金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」(第11回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年3月24日(火)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

それでは、予定の時間になりましたので、決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ第11回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は事務局より、「金融審議会総会における審議」について及び「欧米の決済サービスに関する法制度及びインフラ等」に係る海外調査についてお話しいただき、その後、一括して自由討議を行います。

それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私のほうから、一括してご説明を申し上げます。まず最初に、資料1というものが配付されていようかと存じます。この資料1に沿って、先般開催されました金融審議会総会における審議につきまして、ご説明を申し上げます。

まず、表紙を1枚おめくりいただきたいと思います。今月3日、金融審議会の総会が開催され、この総会におきましては、新しい金融審議会会長として、本スタディ・グループの座長をお願いしております岩原先生が選任されたところでございます。またあわせて、決済業務等の高度化についての検討状況の説明と、金融グループを巡る制度のあり方に関する新しい諮問がございました。

まず、決済業務等の高度化につきましては、事務局から本スタディ・グループにおけるこれまでの審議について、概要を報告させていただきました。今後4月を目途に、スタディ・グループにおいてこれまでの審議の中間整理を行った上で、スタディ・グループをワーキング・グループに改組し、さらに審議を深めていただくこととされたところでございます。

真ん中に、今後の主な課題と書いております。2つほど書いておりますが、まず決済の高度化に向けた将来の戦略的なビジョン、あるいはアクションプランの策定と、その実行といったものが考えられようかと思います。後ほど外国の制度等をご紹介申し上げますが、諸外国でも決済を巡る環境変化等を踏まえて、広範囲でさまざまな取り組みを戦略的に進めております。我が国におきましても、決済高度化のために関係者が取り組むべき事項と方向性を示して、戦略的に取り組みを進めていく必要があろうかと考えております。また、こうした戦略や実態、必要性を踏まえつつ、決済高度化のために必要な法制度面の手当といったことがあれば、それについてもあわせて検討していくということが考えられようかと思います。

2つ目が新しい諮問、金融グループを巡る制度のあり方に関する諮問でございます。金融グループの業務の多様化・国際化の進展といった環境変化を踏まえ、金融グループを巡る制度のあり方等について検討を行うよう、麻生金融担当大臣から新しい諮問がございました。また、この諮問を受けまして、金融グループを巡る制度のあり方について具体的な検討を進めていくため、新たにワーキング・グループを設置するということが決定をいたしました。

もう1枚、次のページは諮問文そのものを記載しております。内容は今申し上げたところと同じですので、説明のほうは割愛させていただきます。

もう1枚先に進んでいただきまして、ページの3というものがあろうかと存じます。このページにおきまして、新しい諮問の背景、あるいは論点等を1枚にまとめて記載しております。上のほうに背景と書いております。まず最初の丸のところでございますが、金融審議会の本スタディ・グループにおきまして決済業務等の高度化についての審議が進められている。ここでの議論を通じて、この問題が金融グループのIT戦略、さらにはグループ全体の経営戦略の問題と密接不可分であることが認識されるに至っている。これがまず、諮問の背景の1つでございます。

次の4ページに、これは以前のスタディ・グループの審議でもご覧いただいた表を記載しており、ご記憶かと思います。左のほうは日本総研の野村参考人からご説明いただいた資料でございますが、アメリカの銀行のIT予算の優先投資分野を見ますと、いわゆる維持への投資よりも変化への投資のほうが、割合として大きな数字となっているということでございます。

一方で右のほう、邦銀のシステム関連経費の目的別内訳でございます。これはFISCがアンケート調査でまとめたものでございます。左のほうも基本的にアンケートを通じてまとめた資料ということでございますので、単純な比較は難しいかと思いますが、ただ趨勢としまして、邦銀のシステム経費を見ますと、真ん中にある水色の部分、維持・運用のところが約7割程度、上の白い部分、安全対策が8%、9%程度。一番下の赤い部分、新規開発が2割を若干上回るというところで、米国の銀行のIT投資が、今後の展開も含めて戦略的に進められているという傾向がわかろうかと思います。

もう一度、3ページのほうにお戻りいただきたいと存じます。背景のところ、2つ目の白い丸のところでございます。先ほど、決済の高度化の文脈で申し上げましたが、もう一つ違った観点といたしまして、足元、金融グループの多様化・国際化等が進展しているが、持株会社その他の金融グループを巡る現行の制度が、こうした実態に必ずしも十分に適合していないのではないかといった指摘も存在しております。より具体的に下のほうに、黒い丸で4つほど並べております。

1つ目の丸ですが、主要行グループを中心に、金融グループの業務のうち、例えば国内銀行本体、これが主として銀行法で見ている分野ですが、国内銀行本体による業務からの収益の比重は低下の傾向にある。銀行以外、あるいは海外の拠点からの収益というのが相応の割合になっていると。

2つ目の丸でございます。他方で、最近の国際的な議論の中では、持株会社を中心とした金融グループ全体の健全性を母国当局が責任をもって監督していくという流れがございます。

3つ目の丸、加えましてグループ全体の競争力強化に向けて、持株会社にはグループ全体での戦略的な経営方針の策定、的確な経営リスク管理、そのために必要な資本・資金の調達など、より幅広い中核的な役割が求められる傾向にある。これに対し、現行法上、持株会社は金融機関の主要株主の一形態との位置づけであると。

最後の丸でございますが、さらにグループのシナジー、コスト削減効果を高めるため、グループ全体での柔軟な業務展開を可能とする枠組みを望むといった声もあると。

これを踏まえ、矢印の下、若干ピンクがかった色で記載しておりますが、金融グループにおいて、持株会社がより一層実態を持った中核的な存在として機能を発揮することを可能とし、それとともに銀行本業とのシナジーが期待できる分野において、柔軟な業務展開を可能とするため、金融グループを巡る制度のあり方について検討が必要ではないかといった背景、問題意識でございます。

下のほうに2つほど箱を書いております。左のほうでございますが、金融持株会社を通じた機能発揮ということで、持株会社による戦略的な経営方針の策定、また、グループ全体の経営管理・リスク管理の強化が期待できます。一方で右のほう、こうした経営リスク管理の強化ということも前提にしながら、グループ全体での柔軟な業務展開を可能とし、例えば持株会社等におけるグループ共通業務の統合的な実施、持株会社傘下の子会社の業務範囲の柔軟化ということが考えられ、こうしたことを通じて、金融事業を巡るシナジー、コスト削減効果の拡大が考えられるのではないかということでございます。

5ページ目のところに、グループ全体での業務範囲に関する要望・意見の例というのを簡単に紙にまとめております。これはスタディ・グループのほうで出てきた話でございますので繰り返しになりますが、簡単にもう一度振り返って申し上げます。1つが、マル1と書いている左側のところ、電子商取引ビジネスへの出資ということで、このアマゾン社の例は、これも当スタディ・グループにおけますNTTデータ経営研究所の小出参考人の説明資料から抜粋したものでございますが、アマゾン社が出店企業に対して融資を行うといったような新しいビジネスも展開している。銀行グループにおいても、銀行業務とのシナジーを追求すべく、電子商取引ビジネスの出資等を可能としてほしいといったご意見がございます。

また、右側のほう、マル2のところでございます。点線で囲んでいるところは、これも当スタディ・グループで紹介されました、米国の大手金融機関のCEOの発言を抜粋しておりますが、欧米の金融機関は、これからの競争相手はグーグルやフェイスブックであるといった認識がある。そのもとで金融機関のITベンチャー企業への出資・買収を活発化しているとの指摘があり、日本の銀行グループにおいても、金融関連のITベンチャー企業への出資等を可能とし、戦略的なIT投資の道を広げてほしいといったご意見がございます。

3つ目のマル3のところでございます。銀行間での決済関連事務の受託ということで、金融機関では、決済関連事務の合理化等を通じ、コスト構造の見直しを巡る動きが活発化する可能性といったご指摘があり、銀行間での決済関連事務の受託等を容易化し、銀行間や、また銀行グループ内での協働・連携を容易にしてほしいといったご意見があったということでございます。

