金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第18回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年5月20日(金曜)12時45分~14時45分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
     

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第18回)
令和4年5月20日


【神田座長】 
 ただいまから、市場制度ワーキング・グループの第18回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 このワーキング・グループでございますけれども、昨年10月以降、いろいろなテーマについて御議論をしていただいてきておりまして、これまでの御議論を踏まえた中間的な取りまとめを、6月をめどとしてできればと考えております。そういったことを見据えまして、主要な論点を整理した資料を準備していただいております。

 そこで本日は、その資料について御説明をいただいて、中間的な取りまとめを意識してというか、見据えてと言いますか、皆様方に御議論をいただければと存じます。

 なお、申し訳ありませんが、本日、私は事情がございまして、オンライン参加とさせていただいております。万が一、私の接続が途切れるような場合には、そのまま事務局の進行で会議を続けていただきたく存じます。私のほうで、再接続を試みる等をさせていただきます。

 そこで、今日はこの後、まず、お手元の説明資料について、事務局から御説明をいただいて、その後、委員の皆様方から、御議論をいただくということにさせていただきたいと思いますけれども、前回との関係で、一言だけ申し上げておきます。

 前回の会合の際に、オブザーバーの皆様方から、ファイアーウォール規制につきまして、御発言をいただきました。委員の皆様方から、御発言をいただく時間が取れませんでして、今日、お伺いをするということを申し上げたように記憶しております。

 これから御説明いただきます事務局説明資料の中に、このファイアーウォール規制も、1つの項目として入っておりますので、まずは、今日の進め方としましては、事務局説明資料の御説明を伺った後で、委員の皆様方から、前回、オブザーバーから発言のありました、ファイアーウォール規制を含めて、その他の点も、もちろん含めてということになるのですけれども、事務局資料の全体についての御質問、御意見をお出しいただければと思っております。

 また、いつものように、順番としては、まず、委員の皆様方から御質問、御意見をお出しいただき、それからその次にというか、その後で、オブザーバーの皆様方から、御質問、御意見をいただくということで進めさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局説明資料について、事務局からの説明をお願いいたします。島崎課長、よろしくお願いいたします。

【島崎市場課長】 
 よろしくお願いいたします。資料1に基づきまして、御説明させていただきます。本日、討議いただきたい事項ということで、16ページにわたりまして、御用意させていただきました。

 1ページ目の前段では、1990年代以降の金融システム改革等の環境整備の後、金融商品販売の担い手や、金融商品の多様化が進んできているが、他方、ニーズに沿った金融商品を選択すること等、これは、経済成長のもたらす大きな果実なわけですけれども、そうした環境整備に向けた取組は道半ばということで、現状認識等を書かせていただいておりまして、中段以降になりますが、成長と分配の好循環の実現が必要で、その観点から、金融・資本市場に関する諸施策を進めることが求められているということを記載しております。

 ローマ数字のⅠは、大きく言いますと、成長・事業再生資金の円滑な供給ということで、2ページ目の以下、問いといいますか、いつも本日討議いただきたい事項に相当するようなところは、枠囲みに文字をしておりますけれども、全体となることも書かせていただいた上で、そうした問い設定をさせていただいております。

 1.スタートアップ・非上場企業への成長・事業再生資金の円滑な供給ということで、機関投資家による資金供給の拡大から始まります。

 ①は、アセットオーナー等による資金供給の拡大ということで、海外なども見ながらでいいますと、国内のアセットオーナー等による資金供給も限定的である等、現状認識等を書かせていただいた上で、専門人材等について、アセットオーナー等による国内VC等への投資の拡大に向け、専門人材の育成・運用ノウハウ・ベストプラクティスの共有などが有効と考えられるが、どのような取組を行っていくべきかということを記載しております。

 ②は、投資信託による非上場企業への資金供給ということで、クロスオーバー投資の増加ですとか、こうしたものを考えていて、投資信託への非上場株式の組み入れは禁止されていないのですけれども、必要な枠組みを整備する必要があろうということでございます。

 3ページ目に行きますけれども、頭のほうから、適切な流動性リスク管理ですとか、あとは基準価額の算定等、市場価格の存在しない非上場株式の評価が適切に行われる必要がありまして、こうした点、欧米の制度等も参考に、非上場株式の評価のあり方等について、適切な枠組みを整備する必要があると考えらえるが、どのように枠組み整備を進めていくことが適当であるかということを記載しております。

 (2)でございますけれども、非上場株式のセカンダリー取引の円滑化でございますが、PTSによる、特定投資家向け有価証券の取扱いについて記載をしております。アメリカ等を見ますと、非上場株式のセカンダリー取引のプラットフォームが存在して、取引ニーズに対応している状況でございます。

 我が国では現行制度上、PTSはございますが、特定投資家向け有価証券を取り扱うことが認められておりません。現在では、特定証券情報の内容等を定め、自主規制の制度整備も行われていますが、こうした点を踏まえて、PTSが協会と連携し、管理する枠組みなどを構築した上で、特定投資家向け有価証券の取扱いを可能とする制度改正を行うことが考えられるが、このほかに留意すべき点はあるかということを記載しています。

 (3)は、金融サービス・支援の高度化で、①ではデットファイナンスの拡充、事業全体に対する担保制度について記載しております。

 枠囲みで見ますと、4ページ目にまたがりますけれども、産業構造の変化を踏まえて、有形資産を持たないスタートアップ等が円滑にデットでも成長資金を調達できる担保制度の早期導入に向けた検討を進めるべきではないか。また、こうした制度の事業再生局面における活用も含めて、資金供給・調達の可能性を拡大することへの期待をどう考えるかということを記載しています。

 ②でございますが、地域企業の事業再生・事業承継の円滑化に向けた、非上場株式の取引ということで、日本証券業協会の自主規制で、原則として、非上場株式の投資勧誘は禁止されつつも、例外は設定されております。こうしたことも踏まえて、地域企業の事業再生・事業承継の円滑化に資するよう、非上場株式の取引に関する自主規制の見直しの検討について、どう考えるかということを記載しています。

 ③でございますが、座長からもお話しいただきましたが、先日、オブザーバーの方から御意見をいただきまして、本日、御意見を賜ることになっております、銀証ファイアーウォール規制でございます。第二次報告における外務員の二重登録禁止規制についてですとか、中堅・中小企業や、個人顧客に関する規制の取扱い等について記載した上で、こうした課題等については、スタートアップを含む中堅・中小企業の資金調達の円滑化等に資するかといった観点も踏まえつつ、引き続き制度のあり方について、検討を行っていくことが考えられるが、どうかという記載をしております。

 2.企業の成長に資するエグジットの多様化ですが、(1)ではIPOプロセスのあり方について記載をしております。こちらは日本証券業協会のワーキング・グループにおいて、報告書も頂きまして、順次、実施予定となっております。5ページ目でございますが、公開価格設定プロセス等の見直しを、必要な制度的対応を行いつつ、着実に進展させる必要があると記載をしております。

 その上で、問いの設定にもなっておりますが、これまでの目線では評価が困難なビジネスモデルや技術を活用する企業について、よりイノベーション促進的な観点から、上場審査を行うことが求められているが、取引所において、どのような対応を行っていくことが考えられるかとさせていただいています。

 (2)が、エグジットの多様化で、①はダイレクトリスティングでございます。アメリカなどの例も参照しつつ、我が国では、こうした上場手法の多様化に向けて、投資家保護に配意しつつ、ダイレクトリスティングを利用しやすい環境を、取引所において整備する必要があると考えられるが、このほかに配慮すべき点はあるかということを記載しています。

 ②が、M&Aでございまして、こちらも日本証券業協会の自主規制のルールで、原則1年以内にM&Aを実行することや、実行されなかった場合の代替使途を公表することが求められておりまして、現在、見直しの検討を行っておられますが、上場企業の実務やニーズを踏まえ、原則1年以内とされている資金の充当期限を見直すことなどが考えられるが、どのような点に留意すべきと考えられるかということを記載しています。

 6ページ目でございます。③のSPAC、特別買収目的会社でございます。米国における不正事例ですとか、あるいは、諸外国を見たときに、一般の個人投資家の参加の制限・禁止、あるいは、プロ投資家を中心に取引を行うことが、グローバル・スタンダードとなりつつある等の認識を示した上で、SPAC制度について、海外での事例ですとかそういったものについて情報収集を行うとともに、我が国の市場の特性や、投資家保護上の論点を踏まえながら、導入の意義や必要性を、引き続き検証する必要があるのではないか。また、導入する場合の制度整備については、グローバル・スタンダードを踏まえ、参加可能な投資家を限定する等、投資家保護に十分に配慮しつつ検討を行う必要があると考えられるが、どう考えるかとさせていただいています。

 次の大きなセクションでいいますと、Ⅱ.経済成長の成果の家計への還元促進でございます。これまでに御議論いただいたときに御提示させていただいたものにも含まれていますが、経済成長の成果を還元して、資産形成につなげていく際に、もちろん果実をより大きなものとしていくとともに、金融商品の組成・販売・管理等の各段階における金融事業社が顧客の最善の利益のために行動するための、顧客本位の業務運営の確保ですとか、金融リテラシーの向上に向けた取組を総合的に進めていくことを、資料にも掲げさせていただいています。その際、重要な情報の分かりやすい提供と、プロダクトガバナンスの確保の注力などについても、御議論いただきました。

 1.顧客本位の業務運営の確保と金融サービスの向上でございますが、仕組債の販売等についての懸念なども触れつつ、総論としましては、家計の資産構成が変わってこなかった要因ですとか、顧客本位の業務運営の確保に向けた取組の現状についてどのように考えるのかということ、それから、貯蓄から資産形成への動きを確実なものとしていくため、どのように取り組んでいくべきかという、大きな問いを掲げさせていただいています。

 (1)が販売・助言サービスの態様においた制度の柔構造化で、御議論をいただいたところでございますが、残高連動手数料方式の導入などの動き、それから7ページ目から8ページ目にまたがってきますけれども、投資助言業務に係る現行制度の一部が、ビジネスの実態に合っていない等の御指摘もあって、多様な主体が、投資助言業者として適切に助言サービスを提供できるよう、業務の実態を点検しつつ、環境整備を行うことが適切と考えられるが、例えば、下のア、イ、ウ、のような制度の見直しを行うことについて、どう考えるのかということを記載しています。

 例えば、アでございますと、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者の指名の記載についてでございます。イでいいますと、契約締結前交付書面などにおける記載のことでございます。ウでいいますと、作成・保存すべき帳簿書類の点についてでございます。それぞれにつきまして、このような方向性も考えられるのではないかということ、例えば、氏名の記載の省略ですとか、あるいは、代替の手段、それから録音データ等について、ア、イ、ウで記載させていただいていますが、どのように考えられるのかということでございます。

 それから、このアからウのほか、9ページ目にまたがりますけれども、多様な主体が投資助言業務として、適切に助言サービスを提供できるような環境整備のあり方について、どう考えるかということで、(ⅰ)投資顧問契約に基づく助言の内容を記載した書面に関して、記載すべき事項や、その内容等が明確でないですとか、あるいは、(ⅱ)投資助言業者においては、投資者保護の観点から、顧客への貸付け等について禁止されており、これによって、第一種金融商品取引業者が届出業務で行っている貸付け等も、投資助言業を兼業した場合は、禁止されることになるということについて記載しています。

