金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第11回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年6月14日(月)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第11回)
令和3年6月14日
 
【神田座長】
 おはようございます。それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。市場制度ワーキング・グループの第11回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。本日の会合も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とさせていただき、一般傍聴はなしとさせていただきます。また、メディア関係の皆様方には、金融庁内の別室にて傍聴いただいております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 オンラインで御参加いただくわけですが、いつものように2点注意事項がございます。まず、1点目、御発言されない間は、マイクをミュートの設定にしていただき、また、通信環境安定の観点から、ビデオもオフにしていただければありがたく存じます。第2に、発言を希望される際には、オンライン会議システム上のチャット上にて、全員宛てにお名前または協会名などの組織名の御入力をお願いいたします。それを確認させていただいた上で、私のほうから御質問をさせていただきますので、そうしましたら、御自身の名前を名乗っていただいた上で御発言いただければと思います。これまでどおりのやり方であります。

 それでは、本日の議論に移らせていただきます。このワーキング・グループですけれども、昨年10月から議論を重ねてまいりました。本日は、これまでの議論を取りまとめた「第二次報告(案)」について御議論をいただきたいと思います。また、昨年12月1日の第4回市場制度ワーキング・グループにおいて、最良執行方針等に関する規制の点検及び検討については、専門性・個別性が特に高いことから、このワーキング・グループの下に別の会議体を設けて議論するとしておりましたが、6月2日に、最良執行のあり方等に関するタスクフォースが報告書を取りまとめておりますので、これについてもあわせて御報告をさせていただきたいと思います。

 それでは、まず、事務局から「市場制度ワーキング・グループ第二次報告(案)」、「最良執行のあり方等に関するタスクフォース報告書」について御説明をしていただきます。そして、その後、皆様から御意見等をいただければと思います。では、まず、「市場制度ワーキング・グループ第二次報告(案)」について事務局からの御説明をお願いします。よろしくお願いします。

【太田原市場課長】  
 それでは、資料1「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ第二次報告(案)」を御覧ください。

 2ページです。成長資金の供給のあり方です。まず、検討の背景と目的。コロナ後の経済社会・産業構造の不連続な変化に対応していく観点から、資本性資金の必要性が一段と高まっています。その中で、プロのファンド、一般投資家、さらに法人・個人のプロ投資家、こういった資金供給主体の資本性資金の流れの円滑化・多様化を進めていくことが必要である、としております。

 3ページです。こうした制度のあり方を検討するに当たっては、一般投資家について、投資家保護を徹底しつつ、リスク管理能力及びリスク許容度の高いプロ投資家について、よりリスクテイクを行いやすい環境を整備していくことが適当である、としております。「2.成長資金供給に係る制度のあり方」のうち、「(1)特定投資家制度」についてでございます。現状、一定の要件、注釈の6にございますが、純資産が3億円以上、投資性金融資産が3億円以上、取引経験が1年以上という要件を満たす場合に特定投資家になれるという制度でございます。

 4ページ、③の「(ⅰ)個人の特定投資家の要件の弾力化」のところで、一定の金融リテラシーやリスク耐久力を有することが推定される要素として、新たに年収・職業経験・保有資格・取引頻度といった要素が実証事業の中で推定されましたので、これらの要素についても、特定投資家の要件として新たに勘案できるようにすることが適当、としております。

 続いて5ページです。「(ⅱ)特定投資家への移行手続等の弾力化」についてです。まず、「(a)取引経験要件の柔軟化」ということで、他社での取引経験も勘案できるようにすることが適当、としております。(b)財産要件の確認方法のところですが、他社での保有資産を含めて総合的に評価できることを明確化することが適当、としております。「(c)特定投資家としての更新手続の弾力化」についても提言をしております。

 6ページ、「(ⅲ)特定投資家向けの枠組みの拡充」でございます。この部分については、7ページにございますが、日証協規則において、特定投資家向け投資勧誘を認める等、具体的なルールを整備することが適当、としております。また、特定証券情報の具体的な内容を整備することについても提言をしております。

 7ページ下の方の、「(2)非上場株式のセカンダリー取引の環境整備」についてでございます。8ページにありますように、セカンダリー取引についても、日証協において、特定投資家向けの投資勧誘の具体的なルールを整備することが適当、としております。また、「②株主コミュニティ制度の見直し」のところでは、特定投資家を新たに参加勧誘対象に加えることが適当、としております。

 「(3)株式投資型クラウドファンディング」についてでございます。まず、9ページの「③制度整備のあり方」の部分ですが、「(ⅰ)発行総額の算定方法の見直し」としまして、発行総額の算定に当たり、株式投資型クラウドファンディングでの発行額のみに限定することが適当、としております。「(ⅱ)投資家の投資上限額のあり方の見直し」の部分ですけれども、10ページにございますように、特定投資家については、成長資金の供給の円滑化の観点から、投資上限額を撤廃することが適当、としております。他方、一般投資家の投資上限額の見直しについては、慎重に検討することが適当、としております。

 「(4)少人数私募の人数通算期間の見直し」でございます。11ページにございますが、株式投資型クラウドファンディングの後に、少人数私募を実施する場合に限らず、少人数私募の取得勧誘対象者数の通算期間を6ヶ月から3ヶ月に短縮することが適当、としております。

 「(5)東証ベンチャーファンド市場」についてです。現在、上場するファンドの柔軟な運営を可能とする観点から、現行の東証規則に関し、幾つかの課題が指摘されており、その見直しについて検討することが適当、としております。

 「3.ベンチャーキャピタル(VC)、プライベート・エクイティ(PE)ファンド」の部分でございます。まず、「(1)ベンチャーキャピタル(VC)投資」についてです。近年、スタートアップ企業への資金供給量は大幅に増加しているということを指摘しつつ、12ページでございますが、他方、独立系VCの案件発掘力、経営支援能力、資金調達力には大きなばらつきがございます。また、多くのVCは、投資先のバリエーションに際し、国際標準と異なる価値評価を行っているが、国際標準に基づく公正価値ベースの時価評価を推進することが重要、としております。また、VC投資は東京に集中しており、地方の研究開発型企業への資金供給が不足しているとの指摘がございます。地域金融機関においては、外部VCの効果的な活用に取り組んでいくことが重要、としております。

 「(2)プライベート・エクイティ(PE)投資」でございます。市場は順調に成長しております。トラック・レコードも積み上がり、海外資金が多く流入しているという指摘をしております。他方、国内ファンドは中小型案件が中心であり、ファンドを大型化することが難しく、日本企業のニーズを的確に捉え、パートナーとして投資先の成長をサポートする投資のあり方も追求していくべきである、という指摘をしております。

 14ページからが、「Ⅱ.国内顧客に関する現象ファイアーウォール規制について」でございます。現行制度及び検討の視点として、(2)のところから申し上げますが、2008年におけるファイアーウォール規制の大幅な見直し以降、10年以上が経過しまして、この間、金融を取り巻く環境が大きく変化しております。こうした中、本規制に関し、オプトアウトについては、負担や利便性の観点から、必ずしも積極的に活用されていない等の課題が指摘されております。

 15ページです。加えて、資本市場において、国内金融機関が、投資銀行機能の向上により、事業法人に対して、事業法人が国内外において新たな成長を切り開くことをサポートしていくことが重要、としております。こうした課題を踏まえ、ファイアーウォール規制の見直しに向けた検討に当たり重要な視点として、より付加価値のある金融サービスの提供、利便性向上や負担軽減、日本の金融市場としての国際的地位の向上、国内金融機関の国際競争力強化、顧客情報管理、利益相反管理、優越的地位の濫用防止について実効的に確保していくことを併せて検討することの必要性、融資以外にも市場から直接資金調達が可能な大企業とそれ以外の中堅・中小企業とを区別して検討することの重要性等について御意見が出されてきました。こうした点を踏まえ、まずは、資金調達において資本市場を活用し、金融機関の優越的地位による弊害を受けにくいと考えられる上場会社等に対して金融サービスの提供を行う、いわゆる投資銀行業務や大企業向け商業銀行業務について、本規制の見直しに着手することが重要である、としております。

 16ページです。「(1)欧米金融機関の実務」について説明しておりまして、17ページ、(2)で「国内の金融機関の実務」について紹介しております。

 そして、19ページに飛びまして、(ⅳ)のところで、我が国の金融機関と欧米金融機関との主な相違点を幾つか記載しております。「(a)顧客情報管理」の部分でございますけれども、欧米において大企業向け商業銀行業務と投資銀行業務を行う場合、銀行規制と証券規制の両方が適用されるのに対し、国内において銀行が投資銀行業務を行う場合、一部の証券規制が及んでいない部分がある等を記載しております。

 20ページ、「(b)利益相反管理」の部分でございます。欧米金融機関では基本的に利益相反チェックを要する全ての案件においてコンプライアンス部門がチェックを実施するのに対し、国内の一部の銀行では、M&A以外の案件については、営業部門が取引を行うケースがございます。また、欧米金融機関では、経営幹部へのエスカレーションを行っているケースが見られるのに対し、国内金融機関では、担当部門や担当役員までで判断している等の記載をしております。「(3)事業法人に対するヒアリング等」の部分でございます。事業法人からは、情報共有を拒否できるような法令上の仕組みの維持を求めるという意見が多数あったところでございます。

 これらを踏まえて、22ページ、「3.制度見直しのあり方」について記載をしております。

 「(1)基本的な考え方」でございます。下の方ですが、我が国資本市場の一層の機能発揮、国際金融センターとしての市場の魅力向上、顧客に対するより高度な金融サービスの提供の必要性、国内金融機関の国際競争力強化、顧客の利便性向上等の観点を踏まえつつ、ファイアーウォール規制の趣旨である顧客情報の適切な保護、利益相反管理、優越的地位の濫用防止の実効的な確保を図る観点から、主に投資銀行業務や大企業向け商業銀行業務に相当する部分において、情報授受に関する規制については、大胆な見直しを行うことが適当、としております。その際、顧客情報管理、利益相反管理、優越的地位の濫用防止の実効的な確保を図る措置をしっかりと講じる必要がある、としております。

