金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」(第2回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年9月15日(火)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【森下座長】

それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」第2回会合を開催いたします。皆様ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

初めに、オブザーバーについて、一部異動がございましたので、事務局よりご紹介をお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私からご紹介を申し上げます。当ワーキング・グループのオブザーバーとして新たにご参加いただくことになりました、ちょうど私の左手、あちらのほうにご着席いただいております、経済産業省商務流通保安グループ商取引監督課の坂本課長でございます。

【坂本オブザーバー】

どうぞよろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

ご紹介は以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より討議資料「決済分野におけるイノベーションの重要性と決済を巡る法体系のあり方」について、まずご説明をいただき、討議を行いたいと思います。

それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、続きまして私からご説明を申し上げます。まず、お手元に資料が何部か配付されているかと思います。まず、縦書きの討議資料(1)「決済分野におけるイノベーションの重要性と決済を巡る法体系のあり方」と書いた資料がございます。それ以外に参考資料のマル1からマル2マル3というもの、A4横の資料がございます。これはこの討議資料の中で出てくることに対しての追加の参考資料ということですので、ご説明の中で適宜触れさせていただきたいと思っております。

まず、表紙をおめくりください。この討議資料(1)につきましては、全体で7ページにわたっております。ずっと文字が並んでいる長い文章ですので、途中で一度切らせていただき、それでご質問等いただきまして、その後にもう一度最後のところまでご説明したいと思っております。

全体が3部構成になっております。最初に「はじめに」ということで、今回この討議をお願いするに至った背景となるような問題意識などを1枚に書いております。2ページ以降は「決済業務を巡る情勢変化」ということで、最近の決済分野におけるさまざまな情勢変化について簡単にまとめております。それで、最後に、3部構成の最後でございますが、4ページ以下で「決済を巡る法体系のあり方」についてご議論いただくための論点を記載しております。全体構成は以上のとおりでございます。

それでは、まず最初の1ページ、「はじめに」のところからご説明を申し上げます。

まず、「はじめに」と書いております最初のパラグラフでございますが、決済分野では、近年、大きな情勢変化が生じている。こうした動向の背景として、IT分野の急速な発展に伴い、決済をはじめとする金融サービスの技術的前提が大きく変化していることが挙げられる。また、商取引等の電子化、企業・個人の活動の国際化に伴い、決済サービス等に対するニーズが変貌していることも大きな要因となっている。こうした中にあって、金融とITの融合という、いわば構造的変化とも言うべき動きが加速しているのではないか。

こうした動きは、イノベーションのさらなる進展を通じ利用者利便の向上をもたらしていく可能性を有している。また、このイノベーションは、新しいプレーヤーが一つの重要な牽引力となっていく可能性が高いものと見込まれる。このような展望を踏まえると、多様なプレーヤーが参加する中で、競争的にイノベーションが進められるような環境を整備していくことが必要と考えられるのではないか。また、決済システムの安定性や情報セキュリティ、利用者保護の確保も重要な課題である。決済をめぐる法体系がこうした諸課題と整合的なものとなっているか、決済サービスの発展の可能性と方向性も視野に入れつつ、検討を進めていく必要があるのではないか。

3つ目のパラグラフでございますが、なお、「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」でおまとめいただいた「中間整理」にも示されておりますように、制度に関する検討の際には、個別論点のみに着目するのではなく、規制の全体像や相互関係等を十分に踏まえることが重要である。「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」におきまして、種々の問題が提起されてきたところでありますが、まず個別の論点について考えるに当たって、決済をめぐる今後の法体系の基本的なあり方について、検討を行うことが重要と考えられるのではないか。

ということで、まずこの決済全体の今後のあり方、法体系の基本的なあり方について本日ご議論いただきたいと考えております。

1枚おめくりいただきまして、2ページ目でございます。2としまして、「決済業務等を巡る情勢変化等」とございます。スタディ・グループにおきましてもさまざまなヒアリングを行いまして、決済分野に関するさまざまな変化の事象が把握されたところと認識しております。今回、このペーパーでは、そうした変化を具体的にどういう観点でどう捉まえていくのか、いろいろな動きがある中で、幾つか見出しをつけつつ、主立った論点ごとにこの変化について簡単に総括しております。

まず、決済業務等の機能進化と総合化ということで、決済業務の機能進化が大きく進んでいる。例えば、資金移動サービスの分野では、単純な送金サービスにとどまらず、利用者から資金を受け入れて、それをアカウント等の形でチャージさせておくことで、必要な都度、支払いや送金に利用できるサービスが広く登場している。こうしたサービスは、隔地者間、離れた土地にいる人の間の資金移動の仕組みであるとともに、異時点間の価値貯蔵の手段としても利用されており、そうした点において、預金の受け入れに類似した機能を提供するに至っている。

また、前払式支払手段についても、古くは商品券や灯油券などが発行されていたが、近年では、数十万の加盟店で利用できるものなど、広範囲で利用可能な汎用性の高いものが出現している。また、インターネットを利用して譲渡を行えるものなども登場するなど、その機能を拡張することで、実態面では、預金による決済や送金サービスに近い機能を提供するものがあらわれている。

加えて、前払式支払手段については、商取引の電子化や加盟店の増加などを背景に利用が拡大しており、年間発行高が23兆円を上回るなど、発行規模が大型化している。近年では、前払式支払手段の発行と融資業務をグループ内で併営するケースもあるが、大規模な前払式支払手段の発行により利用者から受け入れた資金を融資業務に活用することで信用創造機能を提供することも可能となっている。

さらに、例えば、電子商取引市場の運営業者が電子マネーを発行し、それにより電子商取引市場での支払手段を提供するとともに、個人間での送金、さらには、電子商取引市場を通じて得たビッグデータを活用して出店者に融資業務を行うものが登場している。このように、前払式支払手段の発行や資金移動サービスと融資業務等を組み合わせることで、総合的な金融サービスの提供も可能となっている。

1枚おめくりいただきまして、次の3ページ目でございます。次にちょっと視点を変えまして、インターフェース部分における変化ということでございます。

これらに加え、金融・ITの融合の進展を受け、利用者との接点、いわゆるインターフェースの部分においても、大きな変化が生じている。例えば、決済分野では、決済手段の多様化の動きがあるが、近年では、それら多様な決済手段を、インターネット上のIDやスマートフォンで一括して管理・利用できるようにするサービスが登場するなど、国内外において、さまざまな決済手段を利用者の利活用場面において一体化する動きが広がっている。

続いて、中間的業者の登場と多様化でございます。

また、従来、銀行と銀行サービスの利用者との関係は、主に、両者が直接コンタクトして処理されてきたが、銀行業務のアンバンドリング化が進行する中、多様なプレーヤーが決済プロセスに組み込まれるようになっており、銀行等と利用者の間に立って、両者を介在するサービスを提供する者(いわゆる中間的業者)が拡大している。

こうした中間的業者には、主として銀行との関係に基づいて、銀行のために、利用者との契約締結の代理等を行うものもあるが、そうしたもの以外にも、利用者の依頼を受けて主導的に決済機能を仲介するもの、あるいは、契約の締結ではなく、取引や資金管理のため、利用者の指示や口座情報の伝達を行うものなどが登場している。

情報セキュリティをめぐる問題について。

昨今、決済サービスをめぐっては、不正送金事案や業者や顧客を狙ったサイバー攻撃が増加している。その手法は急速に高度化・巧妙化しており、業態や事業規模の大小によらず幅広くサイバー攻撃の対象となりつつある。こうしたシステムの安全性をめぐる問題は、決済の安全性を脅かすとともに、ITを活用したサービスのイノベーションとその利用拡大を妨げることにもなりかねない。

続きまして、決済ビジネスの国際的な展開でございます。

決済サービスは、より一層、グローバルにその標準化が競われる環境に置かれつつある。グローバル化の進展、インターネットやモバイル端末等を活用した決済の電子化の加速を背景に、決済ビジネスは、本質的に、クロスボーダーな事業領域となっており、決済分野においては、サービスの標準化をめぐるグローバルな競争が生じている。こうした中、我が国事業者の多くにおいても、国際的な展開が志向されている。

ちょうど中間のところになりましたので、ここで一旦区切らせていただきまして、ご質問、ご議論などをお願いしたいと思います。

【森下座長】

ありがとうございました。

ここまででご質問などがございましたら、どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。ご質問などございましたら、どなたからでも結構でございますが。

