金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」(第3回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年11月4日(水曜日)16時30分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【森下座長】

それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」第3回会合を開催いたします。皆様ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

初めに、本日、参考人としてお越しいただいている方々について、事務局よりご紹介をお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

事務局よりご紹介を申し上げます。本日、参考人として2名の方にお越しいただいております。

田中委員のお隣にお座りいただいておりますが、まず株式会社全銀電子債権ネットワーク代表執行役社長、諸江様でございます。

【諸江参考人】

どうぞお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

そのお隣に、株式会社みずほ銀行ストラクチャードファイナンス営業部次長、太田様でございます。

【太田参考人】

太田です。よろしくお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

ご紹介は以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は、事務局より討議資料「ホールセール分野における課題等」について、まずご説明をいただき、討議を行いたいと思います。

それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

引き続きまして、私のほうから討議資料について、ご説明を申し上げます。お手元に討議資料(2)「ホールセール分野における課題等」と表紙に記載されたA4の縦紙が配付されているかと思います。本日はホールセール、いわゆる企業向けの決済に関することを中心にご議論をいただきたいと考えております。

まず表紙を1枚おめくりいただきたいと思います。今回の資料、全体で大きく3部ほどの構成になっておりまして、最初にこの「企業グループにおけるキャッシュ・マネジメント等を巡る動向」、これまでスタディ・グループなどでの議題を通じて、最近の動向について把握されたもの、それをまとめて記載をしております。

それ以降、キャッシュ・マネジメントの高度化等に向けた課題、また、電子記録債権についてということで、大きく1、2、3の3つの項目にわたりまして、全体7ページで記載をしております。

まず1ページのところ、順にご説明を申し上げます。

最初に「企業グループにおけるキャッシュ・マネジメント等を巡る動向」としまして、最初が(1)として、キャッシュ・マネジメントの高度化等に向けた動きでございます。近年、企業の国際展開の加速やグローバルなサプライチェーンの深化、また、企業のグループ単位での経営管理の広がりに伴い、キャッシュ・マネジメントの優劣が企業競争力の重要な要素となってきている。そうした認識のもとで、企業グループにおいて、より高度な戦略的なキャッシュ・マネジメントが志向されている。具体例としまして、「例えば」と書いております。スタディ・グループのヒアリングなどでもご紹介をされておりましたが、例えば単なる財務コスト削減を目的とするにとどまらず、グループ全体の為替ポジションを把握して為替リスクの管理に活用したり、また、余剰資金を集約することによってM&Aなどの戦略投資の可能性を拡大する。さらには、グループ内企業、特に海外子会社も含めた資金管理を行うことで、財務面からグループ内のガバナンスを強化するといった動きもある。

このような高度化の要請に応じ、キャッシュ・マネジメントの手法も発展を見せている。方向性として幾つか例を書いておりますが、例えば、企業グループ内での金融子会社の設置などに見られる「集約化と専門性の強化」。あるいは単にグループ内での資金管理を行うのみならず、事業譲渡の交渉のツールとして、グループを離れた企業に対して、一定期間融資を提供するなど、キャッシュ・マネジメントの形態の「多様化」といった傾向が挙げられる。このような傾向は、今後より一層進展していくと見込まれるのではないかということでございます。

続きまして、(2)として、銀行等、金融機関によるキャッシュ・マネジメント・サービスの発展でございます。

こうした企業によるキャッシュ・マネジメントの進化に伴って、主に海外で急速な発展を遂げているのが、銀行等によるITを活用したキャッシュ・マネジメント・サービス、CMSと略称しておりますが、CMSの分野である。特に、決済スタディ・グループの「中間整理」でも示されているように、欧米の主要銀行においては、CMSを経営戦略の柱の一つと位置づけ、顧客ニーズを踏まえつつ、先進的なサービス展開を進めている。これら欧米の主要銀行におけるCMSの高度化は、銀行のIT投資の戦略化が大きな原動力となっている。このようなCMS高度化の進展は、欧米企業等の競争力にもつながっている面がある。

同時に、欧米等では、銀行以外のプレーヤーにより、複数の銀行にまたがるネッティングなど、新しいキャッシュ・マネジメント関連サービスが提供されている。そこにおいては、IT企業等が重要な役割を果たしており、比較的自由度の高いシステム基盤も活用して、IT分野の技術革新を取り込みつつ、先進的サービスを提供している。また、リテール分野同様、これらIT企業等と銀行の連携・協働も活発である。

続きまして、2としまして、キャッシュ・マネジメントの高度化に向けた課題でございます。

最初に(1)として、各種規制の適用関係でございます。企業グループ等がこうしたキャッシュ・マネジメントの高度化、国際化等を図るに当たって、企業グループ内での資金移動や資金の融通について各種規制が適用されることが制度的な障害要因となっているとの指摘がある。

具体的にこの貸金業法の話を次に書いております。貸金業法は、資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的とするものであるが、企業グループのキャッシュ・マネジメントに係る貸金業法の適用関係について、これまでも、例えば、昨年、平成26年の政令改正によって、企業グループ内での貸し付け、具体的に括弧で書いております。親会社と実質支配力基準、議決権は最低40%以上を親会社が持っているような子会社で構成される企業グループ内での貸し付け、これがまず貸金業法の適用除外。具体的には貸金業法の適用を受けますと、貸金業法に基づく登録の義務があり、また、いろいろな書面の交付ですとか、資金需要者に対する保護のためのこういう規制が課せられておりますが、企業グループ内のこうした一定の要件にはまる間での貸し付けについては、昨年の政令改正で適用除外としております。

もう一つのカテゴリーとしまして、合弁会社の株主から合弁会社に対する貸し付け。これも適用除外とし、具体的にこの括弧で要件が書いておりますが、全株主の同意があって、なお、貸付会社が、貸し付けをする会社が合弁会社の議決権の20%以上を有している場合については、最近この合弁会社を設立することによって、いろいろなプロジェクトを進めていこうという動きがある。そこにも着目し、こうしたケース、2つのケースについては、貸し手及び借り手となる会社間に経済的な一体性が認められることなどから、適用除外とするといった対応が図られてきたところでございます。

他方で、上述のとおり、近年、キャッシュ・マネジメントの高度化・多様化が進展している中にあって、各種規制の適用について、追加的に以下のような点について検討する必要があるとの指摘があるが、どう考えるか。

次のページ、3ページ目に2つ黒丸をつけて記載をしております。

最初のところでございますが、まず企業グループ等において、キャッシュ・マネジメントの専門性・統合性の強化を図るべく、グループ内に金融子会社を置いて、そこをトレジャリーセンターとして位置づける動きが拡大しております。

その中で、先ほど申しましたように、現在、合弁会社株主から合弁会社への貸し付けは、一定の20%以上を保有するなどの要件がございますが、これは貸金業法の適用除外となっているが、合弁会社に対して、合弁会社株主の100%子会社、すなわち、例えばグループ内でいろいろなキャッシュ・マネジメントを集中的に行っているような金融子会社、こういったところから貸し付けを行うニーズも示されている。100%子会社については、親会社との経済的一体性が認められることもあり、貸金業法の適用除外としてほしいとの要望があるが、どう考えるか。

2つ目でございます。近年、企業同士が連携・協働する際に、協力関係の一形態として、融資など、ファイナンス関係の措置を活用する動きが広がっている。例えば、事業再編によって、グループ内の企業を売却する際に、当面の資金繰りを売却元が手当する「つなぎ融資」が条件となっているケースがある。こうした場合について、貸金業法の適用除外としてほしいとの要望がある。こうした事業再編などに伴う「つなぎ融資」について、売却後の一定期間、貸金業法の適用除外とすることについて、どう考えるかということでございます。

次の点、(2)として、邦銀のCMS高度化についてでございます。キャッシュ・マネジメントが企業競争力の重要な要素となる中で、上述のとおり、欧米の主要銀行においては、CMSの高度化が進んでいる。これに対して、邦銀のCMSについては、人的サポートなどは充実しているとの評価があるが、例えばグローバルに一元化されたプラットフォームの提供や複数通貨をまたがるネッティング機能など、先進的サービスについては、欧米の主要銀行の取り組みが先行しているとの指摘がある。

こうした状況に鑑みれば、邦銀、特に主要行においては、海外拠点や海外現地日系企業のニーズも十分に汲み取りつつ、CMSの強化に向けて、CMSの経営戦略上の位置づけを明確にするとともに、今後目指されるべき具体的なCMSの水準や取り組みが示されることが期待されるのではないかということでございます。

次のページ、4ページにお進みください。次の項目としまして、外為報告の関係でございます。企業活動の国際化がより一層進展する中、我が国企業においても、国際的な資金の移動を含むグローバルな財務管理の効率化への要請がさらに強まっている。特に、企業財務における迅速化・効率化においては、取引に関する事務処理をできる限りSTP、ストレート・スルー・プロセッシングと言われる、手作業はなしに、全てコンピューター処理を行うという、取引一連をコンピューター処理するということでございますが、STP化することが重要であり、そのために企業や銀行等においてさまざまな努力が重ねられている。