 「(2)情報授受に関する規制等のあり方」についてでございます。対象とする法人に係る非公開情報等を共有するに当たり、当該法人の同意を不要とする。ただし、当該法人からの停止の求めには応じる必要があるものとする。そのため、現行のオプトアウトの規定(みなし同意)は廃止し、新たなオプトアウトのあり方としては、極力手続を簡素化する。例えば、オプトアウトの方針を自社のウェブサイトに掲載するだけでよいとすること等を掲げております。そして、当該見直しに係る法人の範囲については、資本市場の一層の機能発揮の促進等を踏まえ、上場企業(グループ)等を対象として見直しを行うことが適当、としております。注の75を御覧いただきますと、「上場企業(グループ)等には、金商法163条1項に規定する上場会社等のほか、有価証券報告書を提出している会社及びIPO予定会社や、上場会社等を含むそれらの会社のグループ会社を含むことが考えられる」としております。

 次に、24ページです。「②オプトインの簡素化」として、中堅・中小企業や個人を含め、現行制度において電子メールを含む電磁的方法による同意取得が未整備となっている部分について対応を行うほか、電磁的方法による同意取得時に必要となる事前承諾を撤廃することが適当、としております。

 「③その他関連する規制」でございます。「(ⅰ)ホームベースルール」については、撤廃を行うことが適当、としております。「(ⅱ)外務員の二重登録禁止規制」については、責任の所在が不明確になることの問題点や、どのような誤認防止措置が考えられるか等の論点について検討を行う必要がございます。そのため、今後さらに議論を行う必要がある、としております。「(ⅲ)引受関係の諸規制」です。発行体クロスマーケティング規制や主幹事引受規制、引受証券の売却制限規制について、利益相反や有価証券の発行条件等が歪められる等の懸念が指摘されていることから、慎重に検討する必要がある、としております。

 「(3)弊害防止の実効性の確保に向けた方策」についてです。情報授受規制等の緩和に伴い、事業法人からは優越的地位の濫用に対する懸念が増大するとの指摘があったところでございます。したがって、金融機関自身による内部管理の強化を促していくことが適当、としております。あわせて、当局においても、モニタリングを強化していく等が適当である、としております。その中では、銀行・証券会社各々に対するモニタリングの水準の統一や、当局における関係部署間の連携強化を図っていく必要がある、といったことが入っております。

 26ページです。「①顧客情報管理」についてです。現在、法人関係情報に関する一部の規制については、証券会社にのみ適用されている規制が存在します。具体的には、金融機関及びその役職員における法人関係情報に基づく有価証券の自己売買等の禁止規定については、現在、証券会社にしか規制が課せられておらず、登録金融機関としての銀行に対しても同様の規制を課すことが適当、としております。また、法人関係情報管理におけるチャイニーズウォール構築や、ウォールクロスを行う際の体制整備のあり方、法人関係情報以外の顧客情報も含めた“Need to know”原則に基づく情報管理の徹底の必要性等、監督指針等において具体的に示していくことが適当、としております。

 「②利益相反管理」についてです。利益相反管理の運用実務面での更なる実効性の確保を促すことが重要であり、監督指針において、利益相反のリスクが高いと指摘される典型的なケースを具体的に例示した上で、モニタリングの強化を通じて、利益相反管理の実効性の確保を促していくべき、としております。また、今後、利益相反の可能性が特に高く対応が必要なケース等については、監督指針に追加することや、更なる対応が必要な場合には行為規制での対応の必要性が考えられるほか、損害賠償規定の必要性を検討することも考えられるという意見もあったところでございます。

 「③優越的地位の濫用防止」についてであります。監督指針において、一定の考え方・着眼点を明確化することや、当局において端緒をつかむための窓口設置、重点的なモニタリング、公正取引委員会との連携を強化していくことが適当、としております。

 「④その他」としまして、顧客情報の管理について、金融機関と顧客の間で、民・民間の契約に基づく管理を行っていくことも有益な実務である、としております。

 「(4)残された課題」についてです。中堅・中小企業や個人顧客に関するファイアーウォール規制の取扱いについては、銀行の優越的地位の濫用等に係る懸念が指摘された一方、事業承継の円滑化の観点から取扱いを検討すべきとの指摘もあるところでございます。こういった点について、引き続き検討していく課題であるとしております。

 私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、「最良執行のあり方等に関するタスクフォース報告書」につきまして、事務局から簡単に御説明をお願いします。繁本市場業務監理官、お願いいたします。

【繁本市場業務監理官】  
 それでは、お手元の資料4と5がタスクフォースの関係の資料でございます。主に資料5に基づいて御説明をさせていただきます。

 この最良執行のあり方等に関するタスクフォースでございますが、先ほど神田座長から御説明があったように、昨年の12月の市場制度ワーキング・グループで設立をお諮りした上で、昨年12月18日から、早稲田大学の黒沼先生を座長として、計4回議論を行ってまいりました。その結果を取りまとめたものがこちらの報告書ということになります。

 中身でございます。まず、議論の問題意識あるいは背景の部分でございますが、一番上の箱、最良執行方針等に関する現行制度の概要ということで書いてございます。こちらの規制は2005年に導入されておりますが、具体的には、金商業者が有価証券等取引に関する顧客の注文を最良の取引の条件で執行するための方針及び方法をあらかじめ定めた上で、顧客にも示して、その方針に沿って執行するという義務が課されているものでございます。方針の中身は、各金商業者ごとに自らの判断で定めるということになっておりますが、その要素としまして、現状、価格のみならず、コスト、スピード、執行可能性など、様々な要素を総合的に勘案して、自社の方針を作ってくださいとなっているわけでございます。

 また、2005年当時は、実態として、PTS等の取引所以外の取引施設というもののシェアが非常に低かったこと、あるいは、システム的にも今と違いまして、そういった価格優先をするためのシステムというのはそれほど普及もしていなかったというような背景もございまして、多くの金商業者が、原則として主たる取引所、すなわち東証であることが多いわけですが、そこに注文を取り次ぐといったような最良執行方針等を定めているという実態がございます。こちらにつきまして、2005年から約16年が経過して、いろいろ環境変化も起こってきているということでございまして、真ん中の箱でございますが、1点目は、私設取引システム(PTS)のシェアが増加しているということで、2005年当時は1%未満のコンマの単位のシェアしかなかったのですが、現在は約8%ぐらいをPTSが占めております。加えて、証券会社が開設するダークプールにおいても、もともとは機関投資家向けの取引施設でしたが、個人投資家の活用も増えてきているといった実態がございます。

 また、SORと言われる、複数の取引施設から最良の価格を提示している取引施設を検索して、注文をそこに流すようなシステムが大分普及してきているということで、2005年当時と違いまして、価格重視の注文執行をするための環境が整いつつあるという状況にございます。

 また、その隣、右側にあります、こういったSORが普及してきたこと等によって新たな課題も生じております。まず、1つ目は、SORと一口で言いましても、かなり会社ごとにシステムの中身が違っておりまして、中には、一部に利益相反構造ということで、具体的には、例えば、証券会社が自社の中にダークプールを持っていたり、あるいは系列のPTSがあったりする場合に、そちらに注文を優先して流してしまうという、プレファレンシングと言われるようなことが起こり得るといった構造がございます。また、一部の高速取引行為者が、レイテンシー・アービトラージといいまして、要するに、複数の取引施設間の価格差があるわけですけれども、一般投資家の注文が複数の取引施設に回送されるような場合に、高速取引行為者が先回りして、その有利な気配を対当してしまって、後から来た一般投資家の注文がそれよりも不利な価格で約定せざるを得なくなるといったレイテンシー・アービトラージと言われる事象が指摘されているところでございます。

 こうした点を踏まえて、新たな規制のあり方等について議論をさせていただきました。方向性でございますが、まず、左が、「個人投資家にかかる最良執行方針等における価格の重視」ということで、こちらにつきまして、機関投資家、個人投資家がございますが、まず、機関投資家につきましては、そもそも、自社の投資戦略に基づいて金商業者等に対して執行方法等を指示することが通例であります。あるいは、非常に取引の量も多いということで、一時点での最良気配での約定というよりも、全体での執行コストの低減を重視しているといったようなこともございまして、機関投資家については、必ずしも価格優先というより、様々な要素を総合的に勘案するという今の方針のままでいいのではないかと。他方、個人投資家につきましては、やはり、機関投資家と比べると小口注文が多いということで、基本的には価格が最も重要な要素であるという考え方の下、個人投資家について、原則としてより価格を重視するという方向性を打ち出しております。

 具体的には、顧客が個人投資家である場合につきましては、主として価格面以外の顧客の利益を考慮する場合、つまり、価格優先の最良執行方針を定めない場合ですが、その場合には、その理由を最良執行方針等に記載してくださいという、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレインを義務づけるということ。それから、ダークプールを使用する場合にも、その理由を最良執行方針等に記載を義務づけるといったような形で、個人投資家における価格を重視した最良執行を促していくということが提言されております。

 また、投資家保護上の課題に関しましては、まず、様々なタイプのSORがあって、なかなか顧客に分かりにくい、あるいは利益相反構造もあるといった点に対しましては、SORの透明化ということでございまして、SORを使用する金商業者等に対して、SORの具体的な注文執行ルール等の開示を義務づける、あるいは、価格改善状況を事後で顧客に開示することを義務づけるといった点が提言されております。また、レイテンシー・アービトラージへの対応方針・対応策の概要につきましても、最良執行方針の中に記載を義務づけているということでございます。

 最後に、下のほうに書いておりますが、このタスクフォースでは、注文回送リベート、ペイメント・フォー・オーダー・フロー、いわゆるPFOFについても議論いたしました。PFOFにつきましては、アメリカ等で行われておりまして、ブローカーがマーケットメーカーに顧客の注文を回送する代わりに、マーケットメーカーからリベートを受領といったことが一般に行われておりますが、こちらにつきましては、例えば、そういったリベートを原資に、投資家の手数料が安くなる、あるいは、無料になるといったような投資家の利益もあり得るといった主張もございますが、他方で必ずしも最良執行につながるとは言い難いのではないか、あるいは、市場における価格発見機能が低下するおそれがあるのではないかといった点から議論が行われました。

 結果でございますけれども、現在、アメリカでも、このPFOFに関する規制の見直しが行われている途上にあるということ、また、日本ではまだPFOFの実例が確認されていないというようなことも踏まえまして、一旦、現時点では、こうあるべきという明確な結論を出しておりませんが、アメリカの規制等を含めた今後の状況の変化に応じて、適切かつ機動的に対応すべきであるといったような提言がなされたところでございます。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえて、委員の皆様に御議論をしていただければと思います。今回も多くの委員の方々に御発言いいただく機会を確保する観点から、御発言の時間を、恐縮でございますけれども、1人当たり5分以内程度を目安にしていただければと思います。それから、また、多少余計なことかもしれませんが、本日は、できれば取りまとめをお願いしたいと思っておりますので、そういうことを意識しての御発言をいただければありがたいと思います。

