金融審議会「市場構造専門グループ」(第1回) 議事録

 

1.日時:令和元年5月17日(金)16時30分~18時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

 
【八幡監理官】
 本日は、冒頭のみカメラ撮影が入りますので、ご了解いただければと思います。
それでは、神田座長、よろしくお願いします。
 
【神田座長】
 それでは、ただいまから、金融審議会「市場構造専門グループ」の第1回目の会合を開催させていただきます。
皆様方には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 申し遅れましたが、私、このグループの座長を務めさせていただきます学習院大学の神田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、まず、事務局から委員のご紹介をお願いします。
 
【八幡監理官】
 事務局を務めさせていただきます金融庁市場課の八幡でございます。
皆様におかれましては、このたび、委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。

 まず、私のほうから委員の皆様を座席順にご紹介させていただきます。
お手元に配席図をお配りしておりますけれども、委員の皆様の右側から見まして、井口譲二様でございます。
 
【井口委員】
よろしくお願いします。
 
【八幡監理官】
池尾和人様です。
 
【池尾委員】
よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】
翁百合様です。
 
【翁委員】
よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】 
小林喜光様です。
 
【小林委員】 
どうもよろしくお願いします。
 
【八幡監理官】 
三瓶裕喜様です。
 
【三瓶委員】 
よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】 
 高田創様は、ちょっと遅れてご参加いただけると伺っております。
 松山彰宏様です。
 
【松山委員】
よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】
次に、オブザーバーの皆様をご紹介いたします。
委員の皆様に向かって右側の方からでございますけれども、日本取引所グループ東京証券取引所、青執行役員でございます。
 
【青オブザーバー】
青でございます。よろしくお願いします。
 
【八幡監理官】
札幌証券取引所より、鳥居専務理事でございます。
 
【鳥居オブザーバー】
札幌証券取引所、鳥居でございます。よろしくお願いします。
 
【八幡監理官】
名古屋証券取引所より、鈴木執行役員でございます。
 
【鈴木オブザーバー】
鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】
福岡証券取引所より、酒井専務理事でございます。
 
【酒井ブザーバー】
福岡証券取引所、酒井でございます。
 
【八幡監理官】
反対側に行きまして、日本銀行より、大竹市場企画課長でございます。
 
【大竹オブザーバー】
大竹でございます。よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】
経済産業省より、福本産業資金課長でございます。
 
【福本オブザーバー】
福本です。よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】
日本証券業協会より、丸野エクイティ市場部長でございます。
 
【丸野オブザーバー】
丸野と申します。よろしくお願いいたします。
 
【八幡監理官】
 なお、事務局側の紹介につきましては、時間の都合もありますので、お手元の配席図をもってご紹介にかえさせていただきます。

 それでは、恐縮でございますが、カメラ撮影の方はここでご退室をお願いいたします。
委員の皆様方、少しお待ちいただければと思います。
 
(カメラ退室)
 
【神田座長】
 それでは、今日は初回でございますので、最初に議事の進め方について幾つかご確認をさせていただきたいと思います。

 このグループでございますけれども、審議は原則公開とさせていただきたいと思います。
それで、資料や議事録も公表するということにさせていただければと思います。

 その意味で、皆様方には、公表を前提としたご意見、ご発言を頂戴できればと考えております。このような形で議論を進めるということにさせていただきたいと思いますけれども、ご承認いただけますでしょうか。
 
(異議なし)
 
【神田座長】 
 どうもありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。では、議事に移らせていただきます。
 お手元の議事次第にありますように、本日はまず事務局から、本グループを設置いたしました目的等について簡単に説明をしていただきます。
続きまして、東京証券取引所から、市場構造のあり方に関するこれまでの議論についてご報告をしていただきます。

 その後、委員の皆様方のうち3名の方からお話をいただき、それを全部終えたところでまとめて質疑応答、意見交換を行わせていただきたいと思います。本日はそういう形で議事を進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず事務局からのご説明をお願いいたします。
 
【八幡監理官】
 事務局から簡単に冒頭ご説明させていただきます。

 我が国の市場構造のあり方につきまして、これまで東京証券取引所の懇談会で検討が行われてきました。
本年の3月に論点整理が取りまとめられたところでございますが、東証をはじめとする我が国の取引所のあり方につきましては、我が国の市場そのもののあり方に直結するということで、金融審議会の方でも継続的かつ専門的に議論を進める必要があるというご意見を頂戴したところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、今後の市場構造のあり方につきまして、関係各界の有識者の皆様方からご意見やご提言を賜ることを目的としまして、本専門グループを設置させていただいた次第でございます。

 議論のスタートに当たりまして、これまで東証で行われてきました検討内容をご紹介したいと思いますが、東証の青執行役員にご出席いただいておりますので、青執行役員からご説明いただきたいと思います。
 事務局からは以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、東京証券取引所の青執行役員からご説明をお願いできればと思います。
 よろしくお願いいたします。
 
【青オブザーバー】 
 東京証券取引所で上場制度を担当しております青と申します。ご説明の機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 本日は、現物市場の市場構造の在り方等に関する検討につきまして、東証におけます、これまでの検討状況のご説明を差し上げたいと存じます。
資料をおめくりいただきまして、2ページのところをごらんいただけますでしょうか。

 ご承知のとおり、現在、東証で開設しております一般投資家向けの市場は、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQ、この4つの市場区分から構成されております。この現在の形は、東証と大証が2013年に現物市場を統合した際に、上場会社や投資家に過度な影響が出ないように、基本的にそれぞれの市場構造を維持してきたものでございます。それから約5年が経過していますが、その間、この市場構造をめぐりましては、市場関係者の皆様から改善すべき点についてさまざまなご指摘を頂戴しております。

 そこで、昨年の秋に東証におきまして、市場構造の在り方等に関する懇談会を設置いたしまして、メンバーの方々にご助言を頂戴しながら、あるいは市場関係者の方々への意見募集やヒアリングを行いながら、現状の課題あるいは改善すべき論点の整理を進めてまいりました。3月には、東証としての考え方について取りまとめを行っており、公表しております。本日は、その内容につきましてご紹介させていただければと存じます。

 3ページは飛ばさせていただきまして、4ページをごらんいただけますでしょうか。まず現在の市場構造を巡る課題でございます。東証におきましては、市場関係者の皆様から頂戴いたしましたご意見などを踏まえまして、課題を大きく3つに整理しております。

 まず資料の①と書いているところですが、各市場のコンセプトが曖昧であって、多くの投資者にとって利便性が低いという課題がございます。具体的に申し上げますと、右側の青色の点線で囲ったところの1つ目のチェックにございますように、現在、中小企業、新興企業の新規上場については、多くの場合、市場第二部、マザーズあるいはJASDAQの各市場に上場されていますが、これらの市場の位置づけが重複していてわかりづらくなっているという指摘がございます。

 それから、2つ目のチェックでございます。市場第一部につきまして、上場会社の数が多いのではないかという声もよく聞かれますが、実際には、市場関係者の皆様からのご指摘としては、数の多さそのものというよりも、収益、時価総額、流動性、経営体制、ガバナンス、情報開示などに関しまして、さまざまな水準の企業が混在している状況にあり、市場のコンセプトが明確でなくなってしまっているというご指摘がございます。

 さらに、市場第一部の上場会社は、TOPIXという株価指数の構成銘柄になっておりますが、インデックス運用の隆盛により、TOPIXに連動する運用資産がかなり増えている状況におきまして、流動性が低い銘柄については、価格形成にゆがみが生じているというご指摘もあるところでございます。

 次に、②は、上場会社の持続的な企業価値向上の動機づけという点で期待される役割を十分に果たせていないという点でございます。具体的には、まず、1つ目のチェックですが、昨今、多くの上場会社は、東証への新規上場後に市場第一部を目指されている状況でございまして、このため市場第一部へのステップアップは、上場会社の企業価値向上や、ガバナンスあるいは内部管理体制の維持向上の動機づけとしての機能、これが期待されるという面がございます。

 一方で、その実態を見ますと、市場第一部へのステップアップの基準が、市場第二部に上場する際の基準と大差がないというものでございますので、その動機づけの観点から、十分には機能していないというご指摘を頂戴しているところでございます。

 また、2つ目のチェックですが、特にベンチャー企業に関しまして、機関投資家の参入のための方策を検討すべきというご指摘を頂戴しているところでございます。ベンチャー企業は、事業の新規性などの面から事業評価が難しい場合が多く、また、成果があがるまでの期間も長いということがございます。上場後における資金調達機会の拡充という観点も含めて、成長を長期的に支援する機関投資家のサポートが重要と考えられます。

 一方で、現状、上場前はベンチャーキャピタルの支援がありますが、上場後は、そうした投資家からの支援が得られにくくなるという面がございますので、どのようにしてサポートを確保していくかというところが課題でございます。

 また、開示制度に関しましても、大企業と比べると会社の体制が盤石ではないベンチャー企業におきまして、過大な負担が生じているのではないか。あるいは将来性を重視するベンチャー企業は、短期的な業績動向よりも、むしろ将来性に着目して、事業内容やその進捗についてより詳しく説明したほうがよいのではないかといったご指摘も頂戴しております。

 最後に③ですが、投資対象としての機能性と市場代表性を備えた指数が存在しないという点でございます。
 1つ目のチェックにありますとおり、現在、東証では、市場第一部の全上場銘柄を構成銘柄とするTOPIXという指数を算出しておりますが、TOPIXの対象構成銘柄には、流動性が低い銘柄など、さまざまな会社が含まれているという状況にあります。

 一方で、2つ目のチェックにございますように、東証では、JPX日経インデックス400やTOPIX500といった指数も算出しておりますが、これらをベンチマークとする投資家の方々はあまり多くない、比較的少ない状況でございます。例えばS&P500など諸外国の指数との比較におきまして、特に機能性という面におきまして適した指数が存在しないというところがございます。