他方、一定規模以上の対外的な支払い等をした場合、外国為替及び外国貿易法、外為法と略称されておりますが、この外為法に基づき、取引の当事者となる企業に対して、財務省令が定める様式及び手続に従い、財務大臣に報告書の提出を行うことが義務づけられております。

決済スタディ・グループの審議において、例えば、企業の銀行を通じた国際送金等の実務フローとこの外為報告をより一体的に行うことができないか。また、企業の実務は多様であるにもかかわらず、報告の様式や方法が限定されていること、並びに、グループ企業の財務管理については、基本的にはできる限りネット化、純額化していくことが効率的とされているにもかかわらず、資金決済自体は形式的にはグロスで行われているため、グロスの報告が求められていることなど、外為報告が、我が国企業の財務管理の効率性等の障害となっているとの指摘がございました。

こうした指摘を踏まえ、決済スタディ・グループの「中間整理」においては、企業がグループ内やクロスボーダーで資金管理や移動を行う場合、障害となる制度的な要因があれば、それらについても検討を進めることが重要とされたところであります。

他方、この外為法については、その目的である対外取引の正常な発展や国際収支の均衡及び通貨の安定を図るための手段として、国際的なスタンダードにも基づいて、財務大臣に国際収支統計や対外資産負債残高統計などの作成を義務づけているものでもございます。

外為報告は、こうした統計の作成や対外取引の実態把握のために必要不可欠なものである。また、その報告の様式や方法については、企業サイドの実務の要請と同時に、事務を取り扱う日本銀行や報告書の提出に関わる金融機関の実務や事務負担も考慮する必要がある。

次のページ、5ページにお進みください。こうした要請にも留意しつつ、例えば、電子的な方法での報告の拡大や企業財務上でネッティングの趣旨から行われる資金移動の外為報告上の取り扱いの合理化など、CMSの高度化の動きを踏まえた合理化が検討できないか。

続きまして、電子記録債権についてでございます。

(1)としまして、電子記録債権を巡る状況でございます。商取引の電子化が進む中、企業サイドでは債権管理の電子化・ペーパーレス化への要請が高まっている。さらに、特に中小企業においては、担保によらないファイナンス手法として、債権流動化による資金調達をより円滑かつ安全に行うことについて、高い期待がある。こうした企業サイドのニーズを踏まえ、平成20年に電子記録債権制度が導入されました。これにより、売掛債権等の指名債権とも手形債権とも異なる新たな類型の電子的な金銭債権の制度が創設されたということでございます。

この制度導入以降、これまでに4つの電子債権記録機関が設立され、電子債権記録機関への利用者登録は順調に拡大している。また、この電子債権のメリットとしまして、電子記録債権が分割可能である、また、高い流動性を持ち得るような制度とされていること。手形と異なり、取り立て手続が不要で、支払い期日に自動的に口座入金される特徴を有するなど、利用者にとっては利便性が高い制度となっている。

続きまして、(2)で、一方での課題でございます。しかしながら、でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)における足元の発生記録請求件数、これは新たに電子記録債権を発生させるという請求件数ですが、これは当面の目標を下回っており、十分な普及には至っていない。特に、本年上半期には、一時的ではありますが、電子記録債権の発生件数・金額ともに減少に転じるなど、伸び悩んでいる面がございます。

また、電子記録債権制度は、事業者の資金調達の円滑化を図る観点から、債権流動化による中小企業金融の円滑化を図ることを基本的な目的としている。他方で、そうした債権流動化による資金調達の円滑化での利用について、金融機関及び企業サイドのいずれからも、でんさいネットの活用が十分に進んでいないのではないかといった指摘がある。

電子記録債権の普及、また特に債権流動化による資金調達の円滑化を促進する観点からは、以下のような、法制・実務両面にわたる対応が必要ではないか。

以下、幾つか黒丸をつけて項目を記載しております。

まず最初の黒丸のところでございます。現行制度では、複数設立されている電子債権記録機関間で電子記録債権を移動させることは想定されていない。このことが、電子記録債権の流動化の妨げとなり、特に中小企業が電子記録債権を譲渡して、資金調達を行うことを難しくしているとの指摘がある。

ついては、制度上、電子債権記録機関間で電子記録債権を移動させることができるよう、債権者等の請求によって、電子債権記録機関の記録をほかの機関の記録原簿に移行するための手続などを整備することが考えられるのではないか。あわせて、4つの電子債権記録機関の相互接続に向けたシステム上の対応方法等について検討を進めることが考えられるのではないか。

次の項目でございます。でんさいを利用したファクタリング・サービス。その後、括弧をつけておりますが、債務者の信用に基づいて、金融機関が企業の売掛債権等を買い取ることで、支払い期日前の資金化を可能にするサービスのことでございますが、このファクタリング・サービスについては、企業サイド及び金融機関の双方において、高い期待がある。しかしながら、現行では、債務者側の取引金融機関と債権者側の取引金融機関とが異なるような場合、債権者側の取引金融機関が債務者の信用情報を有していないため、ファクタリング・サービスを利用して、電子記録債権を利用した資金化が困難であるとの指摘がある。でんさいを利用したファクタリング・サービスが拡大すれば、電子記録債権の普及につながるとともに、制度の中核的趣旨でもある債権流動化を通じた資金調達の円滑化に資することが期待される。こうしたことを踏まえれば、債務者情報の共有に係る課題に対応した、でんさいを活用したファクタリング・サービスのスキームについて、でんさいネットと各金融機関等において検討を進めていくことが考えられるのではないか。

その次の項目でございます。現在、公的機関の支払いに際して、電子記録債権は活用されていない。このことについて、公的機関がその事業等において、受注企業に対して電子記録債権を発生させれば、この企業の資金繰りの円滑化とともに、電子記録債権の普及促進に効果的であるとの指摘があり、地方自治体において、その事業等に対する支払いに際して、電子記録債権の活用を促すことが重要な課題となっている。

その際、例えば中間前金払方式ですとか、あるいは出来高部分払方式によって、事業代金の早期支払いのための手当がなされている分野、これは公共事業などでこういう手当がなされている分野がございますが、こうした分野以外について、特に電子記録債権の導入による支払いの早期化等に対し、高いニーズがあることが想定される。こうした分野について、地方自治体への働きかけを強化していくことが考えられるのではないか。

最後の項目でございます。我が国の電子記録債権制度は、ITを活用して、電子的な手続で債権を発生させ、譲渡を行うことを可能とする制度として、世界的に例がなく、金融・IT融合の動きの中でも先駆的な取り組みとなる可能性がある。特に、アジア諸国において、電子記録債権制度の導入に関心が示されている。我が国が今後、金融・IT融合の動きの中で、先進性を確保していくためにも、例えば、多数の我が国企業が展開するアジアの主要振興国において、電子記録債権制度導入の具体的な事業化に向けた取り組みを展開していくことが考えられるのではないか。

以上、討議資料、若干駆け足となりましたが、事務局からの説明は以上でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いいたしたいと存じます。いかがでしょうか。

それでは、諸江参考人、よろしくお願いします。

【諸江参考人】

全銀電子債権ネットワーク、諸江と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

電子記録債権について、本日の討議内容には、技術的にご理解いただきづらい部分もあると考えまして、資料を用意させていただきました。お手元にあります資料2というものになります。貴重なお時間をいただきましたことをお礼申し上げます。

それでは、資料2の中ほどをごらんいただきたいと思います。大手企業などの支払企業と、中小企業などを含む納入企業との間の決済手段として、従来から、マル2の手形、それから、マル3の売掛債権などがあります。それにかわる決済手段といたしまして、法律の施行以後、マル1、それから、マル4のような電子記録債権が追加されております。

電子記録債権でございますが、左側の全銀協によるでんさいネットスキーム、それから、右側のメガバンク3行による個別行スキームというもので取り扱われているのが現状でございます。

まず左側のでんさいネットスキームのほうをごらんいただきたいと思います。ここでは、図のA、B、C、Dという銀行でございますが、こちらの銀行など、全国575の金融機関が窓口金融機関ということで、でんさいネットの利用者から記録請求を受け付けているということでございます。

マル2の手形、これを代替することを主な目的として設立されているということでございます。でんさいネット稼働以来、メガバンク、それから、全国の地方銀行も含めた金融機関によって、利用に関する促進活動というのを行っております。でんさいネット上の電子記録債権の件数は伸びてきているものの、依然として、マル2の手形の枚数の4%程度しか電子記録債権へ振りかわっていないという推計がございます。言いかえれば、96%は従前のとおり、手形のままということになります。

中小企業などの納入企業の資金調達の観点からつけ加えさせていただきますと、でんさいネットスキームで納入企業が早期資金化を行う場合、図の中のマルイというところでございます。このマルイのとおり、C銀行というのは、納入企業の信用に基づいて与信判断を行い、割引を行うということになります。その割引の金利は、納入企業の信用の度合いに応じた水準になります。