以上が、新しい諮問の背景及び論点のご説明でございますが、新しい諮問を受けてのワーキング・グループ、この新しいワーキング・グループと、当スタディ・グループ、改組後は決済のワーキング・グループとなりますが、その関係につきましては、基本的に銀行法に規定するような銀行グループの業務範囲規制などは、グループ全体のガバナンスやリスク管理などの観点も踏まえて検討する必要があると思われることから、新しい諮問を受けた金融グループのワーキング・グループのほうで検討を進め、新しい決済のワーキング・グループでは、アクションプランの検討ですとか、主に銀行法以外の法制度について審議いただくことを考えているところでございます。以上が、金融審議会総会における審議についての、まずご紹介でございます。

続きまして、資料2というものが配付されているかと存じます。資料2のほうで、欧米の決済サービスに関する法制度やインフラ等の状況につきましてご説明を申し上げます。

表紙を1枚おめくりいただきたいと思います。目次として幾つか掲載をしております。以前このスタディ・グループでお知らせいたしましたとおり、決済高度化を進めていくという観点から、海外の状況について、決済関連の法制度やインフラの状況等を中心に調査を開始いたしたところでございます。先般、職員を欧米主要国に派遣して調査を行っております。依然、関連資料の入手であったり、追加で質問を行っていたりと、調査は引き続き行っていきたいと考えております。本日は、この調査を通じて把握しました主な項目についてご説明を申し上げます。

先ほど、決済高度化を戦略的に進めるためのアクションプランということを申し上げましたが、諸外国においても幅広い観点から取り組みを進めているといった状況がございます。この目次にも書いておりますように、決済に関する制度ということで、例えばEU決済サービス指令の策定及び見直しの動きというのがございます。また、2つ目のインフラに関するところでございますが、決済インフラや海外送金に関する枠組みの整備も進められており、さらに最後の丸でございますが、決済高度化に関する戦略的な国全体としての取り組みということで、米国、欧州ともアクションプランのようなものを策定したり、あるいは検討を継続していくための体制を整備して、戦略的・継続的な取り組みを進めているといった状況にございます。

次のページ、2ページ目から、EU決済サービス指令の内容についてご説明を申し上げます。これまでのスタディ・グループでも何回かご紹介をされたことがございます。まず概要でございますが、EU決済サービス指令(Payment Services Directive)、PSDと略称されておりますが、目的として、まずEU加盟国の決済サービス市場を統合し、規模の経済と競争によって決済サービスが一層効率化され、社会全体での決済コストが削減されるような、統一的なEU決済サービス市場を創出するということを基本的な目的として、2007年11月に成立し、EU加盟国はこの指令を受けまして、2009年11月までに国内実施をする必要があると定められております。

具体的な目標として、3点規定されております。まず最初が、市場参入障壁の除去及び平等な競争条件の確保による支払サービス提供者間の競争の促進ということでございます。少し細かい字で書いておりますが、支払サービスの提供が許される、支払サービス提供者(Payment Service Provider)の一類型として、支払サービス事業者(Payment Institution)の概念を創設し、共通の規制要件を規定している。その下、※にありますが、支払サービス提供者としては、支払サービス事業者のほか、銀行または電子マネー事業者も含まれることとなります。したがいまして、銀行や電子マネー以外の支払サービスを行う人たちを、支払サービス事業者として規定しているということでございます。

2つ目としまして、支払サービスを提供する人たちが提供する情報の透明性の向上及び情報提供が義務づけられる項目の共通化でございます。支払サービスの提供者に対して、契約締結前及び支払取引の実行前後の情報提供義務を規定しております。詳細については、後ほど改めてまたご説明を申し上げます。

3つ目としまして、支払サービス提供者と利用者との間における権利義務関係の明確化・共通化でございます。具体的には、無権限取引と言われる、紛失されたカードや盗難されたカード、暗証番号の不正利用等によって、無権限の他人による支払取引が行われた場合における、業者と支払サービスの利用者との間の損失分担ルールについて体系的に規定がなされております。この点も、後ほど改めてまたご説明申し上げます。

次に適用範囲でございますが、基本的にはEU域内で提供される支払取引について適用がなされる。ただし、支払サービス提供者の情報提供ですとか、利用者との間の権利義務関係に関する規定は、支払う人、受け取る人両方のサービス提供者がEU域内に所在する場合であって、なおかつユーロまたはEU加盟国の通貨でなされる支払サービスに限り適用がなされるということでございます。この点につきましては、ユーロ圏内、EU圏内という考え方が割と明確に出ているかなという感じがいたします。

続きまして3ページ、次のページをお開きいただきたいと存じます。市場参入障壁の除去及び平等な競争条件の確保による競争の促進ということで、まず支払サービス事業者の創設として、免許制が導入されております。幾つか規定がございまして、まず当初資本金要件というのが求められております。サービスの類型に応じて2万ユーロから12万5,000ユーロとされており、支払口座を経由しない単純な送金サービスの場合は、資本金が2万ユーロ。現在1ユーロが約130円ですので、邦貨にして約260万円程度を求められるということになります。一方で、携帯電話などを用いた支払代行サービスでは5万ユーロ、支払口座を経由した送金サービス、支払口座への現金入出金サービス等々については、12万5,000ユーロが求められるということでございます。

また、当初の要件に加えて、業務継続中の自己資本要件というのも求められております。これは当初資本金要件として求められた額以上であって、かつ3通りの計算方法から所管当局が選択した方法によって算出される自己資本の維持が求められるということでございます。3つの要件、詳細は割愛させていただきますが、例えば(i)は前年の総固定費の10%。2つ目は、前年の取扱金額に一定比率を掛けることによって算出されるといったような、そういう要件でございます。

その下に、※がございます。EUシングル・パスポート制度というものが導入され、これはあるEU加盟国で免許を受けたならば、全てのEU加盟国内でサービスを提供することが可能というものであり、これもEU域内での単一市場ということが念頭にあるようでございます。

2つ目の※のポツのところでございますが、所管当局は、少額の事業者、すなわち月間の平均取扱金額が300万ユーロ以下、邦貨にして約3億9,000万円以下の事業者につきまして、支払サービス事業者に対する規制監督のための条項の全部または一部の適用を免除することを可能としているということです。したがって、取扱額が少額であれば、若干規制緩和の余地も残しているということになります。ただ、こういった適用免除を受ける事業者については、EUシングル・パスポート制度の利用は不可とされ、国内に限定してビジネスを行うことができるとなっております。実際のところ英国では、月間の平均取扱金額が300万ユーロ以下の事業者については、免許制ではなく登録制とし、なおかつ一部の規制を緩和しているということでございます。

その下、参考としまして、こういう新しく創設された支払サービス事業者以外の支払サービス提供者に対する財務要件でございますが、まず銀行につきましては、免許制として500万ユーロ以上の自己資金の永続的な維持が求められます。加えてバーゼルⅢに対応する自己資本のルールに基づく健全性規制が要求されます。また、電子マネー事業者については免許制として、35万ユーロ以上の当初資本金を有すること、なおかつ、業務継続中に資本金要件で定められた額以上であって、かつ未決済の電子マネーの平均額の2%以上の自己資本を維持することが求められております。

次のページ、4ページ目をお開きいただきたいと存じます。続きましてこの支払サービスに関して、預かった資産の保全義務でございますが、基本的には兼業の支払サービス事業者が対象であるということです。ただし、※を付しておりますが、所管当局は専業の業者に対しても義務を課すことは可能でありまして、また、一定金額以下の資金を利用者から預かる場合には、資産保全義務を免除することも選択を可能としております。具体的に英国では、専業を含む全ての事業者に対して資産保全義務を課すことにしている一方で、資産保全の対象を、50ポンドを超える支払取引について利用者から預かった資金に限定することになっているということでございます。

また、資産保全義務の内容としましては、ほかの資産からの隔離、具体的には信用機関の口座への預金、または当局が定める安全かつ流動性のある低リスク資産での運用を行うこととされています。これらにつきまして、利用者に対する優先的な弁済権があるということでございます。

所管当局による監督としましては、報告徴収、立入検査、免許の停止や取消権限等があるということです。参考で書いておりますが、銀行等につきまして、預かった資産の保全をどういうふうにしているかにつきましては、銀行は預金保険制度により保全をされ、電子マネー事業者につきましては、支払サービス事業者と同様の資産保全義務によって保全をされるとなっております。したがいまして、支払サービス事業者、または電子マネー事業者につきましては、資本要件と、なおかつそれに加えて資産の保全義務が二重にかかっているということでございます。

