほど大西委員からもありましたとおり、一方で、多少何らかの理由で、最後までずっと配当を待ち続けていると、先順位が全く配当されないということにもなろうかとも思います。そういった場合には、実体法上の優先順位を勘案して、裁判所の許可で中間配当なり何なりということを考えても良いのかなと思いました。
 ただ、その際には、先ほどの優先されるべき弁済というものが確実に担保された上での配当ということになろうかと思いますので、担保実行管財人が、そういった必要性、許容性を裁判所に申し出て、許可申請をして、裁判所からの許可という形で配当が進むと理解をしております。こういったところは技術的なところになろうかと思いますが、そういった優先関係等の考え方を明らかにした上で、法制度を整備していただければなと感じております。
 また、担保実行の一番最後のところのイメージとして、配当が終わって、最後終結決定なり何なりというのが出るのかなとも思っております。そういった仕組みのところとして、どこで実行手続が終わるのかということは、この案ではそこまで詳細なところはないとは思っておりますが、実務的にはどこが終了なのかと。その終了のときには、先ほどの実体法手続における優先関係の弁済全て終了しているのが当然の前提だと思いますので、そういった流れが分かる形での手続の仕組みを整えていただければと考えました。
 
 それから、カーブアウトのところにつきましては、いろいろな議論があるところでございまして、先ほど大西委員からありましたとおり、それこそ裁判所が上限を決めて、その中でというようなお考えもあろうかと思いますし、いやいや、任意の譲渡実行をされて、要は、実行手続を使わずに任意での実行をした後に例えば抜け殻会社に破産手続を申し立てるというようなときのカーブアウトがどう決まるのかというような話もございますので、個人的には、こういった優先弁済、ローマ数字の(ⅰ)から(ⅲ)のような形での優先弁済がきちんと決まった上で、法制度の整備の観点では何らか確定的なものが、パーセンテージなり何なりということでしょうが、決まり、それが信託契約の中にきちんと入るということが手続面としては安定的に動くのかなと考えてはおります。
 以上、2つ申し上げました。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、倉林委員、どうぞお願いいたします。

【倉林委員】
 前回同様、短いコメントになりますが、今回、対象とする企業の幅がある中て、急成長を求められるスタートアップ企業でも活用可能な形にまとめ上げていただいたと理解しております。大変バランスの取れた報告書に仕上がったなと感じておりまして、他の委員の皆様、そして取りまとめの事務局の皆様、本当にありがとうございました。私も大変勉強なりました。
 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に、山内委員、どうぞお願いいたします。

【山内委員】
 日本商工会議所の山内でございます。報告書の取りまとめありがとうございます。先ほどの倉林様のご発言と同じように、本報告書の内容につきましては、さきの議論にもありました労使のコミュニケーションの在り方も含めて、事業成長担保の使い勝手に配慮したバランスの取れたものになっていると考えております。
 
 1点、最後に事業者団体として本制度の制度設計にあたってお願いしたいこと、留意していただきたいことを申し述べます。先日、弊所の会員企業から、「事業成長担保の議論を聞いたが、スタートアップ等に対する既存の事業性融資との違いは何か」という趣旨の質問を受けました。当方より説明しましたが、事業者に対しては、本制度の位置づけをしっかりと理解いただくことが重要です。特に成長余力のあるスタートアップ等の企業に対しては、事業成長担保が前向きな融資の制度であることを分かりやすく、丁寧に周知していくことが大事であると感じました。
 当初より、弊所といたしましては、知財等の経営資源を活用した事業性融資の活用が進んでくれることが最大の関心事であり、このような事業性融資を前に進めるためには担保を設定することが必要ということで、1つの選択肢としての制度という理解で本検討会にも参加をさせていただいております。
 中小企業は極めて急激な環境変化にさらされております。企業が価値のある事業を継続・拡大して、雇用も守っていくために、コロナ禍を乗り越える、弊所ではビヨンドコロナと言っておりますが、ビヨンドコロナに向けて、事業成長担保が、金融機関、事業者双方にとって使い勝手が良く、経営資源の乏しい中小企業やスタートアップ企業などの事業継続、付加価値の拡大、そして成長を後押しする有力な選択肢となるような形に制度設計していただきたいと思います。実際の企業行動に法制度を合わせていく形におきましては、ぜひとも専門家の先生方の御知見を得つつ進めていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に、菅野委員、どうぞお願いいたします。

【菅野委員】
 菅野です。私からも簡単に発言させていただきます。
 皆さん申し上げているとおり、事務局の皆様の御苦労がしのばれる、非常に現実的かつバランスの良い報告書になったのではないかと思います。ですので、これ以上中身についてのコメントはございません。
 特に労働者保護の考え方については、非常に丁寧に、制度の手続面だけではなくて、基本的な考え方についても非常に丁寧に報告書に記載されていて、これは労使、それから担保権者側皆様にとって参考になるのではないかと思っています。
 一般債権者の保護についても考慮がされた設計になっておりますし、労働者保護の考え方についてもこれだけ整理されているということであれば、担保権者と対立する位置づけにある利害関係人の利益の考慮が織り込まれている制度になっていると思いますので、ここから先は、どう利用してもらえるか、むしろ前向きにこの制度が受け入れられるような、そういう周知をしていく必要があるのではないかと思っています。ここまで反対利益が織り込まれたものになっていますので、これから先は前向きな制度として周知し、利用を促進していくことが良いと思っています。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に堀内委員、どうぞお願いいたします。