 こうした課題も踏まえまして、東証としては、我が国経済の持続的成長に向け、いかに上場会社各社の中長期的な企業価値向上とベンチャー企業の育成に資する市場をデザインできるのか。また、投資者の皆様から支持される市場を構築していけるのか。これらの喫緊の課題に取り組んでいかなければならないと考えているところでございます。

 5ページから7ページまでは、これらの課題に関して頂戴しているご意見を抜粋しているものでございますので、説明は割愛させていただきます。
 9ページをごらんいただけますでしょうか。市場構造の問題と改善に向けた論点整理でございます。具体的な方向性あるいは結論が得られているという状況ではございませんが、東証としては、将来の市場構造のデザインとして、こうしたものが考えられるのではないかということで、市場関係者の皆様から頂戴したご意見も踏まえ、取りまとめたものでございます。

 まず一番上に、考えられる制度の方向性を記載しております。取引所といたしまして、今後、幅広い企業に上場機会を提供し、上場後の持続的な企業価値向上を動機づける役割を果たしていくためには、既存の市場区分にとらわれずに、上場会社の成長段階や投資家の層といった上場銘柄の特性に応じて、市場区分を改めて再設計していくことが適当ではないかと考えている次第でございます。

 その下に横並びに書きました絵の部分でございますけれども、上場会社の成長段階や投資家の層を踏まえますと、例えばということで、3つの市場が必要と考えられるのではないかというところでございます。
 まず一番左側の水色のところでございます。一般投資者の投資対象となる企業には、必要かつ十分な企業内容の開示により、投資者の投資判断の基礎となる情報を提供することが求められます。その会社が将来創出するであろうキャッシュフローを投資者が的確に評価するためには、事業運営の実績に関するトラックレコードが提供されていることが望ましいと考えられます。
 そして、そうした一般投資者の投資対象としてのふさわしい実績を有する企業、これを上場対象とする市場を取引所市場の中心的な市場とすることが考えられます。この市場を仮にA市場と呼んでおります。

 次に、一番右側のクリーム色の部分です。A市場の上場対象は実績を有する企業ですが、一方、実績はまだ有していないものの、イノベーションを通じて、新たな産業を創出するベンチャー企業の育成も必要不可欠でございます。そうした観点から、高い成長可能性を有しているベンチャー企業を上場対象とする市場を設けることが考えられます。こちらは仮にB市場と呼んでおります。

 最後に、真ん中の緑色のところです。国際的に投資を行う機関投資家は、現在、東証においても大きなプレゼンスを持っている状況にございます。こうした機関投資家の投資資金を受け入れていくためには、このような投資家の投資対象になるような要件を十分に備えている企業を上場対象とする市場を設けることが考えられます。こちらを仮にC市場と呼んでおります。

 ポイントは、各市場につきまして、積極的なコンセプトで並列的に位置づけることを考えているところでございます。
これまでの階層型の市場構造に対しては、例えば市場第一部上場後に成長がとまってしまうような会社が散見されるといったご指摘も多数寄せられております。また、近年、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードにより、上場会社と機関投資家との建設的な対話が、上場会社の企業価値向上において重要な役割を担うという考え方が浸透してきております。必ずしも階層型の構造にこだわらず、むしろ明確な市場コンセプトと、そのコンセプトを体現する基準により、持続的な企業価値向上を実現していただくことが重要ではないかという認識でございます。

 続きまして、仮にこの3つの市場がある場合に、それぞれのコンセプトを体現する基準としてどのようなものが考えられるのかという点でございます。その下の点線の部分です。まず新規上場の基準は、A市場とC市場では、そのコンセプトを踏まえますと、ガバナンス体制、流動性、利益水準、また、市場評価、市場評価は時価総額になるかと思いますが、こうしたもので基準を設けていくことが考えられるのではないかというところでございます。
 それらの基準の水準に関しましては、一般の投資者の投資対象にふさわしい実績が求められるA市場と、グローバルな比較可能性に配慮することが必要となるC市場では、当然ながら差異が出てくるということを想定しております。

 また、クリーム色の部分のB市場については、過去の事業実績ではなく、企業の将来性、成長可能性に注目することが考えられますので、A市場やC市場の基準よりも緩和されたものとなるということが想定されます。赤字も想定される先行投資型の企業も含め、成長可能性の高い新興企業に幅広く上場の機会を提供していくことが重要ではないかと考えている次第でございます。

 一方で、市場からの退出の基準ですが、新規上場の際には企業の経営成績等に着目する一方、上場後は、既に市場における評価がございますので、その市場評価も加味していくことが必要ではないかと考えております。

 続きまして、その下の企業価値向上の動機づけを補完する仕組みですが、4点ございます。まず1点目は、各市場におけるコンセプト、すなわち各市場が期待する上場対象を明確にしていくために、他市場から市場変更する際の基準、新規上場する際の基準、また、市場から退出する際の基準につきまして、差異を設けずに一つの基準に共通化していくということが考えられます。

 それから、2つ目の点ですが、先ほどの課題のところでもご紹介いたしましたとおり、特に高い成長可能性のある企業を上場対象とするB市場におきましては、上場後の成長を支援する機関投資家の参入を促進するための方策を検討していく必要があると考えている次第でございます。

 3点目ですが、これも先ほどの課題のところでございましたように、企業の成長段階や投資家の層の厚みに応じて、適切な開示制度などが異なってくることが想定されます。今後は、そうした制度を最適化していく必要があると考える次第でございます。

 それから、4点目ですが、C市場におきましては、グローバルな機関投資家の視点が入ってまいります。投資家との対話を行いながら、企業価値の維持向上を図っていただくことが期待されると考えておりますので、そのような投資家の方々の目線をより強調した基準によって選定された銘柄により構成される指数や区分を創設していくことも考えられる次第でございます。

 以上が東証にて整理いたしました、想定される市場のデザインでございます。最後にもう一つ大事な点として、新たな市場構造への移行に当たりましては、企業や投資家への影響を十分に考慮したプロセスをどのように確保していくかということが重要と考えております。

 資料の一番下をごらんください。今回の見直しの重要なポイントは、上場会社の企業価値の向上でございます。そして、言うまでもなく、それを実現していただくのは上場会社自身でございますので、取引所が上場いただく市場を決めるということではなく、上場会社の皆様からの申請によって市場を選択していただく機会を提供していくことが重要と考えております。

 また、ご選択いただくとしても、すぐに新しい制度にご対応いただくことが難しい場合が考えられますので、準備のため、例えば数年単位の移行期間を設ける、あるいは適用される基準を段階的に変更していくといった方策がいくつか考えられます。必要なプロセスを十分に確保していくことが重要と考えている次第でございます。

 9ページは以上でございまして、10から12ページまでに、これまでご紹介しました論点整理に関して、頂戴しているご意見やご提案を抜粋しておりますが、説明は割愛させていただければと存じます。

 説明は以上でございます。我が国の証券市場の一つであります東証の上場制度を担う立場といたしましては、本専門グループにおきましてぜひ活発なご議論をいただくことを期待している次第でございます。どうぞよろしくお願いします。
 
【神田座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、委員のうち3名の方々からお話をいただき、その後、まとめて質疑応答、意見交換の時間とさせていただきたいと思います。

本日、我が国の市場構造のあり方につきまして、運用会社で運用ビジネスに携わっておられる三瓶委員と井口委員、そして、上場企業経営の一翼を担っておられる松山委員、これら3名の方々からお話をいただきたいと思います。
順番として、まず三瓶委員からお願いしてよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
 
【三瓶委員】
 よろしくお願いします。

 まず最初に、今回、市場構造のあり方等の検討を改めてこうしたオープンな場で進めていただき、ありがとうございます。
そしてまた、一機関投資家としての意見をこちらで述べさせていただく機会をいただきありがとうございます。

 今日、私が用意した資料は、実は昨年末から1月末にかけて東証で取りまとめておられた意見募集に対して、弊社から提出した意見書をもとにしていまして、その時点での考え方ですから、先程の東証さんの最終的な論点整理に直接は触れていません。
かねてから、市場に関して問題意識を持って社内では議論してきました。弊社には外国人もたくさんおりますし、海外で日本株に投資している担当者も参加しながら、いろんな視点で議論したことが盛り込まれています。

 では、一枚めくって、「Contents」というところをおあけください。年末の東証さんの意見募集では、7つの事項というのが提示されましたが、我々の方ではその前に、まず我々が重要と考える論点を4つ挙げて、そちらを重点的に議論しましたので、そちらからご紹介させていただきたいと思います。ここに書いている、I.フィデリティが重要と考える論点として、1、2、3、4というところです。

 2ページをおあけください。まず、市場第一部の市場構造のあり方を議論しようとするときに、必ず浮上するのが機関投資家の間で広く利用されているTOPIXとの関係です。海外市場においては、上場区分と機関投資家がベンチマークとして使うインデックスは、通常、別物として切り離されています。一方、先ほどもご紹介がありましたけれども、東証一部イコールTOPIXとなっている現状が、市場第一部のあるべき姿を議論するときに非常に足かせになるというか、難しいことになります。

 また、これは見方を変えると、その市場の提供者、管理者としての役割と、機関投資家のベンチマーク提供者としての役割、この2つを持っていて、ここには利害が一致しない部分があるということが重要な課題でもあります。こちらに挙げています、まず1つ目の点ですけれども、取引所または市場第一部への期待ということで、簡単に申し上げると、上場企業数が増加して、多くの企業がリスク・キャピタルにアクセスできるというのがまず一つですね。
 