続きまして、情報提供義務等についてでございます。情報提供義務の内容については、いわゆる単一の取引、1回限りの支払取引と、継続的取引、すなわち将来における個別の、または継続的な取引の実行を包括的に行う契約のそれぞれについて、以下を規定しております。

例えば、契約締結前には、実行に要する期間ですとか、あるいは手数料について、支払指図の受領後は、取引特定のための照会番号や取引金額、手数料、指図の受領日等について、それぞれ情報提供が義務づけられております。方法としては、利用者から容易に閲覧可能な方法であること等が求められ、また契約の変更・終了に関する規定としまして、継続的な取引の場合は、内容を変更する場合の事前告知義務等が定められております。

次のページ、5ページ目をお開きいただきたいと存じます。権利義務関係の明確化・共通化ということで、幾つか規定がございます。1つ目は、手数料に関する規定でございます。支払サービス提供者は、利用者に対する情報提供義務を履行するに当たって、原則的に情報提供義務に対応する手数料を徴収してはならないことが定められております。

また、無権限取引に関するルールとして、支払人は、損失補填を受けるためには、無権限取引の事実を知ったときから著しい遅滞なく、かつ口座引落日から13カ月以内に通知することが必要であるということになっております。また、無権限取引が発生した場合、支払サービス提供者は、直ちにこの金額を支払人に返還する必要があります。無権限取引が決済手段の紛失や不正利用によって生じたものであって、支払人に過失が認められる場合には、150ユーロを上限として損失を負担する必要があるとされており、ただ、決済手段の紛失や不正利用が支払人の故意や重過失によって行われた場合には、支払人は全損失額を負担する必要があるということでございます。

次に、支払取引の実行に関する規定ということで、取引の実行に関する期間、具体的には支払サービスの提供者は、資金の受領後、遅くとも翌営業日の終了時点までに、受取人側の業者の口座に入金記帳する必要があると定められております。この支払取引の不履行に関する責任ということで、支払サービス提供者による支払人への資金返還義務や、あるいは原因の追跡調査義務等が定められております。以上が、現行の決済サービス指令の概要でございます。

この現行の決済サービス指令につきまして、これも以前、スタディ・グループでご紹介がありましたが、見直しの動きがございます。2013年7月に、欧州委員会は現行の決済サービス指令の成立後、情報通信技術の革新によって新しいプレーヤーが登場したことを受けて、現行の決済サービス指令の廃止と、新しい決済サービス指令、PSD2と略称されておりますが、この策定のための提案を欧州議会並びに欧州連合理事会に送付をいたしております。

欧州連合理事会は、2014年、昨年の12月、この見直しに関する欧州議会との交渉スタンスについて合意をし、欧州議会と協議を開始するといったプレスリリースを発表しております。

見直しの内容については、今後の欧州連合内での調整が想定されますが、見直しの可能性のある事項としては、まずは指令の適用範囲について、原則としてユーロかEU加盟国の通貨であったところ、対象通貨をそれ以外にも拡大するという点。また、支払サービス提供者の片方だけ、すなわち、受け手か、あるいは送り手の片方だけがEU域内に所在する場合にも適用を拡大するという点。また、third party payment service providerという、支払口座にアクセスを可能にするような第三者のサービス提供者、こうしたサービス提供が登場しているということもあり、これを新たに規制の対象に加えるといった議論がなされております。また、無権限取引のときに、支払人は150ユーロを上限として損失を負担することとされているところ、これを50ユーロまで引き下げるといったことも、見直しの1つの検討項目として入っているということでございます。

以上がPSDの概要でございますが、内容は非常に多岐にわたります。ただ、EU域内全体として、決済の高度化といいましょうか、利用のしやすいように、事業者に対する資本要件ですとか、自己資本規制を課するとか、あるいは取引の実行期間に関するルールとか、損失分担に関するルールとか、幅広い観点から制度をつくり、なおかつそれを継続的に見直していこうという動きがございます。

次のページ、6ページ目のところでございますが、これはちょっと話が変わります。以前、本スタディ・グループにおきまして、アメリカのシンプル社の例のご紹介がなされました。今のEU決済サービス指令の中で、最後のところ、third party payment service providerという第三者の決済サービス提供者のサービスについて、規制の対象にしようという動きがございましたが、それとこのシンプル社の例とを比較して、参考のためにつけたものでございます。EUの規制とは直接の関係はありませんが、シンプル社の例は、おさらい的になりますが、銀行とお客さんとの間に立ってサービスをシンプルという第三者が提供するという形態でございます。

顧客はこのシンプル社のホームページの上で、左側の水色で囲っておりますが、いろいろなサービスの利用の申し込みもできたり、送金や口座振替の指示もでき、なおかつ口座や支出管理機能、ここで口座の支出の履歴等も見ることもできる。そういったものを銀行と顧客の間に立ってシンプルが提供し、シンプルのほうには、お客さんが行った決済手数料の一部を銀行から還元され、また銀行の利ざや、預金金利と貸出金利のスプレッドの一部をシンプルに還元することによって、このビジネスが成り立っております。

なおこのシンプル社は、銀行と提携するだけではなしに、CheckFreePayという州法に基づく送金業者とも提携をしているということで、このCheckFreePayというところは、電子的な請求書の支払サービス、単純に比較していいかどうかわかりませんが、口座引落のようなサービスをこの顧客に対して提供する。これもシンプル社と提携をすることによって、顧客のほうは、シンプル社のホームページを通じて、その後ろにある提携の銀行や業者とアクセスが可能となると。これがシンプル社の例でありますが、先ほどご紹介しましたEUの決済サービスの中で、最初の決済サービス指令の成立後、新しいプレーヤーが続々と登場していることを受けての見直しということは、恐らくこういったさまざまなサービスが登場する中で、いろいろと考えていく必要があるという一つの例であろうかと考えられます。

次のページ、7ページ目をお開きいただきたいと思います。今度は制度の話とは違いまして、決済インフラに関する諸外国及び我が国の状況等を調べたものでございます。

最初のところ、機能の高度化ということで、ISO20022/XML電文対応の必要性ということが問題提起をされておりました。ここに書いておりますが、全銀システムは2011年にXML電文をオプション採用したが、旧電文の使用も引き続き可能であると。一方で欧州では、EU規則でエンドデイト、これ以上旧式の電文を使ってはいけないとエンドデイトを設定して、ACH及び銀行がXML電文に移行したと。一方で、米国はどうなっているか。後ほどまたご紹介しますが、FRBが1月に文書を公表しております。この中でACH、銀行のXML対応を今後の目標の1つに掲げて、エンドデイトが不可欠ではないかということが、この文書で示されております。今年の秋を目途に、今後のロードマップを策定予定ということでございます。

次の欄、機能の高度化(上限金額)というところですが、全銀フォーマットでは、送金額の欄が10桁に設定されているため、100億円以上の送金は分割して行わなければいけないと。一方、海外のACHでは、上限金額の設定がないといったケースもあり、具体的にこの表に書いておりますが、STEP2というヨーロッパ全体の決済システム、これは上限金額は明示的にはなく、システム上は1京ユーロ未満ということであります。ドイツ・オランダのEquensというところも、システム上は10億ユーロということになっているということです。

次の欄、国内送金のフォーマットの国際対応でございますが、我が国の国内送金に使用されている全銀フォーマットは、独自の金融機関コードや仮名文字を使用していることなど、我が国を含む各国の銀行が海外送金の際に使用しているSWIFTフォーマットとは異なっている。欧州は域内送金においてもSWIFTフォーマットを使用し、域内と海外のフォーマットが統一されている。また、アメリカにおきましては、国内送金でSWIFT以外のフォーマットも使用しておりますが、SWIFTフォーマット同様に英数字を使用していると。ここも復習的になりますが、日本のほうは独自フォーマットで、受取人は仮名文字。右のほう、欧州のユーロ圏、SEPAではSWIFTフォーマットを使っていると。さらなる見直しも行われているようでございまして、受取人口座も記載するが、口座特定には使用せず、また来年2月からBICというSWIFTの指定銀行コードも不要として、IBANというコードのみで口座特定をするというEU規制ができているということでございます。

