決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ(第1回)議事録

  • 1.日時:

    令和元年10月4日(金)14時30分~16時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」(第1回)
令和元年10月4日
  

【神作座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」第1回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
この度、神田秀樹金融審議会会長からご指名をいただき、当ワーキング・グループの座長を務めさせていただくこととなりました東京大学の神作と申します。どうかよろしくお願いいたします。
初めに、当ワーキング・グループについてご説明いたしたく存じます。一昨年11月の金融審議会総会において、麻生大臣から諮問をいただきました「情報技術の進展等の環境変化を踏まえた金融制度のあり方に関する検討」を行うために、金融制度スタディ・グループが設置されました。先日開催されました金融審議会総会において、金融制度スタディ・グループによる決済法制及び金融サービス仲介法制の検討につきまして、さらに議論を深めていくために、スタディ・グループをワーキング・グループに改組することとされたところでございます。当ワーキング・グループでは、本年7月に公表された「「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告《基本的な考え方》」を踏まえ、また事業者の方々からもご意見を伺いつつ、さらに審議を深めてまいりたいと考えております。
次に、当ワーキング・グループの委員の皆様の紹介を事務局よりお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【守屋横断法制室長】
この夏から決済法制を担当しております守屋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
お手元に資料1として名簿をお配りしております。座長のほか10名の委員にスタディ・グループから引き続きのご参加をいただいております。また、14名の委員に新たにご参加いただくこととなりました。
時間の都合もございますので、大変恐縮でございますけれども、引き続きご参加いただく委員のご紹介は割愛させていただきまして、新たに委員としてご参加いただく方々を座席順にご紹介申し上げます。
委員の皆様の右側から、岩下委員のお隣、小木曽稔様でございます。

【小木曽委員】
よろしくお願いします。

【守屋横断法制室長】
翁委員のお隣、加藤貴仁様です。
坂委員のお隣、長楽高志様です。

【長楽委員】
よろしくお願いいたします。

【守屋横断法制室長】
そのお隣、鳥海厳様です。

【鳥海厳委員】
よろしくお願いいたします。

【守屋横断法制室長】
永沢委員のお隣、中谷昇様です。

【中谷委員】
どうぞよろしくお願いします。

【守屋横断法制室長】
そのお隣、萩原攻太郎様です。

【萩原委員】
萩原です。よろしくお願いします。

【守屋横断法制室長】
そのお隣、原田邦彦様です。

【原田委員】
原田でございます。よろしくお願いいたします。

【守屋横断法制室長】
舩津委員のお隣になりますけれども、丸山弘毅様です。

【丸山委員】
よろしくお願いいたします。

【守屋横断法制室長】
森下委員のお隣、與口真三様です。

【與口委員】
與口でございます。よろしくお願いいたします。

【守屋横断法制室長】
ただいまご紹介申し上げました委員のほか、金融サービス仲介法制についてご議論いただく回にご出席をいただく委員の方もいらっしゃいますので、その際に改めてご紹介申し上げます。また、オブザーバー及び事務局につきましては、一部異動等がございましたけれども、こちらも時間の都合がございますので、大変恐縮でございますが、この名簿と配席図をもってご紹介にかえさせていただきたいと思います。

【神作座長】
それでは続きまして、当ワーキング・グループの議事の取扱いについてご確認させていただきたいと思います。当ワーキング・グループは原則公開とし、議事録も公表させていただきます。したがいまして、公表を前提としたご意見、ご発言をお願いいたしたく存じます。ただし、個別企業のビジネス等に言及して議論をされる際に、競争上の利益への配慮から非公開を希望する場合には、あらかじめ事務局を通してご相談いただくようお願いいたしたく存じます。皆様、このような形で議論を進めさせていただくことでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神作座長】
ありがとうございます。それでは、このように進めさせていただきます。
次に、私が万が一、会議に参加できない場合に備えまして、座長代理として森下委員にお願いしたいと考えておりますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神作座長】
ありがとうございます。森下委員、どうかよろしくお願いいたします。
それでは早速、議事に移らせていただきます。本日は、まず事務局から資料2及び3についてご説明をいただき、その後、一括して討議を行います。
それでは、事務局からご説明をお願いいたします。