次に、右側の個別行スキームのほうをごらんいただきたいと思います。こちらは支払企業と個別行とが、いわば協働して支払企業を基点とする商流にある企業群に対して提供しているファクタリングということになります。ファクタリング・サービスとは、納入企業が受け取りましたマル4のほうの電子記録債権を、先ほどとは異なりまして、大手企業など支払企業側の信用に基づいて金融機関やファクタリング会社が買い取るスキームであります。

この図でいいますと、B銀行が支払企業の信用で与信枠を設定しまして、その枠内であれば、マル4の電子記録債権を100%買い取る形になります。一般的には、納入企業のお客様にとって有利な比較的安い金利が適用されます。

先ほど金融庁様からご説明ありました討議資料の中の6ページの2つ目の黒丸のところでございますが、「でんさいを利用したファクタリング・サービス」という記載がございまして、ご説明いただいたところでございます。こちらは今申し上げたようなファクタリング・サービスにつきまして、でんさいネット上においても提供できないかという論点であるというふうに伺っております。

また、討議資料の同じページの1つ目の黒丸の部分に、電子債権記録機関間で電子記録債権を移動させることは想定されていない。このことが、中小企業が電子記録債権を譲渡して資金調達を行うことを難しくしているという記述がございます。こちらのほうは、お手元の資料2のほうをごらんいただきますと、波線で書いたマル7マル8の矢印部分。すなわち、納入企業が電子記録債権を他に取引をしているC銀行で割り引くことを希望するケース、それから、記録機関をまたいで、二次納入企業に譲渡支払いを希望するケース、こういったものをイメージした記載であると理解しております。

このマル7とかマル8のケースは、現在存在していないものでございますので、定量化というものは困難でございますが、類似のニーズに基づくケースといたしまして、納入企業が電子記録債権を二次納入企業へ譲渡して、支払いに利用するという図の中のマル6のような、いわゆる回し手形的に利用されているものがございます。既に個別行スキームにおきまして、可能となっているものでございますが、その利用件数は、支払企業が振り出したマル4の電子記録債権のうち、2%程度というふうにお伺いをしております。

なお、最後に付言させていただきますと、でんさいネットと個別行のスキームとでは、手形代替とファクタリング・サービスという異なるニーズへの対応を目的としております。

討議資料の中で、相互接続というところにつきまして、その意味するところについては、具体的な言及はございませんようでございますが、仮に相応の互換性を持たせるということでございますと、記録機関間におけるシステム要件やルール規定の相当程度の統一、また、転々流通したことの記録を記録機関間でリアルタイムで共有する手当、こういったことなども検討の課題になろうかと思います。

さらに、利用者との契約変更、場合によっては、利用者とのシステムインターフェースの変更なども必要となる可能性があると。こういった指摘もあることは申し添えさせていただきたいと思います。

以上、何点かご説明申し上げましたが、でんさいネットといたしましても、電子記録債権の普及、そして、債権流動化による資金調達の円滑化を促進するという、この2点につきましては、いずれも極めて重要な課題と認識しております。これまでも各金融機関並びに金融庁様ともさまざまな施策を試行錯誤しているところでございます。この2つの目的に向けまして、今後のアクションプランへとつながり得る幾つかの選択肢を本日ご議論いただくことは、大変ありがたいものと考えております。

以上、簡単ではございますが、説明を終わらせていただきます。ご清聴どうもありがとうございました。

【森下座長】

ありがとうございました。

それでは、ご発言、ほかの方、いかがでしょうか。それでは、田中委員、お願いいたします。

【田中委員】

田中でございます。この議論のところで、最初にCMSの話がございまして、それから、この電子記録債権とありまして、ちょっと私、お話ししたいこと、両方ございますが、今せっかくでんさいの話が出ましたので、2点ほど申し上げたいことがございます。CMSにつきましてはまた別途ございますので、そのときにまたお話ししたいと思います。

1点目なんですけれども、この6ページの1つ目の黒丸のところですね。今、参考人のほうからもご説明がありましたが、この複数設立されている電子債権記録機関間で、電子記録債権、これを移動させることが想定されていない。これが流動化の妨げとなって、中小企業が電子記録債権を譲渡して、資金調達を行うことを難しくしているとの指摘があるということがあります。しかしながら、私どもでは、先ほど諸江参考人のほうから説明がございました、このペーパーですけれども、例えば個別行スキームのところで申しますと、この右のロのところ、「支払企業信用で買取」というところに当たりますが、ここにつきましては、この支払企業の信用力に基づいた買い取りということですので、基本的には、これについては、もう当初された枠の範囲内で、これは100%対応しております。しかも、一般的には、これについては納入企業の信用力で割り引くよりも、この大企業を中心とする支払企業ですので、金利面についても有利な条件でございます。

したがいまして、この中小企業の資金調達という考え方から、観点からいたしますと、現在の個別行スキームというのは、これは非常に有効なものであると私どもでは考えておりますし、今、参考人から、ポテンシャルには、この点線である7番、8番というのが一つのイシューとなるという説明もございましたけれども、基本的には、7番、8番に行かなくても、100%、割引については対応しておりますので、そういう意味で、ここにあります資金調達を行うことを難しくしているというご指摘については、若干私どもとしては違和感、個別行スキームを提供している銀行、それから、地方銀行等も含めた全銀協としては、ここのところ、若干ちょっと違和感というものを感じます。

それからあと、全体のところでございます。全体のところで、今回の目的につきましては2つございます。電子記録債権の普及、それから、債権流動化による資金調達の円滑化、これが大きな2つの目的であると理解しておりますし、その点については大いに賛同するものでございます。

資金調達円滑化につきましては、ここで、6ページの2つ目の丸のところですね。これにつきましては、でんさいネットを利用したファクタリング・サービスを促進することによって、一つの有効な対応策にはなるのかなと考えておりますし、実際、一部、銀行、地方銀行などにおいて、こうした取り組みを準備しているところもあるというふうには伺っておりますので、私どもとしてもそうした動きについては積極的に賛成いたしますし、サポートしてまいりたいと思います。

それから、電子記録債権の普及ということについて申し上げますと、先ほどの参考人の話にありましたが、96%の手形がそのまま残っているということですので、引き続き、この電子記録債権に変えていく対象というのは山ほどあるということでございます。したがいまして、今後、でんさいネット様、それから、各金融機関において地道な促進活動、これを行ってきましたけれども、それを継続する所存でございます。

それから、3つ目の黒丸のところで、公的機関の支払い。これにつきまして、電子記録債権の利用促進ということもございましたけれども、それについても一つの重要な施策となり得るものだと思っておりますので、大いに賛同いたします。

以上からすると、この施策として期待される効果等も含め、このでんさいネットを利用したファクタリング・サービスということと、それからもう一つは、この公的支払いにおける電子記録債権の利用促進と、こういう2点にフォーカスを当てて、このワーキング・グループとしてアクションプランというのを考えていってはいかがかなというふうに思っております。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。いかがでしょうか。

田邊委員、お願いします。

【田邊委員】

今のでんさいネットについてですが、むしろわかっていないので、ご質問ではありますが、納入企業のほうからは、ファクタリングをしたいというニーズと、従来のこの割引ですね。納入企業の信用で割り引く、2つの資金調達方法があって、それなりに特質があるんだと思いますけれども、それを企業によって使い分けていると。2つのオプションがあることがきっと重要なんだろうなと思いますけど、2つのオプションが1つのシステムではもたらされていないということだと思うんですね。

ちょっと話は飛んでしまいますが、手形が96%、まだ残っているというご説明がお2人からあったんですが、そもそもその真の原因はどこなのかということについての分析をお聞きしたいなと。やっぱりシステムが4つあって、全部導入する企業もあろうかとは思うんですけれども、中小企業にはそれなりの負担があるので、支払企業と納入企業が同じシステムを持っていないということが大きな原因なのかなと思うんですが、いずれにしても、その96%残っているものの原因分析をお聞きしたいなと思いました。

最初に言ったことにまた戻ってしまいますが、両方の資金調達が1つのシステムでできればいいんだろうというふうに単純には思ったわけなんですが、そのときにこのでんさいネットスキームの中では、この絵でいけば、A銀行が支払企業の信用情報を持っているでしょうから、何らかの形でC銀行ではなくて、A銀行が割り引けるような仕組みをでんさいネットスキームの中でつくっていくとかいうようなことが可能かどうか。それはちょっと相互接続とはまた違う話になるのかもしれませんが、そういうことで、でんさいネットの中でファクタリングができるということがちょっと現実的かどうかということもお聞きしたいなと思いました。

【森下座長】

ありがとうございました。

これについては、よろしいですか。では、諸江参考人、お願いいたします。

【諸江参考人】

それでは、お答え申し上げます。まず1点目、現在、96%程度の手形がまだ切りかわっていないという原因分析という点につきましてご説明いたします。我々、でんさいといたしまして、企業様へのヒアリング等を通じて、幾つか把握している点がございますので、ご紹介をさせていただきたいというふうに思っております。

