金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第2回) 議事録

  • 1.日時:

    令和2年10月26日(月)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第2回)
令和2年10月26日
 
【神田座長】  
 おはようございます。予定の時間よりも少し早いのですけれども、皆様方おそろいでございますので、始めさせていただきます。ただいまから市場制度ワーキング・グループの第2回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところ御参加いただき、誠にありがとうございます。

 本日の会合も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とさせていただきます。一般傍聴は、恐縮ですが、なしとさせていただいております。メディアの関係者の方々におかれましては、金融庁内の別室にて傍聴をしていただいております。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページに公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 今回もオンラインで参加いただいている方々におかれましては、2点注意事項がございます。まず、御発言されない間はミュート設定、音声をオフの設定でお願いいたします。次に、発言を希望される際には、オンライン会議システムのチャットを使っていただいて、全員宛てにお名前または協会名などの組織名を御入力いただければありがたく存じます。それを確認して私のほうから御指名をさせていただきますので、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言をお願いいたします。

 それでは、本日のテーマでございますけれども、金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等の在り方をテーマとして御議論をお願いしたいと思います。まず、事務局から事務局提出資料について御説明をしていただきます。続きまして、全国銀行協会、国際銀行協会、日本証券業協会、資本市場の健全な発展を考える会、これらの団体からそれぞれの御提出資料に基づいた御説明をしていただきます。その後、皆様方から御意見等をいただければと思います。

 それでは早速ですけれども、まず事務局説明資料について事務局からの御説明をお願いいたします。

【太田原市場課長】  
 それでは、資料2に沿って説明いたします。

 1ページ、制度の概要です。いわゆるファイアーウォール規制は、同一金融グループ内の銀行・証券会社間において、顧客からの同意のない、顧客の非公開情報の共有禁止等から成るものです。趣旨として、証券会社間の公正な競争の確保、利益相反取引の防止、顧客情報の適切な保護等を確保することが挙げられます。1993年に銀行・証券の相互参入に伴い設けられ、その後、2008年の法改正による抜本的な見直しなど数次にわたり規制の見直しが行われています。

 制度の変遷につきましては、2ページ以降に記載しています。この中では2008年の法改正について紹介したいと思います。4ページです。ファイアーウォール規制が、利益相反による弊害や銀行等の優越的地位の濫用等、本来の狙いとする行為を抑止するための措置としては、目的に照らして過大な規制となっているおそれがある、また、諸外国では、金融グループにおける利益相反の管理等について、金融機関の自主的な規律付けによる内部管理態勢の整備を求め、その状況について当局が適切にモニタリングするとの規制的枠組みが趨勢になっている、などの指摘を踏まえ、役員の兼職規制の撤廃、法人顧客の非公開情報の授受についてオプトアウト制度の導入、利益相反の管理のための体制整備の義務づけ、親子銀行等の優越的な地位を不当に利用した金融商品取引契約の締結または勧誘を行う行為の禁止等が措置されました。

 6ページで主な規制の内容の全体像を示しています。情報授受規制のほか、幾つかの禁止行為や業務範囲規制があります。

 7ページ以降、情報授受規制についてです。まず国内顧客情報については、1ページでも申し上げたとおり、グループ会社間の銀行と証券の間では、情報共有には顧客の同意が必要とされています。

 8ページ、外国顧客情報についてです。クロスボーダーM&A等、日本企業や日本市場をまたがる案件には日本の情報授受規制が適用されるため、具体的な提案を行うには、日本企業・海外企業の双方から同意書を得る必要がありますが、海外には同様の規制が存在せず、海外企業側の同意書取得に難航する事例も存在しており、その結果、本邦以外の金融機関に比べて競争上不利となっているとの指摘があります。

 9ページ、同意取得の方法についてです。非公開情報の授受については顧客の書面による事前同意があれば可能、そして、顧客が法人である場合にはオプトアウトが導入されております。

 10ページ、法人顧客情報におけるオプトアウトについてです。オプトアウトとは、あらかじめ非公開情報を共有する旨を法人顧客に通知した上で、顧客が望まない場合に提供の停止を求める制度でありまして、顧客が停止を求めるまでは共有の同意があったものとみなす制度です。具体的な方法として、法人顧客に対し、あらかじめ①~⑤の内容を通知することを求めるものとなっています。

 12ページ、電磁的方法による同意取得についてです。電子メールにより添付ファイルを送付する方法、顧客パソコンにダウンロードさせる方法などが規定されておりますが、一部で電磁的方法による対応が未整備となっています。

 13ページ、内部管理目的による非公開情報の授受についてです。内部管理・運営に関する業務を行うために必要な情報については、顧客の同意なく受領・提供することができるとされています。

 14ページ、兼職者の情報アクセスについてです。銀行と証券会社の間では、届出により役職員の兼職が認められておりますが、非公開情報を用いて業務を行う部門を兼職している役職員は、いわゆるホームベース・ルールとして、いずれか一方の管理する非共有情報にしかアクセスできない等とされています。

 15ページ以降は、情報授受規制以外についてです。まず役職員の兼職規制についてです。現在、役職員の兼職規制については撤廃されています。役員の場合には、当局への事後届出が必要とされています。

 16ページ、利益相反管理体制の整備についてです。銀行・証券会社等に対し、自社またはグループ会社による取引に伴って顧客の利益が不当に害されることがないよう、適正な情報の管理と適切な内部管理態勢の整備を義務づけています。

 17ページ以降、金融商品取引業者、銀行等に関する関連規定を掲げています。

 次に、24ページ以降は、優越的地位の濫用の防止についてです。信用供与を利用した抱き合わせ販売のほか、優越的地位の濫用として、有価証券関連業を行う金融商品取引業者が、その親銀行または子銀行等の取引上の優越的な地位を不当に利用して金融商品取引契約の締結又はその勧誘を行うこと等が禁止行為として定められています。

 26ページです。銀行法におきましても、優越的地位の濫用として、顧客に対し、銀行としての取引上の優越的地位を不当に利用して、取引の条件又は実施について不利益を与える行為等の禁止行為が定められています。

 30ページ、登録金融機関の業務範囲規制についてです。金商法では、銀行等の金融機関が有価証券関連業及び投資運用業を行うことを原則として禁止した上で、特定の有価証券や行為について、登録制の下、例外的に取り扱うことを認めており、その中で、1992年に有価証券の私募の取扱い、2004年に証券仲介業務が認められてきました。

 31ページ、その他の規制についてです。いわゆるアームズ・レングス・ルールやバックファイナンスの禁止などが定められております。

 32ページ、諸外国との比較です。ドイツにおきましては、ユニバーサルバンクが取られており、銀行本体で証券業も兼営することができます。また、アメリカ、ドイツにおいては、日本と異なり、法人顧客の非公開情報共有には特段の規制はない。そして、いずれについても、利益相反への対応として、利益相反管理体制の整備が必要とされています。

 33ページは、本年7月の成長戦略での関連の記載を掲げています。

 以上を踏まえ、35ページ、36ページでは検討課題を提示しています。外国顧客情報の情報授受規制について、海外金融機関との規制の同等性等を踏まえ、国際競争力強化の観点から、法人顧客を情報授受規制の対象から除くことについて、どのように考えるか。

 国内顧客情報の情報授受規制について、規制の在り方の検討に際し、どのような視点が求められるかとして、利益相反の着実な管理、優越的地位を濫用した取引の実効的な防止、資本市場におけるグローバルなプラクティスとの整合性の確保、顧客課題に対する高度なソリューションの提供、デジタル化への対応を含め、顧客の負担の軽減などを掲げています。

 36ページでは、利益相反管理体制の整備義務や親子銀行等の優越的地位を利用した証券取引の禁止を導入する等、規制の枠組みを整備したが、現時点においてそれらの実効性をどのように評価するか。仮に規制を見直す場合、顧客側の見方等を踏まえ、利益相反や優越的地位を濫用した取引の防止の実効性確保の観点から、どのような点が不足しているか、などを掲げています。

 私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、全国銀行協会から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【林参考人】  
 全国銀行協会の企画委員長の林でございます。資料、右下2ページから御説明を申し上げます。よろしくお願い申し上げます。

 それでは、資料、右下2ページでございます。我が国はデジタルトランスフォーメーションやそのほかのメガトレンドの中で、中小企業の事業承継やグローバルな産業再編等、同様に様々な事柄への対応が求められる荒波の中にいると認識をしています。コロナウイルスの拡大はこれらの流れを決定的なものとし、さらに加速させておりますが、金融産業は、これら国家的な課題への解決に向けて積極的に貢献すべきと考えております。

 ページが飛んで恐縮ですが、右下10ページを御覧いただければと思います。10ページ中央のチャートは、日本の社債市場の状況ですが、大変貧弱な状況でございます。様々なリスクアペタイトに応えられる分厚い社債マーケットが存在しないと、海外から投資家を引きつけることはかないません。また、我が国の機関投資家、例えば国民の重要な資産である年金基金に十分な投資機会が提供されないことにもなります。証券会社が長年努力されてきた社債市場改革につきまして、間接金融からのシフトが十分でなかったことは今回のコロナ禍でも明らかでした。確かにスピードを持って対応しなければならないときに間接金融は有効でございますが、それに加えて、資本市場や社債市場は、年金投資家も含めた幅広いリスクテイクの場を提供できるようになることが重要と考えております。投資家にとって有力な運用手段が国債と株式しかないということではなく、厚みのある社債市場の健全な発展は急務です。

 右下2ページにお戻りいただければと思います。こちらの最下段、「私たちが実現したい姿」にありますように、間接金融に大きく偏ったこれまでの金融仲介から、マネーフローを変え、資本市場を支え、社債市場に広がりと深みを創出することで、直接金融・間接金融の双方がお客様にとってさらに適切に機能するように抜本的に組立てを変えていくことが重要と考えております。例えば銀行員1,000人と証券会社の営業社員1,000人が、各々の持ち場で各々に限定された機能提供を別々にお客様に行うという形ではなく、合計2,000人が全てのソリューションやプロダクトを提供できる形とし、お互いが切磋琢磨する形を取る、正しい競争原理が働いていくこと、このことこそが資本市場の健全な発展につながると考えます。このような同じ経済効果を生むソリューションは、横断的な法規制にて運営されるべきだと理解しております。