 ですから、ここに①から④を書いてありますが、リスク・キャピタルへのアクセス、また、そこに上場するということで得られる社会的な評判、信用、公開企業としての一定の基準を満たしているという暗黙の保証です。3番目として、透明性ある株式報酬制度などインセンティブ、これらは公開企業にとってのメリットになります。加えて、取引所自身の競争力向上や成長という上場企業数の増加ということ。これが一つの期待でもあり、役割としてあります。

 ただ、一方で、この2つ目のポツですけれども、機関投資家のベンチマークとしての重要な要件としては、その質が継続的に向上していくということです。その質が継続的に向上するのに必要な要件を4つ挙げています。流動性。売買出来高ですね。②構成銘柄数を一定に保つことによる品質保証・品質向上というような部分。③として、したがって入替が発生することが所与になりますので、入替ルール、見直しのタイミング等、安定した予見可能な規律というのが必要になってきます。

 そして、先ほどTOPIX500とかJPX400があまり使われていないということがありましたが、この④のアセットアロケーション、またはヘッジ・ツールとしての先物等デリバティブが整備されているかどうかというのがその際の重要なポイントになります。そういう意味で、このページの結論として、市場構造のあり方を検討する上で非常に重要な出発点というのは、TOPIXの範囲と市場第一部の範囲を切り離す。そうすると、議論が非常にしやすくなるということがあります。そして、切り離したものはそれぞれが独立した規律のもと運営されるということが非常に大事だというふうに考えています。

 次の3ページは、これは社内で議論したときのスライドです。なので、英語のままですが、ここに書いてあるのは、今申し上げたことです。青色のボックスの中に書いてあるのは、ベンチマークとして必要な要件です。グレーの箱に入っているのは、市場機能として上場会社が何を期待するか、または取引所がどういうことを志向するかということです。そして、水色の箱に書いてあるのは、資金の委託者であるアセットオーナーの視点、またはアセットオーナーにコンサルティングする年金コンサルタント等の視点で、どういうものがベンチマークとして選ばれるのかということです。
 
 次に4ページ、続きの論点ですが、2点目として、新興市場についてです。市場区分には明確な位置づけの違いを期待しています。ですから、例えばエスタブリッシュした市場第一部というものと新興市場という、単純明快なメッセージというのが大事だと思っています。そういう意味では、今存在している新興市場は、統一して一つの市場にすべきではないかというふうに考えます。

 3番目は「退出ルール」です。退出のときに一番大事なのは、ちゃんと投資家保護ができているのかということです。これは一つの恒常的な市場をつくるということよりは、今、実際に行われている監理ポスト、整理ポストというやり方が非常にいいのではないかと思っています。

 4番目は移行に関してですけれども、現実的な問題として、TOPIXのETFというのがあります。ご承知のとおりだと思いますが、ここで一つの条件として、TOPIXと市場第一部を切り離すというのが大事だというふうに申し上げましたが、万が一切り離さないでそのまま議論を進めた場合には、既に拡大を続けている市場第一部を規律あるスリム化に向かわせるには大変なコストがかかります。その責任とコストを誰が担うのかということをまず考えなきゃいけないだろうということ。

 具体的にはパッシブ運用への資金シフトや、日銀の量的緩和政策の一環で購入されているTOPIX ETFへの資金フローは、現在、買い方に偏っているというのはご承知のとおりだと思います。そうすると、TOPIXを構成する流動性に乏しい銘柄については、資金流入とともに価格形成に影響を与えながら買い上げられている可能性があります。

 市場第一部の見直しに伴って、低流動性銘柄がTOPIXから外されるということになると、この逆回転が起こります。この影響はどのくらいの時間をかけて移行するかにもよりますが、著しく大きいというふうに思います。そして、流動性が限られる銘柄について、通常の出来高をはるかに超えるそういった規模の取引が続けられるとすると、そのたびに価格へ著しい影響を与えるわけですが、これを看過するということは市場のあるべき管理・監督として不適切だというふうに思います。

 5ページですが、ここからは第2として、東証さんから出された論点ペーパー、7つの事項について、それぞれ簡単に、どのように考えたかということをお伝えします。
 ①新興企業に対する上場後の成長の動機づけのあり方についてどう考えるか。この成長の動機づけというのがそもそも必要かどうか、若干疑問であるというところはありますが、そのステップアップ基準については、市場第一部への直接上場の基準と同じとすべきだというふうに考えます。それはわかりやすさ、公平性、正当性などが理由です。また、これによって、代表市場へステップアップするハードルは高まりますけれども、それがやる気のある企業にとっては、かえって成長へのインセンティブとなり、かつ、代表市場としての質的期待水準を維持することにつながると考えます。
 
 ②新興企業向け市場における上場基準等のあり方についてどう考えるか。これは6ページの図表2をご覧ください。先ほど申し上げたとおり、新興市場について一本化するとなると、これは縦に4分割になっていますが、右側の3つの箱は一つになるということになって、2列になるはずです。ここで、項目1、左上の市場第一部、市場第二部の1という箱と、隣の箱だけは内容が違って、あとは全部一緒と、そういった形でいいのではないかというふうに思います。

 そうすると、例えば全上場企業がコーポレートガバナンス・コードの適用対象になります。企業規模の小さな会社にとっては厳しいハードルだという意見もあるかもしれませんが、企業規模の違い等の正当な理由によってコンプライできない事項はエクスプレインすればいいということだと思います。コードが適用されて、適宜エクスプレインを熟慮するということは、最終的に株主が上場企業に求める規律を常に念頭に置くということ、それを促すということです。そういった効果が期待できるので、コンプライを前提にということではなくて、そこは適宜エクスプレインをするということで適用されるということがあり得るのではないかと考えます。

 ③について、実績のある企業向け市場における上場基準等のあり方についてどう考えるか。ここでは、一つ、例えば日本にある株主数基準というのが必要ではないのではないかというふうに思っています。欧米では株主の機関化が大変進んできています。でも、株主数が減ったことによって、市場の効率性、流動性や価格形成に何か問題があるかというと、そういうことは起こっていません。株主数基準は、むしろ幅広い取引先との相互保有など、事業会社同士の持ち合いの理由になったりすることがありますし、そういった説明を受けたこともあります。ですから、そういった安定株主づくりや機関化を妨げることにつながる懸念があるこういった基準は、こういう機会に見直すのがいいのではないかというふうに考えます。

 7ページですが、④ステップアップ先の市場の上場会社として求められる基準・義務についてどう考えるかです。市場第一部への上場で得られる社会的信用というのは、合理的な裏づけが必要であると思います。具体的には、透明性の高い企業情報開示、少数株主との利益相反について、それを排除するような監督ができていること。また、企業価値の向上というゴールをちゃんと守っていること。株主にもたらす効果としては、その結果、有利な投資リターンを得られること。上場企業にとっては効率的に資本へアクセスすることができると、そういったことが達成されるべきだと思います。市場第一部という、広く一般に浸透している信用について、それにふさわしい品質の維持・向上というのが重要だというふうに考えます。

 また、もう少し数値的なKPIとしては、長期の成長力、ROE、ROIC、時価総額、流動性(出来高)などがあると思います。そして、上場企業の義務ですが、少なくとも年1回、株主総会以外、決算説明会等へCEOが登壇するということは必須だというふうに考えます。これはコーポレートガバナンス・コードで言えば、基本原則の3(適切な情報開示と透明性の確保)や5(株主との対話)に関連することだと思います。

 ⑤ですが、ステップアップ先の市場の上場会社として求められる基準・義務を満たさなくなった場合の取り扱いについてどう考えるかです。これは、要件の充足率70%未満、ここは70%が良いのかというのはありますけれども、例えばですが、こういった考え方を導入してはどうか。その判定も一時点ではなくて、3年平均などとする。これによって、例えばこれからの3年間で、この基準、その70%の充足率ということで見ていったときに、3年間ずっとそれを満たさなければ、その市場からは外れていくことになります。ただ、その間に非常に努力すれば、そのハードルを超えることもできるというようなことにつながります。もちろん、ここでただし書きがありますけれども、市場共通の重大な問題が発生している場合はこの限りではないということです。

 ⑥については、先ほども少し述べましたけれども、投資家保護の観点から、注意喚起と現金化のプロセスの整備が必ず必要であるということです。
 ⑦については、先ほど冒頭で4つの観点を申し上げたので、そういったことです。

 最後に、先ほど東証さんからご説明があった、3月27日付で公表された論点整理との比較、A市場、B市場、C市場との比較で整理させていただきます。これは資料に書いてありません。すごく大ざっぱに比較すると、いわゆる東証さん整理のA市場は一般投資者の投資対象ですが、我々の考え方では新市場第一部に対応するかと思います。ただし、それはTOPIXとは分離した新市場第一部です。そして、B市場、高い成長可能性を求める市場は、我々の考え方では3つの市場を統合した新興市場。そして、C市場、国際的な機関投資家の投資対象というのは、我々の考え方では、例えば新TOPIXになります。ただ、このときのTOPIXは、市場第一部とは一致しないというふうになります。ということで、我々の考え方は、意見書提出時から今のところ、大きくは変わっておりません。
 以上です。

【神田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、井口委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【井口委員】
 このたびはこのような貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 お手元の資料に沿いまして、市場構造のあり方についてということで報告をさせていただきます。下の右のほうにスライド番号がありますので、それに沿ってお話しさせていただきます。

 2ページのほうに、本日の報告内容を書いております。3点あります。1つが市場構造のあり方というところになります。これは今、東証様の青執行役員がご説明された論点整理に基づき、お話しさせていただければと思っています。2つ目が東証株価指数のあり方ということです。3つ目が、東証さんの論点整理にあるB市場(高い成長の可能性を有する企業)、新興企業ということになると思いますが、そのあり方についてお話をさせていただければと思います。

