金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」(第8回)議事録

  • 1.日時:

    平成26年12月16日(火曜日)15時30分~19時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

それでは、予定の時間になりましたので、決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ第8回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それではまず、本日の参考人のご紹介を事務局からお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私のほうから本日の参考人の方をご紹介申し上げます。

まず、私の左手のほうにお座りいただいておりますが、株式会社全銀電子債権ネットワークより、代表執行役社長の諸江博明様、並びに石川裕様にご出席をいただいております。

また、三菱東京UFJ銀行より、柏木委員の両隣にお座りいただいておりますが、内藤浩志様、菅俊郎様にご出席をいただいております。また、途中より三菱東京UFJ銀行より大木正彦様にもご出席をいただく予定としております。

私からは以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は事務局からアジアを中心としたグローバルな連携・協力について、諸江参考人、石川参考人から「でんさい」の現状と課題についてご説明をいただき、自由討議を行います。その後、これまでのスタディ・グループにおける議論等を踏まえた討議資料を事務局から説明いただき、自由討議を行いたいと考えております。

それでは、事務局から説明をお願いします。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

総務企画局の信用制度参事官室におります安藤と申します。どうぞよろしくお願いします。

それでは、お手元の資料に基づきまして説明させていただきます。決済関連のアジアを中心としたグローバルな状況と課題についてご紹介させていただきたいと思います。目次をつけておりませんけれども、主に3つのテーマについて紹介させていただきたいと思っております。

1つ目がAPNということで、Asian Payment Networkということでございますけれども、日中韓とかASEANを中心に地域レベルで新たなリテール決済の枠組みをつくろうとする動きがございますので、その動きについての状況と課題について説明させていただきたいと思います。

2つ目がACH、清算機関と言っておりますけれども、日本では全銀システムに相当しておりますが、これを国際的にどう接続していくかという、そういう動きについて状況と課題について触れたいと思います。

3つ目が、ACHについて、アジアに目を向けたときに、インフラの整備状況とか、今後の課題、日本にとってどういう意義があるのかということについて説明をさせていただければと思っております。

それでは、1ページ目でございますが、まず、1ページ目の1に「APNとは」と書いてございますけれども、第1回の事務局説明のときでも説明させていただいたところでございますが、APNはASEANなどの地域内のATMなどのシステムを標準化しまして、地域内での相互の連携を目指す取り組みでございます。参加者ですけれども、2にございますように、システムベンダーがメンバーでございまして、ASEAN諸国のほかに、ここに記載してありますとおり、2010年から2011年にかけまして、中国とか韓国、オーストラリア、ニュージーランドなども参加しておりまして、日本はようやく2014年1月から民間ベンダーのほうが参加していると、そういう状況でございます。

各国のベンダーですけれども、大手銀行とか中央銀行の子会社というのが多くございまして、大体、その銀行セクターが積極的に関与して取り組んでいるという状況にございます。例えばここの参考にございますように、中国は銀聯が参加しているのですけれども、銀聯が中国人民銀行主導で設立されておりまして、人民銀行の強い関与のもとに参加しているという状況でございまして、また、韓国でも参加者が中央銀行とか大手銀行が共同出資した韓国金融決済院というところが参加しているという状況にございます。

3のスキーム図のほうは後でご覧いただければと思いますけれども、4の検討実施状況のところでございますが、1つ目の丸のところで、既にASEANの一部の国々では個別接続というのは実現しておりまして、参加国が増えたということでございますが、2つ目の丸ということで、各国のネットワークの中心にハブを構築するということが合意されておりまして、運営組織も新設するということで合意されているという状況でございます。今後、詳細な検討がなされるという予定となっております。

3つ目の丸でございますけれども、ATMとかPOSとかの標準化相互接続というところで始まってはいるのですけれども、それにとどまらず、ここに書いておりますように、送金機能の追加についても今後議論される予定でございまして、銀行業務に深くかかわる取り組みになる可能性がございます。

一度、こういった地域で仕様が標準化されてしまいますと、日本だけが独自仕様のままでいるということでは難しくなっていく可能性があるのじゃないかということでございます。こうしたアジアの決済システムのあり方というのは、我が国の企業、金融機関の競争力に大きく影響し得るものでございますので、日本としても銀行のかかわりも含めて戦略的な対応をどうするのかというのをこの場でご審議いただければと思っております。

なお、6月に閣議決定されました日本再興戦略においても記述がございまして、読み上げさせていただきますと、「民間事業者によるアジア域内のATM相互接続等を進める」というふうに記載されておりますので、政府としても推進していくということとされております。

次に、ページをおめくりいただきまして2ページ目でございますが、決済システムの国際的な連携ということでございますが、世界的に目を向けたときに、国際送金の効率化を目指して各国で連携させるという動きがございます。ここの上段のフロー図ですが、ACHの相互接続の図でございますけれども、一般的に我が国の場合、国際送金というのはどうなっているかと申し上げますと、国内と海外の銀行間でコルレス契約等を結んで、個別に決済しているというのが現状でございまして、送金先が銀行ごとにそれぞれ手続を踏む必要がございまして、相当のコストとか手数料というのが必要になってくるという状況でございます。

一方、ここに下段のところに書いてありますとおり、IPFAという、米国と欧州の間で個別銀行下のコルレス契約とは別のルートとして、このACH間での相互接続ということで相互接続することによって早急な処理を必要としない小口の国際送金とか、各国の送金手順を標準化しまして、着金までに、多少、3日くらいの時間はかかりますけれども、効率的で安価な国際送金を実現しているというのがIPFAということでございます。

今、右側の下の図にございますように、世界地図を見ていただければ、青色の斜線で色がついている、例えば中国、インド、ブラジル、南アといった主要新興国が加わるという動きが、つまり、BRICsなんかも加わるという動きが加速しておりまして、この背景としてはやっぱり経済活動がグローバル化されておりますので、他国との決済面での連結性が国の競争力に直結するという認識があるのではないかというふうに思われます。いずれにせよ、我が国の状況というのがここに書いてありますとおり、どの国とも未接続というところでございまして、現在、検討がなされているといった、そういう状況でもまだないという状況でございます。

先ほどのAPNに含めまして、この決済高度化に向けて将来を見越した上での銀行のかかわりも含めて、日本全体としての対応とか方策というものをどうするかというのが課題の一つと考えていますので、この場でご審議いただければと思っております。

3ページ目をご覧いただければと思いますが、ASEAN諸国の小口決済システムの整備状況ということでございますが、簡単にポイントだけご説明いたしますけれども、運営者と出資者のところをご覧いただければ、運営は大体、株式会社とか中央銀行直轄というところが多くございます。出資も中央銀行とか大手銀行が行っているというところが多いのが特徴となっておりまして、機能面のほうを見ていただければ、例えば稼働時間の欄をご覧いただければ、現状では今、議論されているところではございますけれども、日本は8時半から15時半ということでございますけれども、ほかの中国とか、最後のベトナムのところまで見ていただければ、日本よりも稼働時間が短いという国は実は一つもないという状況にございます。

特に、中国とかタイ、シンガポールのACHにつきましては、24時間リアルタイム決済を実現しております。一方で、そうはいってもフィリピンとかベトナムとか、そういった国ですが、ここの振込指示から着金のところの欄をご覧いただければと思いますけれども、翌日とかになるケースもあるというところでございます。特に、ベトナムについては、注にございますように、現在のシステムが特定の都市間での決済に限定されておりまして、ここは首相令ということで国を挙げてACHの構築の指示が出されているというような状況にございます。ここには記載しておりませんけれども、日本以外の各国のACHにつきましては、送金上限金額が大体数十万円から数百万円と、少額というのが特徴でございます。

次に、4ページ目をおめくりいただければと思いますけれども、ここはアジア各国大使館のアタッシェを通じて聞いたコメントでございますけれども、簡単な特徴でございますが、ミャンマー、ベトナム、フィリピンといったところは、ミャンマーは未整備というところではございますけれども、ベトナムとかフィリピンでもACHの整備、高度化が日系企業の事業展開の障害になっているというような例が声として上がっております。

タイは、使い勝手は悪いというコメントはございますけれども、ほかの国との連携がまだ未整備というようなコメントがございます。

他方、シンガポールは進んでおりまして、ここのコメントはMAS、シンガポール通貨監督庁のコメントをいただいたものでございますけれども、例えば1つ目のポツのところにありますように、中銀が通貨当局、MASが議長を務めておりまして、かなり戦略的に決済インフラの構築とか国際連携に取り組んでいるという状況がございます。

このページは以上でございまして、5ページ目をご覧いただきたいと思いますが、これまでお話しした内容について、今後どうしていくかということを各国の整備状況を踏まえて整理したものでございます。ASEANの中でも状況にはばらつきがございますので、段階的に高度化していくというのが今後の課題ではないのかなということでございまして、例えば、一番下のピラミッドの底の部分でございますが、ここにはミャンマーとかベトナムとかフィリピンといった国が入ってくるのではないかと思いますけれども、まずはシステムを構築、あるいは高度化するという、そういった課題がある。2つ目の上の段のところはシンガポールとかタイとか、そういった国々が入ってくるとは思うのですけれども、ここではある程度システムが進んだという国でございますけれども、ここでの課題というのはACHの相互接続とか、接続のところが課題になっていく。最終的な目的といいますか、段階になりますと、この一番上のピラミッドにありますように、アジア単一のACHハブの構築を目指しているというのが今のアジアでの議論の方向性ではないのかということを示したイメージ図でございます。

次に、6ページ目をご覧いただければと思いますけれども、このように日本と関係の深いASEANの決済インフラにつきましては、日本にとっても発展していくということはメリットが大きいということです。期待される効果として、例えばここで挙げたものは3つございますけれども、1つ目がアジアにおけるビジネス展開に資する決済インフラの提供、2つ目がアジアにおける一体的成長を支えるシームレスな(切れ目のない)地域決済ネットワークの実現、3つ目が我が国の決済サービスや決済関連技術の海外展開、輸出みたいなところでございますけれども、そういった効果が期待されるのではないか、重要性があるのではないかと感じられるところでございます。

そのための取り組みのイメージというのが下のところの囲いでお示ししたところですけれども、まずはACH構築を日本の技術とかで後押ししまして、それを相互につなげ、日本の決済サービスの海外展開も図りながら、最終的にはアジアにおけるこういったシームレスな決済インフラを構築して、日本が関与していくというようなものがあるんじゃないかということでございます。これはまだイメージ段階でございまして、具体的な対応はしてはおりませんけれども、今後の課題ではないかということでございます。

最後に、7ページでございますけれども、金融庁の金融協力の状況でございますけれども、金融庁では、こういったASEAN諸国への金融協力を強化しているというところでございまして、それぞれ覚書とかに署名しているところもございますけれども、図中の課題の例のところに挙げているとおり、例えば、こういった、先ほど来ご説明申し上げたACHの構築であるとか、国際の接続といったものが課題の一つであり、今後どういうふうに取り組んでいくのかというのが論点ではないかと思っております。

あと、蛇足ではございますけれども、ベトナムとタイのところの課題に電子記録債権制度の導入というふうに書いておりますけれども、この次にお話しされるでんさいの話ではございますが、タイやベトナムについては、こういったでんさいについても関心があるというところでございます。

以上、簡単でございましたけれども、私の説明は以上でございます。どうもありがとうございました。

【岩原座長】

ありがとうございます。

続きまして、株式会社全銀電子債権ネットワークの諸江参考人、石川参考人に、恐縮ですが15分程度でご説明をお願いします。

【諸江参考人】

でんさいネット、諸江と申します。本日はこのような機会をいただきましてどうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

当社からは「『でんさい』の現状と課題」というテーマでご説明をさせていただきます。「でんさい」というのは、当会社で取り扱う電子記録債権の通称でございます。お話しする内容ですが、2アップの資料の2ページ目のところに目次がございます。こちらをご覧いただければと思います。

でんさいですが、まだ始まったばかりの新しい制度です。まずは、でんさいの基本的な内容についてご説明をさせていただきまして、その後、現在の普及状況、それから課題等について説明させていただければと思います。これから申し上げるページにつきましては、資料の2アップの右下に書いてありますページということでご了承いただければと思います。

3ページをご覧ください。電子記録債権でございますが、売掛債権等の指名債権や手形のデメリットを克服した新たな金銭債権として誕生いたしました。指名債権、それから手形につきましては、ここに記載のとおりさまざまなデメリットが指摘されております。電子記録債権につきましては、このようなデメリットを克服することができるということでございます。でんさいのメリットにつきましては、後ほど別ページで改めて具体的にご説明をさせていただきます。

また、電子記録債権の発生や譲渡は記録債権の記録原簿に電子記録することがその効力発生の要件ということとされております。

その下、4ページでございます。電子記録債権法の立法経緯についてまとめさせていただきました。平成15年に政府でまとめられましたe-JapanⅡ戦略が発端でございます。その中で、手形の有する裏書や割引機能等を電子的に代替した決済サービス(電子手形サービス)の普及等が盛り込まれまして、中小企業の資金効率を向上させ、積極的に事業展開するという政策のもとに創設されたものでございます。ここに記載のとおり、金融審議会をはじめ、多くの会合におかれまして議論をされておりまして、平成20年、電子記録債権法が施行されております。

続きまして5ページ目をご覧いただければと思います。記録機関の役割についてまとめさせていただいております。記録機関は、記録原簿を備えまして、利用者の請求に基づいて電子記録や債権内容の開示を行うことを主業務とする電子記録債権の登記所のような存在というものでございます。また、法令上、主務大臣、内閣総理大臣、それから法務大臣の指定を受けた専業の株式会社として運営するということが義務づけられております。監督官庁は金融庁と法務省ということになっております。

その下の6ページに行きますと、現在、でんさいネットを含む4つの記録機関がサービスを提供しているという状況でございます。でんさいネットと3メガバンクの記録機関ではサービスの内容が異なっております。でんさいネットでございますが、全国銀行協会の100%出資で設立された記録機関でございます。手形代替の利用というものを前提としております。一方、3メガバンクの記録機関でございますが、主に大企業である支払企業と、その取引先である主に中小企業である納入企業向けのファクタリングサービスが中心というふうに認識してございます。

続きまして、7ページをご覧いただければと思います。でんさいの概要でございますが、こちらに書いてあります3点、手形的利用、全銀行参加型、間接アクセス方式というものを基本コンセプトとしております。手形のように全国の金融機関で広く流通させることが可能であるということのほか、3つ目に書いてありますとおり、間接アクセス方式の2つ目の黒丸でございますが、金融機関の創意工夫によってそれぞれの利用者ニーズに合ったサービスを提供できる仕組みになっております。

その下、8ページでございますが、でんさいの取引イメージというものを図で示させていただいております。でんさいをご利用いただくためには、まず、お客様が利用契約後、取引をしようとする金融機関、こちらに書いてあります窓口金融機関と言いますが、この金融機関を通じて利用者登録というものを行っていただく必要がございます。なお、この利用者登録の申し込みの際に、金融機関で一定の審査等を実施しております。反社会的勢力等が介入できないという仕組みをしっかりつくっていると考えております。

簡単に、手形で言う振出しにあたります発生から決済までの流れをこの図を用いてご説明をいたします。まず、左上にX社というのがございます。債務者ということで見ていただければと思います。X社が自身の窓口金融機関を通じて、例えばインターネットバンキング等で利用できるのですけれども、その画面を通じまして、債権金額とか支払期日等を入力するということになります。発生記録の請求が行われることになります。この情報がでんさいネットのシステムに到達しますと、でんさいネットのほうの記録原簿に発生記録というものが書かれます。この発生記録がされますと、一方で受け取りのY社、債権者のほうになりますけれども、その旨が通知をされるということになり、債務者それから債権者ともに債権内容の確認ということができるということになっております。

なお、このY社でございますが、そのまま期日まででんさいを持ち続けるということも可能ですが、例えば手形のようにこのでんさいを取引先である、この図ではZ社ということになりますけれども、こちらのほうに譲渡をするということも可能になっております。支払期日になりますと、この譲渡された状態で考えますと、債務者X社の口座から資金が自動的に引き落とされまして、債権者であるZ社のほうの口座に入金をされるということになります。

以上が簡単ではございますが、全体の取引イメージということになります。

続きまして9ページになります。現在、でんさいネットには全国で491の金融機関が参加しております。幅広い業態の金融機関が参加しておりますので、ご利用になる企業の皆様におかれましては、取引先の窓口金融機関となるところを気にせずに、つまり金融機関を変えることなくでんさいを利用することができるということが言えるかと思います。

10ページをご覧いただければと思います。でんさいの場合、手形的利用と申しましたけれども、こちらの具体的なメリットについてご説明をさせていただきます。まず債務者、支払企業のメリットということでございますが、事務負担の軽減、それからコスト負担の軽減といったメリットが期待をされるところでございます。手形発行に伴う事務負担の軽減のほか、搬送代や印紙代の削減というメリットもございます。また、囲みの右下のほうに書いてありますけれども、手形、振込、一括決済など、複数の手段があることで事務が煩雑化している企業にとっては、でんさいに一本化していただくということで効率化を図るということも期待されていると思います。実際、積極的にでんさいの導入を進めている企業におかれましては、将来的には全ての決済をでんさいに一本化したいという声もいただいているところでございます。