 右下3ページにお進みください。近年、金融規制は業態別・業界別運営から機能別・横断的規制に移行してまいりました。しかしながら、同じ経済効果を生むソリューションであります、例えば銀証の負債・資本サイドのプロダクト間の障壁は、今から30年前の金融制度改革法の施行、15年前の市場誘導業務の導入以来、激変緩和措置が継続運用されるなど、大きな変化は出ておりません。新政権では、業界縦割り的な運営を見直すということが大方針と伺っております。国際金融都市構想を実現するためにも、業界の利害を超えて、お客様に競争力ある調達・運用ソリューションを提供できるよう、銀行と証券は健全かつ適正な競争を行うべきだと考えております。

 4ページにお進みください。ファイアーウォール規制で重要な観点は、利益相反や優越的地位の濫用行為そのものです。それらの行為は、右側⑧から⑮のように事後的な行為規制として法令上禁じられており、これらにつきましては、後段で申し上げますとおり、銀行においても様々な仕組みを導入し、その発生防止に努めてまいりましたし、今後もより一層努力をしてまいります。また、冒頭申し上げた機能を発揮するためには、非公開情報の共有にとどまることなく、銀行員と証券会社の営業担当社員が相互のソリューションをお客様にきちんと提供することによって、まさに金融業界が総力戦で我が国の経済社会の改革に貢献しなければならないと考えております。①から⑦は、そのために必要な規制の見直しでございます。個別各社の利害を主張しているときではないと考えております。

 右下5ページでございます。銀証一体のバリューチェーンをシームレスかつ付加価値ある形で提供するためには、お客様のニーズを把握するところからソリューションを提供するプロセスがぶつ切りになることなく流れていかなければなりません。シンプルで透明性が高いということは、デジタル時代の前提でもあります。金融機関側に現在生じております摩擦や調整管理コストが減殺すれば、それは間違いなくお客様に還元されます。左側の重点要望項目がパッケージで見直されることが何よりも大切だと考えております。

 6ページ目でございます。例えばこれからの中堅・中小企業は大変な時代、歴史的に類を見ない事業承継時代を迎えます。我が国の産業を長年支えてきたこれらの中堅・中小企業が1社でも多く健全な形で存続してまいりますためにも、銀行と証券は一体となって事業承継先を考え、可及的速やかに承継を実現していかなければなりません。また、コロナ禍で導入されている資本性ローンの将来的なエグジットについても、銀行と証券が一体的に取り組んでいく必要性、有効性があると考えております。

 右下7ページでございます。グローバル企業もこの春から秋にかけて、所有する遊休資産を急速に見直し、事業会社間の持ち合いの解消、不採算事業のカーブアウト、遊休不動産の売却等を急ぎ、併せて、負債資本構造の最適化にも着手されております。シニアローンと資本しかないといった調達構造ではなく、普通社債やメザニン、劣後ローン、劣後債や優先株式など含め、総合的な調達ソリューションが求められている中で、「これは銀行」、「これは証券」といった対応では、国際競争に後れを取ってしまうこととなります。グローバル企業に対する欧米金融機関のグローバルスタンダードは、Single Point of Contactであります。同じ経済効果を持つソリューションの窓口が2つの業界に分かれているということは、お客様の立場に立っても効率的とは思えません。窓口を1つにまとめた上で、各個社が健全に競争することがお客様のメリットにつながると感じております。

 8ページ目でございます。個人や海外の取引においても同様の課題が存在しているということを示したページでございます。

 9ページ目にお進みください。地方銀行におきましては、連携できる証券会社が近隣に存在しないケースもございます。クロス・マーケティングが可能となれば、地方のお客様においても、これまでにない有益なソリューションを享受いただくことが可能となり、証券会社にとっても、銀行の顧客基盤にリーチすることが可能となり、地方創生への大きな貢献策になると考えております。

 11ページにお進みください。銀行の特別な影響力について、平成5年当時指摘されておりました事柄がその後どう変化したか確認をしております。左側、非金融法人の資金過不足は大きくプラスに変化し、借入額も大きく減少し、実質無借金企業の比率は中小企業マーケットにおいても顕著に増加しております。右側、株式の保有や役員の派遣についても、政策投資株式の売却やコーポレートガバナンス・コード導入、株主重視の経営に移行することで、事業法人も銀行自身も取引関係には大きな質的変化が生じております。

 本日は後ほど野村證券さんからプレゼンテーションもあると聞いておりますが、銀行業界もお客様の声を収集しております。私どもは率直にお客様とコミュニケーションをして様々な声を伺いましたので、ファイアーウォール規制撤廃について賛成のお客様もおられますが、反対だというお客様もおられることを確認しております。お客様の御意見が全面的に賛成であったと申し上げるようなことはいたしません。また、全てのお客様の御意見をくまなく伺えたわけでもありませんが、賛成のお客様は、国際的に見て特異な規制が存在することは我が国の国際競争力の障害になっているといった大局的な問題意識や、金融機関との取引は外資系金融機関のように本来Single Point of Contactでよい、あるいは銀証で情報共有されたほうが利便性が高いといった点を理由とされておられます。

 他方、反対とされるお客様は、銀証の情報格差を設けることで金融機関取引を自社でコントロールしたい、または借入れを受けている銀行の力を高めたくないといったことを理由とされております。私どもといたしましては、そもそもこうした御意見を率直にお話しいただくこと自体が、銀行が圧倒的な支配力をもはや有していない証左と考えております。また、銀行の貸手としての立場は世界共通でございます。優越的地位の濫用の防止は、我が国でも導入されている事後規制でグローバルベースにおいても担保されていると理解しております。

 お客様の声は、全面賛成でも全面反対でもない状況下、また、証券業界におかれましても様々な声が存在すると伺っておりますが、判断の軸は、我が国資本市場の発展・成熟、そして、経済・社会課題解決のために金融業界がどのような姿であれば貢献できるのか、銀行か、証券かといった議論を超えた、本質的かつ骨太な政策議論が必要と考える次第です。

 12ページを御覧ください。国際的に見て、我が国金融業界の在り方・役割分担は、特別なものがございます。情報とお金の流れは同期いたしますので、日本語の障壁に加え、特別な規制の存在、これは海外のマネーフローを国内金融市場に取り込む上での壁となっていると考えます。

 13ページにお進みください。最後に、お客様本位の業務運営体制の確立について申し上げます。かねてよりお客様の懸念に対応すべく、優越的地位の濫用、利益相反、お客様の情報の適切な管理等につきましては、法規制を遵守すべく体制構築に努めてまいりました。このような行為規制・体制整備は重層的に行われております。

 14ページにお進みください。これは個別行として三菱UFJ銀行の事例を挙げておりますが、優越的地位の濫用防止につきましては、右側のチャートにありますとおり、グループ銀行とグループ証券会社の間で実効的な体制を構築し、運用しております。

 15ページにお進みください。利益相反の防止につきましても同様に、右側チャートにありますような、持株会社を核にグループ横断の管理体制を構築し、懸念される案件を事前報告から指示・モニタリングまで丁寧に管理をしております。

 16ページでございます。顧客情報の管理につきましては、重層的な法規制について適切な管理を徹底しておりますが、デジタル化や効率性の議論が急速に顕在化する中で、安心・安全とのバランスも含め適切な在り方の議論が進みますことを期待しております。

 17ページでございます。法人関係情報につきましても、銀証それぞれの機能において適切に遮断措置を講じてございます。

 最後、18ページでございます。以上、国内の資本市場をリスクリターンが反映される形に健全に発展させ、各経済主体間の資金の好循環を生み、国際的な魅力やプレゼンスを向上させるためにも、「銀行が」、「証券が」といった個社や業界の利害は必要ではなく、金融界を一体とする改革が大きく力強く前進しますことを強くお願い申し上げます。

 全銀協からは以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、国際銀行協会から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【中村参考人】  
 国際銀行協会の中村と申します。本日はこのような機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げます。さて、本日は、ファイアーウォール規制について、私どもの考え方を述べさせていただきます。

 2ページを御覧ください。私ども国際銀行協会は、銀証間の顧客情報共有禁止規定の撤廃を要望いたします。その理由は3つあります。1、弊害を生むのは情報の不適切な利活用であること、2、情報共有禁止規定が、日本の国際金融都市構想の障害になっていること、3、顧客情報の適切な利活用は、顧客サービス向上及び金融機関における利益相反管理体制の高度化に貢献することの3点です。

 3ページを御覧ください。まず第1の理由について述べます。そもそも情報共有規制の歴的経緯を振り返りますと、それまで業態として分かれていた銀行と証券に業態別子会社を通じて相互参入を認めた際、利益相反管理や優越的地位の濫用に対して慎重を期すために、また、相互参入がスムーズに進むように前広な事前規制という形で設けられたものと思います。しかし、その後の市場のグローバル化、金融取引の複雑化の中でマイナス面も目立ってきたため、今日的な意味において規制を見直す必要があると考えております。申すまでもなく、情報共有が即座に弊害を発生させるわけではなく、適切に利用すればむしろ弊害の防止に資するものと考えます。つまり、共有なかりせば発生してしまう利益相反を早い段階で検知して防止することができるということです。もっとも、金融機関の負う守秘義務もございますので、その点を踏まえて建設的な議論ができればと存じます。

 4ページを御覧ください。御存じのとおり、利益相反の弊害防止措置は、4ページにありますとおり、既に他法令で手当て済みであり、屋上屋を重ねるような事前防止規制は必要ないと考えております。また、利益相反管理体制の構築及びその運営は、既にグローバルプレーヤーの中では実務として定着しているものと考えております。

 5ページを御覧ください。外資系金融機関は、グローバルに利益相反を管理するためのシステムを備えています。早期に案件登録することで、システムの検知能力を高めることになります。このシステムについては、後ほど述べさせていただきますが、迅速な情報共有がかえって弊害防止措置に役立つことを申し上げさせていただきます。以上により、顧客情報共有規制は、前広に規制をかける事前規制であり、それによって弊害が生まれることがあると考えております。