【堀内委員】
 堀内です。よろしくお願いします。私も、総論というか、全体的には十分議論が反映されているので、良いかなと思います。
 短めのコメントをさせていただきますと、25ページで、大西委員が触れられた一般債権者への分配の話ですが、大西委員と同じように、どちらかというと、81番の脚注の3番目のものというのですか、下限ではなく上限を決めて、その中で裁判所が決定するようなやり方、もしくは破産・清算移行時に必要な固定金額だけとするとか、それぐらいの形にするのが望ましいと思います。もしくは、実態の運用としてはそうするのが望ましいのではないかなと思います。
 あとは、この金額が実務上大きくなると、例えば、割合が大きくなったりすると、その分、レンダーの立場からすると、同じ企業価値に対して貸し出せる金額が減っていくということにつながるということは御認識いただければと思います。
 
 あとは、労働のところも、両者、担保権者と労働者、それから、使用者の立場を十分反映させた書きぶりになっているので、ここはこのままのほうが良いのかなと考えます。
 最後は、ちょっと実務家的な観点からですが、もしこの法案ができていくのであれば、金融庁様のほうとしても、例えば件数とか、資金調達の金額とか、ある程度数値的な目標を念頭に置いて最初の周知期間で周知されたら宜しいかと思います。つまり、法律や制度をつくって終わりではなくて、作った法律や制度が使われるかどうかということまで意識されて、全体として、この担保権を適切な場面では使っていこうということで、ある程度の数値目標というのも念頭に置かれて周知されていかれれば良いのではないかと考えます。
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に伊藤委員、どうぞお願いいたします。

【伊藤委員】
 ありがとうございます。限られた時間というか、多くの様々な意見の中でここまで取りまとめていただいてありがとうございました。
 私自身は、毎回申し上げるように、法律の専門家ではないので、各先生方の細かい視点とかで改めてこういう考え方もしていかなければいけないのだという学びの多い会ではあったのですけども、今後、お金を借りる、企業側の立場としてお金を借りるということは、返すすべがあるのであれば決して悪いことではなくて、成長や挑戦のためにやはり投資をしていかないと企業は成長していかないので、今回、この担保権を多くの方々にとって、まずは使い勝手が良いというか、使いやすい、あまりハードルを上げないで、やってみようと思わせるような制度になっていくことを望んでいますし、企業としては、後ろ向きな借入れをしていかないように、日々の企業努力もそうですけども、労働者側もどうやって自分の勤めている会社を共によくしていこうかと思わなければいけないですし、さらにはパートナーである各金融機関さんも、どういう立場で応援し、場合によっては、注意し、方向性を修正しという、本当に双方が良いパートナーシップを組みながら、良い形で成長につなげていければなと思っております。
 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、オブザーバーの皆様方でもし御発言があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
 そういたしましたら、本日も非常に貴重な細かな御指摘を含めて御指摘をいただきまして、大変ありがとうございました。御指摘の中にはというか、今後法案を作成していくに当たっての留意すべき点のような御指摘も多数いただきまして、どうもありがとうございました。
 
 そこで今回は、今、事務局から説明をしていただいてお手元に配付させていただきました報告の案について、取りまとめということで皆様方にお諮りしたいと思います。お手元の案には基本的に御賛同をいただけている状態にあると思います。
 それで、今後の作業なのですが、もう1回会合を開くという必要は恐らくないと思いますので、本日いただきました皆様方からの御指摘、御意見のうち、この報告の案に反映させたほうが良いものがあるかどうかを精査させていただきまして、本日の御議論を踏まえた表現ですとか記載についての記載ぶりというのでしょうか、についての最終的なチェックというか、調整をさせていただければと思います。皆様方にも個別にメールその他の方法で御確認をいただくというプロセスを取らせていただきたいと思います。
 そういうことで、そういうプロセスを踏むことについて、そして最終的な表現ぶりというのでしょうか、体裁とかについては、私に、恐縮ですけども、御一任をいただいて、そのうえで公表というところに持っていきたいと思います。
 以上のように進めさせていただいてよろしいかどうか、御承認いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

 どうもありがとうございます。
 なかなかウェブで分かりにくいのですが、いろいろ手サインも出していただきまして、また音声でも言っていただきまして、大変ありがとうございました。
 それでは、そういうことで進めさせていただきます。
 
 そうしますと、皆様方には、これまで、最後、伊藤社長もおっしゃったことですが、基本的な政策論、そしてまた実務的な心構えというのでしょうか、利用されるような制度をつくりましょうという、誠にごもっともな話なのですが、そういう辺りから、それから法律の御専門の方には細かい法律的な議論もしていただきまして、幅広い御議論を多くの方からしていただいたと思います。実務的な観点からも多くの御指摘をいただきました。おかげさまで報告にたどり着けたということではないかと思います。厚く御礼申し上げます。
 それでは、最後に井藤局長から一言お願いいたします。

【井藤企画市場局長】
 本ワーキング・グループにおきましては、7回にわたりまして、座長をはじめ、メンバーの皆様方には本当に精力的に御検討、御議論いただきまして、ありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 事務局といたしましては、この報告書に示された内容、あるいはこれまで議論していただきました内容に沿いまして、本当に実際に使ってもらえる制度としていくことが極めて重要だと思ってございます。そういうことをしっかりと頭に置きながら制度整備に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 今後も引き続きいろんな点で御指導いただくこともあろうかと思いますが、ぜひともよろしくお願い申し上げます。本当にありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 ということでございまして、今後も皆様方にはいろいろな形での御支援、御指導をいただく機会もあるかと存じますが、引き続きよろしくお願いできればと存じます。
 それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

(以 上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線:3579、3535)

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