その下、ACHの運営形態でございますが、海外、特に欧州のACHは、主要銀行が出資する株式会社であることが多く、送金以外のサービスも提供している。例えば、他行へ口座を移した場合に、公共料金などの引き落とし先に新しい口座情報を連絡し、なおかつ旧口座宛ての引き落としを1年程度継続させるサービスを提供する例があります。また、海外にシステム販売をする取り組みも見られるということで、英国のFPSなどは、シンガポールやオーストラリアにシステム販売をしているということでございます。

その次のページ、8ページをご覧ください。海外送金に関する枠組みということで、IPFAに基づく海外との接続、及びこの運用の実態等を記載しております。これも以前ご紹介がございましたが、米国とヨーロッパの間では、ACH同士が相互に接続をし、それでまとめて送金を行うということが可能となっております。運用の実態につきましては、通常のSWIFTネットワークを使ったコルレス契約での送金の場合は、手数料が約数十ドルと割高ですが、問題がなければ当日中に着金する、いわゆるHigh Value Paymentの位置づけであります。一方でIPFAモデルのほうは、着金までに2、3日要するものの、支払指図と決済をまとめて行う。これによって事務を効率化して安価な送金、具体的には数ドル程度の国内送金手数料プラスアルファで、いわゆるLow Value Paymentの位置付けとなります。米国では、欧州22カ国以外に、カナダ・中南米の13カ国と、アメリカが指定するフォーマット・ネットワークを用いて接続し、合計で35カ国と接続済みであるということです。

この欧州・米国間の送金については、上限金額がないということでございます。そして、企業間の送金が主体である。一方で、アメリカと中南米との間の送金につきましては、出稼ぎの方などの郷里に対する送金が主というのが実態のようでございます。

次のページをおめくりいただきたいと思います。9ページ目でございますが、各国における非居住者に関する送金の取り扱いを簡単にまとめたものでございます。日本国内では、居住者・居住者のいわゆる内為取引は全銀システムが行っております。一方で、国内の銀行に口座がある非居住者と居住者との間の取り扱いについては、内為取引扱いか外為取引扱いか、全銀システムなのか外為円決済システムなのか、これは各行で取り扱いが異なっているという状況にございます。この点、海外での取り扱いにつきましては、米・英・ドイツとも、いずれのケースでも内為取り扱いということで、1本のシステムで対応しているという状況でございます。

その次のページ、10ページ以降につきましては、先ほど少し触れました、各国における戦略的な取り組みについてまとめたものでございます。最初はアメリカでございます。FRBが米国決済システムの高度化に向けての戦略ペーパーを公表しております。FRBは、安全・効率・汎用性に優れた決済システムが米国経済には不可欠であるという考えから、2012年以降、高度化に関する検討を進め、本年1月末に決済システムの高度化に向けた目標と戦略をまとめた文書を公表しております。

5つの目標が掲げられております。1つはスピード。より速いユビキタス的な電子的ソリューションの実現ということであります。2つ目はセキュリティ。信頼性を備えた堅固なセキュリティの維持。3つ目が効率化。電子決済の割合増加など、効率化も進めると。4つ目が国際化ということで、便利で費用効率が高く、タイムリーなクロスボーダー決済の提供。5つ目が協調ということで、多くの関係者の連携による改善点の特定や、改善の促進を進めていきたいと。

3ポツに、具体的な5つの戦略というのを載せております。1つは、ファスターペイメントと決済セキュリティに関する2つのタスクフォースを設立する予定にしているということでございます。本年4月以降の設立ということで、幅広い参加を呼びかけております。2つ目、ファスターペイメントに関しましては、政策課題と導入手段、どういう選択肢があって、コストはどうか、こういった点の特定を2016年までに行うと。決済セキュリティのタスクフォースのほうでは、新しいサービスを支えるための決済インフラのために必要なソリューション、安全性、不正取引の防止のためのソリューションを特定していくということです。

4つ目、効率性の向上ということでは、先ほど申しましたISO20022標準への適合、エンドデイトが不可欠と記載しており、今年の秋を目途にロードマップを策定予定であると。また、さまざまな業者間での決済取引の効率化を目的としたペイメント・ディレクトリの構築。決済の際の口座確認手続などの効率化を図るために、相互運用性がより高いようなものを目指していくと。また、いわゆるB2B決済におけるユビキタスなプラットフォームの実現可能性について検討する。この電子決済を事業者・事業者、ビジネス・ビジネスの間でも導入を進めていくことを検討していくと。

最後ですが、FRB提供サービスの向上ということで、Fedサービスの営業時間と機能の拡大。2016年以降、24時間365日対応について検討する。また、クロスボーダー決済の接続先。先ほど35カ国と申し上げましたが、その拡大とサービス向上を図っていくということをまとめております。

次のページ、11ページは、欧州における取り組みでございます。ヨーロッパにおきまして、Euro Retail Payment Boardというものが創設されております。これはユーロ圏のリテール決済について、統合された、革新的かつ競争的な市場を創設するということを目的に、2013年12月にECBによって設立された会議体ということでございます。

メンバーにつきましては、リテール決済の需要側、供給側の各団体と、ECBからの議長、計13名で構成され、右に構成が書かれておりますが、非常に広い範囲からの参加がなされております。需要サイドでは消費者団体、あるいは小売業者、大企業、中小企業さまざまなところ。また供給サイドとしましても、各種の銀行、または決済機関、電子マネー機関等が参加をしているということでございます。

年2回会合を開催し、ハイレベルな論点について方針を提言していると。直近の会合、昨年の12月の会合での主な提言は、この四角で囲んだところでございます。IBANのみを用いたSEPA送金への円滑な移行。Instant Payment(24時間365日のリアルタイム決済)。P2P Mobile Payment、これはワーキング・グループを設置して報告を求める。また、非接触型の決済、これもワーキング・グループを設置して報告を求める。こういった幅広い観点からの提言をなしているということでございます。

その下にEBA(ユーロ銀行協会)についてでございますが、このユーロ銀行協会におきましては、欧州中央銀行(ECB)と、この上に書きましたERBPの要請に応えて、昨年からInstant Payment(24時間365日のリアルタイム決済)について検討を開始し、本年2月にタスクフォースを設置しているところでございます。今後2015年から18年までのロードマップを策定し、15年半ばまでに適切なソリューションについて青写真を発表予定であるということです。

右側でございますが、その他の取り組みとして、ヨーロッパでは近年、銀行のキャッシュマネジメントサービスについて、企業側から銀行のレポーティング・メッセージのフォーマットを共通化してほしいという要望がある。現在、業界としてそれをどう取り扱うか検討中とのことということで、先ほどアメリカの例もご紹介しましたが、ヨーロッパの例におきましても、さまざまな観点から意見を集約化し、問題を洗い出して、その解決の方向性を探っていくという動きがございます。

その次のページ、最後のページでございますが、英国における取り組みの例でございます。英国におきましては、Payment Councilという団体ができておりました。2000年の財務大臣レポートによって、決済サービスの参入障壁がイノベーションの妨げとなっているという指摘がなされ、公正取引庁を中心に、決済システム検討のタスクフォースが立ち上げられました。これを受け、イギリスにおける24時間365日のリアルタイム決済の実現につながったということでございます。リアルタイム決済が達成された後に、一旦タスクフォースは終了し、かわりに2007年に民間の公益組織としてペイメントカウンシルが設立されたということでございます。

活動内容と体制ですが、英国における資金決済の戦略策定、またサービス開発、携帯送金といったようなサービス開発や、決済業界における国内外の標準化等について検討し、また英国内で具体的に決済インフラを提供している会社と契約を締結して、ペイメントカウンシルの決定事項は、この決済インフラ会社は守らなければいけないということを契約の中で義務化、明記しているということでございます。ボードメンバーは参加銀行の代表11名と独立メンバー4名の15名で、加えて政府・中央銀行からオブザーバー参加があると。ペイメントカウンシルへの参加要件は、基本的には英国のPayment Service Providerで、かつ取引件数が一定以上ということでございます。

