金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第17回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年4月25日(月曜)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
     

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第17回)
令和4年4月25日


【神田座長】 
 皆様、おはようございます。予定の時間になっておりますので、始めさせていただきたいと思います。

 ただいまから、市場制度ワーキング・グループの第17回目の会合を開催いたします。皆様方には、いつも大変お忙しいところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 今回からオブザーバーとしまして、新しく生命保険協会に参加していただきますので、御案内させていただきます。お手元資料1の名簿に記載させていただいておりますので、御覧いただければと存じます。

 本日ですけれども、2つのテーマについて、事務局による説明の後、皆様方に御議論いただきます。1つ目は、顧客への情報提供の充実とデジタル化というテーマです。もう一つは、我が国社債市場の課題と取組みというテーマになります。事務局による説明の後、皆様方に御議論をいただければと思います。

 なお、本日、この2つのテーマについて御議論いただいた後なのですが、ファイアーウォール規制について、オブザーバーの方々から御発言の希望があると伺っておりますので、御発言をしていただければと存じます。

 それでは、まず初めに、2つのテーマについての事務局説明資料について、事務局からの説明をお願いいたします。島崎課長、よろしくお願いいたします。

【島崎市場課長】 
 よろしくお願いいたします。それでは、お手元の資料2等に沿って御説明させていただきます。

 今回、顧客本位の業務運営の確保と金融サービスの向上②ということで、顧客への情報提供の充実とデジタル化、それから、我が国社債市場の課題と取組みについて資料2を用いて御説明いたします。

 まず、4ページ目でございます。大きく、顧客本位の業務運営の確保と、②としての顧客への情報提供の充実とデジタル化でございまして、前回、販売・助言サービスの態様に応じた制度の柔構造化ということについて、資料も出して御議論いただいたこととの関連でいいますと、その際に、こちらの全体像についての「顧客本位の業務運営の確保と金融サービスの向上に向けた課題(概要)」というのを出させていただいています。

 そこで、家計の中長期的に安定した資産形成を実現していくためには、顧客本位の業務運営の確保、金融リテラシーの向上を総合的に進めることが不可欠ということで示させていただいておりまして、この顧客本位の業務運営の確保については、それを支える制度的枠組みの検討が必要ではないかということで、下の図になりますが、総合的アプローチということで、顧客本位の業務運営を支える制度的枠組みの検討の中で、特に、プロダクトガバナンスももちろんございますが、これも前回御議論いただきましたが、適切な販売勧誘・助言、顧客への情報提供の充実というテーマにつきまして、2つ、関係するものとして非常に重要な論点がありまして、販売・助言サービスの態様に応じた制度の柔構造化、それから顧客への情報提供の充実とデジタル化という、いずれも顧客本位の業務運営について重要な論点を提示させていただきまして、前回は、上の、販売・助言サービスの態様に応じた制度の柔構造化について御議論いただきましたが、今回の位置づけとして、顧客への情報提供の充実とデジタル化という制度的枠組みの検討が、これも必要な分野について本日御議論いただきたいと思っております。

 5ページ目でございます。金融商品取引における情報提供のデジタル化ということで、社会経済全体のデジタル化が進展する中で、金融商品取引における情報提供に関しましては、まず、顧客に対しまして、充実した内容の情報がデジタルツールの特性を活かした分かりやすい形で提供されるということが、顧客本位の業務運営の進展、ひいては、経済成長の果実の家計への還元の観点から重要なのではないかと考えられるところでございます。

 こうしたデジタル化のメリットを幅広く顧客に拡げ、同時に、紙資源の節減や金融事業者のコスト削減にもつながるようにということで、1つ求められているものとして、紙による情報提供を原則とする枠組みというものから、デジタル・リテラシー等の顧客属性に応じた保護を図りつつ、デジタルによる情報提供を原則とする枠組み、こうしたものへの移行についての検討が求められているかと考えております。下のほうには、昨年末に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」ということで発表された文書を載せておりまして、先ほど申し上げたような問題意識を含め掲げておりますが、こうしたことが政府の決定としても、金融商品取引における書面交付原則のデジタル原則化ということが課題となっております。そちらのほうでも、従来からの顧客への情報提供のデジタル化や、顧客に対するより分かりやすい情報提供の在り方、対象とする顧客の範囲、書面交付を求める顧客の意思確認手法、必要な顧客保護のための措置など実務的な対応も含めて、令和4年内を目途に結論を得て、可能なものから法案提出等必要な措置を行うとされているところです。

 6ページ目でございます。デジタルツールを活用した分かりやすい情報提供ということで、これまでの情報提供に関する取組みです。顧客にとって必要な情報が、顧客にとって分かりやすく提供されることは、金融商品取引における情報提供において大事なものとして、顧客本位の業務運営に関する原則(FD原則)でも挙げられておりますし、それから、FD原則は2021年1月に改訂されて、重要情報シートの導入、重要情報における記載項目・記載順の極力の統一によって比較可能性を確保する等々の観点から、重要な情報の分かりやすい提供ということを重視してまいりました。

 7ページ目でございます。深度ある、より分かりやすい情報提供ということで、デジタルツールを活用した分かりやすい情報提供ということで、近年では、デジタルツールを効果的に活用し、ウェブやアプリの画面表示を工夫することなどにより、書面や、単に書面を電子化したPDFよりも分かりやすい情報提供が可能となっております。情報提供のデジタル化は、従来の書面の電子化ではなく、顧客本位の業務運営に向けた取組みを踏まえつつ、デジタルツールの特性を活用して、より分かりやすい情報提供につながるよう進める必要があると考えており、そうしたことを記載させていただいております。

 下のほうには、日々工夫されるものでもあろうと思いますし、様々な形があろうと思いますけれども、デジタルの場合の情報提供のあり方の1つの活用例として、紙との比較も意識して例示をさせていただいております。例えばでございますが、初心者向け用語解説であったり、あるいはコストを含む様々な項目について並べ替えであるとか、あるいは詳細情報を見やすく比較するなどの例として、こちらに記載しております。

 8ページ目でございます。金融商品取引法等における制度の内容ということで、金融商品取引法等は、顧客に提供すべき情報を記載した書面として、目論見書、契約締結前交付書面、取引残高報告書、運用報告書等を定めております。これらは、顧客が同意すればデジタルによる情報提供に代えることが可能とされておりますし、それからもう一つ、分野横断ということでいいますと、この金融商品取引法の規定を準用している特定預金等契約ですとか特定保険契約、特定信託契約、特定金融サービス契約に係る情報提供についても同様の扱いとされております。その上で、下のほうに例がございますが、一定の場合には顧客同意は不要とされていて、例えば、投資信託における交付運用報告書は書面交付が原則ですが、運用報告書(全体版)については、投資信託約款で電磁的方法による提供を規定している場合には、ウェブ掲載等による提供が認められております。また、上場株式などのプレーンな商品に係る契約締結前交付書面についても一度交付すれば、その後はウェブ掲載等による提供が認められているところがございます。

 9ページ目でございます。今まで申し上げてきたことも踏まえ、現行制度をめぐる課題といたしまして、金融商品取引法等に基づく情報提供のデジタル化について、現状、新規顧客については、対面営業を主とする証券会社で7~8割、ネット証券で8~9割の顧客が電子提供に同意している一方、対面証券の既存顧客の電子提供率は低いという調査がございます。先ほど来申し上げてきました顧客本位の業務運営という観点からも重要としてきた、デジタルツールの特性を活用した、深度ある、より分かりやすい情報提供が、より多くの顧客の方々に享受されるとともに、コスト削減等につながっていくよう、以下申し上げる点を踏まえつつ、冒頭申し上げました、紙による情報提供から、デジタル・リテラシー等の顧客属性に応じた保護を図りつつ、デジタルによる情報提供を原則とする枠組みへの移行についての検討が求められているということで、本日、御議論いただきたいと思っておりますが、その際、踏まえるのは、顧客属性(デジタル・リテラシー等)や商品類型(複雑性等)等には差異があるということと、それからもう一つ、既存契約について、書面、例えばでございますが、投資信託の運用報告書などで交付を受けていらっしゃる顧客の中には、契約にあたって能動的に、ある時点で電子提供に同意しなかった、つまり書面を選択した方も一定数存在すると考えられるということでございます。こういった点も踏まえながら、こうした原則の移行についての検討が求められるということかと思っています。

 10ページ目には、参考でございますが、他の分野につきましてもデジタル化の促進というのが進められているところがございまして、例えば割賦販売法でいいますと、クレジット会社によるカード交付時・利用時の情報提供などについては、事前承諾を要することなく電子提供を行うことが許容されるようになりました。こちらは交付時・利用時ですので、規約や利用明細等々が対象となります。他方、催告に関しましては、法的な契約関係に影響する特に重要な情報提供ですので、原則は書面とされている状況でございます。それから、個別信用購入あっせんについても原則は書面とされております。特定商取引法においては、従来は交付書面について電子提供が認められておりませんでしたが、消費者の事前承諾を得た場合には電子提供を行うことが許容されたということで、それぞれの分野の状況に応じて進展が図られているということかと思いまして、事例を挙げさせていただきました。

 続きまして、大きな2番目のテーマの社債でございます。我が国社債市場の課題と取組みということで、こちらはかねてより議論や取組みが進められてきたところですけれども、そうしたものの現段階での点検等の位置づけということで示させていただいております。

 12ページ目でございます。家計の資産形成に資する効率的・効果的な資産フローの実現ということで、社債市場を通じた資金供給は、銀行等による貸出とともに、事業リスク等を踏まえた企業への効率的・効果的な資金供給、その成果の家計への還元との面において重要な役割を担っているということでございます。下の表は、大きく言ったときの資本市場でございまして、家計から資本市場等への流れはもちろん、下側ですと銀行から企業に資金が提供されて、還元されていくプロセスというものの概略図を載せております。これの中で、上のほうの株式市場、こちらは企業価値の向上を目標に、リスク性資金によるこうした資金仲介のことについて、コーポレートガバナンス・コード等の取組みも進んでおりますが、そういった点を上のほうに少し載せさせていただいていますが、本日御議論いただきたいと思っておりますのは下のほうの、社債や貸出等による資金仲介も非常に重要な役割を担っておりまして、家計から企業に資金提供がなされる中で、事業・リスク等を踏まえた資金提供が行われるわけですけれども、そうしたことについて御議論いただければと思っております。

 13ページ目でございます。先ほど、かねてより議論、取組みが進められてきたというお話をいたしましたけれども、我が国社債市場の十分な機能発揮に向けて、課題としてこれまで指摘されてきた論点というものについて示させていただいております。