続きまして11ページになります。こちらは債権者側、納入企業者様のほうのメリットということになります。受け手のほうですので、手形の場合でございますと、手形の紛失とか盗難、保管といったリスクがあるということでございますが、こういったものから、ペーパーレスですので解放されるということでございます。また、必要な分だけ分割して譲渡、それから割引することが、でんさいでは可能ということになります。この点もメリットの一つということになります。また、取り立て手続というものが不要でございますので、取り立てを忘れるということもないというメリットがあるかと思います。

続きまして12ページでございます。現在の普及状況についてお話をさせていただきます。利用登録者数ということで、でんさいに登録いただいている企業ですが、現在、39万社に到達しておるというところでございます。多くの企業にお申し込みいただいていると思っております。一方で、どれだけ使われているかというところでございまして、発生記録請求件数ということでございますが、月間、現在6万件台に到達しております。増加基調にあると考えておりますが、本格的な普及はこれからという状況であると認識しております。件数増加に向けて抜本的な取り組みの強化が必要という認識でございます。

続きまして12ページ、13ページになりますが、こちらは都道府県別の利用状況をお示ししております。東京、大阪、愛知等、大都市圏において普及が進んでいるという状況でございます。お時間の都合もございますので、数字のほうは後ほどご覧いただければと思います。

その下、14ページには、業種別の利用状況ということでまとめさせていただいております。発生という面で見ると、上位は製造業、卸売業、小売業、それから建設業といった順になってございます。こちらも後ほどご覧いただければと思います。

15ページ以降でございます。今後の課題ということでまとめさせていただいております。まずは、1つ目の課題といたしまして、民間企業における手形からの移行というものがあると考えております。こちらの数字ですが、推計値になります。直近の月間手形交換高ということで約140万枚、6兆円という状況でございます。でんさいの利用状況と比較しますと、件数ではまだ約5%、金額ではまだ約8%の水準にとどまっているというところで、まだまだでんさいの普及の余地があると考えておりまして、手形からの切りかえについて、先ほどご説明いたしましたメリットをPRしながら進めていきたいと考えております。

その下、16ページになりますが、こちらは当会社、私どもがセミナー等で実施したアンケート等によるものでございまして、企業のお声を記載させていただいているというところでございます。新しい制度であるがゆえに不安を感じているという企業があるというのが現状でございます。このページの左側に記載の4点につきましては、この声の代表的なものということでございます。なかなか利用に踏み切れないという理由をしっかり分析していきまして、解決に向けたサポートを、私どもだけではなく、金融機関とも連携して進めていくということが非常に重要だと考えております。

それから17ページになりますと、続いての課題は、売掛金からの移行ということでございます。この表の数字は金融・保険業を除く全産業が保有する各年度末の受取手形と売掛金の残高を示したものでございます。企業が保有する売掛金につきましては、手形の約9倍の規模というふうに見てとれます。この売掛金からの移行が進めば、でんさいのさらなる普及が期待できると考えています。

その下でございます。18ページになります。でんさいは、売掛金から移行した場合も大きなメリットがあるということを示しております。ここに書いてありますとおり、不確実で活用しにくい債権である売掛金を、確実性が向上し、活用しやすい債権に変えることができるというところが大きなメリットであると思っております。でんさいの普及のために手形からの移行メリットとあわせ、売掛金からの切りかえメリットもしっかりPRしていきたいと考えております。

19ページをご覧いただければと思います。売掛金からでんさいへの移行のメリットにつきましては、先ほどご説明した内容に加えまして、こちらにございますとおり、でんさいの切りかえと同時に支払のサイトを見直すことによって債務者、債権者双方にメリットがあるのではないかと考えております。具体的には、これまで振込の場合に翌月末払いとしていたものを、でんさいに切りかえるに当たりまして支払期日を延ばすということで、翌々月払いということにすれば債務者の資金繰りが改善するということになろうかと思います。一方で債務者は支払期日前にでんさいを受け取るということによりまして、でんさいを使って早期に資金化をすることで資金繰りが改善するということになるかと思います。この仕組みの導入に当たっては両者の合意というものが前提になるということは言うまでもございません。

それから20ページでございます。続いて、なかなか利用されない現状があるというところで、当会社が現在行っている利用促進活動について簡単にご紹介をさせていただければと思います。なかなか利用を開始できない企業の背中を後押しするということにつきましては、私どもとしては実際にでんさいを導入いただいている企業様から導入効果等を説明いただくことが非常に効果的であると考えてございます。今年度はここに記載のとおり、実利用企業様にご講演いただく形のセミナーを開催しております。セミナーでは導入経緯、導入効果だけでなく、導入時に苦労した点等の説明をいただくことで、導入時の不安解消につなげたいと考えております。

それから21ページになりますが、私どもとしては、お客様、企業様の声とか金融機関との定期的な意見交換を踏まえまして、各種の施策を実施しております。ここに記載のとおり、漫画でわかりやすく説明した冊子、それから企業間で使用できるような案内用のサンプル、こういったものの作成等も行い、提供させていただいております。

続きまして22ページに参ります。もう一つの課題としまして国や地方公共団体における活用というものがあるかなと思っております。国・地公体の支払にでんさいが利用されれば、普及の起爆剤となる可能性があると考えております。他方で、法令上、国・地公体の支払については現金払い、それから振込等に限定されており、電子記録債権に基づく支払については明示されておりません。そのため、国・地公体の皆さんのお支払にでんさいを活用いただいても法令上問題ないということをぜひとも明確化いただければと思っております。

続きまして23ページになります。国・地公体ででんさいを利用することが明確になれば、公共事業における支払期日の長い支払等で新たに活用余地が発生する可能性があると思っております。例えば、完工時の一括払いだけではなく、出来高に応じたでんさい払いの仕組み、こういったものを整えることで中小企業の資金調達の円滑化につながることが期待されるのではないかと考えております。

その下、24ページ、その他の要望事項ということでございます。現在、手形が対象とされている制度の中ででんさいが対象になっていないものというものがあります。例えば、こちらに書いてありますとおり、中小企業基盤整備機構の「経営セーフティ共済」とか、あるいは国土交通省の「出来高部分払方式実施要領」、それから「建設産業における清算システム合理化指針」、こういったものについてでんさいが対象になっていないという現状があります。このような制度においてもできる限り早くでんさいが対象となることを期待しているところでございます。

25ページになりますが、ここには3つの制度を書いておりますけれども、既にでんさいが対象となっているものでございます。後ほどご覧いただければと思います。

最後に26ページになりますが、でんさいネットのサービス提供開始以来、利用者登録数や発生記録請求件数ともに右肩上がりの増加を続けておりますが、今後の本格的な普及に向けてさまざまな取り組みを行っております。申し上げましたとおり、でんさいは手形、それから売掛金に比べ、多くのメリットがございます。中小企業等の資金繰りの円滑化に貢献できる決済手段ということでございますが、新しい制度ということで、なかなかそのメリットがまだ十分に浸透していないという状況があると思っております。このメリットを少しでも多くの事業者の方にご理解いただければ、利用が利用を呼ぶ好循環というものが生まれると考えております。また、民間にとどまらず、国や地方公共団体のほうでご利用いただけるということになれば、地方を含めて全国ベースでそのメリットが広がっていく、メリットが享受いただけるということになると考えております。

でんさいは、国の政策である中小企業の資金調達の円滑化にも資する制度と考えております。私どもとしては、金融機関のほうのファイナンススキームの一部として活用いただくということのほか、関係の官庁様と連携を密にしながら、さらなるでんさいの普及に向けて利用促進活動に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

簡単ではございますが、私からの説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。

それでは、先ほどの安藤信用制度参事官室企画官のご説明、それから諸江参考人からのご説明を受けての自由討議に移りたいと思います。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いします。山上委員、どうぞ。

【山上委員】

APNに関しまして、直接現場で交渉に当たっている者として若干の補足をさせていただきたいと思います。

APNはご紹介を1ページでしていただきました、まさにリテール決済のネットワークの接続というお話なのでございますが、1番目のポツの2つ目にございますような取引手順ですとか仕様を標準化する、ある種、アジア標準がこの場でつくられているというような動きと考えてもよろしいかと思っております。特にその中で、アジアの大国のイニシアチブというのが非常に影響力が強いような状況が起きているというのが一つの補足事項になるのかなと思っております。

具体的に申し上げますと、アジア各国で現在、国内のICカードの導入が進められております。それにあわせてAPNのほうでもクロスボーダーのICカードの仕様を策定するという段階に入ってきておるのですが、今、申し上げた大国のほうで、自国仕様をアジア標準に持ち込むというような活発な活動をしているということがございます。それによりまして、例えば仕様の変更、料金の設定、そういったところで大国への依存度が非常に大きくなる場合に幾つかのリスクが顕在化する可能性があるのかなと思っているのですけれども、例えばそれによりまして日本円の流通が低下するようなことがあって、邦銀の活動が阻害されないかというような点や、情報漏えいなどセキュリティー上の懸念があるのではないかというふうにも考えられます。

続きまして、スキーム図の右側の下のほうにAPN HUBというのがございます。こちらは個別で接続をしていた段階が、参加メンバーが増えたことによりましてだんだん複雑になってきたということもありまして、こういうようなものが検討されているのですが、こちらのハブの構築についても、先ほどのICカードの導入につきましても、非常に拙速と言ってもいいぐらいのスピード感で導入のスケジュールが検討されているような状況があります。一つは、ICカードについてなんですけれども、1月8日を提出期限として、1月16日に決まってくるということです。ハブについては若干流動的なお話にはなっているものの、1月16日に選考が行われる可能性もまだ残っていて、いずれにしても非常にスピード感が速くて、スケジュールが迫ってきているということがございまして、個別にこれに対してどういうふうな戦術の展開をしていくのかということを考えていく必要があるのかなと思います。

そういう観点でいきますと、競合のいろいろな国が、国が一丸となって動いているような状況がある中で、日本としてもオールジャパンでの体制づくりというのが必要ではないかと考えている次第です。

今後、日本としてこういったものを利用するベネフィットの精査というのは必要だとは思っておりますが、同時に協力体制の構築というものを検討していくことが必要かなと考えている次第です。

以上です。

【岩原座長】

はい、どうも。

ほかに。安田委員、どうぞ。

【安田委員】

今、山上委員からオールジャパンという話が出たのですけれども、まず前提段階としてちょっと把握しておきたいのですけれども、この資料の6ページですね。ACHを普及していくということで、我が国の先進的な決済システムやサービスを海外展開していくのだということが書いてあって、非常に日本人としては誇らしく感じるのですけれども、一方で、別のページの資料で発表時にも強調されていましたけれども、日本のこの決済システムの稼働時間が8時半から3時半と、非常に群を抜いて低いわけですよね。こういう資料を見せられると、ほんとうに我が国のシステムが先進的で、海外に持っていってメリットがあるものなのかというのがよくわからないのですけれども、まず把握しておきたいのは、現段階で中国であったりとかシンガポールと比べて日本のシステムがどういう点で優れているのでしょうか。仮に優れていたとしても、現状を少し伺った印象ですと、ちょっと出遅れている感が否めないと思うのですね。これをキャッチアップして、仮に日本のシステムをアジア標準に持っていくまで、おそらく非常にコストがかかると思うのですけれども、メリットとコストをどういうふうに判断して進めていこうとされているのかということがこの資料からよく見えてこないので、何かお考えがあればお聞きしたいです。

【岩原座長】

事務局のほうからお願いします。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

お尋ねのシステムについて日本が優れているかどうかというところでございますけれども、詳細について答えを持ち合わせておりませんが、おそらく日本企業としてのハード面についてはそんなに遜色はないのではないかなと思っております。ただ、先ほどの稼働時間、8時半から15時半というところでございますけれども、やはりソフト面のところでやや対応がおくれているという面が一面あるのかもしれません。日本としてはほかのインフラ輸出とかを考えてみた場合ですと、技術支援とかというところが強みでございますので、そういった部分を強みとして他国にアプローチしていくというのが重要ではないのかと思っております。

あと、メリットとかデメリットのコスト面については、まだ詳細について検討はしておりませんので、そこの答えはご容赦いただければと思っております。

以上でございます。

【岩原座長】

ただいまの関連でも何かありますか。戸村委員、どうぞ。

【戸村委員】

2点ありまして、まずアジアのほうから、山上委員、もしくは事務局の方からご回答いただければありがたいと思いますが、基本的な事実確認として、最初のほうの会合で山上委員から、これは送金サービスの統合ではなくて、というお話があったのですが、ATMの接続がされるということは理解しているのですが、そのほかに具体的にどのようなサービスが実現するのか、具体例があれば追加説明いただければありがたいと思います。

その点に関連しまして、資料1ページ目についてですが、代表行同士でまとめてセトルメントと書いてありますが、これはどのような仕組みで行われるのか、少し説明いただけるとありがたいと思います。

例えば、参加国はアジアの国ですので、もしかするとタイバーツと他の国の現地通貨同士のやりとりではなくて、ドルのようなリザーブカレンシーと呼ばれるようなものの決済を行っているのかなと思いますが、その際、そのような場合は米銀の預金口座の移動で行っているはずだと思うのですが、その辺の詳細をもしご存じであれば伺いたい。

アジアについての最後の点は、APN HUBのガバナンス、オーナーシップが、例えばCLSのような株式会社を設立なされるのか、現状どのような議論をなされているのか伺いたいと思います。アジアについては以上です。

【岩原座長】

山上委員。

【山上委員】

では3点についてお答え申し上げます。

現在、APNでは、個別の接続としてATMとPOS、及び一部の国で小口のATMを使ったファンドトランスファーというものが実現されております。今後、APN HUBになったときの追加サービスとして検討されているのは、バルク送金、それからEコマース、インターネットバンキングの相互接続といったようなものがメニューとして挙がっております。

続いて、決済通貨ということでお答えすればいいのでしょうか。たしか、これはもう一度お答えしているかなとは思うのですけれども、現時点で申し上げると、それぞれ引き出したりする通貨は加盟国の通貨なのですが、裏側で決済に使っている通貨はドルでございます。ただ、ハブが導入された時点ではローカルカレンシー、これは流動性が高いものだと考えておりますけれども、ローカルカレンシーについてセトルメント通貨として扱うことも検討するというようなことになっております。

それから、ガバナンスにつきましては、オペレーションする企業をつくろうということについて合意をしておりまして、ただ、それが株式会社かということについては、そこまでまだ議論が行っていない状況であります。

以上です。

【岩原座長】

牧野委員、どうぞ。

【牧野委員】

安田委員の質問にちょっとかぶると思うのですけれども、例えば、5ページ目のところのように、アジアにおける決済業務のアプローチというふうにあるのですが、例えばシンガポール、タイ、ミャンマー、ベトナム、ASEAN等と、こういう段階で行った場合の今の日本というのがどのレベルにあるのかというのを、ちょっとイメージで構わないんですけれども、教えていただければと思うのですが。

【岩原座長】

安藤企画官。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

イメージということでございますが、全銀協の方に補足していただければありがたいのですけれども、おそらくレベル的にはシンガポール、タイのところにあるのかなと思います。ただ、ACHの他国との相互接続があまりできていないというところでは、一歩下がっている状況なのかなとは思っております。

【牧野委員】

はい。ちょっとそれについて、例えばシンガポール、タイのところにとっていて、次のページにあるような、6ページで、輸出ができるといったところがちょっとつながりがよくわからないです。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

そこはおそらくハード面とソフト面という部分が多分あると思いますけれども、全銀協の持っているACHというのは、恐らく、システム上は立派なものだと思っておりまして、そういうハード面では外に出していくということは多分可能ではないのかなと思っております。ただ、全銀システムの稼働時間が短いとかという部分につきましては、参加者の間での決め事でございますので、そこはおそらく参加者の方々が合意すれば、恐らく技術的には24時間とかっていうのは可能ではないのかなと思いますけれども。

何か補足することがございましたら。

【岩原座長】

柏木委員。

【柏木委員】

ACHについてお答えをできる範囲でしたいと思います。まず、日本の全銀システムの優れているところということに関して、必ずしも海外、特にASEANの状況を私自身よく承知しているわけではないのですけれども、例えば、ATMで街のどこからでも振込が簡単にできて、それが日本全国津々浦々の銀行、地方銀行も含めて、ほぼリアルタイムで入金できるというようなシステムを構築している国がそんなにあるというふうには承知しておりませんので、そういう意味ではリアルタイムで着金できるというような点では優れているのだろうと思います。

ただ、先ほど来、ご議論がありましたとおり、稼働時間、これはかなり前からそういう時間で運用してきたということもありまして、以前、私どももご説明申し上げたのですが、ちょうど全銀でこの稼働時間を延長したらどうかという議論をまさに今やっているところでございまして、ちょっと今日の時点でどういうふうにするというのは申し上げられる段階にはないのですけれども、これを延長するような方向で今、検討しているということでございます。

