金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第3回) 議事録

  • 1.日時:

    令和2年11月13日(金)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第3回)
令和2年11月13日
 
【神田座長】  
 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。ただいまから、市場制度ワーキング・グループの第3回目の会合を開催いたします。皆様方には大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会合も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とさせていただきます。一般傍聴は、なしとさせていただいております。また、メディアの関係者の方々には、金融庁内の別室にて傍聴をしていただいております。議事録は、通常どおり作成し、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。

 今回、オンライン参加される方々におかれましては、いつものことで恐縮ですが、2点注意事項がございます。第1点は、御発言されないときはミュート設定、音声をオフの設定でお願いいたします。それから2つ目として、発言を御希望の場合は、オンライン会議システムのチャット機能を使っていただいて、チャットにて全員宛てにお名前、あるいは団体名、協会名などの組織名を御入力ください。それを私のほうで確認させていただき、御指名をさせていただきますので、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言いただければと存じます。その際、音声をオンにして、御発言が終わられたらまたオフということでお願いいたします。

 それでは、本日のテーマは2つです。1つ目が、成長資金の供給の在り方に関する検討、もう一つが海外金融機関等の受入れに係る制度、この2つをテーマとして御議論をお願いしたいと思います。まず事務局から、事務局提出資料について説明をしていただきます。その後、皆様方から御意見をいただければと存じます。それでは、まず、成長資金の供給の在り方に関する事務局説明資料につきまして、事務局からの説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【永山市場企画管理官】
  市場課の永山でございます。よろしくお願いいたします。

 では、お手元の資料1に基づきまして、成長資金の供給の在り方に関して御説明させていただきます。今回は総論ということで、目次にございますように、検討の背景や成長資金供給に関する主な枠組みなどについて御紹介させていただければと思います。本日の議論を踏まえまして、具体的な制度の見直し案などについては、また年明け以降に各論として改めて議論させていただきたいと思います。

 では、まず検討の背景ですけれども、2ページにございますように、今年の夏の規制改革実施計画などにおいても、幾つか具体的な検討課題が指摘されております。例えば、プロ私募に関しまして、プロ投資家の要件ですとか、私募に適用される開示規制の弾力化などについて検討を行うように指摘されております。そのほかにも株式型クラウドファンディングの金額上限の見直しや非上場株式の流通市場の見直しなどについて指摘されております。

 3ページですが、これは10月12日に開催された第1回ワーキング・グループでの委員の皆様の成長資金供給に関する主な意見を取りまとめたものでございます。非上場株式の取引活性化ですとか、スタートアップのエコシステムの課題などについて御指摘いただいております。

 4ページ、こちらは第1回の資料の再掲になりますけれども、背景につきましては、コロナ後の新たな経済社会の変革に向けて、スタートアップ企業などによるイノベーションや、既存事業の再編・再生が求められる中で、こうした企業の挑戦、構造改革を支える資本性資金の必要性が高まっていると認識しております。こうした背景を踏まえまして、検討課題のところにございますように、非上場株式の発行・流通の活性化ですとか、VC・PEファンドを通じた資金供給の円滑化を促すための方策について御議論いただければと思います。

 5ページは、成長資金の供給に関連する枠組みや投資家をイメージとして並べた図になっております。

 6ページは、成長資金供給に関する最近の主な報道を取りまとめたものでございます。コロナ関係で、VCやPEファンドにおいて新たなファンドを立ち上げる動きなどが報じられております。

 続いて7ページ以降ですけれども、こちらはファンドを通じた資金供給の状況ということで、VC・PEファンド市場の状況について御紹介させていただきます。まず7ページのVC市場の状況ですが、左側の図にございますように、日本のVC市場は、投資金額、投資件数とも、近年着実に伸びてきております。一方で、右側の図ですけれども、国際的に比較しますと、特にアメリカとの開きは非常に大きいという状況にございます。

 続いて8ページですが、左側は、VCファンド1つ当たりのファンド規模と、投資1件当たりの平均投資金額の推移を表したものでして、こちらも近年増加傾向にございます。一方で右側、国際比較ですけれども、横軸に1回当たりのディールサイズをとっておりまして、赤い丸が日本の主要なVCを表しておりますが、やはり特にアメリカのファンドなどと比較すると、1回当たりのディールサイズは小規模になっているという状況でございます。

 続いて9ページですが、VCに出資している投資家の属性を日米で比較したものでございます。左側にございますように、日本の場合は年金基金のような機関投資家からの出資が少ないという状況にございます。また、右側は出資者の国内外の構成を表したものですが、日本に関しては、海外からの資金はほとんど入っていないという状況になっております。

 続いて、10ページからPEファンド市場でございますが、左側が日本のPEファンド市場の投資金額と投資取引件数でして、こちらも近年増加傾向にあります。一方で右側ですけれども、やはり国際比較として見ますと、アメリカとの差が非常に大きいという状況でございます。

 11ページも、引き続き国際比較になっており、各国の主要PEファンドの状況を比較したものですが、赤い丸が日本のPEファンドになっております。丸の大きさがディールサイズを表しておりますけれども、やはり他国の主要なファンドと比較すると、ディールサイズが小さいという状況になっております。

 続いて、12ページは引き続きサイズを比較しておりますが、上のところでは、ファンド会社単位での直近5年間の資金調達額を比較したものでございます。主要な海外のファンドと日本のファンドで比較しておりますが、やはり調達金額に大きな差があります。こうしたことも背景といたしまして、下の表ですけれども、最近の日本国内におけるPEファンドの投資案件を見てみますと、1,000億円を超えるような大きな案件については、海外のファンドが手がけている状況になっております。

 続いて、13ページは、PEファンドへ出資している投資家の属性を表したものでございます。こちらもVCと同様ですけれども、やはり年金基金のような機関投資家からの投資が限定的となっております。

 14ページのところは、参考として、こういったVCやPEファンドを通じた非上場株式投資の枠組みというのが、金商法上どのようになされているかというのを、一般的な例としてお示ししたものでございます。一般的にはファンドの運営者が適格機関投資家等特例業務などの枠組みを利用して投資家から出資を募り、非上場企業に対しては、少人数私募などに応じる形で出資をしているという形が一般的かと思います。

 続いて15ページ、こちらも参考としておつけしておりますが、年金基金といった機関投資家から資金を集められない1つの理由として指摘されているものを掲載しております。こちらは2017年に日本ベンチャーキャピタル協会が公表した報告書になりますけれども、日本のVCの場合、ファンドの価値評価基準として、国際標準と異なる評価基準を使用しているためにファンドのパフォーマンスを国際的に比較できないということが、特に海外からの資金を呼び込む上で課題となっているのではないかということが指摘されております。

 続いて16ページ、こちらも参考としてつけておりますが、流通市場の日米比較といたしまして、左側のアメリカのほうですと、上場市場のほかに、非上場株式についても厚みのある流通市場が存在しておりますけれども、日本の場合は、右側にございますように、上場市場に偏重した状態となっておりまして、非上場株式の流通の場というのが限定的となっております。

 以上が検討の背景でございまして、続いて2.のところで、成長資金供給に関する主な枠組みについて御紹介したいと思います。なお、ここで紹介する枠組みについて、今御説明しました1.の検討の背景との対応関係で申し上げますと、基本的には冒頭の2ページのところで御紹介した、規制改革会議などで指摘されているような制度に関する枠組みの紹介となっております。一方で、背景の後半で御紹介したVC・PEファンドにつきましては、あまり制度枠組み自体に対する改善要望といったものは聞こえておりませんで、むしろ第1回の際に、委員の皆様から御指摘いただいたようなエコシステムですとか、人材育成とか、そういった実態面の課題が多いのかと認識しております。ということで、2.のところはVC・PE関係以外のものが中心となりますけれども、御紹介させていただきます。

 18ページのところ、まず全体に関連する制度といたしまして、金商法における有価証券の開示制度の概要を示しております。まず株式のような流動性の高い有価証券については、50人以上に勧誘する場合は募集に当たり、1億円以上の金額を調達するときは、有価証券届出書や報告書の開示が必要となります。一般的に非上場株式の場合ですと、こういった開示規制に当たらないように、下の段にあるような適格機関投資家私募ですとか、少人数私募の枠組みで発行されることが一般的かと思います。

 続いて19ページですが、これは金商法ではなくて、日本証券業協会による、証券会社に対する業規制としての非上場株式の投資勧誘制限の枠組みでございます。基本的には日証協規則によって非上場株式の投資勧誘が禁止されている中で、幾つか類型的に投資勧誘が認められる場合が定められております。この表にございますように、いわゆるプロ私募として適格機関投資家に対する投資勧誘ですとか、この後御紹介します株主コミュニティ制度や株式投資型クラウドファンディングといった枠組みの中で投資勧誘が認められております。

 20ページ、参考としておつけしておりますのが、現在進められている個人の特定投資家の要件の見直しでございます。昨年10月の未来投資会議において、プロ投資家の要件の精緻化が課題として取り上げられました。これを踏まえまして、現行左側にあるように定められている個人投資家の要件について、顧客の様々なデータを分析して、こういった基準を少し弾力化できないかという研究が現在進められております。

