金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第15回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年2月17日(木曜)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室
     

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第15回)
令和4年2月17日


【神田座長】 
 皆様、おはようございます。予定の時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。ただいまから市場制度ワーキング・グループの第15回目の会合を開催いたします。

 皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただき、誠にありがとうございます。本日の会合ですけれども、オンライン会議を併用した開催とさせていただき、会議の模様はウェブ上でのライブ中継とさせていただいております。また、議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 いつものことで恐縮ですが、オンライン参加をされる皆様方におかれましては、2点注意事項がございます。1点目として、御発言されない間はマイクをミュート設定とし、ビデオもオフにしていただければと存じます。それから、もう一つ、発言を希望される際に、オンライン会議システム上のチャットを使って、全員宛てにお名前または協会名などの組織名を御入力ください。私のほうでそれを確認し、御指名をさせていただきますので、そうしましたら、御自身の名前を名乗っていただいた上で御発言いただければと思います。恐縮ですが、御発言が終わりましたら、またマイクのミュート設定をしていただければと思います。

 本日のテーマということになりますけれども、事務局から成長・事業再生資金の円滑な供給に関する事務局説明資料について御説明いただきます。その後で皆様方に御議論をしていただきたいと思います。

 それでは、まず、事務局の説明資料について、事務局からの御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【島崎市場課長】 
 それでは、お手元の資料1に沿って御説明させていただきます。

 まず、1ページ目、今回は3ポツの成長・事業再生資金の円滑な供給について御議論いただければと思います。

 2ページ目でございますが、目次にもありますとおり、まず、これまでの取組を少し振り返りさせていただいた上で、成長・事業再生資金の円滑な供給に向けた問題意識と課題ということで、全体像、問題意識から御説明させていただきます。

 3ページ目でございます。これまでの取組として、市場制度ワーキング・グループの皆様方に御議論いただきました第二次報告について、非上場企業に対する成長資金の円滑な供給等について報告をまとめていただいたわけですけれども、現在、制度化に向けて作業している分野というのが、左側の特定投資家(プロ投資家)による資金供給の促進でございます。こちらは府令の改正予定がございます。また、非上場株式のセカンダリー取引の環境整備については、日本証券業協会の規則の改正予定ということで、いずれも制度化に向けた動きを進めさせていただいています。

 4ページ目でございますが、その中でも特定投資家による資金供給の促進ということで、個人の特定投資家の要件の弾力化を議論いただきました。今、純資産、投資性金融資産ともに3億円以上かつ取引経験1年以上でございますが、この特定投資家となり得る投資家の範囲を適切に拡大する観点から、下の図のようなことでございますが、新たに年収、職業経験、保有資格、取引頻度を勘案した形で拡大するというようなことについて、現在、府令の作業をさせていただいております。

 続きまして、5ページ目以降というのが全体の問題意識と課題でございます。

 6ページ目に沿って御説明させていただきます。成長・事業再生資金の円滑な供給に向けた問題意識と課題ということで、足元、イノベーションの担い手である国内スタートアップへの資金供給というのは増加していますが、欧米と比べて、まだその規模は小さいです。その背景として、国内の年金基金等のアセットオーナー等による資金供給が限定的であるとの指摘もございますし、また、昨年来御議論いただいていますが、非上場段階で大きく成長しないまま小規模なIPOを行う企業が多く、上場後も大きく成長する企業は少ないとの指摘があるといったような問題意識があろうかと思います。

 6ページ目の左側でございますけれども、1番目として、先ほどのような話ですが、アセットオーナー等による資金供給の拡大、それから、2番目、多様な金融仲介機能の発揮ということで、先ほど申し上げた非上場段階、それから、上場後の継続的な成長支援の観点から、上場前後を跨いだクロスオーバー投資の拡充に期待するですとか、あるいは、下のほうは前回の市場インフラの回でも御議論いただきましたけれども、セカンダリー取引についてでございます。

 それから、②金融サービス・支援の高度化でございますが、VCの運用力高度化という課題ですとか、あるいは、エクイティ以外の資金調達のニーズに対応する方策として、金融庁のほうでも担保関係についての研究などを進めているところでございます。

 コロナ後を見据えた事業再生・事業承継の円滑化に向けた金融機関の総合的な支援等々について、コロナ後も見据えて、足元の資金繰り支援にとどまらない支援について、どう資本市場が機能していけるかという論点があろうかと思います。

 右側に行きますと、企業の成長に資する上場の促進ということで、大きくは、1つ目が、IPOプロセスのあり方、それから、2つ目が、上場を含むエグジットでございます。IPOプロセスのあり方については、公開価格設定プロセスの見直しということで、1つ、公開価格と初値の乖離が大きく、資金調達に影響しているとの指摘などを踏まえた動きがございますので、御議論いただければと思います。

 それから、上場審査のあり方で、ビジネスモデル等々の多様化に応じた上場審査の確保が必要ではないかということで御議論いただければと思います。それから、上場を含むエグジットで言いますと、3つ、ダイレクトリスティング、M&A、それからSPACでございます。米国などにおいてIPO以外の上場手法としてSPACが利用されているが、投資家保護上の課題がある等々の指摘がございます。

 ということで、全体像・問題意識は以上のようなことでございます。

 7ページ目、8ページ目でございますが、左側は御説明いたしまして、右側、課題のところは、最後、討議事項として御説明させていただこうと思います。

 10ページ目以降でございます。先ほど申し上げました諸論点について資料をつけさせていただいていますので、随時、かいつまんで御説明させていただこうと思います。10ページ目、国内VC・PEへの資金供給主体が、我が国の場合、事業会社や銀行等が中心であり、年金基金等のアセットオーナーによる資金供給が限定的であることについて、下のほうで示させていただいています。米国データもあわせて示させていただいています。

 11ページでございます。他方、足元、オルタナティブ投資の拡大に向けた取組は、下のほうにありますように、主要アセットオーナー等についても進んでおります。そうした中で、オルタナティブ投資の専門人材確保等々の課題も出てきております。もう一つ、LP投資家による投資先ファンドに対する十分なリスクテイク、リターンを求める姿勢の弱さ、規律の不十分さという御指摘もございます。

 12ページ目でございます。昨年来も御議論いただいていますけれども、今度は受け手のファンド、VC・PE側の課題として、ファンドの運営体制、投資先の公正価値評価、それからパフォーマンスベンチマークについて、例えば、協会などによるパフォーマンスベンチマークの公表等、動きが進んできている部分はございます。けれども、もっと改善を図っていくというところの必要性等々の整備も指摘されています。監査法人側でも、例えば、公正価値評価を行える人的リソース等々ということで、アセットオーナー側と併せて、人的リソースといった点についての指摘があるところかと思っています。

 13ページ目は、次に、レイターステージにおける資金供給の拡大ということで、足元、海外のVCやクロスオーバー投資家によって国内スタートアップへの資金流入もあるところでございます。それで、引き続きの課題ですけれども、レイターステージにおける資金ニーズに応えて、市場の分断を乗り越えるクロスオーバー投資の拡充が期待されているところでございます。

 14ページ目は投資信託関係ですが、米国ですと、ミューチュアルファンドなどが非上場株式に投資する動きもございますけれども、日本では、投資信託法上こちらは禁止されていませんが、右側のほうにも参考資料を載せていますが、流動性リスク管理、それから、もう一つ、基準価格の算定における評価方法のあり方という論点がございまして、ここのところをどのように整理していくかということかと思っております。

 15ページ目がクロスオーバー投資、グロース・エクイティということで、近年の米国の動きですとか、国内でもそうした動きも出てきていますので、成長支援を行うファンドの設立の動きについて御紹介させていただいています。

 続きまして、16ページ目は、こちらは前回の市場インフラの回で御議論いただきましたけれども、特定投資家向け有価証券の取扱い、PTSにおける取扱いですとか、あるいは、株主コミュニティ等々においてデジタル化が進む中で、取引のマッチングというものがPTSに該当するかどうかという御議論がございます。また、非上場株式のセカンダリー取引の円滑化により、プライマリー取引の促進が期待されるですとか、あるいは、早期エグジットの圧力が低下するなどのことも指摘されていますので、載せさせていただいています。

 17ページ目。こちらはVCの高度化の必要性に関する指摘等、例えば、経営支援の強化ですとか、あるいは、リターン・ドリブンではないことですとか、あるいは、そういった規律付けといったことについての必要性に関する指摘があるということですとか、あるいは、ベンチャー企業に対するスタートアップと出資者との出資契約の適正化についての指針の策定も進められておりますので、御報告いたします。こちらは公正取引委員会と経済産業省の取組となっております。

 続きまして、18ページ目、19ページ目というのが、エクイティに限らないスタートアップ等々への成長資金への提供方法についてです。こちらは工場等の有形資産を持たない産業の重要性も拡大していますし、スタートアップ支援等の局面での資金供給の際にデットの選択肢ということで、ただ、担保ですとか個人保証なしには難しいという問題意識を受け、19ページにございますけれども、金融庁のほうでも有識者研究会を設定しまして検討して、論点整理を取りまとめています。問題意識としては、金融機関、事業者双方に事業の継続や発展への適切な動機付けをもたらすということかと思います。

 こうした動きの中で、昨年4月より、法務省の法制審議会担保法制部会においても取扱いをいただいていまして、金融庁も議論に参加しているところです。事業全体に対する担保権を選択肢にするということについて議論されています。

 20ページ目、21ページ目が、事業再生・事業承継ニーズへの対応ということでして、企業アンケートですとか、商工会議所等のアンケートも踏まえて、やはり地域企業の事業再生・事業承継ニーズに対しては、取引金融機関等が総合的に対応することが期待されているかと思います。

 21ページ目でございますけれども、こうした期待の中で、事業承継・再生ですと、当然、株式等についての移転が考えられるわけですけれども、そうしたことについて、これからどうしたことが資本市場として考えられるのかということの御参考資料として、これは御議論いただいた部分もありますけれども、非上場株式の投資勧誘ルールというのも1つ参考として載せさせていただきます。一部、特定投資家私募制度というものの見直しで、冒頭とも関係しますが、日本証券業協会で検討中の制度改正もございますが、禁止されている領域というのも引き続きあろうかと思います。

 以上までが非上場企業に対する成長・事業再生資金の円滑な供給の話でして、続きまして、企業の成長に資する上場の促進ということでございます。まず、23ページ目、24ページ目、公開価格設定プロセスの見直しの話でございまして、背景としまして、政府の成長戦略実行計画及び緊急提言で、初値が公開価格を大きく上回っており資金調達額が少ないとの指摘がありまして、公正取引委員会などの調査で、これは独禁法上問題となるような事案はないという結論がありますが、改善策についても記載されていまして、日本証券業協会においても、こちらは改善の余地ありということで、公正な価格発見機能の向上や、新規上場企業及び投資家の納得感の向上に向けて、実務に根ざして御検討をいただいているところでございます。