 6ページを御覧ください。次に、第2の理由について述べます。外資系金融機関が日本へアジア・オセアニア統括機能を移管できない理由の1つに、情報共有禁止規定の存在があると考えます。日本の顧客情報共有規制に対応するため、日本独自のシステム、データベース運営、リスク管理体制が必要となるからです。また、グローバルな会議にて特定の顧客が話題に上った際、かつ同意書の問題がある場合は、東京の担当者が一時的に退席する必要があります。よって、統括機能を日本に移管した際は、この情報共有禁止規定のため、経営管理やリスク管理に支障が出ることが想定されております。

 7ページを御覧ください。外資系金融機関が市場への参入・退出を検討する際は、その市場における収益性に加え、規制対応コストの多寡も判断要素の1つとして考慮しております。そして、ファイアーウォール規制が日本及び日本と同様に厳しい国では、規制対応コストが高くなっております。国際金融都市構想実現のためにも、情報共有禁止規定は撤廃されることが好ましいと考えております。

 8ページを御覧ください。次に、第3の理由について述べます。情報共有が迅速になされることが、顧客サービス向上に貢献するものと思います。情報の共有によって最適な商品・サービスの提案・提供が可能となり、お客様の機会損失が軽減されるからです。法人のお客様については、リクイディティからエクイティまでシームレスな提案・サービスに対する本来的なニーズがあると思います。とりわけコロナ禍にあっては、円滑な資金繰りにとどまらず、資本の増強までを選択肢に入れたシームレスな提案・サービスが期待されているものと思います。本来シームレスであるべきところを、現行制度は、サービスの提案を受けることにも手続を要するものとなっております。

 9ページを御覧ください。私どもの会員顧客は、金融グループ一体でのサービス提供を希望されるお客様が多いと理解しております。確かに、取引開始のタイミングでは一定程度のお客様がオプトアウトされるのは事実です。しかし、一旦共有をお認めくださると、途中で共有停止をお申し出になることはほとんどございません。すなわち、共有後にお客様の満足度が損なわれることがない、また、向上しているという傍証ではないかと考えております。ですので、様々な顧客ニーズがある中で、一律に規制するのではなく、金融機関として個別に対応していくのが好ましいと考えております。

 10ページを御覧ください。こちらのページは、これまで私どもから申し上げてきたことを金融機関側から述べたものです。日本の金融サービスの生産性は諸外国と比べて低く、これをグローバルレベルまで引き上げ、国際競争力を高めるためには、この観点からも撤廃が好ましいと考えております。

 11ページを御覧ください。ここから15ページまで、先ほど5ページにて申し上げた、私どもにおける利益相反管理の取組の状況の概略を紹介させていただきます。外資系金融機関では、2008年以前よりグローバルベースのシステム及びデータベースを利用して利益相反に関する事項を管理しております。また、年々高まる利益相反管理への要求水準に応えられるよう、常に見直しを実施しております。なお、グローバルベースでもデータベースにアクセスできるのは、内部管理部門の必要最低限の人員です。情報が広く共有されることを懸念される日本のお客様は多く、私どもでは、グローバルに運用されているNeed to Knowの考え方に基づき情報管理を徹底しております。

 12ページを御覧ください。ここから利益相反管理のより具体的な内容について申し上げたいと思います。私どもグローバルで運営するデータベース上に、グループ会社全体の顧客との法人関係情報等を登録します。登録は網羅的に、かつ速やかに行われます。速やかな登録は役職員の義務です。迅速な登録が利益相反の可能性を早い時点で検知することを可能としています。つまり、迅速な情報共有が弊害防止措置に役立つことを意味します。利益相反が見つかった場合には、その解消に向けて個別に内部管理部門が中心となって対応していきます。

 13ページを御覧ください。ここでは、その運用方法を示しています。例えば、クロスボーダーM&Aなどの非公開情報のデータから、利益相反管理システムは利益相反の可能性をチェックし、可能性が検知された場合には内部部門に伝えます。内部管理部門は、そのM&Aなどの案件をどのように取り扱うか検討してまいります。

 14ページを御覧ください。こちらは、12ページ及び13ページで申し上げた、私どもがグローバルベースで使用している利益相反管理システム及びデータベース構成のイメージです。こちらを御覧になれば、迅速なデータベースへの事前登録が、トレーディング業務を含めて早い段階での利益相反の可能性を検知できるという点をイメージしやすいのではないかと思います。

 15ページを御覧ください。こちらは、利益相反管理システムが利益相反の可能性の存在を検知した後の利益相反状態の解消方法についてまとめました。顧客に利益相反状態を開示・説明し、承諾を得るといった対応を行います。場合によっては、情報隔離を徹底し、顧客の承認を得た上で取引を継続する場合もありますが、大半はお取引をお断りすることになります。

 16ページを御覧ください。こちらは私どもの取組例です。利益相反管理システムを単に運営するだけではなく、徹底した社内教育の実施及び経営トップも関与した企業文化の醸成活動を通じて、利益相反管理体制に努めております。

 17ページを御覧ください。最後に、繰り返しとなりますが、私どもが情報共有禁止規定の撤廃を求める理由をこちらにまとめさせていただきました。1、弊害を生むのは情報の不適切な利活用であり、情報共有は直ちに弊害を生みません。また、前広な情報共有は、むしろ利益相反の発見につながります。2、情報共有により顧客ニーズに沿ったサービスを迅速に提供することが可能となります。3、情報共有禁止規定撤廃は、日本の国際金融都市構想に貢献するものと強く思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、日本証券業協会から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【荻野参考人】  
 日本証券業協会の政策懇談会で座長を務めております大和証券の荻野でございます。本日は御説明の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、資料の2ページ、「はじめに」を御覧ください。証券業界では、資本市場の機能の十全な発揮及び国民経済の健全な発展、顧客の保護と利便性の向上、及び金融商品取引業の健全な発展を目指していくという理念を共有しておりまして、その上で、これらをどのように実現していくのか、活発な議論を行ってきております。

 本ワーキング・グループにおいてファイアーウォール規制の議論が始まるに当たり、日証協の政策懇談会では、まずは現行の規制の下での会員の実務の現状等について情報を交換し、情報を共有することが重要であると考え、アンケートを実施しました。本ワーキング・グループにおける審議に生かしていただけるよう、その結果を報告させていただきます。なお、各社のルーツやビジネスモデルによって実務や規制の在り方に対する考え方、アンケートの回答ぶり等に傾向が表れることが考えられますので、証券業界以外の皆様にも分かりやすいように、回答を提出した証券会社を、銀行系証券、外資系証券、ネット系証券、独立系証券の4つのグループに分類した上で、それぞれごとに回答をまとめて掲載しております。また、掲載したそれぞれの回答は、あくまでも個社から提出されたものを列挙したものでございます。各グループ全体の傾向を表したものではありません。したがいまして、文字が多いと思いますが、実態がよく分かるかと思います。

 次に、5ページを御覧ください。ここでは、この資料の構成を大まかに表しております。まず最初に、非公開情報の共有制限(オプトイン/オプトイン手続)、2つ目に利益相反管理体制、3つ目に優越的地位の濫用の防止、最後に、ここでは投資家と発行体の両方を指しますが、顧客の保護と利便性の向上についてまとめております。

 それでは、アンケート結果の概要を説明しますので、7ページを御覧ください。非公開情報共有の制限、特にオプトアウト・オプトインの現状のうち、法人顧客に関する実務についての回答を紹介します。現在の法律では、銀証間で顧客の非公開情報を共有しようとする場合、顧客によるオプトインの手続が必要とされておりますが、法人顧客に関してはオプトアウト手続とすることが可能とされています。しかし、実務の現状としては、オプトアウト手続を採用していない、またはごく限定的にしか活用していないということです。その理由は、例えば銀行系証券の意見として、オプトインと大差のない説明が必要、事務負担軽減がない、オプトインでお客様に意思表示をいただいたほうがトラブルになりにくいといった制度面での使いにくさや、お客様の意思を明確にしたいといった考えがあります。

 また、実務においては、8ページの外資系証券の意見や、それから、9ページから10ページにもありますように、オプトインを採用するとしても、お客様から包括的な同意を得ることができない、取引や商品ごとの限定同意をいただくことで管理が煩雑になっているという意見もございました。

 11ページにありますように、ネット系証券や独立系証券においても、オプトインを採用する理由は共通しております。

 続きまして、12ページ目以降は、外国法人顧客の状況についてヒアリングをしております。外国法人顧客に特有の事情として、我が国におけるファイアーウォール規制について理解を得るために時間と労力を要するという指摘がありました。

 なお、14ページに飛びますが、例えば米国においては、チャイニーズウォールをしき、重要な未公開情報、いわゆるmaterial nonpublic informationとして幅広い情報について厳格な管理を行っているということでございます。

 続きまして、15ページ目以降で、個人顧客に関わる実務についての回答を紹介いたします。個人のお客様に関しては、オプトアウト手続は認められておらず、オプトイン、つまり、お客様から同意をいただいております。

 16ページにありますとおり、銀行系証券においては、同意を得るのにさほど抵抗感はないという意見と、極めて限定的にしか同意をいただけないという意見の両方がございました。同意をいただけない理由として、口頭での了解に加えて書面の手続が面倒に感じられる、相続等の場面で関係者全員の同意を取得することは困難といった指摘がございました。

 17ページにありますとおり、外資系証券においても、個人のお客様から同意を取得する場面はあり、同様に書面による同意がネックになっているということでございます。一方、独立系証券は、お客様のニーズに基づき同意をいただいており、同意をいただけない場合には、お客様にとって情報共有や提供しようとするサービスの提案に対するニーズがなかったのではないかとの意見でございます。