【守屋横断法制室長】
それでは引き続き、私のほうからご説明をさせていただきます。お手元に事務局資料を2種類ご用意しております。縦の資料2が討議資料、横の資料3がそれに対応した参考資料となっております。基本的には討議資料に沿って、必要に応じて参考資料を使用したいと思います。
まず、本日ですけれども、資金移動業に係る論点について討議をお願いしたいと考えております。討議資料の構成でございますが、7月に公表されたスタディ・グループの報告書を踏まえて大きく5つの論点に分けておりまして、それぞれについて、現状に触れた後に、本日のご議論の土台として検討の方向性の案をお示ししております。
それでは1つ目の、利用者資金の保全方法から順にご説明をさせていただきます。現状の部分につきましては参考資料の1ページ目でまとめておりますので、そちらをごらんいただければと思います。
まず資金移動業者ですけれども、送金を行うに当たって利用者から資金を受け入れます。その受け入れた資金の全額について保全が求められているところでございます。その保全の方法でございますが、現行規制上は3種類、規定されておりまして、原則は供託でありますが、そのほかに保全契約、信託契約が認められております。この信託契約につきましては、ほかの保全方法と併用することができないということになっております。その理由でございますが、算定頻度が異なっておるということでございまして、供託と保全契約につきましては、1週間における要履行保証額、これは受け入れている資金というふうにご理解いただければと思いますけれども、その最高額以上の額を、その週の末日から1週間以内に保全することが求められております。他方で信託契約については、各営業日の要履行保証額以上の額を翌営業日までに保全すること、不足が生じた場合には、その日のうちに、これは原則である供託で全額を保全するといったような義務が課されておるところでございます。
もう一つ、信託契約につきまして、一番下の欄に書いておりますけれども、信託会社等にモニタリング義務というのがございます。具体的には、資金移動業者が保全すべき額が急激に減少したような場合に、受託者である信託会社等から監督当局に届出をしてくださいと、そういったような義務が課されておるところでございます。
こうした信託契約につきまして、いろいろヒアリング等しておりますと、資金移動業者の方々からは、他の金融規制と比較しても事業者の負担が大きく、利用を妨げる要因となっている可能性があるといったお声でありますとか、あるいは信託銀行等からは、受託者が負うこととなる義務が信託事務コストの増加要因となる可能性があるといったような指摘をいただいておるところでございまして、実態として、信託契約を利用する資金移動業者の方は67業者中1業者ということになっております。このほか、資料のほうで青字でお示ししておりますけれども、例えば供託金を取り戻す場合でありますとか、保全契約における保証枠を減額する場合、あるいは信託契約で保全を開始する場合といったようなときに、監督当局の事前承認が必要とされていると。このあたりも、他の金融規制と比較して、保全に関する当局の関与が多い枠組みとなっているということでございます。また、保全状況について当局への年2回の報告が義務づけられている、このあたりが現状となっておりまして、討議資料の1ページと2ページの中盤あたりまで今申し上げたようなことを書かせていただいておりまして、2ページ目の後半から、検討の方向性の案として3点ほど掲げさせていただいております。
まず保全方法につきまして、供託、保全、信託のいずれについても併用を認めて、資金移動業者のビジネスモデルに応じた最適な組み合わせによる保全を可能としてはどうかというふうに考えております。例えば保全で常に必要となるような固定の部分は供託や保証で保全をして、日々変動するような部分は比較的出し入れがしやすい信託を使うといったような使い方も考えられるかと思います。そういったことを可能とする観点から、例えば算定頻度につきまして週1回以上に統一して、その期間中の最高額以上の額を、その末日から1週間以内に保全することを求めることとしてはどうかということでございます。
明朝体の部分で、その趣旨、週1回以上とする趣旨でございますけれども、今の供託のように1週間と画一的な期間としないことで、利用者保護の観点からよりタイムリーな保全を図る、そういった事業者さんの自主的な努力を阻害しない枠組みにできるのではないか、このような観点からのご提案でございます。
2つ目が、先ほどの受託者のモニタリング義務の部分でございますけれども、こちらについても他の金融規制を参考に見直すことが考えられるのではないか。最後が、保全に関する当局の関与についてでございますけれども、こちらも他の金融規制とのバランスも考慮しつつ、必要最少限度のものに見直すことが考えられるのではないかというふうに考えおります。他方で、事後チェック機能を強化する観点から、保全状況に関する当局への報告頻度を引き上げることも考えられるのではないか、このような3点をお示しし、そのあたりについてご議論いただければと存じます。
続きまして2つ目の論点、少額送金を取り扱う事業者、スタディ・グループの報告書で第3類型とされている部分についてでございます。こちらについても、まず現状、参考資料の2ページをごらんいただければと思います。
資金移動業者の方々にご協力いただきまして、サービスの利用実態について調査をした結果でございます。まず青色のグラフでございますけれども、1件当たりの送金の実績でございます。1万円未満のものが7割を占めている状況にございます。黄色いほうが利用者資金の残高、1アカウント当たりにどれくらいのお金が入っているかということでございますけれども、5万円未満のものが約9割というのが実態でございます。スタディ・グループの報告書《基本的な考え方》では、この少額送金を取り扱う事業者について、仮に規制緩和を行う場合、緩和の要件を、1件当たりの送金額が少額であることに加えて、利用者1人当たりから受け入れている資金の額も少額であるとすることが適当であるというふうにされております。
これを踏まえて、検討の方向性の案でございますけれども、まず少額の具体的な水準につきましては、先ほどの利用実態でありますとか利用者利便、利用者保護の必要性などを考慮して、数万円程度というあたりを相場感としてご議論いただければというふうに考えております。その上で、受入額の上限も少額とすることを前提とした場合に、具体的な規制緩和の方策として、利用者の保全に関して、先ほどの3つの方法にかえて、自己の財産と分別した預金で管理することも認めることが考えられるのではないかというふうに思っております。この趣旨、また明朝体のほうで書かせていただいておりますけれども、預金であれば迅速な引き出しが可能となりますので、現行の保全方法として事業者の資金繰りやコストが軽減されることから、利用者にとっても、低コストで利用者利便の高いサービス提供につながることが期待できるのではないか、こういった考え方に基づく提案でございます。
他方で、仮にこの預金による管理を認めた場合でございますけれども、資金移動業者の方が万一破綻をしてしまったような場合に倒産隔離がきかないということで、利用者が必ずしも十分な資金の還付を受けられないおそれがございます。このため、資金移動業者の財務状況についてのモニタリングを強化する、そういう観点から、預金による管理の状況及び財務書類についての外部監査を義務づけるということも考えられるのではないかと思っております。
3ページ一番下の丸でございますけれども、受入上限を少額とする場合、その実効性確保の観点から、上限を超えるような送金を他者から受ける場合、この少額類型のアカウントでは受け取れないようにする措置も必要ではないかと考えています。後ほど出てまいりますけれども、例えば次の第2類型を併営しているような場合には、そちらのアカウントで受け取るようなことは可能かもしれませんけれども、この第3類型のアカウントについては厳格な上限とする必要があるのではないかという問題意識でございます。
4ページに移りまして、受入額が少額でありましても利用者数が多いなど、事業規模が大きい場合も想定されるところでございまして、その場合に資金移動業の適正かつ確実な遂行が求められることに変わりはないというふうに考えております。このため参入規制やマネロン規制など、その他の規制については現行の資金移動業者と同水準とすることが適当ではないかと、このように考えてございます。
以上が少額類型の論点でございまして、5ページに移りまして、現行規制を前提に事業を行う事業者への対応、スタディ・グループの報告書で第2類型とされている部分でございます。この類型につきましては、基本的な枠組みは変えないことが適当とされている一方で、利用者資金の滞留の問題について何らかの対応を検討していく必要があるだろうと、そういうご提言をいただいておるところでございます。
現状の部分、資金移動業者が為替取引に関して利用者資金を受け入れることは、出資法上の預かり金には該当しないというふうに考えておりますけれども、実態として関連性に疑義のある利用者資金が滞留している可能性が指摘されておるところでございます。また、資金移動業者が利用者資金を受け入れた状態で破綻してしまった場合には、保全すべき額の算定時点と実際に保全が図られるまで、先ほどのように一定のタイムラグが存在しますので、利用者が全額の還付を受けられない可能性があるといった点ですとか、利用者が還付を受けるまでに相応の時間を要するといった利用者保護上の課題があるということがスタディ・グループでも議論されておるところでございます。
ここで、実際にどのような場合に滞留が生じるかということについてイメージを持っていただくために、参考資料の3ページでイメージ図をご用意しております。現状の資金移動業者による送金サービス、大きく4つに分類をさせていただいております。一番上が、C to Cと書いている個人間の送金でございます。スマホで何とかペイをダウンロードして、お互いに飲み会のお金を支払ったりする、双方が資金移動業者内にアカウントを持っていて、そのアカウント間で資金をやりとりするということでございます。受取人は必要に応じて預金口座への払出しも求めることができる、そこを点線で表現しております。
その下、C to Bの場合でございます。事業者から物を買って、事業者がその売上金を受け取る場合でございますけれども、2通りのやり方があるようでございまして、1つが、C to Cと同じように、受取側も資金移動業者内にアカウントを持っている場合、もう一つが、受取側はアカウントを持たずに、直接預金口座で資金を受け取るといった例もあるようでございますけれども、この上側のほう、受取側もアカウントを持っている場合には、この受け取った資金、また別の誰かに送金をするといったようなことで使われればよいのですけれども、売上がどんどんたまってくると、構造的に滞留が生じやすいと、そういった仕組みと言えると存じます。
一番下がB to Cでございまして、こちらは典型的には給料の前払いをするような事業者さんのサービスがあるようでございますけれども、一旦まとまった資金を資金移動業者のほうに事業者さんが入金をして、ニーズがあるたびに個人に個別に送金をしていくといったようなビジネスモデルでございます。一時的に高額の資金が資金移動業者内に受け入れられるといったようなモデルでございます。
こういった現状を踏まえまして、滞留の問題にどのように対応していくかということで、検討の方向性の案でございますけれども、まず為替取引との関連性に疑義のある利用者資金が滞留することを防止するため、例えば、1件当たりの送金上限額が100万円でございますので、1人当たりの受入額がこれを超えている場合には何らかの理由があるであろうという問題意識でございまして、こういう場合に資金移動業者に対して、利用者資金が為替取引に関するものであるかを資金移動業者内で確認していただいて、為替取引に用いられる蓋然性が低いと判断されるような場合には利用者に払出しを要請し、これに応じてもらえない場合には利用者の預金口座に払出しを行うといったような措置を講じることを求めてはどうかというふうに考えております。為替取引との関連性を判断する場合でございますけれども、例えば受入額、受入期間、送金実績、利用目的を総合考慮することが必要と考えられると思っております。そのほか考慮すべき要件があれば、ご指摘をいただければと思います。
少し抽象的になりますので、「例えば」の段落で具体例を挙げております。先ほどのイメージ図で言うと一番下のB to Cの送金のイメージでございますけれども、具体的な送金日時や送金額までは確定していないものの、複数の者に100万円以下の送金を行うために一時的に高額の利用者資金を受け入れるような場合、その額が送金実績や利用目的などに照らして合理的な範囲である限り、為替取引との関連性はあるというふうに考えてよいのではないか、そのように思っております。他方で、先ほどのイメージ図の上から2段目のC to Bの送金の例でございますけれども、売上金の受領などのために他者からの送金が積み重なった結果として高額の利用者資金を受け入れているにもかかわらず、預金口座に払い出されることもなく、また他者への送金実績もないような場合には、為替取引との関連性に疑義があるのではないかと、こういったものについて払出しに向けた対応を求めるといったようなイメージで考えてございます。
以上が現行類型の関係でございまして、討議資料6ページ、4つ目の論点でございます。高額送金を取り扱う事業者、第1類型とされている部分への対応でございます。
現状でございますけれども、個人による高額商品・サービスの購入でありますとか、企業間における高額取引に係る決済など、現行規制の上限額100万円を超える送金に対するニーズが一定程度存在するというご指摘がございます。スタディ・グループの報告書におきましては、この高額送金を取り扱う新類型の創設を検討する場合には、英国の規制も参考にして、利用者資金の滞留について制限を設けることが適当であるというふうにされておるところでございます。
検討の方向性の案でございますけれども、まず高額送金を取り扱う新類型を創設する場合、参入規制としては、資金移動業を行うために最低限必要な要件を満たしていることを確認するため、現行規制における資金移動業者と同様の登録制の対象とすることが考えられるのではないかと考えております。加えて、事業者が高額送金を取り扱うことに伴うリスク、例えば、利用者に与える影響、また社会的・経済的な影響、マネロンリスクなどが高まってまいりますので、プラス認可制の対象といたしまして、事業の具体的な内容や収支計画、事業を適正かつ確実に遂行するための体制整備の状況などを追加的に確認することが考えられるのではないかと思っております。特にシステムリスク、セキュリティー対策、マネロン対策などに関しては、現行規制における資金移動業者と比較して充実した体制整備を求める必要があるのではないか、このように考えているところでございます。
さらに、英国の規制を参考に滞留規制を設ける場合でございますけれども、一つの要件として、具体的な送金指図を伴わないと受入不可という要件が英国のほうでございます。この要件としては、入金時点で、送金日時、送金先、送金額が全て明確に指定されていることが考えられるのではないかと思いますが、その他考慮すべき事項がございましたらご指摘いただければと思います。
イギリスの規制でもう一つ、運用・技術上必要な期間を超えて滞留は不可であるというものがございますけれども、運用・技術上必要な場合というのは、英国の運用などをヒアリングしてまいりますと、例えば送金先の口座に誤りがあった場合、送金先の金融機関が休業日であったような場合といった、資金移動業者にとってやむを得ないような場合が考えられるということでございますけれども、その他どのような場合が考えられるかということについてもご議論いただければと存じます。
「また」の段落でございますが、これは、自ら他者に送金を行う場合のみならず、他者から送金を受ける場合であっても、この第1類型のアカウントに滞留することは認められないという考え方から、直ちに利用者の預金口座などに払い出される必要があるのではないかという部分でございます。
最後が、この高額類型について1件当たりの送金額の上限を設けるかどうかという部分でございますけれども、諸外国において上限額を設けている例が見受けられないということと、利用者資金の全額保全というものを維持する限り、事業者の方の資金力などに照らして、おのずと送金可能額にも一定の制約が課されることになるとも考えられるのではないかといった考え方から、先ほどのような参入規制、滞留規制を設けることを前提としまして、法令上の上限額は設けないことも考えられるのではないかと、このように考えておるところでございます。
最後、8ページ、5つ目の論点でございまして、その他の論点とさせていただいております。複数の類型ができることに伴いまして、同一事業者が複数の類型を併せ営むことについてどのように考えるかという論点があろうかと思います。仮に併営を認める場合には、利用者は類型ごとにアカウントを開設していただいて、事業者は類型毎に保全すべき額を区分管理することが必要ではないかと考えております。
このほか、併営に関して必要となる弊害防止措置などはあるかということでございますけれども、例えば、第1類型と第2類型を併営する場合、第2類型で受け入れている利用者資金を滞留規制が厳しい第1類型で送金するといったような場合に、第1類型の滞留規制の潜脱となるおそれはないか、このような問題意識を持っております。このあたりについてご議論いただければと存じます。その他、資金移動業に関して検討すべき事項がございましたら、ご指摘をいただければと思います。
事務局からは以上でございます。

【神作座長】
ご説明ありがとうございました。それでは早速、討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。
はい、小木曽さんからお願いいたします。

【小木曽委員】
新経済連盟の小木曽です。今回、委員としてご指名いただきましてありがとうございます。
最初に総論的なことを2つと、各論は総じて、大きくグループに分けると5つぐらい、コメントをこれから述べますが、新経済連盟のご紹介だけ簡単にしますと、2012年6月に設立された新しい経済団体でございまして、ニューエコノミーを推進するというのがテーゼでございまして、その観点から私は入らせていただいていると思っていますので、その観点から、以下ずっと会議は、報告書がまとまるまで意見を言いたいと思います。
最初に、前回スタディ・グループのときにオブザーバーとしても参加させていただいておりましたが、その最後から数えると2回目のときにお時間をいただいて、我々からちょっと懸念事項を述べさせていただきました。我々の最大の関心事項は、その懸念事項というのが今後の制度設計の中でほんとうに払拭されるのか、されるような制度設計になるのかどうかというところに関心を持っております。なので、その観点から以下の意見を述べる形になります。これが総論の1個目です。
総論の2個目として、私なりに今回の制度設計に当たってキーワードが幾つかあるかなというふうに思っていまして、まず当然、規制というのは理由をつけて、局限化してつくるものなので、立法事実がないといけません。言わずもがなでございます。規制範囲については局限化するというのが大前提だと思います。また、今回の目的というのは、多様なサービスを提供するというのが目的、イノベーションを引き起こしていくということが目的なので、それにかなう制度設計になっているかどうか、多様性ということ。それから、ビジネスモデルが激しく動いていますので、事業者の自主性、あるいは、画一ではなく非画一性、こういったものがキーワードになるなというふうに思っています。その観点から以下意見を述べることになりますが、これが総論の2個目です。
具体的な各論からまず入りたいと思います。1つ目ですが、利用者資金の保全方法です。これは我々会員の方からもこれまで、信託が使いにくい、複数の保全方法が併用できないのは不便だといった意見が出ていて、私もこの場で言ったことがございますので、今回の提案自体はもちろん賛成でございます。今後も引き続き、保全方法の多様化あるいは見直しを行っていただきたいというふうに思います。
一方で、保全状況の報告回数の引き上げのところがありますが、これについては、かえってコストや負担増にならないかというところもありますので、慎重な検討をお願いしたいと。それから、付言しますと、デジタルファーストが法律(デジタル手続法)で決まりまして、全ての手続について電子化していくことになりますので、報告内容や手法の効率化や電子化というのは当然しないといけない話だと思っていますので、これの検討も当然していただきたい。これが各論の1個目です。
各論の2個目、第3類型の問題についてコメントいたします。第2類型との違いなどについて利用者への周知をしっかりするということ、今回、多様な商品が出るような仕組みにするということで、この類型を設けるということは、我々が言ってきたことだと思いますので、賛成でございます。資料3の2ページ目にある円グラフを見させていただくと、1万円未満の送金の割合が大きいということもわかりますので、第3類型をつくることによって事業者のコストも削減され、利用者利便も高まるということで、全体のキャッシュレス化の促進という経済的効果というものも出てきて、非常に意味がある改正ではないかというふうに思っているところでございます。これが各論の2個目のコメントでございます。
続きまして、各論としての3個目のコメントです。第2類型への対応のところですが、これはもう少し、私は何回かオブザーバーでも発言させていただきましたが、いきなり各論の制度設計をどうするかという各論に入る前に、そもそも論のところの議論がまだ足りないのかなという気はしています。具体的に申しますと、「滞留」とは結局何を指すのか、あるいは滞留をしていたとしても、滞留自体、何がどういう観点で問題なのか。例えば現金化可能で加盟店で使える電子マネーというのは、ウォレットに資金があるということを前提としていますので、アカウントに資金があることが直ちに問題となるわけではないと理解します。先ほどご説明がありましたが、1アカウントに数億資金がある事例というのも付されていましたが、資金移動業と一くくりにされてしまっても、いろいろなビジネスモデルがありますので、ほんとうに問題にすべき事例あるいは対象というのは何なのかと。さっきの規制を局限化するという意味の観点から申し上げていますが、そこを議論しなければいけないというふうに思っております。
それから、討議資料の現状と書かれている1や2というのは、これは資金移動業全般の話でございまして、預金との違いを書いているということだと思います。いずれにしても、何が問題なのかというところが、ややというか、まだ我々としては腑落ちしないと思いますので、その制度設計として何が適切かという前提について、まだ議論が足りないと思っております。
さはさりながら、一方でサービスを利用しないアカウントに大量の資金があるというのは、事業者にとっても保全額だけかさんで、何かメリットがあるかというと、そんなことはないのは、また事実でございます。よって、各事業者独自の基準で、例えば休眠アカウントなどを検知して利用や払い戻しを促すといったようなことというのは、事業者にとってもメリットがあるのかなと。これは先ほど総論の2個目で言った多様性の話、あるいは自主的又は非画一性というキーワードとつながる話だと思っています。
言わずもがな、この為替取引って何をやっているかというそもそも論があるんですけれども、非常に広い概念なので、全てについて、この為替取引とか、あるいは関連性というところが、ビジネスモデルによって異なります。一律・硬直的な対応ではなく、それから規制を局限化するという意味で何がほんとうに問題になっているのかということを、もう一度整理する必要があるかなと思っています。これが各論の3つ目でございました。
各論の4つ目のコメントです。第1類型の話です。充実した体制整備というのが書かれておりました。第2類型と比較した場合、ここの内容があまり硬直的なものになり過ぎますと、先ほど私が総論の2個目で言った多様性というところとバッティングしてしまう可能性がありますので、バランスのとれた制度にしていただきたい。これが各論の4個目のコメントでございます。
最後、各論の5個目。すみません、長くなりましたが、これで話を終了させます。複数類型の併営というのは当然認められるべきかなと、それから各種手続において重なっている部分は1回で、ワンストップで済むように、行政全体の効率化というのもあわせて図っていただきたいということでございます。
長くなりましたが、私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは萩原委員、お願いいたします。