 大きく言うと、23ページの図にあります7つぐらい論点があろうかと思っております。新規上場企業への説明や情報提供の充実ですとか、あるいは、より実需を反映した柔軟な公開価格設定、公開価格設定の中立性の確保、あるいは、上場日程の短縮ですとか、あるいは、新規上場企業の意向を踏まえた機関投資家へのIPO株の配分ですとか、あとは、上場方式の多様化、安定した初値形成ということでございます。24ページ目でございますけれども、1月31日に日本証券業協会でこれらのことを取り扱います「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」で御議論いただいていまして、報告書案が出ています。24ページ目は、それに基づく改善策の主なポイントでございまして、前ページで示しました7つの論点について、現状改善策のポイントをまとめさせていただいています。

 新規上場企業への説明や情報提供の充実ということでありますと、公開価格等の設定における根拠の説明や機関投資家の需要情報の提供の規則化ですとか、説明や情報提供の充実と、納得感の向上などを目指した動きでございます。より実需を反映した柔軟な公開価格設定ということで、仮条件を超えて需要申告を行うことを可能とし、仮条件の範囲外でも公開価格を設定できるよう実務運用を見直す、ルールの明確化について記載されています。

 それから、公開価格設定の中立性の確保、利益相反管理体制についてということと、それから、上場日程の短縮というのも従来からも言われてきていますけれども、例えば、訂正目論見書の交付省略等を通じた上場日程の短縮、それから、機関投資家の方々への新規上場企業の意向を踏まえた配分というのができるということを明確化する。それから、入札方式やダイレクトリスティングのあり方の検討、それから、安定した初値形成のため、取引所と連携した検討について記載されているものでございます。

 続いて、25ページ目でございますが、取引所等々での審査では、形式基準への充足性の確認のみならず、継続性ですとか、あるいは収益性、合理性等についての実質審査が行われています。多様なビジネスモデルが出てきていますけれども、これまでの目線では評価が困難なものについての上場審査の確保なども求められているところでございます。

 26ページ目がダイレクトリスティングでございます。こちらは証券会社による引受けを伴わずに、直接取引所に新規上場する方式で、米国でも見られるところかと思います。既存株主のエグジットを目的として利用されています。投資家保護上の課題と併せてですけれども、利用しやすくするための方策等々についての検討をどう考えるか。参考でございますが、マザーズ市場では資金調達を行うことが上場の要件となっています。

 続いて、27ページ目でございまして、米国と比べますと、大企業等とのM&Aによるエグジットを行う非上場企業は少ないかと思います。こちらは現在、日本証券業協会でも検討中と聞いていますけれども、企業は原則1年以内に資金を充当することですとか、あるいは、代替使途を公表することが求められるということですので、実務に根ざした形で、どうした形がよいのかということについての検討が行われているというところかと思います。

 続きまして、28ページ以降は、SPACについてでございます。特別買収目的会社ということで、まず、28ページ目は制度の概要を示させていただいています。成長戦略実行計画ですとか緊急提言では、米国をはじめ諸外国にSPAC制度が導入・活用されていること等を踏まえ、SPACを導入した場合に必要な制度整備について検討することとされております。

 これを踏まえまして、東京証券取引所においては、SPACの導入の意義・必要性や、制度構築を行う場合の課題について検討されておりまして、2月16日に、これまでの議論を示しましたSPAC上場制度の投資者保護上の論点整理を公表されています。そちらのほう、例えば、意義・必要性ですと、価格発見機能ですとか、SPACとの合併を通じた資金供給機能によって、資金需要が大きく、企業価値の算定が困難、かつ、革新的な技術を活用するスタートアップのリスクマネー調達手段となり得るのではないのかとの指摘ですとか、あるいは、納得感のある価格をもとに資金調達を行うことが期待できる仕組みであるといったようなことが、東京証券取引所の論点整理においては、記載されているというところでございまして、そのほか制度構築を行う場合の課題についても整理されているところだと思います。

 続きまして、29ページのほうは米国における動向ということで、下の(1)SPAC上場件数でございますが、2020年に上場が急増した後に、SECの監視・規制強化等の動きもありまして、上場ペースは低下しているところを示しています。

 21年10月以降、規制強化に先駆けて増加しましたが、足元ではSPAC上場を撤回する事例なんかも増加しているといったこともございます。

 それから、(2)にございますけれども、SPAC上場からDe-SPAC完了までの投資家層は、ヘッジファンド等の機関投資家が約8割ということでございます。

 30ページ目でございます。米国SPACは、テクノロジーやヘルスケア分野の未上場企業との合併事例が多いというところでございます。下のほうの(1)(2)で示させていただいていますけれども、買収対象会社との合併後の株価というのを見てみますと、ナスダック市場と比較して低調との指摘もございます。(2)について、論文によりますと、例えばリターンについて言いますと、ナスダックと比べますと、マイナス17.9%とか、マイナス59.4%という数字も出ています。運営者のリターンについては、平均値549%、中央値257%という数字も出ています。

 不正事案の発生ですとか、あるいは、訴訟の増加が見られる中で、SECはSPAC運営者の報酬・手数料・将来情報等々に対して規制強化を行う見込みであり、2022年春までに予定となっています。

 31ページ目が米国以外における動向でございまして、諸外国でSPAC導入などの動きがある一方、海外の規制当局は注意喚起ですとか規制・監督の強化ということで、欧州で言いますと、ESMAでは、SPACは複雑なリスクを内包しており、必ずしも全ての投資家にとって適切な投資対象ではなく、個人投資家を含めるかどうかプロダクトガバナンス規制に基づき判断を行うべきですとか、フランスでは、プロ投資家向け市場に上場とかの動きもあります。英国のほうですと、これは一般投資家も対象としていますけれども、例えば、買収発表後の取引一時停止を免除するなどの拡大策のような動きもございます。

 香港で言いますと、プロ投資家に限定しておりまして、シンガポールのほうで言いますと、一般投資家まで対象に入っていると思いますが、米国よりも投資家保護策を強化して導入というふうに伺っております。

 続きまして32ページ目、33ページ目は、論点でございます。32ページ目は見取図でございまして、運営者のあり方ですとか、あるいは、情報開示、適格性の確保ということでございます、また、対象投資家層に関する論点も記載してございます。

 33ページ目でございます。制度設計の論点ということで、SPAC運営者の資質・開示・報酬等のあり方で、運営者とSPAC株主との利益相反を抑制する仕組みが必要ではないか、運営者は、株主に損失が生じる買収でも実行するインセンティブがあるとの指摘がございます。

 買収対象会社(未上場企業)に関する情報開示(買収価格の妥当性などの確保)につきましては、買収対象の未上場企業について、投資家保護に十分なレベルの開示が必要であり、De-SPAC以前の段階での個人投資家の参加を認める場合、少なくとも通常の届出書と同レベルの開示が必要との指摘がございます。

 それから、合併後の企業の上場適格性の確保で言いますと、上場適格性を確保する仕組みが必要であるとの指摘があるところです。

 対象投資家層に関する論点で言いますと、SPAC上場時からDe-SPAC完了までの対象投資家の適切な設定ということが挙げられるかと思います。SPACへの投資判断は、運営者の資質や利益相反、運営者の報酬やワラント等による株式の希薄化、買収対象会社の価格の妥当性など、一般の株式投資と比較して複雑な評価が必要です。

 従来SPACを導入している多くの法域では、個人投資家の参加が認められている一方、近年公表された枠組みでは参加を制限・禁止する傾向にあり、実態上、機関投資家中心に取引が行われている傾向にございます。

 SPAC上場時からDe-SPAC完了までの対象投資家について、「一般の個人投資家も含めるべき」、「適切なリスク管理が可能なプロ投資家(特定投資家)に限定すべき」との意見がございます。従来、日本のIPO市場は個人投資家中心であり、それを除外するとSPAC制度が利用されなくなるとの指摘、それから、一般投資家を対象とする場合に比べ、特定投資家(プロ投資家)に限定した場合には柔軟な制度設計が可能となるとの指摘もあるかと存じます。

 34ページ目は参考でございまして、米国における足元の現金償還ですとか、あるいは、PIPEsを通じた追加の資金供給について載せさせていただいております。

 最後、討議事項でございます。36ページ目でございますが、御説明してまいりましたが、アセットオーナー等による資金供給の拡大に向けてどのような対応が考えられるか、また、アセットオーナー以外にどのような資金供給の担い手が考えられるのか。それから、レイターステージにおける大規模な資金供給や、上場後の継続的な成長支援のためにどのような対応が考えられるか。それから、セカンダリー取引の円滑化など、どのような対応が考えられるか。

 それからVCの高度化、あるいは、エクイティ以外の成長資金の供給のあり方、それから、中堅・中小企業等の事業承継等の円滑化について、どのような取組が考えられるか。

 37ページ目でございます。企業の成長に資する上場の促進ということで言いますと、企業の成長に資するIPOプロセスのあり方についてどのように考えるか。それから、企業のビジネスモデルの更なる多様化が見られる中、上場審査のあり方についてどのように考えるか。

 それから、ダイレクトリスティングについてどのように考えるか。M&Aを通じたエグジットを促進するため、どのような対応が考えられるか。それから、SPAC制度の導入及び制度のあり方についてどのように考えるかということかと存じます。

 御討議のほどよろしくお願いいたします。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、今の説明を踏まえて、委員の皆様から御質問、御意見をお出しいただければと思います。今、御説明がありましたように、討議いただきたい事項は資料の36ページと37ページに挙がっています。

 ただ、本日は2周したいと思っていまして、まず1周目としまして、SPACとIPOの公開価格について皆様方に御質問と御意見をいただければと思います。これは東京証券取引所や日本証券業協会でも議論が行われているトピックでありまして、いろいろな御意見があると思われ、また、御意見を伺いたいことであるからであります。それが済んだ後、2周目といたしまして、今回のテーマ全体というのでしょうか、その他の点も含めて、御議論をいただければと考えております。

 そういうこともございまして、1周目のSPACとIPO公開価格についての御発言の目安とかは特に設けておりませんが、3、4分ぐらいになるのでしょうか。今回はタイマーとかは使用いたしませんけれども、皆様方の御判断で、適宜、簡潔に御質問、御意見をお述べいただければ大変ありがたく存じます。