 続いて21ページから、もう少し個別の制度・枠組みについて御紹介させていただきます。まず、株式投資型クラウドファンディング制度ですけれども、こちらはスタートアップ企業などがインターネットを通じて、多くの人から少額ずつ出資を募る仕組みでございますが、少額要件という金額の上限が定められておりまして、資金調達をする企業の側からすると、発行金額が1億円未満、投資家のほうからしますと、1人1件当たり50万円以下という上限が付されております。

 22ページは、株式投資型クラウドファンディングの利用状況でございますが、年間数十件程度利用されていまして、平均調達額は3,000万円前後となっております。

 続いて23ページですが、こちらは株主コミュニティ制度を紹介しております。株主コミュニティ制度は、地域に根差した企業等に関して、非上場株式の発行・流通のための制度として、日証協の規則で定められております。証券会社が非上場株式の銘柄ごとに株主コミュニティを組成して、それに参加する投資者に対してのみ投資勧誘が認められております。現在は参加勧誘の対象者は、発行体企業の株主と役職員に限定されています。

 24ページ、株主コミュニティ制度の利用状況ですけれども、現在21銘柄について株主コミュニティが組成されておりまして、毎年5億円前後の約定金額がございます。一方で、資金調達という面で見ますと、これまで1件のみの利用にとどまっております。

 続いて25ページ、こちらは参考としてつけておりますが、現在、日証協のほうで株主コミュニティ制度の見直し案が示されております。株主コミュニティ制度をより使いやすくするという観点から、幾つか改正事項が示されておりまして、例えば、先ほど申し上げた参加勧誘対象者について、現在は株主と役職員に限定されているところを、その親族や元株主、元役職員等についても参加勧誘を認めることとするというような改正内容が示されております。

 続いて26ページ、東証のTOKYO PRO Marketでございますけれども、こちらは上場市場にはなりますが、新興企業による資金調達の円滑化という観点から取り上げております。TOKYO PRO Marketは、市場参加者をプロ投資家、特定投資家に限定した、自由度の高い市場として創設されております。左側にありますように、足元では上場する企業の数は増加しておりますけれども、利用のされ方というところで見てみますと、本来の目的であった資金調達という観点からは、この右側の表にあるように、限定的な利用にとどまっておりまして、実際のところは企業としての知名度、信用度を向上させるといった目的での上場が多いという状況にあるかと思います。

 続いて27ページ、こちらも東証の市場の紹介ですが、ベンチャーファンド市場になります。こちらは広く一般の投資家から資金を調達して、投資法人を通じてベンチャー企業を中心とした非上場企業等に投資を行うための市場として創設されておりまして、過去に2つの投資法人が上場されておりましたけれども、既に上場廃止となり、現在は上場銘柄が存在しない状況となっております。

 あと参考として資料をつけておりますのは、28ページ、金商法におけるプロ投資家の枠組みの御紹介と、29ページは、先ほど19ページで御紹介した日証協の非上場株式の投資勧誘制度の見直しに関するものです。日証協の非上場株式の投資勧誘制度についても今見直しが行われておりまして、プロ私募に関して、これまで適格機関投資家に対する投資勧誘が認められておりましたけれども、ここに新しい類型といたしまして、自らデューデリが可能な法人の特定投資家について、少人数私募の範囲内で投資勧誘を認めるという案が提示されております。

 成長資金に関して、資料の御説明は以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、海外金融機関等の受入れに係る制度につきまして、事務局説明を事務局からお願いいたします。豊永さん、よろしくお願いいたします。

【豊永市場機能強化室長】
 市場機能強化室の豊永でございます。よろしくお願いいたします。

 では、早速資料2の1ページを御覧ください。こちらは国際金融センターの1回目の議論の際につけておりました資料を再掲しております。今回は、前回提示いたしました課題に対する具体的な対応案と、その考え方について御説明をし、それについて御議論をいただければと思っております。

 1ページ目を簡単に御説明したいと思います。まず、金商法上の投資運用業としましては3つの類型がございまして、①とありますが、一般的な投資運用業、2つ目が適格投資家向け投資運用業、3つ目が適格機関投資家等特例業務ということで、2つ目と3つ目につきましては、対象となる投資家がプロに限定されているというものでございます。このような3つの類型がございますが、現行制度では、主として海外の資金のみを運用する海外事業者ということを想定した制度とはなっておりませんので、それに対しまして、今回ファンドの投資家が主として外国の法人であるとか個人であるということに着目をして、新たな運用業の類型をもう一つ作ってはどうかと。その上で、簡素な参入手続で日本での業務を可能としてはどうかということを考えております。

 これが1つ目の課題に対する対応案の考え方でございまして、続きまして、課題2でございます。海外の業者が日本で業務を行う場合には登録等が必要になります。現行の日本の制度では、海外で事業を行っている業者は、当然、海外当局の許認可等を受けていると考えられますが、海外で監督を受けていることや、海外での業務実績を日本での登録等において勘案していないということです。それに対しては、そのような海外の業者は、最終的には日本で登録などを受ける必要がございますが、それまでの間につきまして、海外での業務実績ですとか監督を受けているということを勘案して、一定の期間であれば、そのような業者について日本での業務を認めてよいのではないか、というのが課題2の考え方でございます。

 ちょっとページが飛んで恐縮でございますが、6ページを御覧いただきますと、今御説明をしました課題1、課題2への対応につきまして、全体のイメージ図をつけております。繰り返しになって恐縮でございますが、右側に4つの箱がございまして、上3つが既存の制度でございます。一番上が一般的な投資運用業ということで、こちらは運用対象となるビークルや投資家について何ら制限はなく、登録制となっております。ただ、この3つの中では参入の要件が一番厳しくなっております。2つ目が、適格投資家向け投資運用業ということで、こちらは運用対象となるビークルについて制限はございませんが、顧客が適格投資家であることと、あと運用総額に200億円という上限が付されており、一つ目の類型と同じ登録制ではあるのですが、参入要件が一部緩和されております。3つ目が、適格機関投資家等特例業務ということで、こちらは運用対象となるビークルが組合型のファンド、集団投資スキームに限定をされておりまして、かつ投資家についても適格機関投資家が必ず1名以上必要ということと、その他の投資家は49名以内という制限がついております。そのような制限が付されているため、登録ではなく届出制でできるということになっております。

 今回、課題1への対応案ということで、4つ目の類型を設けてはどうかということでございまして、その要件としましては、主として海外の資金を運用するファンドの運用ということで、こちらを届出制で設けてはどうか、ということです。

 資料の左側に海外の投資運用業者と書いておりますが、海外の業者が日本に参入してくるということで、最終的にはこの4つの類型のいずれかに適合する形で参入することになるのですが、必ずしも現在海外で行っている業務がこの4つの類型に適合していないことも考えられますので、その際、そういう場合であっても、まずは日本に来てもらって、現在行っている業務を、一定期間であれば日本で行ってもらってよいのではないかということです。課題2への対応案はこのような移行期間を設けてはどうか、ということでございます。

 これが全体のイメージでございまして、また戻って恐縮でございますが、2ページをお願いいたします。2ページは、第1回目のときにいただいた御意見をまとめたものでございます。海外の業者の参入を促進するためには、そもそも日本市場の魅力向上が不可欠であるといった御意見や、行政対応として、英語でのコミュニケーションというのが重要という御意見をいただいております。今回、御提案をしました制度の面につきましては、特に反対という御意見はなかったかと思いますし、何名かの委員の方からは、賛成であるという御意見をいただいたと認識しております。

 続きまして、具体的な内容に入ってまいりますが、3ページをお願いいたします。3ページでは、課題1の対応案に関する検討ということで、詳細な制度の内容と、その考え方を示しております。まず1つ目の丸のところでございます。ファンドの投資家が外国法人、外国法人は、現在の制度でも特定投資家という扱いになっておりますが、その外国法人や、一定の資産を保有する外国居住の個人である場合、投資に関する一定の知識・経験等を有すると考えられますので、必ずしも一般投資家と同等の規制とする必要性は低いと考えられます。また、現行の適格機関投資家等特例業務につきましては、適格機関投資家が必ず必要だということと、49名以下という制限がございますので、海外の業者は必ずしもこの制度を使えないのではないかということです。

 「したがって」のところでございますが、適格機関投資家を必要とせず、また人数制限もない形で届出により国内で業務を行えるよう、制度を整備してはどうかということで、その際の論点としては、以下の3つが考えられるところでございます。

 2つ目の丸のところですが、まず運用対象となるビークルについてでございます。今回の制度は、ファンドの投資家が主として外国法人等ということが前提となりますので、投資家が保有する権利の流通性が高い場合、そうした前提が確保されない可能性が高まる。これは何が言いたいかと言いますと、例えば投資信託を例としますと、投資家が投資する対象が投資信託ということであれば、転々流通する可能性が高くなると考えられますので、そういった場合、もともとの前提であります主な投資家が外国法人等というところが確保されない可能性が高まると考えられます。したがって、運用対象となるビークルの類型としましては、流通性が低い組合型の集団投資スキームが適当ではないかということでございます。