【萩原委員】
ありがとうございます。全国銀行協会の企画委員長を務めております萩原でございます。今回の決済法制の見直しで資金移動業が3類型になるということでございますので、それぞれの類型についてコメントさせていただきたいと思います。
最初に第1類型でございます。今回の案において、第1類型は上限なく送金を取り扱えるということになりますと企業間決済も担える形になると思っております。
我々銀行界からすると競争相手が増えることにはなりますが、それによって適正な競争が促され、送金サービスの品質向上に資するということは、私どもとしても歓迎すべきことだと考えております。
一方で、この類型で一番気にしなければならないことは、金融システムの安定性ということだと思います。特に決済システムリスクへの対応が十分かという点です。第1類型の事業者が何らかのミスや、万一破綻した場合などで、お客様である企業からお預かりした資金が相手先の企業にしっかりと送金できなかった場合には、受け手企業の金繰りに影響します。そうしますと決済不履行が連鎖、金融システム全体、経済活動全体が機能不全に陥る懸念があります。私どもとしてはこうした事態は絶対に避けなければならないと考えております。
その観点から、今回の見直し案につきまして、3点申し上げたいと思います。
まず1点目は、保全の件でございます。「1.利用者資金の保全方法」はまとめて書かれておりますので、これは第1類型を含めた全ての類型に適用されるものと考えております。そうしますと、資料2ページ目のところにございますが、検討の方向性の1つ目の丸の②のところで、「1週間以内に保全することを求める」とございます。これは、先ほど申し上げましたとおり、すぐに金繰りに影響するような業態でございますので、当然常時全額保全すべきだと考えます。また、それが遵守されているかをモニタリングする制度が確立されるべきだと考えております。
第2に、破綻時の制度整備という点でございます。この点については第1類型ではなくて第2類型、5ページ目の「現状」のところの2つ目の丸に、現状の課題として記載はされておりますけれども、今回の検討案では第1類型について全くそこに触れられておりません。万一破綻した場合に、破綻処理が通常の事業会社と同様に行われるとしますと、債権確定に数カ月以上かかりまして、その間払戻しや送金が行われず、金融システムへの影響は大きいものと思います。銀行の場合ですと、決済途上の資金は特定決済債務として預金保険により全額保護され、かつ、万一破綻する場合でも、金曜日に破綻させて、翌月曜日には通常業務ができるよう、いわゆる金月処理という枠組みが確保されております。第1類型でも同様に、破綻時でも迅速に送金が行われる制度設計は必要だと認識しております。また、もちろん破綻しないことが重要でございますので、今回の検討案で、財務の健全性を確保するための最低所要自己資本規制などの財務規制ですとか、他業リスクを排除するための為替業務単独での収支確保など、業務の継続性・安定性を確保するための方策が書かれておりませんが、そうした手当も必要だと思います。
第3に、当局によるモニタリングでございます。今回の第1類型は認可制ということでございますので、参入時のチェックがしっかり入ることは認識しております。その上で、通常業務につきましても、銀行並みの当局によるモニタリングが必要なのではないでしょうか。6ページの検討の方向性の2つ目の丸にシステムリスク管理、セキュリティー対策、AML/CFTなど、現行資金移動業者と比較して充実した体制整備が必要と書かれておりますし、それはそのとおりだと思いますが、それがしっかりできているのかは、自社で確認することはもとより、当局によるモニタリングが必要だと考えております。
少し厳しいことを申し上げておりますけれども、これはあくまでも金融・決済システム全体の安定性に影響を及ぼす話でございますので、それだけ慎重に議論をお願いしたいという趣旨で申し上げているということでございます。
続きまして、第2類型でございます。第2類型につきましては、3点申し上げたいと思います。
1点目、滞留資金と預かり金の関係でございます。そもそも資金移動業は、その名のとおり、資金の移動を行う業者でございます。為替取引との関係性のない資金の受入れは本来認められていないというふうに認識をしております。したがいまして、検討案にございます送金上限、現行100万円でございますが、これを超えている場合のみ為替取引との関連性を確認するというのはおかしいのではないかと考えます。100万円以下であれば要はこれまで通り滞留ができる、為替取引との関係性のない資金でも受入れができて、滞留が認められるというのはどうしてなのかというところが理解できないところでございます。どうしてもこれまで通りの資金滞留が必要だということであれば、銀行免許を取って活動すればいいのではないかと思います。以前も申し上げましたけれども、資金移動業者が貸金業登録を行いまして、資金移動業の保全方法として銀行保証を選択した場合には、滞留資金を使って貸し出しを行うことが可能となります。こうした事態は、同一機能・リスクに同一ルールを適用するという横断法制の基本原則に齟齬を来すものではないかと考えております。
2点目でございますが、為替取引との関連性の判断というところでございます。為替取引との関連性を判断するに当たっては、なるべく解釈の余地を残さないようにすべきであると考えております。今起きていることは、為替取引との関係性が、資金決済法の想定を超えて拡大解釈をされて、出資法上の疑義のある、いわば預金と変わらないようなサービスが提供されていることが問題なのだと思っております。したがいまして、5ページの下から3つ目の丸にありますような為替取引との関連性を考慮する要件につきましては、具体的、定量的に定めるべきだと思っております。特に滞留防止という観点からは、②の受入期間については明示すべきだと考えております。
なお、解釈の明確化という観点から付言させていただきますと、同一の者への送金を100万円以下に分割して送金するという行為について、現在、法律上明確には制限されておりませんが、第1類型の潜脱となる可能性がございますので、しっかり規律を定める必要があるのではないかと思っております。
3点目が保全です。今回、信託契約によるモニタリング義務を廃止することはどうかという検討案となっておりますけれども、資金移動業者においては、過去にも過少申告による供託不足で行政処分された事例もあったと認識をしております。さすがに誰も所要保全額の保全状況を確認しないというのはいかがなものかというところでございます。この点については、2ページ目の最後のパラグラフ「このほか」のところで、必要最小限の当局の関与と報告頻度の引き上げが記載されています。これがその牽制機能に相当するものかと思いますが、そうであれば、モニタリングの義務とこの水準というものの牽制がどれぐらい効くのかという点について慎重に検討すべきではないかと思います。
第3類型については2点申し上げます。
1点目は、事業規模との関係でございます。4ページ目のところで、「少額でも事業規模が拡大した場合を想定すると、適正かつ確実な遂行が求められることは変わりがない」という記述がございますが、現行の保全方法を変えまして、預金の分別管理をするだけでそれが担保されるのかは、少し疑問でございます。諸外国では、少額送金の事業者を定義する場合、事業規模で制限している事例が見られます。資産規模が閾値以上に達した場合には、本日の整理で申し上げると第2類型である標準的な送金業者に移行するルールになっていると認識しております。少額の決済において規制を緩和して、ベンチャーなどの参入を促してイノベーションを促進するという趣旨であれば、こうした枠組みも参考にすべきではないかと思います。
2点目は、預金の分別管理によります保全の有効性でございます。例えば第3類型の事業者に他の債務があった場合、この債務の弁済に延滞等が生じた場合には、破綻するより前に、債権者は期限の利益を喪失させて、差し押さえや相殺をしてしまうことがあり得ます。幾ら預金の分別管理の状況などについて外部監査を義務づけたとしましても、預金による分別管理に法的な倒産隔離効果がないとしますと、利用者資金の保全にならないのではないかと考えます。一方で、資金移動業者による利用者資金の流用あるいは転用を防止するという意味では効果はあるやり方でございますので、現在制限のない資金移動業者による利用者資金の流用あるいは転用を制限する必要があるということであれば、第1類型から第3類型に共通した制度的枠組みとすべきではないかと思います。
最後、「資金移動業に係るその他の論点」に示されております、併営を認めるという場合における弊害防止措置としましては、2点注意すべきかと思います。1つは、この類型間の資金移転を厳格に制限すること、2つ目は、利用者から見まして、各類型が相互に関係のない、別のサービスであるということがはっきりとわかること、この2点は最低限必要なのではないかと思っております。
以上でございます。