 それから9ページ目、その後ろでございますけれども、金融商品取引法上の助言を有償で提供する場合、それから、無償で提供する場合等の形について、記載した上で、例えば、証券会社等が、残高連動手数料を収受して助言を行う場合、同様の助言であっても、助言の報酬と解されるか否かによって、義務が異なってしまうことになっていると記載させていただいております。

 こうした制度は、法律の導入時に、当時のビジネスモデルや、取引慣行の配慮しつつ設計されたものと考えられるが、その後、環境の変化であるとか、あとは既存の制度が、証券会社等におけるコンサルティングやアドバイスに係る柔軟なビジネスや手数料の設計を妨げている可能性が指摘されているほか、投資者保護の観点からも、同様の助言行為についての求められるルールが異なりうることは、好ましくないとの指摘がございます。

 10ページ目にまたがりますが、諸外国の制度を参考にしつつ、ビジネスの実態を踏まえながら、販売・勧誘に伴う助言・推奨に関する制度的枠組みについて、その柔構造化の可能性も含めて検討していくことについて、どう考えるかということを記載しております。

 (2)でございます。金融機関によるデジタルツールも活用した顧客への情報提供の充実で、①深度ある、より分かりやすい情報提供ということで、顧客本位の業務運営に関する原則においても強調されておりますし、また、重要情報シートの導入における様々な指摘がございます。デジタルツールや、ウェブ・アプリを活用し、書面や、書面を単に電子化したPDFよりも、より深度がある、分かりやすい情報提供を実現し、家計の資産形成を実現していくことが求められているが、どのような情報提供を促していくべきかということを記載しております。

 それから、②情報提供のデジタル化ということで、コスト削減等、あるいは、資源の節減の観点等を挙げた上で、新規契約・既存契約のそれぞれについて、例えば、同意の要否、意思の確認方法、あるいは、書面が選択可能であることの周知方法や、そのコスト負担、その他の顧客保護措置の必要性、それから、業界全体としてのあり方等について、検討していくことについて、どう考えるかということを記載しております。

 (3)プロダクトガバナンスと資産運用業の高度化でございますが、①資産運用会社等におけるプロダクトガバナンスの確保として、11ページ目の囲みのところでございますが、プロダクトガバナンスの確保を促す観点から、諸外国の制度を踏まえつつ、商品組成や手数料設定、情報提供、評価・検証について、どう考えるかということを記載しております。

 それから、こうしたプロダクトガバナンスの枠組みを確保するための資産運用会社等自身のガバナンスの強化について、どう考えられるかということや、取組によっては、制度化を検討することが適当なものもあると考えられるが、これらについて、どう考えるのかということについて記載しております。

 ②が、二種ファンドの募集・運用の適切性の確保のためのルールの見直しで、ソーシャルレンディングにおいて不適切な事例が発生しておりますが、現行、有価証券投資型ファンドについて整備されているルールが、実態として適用されていない部分がございます。

 投資家被害を抑止するため、ソーシャルレンディングを含む、投資・運用行為を行っている事業者等に対して、同様の行為を行うファンドと同様のルールを適用するなど、二種ファンドの業務の適切性を確保するための必要な措置を講じることについて、どう考えるかということで、アの、12ページにもまたがりますが、善管注意義務ですとか、忠実義務、投資家に対する追加的な情報提供を含めた運用行為に対する制度を整備するということを記載しております。

 イとして、ソーシャルレンディングなどについては、インターネットで完結する募集の取扱業務に適用されている制度が適用されていない部分がございますので、そうした点について、自己募集も含めて、どう整備するかということを記載しております。

 ③が投資運用業者等の受託者責任の明確化でございますが、こちらも不適切な事案が発生しておりまして、その再発を防ぐために、受託者責任を負う投資運用業者や信託銀行の方々が必要な資料、例えばですが、残高証明や約定記録等を入手、確認するよう、見直しを検討していくことについて、どう考えるかということを記載しております。

 その他として、投資信託及び投資法人に関する法律における運用業者等の損害賠償責任を明確化する規定について記載した上で、当該規定の役割について、どう考えるのかということを記載しております。

 2.は、家計の資産形成に向けた金融リテラシーの向上ということで、これまで、様々な取組が進められておりますが、13ページ目にございます、(1)学校における取組の支援、(2)職域における取組の支援、(3)関係機関・団体の連携等がございますけれども、学校現場についての定着・質の向上に向けての支援をどう考えるか。職域における社員向けの教育の継続的な実行について、どう考えるか。それから、関係機関団体の連携について、関係団体が一体となって取り組んでいくための連携についてどう考えるのか。①、②、③といった、大事な項目を載せさせていただいていますけれども、どう考えるのかということを記載しております。

 13ページ目でございます。市場インフラ機能の向上で、14ページ目にまたがりますが、こちらは、証券トークンについて、近年ですと、証券トークンの発行が始まっていること等も含めて、様々な動きがございますが、取引所、PTS、証券会社などが、取扱商品の特性に応じた、安定的・効率的で公正な取引手段を提供し、価格発見機能を適切に発揮するよう、必要な取組を行うことが重要であるということで、1.上場株式等についていいますと、適切な市場間競争というキーワードですとか、あるいは、一般投資家、バイサイド投資家のニーズを踏まえた多様な売買方式等について触れさせていただいた上で、(1)PTSの売買高上限等のあり方ということで、競売買方式にかかる売買高上限の緩和を検討することについて、どう考えるのかということを記載しております。

 また、例えばPTSが自主規制機関と連携して、売買審査等にあたることとする具体的な枠組みを検討していく必要があると考えられるが、どう考えるかということも記載しております。

 それから、15ページ目でございますけれども、取引情報のことでございまして、現在、PTSは、自ら取引情報を公表することは、法令上、義務づけられておりませんが、これについてどう考えるかということを記載しております。

 それから2.非上場有価証券等でございますが、(1)認可審査の明確化・柔軟化・迅速化等ということで、現在、監督指針は、上場株式等の取扱いを念頭に置いていると考えられますが、PTS制度の積極的な活用に向けた、非上場有価証券の部分のPTSの認可審査について、審査内容・手続の明確化、認可基準の柔軟化、認可手続の迅速化に、取り組んでいくことについてどう考えるかということを記載しております。

 それから、(2)でございますが、そうした際、PTSが取扱い、広く一般利用者の投資対象となり得る非上場株式等について、自主規制機関が関与するかたちでの適切性の確認等と具体的な措置などについて、どう考えるのかでございます。

 最後、16ページ目でございまして、PTSでデリバティブ取引を取り扱えるようにするニーズもあり得るとの指摘もあるが、どう考えるかということでございます。

 Ⅳ.社債市場の活性化ということで、前回も御議論いただきましたけれども、社債発行から、信用モニタリング等の一連のプロセス全体の社債権者保護ですとか、あるいは、もう少し広げ、例えば社債レポ市場やデリバティブ市場、それからクレジット市場全体、他の市場との裁定等の点から総合的に進めることが重要である旨、前回お示しをさせていただきました。これまで、様々な検討・取組が進められており、引き続き、他の債務との優先劣後関係を踏まえつつ、情報提供、社債権者保護、それからインフラの整備が必要であると考えられます。

 そのため、今後も他債務のコベナンツ等に関する情報開示や、必要なコベナンツの付与ですとか、社債権者保護、利益相反管理の高度化、それから、透明性の高い仕組み、レポ市場の育成等について、適切な対応が期待されるが、取組のあり方についてどう考えるかというように設定させていただいております。

 本日は、御議論よろしくお願いいたします。

【神田座長】 
 どうも御説明ありがとうございました。それでは、今の説明を踏まえて、皆様方から御議論を頂戴できればと思います。繰り返しになりますけど、まず、委員の皆様方から、御質問、御意見をお出しいただき、その後で、オブザーバーの皆様方からも、御質問、御意見を承る時間を取りたいと思います。

 いつものように、御発言いただける委員の方におかれましては、チャット欄で、全員宛てに「発言希望」などと入れていただければと存じます。私のほうでそれを拝見して、御指名をさせていただきます。そうしましたら、マイクのミュートをオフにして御発言いただき、大変恐縮ですけど御発言が終わりましたら、また、マイクのミュートをオンにしていただければ、ありがたく存じます。

 どなたからでも、どの点についてでも結構でございますけれども、いかがでしょうか。どうもありがとうございます。佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】 
 すみません。何か1番に当てていただいて、ありがとうございます。

 非常に多岐にわたることを、きれいにまとめていただきまして、ありがとうございました。私からは簡潔に、前にもお話しした点と重なるところもあるのですが、今回まとめていただいた中で、気がついたことを意見したいと思います。

 1点目ですが、銀証ファイアーウォール規制の部分なのですが、これについては、多分そういう予定でいらっしゃるとは思うのですけれど、前回、今後はモニタリングなどをして、フォローアップしていくということが、最終的に約束されたことだったと思いますので、その実際にやってみてどうかという部分を、ぜひフォローをしていただきたいなと思っております。その上で、今後どのように持っていくかということにも影響があると思いますので、その点をお願いしたいと思います。

 それから次に、家計の資産構成が変わってこなかった要因などについて、どのように考えるか、経済成長の成果の家計への還元促進の部分なのですが、これも前に一度発言したのですが、やはり、保険、iDeCo、NISA、不動産など、投資するものによって税金が控除されることなどによって、節税効果が得られるものがあります。こういった効果というのは、恐らく家計の資産形成に与える影響が非常に大きいと思いますので、もちろんそういうことで、iDeCoとかNISAというのも実現したのだと思いますので、やはりそういったものが、どのように資産形成に影響を与えているかという、全体のデザインを、ある程度見ていかないといけないのではないかと思います。やはり、資産構成が変わらなかったところには、そういうところの影響もあるのかなと思いますので、ぜひ、それをお願いしたいと思いました。

 3点目ですが、販売助言サービスのところなのですが、これも前に申し上げたのですが、助言をコンサルティングというか、日本の個人投資家が受けて、適切な投資をするということは、個人投資家のリテラシーを向上させるのと同様に、非常に重要なものと思っています。その一方で、例えば、一種の投資詐欺というか、助言のように見せて、非常に高額な何かレクチャー料を取るとか、テキスト代を取るとか、そういったものを学生の間でも、たまに聞くことがあるのですけれど、そういったような問題があることもありますので、安心して個人投資家が利用できるサービスというのが、求められているのだと思います。また、現実問題としては、従来の勧誘との線引きが難しいなどの問題がありますので、今後こういったものを育てていくために、どういった形で進めるのかという部分が、非常に重要であると考えました。

 また、デジタル化に関してなのですが、デジタル化に関して、もちろん私も賛成で、原則的に、デジタルという形を進めていくことに賛成なのですが、一方で、デジタルで提供して、それで終わりという形にしないで、デジタルにすることのメリットを活かして、より細かく顧客の情報の確認の頻度等をチェックすることなどで注意喚起をするなど、より高度なサービスを提供するという形に、なっていってほしいと考えました。

