金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第4回) 議事録

  • 1.日時:

    令和2年12月1日(火)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第4回)
令和2年12月1日
 
【神田座長】
 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。本日は市場制度ワーキング・グループの第4回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会合でございますが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、本日もオンラインでの開催とさせていただき、一般傍聴はなしとさせていただきます。また、メディア関係者の方々におかれましては、金融庁内の別室にて傍聴をしていただいております。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 今回、オンラインで参加される方におかれまして、いつものことで恐縮ですが、2点注意事項を申し上げます。まず1点目、御発言されない間は音声というか、マイクをミュート設定にしていただきますようお願いいたします。2番目として、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット機能を利用していただいて、全員宛てにお名前または協会名などの組織名を御入力ください。それを私のほうで確認させていただき、御指名をさせていただきますので、そうしましたら御自身のお名前をお名乗りいただいた上で御発言いただければと存じます。

 それでは、議事に入りますが、本日は金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等の在り方をテーマに御議論いただきたいと思います。

 まず、事務局から、事務局提出資料について御説明をいただきます。続きまして、神作委員から提出いただいている資料に基づいて、諸外国の制度の内容について御説明をいただき、その後、皆様方から御意見等を頂くと、こういう流れで進めさせていただきます。

 それでは、まず事務局説明資料について、事務局からの御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【太田原市場課長】  
 それでは、資料1を御覧ください。1ページ、第2回会合における委員の主なコメントです。

 まず、外国法人顧客に係る情報授受規制については、海外における規制との同等性、外国金融機関との国際競争力等の観点から、緩和する方向での検討が望ましい、日本の規制で保護する必要性は高くなく、当該顧客が経済活動を行う国における規制に委ねることでよい、といった御意見が多く聞かれました。

 次に、国内顧客に係る情報授受規制については、国際競争力強化、顧客ニーズや顧客目線、良いプロダクトの提供といった観点からの指摘や、個人は法人の扱いとは別、上場企業・大企業と資本市場を活用できない非上場の中堅・中小企業は区別して検討する必要、といった御意見がありました。

 また、2ページでは、法人顧客については、オプトアウト方式は一般論として顧客の意思確認と円滑なビジネスの遂行の両立を可能とするバランスの取れた手法である、管理防止体制が十分に運用されていれば緩和に一定の利便性がある、金融機関と対峙できる企業は規制の見直しの余地があり手続の簡素化は必須、といった御意見、個人顧客については、現行のオプトインを維持することが妥当、事業承継時に自身の情報が共有されている状況を把握できない状態となることが適当か否かを検討する必要、といった御意見がありました。弊害防止に係る対応については、利益相反管理の強化、法人関係情報に関連する規制の必要性等の御意見がありました。

 次に、3ページ目以降、情報授受規制以外の諸規制の制度概要についてです。

 まず4ページ、外務員の二重登録の禁止についてです。金商法では、有価証券の売買等を行う場合、外務員としての登録が必要です。外務員は、同時に複数の金商業者等に所属することはできないこととされております。これは、仮に複数の金商業者等の外務員とすると、その外務員の行為が帰属する金商業者等が不明確となるためです。

 この規制に関しては、5ページにあるように、グループ内の銀行・証券会社を兼職する者でも、外務員登録に当たってその両方を所属先とすることはできないため、顧客に対して銀証連携したワンストップサービスを提供できないという指摘がある一方で、外務員には所属金商業者等の代理権が擬制されているところ、仮に二重登録を認めた場合、外務員の行為の帰属先が不明確になるおそれがあるとの指摘や、外務員と顧客の利益相反が起こり得るといった指摘もあります。

 6ページ、ホームベースルールについてです。銀行と証券会社の間では役職員の兼職が認められていますが、非公開情報を用いて業務を行う部門を兼職している役職員には、いずれか一方の管理する非共有情報にしかアクセスできない等の規制が適用されています。

 この規制に関しては、7ページにあるように、金融グループとしての最適なサービスを提供するための銀証連携ができず、顧客ニーズに応えられないほか、我が国金融機関の国際競争力の強化等に対する障害となっているとの指摘がある一方で、兼職者が双方の非公開情報にアクセスでき、当該非公開情報を用いて勧誘等を行うことができる場合には、利益相反や優越的地位の濫用が起こり得るおそれがあるとの指摘もあります。

 8ページ、発行体向けクロスマーケティング規制についてです。銀行が株式等の引受業務を行うことは禁止されています。ただし、銀行の職員が証券会社の職員と共同訪問することは認められており、さらに、株式公開等に向けたアドバイスを行うこと等は認められています。一方、銀行の職員が引受に関する具体的な条件の提示や交渉を行うことは、引受そのものに該当する可能性が高いとして認められていません。

 この規制に関しては、9ページにあるように、規制の緩和により金融グループが企業に対して総合的かつ高度な金融ソリューションを提供することが可能となる等の指摘がある一方で、規制の緩和には銀行等の優越的地位の濫用の可能性、銀行等と投資家との間の利益相反関係、証券会社の経営の独立性やリスク管理上の問題等の指摘があります。

 10ページ、主幹事引受制限についてです。証券会社が、その親子法人等が発行する有価証券の引受主幹事会社となることに関し、原則として禁止されています。

 この規制に関しては、11ページにあるように、更に緩和すべきとの指摘がある一方で、証券会社が親子法人等の発行する有価証券の引受主幹事会社になる場合、引受審査が甘くなるおそれがあるとの指摘もあります。

 12ページ、引受証券の売却制限についてです。証券会社が有価証券の引受人となった日から6か月を経過する日までの間において、親子法人等に当該有価証券を売却することが原則禁止されています。

 この規制に関しては、13ページにあるように、一般債の市場拡大・流動性向上に伴い、制度撤廃、緩和の余地があるのではないか等の指摘がある一方で、証券会社が引き受けた有価証券に募集残等が生じた際、親子法人等がそれを買い取ることが可能な場合、安易な引受を助長するおそれがある等の指摘もあります。

 次に、14ページ目以降、諸外国における顧客情報・利益相反管理に関する規律についてです。いわゆる投資銀行業務の観点から整理しています。

 まず、15ページ、アメリカについてです。アメリカにおいて、金融機関がいわゆる投資銀行業務を行う際の顧客情報管理については、1934年証券取引所法第15条(g)において、投資銀行業務を営む者に対して、重要未公開情報の不正利用防止体制の整備義務が定められています。これを踏まえ、自主規制団体の覚書において、重要未公開情報へのアクセスは、当該情報を知る必要のある従業員に限定されるべき旨が規定され、情報障壁の構築や制限リスト・監視リストの整備等が求められています。また、利益相反管理については、投資銀行業務を営む者に対して、今申し上げた1934年証券取引所法やRegulation Best Interestといった連邦法令による規律がなされています。金融機関において、上記の「情報管理規制」と「利益相反管理規制」とを踏まえ、それぞれのグループ・ポリシーとして、情報管理ルール・利益相反管理ルールを関連するものとして定めているものがあります。

 金融機関の実務等、詳細については、引き続き調査が必要と考えておりまして、各業界の方々や有識者の皆様方からも、何か有用な材料がありましたら、御協力をよろしくお願いいたします。情報管理につきましては、先ほどの自主規制団体の覚書では、整備すべき内容として、制限リストと監視リストの整備、部門間の情報授受の監視、部門間での情報授受の際の壁越えの手続等を示しています。

 また、16ページ、利益相反管理については、上記の法令の規定に基づき、投資銀行業務を営む者は利益相反管理体制を整備しています。SECの重要未公開情報の管理体制整備義務の履行状況に関する報告書から、重要未公開情報の発生源、情報授受のコントロールについての主な指摘を16ページに記載しています。