以上です。

【岩原座長】

何かございますでしょうか。

山上委員は先ほど、オールジャパンの体制をつくる必要があるというふうにおっしゃいましたけれども、具体的にどういう点を努力する必要があるとお考えなのか、何か具体的な協力を得る必要があるというふうにお考えなのでしょうか。

【山上委員】

まだ具体的な全てのものががっちり頭の中にあるわけではないのですけれども、例えば、今、ICカードのアジア標準について入札の時期にまさに入っております。ここでは手前どもの会社だけでは全てが完了できないということもありまして、まず全銀協にご相談をした結果、日本の標準をどのように持っていくかという議論をさせていただきました。その結果として、JCBがお持ちのJ/SmartというICカードをアジア標準として提案しようということになりまして、現在まさにその作業中というステータスです。これもオールジャパンの一つのはしりのようなものかなと思っておるところでございます。

【岩原座長】

非常に国内的に優れたシステムを持っているということがただちに輸出に向いているというわけでもないと思うのですけれども、アジアの他の国でも広く受け入れられるようなものを提供して、各国に受け入れてもらうようにするためにはどういうことが必要だとお考えでしょうか。

【山上委員】

私、直接この大国も含めて交渉の現場にいつも出ていて感じるのは、APNという、言うなればアジアの標準をつくる場を、ある国から見ると、自分の国のサービスをあまねく行き渡らせる場として利用しているのが非常に感じられるのですが、果たして今おっしゃっていただきましたような、アジアの国が求めるような形でのサービス提供をしようとしているかといいますと、決してそんなふうには見えません。むしろ、劣っているとか劣っていないという議論ではなくて、日本がアジアのためにできることは何かという視点を忘れないようにするほうが、これから日本が単独では生き残っていけないような、人口も減るということも含めますと、アジアも含めていろいろな仕様を考えていくという軸というか、判断軸が必要なのかなと思っております。

以上です。

【岩原座長】

極めて大事なことだと思いますが、何かご意見ございますでしょうか。ある意味で一番最先端のものというのはかえって広く受入れられにくいというようなこともあり得るわけですよね。かつ、日本の場合は、それこそ全銀システムが、片仮名の仕様に始まって、独特の発展をしていますから、そのまま日本のシステムを海外に輸出してうまくいくかというと、必ずしもそうでもないですよね。ここら辺、大変工夫が要るかと思いますが。

よろしいですか。それでは、池田局長。

【池田総務企画局長】

今、幾つかご指摘をいただきまして、今回は私ども事務局のほうからご説明している部分もあるので、現時点での我々の取り組み状況についても若干触れさせていただこうと思うのですけれども、例えば、今のAsian Payment Networkの議論については、かねてこの場でも議論されているように、NTTデータが日本から出ておられるわけですけど、私どもから見ていると、NTTデータもそこで日本を代表して頑張ってやっていただいているのですけれども、その背後には金融機関が存在したり、今あったように、カード会社があったりしますから、この場は各国、NTTデータのような方が出ておられるわけですけど、ここの資料でも説明されているように、背後には金融機関とかカード会社がビジネスの関連を持っていて、その辺がかなり連携しながらこうしたものに臨んでいるというのが実態だと推察をしています。

従来、ひょっとするとそこの連携が我が国においては十分でなかったかもしれないという、これは反省も含めて感じておって、現在、金融庁のほうではNTTデータが代表して出ておられるわけですけれども、そこから金融機関あるいはカード関係の方に情報もフィードバックしていただきながら、また金融機関あるいはカード業界としての意向も反映させながら、できるだけ日本全体として共通の認識のもとで取り組んでいけるような、現時点では非公式な場と言うべきかと思いますけれども、そういう場が形成されていくようなことを、金融庁としても側面ながらご支援させていただき始めているという状況かと思います。

それから、全銀ネットのほうの話については、全銀協のほうでも今、稼働時間の延長等についてご努力をいただいているのは先ほどあったとおりなのですけれども、その議論をしていきますと、常にあるのがニーズとコストとのバランスだという議論があって、コストのほうは計算しやすいのですけれども、ニーズのほうははかりがたいという面もあって、今日、事務局説明の中で問題提起させていただいている一つの要素は、そのニーズも日本を越えてアジアあるいはグローバルということを考えると、いろいろな潜在的な可能性はあるということで、やっぱり従来、これはあまり根拠がないかもしれませんが、コストのほうは過大評価されがちで、ニーズのほうは過小評価されがちなことが果たしてないかということを提起させていただいた。ただ、今日もご指摘があったように、接続をしたときにコストとニーズが見合うのかというのは、それはそれでしっかりと把握をしなければいけないのだろうと思うので、そこにギャップがあるときに、ただやみくもに日本がリードしていけばいいんだっていうことでもないのかもしれません。先ほどのカードのほうのことも含めて、やっぱりそこはアジア全体、世界全体のニーズとコストという関係もよく把握しながら考えていかなければいけないとは思っているのですけど、それをしていく前提としても、関係者の連携をこれまで以上に強めていかなければいけないという問題意識を持っていて、取り組みは緒についたばかりなので、今日ご指摘があったように出遅れているのかもしれませんけれども、やはりそういうことが必要なんじゃないのかということを提起させていただいたつもりです。どうかよろしくご指導を賜りたいと思います。

【岩原座長】

前回、日本銀行の岩下参考人からのお話にもございましたように、日本の今までのシステムはクローズドのシステムをつくることによってセキュリティーを担保するという行き方をとっていたので、こういう国際的に接続するときの対応等が必ずしも十分考えられていないようなところがあったのかと思いますが、こういう問題に直面してくると、そういうことも考えていかなければいけないのかなと、個人的な感想ですけれども、そういう感じがします。

いかがでしょうか。森下委員、どうぞ。

【森下委員】

APNにつきましても、リテール決済ネットワークということでお書きいただいていまして、あと、ACHについても小口ということなのですけれども、リテール、小口以外のものについて何か、今、アジアで認識されているような課題、あるいは何か取り組みというものがあればご教示いただければと思います。具体的にリテール、小口というのがどのぐらいの金額をイメージしたらいいのかということももしおわかりになれば、それとあわせてご教示いただければと思います。

【岩原座長】

どうしましょう。安藤企画官ですか。あるいは山上委員からでも何かあれば。

【森下委員】

もし、今おわかりにならなければ、今でなくても結構です。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

必要に応じて調べまして改めてご説明申し上げますが、リテール、小口以外のところで、いわゆる法制度的なところでアジアにおいて何か取り組みが進んでいるかというと、少なくとも現段階において私のほうで思い当たるところは特にございません。

小口というのがどの程度の金額かというところ、具体的な数字を手元で持ち合わせてございませんが、国際的なACHの接続については、若干時間がかかるということで、ビジネス面などで急を要するような送金ではなく、主として、多少時間がかかっても構わないような送金を念頭に置いているようであります。

ご説明で足りないところは必要に応じてまたご説明させていただきたいと思っております。

【岩原座長】

播本オブザーバー、どうぞ。

【播本オブザーバー】

リテール以外でアジアでの取り組みということですと、以前、私のプレゼンテーションの中で少し触れさせていただいたかと思うのですが、ASEAN+3で、域内各国の中央銀行の資金決済システムと証券決済システムを接続しまして、クロスボーダーの証券取引について、DVPと申しますが、資金と証券の同時受け渡し決済を実現する、そうしたことに向けた取り組みもございます。

【岩原座長】

よろしいでしょうか。でんさいのほうについても何かございますでしょうか。APNでも結構ですが。

加毛委員。

【加毛委員】

それでは、諸江参考人、石川参考人にお伺いしたいと思います。質問は3つございまして、最後のものは他の電子記録機関にかかわるので、事務局にお尋ねすべきかもしれません。

まず、今後でんさいのサービスを拡大していくというときに、売掛債権を取り込んでいくことが考えられるというご紹介がございました。この点について、電子記録債権については、当初、想定されていたのが手形代替手段であったため、原則として債権譲渡禁止はできないとされている、ただ、現在のでんさいのシステムでは参加金融機関のみに限定するような形で譲渡禁止をかけることが認められている、と理解しています。今後、売掛債権を取り込んでいく際に、現在の仕組みを変える必要はないのだろうかということを伺いたいと思います。債権譲渡禁止特約に関する質問が1つ目の質問です。

2つ目は、電子債権譲渡法は発生・譲渡については登録が効力要件になっていますが、弁済については登録を効力要件としています。でんさいでは、おそらく原則として、弁済期日において口座間の送金決済がなされているのでしょうけれども、弁済期日前に口座送金決済以外の支払方法で弁済がなされ、それによって債務が消滅したというときに、適時に支払等の記録請求がなされなければ、二重払いのリスクが生じるのではないかと思います。この点について、これまで何か問題は報告されていないのでしょうか。それとも、業務規定などによって、そもそも問題が起きないよう対処がなされているのでしょうか。二重払いのリスクについてお伺いいたしたく存じます。

3つ目の質問は、事務局宛ての質問になります。でんさいには金融機関が広く参加しているのであまり問題がないと思うのですけれども、それ以外の、現在存在する3つの記録機関については、記録機関の間での電子債権譲渡はできないことになります。この点について問題は指摘されていないのか、それとも他の記録機関の参加者に対する電子記録債権譲渡も認めて欲しいという要望があるのかということをお尋ねしたいと思います。

以上です。

【岩原座長】

それでは、最初の点について。石川参考人、どうぞ。

【石川参考人】

でんさいネット、石川でございます。

まず1点目のご質問でございますが、現在、売掛債権に譲渡禁止特約が付されている主な目的といたしましては、見ず知らずの債権者に債権譲渡されてしまうのを避けるためという債務者ニーズであると考えられます。一方、でんさいネットでは、手形と同様に高い流通性を確保するため、譲渡禁止特約は原則認めておりませんが、債務者と債権者の合意があれば、譲渡先をでんさいネットの参加金融機関に限定することができる仕組みとしております。債務者の立場から見ても、譲渡性先が参加金融機関であれば抵抗はないだろうということで、開業前にニーズ調査等を行った結果、そのような仕組みとしているわけですが、この点について特段要望等は寄せられておりませんので、今のところ仕組みを変える予定はございません。

2点目のご質問でございますが、そのような問題は起きておりません。口座間送金決済以外の方法による決済は、債務者と債権者の合意に基づき行われるわけですが、その場合の取扱いは業務規程で手当をしており、別途、支払等記録請求を行っていただくというルールにしております。

【岩原座長】

3点目については……。

じゃあ、今の点で、加毛委員。

【加毛委員】

第2点目について重ねての質問です。現在までは問題が起きていないということですが、問題は起こり得るということなのでしょうか。適宜に支払記録を請求しなかった場合に、弁済期日が到来して口座間の決済がなされ、その後、組み戻しが行われるという事態は想定されていないのでしょうか。

【岩原座長】

どうぞ。

【石川参考人】

債務者と債権者の間で、現金で決済されたような場合、でんさいネットと金融機関は把握できませんので、可能性としてはあるということになります。

【岩原座長】

いいですか。

それでは、第3点について、安藤企画官。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

でんさいの4機関の中での債権譲渡のご質問だと思いますけれども、現在の法律ではそういうものは想定しておりませんので、現状では単純に相互移転ということはできません。もう一度、利用発生というプロセスが必要で、一回消滅してもう一回発生させないと移転はできないという状況になっております。これにつきましては、地方銀行等にヒアリングしておりますと、そういったことができないものかという声が上がってきていることはたしかでございます。

【岩原座長】

よろしいですか。

ほかに何か。森下委員、どうぞ。

【森下委員】

これはどちらにご質問させていただいたらいいかよくわからないのですが、金融庁の資料の一番最後のページに、電子記録債権制度を、例えばベトナムですとかタイで導入するということが言及されておりました。電子記録債権制度というのはソフトの面でも非常に画期的な法律構成というか仕組みであると思いますし、他方でシステムという点でも非常に重要なものがあると思います。そういったソフト、ハードの両面において、現時点で電子記録債権制度のアジアへの輸出に関しまして、金融庁でも結構ですし、でんさい様でも結構なのですけれども、具体的なビジョンですとか、あるいは考えられる障害ですとかがあれば、お聞かせ願えますでしょうか。例えば、でんさいで国際的に相互接続するというようなことが広がれば、場合によっては大きなインパクトも持ち得るのかなとも思ったりもするわけですけど、そういった点について、可能であればお考えをお聞かせいただければと思います。

【岩原座長】

安藤企画官。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

タイ、ベトナム等で電子記録債権制度の導入というのが課題というふうに説明をさせていただいたところでございますけれども、これにつきましては今年の3月の官民ラウンドテーブル等でも、アジアとか、そういったところに電子債権を輸出というか、導入というのも議論の一つになっておりまして、金融庁では、こういったアジア諸国のところについて制度面とかそういったところを調査して、そういった、相手が要望するようなところがあれば導入のお手伝いをしていくという取り組みも行っているところでございます。各国の制度には、でんさいの前提となる担保法制もございますので、その整備状況もあわせて進めていかなければいけないという状況でございますので、今すぐ相互接続というような状況ではないというのが現状でございます。

【岩原座長】

よろしいですか。

【森下委員】

はい。

【岩原座長】

牧野委員。

【牧野委員】

でんさいのことについてちょっとお伺いしたいのですが、私どもの会社では、でんさいというのは実は使っていないのですけれども、取引先に対してそういうお願いをするときに、我々は一括信託だとかそういう形でやっています。一括信託は何かっていうと、言ってみれば、我々の格付けとかを使って、幾らのレートで割り振りできますよと、そういう形に対してでんさいネットというのは、私の理解では取引先の格付けに基づいて割引というのが決まってくると。銀行からいろいろアプローチを受けたときに、じゃあ、我々が手形とかで受け取っていないときにどんなメリットがあるのかなといったことでよく議論になることがあって、実際、このでんさいネットというのがどっちがイニシエート、売掛側なのか買掛側なのか、そういったところをちょっと教えていただければ。興味本位かもしれませんけれども、済みません、よろしくお願いいたします。

【岩原座長】

いかがでしょう。諸江参考人。

【諸江参考人】

売掛金(振込)からの移行については、まだ当会社としても推進が進んでいないところでして、メリットを十分にPRできていない部分もあるのかと考えています。資料の18ページにありますとおり、売掛金(振込)をでんさいに切り替えることによって、債権の存在が可視化される、期日に入金されることが事前に把握できる、期日前に資金化ができるなど、どちらかというと債権者側のメリットが大きいかもしれません。一方、大規模なスキームの中ででんさいに取り組んでいくとなると、いろいろな課題も出てくるかと思いますが、でんさいが普及していくにつれニーズが当会社に寄せられると思いますので、今後検討していきたいと思っております。

まずは、単純に売掛金(振込)の部分をでんさいに切り替えていただくような活用が想定されているところと思っております。

【牧野委員】

ありがとうございました。

【岩原座長】

ほかに何かございますか。翁委員、どうぞ。

【翁委員】

事務局の説明資料の7ページのアジア諸国に対する金融協力の状況というところでちょっとご質問したいのですが、決済システムに関しては財務省とか中央銀行がいろいろな形で今まで支援をしたり、協議をしている段階だというふうにこの7ページでは読み取れるのですが、現状やっている支援というのは、むしろ日本銀行の日銀ネットとか、そういったファイナルなセトルメントのところを中心に決済システムについてテクニカルアシスタントをやっているという感じなのでしょうか。どのレベルぐらいまで今、決済システムについてのアシスタント、協力というのを進めているのか、もしわかりましたら教えていただきたい。民間レベルではACHなどについてはまだこれからだというような印象を持ったのですけれども、具体的に今はどういう協力の段階だというふうに理解すればいいのか、ちょっと教えていただければと思います。

【岩原座長】

どうしましょう、事務局、あるいは播本オブザーバーのほうがお詳しいかもしれませんが。じゃあ、中島参事官、お願いします。

【中島総務企画局参事官】

実は、私、ベトナムのプロジェクトマネジャーというのをやっておりまして、個別国、ベトナムの例について言うと、ベトナムは、先ほどの向こうの大使館のアタッシェの報告にもあるように、まだ全然、銀行を信用していないという国でして、ACHという言葉すら政府の上のほうの人でもなかなか理解できておりません。「ネッティングして時点で決済するとリスクが減るんです」っていう説明を今、中央銀行の高官の方々に話をして、ACHの構築をすることによって決済システムは安定するんですというような技術協力支援を実際には行っております。

一方で、その先にあります実際の情報ベンダー、NTTデータのようなところももちろん組みまして、具体的なシステム設計に持っていきたいという、まだそういう状況であります。これはほんとうに国によってレベルはさまざまだと思います。

【岩原座長】

ご質問の中のファイナルセトルメントについての協力という点で播本オブザーバー、何か。

【播本オブザーバー】

中央銀行のシステムも、アジア各国で発展の程度には差がございますけれども、整備途上にある中央銀行システムについては意見交換とか技術支援などの協力を行っているところです。例えば、ミャンマーの中央銀行の決済システムについての技術支援などがあります。