 以下の諸点が指摘されてきているということで、上の図にも関係しますけれども、社債市場、銀行貸出の関係というものを1つ意識して、A、Bと載せておりますが、「A 市場への適切な情報提供・社債/融資のイコールフッティングの向上」ということで、他の債務との優先劣後関係を含め、社債評価に必要な情報が十分に提供されているか、社債コベナンツの内容は、諸外国の例も踏まえ、社債権者保護の観点から見て適切・十分かということを挙げております。それから、「B 社債管理の担い手の確保・利益相反への対応」ということでございますが、我が国ではメインバンクが社債管理者となる場合が多いが、情報面でのメリットがある反面、利益相反への対応は十分かということや、社債管理者が設置されないことが多く、社債権者保護が不十分ではないかという論点がございます。

 「C 社債市場の課題」で、狭い意味でのインフラ面の話と言われることもございますが、発行市場では、発行手続き、価格情報、レポ市場等ということで、発行市場について、より透明性の高い社債の発行条件の決定手続きが必要ではないかという論点がございます。また、流通市場でございますが、社債の活発な流通に資するための社債レポ市場などの整備が必要ではないか、社債の流通市場での価格の透明性を高めていく必要があるのではないかという論点がございます。「D 大企業の資金調達を巡る状況」ということで、金融緩和や銀行間の競争等を背景にした、借入に伴う低い調達コストが、大企業が社債ではなく銀行融資を選択する一因となっているのではないかという論点も指摘されているかと存じます。

 続きまして、これまでの取組みを14ページ目にまとめさせていただいていまして、2010年の「社債市場の活性化に向けて」という日本証券業協会で行われた取りまとめですとか、あるいは、そちらの部会で御議論いただいたものも2012年に取りまとめ、公表されているかと思います。こちらは引受審査、コベナンツ、社債管理、価格情報インフラ等々になります。また、コベナンツモデルも制定しておりますし、その少し後になりますが、2016年、コベナンツ開示例示集というのも公表されております。取引情報でいいますと、2015年に報告・発表制度が開始されて、随時見直しが行われ、後ほどございますが、2021年にはA格相当で発行額500億円以上の銘柄まで公表拡大となっております。それから、2021年のところでございますが、先ほど申し上げた発行条件の手続きというところですが、発行体への需要販売情報の提供に係るトランスペアレンシー方式等を規定した自主規制規則が施行されました。また、社債管理の枠組みに関しましては、改正会社法も2021年に施行され、社債管理補助者制度の導入がなされています。2022年、ディスクロージャーワーキング・グループで、ローン、社債のコベナンツの開示が議論されておりますし、また、資本市場の機能発揮ということで、こちらで御議論いただきました銀証ファイアーウォール規制の見直しというのもございます。内閣府令等を公布、施行予定ということで、別添の参考資料の資料3のほうで、最終ページに概要を載せさせていただいていますが、先週金曜日に府令等の公布をさせていただいております。ここまでの議論について最終化させていただいておりまして、今後施行予定となっております。御議論いただきましてありがとうございました。

 続きまして、15ページ目でございます。社債市場の状況につきまして、ここから2ページで概略を申し上げますが、保有者構成については、預金取扱機関ですとか保険・年金基金が約6割、海外機関投資家等につきましては極めて低水準で、言語や低金利環境といった要因に加えて、コベナンツや社債管理者の設置状況などについて、構造的な課題も原因となっているとの指摘もございます。それから、投資信託ですとか小規模な年金等の社債投資を制約している要因として、多くの社債が、社債管理者不設置で社債の額面1億円以上で発行されており、パッシブ運用において一定の規模が必要となっていることや、あるいは、これらの投資家が現に積極的に活用しているインデックスや、あるいは日本社債に特化した大規模なパッシブファンドが存在しないことが挙げられるのではないかといった御指摘もございます。

 16ページ目ですが、こちらは格付との関係等について載せておりますが、非投資適格については2019年から2021年の発行を除いて見られず、投資適格の中でもトリプルB格の発行は米国に比して極めて少ないという状況にございまして、コベナンツの設定・開示ですとか社債管理の担い手・利益相反への対応等々が課題として指摘されているところです。近年の動きで言いますと、いわゆるSDGs債の発行が増加しており、発行体の裾野の広がりにつながっているのではないかとも考えられます。SDGs債における社債発行額の推移を16ページ右下に載せさせていただいていて、2021年ですと合計で約2兆円に達しているということです。

 17ページ目です。こちらから、先ほど冒頭に申し上げましたAからDまでの論点につきまして、それぞれ資料を用意させていただいています。

 まず、「A 市場への適切な情報提供・社債/融資のイコールフッティングの向上」の1つ目でございます。社債評価にあたって必要な情報が十分に開示されることが重要である、バリュエーションにとって必要な情報の開示ということで、我が国実務ですと、ネガティブプレッジの範囲を社債間に限定することが一般的であります。こうした背景、条件等も前提にして考えまして、ローンに関する情報開示の重要性は特に高いと考えられ、現在、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループのほうでございますけれども、ローン等に付されたコベナンツの開示について議論が行われているところかと認識しております。

 続きまして、18ページ目でございます。こちらはコベナンツの内容の話でございまして、社債コベナンツの内容は、諸外国の例も踏まえて、社債権者保護の観点から見て適切・十分であることが求められます。例えばでございますが、アメリカでは低格付債に付与されているチェンジ・オブ・コントロール条項が、我が国実務では盛り込まれていないとの指摘もございます。

 あともう一つ、この議論に付随して寄せられております指摘としては、社債の評価において、コベナンツの付与や社債管理者等の設置が投資家側で適切に反映される必要があるのではないかという御意見もこれまでにあったかと思います。

 チェンジ・オブ・コントロール条項とその状況について、昨今、こうした条項に伴う事例などもありましたので、載せさせていただいています。

 19ページ目でございます。大きいくくりで「B 社債管理の担い手の確保・利益相反への対応」でございます。社債管理者につきましては、利益相反の場面等におけるものなどを含みます公平誠実義務ですとか善管注意義務等々の義務を負い、社債権者保護に重要な役割を担っているかと存じます。我が国ではメインバンクが社債管理者となっている場合が多いと言われていまして、メインバンクの就任については、与信取引等で得た情報を活用できるといったメリットがある一方、利益相反への対応が必要ではないかとの指摘もございます。

 続きまして、20ページ目でございます。こちらは社債管理者の不設置債、いわゆる不設置債と言われるものの関係でございますが、社債管理者が設置されないケースが多いということでございます。左下に2021年の状況なども示させていただいていまして、額面1億円以上が多く、そのうちでも不設置債が非常に多くなっています。2019年の会社法改正で、社債権者の保護の観点から、任意でございますけれども、こうした点の改善を目指した制度導入が図られていまして、裁量の余地の限定された法定権限等を有します社債管理補助者制度が導入されたところかと思っております。昨年の3月に施行されたところです。今後の活用を促していく必要があるとの指摘があろうかと思います。

 続きまして、21ページ目でございます。「C 社債市場の課題」ということで、発行手続き、価格情報、レポ市場等でございます。冒頭でも申し上げましたが、日本証券業協会では発行市場の透明性及び流通市場の流動性の向上等について検討、取組みがなされてきておりまして、発行市場につきましては2020年に、いわゆるトランスペアレンシー方式、発行者に対する需要情報、販売先情報の提供に係る自主規制規則が制定されまして、下のほうにもございますが、トランスペアレンシー方式導入後は、原則、投資家の名称を含めて需要情報を発行者に報告するというような取組みが進められているかと思います。

 続きまして22ページ目でございますが、こちらは流通市場のほうでございまして、1つ、社債レポ取引に関しては、日本証券業協会のほうで一定のニーズを御確認され、この市場の整備に向けた検討が進められているということで、この4月末目途で、社債レポ市場の整備に向けたマイルストーン、課題対応工程を御発表予定ということで、フェーズ1、2、3などに分けられ、例えばフェイル対応ですとかネッティング決済、担保管理等々の諸分野について課題と対応を整理されたということだと承知しております。この工程に沿って、市場関係者との間で具体的な検討が進んでいくと承知しております。

 それからもう一つ、価格の透明性につきましては、冒頭申し上げました2015年開始の報告・発表制度が、その後、拡大されてきておりまして、今ですとA格相当で発行額500億円以上の銘柄まで拡大されているという状況かと存じます。今後、最終的なゴールといたしましては全銘柄の取引の公表ということであるところ、段階的に拡大を進めていくということだと承知しております。

 23ページ目でございます。「D 大企業の資金調達を巡る状況」ということで、金融緩和や銀行間の競争等を背景にした、借入に伴う低い調達コストが、大企業が社債ではなく銀行融資を選択する一因となっているのではないかとの指摘がございます。それからもう一つ、先ほども御紹介させていただきましたけど、ファイアーウォール規制の見直しに伴い、銀行グループの業務運営の一体性が高まることで、「融資と社債引受」、「資本性ローンと劣後債引受」等を比較し、より顧客ニーズを反映したサービス提供につながることが期待されるということかと存じます。右下のほうにも参考で載せさせていただきましたけれども、資本市場における市場機能の発揮ということで、この趣旨でございますが、デット/エクイティの区分なく高度な金融サービスの提供等を行うことを通じて、事業法人が国内外において新たな成長を切り開くことをサポートしていくことが重要であるということが報告書にも記されているかと存じます。

 以上が資料でございまして、本日御議論いただきたい事項、大きい2つのトピックについてお願いできればと思っておりまして、1番目、顧客への情報提供の充実とデジタル化でございます。

 金融商品取引における情報提供は、顧客にとって重要な情報が、顧客にとって分かりやすく提供される必要があり、情報提供のデジタル化を進める中で、デジタルツールの特性を活用し、「深度ある、より分かりやすい情報提供」を推進していくため、どのような取組みが必要か、また、顧客に提供される情報を充実させる観点から見直すべき点はあるか。それからもう一つ、原則デジタル化のあり方を検討するにあたり、申し上げた顧客属性や商品類型等の差異、それから、既存契約に関して書面交付を受けている顧客で、能動的に、ある時点で電子提供に同意しなかった者も一定数存在する等も踏まえ、どのような制度としていくことが考えられるかということでございます。

 2つ目の社債市場のほうでございますけれども、社債市場が有効にその機能を発揮するため、発行から信用モニタリング、さらには償還等と破綻時の対応に至る一連のプロセス全体における適切な社債権者保護、それから、社債マーケットというということで、現物のみならず、レポ市場ですとかデリバティブ市場、CDS等、全体としての関連市場の機能発揮、それから、デット、クレジットという意味で言いますと、社債のみならず、銀行融資やシンジケートローンを含む、より大きな市場全体としての機能発揮をどう考えるか。それから、国債をはじめとする金利市場ですとか海外クレジット市場、為替市場など、他市場との円滑な裁定機能発揮等が総合的に進められることが重要というのが、大きい問題意識としてはあるかと思います。