【神作座長】
どうもありがとうございました。ほかにご意見、いかがでしょうか。
岩下委員、お願いします。

【岩下委員】
どうもありがとうございます。ただいま小木曽メンバー、及び萩原メンバーという、お二人の新しく入られたメンバーからのご意見をお伺いいたしました。これまでの金融制度スタディ・グループは、いわゆる有識者委員から構成され、業界であるとか、あるいはIT産業のような立場を代言する方はメンバーには入っておられませんでしたので、比較的淡々に議論が進んでいたのに比べますと、これからの議論がとても楽しみになるやりとりだったと思っております。
その上で、私もこの分野については長らく考えてきたことがございますので、若干なりとも考えを述べさせていただきたいと思います。どちらかの業界の立場に立つということではありません。歴史的に考えますと、そもそも今回、我々がなぜこういう検討をしているのかというと、金融審議会総会で、情報技術革新を踏まえた新しい決済法制の検討をするようにといった諮問をいただいたからです。我々は、そういう意味では当然、情報技術革新が大きく世の中を変えているということを認識して、それを前提に動かなければいけないのだと思っております。
この点で、歴史的に考えますと、多分、今日議論されているものの一番最初のビジネスモデルをつくったのは、1998年にアメリカで設立されたPayPalであると思います。1998年にピーター・ティールやイーロン・マスクなどが設立したPayPalは、それまでの銀行とは異なり、銀行免許を持たない――後にルクセンブルクでたしか銀行免許を取ったという話があったと思いますが――非銀行業として、まさに今日議論になっているようなC to CあるいはC to Bの取引に取り組んだわけであります。そのビジネスモデルが、例えば現在の何とかペイであるとか、割り勘システムであるとかというものに受け継がれているというふうに認識しております。
それらのものがもらしたイノベーションというのは非常に大きいものだと私は思っておりまして、PayPalがその後、例えばPayPalマフィアを通じてユーチューブをつくり、フェイスブックをつくり、LinkedInをつくりというふうな形のイノベーションを起こしたのと同様に、PayPalそのもののビジネスモデルが、その後のインターネットを利用した金融という新しいカテゴリーを切り開いたんだと、これが1998年の創業であったということは我々が非常に認識すべきことだと思います。
その上で、日本の資金決済法はどうであったかと考えると、これは日本の銀行業が、それまでの様々な技術蓄積から、銀行業としてのイノベーションは大変立派にやってきたんだと思います。例えば米国では、日本の全銀システムに当たるものは存在しません。異なる銀行間での資金決済をするのは大変です。これに対して日本では、1968年という非常に早い時期に地方銀行データ通信システムという、現在の全銀ネットの前身がスタートしました。世界でも初めてのネーションワイドな資金決済システムができ、我々が現在では当たり前と考えている銀行間の送金、銀行の口座というものをベースに全ての人が金融包摂されるという仕組みが、もう非常に早い時期にできていたのだと思います。
それは日本の銀行がこれまで成し遂げてきた大変立派な成果であり、それが現在の人々の利益であるとか、何をやるときにも、例えばまさに何とかペイを使うときでも銀行口座というのを何となく前提として我々は考えています。まさに、例えばこの資料3の3ページにあるように、資金移動業者のアカウントは、途中では仲介するものの、結局、両端には銀行口座があるわけですので、銀行口座というものが人々の資金の本来あるべき姿であって、その途中に立っているこのアカウントというものは、本来のものではないのだと、一時的な姿である、仮の姿であるというふうに何となく考えられているように思います。
このモデルを多分最初につくったのはピーター・ティールたちだと思いますが、そのピーター・ティールが1998年にPayPalを立ち上げた直後に、PayPalの社員に語ったという言葉が記録として残っておりまして、我々はウォール街の銀行たちに支配されている金融というものを民主化するのである、それが我々の使命であるというふうなことを彼は申し述べたということが伝わっています。PayPalをしてインターネットを使って銀行業を再発明した企業というふうに言われているのは、そのためであると考えています。
このインターネットの上に置かれたアカウントという新しい概念の中で、価値のやりとりが行われるようになったことには色々と議論があります。PayPalができてから、あるいは日本でも資金決済法ができて、資金移動業者が同じようなアカウントを提供するようになってから、これは銀行が提供する預金口座と何が違うのかと、これはそもそも銀行業そのものではないのかと、今、萩原メンバーがご指摘になったような意見というのは当時から非常に強くあったと認識しております。
ではなぜ日本では資金決済法が2009年に制定されたのかと言えば、その1968年に起源を持つ全銀ネットというものが大変確実で安全で、事故もなく利用されてきたという意味で非常にすばらしかったわけですが、ただ一方で、これが、例えば一般の個人が店頭で利用するというのは、米国をはじめ海外ではクレジットカードよりもデビットカードのほうがやや多目に使われているというのはよく知られていることでありまして、例えばスウェーデンではほとんどキャッシュレス化されておりますが、これはSwishと言われる一種のデビットカードが銀行業界によって提供されているわけですが、こういったイノベーションは、残念ながら日本の銀行業界からは起きませんでした。J-Debitというトライがあったわけですが、それは残念ながら失敗してしまったわけです。
そのイノベーションを何とか起こさなければいけないのではないかという問題意識が2009年の資金決済法の制定につながったのだというふうに考えれば、当然、資金決済法の求めている仕組みのもとでの新しい決済業というのは、銀行業と全く同じものではある必要はないのだろうと思います。その意味では、もともと現在もそうですし、例えばトランスファーワイズは第1類型に相当すると考えられていると思いますが、既にトランスファーワイズ・ジャパンは昨年から活動しており、一応資金移動業の類型に入りつつ、上限100万円を守りつつ、国際送金に実際取り組んでいます。その意味では、そうしたビジネスがこれからより拡大し、その上限枠が取り払われる、あるいはさまざまな何とかペイの世界で競争が行われて、それが個人のメリットになるということを多分想定しているものだと思います。
すみません、私も長くなってしまいましたが、その意味では、そういう変化のもとで我々がこの金融審議会総会での諮問に答えるとすると、多分それは必ずしも現在の銀行業のコピーとして資金決済業を新たに設けて、それに同じような、全く同じ規制を適用するということは多分ないのだろうと思います。一方で、萩原委員のおっしゃった、同じリスクには同じルールをという基本的な考え方は維持するべきであるとすると、ではどうやってこのリスクとルールのあるべき姿へのアクセントをつけていくかというのが非常に大きな問題なのであろうと思います。
若干個別の論点について言及させてください。保全についてですが、この保全の法律論自体については多分これからいろいろ議論があるんだろうと思いますが、私自身が直接資料を見て感じたのは、1週間単位で計算し、その1週間の間のピークだけ次の1週間に保全するとか、現代の情報技術を前提とすると、そういう議論をしていていいんだろうかということなんです。現代の情報技術を利用すれば、リアルタイムで保全をすることは、技術的には当然可能であります。それは当然必要なコストがかかるわけでありまして、規制の強化になるということは多分、小木曽委員も気にされていることだと思いますが、一方で、その技術的にできることを、規制上不要とされているからほんとうに1週間の上限額で保全をする、でいいのだろうか。利用者に対して安心を与えるということが本来の業者に求められていることだとすると、こんな風にリアルタイムで保全をしているんだから大丈夫ですよということをアピールするべきなのではないかと思います。
あるいは、萩原委員のおっしゃったように、そもそも銀行と同じように完全、金融当局によるレギュレーションというか検査をがっちり受けて、モニタリングを日常的に受けるべきではないかという話もあるかと思います。ただ、そうなるとこれはほんとうに銀行と何が違うのかということになってしまいます。だから、ここは保全を利用するとしても、一種レガシーとして残ってしまった1週間単位を前提として議論するというのは、何となく私は違和感があります。スタディ・グループの席でも、現在のままでは保全が不足するケースが多々あるということが指摘されていたと思います。規制強化にできるだけならないように、かつ技術の革新を前提とした保全を検討するべきです。その場合、どこまで業者が自由に努力できるのか、それをきちんと実効性があるようにモニタリングできるのか、モニタリングの担い手は、自主的な監査によるものなのか当局によるものなのか、報告の機会はどうするのか、というさまざまなオプションを考えるべきです。いずれにせよ、現在の、何とも古くさい、紙とはんこでやっていた時代の仕組みをそのままルールに入れるのは、私はいかがなものかというふうに感じる次第であります。
それから、第1類型、第2類型の議論について言うと、既にさまざまな議論、先ほど指摘があったところですが、私が1つだけここで申し上げたいのは、セブンペイ事件であります。セブンペイ事件というのは、皆さんご存じのとおり7月1日に始まったセブンペイが、7月1日の夜からもう既に、すぐに攻撃を受けてしまい、3,000万円程度と言われていますが被害が出て、すぐにチャージが禁止となり、チャージの受入れをやめて、結果としてチャージができない、クレジットカードのリンクもできないという状態で、事実上サービスがとまったまま9月末にはサービスを停止し、10月1日からはリファンドをするという話になったわけであります。7月12日には、資金決済法に基づいてセブンペイに対して報告命令が出されたという報道がなされたところでありました。
その意味では、セブンペイ事件というものは、まさにそういうことが起こらないようにするというのが、このルールのつくり方の1つの重要なポイントだと思うんですが、私は10月1日から始まったセブンペイのリファンドというのを実際にやってみました。私自身は、できるだけ早い時期から、つまりセブンペイによって禁止されたのはたしか7月の非常に早い時期だったと思いますが、それ以前に多目の金額をセブンペイにチャージしておりまして、時々使っていましたけれども、それがずっと、9月30日の最後まで使った、一番最後まで使っていた人間の1人だと思いますが、それで残った8,000円ぐらいを10月に入ってからリファンドしたんです。
およそ考えられないぐらい複雑な仕組みでした。私も相当苦労しましたので、あれでリファンドできる人が一体どれだけいるだろうかという感じを受けたわけであります。もし1円でも残高が残っていらっしゃる方は実際にやってみるといいと思います。ここまでやるかという感じの、ものすごいセキュリティー対策を講じて、何回も何回も2要素認証でチェックしながら、これでもかというまでやって、その上で、最後に人手でチェックしますから11月まで待ってくださいというのが出てくるということで、私もびっくりしました。ただ多分、保全をして、当事者がもし仮に例えば破綻してしまってリファンドするという話になると、多分これに近い事態になるように思います。
そうするとやはり、これは萩原委員がおっしゃるとおり、こういうサービスをやるからには、実際にそういう問題に直面してしまうと非常に消費者は苦労をします。否が応でも、リファンド1つするにも、セブン-イレブンの店舗に行って、残っている8,000円を換金してくださいと、チャリンと現金をもらうわけにいかないんですよね。そうだとすると、それはそういうことにならないように十分なチェックをすることは非常に大事になってしまうかなというのが、今回の事件で私は非常に強く感じたところでございました。
これからの建設的議論を期待してコメントさせていただきました。どうもありがとうございました。