 また、FINRAの利益相反に関する報告書における主な指摘事項を17ページに記載しています。

 次に、18ページ、ドイツについてです。ドイツにおいて、投資銀行業務に関する顧客情報管理については、「市場阻害行為規則」等により、利益相反管理については「MiFIDⅡ」等により規律されています。ドイツ連邦金融監督庁、BaFinの規則におきまして、「チャイニーズウォール」の整備、「壁越え」の手続の整備、制限リスト・監視リストの整備を義務づけています。

 19ページ、イギリスについてです。イギリスにおいて、投資銀行業務に関する顧客情報管理については「市場阻害行為規則」や監督当局であるFCAの「ハンドブック」により、利益相反管理については「MiFIDⅡ」等により規律されています。FCAハンドブックでは、投資銀行を営む者に対し、顧客の最善の利益に従い、公正誠実かつ専門的に行動する義務を規定しており、またチャイニーズウォールの整備について規定しています。そして、FCAは機密情報・内部情報の管理に関する報告書を出しており、顧客情報の管理や利益相反の管理に関する指摘をしています。

 最後に、21ページ、シンガポールについてです。シンガポールにおいて、投資銀行業務に関する顧客情報管理・利益相反管理については、「証券先物取引法」やシンガポール通貨庁(MAS)の「ガイドライン」等により規律されています。

 私のほうからは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、神作先生から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【神作委員】  
 御紹介いただきました神作でございます。本日は御報告の機会を頂き、誠にありがとうございます。

 資料3のスライド3ページを御覧ください。日本は銀証分離規制を採用しており、その趣旨としては、銀行による過度のリスクテイクの防止、利益相反の防止、銀行の優越的地位に基づく影響力行使の防止、競争条件の平等性・公平性の確保などの競争政策などが挙げられております。

 スライド4ページを御覧ください。ファイアーウォール規制は、銀証分離規制の緩和に伴い、その弊害を防止するために導入されました。銀証分離規制は一貫して緩和の方向にあり、ファイアーウォール規制もまた部分的に、徐々に緩和されてきております。

 スライドの5ページと6ページに、その経緯を示しております。

 スライド7ページを御覧ください。本日はファイアーウォール規制のうち、非公開情報の授受規制に絞って御報告いたします。その理由は、非公開情報授受規制は弊害防止措置の中でも予防的、事前的な規制であり、別の規制や方法で規制目的を十分に達成できるのであれば、情報の利活用を制限する過剰規制になる可能性がある上、米国やドイツなどには存在しない規制であり、見直しの余地があると考えられるからです。

 スライドの7ページから9ページに、顧客の非公開情報の授受に関する金商法上の規制として、非公開情報及び非公開融資等情報に係る規制並びに法人関係情報についての規制を概観しています。その定義や内容については省略させていただきます。

 スライド10ページを御覧ください。金商法令による情報授受に関連するその他の規制としては、インサイダー取引規制、フェア・ディスクロージャー・ルールがございます。金商法令以外にも、個人情報保護法に基づく個人情報の保護、銀行秘密、営業秘密の守秘など、それぞれの法律の規定、契約等に基づく法的保護の目的に応じた情報管理が必要になります。

 スライド11ページを御覧ください。非公開顧客情報の授受に関する規制の実質的な根拠として、第1にインサイダー取引規制などの法令や法律上の義務違反の防止、第2に利益相反の防止、第3に優越的地位の濫用の防止が挙げられます。いずれも究極的な規制目的を実現するための予防的、事前的な規制です。

 このうち、利益相反の防止のための一定の行為義務が生じる前提となる法的根拠は何かが問題になります。第1に、金融事業者が顧客に対し民事法上負うフィデューシャリーとしての義務、日本法の下では信義則に基づく注意義務や契約関係に基づく善管注意義務、忠実義務が考えられます。第2に、金融商品取引業者等に課される監督法上の公正誠実義務や忠実義務が考えられます。後者は、具体的には、金融事業者が顧客のために証券市場、資本市場でサービスを提供する場合には、監督法上、第1に、自己の利益を顧客の利益に優先しないということだけではなく、第2に、非公開重要情報を市場では利用しない、第3に、顧客を公平に取り扱わなければならない、こういった行為規範が生じてくるものと考えられます。なお、非公開顧客情報授受規制の実質的根拠の1つである優越的地位の濫用防止については、また後ほど述べさせていただきます。

 スライドの13ページを御覧ください。海外に目を向けますと、米国においては、同一のグループであれば、基本的にグループ会社間での情報共有が可能です。ただし、個人情報については、公正信用報告法により、マーケティング目的で利用する場合には、オプトアウト方式での顧客の同意取得が求められます。なお、銀行については、顧客向けに開示を行う場合、顧客同意は不要とされています。また、医療関係情報という高度の機微情報は、グループ会社間でも共有が禁止されています。個人情報については、その内容や目的によってグラデーションのある規制が採用されています。

 スライド14ページを御覧ください。先ほど事務局からも御説明がございましたように、米国証券取引所法15条(g)項により、証券業者は、証券法の規定に違反して非公開重要情報を濫用することを防止するために、合理的に設計された方針及び手続を書面において定め、維持し、かつ実施しなければならないとされています。非公開重要情報の濫用の典型例はインサイダー取引です。しかし、それ以外にも、非公開重要情報を利用した利益相反行為も、同条同項の濫用に該当し得るとされています。

 スライド15ページを御覧ください。情報隔壁、チャイニーズウォール、最近ではインフォメーションバリアと呼ばれることが多いようですけれども、情報隔壁は、複数のサービスを提供する証券業者や、フィデューシャリー部門を抱え、証券業者と同様の問題を有している商業銀行において、実務上広く普及しています。情報隔壁は通常、プライベート部門とパブリック部門の間及びプライベート部門に属する複数の部門の間を、物理的及び機能的に分離することにより構築されます。社内的には、情報隔壁の目的と基本的なルールの概要を説明したポリシー・ステートメントを策定し、それを従業員等に周知します。それに従って取引や業務が行われているかどうかを独立したコンプライアンス部門が監視します。情報遮断に係る措置の管理、運用の責任は、コンプライアンス部門に統合されていることが実務的には多いとされます。機密情報を含むコンピューターへのアクセスは制限されますが、上級役員など、情報隔壁を越えて情報を取得する必要がある者がそれを知る仕組みが備わっていなければならないとされます。

 スライド16ページを御覧ください。利益相反に係る管理の一環として、非公開重要情報を伝達する場合には、記録にとどめ、かつ、その利用について追跡・検証する仕組みを構築することが求められています。

 次に、ドイツの状況を概観します。スライド22ページを御覧ください。

 ドイツの特徴をまとめますと、第1に、そもそもドイツではユニバーサル・バンキング制度が採用されており、銀証分離がございません。しかし、情報の伝達が全く自由であるというわけではありません。銀行秘密やインサイダー情報などの非公開重要情報の授受のコントロールがされています。

 第2に、金融グループレベルにおいて、先ほど申し上げた非公開重要情報の伝達、管理等について管理するための組織を構築するという義務が監督法上課されており、コンプライアンス体制と、そこに統合されている利益相反管理体制の下で、インサイダー情報及び利益相反に係る情報の移転・利用をコントロールしています。

 第3に、利益相反管理の在り方は、基本的に各金融機関に委ねられており、プリンシプルベースの規制がなされています。しかし、その実態は、先ほど述べた米国とかなり似ていると思われます。

 第4に、監督法上、証券業者に対しては顧客の利益擁護義務が課され、かつ、先ほど述べましたように、利益相反管理体制の整備義務が課されています。加えて、利益相反管理体制によっては対処できない利益相反が生じた場合には、顧客に対して開示しなければならないという行為義務が課されており、複層的な規制が採用されています。

 なお、ドイツ法の下では、この情報管理システムの下で情報の移転が生じる際には、不正アクセスや情報の書換えなどが生じないよう、情報自体の管理のための体制整備義務や、顧客の苦情処理体制の整備義務なども併せて法定されています。

