金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第3回)議事録

  • 1.日時:

    令和4年11月7日(月曜)16時30分~18時30分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
     

金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第3回)
令和4年11月7日


【神作座長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまより顧客本位タスクフォース第3回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
 
 それでは、早速ですが、議事に移らせていただきます。
 
 本日は、顧客本位の業務運営の確保に向けた取組、顧客への情報提供のデジタル化等について御議論いただくほか、これまでのタスクフォースにおいて議論してきた事項についても、改めて御議論いただきたいと思います。
 
 まず、事務局説明資料に関しまして、事務局から御説明を頂戴し、その後、皆様から御意見をいただきたいと存じます。
 
 それでは、事務局説明資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
 
【桑田市場企画管理官】  お配りしている事務局説明資料について御説明いたします。
 
 3ページ目からですが、前回のタスクフォースで頂戴した御意見を掲載しております。
 
 まず、顧客本位の業務運営の原則を法定化することについて、特に「原則2」と「原則3」につきまして進めるべきとの御意見、次に年金等も含めたインベストメント・チェーンの各主体に着目し、横断的な責任規定を整備すべきとの御意見を頂戴しました。
 
 次は、販売会社やアドバイザーについてです。まずは利益相反事項の開示から始めるのが良いのではないか。その記載内容としては、重要情報シートの記載事項3点や他社のブランドを使用しているか否かといった点を考慮してはどうか。助言ビジネスについては、顧客のみからフィーを得るアドバイザーを育成すること、そして、それがビジネスとして成り立つよう、施策を進めていくべき。最後に、個人向けアドバイス、例えばつみたてNISAなどの対象商品に絞ったアドバイスを行うのであれば、登録要件を緩和するやり方もあるのではないかとの御意見を頂戴しました。
 
 4ページ目に移りまして、プロダクトガバナンス関連です。親会社のグループガバナンスにおける運用会社の位置づけをどう考えるかが重要。また、仕組債の組成コストを含めた情報開示が重要。
 
 最後に、金融経済教育ですが、常設の組織の必要性、施策ごとにKPIを設定することやターゲットを絞るなどの改善を進めていくべき。最後に、投資教育と投資アドバイスは地続きなので、一体として考えていくべきとの御意見を頂戴しました。
 
 6ページ目は、重要情報シートの導入・活用状況についてになります。
 
 今般、販売会社11社に対して調査を行いました。左下の棒グラフを御覧ください。まず、灰色で示しております外貨建一時払い保険については、取扱いのある銀行7行において100%の導入状況でした。一方で、青色の投資信託については、各社で導入状況にばらつきが見られます。また、グラフの下に参考として記載しておりますが、ファンドラップにつきましては、取扱いのある6社全てで導入されておりませんでした。仕組債については、取扱いのある4社のうち半数で導入されておりませんでした。
 
 右の表に移りまして、重要情報シート上の記載内容についてまとめております。
 
 まず、利益相反の可能性に関しては、営業職員の業績評価上の取扱いについて、具体的に丁寧に明示しているものが見られました。一方で、こちらの欄では、販売会社が組成会社などから手数料をもらう場合、それが販売会社のどのようなサービスの対価なのかについて説明することを重要情報シート上は求めているわけですけれども、特段そうした記載がないというような事例もありました。
 
 想定顧客属性についてです。適合性原則を遵守する上で非常に重要な項目であると考えられますが、顧客に求められる商品の理解度や知識、投資経験に関する記載が不十分、またはそもそも見られない事例、また、リスク許容度に関しても、「元本割れリスクを許容」という程度の記載にとどまり、具体性に欠ける事例が見られました。
 
 最後に、費用ですけれども、投資信託について、信託報酬以外のその他費用、手数料が明示されていないため、比較が難しい。仕組債については、組成コストが開示されていないなどの課題が見られました。
 
 次に、7ページ目は営業現場における活用状況です。
 
 2つ目の白四角にありますとおり、販売会社の営業職員からは、「重要情報シート」という名前から顧客に重要性が伝わる、質問例を通じて顧客から質問を引き出しやすくなったとの声がある一方で、説明負担が重くなったとの意見もありました。
 
 また、顧客からは、大事なポイントがコンパクトにまとめられていて分かりやすいとの声がある一方で、文字ばかりで読みにくいとの意見もありました。
 
 今後、重要情報シートを用いた事例や経験が蓄積される中で、一部グラフ化して分かりやすくすることを検討するなどの動きも見られるところですけれども、記載の工夫が期待されるということかと思います。
 
 重要情報シートにつきましては、各社において導入に向けた進展が見られるところではありますが、先ほど申し上げたとおり、記載内容自体の充実や分かりやすさの両面から、引き続き取り組んでいただく余地があると思われます。
 
 9ページ目ですけれども、前回に引き続き実証研究を整理したものになります。今回は顧客本位の業務運営が顧客に与える影響についてまとめました。
 
 1つ目の2019年の米国のものですけれども、2つ目のポツとして、FDを適用したことで顧客の得たパフォーマンスが25bps上昇したという結果が報告されています。
 
 その下の2022年の米国のものですけれども、2つ目のポツとして、FDの適用により、ブローカーと保険会社のインセンティブの是正につながったとあります。具体的にはこのページの一番下に注2として記載しておりますが、ブローカーによる高コスト商品の販売が52%減少した、保険会社が低コスト商品の在庫を充実させたとのことです。
 
 次の10ページ目ですが、助言に関する実証研究です。
 
 例えば、上から3つ目の2017年のカナダですけれども、アドバイザーが顧客属性に応じて助言しているとの定量的証拠は限定的であり、むしろ、自身の投資スタイルに基づき助言している可能性を指摘しています。
 
 また、上から4つ目の2012年のアメリカのものですが、助言と金融リテラシーは相互に補完し合って効果を高める。したがって、助言の活用拡大へ向け、金融リテラシーの底上げが有望なアプローチとなり得る旨を主張しています。助言と金融リテラシーの重要性については、まさに本タスクフォースでも御議論いただいているところかと思います。
 
 次に、13ページ目です。家計の安定的な資産形成の実現に向けては、国だけでなく、地方公共団体や企業による積極的な取組も期待されます。
 
 1つ目の黒四角は、御案内のとおり、本年6月の骨太の方針でありまして、本年末に「資産所得倍増プラン」を策定することが明記されております。
 
 2つ目の黒四角は、先般、閣議決定された経済対策ですけれども、安定的な資産形成を国家戦略として推進する旨が明記されました。
 
 その他、地方公共団体や企業の取組を促す観点からは、少し古いですけれども、3つ目の黒四角の平成30年の高齢社会対策大綱におきまして、身近な場で資産形成を開始するきっかけづくりに向けて、地方公共団体や企業の取組を促していくことが言及されております。
 
 次の14ページと15ページは、金融経済教育等を推進する体制として、イギリスのMaPSとアメリカのFLECについての資料を前回会合に引き続き掲載しております。
 
 以上を踏まえまして、17ページより御議論いただきたい事項になります。
 
 1つ目は、顧客本位の業務運営は「道半ば」であるとの指摘を踏まえ、例えば「原則2」の「顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。」といった規定を金融サービスの提供に関する法律や金融商品取引法に置くことにより、金融事業者の取組を一歩踏み込んだものとするよう促していくことについてどのように考えるか。また、年金制度の関係者も含め、インベストメント・チェーンに関わる者を対象として、取組の横断化を図ることについてどのように考えるか。
 
 2つ目ですが、利益相反の可能性に関する情報提供を義務づけるべきではないかとの指摘もありました。重要情報シートで求められている3点についての情報提供の現状をどう評価するか。また、手数料の明確化に関しても、仕組債の組成コストや投信のコスト開示などについて、より取組を進めるべきとの指摘がありました。情報提供を進めるべき具体的な内容やルール化についてどう考えるか。
 
 3つ目は、中立アドバイザーについてです。前回、アメリカ、イギリス、ドイツの中立性、独立性に関する枠組みについて御紹介しました。また、日本においては、アドバイザーを育成していくという観点が重要との御意見を頂戴しました。これらを踏まえ、良質なアドバイスが手軽に受けられるようにしていくため、また、中立的なアドバイザーを育成していくためには、具体的にどのような取組を行っていくべきか。
 
 18ページに移りまして、1つ目の黒四角ですが、金融商品の組成者・管理者に関して、金融グループ内におけるガバナンスや独立性の確保、顧客の最善の利益に適った商品組成・提供・管理を確保する枠組みであるプロダクトガバナンスの実践などが求められるところです。前回、MiFID Ⅱについても御紹介いたしましたが、「原則」の見直しを含めた今後の具体的な取組や、その他制度整備の必要性についてどのように考えるか。
 
 2つ目の黒四角の金融リテラシーの向上については、前回同様ですが、国全体として、中立的立場から、金融経済教育の機会提供に向けた取組を推進するためにはどのような体制を構築すべきか。
 
 最後は、国・地方公共団体・企業など、広範なステークホルダーの協力を得るため、どのような働きかけを行っていくべきか。
 
 以上になります。
 
 次の議題としては、情報提供のデジタル化になります。右下、20ページ目を御覧ください。
 
 市場制度WGの中間整理からの抜粋になりますが、「①深度ある、より分かりやすい情報提供」の一番下の下線部にありますとおり、デジタルツールを効果的に活用し、充実した情報が分かりやすく提供されるように工夫していくことが、「顧客本位の業務運営」の実現の観点から重要であるという点が課題認識になります。
 
 次に、検討課題としては、「②情報提供のデジタル化」に記載されていますとおり、「①デジタル書面にすることについての顧客同意の要否や顧客の意思確認の方法」、「②引き続き書面も選択可能だとして、その周知方法」、「③顧客が書面交付を希望した場合に、その必要コストを負担するのは顧客か金融機関かというコスト負担のあり方」、「④こうした変更に伴う顧客保護措置の必要性」、最後に「⑤業界全体としての情報提供のデジタル化に関する周知のあり方」が挙げられております。
 
 21ページ目は、規制改革推進会議において議論がなされた書面を掲載しておりますが、左の列にありますとおり、いわゆる4書面として、目論見書、契約締結前交付書面、契約締結時等交付書面、運用報告書が取り上げられました。
 