 最初の市場構造のあり方に対する基本的な考え方についてです。
 青執行役員に冒頭に説明していただいた東証さんがまとめられた3月発表の論点整理、それに対して賛同したく思っております。特にC市場の役割について賛同したく思っています。青執行役員のお話の中では「ステップアップ市場」とまでは仰ってはいなかったかもしれませんが、私はC市場にはこの役割も期待しています。下のほうに青執行役員がご説明された資料からの抜粋を載せておりますが、C市場の「国際的に投資を行う機関投資家をはじめ広範な投資者の投資対象となる要件を備えた企業」というところが、ステップアップ市場となって、日本市場全体の底上げ機能につながるということを投資家としてはすごく期待しています。また、C市場の定義を明確にしていただいたということに対しても賛同します。

 ただ、そのC市場が、今、申し上げたようなステップアップ市場としての役割、あるいは日本企業の目標となっていくということでは、もちろんその市場評価あるいは時価総額ということはすごく大事なことだとは思っておりますが、それだけでは不十分ではないかと思っている次第です。ガバナンスなどの質的な項目というのも考慮して、初めてここの定義にあるような国際的に投資を行う機関投資家の投資対象になるようなマーケットになると思っております。
 実際、東証さんが意見募集をされたとき、機関投資家団体とか、あるいは機関投資家からいろんな意見書があったと思いますが、多くの意見書でもクオリティーを重視してほしいというようなところが意見としてあったかと思います。三瓶委員の先ほどのご説明でもそういうのがあったというふうに認識しております。
 その次のページのスライド番号4ページのところで、投資家団体から公表されています意見書の中から2つ引用しております。1つが、ICGNというグローバルな機関投資家団体が東証様に出した意見書です。もう1つが、スチュワードシップ研究会の意見書です。この研究会は、主に国内大手機関投資家に属する投資家が構成している研究会でして、国内機関投資家団体の中でも一つの大きな組織になっています。この2つの意見書を参考として引用しております。

 ICGNのほうは、現状、日本では、コーポレートガバナンスの要求事項と市場区分の間には関連はない、ただ、このような関連づけというのは、日本におけるガバナンスの進化を促すとしております。また、このことは上場企業さんに対してよいガバナンスは何かということを示すことになるということで、こういうような動きを歓迎するという意見書を東証様のほうに出しているということです。

 スチュワードシップ研究会のほうですが、1部企業の数が多いということ自体が問題というよりも、質の低い企業が多数含まれているということが問題と認識しているということでして、コーポレートガバナンスや情報開示の面でより厳格な基準を適用されることが望ましいということで、指名委員会、報酬委員会の設置の推奨とか英文開示をおっしゃっていいます。

 私自身もこのような上場基準に質的項目も加味することにより、ステップアップ市場を定義し、これは私の考えの中ではC市場ということになってきますが、日本の資本市場全体をいい循環に導いていくというような仕組みをつくるというのは非常に重要なことではないかと思っております。ただ、その質的項目を上場基準としたときに、それを実効的なもの、実効的なものというのは、企業価値拡大、あるいは投資家の企業評価の向上ということにつなげていくには、下の四角の中に書いておりますように、2つの要素を満たす必要があると考えております。

 1つはC市場を目指される企業さんが客観的に認識可能な項目にするということが重要と思っています。これは何をすればC市場に入れるのだということが明確にわかること、企業さんが主観的な判断を交えずに回答できるということです。やっているのかどうかよくわからない、といった項目ではないということが重要と思っています。これは東証さんが上場判断されるということにおいても公平にジャッジできるということでも、非常に重要なところではないかというふうに考えております。

 もう1点は、そういった項目というのが、投資家が持続的な企業価値向上に資すると認識していということが重要だと思っています。こういったことを踏まえた上で、C市場の上場基準に入れる質的項目は何かというのを考えたのが次のスライド5のところになっております。3つ書いております。

 1つがコーポレートガバナンス・コードにおける重要項目への遵守、コンプライと書いていますが、それが重要ではないかと思っております。他にもあるのかもしれませんが、ここでは2つの原則を出しております。1つが原則4-8にございます「独立社外取締役の有効な活用」ということです。現状これは複数の社外取締役、2名以上の社外取締役を求めています。もう1つが補充原則4-10①にございます「独立した指名・報酬委員会の設置」ということです。これは次の6ページに内容を記載していますが、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会、報酬委員会など、独立した委員会を設置するということです。私の認識では、こういった委員会というのは過半数以上の独立社外取締役がいらっしゃる、あるいは議長が社外取締役となっているということだと思います。一部解釈を継ぎ足す必要はあるかもしれませんが、こういったことが質的項目になり得ると思っております。

 ここでガバナンス・コードの重要項目へのコンプライというふうに申し上げたのは、例えば、今、社外取締役2名をC市場の上場基準に含め、定めたとします。ただ、この水準は、今はそれが適正としても、将来的に必要とされる社外取締役の人数が上がってきたときには、さらにもう一度、この上場基準を変えることになると思います。じゃあ、そのときに何をもってこの上場基準を変えるんだということで、ダブルスタンダードとなるリスクを感じています。そういう意味では、コーポレートガバナンス・コードは、日本におけるコーポレートガバナンスのベストプラクティス集であるというふうに認識しておりますので、これがアップデートされることによって、そのC市場に対する上場基準というのも上がっていく、そして、それが企業さんを支える新たなガバナンスの進化につながるというような仕組みが望ましいのではないかと思い、上場基準とガバナンス・コードとの関連づけを申し上げました。

 あと、今申し上げた2つの項目というのは、現在、投資家にとっても企業活動や意思決定の透明性を求めることにおいて非常に重要な項目になっておるということでもありますし、冒頭申し上げたように、比較的はっきり基準を満たしているかどうかということが判断できる客観的に認識可能な項目になるとも思います。実際、これは東証さんのデータベースでもかなり数値化されていると認識しています。

 2つ目が、年次の有価証券報告書の英文開示ということです。これはまさにC市場の考え方に書かれていますが、国際的な投資を行う機関投資家への情報提供には英文の有価証券報告書の提供というのは不可欠ではないかと思っております。

 3つ目でございますが、3つ目は買収防衛策の廃止などです。これはご承知のように、株主総会でも反対比率が高い項目です。ほかにも幾つかあると思うのですが、その中でも特にこの買収防衛策というのは、概ね内外の機関投資家は全て否定的に捉えているということではありますので、これがない企業さんにC市場に入っていただくというのがいいのではないかと思っておる次第です。

 次のスライド6は、コーポレートガバナンス・コードからコピーしたものですが、すでに説明していますので、ここでの説明は割愛させていただきます。

 スライド7のところになります。東証株価指数のあり方ということになります。東証のTOPIX指数に入った企業さんというのは、機関投資家の主な投資対象となりますので、多くの資金が流れ込むという意味でも、基本的にはTOPIX指数というのはC市場上場企業を中心に構築されるべきではないかと思います。これは三瓶委員もおっしゃっていたことに近いのかもしれません。ただ、やはり市場区分のあり方にもよるかもしれませんが、市場区分とこのTOPIX指数を連動させるというのは実務的ないろんな課題を生む可能性があるのではないかとも思っています。これはすでにTOPIX指数というのが広く実務で使われているからです。ですので、TOPIX指数については、時価総額などの市場評価を軸としながら、A市場の一部も含んで、安定的なTOPIX指数を構築する必要があると思っています。

 例えばということで、TOPIX指数とC市場を一致させたときの実務的な課題を、その下の点線の四角のところで書いております。これもC市場の在り方にもよりますが、質的な項目を入れ、C市場とTOPIX指数が一致させる場合、現状のTOPIX指数から大きな銘柄の変更というのがあり得ると思っております。そのとき、指数の継続性の喪失が発生すると思います。また、アクティブ運用においても、参考指数あるいは義務的な指数といった言い方が適正かどうかわかりませんが、とにかくベンチマークとしてTOPIXというのは日本では広く使われておりますが、この有効性が低下する。つまり、ベンチマーク以外の銘柄への投資というのが増える可能性があるというふうに思っています。あと、さきほどの私の説明にあるような質的な項目というのを加味した場合、例えばガバナンス・コード改訂時とか、そういうときにTOPIX指数自体が不安定化するということもあるんじゃないかと思っております。

 こういった懸念というのは、この東証様がまとめられた市場構造のあり方等に対する市場関係者のご意見の概要にも書かれていますが、このように実務的に大きな課題があるので、適切なTOPIX指数は、市場区分と離すような形でつくったほうがいいのではないかと思います。

 では、東証さんの論点整理におけるA市場とC市場を全てまとめて、つまり、今の新興市場以外の全ての銘柄を含んだTOPIX指数ではどうかということになってきますが、この場合、流動性で問題がある銘柄も全てTOPIX指数に入るとか、あるいは小さい会社様というのは残念ながらクオリティー面で問題がある銘柄もありますが、そのような銘柄も全部入ってくるということになります。パッシブ運用者は、そういう銘柄がTOPIX指数に入ると持たざるを得ないということになりますので、ある程度、A市場の銘柄も絞り込まれることが望ましいのではないかと考えております。
 もう一つの考え方として、A市場を、そのTOPIX指数に入る銘柄と入らない銘柄でふたつに分けるということも考慮の余地はあるのかなというふうにも考えております。

 最後ですが、スライド番号8のほうになります。こちらはB市場のあり方です。私の認識では、これは新興市場のことを指してらっしゃると思っていまして、そういう意味では、マザーズ等の新興市場を一つにまとめるという方向性には賛同します。
 もう一つの論点として、東証さんの論点整理でいいますと、C及びA市場というふうに、市場を明確に区分するということを投資家保護の観点から行った上で、例えばB市場というのをバイオ産業など、今後、日本の経済を支えていくであろう新興企業さんが上場しやすいように仕組みを整えていくということも重要ではないかと思っております。具体的には、利益水準を重視した基準から時価総額など市場評価を重視するという方向もひとつあるのではないか、と思っています。