 なお、資本市場法により規制されているインサイダー情報や、守秘義務の対象となる情報等以外の情報の利用については、監督法上は直接には取り扱われていませんけれども、専ら民事法上の規律によって、私的利益が調整されるべきであると解されているようで、民事法の規律に委ねられている部分が大きいという印象があります。

 スライド25ページを御覧ください。情報授受規制の一つである優越的地位の濫用について検討します。

 独禁法は、優越的地位の濫用を規制対象にしており、公正取引委員会の優越的地位濫用ガイドラインは、「甲が取引先である乙に対して優越的な地位にある」場合とはどのような場合かというと、「乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ないような場合」であると説明しています。

 優越的地位濫用規制は、取引相手方に不利益を与えて自らが利益を得るということに着目した規制です。したがって、先ほど述べた顧客の最善の利益を図る義務と、機能的、実質的に重なる部分がかなり多いと考えられます。

 スライド26ページを御覧ください。米国シャーマン法には、そもそも優越的地位の濫用規制はありません。もっとも米国では、金融事業者に顧客が完全に従属しているといった関係がある場合には、民事法上フィデューシャリーとして信認義務を課されることがあります。しかし、米国では、経済法上は、優越的地位の濫用というのは問題にされていないと理解しています。

 これに対し、EU法では、日本法と同様に、優越的地位濫用規制が採用されています。EUにおける優越的地位濫用規制は、自己に有利で取引相手方に不利益を及ぼすことを規制する、いわゆる搾取禁止規制であると解されています。

 EU法の下では、優越的地位濫用規制の適用には、「市場支配的な地位」が必要と解されています。これに対し、日本の公正取引委員会は、優越的地位の濫用を、「当該取引の相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で、行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあるもの」と解説しています。このように、優越的地位の濫用を間接的に競争阻害になる行為を規制するものととらえています。このように、端的に搾取を禁止するというのではなくて、あくまでの間接的に競争の阻害になる行為であると説明しています。さらに、EUと大きく異なるのは、EUでは市場濫用、優越的地位の濫用規制が適用される要件として、市場支配的な地位というのが必要とされています。これに対し、日本法の下では、「市場支配的な地位またはそれに準ずる絶対的に優越した地位にある必要はなく、取引の相手方との関係で、相対的に優越した地位であれば足りる」と解されており、市場支配的地位までは必要ないとされています。日本法の優越的地位濫用規制規定の適用範囲は、それが存在しない米国はもとより、EUと比較しても、かなり広範であるという特徴があります。

 スライド27ページを御覧ください。日本の銀行法や金商法においても、さらに重ねて優越的地位を不当に利用して一定の行為をすることを禁止しています。非公開情報授受規制において、その実質的な規制目的である優越的地位の濫用法理について、現時点の日本において、どのように考えていくべきか、検討を要する問題であると思われます。

 スライド31ページを御覧ください。米国とドイツでは、情報授受に係るルールは、証券業務に関わる行為規制や市場規制を遵守すること、顧客の最善の利益を図ることという金融事業者の行為規範に照らし、コンプライアンス機能を確保し発揮するための組織・仕組みを構築し運用しなければならないとして、主として情報隔壁を中心に、非公開重要情報の授受をコントロールしています。

 米国とドイツにおける情報授受に係るコントロールは、インサイダー取引規制等の法令を遵守する体制と、利益相反管理体制を中心に行われており、具体的には情報隔壁の設置と運用によってコントロールされています。そこでは、法人格を単位にするのではなく、グループ会社を、いわば一つの企業体と見て、機能別、部門別にコントロールしています。また、個人情報と法人情報とは異なる法規制に服しており、そのことを反映して、情報遮断、情報伝達においても異なる取扱いがされています。

 米国やドイツと比較すると、日本の情報授受規制には、第1に、非公開重要情報授受の原則禁止という事前的、予防的規制を採用していること、第2に、法人格を重視した情報授受規制であること、第3に、利益相反管理体制整備義務のエンフォースメント及び民事法上の信認義務ですとか、利益擁護義務に基づく規律づけ、あるいは監督法上のこれらの義務のエンフォースメントが、必ずしも、米国やドイツに比べて十分でないと思われる点があること、第4に、優越的地位の濫用防止という規制目的が重視されていることなどの特徴を指摘できると思われます。

 情報授受規制の見直しに際しては、これらの点について、さらに議論が深められることが期待されます。

 最後に、スライドの32ページを御覧ください。米国やドイツのようなコンプライアンス機能を発揮するための組織、仕組みの構築義務というプリンシプルベースの規制を採用する場合の一般的な問題点について申し上げます。

 第1に、ルールベース・アプローチではなく、プリンシプルベース・アプローチであるということから、その定義上、おのずから比較衡量・利益衡量を必要とします。そのため、この規範は、実質的な正当性と密接に結びつき、グッドプラクティスを生み出し得る半面、裁判規範としては適用しづらいという性質を持ちます。このことは、エンフォースメントや実効性の不足をもたらす可能性を生ぜしめます。ルールベース・アプローチに基づく規制、例えば具体的な行為、利益相反等のおそれが類型的に高いと認められる行為について禁止する等の具体的なルールベース・アプローチに基づく規制とのベストミックスが必要になると考えられます。

 第2に、そもそも利益相反管理体制やコンプライアンス体制の整備義務の法的、その実効性については、日本のみならず諸外国においても、不明な点がまだまだ少なくないと思われます。利益相反管理体制やコンプライアンス体制が実際にどのように機能しているかについて、さらなる調査を要すると思われます。

 第3に、利益相反管理体制やコンプライアンス体制を通じた非公開重要情報のコントロールという規律は、グローバルなレベルで定立された規範であり、グローバルな規範の動向に左右されざるを得ないという側面があると考えられます。

 第4に、民事法上の効果が不明であり、他方民事法上の裏づけがないと、エンフォースメントや実効性を確保できないのではないかという懸念がございます。この点、米国やドイツにおいては、民事紛争というのが起こり得る、そして実際にかなりの民事訴訟が起こっているという現実があります。利益相反等を巡って民事紛争や訴訟等が起こるということが、米国やドイツの監督法上取扱いの背景にあるということは、念頭に置いておく必要があると思われます。

 非常に雑駁とした報告でございましたけれども、私からの御報告は以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明等を踏まえて、皆様方に御議論をお願いしたいと思います。今回も、いつものように多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間の目安として、5分としていただければと思います。4分を過ぎますと、事務局から発言時間の残り時間1分である旨のチャットを、発言しておられる委員のみに送っていただきますので、発言時間の御参考にしていただければと思います。

 それでは、どなたからでも御質問、御意見をお出しいただければありがたく存じます。いかがでしょうか。森下委員、上柳委員の順で、森下委員、お願いいたします。

【森下委員】  
 神作委員から大変詳細な御報告をいただきまして、ありがとうございました。私が聞いていて感じたことは、欧米ではグループを単位として情報をコントロールするということを考えているというようなお話があったかと思います。確かに、しっかりとガバナンスの利いたグループ内で情報が管理されて、そこから不当に情報が出ていかないということであれば、守秘義務とか、そういった観点からの懸念というのはなく、専ら優越的地位の濫用、グループとして、その情報を不当に利用して優越的地位を使うとか、あるいは利益相反をするといったようなことを気にすればいいということなのかと理解したんですけれども、そうであれば、グループ内の情報を共有させつつ、実効性のある優越的地位規制ですとか利益相反コントロールということで対処できるというような一つの例なのかとお伺いしました。

 あと、もう一つは、欧米では、情報共有してはならないという入口規制ではなく、どう使うのか、どう不当な利用方法を禁止するのかという観点からの、より細かな、立ち入った議論がなされているのかなと思います。例えば、need to knowに関するルールをどうするのかですとか、情報をどのように管理すべきであるかとか、顧客の同意を具体的にどう得ていくのかとか、あるいは不服申立ての仕組みというようなお話もあったかと思いますけれども、そのように、入口で情報共有してはならないということではなくて、よりよく利用するためには、あるいは不当な利用を回避するためには、情報にどう向き合うべきなのかどうか、どう管理すべきなのか、顧客のコントロールですとか、顧客の同意というものを実質化するためにはどうしていったらいいのかといったような観点からの、より具体的な議論がなされているのかというような印象を受けました。どちらかというと、そういった方向に議論を向けていくということが、今後の方向性としては大事なのではないのかとお伺いしました。