 3つ目の丸ですが、こちらは既存の業者との競争上の公平性ですとか、投資家保護の観点から、基本的には通常の投資運用業者と同様の行為規制、代表的なものとしては、忠実義務とか善管注意義務でございますが、そういった規制や当局による監督対応、行政処分権限といったものを付与すべきではないかということでございます。

 最後の丸ですが、こちらも競争上の公平性の観点から、第4の類型は、恒久的に設けるということでございますので、要件を満たす国内の既存業者について、排除するといいますか、認めないということは適当でないと思いますので、国内の業者についても認めることが適当ではないか。

 もう一つ、投資家のほうでございますが、ファンドの運用ニーズを考慮し、プロと称される一部の国内投資家、こちらは今考えておりますのは、適格機関投資家とファンドの関係者でございますが、これらについては一定の出資比率の範囲で出資を認めることとしてはどうかということでございます。ただ、一定の出資比率のところにつきましては、そもそも海外の投資家が主な顧客ということでございますので、ここをどこまで認めるかというところは、今後検討が必要ですが、少なくとも半分より小さいものにすることが考えられるところでございます。

 続きまして、4ページでございますが、こちらは今御説明したものを絵にしたものでございまして、右側が適格機関投資家等特例業務、左側が新しい類型のものでございますが、ビークルは同じものになっておりまして、違いは適格機関投資家が必須かどうかということと、人数制限があるかないかというところになっております。

 続きまして、5ページをお願いいたします。課題2への対応ということで、移行期間という新たな特例についてどう考えるかということでございます。ここも4つ検討項目を掲げておりまして、1つ目は、大枠の考え方でございますが、運用会社が海外で一定の業務実績があって、許認可等を有していることを勘案し、日本で登録を得るまでの一定期間について、届出により引き続き日本国内で業務を行えるよう、新たな特例をつくってはどうか。その際の論点としては、以下が考えられます。

 2つ目のところは、移行期間の長さでございまして、本特例により業務可能な一定の期間としては、海外の事業者が、まずは国内で実績を積んでもらって、その後、金商法の登録等を取るか取らないかという検討、その後、実際に登録手続を完了させるということを考えますと、今のところ5年程度としてはどうかと考えております。また、この移行期間を設けるというそのこと自体について、日本に集中的に業者を呼び込むという観点から、3年から5年程度の時限的な措置としてはどうかということを考えております。

 続きまして、参入要件の話が3つ目、4つ目の話でございまして、特例の対象につきましては、そもそも海外当局の監督を受けて、主として海外の有価証券の運用を行っている事業者という前提がございますので、日本で活動している間は、引き続き海外当局の許認可等を保有しているということと、海外で一定の業務実績があるということと、ファンド全体としての主な運用対象は、海外の有価証券であるということ、を勘案するということを、今検討しております。

 4つ目の丸のところですが、こちらは、やはり、どんな業者でもかまわないということでは困ると思いますので、海外事業者の人的構成の適切性については、何らかの形で確保することが必要と考えております。また、海外当局の許認可というところで、こちらもどのようなところでもいいというわけにはいかないと思いますので、まず1つ目の要件としましては、我が国が行う調査協力の要請に応ずる保証がある外国当局ということで、こちらはIOSCOの中でお互い調査協力をしましょうという枠組みがございまして、そこの枠組みに署名をしている国というのを考えております。また、署名をしている国というのが百数十か国ございまして、それでもかなり広いので、さらにそこから何らかの絞り込みが必要かと考えておりまして、その場合、金商法と同等の投資家保護の規制が入っている国というところを観点に、絞り込みを行ってはどうかということを考えております。

 6ページは、先ほど御説明をした資料でございまして、7ページは既存の制度の御説明、8ページはプロ概念の資料、9ページは海外の制度ということで、こちらは1回目につけた資料でございますので、説明は割愛させていただきます。

 御説明は以上になります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、今いただきました2つの説明を踏まえて、委員の皆様方に御議論をしていただければと存じます。いつものように多くの委員の方々に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間の目安として5分程度としていただければと存じます。4分を過ぎますと、事務局から残り1分である旨のチャットが、発言しておられる委員だけに送付されますので、御参考にしていただければと思います。それでは、どなたからでも御質問、御意見をお出しいただきたいと思いますけれども、チャット欄に希望を入れていただけるとありがたく存じます。上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】
 ありがとうございます。資料2の特に3ページのところについて意見をしたいと思います。

 何度か同じ趣旨の発言をしているかもしれませんけれども、特にファンドの問題については、数年前にいわゆるプロ向けファンドについてたくさんの問題事例があり、個人顧客が被害といいますか、不測の事態にあったことが想起されて、そういう意味では、それの抜け穴であるとか、あるいは同じような弊害が起こらないかということについて危惧を持っております。もともとファンドの中に特例業務の場合でも、適格投資家に入っていただいて、きっちり見られるだろうから、その他の49人も保護されるのではないかとか、あるいは49名という制限も、これは私募に近いというのが、金商法の大きな建前の例外ということが、適格投資家が1人いるであるとか、あるいは49名以内にするというところで担保されたのだと思いますので、それを例外的であっても撤廃する形になるということについては、そのほかの措置をきちんとしておかなければいけないと思います。

 どういうふうにするのか、またさらに考えてみたいと思いますけれども、少なくとも3ページでいいますと、下から2つ目の丸のところに、当局による監督対応というふうにありますけれども、これが実効的であることというのがポイントではないかと思います。東京といいますか日本にある拠点についてきちんと見られるだけではなくて、そのファンド全体のことが、一定程度かもしれませんけれども監督、しかもそれが実効的にできるというところをどういうふうに確保するのかということが必要だと思います。

 そういう点から言うと、少し議論が違うことは理解しているのですが、5ページの一番下の丸のところが論点になるだろうと思われます。IOSCOに入っているだけではなくて、実質的に監督がきちっとしているということが確保できるような、それもできることであれば、金融庁と人的な交流がきちんとあるとか、監督情報についても共有ができるというような体制がないと心配だと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、チャットをいただいている順番で、森下委員、お願いいたします。

【森下委員】
  ありがとうございます。まず最初に成長資金の枠組みですけれども、やはり積極的に取り組んでいくことが必要なのかと思っておりますが、私の理解するところでは、企業ですとか機関投資家に結構資金がたまっていると。しかし、そういったようなものが非上場企業の投資になかなか向かいにくいというような環境があるのではないかと思います。個人投資家の場合、先ほど上柳委員がお話になられたような懸念もあると思うのですけれども、やはり企業、あるいは機関投資家が投資をしやすくするような仕組み、これは金融における仕組みだけではなく、そのほかいろいろな工夫をして、例えば税制上の対応がいいのか分かりませんけれども、いろいろな政策をパッケージにして、機関投資家ですとか企業のところにたまっている資金が非上場企業に流れていくというような仕組みを作っていくということが重要なのではないかと思います。これは成長資金ということもそうですし、地域の企業の創生というようなことからしても、そのような方向性で考えていくのがいいのではないかと思っております。具体的なことについてはまた今後ということですので、私自身もいろいろ考えてみたいと思っております。

 次に、外国人投資家を対象としたファンドということですけれども、これは前回、当初御提案いただいた際にも私は賛成を申し上げて、投資家保護のための規制を適用するかということであれば、その対象となる投資家が専ら外国にいらっしゃるのであれば、当該外国の規制によって保護していただくのがいいのではないかということを申し上げました。したがって、そのような形で制度を進めることは適切であると考えております。

 1点だけ申し上げるならば、こういうときは規制の対象になる、こういったときは規制の対象にならないということの仕分をしていく際に、やはりできるだけ分かりやすくする必要があるのではないかと思っております。規制の性格上、なかなか難しいのかもしれませんけれども、例えば、ガイドラインその他でルールの適否というものを外国に対して発信していく際にも、できるだけ分かりやすい仕組みになるように、この機会に全体の枠組みを整理していただくといいのではないかと考えております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】
 有吉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私からは、成長資金の供給の関連、それから、海外事業者の受入れの関連、それぞれ2つ3つコメントをさせていただきたいと思います。

 まず、成長資金の供給関連なのですが、図らずも今、森下委員がおっしゃられたことと重なる点が非常に多く大変恐縮でございますけれども、成長資金の供給の活性化というために、制度、枠組みの見直しをするということは、特に機関投資家の資金を受け入れるという観点からも、ぜひ進めていただきたいと思っております。そういった検討をするに当たっては、非上場株式取引制度の整備とか、あるいはもっと広く株式取引制度の整備と一括りに議論をするのではなくて、直接的に資金を呼び込むためのプライマリー市場の見直しと、それから、イグジットの機会を広げるということによって、間接的に資金を呼び込みやすくするためのセカンダリー市場の見直しとを、しっかり分けて議論を行うべきではないかと思いますので、今後の検討の中ではそのように進めていただけると幸いでございます。

