金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第9回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年5月14日(金)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第9回)
令和3年5月14日
 
【神田座長】
 皆さん、おはようございます。予定の時刻よりは若干早いかもしれませんけれども、皆様方おそろいですので始めさせていただきます。市場制度ワーキング・グループの第9回目の会合となります。皆様方には、いつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会合でございますけれども、これまでと同様と申しますか、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とさせていただき、一般傍聴はなしとさせていただきます。また、メディア関係の方々におかれましては、金融庁内の別室にて傍聴をいただいております。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。

 これまでと同じですけれども、オンラインで御参加いただいておられる方々におかれましては、2点注意事項がございます。まず1点目として、御発言されない間はマイクをミュート、オフにしていただき、ビデオも通信環境の安定性の観点から、オフにしていただければありがたく存じます。第2に、発言を御希望される際は、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てに、お名前または協会名などの組織名を御入力ください。それを確認させていただき、私のほうから御指名をさせていただきますので、そこで御自身のお名前を名乗っていただいた上で御説明いただければありがたく存じます。

 それでは、本日のテーマは、成長資金の供給の在り方に関する検討ということでございます。まず、事務局説明資料について、事務局から御説明をしていただきます。続きまして、ユニゾン・キャピタル株式会社、リアルテックホールディングス株式会社、株式会社日本再興イニシアティブ、シニフィアン株式会社、そして日本銀行から、それぞれ提出いただいている資料に基づいた御説明をいただきます。その後で皆様方から御意見等をいただきたいと思います。

 最後に、このワーキング・グループに関連する諮問事項に含まれているわけではないのではございますけれども、顧客本位の業務運営に関する事項その他の内閣府令改正事項について、事務局から御報告をいただくことを予定しております。

 それでは、成長資金の供給の在り方に関する検討をテーマといたしまして、まず事務局説明資料につきまして、事務局からの説明をお願いします。永山市場企画管理官、よろしくお願いいたします。

【永山市場企画管理官】  
 ありがとうございます。市場課の永山でございます。資料1の事務局説明資料につきまして、簡単に御説明させていただきます。

 1ページは、これまでの委員の皆様の関連の意見を御紹介させていただいております。

 2ページは、いつもの全体像の中で、今回取り上げる部分を赤枠で囲っております。主に機関投資家などからの資金をプロの運用者であるファンドを通じて非上場企業に流していくという、ここの資金の流れについて御議論いただきたいと思っております。

 3ページは、これまで事務局のほうで市場関係者の皆様にいろいろヒアリングをさせていただきましたので、そこにおける主な指摘事項を、テーマごとに、これまでの進展と課題という形で整理してみたものでございます。これまでの進展といたしましては、VC、PEともに、この10年ほどでトラック・レコードが積み上がってきて、機関投資家からも含めて資金が入るようになってきており、マーケットが大きく成長してきているということが言われております。また、スタートアップ投資に関しては、これまで小型のIPOのエグジットが多いということも言われておりましたけれども、優良企業については、レイターステージでの大規模な資金調達もできるようになってきていて、非上場のまま大きく成長することも可能な環境が少しずつ整ってきているのではないかという指摘もございました。また、PE投資に関しましても、事業承継案件を中心に利用者側のニーズが高まっていて、以前より積極的に活用されるようになってきていると言われております。他方、残る課題といたしましては、VCについては、規模が小さいところも多いということで、機関投資家の投資対象となり得るような運営体制が整っているところはまだ限定的であるということですとか、PEにも共通するところでは、ファンドにおける投資先の非上場株式の価値評価に関して、国際標準である公正価値評価が普及していないということで、主に海外の機関投資家からの資金が集めにくくなっているのではないかというような点が指摘されております。

 そのほか、VCのレベルにはまだばらつきがあるということですとか、人材面の課題というところが引き続き指摘されております。また、PEの課題に関しましては、国内のファンドについては、事業承継案件を中心とした中小型案件が中心となっているため、なかなか大型化することが難しく、大規模な案件についてはグローバルファンドが対応していること、現状のところ、日本発のグローバルファンドはまだ登場していないということが言われております。また、機関投資家に関しましては、年金基金などを中心に、単年度での決算ですとか、短期の人事ローテーションといったものとの関係で、Jカーブ効果があって収益化までに時間を要するVC、PE投資というところに取り組みにくいといった点が引き続き指摘されております。それから、右下の「エグジット・上場」としているところですけれども、中小型のIPOでエグジットを果たした場合に、その後、市場において成長資金の調達が困難となる「市場の谷」ということも指摘されておりまして、エグジット後も持続的に成長を続けるという観点から、どういうエグジットが望ましいのかについて、上場、エグジット前から戦略的に資本政策を検討していくことが重要ではないかというような指摘がございました。

 4ページは、御議論いただきたい事項として論点案を幾つかお示ししてございますけれども、この点に限らず、この後のプレゼンターの方が御指摘いただくところも含めまして、幅広く御議論いただければと思っております。

 以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、ユニゾン・キャピタル株式会社の山本修パートナーからお話をいただきたいと思います。山本参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

【山本参考人】  
 ありがとうございます。ユニゾン・キャピタルの山本でございます。本日は、お招きいただきまして、誠にありがとうございます。お手元の資料2に基づきまして、3つの視点から、我が国の未公開株式市場の20年間を振り返ってみたいと思います。

 1ページ目に、本日お伝えしたいことをまとめてございます。まず、ベンチャーキャピタル市場ですが、この20年間の最大の成果は、日本にベンチャーキャピタルエコシステムが確立したことであると思います。シードからレイターステージまで多様な投資家が参加されるようになったというのは、次世代を切り開くベンチャービジネスの育成の観点では、非常に重要な成果であると考えております。また、日本のベンチャーキャピタルをアセット・クラスとして見た場合には、投資家からはパフォーマンスのベンチマーキングが求められることになります。アセット・クラスとしてリスクに見合った超過リターンを生んでいるのかというのが重要な視点となりますが、この面でも特にこの5年間ほどの間にデータの整備が進みつつあります。これは日本のベンチャーキャピタル業界に、内外の機関投資家の資金を呼び込む重要なステップであると考えております。今後の課題を考えますと、独立系ベンチャーキャピタルの参入をさらに促していく必要があると思います。投資家から資金を調達してベンチャー投資を行う独立系ベンチャーキャピタルの存在が、日本のベンチャーキャピタルがアセット・クラスとして、さらに内外機関投資家からの認知度を高めるためには重要となりますが、独立系ベンチャーキャピタルの能力にはばらつきがあるのが現状です。また、我が国のユニコーンの数は現時点で5社であり、世界には654社存在することを考えますと、エコシステム全体でのユニコーン創出能力は次の10年に向けた課題です。ただし、現状のエコシステムにおいても、次のユニコーンを生み出す野心を持つ起業家をサポートする体制は存在していると考えております。

 次に、バイアウト市場の御報告に移ります。この20年間の最大の成果は、ファンドを活用した事業承継成功例の積み上がりにより、特に中小企業オーナー経営者の方々からは、バイアウト・ファンドが経営のパートナーとして認知していただけたということであります。20年前には日本にはバイアウト・ファンドはほとんど存在しませんでしたから、この面での社会的インパクトは大きいと考えます。また、バイアウト・ファンドは当初から独立系のファンドが参入した結果、パフォーマンスデータの蓄積も進み、日本のバイアウト市場が内外の投資家からは、超過リターンを生むアセット・クラスとして認知されたことも大きな成果です。一方で、多くの識者が御指摘されておられますが、日本のバイアウト市場は、中小型案件が主導であるという構造が変わっておらず、特に弊社も含めた国内ファンドの大型案件対応能力には課題が残っております。今般のコーポレートガバナンスコードの改定で、公開企業のガバナンスに求められる水準が高まったことで、バイアウト市場におけるガバナンスのプラクティスにもESGの観点で新たな視点が求められています。今後はバイアウト・ファンドのガバナンス・プラクティスと公開企業のガバナンス・プラクティスのシームレス化がさらに進み、人材の相互乗り入れも進展することが期待されます。

 最後に、日本の投資家動向について御報告いたします。20年前には日本には独立系のベンチャーキャピタルもバイアウト・ファンドもほとんど存在していませんでしたが、日本の先進機関投資家は、欧米の未公開株式市場への投資プログラムを開始しておられました。我々も創業直後はこれらの先進機関投資家から欧米の事情をいろいろと教えていただき、自分たちのプラクティスを構築してきた経緯があります。これらの先進機関投資家の未公開株式への投資プログラムは、20年を経て、世界基準で見ても十分なパフォーマンスを上げておられます。また、2014年以降に、GPIFやゆうちょ銀行を代表とする世界が注目する大型投資家が、ベンチャーキャピタルやバイアウト・ファンドなどの未公開株式への投資を開始され、投資運用の世界での日本のプレゼンス向上に大いに貢献されたと思います。一方で、世界の機関投資家も未公開株式への投資プログラムを過去20年間に大幅にレベルアップさせておられることから、世界の先進的なアセット・オーナーに対抗できる運用体制を持つ日本の投資家の育成は道半ばという状況です。特に、総額400兆円に上る年金基金の資産全体における未公開株式を含むオルタナティブ投資へのアセット・アロケーションは1%程度の水準にとどまっており、グローバルな先進的アセット・オーナーとの運用能力の格差は広がっている状況にございます。

 以上が御報告の骨子であります。

 未公開株式市場に関する観察とデータを御紹介させていただきます。2ページをお願いいたします。我が国のベンチャーキャピタル・エコシステムの全体像でございます。創業からビジネスのスケールアップに至るベンチャー企業の各ステージを、多様な投資家が支援するシステムが完成しています。プレ・シードやシード段階では、エンジェルと呼ばれる個人投資家によるリスクマネー供給が大きな役割を果たしております。また、従来から存在した金融機関系のベンチャーキャピタルに加えて、独立系のベンチャーキャピタルが存在感を高めておられます。近年では、レイターステージのベンチャーキャピタルとバイアウト・ファンドの活動の境界線が曖昧化しており、投資家の多様化につながっております。

 3ページをお願いいたします。ユニコーン創出能力の国際比較であります。2021年4月時点で世界に時価総額が10億ドルを超える未公開企業であるユニコーンは、654社存在しております。全体の7割は米国と中国であり、日本は5社のみです。ただし、実務家としては、現状でも5社存在すると考えております。日本のベンチャーキャピタル・エコシステムが機能している証拠だと考えます。これをさらに高めていくことが課題であることは間違いありませんが、20年前にはこのようなエコシステムが存在していなかったことを考えますと、将来には大きな希望を感じております。

 4ページをお願いいたします。アセット・クラスとしてのベンチャーキャピタルのパフォーマンス指標です。ネットIRRという年率収益率を中心として、アセット・クラスとしてのパフォーマンスが示されています。このようなデータ蓄積が進んだことは大いに評価すべきです。ただし、ベンチマークとの対比による超過収益はここでは示されていません。世界の未公開株式投資家の間では、アカデミアと共同で開発した標準的なパフォーマンス指標が存在しているので、その考え方に従って超過収益の有無を定量化していく必要があるのですが、ベンチャーキャピタル業界のパフォーマンスデータの開示は、この点では道半ばです。

 5ページをお願いいたします。ここからはバイアウト市場の観察に移ります。5ページは、国内のバイアウト市場の過去20年間の推移でございます。バイアウトの年間市場規模は、グラフのとおり増加しており、私どもは98年に創業いたしましたので、隔世の感がございます。

 6ページをお願いいたします。取引金額で50億円未満の小型案件が、日本のバイアウト市場の案件数の過半数を占めている構造は、過去20年間あまり変化がございません。

 7ページをお願いいたします。国内バイアウト・ファンドと国内投資家の投資パフォーマンスのデータです。上段が国内バイアウト・ファンドのパフォーマンスでございます。1年間、3年間、5年間、10年間のネットIRRと呼ばれる年率の収益率と、同期間のトピックスの投資収益率が比較されています。直近1年間を除いて、3年間、5年間、10年間のどの時間軸でも、国内バイアウト・ファンドの投資パフォーマンスは、同期間のトピックスの投資収益率を意味のある形で上回っていることが御理解いただけるかと思います。下段が企業年金連合会が公表されておられる彼らの未公開株式のグローバルなポートフォリオのパフォーマンスです。グローバルな上場株式のインデックスに投資した場合の収益率との比較でパフォーマンスが示されていますが、こちらは直近1年間、3年間、5年間、10年間と、どの時間軸で見ても非常に大きな超過収益を達成されておられることが御理解いただけるかと思います。

 8ページをお願いいたします。実務家とアカデミアのコラボレーションによって生まれたPublic Market Equivalent(PME)というパフォーマンス・ベンチマーク手法について述べております。米国では、未公開株式市場のパフォーマンスはアカデミアから常に超過収益を生んでいるのかという観点でモニタリングされており、それが投資プラクティス全体の底上げにつながるという好循環が存在しております。