まず、手形からでんさいに切りかえるということは、企業様の決済手段を切りかえるということになりまして、これは自身の取引先も同時にでんさいの利用契約をして切りかえていく必要があるということで、対応が進むまで、まだちょっと様子を見ているという現状があります。そういった企業様が比較的多いということが1点でございます。

それから、もう1点でございますが、全ての取引先との決済手段が同時に変わるわけではないということで、言ってしまえば、手形、売掛金、電子記録債権が併存してしまうというところがでんさいに切りかえていくことを躊躇する要因の一つになっているということもございます。

それから、手形からの切りかえのメリットでございますが、印紙代とか、保管、郵送コストの削減メリットというものも言われております。これにつきましては、取引量の多い、比較的大きな企業様についてメリットがあるというふうに考えておりまして、手形を受け取るほうの中小企業様につきましては、なかなかそのメリットというのが遡及しづらいという面がございます。また、インターネットバンキングサービスというものにつきまして、その導入についてもやや抵抗感を持たれる企業が多いという現状もございます。

この辺のところが大きな理由となりまして、なかなか手形からの切りかえというものが容易には進まないという現状があるというふうに分析をしております。

それから、2点目でございますが、ご指摘の点、正確に把握しているか、していなかったら恐縮でございますけれども、でんさいネットのほうにおきまして、このファクタリング・サービスを行うに当たって、信用情報のようなものをそのスキームの中で共有することが可能かどうかというところでございますが、この辺もちょっとまだどういった形を具体的に想定しているのかがわからない部分もございますが、まずひとつ、何となく私どものほうでお聞きして気にする点は、電子記録債権法の中で、電子債権記録機関というのは、兼業規制があるところでございます。そういった信用情報を提供するという部分、まずは私どもの業務として可能なのかどうかというところがわからないという点がございます。どのような解釈をするのかわかりませんけれども、なかなか難しいのではないかなというふうに思っております。

お答えになったかちょっとわかりませんが、以上でございます。

【森下座長】

それでは、田中委員、お願いいたします。

【田中委員】

今の点、田邊委員からのご質問に対する補足でございますけれども、今、委員のほうからは、この左の図のところにおいて、このA銀行がこのC銀行のところまでA銀行のほうで行うと。といいますのは、A銀行のほうが支払企業について、これは取引関係を持ってやっておるわけですから、信用情報については持っています。したがいまして、ここで言うC銀行ではなくて、A銀行がこの支払企業の信用力に基づくファクタリング・サービスというのを、このでんさいネットの情報に基づいて、A銀行の独自サービスとして行うということについては、私は十分可能ではないかと思っていますし、現実に幾つかの地方銀行、信託銀行等でそういう取り組みをされているというふうには伺っております。

【田邊委員】

わかりました。

【森下座長】

ありがとうございました。よろしいでしょうか。

では、ほかの方、いかがでしょうか。お願いします。

【池田総務企画局長】

先ほど田中委員からご発言あったことの趣旨がよくわからないのですけれど、この制度をもともとつくったときに、電子記録債権というのは債権管理をするツールでもあるということも説明されていたと思いますけれど、同時に、それを使って、債権の流動化などもしやすくなってくるということがこの制度が導入されたときのメリットとして議論されていたと理解をするのです。そういうことを考えると、銀行界においてそもそも4つ機関があるということ自体がどう考えたらいいのかよくわからないところがあるのですが、4つあって、それが今後、1個になるのか。なるのだったら、あまりこの議論はしなくてもいいのかもしれませんが、4つが1個にはならないと仮にしたときには、今のこのスキームで支払企業のほうがそもそもマル1マル4を最初に仕分けないといけないわけです。

また、1個じゃなくて、4つある前提があったときに、マル8マル7ができるようになってなくて、ほんとうにニーズに対応、していると言えるのかどうか。ちょっとご説明だけでは理解ができないところがあるし、いずれにしても、この制度というのは、冒頭にも申し上げたように、企業の債権管理とか債権の流動化を、便利にしていこうという目的でもともと議論されているんじゃないかと思うので、やはり最大のユーザーというのは、ここで言えば企業だと思うんです。その企業のニーズに対して今の対応で十分なんだというご指摘かもしれませんけれど、私自身は、企業が抱えているニーズに十分に対応できる現状になっているとは、必ずしもそういう理解はしていないのです。

田中委員のご発言の趣旨が、もう何も考える必要がないということなんだとすれば、すぐには納得しかねるし、あるいはその4つあるものが1個になるんだというなら、別に制度的な手当も不要なのかもしれないけれど、そのめどがあるならともかく、ないならばどうするかということを考えたときに、ご趣旨は、こういう道をつくることは意味がないというご意見かと思いますけれども、ちょっとご意見の趣旨を理解しかねるということを申し上げたいと思います。

【森下座長】

はい。田中委員。

【田中委員】

今のご質問の点につきましてですけれども、この4つの部分について相互に移すということが全く意味がないという、そういうつもりではございません。私が申し上げていますのは、具体的にここで言うと納入企業というところの資金調達ということについて、焦点を当てて考えますと、この現状のシステムでも、このロというところにつきまして、原則全て事前の割引ニーズということにはお応えしているという現状がございますので、そこについていえば、この7番、8番というのは、ニーズは小さいのではないかというのが私どもの見立てでございます。

ただし、例えば7番につきましても、二次納入企業様につきまして、このスキームの中に新たに含めるということが可能でございますので、当初からこのスキームをまたぐからできないということではございませんで、新たにこの企業様を個別行スキームのところに登録すれば、十分対応は可能になるものと考えておると、そういうことでございます。

【池田総務企画局長】

少し趣旨がわからないのですが、その支払企業が取引している銀行と納入企業が取引している銀行というのは、さまざまな銀行があって、今おっしゃっているのは、B銀行に持ってきてくれれば割り引きますと、信用に応じてファクタリングしますということをおっしゃっているのかもしれませんけれど、みんながB銀行の取引先であるとは限らないわけですよね。だから、B銀行に持ってきたら対応するからといって、企業のニーズにどうして対応していることになるのかが理解できないのですが。

【田中委員】

説明を少々はしょってしまいまして、申しわけございません。この個別行スキームというのは、もともとのこの発生の由来というものを申し上げますと、この支払企業のいろんな売掛金等のこの支払いですね。それから、手形、こういうものについて合理化したいと。それからあとは、この納入企業に当たるサプライチェーンの中のこの納入企業の資金化のニーズ、こういうものに個別に対応しようという、そういうパッケージのディールで対応したものです。具体的にこの仕組みを導入するに当たりましては、この支払企業と納入企業の間で事前に説明会、それから、どういう条件で対応してどうなるのかということについて、個別に具体的に調整等が行われて、その結果、この個別行スキームの図で申しますと、B銀行においてこれこれの条件で割り引くからということで、交渉をして、合意のもとにそういう仕組みができているものでございます。

したがいまして、このB銀行で割り引くからというのがあたかも強制的といいますか、こういうものがあるからいいじゃないかという、そういうことではございませんで、もともとこの制度があるときに、そういう支払企業様と納入企業様の間で合意はなされたものでございます。

【池田総務企画局長】

いや、そのおっしゃっていることがよく理解できないというか、最初に言われた、今のことで、いろいろなニーズには対応していると言われたことを咎めているのですが、納入企業というのはいろんな取引銀行と取引している人がいて、おっしゃっていることは、その都度、今言われたように、いろいろなアレンジメントをして、こういうことをやる。その個別の対応をしていけばよいのだから、それ以上に金融界全体として何か考えていく必要はないということをおっしゃっているのですか。

【田中委員】

私が申し上げたところで、ファクタリング・スキーム、今、田邊委員のほうから、当初、最初にご質問ございましたけれども、こちらの左のでんさいネットスキームにおいては、もうこのスキームが納入企業の信用で割り引くということになっております。そこがファクタリングと違うところでございます。したがいまして、ここで抜けているのは、このファクタリング、支払企業の信用に基づく割引制度というものが抜けていると思いますので、そこの動き、先ほども申し上げましたけれども、一部、地方銀行なんかで取り組んでいるということでございますし、そこのところは個別行の判断のもとで、そういうサービスが広まっていくことを私としては賛同いたしたいと思っております。

【池田総務企画局長】

あまり私と田中さんだけでやりとりしていてもしようがないので、地方銀行の個別の対応が進んでいけば、それでいいのだということについては、私は同意を留保したいと思います。

【森下座長】

それでは、田邊委員、お願いします。

【田邊委員】

さっき質問を申し上げたので、補足したいと思います。企業のほうは、うちの企業なんかも4つ入れているのですが、やはり中小企業が4つ入れるのは、システム変更だけでも大変ですし、さっきお話があった電子記録債権もあり、手形もあり、電子記録債権には3種類も4種類もあるという、この併存しているような状態というのが、特に中小企業にとってはいろんな負担があって、しかも、先方にも同じシステムを入れていくというお願いをしなきゃいけないけど、先方もどのシステムを入れなきゃいけないという、そういうところがせっかくこのいいインフラがあるのに普及しない理由だということがさっきのご説明でもわかったんだと思うんですね。