それでは、引き続きまして、3以降についてご説明をいただきたいと思います。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、引き続きまして、4ページの3についてご説明させていただきます。2までで申し上げたものが決済をめぐるさまざまな状況変化を整理したもので、こうしたものを踏まえた法体系のあり方を、この3について、考え方の視点を書いております。

冒頭から申し上げますと、上述のような決済業務等をめぐるイノベーションの動きは、今後、より一層加速、拡大していくことが見込まれ、利用者利便を高める方向に寄与することが期待される。そうしたことを踏まえれば、情報セキュリティや利用者保護といった課題に留意しつつ、IT分野の進展を活用した利便性の高い新しいサービスの提供などが、さらに進展していくような環境が整えられていることが重要と考えてよいか。

決済をめぐる現在の法体系が、上述した情勢変化や課題に照らし、これらと整合的となっているかどうかを考えると、以下のような点が指摘できるのではないか。

最初に、決済業務等をめぐる現行の法体系についてでございます。

現行、決済業務等をめぐる法体系としては、「為替取引」「預金の受入れと貸付」を固有業務とする銀行に対して、銀行法による厳格な規制を及ぼした上で、それら銀行の固有業務あるいはそれらに隣接する業務を行う場合について、各種業務ごとに、銀行法に比べて緩やかな規制のもとで業務を実行できる枠組みが整備されている。

具体例が以下、黒ポツをつけているところが幾つかございます。

まず、決済業務等については、資金移動業として、それまで銀行のみに認められていた為替取引について、少額のサービスに限り営むことができることとされている。資金移動業は、預金の受け入れを行わないなど、従来の銀行の固有業務の一部を行うにすぎず、こうした事業内容等を踏まえ、登録制とした上で送金途上にある資金と同額の資産の保全等を義務づけることで、銀行に係る厳格な規制の代替としている。

前払式支払手段については、紙型、IC型に加え、サーバー型での発行が行われている。その際、銀行の固有業務である預かり金や為替取引該当性等の観点から、前払式支払手段の保有者への払い戻しは原則禁止とされている。他方、その譲渡については規制せず、自家型発行者は届け出制、第三者型発行者は登録制のもと、未使用残高の2分の1以上の保全義務など、銀行に比べ緩やかな規制となっている。

続きまして、5ページでございます。

融資業務については、貸金業者は、貸し付けを業として行うことができることとされているが、業務の適正な運営の確保及び資金需要者等の利益の保護を図る観点から、登録制のもとで、各種の行為規制、具体的には過剰貸し付けの禁止あるいは利用者に対する書面の交付義務等が設けられている。

情勢変化を踏まえた今後の課題。

こうした各業務ごとの規制の枠組みは、必ずしも、相互に整合的なものとはなっていない。例えば、ITの進化により、資金移動業が提供するサービスとサーバー型の大規模なプリペイドカード業が提供するサービスには近似性が見られるが、顧客から預かった資産の保全については、資金移動業は、その全額を供託等することが求められている一方、前払式支払手段の発行者については、発行された前払式支払手段の未使用残高の2分の1以上の供託となっているなど、規制に差異がある。

上述のとおり、金融・IT融合の動きを背景に、規制領域をまたがる形で決済サービスが発達するとともに、異なる規制領域にあるさまざまな決済手段が一体的に提供されつつある。こうした方向性で決済サービスが発展しつつある中で、規制が区々となっていることは、利用者利便の妨げとなったり、ビジネスの選択にゆがみ(ディストーション)をもたらしていく可能性がないか。

また、上述のとおり、各種決済サービスの機能進化が進み、決済サービスと融資業務等を組み合わせることなどによって、総合的な金融サービスの提供も出現しつつある。また、前払式支払手段の例に見られるように、サービスの規模拡大が進む場合、それらが、決済ネットワーク全体の重要な構成要素となる可能性もあるが、現在の各業法別の法体系は、こうした新しい動きを十分に視野に入れたものとなっているか。

さらに、銀行と利用者の間に立って両者を介在するサービスを提供する「中間的業者」が現われている。こうした業務に関しては、従来、例えば、銀行のために預金等の受け入れ・融資・為替取引等を内容とする契約の締結の代理または媒介のいずれかを行う者については、銀行代理業制度のもと、許可制などを通じた規制を設けることにより対応が図られてきた。他方、例えば、ATMの提供は、契約の締結の代理・媒介には該当せず、重要な業務であっても規制の直接の対象とはならず、銀行を通じた間接規制が及ぶのみとなっている。また、海外の事例などを見ると、銀行からの委託等は受けずに、顧客と「中間的業者」との契約に基づいて、銀行口座にアクセスしてサービスを実行する形態も存在しているが、これらについては、銀行を通じた間接的な規制では、顧客保護等の対応が十分に確保されない可能性もある。こうした「中間的業者」の登場を踏まえた場合、銀行代理業制度や銀行を通じた間接規制で対応するとの従来の規制体系は、十分と考えられるか。

参考で、EU決済サービス指令、これはスタディ・グループでもご紹介を申し上げましたが、念のため、ここにももう一度、参考として記載しております。

こうした決済分野の情勢変化は、我が国に限らず、諸外国でも見られ、対応が図られている例もある。例えば、EUでは、決済サービス指令(PSD)を策定し、銀行・プリベイドカード(電子マネー)業者・決済サービス事業者を通じた、資本要件や情報提供義務など、横断的な規制体系を構築している。

さらに、現在欧州議会において審議中のPSDの改定案では、上述のような「中間的業者」、(例えば、利用者と決済サービス提供者の間に立って、利用者の指示や口座情報を伝達したりするサービスを提供する事業者(Payment Initiation Service Provider))も取り込んだ、さらに横断的な制度整備が提案されている。

ここで参考資料のマル1というものをお開きいただきたいと思います。今申し上げましたEUの決済サービス指令の概要を2枚ほどで簡単にまとめております。若干復習的になるところがございますが、1枚目がEU決済サービス指令全体の概要ということで、左側がEUの指令の内容を簡単に記載したもの、右側が日本の法体系を記載したものです。

かいつまんで申し上げますと、EUのほうでは、銀行あるいは電子マネー事業者、決済サービス事業者、これを対象として、免許制とし、また業務内容も決済口座サービス、資金移動サービス、支払手段の発行、オンライン決済サービス等、こういうものを横断的に業務内容として規制をし、一方でそれぞれの、例えば銀行や電子マネー事業者は電子マネーの発行は認められ、一方で決済サービス事業者はその範疇にはないといったこと、財務要件など自己資本規制につきましても、銀行、電子マネー、決済サービス事業者と、それぞれ水準は違うところはございますが、一定の基本的な枠組みの中で行われております。

左下に箱をもう一つ書いております。このPSDにより、決済サービス提供者について共通の行為規制を規定しており、それが例えば情報提供義務であったり、無権限取引に係るルールであったり、支払取引の実行に関する期間等々となっております。

右側の日本のところにつきましては、銀行は銀行法、前払式支払手段、資金移動業者は資金決済法でそれぞれ規制がなされておりまして、業法別の体系になっているということでございます。

次のページ、2ページ目をお開きください。参考資料マル1の2ページ目でございます。先ほどご紹介申し上げましたPSDの改定案における中間的業者の規制について、現在議論されている規制の定義なり内容をここで簡単にまとめております。

Payment Initiation Serviceの定義として、決済サービス利用者の依頼により、ほかの決済サービス提供者に開設されている決済口座に関し、支払指図を発動するサービス。簡単に申しますと、利用者から依頼を受けて、この中間的な業者さんが例えば銀行の口座にアクセスし、そこに送金の指示などを利用者に代替して行う、そういうサービスを提供するものということでございます。「例えば」と書いてありますが、オンラインショップにおいて、商店主のウエブサイトと利用者の銀行のオンラインシステムをつなぐシステムを構築し、それでインターネット上で銀行口座の振替による決済サービスなどが想定されているということでございます。