 9ページをお願いいたします。今回の改訂コーポレートガバナンスコードと、弊グループにおいてガバナンスに関して徹底している認識の比較でございます。国内のバイアウト・ファンドは、公開企業よりも高い目線でのガバナンス・プラクティスを追求してきておりますが、今回のコーポレートガバナンスコードの改訂をきっかけとして、未公開企業においてもESG面での新たな対応が求められていると考えております。今後は、未公開企業のガバナンス人材と公開企業のガバナンス人材の相互乗り入れがさらに進むであろうと期待しています。

 10ページをお願いいたします。機関投資家の運用能力の進化をモデル化したものです。伝統的資産のみで運用するステージ0から、世界最先端の運用能力を意味するステージ4まで、機関投資家の運用能力の進化には段階があります。現在、残念ながら、日本にはステージ4の運用能力を有する機関投資家の数は極めて限定的であるという状況にございます。

 最後に、11ページをお願いいたします。我が国の年金基金の運用資産に占める未公開株式の資産総額の推計です。上段が先ほどお示しした企業年金連合会(PFA)、下段が全年金基金の推計です。総額400兆円に上る年金基金資産全体における未公開株式を含むオルタナティブ投資へのアセット・アロケーションは1%程度の水準にとどまっており、この部分が2桁のアセット・アロケーションであるということが標準的なグローバルな先進的なアセット・オーナー(年金運用者)との運用能力の格差は広がっている状況にございます。

 以上、私の報告でございます。なお、私の報告で「バイアウト」と申しておりますのが、永山市場企画管理官の報告でおっしゃっておられる「PEファンド」と言われるものでありまして、実務家の側も「PEファンド」と呼んだり、「バイアウト・ファンド」と呼んだり、混乱が生じておりますが、ここはVCとバイアウトということで、未公開株式市場が成り立っているというカテゴライズで御説明を申し上げました。

 以上で私の報告を終わらせていただきます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、リアルテックホールディングス株式会社の山家創グロースマネージャーから御説明をお願いいたします。山家参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

【山家参考人】  
 御紹介ありがとうございます。また、本日のような御説明の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私ども、2015年からリアルテックファンドといいますベンチャーキャピタルファンド、特に研究開発型ベンチャーに投資をするファンドを運営しております。本日は、こういった研究開発型ベンチャーへの投資環境や、また我々の投資先である地方のベンチャーの投資に関する問題意識等を御説明させていただければと思います。

 次のページをお願いします。私どもの簡単な御紹介ですが、私どもがリアルテックと定義しておりますのは、単純なハイテクという以上に、社会の課題をテクノロジーで解決していこうというものをリアルテック、あるいはリアルテックベンチャーというふうに定義しておりまして、ロボット、バイオ、医療機器等のこういった領域に特化した投資育成ファンドを運営してございます。

 3ページ目をお願いします。我々の母体になっておりますのがユーグレナという会社でございます。2012年に東証マザーズに上場し、2014年に東京大学発ベンチャーとしては初めての東証一部上場を果たした企業でございます。このユーグレナは、微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)と呼ばれる素材を、1つには貧困国の栄養失調という問題に対して提供する、あるいは、バイオ燃料という形で、環境問題、環境負荷に対するソリューションを提供するということで、まさに我々が定義しておりますリアルテックというものを体現してきたベンチャーでございます。

 4ページ目をお願いします。しかしながら、このユーグレナという会社は、実は未上場の時代に、なかなかベンチャーキャピタルからの資金調達に必ずしもうまくいってきたベンチャーではございません。やはり研究開発、技術に対する目利きや評価、あるいは、通常のITサービスと違って、研究開発投資や設備投資を伴うというところからも、なかなか国内のベンチャーキャピタルからは理解を得られなかった企業でございました。そんなユーグレナは、未上場時代に、スライドにあるような、例えば電通ですとか、清水建設といった大企業、事業会社と資本業務提携を行ってきたというのが1つの特徴でございます。したがいまして、私ども、2015年、一番最初に設立しましたファンドのテーマは、まさに大企業、事業会社とベンチャーとの、今でいうオープンイノベーションを通じてユーグレナの成功を再現しようということがコンセプトでございました。

 5ページ目をお願いします。結果として、私ども、約5年間で43社の国内のベンチャーに投資をしてまいりました。特に我々、シード・アーリーステージと呼ばれるような創業期のベンチャー中心に出資をしております。そして、結果として、我々、大きく気づきを得られましたのが、投資先の6割が実は東京以外に存在する地域、地方のベンチャーであったということでございます。これはもともと私どもが決して地方のベンチャーに積極的に投資をするというコンセプトがあったわけではございませんで、あくまでも日本全国、様々な技術ベンチャーを見てきた結果として、決してこの領域は東京に集中しているわけではなく、地域にも優れたシーズが眠っているということに気づくことができました。

 6ページ目をお願いします。そんな気づきもございまして、昨年から今年にかけて、特に左側にあります我々としては3号ファンド、通称「グローカルディープテックファンド」と呼んでおりますけれども、まさにローカル、地域から世界、グローバルに打って出られるような研究開発型ベンチャー、ここにフォーカスするファンドを立ち上げました。こちらの特徴は、先ほどの事業会社とのオープンイノベーションというものに加えて、ロゴにありますような池田泉州銀行や大分銀行といった地域の金融機関が組合員として御参画いただいたという点にございます。

 7ページ目をお願いします。ここで日本のベンチャーキャピタルの地域別の投資動向の振り返りでございますが、基本的に東京に集中しているというのが顕著でございます。2019年度は投資金額の実に75%が東京都のベンチャーに集中しているというのが国内の環境下です。

 8ページ目をお願いします。一方で、いわゆるアカデミア、研究機関に配分される研究費というものは、東京以外の地方に約7割が分配されています。また、我々がフォーカスするような研究開発型ベンチャーの設立数、母数としましても、東京以外の地域のほうが多いと。一方で、このベンチャーキャピタルによる成長資金というのは、先ほど申し上げたように、地域にはたった25%しか供給されていないという、ここに、先ほどの私どもの過去5年間の気づきとギャップを強く感じております。

 9ページ目をお願いします。また、こういった成長資金の供給と併せて、地域の創業期のベンチャーが何が課題かというところで言いますと、やはり経営に関するノウハウや専門知識、また、それらを周辺でサポートするような我々VCや士業の専門家も含めて、やはりこういった経営支援人材が地域には相対的に少ないというところで、我々、先ほどの3号ファンドを通じて、資金供給と併せて、こういった経営支援ノウハウ、リソースを割くことで、もっと地域の優れた技術シーズを社会実装できると考えております。

 10ページ目をお願いします。過去5年間、多くの地域のベンチャーに投資してまいりましたが、例えば我々の最初の投資案件である未来機械という会社は、まさに香川大学、地域から生まれたベンチャーです。そんな彼らは、我々から初めて外部資金を調達しまして、その後、岡山県にある小橋工業という、いわゆるものづくりのメーカーや、中国銀行といった地域の金融機関の出資や融資、提携を得ながら、メインのマーケットである中東、インドに向けて、今、事業を展開しております。すなわち、最初の技術シーズに資金とハンズオン支援をある程度できれば、こういったプレーヤーを巻き込みながらグローバルに展開し得る地域のベンチャーが存在するという一例でございます。

 11ページをお願いします。また、九州大学から生まれたKyuluxという有機ELの材料を作るベンチャーも、やはりなかなか創業期には国内のベンチャーキャピタルからの理解を得ることが難しかったというところがございますが、結果としますと、海外の大手のディスプレイメーカーがこぞって投資をし、今や累計で86億円もの調達をするベンチャーになりました。ということで、この技術シーズ、リアルテックという領域は間違いなく地域にも大きなポテンシャルが眠っているという一方で、今も国内のベンチャーキャピタルによる投資、特にこのアーリーステージによる投資というところには課題があると考えております。

 12ページ目をお願いします。そんな課題に向けて、我々、3号ファンドをつくったわけですけれども、特に今回、地域の金融機関がなぜ参画されたのか、参画いただいたのかというところで申し上げますと、大きく3点ございます。1つ目は、こういった地域の金融機関と一緒に、その地域から生まれるテックベンチャーを一緒に投資ないし育成をしていきたいということです。2点目が、そのベンチャー投資というだけに限らずに、地域の金融機関がお持ちの地域の中堅企業、いわゆるものづくりを行うようなメーカーとベンチャーとの連携、新たな価値創造を行っていきたいということです。最後の3点目が、地域の金融機関から我々ファンドに人材をお受けして、その人材育成につなげる。この3点が今回の参画の意義だと考えております。

 13ページ目をお願いします。1点目の取組といたしましては、我々、多くの地域の金融機関と、いわゆる技術シーズの発掘・育成プログラムというものを全国12か所で行っておりまして、創業期の研究シーズに対して、こういった金融機関と一緒に伴走型の支援をすることで、お互いのナレッジを深めております。

 14ページ目をお願いします。2点目といたしましては、我々ファンドの組合員であられる東京東信用金庫のネットワークを駆使して、千葉県にあります岡本ガラスと言われる中堅企業と、我々の投資先である名古屋大学発ベンチャーのU-MAPが、量産体制の構築に向けて新しい連携をつくりました。これが地域の金融機関にとっては、その地域からベンチャーを育たせるという以外に、現在お持ちの顧客ネットワークを通じて新しいビジネスをつくっていこうという取組になってございます。

 15ページ目をお願いします。3点目としましては、現在、組合員であられる池田泉州銀行から、約2年間の人材出向を受入れております。こちらの人材が、ベンチャーの支援ということのみならず、地域金融機関本体、あるいは、先ほどありましたような地域の中堅企業のハブになることで、いわゆるベンチャー投資、支援の枠を超えて、地域産業全体の活性化を担う人材に育てたいというようなことの取組を行っています。

 16ページ目をお願いします。こちらは最後のスライドになりますが、やはり地域の研究開発型ベンチャーを育てるのに必要なのは、エコシステムであるというふうに考えております。やはり今、東京に成長資金供給が偏在しているのも、まだまだ地域からの成功事例が足りないからであろうと思っています。それをつくるには、我々VCだけではなくて、金融機関、中堅企業、専門知識を持った人材が集積するエコシステムを地域に育たせる、その鍵を握る1つが人材であるということで、我々ファンドを通じた人材育成にも取り組んでいるところです。

 最後に2点ほど、我々の問題意識として考えておりますのは、こういった地域の成長資金供給に対して、地域金融機関をいかに巻き込むかというところで、やはり我々のような外部のVCをもっと地銀等で積極的に御活用いただくべきではないかと。やはり両者が持っている強みというのは異なりますので、それを発展するパートナーシップや、地域の金融機関にとってのインセンティブ設計が重要であろうと考えております。また2点目に、どうしても地域の金融機関は、その対象としていらっしゃる地域から、幾らの成長資金を呼び込むかということに視点がこだわりがちですけれども、先ほどありましたような中堅企業との新しいベンチャーの連携、事業機会というものを広義に捉えて、自分たちの地域だけに限らない広域の連携を、我々のようなVCを活用してやっていくような仕組みの設計を課題として考えて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 以上で私の説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、株式会社日本再興イニシアティブの谷山浩一郎代表取締役から御説明をお願いしたいと思います。谷山参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

【谷山参考人】  
 ありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました谷山と申します。本日は、このような貴重な機会を賜りまして、大変感謝しております。先ほどユニゾンの山本参考人から御説明があったように、「PEマーケット」と書いてあるのは「バイアウト」ということでございまして、日本のバイアウトマーケットの活性化に向けて、現状の課題と、その背景に何があるのか、そしてどういう打ち手が、今後、活性化のために有効なのかというのを、実務家の立場からお伝えさせていただきたいと思います。

 2ページ目をお願いします。簡単に私の経歴を御紹介させていただきますが、もともと日本興業銀行で銀行に入りまして、その後、8年間、興銀で働いた後、カーライルという外資ファンドの立ち上げに、立ち上げチームの一人として入って、そして2009年に革新機構の立ち上げメンバーとして加わった。20年弱、投資に実務家として携わってきております。

 3ページ目をお願いいたします。まず、日本のPEマーケットの現状について御説明させていただきたいのですが、これは左下の図のほうなのですけれども、縦の棒グラフが投資金額、下の方に案件数が書いていますけれども、2017年がバッと高く飛び出ているのは、これは東芝の半導体ですね、東芝メモリがあったから大きくなっているのですが、基本的には、そんなに大きく成長しているというよりも安定的な推移、案件数で見ても、100件にいかないということで、まだまだそういう意味では市民権を得られているとはちょっと言えない状況かと思っています。取引は、欧米のようなレバレッジが60%、70%のバイアウトが中心でして、ターゲットとリターンは20から30%のイメージ、そして、山本参考人もおっしゃっていましたけれども、事業承継案件が多いということかと思います。これをグローバルで見ると、右のグラフなのですが、GDP対比でM&A比率を見ると、日本は2%と極めて低い。アメリカとイギリスの大体5分の1。M&Aに占めるPE比率は11%。これも欧米、フランス、そういうところに比べると低い。これを掛け合わせるとGDPに対するPEの比率が出るのですが、日本の場合は0.2%ということで、やっぱりマーケットとしては、経済規模に対して、まだまだPEというものが市民権を得られていないなというのが現状かと思います。