 あと、二種ファンドに関係しまして、やはり、第二種金融商品取引業が増加してきているので、フィンテックのいろいろな技術の向上によって、これまで想像しなかったような新たな問題やリスクが発生する可能性もあるので、ぜひ、監督、モニタリングのあり方など、引き続き検討していただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。多くの方からチャットをいただいておりまして、大変ありがとうございます。

 チャットの順番で、次に有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】 
 有吉でございます。事務局説明資料に幅広く、多様な項目の論点を整理していただきまして、大変ありがとうございます。私からは、いくつかの項目について、意見を申し上げたいと思います。若干長くなるかもしれませんが、御容赦いただければと思います。また、コメントを申し上げない点については、基本的に事務局説明資料に沿って制度を見直すという方向で、検討していただきたいと思っております。

 まず、2ページの「アセットオーナー等による資金供給の拡大」という点でございますけれども、この観点については、公的な機関投資家の資金を呼び水にして、民間の年金基金等の資金を国内VCへの供給に流すといったことが重要であると思います。その際、国内VCへの投資を拡大するということが、仮に短期的に収益につながらないことがあったとしても、直ちにアセットマネジャーとしての受託者責任に反するものではないということが明確になるよう、VC投資の意義を改めて整理して、周知することが重要だと思います。もしできるのであれば、公的な機関投資家については、政策的に一定の資金を国内VCへ供給させるといったようなことも、検討してよいのではないかと思っております。

 それから次に資料全体として、何か所かでPTS制度について言及されておりますが、PTS制度については、制度自体の利用可能性を高めるという方向で制度整備をすることは、ぜひ、進めていただきたいと思います。併せて、対象が上場株か、非上場株か、あるいはセキュリティトークンであるかといったことを問わずに、PTSに対して、上乗せの規制を適用していることが、何を保護しているのかということを改めて整理した上で、証券取引のプラットフォーム的なもののうち、どのようなものがPTSに該当して、重い規制を適用するのかということを明確にしていただきたいと思います。裏を返せば、必ずしも上乗せ規制を適用する必要はない類型のものについては、許可が要らない、通常の第一種金融商品取引業として行うことができることを明確にする方向で、取組を進めていただきたいと思います。

 それから、3ページの「デットファイナンスの拡充」という項目についてでございますが、キャッシュフローに着目した、デットファイナンスに資する法制度を整備すべきという思想については、全面的に賛同いたします。ただ、金融庁が御提案されている事業成長担保権というものにつきましては、出来上がりの手続的な負担が軽いものであるということであれば、既存の担保制度の代替手段であったり、あるいは付加的な担保として利用されるということは、大いにあり得ると思うのですが、この制度を利用することによって、銀行にとって融資が可能になったり、あるいは、融資が促進されるというような具体的な場面や、債務者が、あまり思いつかないというのが、正直なところでございます。

 一方で、事業再生分野の弁護士などと話をしていますと、事業成長担保権が設定された後に、他の金融機関などから資金調達を行う場合であるとか、あるいは、事業再生局面に至ってしまった場合の再生可能性などへのネガティブな影響を指摘する声が多いという印象を受けております。

 そういった意味で、この事業成長担保権というものをたたき台の1つとして、法制審議会で実務に適合する担保制度を検討するであるとか、あるいは、事業性評価による融資のあり方の検討を進めるといったことは、非常に望ましいと思うのですが、神田座長には大変申し訳ないと思うのですけれども、事業成長担保権の早期導入を進めるべきということまで提言することについては、非常に違和感を受けているところでございます。

 それから、7ページ辺りの、販売・助言サービスに関する制度の柔構造化についてでございますが、制度あるいは規制の具体的な内容につきましては、本日、日本証券業協会から提出された資料、この後、御説明があるのではないかと思いますが、などの実務の実態を踏まえて、具体的なところは検討してほしいと思うところでございますが、コンセプトとして、次に申し上げる3点を意識して、制度設計をしていただきたいと思います。

 1点目は、証券会社のサービス、あるいは手数料体系が多様化している中で、サービスと手数料の対価関係が不明確になる場合が増えていると思います。その中で、無償と整理していた助言サービスが、有償というように評価されたからといって、規制の適用関係が大きく変わることは、適当ではないということを、まず1点留意していただきたいと思います。

 2点目は、無償の助言サービスに対しても、注意義務とか、利益相反管理とか、そういった最低限の規律は、やはり及ぼすべきであろうと思います。

 それから3点目として、同じ性質の投資助言サービスには、同一の規制を適用すべきという考え方が、まずスタートであると思うわけでございますが、ただ、証券会社が行うように、販売と一体、連動して行われる助言サービスについては、その特殊性であるとか、あるいは、第一種金融商品取引業の規制が適用されるといったことに配慮した規制内容とすべきであって、また、自主規制の文脈においても、販売と助言を分けて、異なる自主規制機関が規律するというのは、うまくいかないと思いますので、一体として、恐らく日本証券業協会になるのだと思いますけど、規律を行うべきであると思います。

 特に3点目の具体的な対応という意味では、例えば、事務局説明資料の9ページの(ⅰ)にあるように、書面の書き方について、販売活動と連動して行われることを踏まえた簡略な記載を認めるであるとか、それから、(ⅱ)についても、利益相反管理体制等の整備が、規制上、求められているということを踏まえて、貸付け等の禁止を適用しないといった考え方も、あり得るのではないかと思います。

 それから、10ページの、デジタル化の関連でございますけれども、デジタル化の促進ということは賛成でございます。そういった文脈の中では、紙の対応を不要とすることによる業者側のコストが軽くなるということを、業者の問題として捉えるだけではなくて、投資者を含めた社会全体のコストの低減につながるものであるということを、もう少し強調すべきではないかと思っております。

 一方で、ビジネスモデルや顧客層との関係で、紙での対応を継続するということを望む業者が現れることも想定されますので、そういった業者については、従来どおり紙で対応することも可能であるという制度設計にすべきではないかと思っております。

 それから、11ページ辺りの二種ファンドの関係でございますが、特に運用行為に関する規制については、イノベーションや、利用者の利便性を過度に阻害することにならないよう、規制内容であるとか、規制対象の範囲について、検討していただきたいと思います。不適切な事例が見られたファンドに共通する要素としては、インターネットを通じて勧誘が行われたとか、貸付けによって運用されているとか、あるいは、貸付先の資金使途が不動産や太陽光発電施設である、こういったことが挙げられると思いますが、理論的な説明ができるものではありませんけれども、こういう要素も規制の適用対象の要件にするといったことも、検討すべきではないかと思います。どの程度、厳格な規制にするかにもよりますが、例えば、不良債権などの債権に投資を行うファンドなども、実務上、存在するところでございますので、ソーシャルレンディング以外の分野への実務の影響にも配慮して、制度設計をお願いしたいと思います。

 それから、12ページの投資運用業者の受託者責任の関係でございますが、この点は、投資信託委託会社の行政処分事例が続いたことが背景にあると理解しております。この点については、投資信託協会では、業界として再発防止の取組をどう行っているのかということについて、外からは対応が見受けられなかったので、確認させていただきたいと思います。もし、業界としての自浄作用がうまく働いていないということだとすると、自主規制ではなくて、法令で規制強化すべきだということになりかねないように思うのですが、そういった意味も含めて、状況を確認したいと思います。

 それから、少し細かいところでございますが、金融リテラシーとの関係で、13ページの「関係機関・団体の連携」の項目の中で、①、②、③と項目が並んでおりますが、順番として、つみたてNISA等の資産形成に向けた優遇措置等についての紹介というのが、③の上にあるのは、非常に違和感を受けるところでございまして、私の感覚では、ここの①、②、③というのは、③、①、②の順番のほうが適切ではないかという印象を持ちました。

 最後に、ファイアーウォール規制についてでございます。顧客へのサービスを充実させるとか、社会課題の解決を図るといった観点から、銀証のグループ一体でのソリューションの提供を図るということは、ぜひとも推進していただきたいと思いますし、応援したいと思います。ただ、前回の全国銀行協会の御説明の中で、よく分からなかったのは、これは、日本証券業協会からも御指摘があったことと重複するところではございますけど、御説明にあった取組については、顧客の同意を得て、グループ内で情報共有を行えばよいのではないかと思える事例ばかりのように感じました。もし今後、ファイアーウォール規制についての制度改正の検討を進めるのであれば、実務上、ファイアーウォール規制が、どのように障壁になっているのかということについて、まず、精査していくことが必要ではないかと感じております。

 長くなりまして恐縮ですが、以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。今の御発言の中で、投信協会さんに対する御質問というように言ってもいいかと思うのですけれども、があったと思うのですけれども、投信協会さんは、オブザーバーとして御参加いただいているかと思いますけれども、もし何かあれば、ここで御発言いただき、また次回以降に、必要に応じて御発言いただくということでも結構ですけれども、いかがでしょうか。

【杉江オブザーバー】 
 投資信託協会の副会長の杉江と申します。有吉委員のほうから、今御指摘がございました、資産運用業者の受託者責任の明確化の点について、御返答いたします。

 一部の運用会社が行政処分を受けたということにつきまして、私ども、投資信託協会として、重く受け止めておりまして、再発防止策のために、どのような対応が可能かというのを、現在、自主規制機関として検討しているところでございます。

 具体的には、今回の事案を分析しまして、再発防止をするためには、ファンドへ投資するにあたりまして、投資信託の組成時とか、定期的なデューデリジェンス、継続的なモニタリングが重要なファクターだと考えております。従来から、受託者責任の下で、このようなチェックというのは実行していたわけでございますけれども、今般このような事案が生じたということで、より実効性のある措置が必要だと考えております。現在、自主規制ルールの改正について鋭意検討しているところでございます。

 今回、この12ページの投資運用業者等への受諾者責任の明確化ということで、御提示された様々な例示なども参考としまして、何が実行可能かを実務家と協議の上、運用業界だけではなくて、信託財産を保管・管理する受託銀行、信託協会とも密接に連携して、適宜、御当局に御相談させていただきながら、より実効性のある規則整備を図っていきたいと考えております。

 資産運用業界としましては、この受託者責任を踏まえまして、国民の投資信託に対する信認を確保するという観点から、引き続き、実効性のある再発防止策を講じてまいりたいと考えております。どうぞ御指導よろしくお願いいたします。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、またこういう議論は、さらに進めなければいかないかもしれませんけれども、今日のところは、そういうことで次へ進ませていただきます。

 チャットの順番ですと、次は松本委員になると思います。松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】 
 ありがとうございます。事務局から、いろいろ幅広く御説明いただきまして、振り返りとして非常に参考になりました。その中で、私からは、スタートアップへの資金供給という点について、コメントさせていただきます。

 現在、米国では深刻なインフレが起こっており、テクノロジー株が軒並み暴落している状況となっています。現在のインフレ率を見る限り、しばらくは利上げが続くと思われますし、テクノロジー株は、引き続き軟調になるのではないかと予想されます。

 それに伴って、国内の上場テクノロジー株も大きく株価を調整しておりまして、当然、非上場のスタートアップの評価額も大きく下がっているものと思われます。特に厳しいのが、この2年間に資金調達を行ったスタートアップで、新型コロナ発生後の過剰流動性相場で資金調達を行っているため、高い株価で資金調達をしてしまっていると、次の資金調達が、非常に厳しくなるのではないかと予想しております。