 この点で社債市場について考えますと、いわゆるSDGs債の増加が進むなど、発行額は増加してきていて、様々な取組みが進められてまいりましたが、長期にわたる超低金利環境の継続もあり、活性化は道半ばだという指摘がございます。こうした中、ファイアーウォール規制の見直しが進み、社債・融資合わせたクレジット市場全体としての機能発揮を考える環境整備が進む現状において、社債活性化に向け、さらにどのような取組みが求められるか、重点的に進めるべき施策は何かということでございます。

 以上が御議論いただきたい事項でございまして、参考のほうでございますが、資料3には計数的な参考資料を載せさせていただいております。それから、参考資料、資料3の9ページ目のところはファイアーウォール規制の見直しで、4月22日に御議論などの最終化ということで、内閣府令等を公布させていただいていまして、6月22日に施行予定ということで、資料を1つ載せております。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうも御説明ありがとうございました。それでは、今の説明を踏まえて、皆様方に御議論をしていただければと思います。

 今、御説明もありましたけれども、資料の最後のところに御議論いただきたい事項として、資料2の25ページと26ページに掲げてありますので、適宜御参照いただければと思います。

 いつものように、まず委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただき、その後でオブザーバーの皆様方からも、御発言があれば伺いたいと思います。

 それでは、委員の皆様方で御質問、御意見がおありの方は、チャット欄に全員宛てで、発言希望などと一言入れていただければありがたく存じます。どなたからでも、どの点についてでも結構ですけれども、いかがでしょうか。

 何人かの方々からチャット欄に入れていただきまして、ありがとうございます。

 まず福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】 
 ありがとうございます。事務局の御丁寧な説明、非常に分かりやすくてよかったと思います。いくつかコメントをさせていただきたいと思います。

 我が国の社債市場は、やはりなかなか低格付社債が育ってこないというのは大きな課題だと思います。それに向けてどうしなければいけないかということでいろいろ御提案あったと思いますし、なかなかすぐに解決策というのは難しいとは思いますけれども、いろいろな形で努力していただくということは必要なのだろうと思います。

 ただ、社債の保有者の構造というのは少し特殊で、頂いた資料の15ページが一番分かりやすいかもしれないと思いまして、日本は、もともと家計はそこまで社債は持っていなかったのですけれども、このところ非常にたくさん持つようになっていて、15ページでいただいた図を拝見させていただいても、もう6兆円以上個人が持っている。社債市場の規模はアメリカより小さいにもかかわらず、アメリカよりも個人が持っているという特徴がありますので、そういう意味では、プロのような人たちが持っているだけじゃなくて、家計が持っているという特殊な構造があります。これは恐らく低金利で、もう銀行に預金していてもなかなか金利もつかないので、言葉は少し語弊あるかもしれませんが、社債に手を出しているというような家計が少しずつ増えてきているという状況もあります。そういった人たちに対してどのような情報を提供していくかということは重要な問題ではないかというふうには思います。

 それから、順番が逆になりましたけど、デジタル化に関しても私は、どんどん推進すべきだし、原則デジタル化ということは重要なのだろうと思います。もちろんそれに対応できない方々がいらっしゃるということは、それはそれで留意しなければいけないとは思いますけれども、やはり書面でのいろんなやり取りというのは、デジタルに比べてはるかにコストがかかっているという問題意識は大事で、それを誰に負担してもらうのかということも重要な論点なんじゃないかと思います。自分はデジタルじゃなくて書面だという人のコストを、デジタルを選んだ人も含めて幅広く負担するのか、それとも書面を選んだ人にやっぱり負担してもらうのかということだと思います。クレジットカードの明細なんかは、最近は、デジタルじゃなくて書面を選べば追加の料金の支払いをしなければいけないというような仕組みがかなり一般的になってきています。金融商品の取引に関しても、やはり書面を選ぶ人に関しては一定のコストを払ってもらうというような方向性はあり得るのかなと思います。キャンペーンとかではなかなかデジタル化が進まないということが書かれていましたけども、実際に書面を選んだ方々が追加のコストを払うということになれば、少しは変わっていくのではないかと思います。

 ただ、全てのデジタル化することに関しては若干注意する必要があります。それは何回か前の回でも指摘させていただいたのですけれども、全面的にデジタルになると、本人以外はなかなかその情報にアクセスできないということがあります。それは基本的にはいいのですけれども、たまたまお亡くなりになられたりとかしたときに、家族がその情報をどうやって手に入れればいいかという問題なども高齢化社会の中では発生します。そういった点には御留意いただきながら、デジタル化を進めていただくというのは結構なのではないかと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 少しチャットの順番を変えて、井口委員には大変申し訳ないのですけれども、今日、原田委員が途中退席と伺っていますので、もしよろしければ原田委員に先に御発言いただいて、それからチャットの順番に戻って、井口委員にお願いしたいと思います。

 原田委員、どうぞお願いいたします。

【原田委員】 
 御配慮いただきましてありがとうございます。

 まず、金融商品取引における情報提供のデジタル化に関しまして書面交付を義務づけるという形ですけれども、ここはぜひとも原則デジタル化という方向性を打ち出していただきたいというふうに考えます。欧州をはじめ、国外の原則デジタル化というものは進んでいますし、先ほど福田委員がおっしゃったように、紙だとコストがかかります。コストも勘案すると、原則デジタル化というのは1つの重要な方向性であろうと思います。

 今日の資料にもありますように、リスクの高低によって紙とデジタルを使い分けるですとか、年齢による区別ですとか、そういった議論はあるかとは思うのですけれども、原則としてデジタルであるということを、そろそろ制度として考えるときに来ていると思います。リスクが高い金融商品は紙でというのは少々おかしな話で、リスクの高いものこそ追加の情報をデジタルで提供できるような仕組みが簡単に用意できると思いますので、より利便性の向上にもつながるというふうに考えられます。

 また、デジタルディバイドの人を高齢者と見るのは、すごく失礼な見方ではないかと思います。デジタル化の議論というのは随分と前からやってきていますので、当時40代、50代だった人が、もう50代、60代に入っていますので、ある程度使いこなせるはずです。ですので、年齢で区分するのではなくて、デジタルについていけない人が、何が原因でついていけないのかというところは、そういう顧客を抱えている側で考えて対応することができるのではないかと思います。

 関連して、少々気をつけることもあると思います。1つは、現場の工夫は自由度高く提供できるようにするというのがいいのではないかと思います。既に今までもいろいろな形でデジタル化は提供されてきていますけれども、追加情報提供にQRコードを用意して、QRコードから別の画面に飛んで、より詳しい説明などが用意されていたりしますけれども、実はあまり利用されていないですといった実態はあろうかと思います。制度で細かく決めずに現場の工夫が生かせるよう自由度高く設定しておくのがいいのではないかというふうに思います。

 あともう1点、デジタル面で対応できない金融機関というのが実はあるように思います。先ほど、9ページだったかと思いますが、7割から8割の顧客がデジタル対応できないという対面営業を行う証券会社の例が表でありましたけれども、対面営業を続けている証券会社の数というのは大分減ってきていますので、そもそも規模も小さいところですので、そうしますと7割から8割といったところで、顧客全体、日本全体のパイからすると、もう極めて少数の顧客であろうと思われます。ですので、そういう極めて少数の顧客を守るということではなく、少し言い方悪いかもしれませんけれども、伝統的な対面営業を続けている営業のあり方も少々考えていただいて、電子対応のための投資などもしていただくということを業界としても考えていただくのがいいのではないかというふうに考えました。株主総会資料の電子提供制度も創設されましたし、EUでは顧客書面交付の原則電子化というのももう既に決まっていますので、日本もぜひ原則デジタル化で、コストダウンなどをより進められるようにしていただくのが最適な道ではないかというふうに考えます。これが1点目、情報提供のデジタル化に関することになります。

 もう1点、手短に、社債市場についてですが、重要な点をいくつか挙げていただいていますけれども、13ページに挙げていただいているA、B、C、D、どれも重要だと思いますけれども、銀行融資との利益相反については、社債権者保護の観点からも気を配っていただきたいというふうに感じました。今、不良債権は少ないですけれども、ただ私たちにはよく分かっていない面というのがありまして、もう終わっていますけれども、モラトリアム法で条件変更した債権が今も残っているかもしれませんし、コロナ禍で無担保無保証で融資をしてというのもありますし、保証協会の保証つきなどもありますけれども、リスクの所在が不明瞭なものが増えているというふうに感じます。

 ただ、社債市場の活性化を期待しているのは大企業で、今言ったような見かけ上の正常債権、もしかしたら不良債権は相対的に少なく、中小零細企業に不良債権は多いというふうに考えたとしても、不明瞭な点は残るかと思いますので、弁済順位を明確にするという点も含めて、銀行が社債権者となる場合の利益相反の問題というのは、保護の観点からしっかり開示する仕組みというものを用意していただきたいというふうに思いました。

 以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、井口委員、申し訳ありませんでした。どうぞお願いいたします。

【井口委員】 
 ありがとうございます。まず、事務局には、御説明ありがとうございました。

 最初の、顧客の業務運営の確保につきましては、事務局から御説明ありましたように、電子化を原則としつつ、比較的デジタルの素養に乏しい方々には電子提供に同意しない権利も残す方向でいいのではないかと思っております。

 2つ目の社債市場の活性化の課題のほうにもコメントさせていただきます。この資料にもあります2012年に発行された日本証券業協会さんの報告書、私のほうでも改めて拝読させていただきましたが、本日のこの事務局資料で取り上げられている課題がほぼ全て、指摘されている状況と認識しています。いくつかは解消したというふうには思いますが、ただ10年近く経過した今でも、本日の議題にある低格付債の課題を含めて、多くの課題がそのまま残っているというように見受けられます。想定以上の低金利という外部環境はあったと思いますが、なぜ解決できなかったということを含めて検証したほうがいいのではないかと思っております。今後を考えますと、金利上昇の気配もありますし、そういうことで、投資家にとって社債がより有望な投資先になる可能性や、あと近年、スチュワードシップ・コードに基づくスチュワードシップ責任を社債に運用するという運用会社も多くなっておりまして、発行会社に対するエンゲージメント、社債に関するエンゲージメントが注目されているということで、こういった課題の解決の必要性が高まっているのではないかというように考えております。

 それで、各論のところで、Aのコベナンツのところとなります。開示につきましては、事務局から御説明ありましたようにディスクロージャーワーキング・グループの議論となりますが、事業の継続に疑義のある状況など、財務状態の著しい悪化や、その前の段階でも格付の大幅な低下などがあった場合というのは、投資家にとって重要な情報となりますので、目論見書に当初開示されているとはいえ、有価証券報告書や臨時報告書に再度、コベナンツについて開示する必要があるのではないかと思っております。