 これについては、経産省さんの「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会」というのがありまして、最終報告書を出してらっしゃいますが、マザーズとかJASDAQの基準を米国のNASDAQ基準に当てはめたところ、幾つかのアメリカのNASDAQ上場企業の著名な会社が上場廃止になるというような論考がありまして、そういう意味で、投資家保護を踏まえた上で時価総額などを重視するというやり方もあるのではないかと思います。
 ただ、東証様がまとめられた市場構造のあり方等に対する市場関係者のご意見の概要の中の投資家のコメントにもありましたが、このような企業の場合、将来の業績などの企業業績見通しに対する開示はより重要になると思います。ベンチャーキャピタルから離れ、上場したら開示をしなくなるというのではなくて、赤字ゆえにさらに丁寧に市場に対して先行きの業績の開示を行うというのは当然必要になってくるんだろうと思っています。

 もう一つ、香港市場とかシンガポール市場で、バイオ企業向けにガバナンス基準を緩和したということが新聞でも取り上げられることがあります。これは具体的に言うと、複数議決権行使株発行の容認ということで、1株、1つの議決権じゃなくて、何十個の議決権の権利を与えることを容認したということです。ただ、これは海外投資家からかなり反発を招いています。そういう意味で言うと、ガバナンス面における過度な緩和というのについても慎重に考える必要があると思っています。
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、松山委員、よろしくお願いいたします。

【松山委員】
 経団連で資本市場部会長を務めております松山でございます。早速ではございますが、市場構造のあり方につきまして、当会の意見を述べさせていただきます。なお、本資料は、東証におけます市場構造のあり方に関する懇談会において説明いたしました内容と同じものを使用させていただいております。

 1ページをお開きください。先ほどご説明ありました東京証券取引所さんの課題整理と同様の課題認識をいたしておりますが、改めて私どもの課題整理を説明いたします。
 現在の市場構造における課題を3つに分類しております。1点目は、コンセプトが近似している市場ごとに基準が異なっており、それらの市場間で不整合が生じていること。2点目は、市場におけるステップアップなどを通じた「企業の成長の動機付け」が有効に機能していないこと。3点目は、市場からの退場が機能していないことでございます。
 資料の右側には、それぞれの課題を具体的に例示しておりますが、この場では省略させていただきます。

 2ページをご覧いただきたいと思います。3つの課題を踏まえまして、市場構造のあるべき姿をイメージで示しております。ポイントは3つでございます。まずは市場コンセプトの明確化です。コンセプトが近似している市場の統合も含めた見直しが必要と考えます。2点目は、企業の成長を動機づけする新たな市場区分の構築です。3点目は、上場及び廃止基準の差異の見直しでございます。市場への上場ルートごとの移行基準の差異見直しや、上場廃止基準の引き上げが必要と考えております。
 以上を踏まえまして、市場構造をステップアップ先の市場、それから、実績のある企業向け市場、それから、新興企業向け市場の3つに分類しました。3つの市場をステップアップしていくことで、企業の成長を促していくような市場構造が望ましいのではないかと考えております。
 また、現行の市場第一部におきまして、上場企業にばらつきがあるという実情も踏まえまして、その見直しの方向性につきましては、次のページで説明いたします。

 3ページをご覧ください。ステップアップ先の市場が目指すべき市場の特性を、グローバルに展開する大企業が国内外の投資を呼び込み、企業価値のさらなる向上を目指す、国外市場との整合性のとれた市場といたしました。この特性を目指すために考えられます市場第一部の見直しの方向性は2つありまして、それぞれにメリット、デメリットがございます。1つは現行の市場区分の上に新たな市場区分をつくりまして、目指すべき市場の特性に合致する企業が上位市場に移行する方法です。そのメリットは、市場特性の明確化や投資家との対話促進などでございます。
デメリットは、上位市場に指定されない企業のイメージ悪化、あるいは移行措置の必要性が挙げられます。

 もう一つの方法は、現行の市場区分を維持しつつ、新たなインデックスで区分する方法でございます。経団連では両論ございまして、どちらの方法にすべきか結論を出せない状況にございますため、メリット、デメリットの整理にとどまっております。見直しに当たりましては、市場区分に残る企業、移行
する企業の双方に納得性のある形で、この専門グループでご議論いただきたいと存じます。

 次のページ以降で、3つの市場のあり方を説明いたします。4ページをご覧いただきたいと思います。ステップアップ先の市場のあり方につきまして、2つ目の項目でございますが、上場審査基準につきまして、最後のステップアップ先への安易な上場を避けるため、審査基準を一本化することが必要と考えております。

 例えば現行の時価総額基準は、上場ルートの違いによりまして、250億円と40億円で大きな差がございます。これを高い基準、つまり、上場審査基準としては250億円に統一すべきと考えております。また、現状、市場第二部から第一部への指定替えでは、適正監査意見が5年間必要とされる一方で、マザーズやJASDAQからの移行では2年間と、期間が異なります。これを2年間に合わせるべきではないかと考えております。

 なお、上場審査基準の利益の額は経常利益とされておりますけれども、国際会計基準にない利益項目でございます。IFRS任意適用企業の増加や国内外からの投資を呼び込むという市場の特性から見直しが必要ではないかと考えております。
 上場企業の適格性の維持という項目につきましては、法定開示をベースとしつつ、国際比較が可能で国内外の投資家とのコミュニケーションが深まるレベルの開示を要求といたしております。例えば英文による情報開示を求めることなどが考えられます。

 退場のあり方につきましては、降格と上場廃止がございますけれども、実績のある企業向け市場への降格は、上場審査基準を踏まえた降格基準を設定する必要がございます。現行の上場審査基準の時価総額は250億円ですが、市場二部への指定替えの時価総額は20億円と、大きな乖離がございます。20億円は低過ぎるため、見直しが必要ではないかと考えております。また、資本市場の混乱を避けるために、監理・整理ポストを活用すべきと考えております。

 上場廃止につきましては、降格基準を踏まえた上場廃止の基準を新たに設定すべきと考えております。また、投資家保護の観点から、監理・整理ポストの置かれる期間を延長することも必要ではないかと考えております。
 5ページをご覧いただきたいと思います。実績のある企業向け市場のあり方について、まず市場の特性でございますが、上位市場を目指す企業に加えて、降格した企業が再度昇格を目指す市場としております。

 上場審査基準につきましては、上位市場と同様に審査基準の一本化が必要と考えております。また、現行では、マザーズ上場後、10年経過後に市場第二部への移行が選択できますが、ほかの市場第二部への上場基準との整合性がとれないため、廃止すべきではないかと考えております。
 上場会社の適格性の維持につきましては、上位のステップアップ市場よりも緩やかな基準にすべきと考えております。
 退場のあり方について、上場審査基準を踏まえた上場廃止基準を設定すべきと整理しております。

 次に、6ページをご覧ください。新興企業向け市場のあり方につきましてですが、市場の特性は、先行投資型企業も含め高い成長可能性のある企業が資金調達を通じて事業を拡大し、さらなる成長、上位市場へのステップアップを目指す市場としました。

 上場審査基準につきましては、現行の赤字企業の上場審査基準の運用を明確化すべきと思います。
適格性の維持につきましては、例えば、四半期決算短信を求めないなど、上位市場の基準よりも緩やかな基準とすべきと考えております。
退出のあり方につきましては、投資回収期間が相当長い企業に対応した業績基準の見直しが必要と考えます。例えば、現行マザーズの上場廃止基準の中に、上場後、6年目以降の売上高1億円以上とございますが、これを満たすために、本業とは関係ない事業を開始せざるを得ないケースがあるという意見もございまして、見直しを提案しております。

 以上、申し上げましたことを7ページに一覧表としてご参考までまとめてございます。
 市場構造の見直しに当たりましては、その目的、根拠、狙いが市場関係者にとって納得性のあるものであることが何よりも重要でございます。本専門グループの検討におきましても、この点を中心にご議論をぜひお願いしたいと思います。
 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
それでは、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければと思いますが、今日、初回ということもございますので、今までご説明いただいた点以外の点も含めて、幅広くお気づきの点をご指摘いただければありがたく存じます。
 それでは、どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。いかがでしょうか。
 池尾先生、どうぞ。

【池尾委員】 
 市場構造の見直しといいますか、改革案を考える際に、大きく2つのアプローチがあり得ると思うんですね。

 1つは、あるべき姿を白地の上で構想して、改革案を定めたうえで、次に現状からそのあるべき姿へどうつないでいくかという移行プロセスについての案を考えるというアプローチがあると思うんです。

 それに対して、もう1つは、改革案そのものを考える際に、現状を前提にした案を考えるというものです。だから、移行というものについてどこまでそれを意義づけるかということで、改革については今申し上げた2つのアプローチがあると思います。

 それで、もちろん前者のほうがある意味根本的なというか、ラジカルな改革案を描くことになって、移行プロセスは大変だという話になるし、後者のアプローチをとると、改革案そのものが現状を踏まえたものだということで、現実的というか、やや現実妥協的な面になって、改革案としてのラジカルさは薄れると思います。ただ移行に伴ういろんな摩擦は少なくて済むという、そういうことは言えると思います。今日は最初の会合ですが、そのいずれのアプローチで考えているかが、人によって大分違うような感じがします。
だから、それで議論自体がちょっとかみ合わなくなってしまっているというような面があると思うので、現状からの移行についての覚悟みたいなところについて少しやっぱり検討して、共通認識を確立しておく必要があるのではないかなというふうに思います。

 関係者の方は、実際そういう苦労をされるわけだから、移行についてなるだけ摩擦が起きないようにというふうなことを考えられると思うのですが、私なんかは気楽な立場なので、割と改革案はラジカルに、白地から考えたほうが良いんじゃないかということですが、その辺の違いをちょっとすり合わせる必要があるというのが基本的な意見です。