 それでは、まず、委員の方々どなたからでも、御質問、御意見をお出しいただきたいと思います。委員の方々からの御質問、御意見が終わった後で、オブザーバーの方々に御発言の機会を提供させていただきたいと思います。それでは、委員の皆様方、いかがでしょうか。御質問、御意見ございましたら、チャット欄でお願いいたします。ありがとうございます。今、上柳委員、佐々木委員、有吉委員の順で御希望いただいておりますので、上柳委員、どうぞお願いします。

【上柳委員】  
 ありがとうございます。取りまとめに全体として異存はございませんが、一言だけ今後の方向、あるいは、特に強調したいところについて申し上げたいと思います。

 市場制度ワーキング・グループの報告書の23ページの「(3)弊害防止の実効性の確保向けた施策」、ここが重要だということでございます。言うまでもないことかもしれませんけれども、その直前に書かれている(2)の規制の見直しに比べて、この実行というのは時間もかかり、混乱もありうると思いますが、特にあげられている顧客情報についても、利益相反についても、優越的地位の濫用についても、そのような問題が起こった場合に、被害者といいますか、顧客のほうからこういう大変なことがあったと声を上げることはなかなか大変なわけです。優越的地位に濫用されているからこそ問題が起こるのですけれども、声を上げるときにも優越的地位の状況は変わっていないということでしょうし、それから、情報についても、自分たちの分からないところで利用されているということになるわけで、なかなか、いわゆる被害申告というのができないというところが特徴かと思います。

 そういう意味で、ぜひとも金融事業者の方々の努力と、それから、規制当局のほうにも特段の措置を、この報告書の趣旨をきちんと実行するということをお願いしたいと思います。そうして初めて、大企業も含めてですけれども、顧客の信頼が確保され、ひいては、日本の金融事業の国際的な競争力も強化されると考えております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。では続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】  
 ありがとうございます。時間が限られているので、ファイアーウォール規制に関してのみ意見させていただきたいと思います。報告書案、非常に細かい点まで網羅してくださり、作成していただいた御努力はすごく大変なものであったのではないかと思います。ありがとうございます。ただ、私としては、今日、一応取りまとめということを前提にお話ししたいと思います。

 まず、私はこれまで何度もここで、方向性は正しいけれども、もう少し具体的な案を出していただかないと議論がしっかりできないのではないかということを申し上げてきたのですが、今回はこの案を見たら、オプトアウトの簡素化、上場企業(グループ)に限るとか、ホームベースルールの撤廃とかの具体案が落としどころというか、盛り込まれているということで、非常に喜ばしいと思うのですが、ただ、今日、初めて審議会でこれらのほとんどの点について総意としてこの案に盛り込むというお話が出てきて、ここで皆さん意見を言うわけですけれども、結局、ほぼ反映しないで、しっかり議論しないで提出することになってしまうのは非常に残念だと思います。

 上場企業(グループ)等という具体案は、これまで委員会で議論して、大企業とかいろいろな意見はあったのですけれども、具体的な議論というのはしていませんし、ホームベースルール撤廃というのも、意見としてはもちろん出てきてはいるのですけれども、これしましょうねというような総意というところまで議論してはいないと私は思っているのです。私はそもそも、このワーキング・グループの結論とかこの案も見てなくて、結論というのはまだ出てないぐらいに思っていたのに、日経には実際、報道がされていました。これに関しては、正確な報道ではなかったとか、どこかから漏れたとか説明されたのですけれども、それでこれは案だからとも言われたのですけれども、実際、今日ここで初めてこの場で議論して、それで取りまとめになってしまうと、結局、日経に出たとおりにほぼなってしまうのだなということで、議論する、私としては、もっと早めにこういったことを出していただいて、やはり非常に慎重に考えなければいけないことなので、もっと委員みんなで検討するほうがよかったのではないかとやり方として感じております。

 内容についてですが、ファイアーウォール規制の緩和というのはもともと、これは何度も申し上げているのですけれども、規制緩和なのに、競争促進という形だけではなく、やはり銀行系証券の取扱い高が増えるのではないかとか、銀行と証券のグループ化が促進されるのではないかということが常に気になっています。アメリカでも同じように、銀証の分離というのはあったわけです。グラム・リーチ・ブライリー法でほぼそれが撤廃されたわけですけれども、その後、グループ化が進んで、弊害もあったというのは周知の事実だと思います。

 情報というのはやはり目に見えないもので、それを受け取って使ったかどうかというのを後で検証するのは非常に難しいという性格を持っていると思うのです。そのために、事前規制というのをしてきたのは、そもそもそういったことがあるために、事前遮断というほうが効果が高いから残ってきたというところがあったのではないかと思います。ですので、今回、この規制を緩和するなら、やはり、厳しくそれを事後的に取り締まらなければいけないということになると思うのですが、今回、もちろん委員の1人としても責任はあるかもしれませんが、モニタリングや監督指針の強化とか、実効的にこういったことを確保するというような具体性を欠いた形でしかその対応が書かれていなくて、今後の課題になってしまっていて、これが本当にちゃんとできるのかという点に若干私としては不安を感じています。

 それに関連して、今回、先ほど上柳委員の御意見にも多少関係があるかもしれないのですが、規制が守られなかったときの対応についての検討をあまりできなかったと思うのです。日本の金融機関に対する、特に銀行に対する、いわゆる当局のエンフォースメントという形でこれまで議論にあったかと思うのですけれども、そういった罰則、これが、グローバルスタンダードとは異なっていると思います。特に罰金を科していないというところが異なるかと。どちらの方法がいいという問題ではないのですけれども、例えば、金融庁が依頼した「主要国の利益相反管理・顧客情報管理等に関する当局等によるモニタリングに関する調査報告書」ですか。こちら見ると、アメリカもイギリスもドイツも当然、罰則として罰金を取るということをしているということが説明されているわけです。そういった意味では、事後的な罰則とか対応に関しても、比較する必要があったのかなということを感じています。このファイアーウォール規制を撤廃してグローバル化や国際競争を進めると言うのであれば、やはりそれが破られたときの対応という罰則に関しても、グローバル化を一緒に考えていく必要があるのではないかと思います。例えば、将来、日本の銀行が海外の銀行を脅かすようなことになったときに、欧米の金融機関は、自分たちは何かあると利益が吹っ飛ぶような罰金を科されているのに、日本の銀行は、日本ではそういったことをされてないのだという違いを指摘されるような日が来るのではないかということにも、これは非常に大きい話なのですけれども、ここにも結びつく話ではないかと思います。

 これに関連して、日本では、証券には日証協が自主規制機関として存在しますが、銀行協会のほうは正式な自主規制機関という形にはなっていないといった違いも併せて、こういったことと一緒に検討していく必要があると思っております。

 まとめますと、今回の案は、結局こういうことになるかと私も思いますけれども、ホームベースルール撤廃や、上場企業(グループ)等という範囲について、1回はここでしっかり議論したほうがよかったのではないかというのが、今日、言いっ放しでこれで終わっちゃうのかというのが気になっているところで、残念だと思っていることです。また、今後考えるに当たって、突き詰めていくと最終的に、そういう罰則の対応というところがグローバル化されないといけないという話になっていくのではないかと、そういうことを考えながらやっていくようにしていただきたいということ。

 また、細かい点に関しましては、ペーパーレスや、事業会社からの意見の吸い上げの窓口という部分を盛り込んでいただいたのは、非常によかったと思っております。

 銀行・証券、業界団体や大きい会社ですと、金融庁と意見交換ができますけれども、小さいところや個人というのは直接意見を言えないわけですから、そういったところの意見を吸い上げることをより頑張っていただくというのは非常に重要な点だと感じております。

 すみません。長くなりました。以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

 進め方の点について御注意いただきまして、ありがとうございます。例えば、今御指摘いただきましたホームベースルールや、「上場会社等」についても、今日、ぜひ御意見をいただいて、御議論していただいて、ただ、できれば最後は取りまとめの方向を出していただければありがたいと思います。ですから、もし、2度目、3度目でも、もし御意見があれば、御遠慮なくぜひお願いできればと思います。また、進め方全体については、御指摘いただいた点は今後も留意させていただきたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、次に有吉委員、どうぞ。お願いいたします。

【有吉委員】  
 どうも有吉でございます。

 私としましては、報告書案の提案内容については、バランスの取れたものという印象を持っており、内容について反対をするところはございません。事実関係についても、調査事項を大変うまくまとめていただいたという印象を受けましたので、その点も含めて、取りまとめに感謝申し上げます。ただ、既にお二人の委員からコメントがございましたとおり、特に、ファイアーウォール規制との関係については、実効的に弊害防止措置が取られていくということが重要であり、制度改正の前提であると理解しておりますので、その辺りは、制度設計であるとか、監督の面で十分に取り組んでいただきたいと思っております。そういったことを前提に、ファイアーウォール規制の見直しの提案に関して、3点ほどコメントをさせていただきたいと思います。

 1点目は、顧客となる法人を上場企業(グループ)等とそれ以外の法人に分けるという形で情報共有に関する規制を整理するという、その方向性については賛成でございます。ただ、これまでのワーキング・グループの御議論の中でも、そういったグループ分けをすることが顧客管理を煩雑化させてしまうという点で御批判もあったところだと理解しています。そういったことを踏まえますと、今後、具体的な制度設計をしていただくに当たっては、上場企業(グループ)等のほうに客観的には該当する法人であっても、今回の見直しで緩和されるような規制を適用しないで、それ以外の法人のグループのほうと同様に取り扱ったとしても、金融機関の側に追加的な負担が生じることがないようなルールを整備していただきたいというのが1点目のコメントでございます。

 それから、2点目は、今の点とも若干関連するところでございますが、報告書案の23ページのところに、「現行のオプトアウトの規定は廃止」というような表現がございます。この読み方ですけれども、上場企業(グループ)等の法人に関してのみ廃止ということなのか、それ以外の法人との関係でも、現行のオプトアウト制度を廃止するということなのか、どちらかよく分からないと思いましたので、確認をさせていただきたいと存じます。仮に上場企業(グループ)等以外の法人との関係でも、銀行のオプトアウトの規定を廃止するということですと、一部、規制強化的な方向での見直しということなのかと思うのですが、そういう理解でよいのかという点と、逆に、あくまでも、上場企業(グループ)等との関係で現行のオプトアウトの規定を廃止するという御趣旨なのであれば、先ほど、1点目としてコメント差し上げましたとおり、上場企業(グループ)等のほうに含まれる法人とそれ以外の法人をまとめて取り扱おうとした場合に、使い勝手が悪いということは承知しておりますが、今のオプトアウトが使えなくなってしまうと、現状よりも規制対応が難しくなる。こういう面もあるような気もしましたので、この点について、御提案の内容の正しいところを確認させていただきたいというのが2点目のコメントというか、御質問でございます。