 いろいろ言うはやすく行うは難しというようなところがあって、神作委員からも、例えばエンフォースメントをどうするのかとか、民事上の効果をどうするかとか、課題もあるというお話がありましたけれども、入口ではなくて、もう一歩入ったところでルールの在り方を考えていく方向で具体的な検討を進めたらいいのではないかなというような気がいたしました。

 あと、前半のほうで事務局から御説明をいただきました幾つかの具体的な類型に関してです。これについても、いろいろな弊害があるがために、実際にそのような措置がなされているというような御説明もありましたけれども、優越的地位の濫用ですとか利益相反の禁止という点を除いた弊害という部分について、ほかにどのような対応策があるのかを考えてみる必要があると思います。例えば、二重の外務員登録を禁止するということとの関係では、優越的地位ですとか利益相反があるというような御指摘がありましたけれども、それについては優越的地位規制ですとか利益相反規制ということで対処できるとしたならば、そのほかの弊害についてはどうか。例えば、誰が契約の主体になるかが不明確であるというような御指摘もあったと思いますけれども、例えばそういうことについては、顧客のほうに選択権を認めるとか、あるいは行為時に何らかの書面で、こういった立場で、説明をしているのかを明確にさせるとか、いろんな対処法もあると思うんですね。そういったような観点からの、ちょっと一歩踏み込んだ具体的な検討をすることによって、入口で予防的に規制をしてしまうことが過剰的な規制になっていないのかというような検討を進めなければいけない。研究者が、もうちょっと検討を進めたらいいのかもしれませんけれども、そういったような議論を進める必要があるという印象を持っております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】  
 上柳です。ありがとうございます。神作委員のお話について森下委員が言われたことの前半の内容について、私も同じような感想を持ちました。特に利益相反を防止するために情報の共有の在り方が、かなり重層的にといいますか、複雑にといいますか、いろんな規制手法なり、あるいは履行確保体制、あるいは救済体制によって確保されているというのか、コントロールされているという辺りは、大変印象深く聞きました。

 結構大変なことで、むしろ日本の現行のような入口規制のほうが簡単といいますか、逆に言うと、同意が取れれば、そのほかのことが必ずしもきちんとしていないという面があるのかとか、いろいろ思った次第です。

 もう一点、私自身の意見は、この議論の前回ということになりますけれども、第2回のときに意見書を出させていただいたとおりです。

 1つだけ付け加えたいのは、いわゆる利益相反とか優越的地位の濫用の問題だけではなくて、特に銀行が有する情報の特徴といいますか、特殊性といいますか、具体的には、その企業なり、あるいは個人の場合は家計かもしれませんけれども、収支のかなりの部分が銀行口座を通じて行われることが、今までも多いのではないかと。もちろん、ほかの決済手段とかも開発されてきていますけれども、かなりの部分があるのではないかと。

 そういう情報を基に、一方、証券部門というのはリスク性の商品なり、あるいはリスク性の資本政策というところを扱われるわけですけれども、ふだんの収支の全容を知っている人たちから、そのリスク性の商品なり仕組みを扱われるところに情報が流れるのが原則であるというようなことは、やっぱり危惧を持っているというのが実際のところではないかと思います。

 という意味で、私は現行の枠組みが基本的には優れていると思っているのですけれども、ただ、これから考えていくに当たって、特にヨーロッパの銀証間の情報の実際の、あるいは銀証部門間の情報の在り方の実際のところというのは、もう少し勉強してみたいと思いました。

 以上にします。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、有吉委員、どうぞ。

【有吉委員】  
 有吉でございます。よろしくお願いいたします。神作委員の非常に分かりやすい御説明を伺いまして、私も森下委員や上柳委員のおっしゃられているのと近しいような感想を持った次第でございます。

 特に海外の規制の中では、グループ全体に対して規制を適用するというような発想が取られている例があるという御説明だと理解いたしましたが、一方で、日本の金融規制は、グループ間の取引行為について規制をするというようなルールはあるものの、基本的には各法人単位で規制を及ぼすというのが、これまでのルールだと思います。そういったルールの体系が違う中で、海外のグループベースの規制を日本にどう参考にしていくのかということは、なかなか難しい課題と感じた次第でございます。

 また、私も神作委員の問題意識にあった、入口規制で閉じてしまうというようなことはできるだけ避けるべきであると思う一方で、弊害防止という視点は重要であって、時には入口で閉じることで弊害を防ぐということも重要なポイントになってくるのだろうと思います。特に情報授受の規制については、入口規制をある程度残しながら、オプトイン、オプトアウトの問題もあると思いますし、オプトインの場合の同意の取得のやり方を少し緩やかなものを認めるという問題もあると思いますが、そういった入口を緩めつつ、実質面の体制整備も求めるというような発想で、バランスのよいルールづくりをしていくことがあり得るのではないかと感じました。

 一方で、事務局説明資料の1の中にもございます、外務員の二重登録の禁止とか、ホームベースルールとか、こういったものは、ある意味、完全に入口を閉じてしまう規制になっており、情報授受規制の場合の同意の取得のような、対処の手段が残っていない規制になってしまっています。このような意味では、これらの規制については、より、その体制整備として情報管理、すなわち、目的外使用の禁止とか、need to knowとか、あるいは本日、神作委員の御報告の中にも出てきた情報の移転経路の把握のような考え方も含まれるのかと思いますが、そういった情報管理の体制とか、それから利益相反管理の体制とか、あと誤認防止ですね。すなわち、銀行と証券どちらの取引を行っているのかが顧客に伝わるような体制を取るとか。こういった措置が十分に図られるということを、監督面も含めて厳格に求めていくことを前提に、この外務員の二重登録の禁止とか、ホームベースルールのような一律形式的な規制は見直していくという方向もあるのではないかと感じました。

 私からは以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】  
 ありがとうございます。とても勉強になりました。

 ちょっとレベルの低い質問なのですが。経済学をやっていると、どうしても、基本的には緩和方向というのに賛成の気持ちがあるのですけれど、一方で、今回いろいろお話を伺っていて、どこが緩和するときに最も心配するべき点なのかというのが、はっきり整理できていないところがありまして。今日、神作委員がお話しくださいましたときに、31ページのまとめのお話の最後の辺りで、すごく分かりやすく説明していただいたのですけど、分かっていない点もありましたので、質問として教えていただきたいのですが。

 例えば優越的地位の濫用でいうと、これを読んだだけでも、独占禁止法とか、銀行法とか、FW規制以外のものでも規定されているというのは、法律とかに疎い私でも、すごくよく分かります。

 その他の点で、この神作委員が今日まとめてくださった中で言いますと、例えば利益相反とかそういったことで最も、これをなくしてしまったら心配されるとお考えになっている点というのがどの辺なのか。多分31ページのところ御説明されたときに、おっしゃっていたと思うのですけど、できればもう一度、神作委員に教えていただければと思いまして、よろしくお願いいたします。

【神作委員】  
 よろしいでしょうか。

【神田座長】  
 神作委員、お願いします。

【神作委員】  
 御質問ありがとうございました。有吉委員をはじめ多くの委員が御指摘されておられましたように、日本が現在、採用している情報授受の禁止というのは、非常に事前的、予防的な規制の色彩が強く、しかし、それは最終的には何を目的にしているかというと、通常3つの目的があると理解されています。第1は、最初に佐々木委員が御指摘されましたインサイダー取引規制等の法令とか、あるいは契約上負っている守秘義務などの法令や契約の遵守を確保するというコンプライアンスの観点があるかと思います。それから第2が、利益相反の防止でございます。第3が、日本の場合米国とEUに比較するとかなり特徴的だと申し上げましたけれども、優越的地位の濫用の防止という目的がございます。