ですから、やっぱりユーザーは勝手ですから、一つのシステムで全部できるといいので、一つのシステムで、かつ、この納入企業の信用でも、それから、ファクタリングも1回で一つのシステムでできるのがいいに決まっているので、それで、私は技術的に全くわからなかったんですが、ファクタリングという右側でやっているシステムが左側のでんさいでも、A銀行があるんだからできるんじゃないかという、直観的なご質問をしたんですが、最終的にはやはり一つの窓口で全てのシステムができるのがインフラだと思いますので、そういう信用情報の共有なんていうのは、いろんな問題があるように思えるので、そう簡単じゃないのかなと思うんですが、システム的にここでいえばA銀行とつながるようなことが、例えばでんさいネットでできれば、ユーザーとしては1つの窓口で2つの機能ができるという意味ではいいのではないかということで申し上げたということです。

【森下座長】

ありがとうございました。

加毛委員、お願いします。

【加毛委員】

ありがとうございます。今、話題になっている点に関連して、3つ質問があります。まず、事務局に対して、電子債権記録機関間で電子記録債権を移転させることに、具体的にどのようなニーズがあるのか、現状認識を確認したいと思います。スタディ・グループの中間整理においてこの問題を取り上げた箇所には脚注10が付いていました。そこでは、親企業が電子債権記録機関Aで電子記録債権を発生させ、それを取得した子会社がみずからが利用者登録を行う電子債権記録機関Bを通じて、子会社に当該債権を譲渡することはできないということが問題点として指摘されていました。これは何か具体的な事例が念頭に置かれていたのでしょうか。それとも理論的にありうる例を挙げるという趣旨に過ぎなかったのでしょうか。先ほどの質疑において、どのような実務上のニーズがあるのかという点に関連して、問題になるように思います。

2つ目の質問は、諸江参考人あるいは田中委員に伺いたいのですが、個別行スキームというのは、基本的に支払企業として大手企業を想定しているのだろうと思います。これに対して、今日、話題とされている、地銀等がでんさいネットを使ってファクタリングを進めていくというのは、支払企業として中小企業を想定し、現在の個別行スキームでは捕捉されていないニーズを掘り出し、それを取り込んでいこうとしていると理解して宜しいでしょうか。この点についても、現在何が問題となっているのかを確認しておきたいと思います。

第3の質問は、再度、事務局に対するものであり、第2の質問にも関連します。本日の資料の6ページの下から2つ目の黒丸の最後の一文で「債務者情報の共有に係る課題に対応した、でんさいを活用したファクタリング・スキーム」と書かれています。しかし、先ほど諸江参考人あるいは田中委員からのご説明によれば、既に支払企業について信用情報を有している地銀等がファクタリング・サービスを提供することが実務上のニーズであるように思われます。そのような実務上のニーズと、「債務者情報の共有」というのはどのようにつながっているのかが、よく理解できませんでした。先ほどの田邊委員、田中委員、諸江参考人の質疑にも関連すると思いますので、もう少し説明していただければと思います。

【森下座長】

それでは、事務局のほうからお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず第1点のご質問で、中間整理の脚注には、例えば親会社が電子債権記録機関Aで電子記録債権を発生させ、取得した子会社がみずからが利用登録を行う電子債権記録機関Bを通じて孫会社に当該債権を譲渡することはできないと。確かにこういう記述をしております。この記述をしたのは、まず容易に想定できる話として書いたということがあります。

例えば先ほどの資料2の説明でも、おそらく支払企業、納入企業、二次納入企業と、サプライチェーンがどんどん多段階にわたっていくと、さらに三次、四次という企業が続いていて、当然想定されることながら、企業規模が小さくなれば、営業範囲も小さくなる。そうすると、全国規模で展開しているような、あるいはほかの地域の金融機関と取引が少ない。そうすると、手形の割引などでも見られるように、自分が取引している金融機関で割引をしてもらったり、あるいは自分が登録している記録機関B、別な記録機関を通じて、下請、孫請の企業に債権譲渡をすることが考えられるのではないかという、容易に想定できる話として書いたということであります。また、個別に幾つか地方の方の声を聞くと、大手企業が振り出したものについて、だんだん下請、孫請になってくると、それを自分が取引をしているような地域の金融機関を通じて、でんさいネットのほうでもって、債権を譲渡するということができるようになれば非常に便利であると。なかなか現状はできないといった声があることも事実のようです。ただ、そのような声が割合的にどのぐらいかということは、正確にはわからないところはございます。

まず第1点がそういうことでございます。

【森下座長】

それでは、第2点目についてはいかがでしょうか。田中委員、お願いします。

【田中委員】

第2点目の個別行スキームの支払企業というのは、大企業ではないのかということですけれども、おっしゃるとおりです。もともとこの個別行スキームというのは特定の大企業に対する個別のスキームとしてできたものですので、おそらくイメージとしては、数百から1,000ぐらい、各メガバンクで、そのあたりのイメージでございます。一般的なこの商流における支払企業というのをイメージしたものではございません。

【森下座長】

よろしいですか。それでは、事務局のほうから改めてお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

3点目のご質問で、討議資料の6ページのでんさいを利用したファクタリング・サービス、でんさいネットと金融機関との間において、債務者情報の共有に係る課題に対応したというところでございますが、資料2の参考資料のフロー図をお借りして説明を申し上げますと、自分の取引銀行で割引を行うという、ここでマル8と書いておりますけれども、おそらく今の手形でも同じ問題があるんだと思います。自分の取引銀行で割引をして貰うときに、もともとの債務者である支払企業の信用情報が明確に把握できないと割引しがたいというところがあると思われます。ただ、一方で、でんさいというペーパーレスのものが登場し、おそらく一般的にいえば、ペーパーが電子になるとするならば、譲渡の頻度といいましょうか、流れも大きくなり、譲渡される可能性が高いとなると、信用情報をどうやってうまく活用していくことによって、割引がうまく進んでいくのかという課題が考えられます。これは情報の中身にもよるところもありますし、共有の仕方として、例えば別の銀行が全てその情報を共有するのか。あるいは場合によっては、例えば別法人を活用するなどして、何か共通の情報のプラットフォームのようなものを活用したりとか、そこはいろいろな知恵があり得るのではないかということで、今回ここに記載をしているところでございます。

また、先ほどの田中委員のお話にもございましたように、地方銀行サイドとしても、でんさいを活用したファクタリング・サービスを拡大していきたいということで、いろんな発想があり得るんだと思います。その中でどういうフィージビリティ、あるいは広がりを持つスキームをつくっていくのか。ここがこのでんさいを利用したファクタリング・サービスが拡大していく一つのキーになり得るのかなということでこの記載をさせていただいたということでございます。

【森下座長】

よろしいでしょうか。

ほかの方、いかがでしょうか。戸村委員、お願いいたします。

【戸村委員】

ありがとうございます。まず私なりの理解を申し上げてから、諸江参考人に質問をさせていただきたいと思います。私の質問はでんさいネットについてですけれども、この話は、基本的には紙を電子情報にする話にすぎないといえばすぎないので、それがなぜ進まないのかというのが一つ、素人の目から見ると不思議なところでありますが、スタディ・グループや、今回のご説明を通じて、ひとつ問題としてあり得るのは、ご意見は違うかもしれませんが、あり得る理由の一つとしては、やはり支払企業がでんさいネットのみに入っている場合に、納入企業側にもでんさいネットに入ってもらわないと、電子記録債権というのが使えないと。それなので、紙の手形であればユニバーサルに流通できるので、そちらのほうが利便性は高いのかなと。その問題については相互接続で解決するというような理解をしております。

私が今回伺いたいのは、仮に相互接続したとして、それで済むのかなというのが一応感想としてありまして、経済学的に考えたときに、公共政策的な視点からすると、田邊委員もおっしゃいましたけれども、こういうネットワークは1つあればよい話であって、現状は資金力のある個別行が自己の顧客向けサービスとしてシステム投資を行い、複数のシステムが併存していると、そう考えると少しむだがあるのかもしれないと思います。それなので、これは諸江参考人への質問の前に、中長期的な政府の施策へのコメントというか、感想ですけれども、むだが起きているんじゃないかと、経済全体を見たときにシステム投資にむだが起きているんじゃないかというのがひとつ考えるべきかと思います。一つむだを省くとすれば、その全銀システムのように、でんさいネットを個別行のシステムを上に持ってきて、単一ネットワークとして統合してしまう。そうすると、でんさいネットも全銀システム、または手形交換所のようなシステムに似た形になるかと思います。もしくは民間のイニシアチブを生かすという意味で、民間行に任せてしまって、大手行のシステムに、手数料を払う形で他行が使用するような形もあり得るかと思いますが、そういう形でシステム投資にむだが起きていないかはひとつ考えるべきか、仮に相互接続したとしても考えるべき課題かと思います。

そこで諸江参考人に質問させていただきたいんですが、現在、でんさいネットの利用が進まない一つの理由として、でんさいネットワーク、複数のシステムが併存しているということは、システム投資が複数デュプリケートされているということなので、でんさいネットワークの投資が過小になっていないかというのがひとつ不安なんですが、諸江参考人の現在のご理解をいただければとありがたいと思います。