 4ページ目をお願いいたします。プレーヤーの動向ですが、今、海外GPと日本のGPとで段々すみ分けができてきていて、日本のGPが事業承継の中小型の案件をやっていて、大型案件というのはもう海外GPの独壇場になっている。左のグラフを見ていただきたいのですけれども、取引金額、企業価値250億円以下の案件における海外GPの比率が下がって、2016年から19年度では12%になっている一方で、500億円以上の大型案件は90%が2016年から19年では海外のGPがやっているということになっています。さらに言うと、日本で1ビリオン、約1000億円以上の投資能力を持つファンドはほとんどが外資だということで、青がグローバルGP、緑のところのMBKとかBaringとかPAGというのがアジア、日本のほうは、ポラリスだとか日本産業パートナーズが頑張っていらっしゃって、ここ最近、1,500億円を超えるようなファンドを立ち上げていらっしゃいますけれども、そういう意味では、まだまだ今からだと。実は日本の中でも大型ファンドを運用したことがありまして、カーライルも2000年代中盤、アドバンテッジパートナーも2000年代中盤に作ったのですけれども、なかなか投資がうまくいかなくて、ファンド規模が縮小するということで、この産業パートナーズですとか、ポラリスが、この規模のファンドを運用して、実際にリターンが出せるかどうかというのが、今から非常に重要になってくるかと思っています。また、グローバルファンドというのは日本では存在していなくて、一部、ユニゾンもアジアのほうに展開されていますけれども、やはりマーケットも、日本のマーケットはそんなに大きくない中で、日本をベースに海外に出ていくとすると、海外で大きな投資はできないというような流れになりますので、なかなかグローバルファンドが立ち上がらない状況かと思います。

 次のページをお願いいたします。投資のほうですけれども、投資家も10年前に比べると随分進んだと思います。ただし、グローバルトップ100にはまだ入っていなくて、GPIFのPE投資比率も20年3月末で0.01%、200億円にも満たない状況なので、これも今からという段階だと思います。さらに言うと、生損保も皆さんおやりになっているのですけれども、やっぱり資産規模に対して投資の上限が、同規模の資産を持つ欧米の投資家に比べると桁が1つ違うということで、1件当たり30億から50億とか、そういう数字になってきますので、どうしても大きなファンドを運用しようとすると、その中心は海外の機関投資家のお金になってしまう。海外の機関投資家というのは世界中に投資をしていますから、日本のファンドに投資をしたのは、日本で投資をしてほしいという意味ですから、そういう意味においては、投資の内容が日本の中で投資をするということで、この構図ではグローバルファンドというのはなかなかできてこないということかというふうに考えております。

 6ページ目をお願いいたします。端的に申し上げますと、今の日本のPEマーケットというのは、LPの観点でもGPの観点でも、影響力、金額という面では、外資頼みのマーケットになっていまして、特に海外の投資家のお金を日本で運用するという形。海外の投資家のお金を運用する中において、海外の投資家が、グローバルな投資家がグローバルでやってくる枠組み、LBOです、60%から70%の融資をつけて、レバレッジをかけてバイトする、そういったものを日本の中でやっているということかと思います。これがやはりなかなか市民権を得られてきていないというのが現状だと思うのですけれども、実際問題、事業承継の中小型案件を別にすると、案件が生じる場合というのは、大体経営危機に陥った会社が、やむにやまれず一部門や子会社を売却するですとか、あとは外国人経営者ですとか、ガバナンスに対して外国人の影響力が大きくなった会社がカーブアウトするというようなケースがほとんどで、積極的にプライベートエクイティを活用するというふうにはなっていないと個人的には思っています。その原因として、色々あるとは思うのですけれども、個人的に思うのが、1つは、今のレバレッジをかけたバイアウトというのが、日本企業、投資家のニーズにやはりなかなかマッチしていないのではないかというのが1点目。さらにもう1つ申し上げますと、日本の社会というのが、やはり非常に特殊な社会というふうに私は個人的に思っていて、これを今のプライベートエクイティの親和性というところに若干ずれがあるのではないかというふうに考えております。

 7ページ目をお願いいたします。最初の現状に対するニーズへの対応の要因ということですけれども、右下の表を見ていただきたいのですけれども、日本というのは、今、人口減少、少子高齢化に直面していまして、国内市場の成長は今後あまり期待できないという状況の中にあって、企業のニーズというのが、国内でやはり儲けることができないので、海外でリターンを出さざるを得ない。さらに言うと、事業再編をして規模を拡大して、プレーヤー数を減らしてコストを下げて収益を上げる。さらに言うと、少子高齢化で事業承継等をやらなければいけない。さらに日本の企業のコンセプトは、大体希望としては、会社の売り買いをするというよりも、一緒に何かできないかというような相談が多いのではないのかと個人的には考えております。あとは、投資家のほうですけれども、投資家はリターンを上げる。投資リターンを上げるというのは当然ですけれども、それに加えて、日本の投資家の場合は、大義、何のためにこれをやるのですかというところを重視するのと、あとは欧米の投資家に比べると、やはりダウンサイドプロテクションに対する、いわゆるセンシティビティが高いというふうに考えております。これは、やはり日本の場合は人材の流動性が低くて、なかなか色々な投資家が専門家をタイムリーに雇うことができないので、やはり分からないことはなかなかリスクが取りにくいということで、ダウンサイドプロテクトしがちであるということもあるかと思います。このような状況の日本に対して、今のPEというのがレバレッジを中心としたLBOなのです。LBOというのは、御存じのとおり、60から70%融資でありますから、そういう意味では、金融機関に対してコベナンツといって、色々な約束をするわけです。そこの中で海外買収とか、いろいろな統合のような非連続的な成長というのは、全部銀行の承認が必要である。すなわち投資計画の前提になっていないということです。さらに言いますと、やはり今のPEの、大型案件などは特にそうですけれども、ノンコア事業の買取りということで、売手・買手の関係になって、彼らのコア事業を伸ばしていくような、そういうところへのアプローチというのはなかなかできていない。さらに言うと、LBOは何のために借入金を60%、70%増やして投資をするのですかというふうに申し上げると、これはリターンを高めるためです。買収資金のうちのエクイティの、自分が投資する分を減らすことによって、これによって全体の投資のリターンを上げる、すなわちハイリスクハイリターンに持っていくために、投資家のリターンを極限化するためにレバレッジを上げているわけで、この仕組みそのものが日本の投資家のニーズにはあまり適していないのではないかというふうに思っています。個人的には、LBOというのは、国内のマーケットが安定的に成長して、アメリカのように人口が3%とかで安定的に成長しているマーケットで、現状維持プラスアルファ改善の中で企業が伸びている、リターンが取れる、そういうようなマーケットに向いているものではないのか。それに対して今の日本というのは、そういう状況ではなくて、非連続的な成長が求められていますから、ここのニーズのミスマッチが起こっていると思います。

 8ページ目をお願いいたします。もう1つ、日本の社会的特徴への適応ということですけれども、今のPEというのはアメリカ発のものですけれども、基本的には会社というのは株主のものであって売買される対象という価値観に基づいています。すなわち、欧米の社会システムの中で非常に効果を発している、出しているものです。欧米の構造というのは、ご存知のとおり、横型構造。真ん中の図ですけれども、CEOは色々な会社のCEOになるし、CFOは色々な会社のCFOになるし、組合も会社ごとではなくて、例えば機械工組合とか、そういう横型の組合。日本でいうと、例えば弁護士とか医者ですとか会計士というのは横型なのですけれども、基本的に弁護士ということが大切であって、どこの事務所に所属しているのかというのはセカンダリーである。一方で、日本の場合は、それ以外の職種はほとんどが縦型構造になっていて、すなわち、変わりつつはありますけれども、終身雇用。下から入って、30年、35年勤めて定年で退職するというようなケースがほとんどであって、そこの中でいうと、縦型構造。さらに言うと、たこつぼ、小さい縦型がいっぱい乱立しているというようなのが今の日本の社会構造。これは島国ということにも起因しているのだと思うのですけれども、そういう意味において、会社は株主のもの、売買しましょうというのが、基本的にはあまりマッチングがよくない。日本にはやはり日本のカルチャーというものがあって、生活共同体という会社の意味合いが強いですし、あとは、株主第一主義というよりもバランスを取る、雇用流動性も低い、農耕的な文化が残っている。そして、何か新しいことをするときには、この農耕型のたこつぼを一緒にがっちゃんこするよりも、専門的に何かをやる組織をつくって、そこをみんなが使いながらたこつぼが成長していく、そういうやり方でやる。なので、日本の場合は、例えば農林中金のような系統業務もそうですし、言ってしまえば商社もそういう対象だと思います。

 9ページ目をお願いします。こういう状況の中で、どうすればいいのですかということで、一言で言うと、GPのイノベーションが必要ではないかと個人的には思っています。やっぱりその国に合った投資の仕方というのがあって、中国などでいうと、プライベートエクイティと言っても、レバレッジをかけるものではなくて、マイノリティ投資をストレートエクイティで行う。なので、国によって、その資金の出し方は、その国の状況に合った形にする意味においては、日本の場合は、やはり会社がそういう格好なので、ある意味、日本の特徴を持ったPEというものを作っていく必要がある。このPEの状況ですけれども、日本型PEというのが、共に歩むパートナーであって、どちらかというと、主役がファンドではなくて企業で、企業がやりたいことをファンドがサポートするというようなことかと思います。レバレッジもそんなに上げなくて、リターンももう少し低くていいから、日本企業のやりたいことをサポートする。すなわち、コンサルティングファームを企業が使ってお金を払う、銀行に金利を払うのと同じように、企業が必要なものをファンドが提供して、ファンドがリターンをもらうと、そういうような形でパートナーということのように思います。日本には、資産も企業も人材も全部いますから、今はこれがなかなかリンクしていなくて実力を発揮できていないと思いますので、これをつないでいくことが重要かと思います。

 最後のページをお願いいたします。例示になるのですけれども、例えば海外買収支援ファンドみたいなものは1つのアイデアになるかと思います。これは日本企業が海外企業を買収するのをサポートするものです。すみません。ちょっと時間をオーバーしてしまっているので、手短に御説明させていただきたいと思います。これは日本企業の海外買収をサポートするファンドというイメージですけれども、まずファンドが80%を出して日本企業が2割を出す。海外の会社を買いに行って、買いに行くときに、将来ファンドが投資した80%を日本企業が購入できる権利を持った形で買収を行う。買収当初の3から5年の統合とかそういうところはプロのファンドの人たちが海外のコンサルティングファームみたいなところと連携してやって、そこに日本企業も入ってもらって、そこで経験とかガバナンスの基本をやった上で、自分達でこれができると思えば、残りの80%を買う。買えないと思ったら、日本企業が当初出資した2割はファンドが買い戻して全部売却する。そういうような形で、日本企業の成長戦略にサポートできるようなファンドということが必要ではないのかと思います。

 すみません。ちょっとオーバーしてしまいました。以上になります。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、シニフィアン株式会社の村上誠典共同代表から御説明をお願いいたします。村上参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

【村上参考人】  
 御紹介にあずかりましたシニフィアン株式会社の村上と申します。本日、PEとVCがテーマですが、この間のグロース・キャピタル、また成長産業について話したいと思います。

 1ページをおめくりいただければと思います。このたびは貴重な機会を授かりましてありがとうございます。私は、宇宙開発、ゴールドマン・サックス、現在のシニフィアンの経験を通じて、4つのポイントをハイライトしたいと思います。テクノロジー業界に20年コミットしてきたこと、経営、ファイナンス、技術開発という3つの視点の経験をしてきたこと、ゴールドマンを通じてグローバル、日本と海外という複眼的な視点、加えてPE投資、スタートアップ投資、M&Aといったものを経験してまいりまして、それらの観点からお話しできればと思います。2017年に創業したシニフィアンは、投資と成長企業の経営アドバイザリーを、上場と未上場をまたがって行っています。現在、当社基幹ファンドであるTHE FUNDは、国内初の独立系のグロース・キャピタルです。クロスオーバーの経営エンゲージメントといった特徴を持っています。弊社は非常にユニークなプレーヤーだと自負しております。本日はPEとVC以外にグロース・キャピタルというカテゴリーもあるということをぜひ覚えていただければと思っています。