 また、成長資金の供給という視点とは別に、これも今、森下委員がおっしゃられていたとおり、事業承継とか、あるいは地方創生という観点からの非上場株式の取引の場の整備といったことも検討していくべきだと思いますので、今回のワーキング・グループがその検討の場なのかどうか、正直よく分からないところはあるのですが、この場なのか別の場なのか、どこかでは議論して制度整備を進めていただきたいと思っております。

 それから、海外事業者の受入れの関連でございますが、御提案の新しい運用業者の特例というものについては、制度全体がますます複雑化してしまうという懸念を感じるところもあるのですが、基本的には海外の金融機関の受入れ促進ということにつながるような取組には非常に期待をしているところでございます。

 その上で、技術的な点について、3点ほどコメントさせていただきたいと思いますが、まず1つ目としまして、主として海外の資金のみを運用する運用業者の特例についてでございますけれども、こういった特例を設ける方向性自体は賛同するところでございます。ただ、形式的に海外法人からの資金を受け入れれば特例の対象になるということになってしまいますと、例えば、ケイマン諸島とかそういった法域に日本人が外国法人を設立して、そこを経由して間接的にファンドに投資を行うというようなことは、実務的にはそれほど難しいことではないことでございますので、そういったことが行われる可能性も踏まえて、どういう要件でこの特例を認めるかということは、しっかり検討していただきたいと思っております。

 それから、2つ目の移行のために猶予期間を設けるという類型の特例のほうでございますけれども、投資運用というサービスの性質上、証券の販売の場面などと違いまして、顧客との取引関係、契約関係というのが継続すると、こういったビジネスになるはずでございます。この点、猶予期間内に無事登録手続が完了して、本登録のほうに移行するということになればよろしいわけですけど、そうなるかどうか分からないと、当初の段階では予測がなかなかつきにくいということもございます。結果として猶予期間内に登録が完了しないということになってしまった場合、あるいは登録するのを諦めるということになってしまった場合に、既に取引を行っている顧客との契約関係を解消しないと、無登録営業で違法だとか、このような途中で本登録に移行できないと、サドンデスのようになってしまう制度ですと、そもそもこの特例が非常に利用しづらいものになってしまうと感じます。そういったことも踏まえて、もし本登録に移行できなかった場合に継続している取引をどう取り扱うのかということは、慎重に御検討いただきながら、制度設計をお願いしたいと思っております。

 それから、もう1点は、これは第1回の際にも申し上げたことと繰り返しになりますが、新しい特例を設けるに当たって、その要件というのはできるだけ客観的なものにしていただくということを期待しております。例えば資料2の5ページの一番下の人的構成の適切性について、何らかの要件を設けるということは必要なのかもしれませんけれども、その内容はできる限り客観的に、どうすれば要件を満たして、どうしたら要件を満たさないかということが一義的に分かるような、そういう要件を設定するように、ぜひお願いしたいと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、佐々木委員どうぞ。

【佐々木委員】
  ありがとうございます。御説明よく分かりました。1つは成長資金なのですが、既に何人かの委員がおっしゃっていたように、今まで何度もこういった議論というのはあったと思うのです。その中で、場合によっては資金が用意できても、なかなか使い手がいなかったりということもあったと思います。やはりいろいろなほかの問題もあって、いい投資家がいないとか、出口としてIPOがメインになってしまっているとか、いろいろなほかのこともあるので、やっぱり全体でうまく調和がとれていくと、こういったことの意味も大きくなってくるのかなというのを非常に大きく感じております。

 また、後半の海外の資金を運用する業者の受入れに関わる課題のほうなのですが、これはちょっとそもそも大き過ぎてあれなんですけれども、目的ですね。これは主として海外資金を運用する事業者を日本に呼び込むという。呼び込んだ後は、そのままずっと海外の投資家、顧客のみを相手にするままでいいというふうに考えているのか、あるいはまた国内との関係というのを考えているのか、それを1つお伺いしたいと思いました。

 あと、先ほどのお話の中にもあったのですが、「海外事業者」とか、「主として海外の資金のみを運用する」とか、幾つかここに出てくる言葉の定義が分かりにくいと思ったのですけれども、主としてというのが何割なのかとか、あるいは海外法人、外国法人とか顧客の定義が書いてあったのですけれども、どれくらいまでのことを考えているのか。例えば、今後どんどん顧客が日本の国内の顧客に変わってきたりということがあるかもしれないし、あるいは先ほどの話にもありましたけど、法人登録だけ海外にしているところはどうなるのかとか、そういったことをどういうふうに考えていらっしゃるのかと。もちろん典型的にはイメージはあるのですけれども、具体的になったときに、そういった定義がどういうふうになっていくのかということと、またちょっと前に出ていた意見の中にあったのですけれども、競争上の公平性という意味で、必ずしも外国ということに限定しないで、条件を満たせば、例えば国内の事業者に関しても何か認められるとか、そういったことも考えられると思うので、海外の資金とか海外の事業者というのが、私には、言われればすごくイメージはあるのですけれども、実際の運用となってきたときに問題が生じないのかというのが気になりました。

 以上です。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。御質問があったかと思うのですけれども、豊永室長、お願いできますでしょうか。

【豊永市場機能強化室長】
  まず、主として海外の資金というところでございますが、主としてという言葉は分かりづらいのですが、金商法の中では、主としてと言った場合には、大体過半数を超えていれば主としてになるという考え方がございまして、今回それをそのまま当てはめるかどうかというところは今後検討が必要かと思います。そこは例えば、3割とか2割とか具体的に定めることもあり得るかとは思っております。

 あと、投資家が外国法人の場合というところでございますが、幾つも外国に会社をつくって、そこを経由してとなりますと、それをどこまで本当にさかのぼるかというのは正直難しいところもあるかと思っておりまして、そこは今、明確な答えはないのですけれども、制度設計をしていく中で考えていきたいと思います。

【神田座長】
  ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。

【佐々木委員】
  はい、分かりました、大丈夫です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次は井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】
  御説明ありがとうございました。資料1と2について意見を申し上げるのと、資料2のほうで2点ほど確認させていただければと思っております。

 最初、資料1のほうですが、本日は総論ということで、詳細は申し上げませんが、機関投資家の立場から一言だけ申し上げさせていただきます。私も日本経済や産業の成長のため、ベンチャー企業や非上場企業にいかに資本性資金を供給するかという観点は重要と考えております。一方、エグジットの1つの手段として上場があり、経営者のインセンティブを高めるために、いかに上場を容易にさせるのか、という議論もあると思います。ただ、上場の段階になると、企業は創業者のものから公共的なものになるという面もありますので、機関投資家も含めた市場の期待に沿ったクオリティ、ここで言うクオリティというのは開示とか、あるいはガバナンスがしっかりしているといったことになりますが、このような上場企業をいかに増やすかという視点も重要になってくると思っております。資料1の範囲外とはなりますが、機関投資家の意見として申し上げます。

 続きまして、資料2の海外事業者の招聘の件です。こちらも1回目の審議会でも申し上げましたとおり、国際金融都市の確立に向けての制度整備を行うこと、その中でも海外金融機関等受入れを行うことは重要な施策と考えております。今回、先ほど御説明いただいた、海外のトラックレコードを勘案し、移行措置を経て、日本制度に合わせていくという課題2で示された方式で、幅広い業態の金融商品取引業者を受け入れる。一方、参入障壁を低くし、新しい類型を設定することとした課題1では、流動性が低い投資スキームに絞るという整理は、投資者保護と競争上の公平性の観点から非常に妥当な施策と考えておりまして、賛同いたしたく思っています。また、何人かの委員の方もおっしゃっておりましたが、3ページの課題2で示される一定の行為規制とか、あるいは当局の監督も必要と思っております。

 課題2のほうで、2つほど確認させていただければと思っています。1つ目が資料の5ページになりますが、丸の上から2つ目のところで、課題2で示されている移行措置が時限的な措置として示されているところです。国際金融都市を目指していこうというところでは、恒久的な措置とするということも1つ考え方にあると思います。一方、この場合、既存業者との競争の公平性とか、あるいは投資者保護の観点で問題もあると思っておりますので、個人的には記載されているような時限的措置とすることは妥当と考えておりますが、この辺りの事務局の考えを教えていただければと思っております。

 2つ目が、同じく5ページ目の丸の3つ目のところになりますが、海外での業務実績というのは当然必要となると思いますが、海外当局の許認可も継続して保有するというところです。許認可を維持するために海外拠点を保有するという条件がある場合、日本と海外拠点の2つの拠点を持つ必要があって、小さい規模の運用会社さんですと、コスト的に厳しくなる面があると思います。一方、先ほどの確認事項と同じですが、監督の切れ目ができるリスクというのがあって、投資者保護の観点で懸念があるということも考えますと、海外当局の許認可の継続を条件とすることは、私は妥当とは思っておりますが、この辺りのお考えを事務局のほうに教えていただければ幸いです。

 以上でございます。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。それでは、豊永さん、お願いいたします。

【豊永市場機能強化室長】
  まず、時限的な措置のほうでございますが、委員御指摘の点もあると思いますし、あえて期限を区切ったほうが、今後業者に向けての、日本に誘致をする場合のPRにもなるのかなという思いもございまして、3年から5年程度の時限措置としてはどうかということを考えております。