 ということで、まず、1巡目といたしまして、SPACとIPOの公開価格についての御質問、御意見をいただきたいのですけれども、委員の皆様方の中で、東京証券取引所のほうの会議に参加されておられる方として、上柳委員、松本委員、有吉委員がいらっしゃると思います。また、日本証券業協会のほうの会議に参加しておられるのが神作委員というふうに伺っております。そこで、SPACとIPOの公開価格の両方について、今申し上げました委員の方々からまず先に御意見があれば賜りたいと思います。もしそういうことでよろしければということになりますが、まず、上柳委員、恐縮ですけれども、御意見があれば、ぜひお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【上柳委員】 
 ありがとうございます。なるべく短くしたいと思います。今、少し御紹介いただきましたけれども、東京証券取引所の研究会で導入をすべきか、必要がないか、両面の考慮要素であるとか、それから、先に導入されたアメリカでの実務状況とか、その後の状況を知ることができました。とりわけ、アメリカで幾つか、それから、そのほかの市場でも、アジアでも、SPAC市場を実際に利用された、当事者として利用された経験をお持ちの日本の事業会社の投資担当の方のお話は大変参考になりました。

 それから、アメリカのSPAC市場関連の法律実務の経験を豊富にお持ちの弁護士のお話も極めて有益だったと思います。資料にも反映されていると思います。導入する場合に、もし導入するとした場合ですけれども、投資者保護であるとか、あるいは、公正価格形成のためにいろいろな工夫があるというふうにお話がありまして、これも資料に反映されているのではないかと思います。

 ただ、それをどう組み合わせるかで、緩いほうばかりということだとまずいと思います。少なくとも、一般投資家が参加する市場に流通させる場合、いわゆるDe-SPACの後ということになるわけですけれども、価格形成の適正とか開示等について、今までの取引所上場審査と、これも改善されるべきだということが今日も議論されるわけですけれども、それと実質的に同等の審査がそれまでのプロセスで、例えば、SPACでのデューデリジェンスや、これは民間がやられるわけですね。それから、それを取引所が事後審査されたり、あるいは、取引所独自で審査されるわけですけれども、それのトータルで確保されているということで初めて実質的に同等の審査でいわゆる一般市場への上場に値するということになると思います。

 そうでないプロセスの途中であれば、程度に応じて対象投資家は自衛できるものに限定されることに当然なるだろうと思いますし、それを明確にするために、市場の区分も必要だと思います。

 というふうに勉強はさせていただいたのですが、それでもやはり、特に、今日、事務局資料の30ページにありましたけれども、アメリカの実証データを見ますと、合併後の価格が例えばナスダックに比べてもかなり低いという実証的なデータが出ているわけです。これを受け止めて、香港、その他、31ページですけれども、導入した国もいろいろ考えているし、それから、関連する投資者の人たちも警戒心を持っているのだと思います。

 それから、もちろん、このような新しい制度を導入すると、先ほど言いましたように、市場区分があるでしょうし、対象投資家も限定されるのでしょうけれども、それでも、私の心配は、例えば、3億円の金融資産を保有される個人投資家が、特別な成長金融商品があるよと、こういう市場ができたのだというふうに誘導されて、あなただけにワラントもついているから買ってみたらというようなことで、不測の損害を被るということも想定されます。

 今回のこういう問題提起がなされているのは、日本の資金調達環境が必ずしも十分でないとか、あるいは、スタートアップ企業がそれほど支援できていないというふうな問題意識から出ていて、それ自体は大変大事だと思うのですけれども、いわゆるSPACがその解決策なのかどうか、やはり大きな疑問を持っています。法律、技術的な解決だけということに目をとらわれないほうがいいのだと思います。

 これも私の感覚的なことですけれども、SPACのスポンサーに本当になるだろうという内外の投資家の方々は、今、豊富な資金をバッグに、現行制度下でも、グローバルにとは言っても、できれば日本市場で投資家をできるだけ見つけたいと努力されており、実際にそのようにされているのではないかと思います。

 ということから考えると、日本全体で見て、今、指導者として、あるいは、社会的トータルコストから見ると、何か1つ制度を改革したということではなくて、もっと別のことに注力すべきでないかと。その中には市場制度改革のほかの事項があると思いますし、今日議論されると思いますけれども、そちらに注力されるべきではないかというふうに考えております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、松本委員、御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。

【松本委員】 
 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

 私からは、まずIPOの公開価格についてコメントさせていただきたいと思います。今回、公正取引委員会の報告書が出ましたが、私自身もいろいろ考えてみたのですけれども、やはり、引受証券会社は本質的には株の買手に当たって、発行会社が株の売手側に当たるという仕組みだと思うのですけれども、そもそも、買手が取引価格を決めるというのは、市場原理に照らし合わせると本質的にはおかしいことだと思います。本来は合意して決めるところを買手が売る値段を決めるという仕組みになっている状況にあり、原理的に高く株を売りたい発行会社と株を安く引き受けたい証券会社の間には利益相反の関係があるので、本質的には中立的な立場を取りづらいという構造になっているかと思います。

 とはいえ、IPOプロセスにおける証券会社の役割は大きくて、現実的には、この利益相反関係にあることを前提として、今回示されたようなIPOプロセスの透明化を図っていくことが望ましい解決方法なのではないかなと思っております。

 その観点から申し上げますと、今回の報告書で示された平均初期収益率の公表や、仮条件の上限額といったものをより柔軟に設定できるようにするとか、IPOディスカウントの算定根拠の開示、プレヒアリングや実効性のあるロードショーの実施といった示された内容全てに対して、私は基本的な方向性としては賛成と考えております。

 次に、SPACについてですが先ほど市場のパフォーマンスの話がありましたけれども、構造的に言うと、スタートアップにとってエグジットの選択肢が増えることは純粋にプラスではないかと思っております。今回のIPO公開価格の問題の観点からも、スポンサーであるSPACの運営者に対しては、適切な取引価格でないとスタートアップ側は、当然株は売らないですし、SPAC株主も示された価格を受け入れず、現金償還してしまう。さらにPIPEsの活用もできないということになりますので、SPACのスポンサーは多方面から取引価格に対して監視の目が働いているので、SPACについては、従来のIPOプロセスよりも、価格については透明性が高い仕組みになっているのではないかと思います。

 また、SPAC制度が導入されることによって、発行体にとってはよりよい条件でのエグジットを選択できるという可能性もありますので、従来のIPOの公開価格の値決めに対しても一定の牽制効果があるのではないかと期待できると思います。

 一方で、SPACについては全く問題がないかと言えば、そんなことはなくて、当然、SPACのスポンサーはDe-SPACを期間内に成功させないとリターンがありませんので、何としてもDe-SPAC取引を行いたいという、De-SPACゴールと言っていいのか分からないですけれども、インセンティブが働くという問題があります。そういった意味では、より長期的なインセンティブ設計にするといった改善点は多数あるのかなと考えております。

 この他にも、東京証券取引所のSPACの検討会でもお話ししておりますが、たくさん議論すべき点はあるのですが、やはり重要な点は、導入に当たっては、あまりに投資家保護の考え方ばかりに傾倒して、誰も利用しないような使いづらい制度にしないことだと思います。日本のSPAC制度が使いづらければ、スタートアップ側も、海外のSPACと合併して、どんどん海外の取引所に出ていってしまうということが起こってしまいますし、そういったことも踏まえると、最初から完全な制度を目指すのではなくて、まずは、走りながら実際の使われ方を見て、柔軟に制度を最適な形に近づけていくべきかと思います。

 つまり、SPACがいいか悪いかではなく、どういう日本オリジナルのSPACを使えば、先ほどのパフォーマンスの点や様々な問題点が解決されるのかを考えるべきで、日本全体を見ると、他にも金融の中で重要な課題はあるかもしれませんが、とはいえ、スタートアップの成長や新規の資金供給とった面ではSPACは大きい問題であるので、後回しにしないでいただきたいというのが私の意見です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、有吉委員、意見があればお願いいたします。

【有吉委員】 
 有吉でございます。よろしくお願いいたします。

 先ほど御紹介がありましたとおり、SPACのほうにつきまして、私も東京証券取引所の研究会のメンバーでもございますので、これから申し上げることが東京証券取引所の論点整理の資料と重複する部分があるということは御了承いただきたいと思います。

 まず、SPACにつきましては、事務局説明資料の32ページ、33ページであったり、先ほどの上柳委員のコメントにもございましたとおり、De-SPACのタイミングにおいて投資家が判断するために必要な情報開示がなされるということが論点になったり、また、De-SPAC後の上場の適格性が論点になるということがまずあるわけでございます。

 それに加えまして、SPACというものは、例えば、スポンサーの資質であるとか利益相反関係などの要素がリスクになったり、それから、De-SPACの段階で、対象会社の事業性や買収の条件などを踏まえて議決権行使を求められるといった要素があるわけでございまして、従来の金融商品とはリスクの性質が全く異なるものであり、また、同時に、非常に評価が難しいリスクの判断が必要になる金融商品であると理解しております。

 そういった中で、今、松本委員から御指摘があったとおり、スタートアップ企業の成長に資する新たなツールになるという可能性があることは私も感じるところでございますが、一方で、先ほど申し上げたようなリスクが顕在化するなどして、不公正な事態が発生して、一般投資者に被害が生じるといった事例が出てきてしまうと、SPACだけではなくて、資本市場一般の信頼を損なうといった懸念もあるのではないかと感じております。

 そういった観点から、仮にこのSPACという制度を日本でも利用可能にする方向になるのであれば、まずは、投資家の範囲を限定して適格性の高い投資家のみが投資を行うことができるといった形で進めるべきではないかと考えております。

 その上で、日本市場においてSPACというものに有用性があると認められる状況になって、かつ、事例がある程度蓄積して、SPACについての周知性が高まった段階に至ったら、一般投資者にも投資を認めるという段階的な進め方もあり得るのではないかと考えます。

 こういった形ではなくて、仮に、当初の段階から一般投資者にもSPACに対する投資を認めるという方向になるのであれば、情報開示制度の整備だけではなくて、例えば、SPACの運営者に新たな業規制を適用するといったような形で、ある程度厳格な投資者保護の枠組みを備えることが適切ではないかと考えております。

 加えて、IPOにおける価格設定の論点についても、少しだけコメントをさせていただきたいと思います。本日の資料にもなっております公正取引委員会の報告書でも、独禁法上問題となる明確な事例は確認されなかったということでございますが、いずれにしましても、日本証券業協会の報告書にございますとおり、証券会社と発行会社のコミュニケーションが十分に図られて、証券会社が発行会社のニーズを適切にくみ取って、納得感が得られるような形でIPOのプロセスが進められるようになる。こういった方向に進んでいくことを強く期待するところでございます。

 その上で、公表されている実証分析などを拝見いたしますと、IPOの中でも、機関投資家の投資対象になるような規模の大きいIPOにつきましては、欧米の事例と比較しても、初値と公開価格の乖離の水準が大きいというような問題は生じてないと理解しております。