 3ページまで進んでください。皆さん御存じのところも多いかと思いますが、成長産業、成長資金の議論というのは、この数年、急速に状況の改善が進んでいます。金額はもう、この10年弱で七、八倍に増加しています。グローバルトレンドと完全に重なっていますが、トレンドは小さく広くというフェーズから、大型化、一部企業への集中投資に変化してきています。

 4ページに進んでください。特にシリーズB/C以降の割合が日本でも増えております。ただ、引き続き日本は上場が早く、実質的にマザーズ市場がシリーズB/C/Dあたりを代替しているとも考えられます。ですので、規模的な面で、今後、グローバルにキャッチアップしていくには、グローバルと全く同じトレンドを辿る、つまり、さらに金額規模が拡大していく中で、シリーズD以降といった大型投資の拡充に加えて、大きなM&A、セカンダリー市場の拡大を伴わない限りは、これ以上の規模拡大は難しくなってくる可能性があると思います。つまり、裾野を広げることだけが解にはならないということです。

 5ページにお願いいたします。エグジットの多様性と規模拡大は、スタートアップエコシステムの発展の一つの鍵です。まず、件数の観点でいくと、上場市場のキャパシティも限界がありますので、M&Aのエグジット側に、より伸び代がある状況かと思っています。海外は、件数ベースでM&Aがエグジットのメイン手段になっていますし、起業家も、創業時からこれはグーグルに売却することを想定しているといった考え方が多く浸透しています。結果的に海外はM&Aが9対1、日本は1対9ぐらい差があるというような状況かと思っています。

 6ページに進んでください。先に件数の話をしましたが、実際は件数よりも1件当たりの金額の大型化のほうが、エコシステムにインパクトがあると考えております。IPOについては、この数年、メルカリ以降、かなり大型化のものが増えてきています。IPO後も継続成長を狙っているスタートアップの質は明らかに向上してきていると思います。一方で、M&Aは、件数もさることながら、規模が非常に小粒にとどまっております。グローバル市場では、数千億円のM&Aエグジットが存在している状況と比較すると、大きな差が現状あると思います。

 7ページに進んでください。よく資金提供の話で、上場か未上場かという2つの分類に分けて議論が行われています。しかし、エコシステムも進化している中、今はもう少しフェーズも細かく分解して課題を見ていく必要があるかと思います。我々シニフィアンはこれを分解し、特にレイトステージ、またポストIPOと4つに分けて最低見ることで課題がより明確になると考えております。かつ、投資家はフェーズによって異なる一方で、事業の成長は連続的であるわけですので、これら、特にIPO前後を連続的に見ていくことがIPOゴールや「第二の死の谷」を回避するために非常に重要な視点だと考えています。この点もこの数年で大きく変化が起きております。長らくスタートアップ投資はVC、上場株投資は上場機関投資家という形でしたが、レイトステージとポストIPOのフェーズにおける投資家の多様性が増大してきています。これはこの一、二年で急速に進化してきています。幾つか紹介しますと、まず、既存のアーリーVCによるフォローオンファンドの設立が起きています。初期のVCが出来る限り連続的に支援していくという思想です。レイトステージにいくと経営支援のポイントも変わってきますし、求められるエクイティ・リスクも異なってきます。そこにPEファンドや我々のようなグロース・キャピタル、加えて上場機関投資家が、レイトステージに少額でpre-IPOで投資をするといった投資家の多様性と資金提供の規模の拡大が急速に起きています。私が知っている会社でも、上場前に何十社、何百社という海外機関投資家に会っている会社もかなりの数になってきています。IPOに向けた資本政策にまつわるノウハウが起業家間のエコシステム内で急速に共有されています。ただ海外機関投資家からの調達については、投資家の選定や、英語でのデューデリジェンス対応など、企業側に課題が残っているのも実態です。結果、実際に対話したり投資検討をしているケースの数からすると、投資実行まで至るケースはごく一部にとどまっていると思います。PEファンド、我々のようなグロース・キャピタルを含めた新しい投資家のレイトステージからの参画により、資本政策や投資家の多様性は高まっており、企業の選択肢が増えていることは非常に望ましいことだと思います。あと、Sequoiaなどもやっていますけれども、もうマルチファンド化しながらクロスオーバー投資を始めています。これはSequoiaに限りません。海外投資家、グローバルトレンドになっていますが、上場前後で投資の連続性を切るのではなく、いい会社を連続的に保有したほうがリターンが高いという過去の経験則に基づいたコンセプトです。上場前後をまたがるクロスオーバー投資もまた大きなトレンドです。一方で、課題は、アセット・オーナー側の中で、やはり上場の投資リスクと未上場の投資リスクの違いという壁が大きくて、アセット・オーナー(LP)側においてアセット・クラスの分断が生じているという課題は引き続き残っているように感じています。

 次のページをよろしくお願いします。もう1つ大きく改善した点です。直近のマザーズ上場企業の時価総額のトップの企業の状況ですけれども、明らかに大規模化、数千億円に達するような上場企業が増えています。IPOマーケットにおける企業の質の向上が確認できるかと思います。ただ、まだSaaS、EC、FinTech、通信IT機器といった領域に偏りがありますが、大きな進展だと思っています。資金調達に関しては、上場のメリットが享受できるようになって来ています。以前は上場は初期投資家のエグジットの機能しか果たしていない状況に近いのが実態でしたが、近年、一気に上場後の資金調達の事例が増えています。特に2020年以降、ABBと言われる海外機関投資家へのブックビルディングを通じた大型オファリングの事例が増えており、むしろこのリストにあるような上位の会社にとっては、上場後、資金調達をしない会社が珍しくなってきています。これは、二、三年前とは状況は大きく異なります。

 9ページをお願いします。よくあるGAFAMとの比較です。裾野の拡大も大事ですけれども、巨大な成功は全体のエコシステムの拡大を引っ張るという事実が1つあげられます。企業の成長には継続的に先行投資が必要ですが、マザーズの上場企業を見ると、なかなか投資額を十分に確保できていない事例も見られます。早すぎるIPOにより投資余力が十分ではなく、上場後の成長の鈍化につながっている可能性は課題の1つです。

 10ページをお願いします。これは米国の代表的な10社を選定した分析です。上場後に大きく価値創出をしています。この10社の上場後の価値創出の合計だけで1000兆円ぐらいです。上場後にいかに継続的に成長させることができるかが、実は国力であるとかエコシステムの拡大にとって最大の鍵だと思っています。IRRも30%を超えています。継続的な成長は、ウォーレン・バフェットが言うところの複利の力が働くわけなので、上場後も持続的に成長できるかが極めて重要です。したがって、IPOの件数を追い求めるのではなく上場直後の時価総額で一喜一憂するのではなく上場後も持続的に成長できるのか、そういう状況で企業が上場しているのかが成長企業投資のインパクトを最大化する意味では最重要だと考えています。

 12ページにお願いします。あともう1点ハイライトしたいと思っていますのが、スタートアップをひとくくりに議論するのは危険なフェーズが来ていると思っています。本当にごく一部の勝ち組スタートアップと、大半のスタートアップとにおいて、課題感が全く異なるのが実態です。なので、制度政策であるとか、リスクマネーの提供を考える上でも、勝ち組企業をより大きくしていく視点で考えているのか、裾野を広げていくという視点なのかということを意識していくことが非常に大事かと思っています。実は一部企業にとっては金が余っています。もうどこから資金調達するかを選ぶ状況が加速していまして、優良企業への集中が起きています。どんどん二極化が進んでいます。Winner-takes Allのトレンド、人材不足で人材獲得競争力の優位性、ブランドの蓄積という観点で、スタートアップ内でもリテラシーの差が優良企業と一般的な企業でかなり差が開いているというのが実態です。あと、スタートアップと大企業との競争も、益々加速していますので、本当の意味で、海外も含めて大手企業の競争を勝ち抜くためには、人材やお金といったリソースをいかに勝ち組企業に集中できるかという視点を忘れてはいけないと思っています。

 13ページをお願いいたします。これまで20年間において、マザーズもしくは今後のグロース市場が果たした役割は大きいですが、あえて苦言という意味でバランスを取って5点指摘させていただくのがこの表です。たとえば、エグジットの選択肢を増やすことは、エコシステムの資金循環にポジティブです。早期に上場するオプションを提供することも資金回収の速度を引き上げるだけでなく、上場市場の資金の活用が可能になるメリットもあります。ただ、シリーズC以降と実質的に競合することによって、レイトステージであるとか、クロスオーバー投資といったグロース市場の拡大にはネガティブな側面もあります。早く上場でエグジットをするばかりに偏ると、VCとマザーズ市場のセットのみでエコシステムが完結してしまう可能性があります。ある意味最適化は進みますが、多様性や発展性を犠牲にする可能性があります。資本政策の多様性は企業の発展にプラスしかないので、常に選択肢の多様性は意識してみていく必要があろうかと思います。

 14ページをお願いいたします。資金提供者の視点で、量の視点がずっとこの10年言われていましたけれども、引き続きこれも課題ですが、質の視点に議論をシフトさせていく必要があると思っています。海外ですと、Sequoia、Tiger、T.Roweを含めて、クロスオーバーやマルチファンドというのが出てきていますし、非常に多様性の観点が重要になっています。特にイノベーションのトレンドは国を超えますので、グローバル・多国籍に投資することで得られる知見は、企業にとっても付加価値になります。グローバルファンドといった多様性も重要ですし、日本発のファンドもローカルのみではなく、グローバルな視点を持ったファンドも育てていく観点も必要かと思います。

 15ページをお願いします。企業側の課題のほうにも触れさせていただきます。大型の資金調達においての課題が多くて、人材が結局ボトルネックになっています。実はバランスとしては資金量よりも、今は企業側の人材不足のほうが課題としては切実かと思います。海外資金を得る上で、管理体制、ガバナンス、英語で数字を語る力に課題を抱えている企業はまだまだ多いのが実態です。加えて、グローバルの展開余地も課題を抱えており、この点もM&Aの活発化と関連していると思っています。海外の大型M&Aにおいて、一定成長したフェーズから更に成長を織り込むのは、グローバルへの展開余地が鍵になってきますし、その方が高値がつきやすいのです。目下、海外投資家が探しているのは日本のローカルチャンピオンです。一定成功を収めつつありますが、ローカルのみで海外展開余地が乏しい日本企業に1,000億のM&Aエグジットを期待するのは、まだ少し先だと考えておくべきでしょう。

 最後16ページをお願いいたします。これは産業創出か、日本にファンドのインフラ構築をするのかという視点も分けて考える必要があるという視点です。単に短期的に産業創出をメインに考えるのであれば、今、明らかに海外のマネーが日本に向いていますし、起業家もいかに海外の優良投資家のお金を引っ張ってくるかに躍起になっていますので、実は単純にお金を引っ張っていくだけであれば、ここの質の底上げをやっていくことで十分達成できるでしょう。一方、PEファンドで起きたように、外資を誘致し過ぎると、国内のインフラが育ちにくい。ここのバランスをどうやって取っていくか。日本はファンド起業が非常に難しいのが現状で、ファンド側キャピタリスト側の育成含め、課題の解消と産業創出という実経済のバランスも考えていく必要があると思います。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、日本銀行金融市場局の鷲見和昭企画役から御説明をお願いいたします。鷲見参考人、どうぞよろしくお願いいたします。

【鷲見参考人】  
 日本銀行の鷲見でございます。本日は、このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。これまでの御説明の中で、実務上の課題ですとか、制度上の論点は網羅的に指摘されているかと思いますので、私からは、議論を補完する観点から、定量分析によるPE、VC投資の経済効果と、市場参加者から聞かれた今後の課題の2点を簡単に触れさせていただきます。

 資料の2ページ目を御覧ください。まず、資料の背景について簡単に申し上げます。海外に比べますと、日本におけるPE、VC投資の市場規模は相対的に小さく、背景の1つとして、PE、VC投資による経済メリットを定量的に示した例が少なく、社会における認知度が相対的に低いという点が挙げられるかと思います。日本について実証分析を行う場合、相対的な歴史の短さやデータ制約がございますが、ようやくある程度まとまったサンプルで分析することが可能となりました。私どもの分析も含め、ごく最近の実証研究では、まず、PE投資を通じた企業再編は、総じて従業員数を削減することなく、売上高を増加させる傾向があることが示唆されております。すなわち、PEファンドは、リストラなどコストカットばかりを優先させるわけではなく、ビジネスの効率を高めることで、投資先の雇用を維持しつつも、生産性の改善につながった可能性が示唆されております。他方、VC投資につきましても、VCによるスタートアップ企業への投資は、イノベーションの代理指標である特許出願数の増加につながる可能性が示されております。これはVCによる資金提供がスタートアップ企業の研究開発を支えたことや、知財分野を含む経営支援が特許出願につながった可能性を示唆していると考えられます。このように最近の実証研究では、こうしたPE、VC投資による経済効果が広がることで、日本の生産性や経済成長にとってプラスの効果がもたらされる可能性が示唆されております。