【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、中谷委員、お願いいたします。

【中谷委員】
座長、ありがとうございます。IT団体連盟の中谷でございます。IT団体連盟といたしましては、決済法制の具体化に向けた議論に当たっては、まず、ユーザーの利便性の向上と安全性の両立が図れるのか、2番目に、国のキャッシュレス政策に沿うものなのか、そして3番目にイノベーションを阻害しないのかといった観点で検討を進めるのが重要であると思っております。そこで、この3つの観点から、資金移動業の第3類型、第1類型、第2類型の順に意見を述べさせていただきたいと思います。
最初に第3類型につきましては、これまで議論なされてこられた問題に対しまして、我々から見ても、利用実態に即した、現実的な規制のあり方を示したものというふうに認識しておりまして、金融庁のご努力に敬意を表したいと思っております。また、資料2の3ページの検討の方向性の案の2つ目の丸に、自己の財産と分別した預金口座による資金保全が許されると記載されてございますけれども、これも非常に合理的な対応策であると考えております。資金移動業者では個々のユーザーの未達債務額というのは当然把握しており、よって、分別された口座内の預金が誰に帰属するものなのかのデータというのを残しておくのは可能でありますし、外部監査というのも対応可能なものであると思っています。安全・安心のため、各事業者が、例えばですがセキュリティー対策を行うことは当然でございますし、マネロン対策も重要であると思っています。そこで犯罪収益移転防止法の本人確認義務については、第3類型のアカウント開設時に、第2類型同様に実施した上で、その後はリスクベースでマネロン対策を行っていくということも、実現可能だというふうに思っています。
1つ、この第3類型についてお願いがあるとすれば、少額の定義があります。少額は、我々としては5万円以下としてはどうかと考えております。資料3の2ページに、利用者の資金残高は1人当たり5万円未満が約9割と、記載されております。実際、PayPayに聞いてみても、決済額も5万円未満でほぼ全て拾えております。5万円であれば、公共料金、すなわち電気、水道料金、あるいは税金、またはホテルの宿泊代などにも使えて、キャッシュレス化の促進に貢献できるのではないかと思います。逆に2万円くらいでありますと、使えるシーンが限定され、ユーザーの利便性とが損なわれる可能性も高いので、ある程度の利用可能額があったほうがいいと思います。
次に、第1類型でございます。第1類型は高額な送金を対象とするということでございますので、それなりに重い規制が必要であるということは理解できます。ただ、新しいビジネスモデルであること、またテクノロジーの進展というのは非常に速いので、イノベーションを阻害しないような、過度な規制にならないようにすることが重要ではないかと思っております。
最後、3つ目は第2類型でございます。第2類型については、ユーザーの利便性を維持しつつ、安心・安全な決済ビジネスの実現を目指す方向で規制されていくということが極めて重要と思っております。そこで1つ、具体的な提案でございます。例えば1年以上、残高に変動がないアカウントについては、これは滞留により預かり金に近いものになっていると考えられるので、これは払い戻すという対応もあるのではないかと考えます。これに加えまして、2つ目の提案として、例えば資本金規制などにより、財政の健全性を満たす事業者のみ滞留規制を課さないことで破綻時のリスクを小さくするということも、オプションとして検討する価値はあるのではないかと思います。
そして、この2つの提案を踏まえた上で第2類型についての3つ目の提案ですが、資料2の5ページに記載のように、いわゆる総合的な考慮方式でいく場合は、どうしても判断がまちまちになってしまうということが考えられますので、資金移動業者ごとに、金融庁のガイドラインに沿った形で、自社のビジネスモデルを踏まえたモニタリングの方法というのを事前に当局に届け出ておいて、事業者はそのとおり実施するという方法があるのではないかと思います。
最後に、ちょっと角度は違うのですけれども、仮に給与のデジタルマネー払いが規制改革により実現した場合は、個人のアカウントには毎月一定の額が入ってくると思います。また、ビジネス向けのアカウントは、商品の仕入れや給与の支払いに用いられることが想定されますので、1つの取引が100万円以下でも、多数の取引の決済や送金をするためには、別の取引で受け取ったデジタルマネーをそのまま使えるようにする必要がありますし、それが自然な資金の流れになるのではないかと思います。ですから、このようなビジネスアカウントが実装されますと、資金移動業者から銀行口座に支払う振込手数料が不要になるということもありますでしょうし、加盟店手数料が安くなり得るというメリットもあります。こうした意味で、第2類型の個人向けあるいはビジネス向けの発展可能性も踏まえ、キャッシュレス社会の実現に向けて、こうした配慮をした制度にしていただけると、大変ありがたいと思います。

【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、福田委員、お願いいたします。

【福田委員】
ありがとうございます。常に問われなければいけないのはリスクと利便性、あるいはイノベーションとのトレードオフという問題でありまして、どちらも大事だということだと思います。また、それを考える上で、この事務局の討議資料の一番最初にある問題意識、「利用者保護等の観点から、事業者は受け入れた資金を適切に保全する」、この趣旨というのは常に一番大事な問題で、それを考えながらやはりイノベーション、利便性という問題を追求していくということなんだろうとは思います。
通常、金融のリスクというのは、いろいろなものがあります。もちろん利用者保護があると同時に、萩原メンバーからありましたが、システミックリスクというのが金融では起こり得るリスクです。けれども、システミックリスクはこういう事業では基本的に起こらないようにすることが重要です。そういう意味では、経済学でいうナローバンク的なものとすることで、信用創造というのを起こさない仕組みづくりが必要であって、滞留資金が発生することは、場合によってはやむを得ないところはあるとは思うんですけれども、ではそれによって、その資金が別に流用されたりして信用創造が生まれるというようなメカニズムが仮に少しでもあれば、それはやはり好ましくないということです。やはり信用創造は起こらないような仕組みづくりというのは常に大事で、もし信用創造をしたければ、これは銀行免許を取ってくださいと、そういうことにやはりなるのではないかなということだと思います。
それから、第1番目の趣旨の利用者の保護という観点ですけれども、利用者といってもいろいろな利用者がいるという観点はやはり大事です。まず個人と法人ではかなり違う、リスクに対する耐性というのは違うのではないかと思います。個人であれば、たとえ1万円であってもなくなれば、それはそれでやはり大きい問題だと私は思います。ただ会社であれば、法人であれば、1万円が仮に戻ってこないという問題は、それほど大きな問題にはならないわけです。先ほど事務局の参考資料の図式でB to CとかC to Bとかがあったと思うんですけれども、Bの観点であればある程度のリスクに対する耐性というのはあり得ると思うんですが、Cに関してはやはりかなり慎重に利用者の保護を考えなければいけないということだと思います。
それから、実は経済学では、リスクと不確実性は区別しなければいけないという概念があります。これがどう違うのかというと、経済学でリスクというのは、どういう頻度で、あるいはどういう確率でどういうことが起こるかというのがかなりはっきりわかっていることをリスクと通常は呼びます。それに対して不確実性、これはフランク・ナイトという人が提案した概念なんですけれども、そもそもどういうことがどういう確率で起こるかもわからないという、これをフランク・ナイトは不確実性と呼んだんです。
こういう新しい分野というのは、この経済学で言う狭い意味でのリスクではなくて、不確実性の問題というのがかなり大事なんだろうという発想は、それなりに重要だと思います。先ほど何が問題なのか明らかにせよみたいな話も出ておりました。けれども、こういう分野は必ずしも、何が問題で、どういうリスクがどういう確率で起こって、だからこういうふうなことを規制しましょうということができない分野だという問題意識というのはそれなりに大事です。だから規制を強化しろということを言っているわけではありません。ただ、今まで大丈夫だったから、あるいは具体的にリスクというのが今思い当たらないから、ともかく規制緩和しましょうということまではなかなか踏み切れないし、またそういう潜在的な可能性に常に注意を払いながら、利便性とイノベーションを促進していく発想というのは、やはり大事なのかなということは思います。
それから、高額かどうかという問題に関して最後に1つだけコメントしたいと思います。高額という場合でも、ほんとうに一瞬だけ高額の送金をするという場合と、常に高額の送金をしているというケースは、やはり状況として違うのかなと思うんです。個人が、日ごろは大体せいぜい数万円の買い物しかしていないけれども、たまたま、1年に1回とか数年に1回だけ高額な商品を買うというようなケースと、企業同士で常に高額な送金が行われているケースでは、同じ高額といっても、やはりかなり第1類型に対する考え方も違ってくると思います。あるいは、たまたま送金で一時的に上限を超えるような送金があったという場合でも、すぐに解消されるような問題と、それがかなり滞留して、長い間高額なものが滞留しているという場合ではやはり違うと思います。高額という場合でも、それが一時的な現象なのか、かなり恒常的な現象なのかというような区別も、こういう問題を考える上では少し大事なのかなと思いました。
以上でございます。

【神作座長】
どうもありがとうございました。丸山委員、お願いします。

【丸山委員】
Fintech協会の丸山でございます。このような場で発言させていただく機会をいただきましてありがとうございます。
まず私のほうから、先ほどほかの委員からもありましたとおり、やはり利用者の方に安心して使っていただく、イノベーションに向けて新たな取組みが必要だと、そういう観点から発言させていただければというように思っております。
各論点について、1つずつお話しさせていただきたいと思います。まず保全の件でございます。先ほど来、例えばリアルタイムで保全したらどうかというようなお話がありました。我々フィンテック企業の技術からすると、リアルタイムで保全するようなデータを流すことは簡単です。これをやりたくないと言っているわけではなくて、供託所への払い込み、銀行保証への連携、信託の連携、どちらかというと連携する先がリアルタイムで果たして動けるのかどうかというポイントも実はあるのではないかとは思っております。あと、一瞬高額の滞留となったが一瞬で払ったので滞留が消えた場合でも、一瞬でも高額だから保証額上がるといった、もうリスクがないのにという課金される体系などは問題もありますけれども、要するに我々フィンテック企業のような資金決済をやっているような会社がやりたくない、やれないということよりは、やれる方法を業界を挙げて考えるべきではないかというのが保全に関して考えるところでございます。
論点の順にお話しさせていただければと思います。続きまして、2点目の少額の部分でございます。非常にキャッシュレス推進、利用者利便のために進んだご提案ということで、ぜひ前向きにこの検討を進めていただければと思っております。コストが削減されるという部分がやはり大きなポイントになると思うんですが、これが消費者へ還元されるという側面もあれば、キャッシュレスを進めるに当たって加盟店の料率が高いですとか、あとよく言われるのが入金サイクル、支払いサイドの問題で受け入れにくいみたいなところが、まさにこれで解決できるとすると、大きな改善効果、大きなポイントになるのではないのかなというふうに感じてございます。
3点目、第2類型の論点を掲げていただいているところでございます。こちらも我々としては、総合考慮という判断をさせていただけるというのは非常にありがたいと思っております。というのも、我々はやはりデータで見ていきます。今後の技術を使ってどうあるべきかということだと思っておりますので、やはり個人のビヘイビア、類似している業種業界のビヘイビアをもとに、そのアカウントが送金類似ではないのかどうかで予測をしていく、AIで見ていく、こういったことは今後の技術を用いていけば、より確実にできていく部分もあろうかと思っていますので、今後の金融サービスのあり方としては、この総合考慮を技術でやっていくというのは非常に意義があるのではなかろうかというふうに感じているところでございます。
次に、論点の4つ目に掲げていただいている高額送金、第1類型のところでございます。我々としては、登録制の上に第1類型をやる場合は、認可という形も柔軟に対応いただけるという想定でおりますので、非常によい制度ではないかというふうに思っております。ただ、高額送金なので滞留が基本的には許されない、原則そのとおりだというふうに思っておりますが、今フィンテックサービスで求められているのが、法律のリスク、あるべき論も当然ありながら、ユーザー、利用者や事業者の業務ですとか行動、これを我々は観察しながら、フリクションをなくしていく、それによって便利なサービスを増やしていく、そう考えたときに、一瞬でも滞留のようなことが全く認められないというと、かなり硬直的なサービスなのかなと思います。
例えば海外送金の事例でいくと、レートの変動があるので、少し多目に入れて、レートがいいときに送ったらちょっと余るとか、個別に見るとこのようなケースもあるかなと思いますし、あと、これはちょっと第1類型の中では難しい部分があるかもしれませんが、やはり企業の支払業務を考えると、毎回毎回送るというのは業務負荷が高いので、何回かまとめて処理をするというのは業務上発生するものと思います。当然これを全部、第1類型に当たる数億円みたいなものをやるのはなかなか難しいと思いますが、業務によっては第2類型のように小口で送金をすることを前提にしながらも、数件が100万円を超えるようなケースも当然出てくるのではなかろうかと思います。全てが数億円を滞留させるということではなく、そういう業務を想定すると、例えば第2類型と第1類型が行き来できるようなものも、第1類型を取る認可の中で個別に協議をしていくような要素、余地が残っていただけると非常にありがたいというふうに思っております。これは論点5つ目にもかかる部分なんですが、このようなところをご検討いただけると大変ありがたいというふうに思っています。
私からは以上です。