その下に規制内容を書いております。PISP(Payment Initiation Service Provider)となっておりますが、この春にスタディ・グループでご紹介したときは、Third Party Payment Service Providerという言葉が使われておりましたが、その後、検討の中で名称が変わったようでございます。このPISPについては、決済サービス提供者に包含されるものとして、決済サービス提供者に関する規定が適用される。「このほか」と下に書いておりますが、PISPに関して、以下の規制を導入する。具体的に幾つか箇条書きで書いております。例えば、支払人から資金を預かることを禁止する。このPISPについては、資産保全義務の対象とはしない。一方で、無権限取引に関する責任をカバーするための保険加入は義務づける。また、サービスに際して得た利用者の情報の管理等の義務づけを行う。支払人や決済口座を管理する決済サービス提供者等への支払指図の発動に関する情報提供の義務づけ。また、無権限取引や不履行時の責任に関する規定の整備。そのほか、下に書いておりますが、決済口座を管理する決済サービス提供者に対する規制として、支払人が同意した場合に、決済口座を管理する決済サービス提供者が、PISPに対して、この決済取引に関する情報提供を行うことを義務づけると、そういう規定も提案の中で設けられているということでございます。

したがいまして、このEUの規制につきましても、横断的に規制をしており、一方で全く同じ規制をいろいろな業者に課しているというわけではなく、それぞれの業務の実態に応じて、そこは少し調整しながら規制がかけられていると、あるいはそれが提案されていると考えることができようかと思います。

またこの資料の先ほど途中で終わりました6ページのところにお戻りいただきまして、真ん中より少し下、今のEU決済サービス指令の参考の情報のその下の、決済をめぐる今後の法体系のあり方ということでございます。

法制度のあり方は、それぞれの国・地域の経済状況等を踏まえて考える必要があるが、最近の決済分野における情勢変化とそれらに伴う課題を踏まえれば、今後、決済をめぐる法体系のあり方として、例えば、以下のような方向性が重要と考えられるが、どうか。

金融・IT融合の進展等に伴い、決済業務をはじめとする各種の金融サービスが総合的に提供され、また、利用者においても各種の決済手段を一体的に利用していくようになっていくことを踏まえると、決済ビジネスの選択にゆがみを生じさせたり、利用者利便の妨げとなることを回避するといった観点から、さまざまなサービスが柔軟に展開されていくことを可能とするような業務横断的な規制体系の構築が将来的には目指されるべきではないか。

その次のページでございます。また、そうした横断的な規制体系を構築していくに当たっては、決済プロセスにおいて「中間的業者」などが、利用者との関係を中心に、重要な役割を果たしつつあることも十分に踏まえるべきではないか。

さらに、決済サービスの国際的な展開が加速し、我が国事業者が海外への展開を志向するとともに、逆に海外事業者が我が国においてサービス展開しつつあることを踏まえれば、制度面においても、先見性を持った環境整備を行うことが、金融サービスの国際的な発展と利用者利便・安全性の向上双方にとって重要と考えられるのではないか。

一方で、上述のような法体系の構築を目指す場合、それがかえってイノベーションの進展を阻害しないよう、留意しておくべき点があるか。

以上、この討議資料について説明をさせていただきました。

参考資料はほかに2種類ございますが、参考資料マル2は中間整理で示された主な課題を、主なところだけ抜粋したものですので、もし必要とあらばお手元でご参照いただきたいと思います。

参考資料マル3は関連条文ということで、先ほど私のご説明の中で、例えば銀行法なり資金決済法なり、業務別の法体系が我が国において構築されており、関連する主立った条文をここで記載しております。これにつきましても、時間的な制約もございますので、説明は割愛させていただきますが、ご参照いただければと思っております。

事務局から、以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いいたしたいと存じます。いかがでしょうか。永沢委員、お願いいたします。

【永沢委員】

意見を申し上げる前に、質問を幾つかさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

【森下座長】

はい。

【永沢委員】

今ご説明いただきました討議資料の4ページから5ページと、それから参考資料マル1の1ページ目の右側の日本に該当するところに関しての質問でございます。細かい質問になりますが、十分知識を持ち合わせておりませんので、教えていただけたらと思います。

まず、資金移動業に関してですが、登録制となっておりますけれども、現在登録している業者数というのは何件かということ。それから、これはもう既にスタディ・グループのときに説明いただいたかもしれませんが、その次の前払式支払手段とも関連していることですが、資産の保全という言葉がいろいろ出てくるんですけれども、この方法、供託義務について、これは具体的にはどのようなところにどのようにして資産保全がされているのかということを教えていただきたいと思います。

それから、3点目になりますけれども、4ページの一番下の黒い印のところの前払式支払手段のところですが、届け出制と登録制と2つに分かれておりますけれども、自家型のほうが届け出制と緩和されている理由というのをわかりやすく説明いただけたらと思います。あわせて、登録制と届け出制とそれぞれの件数、現状どうなっているのかわかりましたら教えていただきたいと思っております。それから、貸金業の登録件数も教えていただけたらと思います。

最後になりますけれども、4ページのところの記述の中に「前払式支払手段の保有者への払戻しは原則禁止とされている」と書いてありますけれども、これは例外があるということですが、この例外の場合というのをお教えいただけますでしょうか。

質問をまずさせていただきまして、後ほど意見はと思っておりますので、これで終わらせていただきます。

【森下座長】

それでは、事務局からお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、まず私のほうから法制度の考え方などをご説明しまして、登録数などにつきましては監督部門の担当のほうから続けてご説明させていただきたいと思います。

まず、資産の保全などはどのように行っているのかということでございます。これは資金決済法の中で幾つか手段が定められております。1つは、供託をする供託所というところがございまして、供託所にお金を預けておいて、そうすると財産的に別管理がなされますので、もし債務が不履行になるような場合があっても、その供託した財産から利用者に対して優先的に支払いがなされるということでございます。それがまず1つの手段で、それ以外の手段としまして、別の業者と保証契約を結ぶようなことも可能となっております。保証契約というのは、要するに債務が履行できなくなったようなときに、保証してあげた業者さんが責任を持ってお金を、いわゆる保険のようなもので支払うということでございます。そのほか、信託契約を結んで、信託の財産として預けることによって一般の財産と隔離して、その中から利用者に対していざというときの優先的な支払いをなすということが制度上認められております。具体的にどの程度使っているのか、今ここで数字などは、わかりませんけれども、供託されている方、業者さんもあれば、保証契約のようなところで対応されている業者さんもあると認識しております。

続きまして、自家型の発行者の届け出制、第三者型の登録制というところでございますが、まず自家型につきまして、あるいは十分にご説明申し上げなかったような気もするんですが、自家型前払式支払手段発行者とは、端的に言うと、例えば私が何か商店を営んでいて、うちの店だけで使えるような商品券を発行する、そういうものについては自家型前払式の支払手段ということでございます。おそらく歴史をひもとけば、自家型が昔は多かったのであろうと思っています。その後、第三者型という、例えば全国のデパート共通に使えるような商品券というものが存在しております。そういう商品券のようなものを発行した人や会社とは別なところで使えるものを第三者型の前払式支払手段と称しております。自家型については届け出制、第三者型については登録制ということで、この違いがどういうところに由来するのか、推測も入りますけれども、第三者型のほうはわりと幅広く使え、なおかつ、使えるところが自分の店以外のところも含まれるため、したがって、きちんと使えるようにビジネスなどもきちんとしたものを構築する必要があるということがあります。届け出制というのは、行政庁に対して届け出さえすれば営業ができます。一方で、登録制については、登録の申請をした上で、行政庁が内容を見て、不適切な人は登録しないということになっております。自家型は届け出制で第三者型は登録制となっているのは、そうしたビジネスの広がりなり、第三者が介在するという違いがあり、規制の違いになっているものと認識しているところでございます。

前払式支払手段の払い戻しが原則禁止されているというところでございますが、例外が法令の中に幾つかございまして、例えば、ちょっとテクニカルに難しいところなんですが、前払式支払手段というのは年に2回、基準日というのを設けています。3月末と9月末を基準日として、その時点における未履行分について、先ほどご説明した2分の1分を供託や保証契約などで保全しなさいということになっています。この3月末と9月末の間において発行した前払式支払手段の発行額の100分の20を超えない範囲については払い戻しが認められ、さらに払い戻し金額の総額が基準日におけるトータルの未使用残高の100分の5を超えないような場合にも払い戻しが認められております。それ以外に、保有者のやむを得ない事情によって前払式支払手段の利用が著しく困難となった場合というのも認められております。この具体例としましては、例えば地域で発行されているような前払式支払手段があるとして、仮定の話ですが、北海道だけで共通で使われている前払式支払手段を北海道に住んでいる人が買った。しかし、転勤で外国に、あるいは沖縄に行かなければいけなくなったようなとき、そのようなときには使うことが相当程度期待できないということがあり、そのようなやむを得ない事由というものがあります。最近、このやむを得ない事由というところで少し議論になった例があり、外国から旅行でやってきた旅行者が日本国内で、例えば交通系のプリペイドカードを買って、日本国内の旅行でそれを使っていたのですが、本国に帰国するときに払い戻しできるのかできないのかというところが不明確ではないかということがあり、法令の中で、そういう外国人旅行者が帰国する際には、払い戻しについてはやむを得ない事由と観念できるということを明確化したところでございます。