 それで、今日いただいたプレゼンテーションに関するコメントのようなことと、質問を一つさせていただきたいのですが、まず、井口さんからのご報告で、質的な基準を入れるという話をされましたが、これはある意味当たり前だと私は思っています。市場構造の見直しの議論については時価総額でえり分けるみたいな報道ぶりというか、そういうところに過度に焦点が当たったり議論がされてきたりしたおかげで、市場構造についてそういうイメージができている面があるというのは事実だと思うのです。

 でも、本来はそういう議論だけをしているわけはなく、ちょっと考えればそういう見方だけで世の中を割り切ろうなんていう議論をしているわけはないのであって、そこは当然質的な要因も含めて考えるということで、ご指摘はそのとおりだと思います。ここで改めてそういうことを確認しておく必要はあると思います。

 それから、もう一つ、最初申し上げた論点でも関係するのですが、三瓶委員のご報告の中で、ページナンバー4のところ、「フィデリティが重要と考える論点(2/2)」の4番目で、TOPIXと市場第一部を切り離さない場合、非常に問題が起きるという指摘がされているのですが、逆に、これを切り離せば問題が生じないのか、というのがよくわからないところがあります。

 市場区分としては同じところに属していても、結局、TOPIX銘柄とTOPIX非銘柄みたいな区分がやっぱり基本的に起きて、TOPIXから外れた銘柄に対しては、パッシブ運用の資金は入らなくなるということが起こるとすると、TOPIXというか、指数の話と市場区分の話は基本的に別の話だというのはすごくよくわかることで、そのとおりだと思うんですが、切り離すか、切り離さないかで、何かすごく大きな違いが生じるということなんでしょうかというのを、もう少しご説明を伺いたい。これは質問に近いことですが。

 そのことは松山さんのご報告の中で、結局、新たな市場区分であるか、インデックスであるかでいろいろメリット、デメリットは考えられて、経団連として結論がまとまらなかったとおっしゃっていたのが、そういうところからするとむべなるかなというふうに思ったので、ちょっと伺いたいということです。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
三瓶さん、いかがでしょうか。

【三瓶委員】
ありがとうございます。お答えします。

 日本の市場の名前を使うと、ちょっと変な印象があるので、アメリカを例にしますね。例えば、New York Stock Exchange、NYSEというのがあります。これは大体2,400社ぐらい上場していると思います。 一方で、よく使われるS&P500というインデックスがあります。じゃあ、この切り離す場合と切り離さない場合で何が違うかというと、S&P500に入るか、入らないかというのは、500しか入れないので、ある一定の固定したクオリティーがあれば入れるのではなくて、相対的にみんながどんどんクオリティーが高くなると、500番目に入っていないものは全部入らないんですね。そういう意味で、クオリティー上位500に入れるか、入れないかというのがインデックスです。

 一方で、市場区分となると、一定の線を越えていれば上場させてもらえるはずなんですね。だから、そこは違って、例えば東証一部というのが残って、上場の基準は厳しくなるかもしれないけれども、それでも頑張れば数はいくらでも増える。それが市場ですね。
 
 一定のインデックスというのは、数に制限があると、その構成企業群全体のクオリティーが上がっていけば、それに追いつかなかったらインデックスに入れないという違いがあって、そこからあぶれたということでイメージダウンするというのが松山さんの資料にもありましたけれども、そういう印象があるかもしれません。ですが、そのうち、インデックスから外れた場合はイメージダウンというよりも、常に上位クオリティーじゃなかったらそれに入れないんだということで、上位の市場区分に入れないことに対して、イメージについての差が実際は出てくると思います。

 なので、市場区分に比べインデックスに入れなかったときにそんなにきっぱりとイメージが完全に下がるかというと、答え方は難しいですけれども、そういう違いがこの2つ(市場区分とインデックス)にはあります。
 お答えになっているでしょうか。

【池尾委員】 
 ええ。そういう意味でおっしゃっていたということですね。
もう少し足元の現状とのかかわりでおっしゃっているのかなと資料を見て受けとめて、ちょっとご質問したので、今おっしゃったこと自体は、私としては納得的なことです。

【神田座長】
よろしいでしょうか。
どうぞ、小林委員。

【小林委員】 
 池尾先生のお話と関連するのですけど、具体的に市場構造の見直しがスタートするうえで、これだけグローバルマーケットが変化している中においては、基本的にはかなりラジカルといいますか、あるべき姿を目指して、それも5年、10年先を見たグローバルな視点から、ドラスティックに考えることになろうかと思います。

 スチュワードシップ・コードあるいはコーポレートガバナンス・コードによって、かつてゼロから1人導入するだけでもかなりのエネルギーが要った日本の社外取締役が、ここ五、六年で急激に増えてきて、社外取締役が1人いる上場会社は99%、2人以上いる会社でも90%を超えています。ですから、井口さんの言われた社外取締役2人を必須とするというだけではやっぱりまだ相当甘いというか、時間軸的に見ると、せめて3分の1ぐらいにすべきではないかという気がします。

 また、松山さんの資料の中で子会社上場のことがチラッと書いてありますけど、まさに今、グローバルスタンダードから見ると、日本だけ支配株主を有する上場子会社が特異的に多くて、600社を超えている。50%以上直接保有の親子上場企業に限って見ても、200社以上もある。これがアメリカ、ヨーロッパではわずか20社あるかないか程度なわけで、こういうところもやっぱりグローバルスタンダードや、海外の機関投資家の目も見ながら変えていくいい機会ではないかなと。僕は市場構造の見直しをむしろそのように捉えるべきではなかろうかと思います。
 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
それでは、高田委員、それから、翁委員の順で。高田委員、どうぞ。

【高田委員】
 どうもいろいろご教示いただきまして、ありがとうございました。今回、最初ということもありますので、私も最初に全般的な印象と言いましょうか、論点だけちょっと確認させていただこうと思います。

 全般的な印象としますと、非常に重要だけども、難しいなというのが率直な印象であります。というのは、池尾委員からもお話ありましたように、多分この議論、白地に絵を描くということも一つのやり方だと思うのですが、現状として、もうこれだけ大きな歴史的な経緯を伴ったものが現実にあるというような状況でもありますので、なかなか完全に白地で絵を描くというようなことにもなりづらい。一方で、これだけ大きな歴史、もしくはいろんな経緯を背負ったものでありますから、その連続性というものをやっぱり考えていかざるを得ないというのがあると思います。
 
 そうしますと、やっぱり常に、この今回の議論、私は非常にいいタイミングではないかなと思っておりますし、時宜を得たものだと思っているのですが、そういう状況の中で、常に根本的に何が目指すべきものなのかということを常に思い描いていくということが重要なんじゃないかなと思います。

 となりますと、一つはやはりグローバルにベンチマークとなる日本の企業と言うんでしょうか、非常にグローバルに市場間競争というものもあるという状況の中で、しかも、そういうものも含めて、日本が残念ながらこのバブル崩壊後、30年間の中でおいていかれてしまったような状況の中で、一つ、こういう資本市場の中でも成長戦略というものを描いていくというような大きな旗印があるかと思います。

 それと、もう一つはやはり企業の将来、日本の将来を育てるといったような側面という、この大きな2つの旗印というんでしょうか。これをやっぱり常に掲げておくことが必要なんじゃないかなと思います。

 特にそういう意味でいいますと、今、議論になった中で、A市場、C市場というのが前者ということになるんだろうと思うんですけれども、特にこのステップアップというような状況の中で、日本の資本市場の幅広い、もしくは底上げの機能をということで申し上げますと、とかくありがちなのがどうしても基準でもって排除する理由ということになりやすいと思います。その排除ということよりも、どちらかといえば、引き上げていく、底上げができるというような、そういう中でのエコシステムと言うんでしょうか、成長戦略につなげるような発想みたいなものが常にないと、どうしても排除だけの論理でもって、こういう状況の中での難しさが出てきてしまうということなんだろうと思います。そういう中で、どういう形で対応するのか。特にこのC市場ということになるのだろうと思うのですけれども、どう育てていくのかということはやっぱり重要だと思います。

 それと、やはり今回の状況の中で、私もまだなかなか結論づけられていないというところでもあるんですが、この市場区分とインデックスのところ、どちらもなかなか両面があるわけでありますので、そういう中で言えば、この議論というのは、今回の議論を通じる中でいろいろな側面から考えていくところだろうと思います。

 ただ、もう一回、先ほどの小林様の話からもあったんですけれども、やっぱり今回の大きな環境認識というのは、コーポレートガバナンスという認識がここ数年間でこれだけ確立した、もしくは育ってきたという中でありますので、そうした成果をこの一連の、今回の見直しの中でいかに生かしていくことができるかというところは重要なところではないかと思います。

 また、そのコーポレートガバナンスという、この数年間の潮流の中で、一つの具現的なものが今回のこの市場構造の見直しというものと一体になってくるということでもあろうと思います。そういうものも含め、日本のあり方をグローバルに、こういう新しい元号も含めて示していく、いいタイミングではあろうと思いますので、この場は非常に時宜のかなったものだと思いますし、また、そういう中で、特に今回は非常にオープンな場でもありますので、どんどん発信していくということが重要ではないかなと思いました。
 以上でございます。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 では、翁さん、どうぞ。

【翁委員】
 私も今回の改革は大きく分けて2つの目的があると思いますが、1つはやはり企業にとって企業価値向上の動機づけ、今、底上げというお話もありましたけれども、そういった方向に日本企業全体が向いていくような形で市場区分の見直しというのがなされるべきだと思いますのと、もう一つはやはり投資家にとってわかりやすい市場になっていくことが大事で、やはりリスク特性とかコンセプトというのは確かに今のままでは非常に曖昧でございますので、そこを明確にしていくという、この2つの目的を明確に考えながら議論していくことが大事だろうと思っております。