 それから、3点目は、報告書案ですと24ページに「オプトインの簡素化」という記述がございます。その中に電子メールを含む電磁的方法による同意取得について言及がなされているわけでございますけれども、実務的に金融機関の対応を想像しますと、電磁的方法として電子メールも使われるとは思いますが、ウェブサイトやアプリを介して、チェックボックスにクリックするとか、そういった形での利用のほうがむしろ多くなるのではないかと思いますので、その点も踏まえた具体的な制度設計をお願いしたいというのが3点目のコメントでございます。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。御質問があったと思いますので、お願いします。

【太田原市場課長】  
 有吉委員、御指摘ありがとうございます。

 2番目の点に含まれていました御質問の部分で、23ページのオプトアウトの廃止の読み方の部分でございますが、私どもの意図としましては、これは、対象とする法人についてオプトアウトは廃止するということ、そういう流れで読んでおりまして、したがって、上場企業等グループに対しては、現行のオプトアウトの規定は廃止するということで、それ以外のところではオプトアウトは残るという整理をしております。

 3点目のところで、現実的な方法でアプリ、あるいは、チェックボックスといったような御指摘がありました。そのようなことも、ネット証券などもありますし、そういったやり方も当然入るのであろうというふうに思います。

 すいません。この機会に、先ほど佐々木委員から御指摘いただいたところで、罰則について言及がございましたが、我々も佐々木委員の仰っていることは踏まえた上で、25ページの注の82に、罰則についての記載も報告書の中で入れる形を取らせていただいております。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、次へ進ませていただきます。続いて、野村委員、神作委員、井口委員の順だと思います。野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】  
 野村でございます。どうもありがとうございます。全体観について、それから、若干の具体的な点、そして、今後についてという形で発言させていただければと思います。

 まず、全体観でございますけれども、成長資金のところについては、これまでの会合で示された内容に沿っていると理解しますので、特に違和感ございません。ファイアーウォール規制のところについては、顧客情報の管理、利益相反管理、そして、優越的地位の濫用について議論してまいったわけですが、「監督指針で定める」といった文言が要所要所で出てくるなと思いました。ただ、それだけではやはり不十分でして、既に御指摘等ありますけれども、実効性を伴うエンフォースメントをどう確保するのかというのが非常に重要なポイントになると思います。アメリカのように訴訟するというのは、正直、日本にはあまりなじまないと思いますが、そうしますと、代わるような救済策はあり得るのか。ホットライン的なものになるのかもしれませんが、そういったことが大事になると思います。罰則ということもキーワードとして挙がっておりまして、ただ、罰則は厳しくすればするほど、精緻な事実認定ですとか慎重な適用というところにもつながり得ますので、そこは悩ましい。そういったことも全て念頭に置いた措置、エンフォースメントのところを確保する体制が必要だと思います。金融サービス業の健全な発展のためには、金融サービス業者間の公正な競争の確保、これが極めて重要ではないかと思います。今回は、優越的地位の濫用にいわば焦点を当てた議論のように思いますけれども、公正な競争をゆがめる行為全般の防止が重要であろうと思いました。

 具体的なところにつきましては、2点ほど質問と確認、それから、コメントを3点ほどさせていただければと思います。

 23ページの情報共有に関する新たなオプトアウトの導入と、それから、24ページのホームベースルールの撤廃、これが大きな変更ということかと思います。包括同意ではなくて、同意不要というオプトアウト方式に今回変更するという記述になっておりますが、14ページの脚注50番、ここに包括同意に関するいろいろな要件が記述されております。これらを緩和あるいは簡素化するといった方法ではなくて、一気に不要としたのは、どのような考え方に基づくものだったのだろうかというのが質問の1点目です。

 また、23ページの脚注の75、ここに「IPO予定会社」と記述がございますけれども、このIPO予定会社というのはどのように規定されるのか。上場企業と有価証券報告書提出会社だけでは何か不足だったのだろうかという、そこのところも御教示いただければと思います。

 また、コメントですけれども、まず、ウェブサイト掲載等で可とするということですが、これは非常に大きな変更になりますので、この点についての十分な周知というのは必須だと思います。知らない間に制度が変更されて、自分たちの情報が共有されていたと企業に捉えられてしまいますと、極めて問題になると思います。また、同時に、不承認であることの意思表示、それから、それがきちんと実行されたことの確保ということについても、企業にとっては重要だと思いますので、それは、まず手続は簡便である必要があると思いますし、また、いわば、アクションを起こす手間というのが企業側に転じたと取ることもできますので、企業にとっての負担にならないということも重要だと思います。

 ホームベースルールの撤廃については、監督指針で兼職者に対する留意点を示すということが、脚注78に示されておりますけれども、これはことの性質上、ある程度、性悪説に立つような規定が必要なのではないかと思いました。

 最後に、今後についてですけれども、今回、幾つかの点で確認されたような銀証の片方だけに適用される、あるいは、銀証の体制が若干異なるといったことが問題になりますのは、そもそも論で言ってしまいますと、銀証が、いわば同様な金融サービスの機能を提供しているにもかかわらず、異なる法令により規制されていることに、基本的なところがあると言えると思います。29ページの脚注85に「社債とローン」といったような記述もございますけれども、より包括的に機能別の横断的な法制を議論するといったことは考えられないだろうかと、これは今後についてということでございますが、思いました。

 私からは以上です。どうもありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

【太田原市場課長】  
 野村委員、御指摘ありがとうございます。

 順に申し上げていきますと、まず、新たなオプトアウトに関連しまして、14ページの脚注50に示されている通知事項を簡素化することの考え方についてのご質問だったと思います。我々としては、先ほどの佐々木委員の御意見とも関連しますけれども、何か突然こういう提案をしたというよりは、これまでの議論の積み重ねで、手続的には簡素化を図るという方向性が1つあったと思います。そして、その一方で、事業法人の情報共有についての意向を反映させるということも、これまた重要な要素だったと考えております。したがって、ここの脚注50のところについて言えば、簡素化ということで、何か5割減とかそういうことではなくて、簡素化できるものは簡素化すべきではないかというような考え方で、こういう案文を提示しているということでございます。それはウェブサイトを活用するということも同じような発想でございます。ついでに、ウェブサイトの話で言いますと、周知が必要であるということは全くそのとおりでございますので、脚注73に、制度の周知徹底が重要であるという御意見について入れさせていただいております。

 次に、IPO予定会社でございますけれども、これも、今回の考え方で、資本市場の魅力向上ということも重要な観点であろうと捉えております。したがって、これから資本市場を使おうという企業ということで、IPO予定会社ということも見直しの対象の中に含めるべきではないかと考えたところでございます。

 続いて、ホームベースルールに関連して、24ページの脚注78について御指摘がございました。性悪説に立ってというようなお話がありましたが、我々としては、まさに今後、善か悪かということはともかくとして、何か弊害があってはいかんということで、種々の弊害防止策というものを後半の方に書かせていただいているというところでございます。

 そして、横断的な法制というようなお話がありました。そのようなアプローチもあろうかと思いますが、当面できることとしては、仮に法令がそれぞれあるにしても、実質的には、同じような規制を課せば同じような効果が得られるということで、今回、一部証券規制がかかっていないところについて、同じような規制を課していくというようなことで対応できないかというような案にしてございます。

 私からは以上です。

【神田座長】  
 ありがとうございました。野村委員、よろしゅうございますでしょうか。

【野村委員】  
 はい。どうもありがとうございます。

【神田座長】  
 ありがとうございました。

 最後におっしゃったような点もそうですけれども、このテーマのこのワーキング・グループでの審議の仕方というのですか、歴史を背負っている難問である部分もあるし、意見も分かれますので、今、ちょうど6月という時期でもあり、今回取りまとめができるものは、今回取りまとめて、さらに、引き続き御議論いただくということになると思います。

 私はよく「2段ロケット」という表現を使うのですけれども、先ほどの佐々木委員からの罰則問題とかいろいろな課題があるので、ひょっとすると、「2段ロケット」で終わらなくて、「3段ロケット」になって、今、野村委員おっしゃっていただいた、横断的な法制度というようなものも「3段ロケット」のあたりでというような、そういう考え方で臨んではどうかと私は感じます。1段目と2段目で言うと、先ほど指摘があった上場企業等というあたりは、ここにも書いてあると思うのですけれども、中堅・中小企業については「2段ロケット」でさらに議論していくということになるかと思いますので、今回ぜひ、上場企業等について御意見等があればお出しいただいて、それが仮に多数の意見でなかったとしても、御指摘があったということは記録させていただきたいと思います。必要に応じて、今もしていますけれども、報告書の注記などに加えることは十分可能だと思いますので、そういう意味では、引き続きの御議論をぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、次に、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】  
 神作でございます。御指名ありがとうございます。

 部分的には非常に対立している意見がある中で、今回、取りまとめの方向性を出していただき、私はその基本的な方向性に賛成いたします。

 本日も、特に情報授受規制が問題になっていますけれども、グローバルな観点から申しますと、情報授受規制自体がグローバルに見ると非常に特異なルールであるということは認識しておく必要があると思います。では、グローバルなスタンダードは何かというと、これも繰り返しになりますけれども、インサイダー情報や法人関係情報など、守られるべき情報をきちんと管理して保護する。それから、2番目が利益相反の管理。それから第3に、これは諸外国ではあまり議論にならないのですけれども、日本の場合には、優越的地位の濫用、この3つの実質的なポイントがきちんと規制されコントロールされているのであれば、私は方向性としては、事前的、予防的な情報授受の禁止という規制は、できるだけ縮小していくのが正しい方向性であると思います。

 ただ、本日の御議論の中でも、エンフォースメント、私人によるエンフォースメント、および、行政によるエンフォースメント、司法によるエンフォースメントなど様々なレベルでのエンフォースメントが十分に機能するか、それから、監督が十分に行われるかというご指摘がございまして、それはもっともと存じます。けれども、大きな方向性としては、私は、事前的、予防的な規制で話を止めてしまうのではなくて、実質的な弊害のところをきちんと対処し、そのベスト・プラクティスを発展させていくことが重要だと思います。利益相反の管理や未公開情報の利用のあり方を含めた管理など、実質的な弊害をきちんと対応できるようにしていくことが正しい方向性だと思っております。