 続いて、資料の3ページ目を御覧ください。今後の課題として、関係者から聞かれた指摘を3点御紹介いたします。1点目は、先ほどお示しさせていただいたPE、VC投資による経済メリットがより幅広く認識されることの重要性でございます。これは事業承継やカーブアウトなどの案件に関連した企業や経営者の方々、PE、VC投資を行う機関投資家はもちろんのこと、機関投資家への運用資金を提供している一般の方々からの認知度向上も含まれます。まず、社会的な認知度が高まることで、ファンドへの案件数の増加や機関投資家による投資拡大にもつながっていくと考えられますので、今後さらなるデータ整備や開示情報の拡充が期待されます。2点目は、専門人材の確保・育成であり、PE投資による事業再編の場合、プロ経営者の確保、そして、潜在的な経営者と企業との間での効率的なマッチングが重要となります。また、スタートアップ向けのイノベーション支援では、資金提供のみならず、知財戦略の普及や、ファンドの規模に応じた知財支援の体制整備が重要となります。3点目は、スタートアップ企業のエグジットに関連して、上場後も短期的な黒字化にとどまらず、中長期的な成長投資が行われる環境整備の必要性が指摘できます。この点、機関投資家からの資金の呼び込みが重要となり、そのために企業側でのIRの強化や、上場時の株式の配分比率の見直しなども検討の価値があると考えられます。また、バイオ、創薬など、先行投資型のスタートアップにとって、当初は赤字であっても、中期的な事業計画の合理性を示すことで資金調達ができる環境が望ましいと考えられます。その点、スタートアップ側では、IRの強化や特許内容など、非財務情報の開示の重要性が指摘されております。こうした課題が改善することで、生産性の向上やエコシステムの好循環につながっていくことが期待されます。

 簡単ではありますが、私からは以上とさせていただきます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、以上いただきましたお話等を踏まえまして、委員の皆様方に御議論をお願いしたいと思います。

 先ほど事務局からも御説明がありましたけれども、事務局資料、資料1の4ページに御議論いただきたい事項を挙げさせていただいておりますけれども、先ほどこれも御指摘がありましたように、必ずしもこれに限定しての御発言でなくても結構です。いつものように多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言の時間の目安としては、1人当たり4分以内を目安にしていただければと思います。3分を過ぎますと、事務局から発言時間が残り1分である旨のチャットが発言しておられる委員のみに送付されますので、御参考にしていただければと思います。なお、今日は若干時間が押しているかと思いますので、できるだけ簡潔に御発言をいただければ大変ありがたく存じます。それでは、御質問、御意見等を御発言いただける方は、全員宛てチャット欄にてお知らせいただければありがたく存じます。いかがでしょうか。

 それでは、原田委員、どうぞお願いいたします。

【原田委員】  
 ありがとうございます。事務局及び4名のプレゼンターの方々、御説明ありがとうございました。

 日本のベンチャー企業をとりまく課題の1つであろうと考えることについて、4名の方々にお伺いしたいと思うことがあります。資料1の最後のページに、議論することとして、「持続的な企業の成長のためにはどのようなエグジットが望ましいか」と書いていただいている、このエグジットに関することをお伺いさせてください。具体的には、ベンチャーキャピタルのタームシート(契約書)に関することになります。

 日本でベンチャー企業の成長が難しい理由の1つとして、日本では伝統的に買取条項というものが入っているからと聞いています。買取条項があると、案件がうまくいかなくてベンチャー企業側に買い取ってもらうということになりますが、これはエグジットとしては成功した案件ではありません。アメリカのタームシートに買取条項が入るのは珍しいとも聞いています。この点について、日本ではどういう案件で入っているのか、通常、意図せずともどの案件にも入っているのか、それとも今時は入れていないのかといったような状況を教えていただきたいということと同時に、買取条項についての御意見もお伺いできれば幸いです。

 山本参考人は、御発表のときに、独立系ベンチャーキャピタルが大事だというふうにおっしゃいましたけれども、これはサラリーパーソンといいますか、サラリーマンといいますか、日本のベンチャーキャピタルで働く人の報酬体系が関係していて、ということなのかと思いました。独立系が大事だとおっしゃった意図の1つにこの件も関与しているのではないかと勘繰っております。

 山家参考人の御発表では、技術開発型のベンチャー企業への投資のお話がありましたけれども、アメリカだと研究開発的なベンチャー企業へのエクイティ投資では、買取条項は入らないと思うのですけれども、日本はどうなっているのだろうかというのが気になりました。

 今日のお話は、メインはM&A、IPOなど、うまくいった案件のエグジットにあったという印象を受けておりますけれども、マーケットを育成するという観点からは、うまくいかなかった案件で、契約書に買取条項が載っていて企業に買い取ってもらったというのは、なかなか市場育成という観点からは難しいのではないかと思っております。日米の両方のタームシートや、ひな型も含め、幾つか見せてもらった経験がありますので、この機会に、現状がどうなっているかというところを教えていただきたく思います。お願いいたします。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。オンラインのために、顔色を伺ってどなたにというのがやりにくいので、すみません、山本参考人、山家参考人、谷山参考人、村上参考人から、もし御発言いただけるならお願したいと思います。まず山本参考人、いかがでしょうか。

【山本参考人】  
 御指名ありがとうございます。原田委員、ありがとうございました。

 買取条項の実務に関しては、私はバイアウトの専門家ですので、これは今日、御参加されていらっしゃるその他の専門家の方々にお任せします。原田委員御指摘の出口のお話は、今日、ほかのプレゼンターの方もお話しされておられましたが、やっぱりIPOが目的化してしまうというのは全く健全ではないので、そうならないように企業がシームレスに成長していくために、我々のようなプライベートエクイティ業界がどういうふうなプラクティスをやっていくのかという観点で、今後、次の10年にプラクティスを引き上げていく必要があると思います。ただ、今日、プレゼンターの方が御指摘されておられましたが、ここはかなりグローバルな視点で競争が起こっていますから、あまり日本的な変な慣行というのはそんなに長くは続かないと思います。特に、今日はベンチャーのお話が中心だと思うのですが、ベンチャー企業の経営者も、リテラシーが勝ち組と負け組で分かれていますという御指摘がプレゼンターの方からありましたが、全くそうだと思います。極めて優秀な勝ち組のベンチャーの経営者は、リテラシーが非常に高いですし、選択肢も多くあるので、原田委員が御指摘のようなグローバルスタンダードから外れたような資金調達の選択肢を本邦のベンチャーキャピタルが提出した場合に、そこは選んでもらえないということが多分起こってくるのだろうと思っておりますので、私、この部分は専門家ではないのですけれども、大きく言うと、きっと自然に淘汰がされていくことになるのではなかろうかと、このように考えてございます。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。山家参考人、いかがでしょうか。

【山家参考人】  
 御質問ありがとうございます。

 私どもVCとしての立場で申し上げますと、いわゆる買取条項という点では、本当に数十年前の慣行としますと、上場できない場合に経営者に対して買取りを請求できるというようなことは耳にしたことはございますが、現状、先ほどもありましたように、ベンチャー投資のナレッジをスタートアップサイドも含めて醸成されていますので、そういった慣行は、基本的に私は目にしたことがございません。ですので、基本的には、いわゆるガバナンスの観点と申しますか、基本的な表明保証に対する買取請求ということが一般的かと思いますけれども、私ども、特に研究開発型ベンチャーということで申し上げますと、特許が1つ重要な論点になりがちでございまして、この部分の権利の帰属や侵害の有無といったところを、どこまで表明保証等で、そのスタートアップサイド等にいって、それを場合によってはその侵害時の買取請求に入れ込むのかというのは、1つ論点になり得るポイントなのかというふうに理解をしております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。谷山参考人、何かございますでしょうか。

【谷山参考人】  
 すみません。私、ベンチャーのほうはあまり詳しくないので、特段、今回の御質問についてコメントはございません。

【神田座長】  
 ありがとうございます。村上参考人、いかがでしょうか。

【村上参考人】  
 御指摘どうもありがとうございます。

 非常に難しい問題があるので、少し全体を見てコメントします。アメリカと比較した場合に、これは感覚的な議論も入ってしまいますけれども、スタートアップや起業の考え方というのも多少違いがあるかと思っています。あとガバナンスの機能の仕方ですね。なので、こういった全体のバランスを見ながら考えていく必要があるかと思っています。アメリカであれば、初期のスタートアップが重視するのはチームアップです。大きくスケールするものをしっかりやっていくということを主眼に置いています。あと、ガバナンスが非常に効いていると、初期の場合でも経営陣の能力が不足であれば、経営の入替えであるとか、チームアップをすることでCEOを補完し権限を薄めていくことで、会社の成功とチームで目指していきます。

 あと、持分に関しても、上場時のアメリカのスタートアップの経営者持分は日本よりも低い傾向があります。なので、よりスタートアップというのは社会課題実現の器として捉えている側面が強い一方で、日本は、あえて言うなら相対的には創業者に対するベット、依存度、インセンティブといったものが強いように思います。結果、実際にガバナンスを初期の形で効かせているケースはあまり見られないと思います。

 私はシード投資を数多く見ているわけではないですけれども、そういった慣行の中でそういったタームは一部残っているのかと思いますが、リテラシーの高い企業、経営者にとっては、そういうアンフェアな条項は交渉で消えていきますし、かつ、外部株主等からのガバナンスも機能するようになってきています。そういった個別の契約タームを取り出した部分で議論するだけではなく、全体バランスや実態も含めて広くスタートアップの資本政策やガバナンスとして議論すべきなのかという印象を持っております。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。原田委員、よろしゅうございますでしょうか。

【原田委員】  
 はい。皆様、ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】  
 有吉でございます。皆様、大変興味深い御報告をありがとうございました。私自身、とても勉強になりました。

 特に個人的には、谷山参考人のLBOが日本に馴染まないのではないかというお話と、村上参考人のスタートアップについて、二極化を前提に政策を考えるべきだというお話が、非常に興味深く感じた次第でございます。皆様のお話に関して、事務局説明資料の議論いただきたい事項との関係では、1点目のVC、PEファンドへの投資を増やすにはどうすればよいかという点に関連する事項として、2つ質問をさせていただきたいと思います。

 1点目は、一括りにスタートアップと言っても、シード、アーリー、グロース、あるいはレイターという段階ごとに、LP投資家の層というのは全く異なると理解したのですが、それでよろしいのかということです。そして、そうであるとして、年金基金とか海外の機関投資家とか、そういった規模の大きい投資家の投資対象というのは、基本的にレイターというか、かなり後ろのほうのスタートアップに限られるという前提で資金調達の在り方を考えていくべきなのか、あるいは、それよりももっと早い段階でも、そういった規模の大きい機関投資家の資金を流入するような方策を考えるべきなのか、この辺りのお考えを伺いたいというのが1点目でございます。本来、皆さんにお聞きしたいのですが、時間も限られていると思いますので、できましたら、山本参考人と山家参考人に、この件については御回答いただければというふうに思います。

 2点目の質問でございますが、VCなどのプロの投資家からの資金調達と、クラウドファンディングに代表されるような、不特定多数の投資家からの資金調達が、同一のスタートアップ企業の資金調達手法として併存し得るものなのか、それとも、両者の資金調達を同時に行うことは必ずしも適切ではなくて、VCなどからの資金調達が馴染む企業の類型と、不特定多数の一般投資家からの資金調達が馴染む企業の類型というのは、分けて考えるべきなのかということについて、特にVCあるいはPEファンドからの投資をしやすくするためには、どういった資金調達の在り方が望ましいかという視点でお考えを伺いたいと思います。この2点目の質問につきましては、山本参考人か、村上参考人のお二人か、あるいはどちらかお一人から御回答いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、1点目の御質問について、山本参考人、山家参考人、もしお答えいただけるようでしたら、順番にお伺いします。山本参考人、いかがでしょうか。

【山本参考人】  
 有吉委員、ありがとうございます。

 1点目の御質問は、ベンチャー投資に対してステージに分かれているわけですが、このステージごとにLP投資家が異なるのかという御質問と、仮にそれが分かれているとした場合に、年金基金等の大口な資金をベンチャーキャピタルが吸収していくためにはどういう方策があるのか、この2点のお尋ねであったかと思います。