 それから、いずれにせよ、非常に大きな影響を与える改革になりますので、移行のプロセスというのはしっかりと考えておくということは当然のことだと思っております。

 今まであまり言及ございませんでしたが、まず新興市場のところにつきましては、やはり一つにまとめていくということ、あと、できるだけ多くのベンチャー企業が資金調達機会を得られるようにという意味で、改革をしていく意義は非常に高いと思っております。

 何名かからのご説明にもございましたけれども、基準につきましても、利益を中心とした基準から市場評価などに変えていって、バイオとか非常に黒字までの時間のかかるようないろいろな企業についても上場の機会があるようにしていくということ。それから、東証のほうではご説明に書いてありましたけれども、やはりどうしてもマザーズとかは個人投資家ばかりの市場でございますので、機関投資家が入りやすいようにしていって、そういったところのプレッシャーやサポートで企業が成長していくというような方向に変えていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 ステップアップである一部上場は、先ほどもご説明ありましたように、上場のルートの違いで時価総額も全然異なりますので、そもそもが非整合的なので、そこを調整するというのはもちろんのことなんですが、今、多くの方々がおっしゃったように、やはり上場している、日本を代表する上場企業であれば、やはりそれなりの基準できちんとそろえていくということで、利益水準とか時価総額のみならず、ガバナンスといった、そういった質的なところについてもきちんとした水準を求めていくということによって、企業価値を上げていくという方向に作用するような改革にしていくことが重要だと思います。

 それで、このA市場、C市場のところの区分ですが、やはりA市場、一般投資家の投資対象としてふさわしい実績のある企業群というのを、どういうふうな位置づけにしていくかというのも非常に重要であると思います。AとCの総体的なボリューム感とか性格というところのコンセプトをどういうふうに分けて考えていくかということも非常に重要で、私は一つの考え方として、このC市場で東証がまとめられているように、グローバルな市場については、機関投資家の投資対象となる要件を備えたようなところについてCとするという考え方というのはひとつわかりやすい説明かなというような印象を持っております。

 今日、青執行役員からお話しいただいた中には、特にTOPIXについての記載があんまりない。ここでのまとめのところ、論点整理のところにはございませんけれども、やはりこれは重要なテーマでして、ご紹介があったように、海外ではベンチマーク指数が市場区分と必ずしも一致しているわけではございませんので、ここをどういうふうに考えていくかということがこれから議論していかなければならないテーマではないかというふうに感じております。
 以上でございます。

【神田座長】
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。オブザーバーの方もどうかご遠慮なく、ご発言あれば、ぜひと思いますけれども。

 どうも伺っている感じでは、これまでの東証での議論も踏まえての感想になりますけれども、改革の必要性とか目的という点については、それほど大きな異論があるわけではないように思うのですけれども、各論になってくると、答えが非常に難しいかなという感じを受けますね。

 松山委員、どうぞ。

【松山委員】 
 ちょっとご質問なんですけれども、最初にご説明いただきました東証さんの資料の7ページのところのご説明で、「JPX日経インデックス400、どうして利用されず十分な成果を出していないのか」、あるいは「JPX日経インデックス400の成否について適切に分析・検証することが必要」というご意見が出ているようなのでございますけれども、この辺、インデックスとして、なぜこれが利用されないのか。先ほど三瓶さんから、対応する先物市場がないからというようなお話ございましたけれども、それ以外に理由がないのかどうか。 
 
 つまり、今回の話は、インデックスを再整理するだけでは済まない話で、やはり市場区分の見直しが本当に必要なんですと、インデックスと市場区分の見直しで言うと、これは市場区分しかないんです、というところを判断するためには、やはりここのところの答えが出てこないと納得性がないんじゃないかなと思うんですが、この辺はどのような検討をされたのか教えていただければと思います。

【神田座長】
どなたからでも。青さん、もしよろしければ。

【青オブザーバー】
 恐れ入ります。

 この指数に関しまして、現状、TOPIXが一番、機関投資家の方々からは中心的に扱われているという状況がございまして、そこからなかなかこう、移行するというところまで踏ん切りをつけるという状況にないというのが一般的な機関投資家の方々の見立てというか、お考えというところがあるというのが実態としてあるのかなというふうに思います。

 それで、そのときに、現状そのTOPIXで運用しているというところが実態としてございますので、そこから他の指数に移行するとなると、そこに移行する必要性があるというところは、どちらも似たようなものなんだけれども、こちらのほうがいいというよりは、現状のものを変えていく必要があるというところがどの程度あるんだろうかというところと、その銘柄構成として、400というのがよいかどうかというところについて、またいろんなご意見が現在あるというようなところでございます。

 今後のところといたしまして、指数を新しいものに移行できるかどうかというところは結構、投資家の方々も一枚岩ということではなくて、各投資家の方々ごとにご意見が異なってきているというのがございますので、そこのところは丁寧にご意向なりを拾いながら考えていくことが必要になってくるところがあると考えております。

【神田座長】 
よろしいでしょうか。三瓶さん、どうぞ。

【三瓶委員】
 追加で理由を申し上げると、先ほど申し上げた先物があるかないかというのはありますが、先物が例えばあったとしても、先物自体の流動性が高まっているかどうかという問題があります。使い勝手がいいかどうかという意味では。そうすると、これは若干、ニワトリと卵の状態になっちゃうんですね。

 もう一つは、このインデックスで幾らの運用がすぐに可能なのかと。例えばTOPIXであると、何兆円という金額が運用されているわけですね。例えばこのJPX日経インデックス400の場合に、普通だったらTOPIXのように時価総額に対してフリーフロートということで、流動性を考えて、インデックスの中でのこの企業のウエートが追加されるんですけれども、このインデックスは、それぞれの企業にさらに、いくら時価総額やフリーフロートが大きいからといってもここまでというウエートのキャップがある。

 そうすると、このインデックスが吸収できる金額、プライスに影響を与えないで吸収できる金額というのはある程度限定されてくる。限定されると、運用機関がそれを一つの商品として設計するときに、この商品にはそれほどお金は入ってこないというか、上限がこのぐらいになってしまうということになってくると、あんまり開発は積極的にしないということにもなる。いろんなものがそうやってつながっていくんですね。なので、クオリティーの高いインデックスとして作ったけれども、そういう部分もあって、必ずしも普及をしていないし、大きく金額が入っていないという感じだと思います。

【神田座長】 
 あと私が聞いているのは、一つは、青さんもちょっとおっしゃったようなことで、初めにTOPIXありきというか、年金運用しているのはサラリーマンですので、TOPIXと違うものにするならその理由を説明しないといけないというのがある。現にJPX日経400という指数はTOPIXに勝てていないという歴史があって、そちらに変えたらパフォーマンスが悪くなってしまう、まあ、0.数%のことだとは思いますけれども。ですから、TOPIXよりほかへ行きにくいという、これはもうそのときの状況にももちろんよりますが、いろんな要因がそういう意味ではあるのかなと思います。

 ほかに。どんな点でも結構ですので、いかがでしょうか。井口委員、どうぞ。
 
【井口委員】 
 今までの話とずれてしまうかもしれませんが、先ほど冒頭申し上げたように、そもそも何でこういう市場の区分の話が重要かというのは、今、コーポレートガバナンス・コードとかスチュワードシップ・コードとかいろんな取り組みがある中で、こういう区分をうまく活用して、企業価値向上あるいは日本市場の価値向上につなげられるということが大きいと思っています。そういう意味で、この東証さんがされた論点整理がすごく大事になってくると思っています。

 ただ、これも冒頭のプレゼンで申し上げたんですが、池尾先生の先ほどのお話しでいうと現実妥協的になってしまうかもしれないんですが、TOPIX指数というのは、実務として、かなり投資家の中で使われているということがあります。

 従って、これをあまりに急激に変える、例えばC市場に合わせ、国際的に洗練された企業さんだけになると、TOPIX指数自体の有効性といいますか、今までの使い方とは随分違ったことになり、影響が大きいということになると思います。

 ただ、これはC市場の在り方がどうなるかということがあるので、一旦、市場区分の話とTOPIX指数の話を切り離して考えてはどうか、と申し上げた次第です。従って、もしかしたら、検討の結果、TOPIX指数をC市場に当てはめていいような状況になるのかもしれないとも思っています。断定的に、市場区分とTOPIX指数を引き離したほうがいいということまでは、結論的には、まだ、早いかなと思っています。
 
【神田座長】  
どうもありがとうございます。ほかに。どうぞ、三瓶さん。
 
【三瓶委員】  
 東証さんの資料の質問、よろしいでしょうか。

 9ページの下のほうで、4つのポイントが挙げられているところの2つ目と4つ目なんですが、「機関投資家参入促進のための方策の検討」というところ。これはB市場に関してだと思います。それと、最後のところの「特にC市場においては」というところの「グローバルな機関投資家の視点等をより強調した基準」。これはこれから検討していくことかもしれないんですが、この2つについて、例えばこんなイメージですということをちょっと紹介していただけますでしょうか。
 
【神田座長】  
どうぞ。
 
【青オブザーバー】  
 恐れ入ります。
 現時点では、こういうことが必要ではないかという考えをベースとしてまとめたものでございますので、具体的な方策が決まっているということではありません。

 そのため、あくまでアイデアということでございますが、例えば、下から2つ目のC市場において、「グローバルな機関投資家の視点等」につきましては、一つは、先ほどからお話が出ております英文開示のように、海外の方が投資判断しやすいような開示という観点もあるかと思います。

 また、規模の大きな機関投資家としては、流動性という面もやはり重要であると考えられます。先ほどからお話の出ておりますガバナンスに関しましても、グローバルな機関投資家は重大な関心事項として見ていらっしゃるのではないかと受けとめております。