 事前的、予防的な規制である情報授受規制を撤廃ないし緩和したときに、非常に懸念されるのは、法令遵守とか契約違反というのは、ある程度放っておいても、きちんとコントロールされることになると思われるのですが、利益相反というのは、利益相反の概念が非常に不確定なものであり、また、発覚が困難な性質を有しますので、利益相反の管理体制だけに任せておくと、本当に適切な利益相反の管理がなされるのかという懸念が生じると思います。

 そこで、私はさきほど、利益相反規制の背後にある法規制とか法概念というのが、存在しているのではないかという問題意識に基づいて報告をさせていただきました。ドイツやアメリカも、そのような利益相反規制の背後にある法規制や法概念に基づいて、結局のところ体制を整備することによって利益相反の管理をしているのではないかということで、米国においてはフィデューシャリー的な観念と、あと、これは御報告では申し上げませんでしたけれども、米国では看板理論というのがありまして、証券業者として行動している以上は公正・誠実に行動しなければいけないという規範がございます。フィデューシャリー・デューティーと公正誠実義務が利益相反規制の源になっていると考えられます。

 ドイツでは、証券取引法という法律の中で、証券業者の利益擁護義務を明確に規定しておりまして、ここから利益相反について具体的にどのように扱うのかについて複層的な法規制がなされています。御報告の中で申し上げましたように、プリンシプルベースを取っておりますので、やはり最終的には業者ごと、会社ごとに判断するということになりますけれども、利益相反管理体制と法令順守を包含したコンプライアンス体制を構築すべきものとされています。この体制構築義務には、先ほど述べたような一定の法的な後ろ盾があるという点が重要であって、さらに、米国やドイツの場合には、その根幹にある法規範や法的義務に違反した場合には民事訴訟が結構頻繁に起こる。そのような民事訴訟を含めていろいろな形でのエンフォースメント、実効性確保というのが働いているのではないかと思います。

 したがって、情報授受規制を緩和ないし撤廃する場合には、日本において利益相反管理体制が実際にきちんと構築され、かつ、それが実効性を持ってワークするかということが一番、心配されるところかと思います。

 情報授受規制の究極的な目的である優越的地位の濫用の防止というのは、私が調べた限り、あまり諸外国では、情報授受規制との関連では問題にしていないようです。しかし、先ほど申しましたように、EU法の下でも、本当に大きな金融機関の場合には、やっぱり問題になりますし、実は米国においては、顧客が金融機関に依存する関係にある場合には、金融機関はフィデューシャリーとされ、結局、顧客のベストインタレストを図るべきものとされます。優越的地位の濫用というのはベストインタレストを図ったことにならないと思われますので、実質的には米国でも、そのような形で、利益相反規制の中に、かなり吸収されているのではないかと、これは推測なのですけれども、考えているところでございます。

 御質問に対するお答えになっておりますでしょうか。

【佐々木委員】  
 よく分かりました。ありがとうございます。

【神作委員】  
 以上でございます。

【佐々木委員】  
 どうもありがとうございました。

【神田座長】  
 よろしゅうございますでしょうか。それでは次に、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】  
 ありがとうございます。

 まず、事務局から御説明いただいた資料のほうですけれども、様々なものを御説明いただきましたが、例えばグループ内の企業が発行する証券の引受制限と、引き受けた証券をグループ内の企業に売却することの制限ということが出てきましたけれども、前者はグループ内の証券会社が独立の証券会社ともイコールフッティングになっていないということですし、逆に後者のほうは、グループを持っているところのほうが持っていないところに比べて有利になってしまうというようなことかと思います。いろいろ方向も違うようなことが入っているので、今後検討される際には、もう少し整理していただけるとよいかと思いました。

 それから、神作委員に大変分かりやすく整理していただいたところでございますけれども、利益相反管理体制というところで、利益相反の現れ方ですとか、程度というのは、やはり各金融機関あるいは金融グループで違うので、利益相反管理体制の具体的な内容というのは、画一的に監督者が決めるというようなことは望ましくないと。それはおっしゃるとおりかと思うのですけれども、エンフォースメントの仕方のところでは、先ほどの御質問への回答のところでもおっしゃっておられましたけれども、やはり日本は事後の規制、エンフォースメントに委ねると、弱い部分もあるのかと。そうしますと、具体的には、顧客に具体的な不利益が出ていなくとも、この体制は十分ではないというように、監督・検査の時点で指摘、是正するような、そういう仕組み、ある程度は事前のところの監督的な措置も必要なのではないかと。利益相反のところ及び、先ほどおっしゃったように優越的地位の濫用も、こちらに含めて考えてもいいのかもしれませんが、利益相反のところに関しては、やはりある程度は事前に形式的に違反を捉えて是正を命じる、是正措置を講じるような体制というのも必要かと。具体的な不利益の発生を待っていては、ややエンフォースメントが弱くなってしまうのではないかというような感想を持っております。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】  
 どうもありがとうございます。まず、事務局から御説明いただきました資料についてでございます。

 情報授受規制のテーマでの話が第2回に行われて、そこで特段何か方向性が決まったわけでもないという理解でいた中で、別のアジェンダが今回出てきたことについては、驚きましたというのが偽らざるところでございます。今日のところは恐らく、こういうトピックもあるという形での問題提起というか、情報共有ということかと、理解したところではありますけれども、かなり広範なテーマにどんどん広がっていってしまうことには違和感を覚えたところでございます。

 ただ、いずれにしましても、顧客目線が必須であることは変わらないと理解しております。情報授受規制以外のところでの、さらなる緩和を話題にするのは、そういうことが求められるという声が顧客、資本市場のユーザーの側から本当に上がっているのでしょうか。これも改めて、きちんと確認をする必要があるのではないかと思います。緩和のための緩和というと業界の理屈になってしまいますので、そうではなくて、きちんと、そういう声が上がっているのかどうかというのは知りたいところでございます。

 事業法人でどのような声が上がっているのかをヒアリング等していただいているとおっしゃっていたと思いますので、果たして、そういうところで強い御指摘があるのだろうかということは少し考えたところです。

 情報授受に関する、あるいはファイアーウォール規制という言葉遣いで出てきた話というのは、最初のところの御説明では、海外顧客向けのサービスにおいて、日本の情報授受規制が課題になっているというようなご指摘だったと記憶しておりまして、そこから考えても、今日のトピックは随分、遠いアジェンダが含まれていると思いました。

 事務局の資料の後半で見せていただいた海外の弊害防止、利益相反回避策などは、丁寧に法令や米国などでの実態に関する調査報告なども挙げていただいて、大変勉強になったところですけれども、これらも主に情報授受規制のところが中心的になっているのかと思います。他方、時々、法人と個人の話が混在しているのかという気もしております。Regulation Best Interestでは個人の話も含まれてきますので、これも、どこかで私、申したかもしれないのですが、混然一体として議論するのは望ましくなくて、法人の話であることは確認したい点でございました。

 ほかの先生方の御指摘にも近い点ではあるのですが、弊害防止あるいは利益相反回避というもの、確かに米国でも実態調査などされているのですけれども、頻繁にこういう調査ができるかというと、そうでもないような気がしております。引用されている調査の、何年に行われたのかということを取りましてもそう見受けられます。声を上げられない主体が、この陰でどのぐらいいるのかといったような懸念も、やはり残るのではないかと思いました。