私のほうからのご説明は以上で、続きまして、登録件数などにつきましては監督局の西尾からご説明申し上げます。

【西尾監督局総務課金融会社室長】

お答え申し上げます。資金移動業者、現在、登録は42業者でございます。それとあと、いわゆるプリカ業者ですけれども、自家型の届け出制となっているのが、ちょっと詳細なところは把握しておりません。やや丸い数字で大変恐縮ですけれども、自家発行型が約800業者。第三者型のプリカ業者が約1,000業者。トータル1,800程度の業者数でございます。

以上でございます。

【森下座長】

貸金業についてもお願いいたします。

【西尾監督局総務課金融会社室長】

失礼しました。貸金業につきましては現状約2,000弱ございまして、貸金業につきましては営業所が都道府県をまたがるような場合は国の財務局の登録、これが約300弱でございます。残りの約1,600程度が、これが事務所が一都道府県内にとどまるということで、これは都道府県知事の登録でございます。

以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございます。よろしいですか。

ほかにいかがでしょうか。関委員。

【関委員】

私のほうからも質問ですが、EUと日本のいろいろな制度の違いについて、参考資料マル1の1ページ、一覧表にしていただいていいますが、いま一つよく理解できないのが、表の上ではいろいろ違いが書いてあるものの、実際のところどういう違いがあるのかというのがちょっとまだこの表ではよく理解ができないので補足的な説明をお願いしたいです。ポイントとなるのは、まずEUにおける免許制と日本における免許制あるいは登録制との違い、日本の登録制と免許制の違いも含めてが1つと、あと業務内容で幾つか書いてあるんですが、実質的に日本とEUでできること、できないこと、どう違うのか。そのあたりを中心にちょっと補足説明いただければと思います。

【森下座長】

それでは、お願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず、免許制、登録制のところにつきましては、一般論からまず申し上げますと、ご承知かと思いますが、免許制につきましては、原則禁止とした上で、特別の資格を持っている人については営業などを許容するということで、一般的に、行政庁の免許を与えるか否かの裁量が大きいと考えられています。一方で登録制のほうは、これは法学者の先生方のほうが詳しいかと思いますが、一般的に行政庁にある登録簿に、業者あるいは個人も含めてですが、氏名や名称などを登録することによって、その登録をされた場合に、この業規制であれば営業などができることになります。登録簿に登載するか否かについて行政庁が判断し、そこでの裁量は、法令により大小さまざまであり、一般的に登録制のほうは裁量の幅が広いものもあれば狭いものもあると考えられているかと思います。例えば日本の資金移動業者につきましては、登録の欠格事由として、過去に犯罪的な行為を犯したような人は欠格事由に該当したり、あるいは必要な財務的な基盤が欠けている場合ですとか、幾つか欠格事由を列挙しております。免許制につきましては、いろいろな角度から免許について付与することが適切かどうか判断するということになると思います。

一方で、欧州のほうにつきまして、これは一概にお答えしがたいのは、EUの決済サービス指令というものがあって、それに基づいて各国で国内法を整備しております。国内法の中で、免許制の具体的な内容の要件ですとか、あるいは法令レベルに限らず、実際に免許申請をしたときにどういうところに着目して、どの程度の数の免許を出すのか、そこはおそらく各国によって違いが出てくるところであろうかと思います。したがいまして、一概にどう違うかということは答えられないところではございますが、個別に見ていくと、いろいろな違いが出てくるかとは思います。

業務内容につきましては、これもどう説明するかは難しいのですが、EUの決済サービス指令は決済のサービスに着目して指令ができております。一方で、銀行は銀行で、預金を受け入れたり貸し付けを行い、信用創造の機能も果たしているというところで、決済に着目した横断的な規制はEU決済サービス指令で規定されている一方で、銀行などについての規制はまた違ったものがあるということで、EUの決済サービス指令だけを見て、例えば銀行がどの程度の業務内容ができるかというのを判断することはできないと思っております。ここでEU決済サービス指令の事例を紹介申し上げましたのは、決済に着目してということではありますが、決済のサービスに着目して業種横断的にいろいろな規制がかけられ、その規制の中身も、例えば自己資本規制などは違いますし、共通の規制として情報提供義務ですとか無権限取引に関するルールなどがあり、おそらく共通にできるところは共通とし、リスクに応じて違うところは違った仕組みにしながら、横断的な法制を構築しているということでご紹介させていただいたということでございます。

【関委員】

EUの免許制について、各国でやっているということで詳細はわからないと理解しましたが、この3種類の事業形態について、それぞれ免許制と書いてありますけれども、同じような扱いではない可能性もあるということでしょうか。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それはその可能性は十分にあると思います。

【関委員】

ありがとうございます。

【森下座長】

よろしいでしょうか。

それでは、いかがでしょうか。沖田委員、お願いします。

【沖田委員】

事務局からのご説明、ありがとうございます。

私のほうはこちらに対する意見を申し上げたいと思うんですけれども、まず冒頭にございますように、特に本日は各論ではなくて方向性の議論をしていくという点については、こちらは非常に強く賛成するところでございます。それを踏まえて、イノベーションの進展が消費者に対し利便性を提供するというような記述があるかと思いますけれども、これはおそらく参加の各委員の方々含めて異論のないところではないかと感じております。また、現実として、中に指摘があったような総合的なサービスを提供する事業者、これが増えてきているというのは、これは世界的な傾向でございまして、また諸外国において無視できない規模に育ってきているというところもご承知のとおりではないかと思っております。一方で、この中にもございましたように、現行の日本での法体制の中で、諸外国で非常に利便性を高く提供しているようなサービス群が銀行免許を取得しないとなかなか提供できないと、そういったケースも多いというところでございまして、言いかえますと、中にありましたように、消費者にとってはやはり利便性の向上の妨げ、それから事業者にとってはビジネス選択のゆがみというところが生じている現実については、これは否定できない部分なのかなというところで、今回の事務局のご説明は非常に私も同感でございます。ただ、これは多くの国々でも、基本的にはそういったイノベーションですとか新しいサービスであったり、そういった新たな動きというものは、民間が主導していくというか、そういったものが先行して走っていって、それに対して法律、規制の面がそういった現実をサポートしていくといった傾向が、特にこういったFinTechと呼ばれる分野では多いというのは事実だと思っております。そういう意味で、今まさにスタディ・グループからワーキング・グループという形でこういった新しい法整備、特にイノベーションを促進していくという方向感での議論というのは時宜を得たものではないかと考えております。そういう意味では、中に書かれています業務横断的な規制というのは望ましいというふうに私個人としても思いますし、それから特に申し上げたいポイントとしては、一番最後、7ページで、最後の文章で問いがなされているかと思いますけれども、イノベーションの進展を阻害しないように留意しておくべき点があるだろうかという、この問いに関しては、私は1人の消費者、国民としても、それから民間の事業者の立場としても、同様に国際的な展開もやらせていただいていますので、日本がいわゆるFinTech分野で諸外国におくれをとらない、それからむしろそういったところをリードしていくといった中で、こういった考え方というのは極めて重要ではないかと思います。

基本的には事務局の考えと同等であるという意見になってしまいますけれども、意見のほうを申し上げました。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。戸村委員、お願いいたします。

【戸村委員】

ありがとうございます。私もこちらの参考資料マル1の1ページ目についてのコメントという形で、ちょっと長くなりますが、自分の意見を申し上げさせていただきたいんですが、私の意見は、私はビジネスをやっておりませんので、沖田委員のような国際的な観点にちょっと欠けていたら、その点はご指摘いただければありがたいと思いますが、ある種学者の理論的な考えと思っていただければ幸いです。