【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、長楽委員、どうぞ。

【長楽委員】
日本資金決済業協会の長楽でございます。このような場でメンバーとして発言させていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
「決済」法制に係る具体的な制度設計の検討に当たりましては、金融制度スタディ・グループにおいてオブザーバーとして申し上げたところでございますが、利用者保護に配意しつつ、利用者の利便性を損なわせることがないよう、既存事業者の事業継続に支障がないよう、イノベーションの促進につながるよう、政府の政策でもあるキャッシュレス社会の実現に支障が生じないように十分ご配慮いただき、引き続き十分な検討、議論をさせていただければと考えております。
本日は、討議資料について丁寧にご説明いただきましてありがとうございました。この討議資料の論点につきまして、3点程、協会事務局としてご意見、ご要望を申し述べてさせていただきます。
1点目でございますが、討議資料の5ページ「3.現行規制を前提に行う事業者(第2類型)への対応」についてでございます。検討の方向性(案)では、為替取引との関連性に疑義がある利用者資金の滞留を防止するために、いくつかの措置が例示されています。この点、現行の資金移動業において、一時的に送金上限額を超える利用者資金を受け入れる可能性のある場合としては、例えば、次のようなものが考えられます。企業から同時に多数の個人宛ての少額送金、例えば恒常的に発生するECサイトでの商品代金の返金やイベント・コンサートが中止となった場合のチケット代金の払戻しなどを行うサービスでは、一時的に多額の資金を受け入れますが、受取期限までに受取人が受け取ることにより送金取引が終了します。また、例えば個人事業主や中小事業者が資金移動業者にアカウントを設定し、ECサイトを利用して商品の売買等を行う場合の資金の受け皿口座として利用する場合には、商品の仕入資金の送金のみならず、商品の売上代金の入金が発生し、仮に売上入金が継続した場合など、利用者側の事情により利用者資金の残高が一時的に多額になる場合もあり得ると考えます。
5ページに記載されている「措置」に関しましては、例えば、資金移動業者自らが受入資金の為替取引との関連性を疎明できるよう確認を行い、仮に為替取引に用いられる蓋然性が低いと判断される場合には、利用者に払出しを要請し、利用者がこれに応じない場合、利用者の預金口座に払い出すなど、ビジネスモデルに応じ各社が自主的に為替取引との関連性を確認し、これが疎明できない場合には滞留させない体制の整備を行うことにより、資金移動業者に為替取引と関連のない利用者資金が滞留するリスクを軽減することは十分に対応可能と考えます。
日本資金決済業協会におきましては、会員と連携・協働し、利用者資金が為替取引に関連するものであるかどうかを判断する際の考え方、関連性を疎明できない場合にとり得る措置について、各ビジネスモデルに応じた具体的な指針の作成等に向け検討してまいる所存でございます。
2点目でございますが、討議資料の6ページから7ページの「4.「高額」送金を取り扱う事業者(第1類型)への対応」についてでございます。6ページの検討の方向性(案)では、参入規制として、「現行規制における資金移動業者と同様の登録制」の対象とし、加えて、高額送金を取り扱うことに伴うリスクを踏まえた対応として、例えば「認可制」の対象とするとされています。
登録制となった場合に必要となる体制整備の水準や、認可制とされた場合の認可の審査に当たりましては、取り扱う送金額の程度や、利用者が個人か法人かといったビジネスモデルに応じたリスクベースでの審査を行っていただくことにより、会員会社を含め多くの企業が参入できるような配慮をお願いいたします。
3点目でございますが、討議資料3ページから4ページの「2.「少額」送金を取り扱う事業者(第3類型)への対応」についてでございます。3ページの検討の方向性(案)では、具体的な規制緩和の方策として、例えば、財務書類等について外部監査を義務づけることにより、利用者資金の保全に関し、現行の保全方法に代えて、利用者資金を自己の財産と分別した預金で管理することを認めることにより対応する案が示されています。
このような規制緩和策は、事業者にとって、コストの削減とともに多様なビジネスの選択肢を広げるものであり、利用者利便の向上やイノベーションを促進し、ひいてはキャッシュレス社会への実現にも寄与するものと考えられ、積極的な検討をお願いいたします。
以上でございます。ありがとうございました。

【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは続きまして、森下委員、お願いいたします。

【森下委員】
ありがとうございます。3つの類型に分けて、いろいろ新しいビジネスが参入しやすいようにしようというような方向性は非常に望ましいことだとは思うのですけれども、やはりリスクについてもしっかりとした手当てをすることが必要なのかなと思います。
まず保全の方法に関してでございますけれども、これはもう既に、例えば岩下委員がおっしゃられましたように、1週間は今の時代どうなんだろうというお話ですとか、丸山委員から、テクノロジーを使えばもっとリアルタイムでできるというようなお話があったわけですから、これはやはりそういった方向に積極的に取組めるような規制枠組みにしていくべきなのではないかと思います。それと同時に、やはりちょっとどうかなと思いますのは、供託されている、あるいは分別されているお金を引き出すのに、また何カ月もかかるとか、それもやはり今どきどうなんだろうというような気がいたします。
この点は、供託という既存の制度をそこのメカニズムとして使っている以上、なかなか難しいところなのかもしれませんけれども、例えば他の金融機関に分別して預けている預金口座というようなもの、これは、自信はございませんが、英米法系であればトラストを使って、そもそもそれで分別の効果を発生させると、一般の破産財団には取り込まれないというような法的な効果を発生させるという考え方もあり得るのかなとも思いまして、要は、既存の分別の方法が、我々が考えているリスク管理の方法にうまくマッチしないのであれば、何らかの形でそこを工夫することによって、もうちょっとスピーディーにいろいろな保全の方法を図っていけるような工夫というものが、技術のほうでも大事だと思いますし、法制度のほうからも大事なのではないのかなと思っています。
あと、私は詳しく存じ上げないのですが、いつからいつまでを未達債務としてカウントするかというような問題もあるように思いまして、おそらく今であれば、どの時点でほんとうに債務として完了したのかということの管理も細かくできると思いますので、そのようなことで、やはりもう少しテクノロジーを生かして、ここの部分は精緻化をするような方向が望ましいのではないかと思います。
次に、滞留金と呼ばれているものに関してですが、これは、スタディ・グループのときからも何度か、関心を持って発言させていただきました。ほんとうに特定の目的のためにお金を持ってきました、この送金をしてくださいというふうな形で持っていったものを一時的に預かってもらうというようなこと、特定の委任業務をしてもらうためのお金を一時的にお預かりいただいているということはあると思うのですけれども、やはり被仕向送金まで受けるような口座になっているということになりますと、委任事務のために預かっている、ある特定の送金サービスのために預かっている場合とはかなり違う性格のお金がそこに入ってきているのではないかというような気がいたします。
それに加えまして、先ほど今後の将来像として、例えば給与がそこに入るという可能性もあるのではないか、あるいは給与のための振込資金をそこに入れておくということも考えられるのではないかというお話がありましたが、そのようなことになりますと、万々が一、その口座を管理している主体に何かありますと、例えば数か月待たないとお金が出てこないですとか、金月処理もなされないというようなことですと、給与や給与振込のための資金が塩漬かるのかというようなことも、ひょっとすると何かほかの手当てがあるのかもしれませんが、懸念されるところであります。そういう意味で、やはりちょっと性格の違うお金が入ってきていますので、その部分をしっかりと議論しないまま滞留金というような言葉で何となく処理をするというのは、あまり適切ではないのかなというように思います。
また、これも以前申し上げたと思いますけれども、口座に入っているお金については、銀行さんと提携されているのかどうかわかりませんけれども、そこから出金をするというようなことも比較的自由にできるようなサービスも提供されていると理解しております。そうしますと、流動性リスクというんですか、引き出しが殺到して、そのときに適切に出金に応じることができないというようなリスクはほんとうにないんだろうかという点も気になります。供託しているお金は本当に数か月待たないと取り戻せないのかですとか、他のお金をどういうふうに運用されているのかなどが分かりませんので、そういう流動性リスクに対する備えは万全にされているのかも分からないのですけれども、そういったよくわからない、ほんとうにこのリスクに適切に対応できているんだろうかというところがわからないような状態で、機能的には預金と同じようなもの、被仕向送金も受けられる、給与の振込口座にも使えるというようなものを生み出そうとしているということには、やはりちょっと、不確かさというんですか、不安を覚えざるを得ないということになります。
さはさりながら、何らかの形でそういうような、今、実務上、顧客利便ということで一定の機能を果たしているものがあるのであれば、例えば方向性としては、預金との誤認防止とか、そういうようなリスクを明確に説明するということは最低限必要かと思いますし、仕向送金のために預かるところは認めても、先ほど申し上げたように、私の感覚からすると、やはり被仕向は全然違うと思います。機能として違うと思いますので、被仕向ではなく仕向だけにしてくださいというような形にするですとか、あるいは、事務局の案にもお書きいただいていますけれども、保有できる期間ですとか金額ですとか、そういうことをきめ細かくコントロールしていくことによって、弊害が生じないようにするですとか、何らかの相当精緻な議論をしないと、大事なお金が、何らかの破綻があったときに塩漬かってしまうというようなことがあるのではないかということが懸念されます。
今までのところ、資金移動業者さんにおいて大きな破綻事例ということがあったために問題が発生したという事例は私自身は存じ上げていないので、それはひょっとすると杞憂なのかもしれませんけれども、ただ、新しいビジネス、類型を生み出していこうという段階において、やはりあり得べきリスクということについてしっかりとした検討をしておくことが必要だと思いますので、今私が感じていることを申し上げました。どうもありがとうございました。