 次に、見直しのイメージとして、22ページには上場株式の場合を例として記載しております。現在の金融商品取引法令におきましては、書面交付義務を法律上規定し、これに伴う形で実質的説明義務を内閣府令で規定しております。これは顧客の知識、経験、財産の状況に照らした適切な説明を求めるものになります。充実した情報を分かりやすく提供すべきであるとの意見を踏まえれば、この実質的説明義務を法律に規定し、情報提供の媒体は書面、デジタルを問わないこととしつつ、書面請求できる旨の告知をデジタル・リテラシー等の顧客の属性に応じた方法で行うよう義務付けることが考えられます。
 
 これに関して、下の図は買付けから受渡し、保護預り、売却などのそれぞれの段階と関連書面に分けて、現状と見直しのイメージを図示しております。
 
 23ページは、投資信託の場合のイメージ図になります。ここでは解約ではなくて売却の場合を示していますが、先ほどの上場株式の場合との違いは、①が目論見書となることと、④の運用報告書の有無になります。
 
 以上を踏まえまして、25ページ目は御議論いただきたい事項になります。
 
 まず、1点目は、デジタルツールを効果的に活用し、充実した情報が分かりやすく提供されるようにしていくためにはどのような取組が必要か。
 
 2点目は、情報提供に利用する媒体の選択についての顧客同意の要否や意思確認の方法、書面が選択可能であることの周知方法等について、どのような措置を講じることが必要か。下のチェックマークですけれども、都度、顧客に対する説明・交付等の機会が生じるものの場合は、それぞれの時点で確認する。契約関係の継続に伴い、一定期間ごとに交付等の機会が生じるものの場合は、あらかじめ包括的に確認する。そういった枠組みが例として考えられるが、これらについてどう考えるか。
 
 3点目は、法令上交付が義務づけられている書面のコスト負担のあり方についてどう考えるか。
 
 4点目は、制度移行に際して、顧客保護の観点から、必要な期間を確保した上で、既存契約を有する顧客に対して確実に伝達を行うなど、どのような配慮や対応が必要か。
 
 最後に、業界全体としての情報提供のデジタル化に関する周知のあり方についてどう考えるか。
 
 以上が御議論いただきたい事項になります。
 
 事務局からの説明は以上です。
 
【神作座長】  御説明、どうもありがとうございました。
 
 それでは、ただいまの御説明を踏まえて、今後検討していく事項について、論点やそれに関する御意見をいただければと思います。
 
 今回も多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間といたしましては4分から5分を目安にしていただければと存じます。4分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りが1分である旨のチャットが発言されている委員の方のみに送付されますので、発言時間の御参考にしていただければと思います。
 
 それでは、御議論をお願いできればと思います。いかがでしょうか、チャットでお寄せください。
 
 坂委員、お願いいたします。御発言ください。
 
【坂委員】  ありがとうございます。
 
 私のほうからは、顧客本位の業務運営の確保について、それから情報提供のデジタル化について、何点か申し上げたいと思います。
 
 まず、顧客本位の業務運営の確保に関して3点ですけれども、第1に、実証研究ではフィデューシャリー・デューティーの厳格化が顧客のリターンを高め、ブローカーのインセンティブの是正に寄与する、他方、助言への信頼が毀損されると、投資家は投資資産を減らす、等の報告がございます。これらに鑑みますと、我が国でも顧客本位の業務運営に関する原則を強化することが顧客へのリターンや信頼を高め、貯蓄から資産形成への流れに寄与し得ると考えられます。
 
 第2に、原則2の法定化は、金融商品取引法の誠実公正義務を一歩進め、顧客の最善の利益を図ることを求める点で重要な前進と考えられます。顧客の最善の利益は、米国のベストインタレスト規制が求めていますけれども、我が国においても同規制を下敷きに、最善の利益義務の具体化を図るべきと考えます。米国の規制の中では、利益相反に関する義務のほか、推奨に際して合理的根拠を求める注意義務が注目されます。我が国においても、販売業者等に対する助言のニーズが高いことや、実証研究においても適切な助言機能の発揮が重要とされていることなどに鑑みますと、米国のような規律が望まれるところと考えられます。これは顧客本位の業務運営に関する原則の6と共通する内容とも考えられますところ、原則6を適切な形で法定化することも検討すべきと考えます。なお、適合性の原則につきましては、前回、FINMAC様から御発言がありましたが、他方、裁判例については適合性原則を限定的に適用する傾向も指摘されるところであり、司法におけるエンフォースメントも視野に入れた検討が必要と考えます。
 
 第3に、原則3についてですが、重要情報シートに関し、利益相反に関する質問はほとんどないとの指摘があります。利益相反の情報提供だけではなく、いま一歩踏み込んで、米国のベストインタレスト規定のように、利益相反を回避または抑制する措置を求め、その実施状況について情報開示を求めるべきと考えます。
 
 次に、顧客への情報提供のデジタル化についてですが、5点申し上げます。
 
 第1に、対面取引とネット取引において、実質的説明義務の実現方法は異なると考えられますが、デジタルによる顧客の属性把握や情報提供の在り方は、従前に比してかなり高度化しており、ネット取引においても、こうした技術を適切に生かして、当該顧客に理解される方法と程度による説明を実現することが求められると考えられます。
 
 第2に、顧客に理解される重要情報の内容についてですが、その多くは重要情報シートの項目事項と重なるようにも思われます。また、司法研修所の研究報告では、信義則上の説明義務についてではありますが、取引の基本的な仕組みとリスクの説明が必要であり、リスクの質と量を具体的にイメージできる説明が求められると指摘されているところでもあります。
 
 第3に、デジタルによる情報提供は、単なる書面の電子化ではなく、充実した情報が分かりやすく提供される工夫が期待されております。重要な情報をアクセスしやすく分かりやすく提供するとともに、投資者が詳細な検討をしたいときに、十分な情報が得られるよう、豊富に情報の開示がされることが望まれます。また、単に閲覧できるだけではなく、投資者がダウンロードして検討、分析できる環境も必要と考えます。
 
 第4に、現状は紙媒体の情報に慣れている人がまだまだ多く、紙媒体による情報取得の機会を確保することは依然重要と考えます。顧客層の拡大のために、情報取得の機会を豊富に用意する必要もございます。したがって、顧客からの求めに応じての書面交付義務、及び顧客属性に応じたその旨の告知義務を法的に明確化することは不可欠と考えます。また、費用負担のために投資者が必要な情報取得を控えるということがあっては困るので、書面交付のコストは事業者が負担すべきと考えます。
 
 第5に、デジタル化においては、データの収集と処理において、顧客の行動や認知バイアスの分析を誤ることにより、かえって顧客の適切な選択を困難にし、その利益に反する決定をさせることも生じるとの指摘があります。欧州の消費者法制で対応が進められているところでありますけれども、こうした点にも留意が必要と考えます。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、岩城委員、御発言ください。
 
【岩城委員】  資料の御作成、ありがとうございます。
 
 論点について、全般的にお話をさせていただきます。
 
 家計の安定的な資産形成を進めていくためには、国が地方公共団体や企業などと連帯してセミナーなどを積極的に行っていくのがよいと思います。つみたてNISAのスタートアップのときに、全国各地で金融庁の職員の方と一緒にセミナーをしましたが、参加者の方々は金融庁が主催しているので安心して来たとおっしゃっていました。まだ投資は危ないものと思っている人もたくさんいますし、裾野を広げていくためには、「つみップ」のような取組を丁寧に実施していくことが大切だと思います。
 
 一般向けには地方公共団体との合同開催が効果的だと思いますし、また、職場での研修は、例えば就業時間内の新人教育研修やキャリアアップ研修などに盛り込んでいくことが有効ではないでしょうか。ライフプラン、キャリアプラン、そして公的年金などの社会保障制度について、確定拠出年金、NISAなどを使った総合的な資産形成の方法について、そしてリタイアメントプランなどを系統立てて、その理念、制度、具体的知識を学べることは、従業員が豊かで安心な人生を送りたいというニーズに応えるものです。また、企業にとっても、人手不足の中、従業員にはエンゲージメントを高めて、やりがいを持って長く働き続けてほしいと思っているはずです。このような研修を主体的に行う企業にベネフィットを与えることなどを検討してはいかがでしょうか。
 
 流れとしては、セミナーや集合研修を行った後に、希望者に個別相談を行うのがスムーズだと思います。ここでアドバイザーに簡易的な助言業務ができるようにするかどうかということが問題になりますが、つみたてNISAの対象商品、企業型DC、iDeCoについても助言業務を認めるのがよいと思います。
 
 しかし、それを行うアドバイザーは、しかるべき教育を受け、一定水準以上の知識、資格を前提に、金融商品仲介をしない人としたほうがいいと思います。なぜなら、つみたてNISA、企業型DC、iDeCoをいわゆるドアノック商品にして、その後、ほかの金融商品を販売するケースも想定できるからです。そういう人は一部で、顧客本位である人も多くいらっしゃるのは知っているのですが、残念ながら、これまでの相談事例でもこのようなことがありました。
 
 ただ、誤解していただきたくないのは、販売することを悪いと言っているのではありません。販売者とアドバイザーは別の職業であり、ともにプロフェッショナルであるべきということです。医薬分業によって患者の安全性が守られているように、それぞれ独立した職業で、職業倫理を持って自分の任務を全うする専門家であるべきということが求められます。やはり、忠実義務などの概念を整理して原則をルール化する、顧客に分かりやすいように販売員とアドバイザーの呼称を明確に分けるといったことが必要かと思います。アドバイザーは商品販売によるコミッションを得ず、フィーオンリーであることを定義し、好ましいのは英国の法整備ですけれども、今の日本の方向性は、アメリカのように固有の競争力をつくっていくことを目指していると感じています。そうであっても構わないのですが、大事なのは、生活者が相談する相手の立ち位置を正しく認識し、自分が求める相手を見つけられる、アドバイスなのか、金融商品の購入なのか、その両方なのかを選択できるようにすることだと思います。
 
 以上、取組を推進していくためにも、金融経済教育をリードしていく常設の組織は必要だと思います。公的法人の運営に関しては、金融庁、厚労省など各省庁が横断的に連帯する、シンプルで分かりやすい組織にする、国民誰もがレベル別に繰り返し何度でも受講できるシステムにするといったことが望ましいと思います。一人一人が合理的、効果的な資産形成をできるようにするということは大切ですが、アドバイザーとの効果的、生産的な関係を構築することも重要です。そのために、顧客本位のアドバイザーの認定、育成と、生活者に向けた金融教育というものを両輪で行っていくことが大事だと思います。具体的には、顧客ニーズを反映しない商品推奨で発生する莫大なコスト、損失を認識できることなどです。
 