 また、上から2つ目、特にB市場における「機関投資家参入促進のための方策」については、なかなか難しく、こうすれば必ず機関投資家の方々に入っていただける、というものではないと思っております。しかし、現状、新興市場は、個人の投資家の方々が多い状況の中、機関投資家の方々に入っていただくことが、相対的にリスクの高いベンチャー企業が上場しやすい環境整備につながるのではないかと考えております。機関投資家の方々に何らかの方法によって入っていただくことが重要ですので、よりよいアイデア、あるいは、こういうことがあれば、機関投資家も参入しやすいといったようなご事情等もぜひ教えていただきたいと考えております。

 具体的には、ロックアップ、あるいは継続的に機関投資家の方に保有していただくという考え方もあるかもしれませんが、そういった方策が現実的に可能かということを十分に考慮する必要があります。そのため、慎重に具体的な事情を考慮しながら考えていくべき論点だと考えております。
 
【神田座長】  
 どうもありがとうございました。よろしゅうございますか。
 では、小林委員、どうぞ。
 
【小林委員】  
 東証の「関連データ集」という資料の17ページを見ると、現状でも外国法人が株式保有金額の30%以上を占めている。だから、こういう市場の設計に当たって、グローバルなコーポレートガバナンス水準なり、グローバルな機関投資家の視点というものに合わせるとすれば、ますますこのC市場的なものからは個人投資家が減って、外国法人が相当増えていくというトレンドになると見るべきなのか。

 今の日本の状況を踏まえたクラシフィケーションがかなり関連してくると思いますが、これに対してどなたかからコメントはございますでしょうか。
 
【神田座長】  
 ありがとうございます。三瓶さん、どうですか。
 
【三瓶委員】  
 すぐに気のきいた答えは浮かばないんですが、方向性として、ただ、今ここで議論しているあるべき姿とか方向で、いずれにせよ、どの市場区分にしろ、よりわかりやすい、目的のはっきりした方向でとなったら、機関投資家の参入はあるであろうし、その中で、やはりリスクテイクをより積極的にする、外国の投資家はそういう傾向があると思いますから、その投資家が入ってくる比率が高くなると思います。
 
 ただ、比率の話なので、個人がそこで逃げていくのかというと、逃げていく必要はないと思うので、どうでしょうね。比率の話になるとわからないけども、ただ、少なくとも外国の投資家は入りやすくなって、入ってくるんだろうというふうに思います。最終的な比率がどうなるかはちょっとわからないですね。
 
【小林委員】  
 そうすると、基本的には、相当グローバルな株主構成の中でどう企業経営をやっていき、企業価値を上げていくか、そのためのガバナンスはどうあるべきか、という議論もやっぱり並行してやらないといけないと思います。
 
 もっと単純に言えば、株主に外国法人が半分ぐらいいるような、そういうC市場的な日本の大手企業というのをある程度想定した中で、具体的に経営の在り方や取締役会の構成などについて考えていかないと、最終的には現場で非常にちぐはぐな対応になってしまうのではないかなという気がします。
 
【神田座長】  
 ありがとうございます。
 あと、先ほどちょっと三瓶さんと青さんのやりとりにあったB市場における機関投資家の参加について、翁さんからの指摘もあったと思うのですけれども、そういうところは、何ていうか、現在、IPOの際の配分ルールというのがあるので、取引所だけで何か改革ができるわけではなくて、証券界と証券業協会のルールがあるので、そちらのほうでも連動して、整合的な検討というか、そういうことをしていただくということが必要になってくるのではないかという気がいたしますけれども。

 どうぞ、井口さん。
 
【井口委員】  
 青執行役員のご質問にあった、こういうマザーズとかJASDAQの新興市場の話で、例えば機関投資家はどういう銘柄に投資するかということについてですが、基本的にはTOPIX指数に入っている銘柄になると思いますが、一部は新興市場銘柄もアナリストが調査対象とすることがあります。ただ、その会社を見ていると、non-GAAPのところで、開示資料が東証一部でも優良な会社さんと遜色ないレベルの開示をされていることとか、あるいはCEOが投資家をちゃんと回ってらっしゃるとか、といったことがあります。こういった投資家への姿勢というのがすごく大事になってくるというふうに思います。 

 あと、昨今、会計不祥事とかよくありますが、監査法人含めて、そういうところをしっかりやっていただいているかという、そういうことも大事になってくると思います。

 結論をいいますと、マザーズとかJASDAQという新興市場にいらっしゃっても、東証一部のしっかりやられている企業さんと遜色ないようなことをやられているとなると、TOPIX指数に入ってなかったとしても機関投資家も投資をするということになっていくんじゃないかと思います。
 以上です。
 
【神田座長】  
 どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。池尾先生、どうぞ。
 
【池尾委員】  
 先ほどの指数の話ですけれども、すごく乱暴なことを言わせていただくと、やっぱりTOPIXという指数を廃止しないから、ほかの指数が使われないんですね。TOPIXというのが現状、市場代表性を備えた指数じゃないというんだったら、市場代表性を備えた指数を新しくつくって、それでTOPIXを廃止すれば、それを使うしかなくなるというふうに思うんですね。

 実際は金融契約の連続性とか、法的な問題がありますから、指数を公表し続ける責任があるということになると思いますけども、ここでの今回の議論も市場構造を見直すことによって、実質的に旧TOPIXを廃止して、新TOPIXに入れかえて、それで一応連続性とかの問題をクリアしながら指数の改善を図っていくという意図が、潜在的に、実質上含まれて議論してきたというような感じがします。

 本当に現状のTOPIXが市場代表性を備えた指標じゃないということであれば、市場代表性を備えた指標としてどういうふうな指標を作成するのが適切なのかということを、市場構造のあり方と別の問題としてちゃんと認識するのであれば、議論しなきゃいけないというふうに思います。
 
【神田座長】 
 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。
 どうぞ、高田委員。
 
【高田委員】 
 先ほど外国法人が東証一部の中では3割以上ということで、こちらの資料を拝見してももう最大の保有者が外国人になっているということだと思うんですよね。そういう中で、今回のこの一連の作業ということになりますと、もちろんいろいろガバナンスの関係で、いろんな開示資料を英文でということも当然あると思いますし、まさに今こういう委員会で議論しているということも含めたものの発信と言うんでしょうか、こうしたものも場合によっては海外向けに、一部分のところでもどんどん発信をしていくということも、実はほんとうは重要なのではないかなと思います。そういう改革への姿勢をよく海外に示していくということも重要なんじゃないかなと思います。

 それと、今回のこの日本の市場構造について、上場というのは、よく大学の入学試験に例えられて、入るのは比較的難しいんだけれども、その後がというような議論があるわけで、一方で、そういう中での入学試験というのはどういう基準になっているのかということが、ある面で一つのあるべき姿を示すということにもなるだろうと思います。そういう観点からしますと、いかにこれからどういう姿を示していくのかということを明示しながらというのがやっぱり重要になってくるんじゃないかと思います。

 それから、特に新興市場ということになりますと、まさにちょうど今の段階でも、どういうふうにこれから新興市場のところに上場していこうかというようなことを何年にもわたり考えている方々もおられるんだと思うんです。そういう中で、まさにその基準なりということは、そういう方々がご努力をしている中で重要というところもあります。

 なので、一つのあり方を示していくということが、特に、企業価値を高め、また、グローバルにもというところの中で重要なんじゃないかなというふうな意識で、我々は臨む必要があるんじゃないかなというふうに改めて感じました。
 以上です。
 
【神田座長】  
 ありがとうございました。
 三瓶さん、どうぞ。
 
【三瓶委員】  
 先ほどの関連でもう一つ重要だなと思ったのは、小林委員が非常に重要な投げかけをしてくださったと思うんですが、例えばB市場についてどういう姿を想定するかによって、その機関投資家を招き入れられるかどうか、またはその機関投資家として海外から招き入れられるかどうかというのは随分変わると思います。

 例えば英国でAIMという市場があります。こういうところでは、例えばディスクロージャーに関して緩和が随分されています。ただ、そこで日本も普通に緩和すればいいんだというふうになって、例えばC市場では英文開示する。ただし、B市場では英文開示しなくていいとなれば、当然のこと、外国の投資家は入ってこないですね。ですから、誰を想定しているのかということを考えると、例えばB市場で四半期報告はしなくてよく、半期でいい、ただし、英文開示は絶対だとかですね。そういうバランスを考えていかないと、単純に新興市場だからいろんなものを緩和するとかいうことでは、最終的には目的を達成しないんだろうというふうに思います。
 
【神田座長】  
 どうもありがとうございました。
 大体よろしいでしょうか。一番最初、冒頭、池尾先生がおっしゃったことに戻ると、ある程度思い切った改革というか、インパクトのある改革でないと、目的の達成という観点からも十分ではないと言えそうな気がします。皆様方もそういうご意見ではないかとは思いますけれども。今日はこのあたりとさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

 それでは、そろそろ予定の時間かと思いますので、今日はこのあたりとさせていただきたいと思います。今日は、初回から大変活発にご意見、ご指摘をいただきまして、どうもありがとうございました。
 本日いただきましたご意見、ご指摘等を踏まえまして、次回以降、機関投資家や企業経営者の方々等からのヒアリングを行いつつ、さらに議論を深めていただきたいと思います。
 最後に事務局から連絡等お願いいたします。
 
【八幡監理官】  
 本日は、週末の遅い時間でございますけれども、お集まりいただきまして、ありがとうございました。
 次回の専門グループの日程でございますけれども、委員の皆様方のご都合を踏まえました上で、後日事務局のほうからご案内させていただきたいと思いますので、またどうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
 
【神田座長】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、以上で散会いたします。どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――
 

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