【岩原座長】

安田委員。

【安田委員】

でんさいのほうの資料の22ページなのですけれども、法律面の課題のところで、でんさいを国・地方公共団体の支払として活用することが法令上問題ないと考えられるが、明確な解釈は示されていないというところで、僕、法律の専門家ではないのでよくわからないのですけれども、おそらく法律ではっきりと白か黒かというのは書いていないのだけれども問題ないのではないか、明確な解釈がないのではっきり自分たちとしてはわからないということが書かれていないということが書かれていると僕は解釈しているのですけれども、おそらくこういった案件というのは、でんさいに限らず、まさに決済が高度化して、それこそネットでの新しい決済手法とか出てくると、全て事前に法律でこれは黒、これは白というのを書くのは実質上不可能だと思うので、出てくると思うんですね。こういうケースに関して、実際にやってオーケーな決済のやり方なのか否かというのは、どういったプロセスで決定していくものなのでしょうか。

【岩原座長】

佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

おそらく個別具体的にいろいろなケースはあるのだと思っております。例えばこのケースについて言えばですが、国で言えば財政法、会計法などの解釈と取り扱いをどうするかということであろうと思います。実際のところは、これらの法令を担当しているのが財務省などになりますので、そのあたりに解釈を示してもらうということと、おそらく解釈だけではなしに、解釈でオーケーと出た上で、実際上のオペレーションとしてそういうものを使うことが可能か又は適当かという、そういう問題もあるのだと思います。

したがいまして、一般論になりますが、それぞれの制度を担当している所管省庁に、こういう問題があって、これについてどう考えるのかということを確認してクリアにしていくというのが一般的なやり方ではないかと思っております。

【松尾総務企画局企画課長】

前に予算をやっていたときの感じでいくと、これは支払というか、債権なので、国による債務負担になるかどうかというレベルでおそらく問題になる可能性があります。債権を発行するわけですから、国の債務を負うという行為になるとすると、それは財政法なり会計法なりで法律とか予算の裏づけというのを、厳密に国の借金ってかなり管理していますので、実際は支払計画を立てて、それに合うように、短期だったら大蔵省証券を発行して、資金繰りして、現金で手当するというのは一般的な国の会計になって、債務を負うかどうかというのは、支払かどうかというレベルともう一段違って問題になる可能性があるのだろうと思います。

【岩原座長】

小野委員、どうぞ。

【小野委員】

2点ご質問させていただきます。

最初に、でんさいについて、なかなか利用が広がらないというご報告を頂きましたが、その背景を知りたいと思います。ひところ売掛債権担保融資を普及させましょうという機運があったときに、風評被害が心配なため利用が進まないのだという議論があったかと思うのですけれども、でんさいについてもそういった懸念があって利用が進まないというようなことはあるのでしょうかというのが質問になります。

もう一つは、ちょっと話を蒸し返してしまって恐縮なのですけれども、APNなのですが、これに参加することによって利用者──利用者というのは日本の方が海外に行くケースと、海外の方が日本に来られるケースと両方あると思うのですけれども、利用者にどういうベネフィットがあるとお考えなのかというのを教えて下さい。ACHの相互接続については、今日の事務局の方のご説明の中でも個別にコルレス先を通じて送金とかをやっているケースよりも、多少、コストが安くなるかもしれないので、そうであれば急がない人にとってはそういう選択肢が増えるのはいいことなので、比較的わかりやすかったのですけれども、APNについては、誰が主導権を握るかというのは、あまり利用者の人にとっては意味のない話だと私は思います。今までも海外旅行に際して様々な決済手段が使われていますが、APNに参加することによって、どういう決済手段のメニューが増える、あるいはどの程度コストが安くなるといったメリットを教えていただきたいというのが2点目になります。

【岩原座長】

それでは、最初の点について、でんさいの諸江参考人。

【諸江参考人】

売掛債権担保融資を例に挙げられましたけれども、当会社では、まずは手形からの移行を推進しております。でんさいは新しい制度なので、企業の皆さんにとってみれば、手形のような今まで慣れ親しんだ決済手段を変えることについて、システム対応や社内のオーソライズ等が必要となります。会計システムや仕入れ情報との連携等が必要となる場合もあり、そのような準備に時間がかかってしまうことが主な理由の1つであると考えられます。それから、でんさいの認知度を上げ、盛り上がりというものをつくっていく必要もあると感じています。このような決済システムは、いきなり爆発的に進むのはなかなか難しいので、地道な活動を進めているところですが、風評的なリスクがあって進まないという認識はございません。

【岩原座長】

では、第2点について安藤企画官。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

2点目のご質問でございますけれども、まずAPN、現段階ではATMの連携と接続ということでございますので、ATMに限って言いますと、やっぱり海外旅行者の引き出しのところにメリットが出てきますというところだと思います。ただ、このAPMの議論は、ATMだけではなくて、最終的には、今後の議論の進め方にもあるのですが、送金機能の追加も議論に上がっておりまして、送金のところが相互接続ということになりますと、先ほどのIPFAと同じような状況になりますので、そこのAPNのハブを通じて東南アジアのほうに送金ができるということは、それなりにコストを安く送金できるのではないかというのがメリットになると思います。

【岩原座長】

小野委員。

【小野委員】

追加で1点お伺いしたいのですけれども、APNについて将来的には送金も考えていらっしゃるということですけれども、ACHの相互接続の資料を拝見しますと、例えば、この地図で言うと、中国とかオーストラリアという国も検討中と書いてあります。彼らはAPNのほうにも入っているということなので、両にらみでやっているのだろうと思うのですけれども、これらの国々はどういうことを考えて両にらみの対応をしているのか、もし何かお考え、感触があれば教えてください。

【岩原座長】

安藤企画官。

【安藤総務企画局企画課信用制度参事官室企画官】

直接聞いたというわけではないので、感想になってはしまいますけれども、世の中、グローバル化が進んでおりますので、決済のグローバル化というのはビジネスにもそのまま直接つながりますので、そういう相互接続の動きがあれば、そういったところに積極的に働きかけてつなげていくというのは、両睨みでやっている国々の実際に扱っている人の感度の高さというところが反映されているのかなというふうには思われます。

【岩原座長】

よろしいですか。

浜委員、どうぞ。

【浜委員】

でんさいの件で、普及が進んでいないというところで、弊社は支払サイドですが、支払手形につきましては約25年前にもう既に廃止しておりまして、その当時の一括支払というシステムを使っていました。それ以降、ファクタリング等、システムを変えながら、同じようなシステムで支払をやってきております。その中で、もう既にワークしているというのが一つと、受け取りサイドの企業様に対してまた一から説明をしてシステムを変えていかなければいけないということは、非常に労力を使うことになりますので、なかなかでんさいに切りかえようという気にならないというか、弊社の中でもその動きが出てこないというのが現状であります。

それと1点、でんさいのほうでご質問なのですが、19ページで、翌月末に現在、手形なり現金でもらえるものが15日手前で早く割引できますと。割り引いた時点で支払先企業の倒産リスク、債務不履行、ここのリスクというのは排除されるのかというのをちょっとお伺いしたかったのですが。

【岩原座長】

諸江参考人。

【諸江参考人】

でんさいが支払われるか支払われないかについては、債務者企業の状況次第です。でんさいには、手形の取引停止処分制度と同等の支払不能処分制度がございます。これにより、ある程度支払いの信用性は担保されるかなと思っておりますが、でんさいネットで支払いを担保するということはございませんので、あくまで支払企業様側の状況次第となります。

【岩原座長】

浜委員。

【浜委員】

では、30日支払が延びちゃうと、リスクは増えてしまうという理解でよろしいのでしょうか。

【岩原座長】

諸江参考人。

【諸江参考人】

期間のリスクという意味であれば、期日が延びた分の支払不能リスクは高まることになると思います。その点は、当事者間で合意いただいたうえで対応していただくということになるかと思います。

【岩原座長】

菅参考人。

【菅参考人】

今、浜委員から1つ目のコメントで、25年ぐらい前に一括に切りかえをされて、一括の支払いを今やっておられるという中で、受け取り企業にまたこの仕組みを変えていただくのはなかなか難しいのではないかというご意見を頂戴いたしました。おっしゃる点、実際の企業様とのお取引の中では多分にあるのではないかと思っております。

そうした中、私どもの銀行業界では現在、電子債権記録機関を4つご用意させていただいています。一つが、今日プレゼンテーションをいただきましたでんさいネットになるのですけれども、残り、メガバンクが1つずつ電子債権記録機関を持っておりまして、ここでなされているサービスは、25年ぐらい前にスタートをした一括ファイナンススキームの後継スキームになります。この3メガがやっている電子記録債権は何でこのような記録機関を使ってサービスをスタートさせたかというと、もともとあった一括決済、これはもう20年以上の歴史がありますけれども、この一括決済を二重譲渡リスクなく、それから下請け法の観点もクリアしながら、より利便性の高い仕組みに移しかえていくことができるということで、電子記録債権の記録機関をそれぞれがつくって、今まで自分が持っていたサービスを移しかえてきたという、そういう流れの中にあります。ですので、手形の代替としてサービスをスタートさせたでんさいネットとは少しサービスの内容が違っております。その点はご理解をいただければと思っております。

以上でございます。

【岩原座長】

沖田委員。

【沖田委員】

先ほど、小野委員のご質問に対して改めて追加の部分なのですけれども、APNのメリットとしては、ATMだけでなくて送金も広げていく中で、将来的に利用者がコスト面でのメリットを享受するというお話だったと思うのですけれども、例えばATMの部分ですと、具体的にシーラスですとかプラスというのは、既存のネットワークが存在する中で、新しくつくるものが費用対効果というか、コスト競争力を保っていくというのは決して簡単ではないようには正直感じるのですけれども、実際、どの程度の便益を享受し得るというように想定されていらっしゃるのかというのはちょっとお伺いしていないなと思うのですけれども。

【岩原座長】

佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

確かにシーラスですとかプラスですとか、そういったものもございます。少なくとも私の理解するところ、APNについては、先ほども何回かお話がありましたように、仕様ですとか、極めて基礎的なレベルでまだ議論が行われております。したがいまして、APNの発展の可能性というのが今後どれだけあるのか、それはだんだんと議論が進んでいくに従って明らかになってくるでしょうし、したがって、APNがコスト面で、あるいはベネフィットの面で他の全てのツールより優れていると断定するのも、これはまた危険なところがあり、いろいろなほかのツールと比べた上でどの程度の利便性なりコスト面での有利さがあるのか、これは見極めていく必要があるのではないかと考えております。

ただ、ASEANという経済的に非常に発展する地域でこういうプロジェクトが進んでいるということをどう考え、このプロジェクトが更に発展したときに我が国としての対応がおくれているという状況が生じるとすれば、将来に禍根を残す可能性があり、そういうことも踏まえて内容をしっかり検討し、今後の対応を考えていく必要があるのではないか、そのように考えております。

【岩原座長】

加毛委員。

【加毛委員】

今しがた菅参考人からお話しいただいたことにつきまして、でんさいと3つの金融機関が運営する記録機関では、そもそもの成り立ちが違うというお話があったかと思います。メガバンクが運営する記録機関については、一括決済方式の後継のフォーマットなのだというご紹介があったかと思うのですが、どのくらい利用は進んでいるのでしょうか。でんさいについては利用があまり広がっていないというお話があったわけなのですけれども、仮にメガバンクの記録機関については利用が進んでいるのだとすると、でんさいとの違いは何に由来するとお考えでしょうか。

【岩原座長】

菅参考人。

【菅参考人】

利用が進んでいるかという点に関してなのですけれども、一括決済の後継スキームでございますので、まずは支払企業に非常に高い信用力があるということがサービスを導入する前提となります。ということでございますので、支払企業を幾らでも増やしていくということは難しいスキームになってございまして、進んでいるかという点では従来一括決済でご利用いただいていた支払企業とその納入企業の各社様が電子記録債権に今、切りかえをしてくださっているというのは、これは事実として結構進んできているのではないかと考えています。

それと、従来、一括決済を導入されていなかった、そのサプライヤー網を持つ支払企業に関しても、電子記録債権は非常に利便性が高いものですから、これを機に一括ファイナンスを導入しようかということで、新たにオーダーを頂戴しているというケースもございます。ただ、繰り返しになりますが、非常に信用力が高いことが前提になりますので、何万社という支払企業様を対象にしたサービスの提供が可能なスキームだとは考えておりません、というのが1つ目です。

それと、でんさいとどこが違うかという点なのですけれども、一括決済でございますので、債権を支払企業が発行いたします。そうしますと、そこに対して一括のファクタリングサービスをつけている金融機関が無審査、ノンリコースで買い上げをするという、そういうサービスがついています。支払企業にとりましてはどういう意味があるかといいますと、多くは大企業になるのですけれども、納入企業へのファイナンス提供を通じて、自社のサプライヤー網を強くしていくということが、その導入意義になってまいります。そのために、販売をして売上債権が立てば、それを即座に低コストで資金化をしていくことができるというファイナンススキームがついていることに大きな特徴がありますし、それともう一つは、受け取る金融機関がどこでも変わらずサービスを受けられるという点も特徴です。つまり、ある大企業が発行した電子記録債権を受け取る銀行がどこの地方銀行であろうが都銀であろうが、信用金庫であったとしても、どこでも受け取ることができ、その債権をいつでも金融機関が買い取るということが可能な、そういうスキームとしてリリースをさせていただいているということになります。

でんさいになりますと、そこに1つ違いがございまして、でんさいを発行して、ある金融機関を受け取り口座としてでんさいネットに記録をされますと、その記録に対してアクセス可能なのは、受け取り口座となっている窓口金融機関のみになります。したがいまして、この窓口金融機関を通じた記録請求がなければ資金化ができないというところが、ここが大きな違いになってまいります。

以上です。

【岩原座長】

よろしいですか。まだまだご質問等あるかと思いますが、この後の予定もございますので、これぐらいでよろしいでしょうか。電子記録債権はまだ利用が始まったばかりで、まずは手形代替、あるいは一括支払制度の代替として今、利用が進みはじめているという段階かと思います。可能性としては、制度をつくったときは、場合によってはシンジケートローンの流動化なんかにも使えるのではないかというような議論もあったわけでありまして、今後の発展を期待したいと思います。

それでは、前半の議事はこれぐらいにさせていただきまして、今日はこの後、全体の自由討議を予定しておりますので、大変恐縮ですが、10分間の休憩を挟ませていただいて、5時20分から審議を再開するということにさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

( 休憩 )

【岩原座長】

それでは、時間になりましたので、審議を再開させていただきたいと思います。

以降は、これまでの会合において、さまざまなテーマについてヒアリングを行い、また、委員の皆様からご意見を頂戴しているところ、それを受けての自由討議といたしたいと存じます。まずは事務局から討議用の資料について説明をお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私のほうからご説明を申し上げます。お手元に縦紙で右肩に資料3、真ん中に「討議資料」と書いた資料を配付しているかと存じます。これまで本日を含めまして8回にわたり、各回ごとにテーマを設けてヒアリングを実施して、その都度議論をお願いしてまいりました。ただ、時間の制約もありまして、全体を通した議論の機会というのはこれまでなかったところ、本日、ヒアリングが一段階するということで、この機会にこれまでのヒアリングのご説明がなされた事項ですとか、あるいは各回の議論でメンバーの方々から示されたご意見、論点等をまとめ、全体を俯瞰した上で今回、ご議論いただくことが有益かと思い、この資料を作成した次第であります。まとめる関係上、ご意見等、全てまとめきれていない可能性もありますが、この点はご容赦いただければ幸いです。

また、資料の最後で、これまでのご議論を受けまして、年明け以降にご議論いただくことが想定されるような法制面の検討事項ですとか、そういったことについても記載しております。

それでは、資料をおめくりいただきまして、1ページからご説明申し上げます。まず最初は一般の利用者の方にも直接関係するリテール分野を中心としたイノベーションの進展、それに関する論点についてまとめております。

まず(1)としまして、ITを活用した新しい決済サービスの登場ということで、ITの発展等を背景に、リテール決済分野で革新的なサービス、これが相次いで登場しているというご紹介がございました。例えばドングル、スマホ等につける小さい端末でございますが、これを用いたクレジット決済サービスが登場している。あるいは、IT企業による新たなモバイルウォレット等が登場している。携帯電話番号、SNS、ソーシャルネットワークサービスのアカウントを用いた送金サービス等も出現をしている。こうした新しい決済サービスの提供は、ITの発展を活用し、さらに国際的な展開も視野に入れて進行し、グローバルなレベルで競争が進みつつあるものと考えられます。我が国におきましても、サービスの革新を加速しなければ利便性の向上におくれをとる、世界的な決済イノベーションの競争からも取り残されるおそれがある。こうした指摘についてどう考えるかという論点があろうかと存じます。