 まず、ステージごとにLPが異なるのかというのは、実はGPはおおむね異なっていたというのが過去の話だと思います。アーリーを得意とするベンチャーキャピタル、レイターステージを得意とするベンチャーキャピタルというのが、かなり明解に分かれていたというのが過去の姿なので、この時点までは、そのベンチャーキャピタルにお金を出しているLPも、したがってステージごとに分かれていたということかと思います。一方で、今日ではベンチャーキャピタルも勝ち組、負け組がはっきりしてきていて、村上参考人の御指摘にもあったかと思うのですが、特に欧米の大口の、かつてベンチャーキャピタルと呼ばれていた人たちというのは、もう規模は我々バイアウトよりも大きい人も出てきています。こういう人たちは、その大きさを使ってマルチステージの戦略を取っておられるので、海外においては、年金基金等の大口資金が、どこが受皿になっているのかというと、こういうメガベンチャーキャピタルだと認識しております。

 こういう人たちにお金を預けると、アーリーステージも、レイターステージも、それから今日お話が出たグロース・キャピタルのような領域も、マルチストラテジーで、言わばワンストップショッピング的に年金基金のお金を運用してくれますから、大変に便利であるというところがありますし、年金基金からすると、こういうメガベンチャーキャピタルは、長年、ブランドネームもありますし、トラック・レコードもありますから安心であると、こういうことが起きています。これを本邦に引きつけて御説明しますと、残念ながら日本にはこういう巨大なベンチャーキャピタルというのは存在しないので、日本の年金基金が日本国内のベンチャーキャピタルにお金を振り向けていこうとすると、これは規模が小さ過ぎるという問題が現時点ではございます。ちなみに、我々のようなバイアウトも規模が小さ過ぎるので、例えばGPIFのような方がバイアウト・ファンドに投資をしようとしても、我々のファンドが小さ過ぎるので、投資対象になかなかなっていかない、こういう現実もあるわけです。ベンチャーキャピタルはもっと規模が小さいので、この部分は今後の課題です。したがって、これはバイアウトとベンチャーキャピタル、共通のことになってくるかと思うのですが、今後10年に大口のGPが日本にどれだけ登場できるのかというところと、年金基金等の大口資金の受皿が国内に育ってくるのかということは、表裏一体の課題であると認識しております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。山家参考人、いかがでしょうか。

【山家参考人】  
 御質問ありがとうございます。

 ステージごとのいわゆるLPの組成といいますか、すみ分けでいいますと、やはりステージごとで異なるという認識でおります。例えば私どもで言いますと、先ほども御説明差し上げましたように、いわゆるシード・アーリーステージというものにフォーカスをしておりますが、1つには、私どものコンセプトないしはシード・アーリーステージのスタートアップに求められる部分でいきますと、必ずしも資金だけではなくて、経営に対するハンズオン支援や、大企業、事業会社との事業連携ということも求められますので、したがいまして、私どもであれば、組合員としてはできるだけ事業連携が図れる事業会社に組合員に入っていただいているというようなコンセプトの部分はございます。

 一方で、これは私どもも含めた課題として、なぜシード・アーリーステージに、いわゆる名前が挙がったような大きな機関投資家に入っていただけないかというのは、やはりトラック・レコードの部分と、あとはファンドのパフォーマンス管理も含めたオペレーションの部分が十分に私どもを含めて育っていないという認識でおりますし、なかなかその部分を担えるファンド管理の人材というところも不足していると理解をしておりますので、その点を解決することができれば、よりシード・アーリーステージにも、大きな機関投資家に御参画いただけるような環境になるのではないかと考えております。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、2点目の御質問、資金調達については、時間の関係もあり、山本参考人と村上参考人にというふうに先ほど伺いましたので、山本参考人、いかがでしょうか。

【山本参考人】  
 すみません。有吉委員、2点目の御質問をもう一度教えていただいてもよろしいでしょうか。

【有吉委員】  
 はい。クラウドファンディングなどの一般の不特定多数の投資家からの資金調達と、VC、PEファンドなどからの資金調達が併存し得るものなのかどうか、こういう趣旨の質問でございます。

【山本参考人】  
 ありがとうございます。個人的な考え方としては、併存しにくいというふうに考えております。

 ベンチャーキャピタルも、グロース・キャピタルも、バイアウトも、この今日お話ししたエコシステムというのは、かなり明快なガバナンスと投資家に対する責任を伴った形で組立てられておりますので、この横連携は可能です。投資家の方から見ても、ベンチャーキャピタル、日本の独立系のベンチャーキャピタルから、次にバイアウトの人たちに連携が行われるということは、これはあり得るわけですし、上場株投資の方々に対して、さらに信頼感を持って連携をしていく、これはできます。

 一方、クラウドファンディングをはじめとする新しい資金調達手法は、今申し上げた点が我々の考えているものとはかなり違うので、我々としては、そういう資金調達手法を仮にベンチャーの経営者が取られた場合は、どうしてこのエコシステムを選ばれたのかということをかなり質問することになると思うのです。ですから、必ずしもここは併存可能だとは私は捉えておりませんで、それぞれに役割が違うのであろうと捉えています。

 米国においても、年間に60万件、スタートアップが始まる中で、ベンチャーキャピタルが投資するのはおよそ1,000件です。日本においても、このような極めて選択的な投資がベンチャーキャピタルの世界では今後ますます進んでいくと思いますし、逆にそうやって選択されたベンチャーキャピタルからお金が入ることが、言わばベンチャー企業家の品質保証につながるというようなことが、今後10年で進んでいくのではないかと、このように考える次第でございます。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。村上参考人、いかがでしょうか。

【村上参考人】  
 これは会社側のハンドリングの問題、負担が非常に大きくなるのですが、そこが乗り越えられれば、一定のすみ分け、併存というのはあり得ると思います。一方で、これは先ほど申し上げた勝ち組企業とそうでない企業に分けて考えると、勝ち組企業にとって、必要なのかということがそもそもあると思います。なので、そういったお金を引っ張ってこなくても、十分にお金を引っ張ってこられる状況にあります。必要性というのは会社によって異なりますので、実質的にラウンドとか企業のフェーズや質に応じて、アセット・クラスが実質的にすみ分けていく。同一企業の中で併存するよりも、企業ごとに必要性を鑑みて発展していくと思います。

 一方で、資本政策の多様性はこれはこれで非常に重要なテーマでして、画一的なターム、画一的なリレーション、画一的な特徴を持った投資家ばかりを集めると、IPOの資本政策上の難易度が非常に上がってしまうデメリットが生じます。上場後の資本政策を睨み、未上場段階から投資家の多様性をどう構築していくのか。このようなIPOを含めた資本政策を重要課題だと捉える機運が、一部勝ち組企業の中で高まっております。

 つまり、投資家の多様性や質の向上はもちろんポジティブなのですが、企業側のニーズによってその意義は様々ですし、会社側のハンドリングの難しさというのがありますので、そういったバランスの中で選別されていくと感じています。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、次に進ませていただいてよろしゅうございますでしょうか。続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】  
 ありがとうございます。時間も押していると思いますので、簡単に感想だけ言わせていただきたいと思います。

 非常に勉強になりまして、最近、この5年、10年で非常に変革が大きいということや、一方でグローバル化とか大型案件といったことに関しては、まだまだやることがたくさんあるという印象でした。また、日銀の御発表をお聞きしまして、アカデミックのほうでもさらなる学術的分析が必要ということも感じました。また、非常に印象的だったのが、必ずしもこれは成長資金だけの話ではないのですけれども、やはり日本における、よく出てくる話ではあるのですけれども、企業とは何かというその考え方の部分が常に関係してくると。要するに、終身雇用を中心として、会社中心という考え方ですね。これを欧米型に変えてどんどん新陳代謝させていく。例えば本日のお話の中でも、売却することを目的に企業を育成するような考え方というお話もありましたけれども、やはり成長企業だけではなくて、コロナ禍での産業再編の中でも、こういった視点をどういうふうに変えていくのかということが重要になっていくかと思いました。

 また一方で、谷山参考人だったと思うんですけれども、そういうものを突然持ってくるのではなくて、日本のよさとか、日本の現在の形から、やりやすい形でいろいろな新しいことを取り入れてグローバル化に進めていくというような導入というのもあり得るのかなというふうに非常に興味深くお話を伺いました。今日も幾つかかなり具体的に、グローバル化とか、人材確保とかということでいろいろな視点がありましたので、これをどう具体的に政策に結びつけていくかということが重要かと思いました。

 また、成長資金にも関係あるのですが、山家参考人のお話とかにも地銀の参画のお話があったと思いますが、この辺も非常に金融庁と深い関係のあるところだと思いましたので、この辺も具体的なところに結びつけていただけたらと感じました。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、チャットの順番で、松本委員、野村委員、そして武田委員の順になると思います。松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】  
 いろいろと御説明いただきましてありがとうございました。大変勉強になりました。今日いろいろお話を聞かせていただいて、本当はいろいろプレゼンターの方にお聞きしたいこともあるのですが、ちょっと時間も限られていますので、私からは、事務局資料1でいただいた論点の中のVC、PEファンドへの投資を増やすにはどうすればよいかという点について、簡単にコメントさせていただきたいと思います。

 私自身は、その中でも特に重要で、かつ難しいのが、投資先のバリュエーションの在り方、すなわち公正価値評価の論点だと考えております。というのは、これまで国内ファンドへの投資を増やすという点でネックだったのは、主にファンドのトラック・レコードが足りないということと、適正な投資先の公正価値評価ができないという2点であったと考えますけれども、前者のトラック・レコードにつきましては、近年は日本でも徐々に積み上がってきているのが現状ではないかと思います。あとは、後者の適正な公正価値評価をどうやって行うかというところですが、当然、上場企業であれば取引所の価格を使えるのですけれども、やはり非上場企業ではそれが非常に難しいというのが問題になります。特にスタートアップに関しては、公正価値としての時価が、かなり将来の高い成長性を織り込んでいるため、純資産価格と大きく乖離していて算定が難しいという点や、例えば、前回資金調達から時間がかなり経っていて、現時点での時価が算定しづらいとか、あとは、種類株がたくさん発行されていますので、たとえ直近で資金調達が行われたとしても、自社が投資した種類株と違えば、その価格をもって公正価値として用いることができないというような様々な難しい論点がございます。さらに、国際基準の公正価値評価ができる監査法人とか人材が、現時点で非常に少ないことや、依頼できたとしてもコストが高いなどの問題点もあると聞いております。

 私自身、この公正価値評価の問題に特にフォーカスしている理由は、この問題を解決できれば、ファンドへの投資を増やすという観点だけでなく、別の論点でも議論されている非上場株式の流通市場の活性化にも役立つのではないかと考えているからです。その理由は、たとえ日本において非上場株式の流通プラットフォームが整備されたとしても、取引価格の目安となる公正価値が分からなければ流動性を増やすことは難しいのではないかと考えるからです。さらに、この公正価値評価は、現在、スタートアップ業界で別で問題になっている創業者からの株式買取価格問題も解決できると考えております。近年、スタートアップの創業メンバーが、IPO前に何かしらの理由で会社から外れることも増えておりまして、その際に会社が創業者持分の株式を買い取ることになるのですが、公正価値が分からないため、会社側と株式を売却する創業者の間で価格が折り合わず揉めるという問題も増えています。そういった意味でも、公正価値評価を行うための制度や仕組みを整えるのは急務かつ非常に重要なポイントになると考えております。ぜひ今後、公正価値評価をどうやって普及させるかに論点を絞った議論も御検討いただけますと幸いです。

 私からは以上となります。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】  
 野村でございます。まずは、本日、大変すばらしいプレゼンテーションを聞く機会を頂戴しまして、ありがとうございました。本当に非常に勉強になりました。

 ただ、1つ、これは事務局への御質問のようになってしまうのですけれども、恐らく自分たちの取組や考え方を紹介したいという方々はほかにも大勢いらっしゃるのではないかと思ったりもいたします。ワーキング・グループという場でもございますので、PEやVCの業界における、いわば代表性というのでしょうか、そのような観点もあるのかと思います。もしよろしければ、本日、本当に勉強になってすばらしいプレゼンテーションばかりだったのですけれども、どういった切り口でメンバーを選定されたのかということも御教示いただけたら理解が進むかと思いました。

 プレゼンされた皆様に、それぞれに質問があったりするのですが、時間もありませんので、2点ほど質問させていただければと思います。

 1つは谷山参考人へですけれども、9ページに、家計金融資産、人材企業集団の連携が不足しており、PEが結節点になるのではないかという御指摘をなさっております。例えば、具体的にどういうアクションがあれば、これがぐるっと回るのか、あるいは、政策や制度面で何かのサポート、後押しのようなものがあればいいことがあるのかという点について、もし何かお考えなどあればお聞かせいただければと思います。

 もう1つは、村上参考人へですけれども、特に最後のところの御指摘が非常に示唆深いと思いました。産業創出とファンドインフラの構築ということ、両方のバランスという御指摘だったのですが、村上参考人としては、バランスをどのように取ればいいとお考えでしょうか。それこそ両方を目指すと両方駄目になってしまうのかとか、そういったあたり、お考えなどあれば、ぜひ御教示いただければと思います。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  
 ありがとうございました。それでは、まず御質問の1つ目について、谷山参考人、いかがでしょうか。