4点ありまして、1点目、この図を見ますと、やはり銀行と資金決済業者の区別というところで、資金決済法、5年前かと思いますが、立法にもご苦労されたのかなという印象がありますが、私は現金の払い戻しのありなしとかで区別するのではなくて、やはり保有資産で区別するべきだと思います。それはどういうことかといいますと、個人的な印象ですが、銀行と比較した場合の資金決済法の対象事業者の優位性というのは、決済のためのインターフェース提供という技術的なものにあると思います。そういう意味では、通常の銀行のようなマチュリティー・トランスフォーメーションであるとかリクイディティー・トランスフォーメーションであるとかいう金融技術ではなくて、もうちょっと工学的な技術のほうの優位性にあると思いますので、その意味では資金決済法の対象事業者というのは、信用リスク、金利リスク、流動性リスクといったリスク性の資産を必ずしも持つ必要はないというのが私の考えです。逆に、このようなリスク性の資産を持って決済性資産を発行するのであれば、銀行法の対象とするのが本筋かと思います。それが1点目です。

2点目、供託義務について1つ感想がありまして、今のような私の考え方からしますと、資金移動業者のほうは未決済残高の全額供託で、一方で前払式支払手段のほうは半額の供託になりますが、私の考え方では、これは原則全額供託にするべきだと思います。ただし、現実には商品券のように紙で発行して、発行はしているんですけれども在庫に残っているというような現状もありますので、そのような現状、ハードの紙ベースの証券のようなものに対しては、規制の抜け穴にならないような形で部分供託を例外的に認めるのがよいかとは思いますが、原則として、銀行と資金決済業者との区別という観点からすると、100%の供託とするのが筋が通っているかと思います。ただし、こう申し上げますと、スタディ・グループで堀委員がご指摘されたように、供託用の現金と決済用の現金を別建てで用意しなければならなくなりますので、未決済残高の供託金割合が高まれば資金決済業者の負担も高くなる問題は当然あります。この点については、私は現場の人間ではありませんので、ちょっとアイデアはありませんけれども、柔軟に供託金を取り崩して決済用の資産として使用できるような仕組みが望ましいと思います。

3点目は関連して供託の仕方ですが、ではどうすれば供託に関連する事務コストが軽減されるかというのがあると思うんですけれども、その点では、1つ指摘しておきたい点は、法務局に振り込まれますと銀行サービスじゃないように思いますけれども、結局、法務局に振り込まれた供託金は政府預金として日銀ネットに計上されることになります。そういう意味では、資金決済業者も政府を仲介機関として日銀ネットに接続していることになります。ですので、技術上の観点から、現状のように法務局のシステムを通じて日銀ネットに接続させて、日銀ネット上の安全資産である当座預金を資金決済業者に供託という形で保有させるのか、もしくは日本銀行との直接取引のような他の経路のほうが技術的に効率的なのかは、私の考えでは検討に値する課題かと思います。

ちょっと長くなりまして申しわけありませんが、資本規制について最後に意見を申し上げたいと思います。この1ページ目の表になりますと、資本規制のところがある種対照的なわけですけれども、私の考えでは、銀行資本は現状のバーゼル規制の考え方に沿って、ロス・アブゾービング・キャピタル・バッファーと考えればよいと思っておりますので、仮に技術的な問題がクリアされて未決済残高の全額供託というのが可能になった場合には、特に資金決済業者のバランスシート全体のサイズに応じた資本規制というものは要らないのではないかと、現状のように無権限取引やコンピューターサーバーのような実物資産の毀損のような、オペレーショナルリスクをカバーする範囲の資本規制でよいのかと思います。

問わず語りになってしまいましたけれども、以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、河野委員、お願いいたします。

【河野委員】

ご説明ありがとうございました。私はスタディ・グループの後半とワーキング・グループの最初は欠席しておりまして、しばらくぶりにこの問題に向き合ってみてというところで、今日事務局のほうからご提案いただきました全体像をどう考えて、今後に向けてどう対処していくかというところに関しまして、ほんとうに消費者はこういうふうに受けとめているという感想をまずお伝えしたいと思っています。

ここにおまとめいただいたように、決済の方法というのはほんとうに多様になっていると実感しております。特に現金を使わないといいましょうか、キャッシュレスというふうに考えますと、日本ではさまざまな事業者が多様なキャッシュレス決済サービスというのを提供してくださっていて、そのサービスの内容に明るい消費者にとってみると、自分の好みに合ったサービスから広く選べるようになってきていると。ただし、先ほど最初に永沢委員がそれぞれの貸金業ですとかプリペイドの中身ですとかご説明を事務局からいただいたように、実は中身のことについて見ると、ほとんどわかっていないというのが現状だと思っています。例えばキャッシュレス決済というと、一番わかりやすいのは、私にもわかるというのは、クレジットカード、それからプリペイドカード。それから、あと後払式の電子マネーとかデビットカードとか、スマートフォンを利用したアプリ決済、端末利用したそういった形。それから、収納代行とか代引きとか、ほんとうにいつの間にこんなにたくさんいろんな形が世の中に、社会に出ているんだろうという感じを持っています。それで、本日の経年の整理と、それから現状の認識というのは、もうほんとうに私自身もそのとおりだと考えておりますが、例えば6ページ、1つ表現のところで、消費者にとってみて今後とても心配だなと思うのは、6ページの一番下の段落なんです。「決済を巡る今後の法体系のあり方」のところで整理されている黒ポツの1つ目なんですけれども、「金融・IT融合の進展等に伴い、決済業務をはじめとする各種の金融サービスが総合的に提供され」というところは私もそのとおりだと思うんです。「また、利用者においても各種の決済手段を一体的に利用していくようになっていくこと」。でも、これは将来の非常に希望的観測を含めた表現であって、今現状でいえば、利用者においては各種の提供されている決済手段を利用させられているというのが現状だと思っています。利用者からすると、全体像がよく見えない。だから、よくわからないままに、一見便利そうだから、つまり、言いかえれば、リスクが見えない状態で使っていると。これを、ここに書かれているように、利用者みずからが一体的に利用していくようにするためにぜひ今後の検討を進めていただきたいというのがお願いです。当然のことながら、国内での整理をまずやっていただくのと、それから、先ほどから知見のある方から、国際的な整合性も非常に重要だよと話されています。かつて現金で決済をしていて、さまざま不便な部分が出てきて、そこに対してビジネスチャンスを見出した方が、必要に迫られてといいましょうか、いろいろと新規のシステムという形で提供してくださいました。消費者も便利には利用しておりますけれども、そこに潜んでいる、実際、同じように決済していると消費者は思っていても、現実問題はそうではないと。そのあたりをぜひ、今日は大きな大局的な見方として方向性を確認するということだと思いますけれども、消費者保護ということもしっかりと押さえた上で、今後に向けてしっかりと整理していっていただければと思っています。

全体に関する感想をお伝えしました。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。永沢委員、お願いいたします。

【永沢委員】

ありがとうございます。先ほど幾つか質問させていただきましたけれども、それも踏まえましての意見になります。本日の討議資料全体を拝読いたしまして、考え方として私は正しい方向だと思っておりますが、私は一般的な消費者の立場で申し上げますけれども、私ども利用者、消費者といたしましては、このサービスがどういう業に該当するか、何とか業だからこの法律で規制されているということとか、その規制がどういう内容なのかということなどをいちいち考えて決済サービスを利用しているわけではありません。とはいいながらも、やはりこの決済サービスは信頼できるものだ、何かあったときには、救済とまでは言いませんけれども誰かが何とかしてくれる、安心して使えるものなのだという信頼を大前提として使っているわけで、そういうことを考えますと、この決済サービスが今後の日本経済なりの成長の原動力となっていくものとなると思うんですけれども、決済サービスをインフラとして構築していくためには、消費者に「使うときに気をつけよ」と注意喚起を求めるようなものであってはいけないと思っております。そういう意味で、イノベーションとともに、利用者が安心して、規制の枠組みがどういうものかということなどを意識しないで使えるようなものであってほしいと思っております。今回ご提案のありました、実態に応じて横断的な規制をというあり方は望ましい方向ではないかと思います。

イノベーションはこれからもっと進むというお話でしたが、今の法規制ではカバーできないようなサービスが出てきたときに、消費者がそのサービスには規制がかかっていないからということで、トラブルに遭遇しても救済されないというようなことが起こることとも想定されますので、そういうことも考えますと、やはり、業の実態を見て、同じようなサービスを行うなら同じ規制でということが消費者保護の観点からも望ましいと思います。