 非上場株式の場合は、資金調達をするときに、既存株主が、いわゆるダウンラウンドに対して強い抵抗感を示すケースというのが非常に多く、これまで良好だったスタートアップの経営陣と既存株主との関係性が、ダウンラウンドを機に悪化するケースも多いと思われますし、場合によっては、既存株主が、第三者への売却に動いていくケースも、今後、多くなっていくのではないかと考えております。

 そういったときに大きな役割を果たすのが、非上場株式のセカンダリー取引の円滑化であると考えております。しかし、非上場株式のセカンダリー取引においては、取引所取引かPTS取引かにかかわらず問題になってくるのが、取引の流動性の欠如による適正株価の不透明さではないかと考えております。流動性があれば、ある程度適正株価が予想できるのですが、ビッドとオファーが全くない状況で、非上場株式の株価を推定するのは簡単ではありません。通常、非上場株式のバリュエーションを計算する際には、直近の資金調達時の価格であったりとか、上場している類似企業の株価であったりとか、ディスカウントキャッシュフロー、さらには純資産価格等々を基に算定されるわけですけれども、やはりプロ投資家とはいえ、あまり開示情報がない中で、これらの情報を基に適正株価を算定するのは、非常に難しいのではないかと考えております。

 この問題は、投資信託における基準価格の話にもつながってくると思うのですが、特に非上場株式のセカンダリー取引においては、マーケットメーカーが果たす役割が大きくなっていくのではないかなと考えております。市場において、積極的にビッド、オファーを指してもらうということはもちろんのこと、例えばマーケットメーカーに各銘柄の適正価格を毎月末日に投票形式で提示させて、暫定的な基準価格を算定して、少しでも透明感を出していくといったやり方もあるのではないかなと思います。

 また、アセットオーナー等による資金供給の拡大という観点からコメントさせていただきますと、今回のテクノロジー株の下落のポイントは、業績が悪化しているから株価が下落しているわけではなくて、インフレ率の上昇によるディスカウントレートの変化、いわゆる物の見方というものが変わっているだけだと考えています。これからの時代を牽引していくであろう未上場株式のテクノロジー企業が、足元の事業が着実に成長しているにもかかわらず、外部環境の変化によって資金調達が厳しくなって、最悪の場合は、事業停止に追い込まれてしまうのは、日本全体にとってマイナスだと考えておりますので、一刻も早く、国内の大手年金基金等によるVCを通じた資金供給という流れが始まってくれることが、非常に重要ではないかと考えております。

 私からは、以上となります。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】 
 ありがとうございます。事務局からは、非常に幅広い論点をいろいろと出していただいたということだと思います。これは裏を返せば、いろいろな課題が、日本の金融資本市場には、まだまだ依然として残っていて、その一つ一つを解決しなければいけないということの証左でもあるのだろうと思います。もちろんこれまでも、様々な改革を行ってきたということは事実で、それはそれで一定の成果を上げてきたのだとは思います。けれども、出だしにもありますように、いろんな取組は、まだまだ道半ばだし、実際に日本の金融マーケットの発展という点では、その国際的な地位は逆に落ちているわけです。家計の資産形成という意味でも、まだまだ不十分だという面はあるわけで、そういう意味では、基本的に事務局の提案は、私はよいのではないかと思います。

 特に投資家の保護には十分配慮しながら、いろいろな試みをやっていくというアプローチというのは日本では必要です。なぜ問題があるのかというのは、十分に分かっていない面もあるので、とりあえずやってみなければ、何が重要な仮題なのかというのは分かりませんので、そういう意味では、投資家の保護に十分配慮しながら、取組をやっていくという、今日の御提案といいますか、挙げられた事項というのは、大事なのだろうとは思います。

 ただ、大きく分けて2つの点を申し上げます。まず、成長の果実を家計が受け入れられていないというような論点です。例えば、日本の家計とアメリカの家計では、もちろん同じような給与所得でありながら、資産の増加というのは、大きく違ってきたという事実はもちろんあるわけですけれども、それは、日本の家計が預金ばかりしているからだということもさりながら、日本経済が、そもそも成長していないということもあるとは思います。例えば、日本の家計が、日本の株ばかりを持っていたとして、アメリカの家計はアメリカの株を持っていたとしたら、その差は、やはりかなり歴然となってしまうということがあったと思います。やはり日本経済全体が成長していないという問題が、資産形成の差には大きく現れていますので、そういう意味では、日本経済全体の底上げというものをどうしていくかという論点というのは、大事なのだろうなとは思います。

 それから、先ほど、松本委員がおっしゃったこととも関連するのですけれども、今の世界の金融市場というのは、ある意味で、レジーム・チェンジが起っているのだと思います。これまでは長い間、超低金利が続いてきたので、それがあたかも我々も当然のごとくのように思いがちですけれども、そのこと自体がむしろ異常だという状態が続いていました。そういう意味では、過度の金余り状態というのが、長い間あったのだと思います。しかし、世界的にインフレが顕在化するなかで、それを前提にいろいろなことを考えるという時代は、そろそろ終わりを告げてきています。通常の金利が、プラスの金利がつく正常な時代へと、日本は少し遅れてはいますけれども、少なくとも世界のマーケットは、そういう意味では移ってきている。そういうことを前提に、いろんな制度設計というのを改めて考え直す時代が来ているのだろうと思いますし、プラスの金利がつく中で、どういう資産形成をしていくかという時代に、少しずつ、これからは入っていくという視点も、大事なのだろうなとは思います。

 それから最後に、金融教育に関して1点だけコメントさせていただきます。今日、注でしたけれども日本証券業協会の資料で、金融教育を受けていないという人が、依然として9割近くあるという数字は、私にとっても非常にショッキングなことで、そういう意味では、一生懸命教育はされていて、受けている人は受けているのだけれども、大半の人は、そういうことを受けていないという事実は、やはり重く受け止めるべきです。受けたい人に一生懸命受けてもらって教育するというより、やはり金融教育をあんまり受ける気がない人に、どのように金融のリテラシーを高めもらうかということが大事で、極めてそういうことに消極的な人を、どう掘り起こして金融のいろいろな問題を理解してもらうかという努力というのは、この数字を見て、大事だと思いました。

 私からは、以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、原田委員、どうぞお願いいたします。

【原田委員】 
 原田でございます。まず、事務局に取りまとめいただいた文章に関しまして、内容に入る前に、事務局に頂いているこの文章について、少々感想めいたことを述べさせていただきます。

 何人かの委員がおっしゃっているように、非常に幅広く多様な問いかけをしていただいているというのが、今回の特徴であろうと思います。この先、発言なさる委員の方々も、何を選んでコメントするかみたいなことを考えていらっしゃるかと思うのですけれども、全ての問いかけに答えることは無理であろうということを考えますと、1つのアイデアで、採用していただく必要もないのですけれども、これだけ多様な問いかけがあるときには、Googleフォームなどでアンケートを用意していただいて、備考欄で意見を書く欄などを設けていただくと、多数決ではないのですけれども、賛成の度合いがどのぐらいだとか、参考にはなるのかなと少し考えました。どなたからも発言がない問いかけについても、恐らく意見をお持ちであろうかと思います。

 先ほど、福田委員が、経済成長の果実について言及していらっしゃいましたけれども、経済学者としては、成長という言葉の書きぶりが気になるところであります。10回以上「成長」という言葉が出てきておりまして、つい先日、GDPの速報値がマイナス成長だというニュースもありましたので、違和感があります。戦後は、すごく高い経済成長でありまして、平均すると10%ぐらいの成長が長く続いていて、その後、20年ぐらいは、平均すると5%ぐらいでまだ成長は続いていました。最近はもう平均したら1%ないです。局面は変わったということで、成長という言葉が、何を意味するのかということを少し考えますと、生産性の改善ですとか、効率よい経済活動だという側面が強いのかなと思いました。成長が鈍化している今の日本の局面を、うまく表すような言葉も候補になるのではないかなと考えました。

 そしてもう一つだけ、書いていただいている文章に関してなんですけれども、新しいビジネス・産業を創出したいというのは、皆さんの切実な願いなのですけれども、スタートアップへの支援が大事ということも、書いていただいているところです。もう一つ、大事な視点だと思うのは、日本は低い開業率で、低い廃業率なので、新陳代謝ができていないということがあります。これは、非効率で生産性が低いとか、デジタル化対応できないとか、そういう企業が残っている、保護されているということで、新しい産業の育成にも支障が出ているという、こういう側面があると思いますので、産業の新陳代謝を促すということも必要だというような認識も、どこかでお示しいただけるとよいのではないかなという個人的な感想です。文章を読んで感じたところとして述べさせてください。

 それで内容に入ります。2点だけ申し上げさせてください。

 まず1つ目が、顧客本位の業務運営の確保と金融サービスの向上に関するところです。7ページから10ページ辺りに書いてあることなのですけれども、これも先ほど、どなたかがコメントなさったところだと思うのですけれども、顧客に助言をするのはよいのですけれども、証券会社としては、委託手数料が下がってきて、収入が下がってきていますので、差別化戦略として、例えば、残高連動手数料の導入など重要な側面があるかと思います。

 助言と勧誘の話に関係するところなのですけれども、例えば、8ページに録音することで、負担を軽減できるようにしますということを書いていただいていますけれども、そもそも有償で助言をする場合には、助言業の兼業が必要で、無償でアドバイスをするのであれば助言業の兼業は不要という立てつけで、そこのところで混乱していますけれども、助言と勧誘の線引きが明確でないということが根っこにあるかと思います。

 また、証券会社が助言を有償でする場合には、投資助言業務に関する特則が適用されて、無償であれば証券会社の付随業務となって特則はないということで、同じ業務の無償・有償の違いで線引きすることの理由が明確ではないのではないかと思います。よく分かっていないのですけれども、残高連動手数料を取っていても、それが助言の報酬ではないと解釈される場合などもあるようでして、少しこの辺の線引きのところがクリアではなく、混乱するように思いましたので、投資助言の定義というものを、もう少し明確に、どこかに書いていただくというのが、まずあってほしいと思います。録音で負担軽減という話の前に必要なのではないかということを、1つ考えました。

 もう一点は、デジタル化に関するところでして、10ページのところですけれども、原則デジタル化でよいのではないかと、前回にも同じような意見を申し上げましたけれども、原則デジタル化であるということを、再度、繰り返し述べさせてください。希望すれば書面、ただし、コストの負担はしていただくという形がいいのではないかと考えます。対応できない金融機関に書面を残すかどうかというのは、また別の話です。単独でデジタル化に対応できないなら共同システムの開発などをすればいいはずです。原則デジタル化のメリットは多々あるはずです。

 例えば、小さな字が見えないという人には、拡大して提供するなどということも可能だと思います。最初から、紙も用意することのコストというのは、廃棄のコストもかかります。これは、金融業界一丸としての望みであろうと思いますし、紙が絶対に必要というのは、環境にもよくありませんし、メリットのほうが大きいのではないかと考えます。デジタル化を、より進めていただきたいという、そういう意見でございます。