 もう一つ、海外当局の許認可というところで、複数の国で拠点を置かないといけないのではないか、というところでございますが、日本は投資運用業を行う場合には、拠点を必ず置かないといけないということになっておりまして、それと同様に、拠点をその国に置いて下さいという規制を置いている国も多いかと思うのですが、そこは確かに負担にはなるかと思うのですが、やっぱりそれぞれの国の制度に適合してもらうというのは最低限必要だと思っておりますので、その点、拠点を複数設けないといけなくなるというのは、そこはやむを得ないのかなと思っております。

【井口委員】
  どうもありがとうございました。

【神田座長】
  ありがとうございました。それでは、次へいきまして、続きまして、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】
 ありがとうございます。野村でございます。私も資料1、2それぞれについて、簡単ですけれどもコメントをさせていただければと存じます。

 まず、資料1の成長資金のほうでございますが、発行市場、流通市場、投資家のそれぞれについて見直しをやっていくのが大事ではないかと思います。本日の資料で挙げていただきましたが、非上場株式の投資勧誘の規制緩和、株式投資型のクラウドファンディング、株主コミュニティ制度、東証のTOKYO PRO Marketとベンチャーファンド市場ということでございます。これを見る限りでは、投資家という項目は立っておりませんが、資料の中では特定投資家の見直しの実証事業に言及されておりますので、その結果を待ってということなのかとは思います。その結果についてはぜひ知りたいと思うところですが、それ以外の観点も含めて、投資家は非常に重要ではないかと思っております。

 米国の規制緩和の方向などを見ましても、投資家についての規制緩和も行われておりますので、いろいろな考え方を入れていくのが大事ではないかと思います。また、規制の見直しの考え方ですが、この金額までなら、あるいはこのような投資家であれば投資勧誘をしてもよいといったような、いわゆる業規制の観点からの議論になりがちです。しかしながら、例えばそこで示される金額などの要件が、果たして資本市場のユーザーにとって合理的なのか、メイクセンスなのかという目線が重要なのではないかと思います。ユーザー目線での見直しが非常に重要ではないかと思っております。

 それから、ファンドの活用というのは鍵ではないかと思うところです。運営者がプロフェッショナルである、個人のお金を集めることもできて、個人が直接というのではないよさという部分もあるかと思いますので、ファンドの活用も鍵ではないかと思うところでございます。

 また、資料1の御説明の中で、PEやVCの箇所と、後半2の部分との対応関係は必ずしもないというような御発言もあったのですが、やはりPEファンドやVCのところも大事ではないかと思います。海外と日本の投資家層の違いを資料の中で御提示いただいておりますが、そういったところも含めて、もしこの場でカバーしきれないテーマであるのだとしても、そうであるならば、ほかのところでの御議論も含めて、適宜連携するような形を検討いただければよいのかと思いました。

 海外資金の運用者については、何度も御指摘のあったところですが、この規制緩和は、監督等の確保、それにつながる具体的な規定がポイントになるのかと思います。よく言われる英語対応もこの辺りでは絡んでくるのかと思いました。

 また、これは前に申したかもしれませんが、より本質的には、日本の市場を魅力的にしていくことが大事なわけでございまして、そういう意味ではアセットマネジメント、あるいはアセットマネージャーに着目されたのはすごく良いと思いました。海外のプレーヤーがなぜあえて日本を選ぶのかということになりますと、魅力的な投資機会や投資家が存在するかどうかと思います。これは本日の成長資金のテーマとも密接に絡んでくると思いました。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、原田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【原田委員】
 ありがとうございます。原田でございます。成長資金供給に関する枠組みのところでコメントをさせていただければと思います。

 先ほどからほかの委員の方々もおっしゃっているんですけれども、スタートアップ関連、成長資金供給の議論というのは、過去のほかのワーキングでもありましたし、これまで時々テーマに取り上げられてきたものだと思います。制度を手当したり、制度を見直したりということを今までやってきました。ベンチャーキャピタル、VCのほうは着実に伸びているというのはよい傾向が現れていると思いますけれども、残念なことにほかの市場が急成長ということには全くつながっていなくて、資料にも書いていただいているように、諸外国と比べても見劣りする市場であり続けているという点は依然として残っています。

 従来から議論されて、課題とされてきたことは、いまだ課題であり、資本性資金が不足しているとか、制度はあるがその利用は進まないですとか、解決に結びついていないのはなぜなのかということを改めて意見を集めることも重要なのではないかと思いました。今日事務局側からご説明いただいた中で、実態面での課題が多いのではないかというご指摘がありました、同じように思います。実態面で対処すべきことがあります。

 例えば、非上場株式の取引であれば、今は株主コミュニティ制度がありますけれども、前身はグリーンシートでして、昔はJASDAQとのすみ分けが議論されていたように記憶しているのですけれども、今JASDAQはOTCではなくなって取引所の中に入っていて温存されています。JASDAQに類似の制度としてマザーズもあるという現状です。様々に制度は手当されてきて今に至っているというのがあるかと思います。制度はあるんですけれども利用が進まないということが課題です。もう少し周知徹底することが依然として必要なのか、利用が伸びない直接・間接的な理由が実態面であるのではないかといったようなところを、声を集めていただければという希望になります。

 例えば、株式投資型クラウドファンディング、これは予想されていたことでもありますけれども、利用はあまり進んでおりません。コストの問題ですとか、反社勢力をどう排除するかということは議論されたかと思うのですけれども、これに関して言えば、コスト面の影響もあり、超低金利の今では一番大きいと考えています。手数料が平均で恐らく20%ぐらいだと思うのですけれども、先ほど御説明いただいたときに、3,000万円ほどの資金調達額であるというふうに聞きました。そうすると、20%だと600万円プラス税金というのを支払う必要があるので、結構なコストがかかってきていて、わざわざコストをかけて株式投資型クラウドファンディングを選ぶ人というのはどういう人たちなのかという、企業側のニーズというか、それに投資している人たちはどういう人たちなのかという、参加者側の属性ということを把握するのも間接的には必要であろうと思います。利用をより伸ばすためにはどういう改善が必要か、二の足を踏んでいる投資家なり企業がいると、どういう理由から入ってこないのかとか、声を集めていただければということになります。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】
  松尾でございます。ありがとうございます。株式投資型のクラウドファンディングについて、少し細かくなりますけれども、一言申し上げたいと思います。

 1名当たりの投資額を引き上げてはどうかという提案が出ているということで、見直してもよい時期に来ているのかなというふうには考えております。ただ、その前提としまして、50万円の投資額の上限がどういう意味を持っているのかということを確認しておく必要があるように思っております。当初は1人当たりの投資額を50万円に限るというのは、5,000万円の調達であれば100名の投資家に賛同してもらわなければできない。多くの投資家がよしと言わなければ資金調達ができない。投資家が投資対象を選別していくということが考えられていたかと思います。そのために多数の投資家の賛同があることを確保するという意味があったと考えています。

 そのような考え方の前提として、投資家が投資先を選定する際に、投資家間で意見交換がなされるということもクラウドファンディングでは考えられていたはずですけれども、現在、そういうことは行われていないように見ております。それ以外の方法で、何かしら投資先の選別というのが行われているのではないのかと思います。そうであるとしますと、実態を見て、どういう方法で投資家が投資先を選んでいるのかということを見る必要があるのではないか。その結果次第で、1人当たりの投資上限が担っていた機能も違ってくるのではないかというように感じております。

 それから、株式投資型のクラウドファンディングにつきましては、セカンダリーマーケットがあったほうがいいのかどうかというのも検討課題になるかと思っております。これは投資家の側からするとあったほうがいいということになりそうですが、おそらく調達する側からすると、さらにコストがかさむということにもなりそうですので、この辺りについて、ニーズといいますか、情報を収集していただけるとありがたいです。もし現時点で何かございましたら、ぜひ御教示いただきたいと思います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。最後の点、いかがですか。

【永山市場企画管理官】
  クラウドファンディング業者のほうでも、やはりセカンダリー市場が重要だということで、例えば株主コミュニティを組成するというような動きも現在あるやに聞いております。セカンダリーのあり方について、投資家の観点からすればあったほうがいいのだと思いますが、ご指摘いただいたような調達側の観点なども今後意見を聞いていきたいと思います。ありがとうございます。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。それでは、続きまして、松本委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【松本委員】
 VISITSの松本です。よろしくお願いいたします。私たちの会社自身がスタートアップであり、今回の成長資金の供給というテーマの中の、特に非上場株式の流通市場の活性化についてコメントさせていただきたいと思います。

 各論になってしまう部分もありますけれども、私自身気になっている懸念点を含めてお話しさせていただきます。まず、非上場株式の流通市場の活性化というものは、非常によいというふうに感じております。私たちスタートアップは、ベンチャーキャピタル等の株主との間には、当然契約がございまして、株主が第三者に株式を売却したいと思ったときに、売却先を探すのを手伝うように、発行体であるスタートアップ側に条項として課していることが多いと感じております。このときに、株式の流動性が低いと、売却先を探すのに非常に時間がかかってしまって、経営者が事業に集中できる時間が大きく減ってしまうのですが、もしセカンダリーのマーケットが活性化していれば、このような機会損失を低減できるのではないかと思っております。