 こういったことを踏まえますと、日本市場特有の事情から市場にひずみが生じてしまっているという状況にあるのではないかとも思われますので、企業規模に関する上場基準であったり、あるいは、個人投資家、機関投資家のいずれを投資家として中心に据えるかといったようなことなど、日本の市場のあり方に立ち返って議論をすべきときに来ているのではないかという感想も持つところでございます。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、神作委員、もし御意見がいただけるようであれば、お願いいたします。

【神作委員】 
 ありがとうございます。神作でございます。

 昨年6月の成長戦略実行計画において、新規株式公開時の公開価格設定プロセスのあり方について実態把握を行い、見直しを図るものとすると決定されたことを受け、日本証券業協会に設置されたワーキング・グループで議論を行い、報告書案が作成され、本日の市場制度ワーキング・グループでの御議論も踏まえて、恐らく今月中にも公表されることになると思います。私はこのワーキング・グループに参加する機会をいただきましたので、報告書案についての私の理解を申し上げさせていただきます。

 日本証券業協会のワーキング・グループでは、日本では、諸外国に比べて公開価格と初値の乖離が大きく、IPO価格が過少に値づけされているというような御意見もございましたけれども、それとは異なる見方も示されました。この点の評価については委員の間で意見が分かれましたけれども、ワーキング・グループでは、新規上場会社と投資者の双方にとって納得感のある、公平かつ中立的なIPO価格を決定するためには何をどのように見直すべきかという観点から、中長期的な課題と短期的な課題に切り分けて議論をすべきであるという点で見解の一致を見、議論を進めてまいったと理解しています。

 日本のIPO価格決定プロセスには、グローバルスタンダードに比較すると特殊、独自の点が少なくなく、グローバルスタンダードを意識しつつ検討がなされました。報告書案では、短期的に実現すべき課題として、例えば、仮条件の範囲外でのIPO価格の設定を認めて、投資家の需要をIPO価格により的確に反映すること。また、上場日程の期間を短縮化し、柔軟化することによって、市場変動リスクの影響を圧縮すること。新規上場会社に対して情報開示と説明を充実し、新規上場会社の納得感を高めること。さらに、IPO価格設定プロセスにおける中立性の確保など、本日の事務局説明資料のスライド24ページにおまとめいただいたような種々の提案がなされる予定です。

 なお、このワーキング・グループの開催中に、公正取引委員会から「新規株式公開における公開価格設定プロセス等に関する実態把握について」と題する調査報告が公表されました。この調査報告におきましては、想定発行価格の設定において、新規上場会社と十分な協議を行い、新規上場会社が十分に納得した上でIPO価格を設定すること、共同主幹事証券会社の追加、または、主幹事の変更をしやすいよう配慮すること、特段の支障がない限り、新規上場会社に対しては、新規上場会社の意に反して高い引受割合を要請しないことなどの留意点が示されました。

 公開価格設定プロセスの見直しに係る日本証券業協会のワーキング・グループの報告書案では、公正取引委員会からいただいたこれらの御指摘も踏まえたものとなっていると考えています。

 次に、私は東京証券取引所のSPACに関する研究会のメンバーではございませんけれども、あわせて、SPACについての御意見を申し上げさせていただきます。SPACも、成長戦略実行計画において、それを日本に導入する場合に必要な制度整備について検討するものとされました。米国では既に活発に利用されており、米国以外の主要な先進諸国の多くでも既に認められているということではありますけれども、特に投資者保護の観点から留意すべき点が少なくないように思われます。

 私は法律を勉強しておりますので、まず、法的観点から申し上げさせていただきますと、事務局説明資料の33ページに御指摘されておりますように、SPAC運営者とSPAC株主との間にはかなり深刻な利益相反の問題があり、日本法における利益相反規制、特に民事法上の利益相反規制でエンフォースメントを含めた適切な対応ができるのか不安が残るところでございます。

 また、金商法が適用されない関係書類、例えば、De-SPACの段階における株主総会関係書類等に虚偽記載があった場合などに、十分に実効的な救済が与えられることになるのかといった問題もあるように思います。

 他方、日本と米国との違いとして、日本においては、IPOがすでに個人投資家への配分を中心としている。すなわち、個人投資家がIPOから排除されているわけではないという点は、米国と違うところであると思います。また、事務局説明資料の3ページにございますように、現在、非上場株式のセカンダリー取引の環境整備が進められており、特定投資家の要件や手続が見直されようとしているとともに、日本証券業協会の規則見直しによって、証券会社による特定投資家向け勧誘規則を見直し、非上場の国内の株券等について、特定投資家に対する投資勧誘に関する規程を整備するとともに、投資者保護の観点から、顧客への情報提供、リスク説明、取扱い協会員の指定、発行者に対する審査などの自主規制が整備されようとしています。さらに、株主コミュニティ制度において特定投資家を参加勧誘対象に追加することが検討されています。

 このように、現在、日本では、非上場株式に対する投資機会が拡大されようとしており、また、冒頭に申し上げましたように、IPO価格決定プロセスの見直しがされようとしております。そちらの改善に注力するということが賢明であるようにも思われます。

 SPACは、証券会社による引受け審査がなされず、また、先ほど有吉委員からも御発言がございましたけれども、通常の株式などの金融商品とはかなり異なる性質を持ち、評価が難しいという特徴があります。SPACへの投資については、慎重に考えるべきであると思います。非常に活発にSPACが利用されてきた米国でも、それがどこまで定着していくのか、また、事務局説明資料のスライド30ページにございますように、SPACに関する判例が集積しつつあり、規制の動きもあるということでございますので、SPACについては、いま少し米国における実態と規律の進展等について観察するということもあるかと思います。

 なお、仮にSPACを認める場合であっても、特定投資家に限るべきであると思われます。先ほど申し上げましたように、SPACへの投資というのは、株式投資と比べてやや性質が異なり、評価が難しいということもございます。また、日本においては、IPOの問題点の原因の1つは、機関投資家の関与や割当てが少ないことにあるということが指摘されていました。こういった日本におけるIPOの経験と現状に鑑みても、仮にSPACを認める場合でも、特定投資家に限ることが適当と考えます。

 また、SPACを認める場合には、利益相反規制ですとか、De-SPACを射程に入れた情報開示規制及びそれに係る虚偽記載についての手当について、立法的な手当が必要ではないかと考えています。

 長くなりましたけれども、私の意見は以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、その他の委員の皆様方から、SPACとIPO公開価格について御質問、御意見があれば、お伺いしたいと思います。恐縮ですけれども、チャット欄にお名前を入れていただけましたら、私のほうで確認の上、御指名をさせていただければと思います。いかがでしょうか。

 井口委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【井口委員】 
 ありがとうございます。井口です。よろしくお願いします。

 最初、SPACについてですが、この審議会では、これまで、投資家保護の確保の中、日本の資本市場の地位向上と成長企業への資金供給といったことを議論してきたと思いますが、SPACというのは、こういった考え方とは離れたものではないかと思っております。

 まず、SPACについては、導入意義を、既に東京証券取引所の研究会の方でやられているかもしれませんが、明確にする必要があるのではないかと思っております。御存知のように、日本の最近の新規上場企業数は、既にアメリカなどと同じ数と認識しておりまして、実際、私が見ている中でも、フィンテック企業とかヘルステック企業など、時代の要請に応える多くの企業の上場が可能になっていると思います。ですので、この中でさらにSPACを導入する意義は何かということは確認する必要があるのではないかと思っております。

 知り合いの海外機関投資家、この機関投資家というのはヘッジファンドではなく、中長期的な企業価値を見極めて、ESGを重視する機関投資家となりますが、今後、資本市場において重要な役割を果たすであろう、こういった機関投資家の中でも、SPACに対する評価は低いと理解しています。理由は、SPACはよく空箱と言われますが、空箱なので、キャッシュフローやファンダメンタルズを評価できないこと、事務局資料にありますように、あるいは、皆様がおっしゃっているように、スポンサーに当初から経営権を持たすなどガバナンスに欠陥があること、それから、SPACの運営上、様々な種類株を出すことなどです。また、SPAC導入をきっかけに、取引所の投資家保護のルールが一段と緩和されるという懸念を持っているという意見も聞きます。

 まとめますと、SPAC導入は、既に日本では多くの企業の上場が可能な中、投資家保護の観点で課題がある、また、日本の資本市場の地位向上には全くつながらないといった点があると思いますので、改めて、その導入意義を明確化する必要があるのではないかと思っております。

 ただ、実際に、SPAC導入ということになりますと、既に東京証券取引所の研究会の論点整理の中にもありますが、厳格な投資家保護を行う必要があるのではないかと思っています。皆様も既に利益相反に言及されていますが、スポンサーに20%の株を割り当てられるため、株主総会は一応あるのですけれども、ほとんど可決することができるような状況ではないかと思いますし、これも御指摘があったように、株が下落すると分かっていても、買収を強行するインセンティブがあるということもあると思います。つまり、仕組みの複雑さに加えて、利益相反の観点、IPO後に市場で購入する一般投資家を巻き込んでしまうといった点が課題と思っています。

 資料にもありますように、一般投資家も、株主総会後、現金等での元本を請求する権利があるということは理解しておりますが、空箱を買ってしまう投資家に対する適合性の観点という点で、どこまで自己責任を追及できるかということは難しい問題ではないかと思います。

 このようなことを背景として、神作委員もおっしゃっていましたが、事務局資料31ページにありますように、海外では、SPAC導入を行う取引所では、プロ投資家に限定するというような強力な投資家保護の措置が取られていると思いますし、本家のアメリカでもSECなどの締め付けが厳しくなっているといった状況かと思います。

 まとめますと、SPACについては、投資家保護の観点から見ますと、一般投資家が証券取引所に上場されている普通株とは全く異なるものであるということが認識できるような取扱いが必要と考えております。ですから、日本でSPACが導入される際は、私もプロ投資家に限定する措置とか、別途、SPACに特化した市場の設置というのが必要ではないかと思います。そうすると一般投資家がいなくなるので、買手の投資家がヘッジファンドだけになるのではないかという議論もあると思いますが、だからといって、一般投資家に押しつけるというのも本末転倒ではないかというふうに思っております。むしろ、昨年から議論しております、資料の4ページにもあります、プロ投資家の数をどう増やすかとか、そちらに議論の焦点をあてる方が重要ではないかと思っています。