【森下座長】

お願いします。

【諸江参考人】

ご質問いただいた、でんさいネットの投資の面が過小になってはいないかという、どのぐらいのレベル感があっていいかというのはなかなか判断が難しいところではございますが、全国575の金融機関をネットワークで結ぶシステムを構築しておりまして、それを手形代替で基本的に利用するようなものということで、ご不便のないような形でネットワークを構築しているという面では、現時点で投資について不足はないものというふうに認識しております。ただ、今後いろんな利用者の方のニーズに応じて、追加的な機能の開発とかそういったものは当然していくべきものと考えておりまして、ここ数年でも当初の開発に対しまして、追加の投資というものもしているという状況でございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。牧野委員、お願いします。

【牧野委員】

済みません。でんさいネットのことでコメント致します。弊社では、両方とも実は使っていないのですが、右側のところでいきますと、一括信託方式といって、おそらく右側の旧モデルみたいなモノだと認識しているのですが、それは、活用しております。他方、欧米の場合、やはり以前も私のほうでご説明させていただきましたが、サプライヤーファイナンススキームというような形で、銀行が支払企業と協業で、囲い込みスキームを実施しています。日本が現在進めている電子記録債権とは少し違いがありますが、銀行がこのようなスキームを使って企業を囲い込むというのは、ビジネスモデルとして当然のことだと思います。

そういったことを考えたとき、これら電子記録債権のしくみが4つがいいのか、1つがいいのかというのは、私にはよくわかりませんが支払企業と銀行の囲い込みというのは一般的にやられていて、運転資金の改善等で企業側にもメリットがあり、WinWinであるため企業戦略上、あってしかるべきスキームであるということを共有させていただきたいと思います。

【森下座長】

ありがとうございました。

では、浜委員、お願いいたします。

【浜委員】

済みません。普及につきまして、現場のほうからということで、実情と私の考えをちょっと述べさせていただきます。以前より国内外の送金のフォーマットは統一できないかとか、オペレーションを1つにできないかということでお願いをしておったんですけれども、まさに同じで、事務方としましては、オペレーションが増えることを非常に嫌がるということがあります。この場合も支払企業として、でんさいもある、振り込みもある、手形もあるということになると、今まで2つだったものが3つ、さらに個別行スキーム、でんさいネットというスキーム、ここでまた4つに分かれているということで、私、全てを知っているわけじゃないんですが、フォーマットも違うということになれば、データをつくる方法まで変わってくるということ、データを渡す方法も変わってくるということで、オペレーションは非常に煩雑になってしまうと。

納入企業サイドの支払いを受けるほうなんですけれども、こちらもしかりでして、手形が残っています、電子記録債権も来ます、振り込みも来ますということで、これまた窓口もいっぱいありますねということで、債権管理、振替金の管理という意味でも非常に管理面でのコストというのが非常にかかってしまうということで、希望的なんですが、手形的活用で電子記録債権を進め始められたということであれば、できればもう手形というのもなくしちゃうという、極端な話ですけれども、手形はもう日本に流通させないよぐらいのことになれば、それこそ電子記録債権の意味というのがまた改めて出てくるのかなというふうに思っております。

また、納入企業サイド、我々が受け取るほうでなんですけれども、やはり支払人の意向に沿って支払い手続というのは決められております。ですので、手形で払われるところ、電子記録債権で払われるところと、これを我々は受けるほうなので、受動的に待っている状態であります。ですので、こちらから能動的に電子記録債権に変えてくださいということができない状況です、というのが一般的だと思うんですけれども。すると、やはり電子記録債権で払っていいかと言われちゃうと、いや、手形も残っているので、そっちでやってくださいみたいな、まあ、うちとしても受け取る方法をあんまり増やさないようにするという交渉というのはやっぱり出てくるのかなと。ここがさっき諸江参考人のほうから両者の承諾が必要であるとか、両スキームが併存していることが足かせになっているといったご説明があったのは、まさにそのとおりだと思います。

また、インターネットバンキングに対する抵抗がある企業さんもあられるということなんですけれども、やはりそうで、いまだにファクスでしか取引できないところもございます。なので、その辺のインフラのところにもやっぱり普及の足かせになっている部分はあるのではないかなというふうに思います。

ひとつ提案というか、実現可能なのかどうかということなんですけれども、6ページの黒丸2のところで、信用情報を共有できないかという話があったかと思うんですが、手形から電子記録債権に移行するのに、もう少し、全く手形と同じですよではなく、これは単純に紙がなくなるというレベルではなくて、もう少し付加価値、電子になったところで付加価値をつけれないかというところなんですが、ここに貿易取引のLC取引ですね。信用状取引のように、この手形の金額の裏づけとなるインボイスのような取引情報のようなものもつけることはできないでしょうかと。すると、支払企業とどういう取引があって、どういう支払いがされるということまでこの電子記録債権で見えれば、金融機関の買い取りというか、割引というのにも少し役に立つのではないかなというふうに思いました。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

今の点については。はい。諸江参考人、お願いします。

【諸江参考人】

電子記録債権の記録上の情報に付加価値がつけられないかというお話でございますが、現状、でんさいネットの仕組み上、支払企業様のほうで任意に情報を設定できるという項目がございまして、そちらを、ご活用の方法はいろいろあるのかもしれませんけれども、使っていただくことも一つの方法かなというふうに思います。これは企業様同士の同意のもとということになるのかもしれませんけど、そういった情報欄がございますので、そこをご活用いただくということも一つの方法かなというふうには考えてございます。

【森下座長】

ありがとうございました。

CMSなどについてももしご意見があれば。いかがでしょうか。あるいは電子記録債権でも。田邊委員、お願いいたします。

【田邊委員】

CMSのほうが出たので。国内のこのキャッシュ・マネジメントですね。ここでお話のあった貸金業法の適用除外の2つの項目については、ぜひこうしていただいたらいいだろうなというふうに思います。なぜかというところですが、そういうニーズが企業にはあると思われるということなんですが、1つは金融子会社、100%の金融子会社にも適用ができないかということは、多くの会社がやはりこのトレジャリーセンターというものを、本社でやるのではなくて、金融子会社でやっているというケースは増えていると思います。そのときにご参考までに申し上げると、単なる貸付だけではなくて、やはり信用調査とか、あるいは経理サービスとかそういったものを統合した形でのトレジャリーセンターみたいなのをつくっていくと。そうなると、専門性とかコストという点でやはり分社をするというニーズは非常に高いので、ここにも書いてあるとおり、100%子会社で経済的一体性が認められるような形だと思います。要は、機能はそういうことなので、分社しますが、やはり100%の子会社という形になるケースが多いので、それに対して適用除外していただくというニーズが、そういう意味ではあるということです。

それから、つなぎ融資のほうも、これはここに書いてあるとおりで、機関等で何か歯どめが必要だというふうに私も思いますが、実際、M&Aなんかが増えてきて、会社を売却するとか、子会社を売却するとかいったときに、不要な資産がその会社にあって、それをこちらで処分してから売却できればいいですが、それは売却してから、買ったほうが処分するとかいうケースも多々あって、そういうときには結局、ディールの条件交渉の中に入ってくるわけですが、では、その間、その資産が売却できる間は売るほうが資金的な面倒を見るというのが、その交渉の中で出てくるというような。いろんな理由があると思いますが、つなぎ融資が出てきて、そのファイナンス。それで、それまでは子会社だったわけですね。その会社につなぎ融資をしなきゃいけないということがありますので、それまで十分子会社だったという要件と、期間ですね。期間はどれぐらいがいいのかわかりませんが、そういった事情を考えると、最低1年ぐらいはかかると思いますが、余裕を見ればもう少し長く必要かなと思いますが、実際そういうM&Aなんかのケースでつなぎ融資のニーズはあるということを共有させていただきたいと思います。

【森下座長】

ありがとうございました。

いかがでしょうか。鳥海委員、お願いいたします。

【鳥海委員】

キャッシュ・マネジメント・サービスにつきましては、今、議論になってらっしゃるような貸金業法上の問題というのも重要でございまして、平成26年の政令改正につきましては、私どもの会員銀行のお客様の企業にとっても非常に利便性の向上に資するものだったと存じておりまして、改めて感謝申し上げたいと存じます。

それから、こちらでご指摘いただいている論点についても見直しが進むよう、希望いたしております。

それから、たしか私の記憶ですと、牧野委員のプレゼンテーションの資料の中で、たしか金融子会社を日本に設置する場合に、金融税制上の問題があるというようなご指摘があったように記憶しているんですが、もし間違いでなければ、その点については、今回はそこまで踏み込まないということなのかどうか、ご確認をさせていただければと思っております。

それから同時に、ここでは日本企業の海外展開というコンテキストで議論がなされているわけですけれども、外国の企業が日本に進出してくるということを促進するのも重要な政策目標だというふうに考えておりまして、その際には、当然にして、本国で利用している外資系の金融機関というのを使いたいというのが自然な流れでございます。