 特にコロナのような急激な外部環境の変化があった場合には、株式の売却ニーズばかりが市場に出てくるということがあって、流動性が厚くなることには非常にメリットがあるというふうに感じております。その中で、活性化していく中での懸念点、気になる点というのを3点ほどコメントさせていただきたいと思います。

 1つは、投資契約書との適合性です。たとえセカンダリーマーケットを作っても、今のベンチャーキャピタルとスタートアップに流通している一般的な投資契約書の条項と整合性がなかったら、結局活用されないということが起こるのではないかと思っております。今回、セカンダリーマーケットをつくる目的の1つとして、VC等の投資家だけではなくて、いわゆる経営株主にも売却の機会を与えて、無理に短期的なIPOを目指すのではなくて、長期的にビジネスを成長させて、ユニコーンを育んでいきたいというような意図も裏にはあるというふうに私は考えているのですが、しかし、現状の投資契約書には、譲渡に関して、特に経営株主について様々な制限条項が盛り込まれておりまして、セカンダリーマーケットができても、これをなかなか活用できないということも起こり得るのではないかと思っております。ですので、やはりセカンダリーマーケットができたら、それを前提とした投資契約書のひな型を世の中に流通させることと、マーケットをつくるということを表裏一体で進めていかないと、活性化しないのではないかと感じております。

 2つ目は、先ほどコメントもございましたが、やはり税制の改正があってもいいのではないかと思っております。セカンダリーマーケットをつくったとしても、すぐに流動性が増すわけではなく、徐々にだというふうに思っております。流動性が低いと、やはり何かしらの理由があってすぐに売らなければいけないという売手側は、どうしても価格交渉力が弱くて、買手に対して不当に安い値段で売らされてしまうという形というのが一般的になってしまうのですけれども、しばらくはそういった状況が続いてしまうのではないかと思います。そこでその対策として、例えば現在、新規の株式発行時には、個人ではエンジェル税制であったりとか、法人では今年の4月からオープンイノベーション促進税制などの税額控除のメリットのような税制があるのですけれども、こういった制度の対象をセカンダリーにまで広げてしまえば、買手が買いやすい状況をつくるということができて、活性化にも資するのではないかと考えております。

 3つ目が、やはりセカンダリーマーケットが活性化したときに、悪徳業者の排除が非常に重要かと思っております。セカンダリーマーケットが活性化した場合は、新たなビジネスチャンスが拡大するというところで、仲介業者が増えるということが当然予測されます。その際に注意しなければいけないのが、やはり投資家保護の仕組みの整備だと考えておりまして、特に取引価格の透明性の確保、あとは仲介できる業者の資格要件という取組が重要かなと感じております。やはり価格が不透明であれば、投資家に著しく不利な価格で取引を行われるケースというのも当然多発するということも予測されますし、そういった状況の中では、やはり一定の規模以上の取引については、取引価格等を開示させるというようなルールというのをセットでつくらなければいけないと感じております。

 また、業者の資格要件についてなのですけれども、ある程度仲介できる業者の要件を厳しくしないと、やはり悪徳業者が、例えば発行体と結託して不当に高い価格で投資家に交渉して、その裏で業者が発行体からキックバックをもらうといった不正もテクニカルにはできてしまいますので、そういった問題というものにやはり配慮しなければいけないのではないかと思っております。
そういった意味では、やはり仲介できる業者というのが、第1種、2種といった金融商品取引業者に限定するというのが適当だと考えております。一方で、仲介する証券会社側にパワーが偏り過ぎてしまいますと、昨今のIPOにおいて不当に低い発行価格が設定されるといったことと同様の問題も起こり得ると思っておりますので、やはり既存株主や発行体の利益も害さないよう、発行体と仲介会社の適切なパワーバランスを考えてルールを策定すべきというふうに思っております。

 ちょっと長くなりましたが、流通の株式の活性化というところで感じている点を申し上げました。

 あと簡単に一言だけ、海外の資金を運用する事業者の受入れについてですけれども、新たな類型を作ることに、私自身は非常に賛成をしております。ただ、1点懸念というか、配慮しなければいけない点というのは、やはり今回、法人に対する様々なメリットを用意しても、個人の所得税率が香港やシンガポールに比べて日本は高いというところは残っております。いわゆる高度金融人材をターゲットにもすると思うのですが、やはりそういった方々は所得が高いので、個人の税制メリットとセットでないと、そういった人材を抱えるファンド等を日本に誘致するというのはなかなか難しいのではないかという点を懸念しております。

 以上となります。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、福田委員、お願いいたします。

【福田委員】 
  福田でございます。事務局から非常に丁寧な御説明、あるいは多くの方々から非常に有益なお話を伺いました。私からは2つぐらいコメントをさせていただきます。

 まず、成長資金の問題、これは非常に多くの方がおっしゃったように、長年の大きな課題であると同時に、なかなか解決できていない問題だと思います。問題は、単に制度的な問題というよりは、ある意味ではニワトリが先か卵が先かみたいな問題があって、投資が少ないから実績がないだけではなくて、実績がないから投資もないという、そういう問題があります。どっちを先に解決できるかという問題は大きい問題で、現状はどっちもなかなか解決できていないということなのだろうとは思います。

 例えば、海外から成長資金を呼び込みたいということですけれども、じゃあその投資先でどれぐらい良いパフォーマンスの投資案件が国内にあるのかはやはり大きな問題です。海外の投資家もボランティアで日本に投資するわけではなくて、海外にいくらでも非常に高いパフォーマンスを上げられる投資案件があるときに、あえて日本に投資する理由が必要だと思う。私が十分知らないだけで、実はあまり投資されていないけど、こんなに高いパフォーマンスがある案件がありますよということを示すことができれば、当然呼び込むことができると思います。けれども、そういう案件がない場合に呼び込めるのかというと難しい問題です。今日の資料なんかでも、投資の規模とかの説明はなされていましたけれども、じゃあその投資案件でどれぐらい高いパフォーマンスが上げられているのか。そのパフォーマンスは海外に比べてどれぐらいのパフォーマンスなのかということの資料もあれば、それを比較して考えることができたと思います。

 ただ、今日の御説明の成長資金の中で、もう一つ違う観点の成長資金の議論もあったのかなとは私は思っていまして、これが例えば、株主コミュニティ制度とか、あるいは場合によってはクラウドファンディングのような資金というのは、必ずしもプライベート・エクイティのような高いパフォーマンスを示さなければお金が集まらないというものでもないものだろうと思います。例えば、どなたかもおっしゃっていましたように、地方創生の観点から、ローンじゃなくてエクイティで地方創生を支えるというような資金は必要で、それはものすごい高いパフォーマンスはないけれども、いろいろな形で資金を集めて、それで地方の活性化を支えていくということは重要です。地方の活性化の資金の視点というのはそれなりに大事で、それはプライベート・エクイティとかベンチャーキャピタルというのとは全く違う観点の点で、どうやったらお金が集められるかということを議論する必要があるのだろうとは思います。
それから、最後に2つ目の資料の点、非常に事務局の視点に私も賛同いたしたいと思います。けれども、海外とは何ぞやということはやはり大きな問題です。海外といってもいろいろとあるので、やはり海外というものをどのように考えるかということは大事です。大きいこととしては、日本と同じような市場のルールを持って、日本の金融監督者と基本的には同じプリンシプルを持って金融監督が行われているような国からの投資を海外からの投資と考えることが基本ではないかと思います。そうじゃないような海外というものに関しては、やはり慎重に考える必要があるのではないかとは思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】
  どうもありがとうございます。2点申し上げたいと思います。

 第1点は、成長資金の供給に関する資料1関連でございますけれども、多くの委員の方が言われましたように、私も未公開株への投資を促進するという方向で、これまでに繰り返し論じられてきたことですけれども、さらにできる工夫をすることが大事であると思います。その理由は前回申し上げましたので繰り返しませんけれども、本日の資料1の9ページや13ページで、外国では誰が出資をしているかというデータを拝見いたしますと、年金基金ですとかファンドなどの中長期的な視点から投資をすることができる機関投資家が投資者の中心になっています。そして、中長期的な視点から投資できる年金基金等は、エクイティの利益、すなわち企業価値の増大の利益を最大限享受できます。このようなアセットオーナーにどのように成長資金を出してもらうかについて考えていくことが重要であると思います。

 上場株式については、これまで例えば、スチュワードシップ・コードですとか、コーポレートガバナンス・コードなどのソフトローを利用してガバナンスを向上させていくという努力をしており、投資先企業も機関投資家もかなり意識が変わり、また行動も変わりつつあると思います。2020年のスチュワードシップ・コードの改訂ではスチュワードシップ活動の対象になるアセットクラスを拡大しており、非上場株についてもスチュワードシップ活動をすることが可能になっています。アセットオーナーが、非上場株に投資した場合にどのようなスチュワードシップ活動を行うのか関心が持たれます。また、非上場会社のガバナンスについても、必要があれば何か議論をする必要があるのではないかという印象を持ちました。

