金融審議会金融分科会「基本問題懇談会」(第4回)議事要旨
1.日時:
平成21年9月14日(月)14時00分~16時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室
3.議題:
○委員等からの報告
(報告者)淵田康之 委員
中曽宏 日本銀行理事
(説明者)氷見野良三 監督局総務課長
○討議
4.議事内容:
○淵田委員から「金融危機と我が国市場を巡る制度面の課題」について報告があった。
○中曽日本銀行理事から「金融危機における流動性問題の一側面:わが国レポ市場の課題」について報告があった。
○氷見野監督局総務課長から「『マクロ健全性監督』を巡る議論と金融庁における取組み」について説明があった。
○続いて討議が行われた。討議の概要は以下の通り。
我が国では金融危機の発生後に適切に対応するための体制が整っているかどうかとの点に関して、1990年代の経験が様々な形で活かされている。例えば、当時の経験を踏まえ、金融市場調節については、多様な金融調節手段が整備されているほか、日頃から収集している詳細な個別金融機関の資金繰り情報を活用してきめ細かい調節を行っている。
我が国においてレポ取引等の国債取引の決済に係るフェイル慣行が十分に定着していない理由としては、金融機関経営層を中心に、フェイルに対する理解の浸透が進まず、イメージが悪いことがある。また、フェイルをされる側にとっては、フェイル発生によって国債を受け取れずに手元に資金が残るが、市場金利水準が低いことから手元に残った資金を運用しても収益をあまり挙げられないなどの理由から、フェイルを容認する経済合理性に乏しいという点も背景にある。
国債決済において、限界的にフェイルが発生することは避けられないものであり、これを受け入れることは国債市場の流動性を維持する上で重要であるが、一方で、フェイルの多発は抑制するべきである。市場参加者の間では、フェイルチャージ(フェイルした側への金銭負担の賦課)の導入によって、フェイルを抑制するという対応が議論されている。
ヘッジファンド規制について、我が国では、投資家保護の観点から登録制・届出制等の規制を既に導入しているが、システミックリスク予防の観点からの規制をどの程度まで行うべきかという論点がある。
証券化商品に関連して、グローバルには、自己資本比率規制、金融機関の投資の監督、格付機関の規制、オリジネーター等の関与についての規制といった様々な観点から、規制等の見直しの議論が個別に行われているが、規制等の内容を議論する際には、これらの見直し案が全体として市場に対して与える影響を考慮した上で、検討を行うべきである。また、我が国では、間接金融中心の金融システムであり、銀行に過度にリスクが集中しないようにリスクを移転するニーズがあることを踏まえると、欧米での証券化商品に対する規制見直しの議論を、我が国にもそのまま当てはめられるかどうかについては留意が必要である。
格付機関に対する規制については、米欧ではローテーション制の導入といった踏み込んだ点についても議論がなされているが、我が国においてはどの程度詳細な規制を行っていくべきかという論点がある。
国際的な規制見直しの議論には、公的資本注入を受けた金融機関には有利に働くなど、自国の金融業界の利益を保護するとの側面もあり、我が国も、危機再発防止のための規制等の再構築に向けた議論を客観的に行うだけでなく、自国の利益といった視点からの議論をより行っていくべきではないか。
我が国も世界的な金融危機の影響を大きく受けており、規制等の再構築により世界の金融システムが安定化すれば、そのことは我が国にとっても望ましいことではないか。また、提案されている規制の各種見直し案が各国の金融業界に与える影響は様々であり、一概にどの国が不利とは言えないのではないか。
グローバルな規制等の見直しの議論に対応していく上では、我が国の市場インフラの整備や金融機関の国際競争力の強化といった視点も重要である。ただ、金融業界において、市場インフラの整備等に対して前向きな姿勢が必ずしもみられない傾向がある。
バブルをどう抑制するかという点に関して、バブルの発生を識別することは現実には難しい問題である。また、仮にバブルの発生を識別できた場合でも、バブルを抑制するための措置を講じようとすれば、表面上は好調な景気に水を差すことになるため、対応を実行に移すには困難を伴う点には留意が必要である。
バブルへの対応には、裁量的な対応と、制度に組み込まれた自動安定化装置的な対応があり得る。裁量的な対応は、表面上は好調な景気を抑制する方向に働くため、支持が得られにくい。一方、制度に組み込まれた自動的な対応も、バブルの発生源が毎回同じとは限らないことなどから、発動の条件となる指標の選定をどうするか等の課題がある。
欧米の金融機関では、今回のグローバルな規制等の見直しへの対応として、オフバランスの事業体などの複雑な仕組みを止めてシンプルなビジネスモデルへの回帰を模索しているようだ。
以上
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本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。