金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第21回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年10月14日(金曜)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
     

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第21回)
令和4年10月14日


【神田座長】  おはようございます。予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。ただいまから市場制度ワーキング・グループの第21回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところ、御参加いただき、誠にありがとうございます。

 会議を始める前にお知らせがございます。本年9月に上柳敏郎専門委員が御逝去されました。ここに生前の御功績をしのび、改めて御冥福をお祈り申し上げます。なお、告別式は近親者で執り行い、香典、供花などは御辞退されておりますので、併せてお伝えをさせていただきます。

 また、今月から当ワーキング・グループの委員として新たに坂勇一郎委員が就任されました。

 それでは、議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、事務局から成長資金の円滑な供給、それから市場インフラの機能向上等に関する説明資料について御説明をしていただきます。その後、皆様に御議論をしていただくということになります。

 それでは、事務局説明資料について事務局からの説明をお願いします。島崎市場課長、よろしくお願いいたします。

【島崎企画市場局市場課長】  よろしくお願いいたします。それでは、お手元の資料に沿って御説明させていただきます。

 まず、本日、2ページ目でございますけれども、「諮問と今後の検討」ということと、それから2、3、4ですと、先ほど座長からございましたとおり、成長資金の円滑な供給、市場インフラの機能向上、御議論いただきたい事項となってまいりますが、まず1から御説明させていただきます。

 3ページ目でございます。先日、9月30日に金融審議会の総会において諮問が行われました。安定的な資産形成に関する検討ということで、こちらのほうは、後ほど御言及もあると思いますけれども、顧客本位タスクフォースで具体的な検討を進めることになろうかと思います。9月30日の諮問の内容をお話しさせていただくと、安定的な資産形成に関する検討ということで、我が国の家計の安定的な資産形成を実現するため、顧客本位の業務運営、金融経済教育等について幅広く検討を行うことということになっております。よろしくお願いいたします。

 そしてもう一つ、4ページ以降でございますが、先日、前回の会議の折に、顧客本位タスクフォースにつきましては、もちろん取りまとまりましたら、御報告、それから御意見賜る機会というのはございます旨御説明させていただきましたが、併せて、座長の神田先生からも含めて、途中の経過につきましても御報告しながらということになっておりますので、本日の議論の直接の課題にはなっておりませんが、本タスクフォースの第1回が先日開かれたところでございます。そちらのほうで委員の方々からコメントを頂戴していますので、4ページ目、5ページ目にわたりまして、顧客本位の業務運営全般、それから受託者責任、助言・勧誘、利益相反の開示等、5ページ目に参りまして、中立的なアドバイザー、プロダクトガバナンス、金融経済教育について御議論を賜っております。

 顧客本位の業務運営全般のこれまでの進捗の受け止めですとか、資料も出しながら御議論いただきまして、幅広い範囲での御議論、横串、ルールの横断化についての御言及ですとか、あるいは利益相反やコストに関する情報の充実、開示ですとか、5ページ目に参りまして、中立的なアドバイザー、質の高いアドバイザーの重要性ですとか、例えばアドバイスの拡張といいますか、つみたてNISAの対象商品などに限っての話ですとか、あるいはプロダクトガバナンス、それから金融経済教育について、母体の常設化ですとか、様々な御議論を賜っておりまして、これから深めていくところだと考えておりますので、また適宜御報告させていただきます。

 続きまして、本日の一番後ろにはご議論いただきたい事項として直接書いてありますが、まず成長資金の円滑な供給ということで、7ページ目にもございますとおり、施策の進捗状況等及び成長資金供給の円滑化に向けた課題等について、本日、御説明させていただきます。

 8ページ目は、6月に中間整理を取りまとめいただきましたところ、その概要の中に、スタートアップへの資金供給が欧米と比べてなお小規模であることが課題であり、機関投資家からの資金供給の拡大、それからスタートアップ企業の上場プロセス等の見直しについて対応を行うことが書いてございます。

 9ページ目以降でございます。こちらのほうで、中間整理などでもおまとめいただいた施策の現状について、検討状況を中心に記載させていただいております。

 特定投資家制度の整備でいいますと、第二次報告書で取りまとめていただいた項目である、個人の特定投資家の要件を弾力化するため内閣府令を改正しておりまして、7月1日施行となっております。