次の(2)でございます。決済を起点とした金融ビジネスの拡大ということで、決済を起点として、銀行以外のノンバンク・プレーヤー、これが銀行業務の一部を代理するようなビジネス、あるいはより総合的な金融サービスを展開しつつあるというご紹介がございました。例えば、銀行と提携し、手数料を無料にしてATMの入出金やネット振り込み等を顧客に提供する米国のSIMPLE社の例等がご紹介されました。また、Eコマース市場の運営業者が決済情報を活用してグループ内の関連企業や銀行を通じ、Eコマース市場の出品者、参加者に融資を行うサービスがございます。さらに、決済を軸とし、融資のみならず預金の受け入れに相当するような業務を展開している中国のアリペイの例等がございます。決済を中心に銀行業務のアンバンドリング化とも言うべき構造変化が進行している。こうした指摘についてどう考えるか。こういう論点があろうかと考えます。

次の(3)でございます。連携・協働による決済サービスの発展ということで、銀行と銀行の間、または銀行とノンバンク・プレーヤーとの連携・協働など、プレーヤー間の連携・協働を通じて利便性向上を図る取り組みが進んでいると。例としまして、次のページでございます。米国の大手銀行が協働して携帯電話番号を用いた送金サービスを実施している。次は、先ほどと重複いたしますが、Eコマース市場の運営業者がグループ内の企業を通じて融資を行っている。また、決済業者とATMベンダーが連携してATMによる個人間送金サービス、ヒアリングの段階ではPaypalの例が紹介をされておりました。我が国におきましても流通関連企業など、ノンバンク・プレーヤーの側から金融機関の買収や提携等を通じて、金融ビジネスを非金融ビジネスと連携して展開する動きが見られる。他方、我が国の伝統的な銀行において多様なプレーヤーとの連携・協働を通じた新しい決済サービスの提供、こうした展開はまだ目立ったものとなっていない。こうした指摘についてどう考えるか。

次の(4)でございます。決済を軸とした銀行業務のイノベーション。欧米の銀行ではGoogleやFacebook、こうしたIT関連企業が今後の銀行の競合先として挙げられているなど、最近の環境変化が危機感を持って捉えられ、「維持のためのIT投資」よりもむしろ「変化のためのIT投資」が重視される動きがある。欧米銀行における決済を軸としたイノベーションとして、例えば、ITの取り込み自体を目的にベンチャー企業の連携や買収を進める動き、オムニチャネル化、いわゆる多様な経路での顧客との接触を一体的に管理し、顧客のニーズに応じた最適なサービスを提供するといったこと、ビッグデータの活用、モバイルペイメントサービスへの注力等が見られます。邦銀は決済関連業務に有益なベンチャー等を取り込めず、イノベーションの加速化に取り残される可能性がある。こうした指摘についてどう考えるか。

次のページ、3ページ目をおめくりいただきたいと存じます。最初がリテールの話、今度は企業向けの決済の話でございます。

まず(1)にキャッシュマネジメントサービス、企業活動がグローバル化する中、キャッシュマネジメントサービス、CMSの優劣が企業の国際競争力に大きく影響する可能性がある。欧米主要国はCMSの提供を経営戦略の柱の一つとして位置づけて顧客ニーズを踏まえつつ高度化を進めている。邦銀のCMSは人的サポートでは充実している。他方、システムを含めたサービス水準は外銀に比べおくれているといった指摘についてどう考えるか。システムの完成度、プーリング、CMSに付随したファイナンス、また、自国も海外もワンプラットフォームでシステムサービスを提供するといった面におきまして、邦銀のCMSが外銀に見劣りしているといった指摘についてどう考えるか。

次は電子記録債権制度。電子記録債権制度については普及が不十分。普及に向けて取り組みが必要という指摘についてどう考えるか。この点は今回の前半の議論でもご議論いただいたところでございます。

次に、決済インフラ、いわゆる決済の清算機関などの改革と国際標準との調和等でございます。最初に国際的な動向、欧米や主要新興国では、決済インフラの高度化を通じて国・地域の競争力強化を図るといった観点から戦略的な取り組みが強化されている。例えばSEPA・IPFA。SEPAはヨーロッパの取り組み、IPFAは欧州ヨーロッパ間を中心に発展しつつある取り組みでございますが、ACHのフォーマット、方式を共通化しつつ、相互に接続を行っている。また、先ほども話がございましたAPN。ASEANを中心にクロスボーダーでATMネットワーク等を接続するイニシアチブ。各国間のネットワークの中心にハブを構築することに合意している。ACHの機能強化。ACHを銀行の付加価値網(バリューチェーン)の基盤として位置づけるといった動きがあります。

次に、各銀行の決済システムの高度化。次のページにわたっておりますが、旧電文の「エンド・デイト」を設定し、XML電文に全面的に移行している。あるいは、金融EDIを構築し、商流情報と決済情報を連携させている。次に、決済フォーマットの国際標準化ということで、ACH及び個別の銀行における国際標準フォーマットの全面的な採用をしている。その他としまして、株式会社が決済システムの運営・意思決定を主導している。イギリスなどにおきまして、例えば複数のACHを選択的に活用する体制を構築している等々のご紹介がございました。

続きまして、我が国の状況でございます。これに対し、我が国の状況について、例えば以下の指摘があることについてどう考えるか。全銀ネットは安定性の面で世界有数の水準にある。他方、XML電文対応が進んでいない。XML電文を活用している銀行はいまだ存在しない。EDIは対応未了で実証実験を実施しているところである。約40年前に規定された全銀フォーマットと国際水準であるSWIFTフォーマットが異なる。あるいは、SWIFTとの連携がないことなど、グローバルなキャッシュマネジメントの観点から支障となっている。国際連携については、ACHの相互接続について、日本が未参加のまま欧米や主要新興国が続々と相互接続を進めている状況にある。APNについては議論が進行する中で戦略的な対応が必要と思われる状況にある。消費者・事業者のニーズを踏まえた改革の広がりやスピード感が不足している面がある。あるいは、グローバルな標準化・共通化から取り残されるおそれがあるといった指摘についてどう考えるか。

次のページをおめくりいただきたいと存じます。今度は決済システム全体の安定性確保、あるいは情報セキュリティーの問題でございます。最初の安定性の確保ということで、決済システムは経済活動全体から見て、重要なインフラ的な機能を果たしており、その安定性の確保は重要な課題である。個別銀行の決済業務と銀行間ネットワークにより構成されている決済システムは、さまざまな決済サービスを提供する事業者の立場から見ても、ほかの事業者との間での最終的な決済手段となるものである。その安定性の確保は特に重要な課題である。ノンバンク・プレーヤーの担う決済業務の範囲が拡大する場合、こうしたプレーヤーの破綻や、あるいはシステムのダウンといったこと等に伴い、決済システムの安定性に連鎖的な影響が生じるリスクも増大する可能性がある。決済システム全体の安全性の確保の観点も踏まえた検討が必要となるとの指摘についてどう考えるか。

次の(2)でございます。情報セキュリティー。情報セキュリティー対策については金融機関等にとって共通のよりどころとして、FISCにおいて安全対策基準等の整備やサイバー攻撃対応に関する有識者による検討などの取り組みが行われている。サイバー攻撃等はますます高度化・巧妙化している。十分な対応策が講じられていく必要がある。多くの銀行がICカードや生態認証を導入し、ATMの改造も進めたが、その普及は一部にとどまり、いまだに磁気ストライプカードと4桁暗証番号が広く利用されている。我が国の銀行のセキュリティーの基本的な構造は、外部接続先を主に金融業界内に限定することによってセキュリティー侵害のリスクを低下させ、問題発生の場合の責任分担を明確にしてきたところ、決済をめぐる今後の状況等に鑑みると、ネットワークのオープン化等により対応した情報セキュリティーが求められている。こうした指摘についてどう考えるか。

次が、イノベーションの促進と利用者保護の確保でございます。インターネットを利用した取引をはじめとし、さまざまな局面でITの進展等を活用して、消費者・加盟店双方の利便性を高めるさまざまな新しいサービスが展開されている。他方、利用者とのトラブルに関し、例えば国民生活センターに対してさまざまな決済手段に関する相談が寄せられている。規制の強化等は利用者保護につながる面があるものの、過剰な規制は新しいサービスの登場や発展を阻害する面もある。決済高度化に関し、ITの発展等を取り込みつつ、イノベーションの促進と利用者の利便性の向上を図るという要請、もう一つ、ITを活用した不正行為や、ITの脆弱性等に由来する事故からの利用者保護という要請の適正なバランスを保つ必要があるとの指摘についてどう考えるか。

なお、利用者保護に向けた取り組みに関しましては、前回のスタディ・グループで、河野委員、永沢委員より、どういう対応が金融庁あるいは業界として行われているのかというご質問をいただきました。それについてはまとめた上で、また次回以降の会議でご説明し、ご議論の参考にさせていただきたいと思っております。

次に、6としまして、国・地域全体の戦略的な対応。米国・EUにおいては決済高度化等を国・地域の競争力強化を図る上で重要な要素であるとの認識のもと、戦略的かつ包括的に取り組みを強化している。また、例えば英国では、中長期的な視点に立ちながら、スピード感を持ってイノベーションを促進するため、銀行、企業、当局等が参加し、継続的に改革を検討・フォローする常設の場(ペイメントカウンシル)を設置し、改革を加速している。決済をめぐる近年のグローバルな動向等を踏まえれば、決済高度化に向け、我が国全体としての戦略的な対応を特定し、実行していく必要があるとの指摘についてどう考えるか。グローバル戦略については、今回の前半でもご議論いただいたところでございます。

最後に、7といたしまして、法制面についての指摘。これは次回以降の会合でさらにご議論いただくことを考えております。これまでの会合におきまして、プレゼンテーションの過程でEUの決済サービス指令等の紹介がございました。括弧で書いてありますが、決済サービス業者や決済システムの運営者、付随的な短期資金供与者を対象に自己資本規制や利用者資金の保護等の規制をこのEU決済サービス指令では横断的に整備をされております。この紹介があったほか、例えば以下の個別の問題提起をいただきました。一つは銀行法(業務範囲規制または資金決済法との関係)について。資金決済法につきましては、各種サービスに対する適用関係、資金移動業の送金限度額について。また、プリカ発行業の事業譲渡手続や供託負担等の問題について。その他としまして、CMSに関連し、法制面の適用関係等について問題提起をいただいたところと考えております。

若干駆け足になりましたが、事務局のほうでこれまでのヒアリング及びそこで出たご意見をできる限り項目別にまとめたもので、先ほど冒頭も申しましたが、ご意見として、あるいはまとめきれていなかったところもあろうかと思いますが、今回、ヒアリングの一段落ということで、これもご参考いただきながら全体を通しての自由な討議をお願いしたいと考えております。

私からは以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。

それでは、自由討議に移りたいと思います。どなたからでも結構でございますのでご発言をお願いいたします。河野委員、どうぞ。

【河野委員】

8回のヒアリング、ほんとうにありがとうございました。私はほんとうに普通の利用者といいましょうか、消費者として、今回さまざまな関係者の皆さんからのヒアリングを通しまして、日本で暮らす私たちを取り巻く決済システム、それから決済サービスの現状というのを勉強させていただいたのだなと思っております。

特に感じたのが、経済活動のグローバル化、それからITを利用したユビキタス化といいましょうか、そういったところが今ほんとうに顕著になってきているというふうに感じていたところです。

それで、今回おまとめいただきました1ページからの1の(1)、この部分に関してと、先ほど、今後検討していただけるとおっしゃっていましたが、5ページの5番のイノベーションの促進と利用者保護の確保という、その2点についてちょっと思ったところをお伝えしたいと思っています。

まず最初に、国内外でのリテール分野を中心としたイノベーションの進展という全体のところなのですけれども、今申し上げたように、これまで日本で行われていた決済システムというのは、関係者の皆さんの努力でほんとうに高い品質というのを保っているというふうには思います。ただ、その反面、先ほどあったように、日本では稼働時間が8時半から3時半までという、これは永遠に変わらないのではないかと思うぐらいなのですけれども、決済の処理時間というのが非常に限定されていますし、特に小口の決済においてはかなり高い手数料がかかっているのだという実感があります。しかし、事業者の皆さんも、それから私たち個人利用者も、選ぼうにもほかの選択肢が実はなく、銀行の窓口があいている時間に手数料を払って決済処理をしていただいていたというふうに思っております。その後、ATMとかキャッシュカード、それからさまざま銀行の決済にまつわる技術の進歩やITの導入によって徐々に環境は変わってきたというふうに思っていますが、決済の本質というのは変わっていないのではないかと感じています。

一方、今回のヒアリングでは、諸外国における決済システムの例として、24時間365日、リアルタイムで即時の決済が可能であったり、それから小口決済では安価な手数料、もしくは無料で利用できるものが主流となる方向だというふうにも伺いました。そういう情報を伺いますと、日本においては従来の銀行による決済サービスの地位というのが相対的に低くなってきているのではないかと8回のヒアリングを受けて感じているところです。

今後、パソコンやスマホを使いこなす世代においては、より安全で確実、それから情報管理も万全という、もちろん品質の維持というのは決済においては重要だと思うのですが、より多くの人に便利に安価で利用してもらえるかという観点からも、ぜひ決済サービスのあり方というのを検討していただきたいと思っているところです。

それから、5ページのイノベーションの促進と利用者保護の確保というところなのですけれども、このあたりは今も申し上げたように、日本においても国民の大半がパソコンやスマホなどを通じたインターネットを利用できる環境にいること、それから、さらに日用品等を中心にEコマースも市場規模がどんどん拡大してきて、多くの企業の皆さんもネットショッピング等に参入しています。私たちの暮らし方そのものが、商品やサービスに対するアクセシビリティーも非常に変わってきているのだというところを考えますと、物やサービスを購入する際の決済方法に関しても、今、一番私たちが利用しているのはクレジットだと思うのですが、インターネットを通じた決済の場合、クレジットカード決済、あと代引とか銀行振り込み、コンビニ支払、電子マネー、若い子とかよくわかっている人だと携帯キャリア決済なんかをすると思うんですけれども、それぞれの仕組みにはほんとうに一長一短があると思います。ごくごく最近登場してきた個人間でのSNSを利用した送金システムの話なんかも聞きますと、利便性というのが前面に押し出されてはいるのですが、それに伴うトラブルへの対処、それから利用者側への教育というのが必須であると思っています。

6ページに記載されているように、サービスの登場、発展というのを促しつつ、全面的に最初から規制するのではなくて、当然のことながらサービスの登場や発展を促しつつ、内包されているトラブルの芽をしっかり見つけて対応するという姿勢が重要だと思います。今こういった場で包括的な検討が今後進められているのですけれども、ぜひ事業者団体等での自主的な取り組みや、それから行政による監視、指導なども組み合わせて、私たち消費者が安心して利用できるシステムということで皆さんのお知恵を寄せていただければと考えています。

長くなりましたが以上です。

【岩原座長】

はい、どうも。

ほかにいかがでしょうか。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

私も河野委員と重なる部分がありますので、続けて意見を述べさせていただきたいと思います。

前回、事務局の方に過大な宿題を課してしまったようで大変申しわけなく思っているのですけれども、やはり前向きな議論というのも大変重要なのですけれども、アット・ザ・カーブという表現がされますけれども、曲がり角で見えてくるリスクを事前に察知して、そうしたリスクへの対応というのも、おそらく報告書でもまとめられると思うのですけれども、ぜひこの場の審議で検討いただきたいという思いもありまして、前回あのようなお願いをさせていただきました。そういう趣旨で宿題を出してしまったので、その点、この場でおわびとお願いの趣旨を伝えさせていただきたいと思います。

今回、おまとめいただきました内容を拝見して、河野委員と同様に、一般消費者にとってみれば、単に支払うという行為、何かを買うという単純な行為なのですけれども、実に多様な手段が登場し、また実に多様な事業者がかかわってきているということに、私も今回参加させていただいて一消費者として大変驚きました。消費者は、決済という仕組みがこのように大きく変わってきているということに理解、認識がついていっていないと感じております。事業者の方は理解されていると思いますけれども、消費者はついていけていないということを踏まえて、後で利用者保護とか消費者保護というところが出てきますけれども、そこの部分はきちんと基本的な問題として捉えて対応していかなくてはいけないのではないかと考えております。

また、銀行の決済のところですが、前回も指紋認証のお話などが出ましたけれども、多額の設備投資を銀行がしながらも、消費者の利用が進まず、せっかくの投資が有効に使われておりません。安全なシステムをつくるべく事業者が努力をしていても、消費者がついていっていないということについては、個人情報がどのように使われるのかわからないという不安が消費者側にあるからだと思います。決済システム全体が大きく変わっていく中で、消費者は何か漠然とした不安を感じております。消費者が無用な不安は抱かないで済むような情報提供というものを事業者側はもっとしていく必要があるのではないかと感じております。