 もう一つ、IPOの価格についても簡単にコメントさせていただきます。日本証券業協会の報告書にありますように、透明性を増すということは重要だと思っています。ただ、海外との比較ということもあるのかもしれませんが、過去10年考えますと、超金融緩和という状況の中で、IPO価格の算定手法にもよると思いますが、ファンダメンタルズから株価が乖離したということもあると思っています。実際、最近の超金融緩和が終焉を迎えるという中では、逆にIPO価格割れという話をよく聞くような状況になっております。透明性を高めるということには賛同するものですが、この話を、即、制度変更に結びつけるということについては慎重になるべきだと思っております。

 長くなりまして申し訳ありませんが以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、チャットをいただいております順番で、次に、福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】 
 ありがとうございます。

 私はまずIPOからコメントさせていただきたいと思います。特に小口のIPOに関しては、今後どうなるかというのは分からないという御指摘もありましたけれども、現状では、公開価格が初値を大きく下回っているということがかなり恒常的に起こってきています。その帰結として何が起こっていたかというと、個人投資家の申込みが殺到して、ものすごい倍率になっているということです。その結果として、ともかくも申し込まないと当たらないということで、やたら倍率が高くなっている。それは裏を返せば、個人投資家が、この企業が面白いから投資するというより、本当にマネーゲームのような、ギャンブルのような市場で、とにかく申し込まないと、ものすごい倍率なので当たらないという形になってきている。ものすごく大型のものだと供給量も多いので、そこまで超過需要にはならないのですけれども、それが特に小口のIPOで、かなり慢性的な超過需要の状態になっていたと思います。これは経済学的に考えたら不健全で、個人投資家がこういうIPO市場に参加すること自体はいいにしても、現状は問題が多いと思います。目利き力を働かせて、この企業なら投資しましょう、そういう投資家がIPOに参加するというのが非常に自然なことだとは思います。

 現状では、とてつもない倍率なので、ともかく何も考えずに応募しましょうというような投資家というのはどう考えても多いというふうに私は思っていますので、改善の余地というのは非常にあるのではないかというふうに思っています。そういう意味では、公開価格の値づけを初値にかなり近い形に、少なくとも平均的にはなるような形の制度変更というのは必要なんじゃないかなというふうには思います。

 それから、SPACに関しても手短にコメントさせていただきたいと思いますけれども、懸念は非常にあるというのは皆さん御指摘のとおりだと思います。特に、どういうタイプの人たちがこういうSPACの運営者になるかということは非常に大事で、日本でどういう人材が担い手となるのかというのは、やってみなければ分からないというところはかなりあるとは思います。ただ、やってみなければ何も始まらないということもありますので、最初は、もちろん慎重に、特定投資家を中心に始めてみるというようなことも私はあってもいいのではないかなというふうには思っております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】 
 ありがとうございます。松尾です。私もSPACについて一言申し上げます。

 SPACについては、先ほど井口委員からも御指摘がありましたけれども、日本でこれを導入する意義をもう少し考える必要があるように思います。東京証券取引所の研究会での資料等を見ておりますと、従来の証券会社では発掘が難しいようなスタートアップを見つけてくる目利き力ですとか、あるいは、証券会社によるバリュエーションには納得できないスタートアップを適切に評価して、これを上場させることで個人投資家にもそこにアクセスできるようになる。そういうことで、発行体にも投資家側にもメリットがあるという説明がされていると理解しておりますが、そうだとしても、例えば、そのようなメリットを実現するのであれば、ベンチャーキャピタルファンドを上場しやすくするとか、ほかにも方法はあり得るように思います。

 そういった他の手段と比較してSPACというのがどういう意義があるとかということをもう少し考えてもよいのではないかというふうに考えておりまして、そういう観点からしますと、例えば、スタートアップ側の資金調達手段として見ますと、これは随分商品設計としては投資家側に有利になっていまして、合併に賛成したとしても償還請求ができるとか、アメリカですとそうなっているようで、本当にこれが効率的な資金調達手段になっていると言えるのでしょうかというのが疑問に思います。

 一方で、投資家側から見ますと、これも先ほど来御指摘があるとおりですけれども、利益相反の問題もありますし、非常に複雑な商品設計になっておりまして、なぜこういう商品設計にせざるを得ないのか、なっているのかというのがよく分からない面もあります。特にこれを日本で導入するとなりますと、買収対象が定まらない段階で、非常に評価が難しい段階で上場されるということになりますと、かなりボラティリティーが高くなるというようなことも予想されるところで、本当にそういう商品を上場させることが個人投資家にとってメリットになるのかなということを少し疑問に思っております。

 そもそも論のようなことを申し上げて恐縮です。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】 
 野村でございます。ありがとうございます。

 まず、SPACについてですけれども、私もこれが日本の成長資金供給の課題解消にどのぐらい資するのかというところ、本質的なところが正直よく分からない部分もあると思っており、これを率先して入れる必要があるのかと言われると疑問だなと思います。ただ、海外に実在するという現実があるわけでして、その現実を踏まえれば、日本でも選択肢の1つとして検討するということもあり得るのかなといった理解をしているところです。

 ただ、仮に選択肢の1つとして検討するのだとしても、一般の個人は入れないで、限られた投資家のみの市場とするのが出発点になるだろうと思います。正直、一般個人にとっては、これは過度に複雑なものでして、仮に、新しく複雑な仕組みのものを入れるということだとすると、プロの市場とするのが適当なのではないか、そういった慎重さが求められるのではないかと思います。

 IPOのプライシングのほうですけれども、客観的な事実認識に基づいた議論というのが、何事にも言えることかもしれませんが、重要だと思っておりまして、この機会に、従前からあったような課題解消に取り組まれるアプローチがよいのかなと思っております。

 以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、森下委員、よろしくお願いいたします。

【森下委員】 
 ありがとうございます。御説明いただいて、ありがとうございました。

 まず、IPOのほうに関してですけれども、御説明の中で、発行会社への納得感のある説明というようなお話が1つの重要なポイントとして挙げられていたと思います。これに関してなのですけれども、納得感のある説明というのは確かに本当に重要だと思うのですが、この公開価格の決定のプロセスにおいて、証券会社は発行会社に対してプロフェッショナルなアドバイザーとして公開価格をどれぐらいにするのがいいのだろうかというようなアドバイスをしているような関係だと考えると、アドバイスの前提として、しっかりとした情報提供を行っていくというようなことがすごく重要なのだと思います。

 その関係で、今回、日本証券業協会さんの作られたペーパーの中でも、情報提供を充実させていくことが重要であるとお書きになられているのは本当にそのとおりだと思います。これが、先ほど来のお話にありますように、証券会社と発行会社が利益相反関係にある、それでも、利益相反関係にあるアドバイザーのアドバイスに基づいて判断をしていくというような環境に構造的にあるのであるならば、なおさら、アドバイザーのほうからしっかりと情報提供していただくというようなことが大事になってくると思いますので、具体的に本当にどの程度の情報をどういう形で提供していくのがいいのかということについて、もっと目線を上げて、グッドプラクティスというか、行為規範というようなものを協会で高めていっていただく必要があるのではないのかなと思います。

 SPACに関してですけれども、これももう既に何人もの委員の方がお話になられましたが、利益相反という点が大きな問題であり、かつ、その点に関して訴訟がかなり出てきているというような状況は看過できないのではないかと思います。東京証券取引所さんの研究会のペーパーでも、そういった課題があり、それに対する対策が取られる必要があるというようなことが書かれていまして、それはまさにそのとおりだと思うのですけれども、このSPACというのが健全なスキームとして回っていくために、もともと構造的に存在する利益相反を的確にマネージできるような仕組みというのが思いつかれているのだろうかというような点が課題だと思います。

 例えば、株主総会で投票するときに一旦決断の機会があるとか、そういうようなことは仕組みとしてはあるとは思うのですけれども、訴訟事例が結構出てきているようですので、そこではなかなかうまく歯止めがかからずに、実際にDe-SPACに進んでいって、その後、かなり損失を被るような事例が出てきているということだと思いますので、実際にこれを導入して健全な仕組みとして活用していくためには、まだまだ研究が必要なのではないかというのが私の印象です。

 実際にスポンサーになっていただけるようなプレーヤーがどういうプレーヤーなのかというようなことも重要で、結局、SPACの仕組みの鍵は本当にいいスポンサーがいるかというようなことに帰着すると思うのです。この点を置いて、仕組みだけ抽象的に議論しても、それが日本においてうまく活用されるような仕組みにはなかなかなっていかないのかなと思いますので、鶏と卵の関係になるのかもしれませんけれども、どういったプレーヤーがこのSPACというような仕組みを使って活躍してくれそうであるかというようなことまで掘り下げて、具体的な検討していく必要があるのではないかというふうに考えております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、武田委員、どうぞお願いいたします。

【武田委員】 
 どうもありがとうございます。

 まず、SPACについて意見を申し上げます。スタートアップの出口を増やす観点では、市場で多様なチャネルを増やすという観点で、1つの手段ではあると思います。一方で、日本の現状で、持続的な成長資金供給の拡大に資するのか。この点については私も少々疑問に感じることがございます。

 前半の資料にもございましたとおり、日本のアセットオーナー等については、近年、成長資金供給に前向きな取組が進められている一方で、まだ低い水準にとどまっております。背景といたしましては、専門人材の不足や、評価を行う監査法人の少なさなど、全体として目利き力と人材不足が指摘されているわけでございます。

 それ自体を変えていくことに、まず注力すべきと思っておりますけれども、実態として、現時点では、世界と異なり日本がこうしたことに対して改善途上にある中で、SPAC制度ができたとしても仕組みとしてワークするのか。目利き力のあるプレーヤーがどれくらい参加するのかという点について疑問に思っております。その点についてぜひお考えをお伺いできればと思います。

 また、個人投資家については、これまでも多くの委員がおっしゃったとおり、私も、株式投資とは性質が異なり、かつ、仕組みが複雑で、評価も難しく、適正に評価して投資することは難しいのではないかと考えます。安易な勧誘によって社会問題化するようなことが起きてしまった場合、それを契機に仕組みを改善していくという前向きな捉え方もできますけれども、一方で日本の預金から投資への資金の流れに水を差しかねない点には注意が必要ではないかと思います。

 日本の成長資金の円滑な供給という意義に照らして、これを増やしていくという課題を改善するために、本当にこの制度が今必要なのかということ、また、仮に選択肢の1つとして制度を入れていく際には、鶏と卵という御指摘がありましたけれども、確かにそういう面もあるため、今申し上げた2点の懸念を念頭に、優先順位と時間軸を含めた制度設計が必要になるのではないかと考えます。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、原田委員、お願いいたします。

【原田委員】 
 ありがとうございます。手短にそれぞれについて意見を述べさせていただきます。

 まず、IPOのプロセスのあり方につきましては、日本の市場特有の環境、歴史的にみても今問題にされているような状況がずっと続いてきた中で、この近い時期に2つの報告書、公正取引委員会の調査報告書、日本証券業協会の報告書という2つのものが出てきたことは非常に画期的であろうと思います。ぜひとも日本証券業協会の報告書にある改善案に沿う形で、IPOの透明化を進めていただきたいというふうに思います。