 非上場株取引の円滑化につきましては、日本証券業協会、日本STO協会の検討もございますけれども、金融庁におきましても、PTSにおいて特定投資家向け有価証券の取扱いを可能とする制度整備を検討しております。

 ダイレクトリスティングの利用円滑化については東京証券取引所、M&A目的の公募増資の円滑化は日本証券業協会、企業特性に合わせた円滑な上場審査は東京証券取引所、投資信託への非上場株式組入れは投資信託協会、ベンチャーファンド市場の利用活性化は東京証券取引所において、それぞれ御検討中のこと、それからもう進んでいることについて少し色を変えて掲載させていただいています。

 10ページ目がいわゆるIPOプロセスの見直しでございます。こちらは、日本証券業協会のほうで報告書を取りまとめいただいて、その後、関係者において検討等が進んでいるところであり本年7月1日施行、あるいはその後の公表なども含みますけれども、着実に進展させていただいているところかと思います。具体的には、新規上場会社に対する公開価格等納得感のある説明や、主幹事証券会社別の初期収益率等の公表等の対応がなされているところでございます。

 今後、12月以降、実効性のあるロードショーの実施や、上場日程の期間短縮等について御検討が進みまして、制度化についてファイナライズを迎えていく予定になっていると理解しております。

 金融庁のほうでも、公開価格が仮条件の範囲外の一定の範囲で設定される場合の訂正届出書の効力発生日の取扱いについて開示ガイドラインで明確化する予定です。続きまして、11ページ目は、先ほど言及させていただきました個人の特定投資家の要件の弾力化ということで、新たに勘案する要件を追加しております。

 12ページ目が特定投資家制度の普及ということで、日本証券業協会の取組ですとか、あるいは今後のPTSにおける特定投資家向け有価証券の制度整備予定について記載させていただいています。

 こちらが施策の進捗状況等でございまして、14ページ目以下、進捗状況等に加えての課題等ということで挙げさせていただいております。これまでにおまとめいただいたことのオーバーラップもございますけれども、知識・経験等に応じた投資というのが重要であって、その知識・経験を有する人材やノウハウが限られていることが機関投資家等において課題であろうと思っております。

 こちらの知見やノウハウの蓄積につながる取組を進める必要がございます。課題には、アセットオーナー及び、VCファンド業界の状況、ベンチャー企業への投資額の状況等を載せておりまして、機関投資家の方々や運用機関として入るVC・PEファンドの方々の部分も含まれる概念かと思いますけれども、専門人材や運用ノウハウの不足ということを課題として書かせていただいております。個人の方々でいうと、知識・経験等に応じた投資ということが大事な要素なのではないかと思っております。

 15ページ目でございますけれども、VCファンドへの資金供給者を日米で比較した場合の資料を示させていただいています。米国の年金基金等は専門人材を配置した上で、VCファンドへの資金供給を行っているということでございます。

 それから、16ページ目でございますけれども、VCファンドの組成金額、組成数、平均サイズについての現状を示させていただいています。

 17ページ目は、ベンチャー企業への投資額のレベル感、比率について載せさせていただいています。

 18ページ目は、中間報告でも御指摘いただいているところでございますが、非上場株式等の公正価値評価について資料を載せさせていただいております。国内のVCファンドでは非上場株式を公正価値評価以外の方法で評価しているファンドが多くあります。この点、国内外の機関投資家からVCファンドへの資金供給等に向けて、日本ベンチャーキャピタル協会におかれては、国際標準である公正価値評価の普及のための取組を実施しております。

 また、LP出資者がVCファンドのパフォーマンス評価を行うとともに、VCファンドが投資先である非上場企業を適切に管理し、企業価値向上に向けた働きかけを行う上でも非上場株式等の公正価値評価は有用だと考えられます。

 こうしたパフォーマンスについての評価、管理、それから企業価値評価に向けた働きかけというところが主眼になります。

 19ページ目でございますけれども、実態といたしまして、公正価値評価を行うVCファンドの数は限られておりましてVCファンドの評価ですとか監査の実務というのは蓄積されていない状況にはあるのではないか、こうしたものをどのように高めていくかということを記載しております。また、多くのLP出資者の方々が適用する会計基準ではVCファンド持分の公正価値評価が求められていないといった課題が指摘されております。