考え方としては、同じような業を行うのであるならば、登録要件は揃えていただき、行為規制は共通のものをかけていただくということが望ましいのではないかと思います。

ちょっと早走ってといいますか、ちょっと焦りまして、登録という言葉を口走ってしまいましたが、金融商品取引法という法律が既にありますけれども、横断的な法規制をかけるということで画期的な法律だったと私は評価しております。特に当時は新しい事業がどんどん出てくる中で、既存の法規制では規制できないものが出てくることが予想された中で、プロアクティブに規制を整えていった意味でとても画期的なことだったと評価はしているのですが、金商法が施行されて、今振り返ってみますと、登録された事業者数が非常に多くて、第2種は1,200、例外的に届け出制とされたプロ向けファンドに関しては3,000を超えており、当局が十分に監督できる数なのか不安に思っております。

決済と金融商品取引業を同一に論じることは出来ないとは思いますが、先ほど登録の件数をお聞きしましたところ1,000を超えている業もあるということでした。私たち利用者が安心して利用できるように当局には監督いただいていると思うのですが、それが維持できるような件数というのも1つ大事な要素ではないかと思っております。免許制か登録制か、どちらがよいのかはわかりませんが、どんどん事業者が参入してくるのも経済発展には必要とは思いますが、間違ったことが行われていないように事業者を監督いただけるような枠組みづくりというものも、消費者保護の点からぜひお願いしたいと思っております。

以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。よろしいですか。

あとはいかがでしょうか。堀委員、お願いします。

【堀委員】

いただいた資料の中でご質問させていただきたい点がありまして、ちょっとお尋ねいたします。参考資料マル1の2ページ目、PISPについてのご指摘がございましたが、この部分につきましては、現在の日本で営まれている事業者のうち、どういった事業者がこれに該当するのか、それとも全く新しいサービスに関するもので、相当する事業者というのは現状ではいないということなのか、そのあたりをお伺いしたいと思います。現在、決済代行サービスが非常に広がっていると思いますけれども、ああいった、例えば商取引、オンラインショップなどウエブサイトで決済するというようなケースの場合に、クレジットカードが主流で、銀行に直接アクセスしてというような形態はないと思いますけれども、そういった取引に付随して決済が必要となるような場合に、直接決済指図などを介在して遂行するというようなサービスが仮にあるとした場合に、資金の引き受けまで行われるようなものが日本では想定されていると思うのです。拝見しますと、PISPについては支払人から資金を預かることは禁止ということになっておりますので、決済代行業者みたいな事業者は決済サービス事業者として規定されていて、そうではないPISPについては決済データのやりとりをするプロバイダーのようなものを指しているのか。現状でも銀行ではファームバンキングですとかアンサーサービス、いろいろなサービスを提供していると思うのですが、そういったデータのやりとりを行う現状の事業者もこのPISPみたいなものに相当することになるのか。そういったあたり、現状の日本のサービスに引き直してみて、どういった事業者が想定されているのかというのを少し教えていただければと思います。

【森下座長】

ありがとうございました。では、事務局のほうからお願いします。

【黒井総務企画局企画課信用機構企画室長】

先ほどのPISPの関係でございますけれども、日本でどれに該当するのかというところについては、私どもも全ての日本のサービスを把握しているわけではございませんけれども、堀委員からご指摘がございましたとおり、このPISP自体については口座を持たない業者ということで、顧客から情報を受け取りまして、口座を持ち具体にお金を動かす決済サービスの提供者に、その顧客から誰それに送金してほしいという情報を伝達する役割ということで、顧客との関係での窓口のような機能を果たす、そのような業務を行うプレーヤーが想定されているところでございます。それが具体的に日本のどの事業者が該当するかというところは、各事業者の実態なども踏まえて整理する必要があろうかと思いますけれども、抽象的にはそのようなプレーヤーを想定して、EU指令に規定されておるところでございます。

なお、口座を持って、そうした顧客との関係を、間を仲介するような役割については、別途、Account Servicing Payment Service Provider、ASPSPという別の事業形態が規定されておりまして、そうした事業形態に対する規制というのは別途、PSD2で規定しようとされておるところでございます。

【堀委員】

そうしますと、別途、決済口座を持って決済のやりとりを行う事業者というのはASPSPとして規定されているので、現状のPSDのこの決済サービス事業者には含まれないということになるのでしょうか。新しい概念として規定されることになるということでしょうか。

【黒井総務企画局企画課信用機構企画室長】

現状のPSDとの比較においてASPSPに対応する事業者が存在するかという点は、私どももEUサイドに確認をとったわけではございませんけれども、PSDの規定の中にも類するようなもの、読めるような規定がございます。そこに含まれていたものが別途取り出されたものなのかどうかというのは、EUサイドに最終的にPSD2がまとまった後で確認しないと明確には申し上げられないというところはございますけれども、少なくともPISPに関してはPSD2で新たに規定されたものと認識しておるところでございます。

【森下座長】

どうぞ。

【堀委員】

ありがとうございます。ここからは意見になりますけれども、基本的にはPSDのような法体系で、いろいろな役割に応じて、一つの法体系の中でどういった役割が担えるのか、またそれぞれに求められる規制というのが横断的に明らかになっていると思いますので、各国の法制度による部分もあるとは思いますけれども、こういった法体系を意識した形で日本の法制度が議論されるというのは望ましいことだと思いますし、全体を議論していくという最初の方針については賛成でございます。日本では電子マネー、前払式支払手段といっても、先ほどのような商店街が商品券を発行するようなケースから、譲渡可能で第三者への決済も可能とするようなものまで、また発行額もばらばらですし、非常に小さいところから大きいところまでさまざまな事業者があり、資金移動業者についても、その中でも小規模なものから大規模なものまで非常にありますし、グローバルな送金を可能とするものから一部地域限定というものもあるという中で、やはり規制間のディストーションが発生しているというのはご指摘のとおりだと思います。ただ、全体を横断的にといった場合にどうしても出てくるのが、商取引に付随するようなものについては今のように規制対象外でよいのかどうかですとか大きな問題もあると思いますので、一筋縄にはいかないのではないかと思います。もっとも、あるべき理想論を協議していくというのは非常にいい方向ではないかと思います。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。廉委員、お願いします。

【廉委員】

事務局の方で、きちっと整理していただき、ありがとうございます。

私は、いろいろな技術革新や新しいサービス等が登場しても、取扱業者が資金繰りで破綻することで問題が発生することは、昔も今も今後も変わらないと思っております。そこで、決済の場合、どういうときに破綻するのかと考えると、2つの軸があると思います。1つ目は、決済サービスだけを提供するのか、或いは信用供与、融資、貯蓄、投資といったサービスまでも提供するのか、の軸で、2つ目が、個人のみ、いわゆるCtoCと言われているようなものを取り扱うのか、法人が絡むのか、の軸であります。各業者がこの2つの軸で作られたマトリクスのどのサービスを提供するのかによって、業者のリスクは格段に異なると思っています。現状、新しく登場している決済サービスのほとんどはまだCtoCの段階なので、そう大きな事故は起こりにくいのではないかと思っております。しかし、法人も絡んだり、総合サービスを提供するとなると、リスクが高くなり、規制のあるべき姿というのは変わるんだろうなと思います。事故を防ぎ、破綻による顧客の被害を防ぐため、現状の銀行のような厳しい規制で対応するのか、別の規制が必要なのかということになりますが、別の規制や登録制、免許制の導入も大事ですが、今後のことは予想が難しいので、臨機応変に対応していくということが重要だと思っています。個人的には監督上の措置が非常に大事だと思っています。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、関委員、お願いいたします。

【関委員】

基本的な考え方で意見があるんですけれども、この資料の中にも記載されていると思いますが、この分野におけるイノベーションというのは非常に重要な話だと思いますので、そういったイノベーションの芽を摘まないよう、阻害しないような制度設計にぜひしていただきたいと思っています。海外の事業者におきましても決済サービスというのは非常にたくさん出てきておりますし、国際的な競争下に今後どんどんさらされていくということになると、日本の事業者のビジネス環境もそういったことを踏まえて、イノベーションが阻害されないような環境が必要だと思います。