 なお、電磁的方法による同意の活用状況につきましては、18ページにまとめております。銀行系証券においては、事務リスク等を勘案し電磁的方法を採用していないとの回答が多い一方で、ネット系証券は、電磁的方法によって特段の支障なく同意を取得できております。独立系証券においても、書面の手続は一部残っているものの、電磁的方法も対応されており、iPadなどを活用した電子サインの活用なども始まっているとのことでございます。

 続きまして、19ページ以降は、法令上認められているリスク管理、内部管理目的での顧客同意なしの情報共有についてヒアリングをしております。こちらは、業態を問わず、おおむね問題なく運用されているものと理解しております。

 次に、22ページ目以降で、日本のような顧客の非公開情報の共有の制限がないとされる欧米において、利益相反管理等の観点を含めて、情報共有はどのような形で行われているのかをヒアリングしております。基本的にはNeed to Knowの原則に基づき実務が行われているものと受け止めておりますが、特に24ページの外資系証券の現状を紹介いたします。1点目では、英国の記載として、顧客に対する秘密保持義務を踏まえ、約款において情報共有の範囲を明らかにしているほか、3点目においては、守秘性の高い業務の検討に着手する際には、秘密保持契約を締結するという実務も見られております。また、2点目に記載のとおり、書面という形式ではないものの、何らかの形でお客様の同意を得るということは行われております。利益相反管理の観点からは、4点目、それから、5点目にありますとおり、Need to Knowの原則が徹底されており、必要最小限の範囲を超えて秘密情報やMNPIを共有する行為は懲戒解雇を含め厳格な処分の対象とされています。

 続きまして、25ページ以降は、利益相反管理体制についてヒアリングをしております。

 28ページから29ページにございますとおり、金商法に利益相反管理体制の整備が規定されて以降、各社において体制整備が高度化しており、グループとして、また、グローバルで一体的な体制整備が進んでいるということかと思います。

 30ページからは、2016年の市場ワーキング・グループの審議における販売会社と組成会社の利益相反についての問題提起を引用し、改めて確認してはどうかということでアンケートを行っております。全体的には、業態を問わず、体制整備だけではなく、利益相反管理方針の策定などの取組も含め不断の見直しを行ってきたとの回答が寄せられております。

 一方で、33ページにおきまして、融資業務と資本市場の業務に関する利益相反管理体制の現状と評価についても十分な検証を行う必要がある。銀行グループの利益相反管理体制について、資本市場の規律の観点からも構築される必要があるといった意見もございました。

 34ページからは、海外の利益相反管理体制についての記載でございます。先ほどから申しておりますNeed to Knowの原則やチャイニーズウォールのほか、米国のRegulation Best Interestによる情報遮断も行われており、海外当局においても高い関心事項であると認識しております。

 37ページ以降では、優越的地位の濫用の現状をどう見ているかヒアリングをしております。

 38ページに記載のとおり、銀行系証券からは、金融グループとして利益相反管理を強化しており、第一線、第二線での管理や、事後のモニタリング、研修等において対応しているとの意見がございました。39ページにおいても、銀行系証券より、資金需要の低迷、メインバンク制の弱体化、株式持ち合いの解消、役員派遣の減少といった要因で、銀行本体の影響力が低下しているとの意見がありました。同じページでは、外資系証券は、日本において優越的地位を有していないといった意見がございました。また、ネット系証券からは、案件把握のための通報窓口が必要であるといった意見もございました。

 40ページからは独立系証券の意見です。我が国は間接金融が優位であり、直接金融が優位である海外の国とは一概に比較できない。我が国においては、メインバンク制や株式の保有、銀行出身者の出向・転籍などにより銀行が優越的地位を保持しており、国際的に見て産業支配力が強い。海外では入り口規制が存在しなくとも不正行為に重大な罰則が課され、厳しい牽制機能が備わっている。優越的地位の濫用は表面化しにくい問題であるため、特に弱い立場にいる顧客の実態を正しく把握した上で検討する必要がある。2020年4月、イギリスのFCAが新型コロナ下における優越的地位の濫用の事例を踏まえた各金融機関CEO宛ての注意喚起と自主点検を求めるレターを発出しているといった意見。

 41ページにおきましても、過去の公正取引委員会の調査があり、規制を見直そうとする場合はこのような調査を継続して実施して法人顧客の声を集めることが先決である。行員の多くを取引先企業に出向または転籍者として送り込んでおり、この実態は銀行の体制が寡占化したことにより、1行当たりの影響力が高まっている懸念がある。事後的な監督当局による行政処分だけでは、被害を受けた顧客を救済したことにはならない。一利用者が、優越的地位の濫用や利益相反によって生じた損害を立証することは至難である。優越的な地位にあるか否かは、顧客・利用者がどう受け止めるかで決まり、顧客・利用者側が「断れない」と感じていれば、とても公正な取引ができる環境にあるとは言い難い等、様々な意見が出ております。

 最後のアンケート項目としまして、42ページ以降は、投資家だけでなくて発行体も含めた顧客の保護と利便性向上について各社にヒアリングをしております。回答には、実務の現状というよりも、こうあるべきといった内容も含まれておりますが、御紹介いたします。

 まず銀行系証券からは、43ページから46ページにかけて、43ページは、ファイアーウォール規制が、組織、人材、コスト面での多大な負荷となっている。44ページでは、総合的な金融サービスの提案の機会を制約している。ファイアーウォール規制の趣旨は、他の規制で適切に対処されている。45ページに移りまして、日本の資本市場の活性化・国際化のために過剰な規制は見直すべき。46ページ、規制の撤廃によりお客様のニーズが顕在化する前にプロアクティブに提案が行えるようになるといった意見がございます。

 また、外資系証券からは、47ページから49ページにかけて、銀行系証券と同趣旨の意見のほか、48ページにおいては、リスクベースとプリンシプルベースに基づく合理的な管理が必要である。49ページ、BCP拠点を一時的に我が国に置くことの妨げとなるといった意見がございます。

 50ページには、ネット系証券からの意見として、会社によっては、利益相反、優越的地位の濫用の問題が深刻な状況にあるとも考えられ、金商業者、投資家双方にとって明確なルールづくりが望まれるというものがございます。

 以降、独立系証券の意見として、まず50ページでは、情報共有を望まない企業は一定程度存在しており、顧客企業が情報共有を拒むことは当然の権利であるため、機会は適切に確保されるべきである。顧客保護のためには、入り口で情報共有を規制し、お客様に情報共有を認めるか御判断いただくほうが実効的ではないか。51ページ目、同意書を取得できないのは、そこに顧客の考えがあってのことである。

 52ページに移りまして、個人情報保護に関しては、EUのGDPRなどグローバルにはより厳しくなる方向であり、同意を受けずに情報を共有することは、顧客本位の業務運営の観点から問題がある。民-民間での守秘義務契約だけでは、顧客が自らの情報をコントロールする機会が維持されるのか疑問があり、顧客が情報共有を拒否する機会を法令として維持すべきである。証券会社には誠実公正義務があるが、同じ義務が銀行にはない。同じ義務がない銀行との間で、顧客同意の法的な制度がない状態で顧客の非公開情報を共有することに懸念を覚える。顧客の非公開情報を共有し、総合的な金融サービスを提供する場合には、銀行の法人関係情報の管理体制を証券会社と同等にすべきである。

 53ページに参りまして、守秘義務契約による対応は、金融機関よりも弱い立場にある利用者・顧客の場合に、契約条件を交渉して自ら身を守ることは困難であり、充実した法的な保護が必要である。それから、証券会社と銀行との間で顧客の非公開情報を共有して、貸付けと社債発行の総合的な金融サービスを提供する場合に、銀行グループが社債発行企業に関する相対の情報も有しているケースがあり、社債の投資家との間の情報の非対称性の問題がより大きくなる。また、社債とローンの開示の問題として、グローバルスタンダードで見て、我が国はローンのコベナンツの開示が進んでおらず、社債市場の活性化にマイナスとなっている。優越的地位にいると、顧客の本当の声が届かないため、本ワーキング・グループの審議に当たっては、仲介業者からのヒアリングだけではなく、顧客の考えを十分に聴いて検討していただきたいといった意見がございました。

 以上、政策懇談会でのアンケート結果を報告させていただきましたが、今回の報告では、あえて会員の生の声を皆様に届けさせていただきました。証券業の規制は、バブル崩壊以降、業態別の相互参入の実施、証券会社の免許制から登録制への移行等様々な規制改革が行われてまいりました。その結果、銀行系、外資系、ネット系はじめ異業種からの参入が活発に行われております。

 私としましても、こうした多様なプレーヤーの参入は市場の厚みをもたらし、顧客の利便性を高め、多様で質の高い金融サービスの提供を通じて、魅力ある資本市場の発展につながるものと積極的に評価しております。一方で、資本市場の仲介業者は、ルーツはどうであれ、資本市場の共通の規律の下でプレーすることが必要であると考えています。証券規制はグローバルに見て一定の標準に収斂していくものと考えておりますが、どの国、どの地域にでもローカルルールはあり、そうしたことも一定の考慮が必要な面もあると考えています。証券業界は、資本市場及び金融商品取引業の健全な発展並びに顧客の保護及び利便性の向上を目指していくという共通の理念を有しております。今般のテーマとされるファイアーウォール規制の在り方について、それぞれが有する考え方を持ち寄って提供することを通じて、規制のあるべき姿に向けた議論に貢献したいと考えております。

 御清聴いただき、ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、資本市場の健全な発展を考える会から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【飯山参考人】  
 飯山でございます。資本市場の健全な発展を考える会を代表して、ファイアーウォール規制につき、10分間、お時間をいただきまして、考えるところをお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、コロナ期初期から緊急融資等を通じて流動性供給に御尽力された銀行の皆様の活動には頭が下がる思いを抱いておりますことを申し上げたいと思います。このワーキング・グループでは、コロナ後の実体経済の回復をどう支えるかが掲げられておりますので、次につながるような議論の一助になればと心より願っております。