【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、坂委員、お願いいたします。

【坂委員】
ありがとうございました。私のほうからは第2類型と第3類型を主として念頭に置いて、利用者保護の観点から少し発言させていただければと思います。
まず1ポツの利用者資金の保全方法ですけれども、これはほかの先生方からも出ているところですが、現行の保全方法については、制度的な面と、それから技術的な面からも、効率化、合理化を進めることが必要というふうに感じております。かかる観点から、算定頻度を週1回以上に統一するということも案として出ていますけれども、言われておりますとおり、保全までの期間1週間については、これを短縮することですとか、あるいは短縮する取組みを促すことを進めるべきだろうと思います。期間の短縮は、算定時点と保全までのタイムラグによる保全不足のリスクを低減するという観点から、重要な課題の1つと思います。
それから、当局への報告制度についてですけれども、これもできるだけ効率的な報告、情報提供が可能となるような技術的な工夫をお願いしたいところです。そのことを前提に、モニタリングの実効性を図る観点から報告頻度を引き上げるということ、これは必要なことだというふうに思います。
それから、2ポツの少額の送金業者への対応について、3ページの米印の記載でありますが、事業者の皆さんにはぜひ低コストで利用者利便の高いサービスの提供につなげていただきたいところではありますけれども、利用者が求めるのは、やはり利便性が高いとともに、あくまでも安全安心なサービスであろうというふうに思います。安全安心は、利用者には事前にはなかなかわかりにくく、市場による統制も働きにくい面がありますので、規制のバックアップというのはぜひとも必要かと思います。かかる観点から、保全方法の規制緩和には、にわかには賛成しがたい面もあります。他方で、保全方法について、規制の横断化を進めていく観点からの検討も必要と感じております。
この点を少々留保させていただいた上で、分別管理についてですけれども、分別管理というアプローチは、利用者資金の全額を保全する一方法として検討すべき選択肢の1つであろうかと思います。もっとも分別管理の方法にもさまざまなものがあるというふうに承知してございまして、これまでの経緯としては、比較的初期の段階では帳簿上の区分管理ということが求められていたと思いますけれども、その後、事業者の自己財産からは独立した分別管理預金口座での管理、それからさらには信託会社の信託による管理というふうに、この間、傾向的には充実が図られてきたところと思います。
少しさかのぼって、利用者資金の保全の必要性という観点から考えてみますと、問題となる場面は2つのものがあるものと思います。1つは、資金移動業者の債権者による権利行使から利用者資金を保全すること、債権者の差し押さえを防ぎ、あるいは破綻時にも他の債権者との関係で利用者の資金を確保するという場面。それからいま一つは、資金移動業者による利用者資金の流用を防ぐという場面です。分別管理預金による保全も限界はあるかと思いますけれども、できるだけこの2つの場面に対応できるような制度を目指して、検討すべきではないかと思います。
そこで、まず資金移動業者の債権者との関係ですけれども、ここでは債権者からの権利行使の遮断が課題となるところと思います。いくつか考えられるアプローチがあり得ると思うんですけれども、1つは、分別管理した預金について、信託的な法律関係を導き得るような枠組みを考えるということです。この点、最高裁の平成14年1月17日の判決が、分別された専用目的の普通預金口座に保管されていた公共工事の前払金について、信託の成立を認めて、工事業者の破産管財人からの請求を退けたと、こういう事例がございます。こうした裁判例も参照しつつ、資金移動業者の分別管理預金口座について、信託的な法律関係を導くことができるような法制度の具体化を図っていくということができないだろうかということが1つです。
それからいま一つは、分別管理預金について、利用者の優先弁済権を認めるような制度とすることはできないだろうかと。さきの通常国会で可決されました資金決済法では、暗号資産についてではありますけれども、顧客の資産として分別管理された暗号資産について、顧客の優先弁済権を認めることとしていると思います。こういった規律についても1つ選択肢として検討すべきと思います。
これらは債権者からの利用者資金の保護には資すると思いますけれども、資金移動業者による流用を防ぐという観点からは必ずしも有効ではないと思います。資金移動業者に限ったことではありませんけれども、事業に困難が生じ、資金繰りが難しくなってくると、往々にして資金の流用が起こりがちであるということには留意が必要かと思います。特に預金は比較的流用しやすい財産であるということにも着目が必要かと思います。実際のところ分別管理は、利用者資金の流用事件を契機に、その充実がこの間、順次図られてきたと思います。流用の防止という観点からは、利用者資金の管理権限が事業者に残る分別管理預金口座による管理よりも、管理権限が信託会社に移る信託のほうがすぐれているというふうに思いますけれども、分別管理預金口座による管理の場合も、できるだけ流用を防ぐことができる、あるいは流用が生じた場合に早期に対応することができるような制度が目指されるべきではないかと思います。
こうした観点からしますと、外部のモニタリングを確保するということは極めて重要と思います。外部監査を適切に義務づけることはぜひとも必要ですし、また効率的な報告制度と相まって、実効的なモニタリングが確保されるよう制度の具体化が検討されるべきかと思います。こういったことを行うとしても、先ほどもお話ししましたように限界はありますので、これをどういうふうに進めていくかということについては慎重な検討が必要だというふうに考えております。
それから、3ポツの現行制度の利用業者への対応のところですけれども、100万円の送金上限額を原則として、合理的な範囲内で例外的な扱いを認めるということは現実的な対応かというふうには思いますけれども、あくまでも合理的かつ限定的な範囲内というふうにすべきと思います。デフォルトをどう設定するかということも重要かと思っておりまして、上限額を超える資金を受け入れない、あるいは払い出すということを原則として、利用者から為替取引との関連性が示された場合に上限額を超える受入れを一定の要件のもとに許容することとし、そのような場合でも事業者がその関連性が薄いと判断した場合に払い出すというような、そういった制度のあり方も選択肢としては考えるべきではないかと思います。
以上です。

【神作座長】
どうもありがとうございました。続きまして、舩津委員、お願いいたします。

【舩津委員】
ありがとうございます。私は、3つの類型に分けての規制ということについて、若干感想めいたことになりますけれども、申し上げたいと思います。
この3つの類型に分けるということにつきましては、スタディ・グループの中間整理というところで大枠の方針というものが決まったということかと思いますが、その際第1類型と第3類型は新しく設けるということであったがために、かなりスタディ・グループで議論したということがあるわけで、ある程度、現在の討議資料を見てもすっと納得いくところかなと思うわけですけれども、問題は第2類型についてです。現行の制度は維持するということで、何となくふわっと合意がされたということがある。とはいえ保全方法等をどうするか、滞留資金をどうするかというあたりを検討していくとなると、やはり正面から第2類型についても、どういう性質のものなのかということを議論していかなければいけない。それがこのワーキング・グループの場になるのかなと考えております。
そもそも論を言いますと、資金決済法の当初の狙いというのは、おそらくは第1類型が想定していたような、要するに送金であり、滞留するということは想定していなかったということかと思います。そういう意味で第1類型というのは、額は大きくなったけれども、資金決済法の当初の理念を拡大するという意味で非常によい提案ではないかと考えます。
他方で第3類型ですが、これは少額の類型を認めるということですけれども、第2類型の書きぶりと比較しますと、ちょっと間違っていたら、読み落としていたら申しわけないんですけれども、第2類型については為替取引との関連性が言及されているのに対して、第3類型は為替取引の関連性は特に問わないのだというのが、この討議資料のスタンスということになるのではないかと思います。仮にそれが正しいといたしますと、これはもう少なくとも少額については滞留を認めるのだということを意味しているのではないかというのが私の感想でございます。決済性の預かり金というものを正面から認めている、認めることになるのではないかという意味では、画期的な法制ということになるのではないかというのがまず1点でございます。
では第2類型はどうなのかというと、滞留はするかもしれないけれども100万円までですよというような話になってくる。それが利用者資金と為替取引との関連性を判断して、関連していたら滞留してもいいんだよというような形になっているという意味では、ある種のぬえ的なものでいるということになっているのかなと。ただ、ここの部分に関しては、スタディ・グループの報告書から見る方針からしましても当然のことかもしれませんけれども、現行規制よりは規制強化になる部分かと思います。上限額を決済にひもづけするという点で、やはり規制は強化されているのかなと思います。
ところで、スタディ・グループの中で、おそらく神田先生だったと思いますけれども、預かる類型と預からない類型というのを別に設けてもいいのではないかというようなお話があったかと思います。この点がまさに第2類型において重要になってくるのではないかと思っております。といいますのも、仮にですが、5ページの第2類型の検討の方向性の案のままでいったとしますと、これは、例えば上限を超える場合には、払い出す口座が必要になってくるということになると。そうすると、おそらくはサービスを利用する段階で、まず銀行口座を登録させるというのが執行としては正しいのではないかと。超えてから銀行口座はどこですかと聞いても、答えなかったらずっと滞留し続けるということになりますので、そうすると入口で預金口座を登録するというようなことをいろいろとしていく作業が発生するというのが、おそらく第2類型の検討の方向性だろうと思うわけです。ただ、そういうような滞留を問題としないような送金については、もう少し軽い規制があってもいいのではないかなというのが少し気になっているところでございます。
第3類型の理解について、あまり正面から言ってはいけないことを申し上げたのかもしれませんけれども、一応この討議資料を見た限りですと、そのような形で、第3類型というのは実は電子マネーの規制というものになっているのではないかと。第1類型というのは送金業者の規制になっていて、では第2類型をそのどちらで引きつけて考えていくのかということを少し考えていく必要があるのかなと思いました。
感想だけで申しわけございませんけれども、私からは以上です。

【神作座長】
今、第3類型について、本日の討議資料の読み方についてご意見がございましたので、事務局から何かコメントございましたら、お願いいたします。

【守屋横断法制室長】
為替取引との関連性について、第2類型と第3類型、先ほど萩原委員からもご指摘ございましたけれども、第2類型で関連性を確認するというところ、100万超の場合というふうに記載をさせていただいておりますけれども、100万以下も全く関連性がないものを受け入れるというよりは、100万以下であれば現行法令上、1回の送金で送れるということでございますので、関連性の推認が結構強く働き、高い確率で為替取引に関連するであろうというふうに推察されるであろうということでございまして、100万超の場合については、関連性について、より厳しいチェック体制を設けてはどうかと。そういう考え方でございまして、第3類型も同様でございまして、全く関連性がないというよりは、少額であれば何らかの形で使われるであろうという推認が働くものですから、全く関連せずに預かっていいというところまで考えて記載をしているわけではないということでございます。

【神作座長】
よろしゅうございますか。

【舩津委員】
すみません、個人的な意見だけ申し上げますと、私は第3類型はもはや関連性がなくてもいいんじゃないかと、現実がそうなっているのではないかと思っております。ありがとうございます。

【神作座長】
翁委員、お願いします。

【翁委員】
ご説明ありがとうございました。今まで多くの委員がおっしゃったんですけれども、やはりこの分野、どんどんさまざまなイノベーションが進んで、より利用者に合った、ニーズに合ったビジネスが出てくるということを期待して、こういったさまざまな規制の整備、規制緩和が行われるということだと思います。同時に、それに合わせてデータを利活用したりして、そのレギュレーションのほうもより精緻化というか、画一的でないものを目指していくということはとても大事だと思っております。その意味で、何人かの先生方からご指摘あったのですけれども、この保全方法の供託とか保全契約の1週間で最高額以上の額を保全するというようなやり方というのは、かなり古いタイプの規制でございますので、こういったものはもっと新しい形のものに直していくという大きな方向は、今、データを利活用し、技術革新を活用していくという観点からも重要な視点ではないかと思っております。
その観点で、保全に関しましては、高額の第1類型に関しては、こちらでも書いてありますように、システムリスク管理とかセキュリティー対策、マネロンなどについては当然充実した体制整備を求めるということになります。そうであるとしたら、この高額送金の最も大きなところは、やはりシステミックリスクに関連してくるというところだと思います。企業が中心にこういった類型を活用すると考えますと、もうこれはリアルタイムで管理するしかないわけで、そう考えると、この信託契約以外の、1週間後に支払われるとか、そういうような保全方法ではやっていけないのではないかと思います。したがいまして、当然この信託契約のようなものを活用しないと、このシステムリスク管理というのができないのではないかというふうに感じました。もちろん、この規制というか、いろいろな負担とか、そういったところは改善していくようなことが必要だと思っております。
それから、滞留規制に関しては、まず1つは第2類型の今までの分野のところですが、これは前のスタディ・グループでもご指摘いただいたのですが、非常に多額の資金を滞留している事業者がいたというようなこともお伺いしておりまして、こういったところは預金ほどの保護はないとしても、利用者保護が損なわれるということはやはり非常に大きな問題でありますので、その意味では、利用者の利便性を損なわない程度の滞留に対する制限というのはあってもいいと思っております。一方で、高額のところに関しては、これは主に企業とか、非常に多額の資金をこういったところで活用したいという裕福な個人の方とか、そういった方がお使いになると考えると、利用者保護という視点よりも、むしろシステミックリスクという観点でどういうことが想定されるのかということを考えて、滞留規制の必要性を考えていくということなのではないかと思います。非常に状況が厳しくなったときに銀行からばっと送金業者に資金がシフトするとか、そういうようなことがあることをどう考えるかとか、そういうことかなというふうに思っております。
この点、私がシンガポールに参りましたときには、個人向けのこういった口座に対しては滞留規制を入れていて、一方で、ビジネス向けというか、大きいものについては滞留規制を入れていないというような事実がございました。それはどういうふうな考えでやっているのかということについても少し調べて、教えていただければなというふうに思います。それからイギリスでは、トランファーワイズなどについてはバンク・オブ・イングランドの当座預金取引先になっているということではないかと思います。資金移動業については、こういった制度整備とかも総合的に検討する必要がある、もう少し幅広く検討していく必要があるのではないかと感じましたので、諸外国の例などもまた教えていただければというふうに思います。