そういう意味で、制度設計に当たっての考え方につきましては、リスクに応じた形でルールを決めていくというのを基本的な考え方とすべきだろうと思います。リスクに応じたルール化ということを横断的に適用するという考え方であれば賛成しますが、だからといって、法体系そのものを横断化すべきだというところまでは賛成しかねると思います。例えば、前払式支払手段で残高の最高額がせいぜい数万円程度のものと、100万円まで送金できる資金移動業、さらにはもっと大きな金額を扱える銀行、おのずとそのリスクというのは異なってくるというのが1つと、最近新しく出てきたサービス、たくさんございますけれども、それぞれにおいてリスクが本当に可能性としてどの程度高いのかということも含めて考えるべきだと思います。

非常に大きな枠組みを決める話だと思いますので、そのあたりは慎重に考えていただきたいと思います。

【森下座長】

いかがでしょうか。金沢さん、お願いします。

【金沢オブザーバー】

先ほどの戸村先生のご意見について2点申し上げたいと思います。供託に係るコストの低減のところで日銀ネットに関する言及があったと思いますので。

1点目は、スタディ・グループの第9回の会合でも私の前任の播本から同じ話をさせていただいておりまして恐縮でございますけれども、私ども日本銀行の当座預金をはじめといたします決済サービスの提供につきましては、日銀法の1条2項の「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保」という目的のもとに行わせていただいておりますので、日銀の当座預金ですとか、あるいは日銀ネットのアクセスの範囲につきましては、そうした法の目的を踏まえて考えていく必要があると思っております。

それから2点目、これは多少テクニカルな話になりますけれども、法務局への供託のお話がございまして、私ちょっと詳細は把握しておりませんけれども、国庫金として経理されているのかなと思っておりますので、その2点でございます。

以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょう。山上委員、お願いします。

【山上委員】

今日は基本的には法体系のあり方についての議論と認識しておるんですが、若干異なる部分かもしれないんですけれども、意見を申し述べさせていただきます。

1ページ目の3行目にありますが、「金融サービスの技術的前提が大きく変化している」というご指摘をいただいております。言葉をちょっとかえますと、ITの成長というのが法律の改正のスピードを上回ってしまうかもしれない事態というのが多分常に想定されるんだろうなと思っておりまして、法体系を考えるとともに、お客様というか、消費者を中心とするという視点を持って、かつ、公平、中立な立場から広く決済全般の動向をモニターして議論の場に上げていくような仕組みというんですか、それが法体系そのものを補完していくようなイメージなのかもしれませんが、そういうものが必要なのではないかと考えました次第です。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

松井委員、お願いします。

【松井委員】

今日は丁寧に議論をまとめてくださいまして、ありがとうございました。今後の法体系のあり方に関する6ページあたりの議論というのは、私は方向性として賛成でございます。それを踏まえまして、若干のコメントだけ申し上げたいと存じます。

包括的な横断的な法体系をつくるときに、その目的は何であるのかということをまず考えてみました。従前の法規制等を踏まえましても、結局、1つは利用者保護、つまり原因関係となる取引当事者等の保護等がまずあるのだろうと。ただ、決済の場合はそれだけではなくて、決済のするためのさまざまな複雑なシステムがございますので、そのシステム自体も保護の対象にならざるを得ないのだろうということで、大きく目的となるのはこの2つではないかと思います。これらは相互に密接に関連するわけですが。今回いただいたペーパーですと、業者が参入する、そして競争環境を整えていくという話がございまして、これがターゲットになっているのです。ただ、法規制をつくり上げるとなると、この業者自体が保護の対象になるというよりは、やはり業者はあくまでも規制の対象になるというべきですので、事業機会を適切に提供し、効率的に運営してもらうというのはもちろん一つの目的にはなるにせよ、この業者が保護の対象になるというわけでは多分ないのだろうと思いました。

このようにシステムと利用者の保護という観点から考えたときに、ではどういう規制のあり方があり得るのか。私もまだ整理ができているわけではないのですけれども、包括的、横断的に規制を考えるとなると、ある程度機能に着目して、あるいは実態のお金の動き方等に着目して規制をしていくのだろうと思います。例えばお金を預かるのか預からないのか。預かった場合にそのお金はどのように動くのか。預かったお金は業者にどれくらい滞留するのか。それから、実際に提供されるお金がどれくらいの額になるのか。このようなところに着目していくということになるのではないでしょうか。お金を預かれば当然利用者に対する保護の必要性は上がります。お金の滞留する期間が長くなれば保護する必要は上がります。あるいは預かるお金の額が大きくなればシステムにかかる負荷は高くなりますし、要保護性は上がります。いずれにしても、このような形で機能的に考えていくことになるのだろうと。そうしますと、実は現行の法規制は全体としてある程度は体系的になっていると申しますか、今のような機能に着目して規制の強弱がついている面があるのではないかという感じがしております。先ほどご指摘がありました、銀行のように、預かる額も大きくなり得るし、あるいは預かる期間も長くなり得るし、さまざまなサービスが付随的にできるというところになれば当然厳しい規制にならざるを得ないわけです。そうなりますと、包括的、横断的な法規制を考えるといっても、今回のペーパーにもありますけれども、まさにねじれが生じているところを探し出して、体系的に整えるということが中心になるのかなという感じがしました。

それと同時に、これは以前スタディ・グループのときにも少し申しましたが、為替取引の銀行法上の位置づけというのはやはりもう一度見直す必要があるのではないか、という感じがしております。つまり、為替取引は、それを営むことによって、その業者は銀行という位置づけを与えられてしまうのですけれども、為替取引自体が銀行という組織の性質決定をしているというのはなかなか今の状況では言いにくくなっているところもあり、これは一応検証の可能性はあるのかなという気がします。

さらに、このように機能的に見ていったときに、どのようなエンフォースメントの手段を設けていくかというのは、また体系的に整理していくということになります。これも、現行法でさほどねじれが大きく生じているとは私はあまり思いませんけれども、参入規制をどこまでかけるのか、資本規制や供託等の規制をどうかけるか、資金的な規制をどうかけるか。こういったことのマトリックスで包括的、横断的に規制ができるのではないでしょうか。中間的業者の話も、お金を預かるかどうか、扱う金額がどうか、そしてそれに合わせたエンフォースメントを考えていくとどうなるか等、このような形で整理ができるのではないか。感想めいた話で恐縮ですけれども、今日のお話を伺って以上のように思いました。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。古閑委員、お願いいたします。

【古閑委員】

私も先ほど関委員のほうから出たとおり、リスクに応じた規制の内容であるべきというところは賛成しております。仮に横断的な仕組みを目指そうという場合に、それがどこまでできるのかということ次第かなと思っておりまして、例えば今、資金決済法という1つの中にサービスとしては2つ入っておりますけれども、これについて、例えば資金決済法そのものではないですが、本人確認をどこまでやるべきかということについて、法律は1つですけれども、取り扱いが違っているということもあり、法律を1つにしてしまったからといって、リスクに応じた規制ということができないわけではないと思いますので、要は横断的なものにするか否かということと、それに応じて適切な規制をレベル観を持ってつくれるかつくれないかというのはおそらく分けて考えることができるんだろうと思ってはおります。横断的なほうがいいという点もやはりあるようには思っておりまして、まさにここのペーパーに今日まとめていただいたとおりだと思うんですけれども、何か1つサービスを提供したときに、お客様の利便性とかセキュリティとかいろいろなことを考えて、どんどん機能追加していくということはよくあります。その機能追加をするときに、これをやってしまうと別のこの法律に当たるのでということで、またその法律を一から読み直して、どんなことに気をつけなければならないのかというのを考え直さないといけないとかということは現場で起きておりますので、そこが、ねじれがそんなにたくさんあるとも私も必ずしも思わないですけれども、確かにねじれがある部分もあると思いますし、あまり理由なく、単に歴史的な背景によって、こっちの制度であればこういうことも決まっているみたいなものがあったりとかということもありますので、そこが仮に整理されるということなのであれば、確かに横断的にするということには意義があろうと思います。その場合には、繰り返しになりますけれども、きめ細かくリスクに応じて、一つの横断的なものだから同じレベル観のものを規制としてかけるということではなくて、きめ細かくリスクに応じて見ていくという作業をすることになりますので、作業的には結構大変なことになっていくと思いますけれども、そういった意味でよしあしあると思っております。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょう。お願いいたします。