 ファイアーウォール規制については、銀行だ、証券だといった業際問題とか、縦割り行政、規制として捉える見方もありますけれども、それは本質を見過ごす危険があると考えております。その場合に危惧しますのは、顧客と資本市場が置き去りにされることです。ファイアーウォール規制を緩和すべきとの意見では、金融機関の立場からのリクエストと思われる話、特に手続の煩雑さに関するものがよく聞かれます。資本市場の活用が喫緊の課題となっている今、議論すべきテーマとして、成長資金の供給、海外金融機関等の受入れとは趣を多少異にしているのかなという印象を感じております。何を目的とした緩和なのかを踏まえた議論をぜひお願いしたいと思っております。

 その上で、我々の資料の説明に先立ちまして、先ほどプレゼンをされました全銀協さんの資料について幾つか考えるところがありますので、御指摘させていただければと思います。全銀協さんの資料では、銀行が抱えている問題点というのが詳細に記載されており、我々にとっても非常に参考になりました。ただ、少し気になりましたのは、ファイアーウォール規制が様々な社会課題の大きな要因になっているかのように記載されている点です。また、顧客にも、御指摘あったとおり、様々な声がございます。全銀協さんの資料では、ファイアーウォール規制の撤廃による顧客のメリットが強調されていますけれども、私どもが集めた顧客の声によりますと、自分の知らないところで情報が共有されることへの強い懸念とか抵抗感、優越的地位の濫用の実態もまた多くございます。顧客の本音・実態を正しく把握した上での議論が必要かと思っております。全銀協さんが主張されておられます総合金融機能の発揮というのも、誰のためのものであるべきなのかと。また、直接金融は間接金融の牽制という要素もあるかと思います。ファイアーウォール規制を撤廃することで得るものと失うものを見極めた上で、より深い議論をお願いしたいと思っております。

 それでは、私どもの資料の説明に入りますけれども、残念ながら、全ての資料を詳しく御説明する時間がございませんので、エッセンスだけお話しします。詳細は資料に記述しておりますので、ぜひ後ほど目を通していただければと思います。

 まず2ページです。私どもの考えは単純です。主体は顧客の意思、それと健全な資本市場です。まず1点目、顧客の意思について。自分の情報を勝手に共有してほしくないという顧客の意思をないがしろにするべきではない。よって、顧客の意思を確認するプロセス、これをなくしてはいけないということです。

 この貴重な時間を全て顧客の声を紹介するのに使いたいぐらいです。今回お話をするに際して、私どもは多くのお客様の御意見をお聴きしました。お客様は多様です。5ページ、6ページには、強い立場にいない個人や中堅企業の声をまとめています。自分の情報が知らない人に共有されることを不安に感じる声、自分の情報は自分で管理したいという声が大宗です。グローバルにデータプライバシーがより関心を集め、日本でも個人情報保護法が強化されるなど、情報保護厳格化の流れが進む中で、融資や取引の情報などの非公開情報まで情報共有可能な方向へ緩める環境にはないのではないかと思います。

 8ページ目以降は、公正な競争環境確保のために何が必要かということを書いてございます。日本では、今でも銀行の優越的地位が強くて、構造的に顧客の声は届きにくいと感じております。先ほど全銀協さんの資料では、銀行の特別な影響力も変化しているという記載がございましたけれども、例えば取引先への出向などを通じて実質的に影響を及ぼしていないか、最新の数字をもって確認する必要もあるかなと思われます。

 9ページ目以降は、比較的強い立場にいる上場会社の声です。本音ベースの声を拾い、顧客や市場にとってよりよい金融規制検討に使用する目的として、金融取引を決定する立場の責任者、役員、トップマネジメントにお聞きしたものです。自分の情報は自分で管理したいという姿勢や、規制緩和が及ぼすと懸念される具体的な支障、優越的地位の濫用につながるという警戒感、こういったものが強い言葉で語られております。もちろん私たちが聴くことのできた声からの示唆ということになりますが、重要なのは、そうした顧客の声が相当程度存在しているということです。こういった声があるのに、規制をなくしていいとはとても言えません。繰り返しですが、ぜひ後ほど一つ一つお読みいただきたく思います。

 2つ目のポイントは、健全な資本市場でございます。相対で情報開示がごく限定的なローン市場と開示情報のみで成り立っている資本市場とをやみくもに混ぜることは危険ということです。13ページにありますように、金商法と銀行法では、そもそも情報の授受や管理に関する規制のレベルが違います。

 14ページ目、ローン市場と資本市場では、情報が著しく非対称です。情報共有が進むことで、優越的地位の濫用や、場合によっては利益相反が発生しやすい状況を生み出し、市場がゆがむ方向に圧力を受けることでそうした懸念が助長されることを心配します。ちょっと戻りますが、11ページ、12ページには、優越的地位の濫用に関する意見をまとめました。具体的に、机上の概念論ではなくて、現実にどういうことが起きているのか、また、懸念されているのか、御認識いただけるかと思います。

 もう一つ、海外の法制度について説明させていただきたいと思います。15ページ目以降です。30年近く歴史を経て既にほとんど緩和されているファイアーウォール規制が日本にまだ残っていますのは、もはや当初の業際問題ではなく、日本の特殊事情が背景だと考えています。つまり、融資関係や人的関係を通じ、銀行の地位がいまだに強いということです。過去との比較ということではなく、現在の実態が大事です。実際、断りにくいとか、配慮が必要だとか、圧力といった声が多くあるのです。成長戦略フォローアップでも、海外と国内では表現が異なり、国内については、「公正な競争環境に留意しつつ」とあり、また、検討するべき内容についても、海外が「除外等」と具体的なのに比べ、国内は「必要性」となっており、慎重な表現です。

 16ページにあるように、確かに海外にはファイアーウォール規制そのものはありません。しかし、それは金融機関が自由に顧客情報を扱って構わないということとは全く違います。

 17ページは、米国の法制度です。守秘義務契約で自らの望む形で情報共有を制限するとともに、事前抑止は日本と比べて低いですが、重い罰則規定と厳格な監督体制が整っています。ファイアーウォール規制だけを見るのではなく、全体を見る必要があります。法制度の詳細はアペンディクスにつけてあります。米国の法制度が、連邦レベルと州レベルでいかに重畳的に組み立てられているかぜひ御参照ください。

 18ページは、ドイツ、フランスなどユーロ市場のユニバーサルバンク市場です。ここでも、情報の扱いは自由ということではなく、厳格に管理がされています。これらの国は、日本と同じか、もしくはそれ以上に間接金融が強く、資本市場が十分強い状況ではありませんので、資本市場の活性化という観点からはお手本にするにはちょっと疑問のあるマーケットかというポイントもございます。

 19ページは、英国FCAが今年4月に出した内部情報管理に関するCEOレターです。COVID-19に絡んで、株式資金調達における重要な役割を強制するために、貸付けに関する立場を利用した不公正な取扱いが複数報告されたことに絡み、強いトーンで発信がされています。このような厳格な監督体制と、加えて重い罰則規定を短期間に整備することは容易とは思えません。ファイアーウォール規制そのものは確かに日本特有のものですが、罰則規定や監督体制など全体の整備を後回しにしてそこだけ緩和することには危惧を感じます。

 20ページです。一方、邦銀、日本の銀行が優越的地位にない純粋な海外顧客、また、外資系の金融機関が優越的地位のない本邦顧客に関しては、日本の金融市場の国際化を進めるという観点からも、確かにファイアーウォール規制緩和の余地があると思います。

 また、21ページにありますように、形式主義的と思われるような手続に関しては、時節柄もありますし、電子化などを通じて簡素化を検討するべきです。

 22ページは結論です。繰り返しになりますが、顧客の意思を確認するプロセス、これをなくしたり、形骸化することには反対です。形式的な手続は簡素化しても、実質的な機能としてきちんと残すことは、資本市場の健全性を維持するためにも必要と考えます。

 最後に、23ページ。このページはちょっと蛇足かもしれませんが、資本市場の一層の機能発揮が喫緊の課題となっている今、このワーキング・グループや他の場所でも取り上げられているテーマでございます。資本市場は、私どもが寄って立つホームマーケットでございます。引き続き、それぞれの課題について微力ながらも鋭意御相談や議論をしてまいりたいと考えておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、今いただきました御説明を踏まえて、委員の皆様方に御議論をお願いしたいと思います。事務局説明資料の資料2の最後の35ページと36ページに検討課題を掲げさせていただいていますので、これも念頭に置いて御質問や御意見をお出しいただければありがたく存じます。

 残り時間を見ますと、いつものように多くの委員に御発言いただく機会を確保させていただきたいと思いますので、御発言のお時間としては、お一人当たり最大で5分を目安にしていただければと存じます。4分を過ぎますと、事務局から発言時間が残り1分である旨のチャットを発言されている委員宛てにお送りさせていただきますので、御参考にしていただければと思います。

 それではまず、本日御欠席の上柳委員から意見書を提出していただいておりますので、事務局から紹介をお願いいたします。

【太田原市場課長】  
 資料7に上柳委員からの意見が提出されております。内容について簡単に紹介させていただきます。

 顧客の最善の利益を図ることが最も重要な視点である。小規模企業等の場合は、起債のニーズ等は必ずしも高くなく、法人側のガバナンスやリスク管理体制の構築には相当のコストがかかること等から、耐性が不十分な法人も相当数存在する。個人の場合は、利益相反や優越的地位の濫用、さらには適合性原則や説明義務の不完全履行の懸念のほうが勝る。以上のこと及び欧米の動向を踏まえ、2008年の法律改正における法人と個人それぞれの顧客情報共有の在り方についての基本的枠組みは現在も相当である。こういった御意見が提出されております。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、委員の方々より御質問、御意見をいただければと存じます。チャット欄に、全員宛てに御発言御希望のメッセージを頂ければありがたく存じます。

 それでは、今頂きました佐々木委員、よろしくお願いいたします。

【佐々木委員】  
 ありがとうございます。私は全体的なことを一言だけお願いします。今日はとてもいろいろな立場からのお話が非常に興味深かったんですけれども、やはり全体として、どんな立場の方であっても、例えば二重に規制されているとか、手間がかかり過ぎているところについて簡素化するとか、そういったことに関してはほぼ皆さん同じ意見かなと思っております。