 最後に、顧客への情報提供のデジタル化についてですけれども、例えば企業型DCのユニバースのように比較可能であること、分かりやすいことも求めたいと思います。しかしながら、私が相談業務を行う中で思うのは、顧客がつまずくのは、まず、言葉が分からないことです。不明点や不安に思うことを電話ですぐ聞ける、チャットなどですぐ相談できる窓口というものも整備していく必要もあると思います。
 
 長くなりましたが、以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、有吉委員、御発言ください。
 
【有吉委員】  有吉でございます。実証研究の御紹介を含めて、丁寧な御説明をどうもありがとうございました。
 
 私からは、顧客本位の業務運営の点とアドバイザーの点、それからデジタル化についてコメントをさせていただきたいと思います。
 
 まず、事務局説明資料17ページの1項目についてですが、ここにある「顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。」という規定を法令に定めた場合に、その趣旨や効果などが今の金融商品取引法36条1項の誠実公正義務と具体的に何が異なるのか、あるいはこの新しいルールというものは、投資運用業者などに適用される忠実義務や善管注意義務とも違うものだと理解しておりますけれども、これらとの具体的な違いは何なのか、この辺りがよく分かりません。ある程度求められる行為、それから規定の効力というものが明確にならないと、抽象的な規律が増えるだけで混乱を招くことにならないか懸念がございます。これらの義務の具体的な差異について、現時点で事務局にイメージがあるのであれば説明していただきたいと思いました。
 
 顧客本位の業務運営に関する原則について、必要な範囲で法令化するということには賛成するところでございますけど、何らかの形で規律の具体化がうまく図られないようであれば、ルールベースの法令化になじみやすいような、17ページの2項目にあります利益相反に関する事項や手数料等の情報開示のみを法令化するほうがよいのではないかと感じます。こういった観点から、特にこの1点目については慎重に御検討いただきたいというのがコメントの1つ目でございます。
 
 それから、アドバイザーの点でございますが、顧客が希望する場合には中立的なアドバイザーを選定しやすいような環境を整備することはとても重要であると思います。一方で、必ずしも中立性を重視する顧客ばかりではないとも思いますので、利益相反状況など、どのような立場にあるのか顧客が把握できるような措置を施すことは前提とした上で、証券会社によるアドバイザリー業務を活用しやすくするという視点も引き続き重要ではないかと思います。このような両方の種類のアドバイザーが併存することを前提としてアドバイザーの活用を促進する、そういった取組をぜひ進めてほしいと思います。
 
 また、今日の事務局説明資料の実証研究のところにもございましたとおり、助言というものが金融リテラシーを補完すると同時に、アドバイザーの活用のためには金融リテラシーを高めることが必要であると、こうした車の両輪の関係があると思いますので、アドバイスと金融リテラシーの両者を統合的に改善していくような施策を進めていただくことを期待しております。
 
 次に、デジタル化の観点でございますが、業界全体でデジタルツールの効果的な活用を高めていくためには、何らかの一定のフォーマットを規制によって強制するということではなくて、当局となるか業界団体となるか分かりませんが、一定の公的機関が好事例を収集して金融業者に示していくといった取組が望ましいと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。
 
 それから、各種の書面交付規制についてでございますけれども、この件については、単に業者側の経費節減ということではなくて、金融取引全般の効率化の観点から、思い切ったデジタル化をぜひ進めていただきたいと思います。すなわち、法令改正の周知のための一定の猶予期間が経過した後は、金融商品取引法上、顧客や投資家への交付が求められるような全ての書面について、既存の取引との関係も含めて、書面、デジタルのいずれでも業者側が選択できるようにするといった制度にすべきではないかと考えます。
 
 この際、法令によって、顧客の請求により書面の交付を必要とするような制度を残してしまうと、結局、書面対応の事務が必須となってしまい、社会全体での効率性を損なうことになると思います。書面での対応を行うかどうかは、各業者が自分のビジネスモデルを踏まえて、顧客本位の業務運営の観点であるとか、それから顧客の維持、獲得といったようなビジネス面からそれぞれ判断するように委ねてしまうべきではないかと思います。
 
 デジタルデバイドへの対応という意味では、先ほどの中立的なアドバイザーの役割の一つとして、デジタルへの対応のサポートを期待するということもあるのではないかと思います。もちろん、デジタルリテラシーが高くない人を保護するということは非常に重要なことであり、検討しなければならないと思いますけれども、それは法令によって書面交付請求制度を設けることだけが唯一の解というわけではないと考えます。
 
 私からは以上でございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 ただいまの有吉委員の御発言の中に1点、御質問が含まれていたかと思います。顧客の最善の利益を図るべきであるということが、例えば、現在、金融商品取引法に規定されている誠実公正義務や善管注意義務とどのような点が違うのか、あるいは同じなのかといった御質問があったかと思いますけれども、事務局に御回答いただけますでしょうか。
 
【桑田市場企画管理官】  御質問ありがとうございます。
 
 これまでの議論を拝聴している限り、顧客本位の業務運営に関する原則に基づき推進してきた金融機関の取組を一歩進めるという観点から、例えば原則2を法定化することがよいのではないかというような御意見を複数頂戴していると認識しております。したがいまして、その場合は引き続き各金融事業者が原則で求められている内容に取り組んでいくということが一層重要になっていくと理解しております。
 
 加えて、前回のタスクフォースにおいても御意見いただきましたとおり、誠実公正義務や忠実義務などとの関係も論点になろうかと思います。現状、金融商品取引業者や登録金融機関には誠実公正義務というものが定められているわけでありますけれども、金融商品取引業者等向けの監督指針ですと、不適当または不誠実な投資勧誘行為というものが一部例示されているにとどまっております。そのため、顧客の最善利益義務を規定するということは、正面から顧客の最善の利益に資する行動が求められているという旨を一般的かつ明瞭に規定するということになろうかと思いますけれども、金融機関の取組を促していくというこれまで御議論いただいている観点から、こういった点に意義があるのかないのか、そういったところが議論のポイントであるかと考えております。
 
 それから、原則に規定されている内容に取り組むということが期待されているとするならば、例えば第1回のタスクフォースで顧客からのアンケート結果というのをお示ししましたけれども、自社商品の中で各商品の比較説明を行うということが顧客の理解に資するとともに有益だというような評価がされていた点に鑑みますと、まさにこうしたものが期待されている対応の一例かと思いますが、この点、あくまで自社が提供している商品の中での比較説明だということを前提といたしますと、おのずから忠実義務との差異も生み出されてくるのではないかとも考えておりますけれども、こうした点も含めまして、各委員の皆様の御見解を伺えればと思います。
 
 いずれにしても、実務の世界、業者の方々との対話も踏まえて、一歩進めたルール化によって、どういった行為が事業者にとって必要となるのか、可能な限り明らかにしていくべく、引き続き検討を深めていければと思っております。
 
 以上です。
 
【神作座長】  有吉委員、よろしいでしょうか。追加の御発言ございますか。
 
【有吉委員】  今の例として挙げていただいた内容は分かるような気がしますが、一方で一般的な顧客最善利益義務がどういったことを意味するのかについては、まだ分からないような気がしております。いずれにしましても、申し上げましたとおり、抽象的な義務を定めることのメリット、デメリットについて、特にデメリットも踏まえて、今後、検討を進めていただければと思います。
 
 以上でございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございます。
 
 続きまして、島田委員、御発言ください。
 
【島田委員】  島田でございます。よろしくお願いいたします。
 
 私のほうからは、アドバイザー、それからデジタル化、プロダクトガバナンス、金融リテラシー、この4点について、意見を申し上げたいと思います。
 
 まず、アドバイザーについてです。先ほどから何度も出ているとは思いますが、アドバイスと金融リテラシーの向上というものが車の両輪であると言われておりますけれども、ここで顧客のみからフィーを得る形でのアドバイザーを育成してビジネスとして成り立つように人材を育成していくに当たりまして、こうしたアドバイザーが顧客へのアドバイスだけで自立できる環境が現在整っていないという状況もあるかと思います。ですから、こういう方たちのために、例えば金融リテラシー向上のための中立的な活動などを業務とするモデルも検討していくことに価値があるのではないかと思います。
 
 また、個人向けアドバイスを専門として行う場合には、個人事務所などでも参加できるよう要件を緩和した資格を新設し、登録できるようにするということについては賛成です。
 
 一方で、国民の資産運用について、責任を持って的確なアドバイスをするためには、一定の知識や経験が必要であることから、資格創設に当たっては、その資質を担保するための要件、あるいは審査、考査等を通じた確認が必要ではないかと考えます。また、アドバイザーについては、業務全般から見た顧客との利益相反の可能性について、アドバイスではフィーをもらっていないけれども、結局のところ、ほかの金融商品を仲介していたというようなことについての問題もあると思いますので、相談者に理解できる形で明示する必要があると思います。
 
 次に、情報提供のデジタル化についてです。そもそも、情報提供においてデジタル化を活用することの議論の出発点は、顧客本位に業務が改善されることが期待できるという点にあったと思います。具体的に例を挙げれば、重要情報を把握するのにより簡便であったり、他の類似商品との比較が誰にでもできたり、あるいは顧客自身のポートフォリオ管理に資するようなデータの提供がある、あるいは投資家のための第三者の評価がより迅速、正確に行われることに資するデータ提供が行われるようになるといったことだと思います。ところが、実際に資料を拝見すると、具体的な議論の中では、むしろ、金融機関の業務運営においてコストダウンが進められるかどうかといった点に主眼が注がれているきらいがあるように見受けられます。現在交付している書面をPDFにしてデジタル交付すればよい、その適用要件を緩和すればよいといった話でとどまらぬよう、デジタル交付に当たっては、デジタル化特有の顧客にメリットのある改善となるよう議論を進めていただきたいと思います。
 
 また、書面交付においてデジタルへ移行するに当たり、例えば投資信託においては、株式投信保有者の5割弱が60歳以上であるということもあります。ですから、デジタル化の告知やデジタルで受領を希望するかどうかという意思確認は、顧客間の公平を担保するためにも非常に重要だと思います。
 