 長くなったかと思います。以上になります。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。原田委員が御指摘の最初のGoogleフォームの点なのですけれども、確かに会議だけを御覧いただくと、今日なんかはかなり盛りだくさん、取りまとめに向けてということもあるものですから、これまで議論していただいたものを全部お示ししているのですけれども、言うまでもなく、会議の前には、各委員に御説明を事務局がして、その機会に意見もいただいていますので、そういったものももちろん踏まえて、濃淡といいますか、先ほどの5から1という評価であれば、そういうことは、全ての項目について理想を言えば、全ての委員の方について実施してきているというのが、これまでのやり方だったかと、私は理解していますけれども、御指摘も踏まえて、さらに改善すべき点があれば、ぜひ、改善の検討はしたいと思っています。

 これは、事務局から何かございますでしょうか。

【島崎市場課長】 
 かしこまりました。改善すべき点について、検討させていただきます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

【原田委員】 
 ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。次へ進ませていただきます。

 次は、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】 
 野村でございます。まずは、取りまとめ、大変お疲れさまでございます。全体的な話と、それからいくつか具体的にコメントさせていただければと思います。

 まず、全体像ですけれども、今般のワーキングにおいては、経済の資金循環における各プレーヤー、資金供給主体、資金調達主体、それから仲介役及び市場インフラを示して議論を始めたと思います。この全体像を踏まえて、どの部分について議論をして今回の具体的な記述に至っているのか、あるいは逆に、どの部分については議論したものの次年度以降の継続案件になっているのか、また、どの部分についてはあまりタッチしなかったということが分かるような、少し全体像が見える部分があるといいかと思いました。

 1点目の成長・事業再生資金の円滑な供給の箇所ですけれども、少し重複する話でございますが、これまでのワーキングの資料に記載されていたもののあまり当日の議論などでコメントがなかったものと、活発にコメントが出たものが混在しているような、そういう印象もございます。

 例えば、SPACをめぐる議論と、5ページ目にあるイノベーション促進的な観点からの取引所での上場審査、この2つについては、会合における議論の状況に随分と違いがあったという記憶もございますので、できればそのあたりの濃淡が分かるような形で書いていただけると、より状況がクリアになっていいのかなと思いました。

 ファイアーウォール規制は、前回の議論を踏まえた改正が、まさにこれからという状況でございますので、それを見た上でということが、先ほどのコメントにもあったかと思います。私もそういう状況だろうという理解でおります。そうは言っても、継続案件である旨を示す必要があるということならば、その旨を入れるのかなと思います。ただそうなりますと、今のこの4ページのこの文脈で入れるのが、果たして適当なのだろうかと思うところでございます。

 以前の会合でも言及したことではあるのですけれども、スタートアップのエグジットという言葉がありますが、このエグジットが上場だといたしますと、これはエントリーでありスタートでもございまして、その後の成長が上場後の投資家におかれては非常に重要ということになりますので、そのための施策と一気通貫したような議論というのが、大事なのだろうと思います。

 少し細かい話ですけれども、スタートアップの話と、事業再生・事業承継というのは、やや性格が異なるのかなと思いますので、2ページのスタートアップ、非上場企業の成長・事業再生資金の円滑な供給というくくりの中に入っているのですけれども、4ページの事業再生・事業承継のところは、少し違うトーンのものということが分かると、いいように思いました。

 3ページの非上場株式のセカンダリー取引円滑化でPTSが出てくるのですが、これは見ようによっては、流通市場の話でもございまして、市場インフラのところとも関係し、そちらのほうが座りとしてよいのかなと、少し思った点です。

 2項目の経済成長の成果の家計への還元促進でございますけれども、9ページの後半以降にあるような中長期的な議論は、腰を据えて進める必要があるだろうと思います。日本では、顧客本位の業務運営原則を通じて、顧客の目的に沿ったファイナンシャルプランの提供が、金融事業者の個人向け投資サービスにおいて極めて重要であるということが、既に確認されております。こういったサービスの進展に、法令が追いついていけないということはあるわけでして、ミスマッチが出てくると、日本の経緯や状況を踏まえた上で、もちろん海外を適宜参考にするのかもしれませんが、日本型の修正というのをかけていきたいと思います。

 8ページ目から9ページの上のほうにあるような、既存法令に関連する具体的な事項については、実務をよく把握した上で検討することが、非常に重要であろうと思います。例えば、ここにある貸付けのように、従前から特に問題なく行われてきたようなサービスが、気がついたら機械的に駄目だという話になっているというのは、あまり望ましいことだとは思いません。いずれにしましても、目下、顧客のニーズに、より合致する新しい投資サービスという方向性で、サービスを進化させようとしている最中と理解いたしますので、その進展をサポートするようなものであってほしいと思います。

 今の原田委員の御発言とも重なるのですけれども、10ページにある情報提供のデジタル化は、原則デジタル提供であり、書面については、オプトアウト方式だということ、そちらの方向に移行するのだということを、よりクリアに書いていただくとよいのではないかと思います。

 13ページ目の金融経済教育についてですが、関係団体の連携等は、もう既に始まっていると理解しておりますし、こういった取組を進めることは、賛同いたします。職域の重要性についても、御指摘のとおりだと思います。資産所得倍増を推進するという観点もございますので、金融リテラシーの向上は、金融業界や金融の関係者にとどまる話ではなくて、いうなれば国家的な、国全体のマターなのだと、非常に重要な課題なのだと位置づけていくのが、大事だと思います。

 最後に3項目の市場インフラ機能の向上でございますけれども、14ページ目に書いていただいているようなPTS関連の規制緩和の必要性ということは、同意いたします。ただ、中長期的に、全体としてどのような市場構造を目指すのか、これについての議論も非常に大切だと思います。PTSの存在感が、今よりも大きくなっていくということになると思うのですけれども、では、全体として、どのようなバランスを想定していくのか。PTSが取引所の補完ではなくて、いうなれば並び立つようなものになるということなのか。市場のレジリエンスという観点からは、そのほうがよい可能性もあると思うのですけれども、そうなると、それこそ上場審査ですとか、市場監視といった機能について、どのような主体が担っていくのがよいのか等々の議論も出てくると思いますので、この市場の全体的な、どういう市場構造を目指すのかという中長期の話も、議論が必要になってくるかなと思います。

 私からは、以上です。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】 
 ありがとうございます。まずは、事務局様には、多様な意見をまとめていただきありがとうございます。これまで、当ワーキング・グループで申し上げてきたことの繰り返しになる部分もありますが、資金供給に関わることを中心に、コメントさせていただければと思っております。

 最初に2ページの資金供給の拡大ですが、市場参加者を増やすという意味では、前回の当ワーキング・グループの報告書で取り上げておりました、要件等の弾力化による個人投資家の特定投資家への移行ということも重要と思っておりまして、その中で、課題の1つとして取り上げられました、移行手続の状況や、そのフォローアップとして、施策が実効的なものになっているかも併せて、ウォッチする必要があるのではないかと思っております。

 事務局資料3ページの、非上場株式のセカンダリー取引の円滑化ですが、資金供給の拡大や、あるいは、非上場企業の企業価値の拡大という点におきまして、ここは非常に重要だと思っておりまして、PTSにおける特定投資家向け有価証券の取扱いを可能とする制度改正の方向性に賛同いたします。

 また、既に日本証券業協会さんのほうで、特定証券情報の整備なども行われているとのことですが、投資家保護という観点はもちろんあるのですが、企業の負担があまりに過大になって、意欲を失ってしまわないような工夫も必要かと思っております。

 続きまして、5ページにあります、ダイレクトリスティングですが、これは前に申し上げましたが、日本の開示制度の状況もあると思いますが、その中で、投資家に対する適切な情報開示の確保ということを、ぜひお願いしたいと思っております。

 5ページの下にあります、合併・買収に伴う公募増資ですが、これも以前、申し上げましたが、買収先との交渉や独占禁止法に関わる各国の承認に時間がかかることなどもあると思いますので、1年以上かかる場合もあるというのはやむを得ないことだと思っています。従って、ルールの緩和は妥当とは思っております。ただ一方、企業が投資家に説明するときにはエクイティ・ストーリーという形で説明しているわけですので、想定より遅れている理由や背景についての情報開示を行うルール整備も、併せて行う必要ではないかと思っております。

 続きまして、6ページのSPACにつきましては、これも以前申し上げましたので詳細は申し上げませんが、特殊な商品性から、プロ投資家に絞るなど、投資家保護に十分配慮する必要があると思っております。

 あと、14ページの上場株式に対する、PTS売買高上限の緩和というところですが、実施する場合には、これまで以上に投資家保護の観点が課題になると思いますので、事務局資料に記載していただいておりますように、既にノウハウがある自主規制機関と連携して、市場の公正性の確保に努める必要があるのではないかと思っております。また、透明性確保という観点では、15ページにあります、取引情報の公表の義務付けも必要ではないかと思っております。

 最後、16ページの社債市場の活性化ですが、これについても、前回のワーキング・グループでいろいろ申し上げさせていただきましたが、日本経済がカーボンニュートラルに向かっていく中で、日本経済や企業の構造改革というのが待ったなしの中で、資金調達手法として、社債による資金調達というのが、改めて注目を集めることになるのではないかと思っています。もう既にサスティナビリティボンドという形で資金調達がなされていますが、今後、さらに重要になると思います。そういう意味では、10年前の2012年頃に、こういった課題について集中的に議論されていると思いますのが、この議論で、特定された課題の何が解決され、解決されなかったのかということを振り返りつつ、再度、活性化に向けた制度整備に取り組む必要があるのではないかと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】 
 ありがとうございます。私からは、金融リテラシーの向上について、一言だけ申し上げます。

 投資教育、あるいは金融教育の重要性ということが強調されていまして、全くそのとおりだと思います。特に若年層といいますか、学生の段階での教育というのが重要だと感じておるところですが、最近は、成人年齢の引き下げの影響もあって、どちらかというと、投資詐欺に遭わないようにというような教育に重点が置かれているような気もいたします。しかし、そういう教育というのは、ともすると、投資から人を遠ざけてしまうというような影響もあるかと思いますので、ぜひ、こちらに書いていただいているような、資産形成の重要性ですとか、企業成長の分配を受ける手段が投資なのであるということや、あるいは、もっとマクロに見たときの投資の意義というようなことも併せて、若年層に教育していくような体制の整備というのを、進めていただきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】
 神作です。御指名ありがとうございます。市場制度ワーキング・グループでなされた、非常に広範で、かつ多様な論点と議論を、適切におまとめいただいており感謝申し上げます。御意見を求められている論点のうち、私が個人的に、特に関心がある点を中心に3点、申し上げさせていただきます。

 第1は、事務局資料6ページのSPACについてでございます。SPACを導入する場合の制度整備について、グローバル・スタンダードを踏まえつつ、参加可能な投資家を限定し、投資家保護に十分に配慮をしつつ、導入の意義や必要性を、引き続き検証する必要がある、として慎重な立場を記載いただいており、賛成いたします。SPACへの投資は、一般の株式投資に比較しても、その評価が相当に複雑で難しい上に、深刻かつコントロールが容易でない利益相反が生じるおそれがあり、活発に利用されてきた米国でも、その利用が鈍ってきているようです。諸外国、取り分け米国の状況もにらみつつ、仮にSPACを認める場合であっても、特定投資家に限るなど、限定的に導入すべきであると考えます。