申し上げたいのは、ご利用になるユーザー側から見た場合の規制だけではなくて、このサービスを提供する側から見た場合の規制についても、同じように目配りをしていただきたいという点でございまして、このワーキング・グループでは今のところ俎上には上っていない規制上の問題としまして、銀行法上の外国銀行の代理業務という制度がございまして、これはもう一つの金融審議会のワーキング・グループが先々週開催されまして、そちらのほうでご議論いただきまして、規制緩和の方向性を事務局からお示しいただいたところでございます。

細かくは立ち入りませんけれども、その場で委員の方々からは、この外国銀行代理業務という制度に対して、幾つか基本的な問い掛けがなされたというふうに理解しております。事務局におかれましては、こういった問題意識も踏まえつつ、規制及び監督の枠組みを探っていただけるように希望いたしたいと存じます。

それから、もう一点だけ述べさせていただきますと、この外国銀行代理業務につきましては、2014年4月だったと思いますけれども、規制緩和の一環として資本関係が50%未満、または全くない外国銀行のためであっても、代理媒介を認めるという制度が追加的に導入されたというふうに理解しております。ただし、この場合の代理媒介は海外においてのみ認めるという立てつけだったと理解しておりますが、この新しい制度のもとで認可を取得した事例があるのか否か。もしもほとんど無いとするならば、制度あるいは運用のどこかに見直すべき点がある可能性もございますので、必要に応じて検証を行っていただくのも一案かと考える次第でございます。

【森下座長】

事務局のほうからお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

今のご質問の第1点は、税制上の問題というところでございます。税制の関係につきましては、税制制度全体として考える必要があり、ここでの審議の範疇を超えているのかなというところは正直言って思っております。したがいまして、税制について、個別論でどう考えるということからこの審議会で議論することは、あまり適当ではなく、ただ、我々としまして、通例いろんな金融関係の税制上の問題を各方面からお伺いして、それを税制の制度担当当局に話をして、合理性があるものについてであれば、税制の全体の視点を踏まえて可能かどうかということ、そういう協議をしておりますので、そこは今後の参考としていきたいと思っております。

新しい資本関係がないものについての認可ということは、これは石田君、わかりますか。

【石田監督局銀行一課課長】

ちょっと今、手元にございませんので、確認いたしまして、改めてご報告したいと思います。よろしくお願いします。

【森下座長】

よろしいでしょうか。

それでは、ほかのご意見、ご発言。それでは、河野委員、お願いいたします。

【河野委員】

ありがとうございます。キャッシュ・マネジメントシステムの話ではなくてもよろしいでしょうか。

【森下座長】

はい。結構です。

【河野委員】

よろしいですか。はい。済みません。今日は、本日は企業の皆さんのお話だというふうに伺っていまして、なかなか私のような普通の消費者にとってみると難しい話だなというふうには伺っておりました。ただ、幾つか感じたところがございますので、それをここで申し上げたいと思っています。

今回ご提案されたさまざまな論点というのは、資金の潤滑な調達と、そのスピードアップのためにどういう方策がとれるのかということで、いろいろと打つ手を考えられたというふうに感じていました。例えば私の身の回り、B to Cの世界でいえば、ICTの発展に伴って、ITの利用というのはもう世界の潮流といいましょうか、もう飲み込まれている感じでして、カードの決済方法ですとか、それから、資産管理アプリですとか、ネットでの小口融資など、ほんとうに新しいサービスというのがどんどん進んできていて、問題もあるとは思いますけれども、私たち利用者にとってみると、非常にユーザーフレンドリーな形でさまざまな提案がされているというふうに思っています。

それで、今回の先ほどのでんさいの件ですが、済みません。ここのやりとりが非常に記憶に残ったものですから、電子記録債権をめぐる状況のお話なんですけれども、そもそも平成20年のときに新たにこの電子方式というのをとられるときには、ここの5ページの最初のパラグラフにも書いてありますとおり、中小企業の皆さん、企業の皆さんは、非常にこのシステムの導入に大きな期待があり、さらに導入された後、その次のパラグラフにも書いてございますように、利用者にとってはとても利便性が高い制度となっているというふうにまとめられているんですけれども、私自身もその電子化というのは、銀行さんにとって、コスト削減ですとか効率化、人件費削減ですとか、それから、紙の媒体を使うよりは、はるかにそういった面で有効ではないかというふうに思ったところですが、先ほどのお話を伺っていると、何かあまりそういったメリットを銀行さんの側が感じてらっしゃらないのかなというふうにも思えてしまって、じゃ、この投資、これだけ投資して、4つもシステムをつくったんだけども、この投資のメリットって何なんだろうというふうに私自身は受け取りました。制度開始後丸々6年たって、まだ全体の4%しか利用していないシステムを持っていることについて、どう考えてらっしゃるかというのを伺いたいと思います。

それが1点目で、2点目は、それでも先ほどのお話の中では96%の未利用者の方に利用促進のために何とかしていきたいというご発言がありましたけれども、どうやっていくかという方策が、先ほどいろいろご意見はありましたが、私のような知識のない者にとってみると、インセンティブは、この数字を下げていくインセンティブというのはどこにあるんだろうというのが理解できなかったので、もしこの96%という数字を下げていくためのインセンティブを考えてらっしゃるのであれば、それをお聞きしたいというのが2点目の質問です。

それで、最後はほんとうに感想になって申しわけないんですけれども、先ほどから信用情報の話がありましたけど、例えばクラウドのようなものを利用して共有化するとか、そういうことも考えられるわけで、基盤インフラに互換性を持たせて、何て言うんでしょう。世の中の流れをうまくやっていくということに関していうと、私はB to Bの世界でも考え方を柔軟に転換していかないといけないのではないかなというふうに、まことに不十分な理解ながら、先ほどのやりとりを伺っていて感じたところです。

日本の銀行さんから調達しなくても、ほかで資金調達できるかもしれないというふうな世界になってしまっては困るなというふうな危惧も含めて、最後は感想ですが、ぜひ環境変化に柔軟に対応していただければいいなというふうに思った次第です。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

諸江参考人、お願いします。

【諸江参考人】

今お話しいただいた点で、でんさいネットについてこれだけのシステムを持っていて、なかなか進まないところについてどのように考えるかという点なんですけれども、もともとの法整備から一貫して中小企業金融の円滑化という目的があって、これについて銀行界として取り組んでいかなければいけないと。ある種、社会的なインフラとして使命を果たしていくという点で、今後の電子化の進展に伴って、それに柔軟に対応していけるようにということでつくったものと考えておりまして、お話もありましたように、銀行のほうにもやはり電子化のメリットはあると思っていますし、お客様にとっても紙がなくなることとか、あるいは管理の手間がそれによって省けるということはメリットがあるというふうに思っております。そういった意味で、こういったものをきちんと運営していくということが重要なことかなというふうに思っております。

それから、お客様へのインセンティブはどんなものがあるのかというところがなかなか見えにくいというお話で、さっきもちょっとご説明したんですけれども、今一番わかりやすいのは、紙がなくなるので、手形に張るような印紙がかからなくなるというのが1点だと思います。ただ、我々はそれだけではなくて、やはりいろんな、もう既にご利用を始められた企業様のお声を聞くと、やはり事務の効率化、経営管理面での効率化と言うんですか、こういったものが非常に進みますということで、一度電子記録債権に切りかえたら、手形に戻るということはなかなかないんですというお話をいただいております。また、それによって、業務面でも今までそういう手形の事務に費やした時間がほかの業務に使えるということもあって、かなり会社としても業務の効率化にもつながっておりますという点がございます。そういった点をあわせて企業の皆様にお話を、我々なり、金融機関なりからしていって、そういったメリットを十分にご理解いただけるように、促進活動を今行っているというところでございます。

【森下座長】

あとはいかがでしょうか。それでは、廉委員、お願いいたします。

【廉委員】

資料1の6ページに「現行制度では、複数設立されている電子債権記録機関間で電子記録債権を移動させることは想定されていない。このことが、電子記録債権の流動化の妨げとなり」とありますが、資料2のマル5マル6に当たる納入業者から二次納入業者への譲渡支払ニーズが、実際どの程度あるんだろうかと思っております。例えば公的機関、地方公共団体などは債権譲渡を禁止していたところもあったと記憶しています。今は状況が変わっているかもしれませんが、手形がいろんなところに出回るということ自身、信用問題になった時代もありました。もし、債権が流通することに対し非常にセンシティブな文化が続いているのであれば、4つの電子債権記録機関を1つにしても債権譲渡は増えない懸念があります。従って、特に中小企業にこうした譲渡支払ニーズがどの程度あるのかを調査する必要があるんじゃないかなと考えます。4つの電子債権記録機関を1つにするとなると、システムコストもかかりますし、フォーマットも統一する必要も出るでしょう。コストや手間をかけたけど、そのようなニーズはあまりなく、電子記録債権は増えませんでした、というわけにもいかないだろうと思います。繰り返しますが、特に中小企業のニーズがどこにあるのかどうかを、調査する必要があるんじゃないかなと感じております。