 この議論では、顧客にデジタルリテラシーがあればデジタル化は進めていいのではないかというようにお話が進みがちではありますけれども、そうした前提ではなく、例えばデジタルツール利用に習熟していても、年を取るとともに、あるいは様々な身体的な理由などから、書面による情報獲得のほうが利便性が高く、後からなるということもあります。意思確認は都度行うことを基本として、一部、当初確認で行われる場合には、定期的な書面についてはデジタルで送付する際に、必ず書面で入手するための設定の変更や請求を簡単に行える方法などを分かりやすく記載していかなければならないと思います。
 
 書面交付の際の費用については、利用者負担については書面交付がごく例外的な手続となる場合には議論されてもよいと思いますが、現時点でそうした議論をすることはまだまだ時期早尚ではないかと考えております。
 
 次に、プロダクトガバナンスについてです。個別商品としてデリバティブを組み込んだ仕組債を例示しておられましたけれども、例えば外国籍投資信託などでも、いまだ国内籍投資信託と同等に情報が入手しやすい状態にはなっておりません。中には毎月データが発表後に、修正されるような商品もあるようで、商品の信頼性にばらつきがあります。国内で組成されていないことから、運用内容についての説明が不十分であったり、商品全体のコストを把握することが様々な組成上の理由から困難な場合もあるようです。プロダクトガバナンスの観点から、こうした顧客への透明性に問題のある商品を採用している場合には、より慎重な運用実績の評価や顧客への補完的な情報提供などに取り組んでいただきたいと思いますし、今後の採用に当たっては、デューデリジェンスを、たとえば採用した場合に、どのように顧客の資産運用に資するのか、そのメリット、あるいは国内投信と比較した場合のデメリットなどをより慎重に採用前に御検討いただければと思います。
 
 最後に、金融リテラシーの向上についてです。取組に当たっては、性急に国民に投資を促すという目的だけではなくて、家計、年金、ライフプラン、詐欺防止、それから情報リテラシーの啓蒙なども含んで、生涯のお金との関わり方についてのリテラシーの向上を目指していただきたい、これを大枠にしていただきたいと考えております。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続いて、永沢委員、御発言ください。
 
【永沢委員】  永沢でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。
 
 私からは、4点、意見を申し上げます。
 
 まず、利益相反と重要情報シートにおけるコストやサービスに関する説明についてです。
 
 一般消費者は利益相反と言われてもピンとこない方が多いとは思いますが、金融商品をめぐるトラブルについて繰り返しマスコミ報道されてきたこともあり、不要に手数料を取られているのではないか、金融機関のカモにされているのではないかという疑いを抱いている人は少なくありません。国民は、直観的に利益相反について認識、理解しているのではないでしょうか。事務局資料の7ページで、顧客の関心や質問が「費用」に集中していたという指摘がありましたが、利益相反の恐れを抱いている顧客が多いことの一つの証左であると思いました。
 
 一般国民は、金融市場に参加するには、機関投資家と異なり、投資信託のような金融商品を、手数料を支払って購入するしか方法がないわけですが、その手数料があまりに高く、言葉がよろしくありませんが、ぼられてしまうくらいなら投資に参加しないという判断をしてしまう方が多いのが現状なのではないでしょうか。国民が資産形成や投資に向かおうとしない背景には、こういう心理が働いているのではないかと考えます。国民が資産形成のための投資に向かうには、不当に高い手数料を取られることはないという心理的な安全、安心の確保が必要と考えます。
 
世の中では、無駄な包装を省いて値段を下げようとするのが一般的ですが、金融商品においては、必ずしもそういう方向には進んできませんでした。複雑なものをつくっておきながら、その説明に労力を必要とするからという理由で高い手数料を正当化しようという向きがうかがえますが、それは話が違うだろうと思います。
 
 事務局資料に示された調査によれば、多くの人がコストに関心を示したということでした。こうした関心に応えていくことが顧客本位の業務運営の一歩であると考えます。金融事業者の皆様には進んで、顧客に対し、求める手数料等のコストの根拠について積極的な開示をしていただきたいと思いますが、金融庁によれば、現状、そうでもない会社がまだまだ多くあるということでした。国民の資産形成を後押しするには、義務づけという方向も仕方ないと思います。
 
 多くの委員がサービスの内容を明確にすべきという意見を述べておられますが、私も同意見です。サービスをブレークダウンして、その内訳と金額を示すことを進めていくべきです。具体的な提案としては、例えば投資信託の代行手数料ですが、その内訳を運用状況報告サービス、分配金支払いサービス、解約時対応換金サービスなどに分解して、それぞれ幾らなのかを示すことはできないのでしょうか。内訳を具体的に開示することによって、金融商品は実は多様なサービスを組み合わせて出来上がっているわけですけれども、お客様にそういった点も理解いただけますし、支払う対価への納得感にもつながってくると思いますし、さらには、事業者間の公正な競争も促進され、顧客利益にもつながるのではないでしょうか。
 
 事務局資料の6ページで、費用に関する課題が指摘されていますが、目安だけでなく実績も示すようにすべきです。目論見書というカタログに表示されたとおりだったのか、コストの実績が一目で分かるようにすべきであり、こういったことも重要情報シートに載せていくべきと考えます。このような開示を行うことによって不透明さが解消され、投資家からの信頼が得られるのではないでしょうか。ファンドラップも投資信託と同様、コストの開示が必要です。仕組債については、私はこれは個人に販売すべき商品ではないと思っておりますので、コメントはいたしません。
 
 次に、中立アドバイザーについてです。まず、中立という言葉は、辞書を引きますと、どちらにもくみしないと説明されています。ここは独立という表現を使うのが適当と考えます。
 
 独立の定義については、イギリスやドイツに倣って、独立と名乗る場合には顧客以外からの報酬の受け取りを禁止する、あるいは顧客以外からの報酬を受け取っている場合は独立と称してはならないというように定めるのが適当だろうと考えます。また、何をもって良質というのか、どんなアドバイスを提供するのか等が明確になっていないように思います。これらの点について共通認識や理解が形成されないと、議論は前に進まないのではないでしょうか。
 
 加えて、こういったアドバイザーが、東京のような都市部だけでなく、北海道から沖縄まで、全国各地に存在することが求められています。全国各地にアドバイザーと言われるプロフェッショナルに育っていただく必要があるわけですが、時間的猶予はあまりありません。かなり短い時間軸の中で、アドバイザーを育成していく必要があるわけですが、どういう基礎を持っている人材をアドバイザーというプロフェッショナルに育てていくのかについて、具体的なイメージを共有していくことが、今後の議論には必要と考えます。
 
 求められているアドバイスについては、私の周囲の話となりますが、つみたてNISAの対象商品の中からどう選ぶのかとか、目論見書の読み方、口座の開設の仕方、購入した後の運用報告書の読み方など、その程度のアドバイスがまずは求められているのではないか、ということでした。その上で、前回も申し上げましたが、販売会社から勧められた商品についてのセカンドオピニオンが期待されていると考えます。
 
 3点目は、具体的な取組についてです。私は、既に全国の都道府県に設置されている金融広報委員会と金融広報アドバイザーの活用を提案します。都道府県が選任されている金融広報アドバイザーは、自治体が企画したセミナーなどで、集まった市民に対して、金融教育講座を提供されていますが、そこでの学びが具体的な行動につながるよう後押しする活動が、講座の延長上において行われることが期待されます。例えば、講座が終わった後に、受講者が求めた場合には有償で個別相談に応じるようなことをしてもらってもいいのではないでしょうか。また、そうした個別アドバイスサービスを行うための資格の創設などもあっていいのではないかと思います。
 
 金融広報アドバイザーの方々の多くはファイナンシャルプランナーであったりもするわけですが、個別相談に応じるための知識やスキルの習得に加えて、個別アドバイスを行う場合に遵守すべきこと、やってはいけないこと、やるべきこと等を具体的に規定することも必要ですし、そうしたことをきちんと守っていただけるような訓練の機会の提供も必要であり、ここについては国がお金を出して支援して提供されてはどうかと考えます。
 
 最後になります。契約書面のデジタル化については、契約書面ではありませんが、株主総会の招集通知が電子化され、これは実に便利だと感じており、そうした経験から、以前は、私は書面絶対派、電子化反対派でしたが、その考えを改めつつあります。
 
 ただし、消費者団体の活動を通じて見聞きしていることとして、パソコンを持たず、スマホやタブレットしか持っていない人が増えているということをお伝えしておきたいと思います。スマホでは画面の面積が限られておりますし、保存もできないということを考慮しておく必要があります。投資判断においては全体が見えることがとても重要です。こうした現状を踏まえて、書面のデジタル化は進めていく必要があります。
 
 コストの負担につきましては、デジタル化は国策でもあります。書面交付を求める人に負担を求めるという発想ではなく、デジタル書面を選択した場合には、例えばポイントを付与して実質的に割り引くというようなことをされてはどうでしょうか。デジタル化に向けて一歩先に踏み出した人が報われるというようなことがあると、契約書面のデジタル化は進むのではないでしょうか。
 
 なお、契約書面の電子化につきましては、今年7月に消費者庁において特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会が設置されて審議が行われ、先月、報告書が取りまとめられ公表されています。訪問販売やマルチといった、悪質な事業者が跋扈しやすい販売形態における話ではありますが、顧客からの同意の取り方など、高齢消費者を意識しながら議論を重ねて提案をしておりますので、参考になることがあると思います。
 
 長くなりましたが、私からは以上でございます。ありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、野尻委員、御発言ください。
 
【野尻委員】  お時間頂戴しまして、ありがとうございます。また、事務局からは詳細な報告を聞かせていただきまして、ありがとうございます。
 
 私からは、顧客本位の業務運営の確保に向けた取組と、国・地方公共団体の取組、この2項目に関して、簡単に5点、コメントをさせていただきたいと思います。
 
 まず、1つ目ですが、利益相反に関わる点で、具体的な情報提供の在り方という点が指摘をされていました。この点に関しては、やはり最大の留意点は手数料の明確化にあると考えています。手数料が幾らになっているかを示すことが今の重要情報シートの中に書かれている大きなポイントのように映っていますが、本質的には手数料が幾らになるかを示すのは、いわゆる手数料の透明化であるかと思います。これに対して、どのサービスに対する対価であるかということを細かく示していくこと、分かりやすく示していくことが手数料の明確化ではないかと思います。透明化ではなくて、明確化が今求められているのではないかと思います。それを前提にすれば、先ほど永沢委員からも御指摘があったように、より各コストもしくはサービスに対して、それぞれこれはこういうものであるという定義を決め、その上に対価が見えるというような形を示していくことが必要なのではないかと考えています。
 