現状でございますが、2009年の12月にこのペイメントカウンシルは、2018年での小切手の廃止を一旦決定いたしました。ただその後、それについての議論がありまして、費用対効果の検討や代替手段の検討がなされていないのではないかといった指摘を受け、財務省が特別委員会を設置してこの件について調査をし、小切手の廃止ではなく、処理の効率化を指向すべきではないか、業界団体がこういう国全体の大きな決定をすることが適切であろうかといった指摘がなされました。こうしたこともありまして、昨年12月をもってペイメントカウンシルと決済インフラ会社との契約は解除されているということでございます。

他方、別な機関が設置をされておりまして、Payment Systems Regulatorというところでございますが、2013年銀行改革法に基づき、2014年、昨年4月に設置され、今年の4月末からフル稼働を予定しているという状況にあります。この新しくできたPSRという機関の目的は、決済システム、サービスの競争及び技術革新の促進、またサービスの利用者の利益を考慮した決済システムの運営の確保ということで、規制の枠組みも本年3月までに公表ということで、こうした新しい動きもあるということでございます。

以上、若干駆け足になりましたが、諸外国の状況でございます。諸外国の状況等につきましては引き続き調査をしているところでございまして、また必要に応じて新しい情報等ございましたら、ご紹介をさせていただきたいと思っております。先ほど申しましたように、各国とも非常に幅広い観点から戦略を立案し、具体的な論点を抽出して、今後のロードマップをつくって、アクションプラン的なものを考えて、かつ検討体制なども整備して取り組みを進めているといった状況にございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、自由討議に移りたいと思います。どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。加毛委員、どうぞ。

【加毛委員】

ありがとうございます。諸外国の状況につきまして、これほど詳細な調査をするのは大変なご苦労であったと思います。事務局の皆様のご尽力に敬意を表したいと思います。

その上で、この諸外国の状況調査を踏まえて何を考えていくべきかにつき、まず重要なのは、アクションプランを示すことなのだと思います。ただ今日ご紹介いただいた諸外国の状況を見ますと、一定の組織体が継続的に決済システムの在り方について検討しているのだと思います。アメリカでFRBが目標・戦略を公表しているほか、欧州ではERPBが設置され、英国でも新たにPSRが登場しているわけですけれども、それらに対応する組織体が、このスタディ・グループ以外に存在するのか、あるいは今後そういったものを設置していくことがあり得るのだろうか、ということが1つ目の質問です。

2つ目の質問は、今後の我々の任務のうち、法制度面での手当にかかわります。第9回会合において、森下委員から、これまでの議論では主として金融機関や資金決済業者等の破綻リスクが念頭に置かれてきたけれども、例えば無権限取引が生じた場合の損失の分担であるとか、あるいは適切に送金等がなされない場合の措置など、様々な問題に対応するためのルール作りが必要とされるのではないかというご指摘があったと記憶しております。

本日のご報告においても、EUの決済サービス指令ではそれらの問題に関する一定の手当がなされており、各国で国内法化がなされているということが紹介されました。そこで今後、改組後のワーキング・グループが、そのようなルール整備まで含めて検討していくのだろうかどうかということが気になるところです。我が国では、預金者保護法によって、限られた場面について一定程度の手当がなされているわけですが、考え方の基盤のところにおいてPSDなどとはだいぶ異なっていると思われます。そういった問題も今後、検討対象とするのかということをお尋ねしたいと思います。

最後の質問は、無権限取引にかかわる非常に小さなことなのですけれども、資料2の5ページにおいて「無権限取引が決済手段の紛失等または不正利用によって生じたものであって、支払人に過失が認められる場合、支払人は150ユーロを上限として損失を負担する必要」と書いてあります。これはPSD61条の解釈だと思いますけれども、支払人の過失が常に要件とされるのかにつきまして、やや疑問があります。決済指令の内容及び各国における国内法化の際の変容などを含め、この点には少し留保が必要ではないかと感じたことだけ申し添えたいと思います。

【岩原座長】

3点ご質問、ご指摘がありましたけれども、それでは、佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

最初の2点ほどは、非常に大きな問題、論点であろうかと思います。最初ご質問いただきました、継続的に検討していくような組織体というものがあるのかということにつきましては、各国とも違った体系をとっているとは思うのですが、例えばEUで行っているような業界団体、あるいは消費者の方も含めて全て入っているというような恒常的な組織体というのは、知る限りでは、おそらくないのではないか、特に決済にのみ焦点を当てての組織体というものはないように思われます。

一方でFRBなどは、FRBという公的機関がパブリックに意見を求めながら進めていくというところで、我が国におきまして、どういった進め方がいいのか、これは十分に考える必要があるのかなと思っております。

個人的な感想めいた話になりますが、おそらく決済ということに焦点を当てて、体系的に議論していったのは、この決済スタディ・グループが新しい例といいましょうか、相当程度我々も勉強させていただきましたし、いろいろな論点が明らかになっていったというようにと思います。今後、どういうふうに検討を進めていくかは、またこちらのご意見も伺いながら、我々事務局としても考えていきたいと思っております。

2つ目の無権限取引や、あるいは送金がされない場合のリスクなどに対応した法制度ということでございますが、これもまた非常に大きな課題でありまして、おそらくEUにおいて、こういう法制度が導入されたのは、ユーロという共通通貨が導入され、その圏内で安心してほぼ確実に送金などがなされるように、体系的な整備がなされたのではないかと考えておりますが、我が国において、今後どういう考えていくのか。今、この場で方向性というものを明確に定めることは難しいですが、ただ、やはり大きな視野でもって決済の高度化を進めていく上でどのような対応が必要かということは、考えていく必要があるのかなと思っております。

【黒井総務企画局企画課信用機構企画室長】

3点目について、紙幅もございまして、丸めて書いてしまったところがございますが、その部分のご指摘かと思います。原文には、支払人がセキュリティコードを安全に管理していなかった場合(if the payer has failed to keep the personalised security features safe)を、過失が認められる場合という形で丸めて表現させていただきました。

【岩原座長】

池田局長、お願いします。

【池田総務企画局長】

今、加毛先生からあった件の1番目のところについては、我々の問題意識として、組織体という、組織がどうあるべきかというところが必ずしも我々の訴えたかったポイントではなく、ただ、やっぱりしっかり見通しを示して、関係者が取り組んでいくということが大事だろうということは先生ご指摘のとおりでございますし、かつそれは一過性のものにせずに、やっぱり継続的に取り組んでいくということが大事だと考えております。

かつて資金決済法などが議論されたときには、金融庁の研究会でも一定の議論がされたときがありますが、これは反省の気持ちも込めて言えば、そうした取り組みがその後何年か継続できたのかというと、反省しなければいけない部分もあるかなと思っているので、組織体というところに気持ちはないのですけれども、継続して取り組んでいく。その際に、当局だけの問題ではなくて、各事業者の方、あるいは利用者の方とのインターフェースも大事にしながら、どういうことを取り組んでいけるか。そこは委員の方々からもいろいろご意見を頂戴して、建設的な枠組みがつくっていけたらなというふうに考えているところです。

【岩原座長】

どうもありがとうございます。第2点の無権限取引や送金がきちんとなされなかったときのリスク等の問題については、実は昔々、金融制度調査会の時代に、エレクトロバンキング専門委員会というのがございまして、そこの中でこういった問題も含めて、電子資金移動について起こる、私法的な問題を含めた法制の整備の検討を行い、さらに法制懇談会をつくって、そこでかなり具体的な立法の検討をしたのでありますが、関係業界その他の意見の一致がみられなくて、立法化はされなかったということがありました。ただその後、キャッシュカードについてだけは、ご存じのように偽造カード等、あるいは盗難カード等の問題が起きたものですから、偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律ができて、キャッシュカードに関する部分だけ無権限取引について立法がされました。しかし、それ以外の部分、例えば紙ベースの通帳による無権限取引の場合ですとか、最近非常に問題になっておりますインターネットバンキングによる無権限取引の場合等については、法律上の規定がありません。それから、資金移動したけれども、それが指図どおりにきちんと実行されなかった場合に関する法制も整備されておりません。