 下のほうには、現行についての説明を付しておりまして、LP出資者はVCファンドから非上場企業への出資を、基本的に取得原価と、取得原価をベースとした減損によりマイナス分を評価するというものを基礎としたVCファンドの持分相当額を財務諸表に計上するという形になっています。

 先ほども申し上げたように、多くのVCファンドでは公正価値評価以外の方法で評価しており、投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱いがございますけれども、実際の評価や監査の実務面の蓄積が途上であるという状況にあろうかと思っております。ご議論いただきたい事項にも出てまいりますが、こうしたものについてどう考えていくかということがあろうかと思います。

 続きまして、本日の大きな柱のもう一つであります市場インフラの機能向上でございます。22ページ目以降、中間整理の概要での位置づけ、大きく言いますと、非上場株式や証券トークンの適切な流通の確保ですとか、あるいは上場株式等の市場間競争の促進ということをおまとめいただいております。

 23ページ目にはもう少し詳しく書いておりまして、下段です。公正取引への対応を強化しつつ、PTSが上場株式等取り扱う場合の売買高の上限緩和について検討ということと、それから、非上場株式や証券トークン等の流通におけるPTSの積極的な活用に向けて、認可審査について以下を実施と記載しております。審査内容手続の明確化や、認可基準の適切な設定、認可手続の迅速化、それから、自主規制機関とも協働してということになっていたと思いますけれども、取扱商品の適切性を確認する枠組みを構築するということをお取りまとめいただいたかと思っています。

 24ページ目は中間整理の抜粋の文章を載せさせていただいております。

 具体的に今回御議論いただくに当たりまして、25ページ目以下では、まず市場インフラに関する制度の沿革ということで、98年の金融システム改革において、投資家の多様なニーズに応えて、魅力あるサービスをいかに効率的に提供し得るか、という競争が市場間で行われることを期待して、上場株式の取引所集中義務が廃止されて以後、取組が進められてきている状況について記載させていただいています。

 取引所制度・PTS制度につきましても、一番左になりますけれども、随時取組が行われてきたところです。

 26ページ目でいいますと、それでは市場運営者の状況がどうなったのかとおさらいでございますが、27ページ目は、シェアの話で、こちらも夏前にも出させていただいていますけれども、PTSでいいますと1割弱程度となっております。

 それから、諸外国における証券市場の状況というのを28ページ目には載せさせていただいています。米国や欧州においては、取引所同士、取引所と代替的取引施設、代替的取引施設同士について活発な市場間競争が行われているということでございます。

 29ページ目には、先ほどPTSの売買高シェアが8.8%というお話もありましたけれども、こちらは、2010年の清算の開始や2019年の信用取引の解禁を背景に上場株式等の取引におけるシェアを伸ばしてきていることを示させていただいています。

 31ページ目以降が今回御議論いただきますことの直接的な資料でございまして、31ページは売買高上限についてです。こちらは、PTSの上場株式等に関する売買高について、競売買方式とその他の方式では上限に差が設けられているということを記載しております。

 顧客注文対当方式においても、成行に近い取扱いをすることが可能で、実質的に競売買方式に近くなっているとの指摘があります。

 それから、他方、ピリオディック・オークションなど、多様な取引手法を導入するためには競売買方式に係る売買高上限を緩和すべきとの指摘もあるということで、32ページ目のほうには先ほど言及しました成行注文に近い取扱いをすることが可能ということについての補足資料と、それから33ページ目のほうには、これは一度当ワーキング・グループでも御説明差し上げましたけれども、諸外国では取引プラットフォームそれぞれが、一般投資家やバイサイド、機関投資家のニーズを踏まえて、多様な売買方式を試行・導入する動きがあることを記載しております。

 例えばピリオディック・オークションについていいますと、先ほど言及した取引参加者からの注文をトリガーとして実施される板寄せでして、注文受付時間も固定的なものだけでなくランダムとするものなど、様々な形態があると、一度御説明させていただいた。

 34ページ目は、既成の制度の取引所に係るもの、それからPTSに係るものというものについて並べさせていただいております。

 取引所は、公正性・中立性の観点から各種規制が整備されている一方、PTSに対しては、こちらは一種業者、金融商品取引業者の業務の一類型であります。これを踏まえた体制整備が求められているという状況にあります。