 第2に、7ページ以下の金融商品取引における助言・推奨に関して申し上げます。金融商品取引における助言や推奨の重要性に鑑み、助言・推奨する場合には、将来的には手数料の有無を問わず、顧客保護にとって必要かつ適切なルールを課すことが、同一のリスク・機能に対し、同一のルールを課すという基本的な考え方からも望ましいと思われます。手数料の収受に着目した現行法の定義規定を維持したままで、残高ベースの手数料を助言に含めるといたしましても、それは過渡的な姿であって、将来的には手数料の有無を問わず、助言・推奨を行う業者に対しては、投資者保護の観点から望ましい規律を課す一方、助言をする顧客からのみ手数料を収受するというタイプの投資助言業者には、さらに上乗せ規制を課すといった、段階的な規制を取るということが望ましいと考えます。

 規制を考えるに当たりましては、顧客の利益保護の観点から、民事法上の効力を持つ、あるいは、民事効と結びつき得る業者の、対顧客関係における行為規範のあり方が重要かつ中心となるものであって、取締法的な観点からの規律は、あくまでもそれを補充するものとして位置づけるべきであると考えます。

 また、現行法の下では、投資助言業者は、投資助言業務に関する顧客への貸付けや、貸付けの媒介、取引代理を禁止されておりますけれども、投資助言業の範囲を拡大する場合には、例えば、第一種金融商品取引業者による貸付け等については、適切なリスク管理、利益相反管理が行われているのであれば、一律に禁止する必要はないように思われます。

 第3に、16ページの社債市場の活性化について、低格付け市場の拡大も含め、さらなる社債市場の活性化を図るために、これまでの努力を継続し、透明性の確保や、発行・流通市場インフラの整備を図っていくことの重要性を御指摘いただいております。ただいまも御発言がございましたけれども、サステナブルな成長に向けて、社債による資金調達は、今後一層重要になると思われるとともに、資本市場の発展に資するからであります。社債市場の裾野を広げるためには、発行会社の信用リスクを反映した、多様かつ適切なコベナンツの活用や、効果的で効率的な社債管理、また、ディスクロージャーワーキング・グループのほうで議論されていると承知しておりますけれども、ローンを含む重要な契約の開示の充実等が特に必要と思われます。コベナンツの多様化や、令和元年改正会社法によって導入された社債管理者補助者制度などの実務的検討が、かなり進んでいると伺っておりますけれども、当事者の意見を反映しつつ、発行者や仲介者などの様々なステークホルダーが意見交換をし、コンセンサスを得る場を設けて、実務的な検討をさらに進めていただくとともに、実務が動き出すように、金融庁としても、後押しをいただけますと、大変ありがたく存じます。

 最後の第3点目には、ご要望も含まれておりましたけれども、私のコメントは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】 
 ありがとうございます。上柳です。留意が必要だと思う事項について、発言したいと思うのですけれども、SPACと、それから投資助言については、今しがたの神作委員の御提案に賛同するものです。ただ、助言サービスについて、資料1の8ページ辺りに、外務員登録者の扱い等の提案があります。第一種金融商品取引業者に対する既存の規制との関係で調整をするということは、合理的だろうと思います。今後の検討について、柔構造化という言葉もありますけれども、既存制度間の調整という意味であればよいのですけれども、過去の問題事例などを踏まえて、柔軟化にはならないように留意する必要があると思います。

 10ページのデジタル化ですけれども、これは、コスト削減だけではなくて、金融サービスへの信頼確保が大目標であるということを、明記したいと思いました。顧客本位の適合性原則も含め、それを実現するような情報提供、あるいは、それを実現するデジタル化であるべきと思います。

 さらに資料1でいいますと、10ページ、11ページになりますけれども、プロダクトガバナンスの確保ですが、これは、相当急務だろうと思っております。直近は、株価の変動もあってか、仕組商品、そのほかで不測の損害を被ったという法律相談が増えています。大事なところだと思います。

 最後に銀証ファイアーウォール規制についてですけれども、資料1の4ページは、引き続き検討という言葉も書いてあるのですけれども、やや抵抗がございます。大法人について、新制度が始まったところですけれども、これは、このワーキング・グループを含めて、かなりの議論を経て、大法人のみということになったもので、中小企業、ましてや個人については、情報、あるいはデータ保護の考え方の内外の動向も踏まえて、ファイアーウォール規制は、維持されるべきものと思います。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、森下委員、どうぞお願いいたします。

【森下委員】 
 ありがとうございます。おまとめをいただきまして、ありがとうございました。まず、2ページのところですけれども、機関投資家による資金供給の拡大というようなことについて、言及がされています。そこで、専門家の人材不足ですとか、ノウハウが課題というようなことが書かれていまして、これについては、以前、この場で御質問させていただいたときには、いろいろな取組を既になされているというようなお話もあったかと思うのですけれども、もし、こういったことが課題なのであれば、ぜひ、どんどん、さらに積極的に進めていただければと思っております。

 ただ、機関投資家のリターン目標ですとか、リスクに対する考え方が、例えば、日本と海外でかなり違って、割と目標リターンが低いですとか、リスクに対する感覚が非常にシビアということですと、あえてリスクを取る必要もないというような投資行動につながってくるのかなと思いまして、そういった機関投資家の性向というような部分を、どう考えるかということも、非常に重要なのではないかと思います。

 7ページから8ページにかけて、投資助言サービスに関することが検討されております。例えば、8ページの3行目のところ、多様な主体が投資助言業者として、適切に助言サービスを提供できるように環境整備を行うというようなことが言及されているのですけれども、これは、既に今まで何人かの委員の方からもお話があったと思いますが、投資助言業者として、投資助言サービスを提供できるようにすることが大事なのか、そうではなくて、第一種、第二種金融取引商品取引業者が、いろいろな適切な助言サービスを、より機動的、かつフェアに行っていくことができるような環境を整備するのがいいのかと考えると、多分、達成したいことというのは後者だと思いますので、必ずしも、投資助言業者という業種に何かを寄せていくということではなく、むしろ、第一種あるいは第二種金融商品取引業者さんなど、そういった様々な金融業者が行っている助言業務を、何をどのように規制すべきかということを、この機会に一度、よく整理していくということのほうがいいのではないかと感じております。

 例えば、これも何人かの委員の方、あるいは、日本証券業協会さんからのペーパーの中でも、販売・勧誘、推奨・助言の切り分けは必要というようなことが書かれていますけれども、特にデジタル化が進んでいく時代の中で、何を本当に規制の対象とすべき助言とするのか、そしてそれは、どう規制をするのが一番効果的なのかというようなことを、改めて考えてみる時期に来ているのではないのかなと思います。

 有償か無償かということというのは、その際には、問題にはならないのではないかということは、以前にも申し上げましたけれども、むしろどういった期待を顧客に与えているのかということ、そして、顧客の期待をどのような形で保護する必要があるのかということが、重要なのではないかと思っております。

 10ページのデジタル化については、既に申し上げたのですけれども、事業者の方々はいろいろな工夫をしようとされていると思います。そうした中で、多様な工夫の余地を制約しないような規制というのが大切で、もし事業者の方が、例えば、めりはりをつけて分かりやすい情報提供をしたいと考えたときに、なかなかしにくいというようなことが現行の規制であって、例えば、これも書け、あれも書けというように、全部書かなければいけないというようなことで、非常にやりにくくなっているということがあれば、そういった点は、金融庁さんとのいろいろな対話を通じて、デジタルがより活用できるような情報提供のあり方を、探求していただくのがいいのかなと思います。

 あと、12ページから13ページにかけてのリテラシーの向上というのは、本当に重要かと思います。学校・職域というのもあるのですけれども、家計という点では自宅におられる方なども、非常に重要かと思います。以前、私は香港に行ったときに、香港の当局の方が、金融リテラシー教育では、テレビドラマで、そういった方々にもアプローチをしているというような話を伺ったこともあるのですけれども、やはり実際に、かなりの金融資産を持っていらっしゃる方は、意外と、学校や職場でないところにいらっしゃるかもしれず、そういった方々に働きかけていくというのは、やはりもう少し工夫が必要なのかなと思っています。

 (3)に書いてある方向性自体は、そのとおりでいいと思うのですけれども、やはり日本の国の1つの成長の鍵として、もっと資産所得を増やすと、金融資産に、もっと仕事をしてもらうというのは、多分、政府もそういう方針だと思いますし、日本の1つの大きな可能性だと思いますので、何をすれば、そういった方向に持っていけるのかということを、よりみんなで知恵を出していくということは、非常に重要かなと思っております。

 ただそれと同時に、投資してくださいというものの、やはり仲介業者の方が、しっかりとした働きをしないと、信頼を失ってしまうということがあると思います。顧客本位の業務運営原則ということを金融庁さんのほうで、熱心に取り組んでいただいていまして、あとは、業界でも取り組んでいただいていると思いますけれども、どんどん投資をしてくださいといったときには、やはり仲介業者さんが、しっかりと信頼できると、顧客本位でいいアドバイスをしてくれるということがあるからこそ、そういった方向に向かっていくのだと思います。

 ただ、顧客本位の業務運営原則は、まだ、道半ばのように思います。重要情報シートというものの利用も進んできていますけれども、まだまだで、時々やはりやはり驚くべき事例というのを耳にすることもあります。そういうようなものが、やはり報道されていると、いくらリテラシーを高めたって、いや、ちょっと怖いよねというふうな方向でのリテラシーが高まっていくことになりかねませんので、やはりここは仲介業者さんの努力、さらに高い目線での顧客本位の業務運営原則というものを、進めていただきたいと思っております。

 私からは、以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 今日、御参加いただいている委員の皆様方の中では、あとは途中から御参加となっております、松岡委員だけ、御発言をまだいただいていないので、松岡委員、もし御発言があれば、承りたいと思います。いかがでしょうか。

【松岡委員】 
 遅れまして、大変申し訳ございません。松岡です。御指名いただきまして、ありがとうございます。いろいろな論点が挙げられておりますけれども、企業の観点からいたしますと、やはり多様性、柔軟性、そして機動性の確保、そして進展というのが、大変大事ではないかなと思っております。

 まず、機関投資家の投資先の多様化ということなのですけれども、これは結果的に、企業活動の活性化ということにもつながることなので、欧米と比べてもギャップがあるということもございまして、やはりそこの進展は大いに期待したいところでございます。これは、以前の会議等でも、私も申し上げたとおりでございます。また、企業にとっての資金調達手段ということにおきましても、やはり欧米と比べますと、選択肢が限られているというのが否めませんので、より多様性、柔軟性、機動性を目指すということが必要ではないかと思われます。

 ここで挙げられました、社債市場の厚みや柔軟性が増して活性化をすることであったり、IPO、またはほかの調達手段の機動性や柔軟性が増すことであったり、そして、M&Aが活発化するということは、先ほどの機関投資家の投資先の多様化ということをバックボーンとして、日本ですと、現状、大きな直接金融という手段に加えて、企業にとって成長を希求する上でのさらなる選択肢が広がるということで、大変意義があるものと思っております。