 その点に関して、本報告書の案で具体的に提示されている中で、私自身も発言したということもございますので、2点、お時間を頂戴できればと思いますけれども、1つはホームベースルールについてでございます。

 ホームベースルールは、私の考えでは、兼職規制がハードローのレベルで緩和され、撤廃された中で、ホームベースルールが残っているというのは、なかなか正当化できない部分があるのではないかと思います。ただ、これは佐々木委員からも御指摘があったと思いますけれども、情報については非常に管理が難しい。特に、頭の中にある情報を顧客に不利益に利用されたということについて、チェックができるような形でコントロールするのは非常に難しい面があると思いますので、ホームベースルールには確かに、一面の合理性はあるとは思いますけれども、基本的には、法の支配と申しますか、法に合わせてルールがつくられるべきだと思いますので、私自身は、ホームベースルールというのは撤廃すべきではないかと考えております。

 また、今回、見直しの対象について限定するということですけれども、私は方向としては、全ての法人について、将来的には見直しの対象になるのではないかと考えておりますけれども、神田座長の先ほどのお言葉をそのままお借りしますと、段階的と申しますか、まずは、優越的地位の濫用の危険性が少ないところ、例えば、上場会社とか有価証券報告書提出会社に限るというのは、合理性がある限定だと思います。上場会社などの有価証券報告書提出会社に対しては、法定開示が義務づけられていて、そのような会社には当然、利害関係人がある程度大勢いるだろうという前提があると考えられます。そのような会社は、当然、コーポレートガバナンスについても一定の対応がなされているだろうし、なされるべきだと考えられます。こういった会社にまずは対象法人を絞っていくというのが、1つの合理的な線引きであって、また、様子を見ながら議論を先に進めていくというのは、私は折衷的な解決かもしれませんけれども、実践的、現実的な解決の方向ではないかと考えます。したがって、もちろん、対象となる法人の範囲をどうするかというのは、まさに、本日まだ御議論いただく点かと思いますけれども、私は、上場会社とか有価証券報告書提出会社に絞るというのは、非常に合理的な線引きだと考えております。

 長くなりましたが、以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】  
 よろしくお願いします。

 私のほうは、市場制度ワーキング・グループ第二次報告書へのコメントと、最良執行の報告書の方にも簡単にコメントさせていただければと思っております。

 まず、市場制度ワーキング・グループ第二次報告書ですが、事務局には非常に多様な意見をまとめていただきまして、ありがとうございます。前段の成長資金の供給のあり方、それから、後段の情報授受規制についても、私の認識では、これまでの審議会での議論・審議された内容が十分に盛り込まれていると思っておりまして、報告書案に賛同したく思っております。

 最初、成長資金の供給のあり方ですが、報告書に記載していただいています施策を実行することによって、私は主に上場企業に投資をしている機関投資家ですが、将来有望な上場企業になり得る非上場企業を育成することは重要だと思っています。また、上場だけではなくて、非上場企業にとどまっている企業、この選択肢もあると思いますので、報告書にも記載がありますように、そういう企業に機関投資家から資金供給ができるように、非上場企業株式を売買するためのセカンダリーマーケットの整備、あるいは、機関投資家からベンチャーキャピタルファンドやPEファンドに資金が流れるといった制度整備も重要と考えております。

 もう一つの情報授受規制についてですが、国際競争力強化、あるいは、資本市場の国際化ということが、機関投資家から見ると非常に大事になってくると思っておりますので、規制緩和の方向性は正しいと思っております。ただ、企業へのアンケート結果でも明らかになりましたように、企業が自らの情報を管理したいという意向も強いということを考慮しますと、報告書にありますように、国内法人においては、現状のオプトアウトの効果を最大限発揮できるルール改正にとどめるということが妥当ではないかと考えております。また、優越的地位の濫用防止等の観点から、資本市場を活用できない上場企業(グループ)等以外の企業においては、基本、現状のルールを継続することも、これまでの審議会での議論を踏まえると妥当ではないかと思っております。

 ただ、日本の資本市場の国際化等を考えますと、今後、弊害防止措置等の整備が済んだ段階では、神田座長がおっしゃったように「2段ロケット」あるいは「3段ロケット」となるかもしれませんが、上場企業(グループ)等以外にも、今回のルールを広げていくという方向の検討も必要になってくるのではないかと考えております。

 最良執行に関する報告書ですが、報告書で示していただいていますように、機関投資家は売買取引量が多いということで売買に関わる執行コストも非常に大きくて、個人投資家とは全く異なる状況にあると思っています。ですので、機関投資家は、マーケットで提示されている市場価格だけでは売買執行の判断ができない状況にあります。

 ということで、今回の報告書に示していただいていますように、最良執行方針においては、個人投資家と機関投資家を分けるということ、個人投資家の方は価格を重視して、かつ、投資家保護の観点から、SORあるいはダークプールの活用に際して透明性を求めるという考え方は極めて妥当と考えております。長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、原田委員、どうぞお願いいたします。

【原田委員】  
 ありがとうございます。取りまとめの作業も、過去の議事録などをしっかり取り込んでいただきまして、ありがとうございます。

 2点プラスアルファぐらいで申し上げたいと思います。先ほど、神田座長のほうから議論していいということで、2度目、3度目でも繰り返し発言してよいと御発言いただきましたので、繰り返しになりますけれども、ホームベースルールに関しましてと、あと、オプトアウトの対象になる上場企業に関するところで申し上げさせていただきます。

 まず、ホームベースルールですけれども、それほど議論したかなということをまず考えまして、第4回目と第8回目の事務局資料に説明があることを確認しました。そして、ごく少数の委員から意見があったということも確認いたしました。第4回目の事務局資料を見ますと、情報授受規制以外の諸規制の中に、このホームベースルールのことが入っておりました。あと、8回目に関しましては、委員から出た意見として、ホームベースルールについては、予防的規制のさらなる予防的規制に位置づけられるという書き方もありました。それで、この規制についてですけれども、今回のこの報告書案を確認いたしましたところ、これは情報授受規制とセットになっているということを感じました。いきなり撤廃であったということが、少々、この形でいいのかというふうに疑問に思ったところとして残っております。例えば、第4回目の議論ですと、情報授受規制以外の諸規制の中に、外務員の二重登録禁止もありました。こちらのほうについては、継続して審議ということになっていますけれども、同列にありましたホームベースルールがいきなり撤廃になっていることについて、少々解せないところが残っております。これがまず1点目であります。

 そして、2点目としまして、23ページにある、オプトアウトの対象になっている上場企業等の「等」に関するところであります。この点に関しましては、先ほど有吉委員からも質問があったところでありますけれども、脚注73にも書き出していただいているとこですけれども、脚注73にも「等」が残っておりまして、よく分からない部分があります。例えば、会社企業以外の法人は入ってくるのかですとか、そういうところについて、事務局にお伺いさせていただければと思います。そして、23ページのオプトアウトのところで、自社のウェブサイトに掲載するだけでよいとする、例えば・・・と書いていただいております。けれども、このように明記いただくと、例えば、ではなくなり、必ずそうなるような気がいたしました。ですので、もう少し踏み込んでいただいて、例えば、クリックしたら意思表示ができるようにするなど、事務的にプラスアルファの対応をできる部分もあってもいいのではないかと考えました。ただ、電磁的な方法で簡素化するということについては、とてもよい方向性だと思いますので、継続して、少しでも簡素化、少しでも電磁化を進めてきていただければと思います。

 プラスアルファの部分としまして、恐縮ですけれども、成長資金供給のあり方に関するところで意見があります。12ページになります。ベンチャーキャピタル、プライベート・エクイティファンドによる投資のあり方に関するところでして、これも議事録に残していただくという形でしか今回は対応していただけないのであろうと思いますけれども、一番最後のところで、「国際標準に基づく公正価値ベースの時価評価を推進することが重要であると考えられる」とありますけれども、これに関係しまして、もう少し国際標準に近づけていただきたいなと思うところがタームシートのあり方です。前回、4名のプレゼンターの方々にお伺いしたときに、タームシートについて日本的な面があるのではないかということについて御質問させていただきました。何人かの方が、ベンチャー企業側のリテラシーが高ければ、こういうことは入れないこともありますという発言をなさったところが依然として非常に気になっておりまして、今後、議論するときには、タームシートの日本らしさの弊害というのがあるのかないのかというところを、適切な時期に、また、成長資金供給の話をするときにでも議論していただければと考えました。

 以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。質問の点をお願いします。

【太田原市場課長】  
 原田委員、御指摘ありがとうございます。

 幾つかありましたが、御質問になっている部分を含めですけれども、「上場企業等」という部分、これは金融商品取引法163条1項で既に「上場会社等」という定義にしておりますので、そういった既存の定義であったり、あるいは、ここの報告書の案で書かせていただいているような考え方を踏まえて、具体的な書き方というのは、今後、もしこの報告書が取りまとめられた後、内閣府令の文章を作っていくときに、さらに詰めていこうと考えておりますが、考え方としては、現在の金商法での考え方や、この報告書案の考え方を踏まえて詰めていくということになると思います。

 ホームベースルールについては、もちろん、事務局からの資料で触れたものもありますけれども、ほかにも業界の方からの要望で出てきた回もあったかと思いますので、何回か議論して、かつ、その中でも、委員から撤廃に受けた御意見というのもあったということで、すいません、ちょっと受け止め方の差があるようで申し訳ございませんけれども、我々としては、議論はしてきたと考えております。

 以上です。

【神田座長】  
 ありがとうございます。

 それで、成長資金のほうも、今、例えば原田委員が御指摘の点は、何か付け加えたりできないかということは検討させていただければと思います。その意味で、ホームベースルールについても、そもそもあまり議論してこなかったのではないかという御指摘が佐々木委員からもいただいていますので、そこは評価の問題があるかと思いますけれども、少し記載ぶりで何かできないかということも含めて、少し考えさせていただければと思います。

 それでは、先へ進ませていただいてもよろしゅうございますでしょうか。次は、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】  
 ありがとうございます。松尾でございます。報告書案の内容につきましては、かなり具体的に記載していただいておりまして、大変分かりやすくなっておるかと思いますので、特に申し上げるべきことはございません。