 それから、PTSにつきましては、不公正取引排除のための内部管理体制整備やPTSによる気配情報等の公表が監督指針で定められているという現状にあります。

 35ページ目は、アメリカの統合気配情報システムについてです。先ほど様々な施設間の競争ということを申し上げました、欧米における状況を申し上げましたけれども、こちらは、アメリカにおける例で、活発な市場間競争が行われていて、48の執行市場が存在しているということを記載しております。

 そうした状況でどのように気配情報及び約定情報が統合的に取り扱われるのかというようなことの工夫の積み重ねだと思いますけれども、最良気配のある市場への注文の回送ですとか、様々な取組が行われてきているところと思います。その状況について御説明しています。

 37ページ目以下は、同時にございます市場インフラ機能向上に係る論点ということで、必ずしも中間報告のときに載っていたものではないものでございますけれども、ティック・サイズ(呼値の刻み幅)の話でございまして、こちらは、取引所やPTSにおいて取引の状況に応じてそれぞれが判断して設定しているものの、一般に過度に大きいと公正な価格形成が阻害され、過度に小さいと流動性が低下して約定しにくくなるという指摘がございます。

 PTSは東京証券取引所よりも細かなティック・サイズを設定して投資家を呼び込んでいる実態がございます。取引所とPTSのティック・サイズの差が小さくなるとPTSの取引高に対する影響がございまして、そうした点も考慮しつつ、呼値の格差を縮めていくべきとの指摘がございます。

 東京証券取引所のほうは、中流動性銘柄について、投資家の分かりやすさを重視するとともに、過度に細かい呼値にならないようにしつつ、呼値の単位の見直しに取り組む旨、公表されています。

 38ページ目は、基本的に合わせる動きが進んでいますTOPIX100構成銘柄以外のティック・ウェイトの状況を見ているものです。これが呼値の刻み幅÷株価で見たときに、他国と比較した状況について、その銘柄の株価ごとに呼値の刻み幅が決まっているとした場合に、それを株価で割るとどういう率になるのかということを示させていただいていて、前ページにございましたいわゆる刻み幅が呼値の水準に合わせて変わっていっておりますので、ティック・ウェイトの比較をしてみると、それぞれ段差が出てくるわけですけれども、欧米と比べた場合に、例えば3,000円のところ、500円から3,000円のところでどういう状況なのか、それから3,000円以上でどういう状況なのかということも示させていただいています。

 先ほど申し上げました中流動性銘柄の構成銘柄の株価は500円から3,000円の価格帯で約6割を占めているということでございまして、中流動性銘柄に該当するものの、どういう配分であるのか、それはティック・ウェイトの比較をする際にも参考になるものとして提供させていただいています。

 39ページ目でございますけれども、TOBルールとの関係でございます。PTSにおける取引に対するTOB5%ルールの適用については、平成24年の制度改正の際に、取引所取引のうち立会取引との類似性に着目して規定が整備されまして、競売買方式及び顧客注文対当方式を採用するものについては適用除外が認められています。

 他方、取引所の立会外取引はTOB5%ルールの適用対象外であるのに対して、PTSにおける類似する取引については現在もTOB5%ルールの適用対象となっている現状にあります。こうした取引所とPTSの違いにも留意しつつ、取引所とPTSのイコールフッティングを進めるべきとの指摘がございます。

 続きまして、40ページ目でございまして、こちらはいわゆる値がさ株と言われているものの話でございます。いわゆる投資単位が高い上場企業でございまして、東証などの取引所は個人投資家の投資しやすい環境を整備するという目的のために望ましい投資単位として50万円未満と水準を示し、大多数の上場企業はこの範囲での投資が可能となっている状況です。しかしながら、投資単位が高い水準のままの企業も依然存在しております。投資単位の引下げが図られる必要があるとの指摘もございますので、その状況についてお示しして、どのように考えるのかというところでございます。

 制度でいいますと、上場規程におきまして努力義務で上場企業は投資単位が50万円未満となるよう努めるとなっております。50万円以上の場合には、投資単位の引下げに関する考え方及び方針等について事業年度ごとの開示を義務化するということになっております。

 現在の状況でございますが、2022年の3月でいいますと、投資単位が50万円未満は3,565社、全体の94.7%で、50万円以上ですと5.3%、100万以上ですと1.1%となっています。