 2つ目は、中立アドバイザーに関してです。これも前回も同じことを申し上げましたが、永沢委員が指摘された中立よりは独立がいいというこの表現は、私も賛同します。独立の定義、それからアドバイザーの定義というものをそろそろ決める時期に来ているのではないかと思っています。独立の定義に関しては、手数料を顧客から全て受け取るという表現は、回り回れば全てのものは顧客から出発してお金が入ってくるという形だと思います。ただ、経由地が業者であることがあって、特に課題になるのは手数料の高いものを売りがちになるという、いわゆる手数料バイアスだと思っています。これをどのように回避するかという点では、例えば代行報酬などを先ほどのように全部外出ししてしまうという議論になると、現状ではなかなか進捗が難しいように思います。私は時間をかけている余裕がないと思っていますので、できれば上限を決める、一律にするといった対策が可能ではないか、検討してみてはどうかと考えます。
 
 それから、アドバイザーの定義です。ここも議論が錯綜しないように整理をしておく必要があると思っています。といいますのも、アドバイスが必要なのは、やはり高齢者ではないかと思っています。若年層の方々が、例えばDC、iDeCo、つみたてNISAなどをどうやって使ったらいいかということをアドバイスしてもらえる、その方をアドバイザーと考えようとすると、先ほどから議論のあったそれを専門にしたアドバイザーを用意するという議論になるかと思いますが、ここはもう既に商品なども随分固まっていると思いますので、例えばですが、ファイナンシャルプランナーにはこの辺りまでは説明していいといった取扱いをしていくという前向きなやり方と、もう一つは、議論にもありましたように、特に高齢者の場合であると、必ずしもつみたてNISAが適合する商品とも言い切れませんので、もう少し広範にアドバイスができるよう、これまでの登録要件を緩和させて、個人向けのアドバイス業務を行う、いわゆる投資助言業を今の投資助言業の中に別枠として設けていくといった対応をすべきではないかと思っています。
 
 それから、プロダクトガバナンスの点ですが、私は想定顧客属性のところがやはり大きなポイントであり、ここをいかに有効活用できるかが重要な点ではないかと思います。現在は、ややもすると販売できる投資家というように認識をされているのではないかと思いますが、本来は、運用会社や保険会社など、投資をしてほしい顧客はどういうタイプなのかということを書こうというところがポイントではないかと思います。なので、例えば運用のポリシーを説明して、これに賛同できる方というのがよりクリアなメッセージになるのではないかと思っています。
 
 顧客本位の業務運営の中で、重要情報シートの議論をさせていただいたときに、商品間の比較検討ができるということを前提にして、データのソーティングができるようなことをイメージする意見がたくさん出ましたが、全ての項目をソートする必要はなくて、数値化できるものはソートし、出てきたものから最後に自分に合うものを選ぶときに顧客属性を使うということが本来のあるべき姿ではないかと思っています。
 
 4点目は、金融リテラシーであります。これも前回コメントさせていただきましたが、課題としては、現状のものを使っても構わないと思いますが、常設の組織をつくり、そこにKPIを持って業務をリードしていただくということではないかと思います。この点は改めて指摘をさせていただきたいと思います。
 
 最後に、国の取組として、中堅中小企業の従業員などがこの取組から置き去りにされないようにぜひ考えていただきたいと思っています。前回も職域の議論が出ていたかと思いますが、イメージとしては、やはり比較的大きな企業を想定されがちではないかと思います。所管は違いますが、iDeCo+といったような制度があって、これは中小企業がより使いやすいようになっており、かつ従業員も使いやすい制度だと思っています。この利用促進を金融機関やファイナンシャルプランナーの方々が推進できるような仕組みをつくるべきではないかと考えております。
 
 以上、5点になります。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、佐々木委員、御発言ください。
 
【佐々木委員】  ありがとうございます。それでは、私から意見を申し上げます。
 
 まず、第一に、実証研究の御紹介、ありがとうございます。とても参考になりました。例えば、専門家の方のお話を紹介するだけでも十分だと思いますけれども、もちろん余裕があれば、このようなことをしていただくと、皆さんも参考になると思いました。
 
 次に、FD原則のルール化についてですが、もう既に有吉委員も御指摘されていたように、やはりこのルール化、法制化をするかどうかということはすごく重要な部分なので、それが既に法律でカバーされている部分から見てどのような位置に当たるのか、全体像を把握できるように整理して教えていただけるとありがたいと思いました。坂委員から詳しい指摘があり、聞いていて、かなり私の頭も整理されましたし、先ほど事務局から御説明がありましたので少し分かりましたが、それらの部分を整理して全体像を教えていただけると分かりやすいと思ったことに加え、ここで法制化すると、逆に言えば、どういった行為が法制違反となるのか、また違反したらどのように処分されるのか、また、そのためにどのような監督やモニタリングが必要になってくるのかという具体的な部分を教えていただけると、より具体的にルール化について検討できるかと感じておりますので、そこの部分を今後教えていただければと思いました。
 
 それから、金融教育に関して、これももう既にいろいろな方から御指摘がありまして、私もかつてお話ししたことがありますが、やはり金融庁からということで、各機関、団体などの立場にとらわれず、個人の目線で見てポートフォリオを組むときのヒントや、あるいは選択肢を増やすことを目的としたものを提供していくことが望ましいと思います。そのためには、もちろん、所得や年齢別でニーズが異なることを認識した上で、証券投資のみではなく、保険や年金、不動産、様々な投資手段について、ライフプランを考える上で必要な部分の知識を提供すべきではないかと思いました。また、永沢委員からも御指摘があったように、必要に応じて金融広報中央委員会がこれまでやってきたこと等を考慮して、環境を整備しながら進めていただきたいと思います。
 
 それから、デジタル化についてです。こちらも、もちろん、書面を希望される方との問題もありますが、原則、書面はやめる方向に進めるべきではないかと思うものの、一方で、デジタル化で全てが好転するというわけではなくて、やはりマイナス面もあると思います。例えば、デジタル化によって、情報を提供することがある意味、簡単になるところもあると思いますが、受け取る側がちゃんと受け取っているか、情報は提供されているのに見ないで終わってしまっていないかなど、そういった部分がマイナスになるかと思いますので、顧客がそういったものをしっかり開封して確認しているのかといったことはデジタルだと確認しやすいと思いますので、そのような措置をして、顧客の利便性をより向上させるような形でのデジタル化をしていただきたいと思います。
 
 最後に、抽象的な議論ですが、全体として、規制を法制化するといったことも重要ですが、やはりインセンティブをデザインするということも重要だと思います。例えば、ベストインタレストを達成することや、収益を上げること、あるいは誠実な対応をすることがアドバイザーの報酬につながるなどの制度設計等を考えることによって、規制をせずとも、適切に顧客の利益を確保できるということもあると思います。それを各社に任せる可能性もありますが、例えば優良なアドバイザーの資格をつくる、何かインセンティブづけをするといったことを考えることもできると思いますので、そういった検討もあってよいと思います。
 
 以上です。ありがとうございます。
 
【神作座長】  御意見、どうもありがとうございました。
 
 続きまして、松尾委員、お願いいたしいたします。
 
【松尾委員】  ありがとうございます。このスライドに沿って申し上げます。
 
 まず、顧客本位の業務運営に関する原則の法令化についてですけれども、これは確かに有吉委員がおっしゃったような抽象的な原則を法令上の義務とすることによる弊害には十分に留意しなければならないということはあると思いますけれども、一方で、法令上はある程度、抽象的な義務内容になっていても、それが例えば私人間、顧客から業者に対する損害賠償請求訴訟などの中で具体的な裁判規範として形成されていって、それが業者に対する行為規範としてフィードバックしてきます。適合性の原則のところでも同様の現象は見られたかと思いますけれども、そういうことも期待してよいように思います。顧客本位の業務運営に関する原則が目指している方向自体は正しい、望ましいということについて、共通の了解が得られているのであれば、それを促進する力というものは一つでも多いほうがいいと思いますので、そういう私人による規範の形成ということを促進する意味で、訴訟の際のよりどころになるような規定を置くということの効果、効用も考えてよいのではないかと思いました。
 
 続いて、重要情報シートの記載の関係で、今回の資料の中に、特に手数料に関する記載については、業者に対する規律づけの意味もあるという御指摘があったかと思います。そういう意味合いを持つと理解しているという御意見があったところで、これは非常に重要な御指摘であるように思います。特に利益相反関係、手数料関係については、単に顧客に情報を提供するということを超えて、手数料なり利益相反関係を開示させることで規律が働くということを期待できるということかと思います。このような規律づけの効果は、想定される顧客に関する情報についても期待してよいように思います。現在の記載の仕方ですと、なかなかそういう規律づけというところは期待できないのですけれども、本来は、例えば市場価格がリアルタイムで把握できないとか、あるいは換金が容易ではないというような性質がある商品であるにもかかわらず、それをリテールの顧客に売りたいのであれば、本当にそういうことを必要としている人としてどういう顧客がいるのかということを本来は書いてほしいわけでして、そういうことを書いていただくと、規律づけの効果も出てくると思います。ただ、こういう規律づけになるような記載内容というのは、自発的な取組の中で出てくることはなかなか期待しづらいようにも思いますので、場合によっては、法令で具体的な記載内容を定めるといった対応も必要になってくるのではないかということを考えました。
 
 最後に、情報提供のデジタル化についてですけれども、説明義務について、書面の交付から、法律上の規範としては実質的な説明義務を定めるという方向は非常によいと思います。これは情報提供一般について言えることかと思いますが、本来は、法律上の規範としては、特定のタイミングで一定の情報を顧客に提供せよというのが規範の内容で、それをどのようなツールを使って提供するかというのは業者の工夫、経営判断であり、顧客との関係で決めていくべきことと考える、そういう方向が望ましいと考えており、今回お示しの方向はまさにそういうことかと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。
 