 透明度が高まり魅力が増すと、クロスボーダーIPOも増えていくことになるかと思いますし、クロスボーダーのIPOが増えていくのと同時に、投資家も拡大が期待できるであろうというふうに考えます。去年は、スタートアップ企業5社のIPOでクロスボーダーのものがあったというふうに聞いております。そういった海外が絡んだIPOが東京証券取引所で行われるといったこともさらに期待できると思いますので、透明化というのはぜひとも進めていただきたいというふうに思いました。

 そして、SPACについてですけれども、最初に報告いただいた3人の委員の方々の御懸念というのは非常に納得できるものがあります。ですけれども、アメリカの例というのは、今日の資料にもいろいろと挙げていただいていますが、かなり特異な市場でありまして、リスクの取り手も多い市場ですので、参考にしてもいいけれども、参考にならない面というのも多々あると思います。

 懸念は様々あると思いますが、その中の1つの懸念というのが、日本の一般の個人投資家にSPACを解禁にすることになるとどういうことになるかということです。皆さん御存知のところでありますけれども、日本で資産を持っているのは高齢の方々です。これは様々な資料でも明らかになっていることですけれども、2つの傾向があって、高齢者の方々が近年以前より金融資産を保有しているということが1つです。ここ10年ぐらいで見ると、60歳以上の中高齢の方々の金融資産の保有割合がさらに増えているということで、一般の投資家に解禁すると、高齢の方々の資金がリスク性のあるSPACに入ってきてしまう、高齢者の人がだまされてしまうという懸念があるかもしれないというふうに考えます。

 ですが、東京証券取引所の論点整理にも書かれていますように、様々なことを検討していって、日本オリジナルのSPACということを松本委員もおっしゃいましたけれども、よりよい形で投資家保護も検討して、よりよい形で導入していっていただきたいというふうに考えております。

 以上になります。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 そうしますと、後から多少遅れて御参加いただいていると思いますけれども、ソニーの松岡委員、もしこのSPACとIPO公開価格について御意見ございましたら、御発言お願いできればありがたいのですけれども、いかがでしょうか。

【松岡委員】 
 ありがとうございます。

 まず、SPACについてですけれども、私どもはグローバルに事業を展開しておりまして、海外の状況をいろいろと見聞きするとともに、実際に関係が生じる場面も多くございます。そもそもSPACが、特にアメリカで誕生した背景というのは、非常に多くの選択肢なりM&Aやファンドによる投資を含めて市場が活発である中で、極めて高い機動性や柔軟性が求められ、それが非常に重要な局面であって、それとともに、先ほど来あります、優れた目利き力を持っていて迅速な成長やバリューアップに対するクレディビリティのある、またはそれが期待される強力なスポンサーがいる、そういう中で、ガバナンス上のストラクチャーも含めて、柔軟な対応、クリエイティブな1つの方法論として生まれてきたということだと思いますので、そういう状況が日本にあてはまるかどうかということは、視点の1つとして必要なのかと思います。

 それとともに、それらを誕生させている、投資家や参加者といったそもそもの関係者の方々の裾野や能力、評価に対する洗練度等が育つ土壌がある、ということも背景としては重要なのではないかと思います。

 多様な手段があって、それを比較選別することができて、それを支える能力があることがまずもって前提としてある中での1つのクリエイティブな手段という位置づけではないかと思います。

 次に、IPOの話ですけれども、長らく指摘されてきたいろいろな課題に取り組むことは大変良いことだと思います。ただ、やはり海外、特に米国などと比べますと、上場の意味合いですとか位置づけというのが少し異なるのかと思います。先ほど来申し上げておるように、上場が多くの選択肢の1つであり、ぎりぎりまで上場するかどうかを選択し得るという状況と、日本の上場のあり方というのがそもそも違うところがあって、例えば上場準備までの期間であるとか、そこにおける、例えば引受証券会社の関与、そこに経済性の問題も生じると思いますので、それが上場時のあり方や方法にも結びついてきます。また、値づけから上場までの期間についても、市場のボラティリティ・リスクはグローバルに益々高まっており、そういった中でどこまで色々なことができるか。できることに取り組んでいただくのは非常に良いと思いますが、課題は残るかと思ったりしております。

 先ほどの話とも通じますが、根本的な洗練された、いわゆる評価のできる市場参加者、これは投資家に限らず、証券会社や監査法人、弁護士、様々なアドバイザーも含めた関係者の裾野が広く、また厚く育っている、または、育つための努力に力を入れていく、ということが、いずれにしても重要なのではないか、と私どもからは見える次第でございます。

 ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、これで第1巡目を終わりまして、第2巡目といたしまして、本日のテーマ全体について、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただければありがたく存じます。なお、時間があと30数分という状況でございまして、若干の時間の延長を場合によってはお願いするかもしれませんけれども、意見をたくさんいただける場合には、それは大変ありがたいことでありまして、場合によっては、次回に少し食い込むというような運営を検討させていただくことになるかもしれません。

 ということでございまして、本日のテーマ全体について御質問、御意見をいただきたいのですけれども、恐縮ですが、チャット欄に入れていただければと思います。

 それでは、松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】 
 1点だけコメントさせていただきたいと思います。

 ダイレクトリスティングについては、こちらもスタートアップにとってはエグジットの選択肢が増えることになるので、私は純粋にプラスだと考えておりますが、しかし、ダイレクトリスティングが可能となるためには、スタートアップに十分な知名度が必要であることが前提ですので、日本においてそうしたスタートアップが少ないのが残念ながら現状なのかなと思っております。最近で言うと、もしできるとしたら、数年前に上場されたメルカリさんぐらいなのかなという印象を持っています。

 ただ、現状はそうであっても、今後、日本においてスタートアップの支援施策を広げていく中で、今後大きなスタートアップが生まれてくることに期待するのであれば、今から使いやすい制度設計を考えて準備しておくことも重要ではないかと考えております。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、野村委員、どうぞお願いします。

【野村委員】 
 野村でございます。

 全体的な論点についてということですけれども、成長資金の質と量を確保する上でも多様な投資家の存在が重要だというのは、そのとおりだと思います。ただ、資料のほうにもありましたけれども、いろいろなアセットオーナーがいらっしゃるわけですが、おのおの背負っているものは違うわけです。背負っているオブリケーションのようなものがあって、それが異なる。そもそも論を言えば、どのアセットオーナーもそのオブリゲーションを果たすことを基軸に資産配分を考えていくのが大原則ですので、そのことを忘れてはならないと思います。

 つまり、これを外した議論になってしまいますと、局所的にはよく見えても、全体がゆがんでしまうような議論になり得ますので、これは要注意だろうと思っております。

 また、今日のアジェンダは、主にスタートアップ企業等のエグジットという視点で議論されているような気がしますが、上場企業への投資家にとって、これは機関投資家なのか個人なのかを問わずですが、新規上場というのはゴールではなくてスタートであろうかと思います。つまり、その後の成長こそが重要だということになりますので、エグジットの話というのはあくまでも部分であり、それを認識する必要があるのかと思います。これも局所的によくても全体がゆがむような議論にはならないようにする必要があり、要注意と思っております。

 本当にいろいろなテーマが取り上げられていて、金融関連の制度や規制の変更、改善で対応できることが一体何なのか、実務面での課題は何なのか、こういったことを整理した上で考えていく必要があるのかと思った次第です。

 例えばということで言うと、挙げておられるものの中で、非上場株式のセカンダリー取引の円滑化、これは確かに有用なのだと理解しておりますけれども、前回の話にも関わるかもしれませんが、ポスト・トレードを含めた制度の整備といった幅広い観点というのも大切ではないかと思いました。

 また、これも例えばですが、挙げておられる中で、公募投信によるクロスオーバー投資がありますけれども、このハードルの本当のところは一体何なのかということです。例えば、日次評価というのは時間制約が結構きついわけですけれども、そこなのか、あるいは、公正価値評価というやり方、手法、その辺りに何か課題があるのか。こういったことを、規則、実務の両面から、何が課題なのかを確認して、いろいろと考えていくのが大事なのかと思いました。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】 
 有吉でございます。先ほどのSPACとIPOの価格設定以外の点について、何点かコメントさせていただきたいと思います。

 まず、1点目としまして、アセットオーナーによる資金供給という観点でございますが、GPIFや大学ファンドなど公的な資金の運用として政策的に一定割合をVCに投資するといったことを検討してもよいのではないのかと感じております。そういった公的な取組が民間の年金基金等の他のアセットオーナーへの呼び水になるといった可能性もあるのではないかと思います。

 2点目に、個人からの資金の供給でございますが、この観点については、個人が直接非上場株式に投資をするということではなくて、投資信託とかファンドを通じた非上場株式への投資といったことが拡大していくことに期待をしたいと感じております。そういった中で、事務局説明資料の中でも、ファンドの監査であるとか、あるいは投信の基準価格の算定などが論点になるといったことが指摘されているわけでございますけれども、今、野村委員からも御指摘がありましたとおり、日本において障壁となっているのが本当のところ何なのか、すなわち、基準を改めれば足りるということなのか、それだけではなくて、監査や評価を行う側の問題なのか、あるいは、ファンドやスタートアップ企業側の負担の問題なのか。どこに根詰まりがあるのかということをうまく把握して、対処方法を検討していくべきであると感じます。

 3点目に、非上場株式のセカンダリー取引につきましては、前回のWGで特にPTS規制との関係について、論点であり、制度の見直しを検討していただきたいということをコメントいたしましたので、それを改めてここでは繰り返しませんが、そういった検討を進めていただきたいと思います。

 最後に、ダイレクトリスティングの関係でございますけれども、こちらも先ほど松本委員が御指摘されたとおりと思っておりまして、現時点でニーズがあるかどうかということは別としまして、スタートアップ企業の選択肢となり得るように制度を整備することは必要だと思います。その際、必ずしも、マザーズあるいはグロース市場においてダイレクトリスティングが認められることが必要というわけではないと思いますが、少なくともプライム市場、スタンダード市場においては、単に形式的、理論的にダイレクトリスティングが可能というだけではなくて、実際に運用としてダイレクトリスティングが可能になる制度をあらかじめ整えておくことが必要であると思います。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、福田委員どうぞ。