指図通りの資金移動がなされなかった場合の問題については、アメリカはご存じのようにUCC ARTICLE 4Aで、マネーバックギャランティルールを取り入れました。そしてそれにならって、国連の国際商取引法委員会(UNCITRAL)が国際振込みに関するモデル法で、マネーバックギャランティルールを提言して、それを受けた形でEUは決済サービス指令の中に、マネーバックギャランティルールを取り入れました。しかし、日本においては先ほど申しました金融制度調査会の検討以降、そういった問題について、立法化についての検討がなされる場がなかったという経緯であります。

よろしいでしょうか。ほかには。小野委員、どうぞ。

【小野委員】

詳細なご報告ありがとうございました。資料2に沿って3点質問をさせていただきます。1点目は資料の4ページで、資産の保全義務についてなんですけれども、以前にこのワーキングの中でも、日本における銀行及び資金移動業者に係る規制の比較をお示しいただき、資産保全義務が重いかどうかという議論がなされていたと記憶しています。また、銀行保証のような形で代替しているケースもあるというふうに、たしか堀委員がおっしゃっていたかと記憶しています。欧州では、資産保全義務について、実際に利用している事業者の人たちから負担感が重いとか、そういったような話があるのかどうなのか、あるいは、資産保全義務を代替する銀行保証のような仕組みがあるのかどうなのかが知りたいというのが1点目の質問になります。

2点目ですけれども、資料の2ページを拝見すると、このEU決済サービス指令の適用範囲というのは、支払人、受取人両方のサービス提供者がEU域内に所在するケースということで、例えば移民の方が母国に送金するようなケースであって、EU域外になる場合は入らないと思うのですが、もし理解が間違っていたらそう言っていただきたいのですが。他方で資料5ページにあるPSD2になると、支払いサービス提供者の一方がEU域内に所在するケースに拡大することを今、検討されているということですから、そうなると今までこの決済指令の適用範囲外であったサービス提供者が、ここに入ることになると思うのです。それに伴って、事業者から、負担感が重いとか、あるいはこの程度の規制であればクリアできるので、実態上は問題ないということなのか、どういった指摘があるのか、もしご存じでしたら教えてくださいというのが2点目の質問になります。

それから3点目は、これは私の不勉強による質問なのですけれども、資料の9ページで、日本の場合は非居住者口座が絡んだ場合に内為取引になるのか外為取引になるかが銀行によって異なるというご指摘があったかと思うのですが、これによって具体的にどういう不都合が生じているのかがわからなかったものですから教えてください。各行でばらばらの取り扱いになっているのはまずいという問題意識をお持ちになっている理由として、どのようなケースを想定しているのかを教えてください、というのが3点目です。

【岩原座長】

それでは、黒井室長。

【黒井総務企画局企画課信用機構企画室長】

最初の2点についてご説明いたします。負担感の話、海外の制度における負担感ということかと思われますけれども、海外の制度におきましても、資産の保全義務につきましては、与信機関の別の口座に預金する、あるいは関係国当局が定義するような、安全で流動性があり、低リスクな資産への投資を行うといった方法や、保証や保険でカバーしていくという方法も、保障契約でのカバーを認める日本と同様な形で認められているところでございます。

実際の業者の負担感といったところについては、我々も政府に対していろいろ聞き取りなどをしたということもありまして、事業者個別に聞き取ったわけではありませんけれども、そうした制度が、制度上はEUなどについても用意されているというところでございます。

2つ目の点ですけれども、これもPSD2につきましては、現在議論が行われている途上のところでございまして、決済サービス指令のカバレッジを広げていくということの重要性というのは議論されているのですけれども、最終的にどこまでできるかということは、これからの議論に委ねられているというところでございますので、そこの負担感も含めて、議会を通じて議論がなされまして、最終的な結論が出されるものと思われます。

【岩原座長】

佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

3つ目の内為、外為のところでありますが、具体的にどの程度の不都合かというところは、事業者の方の具体的なご意見などよく聞く必要があると思うのですが、仄聞するところ、例えば国際的に展開する企業がグループ内でのキャッシュマネジメントを行う場合に、グループ内で、日本国内から見れば非居住者に相当するような口座もあり、グループ内の日本所在の企業だと、居住者扱いの口座もあることになります。その中で、お金をやりとりするときに、全銀システムと外為決済システムによって、フォーマットが違ったり書類が違ったりと、そういうところの負担感があり、できるならば、どちらかに統一してくれると、統一的な手続が可能であると。そういった声を聞くところであります。

【岩原座長】

よろしいですか。第1点について言うと、先ほど黒井室長からご説明されましたように、EU決済サービス指令およびそれを受けたEU各国の規制においては、幾つかの資産の分離の方法が認められておりまして、その中には、利用者等から預かった資金は、預金口座を別にして専用口座に預金するというのもあります。そしてそれぞれの国内法において、決済サービス機関の倒産時に、当該資金が他の債権者の請求権から隔離されるような手当をするということになっています。日本ではそういう私法的な手当がなされてないので、供託するか、あるいは銀行等と履行保証金保全契約を締結するか、信託会社等と履行保証金信託契約を締結するという手段が利用されているということになっています。

よろしいでしょうか。ほかに。浜委員。

【浜委員】

済みません。先ほどの3点目のご質問の9ページの内為取引なのか、外為取引かの違い、各行で異なるというところの不具合なのですけれども、使っている一事業者として現状を申し上げさせていただきますと、例えば左が支払人の弊社、右側が受取人のB社とします。どちらも日本国内に銀行口座を持っておりますと。決済されるのも円であるという場合、一番上の居住者口座・居住者口座の円・円取引と、外から見たところ何も変わらないのですが、うちの会社に限って言いますと、今、銀行に依頼するときは、全て外為取引扱いという形になっております。メガバンク3行にお願いするときは、全てこの扱いになっております。

この違いは、データのフォーマットが違うということと、規定料金という手数料のところで、内為取引と外為取引では随分違いまして、外為取引においては、手数料が高額になっているということであります。以前に、内為と外為をシームレスな取引・フォーマットでやりたい、やらせていただきたいというお願いをさせていただいたのも、相手が非居住者かどうかということを一々確認しないと、どのフォーマットで依頼すべきかということが判断つかないので、そういうことも含めたお願いであったということであります。以上です。

【岩原座長】

はい。いかがでしょうか。戸村委員、どうぞ。

【戸村委員】

ありがとうございます。私の質問は、資料2の7ページ、8ページにかかわることなのですけれども、8ページのほうで、ちょっと個人的な感想から言いますと、IPFAのような仕組みで、手数料、特に外為の手数料を低くするというのは、本当にこれから日本にとっても大事な課題だと思うので、その問題意識で質問をさせていただくのですが。この2番目の大きな丸の下の※に、アメリカの指定するフォーマットを用いて接続と書いてありますが、これは国内の送金システムについても英数字を使うような、これはSWIFTなのか、米国独自の方法かちょっとわからないのですが、英数字のフォーマットを使うことを要求されるということでしょうか。

【事務局】

この点につきましては、アメリカと、カナダ、中南米の間においては、アメリカが規定する英数字のフォーマットを用い、Fedラインという、Fed wireが提供するネットワークを使うということになっております。一方、欧州についてはIPFAのモデルを用いて、SWIFTフォーマット及びSWIFTネットワークを使用しているという状況でございます。

【戸村委員】

ちょっと済みません、追加で。問題意識はどういうことかというと、日本はどうしても漢字を使用していて、日本人の多くが英語はあまり得意でないというようなちょっと特殊な事情があるので、こういうIPFA的なモデルを日本にそのまま持ってこられるのかなとちょっと感じたので、それについてもしお考えがあれば伺いたいと思うのですか、ちょっとぼんやりした質問で申しわけありません。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

具体的に実務でどういう解決があり得るのかというのはいろいろ考えなくてはいけないことなのかなと思います。少なくとも現段階で答えを持ちあわせているわけではないのですが、あり得るのかどうかわからないのですけれども、例えば英数字と仮名文字と両方併記が可能にするとか、あるいはどちらかで変換のシステムみたいなものをつくるとか、実務上どの程度フィージブルかを含めて、考えていく必要があるのではないかと思います。

一方で、そういうことを考えていかないと、いつまでたっても進まないというところもありまして、どういう形の検討が一番ふさわしいのかを含めて、今後検討を続けていく必要があるのかなと思います。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょうか。では、堀委員、その後森下委員。