【谷山参考人】  
 御質問ありがとうございます。

 具体的な連携の方法ということだと思いますが、1つは、私がイメージしていますのが、戦後の高度成長を支えた長期信用銀行の役割です。日本人のお金が銀行預金に回って、この銀行預金が金融債という形で長期資金にいって、この長期資金を持った長期信用銀行が、日本の企業の工場の設備投資資金を長期で貸して、これで輸出をして会社が伸びる。それが国策になって、結果、会社も伸びる、自分の資産も伸びるというようなぐるぐると日本人が持っているお金が日本企業の成長に回っていくという形だったと思います。今は、日本にはお金がある、そして日本には企業もある、人もいる、しかしながら、お金は預金にほとんど回って、なかなか日本企業の成長をサポートするようなものがないというような状況ですので、個人的には、日本型PEのように、日本企業をサポートするという大義がしっかり整っていて、一般の国民からしても、手触り感のあるようないろいろな受皿が満ちてくると可能性があるなというのが1つと、もう1つは、これはちょっと極端な枠組みかもしれませんけれども、リスクシェアファンドのような形で、プライベートエクイティの投資というのは、ヒストリカルに山本参考人も御説明されていましたけれども、リターンがそれ相応に出るということなので、基本的には、元本を保証する代わりに、リターンが出た場合はリターンを半分で折半しますというファンドみたいなものがあると、一般国民の資金を含めてお金が回っていくのかと。イメージとしては、経産省がおやりになった太陽光のFITです。こういったような何か1つ仕組みを整えることによって、国民全体のエクイティに対する考え方を変えていけるのではないかと思っています。

 以上です。

【神田座長】  
 ありがとうございました。それでは、2つ目の御質問について、村上参考人、いかがでしょうか。

【村上参考人】  
 ありがとうございます。今、海外のマネーが日本に対してすごく向いています。個人的な考えとしては、このチャンスは生かすべきだと思いますし、日本の中で産業創出の可能性がある分野が大量に残っていると私は思っています。なので、まずはやはり海外の熱量というのをレバレッジしながら、日本でいち早く成功事例をつくることが、個人的には真っ先に優先すべきかと思っています。本当に大きな成功事例こそが、エコシステムの質と量を引き上げ、その成功のノウハウの蓄積が進むだけではなく、更なる優秀な人材とお金を引き寄せると思います。ただ、バランスがやっぱり気になるのが、これをやり続けると、圧倒的に今、海外のブランドを持った投資家のほうが実績をさらに積み上げていきますし、もともと日本は金融リテラシーの高い人材が非常に少ないというデメリットもありますので、海外マネーばかりに目を向けてしまうと、結果として、成長資金を提供するためのインフラが国際的に遅れていくリスクというのがあります。そういったところをしっかり意識して、並行して策を練りながらも、まずは日本の中のこのチャンスをしっかりレバレッジしていく、こういった考え方かと個人的には感じています。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。あとは、プレゼンテーションについて事務局への質問になるのでしょうか。よろしくお願いします。

【古澤企画市場局長】  
 野村委員、御質問どうもありがとうございました。

 全庁的に、PEファンドの方、それからVCファンドの方、我々のチームでいろいろ面談させていただいたり、お話を伺ったりということをさせていただいています。今回会合の準備に当たり、委員の皆様方に、どういう方々のお話を聞いていただくのがいいのかという議論もあって、通常、役所ですと、例えば協会からお願いして全体像を見ていただくというのがスタンダードなやり方なのかもしれませんが、今回につきましては、PE、VCそれぞれの全体動向が分かるという視点、それから、海外の動向も含めて、いろいろな観点の多様性というものを委員の皆様に伝えて議論していただけるとの視点、それから、我々のPE、VCの課題を議論しようということでございますので、課題についての問題意識を明確に提示していただける方々ということで、本日お話を伺ったという経緯でございます。

 もちろんほかにもすばらしいPE、VCの方がたくさんいらっしゃいますし、金融庁にも、ぜひ話を聞いてみろというサジェスチョンがあれば、ぜひ伺いたいと思います。引き続き関係者のお話をよく伺いながら進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

【野村委員】  
 どうもありがとうございます。

【神田座長】  
 ありがとうございました。次に進ませていただきますけれども、チャットで御発言希望いただいている委員の方が、今、5人いらっしゃいまして、今日は顧客本位の業務運営関連での御報告を最後にしていただこうと思っていますので、大変恐縮ですけれども、5人の方々の発言をもって一旦締めとさせていただきたいと思います。順番は、武田委員、井口委員、松岡委員、そして福田委員、森下委員となります。それでは武田委員、どうぞお願いいたします。

【武田委員】  
 本日は、大変詳しい御説明をありがとうございました。大変勉強になりました。まずはプレゼンいただいた全ての皆様に感謝申し上げたいと思います。時間も押しておりますので、本来、お一人お一人に質問させて頂きたかったのですが、3点に絞らせていただきます。

 まずは、村上参考人が量より質を重視するタイミングになったと御発言されたことが非常に印象に残りました。現在は、資金に困っているというよりは、優良な投資先、そして人材不足という問題に触れていただいたわけですが、まだまだ日本では起業への関心が低く、人材の層が薄いことに起因しているのか、近年、大学発ベンチャーが増えているように、志す方が増えてきているけれども、経験や学び、教育が追いついていないのか、これから政策としてどこに力点を置けばいいのか。もし何かございましたら御教示いただければと思います。

 2点目、地域のベンチャーと地銀連携にも非常に関心を持ちました。特に社会課題解決を地元で地域金融機関と一緒になって解決していくことは非常に重要だと思います。今後、地銀を巻き込んでいく上で何を改善していけば、より連携が進むのか、もし政策面でやるべきことがあれば御教示いただければと思います。山家参考人、お願いいたします。

 3点目、日本の機関投資家によるVC・PE投資比率の低さがご指摘の一つにございました。先ほど、松本委員から、ファンドのトラック・レコードの問題と公正価値評価の問題も御提示いただきましたけれども、それ以外に機関投資家自身、機関投資家サイドの問題として変わるべきことがあるのかどうか。その点も御教示いただければと思います。ここについては、山本参考人、もし何かございましたらお願いいたします。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、1点目につきまして、村上参考人、いかがでしょうか。

【村上参考人】  
 ありがとうございます。これは量に課題が全くないということではなく、量が一定拡大した中で更に量を拡大するためにも、まさに今、質に注目すべきだという観点で申し上げました。次に、御質問にダイレクトにお答えすると、全体的に底上げが必要ですが、特に起業、その後の経営を1人でやるということはないと思うのですね。経営チームでやっていくという意味でいくと、逐次的にどんどん優秀な人材を引っ張ってくるということが必要になります。やはりそこのプールが、経験者を含めて、大企業との流動性も含めて、改善はしていますが、まだまだスタートアップ先進国と比較すると差があるように感じます。

 1点ポイントを挙げさせていただくと、スタートアップで働く方々に対する処遇に対する視点を入れていく必要があるかと思っています。やはりシリコンバレーのエンジニアの給与はすごく高いですし、CEOや経営チームに対するSOの配付、そもそもの給与水準は非常に高い。優良な企業はしっかりと処遇して、いい人を引っ張ってくるということがあるのですけれども、今はどうしてもスタートアップはリスクがあって当然、やるからには頑張るんでしょ、という精神論的なところがあるように感じます。本当の意味で新産業の創出をメインストリームにし、国際競争力を高めていくには、当然そういった処遇面の適正化というところを進めていかないと、ただでさえ人材の流動性が低い日本の中では、これ以上優秀な人材を引っ張っていくことは難しいのではないかという課題提起もあると思っています。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは、2点目について、山家参考人、いかがでしょうか。

【山家参考人】  
 御質問ありがとうございます。地域金融機関との連携、巻き込む際の課題という御質問かと思いますけれども、私ども、先ほどあったファンドは全国6社の地域の金融機関に御参画いただいているのですが、共通して認識いただいたポイントは、逆説的ではあるのですけれども、必ずしも自分たちの地域のベンチャーというものにこだわらないというところが実は共通しておりまして、例えば大阪の地銀であれば、大阪発ベンチャーをいかに生むかというのはもちろん重要な視点ではあるのですけれども、やはりそれにあまりにこだわり過ぎてしまいますと、いわゆるその投資が目的化するような部分が多くあるように思いまして、それだけではない観点をいかに地銀として今回のようなLP出資に付与するかというのが重要であろうと思います。

 その1つが、先ほども御説明差し上げたような、いわゆる地域の金融機関にとっての事業機会、もしくは金融機関のお客様になるような、いわゆる中小企業、中堅企業の事業機会をファンドのLP出資を通じてやるというような、いわゆる政策的な意義も含めて御理解いただくということが今後重要であろうと思いますし、それをいかに政策的に推進していくかというところで、個人的な考えを申し上げますと、やはり純投資という観点でLP出資を検討されるケースと、政策投資で検討されるケースというのがおおむね地域の金融機関に二通りあると思っていますが、そこの後者の観点での、例えば金融機関内におけるパフォーマンスの評価ですとか、そのリスク評価、あるいはそもそものバジェットの考え方みたいなところを、もう少しそういった政策的な意味合いが重視されるようなインセンティブや制度設計というのを考えるというのは1つ論点かと個人的には考えております。

【神田座長】  
 ありがとうございました。それでは、3点目について、山本参考人、いかがでしょうか。

【山本参考人】  
 御質問ありがとうございます。公正価値評価も含めたプライベートエクイティ全体のプラクティス、これを底上げしていくためには、やはり投資家の方々が極めて重要です。LP投資家がGPのガバナンスをなさっているというのが、ベンチャーキャピタル、バイアウト共通の認識ですから、ここの人材育成というのが次の10年の非常に重要な課題であろうと思います。しかし、ここは私、楽観しておりまして、やはり日本にはお金が400兆円、年金基金だけでも膨大なお金があるわけですから、ここをうまく活用していくという視点で動いていけば、世界の運用市場における日本のプレゼンス、これはまだまだ1%ですから、これから高まる一方だと思っておりますので、そうすると、人材育成も、やってみようという人もそこに入ってくるでしょうし、さらにその方々が御一緒に切磋琢磨されて、非常に高いレベルになっていかれる、こういうような良循環が生まれてくるのではないかと期待しているところでございます。

 ありがとうございます。

【武田委員】  
 明るい見通しを、どうもありがとうございます。

【神田座長】  
 それでは、武田委員、よろしゅうございますでしょうか。

【武田委員】  
 ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】  
 よろしくお願いいたします。まず、4名の方のすばらしいプレゼンありがとうございました。よく分かりました。私も質問させていただきたいことがあったのですけれども、時間の関係もあるので、コメントだけさせていただきます。

 特に、村上参考人のエグジット市場のプレゼンについて、私は機関投資家でも上場企業を中心に投資しているものですから、興味深く拝聴しました。

 その観点で、村上参考人の資料の10ページにある日本企業の新興企業と海外の新興企業の比較をされているところがあって、グローバルとの比較でみると、このような状況なのかと思います。ただ、日本株の中だけでみると、さはさりながら、新興企業は、特に、コロナということで新しい世の中が到来したということもあると思うのですが、すごく頑張っていらっしゃるという印象を持っています。多くの場合、成長率も高いですし、株価パフォーマンスも高いと思っています。クオリティ面でも、新興企業によっては、日本の伝統的な企業よりもずっと高いIRのレベルの企業もありますし、資料も充実している企業もあると思っています。ただ、グローバルの比較であえて言うと、御指摘されていましたが、日本の新興企業は基本的には日本のマーケットが主力のマーケットになっているので、日本経済自身の成長性にかなり規定されている部分があり、グローバルの企業に見劣りする、というのは御指摘のとおりかと思います。ただ、そうは言っても、グローバルに出ていって失敗している新興企業もあるので、どの程度まで、成長性を求め、グローバル進出という判断されるのか、については、投資家から見ると非常に悩ましいところと思っています。

 今後の課題ですが、これも村上参考人の御指摘のように、投資するとなったときに、持続的に成長するという観点が重要になる中で、投資家からみてガバナンスというところで課題になる場合があり、投資を諦めた会社も複数あります。ビジネスが伸びていて、経営者の方がすごく引っ張っていらっしゃるというのは分かるのですが、この経営者の方に何かあったらどうするのだろうといったことも、長期投資では考えなければなりませんので、そういう面で諦めるということがあります。新興企業の中でも驚くほどガバナンスがいい会社もたくさんあります。ただ、ガバナンスが課題になっている場合もあります。ですので、非上場のときから、ガバナンスなどの改善を続け、上場するということになれば、もう少しエグジットマーケットにおいても投資家から高く評価されるような状況になってくるのではないかと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