 さらには、投資運用のあり方についても、これも、企業にとっても重要な論点となり得ますし、また最後に、金融リテラシーの向上ということは、働く人の集合体である企業においても重要なポイントですし、またこれも、企業においても、中長期的な成長を目指すべきであるというのと同じように、中長期的な目線を持って、皆様と取り組むべき重要な課題だと考えておりますので、今後とも、よろしくお願いいたします。

 私からは、以上です。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。これで、本日御参加の委員の皆様方、全員から御意見をいただきました。どうもありがとうございました。

 それでは、オブザーバーの皆様方から、もし御発言があれば、承りたいと思います。チャットに、全員宛てで、1行入れていただければと存じます。早速入れていただいておりまして、ありがとうございます。その順番で、まず、日本証券業協会の野村證券、飯山さん、どうぞお願いいたします。

【飯山オブザーバー】 
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。本日の討議事項は非常に多岐にわたっておりますので、ポイントを絞って、お話をさせていただきたいと思います。

 先日、岸田総理が、ロンドン・シティでの記者会見で新しい資本主義のビジョンと実行計画をまとめる旨を発言されています。その施策の1つとして、NISAの抜本的拡充や国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設等による、資産所得倍増プランに言及されています。このプランの実行には、家計による資産形成を促進するための継続的な取組が必要であり、そのためには、家計の金融リテラシーのさらなる向上が重要となります。

 日本証券業協会としましても、証券に関する知識普及のためのプロジェクトや、全国銀行協会との連携による、金融経済教育の取組を進めているところです。金融庁をはじめ、関係各位のさらなる御支援をいただきたく、この場を借りましてお願い申し上げます。

 次に本日の討議資料のうち、販売・助言サービスの態様に応じた制度の柔構造化について、お話をさせていただきます。今回の議論においては、証券会社による残高連動手数料や助言・アドバイス行為について、投資助言業として整理する前提で、その規律の見直しについて議論されていると理解しております。また、その過程においては、欧州や米国の制度と比較した上で、見直すべき方向について示されているようにも見受けられます。

 我々としても、そのような議論に決して頭から反対しているわけではありませんが、重要なのは、単に海外の制度と比較するのではなく、日本の現状をしっかり認識した上で、少しずつ理想の姿に近づけていくことと考えております。特に日本においても、残高連動手数料を導入する動きが出てきていますが、このような動きも含めて、ある程度、貯蓄から投資への流れが根づくまでは、慎重に見守りながら検討を進める必要があると考えております。そうでなければ、投資家や金融業者が流れについていくことができずに、結局、貯蓄から投資への流れを止めることになりかねないと思っております。これは、今回のほかのテーマにもつながるところがありますが、拙速に対応を進めるのではなく、時間をかけて関係者の意見を聞きながら、慎重に検討を進めていただきたいと思っております。

 以上を含めまして、詳細は意見書に述べさせていただいておりますので、何卒、御高覧いただきたくお願い申し上げます。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それではチャットの順番で、次に日本ベンチャーキャピタル協会、赤浦さん、どうぞお願いいたします。

【赤浦オブザーバー】 
 発言の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。

 有吉委員、松本委員、松岡委員ほか多数の方より、機関投資家から国内VCへの資金の組入拡大が重要であるというお話がございましたけれども、VCファンドへの投資を拡大するには、公正価値評価を採用するVCファンドを増やす必要がございます。GPIFを含む年金基金や国内外の機関投資家様からは、株価の上昇に基づく直近の時価を取り込む、公正価値評価の採用が求められております。

 一方で、国内の上場企業の会計基準では、非上場株式の時価評価は、金融商品会計に関する実務指針に基づいており、金融商品会計に関する実務指針63項に、市場で売買されない非上場株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とするという記載がございまして、相反するものとなっております。この点の是正が必要であるのではないかと考えます。

 実際、国内VCファンドの出資者となっております金融機関、また事業会社からは、公正価値評価が求められておりません。ここが変わることで、国内VCの公正価値評価の採用が加速することが考えられます。国内外の機関投資家からの出資の拡大に、大きく寄与するものと考えます。

 また、国際会計基準、IFRSでは、非上場株式については、公正価値評価が必要とされております。海外の一般としては、公正価値評価が標準であると考えます。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、東京証券取引所の青さん、どうぞお願いいたします。

【青オブザーバー】 
 東京証券取引所、青でございます。御指名ありがとうございます。私のほうから、3点御発言させていただければと思います。

 まず1点目が、4ページの新規公開のプロセスのあり方のところでございますけれども、ここにつきましては、例えば、宇宙、素材、モビリティーといったような、先端的な領域で、新技術を活用するような企業につきまして、研究開発のために多大な資金ニーズがある一方で、企業価値の評価が難しいという特性があるために、十分に資金供給が行われていないというような御指摘を頂戴しているところでございまして、この点に関しましては、ベンチャー・エコシステム全体の課題と考えてございまして、イノベーション促進の観点から、IPOに限らず、企業が自社の条件に適した資金調達の方法を選んでいただけるように、トータルで環境整備していくことが重要ではないかと考えている次第でございます。

 その中で取引所といたしましては、その1つということで、IPOを希望する企業に対して、円滑に上場をしていただくための対応というものを、図っていきたいと考えておりますけれども、例えば、上場審査におきまして、第三者の企業価値評価も活用することができないかとか、あるいは、投資家へのリスク情報等の開示を強化することができないかなど、そういった点を含めまして、先ほど申し上げました、企業群の特性に合わせた上場審査の実務というものの整理、あるいは検討というのをできるように、今後、考えていきたいと考えている次第でございます。

 2点目は、ダイレクトリスティングの関係でございますけれども、アメリカなどにおきましては、未上場の段階から、評価が高くて、なおかつ知名度が高く、十分な株主数を有するという企業が、引受手数料などの費用負担の軽減を主な目的とするということで、ダイレクトリスティングを利用しているというように認識をしてございます。

 私ども東証のほうでは、制度上としては、プライム市場やスタンダード市場につきまして、実施は可能という形になってございますけれども、実績としては、1件にとどまっているという状況でございますので、ダイレクトリスティングを利用しやすい環境整備ということで、実務上の取扱いを可能な限り整理していくということは、方向性として考えられるところではないかというように考えている次第でございます。

 例えばというところで申し上げますと、ダイレクトリスティングを実施する場合に、通常のIPOと比較しますと、有価証券届出書が提出されないとか、ブックビルディングが行われずに公開価格が示されないといったような違いがございますので、投資者への情報開示、初値の形成の適切性といった観点で、こうしたところについて留意をしながら整理をしていくということがあるのかなというように考えている次第でございます。

 その際に、グロース市場に関しましては、高い成長可能性を有する企業に対して、早い段階から、幅広く成長のための資金調達の機会を提供するためのマーケットということでございまして、上場時の公募での新株発行ということによって資金調達をすることを要件としているという形で、上場に関する基準も、かなり緩和しているということにしてございます。グロース市場におきましても、先ほどと同様の趣旨で、ダイレクトリスティングのニーズが高いということであれば、検討を進めていくということも、十分考えられるというように思ってございますけれども、その際は、資金調達をしないで、単なるエグジットだけの目的の上場を増やす結果になってしまうと、本末転倒ということになるかと思っておりますので、そういうことについても留意しながら考えていくべき課題だというように受け止めておる次第でございます。

 それから3点目としましては、井口委員からも御指摘がございましたけれども、特定投資家というものが、今回の見直しにおきまして、証券市場における制度として、よりポピュラーな形でいくつかのところで取り込まれる、定義が使われていくということで認識してございます。一方で、特定投資家については、今回、要件は緩和されますけれども、これまでなれる人でもならないというような現実があると思ってございますので、実際に特定投資家になり得る方は、特定投資家というステータスを取れるように、そういった形で現実が変わっていくということが重要なことではないかと思っております。そういうことは、この証券市場の設計において、リスク・リターンと、投資者保護のバランスの取れた仕組みというものを構築して、より自己責任を徹底するというためにも必須なものだというように考えてございますので、行政におかれましても、ぜひ、そうした動きについて、後押しをしていただけるとありがたいなというように考える次第でございます。

 長くなりましたが、以上です。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、次に信託協会さん、どうぞお願いいたします。

【高野オブザーバー】 
 発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。信託協会の会長会社を務めております、三菱UFJ信託銀行の高野と申します。よろしくお願いいたします。

 討議事項の12ページ、③の投資運用業者等の受託者責任の明確化につきまして、申し上げたいと存じます。

 第16回会合でも御説明申し上げましたが、投資信託は、信託銀行を受託者として、投資信託委託会社様の指図に従って信託財産の管理処分、計算を行っております。そのような枠組みの中で信託銀行は、新規の投資信託の受託にあたり、投資信託委託会社様が信認し得る先か、投資信託への組入資産が、受託者として事務履行が可能な資産であるかということなど、受託者としての義務を果たすべく、厳格な審査を行い、適切な運用資産の受託に努めております。また、受託をした後も、組入資産の時価チェックなど、純資産総額等の堅確性を担保するためのモニタリングを実施しております。

 運用財産の運用・管理の状況の把握につきましては、現地の法制や、その実務などによっては、取得できない種類の資料もあろうかと存じますが、ファンドのリスクの高さや特性に応じて、ケース・バイ・ケースで、どのような確認方法が適切か、その中で、信託銀行が、どのような役割で貢献していくか、委託者である投資信託協会様とも御連携しながら、検討をさせていただいているところでございます。

 我々、信託業界としましても、発生した事案の再発を防ぐために、投資家である受益者様が安心して投資信託に投資できるよう、運用財産の適切な運用・管理につき、金融庁様にも御相談させていただきながら、検討を進めさせていただきます。

 信託協会からの発言は、以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、全国銀行協会、三井住友銀行の伊藤さん、どうぞお願いいたします。

【伊藤オブザーバー】 
 全国銀行協会の伊藤でございます。資料の取りまとめ、ありがとうございます。

 総論として、まず、私ども銀行業界としましても、お示しいただいたような方向性で、新しい資本主義の実現に向けて、スタートアップ支援や、貯蓄から投資への流れというような形で、進めていきたいと考えております。その上で、3点申し上げたいと思います。

 1点目が、金融リテラシーの向上です。私ども全国銀行協会としても、このテーマは大変重要だと思っており、昨年末、日本証券業協会さんともMOUを締結させていただいて、業界横断的に取り組んでいると思っております。このMOUの下で施策も進んでおり、この取りまとめも踏まえ、こうした動きを更に加速していきたいと考えております。

 2点目は、社債管理者等に関する論点です。先日の議論も踏まえて、資料16ページに、社債管理者や社債管理補助者による社債権者保護や、利益相反管理の高度化について、関係者による適切な対応が期待されると記載いただいております。必要に応じて、各種管理体制の高度化を追求していくということは大変重要だと思っておりますが、加えまして、前回、弊害防止のための責任が重すぎて社債管理者のなり手がなかなか見つけにくいことも、課題として指摘されたと思います。その意味では、社債市場活性化の観点から、この社債管理の論点に限らず、例えば、参入障壁の見直しや、制度の柔軟化等といったことも、併せて議論いただく、ということもあるのではないかと考えております。