 神作委員の御講義、大変分かりやすくて、すごく勉強になりました。どうもありがとうございます。

 本日の神作委員のお話は、情報授受規制のところを中心にと、フェアウエーをきっちりと区切って御説明いただいたわけでございます。その点を取りましても、どの部分の規制の見直しを話しているのかというのがクリアであることが極めて重要と思いましたのと、これも重複したコメントになってしまいますけれども、海外では民事訴訟が頻繁であるといったようなことも含めて、かなり日本とは状況も異なるということを明確に意識した上で議論を進めていくのが、重要ではないかと思います。日本でも規制緩和する方向で長年やってきたわけでして、情報授受については法人のオプトアウト方式というものがあり、それがどうもうまく機能していないのであれば、そこの改善を議論するのが、まず先決ではないかというのを以前申しました。そういった議論の順番ですとか、議論の対象、そういうものを明確にした上で、きちんと議論を進めていくのが大事かと思います。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、福田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【福田委員】  
 ありがとうございます。事務局及び神作委員から非常に御丁寧な説明ありがとうございました。私のような法律の素人にも、かなり分かりやすく御説明いただいたと思いますし、非常に重要な論点を提起されているのではないかとは思います。

 基本的には事前の規制か事後的な規制かは別としても、プリンシプルとしては、ある種の規制は必要なのだということは、ある程度の共通の理解というのはあると思います。けれども、どこまで事前の意味で厳しくするかということに関しては議論が分かれるのではないかと思います。今まで出ていないかもしれない一つの大きな論点としては、こういうような問題を、過去の経緯を調べながら考えるだけではなく、もう少し未来を見詰めて考えるのがいいのではないかという視点です。未来志向の視点は、私はそれなりに大事なのではないかと思います。

 これは前回も申し上げたことですけれども、情報と金融の巡る環境は大きく変わっているという問題意識は大事で、過去にはそういうことはなかったとは思いますが、情報を使ったビジネスの在り方、金融ビジネスの在り方というものは、別にこの今回のファイアーウォール規制に限らないとは思いますけれども、かなりドラスチックに変わっています。それを、どれだけうまく利活用できるかということによって、やはり金融ビジネスの在り方は大きく変わってきている時代に入ってきているのだという問題意識は、やはり一定の重要性はあるのではないかと思います。そういう意味では、そういうことがあまり重要じゃなかった時代の規制の在り方のみを振り返るだけでは不十分で、今後のこういう問題がどうなるかを考えていくということも重要だと思います。過去にはいろんな経緯があって、その経緯は非常に大事だとは思います。けれども、やはり金融のビジネスは新しい時代に入ってきているのだと、そういう問題意識は大事ですし、そういった観点で、国際競争の観点から、日本はある意味で先手を打って、国際金融市場にどうやったらなっていけるのかという視点は、私は今回のこの検討会の中でも一つの重要な視点として入れていただきたいと思います。

 そうした観点で顧客の保護ということを考えた場合に、やはり顧客はいろいろいるということだろうとは思います。恐らくグローバル競争に無関係な個人の顧客というものに関しては、ある程度手厚い事前規制を含めた規制というのは大事なのだろうとは思いますけれども、やはりグローバルな問題に関係している顧客に関しては、グローバルスタンダードあるいは、さらにその先を見据えたルールづくりが必要で、そのような考え方を入れていくという視点は大事なのだろうとは思います。

 もちろん単純に国際比較だけでは議論はできない面はあります。例えば神作委員が3番目に優越的な地位の問題というのは日本に固有な問題だということをおっしゃいましたけれども、これは金融システムが国によって違うということからも来ているのだろうと思います。伝統的には、やはり日本は銀行中心の仕組みで、銀行の果たす役割というのは、特にアメリカなんかと比べた場合には、かなり違うわけです。そういった日本の固有の事情というのは、大分なくなってはきていますけれども、まだ残っている中での考え方というのは、それなりに大事なのだろうとは思います。けれども、そうはいっても、将来を見据えた改革という視点も、今回の議論の中には、私はぜひ入れていただきたいということを申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、原田委員、どうぞよろしくお願いします。

【原田委員】  
 ありがとうございます。1点意見を述べさせていただきます。

 本日のワーキング・グループでは銀証間の情報共有ニーズ、利便性の向上と対比する形で、利益相反ですとか優越的地位の濫用などの懸念の両方を考えている、というのが今日のテーマであろうと思っています。今日は大企業、中小企業、個人といった顧客を分けての議論というのはありませんけれども、全般としては、緩和、撤廃の方向で考えていくなら、という形で、どこを重点的に押さえるかということになっているようなのですけれども、大企業、中小企業、個人、それぞれの顧客に対して対応すべきことも一緒に考えていくべきであろうと思っています。入口の規制を緩和するという議論と同時に、対企業への対応ということであれば、既存の管理体制は、ほかの委員の方々もおっしゃっていたように再考すべきです。とくに、罰則という面でのエンフォースメントの見直しなど、これは併せて必要な措置であります。緩和はするけれども、金融機関の中の体制整備で対応するというのは心もとないというふうに思っております。

 それで、一つの方向として、刑事罰を含めた罰則が抑止力として働いていないという現状の見直しについて、これは、やはり避けては通れない一つの議論のように思っております。罪刑法定主義というのは承知しておりますし、罪刑法定主義の明確性の原則であるといったような議論はごもっともであろうとも思うのですけれども、今後、罰則、具体的にということであれば、罰金の見直しなど、このワーキング・グループの議論の範囲を超えてしまうのかもしれませんけれども、ここで議論して、次の場で議論していっていただきたいと意見を述べさせていただきます。

 監督官庁による行政処分など、今日もいろいろ御説明いただきましたけれども、金融機関に対する実質的な抑止力という面ではほかの国の制度にも、それほど劣っていないという面はあると思ってはおります。ですが、罰金という面では劣後しています。

 この罰則について議論するという場合には、ほかの委員の方々もおっしゃっておられますし、どこかにも書いてあったかと思うのですけれども、金商法ですとか、銀行法以外の法令の範囲、これ以外のところが関係してくるということから容易ではないということも分かってはおります。ですが、経済学的観点からも、こういう視点からも抑止力あるエンフォースメントが必要なのですということを述べさせてください。

 一見関係のない話のように聞こえるかもしれませんけれども、実質実効為替レートというものがございます。これは何かといいますと、日本と貿易相手国のインフレ率の負担を調整した後の円の価値ということになります。今どういうレベルにあるかというと、70年代と同じレベルです。つまり、外国から日本に来た人が日本で買い物をすると、50年前ぐらいの水準で物が買えてしまう、サービスが受けられてしまう、ということになります。もちろん70年代から90年代にかけては実質実効為替レートでみた円の価値は大きく上がりましたし、円高も皆さんの御記憶にあるところでありますが、その後の20年間で、全て失われてしまっています。

 何が言いたいかといいますと、日本のデフレに原因があるのですけれども、外国の人にとって日本のものは70年代と同じくらい安いということは、罰金などが痛くもかゆくもないということであります。法人に対する罰金は1,000万円などが多いかと思いますし、アメリカですと、1,000億ドルということも珍しくありません。万円と億ドルの違いはかなり大きいのですけれども、そこまでいかなくても、日本でゼロが1つ、2つ、増えてもいいのではないかと思います。

 デフレの弊害はいろいろありますけれども、抑止力という面での罰金もそうであります。国際金融ハブとして国際金融都市の確立を目指すということであれば、入口だけ間口を広げるのではなく、エンフォースメントの体制も、国際金融ハブの威厳というものを備えていくべきであると思いますので、そこの面の議論も、どこかで始めていただければと、そういう漠然とした意見になります。

 以上になります。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】  
 先ほど神作委員の御説明は非常に勉強になりました。ありがとうございました。

 私としては、いわゆる今回の法人顧客情報の授受については、基本的には規制緩和の方向に賛成の考えを持っています。先ほどの福田委員のお話とも少し重なるところがあるのですが、やはり私自身は、すごく未来志向で物を考えておりまして、過去の経緯よりも、まさに、これからの日本は経済がどうなるかということであったり、テクノロジーによって、金融という分野がどう変わっていくのかというところを踏まえて考えていかないと、常に今考えて決めたことが後手後手に、いわゆる実態の最前線のところと常に合っていないといったことが起こるのではないかと思っています。