 また、そのときは、クレジット投資家だけではなくて、株式投資家にとっても、社債だけではなくて、企業全体の信用力を把握する必要があるというように考えておりまして、当然のことながら、ローンのコベナンツも同時に開示されるべきだと思っております。実態面では、事務局資料にもありますネガティブプレッジを社債間に限定するというのは、これも2012年にもかなり指摘されていたと認識しておりますが、特に低格付債の場合、大きく信用力を損ねるものと思っておりまして、慣行を変えるように当局に働きかけていただくということも1つではないかと思っております。

 あと、事務局資料の18ページにありますチェンジ・オブ・コントロール条項ということですが、これは非常に重要になっておると認識しております。今まで日本の企業間ではあまり買収等がなかった状況でしたが、投資家の目線というのが厳しくなってくる中、資本効率性向上等に向けて、親子上場の解消に伴って子会社がファンドに売却されるというケースもありまして、低格付の企業はもちろんのこと、子会社上場企業を含め、多くの企業でこの条項が採用されるべきではないかと思っております。

 次に、Bの社債管理の担い手のところとなります。投資家にとって、この社債管理者に期待するのは、社債保有者の権利を代表していただくことと思っております。この役割が最も期待されるのは、デフォルト時などの財務状況が著しく悪化したときとなりますが、この時期というのは貸出と利益相反が最も高くなる時期と重なるということで、現状の態勢と矛盾があると思っております。その意味では、20ページにあります社債管理補助者の役割というところに期待するところですが、ここでは任意となっておりますが、額面1億円以上でも一定の格付水準以下の場合とか、あるいは継続企業に疑義が生じた場合には採用するなどの仕組みを入れて、低格付社債への資金導入を図るというのも考えられるのではないかと思っております。

 あともう一つ、Cの社債市場の課題につきましては、これは以前の当審議会でも既に申し上げておりますが、既に日本証券業協会さんのほうでもやられておりますように、リテンション方式からPOT方式等への移行というのを進めるべきと思っております。この取組みというのは、市場の不透明な慣行の是正や、あるいは健全なマーケット価格の形成に寄与することになるのではないかと考えております。

 最後に、社債市場活性化全般についてですが、この10年間、社債市場の改革は一定程度あったのかもしれませんが、改革速度ということではあまり進まなかったと思っております。この要因というのは、そもそもクレジット投資家含めて、投資家があまり企業に働きかけることがなかったということに加えまして、安定的な銀行の融資があることで、株式に比べて社債発行というのはそれほど重要な資金調達ではなくて、企業の経営者もあまり関心がなかったということにあるのではないかと思っています。

 実際、私なんかも企業さんと、株の立場あるいはクレジットの立場で対話させていただくことがありますが、株式投資の場合というのは経営トップ、社長様含めて対話ということは頻繁にありますが、クレジット投資家と企業との対話では、まず経営トップが出てくることはないという状況だと理解しております。こういう状況なので、事務局資料のCにありましたリテンション方式などという制度も存続してきたのではないかと推察しております。

 ただ、冒頭お話ししましたように、社債エンゲージメントが注目を浴び出しているということに加えまして、昨今のESG債の発行というのもこのような状況を大きく変えるのではないかというふうに予想しております。というのも、ESG債について投資家と対話するときには、ESG債だけではなくて、企業全体のサステナビリティへの取組みを説明する必要がありまして、ここでは株と同様、経営者の視点というのが求められると考えておるからです。また、債券の発行の状況につきましても、債券の評価だけではなくて、会社そのものの評価につながるということですので、経営者の方もESG債の発行状況について関心が高いというように聞いております。したがって、こういったESG債の発行を促すということも、社債市場活性化と改革スピードを早めることの1つの鍵になるのではないかと考えております。

 少し長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】 
 ありがとうございます。私からは、デジタル化についてと社債のところ、1つずつ意見を述べさせていただきたいと思います。

 デジタル化について、私も基本的にはデジタル化ということで賛成なのですが、若干気になるというところがありまして、例えば証券会社のウェブサイトに掲載さえしておけば、顧客が勝手に見るからいいという形になってしまって、実際に確認しない人が増えてしまうとか、あるいは非常にデジタルに弱い人が見ないで終わらせてしまうことが増えてしまわないように、そういう人を減らす努力というのは大事だと思います。その中で、例えば、実際見ないと先に進めないような条件になっている書類もあるというように聞きましたが、そうでない書類についても、ウェブ上で顧客がどれくらい開封しているのかということや、どういうタイプのもの、どういう人だったらあまり開封しないで済ませてしまっているのかというのを、何かのときに調査してもよいのではないかなと思いました。

 多分、セキュリティー上、証券会社のウェブ上で見るのが一番いいのかもしれないですが、定期的に証券会社のウェブを開いて、自分のマイページとか、そういうところを開いて確実に確認するかといったら、その辺は少し疑問なところもあるので、例えばメールで注意喚起をするとか、メールで送れるものは、メールを希望する人にはメールで送るとか、顧客の情報に対する対応というのをある程度調べた上での工夫というのがあってもいいのかなというように思いました。それがデジタル化に関する意見です。

 社債のほうは、社債管理補助者のところについて意見を述べたいと思います。このワーキングとの関係で言いますと、ファイアーウォール規制を全体的に緩和する方向に動かしているということは、やはりグループで銀行や証券会社が一緒に顧客に対して対応する機会というのも今後増加する方向に行く可能性があると思っています。そういったとき、やはり利益相反というのが問題になるから、このワーキングでも、今後いろいろモニタリングするなどの話が出てきたと思います。

 社債に関しては、やはりその利益相反の問題というのは非常に大きいと思っていまして、先ほど原田委員もおっしゃっていましたけれど、もしメインバンクが社債管理者になると、やはりグループ内の証券会社が社債を、その同じ会社に売っているというケースも出てくると思います。また場合によっては、いわゆる利益相反の形になりますけれど、メインバンクは返済を受けたのに、社債だけが残っていて、社債の価格だけが暴落した状態とか、あるいはその状態でデフォルトしてしまったというようなこともあると思いますので、そうすると、やはり社債を持っている人の権利をどうやって守るのかというのが非常に重要になってくると思います。

 そういった意味では、例に挙げていただいているアメリカの制度と日本の制度も随分違うなと思いましたが、もう今まで何度も議論されてきたことだと思うのですが、アメリカの場合は、比較的金額の高いところだとトラスティーがついているのかなと思いますが、日本の場合は、金額の高い、1億円以上で置く必要がないということで、実際あまり置かれていないということのですけれど、そういったところにあって利益相反関係とかが生じたときに、デフォルトしてしまったというときに、本当に社債を持っている人の権利が守られるかなという問題がすごく深刻に出てくると思いますので、今回この補助者制度ができたことは非常によいことだと思うのですが、実際、そこで、弁護士及び弁護士法人などに新たに資格があるということなのかと思いますが、そういったことが実際活用されていかないと意味がないと思うので、やはりそれがされていくかどうかを見ていかなければいけないし、ファイアーウォールの緩和と併せて、こういったことの拡充をしていくことが非常に重要だと思いますので、今後もこの点についてはモニタリングして、議論していければいいのかなと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】 
 野村でございます。私も情報提供のデジタル化について、簡単な意見、そして社債市場についてはコメントを述べさせていただきたいと思います。

 まず、情報提供のデジタル化ですけれども、多くの方がおっしゃっておりましたとおり、私もこのワーキングで議論すべきは、書面原則からデジタル原則への転換だと思います。7ページに挙げていただいたようなデジタル化の取組みは、現場主導でどんどん工夫して進めていかれればよいと思っております。

 デジタル原則に転換する議論を進めていくわけですけれども、利点、それから留意しなくてはならない点、いろいろあると思うのですが、紙の廃棄量を減らすことができるというだけでも大きな利点だと思います。また、そもそも論になってしまうのですが、デジタルと紙とで、紙のほうが分かりやすい、あるいは紙のほうが読んでもらえると言えるかどうかも、もはやよく分からない部分もあるのではないかと思っております。既存の書面交付の顧客についての配慮ということが事務局の御説明でも何度かあったわけですが、要はデジタルではなくて紙にしてほしいと主張するというか、選ぶチャンス、それが必ずあると理解しておりますので、ある意味、そこ以上の配慮というか、心配をしてさしあげても、もはや切りがないのではないかと思います。いわゆる初期設定はデジタルで、嫌な方は、紙を選択することができますとお知らせするということなのかなと思います。

 また、今申したようなデジタル原則への転換のために、いろいろと要件というか、条件設定をされると思うのですが、その際には実務を踏まえることがとても重要であると思います。意図せざる形でそれらの条件設定がデジタル化を阻んでしまうようなことがないように、これは留意する必要があると思っております。

 社債市場についてですけれども、資料でお示しいただきましたような制度の整備、それから改善というのは、どんどん進めていかれるのがよいと思います。金融危機のような、次に大きな混乱が生じてしまった、そういうときに、資金調達のルートが選択肢として複数整備されているということは重要だと思います。したがって、制度の改善は続けていく必要があると思います。

 しかしながら、これらを実施すれば日本の社債市場が大きくなるのかというと、これはまた別の話だというように思います。理屈を言えば、資本市場を利用できるような企業は、恐らく市場から調達するのが効率的なはずでして、逆に相対の融資のほうが現実的だという企業が融資を受けるということなのだと思います。また、金融機関にとっても、スプレッドが低いような大手の優良先よりも、一定の目利きをした上で、中小ですとかスタートアップなどに融資するほうが、恐らくビジネス上も合理的なはずだと思います。金融システムとしては、間接金融に並び立つ、もう一つのルート、選択肢があるというのが危機に対しては強いということは先ほど申したとおりでございます。

 また、個人の資産運用の観点からも、超低金利の銀行預金以外に資金を振り分けるというのが合理的であるはずです。その中にあって、いわゆるインカムゲインのニーズ、これはやはり今後、高齢化が進む中でどんどん高まっていくと思いますので、例えばですけれども、社債の投資信託などは本来重要な役割を担えるのではないかと思います。したがいまして、なぜこのような循環に向かわないのかというのはとても難しくて、鶏と卵といいますか、スイッチがどこにあるのだろうかと、こればかりは制度整備を進めるだけではなかなか解決できないというように思います。

 そういった中で、今後について、サステナブルファイナンスの取組みが進んでいくと思われるわけですが、ESG債、あるいはSDGs債が社債発行を盛り上げることにつながるかどうか、先ほども御指摘ありましたけれど、これは注目している点でございます。ブルームバーグのデータに基づいて野村資本市場研究所が算出したところによれば、2021年、日本の発行体の円建てのSDGs債の発行額は247.6億ドルだったと聞いております。また、たしか日本経済新聞だったと思いますが、円建て社債の中でESG債の発行は旺盛だったと報じられていたと記憶しております。

 また、資金の出し手という意味での個人が、預金に多額のお金を入れてしまうというところが1つ、課題の出発点にあったといたしますと、結局、この社債市場の課題というのも、金融リテラシーの課題と無縁ではない、そこの課題に帰着する部分もあるのかと思います。