 関連して、資料1についての御質問ですけれども、15ページに公正価値ベースによる純資産価値の評価というのが日本ではほとんど行われていない、という御説明があります。このことも、アセットオーナー、とりわけファンドや年金基金から非上場株に投資をしてもらいにくい理由の一つになっているとしたら、改めていくことが考えられると思います。そもそもなぜ、公正価値ベースによる純資産価値評価がなかなか日本では行われていないのかということが、もしお分かりでしたら、御教示いただければと思います。

 第2に、資料2についても1点申し上げたいと思いますけれども、資料2の3ページの一番下の白丸の部分でございます。日本国内についても、一定の出資比率の範囲内で出資を認めることにしてはどうかという御提案がございまして、議論の出発点というのは、海外の投資家による出資を前提にしているのですけれども、私は確かに議論の出発点はそうであるけれども、国内の投資家についても出資を許容することが望ましいのではないかと考えております。その理由は、海外のお金を呼び水にして、国内の投資を喚起するとともに、こういった分野における投資経験を蓄積していくという意味でも、国内の投資家の資金を認めるということは、十分に考えるに値すると思います。

 ただ1点、その点に関連して、この一番下の白丸ですと、非適格機関投資家であっても、一定の者に対しては投資を認めるという前提で括弧書きが付されているものと思いますけれども、非適格機関投資家に投資を認める場合には、非上場会社の情報開示等が不十分であるということを踏まえて、何らかの質問権というか、情報請求権が認められると、さらに望ましいのではないかと思います。

 資料1と資料2について、1点ずつ御発言させていただきました。どうもありがとうございました。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。資料1のほうは御質問があったかと思いますけれども、永山さん、いかがでしょうか。

【永山市場企画管理官】
 御指摘いただいた点につきまして、私たちも今、調べているところですけれども、今時点で少し聞いている話といたしましては、基本的にVC・PEファンドの時価会計に関しては、15ページの2つ目の黒丸にあるように、経済産業省のほうで公表している投資事業有限責任組合モデル契約の投資資産時価評価準則に則った方法でなされておりまして、基本的には時価評価ということにはなっているようです。ただ、その際に、いわゆる国際的な公正価値ベースで評価しているかという意味では、PEに関しては、比較的規模も大きくて、リソース、人材もそろっているということなのか、公正価値評価が大分浸透しているようですが、一方で、VCのほうでは採用がほとんどなく、いわゆる簡便法として、減損評価だけするような保守的な対応がなされていると聞いております。そこの理由についてはもう少し調査する必要がありますが、VC自体のリソースの問題もあれば、投資先企業がまだ立ち上げ時期なので、評価するために必要な事業会社としてのパフォーマンスのデータがないという点も指摘されておりまして、そういう評価対象としての難しさというところもあるのかなと認識しております。

 こうした点に対しての対応策ですけれども、この調査報告書自体もベンチャーキャピタル協会から2017年に出ておりまして、ベンチャーキャピタル協会としても、日本のVCのパフォーマンスベンチマークを出していこうということで、全てのファンドではないですが、幾つかデータを集められるファンドについてデータを集めて公表していくという取組は、今既に始められていると認識しております。以上です。

【神田座長】
  よろしゅうございますか。

【神作委員】
  詳細に御説明いただき、ありがとうございました。承知いたしました。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。後ほどベンチャーキャピタル協会からも御発言の希望をいただいていますので、そこで必要に応じて協会のほうからも御発言いただければと思いますけれども、チャットの順番で、次に松岡委員、いらっしゃいましたらどうぞよろしくお願いいたします。

【松岡委員】
  どうもありがとうございます。松岡でございます。私のほうからは、企業という立場で、成長資金の件について、一言オブザベーションということでお話をさせていただければと思っております。

 企業は、当たり前のことですけれども、長期的な成長を目指すという使命を重要なものとして持っておりますので、上場であれ非上場であれ同じなのは、やはり資本の提供者から経営や戦略についての意見を聞いて、企業価値の成長を果たすという個々の責務を負っているわけでございます。当社でも、実はVCもやっておりますし、PEについても、特に国際的な事業をやっておりますので、構造的な面やその他の面でいろいろと見たり、接点があったり、実際に経験したりということがございますので、その辺りについて触れさせていただきたいと思います。

 1つは、海外では資金の供給者として、VC、PEというカテゴリーが完全に確立していると。その立場やパフォーマンスによる評価も確立されていて、実績の高いファンドに対しては、低金利の環境にもありますので、年金基金なども先ほどございました通り活発に参加をして、投資活動も大変活発に展開をしているというのを、私どもも目の当たりにしてきております。

 例えば、直近の海外音楽事業においての動きなどもその代表例として顕著です。実際企業がアクセスできる様々な資金のカテゴリーの中でこれらが確立しているということを見てきておりまして、負債では当然銀行融資であるとか、私募債とか、パブリックデットも低格付債を含めて懐が深いわけですね。あと、メザニンやストラクチャーものとかもあります。資本性の資金でも、先ほどIPOの話もありましたけれども、ファンド、IPO、それから他の会社、いわゆる事業性の資本と、いろんな選択肢を並べて、時間軸とともに企業が考えられるというモデル、状況になっているということだと思います。PEなどもリスク資金の担い手としてここでは議論されていますけれども、負債性の資金も供給しているところも多々あると認識しています。

 先ほど来、市場と出入りのしやすさという議論もありましたけれども、ただ、むしろ全体的には今申しました、資本や負債の提供の参加者、そして選択肢や組合せの多さというほうが、背景としては大きいのではないかと思っています。ですので、海外では例えばMAにおいても、会社からファンド、ファンドからファンド、そしてファンドから会社、会社からファンドと、こういった動きも非常に活発なのですね。例えば、会社とファンドが一緒になってジョイントで投資するなどということも大変多く見受けられていますし、ファンド自体がコンソーシアムを組むということも結構あります。

 こういったファンドの種類とか期待や要求リターンというのも様々ですけれども、リスク許容度もいろいろでございまして、先ほどの話にもありましたけれども、やはりレバレッジとキャッシュフローとリターンをどう見るかということで、結局その辺りの組合せなので、その許容度もそれぞれという懐の深さ、広さというのもあるのかなと思っています。

 私どももベンチャーキャピタルのほうもやっておりまして、おかげさまで大変国際的にも高い評価をいただいているのですけれども、よくお話に出る目利き力次第と言うのですけれども、それだけではなく、実にたくさんの数の会社を見てきており、関係作りもそうですし、産業ビジネスモデル、それから技術、経営、財務、オペレーション、様々な面での理解をするというのが大事でございますし、それに対するアドバイザリーや管理能力というのが必須であると思っています。

 従いまして、こういったビジネスリスクやファイナンシャルリスクについてのアセスメント能力というのが必須だろうと思っていますので、今申し上げましたように、企業にとって選択肢をいかに全体的に広げるかということが、VCやPEを育てるためには、実は大事であると思いますし、中長期的な視野も持ちながら、抜本的かつ包括的な総合的な取組みというのが必要になるのではないかなと思っておる次第でございます。これは企業でいろいろ見ている立場からのオブザベーションということで、一言言わせていただきました。ありがとうございます。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。これで今日御参加いただいている委員の皆様方には、全員から御発言をいただいたということになります。あとはチャットのほうで御発言希望をいただいておりますオブザーバーの方々ということになりますけれども、ベンチャーキャピタル協会の赤浦さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【赤浦オブザーバー】
  日本ベンチャーキャピタル協会の赤浦でございます。発言の機会を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。

 米国14兆円、日本4,200億円、ベンチャー企業の資金調達金額についてなんですが、2019年も依然として30倍以上の額となっております。日本経済再興のためにも、新たなイノベーションを創出するスタートアップへのリスクマネー供給は非常に重要であると考えております。

 資料1の5ページにございますように、このような連続性をぜひできればと思います。会社の創業からエンジェル投資、株式投資型クラウドファンディング、そしてベンチャーキャピタル資金という、成長資金の連続性を見て供給できればというふうに考えているのですけれども、その実現のためには課題がございます。大きく2点でございます。

 まず1点目が、個人投資家の属性確認です。個人投資家の中に反社会勢力等が存在した場合、株式公開のみならず、その後の資金調達やM&A等、スタートアップの財務活動に影響を及ぼす可能性がございます。クラウドファンディング事業者が属性を確認している場合でも、VCが独自に調査する場合は、株主数が多くなっていることが、事務処理を増やすことになりかねません。その場合、自動的にファイナンスに障害となることが予測されます。

 2点目、株主間の合意形成についてです。VCがスタートアップに出資する際、多くは株主間契約、ドラッグアロング、財産分配合意書といった契約を、創業者を含む全株主間で締結をします。特にドラッグアロング、財産分配合意書は、全株主が参加しないと、その実効性は担保されません。これらの契約は、VCがリスクを取って多額の資金を出資しやすくするものであり、特にスタートアップが株式公開ではなく、大企業等に買収される場合、M&Aを円滑に進める機能がございます。個人株主が増加した場合、このような契約を締結することの難易度が上がることが課題であると考えます。