それから、6ページ目のところですが、5のイノベーションの促進と利用者保護の確保のところなのですけれども、適正なバランスが必要であるということはそのとおりだと思っておりますけれども、事業者の方々には国民生活センターからご指摘があった点をお願いしたいと思いますが、やはり消費者教育、利用者教育というものをきちんとやっていかなくてはいけないと感じました。利用者教育、消費者教育と言うとすごく漠然としておりますけれども、先ほども申しましたような、なぜ消費者は自分の情報、例えば番号を安易に他人に教えてはいけないのか等を、もっと早期から教えていく必要があると思います。これは個社だけの取組みでは無理なのではないかと感じております。例えば、クレジットについてはいろいろな事業者がかかわってきている中で、決済にかかわるいろいろな業者が連携して利用者教育をやっていかなくてはいけないし、当局もいろいろな省庁があると思いますけれども、連携してかかわって頂かなくてはいけないと思います。個社ではない対応、国全体で利用者教育を作っていかなければ、そして国民が変革についていけなければ、安定した決済システムというのはつくれないのではないかということを私としては申し上げたいと思います。利用者教育というのは費用がかかりますけれども、どう費用を賄っていくのかということもいずれ大きな課題になってくるのではないかと思っています。

それから、もう1点、この報告書の1の(1)の四角のところの書きぶりですが、素朴な疑問として、「イノベーションの競争からも取り残されるおそれがある」ということですが、誰が取り残されるのかというのがちょっと気になりました。また、もう1点強いて言えば、いろいろなイノベーションへの対応のコストは誰が負担していくのかということももう一つ気になるところではあると感じました。

まとまりがありませんが以上でございます。

【岩原座長】

佐藤参事官、何かありますか。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

最後のお話でございました1の(1)の四角のところですが、実は、まとめる中で書き方が難しいなと思ったところでございます。取り残されるのはまさに誰かというところは、2つのケースがあり得るのかなと思っております。

まず、第1点、確実に想定されるのが、業者サイドとしておくれるのではないかいうことです。こういった新しいサービスがどんどん登場し、それが国際的なデファクトの標準となってきますと、そういったサービスが外国発でどんどん広がっていくという、そういう意味でビジネスとして取り残されるという可能性もございます。

もう1点、じゃあ、消費者が取り残されるかどうかということは、これはおそらくケースとしては幾つかあり得るかなと思っております。例えば、上の例であります、ドングルを用いたクレジット決済サービス、これは日本ではもう登場していますし、モバイルウォレットのようなものも徐々に登場し、例えば携帯電話番号、SNSアカウントを用いた送金サービス、これは、これまでのヒアリングでも出ておりましたが、例えばイギリスですとかアメリカですとか、わりと大規模に業者間で連携して行っている例もございます。そういう大規模な連携が国内で進んだりとか、あるいは外国の業者がサービスを国際展開すれば我が国の利用者にとっても利便性が向上するのですが、外国ではあるけれども日本では導入されていないとなると、日本の利用者が利便性という面で取り残される、そういう可能性もあるかなということは感じておりました。

書き方があやふやになっていたところがあろうかと思いますが、今のご指摘を踏まえて引き続きそこは問題意識を持ってまいりたいと思っております。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょうか。沖田委員。

【沖田委員】

2点ございまして、1点目は今の質疑の部分で、私も日本の事業者だけではなくて消費者のほうも取り残される、そういったおそれがあるのではないかと考えておりまして、今、事務局のほうからおっしゃられたように、やはりイノベーションが仮になかった場合の機会コストですね、これを消費者が負担していかないということになりますので、先ほど、河野委員もおっしゃられたように、例えば送金手数料が日本が高いとか、それから例えば時間が短いというような形の中で、イノベーションが起きていきませんと、そういったところがずっと継続してしまうと。他方、その他の国々においては非常にそこが利便性が高かったりですとか、より安価にできるというところが非常に起きてきていますので、そういったところが取り残されるリスクであるのではないかなというところですね。

ちょっと続けさせていただきますと、このリテール分野のイノベーションというところにつきまして質問させていただきたいのですけれども、非常にこの討議資料は事務局の方々が、極めて簡潔に、かつ網羅性高くまとめていただいているというふうに思っておりまして、非常に強く賛同するところでございます。特にこの二、三年は、いわゆるフィンテックというか、金融テクノロジーでのイノベーションが、北米ですとか中国を中心にかなり進んできておりますので、こちらに書かれているような既存の金融機関、ベンチャー企業ですとか非金融ビジネスと連携をしたりですとか、取り込んでいくというようなところが目立っているというふうに感じております。

なかなか定量的なものがございませんで、定性的、かつ主観の部分ではあるのですけれども、米国、それから中国の伝統的な金融機関というのは結構したたかな印象を受けておりまして、そういったベンチャーをある意味で、泳がすと言うとちょっと言い方はあれですけれども、発展を側面支援したりですとか、いろいろ支えながら、いざ果実のほうは事業提携ですとかM&Aという形で中に取り込んでいくといったような、そういった部分がかなり見られるのではないかと思っております。

そういった意味では、個人的な見解ではありますけれども、なかなか銀行という業務で伝統的な金融機関がみずから自前で内製の形でイノベーションを興していくというのは、これは世界的にもあまり容易ではなくて、そういった育ったベンチャーですとかサービスを取り込んでいくということでイノベーションを加速しているという部分が、これは世界的にも、それから金融の分野だけではなくて、例えばGoogleのようなイノベーションリーダーもみずからイノベーションを興すだけではなくて、積極的なM&Aでそういったイノベーション手法を生み出していると思うのですけれども、そういう意味では少しここは踏み込んだご質問なのですが、日本はなかなかそこが、特に邦銀ですとかはそれほどそういった部分というのは相対的には多くないと思うんですけれども、これがそもそも金融機関に限らず、日本ではM&Aが少ないので、そういった産業全体の話であったりですとか、それから、例えばそういった商習慣ですとか行内文化というような、そういったところに起因するのか、ないしはこういった場でございますので、逆に、例えばそれを阻害するような何かしらの規制であったり、必ずしも法令だけではなくて、存在し得るのかといったところ、これは金融機関ですとか、あと、イノベーションで支えられているNTTデータ等々に少しご意見をお伺いしたいなと思うんですけれども。

【岩原座長】

柏木委員。

【柏木委員】

今、沖田委員からご質問がありました通り、私ども銀行も確かに自前主義だけではなかなかイノベーションを興せないなというのは日ごろ感じているところでございます。何回目だったか、フィノベートというアメリカの事例のご紹介がありまして、フィンテックのベンチャーを集めて、その企業が発表して、それを銀行、金融機関が採用していくみたいな動きをアメリカなんかではやられているということでした。日本もそういうふうな形に持っていかないといけないなというのは、恥ずかしながら銀行だけの自前主義ではなかなかいいアイデアは出てこない可能性があるので、そういうようなことはやっていかないといけないなと思っています。

ただ、我々も実は、金融のITベンチャーみたいなところを探したりするのですが、残念ながら日本では数がそんなにない。日本でITのフィンテックベンチャーを見ていると、大体、アメリカのモデルの日本版みたいな会社が非常に多くて、ほんとうに日本発のイノベーションになっているかというと、そういう会社ももちろんあるのだと思うのですけれども、なかなか少ないなという感じがしています。これは、鶏が先か卵が先かみたいな議論になってしまうと思うのですけれども、我々も既存の金融機関としてイノベーションにもう少し積極的に取り組んでいかないと、殻を破っていかないといけないというふうに思っておりまして、そのときにはそういうITベンチャーみたいな会社と一緒にやっていくということをもっとやっていかなければいけないと感じています。

何でうまくいかないのかというのは、ここから先はちょっと個人的な意見になってしまうのですが、今までの議論の中で非常に難しいと思うのは、何度も申し上げて申しわけないのですが、コストと利便性と安全性のバランス、ここの後ろにも書いてありますが、バランスだと思うのですね。日本の決済制度というのは世界の中で見てもかなり高水準、品質が高いというふうに思っています。例えばATMがとまるということは、ほとんど日本の金融機関ではないわけでございますが、海外旅行をしますと、ATMでお金がおろせないというようなことに遭遇することもあるわけでございます。それから、リアルタイム決済が今、すごく話題になっていますけれども、少し前までは日本以外はほとんどリアルタイム決済ではなかったということで、そういう意味では品質が非常に高いということを守っていく中で、ITベンチャーの方とうまくつき合っていく方法というのを、これは金融機関自身も努力して見つけていかないといけないなと。これは個人的な意見なのですけれども、そういう努力を重ねていかないといけないなと思っています。

ただ、今までのように自前主義だけでずっとやっていくというのは難しいなということは思っておりますので、イノベーションに対応していくにはオープンイノベーションといいますか、いろいろな新しい知恵を持っている方と一緒にやっていくということが非常に大事だなと思っております。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょうか。森下委員。

【森下委員】

やや抽象的なコメントなのですが、2点申し上げたいと思います。

1点は、グローバルな展開ということが、このスタディ・グループでも話題になったと思うのですが、マーケットがグローバル化していく中で、やはり決済というものがマーケットの非常に基本的なインフラであるというのは共通の認識であるのだと思います。そうしますと、その基本的なインフラについて、日本としてある一定のコントロール、ある一定の影響力を持ち続けることができるような環境を維持していくということは、今後もすごく大事なのではないかという気がいたしております。

そのための取り組みとしては、例えば英国のペイメント・カウンシルのようなものを日本でも作って推進主体にするのがいいのかもしれませんが、いずれにしても、グローバルなマーケットの基本インフラである決済システムについて、しっかりと日本がある一定の影響力を保ち続けられるような環境を維持していくことは、今後も非常に重要なのではないかという点が1点目でございます。

あともう1点は、決済のサービスがアンバンドリング化される、あるいはいろいろな事業者が連携してサービスを提供するというようなことが一つの傾向としてご指摘されていたかと思います。それはそれで大変結構なことなのかなとは思いますけれども、そうしますと、法律的な観点からしますと、何か不具合があったときに、誰にどのような形で責任をとってもらえばいいのだろうかというような発想というものを、従来のものから少し変えていかなければいけないのかもしれないというような気もいたしております。

例えば、外国にお金を送る一つにしても、複数の金融機関が関与したりする中で、どこかで不都合があったときに、誰が責任を負うのかという問題があります。あるいは複数の事業者がいろいろなリテールのサービスに関与しているときに、誰が窓口になって利用者に対して責任を負うのかといったようなことをもう少しよく考えてみる必要があるのではないかというような気がいたしております。そういった点についての議論が詰まっていきますと、従来のように、例えば特定のプレーヤーを非常に厳しく規制をする必要がなくなって、もう少しいろいろな人が参入しやすい、しかし、責任はちゃんと負ってもらいますよ、というような形での法的な枠組みのつくり方もできるのかなというような気がいたします。

非常に抽象的なコメントで恐縮なのですけれども、そのような視点もあるのではないかという気がいたします。

【岩原座長】

浜委員、どうぞ。

【浜委員】

決済インフラの改革と国際標準の調和ということで、国際的な動向、これに対しておそらく金融機関も対応をとっていただけるのではないかと思っておるのですけれども、一つ懸念しておりますのが、対海外向けにおいて国際標準化されたものの、日本国内の決済においてはいまだそのままということにならないでいただきたいというのが一つです。国内と海外、2つのシステムが走ることによって、企業サイドとしても2つのシステムを使い続けなければなりません。どちらかが高度化されても、どちらかがおろそかになってしまったりとか、遅れをとったりということは避けていただきたいと思います。できれば1つ、国内外かかわらず、シームレスなシステムで、どちらも世界に誇れるようなシステムをつくり上げていただけるような取り組みをお願いしたいと思っております。

企業サイドとしても二重のシステム投資というのも負担にもなりますし、金融機関にとっても多分そうだと思います。それがゆえに海外向けのシステムについては維持手数料等かかるので、企業サイドが払う手数料も高い水準で推移しているといった印象もありますので、ぜひそこはお願いしたいなと思います。

以上です。

【岩原座長】

ほかに。牧野委員。

【牧野委員】

2のキャッシュマネジメントサービスのこと、GCMの話になってくると、今、金融庁だけではなくて経産省だとか、いろいろなところでちょうど議論になっていると思うのですが、そういった場でちょっと説明させていただく機会等々が私どものほうは多いのですけれども、どちらかというと、外銀の広告塔みたいな形になっているといったところが、ちょっと自分のところでは非常に苦しいというか、そういったところがありまして、もちろんメガバンクが非常にいい仕組みをどんどん入れていってくれるというのを期待するところはあるのですけれども、やはり一銀行の限界というのはあると思うので、そこは一銀行だけじゃない、何か国でできるような、銀行業界でできるような、そういったところはぜひご検討いただければありがたいなというふうに願っております。

以上です。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょうか。松井委員。

【松井委員】

規制の話は次回以降ということで、若干のコメントめいたものだけ二点ほど申し上げます。まず一点目ですが、先ほど、森下委員からもありましたように、アンバンドリング化というのは、実態としておそらく進んでいるのだと思います。いろいろヒアリングでのお話を伺って感じましたのは、銀行ないし銀行業務の一部が切り出されて、他の業者に委託されるという形のわかりやすいアンバンドリングもあれば、銀行とは全然無関係な業者が決済サービスを展開する中で銀行業務と類似のことを行う形のものもあるのですね。後者をアンバンドリング化と呼ぶべきかどうかは少し微妙ですけれども、そのような形で銀行業務的なことをやっているという事実はあるわけです。

いずれにしても、銀行業務の中のある種のものが、銀行以外の業者によって担われているという実態は間違いなく存在していて、これを規制の観点からどう見ればいいのかということになります。今回の議論では、基本的に深刻な問題が生じる行為でなければ、可能な限りそれは推進していきましょうということになるのではないかと拝見しております。そうなりますとネックになりうるのは、為替取引をはじめとする銀行法の規制とか、あるいはその他周辺の規制です。おそらく今後考えていかなければいけないのは、法律を変えなければどうしてもできない部分があるのか、あるいは従来の解釈を変えれば、従来の解釈の曖昧なところをはっきりさせれば何とかなる部分があるのかといった、立法論と解釈論の振り分け、さらには議論の中身の精査みたいなものではないかと感じました。これは、私自身も考えていかなければいけないことなのですが、これが一点目です。

それから二点目は、これはずっと考えていてわからなかったのですけれども、銀行に関して決済業務を高度化していくというときに、金融機関にとって、あるいは銀行にとってそれはビジネスとしてどういう意味を持つのだろうかということです。一方で、特にメガバンクなんかはそうなのですが、リスクはとらないでほしいという方向に世界的に進んでいて、財務規制も非常に厳しくなっているという流れが存在します。要は、銀行として行える業務を狭める方向に行っているようにみえるわけです。他方で、この決済というのは金融機関にとっては比較的リスクの少ない新しいビジネスチャンスになるのかもしれない、という感じがしたわけです。

ただ、今回の資料では、金融機関がさまざまな分野にどんどん入っていくということで、決済業務以外にさまざまな業種と連携したり、場合によっては可能な範囲で資本参加したりすることもあるのかもしれません。そうなると、また何らかの財務上の規制とかが必要になってくるのかもしれません。私も十分頭が整理できていないのですけれども、銀行が今までにはないタイプのリスクをとっていくときに、従来の規制との抵触を検討するのはもちろんのこと、新たな財務上の規制が必要になるのかどうかは少し考えなければいけないなという感じがしております。曖昧なコメントになって申しわけないのですが、そのようなことを感じております。

以上です。

【岩原座長】

ほかに。加毛委員、どうぞ。

【加毛委員】

資料6ページの「7.法制面についての指摘」について、事務局にお尋ねしたいと思います。ただ今、松井委員からもご指摘があったとおり、次回以降議論すれば良いのだろうと思うのですが、若干明確にしておきたいことがございます。

まず、6ページの最後のところで、これまで出てきた法的問題がいくつか挙げられています。ただ、ここから漏れているものの、重要な問題も幾つかあるような気が致します。例えば、第4回会合の際に、企業財務協議会から貸金業法の適用範囲・適用除外に関するご要望があったかと思います。その際、特に合弁事業において株主である出資会社から合弁会社に貸付を行うことについて、貸金業法の適用除外を認める必要があるかが議論されました。この問題につきましては、健全な合弁事業を想定すれば理解できるところもあるのですが、そのような例外を認めると抜け道としていろいろ悪用される危険性もあります。そのため、重要な問題なのではないかと思ったところでして、この問題についても、もし可能であれば取り上げてはどうか、というのが1つ目の質問あるいは意見になります。

2つ目は、以上を前提とした上で少し抽象的な話なのですが、次回以降、法制面について議論する内容というのは、これまでのヒアリングで出てきた内容に限られるのでしょうか。あるいは限られないのだとすると、どのような形で我々は議論を続けていくのだろうかということが気になっています。例えば、資金決済法の関係でも、ヒアリングの中で出てきた問題もありますが、出ていない問題もあります。具体例を2つほど挙げたいと思います。一つは「ポイント」の問題でして、かねてから規制の必要性が議論されてきました。私もいろいろな買い物をするときにポイントをためて、そのポイントを使ってさらに買い物をするということをしていますが、このポイントについて対価性があるのかないのか、あるいは消費者保護との関係で規制をかける必要がないのかといったことが、従前議論されてきたと思います。私は規制が必要だという立場に立つわけではありませんが、このような問題について今後、我々は議論していくのだろうかということが気になっています。