 やはりそういう意味でいうと、このファイアーウォール規制をやめたときに、どの部分が緩和されるのか、二重になっていない部分について緩和されるということでいいのか、それとも、その部分をまた別の行為規制などで手当てすべきなのか、多分、これからそう進めるということだと思うんですけれども、ブラッシュアップして考えていかなければいけないんだなというのをすごく強く感じます。

 例えば先ほどのお話にもありましたが、よく出てくる例で事業継承がありますけれども、やはり親族に同意を得るというところが大変でもありますけれども、ここをなくしてしまうことによって、明らかに、ただ手続が楽になるというだけではなくて、親族に情報が行かなくなるということが起こるわけですから、その部分をそういう形で緩和することが適切なのかどうかということを考えていくということが重要だと思うんですね。ですので、今回のこのファイアーウォール規制、もし撤廃した場合に、どこが規制緩和になって、その部分を緩和した状態でいいのかどうか、新たに別の形で規制すべきかという点についてどんどんブラッシュアップしていければいいのかなと思っています。

 すみません、先に一言だけ。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。それでは、有吉委員、よろしくお願いいたします。

【有吉委員】  
 有吉でございます。よろしくお願いいたします。私から、外国顧客情報の関係で1点、国内顧客情報の関係で3点か4点か申し上げさせていただきたいと思います。

 まず外国の方ですが、日本の金融規制による保護の必要性が相対的に高くなくて、かつ国際競争力強化という規制緩和の必要性ということを踏まえますと、規制緩和の方向で進めていただくべきだと感じております。ただ、実際に規制緩和となったときに、本当に必要な範囲で規制緩和がなされて、かつ過剰に規制緩和し過ぎないようにという意味で、「外国顧客」というのが具体的にどのような範囲なのかということはしっかり目線をそろえてルールづくりをする必要があるのではないかと感じております。

 それから、国内顧客の関係でございますが、まず1点目として、リスク管理とか内部管理の関係の情報共有に関しては、それ自体、利益相反あるいは優越的地位の濫用といったような弊害につながるものではないと思いますので、本日幾つかのプレゼンの中でもございましたとおり、もし実務的に不具合が生じているという部分があるのであれば、目的に沿った情報利用が徹底されるということを前提に情報共有が可能になる範囲を広げるということは進めるべきなのではないかと感じております。幾つかのプレゼンでNeed to Knowという考え方が出てきたと思いますけれども、こういったことが徹底されて、ビジネス目的の利用がなされない体制が確保されているということであれば、例えばマネーローンダリング対応とか、そういった部分でのフロント部門の情報共有ということも許容してよいのではないか、ホームベース・ルールを一部緩和してもよいのではないかと考えます。

 それから一方で、ビジネス利用での情報共有ということにつきましては、発想として、そもそも金融機関には、ファイアーウォール規制の存在にかかわらず、顧客情報の秘密保持義務が伝統的に認められているということも考慮してルールづくりを考える必要があると思います。この点自体は、秘密保持義務があるので、ファイアーウォール規制を緩和してもおかしなことが起きないという方向にも考えられると思いますし、秘密保持義務があるので、ファイアーウォール規制を緩和しても今と実務が変わらず、そのままファイアーウォール規制を維持すべきだと、こちらの方向の議論にもつながると思いますので、直ちにどちらかの結論につながるという話ではないと思います。ただ、ファイアーウォール規制が緩和されたからといって、銀行・証券の間で自由に情報共有ができて、それで新しいサービスが提供できると、こういう話ではないのだろうと思いましたので、その辺り、特に全銀協さんのプレゼンはどのように整理されているのか質問させていただきたいと思いました。

 最後にもう一点、これも幾つかのプレゼンあるいはアンケートの結果などにも出ていたところかと思いますけれども、銀行と証券会社の情報共有が進むような方向での規制緩和をした場合には、例えば法人関係情報に関する規制などの資本市場での不公正取引を予防する観点からの情報管理、こういったものを銀行にも規制として適用することが必要になるのではないかと。このような視点での議論も必要になるのではないかと思いました。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。チャット欄に多数の方々から御発言の御希望をいただいております。続きまして、松本委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【松本委員】  
 よろしくお願いいたします。VISITSの松本です。いろいろ御説明いただきまして、誠にありがとうございます。非常に両サイドというか、全ての点で納得できる部分が多く、先ほど他の委員からもありましたが、一律にどちらというわけではないとは思うんですが、ちょっと気づいた点について発言させていただきたいと思います。

 まず全体として、やはりリスクがあるから一律規制というところはちょっとおかしいんじゃないかと思っております。規制による事業機会の損失というのがどれぐらいあるのかをもう少し定量的に考えていって、そういったリスクと事業機会のバランスを基に比較で考えていくべきではないかと思っております。まずは内部管理態勢の強化で対応し、事後的に評価、その結果に応じて必要な対処を行っていくという柔軟な姿勢も一部あってもいいのではないかと思っております。特に規制が始まった30年前とは外部環境、世界における特に日本のプレゼンスが大きく低下しているという現状、あとは、銀行の影響力というふうに先ほどありましたが、そういったものが変化している中で、30年前の規制をベースに考えていくというのが本当に妥当なのか。一度ゼロベースでデザインすることも検討してみてもいいのではないかと考えております。

 また、別の観点でいいますと、銀証一体となった総合提案の価値ということなんですけれども、こちらには一定の価値があると私は考えております。その理由は、顧客法人側では、銀行からの借入れ、株式・社債の発行等による資金調達というのは全体としてのキャッシュフロー管理や資本政策の観点から捉えておりまして、やはりそういった意味では、提案側も顧客と同じ目線で提案してくれたほうが、単に株式だったり、借入れどうですかという話よりも、顧客への提案価値が高いのではないかと考えております。

 また、顧客側でも、調達ソリューションの組合せによる資本政策の適切な策定というのは、やはり優秀なCFOを抱える一部の法人を除いて、金融リテラシーの観点から非常に困難ではないかと考えております。そのような金融リテラシーの不足部分を金融のプロである銀行・証券が、適合性の原則のルールとか、高いインテグリティを持って対応して補完していくべきではないかと思っております。このような、まさに顧客側の金融リテラシーの向上なくしては、間接金融から直接金融へのシフトというのは日本においては難しいのではないかと感じております。

 また、同時に、単なる規制緩和という方向ではなくて、先ほど米国との比較で、米国には罰則等により、より厳格に管理されているというお話がありましたが、日本においても、規制緩和より厳格な罰則規定をセットで考えていくというのがよいのではないかと考えております。

 あと、最後1点、先ほどアンケート結果で、今の提案で満足だから問題ないというような話も一部見られたんですけれども、まだ一体となった提案を知らないお客さんにアンケートを取っても、そこでは正しい回答というのを顧客は知らないのではないかと思います。違う例でいいますと、携帯電話を、皆さんがガラケーを使っていた時代に、ガラケーに満足だからスマホを要らないというわけではなくて、やはりスマホを知ったらスマホがいいというふうになることもあるわけです。今回も、もし規制緩和により一体となった総合ソリューションを顧客が高い価値で受け取れることがあるのであれば、世の中も変わっていく可能性があると思っておりますし、同時に、銀・証の提案側も顧客の期待を超えていく提案ができなければいけないというハードルを自ら課していくということになるのではないかと考えております。

 私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】  
 ありがとうございます。まず詳細な御説明、関係者の方々ありがとうございました。事務局の御説明、そして、関係者の方の御説明で、これまでの法律の経緯あるいは現状における実務上の課題がよく理解できました。本日、時間の関係もありますので、事務局の提示された検討課題の順に簡潔に発言させていただきたく思っています。

 最初の外国顧客情報についてですが、これも事務局から御説明、あるいは関係者からの御説明がありましたように、海外における規制状況、国際競争力の観点、それから、顧客の状況等を踏まえますと、現在の情報授受規制から除く方向での検討が望ましいのではないかと考えております。

 2つ目の国内顧客情報についてというところです。法人顧客につきましては、これも関係者の御説明等ありましたが、改正後に認識できた実務上の課題、あるいは海外の規制状況も踏まえますと、現状から一段と規制緩和を進める方向で検討することが妥当ではないかと考えております。

 ただ一方、国内顧客の状況を考えますと、利益相反管理、あるいは優越的地位の濫用防止の観点も重要と考えています。関係者の御説明にもありましたが、銀行の政策保有株式の低減とか、企業財務の健全化、これは上場企業が特にそうだと思いますが、こういったことで、上場企業とか大企業に関する懸念は少なくなっているかもしれませんが、資本市場を活用できない上場企業以外の中堅・中小企業の状況は異なると思いますし、今年に入ってコロナという影響の中で、再度、間接金融の影響力が全般的に強くなっている状況と考えます。したがって、国内の法人顧客情報への規制緩和を行う方向には賛同しておりますが、例えばセットで、これも関係者から御説明があったような、利益相反管理の全般的な強化、あるいは大企業や上場企業とそれ以外の中堅・中小企業で分けて、利益相反管理やエンフォースメントの枠組みなどに格差を設定することができれば、顧客利益の保護強化の観点からより望ましいのではないかと考えております。

 最後に、個人顧客に関しましては、これは上柳委員の意見書にもございましたが、個人情報保護の観点から、現状レベルのオプトインの情報授受規制を維持するということが妥当ではないかと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、神作委員、お願いいたします。

【神作委員】  
 ありがとうございます。神作でございます。私は情報授受規制と、それとの関連で利益相反の管理について御発言させていただきたいと思います。一般論として申しますと、金融グループの中で顧客に関する情報が集約されて、それが顧客のために真に利用されるのであれば、顧客にとっても利益になりますし、それによって適正な競争が働くということになれば、市場にとってもプラスになると思います。