 そういう考え方からしますと、例えば書面で交付する場合のコスト負担についても、書面が原則でデジタルが例外というような位置づけですと、どちらかというと業者負担ということになりがちかと思いますけれども、本来は情報提供が義務であって、それをどのように提供するかは、それぞれの業者の考え次第ということですと、書面での交付を希望する顧客にそのコストを負担していただくという方向にも流れやすくなるのではないかと考えました。
 
 以上です。ありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、竹川委員、御発言ください。
 
【竹川委員】  竹川です。よろしくお願いいたします。
 
 まず、顧客本位の業務運営の利益相反についてです。利益相反の開示については重要情報シートの個別商品編に記載されていますが、重要情報シートの金融事業者編に収益構造なども含めて記載することが望ましいと思います。商品編については、例えば投資信託などは目論見書や運用報告書といった情報開示資料と重複する部分も多く、簡易にできるところは簡易にし、(必要に応じて)従来の情報開示資料を読むように促す方向もあるのではないでしょうか。これらは各社が工夫をする形で考えていただいてもよいと考えます。
 
 一方で、6ページ目にあったように、ファンドラップの取扱いがあるにもかかわらず、重要情報シートに記載していないケースも多いです。本来は一番しっかりと説明しなくてはいけないものについて記載がないというのは非常に問題だと思いますし、改善が必要だと思います。
 
 次に、中立アドバイザーについてです。こちらについては4点あります。
 
 まず、1点目ですが、そもそも日本において育成していくアドバイザーはどういう人を想定しているのか、この共通認識が必要だと思います。ガイダンス・情報提供だけなのか、あるいはライフプランを含む全体最適を提案する人なのか、個別商品まで踏み混んで提案できる投資助言業を増やしていくのか、こういったことを先に決めないと、議論が深まらないのではないでしょうか。
 
 2点目は、例えば金融商品の仲介販売を行わないようなアドバイザー、例えば投資助言・代理業の登録をするファイナンシャルプランナーを育成する必要があるというのであれば、扱う商品を限定し、投資助言・代理業登録のハードルを下げる、あるいは公的機関がコンプライアンスに精通する金融業界のOBとアドバイザーのマッチング支援を行うといったようなことも必要だと思います。
 
 3つ目は、世の中にはアドバイスを受けるコストを払える層と払う余裕のない層がいます。従来の議論は、コストは払えるけれども、アドバイスを受けずに、その結果として痛い目に遭ってしまったといった人たちに対する議論が多かったように思います。余裕のない人たちは投資金額も少ないですし、金融リテラシーが低いという方も多いと思われますが、本来アドバイスを必要としているのは後者です。一方で、サービスを提供する側は食べていかなくてはいけないわけで、そのバランスをどのように取るのかを考えていく必要があります。単に(アドバイザーの)数を増やせば問題が解決する、ということでもないと思います。民間が行えることと公的な機関がサポートを行うべきところ、その両面から考えていく必要があるのではないでしょうか。
 
 4点目は、今回、中立アドバイザーの議論が多いですが、金融機関の有償助言の在り方についても議論が必要ではないでしょうか。例えば、(販売会社が受け取る)投資信託の購入時手数料や代行手数料の問題をそのままにしておいて、さらに有償助言を認める方向に行くことには疑問があります。代行手数料の問題なども含め、どういう方向をめざすのかもう少し考えていくべきだと思います。
 
 最後に、デジタル化についてです。
 
 まず、21ページの書面のデジタル化については基本的には賛成です。ただ、デジタルリテラシーの低い層については一定の配慮も必要だと思います。一定期間は書面による提供も併用するといった対応も必要だと考えます。
 
 2点目は、見やすくすることも必要ですが、単にPDFで見られればよいということではなくて、消費者が比較検討しやすい、例えば並べ替えもできるというような具合に、利用しやすい・使いやすい形にすることが重要です。また、例えば投資信託の月次レポートや運用報告書が直近のもの以外は消えていってしまうケースもあり、後から検証できないことも現状あります。運用会社ごとに対応することが難しければ、データを残す手段や場所などについて、投資信託協会などにもお考えいただきたいです。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、松元委員、御発言ください。
 
【松元委員】  松元でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 御議論いただきたい事項の1点目をお示しいただきまして、私からはこのうち最初の点に絞ってコメントをさせていただきたいと思います。
 
 私の意見の結論から申し上げますと、上から3行目の「顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。」といった顧客本位の業務運営に関する原則の全体に係る規定を入れるのではなく、この顧客本位の業務運営に関する原則の中の具体的部分の一部をルール化するということのほうが望ましいのではないかと考えています。
 
 理由としては大きく2点ありまして、まず、1点目としては、今回の問題意識はプリンシプルベースでやることに限界があるのではないかというところにもあったと理解しています。そういった状況の中で、「最善の利益を図るべきである」という抽象的な文言を入れたとしても、プリンシプルベースであることによる限界はクリアできないのではないかということです。むしろ、本当に必要な部分について、特に利益相反の開示の部分について具体的なルールを入れるべきではないか、法制化するべきではないかと思っています。
 
 2点目ですが、この点については、有吉委員が指摘されたことに共感するのですけれども、仮にここで「顧客の最善の利益を図るべきである」ということを法制化した場合に、忠実義務、誠実公正義務という、今現在あるこの2つの義務との関係が不明確になってしまって、不明確になるだけなら、理論上以外はもしかすると害はないかもしれませんが、しかしながら、やはり混乱すると思います。
 
 そして、不明確になるということの意味ですけれども、「最善利益の義務」とは具体的にどういうものだろうかということを考えたときに、先ほどこの点についての事務局への御質問に対する事務局からのお答えを伺って、分かった部分もありつつ、やはり分からない、とても難しい問題だというのが正直な感想です。例えば、アメリカの最善利益規則は、まさにレギュレーション・ベスト・インタレストであり、最善の利益を図る義務ということで、言葉としては同じですので、多少参照される可能性はあるのではないかと思っていますが、この義務の中には、今回やろうとしているもの以上の内容が含まれているように思います。
 
 例えば、先ほど適合性原則の部分についても、とても重要だから注目すべきではないかという御意見がありました。適合性原則が非常に大事だということはもちろんですけれども、このレギュレーション・ベスト・インタレストで適合性原則についてどういうことが言われているかというと、適合性原則をさらに一歩進めた規則だと言われていて、推奨を行うに際して、特定の個人顧客のポートフォリオに基づいて最善の利益であることを信じる、合理的な根拠を持つように注意を払わなければならないということが言われています。もしも日本でもそれがルール化されるということだとすると、例えば証券会社が顧客に対して何か商品を推奨するたびに、本当にこのルールを守ろうとするならば、その人のポートフォリオに基づいて、適合性に違反する商品を売ってはいけないということだけでなく、その人のポートフォリオに基づいて、この商品が最善の利益だということを信じて商品を推奨するということまで要求されるということになりますが、そこまでの内容についてのコンセンサスは関係者の間でまだないのではないかと思います。そういったものも、果たしてこのルールに入っているのか入っていないのかといったことでも混乱が起きてしまいます。
 
 それから、アメリカの最善利益規則の中では、例えば証券会社の社内で販売コンテストなど、ある商品を売ったらボーナスがもらえるということについては、開示しなさいということを超えて、それを行うことが規制されています。では、果たして、「顧客の最善の利益を図るべき」だという法律を置いたときに、その内容も入るのかというと、まだ今回はそこまでの議論には達していないと思います。
 
そうすると、「顧客の最善の利益を図るべきである」というルールを入れることによって、良識的な事業者は、もしかしてこれも駄目かも、あれも駄目かもと考える一方でいいかげんな事業者は、具体的なルールではないから解釈次第でしょうと言って、結局何もやらないということが起こりかねないように思われます。やはり、本当に必要だというコンセンサスが取れている利益相反の開示の部分に限定して法制化をするということが望ましいのではないかと考えています。
 
 すみません、大変長くなりましたが、私からは以上です。
 
【神作座長】  御意見ありがとうございました。
 
 続きまして、神田委員、御発言をお願いいたします。
 
【神田委員】  どうもありがとうございます。
 
 皆さんの御発言と重複する点もあるかと思いますけれども、5点、できるだけ手短に発言させていただきます。
 
 1点目は、17ページの御議論いただきたい事項①の、今も言及がありました顧客本位の業務運営の確保についてです。
 
 私は1つ目の黒四角に基本的に賛成します。私自身、概念整理について、個人的な見解を持っていますが、それをこの持ち時間の中でお話しすることはできませんので、大変申し訳ないですけれども、省略させていただきます。ベストインタレスト、最善の利益というものは、今、既に原則にあるわけでして、事業者はそれを実践しておられるはずなので、そういう意味では、法律に書くことによってデメリットが生じるとは思えません。特に後半に書いてあります年金関係なども含めてのルールの横断化ということは法令レベルで行うことになると思いますので、そうしますと、金融商品取引法でも最善利益は法令に書く必要が出てくると思います。細かい概念整理については申し訳ないですけれども、もし機会があれば、またお話をさせていただきます。
 
 2つ目の黒四角ですけれども、具体的なルールを法令で書くということには賛成でして、当然のことだと思いますが、どの部分について書くかはなかなか難しく、いろいろな御意見があるところです。まずは、やはり利益相反関連事項の開示、具体的には手数料関係の事柄の開示から始めるのがいいと思いますけれども、もしもう一歩進めるのであれば、私は坂委員がおっしゃったことに賛成いたします。また、そこに挙げられてはいませんが、プロダクトガバナンスのほうに挙がっている販売業者等についても、想定顧客の開示について具体的な形での情報開示を求めることが、場合によっては法令化するということを含めて検討されてしかるべきだと思います。
 
 2点目は、プロダクトガバナンスです。これも一部の事柄といいますか、具体的にはここに書いてありますけれども、想定顧客、費用、ガバナンス体制、こういった事柄についての情報開示を、法令化にふさわしいものについては法令化することを検討してはどうかと思います。
 
 3点目は、アドバイザーです。大変な難問ですが、今日御発言いただきました野尻委員と竹川委員の御意見に私も賛同いたします。その線で――その線でといいますのは、顧客層に応じて制度設計を詰めていくということが望ましいのではないかと思います。
 