もう1つの具体例が、資金清算機関についてです。資金清算機関については、第3回に中島先生から全銀ネットのガバナンスの問題をご指摘いただきましたが、それ以外にもいろいろ問題はあるように思います。例えば、資金決済法69条で業務範囲が限定されているわけですが、この点について、これまでのところ特段の問題は指摘されていないのでしょうか。

これらは一例にすぎませんがこれまでのヒアリングで取り上げられなかったものの、重要な問題がいくつかあるように思われます。今後、どのような形で我々は議論を進めていくのかということについてお教えいただければと思います。

最後に、少しレベルが異なることなのですが、6ページに挙がっているトピックの中に資金移動業の送金限度額の問題があります。この問題については、以前、堀委員などからも、現在は上限額が低いために、様々なビジネスチャンスを逃しているという問題提起がございました。それはその通りなのだと思います。ただ、仮に上限額を引き上げる方向で議論をする場合には、どの程度引き上げるのかにもよりますが、非常に多額の資金移動を認めることになると、システミック・リスクなど、これまでとは異なるさまざまな問題が出てくるように思います。それゆえ、幅広く目配りをして議論をする必要を感じている次第です。

最後の点は本日申し上げるべきことではなかったかもしれませんけれども、所見を述べさせていただいたということになります。

【岩原座長】

佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず、次回以降どう進めていくのかにつきましては、これまでの議論で出てきたものだけが対象か否かというところは、必ずしもそれにとらわれるものではないと思っております。今日もこれまでの議論をまとめてご議論いただいておりますが、これまでいろいろな実態面の話もありまして、おそらくそれに関連するような、法制面での論点というものは多岐にわたっておりまして、ある程度事務局で整理しまして、ただ、その中でもおそらく足りないところ、もっとこういうところも議論すべきじゃないかというご意見も実際に出てこようかと思いますので、そういったことも含めて論点を整理した上でご議論をいただくのかなと思っております。

あと、最初にお話のございました、貸金業法の適用除外のところ、健全な合弁事業なら問題ないが、そうでなければ問題であると。これは非常に確かに難しい問題ではあると思っております。昨年、貸金業法の適用除外、グループ内の会社での資金融通をやりやすくするようにということで、政令で改正を行いまして、適用除外の対象を広げたのですが、そこでも我々としまして非常に意識しましたのは、利便性といいましょうか、やりやすさということと、悪用をどうやって防止するかと、そこの2つの面は常に考えていかなければいけないことであろうと思っております。こうした点なども含めていろいろと論点整理をしつつご議論いただくということかと思っております。

以上でございます。

【岩原座長】

池田局長、どうぞ。

【池田総務企画局長】

今の点は佐藤参事官からお答え申し上げたように、どういうふうにこの場で議論を進めていただけるか、議論があまり錯綜しないように、いかにうまく手順を追って問題提起をしていけるかというのは、ちょっと我々も正直、これから考えるところではあります。

ただ、何らか特定の各論を現時点で検討の対象から排除するという考えは持っておりません。今日、一部なかったじゃないかということは、そう深い意味があってなかったわけではないということです。

ただ、もう一つあわせて申し上げる必要があると思うのは、いろいろな各論についてのご要望なりご意見なりが既にこれまでの会合の中で出ているのですけど、そういう各論を考えるためにも、あるいはその前にということかもしれませんけれども、今、松井先生からあったように、例えば、銀行法と資金決済法と相互の関係がどういう関係なのかというのは既に質問もいただいているということは認識して、まだそれをお返ししていないというのも認識をしているんですけれども、やっぱりそもそもどう考えるのかという大きい議論をしっかりしていかないと、いきなり各論の議論をしても全体的な議論はできないんじゃないかと思います。

それから、さらにそれは我々への宿題にもはね返るのですけど、今日、EUの関係は若干、この紙の中にも、ヨーロッパの新しい法律の動き、指令の動きについては書かせていただいたのですけれども、我々も現時点で諸外国の状況については正確な認識を改めて持つ必要があると思っていまして、今、私どものスタッフを欧米に調査に行かせるべく、それもやっていかなければいけないと思っています。その中でいろいろな諸団体からも各論のご要請があるということは認識をしているのですが、この法律のところの指摘については、7でさらっと、今日は今後議論があるのでさらっと書いていますが、委員の方からするとうんざりかもしれませんけれども、これはこれでかなり長い道のりの検討がまだあるというふうに考えております。

ただ、同時に、法律部分だけじゃなくて、1から5まで書いた問題で今日もあったように、足元でもAPNの動きにどう対応するのだみたいなことは現在進行形で進んでいるわけですから、そういうものに国全体としてどう対応していくのかというのもあわせて検討をしていく必要があるということであります。法律の議論についてはこれについてもしっかり議論はさせていただきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。池田局長から大変心強いご発言をいただきまして、銀行法と資金決済法の関係等、根本問題から考えていきたいと存じます。まさに、今、それが問われているのではないかと思っておりまして、例えば、今、局長が例に挙げられました、EUの決済サービス指令は、資金移動等が国際化して、異なる国の異なる事業者が携わったときに、その間の責任関係等をどうするかというようなことをEU決済サービス指令の中で規定することによって全体のグローバル化に対応できるようにしている。アメリカも、統一商事法典第4A編(Uniform Commercial Code Article4A)に、マネーバックギャランティーというような制度を立法することによって、そういう問題に対応しているわけでありますし、前に出ましたSEPAのような形でグローバル化、IT化に対応できるような体制をつくろうとして、非常に大きい視点で対応しております。我が国も基本的にどうやっていったらいいのか、決済サービスを含めた金融サービス全体をどういう観点でグローバル化、あるいはIT化に対応できるようにするにはどうしたらいいかということで、根本問題からできればここで議論していきたいと願っております。

ほかに何かございますでしょうか。翁委員、どうぞ。その後、戸村委員。

【翁委員】

この紙はいろいろな論点をよくまとめてあると思いますので、これに書いてある点についての感想ということで幾つか申し上げたいと思うのですが、まずこの分野は、ITを活用したイノベーションが非常に速いわけですが、このイノベーションというのは、利便性とかスピードという点で寄与するということでなくて、この間、岩下参考人がおっしゃったように、セキュリティーとか安全性というのも技術のイノベーションというものが解決するという部分もすごくあるなというふうに感じました。

ですから、こういった分野のいろいろな多様な人たちが入って、技術のイノベーションを競ったり、業務設計の高度化を競うというようなことが、スピードや利便性だけでなくて安全性にも寄与するということについては、十分考えておく必要があると思いますし、また、非常にそのスピードも速いので、それを十分に見ていく必要があると思います。この間、トランザクション認証の話ですか、お話しいただいたのですが、典型的な例だというふうに感じました。それがまず1点目です。

それから、規制の話なども出ているのですけれども、やっぱり今、こういったいろいろなさまざまな事業者が参入するようになって、アンバンドリングでやるようにはなってきているのですけれども、利用者の保護という視点は重要であると思います。今度またお聞かせいただけると思いますけれども、そういった事業者がどういう自主的な取り組みをしているのか、それで十分なのかというようなことについてきちんと見ていきたいと思いますし、全体として目配りができているかということについても今度、お伺いしたいと思います。

ここに決済システムの安定性についてもということが書いてございますが、これについても十分検討する必要があると思うのですけれども、私が伺った感じですと、多くのものは最終的に銀行のところに結びついていて、銀行のところでクリアリングされて、最終的にセトルメントされると、そういうシステムの中にあると理解しております。そうでない分野があるとすればまたぜひ教えていただきたいのですけれども、そういう意味で、全体の中で決済システムの安定性が保てるかという視点で考えていくということでよいのではないかというふうに感じております。

それから、銀行業に関して、やっぱりオープンイノベーションは非常に重要だと思います。自前主義が限界になっているという先ほどご発言もありましたが、どんな分野でも、今、オープンイノベーションは非常に重要なってきていて、それは銀行も無関係ではないというように思います。連携とか協働ということを柔軟にしていくことによって利用者の利便性に資するということがとても重要な視点ではないかと思っております。

それから、グローバル化に関しては、今日のお話を伺っても危機感を持って対応するべきだというふうに感じました。日本がガラパゴスになってしまうという危機感がすごくありまして、特にこういったネットワークの分野というのは標準化というのが非常に重要だというふうに感じております。そういう意味で、ここにもご指摘がありますけれども、戦略的な対応というのは国としても非常に重要だと思っておりますし、それから、全銀ネットについて先ほどご指摘がありましたけれども、ガバナンスの仕組みというのも、以前も岩原座長からもご指摘がありましたけれども、意思決定の仕組み、そういったことについても議論していったらいいのではないかと思います。

以上でございます。

【岩原座長】

ありがとうございます。

銀行の外で決済がなされるビットコインみたいなものも、今後検討の対象にしていく必要があるのか、あるいは論点になるのかもしれません。

ほかにいかがでしょうか。戸村委員。

【戸村委員】

ありがとうございます。私も大きな論点について意見表明をさせていただきたいと思います。特に1の(1)と6のアジアについて意見表明をさせていただきたいと思います。

このスタディ・グループの表題にある高度化ということの意味からはじめたいと思うのですが、私は、大きな技術革新がいろいろなところで起こっているところで、それをどうやって利用者側のコスト削減につなげるかということが課題かと思います。その点から1点、1の(1)のリテールについて感想を申し上げたいと思うのですが、翁委員が今おっしゃられたように、私も、目新しいサービスがありますが結局はインターフェースのイノベーションで、コアの部分はクレジットカードを含む既存の銀行与信システムを使うというところは変わっていないと理解しております。そういう意味では目新しい機械等々にあまり惑わされないほうがよいかと思います。

ただし、インターフェースが進んでいくところで、新しい業種を仲介して決済がなされることになりますので、そこに手数料が発生して、私個人の危惧としては、そういう手数料の存在によって決済が高コスト化し、経済活動が停滞することがないようにするべきかと思います。特に独占的な地位の乱用等々をどのように防ぐかというのが課題になるかと思います。

その点で4点、感想を申し述べたいのですが、今後、政府の課題としては、1つはモニタリング体制の強化が必要になってくると思います。今まではクレジットカードのみが電子決済のリテールのインターフェースだったわけですが、今後それらのシェアが増えていくことが見込まれているという状況で、政府として数量的なデータに基づいた施策をすることが大事かと思います。特に日本銀行の決済システムレポートの一層の充実が望まれるかと思います。

2点目については、ちょっと議論されなかった論点ですが、このように私的企業の決済サービスが増えるところで望まれるのは、現金の利便性の維持が大事かなと思います。現金という公的な決済手段の存在が大きな競争相手となり、私的企業の提供する決済手段の手数料の高騰を防ぐ効果があるのではないかと思います。特にATMの小銭の受入れが日本で現金使用のシェアが他の先進国に比べて高いのですけれども、そういう日本特有の事情というのは、ATMの小銭の受入れが大変大きい役割を果たしていると思いますので、銀行業側の努力も維持していただきたいかと思います。

3点目は、先ほど加毛委員がおっしゃられたような、今後、法規制の議論が進むというお話がありましたけれども、透明性の高い法規制で収納代行もしくは前払式の支払手段を含む新規産業を育成し、そして、競争促進によって手数料の高騰を抑えるという視点が必要かと思います。

第4点は、私、前職、カナダの中央銀行におりまして、そこで少し議論したことなのですが、公的企業・機関において、特にオンライン上の決済手段を提供するかどうかは中長期的に議論されたらいかがかと思います。

ちょっと話が長くなって申しわけないですが、アジアについては山上委員のご発言に私は同意しておりまして、今後、高度な送金プラットフォームに進化する可能性がありますので、政府として積極的にかかわっていく必要があるかと思います。ただし、現状のAPNに私的企業としての銀行業が接続に多大なシステム改革の投資をするビジネスケースがあるかどうか私は疑問に思っておりまして、APNに関してのシステム対応に誰が費用負担をするかはご議論されたらよいかと思います。

これは、最後の点になりますが、今、日本銀行のほうで国債決済システムの国際接続等々、ご努力されていまして、日本国債を担保とする決済エージェント間のセトルメントの推進を進めると日本としてASEAN等々の諸外国への貢献になるかと思いますが、APNというとリテールの決済というようなイメージがありますが、ホールセールということも絡めてオールジャパンで努力を続けられたらよいかと思います。

以上です。

【岩原座長】

小野委員、どうぞ。

【小野委員】

事務局の皆さん、大変簡潔にまとめていただきましてありがとうございました。初回で自由討議ということですので、若干、感想めいた意見を述べさせていただきます。

全体の項目で言うと7つ立てられており、その前半の1と2では、民間のビジネスとして、リテール、それから企業向けのサービスの現在の潮流がどのようになっているかをまとめられていると思います。

ここを拝読し、同意する部分と、もしかしたら同意できない部分があります。同意する部分としましては、銀行業務のアンバンドリング化とも言うべき構造変化が決済のエリアにおいても生じている点です。アンバンドリング化という言葉自体はもう20年ぐらい前から言われていることですけれども、決済でもそうした動きが出ている点について同意しますし、だからこそこういった新しいサービスというのが銀行以外の事業者から出てきているのだろうというふうに理解しています。

同意できないかもしれないと申し上げたのは、事務局の方がどういう意図で書かれたのかがちょっとまだわかりかねているのでそう申し上げているのですけれども、銀行がこういった流れに立ちおくれているかもしれないというようなトーンで書かれている点です。本当に立ちおくれているのかどうなのかということを判断するだけの材料を私は持ち合わせていないですけれども、仮にそうだとしても、それは必ずしも否定的に捉えるべきことではないのかなというふうに考えております。すなわち、消費者なり、あるいは企業のニーズはそれぞれ一様ではないはずでして、先ほど柏木委員からコストと安全性と利便性の3つをどうバランスさせるべきか、銀行としては悩んでいるというお話がありましたけれども、おそらく決済ビジネスに携わる事業者側もそれぞれ違う嗜好をお持ちのはずで、それぞれの事業者が顧客ターゲットを絞って、自分はこういうお客さんたちを得意とするというふうことを考えればいいことなので、もし仮に銀行業界というのが過度に安全性を重視するような事業体であるとするならば、それはそれで一つの選択なので、私は別に構わないのではないかと思います。

問題にすべきは、利用者にとってほかの選択肢がないということだと思います。これまで伺っている限りでは、日本でも決済の分野で新しい動きがないわけではないということなので、そんなに心配する必要はないのかなという印象を持っておりますけれども、ただ、そうはいっても、競争環境が整備されるのは非常に大事なことなので、もし懸念するとすれば、参入障壁が非常に高くて、ぼやぼやしている銀行を出し抜いて新たなビジネスを展開したくてもできない環境なのだとすれば、非常に問題だろうというふうに考えます。

また、その関連で言いますと、たしか2回目ぐらいのときだったと思いますけれども、ヨーロッパでは資金決済業者が数千のオーダーでいるというような数字が出されていたかと思いますけれども、そういった国々でどういった競争環境を整備されているのかというのは一つ参考になるのかなというのが1点目です。

それから、これが最後ですけれども、同意できないかもしれない2点目として、ただ、そうはいっても、討議資料の項目で言うと3のような、全ての業者が競争をしていく上での土台となるような決済インフラの部分というのは、確かにみんなが協調しないとなかなか物事が進まないエリアですし、また、全員で動いたほうが効率的なエリアでもあると思いますので、そこはそこでちゃんと検討を進めていくべきなのだろうと思います。ただ、個人的にはここの場がこれを議論するのにふさわしい場なのだろうかという気が若干しております。情報共有という意味では大変意義のあることだと思いますけれども、非常にテクニカルな論点も多いのだろうと思いますので、これは関係される国の方々なり、金融機関の方々なりがそれぞれのコストベネフィットを勘案した上でビジネスライクに検討されればいいことだと思います。その意味で言うと、討議資料の項目の6で挙げられていたことを踏まえて、何らか議論をしていく場を新たに設けるというのは一つのあり方なのかなというふうに拝聴いたしました。

以上です。

【岩原座長】

ほかに。安田委員、どうぞ。

【安田委員】

先ほど、消費者から見た、新しい高度化されたサービスに対する不安という観点が出てきたと思うのですけれども、それとは別の不安として、事業者サイド、実際にベンチャー企業であったり、イノベーションを生み出すサイドから見た不安というのを、耳にする機会があったのですけれども、最近たまたまネットビジネスを手掛けている方、何名かとお話ししたことがあって、これは別に金融庁であったり、決済だけに関連することではないのですけれども、日本で新しいビジネスを始める際に、まず、とりあえず自分たちが行おうとしているサービスが法律に抵触しないかどうか、それは当然チェックするのですけれども、その後、グレーゾーンがたくさんあるので、役所にお伺いを立てると。たくさん書類を出して、認められるかどうかもちょっとよくわからないという状況で、それは事業者から見ると、非常に広い意味での法制度のコストみたいなのが高くなっています。