 特に今後、金融の分野においてもデジタル化がさらに進んでいくと考えられます。そういった状況の中では、既存の商品の提案、仲介、媒介といったサービスというのは、どんどんコモディティー化していき、それに伴って収益、マージンも低下していくと考えられます。

 直近で言いますと、インターネット証券で手数料無料化の波が既に起こっていることを考えれば、どんどんマージンがコモディティー化していって減っていくというのは明らかな流れなのではないかと思っております。

 そんな中で、既存の金融機関が中長期的に顧客に価値を提供し生き残っていく、社員であったりステークホルダーのためにもちゃんと生き残っていくためには、顧客の課題起点で更に価値ある提案ができるということが重要になるのではないかと思っております。

 そういった意味では、銀証一体となった総合提案ができるとなるということは、提案の幅が広がる、武器が増えるという意味で、将来的には、銀行、証券の双方にとってメリットがあるのではないかと考えております。

 また、より重要なのは、今回のトピックであるこういった規制を緩和したときに、どのように、活動を監視・監督していくのかだと思うのですけれども、そちらにつきましては当然、銀証の中の内部管理体制を強化するということが1点。あと1点は、先ほどもありましたが、やはり罰則規定を強化するという両面でやっていくということだとは思うのですけれども、こちらについても、デジタルの技術の進歩というところも考慮に入れながら考えていくべきだと考えております。

 すなわち、違反行為をやってはいけないというルールベースというのは、もちろん大切なのですけれども、やはり、それに加えて、違反行為ができない仕組みをシステム上設計して構築してしまうという、いわゆるアーキテクチャーベースの考え方というのを、この時代に合わせて、より強化していくべきではないかと思いますし、そのシステムの仕組み自体に対して、適切に構築・運用されているか、そういったことを監視・監督するという考え方も重要になってくるのではないかと考えます。

 もし、このような運用上のシステムの仕組み、アーキテクチャーというのが本当に適切に構築されるのであれば、入口規制というものの必要性はどんどん薄まってくるのではないかと考えております。

 私からは以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、井口委員、どうぞ。

【井口委員】  
 ありがとうございます。井口です。事務局の御説明、神作委員の大変分かりやすい御解説、どうもありがとうございました。

 事務局資料の前半部分についてはかなり議論が出ましたので、残りの後半部分について、投資家の観点からコメントをさせていただければと思います。

 最初は、10ページに載っております主幹事引受制限というところになります。こちらのほうですが、投資家から見ますと、引受審査において非常に利益相反の懸念が高い事象であると思っておりまして、プロセスの透明性確保というのが重要と考えております。

 現状でも、資料にも記載されていますように、一律の禁止ではなく、各種の引受を可能とする条件が既に設定されていることに加えて、近年、市場の活性化に伴って、MBOやファンド買収による非上場化、そして、再上場などのケースも多く見られるようになっていることを考えますと、資本市場の公正な価格形成確保の観点から、引受プロセスの透明性確保に向けた現在の施策の重要性というのは変わらないと考えております。従って、一段の緩和については、非常に慎重な議論が必要になると思っております。

 続きまして、12ページの引受証券の売却制限のところです。こちらのほうも同様に考えております。

 この場合も、資料にも記載していただいておりますように、一律に禁止されているというわけではなくて、ブックビルディングなど透明性を確保すれば売却可能ということで、このような透明性の確保の維持というのは重要と考えております。特に課題となるのは、株式売買と異なり、相対取引が中心となる社債売買等と考えております。次の13ページの資料のほうに、POT方式により透明性が増したということを書いていらっしゃいましたが、現状、POT方式が適用されているといるのは、ハイブリッド債やESG債のように非常に人気のある債券発行など、一部導入されているだけで、社債マーケット全体の透明性が大きく向上したというようには考えておりません。2021年から、社債発行市場において、透明性確保に向けた施策が導入されるとは認識しておりますが、こういった施策の効果を踏まえた上で、こういった議論を慎重に行っていくのがよいと思っておりまして、現状では時期尚早ではないかと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。そういたしますと、委員の方で、まだ今日、御発言いただいていない方は、あと武田委員と松岡委員になるのでございますが、もし御意見があれば承りたいと思います。武田委員、どうぞ。

【武田委員】  
 どうもありがとうございます。本日は、事務局及び神作委員より大変詳細な御報告、御説明をいただきまして、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。

 基本的には、よりよい方向に改革していく、前に進んでいくことについては賛成でございますけれども、よりよい方向という観点では、押さえておくべき点が幾つかあると考えます。

 第1に、何人かの委員からご指摘がございましたけれども、顧客に価値を提供し、顧客の課題を解決して、顧客のメリットにつながることは何かという点。

 第2に、生産性の低さや、高齢化による事業継承問題といった日本の社会課題が、議論している改革を進めることによって解決できるようになるのか。

 第3に、未来を見据えると、異業種による金融への参入や、グローバルでの競争がますます激化することが予想される中で、この改革の方向性がグローバルにも通用する原動力につながるのかどうか。

 この3つの観点を、基本的に押さえて検討を進めるべきと考えております。

 その観点から3点、意見と確認をさせていただければと思います。

 1点目は、顧客情報管理です。まず海外との競争環境の確保は、これは先ほど申し上げた第3の観点から進めるべきと考えます。

 2点目は、顧客側のニーズについてです。顧客側から、どのような情報サービスに対してニーズがあるのか。今足りていないこととして、どんなことがあるのか。あるいは、顧客の懸念はどういったところにあるのか。これらの点について、ヒアリングされたり、既存調査などがございましたら、ぜひ御紹介いただければと思います。

 3点目は、本日、神作委員に、とても丁寧に御説明いただいた利益相反や優越的な地位の濫用を防ぐ仕組みについてです。神作委員がおっしゃられましたルールベース・アプローチとプリンシプルベース・アプローチとのベストミックスが必要という御意見に同意いたします。同時に、海外と日本との商慣行や社会の違いは考慮すべきと考えます。

 欧米の事例を御紹介いただきましたけれども、近年変化してきたとはいえ日本のメインバンクの影響力を海外と同一と捉えていいのかどうか。海外と異なることを念頭に置いた仕組みを検討しなくてよいのかどうか、そうした点も一つ論点になろうかと思います。また、神作委員より、欧米では民事訴訟が多いという現状を御説明いただきましたけれども、日本にとって利益相反や優越的な地位の濫用を防ぐ仕組みについて、議論を深めていく必要があるのではないか。この点について、もう少し踏み込んだ議論ができればと思っております。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、松岡委員、もし御意見がございましたら、お伺いできませんでしょうか。

【松岡委員】  
 ありがとうございます。御議論をいろいろと拝聴できて、かつ、先ほど神作委員に御説明も受け、大変勉強になっております。

 先ほど来ありますとおり、私どもは顧客側でございますけれども、正直申し上げて、今あるデメリットが何であって、それがどう解消されて、その機会損失を含めて見えていない部分でのメリットをどう享受することになるのか。それらに伴って、どんなリスクがあるのか。この辺りがクリアに、同じ理解が顧客側であるかというと、恐らく、そうではないと思います。

 今、アンケート等も経団連で行っておりますけれども、恐らく、少しばらつきのある状況になる可能性もあって、その理由というのは、今申し上げたところではないかと思います。ですので、議論を進めていただく中で、そもそもどんなニーズがあって、どんなメリットを受けられるとか、デメリットを解消できるとか、その辺りがもう少し見えてくると、顧客側としてのお願いとか、スタンスが明らかになり得るかなと思っている次第でございます。

 いろいろ御議論の中で学ぶことも多々あると思いますので、その辺りは今後も期待しているところではございます。以上になります。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。これで一通り、今日御出席の皆様方から御意見を頂きました。神作委員、何かお聞きになって、さらに追加で御意見等ございますでしょうか。

【神作委員】  
 特にございません。ご指名をいただきありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございます。そうしますと、武田委員から調査があれば紹介してほしいというような御要望がありましたけど。