 4点目は、金融リテラシー及び国・地方公共団体等の取組です。前回、私は学校を卒業した後の世代への金融知識の普及が重要と発言させていただき、職域でのeラーニングをもっと進めるべきと発言させていただきました。これは言うまでもなく、大企業だけではなく、中小の事業者における職域も含めて考えるべきであり、この点については野尻委員の御指摘のとおりかと思います。また、資産形成ということも、このリテラシーに含めて考えるべきだと思います。
 
 このほか、自治体の例として健康診断の例が挙げられると思います。一定年ごとに住んでいる自治体から住民に健康診断の案内が来ます。胃がん検診とかがその例です。金融も医療と同じにすべきだと思います。体の健康診断だけでなく、お金の健康診断も必要です。職域でカバーできない場合もあると思いますので、自治体が、あるいは自治体を通じて、定期的にeラーニングあるいはeでない形でのラーニングの機会を提供して、金融知識の普及と共有を図ってはどうかと思います。金融知識を共有できないことは病気と同じであるという危機感を持つべきだと思います。
 
 最後に、5点目です。御議論いただきたい事項②のデジタル化のところですが、これは資料22ページ、23ページ、そして25ページの2つ目の四角に挙げられている方向感に基本的に賛成します。ただ、前提として、もっと基本的な点になりますが、顧客の側における経済社会生活のデジタル化を推進することが重要ではないかと思います。金融取引のこの部分だけデジタル化することは中途半端ですし、実現することにも限界が生じるように感じます。そもそも経済社会生活の環境一般がデジタル化される中での金融取引のデジタル化という発想に立つべきではないかと思います。
 
 以上です。どうもありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、沼田委員、御発言ください。
 
【沼田委員】  沼田です。よろしくお願いいたします。
 
 私のほうからは、まず1つ目、顧客本位の業務運営の確保の横断化を図るやり方について述べさせてください。アメリカを見ていて思いますのは、つなぎ役として投資顧問が上手く機能しています。日本だと投資助言の議論になるかと思います。ここをもっと育ててもいいのではないでしょうか。といいますのは、アメリカの場合、投資アドバイスを、対価を得て業として提供する人たちは、肩書や所属に関係なく投資顧問登録をする必要があります。この文脈で、投資には関わるが金融機関が提供するのではないアドバイスの大半が投資顧問の枠組みに組み入れられて見える化され、発展しました。FPや年金コンサルティング等です。日本でも投資助言を上手く使えば、そうしたことが考えられるのではないかと思いました。
 
 2つ目の情報開示はもちろん賛成です。ただ単に開示すればいいということにとどまらずに、もう少しマニュアル策定などの法令順守も含めた義務にしてもよいのではないかと思いました。といいますのは、アメリカもベストインタレストルールの中にコンプライアンス義務があります。企業の規模や特性によって最善の利益の内容を変えていいと言っている一方で、コンプライアンスプログラムには研修や定期的な見直し、テストなども含むようにとも言っています。このように継続的な改善や研修なども含めた仕組みづくりまで踏み込んでもよいのではないかと思いました。
 
 次が金融リテラシーのところです。投資教育で提供しているのは、今のところ、知識と理解と応用です。投資行動につながるようにするには、分析、評価、創造もできるようにならなければいけません。こういったことは個別性があります。前回議論のあった中立的な独立系アドバイザーのみはこれらの支援もできる仕組みにしてもよいのではないかと思いました。日本の場合ですと、NISAとつみたてNISAは内包される商品が違うので、違うセグメントを取り込むことができました。同じようなことをアドバイスでやってもよいのではないかと思った次第です。
 
 電子交付のところです。データ化が進めば、これを使って誰もが分析、評価ができるようになりますので、ぜひ進めていただきたいです。といいますのも、アメリカで顧客本位な業務運営を行う上でのコンプライ・オア・エクスプレインは、証券会社の本社だけではなくて、営業の現場でも行われています。本社では顧客のことがよく分からないので、エクスプレインをやるとしても限界があるからです。ですがそのためには、情報武装が必要になります。自分の推奨しようと思う銘柄がほかの商品と比べてどうなのか。もちろん、手数料が低ければ勧めればいいですが、そうでなかったら、顧客にエクスプレインをしなければなりません。その証跡を電子的に残す必要もあります。電子化は、その第一歩になりますので、進めていただきたいと思っております。
 
 いずれにしても、顧客本位の業務運営に関する原則も重要情報シートも投資教育も、日本では足かせみたいに捉えがちです。けれども、アメリカでは工夫をしたところにお客様が集まって、次のビジネスにつながるので、最善の利益競争とも言えるような状況が生じ、より高度化が進んだというイメージを持っております。中堅中小金融機関の場合は少々重荷かもしれません。米国では、これらの業務を請け負う専業の業者が生まれてビジネスチャンスに変え、新しい産業をつくってきました。今日のどのテーマも、そういった発展に資するような形で議論が進められればよいなと思いました。
 
 以上でございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 チャットのほうに御発言の希望を寄せていただいた方は、一通り御指名させていただいたかと思います。本日御参加いただいている委員の中で、佃委員は、まだ御発言ございませんが、もし佃委員、御発言がございましたらどうぞ。
 
【佃委員】  それでは、せっかくですので、時間の関係もあるので、ごく簡単にコメントだけさせていただきます。ありがとうございます。
 
 18ページのプロダクトガバナンスについてです。10月24日開催の第2回の会議で、事務局から御紹介いただきましたMiFID Ⅱ、そしてプロダクトインターベンション、プロダクトガバナンスソースブックなど、EU及びイギリスでの取組状況というのは我が国においても大いに参考になると思いました。EUや英国における資産運用会社等の商品組成者の主な義務及び販売会社の主な業務、さらには資産運用会社と販売会社の相互連携による金融商品を検証する仕組みなどを踏まえた上で、原則の見直しを検討していただくことが顧客本位の業務運営に資することになると考えています。
 
 以上です。ありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 ほかに御発言ございますでしょうか。
 
 多様な意見をいただき、誠にありがとうございます。
 
 それでは、オブザーバーの方からもし御意見がございましたら、発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。
 
 それでは、飯山様、御発言ください。
 
【日本証券業協会】  日証協オブザーバーの飯山でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 本日の内容を踏まえまして、幾つかコメントをさせていただければと思います。
 
 まず、業界横断的なルールについてですけれども、これまで私どもはプリンシプルベースの「原則」に沿う形で顧客本位の業務運営に取り組んでまいりました。本タスクフォースでの御議論では、原則2の内容を、広くインベストメント・チェーンに関わる者を対象に法律に定めることで、顧客の最善の利益を図る取組みをさらに一歩踏み込んだものとするという考え方が提示されておりますけれども、一つの方向性として理解できるものでございます。なお、仮にこのような方向性で進める際は、インベストメント・チェーンに関わる者全体に横断的に濃淡なく適用される法整備を徹底いただきたいと思います。また、既に「原則」の精神に則って顧客本位の業務運営に取り組んできた金融商品取引業者等に対して、新たな義務・責任や制限、事務負担、こういったものが生じないように、具体的な内容については業界とも事前に調整いただければと存じます。
 
 次に、顧客への情報提供の一部ルール化について申し上げます。顧客との利益相反の可能性や顧客が負担する手数料等の顧客への情報提供は、これまでも「原則」に定められておりまして、各社ではこれに沿うべく取り組んでいるところでございます。本タスクフォースの御議論では、顧客本位の業務運営をさらに進めるために、これらのルール化に取り組むべきという御指摘でございまして、その方向性については理解できるところでございます。なお、誰が何をどのように情報提供すべきかについては、業界横断的にある程度の目線合わせが必要と考えます。そのためには、実務面も踏まえた詳細にわたる検討が必要ですので、御当局には実施に向けて、商品の販売会社や組成者など関係者との綿密な意見交換をよろしくお願いしたいと思います。
 
 以上のように、横断法制及び顧客への情報提供について、何らかの規制の見直しが行われる方向と考えられますけれども、前回も申し上げましたように、規制の見直しに当たっては、金融事業者にとって最小限の負担で顧客本位の業務運営のさらなる進展を実現できるものとなりますよう、規制のスクラップ・アンド・ビルド、とりわけ大胆なスクラップを行うことを念頭に置いていただきたいと存じます。
 
 併せて、前回も申し上げましたけれども、「原則」の運用に際しましては、「顧客以外から手数料を得ているから顧客本位ではない」とか、「利益相反があるから顧客本位ではない」といった、一面的な評価となることのないように御留意いただきたいと思います。これらのことを含めて、御当局には各社における顧客本位のさらなる進展に向けた取組みにつながるよう、丁寧にコミュニケーションを図っていただくようお願いいたします。
 
 次に、中立的なアドバイザーと金融リテラシーについて申し上げます。
 
 独立的・中立的な立場から質の高いアドバイスを、アドバイスギャップを生じさせない形で提供していくという方向性に賛同いたします。ただ、これまでの御議論にもありましたように、その実現には難しい課題があるのも事実でございます。一つのアイデアとして、前回会合において私どもの「資産所得倍増プランへの提言」と同じ方向性の御意見もいただいたところではありますけれども、資産形成教育・相談機能を担う公的な機関を設置し、統一的なウェブサイトの構築や、シミュレーションツールの提供、地方公共団体や経済団体との連携を図りつつ、事業主あるいは学校からの依頼に基づく講師派遣、中立的なアドバイザーによる個別相談機能を備え、かつ、これらを無料で行うことが考えられます。また、家計の安定的な資産形成の実現のために、国・地方公共団体・雇用主としての事業者等、広範なステークホルダーに対し、資産形成教育の推進を責務・努力義務とする法整備も検討に値すると考えてございます。
 
 最後に、御議論いただきたい事項②のデジタル化について申し上げます。
 
 証券業界としては、書面での情報提供を求めるお申し出があったお客様以外のお客様に対し、デジタルによる情報提供を可能とするデジタル原則化を実現していただきたいと考えてございます。その前提として、お客様には書面での情報提供を求める申し出ができることを御理解いただくことが重要でございまして、これには積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、全銀協の江連様、御発言ください。
 
【全国銀行協会】  全国銀行協会の江連でございます。発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。
 