で、ここからは定量的な言えない、何とも言い難いところなのですけれども、イノベーションを志す企業が日本から生まれるとか、海外の優れた企業なり人材が日本に入ってくるのを阻害している要因だと思います。先ほど、決済システムのシームレス化というのがキーワードに挙がりましたけど、シームレス化に加えて、法制度、どういった基準にするかは専門家の皆さんで議論をして、きちんと穴のない法制度にしていくべきであるのですけれども、法律プラスアルファで運用体制をどうするか。だめなものはだめとはっきりわかるような制度にしておかないと、結局、つくったはいいものの、後々引っくり返されるのじゃないかという漠然とした不安がおそらく事業者側に残って、それがイノベーションを阻害しかねないという懸念をかなり持っています。

何でそういった法制度コストを下げたほうがいいのか。イノベーションを阻害するという話にも関連しているのですけれども、日本、特に東京なんかこれだけの大都市なのですけれども、海外からやっぱり優秀な人材企業が全然入ってきていないのですね。これは経済統計上もあらわれていて、外国からの日本国内に対する直接投資というのが、よその先進国と比べても圧倒的に低い水準です。もちろん理由はたくさんあって、高い法人税、所得税みたいな、根本的な理由もあるのですけれども、こういった制度面での立ちおくれている部分、おくれているのか進んでいるのかはあれですけれども、あまりに慎重過ぎる点というのが大きく阻害しているのじゃないかという印象を個人的に強く持っています。

異なる論点ですけど、途中でオールジャパンという単語も挙がりましたけれども、おそらくオールジャパンではもはやイノベーションはなかなか生み出せなくて、世界中から優秀な人材を企業が集めてくると。実際にシリコンバレーとか行くと、外国人だらけです。もうアメリカ人だけで回っている企業なんて1つもなくて、いかに外から優秀な人を入れるか。日本人だけでいいものをつくって外に出していくという考えではなくて、よそからどれだけいい人を持ってこれるかというのが、この先10年、20年の死活問題になると思うので、どういった形の法律を今後つくっていくかによらず、基準をある程度明確化して、できるだけ事業者サイドから見て不安が残らないような制度設計という観点を意識していただけるとよろしいのではないかと個人的には思います。

以上です。

【岩原座長】

そういう規制監督当局の規制の透明化というのは前から進められてきているところで、それを一段と進めてほしいというご要望だと思います。

ほかに。関委員、どうぞ。

【関委員】

1点だけ。全体的によくおまとめいただいていると思うのですが、5ページ上のシステムの安定性のところで、特にこの四角で囲った部分、ノンバンク・プレーヤーと書いてあるところについて、私の理解が十分ではないのかもしれないのですけれども、連鎖的な影響が生じるリスクということで、決済システム全体の安定性の確保というのが必要だと、そういう指摘についてどう考えるかとあるのですけれども、これが仮に単純に銀行と同レベルの安定性の確保が必要だというようなイメージであるならば、それはちょっと行き過ぎなのかなと思っています。ちょっと私の考え過ぎなのかなとは思うのですけれども。もちろん、安定性の確保というのは重要な課題だと思うのですが、一方でイノベーションということもしっかり考慮すべきであるし、それぞれのシステムに適したレベルというものをぜひ検討すべきだろうというふうに思います。

以上です。

【岩原座長】

沖田委員。

【沖田委員】

イノベーションの、なかなか金融分野において日本でイノベーションは生まれにくいというところで、先ほど、柏木委員もご発言されていたような要求レベルの高さというのは一つ、非常に強いのじゃないかなというふうに賛同するところでございまして、無謬性と言いかえてもいいかもしれないのですけれども、例えばセキュリティーが非常に大事なもので、かかわるプレーヤーというのは全てそこに対して意識がないというプレーヤーはいないと思うのですけれども、一方で、その他の多様性を含めた無謬性を強く追究されるがゆえに、どうしてもそのコストは最終的には消費者が負っているというところが少し議論の中では抜けやすいのかなというところですね。

それから、同様に柏木委員はクローンサービスですね、言いかえるとコピーサービスが多いというご指摘もありましたけれども、これは先ほどの森下委員もおっしゃっていたようなところで、日本でのイノベーションというのはなかなか生まれづらい。全く新しい新規性の高いサービスというのは生まれづらくて、例えば北米でもう既に存在しているサービスを日本でもやりますよというと、比較的産業界においても理解していただきやすいというのは、これは残念ながら実情なのかなと。同様に、人材の流動性というところも一つ、そういった阻害要因で、ご指摘されていた外国人というところを、おっしゃるように、特にサンフランシスコとかシリコンバレーではグローバルチームでないベンチャーというのは私も見たことがほとんどないですし、それから、同様に、そういったフィンテックの会社というのはほとんどやはり既存の金融機関でかなり高い役職の人がスピンアウトして出てくるというケースが多いですけれども、それもなかなか多く見られないので、そういったところが複合的にイノベーションの日本で生まれづらくなっている要因ではあるのかなと。どうしても利便性と消費者保護という話があると思うのですが、個人的にはイノベーションがそれをむしろ解決していく、その2つは対立すべきものではなくて、そういったイノベーションによってむしろ共存していくというか、両立していくのではないかというふうに思いますので、やはりイノベーションを興しやすくするような制度設計ですね。

先ほど、小野委員もおっしゃられたような、例えば、既存の金融機関はむしろ非常にかたい、安定した土台に徹すると。その上のインターフェースというか、サービスを発展しやすくするというのも一つの方向感ではあると思いますので、産業競争力ですとか、それを通じた最終的な消費者の利便性とコストの面、それをどう高めていけるかというような、そういった今後の法制度ですとか規制のあり方というのはぜひ継続的に議論をしていただけるとありがたいなというのは感じております。

【岩原座長】

播本オブザーバー、その後、山上委員、お願いします。

【播本オブザーバー】

先ほど戸村先生からのご発言の中で、決済分野での日本のアジアへの貢献に関連しまして、ASEAN+3の取り組みについて触れていただいたので、若干補足させていただきたいのですけれども、先ほど、私、ASEAN+3諸国の中央銀行の資金決済システムと、各国証券決済システムとの接続を通じた、クロスボーダーの証券取引のDVP決済、資金と証券の同時受け渡し決済の実現に向けた検討が進んでいることを説明させていただいたところなのですけれども、こうした構想は、資金決済システム同士の接続を通じた資金と資金の同時受け払いといったことにも応用できるものであります。

ただ、いずれにせよこうした取り組みは、中央銀行のシステムを使ったホールセールの方の取り組みということでございます。この点、日本銀行は日本銀行法のもとで、「金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保」を目的としているところでございますので、こうしたマンデートとの関係でも、私どもはホールセールの取り組みを担っているということになろうかと思います。

これに対して、我が国では、リテールの決済はご案内のとおり金融機関ですとか民間の事業者によって担われておりまして、この点、ご紹介のあったAPNなどもそうした民間での取り組みということで推進されているということかと思います。

【岩原座長】

山上委員。

【山上委員】

私も少し感想というか、自分なりの整理学をご披露させていただきたいのですけれども、今回まとめていただいたものの一番奥のほうにある原因といいますか、理由といいますのは、ITの進化とグローバル化ということに尽きるのだろうなと思っています。それが日本国のような成熟国が受ける影響と、新興国のような持たざる人が受ける影響とは甚だしく違っていて、その使い方もそれぞれに異なるというところだと思うのです。今まで日本は引き続き明治時代以降、欧米に追いつき追い越せというような形で進んできたと思うのですけれども、実際にふたを開けてみると、インフラなりシステムのイノベーションの取り入れ方といいますか、実際に新興国が取り入れられる余地というのは非常に大きくて、びっくりするほどの速度で追いついてこられるところがあります。そうすると、成熟国である日本としては、そのITの進化をどうやって受けとめるかというところが非常に難しいのだろうなと思っております。この5ページにもまさに書かれておりますが、我が国の銀行のセキュリティーの基本的な構造は外部接続先を、と書いてあるのですが、これは多分、セキュリティーというよりも銀行のシステムの構造と読みかえてもいいぐらいのインパクトがあり、それが組織ですとか、銀行のサービスですとか、意思決定構造全部に影響を与えているのだろうなと考えております。

その中で1つ出てきた構造というのが、ネットワークのオープン化とか、オープンアクセスバンクというようなEUの取り組みになっていると思うのですけれども、まさにそういう国の経験を踏まえながら、逆に、持たざる人、新興国という人たちと一緒にイノベーションを興していくというようなことも一つの方向性としては考え得るのではないかなと思っております。

最近、東南アジアに行って仕事をする機会が多いのですが、ビザとかマスターのR&Dの拠点がどんどん東南アジア、もしくはシンガポールのほうに移行しているというような事例もございます。日本がこれから日本だけで生きていけないのだとすると、当然、金融機関とどこかの連携、金融機関同士との連携というのもあると思っているのですけれども、成熟国と新興国との連携というのもあっていいかなと考えております。

以上でございます。

【岩原座長】

柏木委員。その後、堀委員。

【柏木委員】

イノベーションの話題がたくさんありまして、私ども、この討議資料に書いてある、イノベーションが必要であるとか、あるいは銀行はもっとイノベーションをやらないといけない、あるいはオープンイノベーションといいますか、ベンチャー等を活用して、一緒に連携していかなければいけないというのは全く異論がないところでございます。

ただ、実は私自身の経歴でいきますと、もう10年以上、実はインターネットの世界の商品企画みたいなものをやってきたので、これまでの議論の中で、随分お叱りをずっと受け続けていたような印象があるのですけれども、全く日本がイノベーションを興していないかというと、そうでもない。これまでの議論はどちらかというと課題を話し合ってきたので、その辺の議論はあまりなかったのですけれども、少し今日お話があったように、ATMの機能としてはかなり進んでいると思います。振り込みも簡単にできますし、手続もできます。それから、小銭まで含めて扱えるというようなATMをこれだけ普及させている国というのはほかにないと思います。それから、生体認証もいち早くやりましたし、今、モバイルバンキングは当たり前なのですけれど、これは、日本がほとんど最初にやったと言っていいと思います。

それから、ネットバンクが今、日本には数行ありまして、これらは、みな100万人以上のお客様を集めている。海外でもネットバンクができているのですけれども、みんな撤退したり、うまくいっていないところが多い中で、これだけ発展してきたというのも、やはり日本独特のイノベーションを遂げているのだろうなと。あるいは電子マネーですね。今、非接触のICカードを使った、あるいは携帯を使ったサービスが欧米で立ち上がりつつありますけれども、日本ではとっくにみんな使っている世界であるわけです。

そういうことから考えると2つありまして、一つは、今日の前半の議論にあったように、我々の反省としては、日本の国の中にマーケットがあるものですから、もう少し外へ出ていくということを考えなければいけなかったかなと思います。ただ、一事業者としてやるのはなかなか難しいので、今日前半で議論があったように、オールジャパンでそういうことをやっていくという発想が必要なのかなというのが1つ目でございます。

それから、もう一つ、今までの議論の中で、欧米がこうやっているのに日本ではできていないじゃないかという話については、よく全体を見ないと間違っでしまうのではないかという印象も、商品を開発、企画していた立場からはあります。その国によって、ローカルな決済の仕組みであったり、国民の志向性ですとか、習慣ですとか、歴史がありますので、もちろんだんだんとグローバルになってきてはいるわけですけれども、グローバルとローカルなもののバランスをうまくとっていかないといけないのかなと。その2点を感じました。

基本的にここに書いてあることはそのとおりだと思いますし、我々も努力していかなければいけないなと思いますが、感想として申し述べさせていただきました。

【岩原座長】

それでは、堀委員。

【堀委員】

8回を通じましてヒアリング、大変勉強させていただきましたし、事務局より非常に有益な取りまとめをいただきまして、また、委員の皆様方からも大所高所からのご意見をいただいておりまして、非常にそのとおりだなと思うところが多くございます。

感想めいたところで恐縮でございますけれども、銀行以外のノンバンク・プレーヤーとして発展してきている幾つかのサービスがあるというところ、一方で伝統的な銀行においては多様なプレーヤーと連携・協働を通じた決済・サービスの提供の点がまだ目立ったものとなっていないという指摘が2ページ目にございます。

私の個人的な感想でございますが、そういう面も一部ありますけれども、銀行でも、先ほど柏木委員からもございましたとおり、ネット銀行をはじめとして決済専業銀行というものができ、また、伝統的な銀行においてもインターネットバンキングにおいてはノンバンク・プレーヤーとの取り組みが進んでいる部分もあると認識しております。銀行以外のノンバンク・プレーヤーが得意とする分野もございますし、銀行において実際に行われているサービスの中で非常に成功しているものもある。こういったものを支援する視点といいますか、制度のあり方について検討する段階においては、いろいろな強みというものも支援する視点を持って、規制のあり方、あるいは緩和のあり方ということについて議論ができたらなというふうに個人的に思うところでございます。

一例といたしまして、電子マネーがこれまで発展してきているわけですけれども、この連携というのが、まだ制度上も果たしてうまくできるのかどうかというところが曖昧になっています。例えば、クレジットカードで送金資金を入金できるのかとか、あるいはポイントを移動して決済に使えるのかどうかとか、いろいろな事業者間の連携が進んでいる中で、そういったものを起用するのかどうかという検討の過程で幾つも論点があるところでありまして、そういった事業者間の連携について今後議論が進んでいくということを期待しております。

もう一つ、2点目でございますが、いろいろなイノベーションに対応して、例えば電文を全面的に新電文に移行しようですとか、国際標準化フォーマットの採用ですとか、こういったものを、時間がかかるものを採用する際に、時間軸についてどう考えていくのかというところが非常に私としては興味があるところでございます。こういったイノベーションがどんどん進んでいくところだと思いますが、一方で、全面的に制度を変えるとなると、とても準備に時間がかかるというところがあるかと思います。中長期的に取り組むところ、あるいは短期的に急ぎ対応しなければいけないところというのがどこなのかということを切り分けて議論いただくと、企業のほうでも見通しが立てやすいのではないかというふうに感じるところです。

以上、異なる観点になりますけれども、2点指摘させていただきました。

【岩原座長】

古閑委員。

【古閑委員】

イノベーションという言葉って、非常に人によって捉え方が違うのかなというふうに思っておりまして、ネットの業界にずっといて思うのは、すごいイノベーションって、そうそう起きるものではないような気がしていまして、小さいイノベーションを重ねていくことによって、振り返ってみると、これ、イノベーションが進んだねっていう状態なのかなというふうに思っております。

そうだとすると、やっぱり少しずつの組み合わせをしていくためにいろいろな人が入ってきたりとか、いろいろな人と組めるという環境が、イノベーションのためには結構重要なんじゃないかなと思っています。

今、スマホなんかはもう大分使われてきていますけれども、これも徐々に、最初は電話しかできなかった携帯にメールが入ってきたりであるとか、音楽聞けるようになったりだとか、それにさらにインターネットが追加されてスマホがあるわけですけど、そういうものなのだと思っています。

そういうふうにいろいろな人が入ってくる中で、全員に同じ規制をかぶせる必要があるのかというのは1つ論点としてあると思っておりまして、先ほど、何人かの委員からも出ていましたけれども、今の決済って大体、銀行なりクレジットカードなり、既存のものとつながっているというのがほとんどだと思いますので、その中で、じゃあ、どこが最低限守らなければならないのかという観点も踏まえつつ、イノベーション、いろいろな人が入ってこれる環境というのをどううまくつくっていくのかというところをやっぱり考えていく必要があるのだろうと思います。

多様性があったほうがやっぱり消費者にとってもいいと思いますので、とにかくコストが安いほうがいいという人もいれば、とにかく安全性というところを求める人もいると思いますので、その多様性を確保するためにも、全プレーヤーに全く同じ規制ということでは、なかなかその多様性って実現できないと思っておりますので、そういう意味での消費者のためのサービスをつくり出していくという観点もすごく重要だと思っております。

いろいろな特色のサービスが出てくるからには、わかりやすいということはすごく重要だと思っていまして、これはこういうところは実現できているけれども、こういうところは実現できていないのだというところの情報がちゃんと伝わるという中で、きちんと適正に選択をしていただくためには、啓発活動というのがすごく重要だと思いますので、そのあたりはどうやって取り組んでいくのがいいのかというのをもっと、足りていない部分があると思うので考えていく必要があるのかなと思っております。

以上です。

【岩原座長】

ほかに何か。

よろしいしょうか。それでは、場合によっては19時という延長した予定の時間が来ましたので、自由討議を終わらせていただきたいと思います。

年内の会合は本日を最後とさせていただき、年明け以降は本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、議論を深めていきたいと考えております。

最後に事務局から連絡事項がございましたらお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私のほうからスケジュールについてご連絡を申し上げます。年明け以降の会合につきましては、改めて皆様のご都合を踏まえた上でご案内させていただきたいと思っております。本日も多様な観点からご議論いただいたところで、また我々事務局としても考え方なり整理をさせていただき、皆様のご都合を踏まえた上でご案内を申し上げたいと考えております。

以上でございます。

【岩原座長】

それでは、以上をもちまして本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3558、3560)

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