 一般論としてはそのようなことが言えますけれども、他方、情報自体に対してどのような規制、規律がなされているのかという点から見ますと、情報授受規制がなくても、法的に保護されている情報というのは当然に授受が禁止されたり、管理したりしなければならないわけです。法的に保護される情報とは、法人の場合には営業秘密に該当する情報ですとか、銀行が保有している場合には銀行秘密と言われるような情報、また、個人の場合は、個人情報保護法という法律により個人情報が保護されています。また、情報の授受自体に法規制があるという場合もございまして、インサイダー情報とか法人関係情報というのはそのような情報に該当しますので、今申し上げたような情報は、たとえ情報授受規制が緩和・撤廃されても、どっちみち情報授受が規制、制限されたり、適正な管理をしたりしなければならないということになります。

 情報授受規制というのは利益相反の防止や優越的地位の濫用の防止等のために課されている事前規制であると思うのですけれども、私が本日特に申し上げたいのは、利益相反規制との関係です。利益相反の管理というのは、これもまた基本的には事前規制でありますから、情報授受規制と言わば機能的にも非常に重なるところが多いですし、情報授受規制の目的の1つというのは、利益相反についての弊害を防止するということにあると思われますので、利益相反関係との関係を明らかにする必要があると考えます。そこで、以下、利益相反と情報授受規制の関係に絞って申し上げます。先ほど述べたような法的保護の対象となっていたり、情報の授受自体に別の法規制がかかっていたりするという情報に該当するかしないかにかかわらず、利益相反の観点から、情報管理する必要がある情報はもちろん存在します。逆に申しますと、利益相反管理のところがきちんと管理できているならば、ある程度情報授受規制については見直し、緩和することは大いに考えられると考えます。利益相反の管理につきましては、大本になる考え方と申しますでしょうか、今まで金融審議会の市場ワーキング等で議論した話ですと、フィデューシャリーの考え方ですとか、顧客本位の業務運営の原則の考え方が定着することが非常に重要です。きちんと利益相反について管理する体制を構築してそれを動かすにしても、結局のところ、フィデューシャリーの考え方とか顧客本位の業務運営の原則がどの程度浸透し徹底しているということが、利益相反の規制に情報授受規制にどこまで代替することができるかを決定する際のポイントになると思われます。そのような観点からは、利益相反管理体制の定着と、それが真に心が籠もった制度として構築され、運用されているかということをどのように評価するかが重要になると考えております。

 最後に一言、ホームベース規制についてなのですけれども、情報授受規制自体が事前規制だということを申し上げましたけれども、ホームベース規制というのは、私の理解では、情報授受規制のさらにまた事前規制、事前規制の事前規制であると考えておりまして、こういったホームベース規制は見直す余地があるように思われます。ただ、これも先ほど申し上げましたように、利益相反管理の観点からの情報の適正な管理がポイントになってきますので、それとの見合いと思いますけれども、事前規制の事前規制のようなものというのは、この際、併せて検討の対象にすることが必要であると思います。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは次に、原田委員、お願いいたします。

【原田委員】  
 ありがとうございます。35ページ、検討課題のところで書いていただいている視点についてです。規制の在り方の検討に際しどのような視点が求められるかという点に関しまして、前回のワーキング・グループでも大勢の委員の方がおっしゃっていましたし、今回も出てきている意見でありますが、顧客のニーズ、顧客目線での議論というのが規制の緩和、見直しをするに当たって常に物差しになるのではないかと考えます。

 最新の2020年度の第2四半期の資金循環統計を見てみますと、民間の非金融法人企業は、家計とほぼ同じ規模の資金余剰主体になっています。この状況を考えますと、銀行の優越的地位が強いというのは、マクロで見るとノーということになるんですけれども、一方で、ミクロで見ますと、取引先への出向などがありますので、そういう面では依然強いのかな、イエスということになるのかなと思います。例えば、銀行の優越的地位という点をどう捉えるかについても、立場が違うと見方も違うというのが常に付いてきているように思います。

 資料3では、ファイアーウォール規制の撤廃をすると、資本市場が活性化されるというご説明がありましたけれども、はたしてそうなのかというと、多分そうにはならなくて、マクロでみれば社債の発行ニーズは以前ほど強くないかもしれません。規制を撤廃すると、マーケットの規模が拡大するかというと、また違う要因が多々関わってきます。投資家側の問題とか金融教育の問題とか関連してくるものが多々あるかと思いますので、群盲象をなでるではありませんけれども、それぞれ各々の立場から発言なさる、皆様の意見は断片的には正しいということは非常に感じるところであります。

 資料5では、様々な、何十ページにもわたる意見を出していただいています。一言で感想を申し上げさせていただくと、まとまっていないというところが正直なところで、皆さん立場が様々であるということを改めて認識しました。全体的に考える必要というものがあるとすると、先ほど神作委員もおっしゃっていらしたように、顧客の目線ということをぜひとも優先的に考えて、見直し・緩和をしたら負担の軽減につながるのか、利便性の向上がもたらされるのかというところを今後も引き続き議論していっていただきたいと思います。

 以上になります。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、松尾委員、お願いいたします。

【松尾委員】  
 松尾でございます。既に何人もの方から御指摘がありましたけれども、ファイアーウォール規制を撤廃しても、守秘義務とか個人情報の保護の観点から、顧客の同意なしに無制限に情報を共有できるということにはならないということだと思います。そして、恐らくそのことは、ファイアーウォール規制を撤廃すべきであるというお立場の方も前提にされておられるのではないかと思います。そうしますと、守秘義務とか個人情報保護の規律の下でベストプラクティスとして考えられておられるものがあるとして、そのベストプラクティスが現行のファイアーウォール規制だと不当に制限を受けるといいますか、過剰な制限を受けるとか、規制が硬直的で実現できないということですと非常に分かりやすいのかなと思いました。個人情報保護とか守秘義務の規律の下で考えられるベストプラクティスとしてどういったものを想定しておられるのか、それに対して現状のファイアーウォール規制が過剰な規制になっている部分を明らかにしていただけると非常にありがたいかなと思いました。

 もう一つは、ファイアーウォール規制は存続すべきだというお立場からの発言で、銀行はなお影響力を持っているという御指摘があったところで、利益相反の可能性は排除できないということでしたけれども、しかし、利益相反に関しては、個々にかなり具体的な行為を禁止する規制の体系も整備されてきているところですし、例えばイギリスのFCAの例が出ていたところですけれども、そういったものも日本では規制の対象になっていると理解していますので、なお利益相反、顧客の利益保護という観点から規制が不十分だという点がどういったところにあるのか、そして、ファイアーウォール規制が撤廃されるとこういう点に不足が生じるとか、あるいは現在はそこまで問題になっていないのがより深刻な問題が起こるのではないかというふうに、もう少し具体的にしていただけると分かりやすいように思いました。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、森下委員、お願いいたします。

【森下委員】  
 ありがとうございます。私からは6点ほど簡潔に申し上げたいと思います。

 まず1点目ですけれども、外国の顧客との関係ですが、これは有吉委員もおっしゃられましたように、顧客の利益保護という規制の趣旨からは、外国の顧客については、当該顧客が実際に経済活動を行っている場所の規制に委ねるということでいいのではないかと思います。テクニカルな点はいろいろ出てくるでしょうけれども、基本的な方向性はそれでよいのではないかと思います。

 2点目ですけれども、要は、現状の認識をどう考えたらいいのか、現状をどう考えたらいいのかということについて、いろいろな見方がある、見方が異なるということがよく分かりました。何が真実かを見極めるということはなかなか容易ではないのかと思いますけれども、もし現状、優越的地位の濫用があるということであれば、現在のシステム自体が何らかの問題があるということですので、そういったようなことには対応していく必要があるのかなと思います。直ちに情報の共有規制という話ではなくて、そもそも現在の優越的地位の濫用に関するコントロールがうまく効いていないということであれば、それも見直す必要があるということかと思います。また、検討課題の2ページ目のところには、現在の利益相反管理体制がうまく機能しているのか、その効果についてお尋ねがあります。この点については、ぜひ本当にどうなのかということについて、利用者の方とか、あるいは場合によっては当局の御担当の方の認識などもお伺いしてみたいと思います。

 3点目ですけれども、大きな議論の方向として、現状維持ではなくて、よりよく金融部門がコロナ後の社会に貢献できるようにするにはどうしたらいいのかということが大切なのではないかと思っております。銀行、証券あるいは保険、そういったようなところに限らず、また、一般事業法人からの参入もありますけれども、金融部門がよりよいプロダクトを提供していけるようにする、それにはどのような制度がいいのかという視点が大事かと思います。そのために、海外で例えばファイアーウォール規制がなくても実現できていることがなぜ日本でできないんだろうというようなことも考えてみる必要があるんじゃないかと思います。

 また、これも何名かの委員がおっしゃられたことですけれども、ファイアーウォール規制の緩和といったときに、情報を自由奔放に利用できるようになるというわけではないと思います。全銀協さんの個別要望の中にもいろいろなレベルのものが、個別のものが入っていまして、情報共有だけではなくて、個別の行為について、こういったこと、この個別の規制を外してほしいということの御要望があったと思いますけれども、どれを認めるかによって出来上がりの姿というのは大分違ってくると思います。

 顧客の声を聴く際に、オール・オア・ナッシングで、ファイアーウォール規制を外すと何でもフリーになりますよということを前提に意見照会などをしてしまうと、そこはちょっとミスリーディングになってしまうのではないかと思います。例えばファイアーウォール規制を外したとしても、情報共有をノーと言った顧客に対して、情報を共有しなくても提供できるサービスをいじわるで提供しないというのはやっぱり難しいと思うんですね。そのようなもう少しきめ細かな議論をしますと、本当の顧客の利益を実現するための情報共有のルールの在り方が明らかになってくるのではないかと思います。

 最後ですけれども、1つ別の問題としてあるのは、情報は誰のものかという辺りが非常に不明確であって、したがって、自分の情報を共有されると何となく気持ちが悪いというような気持ちがお客様にあるというのはそのとおりかなと思います。これはなかなかこの場では整理しにくい、より一般的な問題だと思いますけれども、海外などでは、顧客との取引の記録というのは、顧客のアセットであると同時に、一面では金融の事業者のアセットでもあると。したがって、顧客の利益を害することなく適切に利用すること自体が不可というわけではないだろうというような見解もありますので、そのような見方も踏まえつつ議論が進められていくことが大事ではないかと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、野村委員、お願いいたします。