【福田委員】 
 ありがとうございます。

 今回は、レイターステージという形で非常に大きな課題を取り上げていただいて、積極的な議論が展開されているということは非常にいいことですし、特に個人投資家が参入できるという意味では、レイターステージというのが非常に大きな点になるということだとは思いますけれども、ベンチャー企業、スタートアップ企業の育成ということだけを考えれば、レイターステージだけを考えるということではなくて、アーリーステージからレイターステージへの大きな流れというものを踏まえながらレイターステージを考えていくということもやっぱり大事なのだろうと思います。

 アーリーステージの資金調達のあり方というのは、当然、レイターステージの資金のあり方にも影響を与えてくるわけですので、そういう意味では、もう少しレイターステージを考えるにしても、全体をベンチャー企業が生まれてから育っていくプロセスの中での資金調達というものも考えながら議論をしていくということが大事なのだろうと思います。

 特に日本は、いい研究開発の技術とかもありながら、なかなかそれが事業化できないという、俗に言う死の谷問題というような問題なんかも大きな問題として指摘されているわけですので、そういう意味では、レイターステージの問題も非常に大事ではありますけれども、それ以前の資金調達も含めて議論していくような流れというのも大事だというふうに思い、コメントさせていただきました。以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】 
 ありがとうございます。上場を含むエグジットのところのSPACとIPO以外で簡単にコメントさせていただければと思っております。

 最初は、①にありますダイレクトリスティングなのですが、今後もし導入するとなると、議論をすることになると思うのですが、御存知のように、アメリカで導入となったときに、CII、米国機関投資家評議会、この中にはカルパースとかカルスターズなどの洗練された投資家も含まれておりますが、そういうところがかなりSECに反対したということもありますので、その論点とかもしっかり押さえた上で制度設計をやっていくということが重要ではないかと思っております。

 ②のM&Aのところですが、エグジットにおいては非常に重要な役割を果たすと思っております。買収先との交渉とか、あるいは、最近よくある独禁法に関わる各国の承認とかで1年以上かかる場合、やむを得ない場合もあると思いますので、ルールを緩和して、1年以上も可能にするというルールの緩和も妥当ではないかと思っております。

 一方、企業は、お金を集めるときに、エクイティストーリーで投資家をある意味説得して資金を集めていると思いますので、想定よりも遅れているという状況については、なぜ遅れているかの開示を行うルール整備も併せて必要ではないかと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、原田委員、どうぞお願いいたします。

【原田委員】 
 2点意見を申し上げます。

 まず1つ目が、非上場企業への成長・事業再生資金の円滑な供給についてです。アセットオーナーなど資金の出し手に対してインセンティブを引き続き付与していただく、ということは大事であろうと思います。エンジェル税制をはじめ、税制上の措置というのはかなり大きなインセンティブになり得るであろうというふうに感じています。オープンイノベーション税制というものもありまして、延長される予定と聞いておりますけれども、こうした施策は、市場参加者の要望に耳を傾けていただいて、少しずつ必要な改善などをしていって、継続していただくのがいいのではないかというふうに考えます。

 2点目としまして、非上場株式のセカンダリー取引に関することですけれども、いろいろと支援していっていただくということで、メディアなどにも積極的に働きかけていっていただければと感じています。非上場企業向けに、投資家向けにも、いろいろな事例紹介をすることで、地道な宣伝のような形で役に立つのではないかというふうに考えております。

 例えばということで言いますと、株式投資型クラウドファンディングで資金調達をして、それを株主コミュニティに移行している企業がありますとか、株主優待制度などがうまく活用されている株主コミュニティがありますとか、そういったうまく活用されている例がいろいろありましたら、そういうものを紹介していただくということになります。あまり事例はないということでしたら、既存の株主コミュニティに参加している企業などによりよい事例紹介などをして、参考にしていただいて成功事例を増やしていくとか、そういった働きかけというものが、地道ではありますけれども、ある一定の効果をもたらすであろうというふうに思います。制度の積極的な宣伝というのをお願いできればと思います。

 以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、森下委員、どうぞお願いいたします。

【森下委員】 
 ありがとうございます。

 今日の資料の中で、17ページのところで、ベンチャーキャピタルの運用力強化というお話があったかと思います。あと、いろいろなところで人が大事であるというようなお話が出てきたかと思います。日本において実際どうなっているかというのは少しよく分からないところがあるのですけれども、数年前に、シリコンバレーとかアメリカで調査をした際には、ベンチャーキャピタルの世界というのは本当に人が全て、人との関係が全てであるとのお話を伺いました。そういったことから、人材を育成するために相当なしっかりとした仕組みがつくられておりました。

 あと、こういったようなトレーニングというのは、実務に携わりながらでないと、なかなかうまくいかない部分もあって、例えば、仕事をしながら年に何回か、例えば1週間とか2週間とか集まって、いろいろなほかの会社の方とか専門家と意見交換をした上で、また、それを実務に戻していく。そういうような非常に実践的なトレーニングを受けながら、例えば、企業にいろいろなアドバイスをしていく際にどういうふうなことが重要なのかとか、そういったような資質を磨くようなシステムがある程度整っていると、それがしっかりとした人材を育てていく基盤になっているのではないかというようなお話を伺いました。

 既に日本においてそういうような仕組みが、優れたベンチャーキャピタリストを実務の場で鍛えていくというような仕組みが確立しているのであれば、今申し上げたことというのはもう全く無用のことということになるのかもしれませんけれども、やはり非常に人材が重要な分野だと思いますので、そういったようなことについて、大学も本当は貢献できればいいのかなとは思いますけれども、そういった部分についても少し日本として頑張っていくということが必要なのではないかと感じております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 チャットいただいきました委員の皆様方からは、大体以上かと思うのですけれども、ほかにいかがでしょうか。2周目まだ御発言をいただいてない方々を名簿順に申し上げますと、上柳委員、神作委員、武田委員、松尾委員、松岡委員になるかと思いますけれども。

【上柳委員】 
 すいません。お願いします。

【神田座長】 
 上柳委員、お願いします。

【上柳委員】  
 手短に申しますと、論点で言うと、ダイレクトリスティングとかM&Aに関係すると思いますけれども、私の理解では、やはり特に価格形成の問題とか、あるいは、そこで不正がない、虚偽的なことがないというようなことについて、従来、取引所なりあるいは上場審査という形でやってきたものを、ある意味でそれ以外の主体、民間といいますか、あるいは買収企業にお任せするということだろうと思うのですが、一般市場に最後商品が出るとすれば、取引所の上場審査と、これの改善の余地はあるわけですけれども、実質的に同等のプロセスがあるべきだろうというふうに思います。

 そういう意味で、それぞれのところで行われる、いわゆるデューデリジェンスが中心になるのかなと思いますけれども、そのほか、公正価格の調査であるとか、そういうものがきちんと行われること、それが当局なり後に起こる民事訴訟の中でも利用できるように、そういうトータルの中で公正さが確保されているということが必須だろうと思います。

 内閣官房をはじめ、諸方面で広く情報収集をされて、諸外国にあります、このようなSPACも含めてですけれども、注目され、これを実現課題として問題提起していただいていること自体は、もちろん、極めて敬意を表するということになるわけです。私も、日本市場に改善点はたくさんありますし、東京証券取引所さんにもいろいろ御注文はあるのですけれども、それでもやはり、真面目に全体として公正価格確保とか、あるいは、日本なりの投資者保護体制を作り上げてきたのだと思います。

 こういうインテグリティーを持った中で、あまりおっしゃられないかもしれないけれども、若干コストベネフィットから考えると見合っていないかもしれないけれども、品ぞろえし、フルセットをそろえるということ自体は意味があるというふうに思っております。

 ただし、SPACについて、この先行国の30ページ、繰り返しになりますけれども、この実証データとかは無視できないですし、そういう意味では、ちょっと後追い的に追随するという感じではなくて、世界が次を見ているところがあると思いますので、そこをイノベーティブに、政治あるいは金融当局としても、問題提起をしていただきたいなというふうに思います。

 最後にしますけれども、そういう意味で、当ワーキング・グループとしても、導入するとしたら、こういうふうな技術的手当が必要であるというだけでとどまっては、今回の論点については、役割を果たしたことにならないのではないかというふうに思っています。導入の是非についても、それから、ぜひ、社会的にトータルで見たときのコストベネフィットについての考え方、でき得れば、ほかの選択肢についても問題提起ができれば、ほかの選択肢は、私は持ち合わせているわけではないのですけれども、これはまた、なかなか努力されているところで言いにくいですが、取引所の上場審査については、技術的に短縮できるところもありますし、それから、監査法人に何年か見ていただくというところも、なかなか、上場後というよりも、スタートアップの人については大変かなという感じが御相談を受けてするところです。

 そういう意味で、導入の是非、コストベネフィット、それからほかの選択肢についても、政治的判断あるいは政策判断に当たって、そこに上がる情報に偏在がないようにきちんと我々としても役割を果たすべきだというふうに思います。

 長くなりました。以上にします。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】 
 ありがとうございます。一言申し上げます。

 レイターステージでの資金供給の拡大についてというところですけれども、これはレイターステージで新たに資金を調達することを円滑にするということもあると思うのですけれども、それより前のステージから投資してきた投資家さんがエグジットするときに、別の投資家にバトンタッチする、それをスムーズに行えるような環境を整備する、そういう意味もあるというように理解しております。

 そういう意味では、非上場株式というように書かれておりますけれども、これは、例えば、特定投資家向け私募で発行された非上場のもの、それがその後の流通も含めて、投資家から投資家へのバトンタッチ等がうまく円滑にいくように、そういう環境を法制度として整備しようということだと思いますので、非上場の株式全般というよりは、特定投資家向け私募等で入ってきた、発行された証券が、私募の世界の中でといいますか、特に発行体に重い開示規制がかからない状態で、投資家間で円滑に流通できると、そういう環境を整備しようという御趣旨というふうに理解しておりまして、ぜひその方向で進めていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、武田委員、どうぞお願いいたします。

【武田委員】 
 ありがとうございます。

 成長市場への資金供給は、長年の課題で、本日御紹介いただきました、レイターステージの資金調達を増やすための市場整備についてはぜひ進めていただきたいと思います。これらの制度整備によりまして、事業の成長性や、事業を見極める目利き力が高まる下で、持続的な成長資金供給が増えていくことを期待したいわけでございますが、本日の資料を拝見しておりますと、究極的には、関わる全ての主体の目利き力と本気度、この2つをどう高めていけるかが課題と考えます。

 例えば、本日御紹介いただいた、アセットオーナー等によるオルタナ投資への専門人材の問題、LP投資家側の意識の問題、公正価値評価を行う監査法人の監査の問題、デットファイナンスの拡充では、恐らく、事業価値を見極める目利き力の問題があると思います。また、ベンチャーに投資する事業会社についても、近年、オープンイノベーションへの取り組みは増えてはきているのですが、本気で事業構造改革につなげていけるのか、経営が自前主義から転換し、企業価値向上やイノベーションの増加に資する資金供給になっていく段階まで行っていけるのか、この辺りが鍵と思います。