 まとめますと、VCと株式投資型クラウドファンディングのターゲットは、すみ分けされるのではないかと考えます。次世代を代表するような成長ポテンシャルを持つスタートアップが、株式投資型クラウドファンディングをVCに先駆けて実施してしまうと、そこへの成長資金の供給が難しくなることが予測され、さきに述べた課題に対する対策をぜひ御検討いただければと考えております。

 また、先ほどございました御質問の中に、公正価値評価の点についてございましたけれども、パフォーマンスベンチマークというのを今年6月に、ベンチャーキャピタル協会のほうでは発表させていただいておりまして、24社・76ファンドが参加し、国際的に見ても高い水準のパフォーマンスであることが評価されまして、今、海外の機関投資家から、日本のベンチャーキャピタル関連の出資ということで、海外でレポートも出始めておりまして、注目を浴びるような状況になってきております。この実現に当たっては、2015年から経産省様からプロジェクトという形で受託させていただきまして、5年間にわたってずっと準備を進めてまいりました。まず2015年は、VCファンドのパフォーマンス評価に関わる調査報告書というのを提出させていただき、16年には国内VCファンドの時価評価に係る実務指針といったものを納品させていただき、まさに19年、昨年度は、機関投資家がデューデリジェンスをする際のQ&A、DDQのひな型を作らせていただくことも、経産省様と連携させていただいて実現してまいりました。

 よって、ベンチャーキャピタル業界においては、課題である機関投資家からの資金調達及び海外からの資金調達ということに向けて、着実に成果を上げてきていると思うのですが、リスクマネー供給を拡大する上で、株式投資型クラウドファンディングとの連続性をぜひ担保できるよう、課題の検討をお願いしたく思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
  どうもありがとうございました。それでは、続きまして、プライベート・エクイティ協会の木村さん、お願いいたします。

【木村オブザーバー】
  木村でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。

 今、VC協会さんからもお話がありましたけれども、我々も主たる資金調達をする投資家たちを、海外をどう展望するかということが大きな課題になってきたということでありまして、プライベート・エクイティといっても、恐らくこれ、バイアウトが関わるところが中心になっているんじゃないかと思うのですけれども、ファンドサイズ、資金調達能力が非常に低いということで書いていただいてはいるものの、実態はかなり今、私どものファンドも、会社も含め、資金調達額はかなり大きくなっております。これは恐らく国内の投資家さんのみを記載されているけれども、海外の投資家、共同投資家も含めてコ・インベストメントファンドというのを運営していますので、そういったものを含めると、これの約二、三倍ぐらいの規模というふうには今膨らんできていると考えております。

 それから、パフォーマンスの評価についても、我々としても昨年から協会として取り組んでおりまして、パフォーマンスデータを積極的に出そうと。これはバイアウトファンドはなかなか自分たちのパフォーマンスを出したがらないという、赤浦さんのところも同じかもしれないのですけれども、そういう中で、連携しようじゃないかと。とにかく日本のPEファンドは大きくならなきゃいけないよねと。大企業のカーブアウトであるとか事業承継というのもここに来て相当膨らんできつつある。そういうビジネスチャンスを取り込むために、日本の投資家については、やっぱり規模感に限界があるということもあるので、海外の投資家をいかに引き込んでいくかというのがポイントになるということなので、そういった中でパフォーマンスデータということをしっかり積極的に開示していこうよということで、そういう取組を協会の中で進めまして、協会のホームページにもパフォーマンスというのをビンテージごとに出すという試みがようやくできたということで、これはかなりの前進ということでございまして、そういう意味でも、海外の投資家を呼び込む仕掛けづくりというのは十分できてきたのかなとは思っています。

 ただ、欧米に比べて当然日本のバイアウト市場というのは歴史も浅いということですし、それから、企業が自分たちのスポンサーシップ、いわゆる議決権を人に渡すということについて、欧米と違って非常に抵抗感を感じるというところでもあるので、なかなかバイアウトというところの市場が大きくなるには相当時間がかかってきたのですが、今かなりのスピードアップということの中で、日本としてもそれなりに進化しつつあるということかと思います。

 当然投資調達先を海外というわけに、なかなか一足飛びにいかないものですから、とにかく日本の企業をターゲットにして、パフォーマンスをしっかり上げていこうよということの試みを今やっているわけです。欧米のファンドにどう近づくかというようなことはトライアル中でありますが、大分そういう中で市場も大きくなってきているんじゃないかなというふうに思っています。したがって、それなりの取組もやっているところでもありますが、あと国内の投資家をもうちょっと膨らませないかということについては、課題も多々あるということなので、未上場株式に対する税金の問題。これは機関投資家の中でもニーズがなかなか高まらないという1つの足枷になっている面もあるということなので、こういう制度設計と一緒に税制面での優遇措置を含めて、これは資金調達側もあるんですけれども、投資家側のメリットとして、いろいろな意味で税制改正を含める連携というのが当然資本市場のさらなる拡大に必要なんじゃないかと思います。

 それから、ベンチャーキャピタルとバイアウトファンド、狭義のPEファンドと言われる中間的な存在として、これは海外にありながら、日本ではまだ育成されていないグロースキャピタルというエリアがあって、これは海外では企業の成長資金の供給者であるんですが、日本ではまだ育成されていないということがあります。これはかなりの資金規模を伴う資金調達をしたいときに、企業が成長資金を取り込むためにグロースキャピタルというのが必要なわけですけれども、もうワンステップ企業成長をさせるために必要な資金、いわゆる成長資金ですね。設備投資であるとか、あるいは買収資金ということなんですけれども、これはマイノリティということで議決権というのがコントロールできない形の投資ということになりますので、そうすると上場とか、何らかのイグジットというのはきっちりした形で見えないと、なかなかグロースキャピタルが発展していかないというようなところの、また規制のいろいろな問題があるというところですので、セカンダリーのマーケットの充実であるとか、上場市場のさらなる再構築含めて、いろいろな意味で課題があるんじゃないかというふうに思っておりますので、我々としても協会として、そういったことを提言させていただきたいと思っております。

 以上であります。

【神田座長】
  ありがとうございました。オブザーバーの方々で、ほかに御発言の御希望はございませんでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。委員の皆様方で、さらに追加での御発言いかがでしょうか。

 今日、2つのテーマについて御議論をお願いしたのですけれども、1つ目の成長資金のほうは、また次回以降、引き続き御検討をお願いすることになるテーマであり、ちょっと私も一言感想を申し述べさせていただきますと、福田委員がおっしゃったように、長年の日本のテーマということになるわけなのですけれども、日本の証券市場の特徴というのでしょうか、プライマリーのところの特徴があって、投資家層というお話が一方でありますけれども、福田委員がおっしゃったように、まずそもそも成長事業をする人がやはり圧倒的に不足していて、何十分の1かとか、比較するとそういう話になるのではないかと。そして、何と言っても担い手が不足しているというのでしょうか、言葉を変えて言いますと、日本では銀行セクターが過大で過剰なので、恐らく何十倍だと思うのですけど、アメリカと比べると。その裏返しとして、エクイティのほうの担い手がやはり不足しており、したがって、ゲートキーパーも監査法人等も、ゲートキーパーも不足という言い方がちょっと適切でないかもしれませんけれども、もちろん一部例外はいずれについてもあるのですけれども、そういうことがあるように感じます。

 ですから、同じように金融審としては昔から取り組んできた、貯蓄から投資へという話と非常に似ていて、成長資金の供給というのは本当に長年の課題なのですけれども、また今回もぜひこれも先へ進めたいと思いますので、また次回以降、皆様方からより具体的な御議論をお願いできればと思います。

 それから、資料2というか、海外金融機関のほうなのですけれども、非常に貴重な御指摘をたくさんいただきましたけれども、事務局のペーパー、資料2でいう3ページと5ページに掲げさせていただいている方向につきましては、御賛同いただける意見が多く、もちろん具体的には上柳委員、有吉委員、そして佐々木委員はじめその他の委員の皆様方からも御注意とか留意点について非常に貴重な御意見をいただきましたので、それらも踏まえた上で、ただ基本的にはこの3ページと5ページに書いてある方向感で、さらに事務局のほうで詰めていただくということでいいかという感じを、私は今日皆様からの御意見をいただいて持ちました。

 ですから、資料2については、そういう形でさらに詰めていただくということにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
 ありがとうございます。それでは、そろそろお時間なのですけれども、もし全体について何か御指摘等あれば、ここでお伺いしたいと思います。いかがでございましょうか。よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、今日は少し予定の時間より早いかもしれませんけれども、この辺りとさせていただきたいと思います。本日いただきました説明や御意見等を踏まえて、さらに先へ進ませていただきます。

 次回のワーキング・グループの日程やテーマ等につきましては、後日事務局から御案内をさせていただきます。本日も、オンライン開催にもかかわらず、長時間にわたり御参加いただき、貴重な御意見を多数いただきまして厚く御礼申し上げます。それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
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