 41ページ目は、その他、日本取引所グループの市場インフラの機能向上に向けての取組について載せさせていただいております。

 43ページ目、44ページ目が御議論いただきたい事項でございまして、まず成長資金のところでいいますと、日本は諸外国と比べてベンチャー企業等への投資が少ない中、成長資金の供給に関して、以下のポイントを含めてですけれども、成長資金の供給に関してどのような取組を進めるべきか、御意見を賜ればと思います。

 本年7月の特定投資家の要件弾力化や私募制度の制度整備等ございます。特定投資家に関する制度が積極的に利用されるためには、関係者によるどのような取組が必要か。

 それからLP出資者がVCファンドのパフォーマンス評価を行う。VCファンドが投資先である非上場企業を適切に管理し、企業価値向上に向けた働きかけを行う上で、公正価値評価は有用と考えられるが、公正価値評価を促すためにはどのような取組を進めるべきか。

 44ページ目でございますけれども、市場インフラにつきまして、市場全体としての機能向上の観点から、取引所、それからPTS、それぞれの機能発揮に向けて今後どのような取組を進めるべきか。

 御説明させていただいた中にございましたが、PTSの売買高上限について、取引手法の工夫を可能とするため、緩和することについてどう考えるか。その水準についてどう考えるか。

 それから、これを引き上げる場合、取引所に近づくため、取引の公正性や透明性を確保する観点から自主規制機関とも必要な連携を行いつつ売買内容のチェックや気配・約定情報の通知・公表を法令で求めることについてどう考えるか。

 ティック・サイズについて、取引の状況や最良執行の在り方を踏まえ、どう考えるか。

 ToSTNeTと類似するPTS取引の5%ルールの適用について、立会外取引とのイコールフッティングの観点からどう考えるか。

 投資単位が高い上場企業に関する投資単位の引下げについてどう考えるか。

 さらに、PTSの売買高が増加し、シェアが大きくなった場合、取引所への移行の在り方や取引所とPTSの役割分担の在り方についてどう考えるかということを御議論いただきたい事項として設定させていただいております。何とぞよろしくお願いいたします。

【神田座長】  どうも御説明ありがとうございました。それでは、今いただきました説明を踏まえて、今後検討していくべき事項、それから、論点、あるいはそれに関する御質問、御意見等をいただければありがたく思います。今御説明いただきましたように、今日御議論いただきたい事項につきましては、資料の43ページと44ページに掲げてありますので、適宜御参照いただければと思います。

 これまでのようにまず委員の皆様方から御質問、御意見を承りたいと思います。その後でオブザーバーの方々から御発言をいただく機会を設けたいと思っております。

 委員の皆様方には、いつものことで大変恐縮ですけれども、多くの方に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間としましては5分目安ということになろうかと思います。4分を過ぎますと事務局から発言時間残り1分の旨のチャットが発言されている委員の方だけに送付されますので、発言時間の御参考にしていただければありがたく思います。

 いつものようにチャット欄に1行、発言希望というような形でメッセージを入れていただきますと、私のほうから御指名をさせていただきます。そうしましたら、お名前を言っていただいた上で御発言をいただければと思います。

 それでは、まず委員の皆様方から御発言を承りたいと思いますけれども、御質問、御意見いかがでしょうか。

 ありがとうございます。神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】  神作でございます。御指名ありがとうございます。3点御発言申し上げます。第1は、成長資金の供給についてでございます。内閣府令の改正によって、個人の特定投資家の要件が弾力化され、また、日証協によって特定投資家向けの銘柄制度、J-Shipsが創設されました。このことによって、特定投資家の範囲とそれから特定投資家がアクセスできる有価証券の範囲が広がり、特定投資家制度の魅力が高まるとともに、証券発行者にとっても資金調達の選択肢が広がり、成長資金の供給の充実につながることが期待されます。

 特定投資家向け銘柄制度においては、各取扱協会員が、発行者の財務状況や投資に当たってのリスク等の取扱いに係る審査を通じて、ゲートキーパーとしての役割を適切に果たし、また、発行者の側では、特定証券情報と発行者情報を適切に開示することによって、特定投資家向け銘柄制度が順調に発展していくことを願っております。

 それとともに、これらの非上場エクイティ証券の流通市場が整備されるということが大変重要だと思いますので、PTSにおいて特定投資家向け有価証券の取扱いを可能とするような制度整備をぜひ進めていただきたいと思います。