 今後の情報授受規制の運用につきまして、2点ほど申し上げたいと思います。

 報告書案の19ページ、20ページのあたりで、欧米の金融機関との差異ということで幾つか挙げてくださっておりますけれども、この中に情報共有の承認権者の話がありまして、欧米ではコンプライアンス部門以上というのに対して、日本の金融機関では部室店長になっているところがあるというようなことがございました。もう一つ、この情報授受の際に今後重要となる“Need to know”原則につきましても、日本のほうがやや「Need」の範囲を広く解していると思われるという御指摘があります。これら2つの点については、ぜひ厳しいほうに寄せていくということで、今後の監督指針等でも、運用面でそういった方向に持っていっていただきたいと考えております。特に“Need to know”原則に関しては、銀行・証券の間で共有される情報に限らず、証券会社内で共有する情報についても同じく、同じ範囲で共有を認めれば足りるだろうと考えておりますので、ぜひ銀証間の情報共有に限らず、情報共有に関しては“Need to know”原則を欧米の金融機関並みに考えていくという方向で運用をしていただきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、森下委員、どうぞお願いします。

【森下委員】  
 ありがとうございます。今回、報告書を適切におまとめいただいたと思います。注意すべき点ですとか様々な意見についても、脚注などで細かく言及していただいていまして、私からは修正をお願いするような点はございません。

 まず、成長資金の供給のあり方についてでございますけれども、これは制度をつくっただけではなく、今後、いかに実務において適切に運用されていくかということが大事かと思っております。その点で、一例なのですけれども、今回、特定投資家の範囲を拡充する、取り扱える商品も広げるということがございます。新しいビジネスの可能性が広がる。ビジネスというか、取引の可能性が広がるわけですけれども、だからといって、例えば、この機会に、過剰に、個人の顧客に対して「特定投資家になりませんか」というようなすごく強い働きかけを求めているとか、あるいは、様々な新しい商品の過度なセールスを求めているということではないと思うのです。脚注13においても、金融商品取引業者に適合性の原則、あるいは、何らかの行為規範のようなものを課すべきではないかという議論もあったということが記載されていますけれども、今後、特定投資家のタイプとしても広がり、かつ、取り扱える商品としても広がるわけですから、仮に法令などにおける要請がなかったとしても、金融商品取引業者の皆様には、適切な管理のあり方ですとか、説明のあり方という点について、ぜひよろしく御検討お願いしたいと考えております。

 ファイアーウォール規制に関しましてですけれども、先ほど座長から「2段ロケット」というお話がありました。どっちかというと、2段目ということにつきまして、私自身が今後の課題と感じていることについて、お話をさせていただければと思います。

 1点目ですけれども、非上場企業であったとしても、デットとエクイティの区分なく安心して良質の金融サービスの提供を受けることができるという環境を提供することが理想ではないかと考えております。ただし、今回は、優越的地位の濫用などへの懸念というものがあって、そこまでは踏み切れる段階になっていないということかと思いますけれども、そういった優越的地位の濫用の懸念ということについての適切な対応方法ということが、今後、具体的な検討が進むことによって、より多くの対象が、そういったデットとエクイティの区分のない良質の金融サービスを享受できるというような環境を目指すのが本筋ではないかと考えております。

 また、今回の報告書の中で、優越的地位の濫用の防止ですとか、“Need to know”原則といったようなことが非常に重要であるということが指摘されていると思います。それはそのとおりであると思います。ただ、これは銀証に限られた問題ではないと思うのですけれども、具体的にどういった弊害があって、どういった現状があって、どういった対策が必要なのかということについて、適切なのかということについて、また、これは学者の責務ということもあるのかもしれませんけれども、あまり具体的な検討が深まっているとは言い切れないという気もいたしております。今後、抽象的ではない、何となく優越的地位とかそういうふうな話じゃなく、本当に具体的な議論が進んでいくこと、そこを進めていくということが重要ではないかと思います。

 これは法人に関する情報についても言えまして、個人情報の領域は個人情報保護法というものもあって、どこまで利用できるのか、誰がどういった義務を負うのかということは、かなりクリアになっている部分があると思いますけれども、法人に関する情報について、誰がどういったタイプの情報について、どういった権利を持って、どういった義務を負うのかということについては、一定の議論の蓄積というのはあると思いますけれども、必ずしも深まっていない。十分なレベルに達していないという気もいたします。この情報の問題というのは、必ずしも金融領域に限った問題ではないと思いますが、そういったことについてもしっかりと議論を深めていくということが必要かと思います。

 また、金融領域に限らず、様々なサービスがグループ単位で提供されるということが多くなってきている中で、今回、外資系企業、外資系の金融機関などでは、どちらかというと、エンティティという枠ではなく、グループという枠で、業務ですとか、顧客に対する責任ですとか、そういったようなものを考えているという印象がございましたけれども、エンティティにこだわるルールというようなことがどこまで適切なのかという、もうちょっと大きな視点からの議論もなされる必要があるかと思っております。

 最後ですけれども、先ほど上柳委員から、顧客は優越的地位の影響の下にある顧客は、被害に遭った場合であったとしても、救済を求めることが難しいというお話がありました。そういうことは確かにあると思いますが、ただ、それでも、企業にとって万一不適切な取引がなされたときにどのような救済が与えられるのかということがある程度充実しているということは、やはり依然として重要であると思いますので、この点は報告書においても記載していただいておりますけれども、私法上の義務ですとか、救済のあり方ということについても検討が進められていく必要があるのではないかと考えております。

 今後の話が中心になってしまいましたけれども、私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】  
 ありがとうございます。

 特に、ファイアーウォール規制に関してはさまざまなご意見がワーキング・グループでなされた中で、それらを集約してまとめられたということで、非常に感謝申し上げたいと思います。いろいろとまだ議論は出されてはおりましたけれども、1つの方向性は出されているのではないかと思います。また、報告書の最後に、今後も継続していろいろと議論を続けるということも明記されています。こういう議論というのは今後も続けていくということは大事で、報告書でもそれを謳っていることになっていると思います。

 その際、神田座長の挙げられたロケットの比喩がいいのかどうかということですけれども、ロケットの比喩ということは、方向性が決まっているというふうに取られるかもしれません。けれども、必ずしも議論の方向性が決まっていて、規制を段階的に緩和していくというものではないと思いますので、そのような問題意識での継続的な審議というのが望まれると思います。

 今回、議論がいろいろ分かれたということもあるだけでなくて、金融をめぐる環境というのは大きく変わっていますし、情報に関する議論や概念というものも多分、10年前とこれからでは大きく変わっていくと思われます。それに伴って、金融ビジネスのあり方もいろいろ変わっていくと思われます。そういう意味では、必ずしも方向性を決めないで、今後も議論を続けていくということは大事なのだろうと思います。

 また、今回の報告書の大きな目的というのは、日本の金融市場を魅力的で活性化したものにするということでありますので、実際にこういう緩和を通じて、どのように魅力的で活性化したものになっているのかということを今後もモニタリングしながら、規制緩和の方向性というものを今後も模索していくということが大事なのではないかと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。すみません。私の目の前のパソコンが切れてしまったので、ほかに希望の方がいらっしゃったら……。それでは、松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】  
 このたびは、報告案の取りまとめ、ありがとうございます。報告案全体としては、私としては、特に違和感はございません。特に、ファイアーウォール規制について違和感はございませんが、非上場株式のセカンダリー取引についてだけ、1点だけコメントさせてください。

 以前もコメントさせていただきましたが、今回の資料2で、証券会社が仲介として間に入ることが前提となっていることが気になっております。こちらのほうは、ベンチャーキャピタル協会の赤浦オブザーバーからも御指摘がありましたが、資金調達を行うスタートアップとしては、自己募集などの選択肢も引き続き御検討いただければと思います。確かに、投資家保護の観点から考えると、証券会社が入ったほうが安全であるというところは確かな一方、成長資金の供給という観点から見ますと、資金調達した金額の一部が証券会社のほうに入って、資金供給が減るというような問題点もありますので、こちらは、利害関係者として証券会社、投資家側だけではなくて、実際に資金調達をするスタートアップ、その株主であるベンチャーキャピタル等からもヒアリングしながら、最終的に御検討いただければと思います。

 私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、佐々木委員、どうぞ。2度目でももちろん結構でございますので、佐々木委員、お願いいたします。

【佐々木委員】  
 すみません。ごめんなさい。短く一言だけお願いします。

 もう本当に忖度なく私の気持ちを申し上げたいのですけれども、1つは、今回、この案を見る前に、例えば、委員の皆様は、「ホームベースルール撤廃されるという方向ですか」と聞かれて、「そうですよ。きっと撤廃されると思います」と断言できる人はあまりいなかったのではないかと思うのです。

 私は日経を読んで初めて知ったという感じで、もちろんその議論はされていたのは分かっているのですけれども。ですので、ある意味、今日初めて、ここで撤廃ということで議論が初めてあったと思っています。だから、それはちょっとどうなのかと。もうちょっと議論してほしかったというのはどうしても思ってしまうのですが、皆さん、全くそういうことをおっしゃらないので、すごく大人だなと思いましたけれども、どうしても一言申し上げたかったのと、あと、24ページのホームベースルールのところに、「事前予防措置的である情報授受規制のさらなる事前規制」と書いてあるのですけれども、そもそも情報授受規制の緩和というのを今、検討しているので、それのさらなる事前規制であるということを理由に挙げていいのかというのは、ちょっと疑問に思いました。

 私も実は、議論を初めの頃聞いている時は、情報授受規制は、そのまま現状だとした場合に、ホームベースルールは撤廃すべきか、という感じに考えていたところもありましたので、ここの部分、この次の役職員の兼職規制見直しの趣旨が確保されるというのは理解できるところではあるのですけれども、ここの24ページについては、どのように解釈したらいいのか教えていただければと思います。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

【太田原市場課長】  
 ホームベースルールのところは、これまで議論があったことをまとめたという趣旨でございます。まず、情報授受については、同一グループの銀行・証券で業務をしていく中で、情報のフローが流れていく中で、入口のところで同意を取るという、その入口規制、事前規制の話があった。それがメインのイシューだったと捉えております。

 それに加えて、ホームベースルールについての位置付けとしては、銀証の兼職はいいのだけれども、アクセスについて制限するというのは、また更に重ねての規制ではないかという趣旨、そういう御意見だと捉えていまして、大事なことは、結局、その情報を使って弊害が生じるかどうか。利益相反でありましたり、インサイダー取引でありましたり、優越的地位の濫用でありましたり、そういった業務フローの下流のほうに当たるところを手当てしていくというのが筋ではないか、国際的なやり方ではないか、そういうような御議論だったと受け止めておりますので、なるべく、事前のところで緩和できるもの、緩和をした上で事後のところで手当できるものについては簡素化を図っていく、そういう趣旨でまとめたというものでございます。