【堀委員】

2点ご質問させていただければと思います。資料1の3ページ目でございます。金融グループを巡る制度のあり方について、今後新しいワーキングのもとで検討が進められていくというふうにお伺いいたしました。たしか平成19年に金融審議会金融分科会第二部会において、銀行・保険会社グループの業務範囲規制のあり方等についてご検討をされて、一定の持株子会社における業務範囲が検討された経緯があったかと思います。そこからもう7年が経過しておりますので、新しいビジネスの進展に即して業務範囲を柔軟化されるという方向性については、非常に望ましいことではないかというふうに感じております。

その中の議論でもございましたが、たしかFHCのモデルにおける補完的業務のように限定なく、個別の許認可制で一定の業務範囲を認めるかどうか、あるいは、法令で限定列挙して、個別に許認可していくかというような議論がなされたことがあったかと思います。これも、これからの検討ということになるのかもしれませんが、今、こういった新しい決済業務等の高度化によっていろいろな業務が出てくる中で、どういう方向性で業務範囲を柔軟化していくという方針がおありか、それともこれからの課題ということか、そのあたり、もし今取りまとめされている中でお考えの点がございましたらと思いまして、お伺いさせていただきたいというのが1点目でございます。

2つ目は、全くまた別の観点なのですが、資料2の6ページ目、シンプル社のサービス、これは以前のスタディ・グループの中でも議論になりましたが、この概要は非常によくわかりました。拝見しておりまして、シンプル社の口座支出管理機能とか、モバイルで利用残高や履歴を確認できるサービスというのは、現在でも幾つかのイノベーションの企業がチャレンジしているところだと認識しておりまして、アカウントアグリゲーションのような形で発展している分野だと思います。よりさらに送金や口座振替の指示等まで行えるかどうかとか、このあたりまでいきますと、さらに業務拡大ということになりますので、引き続き検討が必要な分野だと認識しております。

ご質問は、こういった銀行と連携する場合に、先ほど資料1でありました銀行法については、新しいグループ業務範囲に関する検討ということでそちらで検討し、それ以外の部分、法律や決済の中身については、こちらのスタディ・グループが改組したワーキング・グループの中で検討というふうにお伺いしましたが、銀行法にかかわる部分も一部出てくるかもしれないなと思ったところでございまして、例えば銀行代理業の問題はどうなのかですとか、業務委託の内容にもかかわる部分かと思いまして、そういったところは引き続き決済ワーキングのほうでも議論することは差し支えないということになるのかどうか、そのあたり、もし今のお考え等ございましたらお聞かせいただきたいというのが2点目でございます。以上です。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず第1点目、業務範囲の柔軟化について、個別の認可か限定列挙かなどに関しては、これからご審議いただいてご検討いただくということと思っております。3月3日の金融審議会の総会でも、同じような点についてご意見を述べられた委員の方がいらっしゃいまして、私が記憶する限りでは、決済の世界ですとか金融周りのところは進化が早いので、そういうことを踏まえると限定列挙で全て網羅できるのか、あるいは個別認可のようなアメリカの制度なども参考にする必要があるのではないかといった意見が出ていたと記憶しております。どういう具体的なあり方がいいのか、それは銀行グループの健全性とかリスク管理の観点なども含めて、全体像を含めて新しいワーキング・グループでご検討いただくということかと思っております。

2つ目の点につきましては、基本的に、銀行法の問題は新しい金融グループのワーキング・グループでご検討ということであり、その問題意識は、個別の論点のみを考えていくというより、全体像を踏まえて、銀行グループとしてどのような健全性が守られて、リスク管理ができて、グループ全体のガバナンスが適正にできるのかということを十分踏まえて考える必要があるのではないかということであります。したがって、基本的に銀行法関連のところは、新しいワーキング・グループのほうでのご検討と思っております。ただ、決済の関連で出てくる問題点につきまして、必要に応じ、事務局は1つでありますので、ご意見をご紹介したりとか調整とか、そういうことも含めながら、うまく両方のワーキング・グループでご議論できるように、そこは配慮してまいりたいと考えております。

【岩原座長】

それでは、森下委員。

【森下委員】

資料2の10ページのところで、アメリカの取り組みについてお話をいただきました。これは政府が主体となって、戦略的に進めていこうということだと思うのですけれども、政府だけが掛け声をかけるのではなかなかうまくいかないところがあると思いまして、事業者がどういうイニシアティブをとっているのですかとか、政府と事業者との関係についてFRBがどういうふうに考えているのかですとか、政府機関と事業者団体の役割分担ですとか、事業者団体でも同じような取り組みがあって、それが背景になってFRBがこういった動きをしてきたのかですとか、もしそういったようなところについておわかりになりましたら、教えていただければと思います。

【岩原座長】

佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

把握しきれているかどうかわからないところではあるのですが、聞く限りにおいては、事業者団体などから強い働きかけがあって、主としてそれを受けて政府のほうで取り組みを進めているという話では、ないように思います。もちろん政府と事業者団体との間のダイアローグが続いていると思いますので、そういった声も受けてなのかもしれませんが、FRBとしてアメリカの現状を鑑みて、高度化するためにいろいろなことを考えていくといった動きのように感じているところでございます。

ただ、先ほど10ページの3のところで書いておりますように、タスクフォースを設立して幅広い参加を呼びかけて、1団体1名という限定はあるものの海外からも含めて参加ができるということで、いろいろな方面からの意見は幅広く吸い上げて、実務界の要請とか考え方も踏まえて進めていこうという、そういった姿勢があるのかなと感じているところでございます。

【岩原座長】

安田委員、どうぞ。

【安田委員】

既に若手委員であるところの加毛委員と堀委員から、結構今後の進め方という大局的な意見が出ているにもかかわらず、僕は全然そういった話にはあまり実は興味がないのでミクロな話をしたいのですけれども。今まで過去10回ですか、スタディ・グループに参加させていただいて、確かに決済業務、昔なかったような高度な決済業務、特にeコマースを中心に新しいものがいろいろ出てきているなというのは感じる一方で、最終的な決済に関しては、昔からクレジットカードであったり銀行預金であったり、あるいは現金であったり、そこ自体はそんなに新しくないと。

おそらく今まであまり触れてきていない論点で、今後間違いなく大きくなるのは、仮想通貨を通じた決済で、直近でいうとビットコインですね。ビットコインを使った決済が、手元にデータがないのでわからないのですけれども、このところ急増しているようで。要は海外送金を例にとると、円をビットコインにかえて、海外にいる人のビットコインのほうに切りかえて、それを現地通貨にかえる。一連のプロセスを通じて、もちろんビットコインで決済を完了するまでに数時間かかるので、為替リスクが発生するのですけれども、それを例えば決済代行業者は、為替リスクはとります。ユーザーはほとんど手数料ゼロで、そういった決済が可能になっている。

実際に日本でも、ビットコインを使った決済というのはスタートしていて、大きいところでいうと、ひょっとすると楽天もビットコインを導入するかもしれない。そういった現状を踏まえたときに、今後かなり近い将来に日本でも、全く規制がなければ、それで仮想通貨を使った決済が急拡大する可能性はあると思います。それに対して、何らかの指針であるとか、潜在的なリスクみたいなのがあるのであれば、あらかじめ議論しておく必要が、かなり緊急性の高い必要があると思うのです。もちろん今まで見てきたような古典的な決済手段を最終的には使うのだけれども、新たな犯罪が起こり得るとか、新たな決済事業者のリスクがある。それも重要なのですけれども、今後名前を変えてワーキング・グループがスタートするということなので、どこかのタイミングで、可能であれば仮想通貨を通じた決済について、少し議論を深めておく必要があるのではないかなと思います。

それに関連して質問なのですけれども、今回おまとめいただいた海外の動向ですね。諸外国では、そういった仮想通貨決済に関してどういった形で議論が進められているのか、もしも何かおわかりのことがあったら教えていただきたいです。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