【池田総務企画局長】

済みません。あまり事務局がお話しするのはふさわしいことではないんですけれども、先ほど松井先生からあった点について、機能に着目する、あるいはいろいろな方から出ているようにリスクに着目してルールを考えるというのはご指摘のとおり大事なポイントだと思っていまして、その上で、松井先生からあったように、今の体系も一つの機能ごとになっているんじゃないかと、それで多少おかしいところを直すということで対応ができるのではないかというご趣旨のようにとったんですけれども、例えばこの討議資料で、一例で言いますと、2ページ目の一番下にあるような例で言いますと、結局、銀行法に加えていろいろな機能ごとに法律が違う枠組みであるがために、例えばこの4番目の丸のケースがもし我が国で行われれば、これはプリペイドカード法の登録、それから資金決済法の登録、それから貸金業法の登録という3つの登録がおそらく必要になりますが、3つの登録でできる。その機能は、ここに書いてあるとおりだとすると、銀行がやっている機能とほとんど変わらない機能提供が可能になるかもしれない。そういう場合に、違う法律をまたぐと、通常の体系では登録がそれぞれ個別に必要で、3つ登録が必要ではあるが、3つの登録と1つの免許というのは、そこはかなり質的違いがある。こういうようなものへの対応を考えたときに、現行の、機能が違うと法律の立て方から違ってくるということで、果たして対応ができるのかどうかというのは、我々、こういうサービスが日本で仮に広く行われるとしたときに、今の体系で対応できるのかというのは一つの気がかりな点であるということを、ちょっとご教示いただければと思っています。

【森下座長】

ありがとうございました。

まだ時間もございますけれども、何かご発言はございますでしょうか。長楽委員、お願いいたします。

【長楽委員】

前払式支払手段発行者と資金移動業者の実態を踏まえた検討をお願いしたいということでお話しをさせていただきます。先ほど金融会社室長からお話しがございましたように、前払式支払手段発行者は約1,800社ございますが、商店街等各種組合の前払式支払手段発行者が数百者となっているなど、中小・零細の事業者が非常に多いというのが現状でございます。また、資金移動業者につきましても42社ございますが、規模の大きな事業者もございますが、規模が小さい事業者が多く、1回あたりの送金限度額100万円以下という制約の中で、個人向けを中心に少額の送金を行っているところです。前払式支払手段も概ね入金限度額を数万円とし、商品購入等の小額決済に利用されております。このように前払式支払手段発行者や資金移動業者が営んでいる業務の実態からみるとリスクは銀行等と比べて大きくないと思っております。前払式支払手段発行がで破綻等した事例を見ても、一部の事業者を除き、基本的に発行保証金の還付はなされているという実態がございます。仮に、銀行等と同様な横断的な規制の枠組みのなかで、同じような規制を行うということになれば、小規模事業者の方は事業が継続できないということが想定されます。業界の実態やリスクの程度等を十分に踏まえた検討が行われるようお願いいたします。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。では、翁委員、お願いいたします。

【翁委員】

横断的な考え方で規制を考えていくということでございますが、私はイノベーションを進展するという方向にそれが作用するのである限り賛成でございます。特にディストーションをもたらさないということとか、あとさまざまないろいろなビジネスができるだけ漏れのないように法体系の中に入っていくということは非常に、横断的という言葉の中に入る重要な意味だろうと思います。ただもう一つ気になるのは、印象として、横断的と言ったときに規制のレベルがどういうレベルになるのかというところのイメージがちょっとつかめない、横断的という言葉ではちょっとつかみにくいというところがありまして、それはやはりビジネスモデルによって相当異なるし、あと、ほかの方もおっしゃっておりましたけれども、規模とか、これから大きく発展していくところがシステミックに重要になってくれば、それは非常に重要、見ていかなければいけないと思うんですが、非常に小さい業者もいる中で、そういったいろいろなビジネスモデルがございますので、それによって異なってくるだろうということはそのとおりなのではないかと思っています。

例えば資本規制がございますけれども、資本規制につきましてはビジネスモデルによって相当異なるものだろうと感じております。例えば前払式のプリペイド業者でも、商品券、紙でやっているところと、それから非常にFinTechの最先端のところではオペレーショナルリスクの規模も全然違いますので、それはそういったビジネスモデルによってというか、リスクによって異なってくると。そういう組み合わせというのはとても重要な視点だと思いますし、それから、ここでは決済、EUのご紹介のところは決済のところだけなので、おそらく、先ほど戸村委員もおっしゃいましたけれども、自己資本比率というよりは供託のところのほうが意味を持ってくる重要な規制だと思うんですが、やはりこれに資金仲介が加わってくるとまた別で、やはりそれに応じたリスク、組み合わさってくると、それに応じてどういうふうにそこを組み合わせて見ていくかという視点が大事になってくると思います。

ですから、横断的規制という意味に込められている、ディストーションをもたらさない、漏れがないようにする、イノベーションを進展するという意味は非常によく理解できるんですが、ビジネスモデルの違いとかリスクというのを少し立体的に考えていく必要があるような印象を受けました。

以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、鳥海委員。

【鳥海委員】

ありがとうございます。イノベーションですとかビジネスを展開なさる上で横断的な規制の体系というのはおそらくフレンドリーなんだろうと思いますし、それから、規制をなさる立場からも、ある種そのほうがよろしいという面もあるのかもしれないんですが、消費者というか、金融サービスを使う立場に立った場合のことを少し考えてみたんですけれども、そういう意味では私どもの業界としての立場というよりは、そういった消費者のユーザーとしての立場から見た場合に、例えば今銀行も固有業務というのは3つございますけれども、個々の銀行に対しておろされている銀行免許の中身というのはおそらくかなり区々であって、ある銀行については限定免許、要は貸し金は実質的にはやらないと、預金と送金だけやるとかいったケースもあるやに聞いておりまして、そこの中身は実はユーザーには見えない。免許の中身は見えないと。ただ、そこは銀行法では、銀行は銀行と名乗らなければいけないし、銀行でないものは銀行と名乗ってはいけないということになっておりますので、それが非常にシグナルとして、信頼感というか、信用秩序の観点から、銀行というのはおそらく安定的な業態なんだろうというシグナルを送っていると思います。横断的な規制を入れた場合でも、規制のかかりぐあいというのが業態によって度合いが違うと思いますので、何かそれがユーザーにわかるようなシグナルみたいなものが何らかの形で発せられるような体系にしていったほうがよろしいのかなということを少し考えた次第でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、松井委員、お願いします。

【松井委員】

たびたび申しわけありません。先ほど池田局長からボールをいただきましたので、若干のコメントだけしたいと存じます。先ほどの2ページの決済業務の機能進化と総合化の4つ目の丸、このようなものが果たして現行の法体系の枠内だけで対応できるかどうか、あるいは質的に何か体制が変わってくるのか、こういった話になろうかと存じます。私自身も現時点で何か定見があるわけではございませんけれども、原則はやはり先ほど申し上げたように、機能ごとの規制を考えていったほうがいいのだと思います。ただその機能の中で、先ほど少し申しましたとおり、預かったお金がどのように利用されるかによってやはりリスクが変わってくる場合はあり得るかもしれないと。例えば電子マネー等で受け入れている資金が融資業務に回されることによって事業者のリスクが質的に変わると、あるいはお金の出し手に与える影響が質的に変わり得るというようなことがあれば、それは資金を受け入れる行為と貸し付ける行為はやはりセットで規制として考えなければいけないということになるのかもしれない。そこはまだわかりません。いずれにしましても、機能的な分析の中で、先ほどほかの委員の方からもありましたように、リスクのあり方がどう変わるのかに応じて規制は変えなければいけないということです。これは結局、現在の銀行法が預金の受け入れと貸し付けをあわせ持つものを銀行として厳格な規制をかけているわけですけれども、このことの意味とあわせて考える必要があるのかもしれません。いずれにしましても、そのあたりは今後、リスクの質的な状況を見ながら検討することになるのかなというのが現時点での感触でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでございますでしょうか。

それでは、ほかにご発言がございませんようでしたら、討議を終わらせていただきたいと思います。本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、引き続き検討を進めていきたいと思います。

それでは最後に、事務局のほうから連絡事項等がございましたら、お願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私から日程につきましてご連絡を申し上げます。次回のワーキング・グループにつきましては、10月に開催したいと考えております。具体的な日程につきましては、個別に委員の皆様方のご都合をお伺いして、ご都合を踏まえた上で、討議内容とあわせて後日私ども事務局からご案内させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【森下座長】

それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3684、3582)

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