【神作座長】
どうもありがとうございました。ほかにご意見ございますでしょうか。
永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】
ありがとうございます。私は一般消費者にかかわる第3の類型について意見を申し述べたいと思います。
この分野は今後、イノベーションとともに、私ども消費者にとって便利な様々なサービスの展開が期待される分野と期待しております。今回ご提案のありました分別管理をした預金による保全が、低コストで利用者利便性の高いサービスの提供をより促進する方向に働くのであろうとも理解しているつもりですが、先ほど坂先生はじめの委員からもお話がありましたように、預金による保全がどのように機能するのかを掘り下げて議論をしていただく必要があると思います。また、第3の類型の事業を行う業者が取り扱うことになる顧客数は、かなり大きな規模になるのではないかと思いますので、万一のことがあったときにはその社会的な影響度というのは非常に大きいものとなります。先ほど第1類型の取引についてシステミックリスクの懸念を表明される委員がたくさんおられましたが、この第3類型においても何かがあったときの社会的な影響は大きく、また、この種のサービスに対する一般消費者の信頼の喪失がその後の日本の社会に与える影響というのも非常に大きなものであろうと思います。
そこで質問と意見なのですけれども、まず、今回、外部監査の義務づけが提案されているわけですが、外部監査というのは年に一度程度の実施というようなイメージでおるのですが、確かに外部監査を義務づけることで抑制効果はあるとは思いますけれども、どの程度リスクの軽減につながるのかが今一つわかりません。先ほど、委員の方から、データ上で全てリアルタイムでチェックできる体制になっているというお話もありましたので、自分がイメージしているような外部監査とはまた違うようですが、ここで想定されている外部監査は具体的にどのようなことをされるのかをご説明いただけたらと思います。 また、先ほど事業者規模も大きくなるのではないかということを申し上げましたけれども、事業規模に応じていろいろな制限を組み合わせていくことが必要で、他の委員からもご意見が出ておりましたけれども、最低資本金の規制などとも組み合わせて、効果的に利用者保護を図ることが必要であろうと思います。

【神作座長】
ありがとうございます。永沢委員からは外部監査の対象や内容についてのご質問も頂戴したと思いますが、もし今お答えいただければ。よろしいですか。お願いいたします。

【守屋横断法制室長】
永沢委員からご質問いただきました外部監査の具体的なイメージでございますけれども、討議資料の3ページにも少し書かせていただいておりますが、預金による管理を仮に認めた場合、資金移動業者が万一破綻してしまった場合に倒産隔離がきかないという問題がございますので、ある意味では利用者保護の観点からということでございますけれども、まず資金移動業者の財務状況がしっかりしているかどうかというチェック機能を強化する必要があるのではないかということでございまして、1つは財務諸表について、公認会計士あるいは監査法人の外部監査を義務づけて、きちんとした経営状況であるかということをチェックするというようなイメージでございます。もう一つは、預金による分別管理がしっかりとなされているか、その分別管理の状況を監査していただく。他の金融規制の例で申し上げますと、例えば仮想通貨交換業者、現行においては預金による管理が認められておりまして、一方でこういった外部監査が義務づけられているということでございます。

【神作座長】
永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】
例えば年に1回、過去に、日々必要な金額、預金口座にあったということも含めて確認をされるということでしょうか。過去においてきちんとなされたということが、この外部監査では確認されるという理解でよろしいのでしょうか。単に財務諸表上の健全性とかということだけではなく、日々の動きまで踏み込んで確認がなされていると理解してよろしいのでしょうか。

【守屋横断法制室長】
具体的な預金の分別状況の監査につきましては、公認会計士協会のほうで実務指針というものが出されておりまして、それにのっとって、交換業者と、こういったところをチェックしますといったチェック項目に合意をして、実際に預金の状況、過去も含めてやっていると認識しておりますけれども、そういったようなチェックをしているということでございます。

【神作座長】
よろしゅうございますか。

【永沢委員】
はい。

【神作座長】
それでは、鳥海委員、お願いいたします。

【鳥海厳委員】
ありがとうございます。お尋ねを2つ、1つは金融庁様に、2つ目は資金移動業者の関係の方にさせていただきたいと思うんですが、1つ目ですけれども、ここまでのスタディ・グループとか、いろいろな議論の場で問題提起がされていたのかどうか定かではないのですが、かつ実際こういったビジネスニーズがあるのか、あるいは具体的な照会が寄せられているのかよくわからないのですけれども、今般見直された後の資金移動業について、例えば伝統的な銀行が、銀行というのは預金と、それから与信と、あるいは為替と、いずれかを営むものということで銀行業が定義されているんですけれども、既に資金移動業の登録をしているような銀行グループもございます。別チャネルでそういったビジネスラインを持っているところもあるのですけれども、もう一歩進めて、銀行の為替取引に係る部分を資金移動業のライセンスで行う、あるいは子会社をつくって、そこに全て為替業務を移して資金移動業者として営む、そういったビジネスモデルまで許容されるのかどうかといったところについて、ビジネスモデルは業者が考えればよろしいと思うんですけれども、規制されるお立場で、そういったパターンのビジネスの組み立てを考えてもよろしいのかどうか、そこについてお尋ねさせていただきたいと思います。
2つ目のお尋ねは、例えばこの高額送金についてなんですけれども、当然にしてマネロン対策等の観点から充実した態勢整備が求められると思っております。その場合に、犯収法とか外為法上のいろいろな確認義務がございますが、例えば本人確認、これはIDを確認すればよろしくて、あるいは適法性の確認、これも制裁対象国に関連するものではないかどうか、これを確認すればよろしいわけなんですが、居住性の確認、そもそも非居住者か居住者かというところを判定しなければいけないのですけれども、この点については、財務省さんのご見解では、私どもこれに必ずしも同意しているわけではないのですけれども、IDにおける現住所を確認するだけでは足りず、追加的な確認、すなわち在日6カ月以上であるとか、あるいは日本での勤務実態があるか、こういった追加確認まで尽くしてくださいということをおっしゃられております。ここまでのレベルの態勢を資金移動業者さんが今後、特にこの高額送金となりますと、海外の非居住者との間の国際送金なども視野に入ってくると思うのですけれども、どのようにこういった態勢を組み立てていかれるつもりなのか、その辺をご検討いただいて、今日でなくても結構なんですけれども、お聞かせいただければと思っております。

【神作座長】
鳥海委員から、2つご質問をいただいたと思います。第1は金融庁に向けられたご質問であったと思いますけれども、コメントいただければ幸いです。

【岡田信用制度参事官】
ありがとうございます。銀行グループでも資金移動業というのは持てることになって、もちろん今度、第1類型と新しい類型をつくりますので、まさにこの審議会で具体的な制度設計をどうしていくかというのは今後なんだと思うんですけれど、銀行と資金移動業とを組み合わせて新しいビジネスモデルを追求するというのは十分あり得るところだと思います。ただその際、もちろん、組み合わせたことで何か追加的な、銀行が自分で為替をやっている場合に加えて何か追加的なリスクがあるのだったら、それは当然モニタリングその他、監督とかで見なければいけないことだと思うんですけれども、基本的には組合せの可能性はあるのではないかと私は思います。
2番目のは後日、またちょっと別の場でお話しさせていただければと思います。

【神作座長】
よろしいですか。第2のご質問について、資金移動業者の方から何か、あるいはそれにお詳しい方からご回答いただくことはできますでしょうか。それでは、小木曽委員、お願いします。

【小木曽委員】
マネロン対策は、銀行でも資金移動業でも特定事業者になっているので、それに基づいて、法令に従ってマネロン対策しているということ以上でもそれ以下でもないと思います。
すみません、ちょっとお答えになっているかどうかわかりませんが。

【鳥海厳委員】
いつもそういった回答をお聞きするたびに、実務的に回るのかなというのが私の拭い切れない疑念でありまして、我々も、それから全銀協さんの加盟銀行も非常に苦労しているポイントでありまして、ここは制度の問題なのか、あるいはビジネス側で何か工夫をしなければいけないのかわかりませんけれども、いずれにしろ、おそらくここは避けて通れないポイントかなと思っております。

【神作座長】
どうもありがとうございました。ほかにご意見ございますでしょうか。
はい、小木曽委員。

【小木曽委員】
すみません、規制のやり方について総論として、重要なことを言うのを1点忘れたので、言いたいんですけれども、第4次産業革命の時代を迎えてどういう規制のあり方がいいかという、これは各国すごく悩んでいるところでありますが、多分、共通の了解事項として、やはり規制をグラデーション化していくということ、つまりイノベーションを促進しつつ、消費者保護を図りながらやっていくということが今のところの共通事項かと思っています。
その意味では、今回、多様な選択肢をつくって、グラデーションをつくっていくという方向性は大いにあって、これは実は、先ほど岩下先生が銀行のコピーである必要はないとおっしゃっていましたが、まさにそうで、これは我々ニューエコノミーの業界だとコピー問題とか、何とかダッシュ問題と言いますけど、既存の業界に対して、そのダッシュとかコピーみたいな議論でしていいのかどうかという、そもそも議論があります。これは似たような議論で、民泊新法をつくるときも、旅館・ホテル業の許可を取ればいいじゃないか、あるいは旅行業の登録を取ればいいじゃないかという話がありましたが、結論において民泊新法という新類型をつくって、旅館・ホテルとすみ分けをした上で類型を新しくつくって、制度化をすることによって産業としても振興されているということだと思います。今回の議論も、基本的に立脚点としてはそこに立つべきだと思っています。
以上です。

【神作座長】
どうもありがとうございました。ほかにご意見ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
本日は第1回目でございますが、非常に多様、かつ貴重なご意見をいただきました。また、シンガポールやイギリスとの比較法と申しますか、外国法制についての宿題も課されたと思います。事務局におかれましては、本日の議論をご整理いただいて、さらに本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、さらに審議を進めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最後に事務局のほうから何かご連絡がございましたら、お願いいたします。

【守屋横断法制室長】
次回のワーキング・グループの日時でございますけれども、皆様のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【神作座長】
それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了させていただきます。まことにありがとうございました。

                                                    ―― 了 ――

 
 

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