 野村委員が冒頭に御指摘されましたとおり、真の目詰まりがどこにあるのかという点はクリアにする必要があると思っており、制度整備とともに、これらの点を同時に改善すべきと感じます。本ワーキング・グループの制度整備で対応できることをまずしっかり提示するとともに、本質的に、同時に改善すべきことについて問題提起をし、このワーキング・グループの範疇でなくても、例えば、コーポレートガバナンスの次の改革、日本の専門人材育成、金融機関の役割、目利き力についての課題、これらのことを問題提起することによって、日本全体として解決につなげる施策に具体的につなげていくことを期待したいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に、松岡委員、どうぞお願いいたします。

【松岡委員】 
 ありがとうございます。

 私どもは実地でいろいろな投資をしておりますので、投資案件をレビューしたり議論したりという場面を非常に多く経験しております。その実感として、先ほど来、目利き力というお話がございますが、特に欧米の企業は、例えばその企業の事業や特性、ビジネスモデルによって、どうバリエーションを考えるべきか、ということについて色々な考え方があり、利益・キャッシュフロー・売上げなど、色々な基礎的な数値とバリエーション手法などを見比べ、深く議論しながらやっております。そういったことを、日常茶飯事的に企業を創業する人たちが意識し、また、今後成長のための資金をどう確保するかといった成長のための戦略を考えていくことが、非常に必要なことだと感じております。企業創業者やそれを取り巻く関係者の洗練度の違いはどういうところから来るのか、と色々考えさせられる場面は多いのですが、徹底的に経済性を追求できるチャンスが開かれているかどうか、というのも大きいような気がしております。

 例えば、株主利益を徹底的に追求し、獲得できるチャンスがあり、実際、そういう事例がたくさんある中で、人材が育っていったり、それに対する時間を割いたり、また、そういったことに対する対価を払ったり、という行動に結びつく訳なので、そういった環境を作るために何ができるかを考えていくことが大事ですし、また、そういった経済性の追求に対して肯定的な態度で取り組むということも必要なのではないかな、と実感として感じたりしております。先ほどから目利き力をどう育てるか、人材の裾野をどう広げるかという話が出ている中で、1つ御参考までに申し上げさせていただきました。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 私も、今御指摘の点で、かねがね、日本ではバリュエーション産業とでもいうのでしょうか、をつくって大きくしていかないと、という課題があると思っていました。ありがとうございました。

 神作委員、もし御発言があれば承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

【神作委員】 
 御指名ありがとうございます。それでは、私も一言だけコメントさせていただきます。

 レイターステージにおける資金供給の拡大というテーマで、クロスオーバー投資の重要性が指摘されていると思います。未上場株式について、ステージの違いによって投資家が入れ替わるということも重要ですけれども、例えば、上場しても株式を持ち続けるという投資家も存在することが重要だと思います。そういう意味では、投資家の多様性、これは日本の市場の構造的な問題かと思いますけれども、先ほど御指摘のあった評価の問題をはじめとして、どこに問題点があるのかということをさらに考えて、検討してまいりたいと思います。どうもありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、オブザーバーの方々でもし御発言があれば、ここで承りたいと思います。チャットに記入していただければと思います。国際銀行協会、平山さん、どうぞお願いします。

【平山オブザーバー】 
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。IPOに関連して、2点ほど述べさせていただきます。

 1点目は、公開価格設定プロセスについてです。公開価格と初値の乖離がクローズアップされておりますが、日本では、IPOに参加される投資家の多くが相場動向に左右されやすい個人投資家である点もそのような乖離が発生する原因の1つだと考えております。様々な価値観を有する投資家、例えば、VC、PEによるIPOへの参画や、価格判断力のある大手機関投資家の参加を促すことが可能な仕組みができれば、この点は解消されるのではないかと考えております。

 2点目は、上場審査制度についてです。日本証券業協会様の報告書によりますと、米国には上場推薦審査制度は存在しないということでございました。また、弊協会は欧州でも同様であると認識しております。欧米では、証券会社はプリンシプルベースで引受けを総合的に判断しておりますが、日本でも同様のアプローチは可能であるかと考えております。このようなアプローチが可能な施策を、例えば、監督指針等に盛り込みつつ、上場推薦審査制度を廃止することが好ましいと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 ありがとうございました。それでは、日本証券業協会から野村証券の飯山さん、どうぞお願いいたします。

【飯山オブザーバー】 
 お時間頂戴しまして、ありがとうございます。実務を担う立場から一言だけお話しさせていただきます。

 公開価格の設定については、単純に高いとか安いとかということではなくて、いろいろな課題について、実務をやっていると問題意識を持っているところでございまして、資料の24ページに日本証券業協会のワーキング・グループのいろいろな改善策の主なポイントが載っていますけれども、日程を短縮するとか、機関投資家へのプレヒアリング、約定のタイミングということだと思いますが、そういった点も全て俎上にのせていただいていますので、これを機によりよい仕組みにできるように進めていきたいなというふうに思っております。

 当然、証券会社として、丁寧な会話、納得性のある対話というのは非常に重要だと思っていますので、そこは当然やった上でということになるかと思います。

 もう一つでございますが、今のお話は仕組み、制度の話だと思うのですけれども、より本質的な問題ということで言えば、プロの投資家、ユニコーン、こういった市場参加者がもっと増えてくるということが起きれば、多分、そういったいろいろな問題も出てこないのかなと思いますし、金融制度の外枠だと思いますけれども、そういったことも考えていかなければと思った次第ございます。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】 
 ありがとうございました。それでは、全国銀行協会の佐藤さん、どうぞお願いいたします。

【佐藤オブザーバー】 
 全国銀行協会の佐藤でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。2点手短に申し上げます。

 1点目は、資料18ページ、19ページのデットファイナンスの拡充という論点についてです。事業成長担保権につきましては、銀行の現場からも、担保価値の評価手法や、担保処分に係るマーケットの整備などが進めば、従来以上にベンチャー企業等への融資の裾野が広がって、ひいては、国内における起業の動きを活性化する効果も期待できるのではないかといった声も聞こえてきております。ぜひ、早期に制度整備を進めていただければと考えております。銀行界としても、法制審議会等の議論に関しましては、建設的に協力してまいりたいと考えております。

 もう一点は、資料20ページの事業再生・事業承継ニーズへの対応についてです。御指摘いただいているとおり、銀行、メインバンクはお客様にとって一番の相談相手になり得る存在と考えております。銀行界にとっても、この問題は大変重要な課題と認識をしております。また、事業承継・再生の局面におきましては、企業や株主等のステークホルダーに様々な金融ニーズが複合的に生じることが多いと考えておりまして、資料に御記載いただいたように、取引金融機関が総合的に対応していくことが極めて重要であろうと考えております。

 昨年の改正銀行法で、事業再生会社や事業承継会社に対する出資要件について緩和をしていただいておりますので、それらも活用して、銀行界としても、この社会的課題への対応として、積極的に貢献してまいりたいと考えております。

 以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、最後にということにさせていただきたいのですけれども、日本ベンチャーキャピタル協会、赤浦さん、どうぞお願いいたします。

【赤浦オブザーバー】 
 日本ベンチャーキャピタル協会、赤浦でございます。発言の機会を誠にありがとうございます。

 手短に2点申し上げたいと思うのですが、VCの高度化に向けということで討議事項にも書いてありましたので、そこの点についてコメントさせていただければと思うのですが。まず、資料の12ページのほうに公正価値評価の点が記載されておりますけれども、日本ベンチャーキャピタル協会では非常に重要と考えておりまして、経済産業省様と連携し、プロジェクトを受託する形で、2015年から5年連続で公正価値評価を行うに向けた取組というのを行ってきております。

 まず、15年に「VCファンドのパフォーマンス評価に係る調査報告書」を提出させていただきまして、16年に「国内VCファンドの時価評価に係る実務指針」を納品させていただきました。また、2019年には、機関投資家向けのデューデリジェンスに対応するQ&A、DDQですけれども、こちらも納品させていただくという形で、パフォーマンスベンチマークについては、2020年6月、12月、そして昨年8月と3回行っておりまして、昨年の8月では42社120ファンドまで拡大しております。

 ここでは、IPEVガイドラインにあります、直近180日以内のファイナンス時価というのが最も優先されるというふうに記載があるのですけれども、同様に、直近180日以内のファイナンス価格を採用して、パフォーマンスベンチマークを出している。ファイナンスがないものについては、取得価格というものを採用したものにはなるのですけれども、結果として出てきているパフォーマンスについては、ヨーロッパ、米国を大きく上回る数字が出てきておりまして、これを、Preqinさんを通じて世界に発信することで、海外の機関投資家からの資金流入が今現在加速しているという状況でございまして、こちらはやってきておりますということを訂正といいますか、コメントさせていただきたいなというふうに思います。

 また、1つ問題点としてございますのは、金融商品会計です。金融商品会計においては、取得価額で評価するということになっておりまして、金融系のベンチャーキャピタル等の中では、あえて時価評価を行えないというようなルールになっていますので、金融商品会計の見直しも必要なのではないかというふうに考えます。

 加えて、高度化に向けた取組ということですと、日本ベンチャーキャピタル協会では、設立以来、研修に力を入れておりまして、今まで、2004年から開始しました研修においては、17年連続で行っておりまして、年間160名が受講しておりまして、これまで累計1500名のキャピタリストが学んでおります。また、昨年末になるのですけれども、中堅キャピタリスト研修というものをつくりまして、こちらも、今、パイロット版ではありますが始めまして、今後、年間50名から60名ぐらいの参加を予定しておりまして、まさに高度化に向けた取組をさせていただいているということをコメントさせていただきます。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 予定の時間を5分少々オーバーしておりまして、私の進行がうまくなくて申し訳ありませんでした。本日はこの辺りとさせていただきたいと思います。

 なお、さらにお気づきの点、御意見等ございましたら、ぜひ事務局までお知らせいただければと思います。必要に応じて、次回以降、御披露させていただくなり、検討させていただきたいと思います。

 本日も盛りだくさんのテーマについて、本日は2周させていただきましたけれども、御参加いただきました委員の皆様方全員から御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。本日いただきました御意見等を踏まえ、今後、具体的な検討を進めていきたいと思います。

 最後に、事務局から御連絡等がございましたら、お願いいたします。

【島崎市場課長】 
 本日は誠にありがとうございました。次回のワーキング・グループの日程及びテーマ等に関しましては、事務局より別途御案内させていただければと思います。

 事務局からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。皆様方、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
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企画市場局市場課(内線:2352、3970)

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