 最後は、銀証ファイアーウォール規制についてです。資料4ページに、第二次報告で残された課題について記載いただいておりますが、私どもとしては、引き続き検討いただければと考えております。もちろん、第二次報告での上場企業に係るファイアーウォール規制の見直しを踏まえた体制整備や、お客様への金融サービスの向上への取組については、私ども銀行界としても、大変重要だと考えております。一方で、個人、未上場企業についても、第二次報告で指摘されたとおり、コロナ後の経済社会を見据えて、検討を進めるべきとされているということもあり、コロナ後において、上場企業のみならず我が国の金融資産が、資本市場を通じて、先ほど申したスタートアップや中小企業の成長、そして、その成果が個人所得にも還流されていくというような新しい資金の流れをつくっていくことも、大変重要かつ喫緊の課題と考えております。

 そうした現下の我が国経済の課題や、目指す方向を踏まえまして、金融業界がタイムリーにしっかりと支えて支援していけるよう、時間軸も意識いただきながら、グローバル・スタンダードの視点を意識しつつ、ファイアーウォール規制の見直しを引き続き議論いただければ幸いですし、銀行界としても、そうした意義については、今後も丁寧に説明してまいりたいと考えております。

 私からは、以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、生命保険協会の山口さん、どうぞお願いいたします。

【山口オブザーバー】 
 生命保険協会の山口でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私のほうからは1点、情報提供のデジタル化の点につきまして、コメントをさせていただきたいと思います。

 情報提供のデジタル化を促進するための方策といたしましては、もちろんデジタル原則化という方法もございますが、例えば、現行の情報提供義務における書面原則、これを改めた上で、デジタルでの情報提供を行う際に必要な事前承諾、これを不要とするということも、デジタル化の促進に資する取組の1つということが言えるかと思います。

 また仮に、デジタル原則化となる場合におきましても、先ほど、委員の皆様方からもビジネスモデルによっては、紙での対応の余地を残すべきですとか、顧客本位を実現するデジタル化であるべきですとか、あとは、会社の創意工夫を制約しない制度とすべき、そういった御発言があったと思いますけれども、まさにそのとおりかと思ってございます。様々な商品種別ですとか、販売態様等が存在することを念頭に置きますと、例えば、顧客の意向を踏まえまして、募集時に書面とデジタルのどちらでも対応できるような制度設計をする、そういう考え方もあるのかなと思ってございます。

 ただ、いずれにいたしましても、具体的な制度内容につきましては、今後、議論を深めていくということになると思いますので、もちろん、環境への配慮ですとか、コスト削減の観点は重要でございますけれども、顧客保護の観点、実行可能性、会社の創意工夫の余地、そういった観点も踏まえまして、考え得る方策について、それぞれのメリット・デメリットを勘案しながら、丁寧に検討していくことが大事だと思ってございます。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。では次に、日本STO協会の小柳さん、どうぞお願いいたします。

【小柳オブザーバー】 
 ありがとうございます。日本STO協会の小柳でございます。事務局資料の中の市場インフラ機能の向上につきまして、デジタル証券の流通市場の活性化に向けた意見を提出させていただいており、ポイントだけ御説明させていただきます。

 現在、デジタル証券の取引は、取引所、PTSがなく、事実上、証券会社との店頭取引に限られております。証券会社では、お客様のニーズに応え、インターネット上で取引が完結する、「デジタル完結」の検討を行っております。しかしながら、現行のPTSの定義上、インターネットを使用するだけで、ほぼ一律にPTSに該当するおそれがあるため、証券会社では、価格形成機能が低いものや、ほとんどないものについても、例えばPTSの認可取得や、対面・電話等により、注文・受注等を行うといった対応を取らざるを得ず、二次流通が進まない状況にございます。PTSの認可取得につきましては、デジタル証券の取扱いの認可基準が現在のところ示されていない状況かと承知しております。

 そこで、デジタル証券の取引を、デジタルで実現をし、適切な投資機会の提供と、投資家が円滑な取引を行うために、2つの措置をお願いいたします。

 1つは、証券会社によるデジタル店頭取引でございます。価格形成機能がない、低いものは証券会社、これは第一種金融商品取引業者でございますが、PTS以外のインターネットを使用した証券会社とお客様との取引、デジタル店頭取引として、PTSの特別な認可が必要なく取扱いを認めていただきたいということでございます。

 もう一つは、流通市場を大きくしていかなくてはなりませんので、PTSの積極的な活用に向けまして、事務局資料にありますように、審査内容・手続の明確化、価格形成機能等に応じた認可基準の柔軟化、認可手続の迅速化に取り組んでいただきたいと存じます。

 一方、私どもSTO協会では、特に公募型不動産デジタル証券につきまして、セカンダリー取引の円滑化、公正な取引を確保するため、適時開示、運用報告、行為規制、不動産の評価、さらには、売買の参考となる取引指標価格の算定、提示につきまして検討を行っており、今後、自主規制規則など、必要な措置を講じてまいりたいと思っておりますので、何卒、御支援のほどお願い申し上げます。

 最後に、デジタル化の推進について申し上げます。例えば、優先出資証券、投資法人の投資口、信託受益権、匿名組合出資持分につきましては、権利の移転、第三者対抗要件の具備に証券、あるいは証書が必要というようにされております。こうしたもののデジタル化を進めていただくということで、デジタル証券全般について、権利移転の法的安定性を高める措置がとられるよう、関係者におかれまして、検討を進めていただきたいと存じます。

 私どもからの説明は、以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、第二種金融商品取引業協会の青木さん、どうぞお願いいたします。

【青木オブザーバー】 
 第二種金融商品取引業協会の青木でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 11ページにございます、二種ファンドの募集・運用の適切性の確保のためのルールの見直しについて申し上げます。

 このうちのア、ソーシャルレンディングを含む投資・運用行為を行う事業者に対して、有価証券投資型ファンドと同様の制度を措置するという件につきましては、ソーシャルレンディング以外の事業型ファンドを規制の対象に含めることについてどのように考えるべきか、あるいは、プロ向けファンドのように、投資家と事業者の間で牽制が期待できるものについてどう考えるべきか、といったような点について議論があろうかと思います。

 また、イのインターネットで完結する自己募集に係る制度の整備につきましては、個別具体の検討を要するものがあるように思われます。

 いずれにいたしましても、ファンドの出資対象事業には限定がなく、スタートアップや非上場企業、収益性は低くても支援や共感をベースとするSDGs関連事業等、二種ファンドは幅広い分野で資金供給の円滑化に利用ができると考えております。そうした機能や特性が抑制されることのないよう、制度の設計にあたっては、対象範囲や規制の内容について、丁寧な御議論をお願いしたいという次第でございます。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、国際銀行協会の中村さん、どうぞお願いいたします。

【中村オブザーバー】 
 国際銀行協会の中村でございます。発言の機会をいただいて、ありがとうございます。3点、申し上げさせていただきます。

 まず1点目ですが、PTSの売買高上限を緩和することは、実質的な市場間競争の促進につながり、本邦株式市場の一層の活性化に貢献すると思います。前回の取引所システムダウンの際、お客様にPTSの注文執行を提案いたしましたが、流動性を理由に断られる結果となってしまいました。代替市場がないことは、国際金融都市構想にもそぐわないと思います。つきましては、自主規制機関との連携、法律上の公表義務に配慮しつつ、売買高上限の緩和を前向きに御検討いただければと思います。

 2点目です。非上場株式、証券トークン、外国株式、デリバティブ取引等の商品ついても、PTSにて取扱いを可能にすることや、社債市場活性化のために、機関投資家のより一層の社債投資運用を行う方策、例えば、社債レポ取引のインフラ整備や、社債を既に組み入れた投資信託の活用促進を整備していくことなどを後押しする施策を、ぜひ御検討いただきたくお願い申し上げます。

 3点目でございますけれども、銀証ファイアーウォールの規制における、外務員の二重登録禁止規制についてです。兼職制度に基づく業務運営の障害となっております、ホームベースルールが、今般の改正で緩和される予定です。しかし、ルールが緩和されても、外務員二重登録規制のために、外務員を銀行と証券に配置する必要性は変更がありません。ぜひ、この外務員二重登録禁止制度の見直しを進めていただければと思います。

 以上でございます。よろしくお願い申し上げます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは次に、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】 
 すみません。恐縮ですが、一言だけ発言いたします。

 助言サービスについてのルール整備の関係なのですけれども、日本証券業協会の資料2の4ページ、5ページ辺りを見ると、検討を進めることに消極的なような印象を受けました。今日の御発言は、そうでもないように受け止めたいところなのですけれども、言うまでもなく、消費者、あるいは国民の信頼を確保するということが第一ですので、第一種金融商品取引業者による、無償も含めてですけれども、助言についても、いわゆるプリンシプルだけでなくて、ルールの整備を進めるということが期待されていると思います。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。オブザーバーの皆様方からも、多数貴重な御指摘をいただきまして、ありがとうございました。オブザーバーの御指摘について、委員の皆様方から、もし御意見とか、さらに御発言があれば承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 ありがとうございます。松尾委員、お願いいたします。

【松尾委員】 
 一言、申し上げます。私も、日本証券業協会さんから事前に頂いた意見書を拝読しまして、1点、気になったところを申します。

 御意見のうち、投資助言サービスの柔構造化に関する部分についてですけれども、確かに、投資助言業に対する規制が兼業の場合にかかってくると、事務負担が過重になるという御懸念はもっともかと思います。他方で、投資助言サービスの担い手が広がっているということを踏まえますと、誰がサービスを提供するかということで、規律が異なるというのは、投資者保護の観点からは、決して望ましいとは言えないと思います。投資者の目線から見て、同じサービスと言えるものには、等しい規律を課すという方向での見直しを、進めていただきたいと思います。

 また、意見書の中では、残高連動手数料の意義について、顧客の理解が進んでいないということも書いておられましたけれども、ここはぜひ、業界として、顧客を先導するという気概を持って取り組んでいただきたいと思います。

 投資助言サービスに関する規律というのは、顧客本位の業務運営の中核ともいえる部分かと思いますので、ルール整備に向けて、引き続き議論を進めていただくことを希望いたします。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。ほかに委員の皆様方で、オブザーバーの皆様からの御発言についてのコメントというか、何かお気づきの点とか、御意見とかがございますでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。

 それでは、あっという間に時間が来てしまいまして、いつものことかとは思いますけれども、委員の皆様方、そしてまたオブザーバーの皆様方には、本日も大変活発に、前向きの意見も多数いただきまして、また、幅広く御指摘をいただきまして、どうもありがとうございました。さらにお気づきの点がございましたら、いつも申し上げていることですけれども、事務局までメール、その他の方法で、ぜひ、お知らせいただけましたらありがたく存じます。

 次回のワーキング・グループでございますけれども、冒頭、申し上げましたように、中間的な取りまとめを意識する時期になっております。そこで、本日を含め、これまでいただきました御議論を踏まえて、中間的な取りまとめに向けた御議論をお願いするということを考えておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

 それでは最後に、事務局から御連絡等がございましたら、お願いいたします。

【島崎市場課長】 
 本日は、誠にありがとうございました。

 次回のワーキング・グループの日程に関しましては、事務局より、また別途、御案内させていただければと思います。どうもありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうも長時間、御参加いただきましてありがとうございました。
 
―― 了 ――
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