 私からは2点、FD原則の法制化、顧客への情報提供のデジタル化について申し上げます。
 
 まず、法制化についてですが、法制化の方向性に異論はございません。ただ、検討に当たり御考慮いただきたいポイントを申し上げたいと思います。
 
 前回も申し上げましたとおり、FD原則が、ルールベースではなくプリンシプルベースが有効である、との考えに基づき策定されたという当初の考え方も踏まえて、これまでの取組が後退しないためにも、法制化によってどのような影響があるのか、よく見ていく必要があると考えております。
 
 具体例として6点申し上げます。1点目、本規定の追加により、具体的に求められる対応は何が考えられるのか。2点目、違反の基準、違反時の罰則。3点目、金融サービスの提供に関する法律、金融商品取引法の既存条項との関係整理。4点目、各用語の定義や範囲。例えば、金融事業者、最終的な受益者、こうした言葉がどういった範囲になるのかといった点。5点目、利益相反の顧客への開示を義務化した場合の既存の利益相反管理体制への影響。6点目、コスト開示の粒度、顧客への情報開示のタイミングや方法など。こうした点について、実務的な視点から検討を進める必要があると考えております。
 
 なお、コスト開示については、解釈の余地を残すことによって販売会社間で取扱いが異なってしまったり、製販業者間での調整による機会費用が発生してしまったりするといったことは好ましくないと考えられますので、開示のフィージビリティを確保しつつ、顧客にとって分かりやすく比較可能な開示ルールを統一的に定めるべきであると考えます。
 
 次に、顧客への情報提供のデジタル化について申し上げます。
 
 店頭に出向くことなく、ペーパーレス、非対面で取引を完結させたいというお客様のニーズの高まりに応えるべく、情報提供のデジタル化は積極的に推進していくべきだと考えております。金融手続における書面・押印・対面手続の多さに対する社会からの厳しい御指摘を踏まえ、金融業界ではデジタル化に取り組んでいるさなかと認識しておりますが、デジタルとアナログが併存することによる社会的な二重コストの削減の観点では、安価で便利なデジタルへのシフトを大きく加速し、必要な方には紙での手続を残すといった対応が考えられます。そのためには、便利な環境やツールを用意するだけでは不十分であり、各事業者の取組に加え、国、社会レベルでシフトを加速させる大きな仕掛けが必要です。例えば、事業者側の取組として、お客様に分かりやすく「来店不要で手続が完結する」などと打ち出すとともに、オンライン手続のUI、UXを高めるほか、紙の発行に関わるコストをお客様に御負担いただくといったことが考えられます。また、最終的な定着を図る上で、一定の移行期間を設けた上で、国全体として時限を設定するといった対応が考えられると思います。もちろん、デジタルリテラシー等には十分な配慮が必要ではありますが、「貯蓄から投資へ」を進めていく上で、「投資は紙の手続が多くて煩雑だ」といったイメージを根本から変えていけるよう、シンプルで顧客利便性が高まるルールの整備が必要と考えます。
 
 以上でございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、生保協会の竹内様、御発言ください。
 
【生命保険協会】  生命保険協会の竹内でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 私からは、2点申し上げます。
 
 1点目は、顧客本位の業務運営の確保に関する法制化でございます。とりわけ個別具体的な利益相反等のルール化について申し上げます。
 
 本日の事務局の資料でもお示しいただいておりますけれども、重要情報シートによる情報開示などが一定程度進んでおりまして、まだ道半ばで試行錯誤が行われつつやっているという状況かと思いますが、やはりプリンシプルベースの創意工夫も含めて一定の進捗が見られる状況だと認識しております。したがいまして、ルール化に当たりましては、あまりに細かい規律が設けられてしまうことによって、商品の内容やチャネルの特性に応じた柔軟な創意工夫の取組が困難になるようなケースを懸念いたします。ルール化の是非を検討する場合には、その点の留意が必要だと思いますので、規制の対象や内容は真に必要なものに限定されるように御配慮いただければと思います。
 
 2点目は、情報提供のデジタル化についてでございます。
 
 デジタル化の社会的な意義等に関しましては、今、全銀協様からお話がありましたけれども、基本的には我々も同じような理解でございます。こちらも制度の詳細な設計を進めるに当たりまして、商品の特性、顧客の属性、販売対応が様々であることも踏まえまして、取り扱う商品等、いろいろな販売のスタイル等に応じて柔軟に設計できる形となるような御配慮をいただければと考えております。
 
 以上でございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、国際銀行協会の中村様、御発言ください。
 
【国際銀行協会】  国際銀行協会の中村でございます。発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。
 
 前回のタスクフォース同様、今回も仕組債に関して、前回の当方の発言を補足するような形で一言申し上げたいと思います。
 
 海外では、仕組債等の商品の価格等開示に関して規制が既に導入されております。既存の海外規制を参考に、本邦でも同様のルールを定めることは、顧客本位の業務運営に関する原則の観点から歓迎いたします。
 
 しかし、仕組債は取引所に上場され取引されている商品とは異なり、店頭で取引される商品であることを鑑み、その公正価値を算出するに当たっては、各社独自の計算モデルに基づき算出されていることを御留意いただければと思います。今後は、顧客保護を図りつつ、開示内容、開示方法においても、実効性を考慮していただくことを希望いたします。
 
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、日本銀行の山田様、御発言ください。
 
【日本銀行】  金融広報中央委員会の事務局を務めております日本銀行の山田でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 職域での金融教育について、コメントをさせていただきます。
 
 金融広報中央委員会といたしましても、職域での金融教育の強化に取り組んでまいりたいと考えております。この点、中堅中小企業を含めまして、日本全国の企業を個別に回って金融教育の機会をいただくというのは、リソースの制約もございますので、どうしても時間がかかってしまうと思われます。したがいまして、神田委員から御指摘がございましたように、金融教育のeラーニングを職域に展開していくことは、一つの効率的、効果的な方法であるというふうに考えております。金融経済教育推進会議におきまして、官民一体となって、まさにオールジャパンで制作した「マネビタ」というeラーニング教材がございますので、まずはこれを職域に展開していくことに注力してまいりたいと考えております。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、ファイナンシャル・アドバイザー協会の中桐様、御発言ください。
 
【ファイナンシャル・アドバイザー協会】  ファイナンシャル・アドバイザー協会の中桐と申します。今回、発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。
 
 今回初めての発言ということですので、簡単に協会の御紹介をさせていただきますと、弊協会は金融商品仲介業者とそこに所属するIFA、独立系のファイナンシャル・アドバイザーが真に顧客の立場に立ちファイナンシャルアドバイスを行うための支援と、日本におけるIFAのベストプラクティスの確立と普及促進などを目的に設立されました。
 
 今回、タスクフォースの議論の中で、中立的なアドバイザーについて発言をさせていただきます。
 
 中立的顧客本位のアドバイザーについて、次の2つの観点で考えるべきだと考えております。
 
 1つ目は、報酬体系についてです。
 
 これまでのタスクフォースの議論の中でも、顧客からのみ報酬を受け取るべきという議論がありましたが、これはライフプランの対価として受け取るFP業や助言業としての対価を受け取るアドバイザーのみを指しているようですが、欧米等、海外の事例を見ましても、ファイナンシャルアドバイスだけで商品提案を実行していないアドバイザー、いわゆる定額制やタイムチャージなどの例は非常に少ないと思っております。米国を含む投資先進国においては、大多数のアドバイザーが顧客と投資一任契約に基づきマネジメントアカウント、ラップで顧客のゴールベースプランニングやリスク許容度に合ったポートフォリオを提案しており、その投資一任契約からもらう報酬には投信代行手数料やコミッションなど、そこの組入れ商品からの手数料は入っておりません。米国にある約17,000社のRIAの場合も、資産運用を一体的に提供しているところが多く、米国のRIA全体の預かり資産6.6兆ドルの大部分は一任で運用されております。つまり、欧米で言われている顧客からのみ報酬をもらうというものは、顧客から直接報酬をアドバイザーに振り込んでいるということではなく、投資一任サービス料から残高でもらっている形になり、それをきちんと情報開示しているということになります。それによって、投資一任の中でどれだけ売買をしてもアドバイザーの報酬に反映されることはないので、利益相反の軽減になり、欧米では主流となっております。
 
 当協会としましては、プランニング報酬を投資の実行と切り離すサービスと一体的に提供するサービスではどちらが正しいということではなく、顧客のチョイスとすべきと考えております。また、金融商品仲介業者ではゴールベースアプローチに基づくラップをファイナンシャルプランニングとともに媒介することで、お客様のゴールの実現まで末永くアフターフォローすることができると考えております。また、特定の商品の提案にバイアスがかかるような報酬手数料設定などは自社系商品、他社系商品を問わず排除すべきということは言うまでもありません。
 
 2つ目のルール化についてです。
 
 先ほどのゴールベースに基づくラップの媒介は、いわゆるフィーベースモデルと言われているものですが、顧客から一定程度の資産を預からないとビジネスが成り立たない側面があり、欧米、特にドイツなどの一部の先進国でもアドバイスギャップ、すなわち一部の富裕層しかアドバイスを受けられず、広範な個人がアクセス可能なアドバイザー市場が育たず、投資を通じた資産形成が日本同様にほかの先進国に比べても進まないという事象が起きてしまっています。
 
 それに対して、今はまだそれほど資産がないが、頻繁にアドバイスを受ける必要もないので、ファイナンシャルプランとそのプランに合った金融商品を提供するということであれば、コミッションの付随業務の範囲でのアドバイスというものもありだと考えております。その点で、顧客の最善利益の追求のためには、米国のレギュレーションBIのようなブローカレッジ業務の下でも利益相反対策を排除する厳しいルールを課すことも今後の制度設計の選択肢になると考えておりますので、今後もタスクフォースなどで御議論をいただければと考えております。
 
 以上になります。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 オブザーバーの方からの御発言は以上でよろしいでしょうか。
 
 大変ありがとうございました。本日も非常に多くの御意見をいただきましたけれども、事務局においてさらに今後検討すべき課題について整理をいただき、議論を進めていきたいと存じますが、事務局から何か今の段階で御発言はよろしいでしょうか。
 
 それでは、定刻よりも少し早いのですけれども、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。大変御多用のところ、誠にありがとうございました。
 
                                             ―― 了 ――
お問い合わせ先

金融庁 03-3506-6000(代表)

企画市場局市場課(内線:2356、2355、3628)

サイトマップ

ページの先頭に戻る