【野村委員】  
 野村でございます。ありがとうございます。何人もの方々から御指摘があった点もございますので、簡潔に申し述べたいと思います。

 事務局資料の35ページについて、検討課題というところでございますけれども、まず議論の範囲を明確にした上で進めていくことが重要かと思っております。本日の資料及び非常に詳細な御発表をいただいて大変勉強になったのですが、法人の話をしているのか、あるいは個人の話をしているのか、この1点を取っても行ったり来たりというような感じもございます。一部について始めていた議論が、気がついたら全体に拡散していたといったことになるとよろしくないと思います。法人と個人、その2つにつきましては、かなり実質的に違う、留意すべき論点も違うというふうに考えます。ここは素直に見ますと、法人の話から始まっていると理解いたします。個人の話は別扱いとするのが適当ではないかと思います。そういうような議論の範囲の明確化が大事かと思います。

 また、海外と国内ということでは、海外につきましては、先ほど来多くの方々が規制緩和の方向でよいのではないかというふうに述べられておりますけれども、それは海外の法人顧客の話をしているといった明確化が大事だと思いますし、国内につきましては、そこまで明確でない形で「規制の在り方の検討に際し、どのような視点が求められるか」という文言でもございますので、海外と国内とは大分扱いが違うということ、また、繰り返しになりますけれども、今回は国内であっても法人の顧客についてといった、議論の範囲を常に明確な形で進めていただければと思います。

 もう一点なのですが、既存の制度の見直しの議論から始められる必要があるのではないかと思います。事務局の資料の10ページのところで、オプトアウト方式が導入されたということを挙げていただいております。一般論でございますけれども、オプトアウト方式は、顧客の意思の確認と、円滑なビジネスの遂行とを両立する、それを可能にするバランスの取れた手法ではないかと思うのでございますが、どうもこのオプトアウト方式が利用しづらい何かがあるのかと思います。

 また、電磁的方法も可とされていると書いてあり、昨今の書面・対面・押印廃止ではないですけれども、そういう問題も既に対応されているようにも見受けるのですが、12ページには、一部、対応未整備ということも記述されており、どのような問題がここにあるのか。せっかくオプトアウト方式があって、かつ電磁的方法もあるようなのに、何かうまく使えないということであるならば、そういう既存の制度の不十分なところ、まずそこの見直しを議論するのが先決なのではないかという感じを持っております。

 35ページ、36ページの検討課題のところには、それこそ先ほど来多くの方が言及されている優越的地位という言葉もありますけれども、優越的地位に関連しては、弱い立場の方々が容易に声を上げられないというのも事実としては重く受け止めざるを得ないと思います。ですので、やはり既存制度の不具合、不備というところからまず順当に議論されていくのがよいのではないかと思いました。

 私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、福田委員、よろしくお願いいたします。

【福田委員】  
 福田でございます。事務局から非常に御丁寧な御説明ありがとうございました。それから、多くの方々から非常に参考になる御意見伺いました。私からは3点ぐらいお話しさせていただきたいと思います。

 ファイアーウォール規制自体の意義というのは伝統的にもありましたし、その意義というのはなくなっているわけでは決してないとは思います。けれども、以前ほどはその意味合い、あるいは意味するところというのはやっぱりかなり変わってきているということはあるだろうとは思います。あるいは情報の利活用ということに関するビジネスの在り方も大きく変わってきている、あるいは国際競争という観点からも大きく変わっているということで、何らかの見直しが必要だということは私も思います。そうした観点で、事務局からの検討課題にもありましたように、外国顧客の情報に関する問題、特に海外の金融機関との同等性という観点からは、見直すということに関しては私はいいのではないかとは思います。

 それから、法人と個人という観点は、多くの方がおっしゃられたように、区別して議論する必要があります。ただ、法人と個人という二分法がいいのかどうかということに関していえば、これも多くの方がおっしゃいましたように、法人といってもいろいろなタイプがあります。かなりリテラシーといいますか、金融に関する知識のある法人とそうではない、あるいは金融機関との関係でも、優越的な立場に金融機関がなりがちな法人とそうではない法人がありますので、単純に法人を1つにまとめて議論するというのは問題だろうとは思います。ただ、法人でもかなりきちんと金融機関と対峙できるような法人に関しては、ファイアーウォール規制を見直すという考え方は私は十分あり得ると思います。

 それから、個人に関しては、ともかく手続を簡素化することが必要です。そういう意味では、手続きのデジタル化の対応はかなり必須だと思います。これは金融に限らず、政府を挙げてやっている問題ですので、これはこの分野に限らず、金融規制全体に関してそういう問題に対応していくということが大事なんだろうとは思います。ただ、個人の顧客に関して、顧客本位の規制というのは大事です。今回多くの業態の方からアンケート調査結果等が出されたし、それは非常に私も参考にはなりました。けれども、アンケート調査というのは、ある意味で癖がある。どういう聞き方をするかによって答えが一方方向に偏るという性質があるということも注意する必要があります。やはり顧客にどういうニーズがあるのかということを正確に把握するには、やはり中立的な立場でのアンケート調査もやはり大事なんじゃないかとは思います。できれば、金融庁自身が中立的な立場からある程度顧客のニーズというものを直接把握することもあってよいかと思います。業界の方からヒアリングするのも大事ですけれども、あくまで中立的な立場から、顧客が本当にどういうふうに情報の共有の在り方が望ましいと考えているのかということを把握するような試みなんかも大事なのではないかと思いました。

 私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。本日出席といいますか、御参加いただいているメンバーの方々で御発言がまだないのが、あと、松岡委員なのですけれども、御意見等ございませんでしょうか。ソニーの松岡委員、いらっしゃいますでしょうか。

【松岡委員】  
 ありがとうございます。今、福田委員から御発言がありましたとおり、企業の、ユーザーとしての立場を、経団連としてアンケートを実施すると聞いておりますので、そのフィードバックもおいおいさせていただけると思っております。企業の中でも恐らく少しずつ立場の違うところもあるかもしれませんので、そこを幅広く意見聴取できればと思っておりますし、いろいろな方々から御指摘がありましたとおり、本議論については、それぞれの観点から正論だという論点が多いように思いますので、それが実際、今後の利便性の向上や、全体的な負担の軽減、全体的な利益につながるかどうかということを主眼として考えていければと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。本日御参加いただいております委員の方々からはこれで全ての方々から一言御発言をいただきました。今、チャット欄に林さんから発言の御希望が出ていますので、どうぞ、林さん、お願いいたします。

【林参考人】  
 何度も恐縮でございます。全銀協の林でございます。先ほど何人かの委員の皆様から御質問、御意見ございましたので、銀行の個人情報の保護、法人情報の保護について簡単に触れさせていただきます。私どもで御用意した資料の右下16ページにございます。こちらに一覧の表をつけさせていただいております。広い概念として守秘義務が左側、右側は個人情報保護法の通則的なガイドライン並びに金融分野において特に定められているガイドラインを書いております。

 法人につきましては、守秘義務で様々これまでに議論があり、最高裁の判例もございます。こういったことを当然大事にしながら、私ども、お客様からお預かりした情報については最大細心の注意を払いお守りするように、それが自らの信頼・信用の源泉であるということで厳しい運用をしております。

 右側の個人につきましても、金融分野ガイドラインの今のルールに従って、適切に私どもで管理をしております。

 これに加えて、ファイアーウォール規制において、さらに同意書の取得等が求められているといった重複的、上乗せ的運用になっているのではないかということで今回お話をさしあげているとの理解でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、残り時間そろそろという感じではあるんですけれども、追加で御発言ございましたら、承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。それでは、荻野さん、どうぞ。

【荻野参考人】  
 すみません、今日はお時間いただきまして、ありがとうございます。私の説明が大分長引いてしまったので大変申し訳なくて、委員の方からも、資料5についてはまとまっていないという御意見をいただきました。まさにそのとおりだと思います。今回は本当に生の声をお伝えするということを趣旨としてやらせていただきました。先ほど何人かの委員の方からも御意見いただきましたけれども、ぜひ実際のお客様がどう考えているかということは、公平・中立なところからきちんとアンケート調査をしていただくのがよろしいのではないのかなと思っております。我々も証券業界、いろいろなルーツがありますので、一応フェアにやったつもりではありますけれども、バイアスがかかったものもあるのかもしれないと思っております。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 以上です。

【神田座長】  
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。それでは、事務局から少しお願いいたします。

【太田原市場課長】  
 皆様、多様かつ建設的な御意見ありがとうございました。その中で、森下委員から、事務局の資料の36ページで、利益相反管理体制あるいは優越的地位の濫用の防止についての評価、利用者とともに当局の見解もというようなお話がございましたので、私が実際モニタリングしている立場ではないですけれども、部内で確認した状況について、若干ですが、フィードバックさせていただきたいと思います。

 当局では、利益相反管理体制や優越的地位の濫用防止体制の整備状況をモニタリングしております。その関連で、2年前になりますが、平成30事務年度の「実践と方針」では、一部の金融機関において優越的地位の濫用防止態勢や、エンティティをまたいだ情報管理について課題が認められたというような記載をさせていただいております。したがって、現在でもモニタリングをしなければいけない事項という認識をしております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、本日はこの辺りとさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

 本日のテーマは、皆様方の御意見が分かれているテーマのようでありまして、今後皆様方には議論を深めていただいて、最終的には取りまとめを目指すという方向に建設的、前向きの御議論を深めていただきたいと思います。本日も多数の貴重な御指摘、御意見をいただきまして、ありがとうございました。本日いただきました御説明や御意見等を踏まえ、今後さらに具体的な詰めの御議論をお願いしたいと思います。

 次回のワーキング・グループの日程、それから、テーマ等につきましては、後日事務局から御案内をさせていただきます。本日は、少し時間が早いのですけれども、また次回以降長引くこともあるかと思いますので、本日はこの辺りで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 
―― 了 ――

 
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