【太田原市場課長】  
 事務局から申し上げます。武田委員からも御指摘ありましたし、あと2ページ目にもありますように、10月のときにも、福田委員から中立的な立場でのアンケート調査が必要というような御意見もありました。したがいまして、先ほど松岡委員からお話があったように、経団連にもお願いしておりますし、事務局のほうでも個別に幾つかヒアリングを行っているところでございます。そういったものをある程度形にして、年明けになろうかと思いますが、事業法人の声というのもこの市場制度ワーキング・グループに届けていきたいと思っております。

 あと、松岡委員から、今どんなデメリットがあるのか、メリットがあるのかというようなお話がありました。これはまさに事業法人のほうで、咀嚼していただければと思いますけれども、1点申し上げますと、全く未知の話というよりは、今でも、ある程度包括的な共有についての同意を与えているところが多いと、我々が聞いている範囲でも、そういう状況になっているようですので、ある程度金融グループ内で情報共有はされている部分はあろうかと思います。したがって、今でも銀証一体となったサービスの提案というのがされている部分もあるのではないかと思いますので、そういう部分も踏まえて、事業法人側で、いろいろ御検討いただいた上で、意見を述べていただくというふうに期待をしております。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。今の点も含めて、追加で、委員の皆様方から御発言ございますでしょうか。特によろしければ、オブザーバーの方々、もし御発言等があれば、お伺いしたいと思います。日本証券業協会、荻野さん、どうぞ。

【荻野オブザーバー】  
 荻野でございます。それでは、意見を1点、述べさせていただきたいと思います。

 まず、本日、神作委員の詳細な説明で、情報授受規制に関しても、かなり深い議論が必要だということが皆さんにも伝わったのではないかと思っております。その中で、本日、事務局のほうから出ていた資料の中に、10月26日に全国銀行協会さんのほうから出された幾つかの項目が記載されておりますが、情報授受規制についても、かなり深い議論が必要だと思っておりますので、このように色々な項目に広がっていくと、かなり議論が拡散していってしまうのではないかという不安を感じております。その辺りのところは、きちんと整理をして、今後議論していっていただきたいと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方々で御発言はございませんでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。

 それでは、今日も委員の皆様方には大変活発に、また難しいテーマで議論しにくいテーマではあるかとは思うのですけれども、有益な御意見を多数頂きまして、どうもありがとうございました。本日頂きました御説明や御意見等を踏まえて、さらに今後、具体的な検討を行ってまいりますので、先ほど太田原市場課長からございましたように、今後アンケート調査とか、そういったことについても御報告できるように工夫をさせていただきたいと思います。

 ここで今後の市場制度ワーキング・グループの運営について少し御説明をしていただきたい点がございます。詳細について、事務局から御説明をお願いいたします。

【太田原市場課長】  
 それでは、資料2「金融商品取引業者等の最良執行方針等について」という資料を御覧ください。

 背景ですが、我が国では、1998年に取引所集中義務の撤廃と併せてPTS(私設取引システム)運営業務が導入され、上場株式を取り扱うPTSが解禁されました。2005年に、市場間競争を促進するために取引所取引の原則が見直された際、投資家保護の観点から、金融商品取引業者等は、最良執行方針等を定め、これに従い注文を執行しなければならない等の義務が導入されました。

 その際、当時の市場インフラ等を踏まえ、最良の取引条件であるかは、価格のみならず、コスト、スピード、執行可能性など様々な要素を総合的に勘案して決定されることとされました。これを受け、多くの金融商品取引業者等の最良執行方針等には、流動性、約定可能性、取引のスピード等を考慮して、原則として金融商品取引所市場に注文を取り次ぐものと記載されており、取引所取引の原則を撤廃した目的である市場間競争の促進が阻害されている、との指摘がございます。

 一方、複数の市場から最良価格を提示している市場を検索し注文を執行するSmart Order Routing(SOR)というシステムが普及しつつあり、こうした新たな技術の下、注文執行における投資家保護と透明性確保の重要性が高まってきております。

 こうした状況を踏まえ、最良執行方針等に関する規制の点検・検討についてどう考えるか等が検討課題とされています。本検討課題は、専門性・個別性が特に高いことから、座長とも相談させていただいているところでございますけれども、当ワーキング・グループの下に別の会議体を設けて議論することを考えているところでございます。

 私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。今、事務局から御説明いただきましたように、このワーキング・グループの下に別の会議体を設けさせていただきまして、そこで、今御説明いただきました取引所、PTSに対する注文執行における、いわゆる最良執行方針というものの内容の見直し等に関する検討をしていただいてはどうかということでございます。

 そしてまた、その会議体のメンバーにつきましては、大変恐縮でございますけれども、私のほうに御一任をいただければありがたいと存じます。ということでございますけれども、そのようにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【神田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは、その方向で進めさせていただきたいと思います。

 皆様方から、このことについて、さらに、御発言とか御質問があれば、今日は若干時間的余裕がありますので、承りますけれども、委員の皆様方いかがでしょうか。それでは、いずれにしましても、別途の会議体で御検討いただき、その結果を皆様方にも、またお伝えさせていただきたいと存じます。

 それでは、事務局からもう一点あるということです。油布審議官、お願いいたします。

【油布審議官】  
 審議官の油布でございます。10月1日に発生いたしました東京証券取引所のシステムトラブルを巡る件について、私から御報告させていただきます。

 このワーキング・グループのオブザーバーに日本取引所グループの方も入っておられまして、ちょうど10月12日ですけれども、第1回のワーキング・グループの会合で、JPX、東証のお立場から御説明と、それからお詫びがあったということでございますが、金融庁のほうでは特段この件について申し上げてきておりませんでした。本日は、むしろ東証、JPXさんというよりも、私ども金融庁のほうから、ちょっと補足して御説明を差し上げたいと思っております。

 報道等がございますけれども、昨日、日本取引所グループと東京証券取引所に対しまして、金商法に基づく業務改善命令を発出しております。このシステムトラブルに関しまして、金融庁では、両者から報告の提出を求めまして、また別途、立入検査等を通じて、発生原因等を確認いたしました。

 今回の事案は、直接的には機器の故障、製品上の不具合が原因となって発生したものでございます。ただ、そうではございますけれども、障害が発生した機器、機械の自動切替機能の設定に不備があったりしたということ、それから売買の再開に関わるほうの東京証券取引所のルールが十分ではなかったことなどが認められたということでございまして、業務の改善を求める命令を発出したところでございます。

 再発防止策を迅速かつ確実に実行することということで、具体的な細かい点、幾つか指摘をしておりますけれども、1点だけ例示として申し上げますと、例えば東証さんのほうでは、これまでシステムの開発、維持の過程で、ネバーストップという考え方をスローガンに掲げて、信頼性の確保に向けて取組を進めてきておられます。このネバーストップというのはもちろん重要なことだと思いますけれども、その一方で、万一、支障・トラブルが発生したときのためには、レジリエンス、障害回復力、速やかに円滑に取引を再開すると、そういうレジリエンスの視点も、やはり重要なのであろうと考えられますことから、ネバーストップに加えまして、迅速かつ適切な回復策をしっかりと検討していただきたいと。そのための施策の洗い出し、対応の実施を求めるということを指示しているところでございます。

 今後、取引所グループと、それから東京証券取引所において、業務の改善計画の着実な実行を積み重ねることにより、市場の信頼性の確保に努めていかれるということを期待している次第であります。

 私からは以上です

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

 それでは、次回のこのワーキング・グループの日程及びテーマ等につきましては、後日、事務局から御案内をさせていただきます。本日はちょっと予定の時間より早いのでございますけれども、また将来、延長ということもあり得るかもしれませんので、本日は、以上をもちまして終了とさせていただきます。どうも長時間にわたり熱心に御参加いただきまして、ありがとうございました。これにて散会いたします。ありがとうございました。
 

―― 了 ――  
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