以上です。

【森下座長】

ありがとうございました。

では、沖田委員、お願いします。

【沖田委員】

私からもCMSと電子記録債権、両方の意見ですが、まずCMSについては、3ページの2点の部分ですけれども、これは先ほど田邊委員からも賛同の趣旨でのご意見ございましたが、我々も同様でございます。我々のような企業規模であっても、若干ではありますけれども、こういった事例は出てきておりますので、非常に現実のニーズに則した問題提起ではないかなと考えております。

それから、電子記録債権の部分については、私ども十分な知見はありませんので、やや突飛な話になるかもしれませんけれども、7ページの一番最後のパラグラフにありましたような、アジアでの展開の可能性というのは非常に興味深いなというふうに感じております。

特に私どももアジアの展開というのをいろいろ進めている中で、やはり日本企業は非常にたくさん、特に製造業さん中心に出ていますので、日本企業というのは、債務者、債権者の両方になり得るんじゃないかなと。それから、日系企業同士の取引もあれば、現地企業との取引というのも十分あるんじゃないかなというところですね。

若干疑問というか、私では十分わからなかったのが、これはできると、おそらく国際間のインターオペレビリティが確保されるというのが非常に興味深いと思うのですが、一方で、今、国内の部分ではそのインターオペレビリティが特に考慮されていないということなので、その国際間ではインターオペレビリティが保たれるのに、国内では違うというのは、ちょっとどういうような制度設計になるのかなというのは十分わからなかったというところですね。

それから、やや飛躍しますけれども、例えば先週、ナスダックもいわゆるブロックチェーンのテクノロジーを未公開市場に限ってですけれども、実験的に使っていくというような発表がありましたけれども、おそらくこういった部分、その国際間での部分では、今後、可能性としては、そういったブロックチェーンのテクノロジーを使っていくというのも全くない話ではないのかなと。現時点においてはおそらく時期尚早だというふうには思いますけれども、先ほど委員の方からも効率的な投資というようなご意見ございましたので、できれば、こういったスキームで使われている先もそういった部分に対する研究ですとか、利用の可能性、その結果として投資の効率化につながるのか。もしくはこれはなかなかこの制度上は使いにくいというところなのか。そういったところをご検討していただけると、全体の国益にそうのかと。それから、最終的な国際間での共通ネットワークという視点でも競争力は担保できるのではないかなということで、意見を申し上げます。

【森下座長】

ありがとうございました。

鳥海委員、お願いします。

【鳥海委員】

今日議論になってないところなんですけれども、外為報告なんですが、決済高度化を具体化する上で非常に重要な論点かと思いまして、お尋ねさせていただきたいんですけれども、おそらく財務省の方か、日本銀行の方になると思うんですが、この5ページの冒頭のところで、こうした要請にも留意しつつ、電子的な方法での報告の拡大等ですね。資金移動の外為報告上の取り扱いの合理化など、CMSの高度化の動きを踏まえた合理化が検討できないかという、このお題に対して、何か具体的な検討が可能なのかどうかというのをお尋ねしたいなと思いました。

【森下座長】

いかがでしょうか。それでは、髙野さん、お願いします。

【髙野オブザーバー】

財務省の信用機構課長の髙野と申します。国際局のほうの担当になるわけなんですけれども、既に金融庁と財務省の国際局の間でご指摘のようなことが、意見を踏まえまして、そういうことは実現できないのか。実務的な検討は開始しているというふうに伺っております。

以上でございます。

【森下座長】

今ご検討を開始してくださっているということですね。よろしいでしょうか。はい。

ほかはいかがでしょうか。田中委員、お願いします。

【田中委員】

CMS、特に邦銀のCMSに関するここでの討議資料というのがございましたので、一言だけ述べさせていただきます。中間整理におきましても、邦銀、特に主要行に対しては、海外拠点、それから、日系企業のニーズを汲み取りつつ、世界のリーディングバンクに期待される水準を念頭に置いたCMSへの戦略的な取り組み、これが期待されていると認識しております。まずメガ3行について申しますと、これについては各銀行、中期計画、その他年度計画、その他IR資料などで公表されておりますけれども、このCMSをはじめとするトランザクションバンキングというのは戦略重点分野ということでされておりまして、取り組みを強化されております。

次に、ちょっと個別の話になりますと、それは各銀行が健全な競争に基づいて推進していくとなりますので、私の所属するみずほについて申し上げますと、一つ、海外拠点、特にアジアが活動の中心になっておりますので、それにつきましては、昨年10月にシンガポールにトランザクションプロダクトを専門に扱う営業部というものを設置して対応しております。それまでも個別のプロダクト、それにつきましては対応する部隊はおりましたけれども、そうではなくて、外国為替、トレードファイナンス、これには先ほど牧野委員からおっしゃいましたサプライヤファイナンス、サプライチェーンファイナンスというものも含めますけれども、そういうものも含めて、企業のトランザクションを包括的にサポートする体制というのを整えておりますし、あと、国内におきましても、この日系企業様に対してグローバルなソリューションを提案するチームというものを整えております。

それから、2点目、具体的な機能ということで、キャッシュ・マネジメントに関するプロダクトの充実についてです。このスタディ・グループその他ですね。いろんなところで邦銀についてなかなか対応できていないというような指摘もございました。ただ、私どもみずほのほうでは、海外支店、それから、地場銀行に設立させた現地企業の口座のモニタリングですね。あるいは実際の送金、そういうことを可能にするようなグローバルe-バンキングと言われるサービス、あるいは企業グループ資金の集中管理を行うキャッシュプーリングと言われているサービス、これも実際に資金移動を行うアクチュアル、それから、名目的なままで計算上行うもの、ノーショナル、これについて両方対応できておりますし、あるいはマルチバンク、他行も含めたものの資金管理ソリューション、そういうものにつきましても、各詳細につきましては、時間の関係上、今日は割愛させていただきますけれども、お客様のニーズに対応できるプロダクトの充実というのを対応しております。

おそらく二、三年前について申しますと、このような高度なサービスについてはなかなか対応できなかったところでございますけれども、私どもでも経営上の重要な課題と認識をして、相互の投資を行ってきているところでございます。もちろん歴史からしますと、先駆的な外銀に比べますと、もともとスタートが遅いものですから、使い勝手その他、至らぬ点はまだまだあろうかと思いますけれども、私どもとしては引き続き人的投資、それから、実際のITを含めた投資、新しいテクノロジーの利用、そういうことも含めて、このトランザクション、CMSの分野については積極的に対応してまいる所存でございます。

以上、みずほの取り組みにつきましてご説明させていただきました。

【森下座長】

どうもありがとうございました。

よろしいでしょうか。岩原会長、お願いします。

【岩原金融審議会会長】

お時間をとって恐縮です。キャッシュ・マネジメントに関して、貸金業法の適用除外を広げるということはぜひやっていただきたいと思います。そもそも事業者金融に貸金業法を一体どこまで適用する必要があるのかということ自体が問題だと思っていまして、こういう柔軟化を図ることは望ましいことだと思います。

それから、もう一つ、この電子記録債権の流動化については、さっき廉委員がご指摘になりましたけれども、むしろ一番の問題になるのは、債務者が債権を流動化することを望まないし、さらに自分の債務者情報を公開されることを非常に嫌うこと、これが一番問題ではないかと思っています。

以前、全銀協において、貸出債権市場における情報開示に関する研究会というのをつくって検討したのですけれども、そこでもどうしても債務者に自分の負っている債務が誰かに売却されることに対する抵抗感があり、そしてまた、自分自身の信用情報などを当然、流動化する以上は公開しないと、買い取ってくれる人が出てこないわけですが、それに対する抵抗が非常に強いということで、貸出債権の流動化はなかなか進んでこなかった。その意味では、この6ページのところに書いてある債務者情報の共有に関する課題に対応したスキームをつくるというのは非常に困難な作業ではないかと思います。

個人信用情報センターみたいなことを考えてらっしゃるのかもしれませんけれども、銀行は基本的に取引先に対して守秘義務を負っているわけでありまして、それを解除することを意味するわけですから、個別の債務者の同意なく、一体どこまでできるのかということは、これは最大の問題で、そこを変えていかないと、なかなか実効的な債権の流動化市場をつくることは難しいのではないかと思っております。

以上です。

【森下座長】

どうもありがとうございました。

あとはよろしいでしょうか。よろしいですか。はい。

それでは、ほかにご発言がございませんようでしたら、討議を終わらせていただきたいと思います。本日いただきましたご説明やご意見などを踏まえまして、引き続き検討を進めていきたいと思います。

それでは、最後に事務局のほうから、連絡事項などがございましたらお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、事務局からスケジュールについてお話を申し上げます。

次回のワーキング・グループにつきましては、今月16日月曜日の10時から開催したいと考えております。討議内容につきましては、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【森下座長】

それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了させていただきます。若干超過して申しわけございませんでした。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3684、3582)

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