 私からは以上です。どうもありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】 
 詳細な御説明ありがとうございました。私からは、顧客交付書面の電子化について、少しコメントさせていただきたいと思います。

 私も原則デジタル化には賛成の考えを持っておりますし、やはりどこかの時点で、強制的にデジタル化に移行したほうがいいのではないかと考えております。その際に、当然顧客保護もしっかりしていく前提にはなるのですけれども、いくつかステップを踏んでいくのがいいのかなと考えております。

 まず、最初は、新規顧客はデジタルでしか受け付けないというような形で、新規のところはデジタル化していく。次に問題になるのは、既存顧客で書面を希望する方への対応だと思うのですが、こちらについては、先ほどもお話ありましたけれども、やはりコストがかかっているのであって、紙の廃棄の問題や、証券会社の負担もありますので、まずは有料化して、有料だったら電子でよいという方も出てくると思いますので、まずはできるだけ電子化へ誘導していくことを最初のステップとして踏んでしまうという形です。その後、徐々に書面の希望者が減ってきて、電子化へ移行したときのインパクトが減った時点で、期限を決めて強制的に、これから全て電子化になりますというように、既存顧客に対しても2段階でやっていくのが社会的インパクトも少ないのではないかと考えております。

 また、証券会社側については、やはり中小の証券会社の中には、そういった電子化に移行する際のシステム投資が必要で、それが大変というお話が背景にはあるとは思うのですけども、少し厳しい言い方にはなってしまうのですけれども、今後、金融だけではなく、様々な分野でDXが進んでいく中で、こういった電子化の第一歩目のシステム投資もできない証券会社さんが今後生き残っていくというのはやはりなかなか厳しいのではないだろうか思われますし、そういった淘汰というのは当然あると思いますので、逆に、淘汰されないためにも、こういったシステム投資を頑張っていただくというのは重要だと思っております。

 ただ、いきなり明日から電子化というのは当然無理だと思いますので、やはり移行期間というものをきっちり用意し、その期間に、最低限このような仕様、こういったものに対応できるシステム投資をしてくださいということを明確に提示して、もし必要であれば、そういったシステム投資に関連する勉強会などを開催して、支援体制を敷いていくのもあり得るのではと思っております。

 ただ、私が1点懸念するのは、こういったシステム投資、システム改修が必要となった場合に、今回は顧客交付書面の電子化というテーマなのですけれども、これだけに個別に対応していくのではなくて、今後、証券会社を取り巻く環境の中で、ほかの業務も含めて、どのようなDXが全体で進んでいくのかということを、やはり総合的に考えた上でシステム設計していったほうがいいのではないかと思います。そうしないと、こういった個別案件に対応するために、少し言い方悪いですけども、付け焼き刃的にシステム開発を行って、そういったシステムがどんどん大きくなっていくと、やはり徐々にメンテナンスが非常に困難なシステムになってしまい、多大なメンテナンスコストがかかってしまう。それが証券会社の負担となってしまって、余計に財務を圧迫してしまうということが起こり得ると思うので、こういった電子化を進める際には、証券会社側のいわゆるシステムリテラシーも同時に高めてやっていかないと、技術負債がたまってしまいます。名前は言えないですけど、銀行さんとかでいろいろ問題が起こっていることが、証券会社でも起こってしまうと、日本全体で非常に大きな問題になってきますので、顧客側だけではなくて、証券会社側のITリテラシーも含めて、時間を取って、ちゃんと教育的な支援も含めて進めていくのがいいのではないかと考えております。

 私からは以上となります。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、武田委員、どうぞお願いいたします。

【武田委員】 
 どうもありがとうございます。まず、事務局におかれましては、非常に丁寧な整理をいただいてありがとうございます。整理いただいた内容についてはおおむね賛成でございまして、デジタル化も社債市場の整備もぜひ進めていただきたいと思います。その上で、意見として2点、述べさせていただきたいと思います。

 1点目ですけれども、非常にすばらしい整理だと思うのですけれども、一部欠けている視点もあるのではないかと感じております。26ページに「長期にわたる超低金利環境の継続もあり、社債市場の活性化は道半ば」との結論がございます。投資家サイドから見れば、おっしゃるとおりと思います。一方で、発行サイドに立ちますと、本来は超低金利のうちに社債を発行し、資金を調達するニーズは、高まってよいはずです。しかしそれが起きてこなかったことがございます。

 野村委員が先ほどおっしゃったとおり、社債市場の整備を行えば裾野が広がり、ボリュームが出てくるのかとの懸念、御指摘と同じ印象を持ちました。本日の資料にはございませんけれども、日米の一番の違いは、マクロの視点から述べますとISバランスの違いです。つまり法人部門が、日本は何年も貯蓄超過です。通常ですと法人部門は投資超過なわけですが、日本の場合は貯蓄超過が長年続いています。つまり、そもそも資金需要、投資意欲が弱かった、結果として法人部門の現預金が300兆円以上も積み上がっているという実態がございます。こうした中で、23ページに書かれているようなことが激化してきたのではないか感じています。

 今申し上げたことは、市場整備が不要だと述べているわけではなく、それ自体はぜひ進めるべきだと思いますが、こうした課題を考える際には、投資家と金融機関起点の視点と、企業起点の視点の双方から課題を捉え、解決策を議論し、全体像を描き、その中で市場整備として何ができるのか捉える必要もあるのではないかと考えます。

 2点目は、ではどうすればいいのかという議論ですけれども、企業の資金需要、起債ニーズが高まるポテンシャルはどこにあるのか、考えてみる必要があると思います。その点では、本日の資料にもございましたけれども、企業が今直面している課題では、カーボンニュートラルへの移行、それをどう進めていくか、特にESG債券の中でもカーボンニュートラル関係の資金ニーズは増えているのではないかと思います。事実、16ページを見ますと、SDGs債に限って見れば、近年飛躍的に伸びているという結果もございます。ただ一方で、最近起きていることは、ESGという冠をつけて、実態を伴っていないケースも起きていると聞きます。そうした観点から市場の透明性を向上させること、また、国際的なルールづくりへ、市場整備の観点からも積極的に日本が関与していく、そうした取組みへの記載があってよいのではないかと感じました。

 以上、2点です。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】 
 神作です。御指名ありがとうございます。

 金融商品の説明のデジタル化については、デジタル化の一般的なメリットを発揮できるようデジタル化を大幅に進める一方、その弊害をできる限り抑えるというのが基本的な考え方であると思います。デジタル化のメリットとしては、迅速な対応が可能であることに加え、金融事業者にとっても、あるいは発行者にとっても、印刷、郵送するコスト等を削減できるほか、インターネットを利用したビジュアル化などによる分かりやすい情報伝達の工夫や、容量面での制約が少ないことから伝達内容の充実などを図ることができると思われます。パンデミック下での電子的な情報提供制度の優位性も明らかになりました。

 他方、情報提供のデジタル化によって、紙ベースの情報提供に比較して、より安易な投資判断がなされないかという点が懸念されます。どの範囲まで顧客の同意を不要とする場合を認めるか、あるいは一定の範囲で、積極的に書面の交付を求めない限りは電子的提供に同意したものとみなす、いわゆるオプトアウト制度の導入を認めるなど、顧客属性に着目するとともに、高度に専門的な説明を要する金融商品、金融サービスであるかどうかという点に留意しつつ、情報提供のデジタル化を促進していただければと思います。なお、その際、2020年の割賦販売法の改正によって、消費者信用の分野ですら顧客の事前承諾なく電子提供できる場合が一定の範囲で認められていることとのバランスにも留意すべきであると思われます。

 次に、社債について申し上げます。デジタルトランスフォーメーションや持続可能な企業に向けた投資の必要性が高まっているという事情もあり、とりわけ中長期的な資金を社債によって調達することは、資金調達をする企業にとっても、また元本が保証された貴重な投資機会を得ることができる資金提供者にとっても望ましいことであると考えます。社債市場の活性化に向けて、法制度や自主規制の見直しなどを含め、既に様々な努力がなされてきておりますけれども、米国と比較した場合に、社債市場の現状は相当に見劣りがする状況にあると思われます。井口委員が指摘されましたように、日本の社債市場の課題は既に相当指摘されており、その解決に向けた議論や見直しも進んできております。社債市場の活性化のために制度の見直しがなされた点について、しっかりとそれを実施していくことが重要であると考えます。

 具体的に3点申し上げます。

 第1は、金融機関による貸出が経済的合理性のあるものになっているか、例えば貸出が採算割れになっているような場合には、その経済合理性について十分に検討する必要があると思われます。事務局説明資料において日本銀行の金融システムレポートが引用されており、貸出単独では採算割れになると考えられる案件も存在しているということが指摘されています。金融機関が貸出のリスクとリターンを適切に評価することが、社債市場の利用の拡大につながるとともに、金融機関自身にとってもプラスになると考えます。

 第2は、社債管理補助者制度についてです。2019年の会社法改正によって導入された社債管理補助者制度は、社債管理者の設置を強制されない社債について任意に設置できるとするもので、社債管理補助者には、発行会社が破綻した場合に、総社債権者のための債権届出ですとか、社債権者集会の招集に係る非訟事件手続法上の各種手続を行う権限が認められている一方、社債権者による主体的な意思決定に期待する制度であると理解しています。社債管理について日本証券業協会において検討されておりました、契約に基づく社債権者補佐人制度の限界を立法的に解決した、特に有事に有用な制度であると思いますので、ぜひ利用していただければと思います。

 実務上の問題点を解決するために、昨年6月に日本証券業協会から「社債管理補助者制度に係る実務上の対応について」と題する報告書が公表され、実務上の問題点もかなり明らかになり、一部については解決の方向が示されています。社債管理補助者の手数料や報酬など、実務的にはまだ越えなければならないハードルがいくつか残っていると理解しておりますけれども、平時と有事で、例えば手数料体系を分けるとともに、有事の場合の手数料を確保するための方法を検討するなど、実務家の方々にぜひ知恵を絞っていただき、社債管理補助者の第1号をできるだけ早くつくっていただくことを強く希望いたします。