【古澤企画市場局長】  
 じゃあ、一言おわびを。

【神田座長】  
 どうぞ、局長。

【古澤企画市場局長】  
 すいません。私からも一言おわびを申し上げたいと思います。

 今回のファイアーウォール規制については、御案内のとおり、去年の秋から相当ご議論いただいたところです。佐々木委員から、ホームベースルールの撤廃というのは唐突じゃなかったかという御意見をいただいたところですが、あわせて、我々としては、今回、それぞれの回で御議論いただきたい事項というのは、それなりに何回か重ねてやらせていただいたのと、あと、これは確かに振り返ってみると足りなかったと私も反省しますのは、委員から御意見いただいたことにつきましては、その次の会議でなるべく丁寧に書こうと思ったのですが、何かそういうところの御説明なり、書きぶりが十分丁寧でなかったので、多分、佐々木委員のような御指摘をいただいたのかなという気がいたします。

 今回の進め方について、特にホームベースルールについて、御意見いただいた点については、最後の報告書の中でも反映したいと思いますし、本件については、市場制度ワーキング・グループにおいて、引き続き御議論いただくと思いますので、御指導のほどよろしくお願いいたします。

【佐々木委員】  
 ありがとうございます。

 私は、進め方というか、意見をすごくいつもまとめてくださっていて、今日どう議論するかというのを示していただいて、それはすごくよかったと思っているのです。ただ、ホームベースルール撤廃でという方向性みたいなことをはっきり出して、じゃあ、今日これについて意見がある人は言ってくださいみたいな回がなかったので、ちょっとそれが残念だったというだけですので。すいません。全体的な進め方に関しては、問題ないと思っております。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。委員の皆様方でさらに発言等があれば承りますけど、いかがでしょうか。それでは、オブザーバーの皆様方から、もし御意見があれば承りたいと存じます。恐縮ですが、お一方3分以内程度を目安でお願いできればと存じます。チャット欄に記入いただければと思いますが、いかがでしょうか。どうも大変失礼しました。武田委員から御発言の希望を今いただきました。武田委員に先にお願いしたいと思います。どうぞ。

【武田委員】  
 ありがとうございます。まず、報告書案を取りまとめいただきまして、ありがとうございます。事務局関係者の御尽力に心より感謝申し上げたいと思います。

 まず、成長資金の供給のあり方については、賛成の立場です。銀証ファイアーウォール規制見直しについて、意見を2点申し上げたいと思います。

 1点目は、銀証ファイアーウォール規制の実効的な弊害防止措置に関してです。既に、何人かの委員から御指摘がございましたけれども、顧客情報管理、利益相反管理、優越的地位の濫用防止に関しまして、監督指針で示すということですが、どう示すのか抽象的であるという点は、少々気がかりでございます。この点は今後、議論、あるいは精査いただくことと思いますが、例えば、大型金融機関の実務に関する記述がございましたけれども、以前にも発言致しましたとおり、日本特有の慣習、慣行がございます。例えば、銀行幹部や役員が取引先企業の役員になるなど、取引先企業との関係では、欧米と異なる慣習・慣行がございます。私は、そうしたことがあるから規制を続けるという発想ではなく、むしろ、規制の見直しにより金融サービスを高度化し、国際金融市場においても、日本の存在感を高めると同時に、日本の銀行と企業の関係、慣習・慣行をコーポレートガバナンスの観点と併せて見直し、ともに改善していくべきではないかと考えます。ぜひ、最終報告書においても、こうした点には言及をいただきたいと考えます。

 2点目は銀証ファイアーウォール規制見直しの目的についてです。今回の見直しによって期待されるゴールが実現できるかどうかは極めて重要だと思います。金融資本市場の発展は私も重要だと思いますが、これは金融業界から見たゴールであって、我が国としては、本規制の見直しをきっかけに、金融サービスの高度化と目利き力の高まりにより、顧客の課題の解決や、企業のイノベーション創出が促され、結果的に日本の社会課題が解決するとともに、経済力や持続可能性を向上させること、これが最終ゴールであると思います。本ワーキング・グループでも途中で示された企業アンケートでは、残念ながら、そうした期待は示されておりませんでした。したがって、報告書では、今申し上げたような、最終的なゴールを明確にするとともに、これで終わりではなく、規制見直しの後に、様々なデータの分析や、今後も一定期間を置いて企業側からの意見の把握を継続するなど、目的を果たせているのか、あるいは、果たせていないとすると何を改善すべきなのか、金融庁としてもモニタリングし、目的に一歩でも二歩でも近づき前進していければと考えます。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、オブザーバーの皆様方、特に御意見等ございませんでしょうか。全銀協の上野オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【上野オブザーバー】  
 全国銀行協会の上野でございます。

 まず、全国銀行協会としては、企業や家計が抱える様々な課題の解決、それから、グローバルに競争力ある金融資本市場を実現するために金融業が最大限貢献していけるように、ファイアーウォール規制に関する骨太な議論、一連の規制のパッケージとしての見直しをお願いしてまいりました。そうした中、本日、第二次報告書(案)において、上場企業(グループ)等の簡易なオプトアウトへの移行と、ホームベースルールの撤廃を盛り込んでいただきました。第一次報告での情報授受規制からの外国法人の除外に続き、また1つこの議論が前進したものと捉えており、銀行界としては、大筋賛同いたしたいと考えております。神田座長、メンバーの先生方、金融庁の皆様の御尽力に感謝申し上げます。それと同時に、中堅・中小企業との個人に関する情報授受規制や、外務員二重登録禁止規制、発行体向けクロスマーケティングなどを含む引受関連規制については、ワーキング・グループで継続検討していく残課題と明記いただいております。今後の残課題の継続議論も極めて重要と私どもも考えております。

 その上で、報告書と今後の議論において、私どもが重要と思う3点を申し上げます。

 まず、1点目ですが、簡易なオプトアウトの方法論についてです。報告書にも明記されている点ですが、監督指針上で手続の詳細が規定されている現行のオプトアウトが必ずしも積極的に利用されていないという実態も踏まえ、新たなオプトアウトについては、今回の大胆な見直しの趣旨が没却しないような、文字どおり、簡易な制度設計をしていただくことを強くお願いしたいと考えております。

 2点目は、簡易なオプトアウトの対象となる企業の範囲についてです。資本市場の活用、銀証一体のサービスへのニーズ、これは資金の調達サイドに限られず、M&Aや資金の運用サイドにも多く存在すると考えております。報告書に記載いただいた「上場企業(グループ)等」の「等」の記載については、こうしたニーズを有する、例えば非上場の大企業、あるいは機関投資家、ファンドといった、上場企業(グループ)に類するお客様、こういったお客様にもしっかりと緩和メリットが享受いただけるように、措置をいただければと考えております。

 3点目は、検討の時間軸と不断の見直しの必要性についてです。ポストコロナを見据えた、中堅・中小企業の事業再編、事業承継や競争力の回復、次世代の新たな企業、産業の育成は待ったなしの課題と認識しております。コロナ禍の中、事業者の皆様が必死に事業をつないでいるという状況です。そうした中、官民を挙げて資金繰り支援で支えている間に、早急に残課題を検討し、体制を整えることが必要であると考えております。様々な論点が残っておりますが、例えば、必要な法改正を来年の通常国会に提出することを目指して議論を進めていただくことをお願いいたします。

 また、さらに、先の話となりますが、今回の議論を踏まえ、最終的なワーキング・グループの結論に至った後も、企業や家計が抱える様々な課題の解決、そしてグローバルに競争力のある我が国の金融資本市場の実現が果たされているかについて、俯瞰的に、継続的に点検いただいて、制度面の見直しが必要な場合には、不断の検討を行っていただきたいと考えております。

 最後になりますが、今回の規制緩和をしっかりと活かし、私どもも金融産業として、顧客本位の業務運営を徹底しながら、自らのサービスの高度化に邁進してまいります。加えて、今回の措置の設計詳細の検討及び今後の残課題の骨太な検討につきまして、ぜひお願いしたいと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、次に、日証協の荻野オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【荻野オブザーバー】  
 まずは、様々な御意見が出てきた中で、報告書案を取りまとめいただきました事務局の御尽力に心から感謝したいと思います。今回の報告書の内容でございますけれども、証券業界としましても、資本市場の一層の機能発揮と、顧客保護、利便性の向上に貢献すると前向きに受け止めております。その上で、幾つかコメントを論点についてさせていただきたいと思います。

 まず、1つ目は、情報授受規制と新たなオプトアウトについてでございます。報告書案で示されました新たなオプトアウトは、事業法人の意向を適切に把握して、その意向に沿った取扱いが可能となるよう、必要な対応が図られていることが重要とされ、自社の情報は自社で管理したいという事業法人の意向を取り入れていただいておりまして、証券業界としても、基本的には賛成したいと考えています。ただ、あわせて、事業法人がその意向に沿ってこのオプトアウトを選択等する場合には、事業法人からの懸念も踏まえまして、この意思表示をしやすい工夫を同時に実施する必要があると考えております。

 2点目でございます。また、このオプトアウトの対象についてでございます。委員の先生からも幾つか議論がございましたけれども、報告書案では、「上場企業(グループ)等」とされまして、具体的に、「上場会社のほか、有価証券報告書提出会社、IPO予定会社や上場会社等を含む、それらの会社のグループ会社を含む」とされまして、やや曖昧なところが見受けられるかと思っております。この点につきましては、事業法人の懸念等も踏まえまして、例えば、東証のプライム銘柄で区切ることが適当ではないかという意見もございます。一方で、この辺りにつきましては、報告書案の段階での大枠の議論においては、範囲を狭めずに、細目を詰めるところで議論をきちんとしていってほしいという意見もございました。

 3点目でございます。こちらはオプトインの簡素化のところでございます。中堅・中小企業や個人について、昨今の手続のデジタル化の進展を踏まえまして、電磁的方法による同意取得の整備等、オプトインの簡素化が図られることについては、証券業界としては、基本的に賛成したいと考えております。