【井口委員】  
 ありがとうございました。

【神田座長】  
 ありがとうございました。次に松岡委員お願いいたしたいと思います。松岡委員、どうぞ。

【松岡委員】  
 松岡です。本日は、いろいろなプレゼンテーションをありがとうございました。少し異なる角度のお話をさせていただきたいと思います。

 先ほども少しお話がありましたけれども、企業の重要性の問題というのは、やはり企業の参画を含めて循環の必要性や、その確立を目指すという観点も重要な側面としてあるのではないかと思っております。例えば、弊社におきましては、グローバルに多様な事業を展開させていただいておりますので、内外企業の様々な投資、またM&Aの機会を常時大変広く検討しており、例えば技術獲得のためでしたり、あとはスケールでしたり、新たな事業領域、地域拡大、人材確保等々のいろいろな目的で、膨大な企業を見ております。アーリーステージ中心のファンドもやっておりまして、共同投資を含めて大変たくさんの投資を行っており、一部、先ほどのプレゼンにもありましたが、IPOなど、エグジットもしております。また、特定の事業のファンドへの投資もしておりますし、ファンドとともに、例えば企業への投資、ファンドからの買収、ファンドへの売却など、大変様々な活動をさせていただいている次第です。特に海外で顕著に感じておりますのは、投資機会について全てを自分たちで見つけることはできませんし、その機会を得るとか、リスクヘッジという観点でも、ファンドの存在意義は大変大きいと思っております。

 また、投資をするに当たって、ファンドが入っている企業は、それなりのリターンのディシプリンやガバナンスがあるだろうという一定の安心感があり、また、ファンド側からしても、私どものような事業主体のいわゆるプロに売却し、リターンを得たということが、よい実績になっていると思いますし、それを基にまた資金が集まるというようなこともあると思います。したがいまして、投資主体の企業のみならず、IPO以外のエグジットとしてのM&Aも含めまして、多くの参加者による循環が確立していくということが重要なのではないかと思いますし、そのことがファンドに対する投資家の資金が集まりやすくなることにもつながるのではないかと思っております。

 御指摘にもありましたとおり、日本企業がグローバルな成長機会を、大変厳しい競争の中で追求していく上では、企業においてもそうした視野を持って間口を広げていくことも必要でしょうし、本日御出席のファンドの皆様を中心に、日本において、そういった循環をつくっていくことを意識され、企業の戦略に対する御理解の下に、様々な参加者への御提案や啓蒙をされ、イメージチェンジを図って全体の循環と活性化を目指していくことを、ぜひお願いできればと思う次第でございます。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】  
 ありがとうございます。本日は、多くの方々に非常に詳細な、なかなか聞けないようなお話を聞けて、非常に私としても勉強になりました。いろいろな課題がありながらも、日本でもPEあるいはVCの市場は育っているということも理解できました。

 また、実際のマクロ的な裏づけとしては、日本銀行の資料でも実際に成果も上がっているという資料も頂きました。ただ、私の聞いた単なる大きい印象としては、そこそこいいPEやVCは育っているけれども、やはり大化けするような企業というものを育てられていないのではないかとおもいました。GAFAとまではいかないまでも、日本経済を本当に牽引するような企業というのが育てられているのだろうかということはやっぱり1つの課題だと思います。そういう意味では、日本銀行の資料でも、平均値だけが示されているのですが、例えば分布みたいなばらつき度合いみたいなものも見て、やはり上に極端に突出したような企業があるのかどうかということも非常に大事で、そういう大化けするような企業をどう育てられるかというのが1つの課題なのではないかと思います。

 それに関して1つだけ最後にコメントさせていただきますと、どのファンドに聞くのがいいのかという話が野村委員からも出ていましたけれども、日本のファンドなのかどうかも定義は分かりませんけれども、ビジョンファンドというファンドは、規模的にはもう極端に大きいファンドです。けれども、日本にはもう全く投資していないという現実はやはりあって、ビジョンファンドが投資するような大化けするような企業をどうやって育てていけるのだろうかというのが1つの課題なのではないかと思いました。

 単なるコメントですけれども、私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、森下委員、どうぞお願いいたします。

【森下委員】  
 大変ありがとうございました。1点だけ、村上参考人に質問させていただければと思います。

 資料の15ページ、16ページの課題のところで、グローバルな視点というのが強調されているような印象を受けました。これを解決するには時間をかけて人材を育成するという必要があるのかもしれませんけれども、ただ、今は非常に海外の目が日本に向いているという中で、短期的に何か、例えば国として、あるいは政策的に、あるいは組織的に、こういったような手が打てるのではないかというようなことを感じておられることがあれば、ぜひお伺いしたいと思って質問させていただければと思います。

 以上です。

【神田座長】  
 ありがとうございます。村上参考人、いかがでしょうか。

【村上参考人】  
 ありがとうございます。私は、先ほどの福田委員のコメントのとおり、圧倒的な成功事例をつくっていくことが突破口になると思って今の会社を創業し頑張っているわけなのですが、ここの今の海外からの熱い視線に最大限活用していく意味でも、やはり特定の大きく飛躍しそうな会社というのをどれだけ支援できるのか、日本には文化的に馴染みずらい「えこひいき」も必要になってくるのかと思っています。

 古い産業でいくと、韓国がサムスンLPを「えこひいき」してきたということもありまして、他国はそういったことをやっています。特定産業に対して資金や人材が流動化するよう国が支援するという意味です。こういう「えこひいき」の発想で、どこかの企業を徹底的に支援して勝っていくと、これがトラックレコードとなりノウハウが蓄積され、次のより大きな資金や人材を引っ張っていくための循環を生みます。圧倒的な成功事例がプラットフォームの中で循環する仕組みが既に日本にもできています。実際これまでも、アントレプレナーシップの増加が課題だった時も、友達が起業家で成功したから俺も起業に挑戦しようという、身近なきっかけが重要なのです。海外で成功した、10兆円企業になったという成功事例が国内で身近に出てくることがまず何よりも大事なのはそのためです。一定の成果は、日本のエコシステムも既に実績を上げつつありますが、「えこひいき」して圧倒的な成果を収めるものをつくっていくという観点はまだ不足している。なかなか政策上で明確な「えこひいき」は難しいだろうと感じているので、あえて申し上げている次第ですが、新産業創出やスタートアップエコシステム、成長資金という議論をするためには避けては通れない非常に重要な観点だと思います。

【森下委員】  
 ありがとうございました。

【神田座長】  
 森下委員、よろしいでしょうか。

【森下委員】  
 ありがとうございました。

【神田座長】  
 ありがとうございます。

 予定の時間を過ぎておりまして、大変恐縮ですけれども、委員からの質疑応答、意見交換は、ここで打切りとさせていただきます。全ての委員の方々から御意見を伺うことができなくて申し訳ありませんでした。また、時間の関係で、オブザーバーの皆様方からも御発言をいただく機会を設けることができませんで、お詫びいたします。ただ、もしお気づき点等ございましたら、この後、事務局のほうに、私でも結構ですけれども、メールその他でお知らせいただければ大変ありがたく存じます。本日は、大変お忙しいところを御出席いただき、貴重な御意見、また質問にお答えいただきましたゲストの皆様方、山本参考人、山家参考人、谷山参考人、村上参考人、鷲見参考人に、厚く御礼申し上げます。長時間お付き合いいただきまして、大変ありがとうございました。

 それでは、もう少しだけお時間をいただくことをお許しいただければと存じます。このワーキング・グループに関連する諮問事項に含まれているわけではございませんが、顧客本位の業務運営に関連する事項その他の内閣府令改正事項について、現時点における状況を事務局から御報告いただきます。それでは、お願いいたします。

【太田原市場課長】  
 時間も過ぎている中、恐縮でございますが、資料7を御覧ください。

 1ページです。昨年8月5日に公表しました金融審議会市場ワーキング・グループ報告書におきまして、顧客本位の業務運営の進展に向けて、分かりやすい情報提供などを要素とした原則の改定などを提言しました。この考え方と軌を一にしますが、2ページ目にありますように、レバレッジ型、インバース型のETFに関する内閣府令(案)を検討しているところでございます。レバレッジ型、インバース型ETFは、変動率が「原指数の1日の変動率」のX倍になるように計算された商品であり、短期的には、このX倍をトレース可能ですが、徐々に乖離していくため、中長期の投資・保有に適さない等、一般的なETFとは異なるリスク特性を有しております。このリスク特性につきまして、現在、取引所ホームページや目論見書等において注意喚起されておりますが、さらに一般投資家に対し周知が必要との声が聞かれているところでございます。これを踏まえ、取引所において、他のETFとは一線を画した名称・市場区分を導入することや、広告規制の記載事項に、2ページ目の下、①、②にありますような事項を追加するため内閣府令を改正すること、3ページに移りまして、説明書面の記載事項に、①から③の事項を追加するため内閣府令を改正すること、そして(4)の広告規制と説明書面の記載事項について検討するといったことを予定しております。

 次に、4ページです。顧客が取引できる金融商品につきまして、別途、外国上場株式の信用取引に関する内閣府令(案)の検討もしているところでございます。外国上場株式の信用取引は、法令上禁止されておりませんが、国内株式の信用取引と異なり、必要なルールが整備されていない状況でございます。2019年12月から日本証券業協会において実務的なルール整備の検討が進められ、20年11月に制度要綱案のパブリックコメントが実施されたところです。その中で外国上場株式の信用取引専用の口座の設定、厳格な保証金率の設定などを日本証券業協会の規則で定める予定となっておりますが、下の※4にありますように、代用有価証券に関する事項が日本証券業協会の自主規制規則において定める事項であるということは、内閣府令で整備する必要があるため、内閣府令の改正を行う予定となっております。

 以上です。

【神田座長】  
 御説明どうもありがとうございました。時間がオーバーしておりますので、委員、オブザーバーの方々の中で、もし御質問、御意見があれば、手短にお出しいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

【上柳委員】  
 上柳ですけれども、一言だけお願いしたいのですが。

【神田座長】  
 上柳委員、どうぞお願いします。

【上柳委員】  
 ありがとうございます。この内閣府令、パブリックコメントがあると思いますので、そこでいろいろな意見が出ると思いますけれども、レバレッジインバース型ETFについては、名称の工夫も含めて、ぜひリスクの特殊性の把握がきちんとできるような建てつけにしていただきたいと思います。

 それから、非上場株式については、どういうものが対象になるのか、いきなり全部ということではないと思うのですが、その辺りの工夫であるとか、もう1つは、いわゆる保証金率ですけれども、普通の国内の株式の30%に加えて、外国為替といいますか、価格変動のリスクがあると思いますので、本当に50%でよいのか、これが上場国によって変わってくるのか、その辺りについても工夫が必要だと思っています。

 以上です。

【神田座長】  
 ありがとうございました。それでは、佐々木委員、どうぞお願いします。

【佐々木委員】  
 すみません。一言だけお願いします。

 レバレッジのほう、3ページで「中長期的な投資の目的に適合しないもの」という文言があるのですが、これは非常に曖昧だと思います。どれくらい動いたら適さないのか、要するに、これは恐らく変動率で規定されているので、中長期だと基の値から離れていくという意味で、これを入れられたのかとは思うのですけれども、それはそもそも、(この指数の)元の説明(XX倍と謳っているのに実際には少しずつずれていく)の問題であって、では、短期では、これは適しているのですかと。でも、短期でも、そのときたまたま株価が動いたら非常に大きく動いてしまうわけですから、この「中長期的な投資の目的に適合する」というのはどういう定義で書かれているのかというのをちょっと疑問に思いましたので、今お答えいただくということではなく、その点、考えていただければと思いました。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

【太田原市場課長】  
 ありがとうございます。上柳委員から御指摘いただいた外国為替の相場変動リスクについては、まさにそのことを織り込んだということで、大体は日本株の状況と合わせているのですけれども、ここの保証金率につきましては、為替リスクを踏まえて50%ということで保守的に考えてはどうかということで案を出そうとしているというところでございます。

 あと、佐々木委員からの御指摘につきまして、定義は、いずれにせよ内閣府令でありますので、そこは書き方についてはよく検討していきたいと考えております。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

 すみません。まだまだ御質問とか御指摘があるかもしれませんけれども、予定の時間を過ぎておりますので、もしさらにお気づきの点がありましたら、御遠慮なく事務局のほうまでお知らせいただければと思います。ということでございまして、本日は、この辺りとさせていただければと思います。本日いただきました御説明や御意見等を踏まえ、今後、具体的な検討を行ってまいります。次回のこのワーキング・グループの日程及びテーマ等につきましては、後日、事務局から御案内をさせていただきます。

 本日は、予定の時間を超過してしまいまして大変申し訳ありませんでしたけれども、ゲストの皆様方、委員の皆様方、そしてオブザーバーの皆様方には、大変長時間にわたり熱心に御参加いただきまして、どうもありがとうございました。以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 
―― 了 ――

 
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