悉皆的に海外の状況を把握しているかどうか、明確でないところもあるのですが、知る限りで申しますと、海外では、仮想通貨に対するアプローチとして幾つかパターンがあるようでございます。まず、全面禁止をするというアプローチ。ロシアなどは、現行法の解釈によるもののようではありますが、ロシア国内における通貨はルーブルであり、それ以外のものは認められないということを発表し、仮想通貨の取引は禁止されるということが、現行法の解釈として示されております。

一方で、全面禁止ではないアプローチとして、例えば米国などでは、マネロン対策、犯罪利用というところに着目をして、FinCENという連邦政府でマネーロンダリング対策を行っているところが、仮想通貨の取引についてマネーロンダリングの規制を課しており、いわばテロ対策やマネーロンダリング対策という犯罪防止の文脈で規制を課しているようでございます。

それ以外、欧州諸国につきましては、国によって大分違いはあるようですが、マネーロンダリング対策ですとか、あるいは利用者保護ですとか、そういうことも踏まえていろいろと議論がなされて、例えば、EBA(欧州銀行監督局)から、仮想通貨についてマネロンとか利用者保護の観点から規制を考えていくべきではないかといった提言がなされていると承知しております。

中国などでは、金融機関がビットコインを取り扱うことを禁止しており、金融機関以外では全く禁止されている訳ではないようですが、そういうところもあると認識しております。したがって、世界中見渡しますと、幾つかのアプローチがあり得て、通貨に類似したものは通貨高権、通貨は国がコントロールするものだという観点から禁止するのか、あるいはマネーロンダリング、犯罪という観点から規制をしていくのか、利用者保護という側面を含めて考えていくのか、アプローチは幾つかあるようでございます。

もう一つの問題として、仮想通貨の取引はインターネットを通じて簡単にできるという問題があり、一国が規制をしても、ほかの国にサーバーさえ持っていけば取り扱いはできるというところがあって、どういうアプローチが適切なのか、非常に難しい問題はあろうかと思います。海外の状況等、そういうことでございます。

【岩原座長】

よろしいですか。つけ加えますとアメリカの場合は、マネーロンダリングのほかに利用者保護の観点から、仮想通貨を扱う業者を送金業者、マネートランスミッターとして各州の州法で規制し、州法での認可を要求するという規制を行う方向のようであります。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

申し忘れましたけれども、確かに州レベルで、例えばニューヨーク州などは、まだ規制は導入されてはおりませんが、規制案を市中協議にかけているということのようでございます。また、カリフォルニア州などでも仮想通貨に対応した動きがあるように聞いております。

【岩原座長】

山上委員、どうぞ。

【山上委員】

先ほど森下先生のほうからご質問いただいた、アメリカの国内の決済改革の担い手という意味でいうと、FRB以外にも、NACHAとTCH、それぞれ若干異なる観点はあるのですが、この3者がそれぞれ相互に対話を進めながら、実際の改革の流れをつくっているというふうに聞いておりますが、ただ法的な枠組みの中に入って動いているかというと、必ずしもそうではないと。例えば、先ほど例示で挙がっておりましたFRBのタスクフォースにはNACHAが入っておりますし、IPFAの取り組みの中にもFRBとNACHAが共存しているような状況がございまして、ちょっと外見にはわかりにくいのですけれども、連携の様子というのが具体的に見えるようでございます。以上です。

【岩原座長】

どうもありがとうございます。沖田委員、どうぞ。

【沖田委員】

まずは、今回の事務局のご説明、非常に詳細でございまして、私も大変勉強になった部分が多くありまして、御礼申し上げたいと思うのですけれども。一方で、資料1の5ページ目にも、今後欧米の金融機関というのは、グーグルですとかフェイスブックが競合になるというような部分で申し上げますと、先週、皆さんもご存じのように、フェイスブックがまさにメッセンジャー機能を使って送金を行うというような新サービスが発表されていましたけれども、特に北米中心の報道では、これは中国でもともとやっていたテンセントのWeChatの送金機能を、むしろフェイスブックが追随するという形で、米国が中国をむしろ模倣するとまでは強いトーンではないと思いますけれども、そういった、中国がむしろ先導しているというような報道もあったかのように記憶しております。

そういう意味では、今回欧州ですとか米国の非常に詳細な調査をいただいたかと思うのですけれども、ぜひ中国ですとか、それからアジアも調査対象としてお加えいただきたいなというところが依頼事項でございます。その場合、おそらく今回のような行政ですとか制度面というよりは、どちらかというと個別の事例、イノベーティブな先端的なサービスというような形になるのかなとは思っておりまして、私自身、個別ですとか具体的な事案を審議するというのが望ましいのかというのは、疑問に思うのですけれども、一方で、諸外国の諸々の制度の前提としては、決済コストを削減したりですとか、イノベーションによって市場を創出するというのが、安全性の確保と並んで重視されているというふうに感じておりますので、従前も申し上げましたアリペイですとかテンセント、それからその他アジアの国々でも、先ほど例えば暗号通貨を使ったようなソリューションというのは増えてきておりますので、それらは世界的なイノベーティブな事例でもあろうかなと思いますので、ぜひ他のアジア諸国での事例といったことも、調査対象として加えていただくことで、日本の金融機関ですとか金融サービスがアジアに引けをとらないどころか、リードし続けるといったところに一定の役割があるのではないかなと思いますので、ぜひ今後の中でお願いできれば考えております。

【岩原座長】

シンガポールなど、かなり早い時期から制度の整備を図っているようでありますので、いろいろ学ぶべきところは多いかと思います。

ほかにいかがでしょうか。特にございませんか。古閑委員、どうぞ。

【古閑委員】

今、ビットコインのお話の中で、マネロンのお話もちょっと出てきましたので質問です。本人確認のところというのも、決済をやるに当たって非常に重要なポイントになってくると思うのですけれども、今回調査していただいた中で、本人確認のところというのは調査をされて、特にそういった規制がなかったので書かれていないのか、あるいはその点は今回の調査の対象になっていないのかというあたりを教えていただけますでしょうか。

【黒井総務企画局企画課信用機構企画室長】

我々が調べて、今回ご報告させていただきましたPSDその他の決済サービス指令の外に、別途マネロン規制のEU規則、あるいは指令もございまして、そちらの中でそうした本人確認の規制が別途かかっている状況でございます。今回については、そこの部分について詳細には調べていないという部分もあるのですけれども、そうした規制は別途、ヨーロッパ、アメリカも含めて規制は行われているところでございます。

【岩原座長】

松井委員、どうぞ。

【松井委員】

今回いろいろとご調査、あるいは取りまとめいただいてありがとうございました。EUの決済サービス指令の関連で、1点ほどお伺いをしたいと思います。この決済サービス指令の内容につきましては、EU域内の法の統一であるとか、あるいは加盟国間の差異の調整ということがあったかと思います。他方で、実体的な規制の内容について、スタディ・グループの中間取りまとめでありますとか、今後のワーキング・グループの中で、参考として議論の対象になっていくのでしょうか。特にこの中で扱われている内容というのは、必ずしもこれまでのスタディ・グループではそんなに詳しく触れられていないものも多々含まれていますので、こういったものも今後の議論の中では検討の対象になるのかどうか、議論の方向性を確認するという意味で、何かお考え等ありましたらお聞かせいただければと存じます。

【岩原座長】

佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

このEU決済サービス指令、非常に広範囲の事柄について定めております。今後の検討を考える上で、重要な参考例ではあると思います。ただ、それぞれEUはEUの事情があり、我が国は我が国の事情があるというのも確かであります。いろいろな決済に関する論点があると思うのですが、大きな視点でもって議論していくことが有益であり、その参考として、十分有益な参考例と考えております。ただ、個別のところでどこまで踏み込んで議論をしていくのが適当かというところは、検討の進め方をよく考えていく必要があるのかなとは思っております。

【岩原座長】

ほかに何かございますでしょうか。特にございませんか。もし特にないようでしたら、やや早目ではございますが、自由討議を終わらせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

それでは最後に、事務局のほうから連絡事項がありましたらお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、事務局より、今後の予定についてご案内申し上げます。次回の会合におきまして、かねて申し上げました本スタディ・グループとしての中間整理についてご審議いただくことを予定しております。日程につきましては、改めて調整をいたしまして、事務局よりご連絡を申し上げるということにさせていただきたいと考えております。事務局からは以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3560、3558)

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