 第3に、社債の流通市場の活性化について申し上げます。日本証券業協会では、流通市場における流動性の向上策の1つとして、社債レポ取引に関するニーズが実際にあるという調査に基づいて、社債のレポ取引から同市場の整備に向けた検討を進めています。実際にニーズがあるところから社債の流動性を図るということは極めて現実的なアプローチであり、社債レポ市場の成立によって、マーケットリスクをより適切に管理しやすくなるほか、さらなる社債の流通市場や、翻って発行市場に対してもよい影響を与えると思われ、ぜひ進めていただきたいと思います。社債レポ市場については、フェイルチャージやネッティング決済など、市場を整備しつつ、段階的に整備を進めていただく予定であるということで、社債の流通性を高める、流動性を高めるための重要な一歩になることを期待しております。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】 
 ありがとうございます。まず情報提供の電子化についてですけれども、この問題を考えるに当たっては、既に何人かの委員から御発言がありましたとおり、紙媒体、書面での情報提供にもやはり限界はあるので、それがなされれば十分というわけではないということをスタートラインにして、紙媒体、書面と電子情報というのをゼロベースで、それぞれのメリット、限界を検討する必要があるように思います。その点では、本日、割賦販売法と、それから特商法で、なお書面でなければならないとされている規制が残っているという御紹介をいただきましたけれども、この点も、なぜ紙でなければならないのか、あるいは書面であれば問題がないと言えるのかということは、必ずしも十分に正当化できていないようにも思います。ですので、やはりこの問題を考えるに当たっては、紙で十分なのかということも検討する必要があろうかと思います。

 その意味で、証券、金融商品取引に関する情報提供のほうについて申しますと、デジタルディバイドの方への配慮というのは当然必要だとは思いますけれども、例えば全く電子的なものにアクセスできないという方に加えて、電子的なアクセスはあるのだけれども、紙、書面を希望する、典型的には、書面を希望しますということを電子的な手段で会社側に伝えてくるというような顧客については、これは福田委員がおっしゃったように、そのコスト負担を求めるという方向がよいのではないかと思います。一方で、本当に電子的なアクセス手段が制限、限定されているという顧客の方には、恐らく書面を交付するだけで十分ということにはならない可能性が高いと思います。よりきめ細やかな対応が必要になるのではないかと思いますので、その意味でも、そういった方は例外として位置づけて、きめ細やかな対応をする、原則はデジタル化でよいのではないかと、そのように考えております。

 続きまして、社債についてですけれども、これは近年、着実によい方向に改善が進められているというように認識しております。もちろん不十分な点がまだあるということも既に御指摘があったとおりかと思いますけれども、1点、私から申し上げたいのは、アメリカとの違いで、特に低格付債の発行が日本で少ないということの背景の1つには、企業買収の資金を調達する際に社債を発行する、債券を発行することがやはり少ないということがあろうかと思います。

 日本でも買収は、最近、割と活発といいますか、事例が出てきておりますけれども、その買収のための資金を国内の社債マーケットから調達するという例はなかなか出ていないように思います。そういった背景にどういうことがあるのか、なぜ社債が利用されないのかというようなことを一度、調査していただきたいというように思います。恐らく事業会社が社債を発行する際の事情とは異なるものが、買収資金を社債で調達するというケースでは出てくるのではないかと思いますので、そういったところで何か制度的なものが障害になっていないかということを、ぜひ調査していただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】 
 有吉でございます。私からも、情報提供のデジタル化、それから社債市場の関連について、それぞれコメントさせていただきたいと思います。

 まず情報提供のデジタル化の関係でございますが、デジタル化を促進するということには、ほかの委員と同じように賛成です。デジタルを原則とまで言う必要があるのかどうか、少し分からないところはございましたが、少なくとも紙とデジタルのどちらでもよいとした上で、各業者が顧客層やビジネスモデルに合わせて、併用するということも含めて、選択できるようにすることが適切であると思います。

 そういった中で、事務局説明資料の中にもございましたとおり、デジタルツールの特性を活かした分かりやすい情報提供といった取組みもぜひ推進すべきだと思います。この点、現行の規制上、PDF等による場合も含めて、書面の形を前提として定められているルールがございまして、例えば契約締結前交付書面のフォントサイズを一定にそろえるとか、そういった書式要件などの形式的な規制が新しい取組みの障害になっていないかどうかということについては、実務の取組みをうまく把握して、企画立案していただきたいと思います。

 また、紙と比べて、内容面でデジタルのほうが不十分になるということがあるわけではないと思いますので、検討事項として、事務局説明資料25ページの2の①に、商品類型等による差異に応じて検討が変わってくるのではないかという指摘がありますが、商品類型ごとにデジタルか紙かの差異が生じるものではないという印象を持ちました。

 加えて、同じページの2の②のところにございます既存顧客への対応は、価値観の相違が出る論点ではないかと思いますけど、私としては、デジタル化の推進の観点から、これまで書面交付を求めていたような顧客に対しても、一定の猶予期間経過後には、その同意なしに、業者の判断でデジタル化に移行できるといった取組みを進めてよいのではないかと考えております。そのような場面においても、業者の側が、そういった顧客層を重視してビジネスをやっていくということであれば、書面交付を継続することを判断するものだと思いますので、そういった業者の取組みに期待するということも含めて、デジタル化を推進していくべきではないかと考えております。

 それから、社債市場の観点のほうでございますが、一口に社債市場の活性化といっても、一般投資家ないし家計による社債投資の拡大なのか、それとも機関投資家を中心とした低格付社債への投資の促進ということなのか、あるいは海外の投資家を呼び込むということなのか、想定する商品や投資家層によって、課題や求められている取組みは全く違うものであると思います。低金利の現状では、ここは違う考え方もあるのかもしれませんが、資金調達側から社債市場に期待する実務的なニーズは高くないと思いますが、一方で政策的なニーズがあるということであれば、少し目的を絞って、的を的確に定めて検討していくべきではないかと思います。

 社債の関連で、各論を2点ほどコメントさせていただきたいと思いますが、1点目は、決して冷や水をかけるような意図があるわけではございませんが、情報開示やコベナンツのあり方については、社債市場の活性化という観点だけではなくて、他の取引への影響についても十分配慮して、望ましいあり方を考えていくべきだと思います。例えばローンに関する情報開示を過度に拡大し過ぎてしまうと、銀行融資を萎縮させるというような結果になってしまいかねないわけでございます。あるいは、事務局説明資料でお示しになっているチェンジ・オブ・コントロール条項も、プラスになる面はもちろんあると思うわけでございますが、一方で、こういった条項が社債に盛り込まれることによって、発行会社のM&Aを妨げる効果もあり得ないわけではないと思います。そうすると、株式投資家にとっては収益機会を失うという方向に行く可能性もあるわけでございますので、このような社債にとってプラスになる要素についての、まさにプラスの面と他の取引への波及効果の両方を考えて、バランスの取れた環境整備を図っていくべきだと思います。

 それからもう1点、事務局説明資料の中で、社債管理者の利益相反の懸念が指摘されております。そういった懸念があるということは、理論的にはそのとおりと思うわけでございますが、一方で、現在の会社法上の社債管理者の、特に忠実義務的な責任、すなわち社債権者よりも自己の利益を優先することに対する民事的な責任は非常に厳格に解釈されていると理解をしております。そういった意味で、利益相反の弊害が指摘されるということよりは、むしろその弊害防止のための責任が重過ぎて社債管理者の成り手がなかなか見つけにくい、といったことが実務的には重要な課題になっているという印象を持っております。この点、私は投資家側の考え方を日頃聞いているわけではございませんので、今申し上げている点が感覚的に偏っているということかもしれませんが、今回会社法を改正して社債管理者制度を見直すということであれば、もちろん利益相反の視点というのは非常に重要な観点だと思うわけでございますけれど、現行の会社法の社債管理者制度を前提として議論をする場合に、利益相反への対応を課題として強調する必要はあまりないのではないかと思いました。この点は、事務局説明資料の内容に違和感を受けた観点でございます。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、森下委員、どうぞお願いいたします。

【森下委員】 
 ありがとうございます。

 まず、重要情報シートに関して申し上げます。商品の重要な点について分かりやすく説明するものとして導入されたということで、今後活用されていってほしいなと思っております。ただし、金融商品における問題は、商品の内容をしっかりと説明するということもありますけれども、それに加えて、やはりニーズが合致しているかどうかの判断というものが、利用者のほうがなかなか難しいということもあると思います。金融商品をめぐる紛争も、ニーズが合わないような商品を金融業者が販売し、トラブルになった後に金融業者のほうが、いや、これはニーズに合うと思っていましたというようなことを主張するようなケースが少なくないように思います。本来であれば、金融事業者の側が顧客のニーズをどのように認識し、そしてそのニーズに合致すると思っている理由のようなことも含めて、何か顧客と認識を共有できるような方法が考えられることが今後必要になってくるのではないかというように考えています。

 次に、デジタル化に関して申し上げます。デジタル化に関しては、デジタルでよいという人にも書面を必ず送らなければならないというような話と、デジタルは嫌だと言っている人にもデジタルでなければ駄目だと、書面を渡していけませんとか、書面をもらう権利はありませんという話と両方あり得ると思います。今の委員の御発言の中にも両方の考え方があったように思いますけれども、私は、前者はあっても、後者はどうなのかなというように思います。

 デジタルは事業者側のコスト削減に役立つ、あるいは環境に役立つということはあると思いますけれども、デジタル化ということにも一定のリスクは伴うと思います。顧客の側に証憑が残るのかとか、デジタル情報がなくなるというようなこともあるかもしれません。あと、対面営業をしながら書類が渡せませんというようにまで頑張る必要がどこまであるのか、そこまでを考えている話ではないのかもしれませんけれども、それも自然なのかどうかというのが少しよく分かりませんでした。郵送コストといいますけれども、足しげく通うお客であれば、郵送なんかしなくとも、別に手で持っていけばいい話だと思います。印刷するために費用がかかるというのであれば、その分のプラスの費用を取るのは構わないと思いますけれども、すごくがっちりした書面を作るために、顧客の側が書面を求めるのを断念するような高額のコストになってしまうのであれば、それはそれでまた問題だと思いますので、コストを取るにしても合理的なレベル感はあるべきだと思っています。

 資料にも書かれていましたように、デジタルを進めるということ自体が悪いと言っているわけではなく、どんどんデジタル進めていただいたらいいと思いますが、デジタル情報の特性を活かした、より分かりやすい情報提供をするというところがまさに旨味だと思います。ただ、実際そのようになっているかということについては、法律上求められている書面のPDFをぺたっと張りつけて、ダウンロードできるようにしているというようなケースが多いと思うのですけれども、それが目指す姿なのかどうかというのは、どうなのかなと思います。そういうような情報であれば、結局デジタルで渡したって書面で渡したって、読まないのは読まないということになると思いますし、開封記録ぐらいはつくかもしれませんけれども、じゃあそれで目指しているところが実現できるのかというと、そういう話でもないのかなと思います。

 やはり情報の提供の仕方というのは、より工夫が求められると思いますし、工夫の余地はたくさんあると思いますし、事業者の方々は皆さん工夫されていると思うのですけれども、一度点検してはと思いますのは、そういったいろいろな工夫をする際に、工夫の幅を狭めるようなレギュレーションとか、例えばガイドラインとか、そういうようなものがあるのだとすると、それは見直したほうがいいのかなというように思いますので、事業者の方々の側で、いろいろなデジタル上の工夫、例えば重要な情報だけ際立たせるとか、そういった工夫をする際に、ちょっと今の規制との関係でやりにくいというところがあれば、どんどんそれは言っていただくといいのではないかなと思っております。