 4点目でございます。ホームベースルールについてでございます。先ほどもいろいろ御意見が出ておりましたけれども、報告書案は、規制の撤廃を行うことが適当であるとされたところでございますけれども、情報授受規制における議論と比較しますと、当ワーキング・グループにおいて本件に関する議論が十分に尽くされていないという認識でございます。銀行と証券の兼職がデフォルトになり、かなり普及したときに、事業会社からオプトアウトの表明があった後の情報管理について、この兼職している人間の頭の中に情報のウォールを立てることができないということもございますので、様々な規制が有名無実化しかねないと認識しております。仮に本規制を緩和する方向であるのであれば、証券業界としては、慎重な議論が必要だという意見を述べたいと思います。

 それから、弊害防止措置についてでございます。今回の情報授受規制等の緩和に伴いまして、報告書案では、法令における規制整備に加えまして、監督指針等を見直すことにより、金融機関自身の内部管理の強化を促していくことが適当とされ、また、当局におけるモニタリングの強化等、実効性の確保に向けた取組を行っていくことが適当とされております。規制緩和に併せて弊害防止措置を講じるという全体的な方向性については、証券業界としても賛成したいと思います。ただ、報告書案では、緩和の部分は断定的な表現で記載されておりまして、弊害防止導入の部分については、こちらの記載が、コミットメントが不足している部分があるのではないかと考えております。この点につきまして、弊害防止の中身につきましては、緩和と管理強化のバランスが重要であり、弊害防止措置は、プリンシプルベースで対処することが妥当であるという意見と、欧米では、問題が生じたときに莫大な制裁金が課されるが、日本ではそれと異なる法制度、自主規制があるがゆえに、それなりの弊害防止措置が必要であるという指摘がございました。また、規制緩和と弊害防止措置を講じる時期につきましては、これは同じタイミングにすべきではないかという意見もございます。

 今後の対応についてでございますけれども、報告書案では、中堅・中小企業や個人顧客に関するファイアーウォール規制の取扱いについては、今後の検討とされたところでありますが、検討に当たっては、本規制の保護法益であります、顧客情報の適切な管理、利益相反管理、優越的地位の濫用防止の観点から、中堅・中小企業や個人顧客の声も聞いて、慎重な検討をお願いしたいと思います。

 最後に、一言だけ申し添えさせていただきます。今回の緩和や簡素化によりまして、一定の成果があったということを確認した上で、次の一歩を進めるべきではないかと思います。また、何のための議論なのか常に立ち返って、緩和のための緩和となってはいけないという意見があったということを申し添えさせていただきます。

 以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、次に、国際銀行協会、平山オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【平山オブザーバー】  
 発言の機会を与えていただきまして、短期間でこのような報告案をまとめていただきまして、ありがとうございます。

 ファイアーウォール規制について述べさせていただきます。今後も本件の議論は継続されると伺いまして、安心しましたが、今から申し上げる5つの視点で議論していただければと存じます。

 1点目、緩和の対象とされる顧客の範囲についてです。緩和の対象を「上場企業(グループ)等」とする旨御提言いただき、その脚注にて「上場会社等」と例示していただきました。ありがとうございます。ですが、それでもまだ不十分かと考えております。資料脚注84にありますとおり、成長のために総合的な金融サービスを所望しているのは実は中小企業でなかろうかという観点から、大企業に限らず、資本市場へのアクセスを検討される中小企業や、また上場会社等に該当しない大企業なども対象とすべきと存じます。これまで、ワーキング・グループの席上、どちらかというと、顧客イコール発行体という目線での議論がされてまいりましたが、御案内のとおり、資本市場には市場仲介者または投資家としての金融機関、資産運用会社がおられます。つきましては、例えば、銀行、金融商品取引業者、保険会社、系統中央機関、信連、信組なども緩和の対象にしていただきたいと存じます。

 2点目です。適用除外範囲の明確化についてです。現在の規制では御案内のとおり「法令等に基づく場合」顧客同意なくして顧客情報の共有が許容される旨、定められております。昨今、法令等に基づき、AML対応またはKYC対応が必要です。外資系金融機関においては第1線の担当者が兼職していることが多いのですが、AML目的、または、KYC目的であっても情報共有が可能だとの解釈は示していただいておりません。海外では、FATFが3線管理を求めております。その中でも第1線での知応が重要であると位置づけております。我が国でも、最近改定された「マネロン対策等ガイドライン」までも含めて、法令と同等の拘束力がある旨貴庁より情報発信いただいております。これらに鑑みまして、情報共有可能である旨を明確化していただくようお願いいたします。

 3点目です。親法人と子法人範囲の見直しの御提言です。この点、今まで議論されていなくて、この場で申し上げるのは非常に憚られるのでございますが、「親法人等」・「子法人等」の範囲の見直しが必要だと思っております。と申しますのは、情報授受規制の制度趣旨は、銀行・証券連携に一定の歯止めをかけることであるところ、例えば、持ち株会社下に複数の証券子会社がある場合でいずれも親法人等・子法人等に該当すると規制対象となってしまいます。本来の制度趣旨を踏まえて、御検討いただければと存じます。

 4点目です。外務員の二重登録規制の見直しについてです。本日の資料1の24ページ、そして、資料3におきまして、ホームベースルールの撤廃等の言及がございました。これは非常にありがたいことでございます。できれば、今後は、外務員の二重登録禁止も撤廃の方向で議論していただけると幸甚です。誤認防止措置等を高度化することで、弊害は防止できるのではと思うからです。

 最後に、“Need to know”原則について述べさせてください。これまでのワーキング・グループ席上、“Need to know”原則が議論されてまいりました。また、昨年12月1日のワーキング・グループでは、米国の事例として「非公開重要情報へのアクセスは、当該情報を知る必要性がある者に限定される」と御説明をいただきました。弊協会会員は、この必要性を“顧客の利益に貢献するために情報にアクセスする必要がある場合”と理解し業務を遂行しております。

 今後、“Need to know”原則も議論されると存じますが、その際は、業者の利益ではなく、“顧客の利益のために”情報にアクセスの必要性があるという点を留意いただいた上で、また、本邦“Need to know”原則がほかの主要国と平仄の合う内容となることを要望させていただきます。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。特によろしいですか。それでは、すみません、時間もほぼ近づいておりまして、取りまとめについてどうするかということについてお諮りをさせていただきたいと思います。

 今日御説明いただきました第二次報告(案)は、成長資金のところと銀証ファイアーウォール規制の見直しという2つのところから成り立っているのですけれども、大筋においては、委員の皆様方から御賛同いただいていると思っております。

 ただ、一部の点については、大変重要な御指摘をいただきました。特に、1つは、ファイアーウォール規制のほうですけれども、事前規制の緩和という方向なために、それとセットというか、弊害防止措置、これの実効性の確保と、あるいは、実効性を高めるという点についての御発言をいただきました。報告案に書いてはあるのですけれども、さらに御指摘をいただいたというのは、監督指針だけでいいのか、あるいは、それ以外のことももっと併せて議論したほうがいいのではないかという御意見だと思いますので、そのいただいた御指摘の趣旨をうまく書けるかどうかを検討させていただければと思います。

 それから、もう1点は、ホームベースルールのところで、議論を十分していないのではないかという御指摘をいただいたと思いますので、中身について、今から議論するということはちょっと難しいということもありますので、全体については、さらに、このファイアーウォール規制については、「2段ロケット」という比喩はあまり適切でないという御指摘もいただきましたけれども、見直しという意味でいえば、「2段ロケット」という比喩でもいいと思うのですけれども、いずれにしても、引き続きの御議論をお願いしますので、そういうことも勘案した上で、何か報告書に書き加えるなり、御指摘の趣旨をうまく書けないかということがあるかと思います。

 そのほかの点につきましても、成長資金のほうにつきましても御指摘がありましたし、そういうようなことがありますので、今日いただきました御指摘を報告にうまく反映できないかどうか検討させていただければと思います。あわせて、表現の平仄など「てにをは」ですけれども、精査させていただければと思います。

 皆様方にもう一度この会議を開いて御参加いただくというのもどうかという感じがいたしますし、そこまでの必要はないように私には思われますので、もちろん、もう一度開催すべきだという意見が多数であれば、開催を検討させていただきますけれども、そうでなければ、今言った作業は私と事務局にまずは御一任いただき、その上で、委員の皆様方には最終的な修文というか、報告の案というか、それを御確認いただきます。それはメール等で御確認いただくという趣旨でございますけれども、その上で取りまとめとさせていただいてはどうかと思います。なお、第二次報告の公表等の取扱いという問題が別にあるわけですけれども、これは大変恐縮ですけれども、私に御一任いただければありがたく存じます。

 以上のようなことで、もう1回この会議は開催しないで、この時点での第二次報告というものの取りまとめをさせていただきたいと思いますけれども、そのようにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

【神田座長】  
 オンライン会議で、皆さんにビデオをオフにしていただいているので、顔の様子は分かりませんけれども、特に御異存、御異議の発言はないと認めさせていただきますので、今のような方法での取りまとめの方針を御承認いただいたということにさせていただきます。今後、皆様方には、個別あるいはその他の方法で御確認、その他の御連絡を事務局からさせていただきますので、御協力のほどをよろしくお願い申し上げます。

 それでは、このワーキング・グループですけれども、昨年10月以来、11回にわたって議論を重ねてまいりました。メンバーの皆様方には、大変お忙しい中を積極的に、また、建設的な御議論を多数出していただきまして、誠にありがとうございました。また、こういうコロナの状況の下で、オンライン開催という何かと不自由というか、そういう状況の中で積極的に毎回御参加を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。先ほどからも出ておりますように、引き続き、このワーキング・グループにおいて検討をさせていただきますので、そういう意味では、まだ続くということでございます。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 ということでして、第二次報告と最良執行のあり方等に関するタスクフォース報告書に関する今後の流れというか、時間的なこと等について、事務局から御説明をお願いいたします。

【太田原市場課長】  
 委員の皆様方、本当に長い期間、御議論いただきましてありがとうございました。そして、今回、事務局の至らない点も多々御指摘受けまして、大変恐縮でございます。また、今後に活かしてまいりたいと思います。第二次報告の案につきましては、先ほど神田座長からありましたとおりに、今後、作業を進めたいと考えております。その上で、完成しました後は、金融審議会総会へ報告をするという段取りを想定しております。また、本日ございました、最良執行のあり方等に関するタスクフォースの報告書につきましても、同じく、金融審議会総会へ報告する予定でございます。

 私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。今後の日程等につきましては、また事務局から御案内をしていただきます。それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。本日も最後まで大変熱心に御参加いただきまして、ありがとうございました。以上で終了といたします。ありがとうございました。

 

―― 了 ――
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金融庁 03-3506-6000(代表)

企画市場局市場課(内線:2352、3970)

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