 最後に、社債について申し上げます。社債については、私もどちらかというと、有吉委員が先ほどお話しになられたことと同じような印象を抱いております。現状なかなかメリットがないのかなというようなことはあるのですけれども、今後、社債という調達手段をオプションの1つとしてしっかりと認識してもらうことは大切なように思います。そのためには、例えば銀行ローンですとか、あるいはシローンですとか、あるいは他の資金調達手法と比較した場合の総合的なメリットについて、横断的にアドバイスできる人がやっぱり必要なのではないのかなと思います。大企業のうちの本当に一部の企業は、自ら選択することができるだけの専門性を持っている方もいらっしゃると思いますけれども、そうでなければ、やはりアドバイスというものが重要になってくるのではないのかなと思います。

 それに関して利益相反というような話が出てくるのかと思いますけれども、これについては、私も有吉委員と同じ認識を抱いておりまして、漠然と利益相反が懸念されるというような議論をするというのは、分かるのですけれども、それではやはり議論が深まらず、既に一定の法律上の手当てもあるわけですから、そういった法的な手当てではどこが不十分なのかということを具体的に議論していかないと、なかなかこの議論は深まらないと感じております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】 
 お時間ありがとうございます。情報提供のデジタル化についてですけれども、事務局資料の9ページ左下の調査結果というのは、とても重要だというように思います。対面営業を行う証券会社で、既存顧客に対する電子提供率が2割ないし3割というものです。これはやはり書面提供のニーズがあるというのか、あるいは書面提供に合理性があるということを示しているのではないかと思います。いわゆるデジタル化が言われるようになって相当年数たっており、販売勧誘の現場でもそのことは意識されているにもかかわらず、この数字だということは、繰り返しですけれども、存在に合理性があるということではないでしょうか。

 ということで、同じ9ページのリード文にもありますし、それから事務局説明資料の25ページの2の①、②にも指摘されているのですけれども、顧客属性あるいは商品類型の問題、それから現在も能動的には電子提供に同意しなかった人たちが一定数存在するということをやはり踏まえる必要があると思われますし、それを考えると書面交付の場面というのがかなり残るのではないかというように想定しております。決して誰かが取り残されるようなことがないように、電子機器が使えないと資本市場に参入できないというのはまずいのではないかと思います。

 もう少しだけですけども、例えば金融の中でも、クレジットカードなどとは場面が違うような感じがいたします。金融サービスあるいは金融商品というのは、不定形といいますか、それ自体は目に見えないものを販売なりするわけですし、それからもう一つの特性としては、1回きりの売買ではなくて、その後の継続的な情報を見ていくことも重要だという特性があろうかというように思います。そういう意味で、金融商品あるいは金融サービスの特性を踏まえる必要があるというように思っているところです。

 ただ、長期的に言うと、事務局説明資料の25ページ、1の「深度ある、より分かりやすい情報提供」という指摘に注目いたしました。デジタル化が単なる金融事業者側の事務合理化、あるいは書面コスト全般の削減ということだけではなくて、顧客本位の、狭義、広義、両方あるかも分かりませんけれども、いわゆる適合性原則を実現できるような、そういう商品選択なり、あるいは情報提供につながるような、それが金融商品取引のDX、デジタル化ではないかというように思います。そういう意味で、若干角度は違うかも分かりませんけども、先ほどの森下委員の御指摘というのは大変重要だと思います。

 あと一言、社債についてですけれども、社債は本来、事業会社の、少し言葉が不正確かも分かりませんけど、一時的な余剰現金を預けておく、投資しておくということだけではなくて、家計にとっても、そのリスクとリターンを考えたときに、もっと活用されてもよいのではないかと思っております。全般的には銀行融資の金利の状況が環境条件として大きいのだとは思いますけれども、他方、コベナンツ条項の開示などの施策というのも社債活用の基礎だと思いますので、そのような環境整備をした上で、低金利の間は少ししようがないかも分かりませんが、今後家計にとっても活用されるようになる仕組みを仕込んでおくことが重要かと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。以上で、本日御参加いただいている委員の皆様方全員から御発言をいただきました。どうもありがとうございました。

 少し私も一つか、二つ、感想を申し述べさせていただければと思います。

 顧客本位のほうなのですけれども、昨年スタートしました重要情報シートというもののさらなる改善ということを併せて御検討いただければありがたいかなと思います。いくつかの金融機関さんに、お客様の声というのでしょうか、どうなっているのかというのを伺ったことがあるのですけれども、圧倒的に多いお客様の声が、投資信託の重要情報シートについて申しますと、やはり文字ばかりで読みにくいというか、分かりにくいというような指摘が非常にあるようです。今回議論していただいている、まさにこのDXというのは、先ほどからも御指摘ありましたように、顧客にとって分かりやすく、かつ必要な情報ということで、「深度ある」という言葉もありますけれども、ぜひデジタルの文脈で、昨年からスタートしています重要情報シートのさらなる改善ということも併せて検討していただいてはどうかと思います。

 それから、もう1点は社債ですけども、多くの方々から御指摘ありましたように、制度論をしますとどうしても担い手のところに注意が行くと思うのですけれども、やはり日本の社債市場というのは、低格付社債市場一つとっても明らかなように、プレーヤー不在という、この問題を長年抱えているわけでして、発行する人もいないし、それを買う機関投資家もいないという、大変な難問と言っていいかと思います。ただ、資本市場の中で社債市場というのも一翼を担っていることは明らかですし、昨今のSDGs債などの動向が1つの起爆剤というか、1つの転機になり得るようにも思われますので、引き続き社債市場の問題は議論を深めていただければと思います。

 ということで、委員の皆様方からの御発言は以上とさせていただきまして、顧客本位と社債市場というこのテーマにつきまして、もしオブザーバーの方々から御意見があれば承りたいと思います。なお、ファイアーウォール規制については、この後、別途取り上げますので、顧客本位と社債市場についてオブザーバーの方々から御意見があれば、御発言を承りたいと思います。

 チャットに全国銀行協会の伊藤さんから入れておられますけども、どちらのテーマになりますでしょうか。

【伊藤オブザーバー】 
 すみません。社債の件につきまして、1点だけ補足させていただければと思います。よろしいでしょうか。

【神田座長】 
 はい、もちろんです。お願いします。

【伊藤オブザーバー】 
 資料の19ページの社債管理の担い手の確保・利益相反への対応について、補足させていただければと思います。

 資料では、与信取引等で得た情報を活用できるメリットがある一方、利益相反への対応が必要ではないかとの指摘があるという記載がございますが、私どもの理解としましては、現行制度におきましても、利益相反が生じる可能性については法律上も想定されております。会社法上、社債管理者には誠実義務が課されており、銀行が社債権者の利益を犠牲にして自行債権を回収するといった利益相反行為を禁じる規定と理解しております。何人かの委員の方からも少しコメントございましたが、会社法第七百十条では、社債管理者が、その義務に仮に違反して社債権者に損害を生じさせたといった場合には、損害賠償責任を負うとされているとともに、社債管理者が適切な行為を行わない場合には、さらに会社法第七百七条で、社債債権者集会を申し立てて、特別代理人を選任するというように手当てされていると認識しております。

 私ども銀行界では、社債管理を行うに際しては、こういったことを踏まえまして、例えば、銀行として与信先の信用劣化時などにおいて与信保全行為を行う必要がある場合には、これがそもそも利益相反にならないか否かを本部の法務セクションなどで判断して、これに該当する場合には保全行為を禁止するなど、利益相反管理体制を取っているところでございます。したがいまして、この資料のブレットに記載のあります、利益相反への対応が必要ではないかという問いかけに対しては、私ども銀行界ももちろんその認識でございますし、だからこそ現在の制度の下に対応しているということを御認識いただければと思います。

 一方で、これも何人かの委員の方からお話ありましたが、今後こういった利益相反の対応状況をモニタリングしながら必要に応じて高度化を検討していくということは、まさしくそのとおりだと思っておりますし、私ども銀行界としましても、引き続き利益相反への対応ということにつきましてはしっかり対応していく所存でございます。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 日本証券業協会から、野村證券の飯山さん、どうぞお願いします。

【飯山オブザーバー】 
 ありがとうございます。簡潔に申し上げます。

 まず、顧客への情報提供についてです。中身の充実というのは非常に大事だと思っておりまして、取り組んでいる次第でありますけれども、先ほど御紹介ありましたとおり、証券業界ではいろいろキャンペーンなどを通じて御案内申し上げているのですが、既存のお客様というのは、現状維持バイアスもあると思うのですけれども、書面による情報提供がかなり残った状況です。そういった中で、なかなか本格的な対応が取りにくいというのが現状でございますので、ぜひ原則デジタル化は進めていただきたいと思っています。先ほど委員の方から御指摘ありましたが、書面だからといって、デジタルよりも情報提供として優れているかというと、必ずしもそういうことでもないとも思ってございます。大量の紙の消費につながってしまいますので、ぜひとも進めていただきたいと思っております。

 それから、社債市場のほうですけれども、資料にもありましたとおり、低格付市場が未発達であること、投資家の多様化が進んでいないということは大きな課題だと思っております。一方で、15ページにありましたとおり、日本では個人の社債保有が実はアメリカと比べても進んでいるということもありまして、投資家の多様化といったときには、機関投資家ですとか海外の投資家、こういったところが課題になってくるのかなと思っています。マーケットや投資家のニーズというのを踏まえた上で、市場仲介者としての立場から活性化に向けて尽力してまいりたいと思っております。

 以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、国際銀行協会の中村さん、どうぞお願いいたします。

【中村オブザーバー】 
 発言の機会を与えていただきまして大変ありがとうございます。我が国の社債市場の課題について、1点述べさせてください。

 資料22ページに記載があります、日本証券業協会様による社債レポ市場の整備の検討会には、弊協会の会員も参加しておりまして、また、弊協会としても多大な関心を持っています。社債レポ市場の実現を検討する際には、市場参加者の具体的なニーズ、レベル感、市場慣行、取引プラットフォーム等の市場インフラストラクチャーが未整備といった論点が見えてきました。しかし、資料に記載されておりますとおり、課題対応工程、すなわちマイルストーンが公表される予定とあり、今後の議論の進展のために非常に重要な御判断がなされたものと感じております。弊協会といたしましては、社債レポ市場が整備されることを希望する協会会員、お取引先様の期待に応えるだけでなく、本邦市場がより魅力的なものに発展できるように、微力ながら貢献したいと思います。よろしくお願い申し上げます。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、生命保険協会の角さん、どうぞお願いいたします。

【角オブザーバー】 
 ありがとうございます。生命保険につきましても、特定保険契約で金融商品取引法が準用されておりますことから、1つ目の原則デジタル化につきましてコメント申し上げます。

 原則デジタル化の方向性につきましては賛同するところでございます。コロナ禍を契機といたしまして、生命保険業界におきましても、迅速な制度整備等もあり、各社の創意工夫で、現状でも多くの場面でデジタル化が進展しておるところでございます。そうした中、今般の原則デジタル化の検討というものは、顧客利便性の向上、SDGsといった観点からも意義のあるものというふうに考えております。

 一方、生命保険につきましては、資産形成の機能に加えまして保障機能を有していることや、販売の態様も様々であるという点に留意が必要かと考えております。また、今般の議論の中では、一般的な情報提供の部分と、制度として法定されている書面の部分が両方含まれているように感じましたが、生命保険も含めまして、各業界におきましては顧客本位の取組みを進めておるところでございますが、一方で、やはり聞いている、聞いていないというようなところが問題になるということもございまして、そういった際に、この原則デジタル化というものがどのように作用するのかと、どういったことをもたらすのかということにも考えをいたしておく必要があるのではないかというように考えております。

 したがいまして、今般制度改正が行われるということになりますと、商品特性、顧客属性あるいは販売の態様、そういったことを踏まえまして、また、大きな転換であることから、現行実務からの移行にも配慮された柔軟な制度設計となるように、丁寧な御議論をいただくということを期待したいと思います。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、証券・金融商品あっせん相談センター、FINMACの丸野さん、どうぞお願いいたします。

【丸野オブザーバー】 
 機会をいただきましてありがとうございます。FINMACの丸野と申します。

 デジタル化について、少しお話しさせていただきます。先日、金融庁さんの会議体ですけれども、金融トラブル連絡調整協議会、こちらのほうで、私どもも含めまして、ADR機関の情報提供について意見交換をさせていただきました。その際、我々もそうなのですが、やはりコスト的に、情報提供はウェブでやったほうが簡単なので、ウェブで様々な情報提供をしているというような意見が多かったのですけれども、その際、委員の皆様から言われたのは、やはりデジタル化についていけない方たちにどうやって対応するのかということをしっかり考えたほうがいいのではないかというような御意見を数多く頂戴したというふうに記憶しております。本日の御意見では、デジタル化御賛成の方が多いですし、私も個人的にはデジタル化の推進というのは非常によいことだとは思いますけれども、多様な方に資本市場にアクセスしていただく、特に法定で求められている書類の交付などになってくると、デジタル化が参入障壁などにならないようにしなければいけないのではないのかなというふうに考えるところでございます。

 また、コスト負担の問題につきましても、紙で欲しい方にコストを御負担いただくということは、一般的に非常に分かりやすい解決方法かなとは思いますけれども、場合によっては、デジタル化にアクセスできない方というのが社会的弱者と言われる方に、必ずしも一致するとは限らないですけども、一致する場合などもあり得るのだということも考えた上で、皆様方の御知見の下、いい制度が出来上がっていくといいなと思っておりますし、もう一言申し上げますと、このデジタル化の問題が社債と同じように、10年、20年と同じような議論が進まずに、いいところで結論が出るといいなというように考えております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。貴重な御意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。

 時間も大分押しておりますが、冒頭に申し上げましたように、最後に、銀証ファイアーウォール規制について、オブザーバーのお三方から御発言をいただきたいと思います。銀証ファイアーウォール規制につきましては、皆様方御承知のとおり、昨年6月に取りまとめをいたしましたこのワーキング・グループの第二次報告において、残された課題とされたものであり、これらにつきましては本年の議論において取り扱う予定であったところです。冒頭、課長さんからも御紹介ございましたように、昨年の第二次報告を実現するための制度改正というのが先週の金曜日に最終的に確定いたしまして、6月から施行ということでありまして、なかなか本年、十分に議論できるようなタイミングでは必ずしもないのではございますけれども、本日は、全国銀行協会、国際銀行協会、日本証券業協会から御発言があると伺っていますので、このお三方からの御発言を伺って、本日は終了とさせていただき、このテーマについて委員の皆様方からの御発言は、次回、この場でお願いできればと存じます。

 それでは、全国銀行協会、伊藤さん、どうぞお願いいたします。

【伊藤オブザーバー】 
 ありがとうございます。お話ありました昨年6月の第二次報告におきまして、残された課題として記載いただいた、中堅・中小企業や個人顧客に関するファイアーウォール規制の取扱い等につきまして、別添のとおり参考資料を取りまとめておりますが、時間も限られておりますので、手短に趣旨だけ御説明させていただきます。

 概略を2ページにまとめておりますが、スタートアップなど非上場企業へのリスクマネーの供給ですとか、個人の資産形成は申すまでもなく、我が国の長年の課題と認識しておりまして、こうしたお客様と接点を持つ銀行と証券とが連携して、お客様の課題解決のソリューションを提供していくことというのは、国の重要政策でありますスタートアップの育成や、事業再構築・再生の支援、成長と分配にも資するテーマと考えております。3ページ以降に事例の詳細を載せており、本日は割愛させていただきますが、そうした役割を果たしていく際の具体的なファイアーウォール規制との関係をまとめた資料でございます。

 また、7ページに、証券外務員資格のいわゆる二重登録の論点があると思っていまして、これはお客様の利便性ですとか、横断的な金融商品・サービスの提供のための制度整備という文脈でも重要ではないかと考えている次第です。

 このほかにも、資料にはございませんが、第二次報告において検討課題として挙げていただいております引受け関係の諸規則も含めまして、引き続き御検討いただけるとありがたいと考えております。新しい資金の流れをつくっていくということは、なかなか一朝一夕にはいかないというのも事実ではございますが、こうした制度的な環境整備や後押しをいただきながら、私ども銀行界としてもしっかりと役割を果たしてまいりたいと考えておりますので、ぜひ、中長期的な金融システムの目指す姿や方向性、国際競争力の強化といった観点等を見据えた、重要な一歩となる御議論をお願いできれば幸いです。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうも大変ありがとうございました。

 それでは次に、国際銀行協会の中村さん、どうぞお願いいたします。

【中村オブザーバー】 
 御指名ありがとうございます。また、このたびはファイアーウォール規制緩和に関するパブリックコメントの結果を公表いただきまして、大変ありがとうございます。

 さて、弊協会では、昨年公表されました第二次報告書で触れられていないファイアーウォール規制の論点や、触れられたものの、今回のパブリックコメントに反映されていない論点があると理解しております。このような論点を取りまとめ資料5として、本ワーキング・グループに提出させていただきました。これらの論点につきましては、今後、御庁と、また本ワーキング・グループにおいて議論を深めることができればと考えております。

 特に、弊協会が提出した資料5の項番1の上場企業等の範囲の論点と、項番4の外務員二重登録禁止の論点は、今回の規制をきっかけに、より多くのお客様が今回の規制緩和のメリットを享受できるよう、前向きな議論を継続させていただければと存じます。

 以上、簡潔ですが、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうも大変ありがとうございました。

 それでは、日本証券業協会から、野村證券の飯山さん、どうぞお願いいたします。

【飯山オブザーバー】 
 ありがとうございます。ここまで委員の皆様の御議論、それから事務局の御尽力に改めて感謝申し上げたいと思います。証券業界としましては、今回の改正は証券業界の実務を明文化したものと受け止めておりますけれども、改めてNeed to Know原則を十分に踏まえた情報管理を徹底し、資本市場の一層の機能発揮への貢献と内部管理態勢の強化を図ることとしたいと考えてございます。金融当局におかれましても、より実効性を高める観点から、モニタリングの強化、それから公正取引委員会との連携強化、そういった後押しをお願いできればと思います。また、優越的地位の濫用に係る情報収集窓口を設置いただけるということでございまして、併せて御礼申し上げたいと思います。今後、窓口への相談件数ですとか、具体的な相談内容といったものをホームページなどで開示していただけると、より実効性が確保されるのではないかと思いますので、御検討をお願いできればと思います。

 先ほど、銀証ファイアーウォールに関して新たな論点がまた提示されたところでございますが、証券界として意見を申し上げたいと思っております。

 そもそも今般の内閣府令、監督指針はまだ施行されておりません。制度の活用状況ですとか監督上の対応状況、これらの評価もこれからでございます。まずは今回の規制の見直しによる目的の達成状況、成果、こういったものを見た上で、投資家保護や資本市場の健全な運営の観点から、弊害防止措置がワークしているか、顧客のニーズを満たしているのか、しっかりとした検証を行った上で、慎重に見極めるべきと考えてございます。そうでなければ、政策の有効性を的確に判断することが困難になるだけでなく、さらなる緩和が行われて、証券市場の信頼性を大きく低下させる事案、こういったものの発生などの弊害も懸念されるのではないかと考えます。

 今回の改正で、制度面ではイコールフッティングに向けて歩み出しましたけれども、資本市場に向き合う立場として、どのように適切に情報管理を行うか、組織文化のレベルでもイコールフッティングを進めることが先決ではないかというように思います。そうでなければ、銀証一体の総合金融サービスの提供といったファイアーウォール規制緩和の目的として掲げられているものが、資本市場や投資家のコスト負担によって実現されるものとなりかねず、非常に問題だと思います。さらなる銀証間の情報共有の緩和により、少なくとも外形的にはそうした圧力が加わりやすくなると言えると思います。

 先ほど二重登録についてお話がありましたけれども、証券会社の社員として外務員登録を行ったとしても、リスクヘッジ商品自体を取り扱うことは当然可能でございますので、顧客のヘッジニーズに対応できないというような記載は、少しミスリーディングなのかなと思います。外務員の二重登録については、責任の所在が曖昧になりかねないといった課題があると認識しております。そのような課題への対応なしに、緩和だけ先にというのは、少し疑問かなと思っております。

 最後に、資料には様々な事例による論点が記載されておりますけども、そもそもいずれのケースにおきましても、顧客の同意があれば、現行制度下においても情報共有が可能であるということは何度も指摘申し上げてきたところでございます。既に適切にお客様の同意をいただいて、特に支障なく業務を行っている社がある中で、お客様の意向を確認することがなぜビジネスの支障になるのか、さらなる緩和がなぜ必要なのかという点について説明がなされておりませんし、顧客のニーズも明確になっていない中で議論の俎上にのせるのは、少し時期尚早ではないかと考えます。

 以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうも大変ありがとうございました。

 本日は、少し時間を延長してしまいまして、大変申し訳ございませんでした。さらに追加でお気づきの点等ございましたら、ぜひ事務局まで、電話でもメールでも結構ですので、御連絡いただけるとありがたく存じます。本日も大変熱心に、長時間にわたり御議論をしていただきましてありがとうございました。

 最後に、事務局から御連絡がございましたらお願いいたします。

【島崎市場課長】 
 本日はありがとうございました。次回のワーキング・グループの日程及びテーマ等に関しましては、事務局より別途御案内させていただければと思います。誠にありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。皆様方、どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

 
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