 第2は、PTSと金融商品取引所についてでございます。方向性としては、PTSについてのオークション方式の売買高上限を緩和し、市場間競争を促すとともに、金融商品取引所の規制とPTSの規制がレベルプレイングフィールドになっているかどうかということを検討しつつ、市場全体としての機能向上に資するような方向で競争が行われるようにPTS規制の在り方について見直しをする必要があると思われます。

 他方で、スライドの26ページにございますように、PTSを運営する業者の数が非常に少ないという現実にも鑑み、売買高上限の緩和と規制の強化をバランスの取れたものとし、ドラスティックにルールを変更することについては慎重に検討し、状況を観察しながら少しずつ売買高上限の緩和と規制の強化を図っていくことが適当ではないかと考えます。

 PTSにおいて公正取引が行われないように法令で規制することは、投資者の信頼を確保し、市場間競争が公正かつ効率的になされるために必要性が高いことであると思われます。

 それに加え、売買の内容のチェックや気配情報、約定情報の通知・公表を法令で求めるという御提案は、PTSに対する規制の見直しのまず第一歩として初めに着手するのに値するものであると思います。

 スライド45ページで提起されているその他の論点について簡単にコメントさせていただきます。金融商品取引所とPTSにおけるティック・サイズについては、流動性が低下し、約定が成立しづらくなるなど、過度にティック・サイズが小さくなることによる弊害が観察される場合には、イコールフッティングの観点から規制を導入するということも考えられるように思います。

 また、立会外取引と類似するPTS取引のTOB5%ルールの適用については、立会外取引とのイコールフッティングの観点から、取引所の立会外取引の場合にそろえて適用を除外すべきではないかと考えます。

 最後に、上場企業の投資単位について申し上げます。会社法は投資単位をどのように決めるかは会社の自治に委ねておりますけれども、上場企業については、一般投資家や、あるいは分散投資を行っている機関投資家等が投資しやすくなるように投資単位が高い上場企業の投資単位の引上げについても促進をするようにさらに働きかけたり、また場合によっては新たな工夫を考えることが望ましいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】  ありがとうございます。佐々木です。神作委員の御意見と重なってしまうのですけれども、私も、値がさ株についてだけ一言申し上げます。投資単位が高いと、個人投資家のうち予算が限られている層が投資できないということは確かだと思います。投資信託とか、ミニ株とか、違う形では投資が可能になることもあると思いますが、議決権や優待などがついた正式な形での投資は制限されると思います。

 前に資産倍増という話が出たときにも申し上げたのですけれども、やはり単純に国民全体の預貯金比率を下げたいということではなくて、所得層や年齢層などを考慮した上で、それぞれの層について投資を増加させたいということが根底にあるのでしたら、やはり予算の限られた層の人が投資しやすくすることで、恐らくそのような層の株式投資の増加につながることと思いますので、そういった意味で具体的な検討が必要かと思いました。

 また、分かりやすさという点も重要で、100株に単位をそろえたという経緯とか、これまでのいろいろ努力がありますので、それを超えてルール化するのか、あるいは推奨を強めるだけなのか、その辺りについて、具体的に案を考えていただければと思いました。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に井口委員、どうぞお願いします。

【井口委員】  ありがとうございます。まず、事務局には、いつもどおり丁寧な御説明と詳細な資料、ありがとうございました。43ページの御議論いただきたい事項に沿って意見を申し上げさせていただければと思っております。

 最初のポイントにあります非上場株式等の公正価値評価ですが、マーケットのお金を入れるということになってくると非常に重要な事項だと思っています。資料の19ページを拝読しますと、公正価値評価がなければ、今申し上げましたように、マーケットの資金はこういったベンチャーキャピタルファンドに流れることがないということになるかと思います。一方、監査報酬が高いといった理由で公正価値評価の依頼が、ベンチャーキャピタルからないと公正価値評価が行われない、というようなあまりよくないインベストメントチェーンのサイクルにあるように見えます。そして、個別の主体に問題があるというよりも、インベストメントチェーン全体がうまく動いてないようにも見えます。監査法人も、IFRSを採用している会社の監査は必ずやっていますので、法人全体として公正価値評価のノウハウがないというわけでもないと思っております。

 御存じのように、上場株式のインベストメントチェーン活性化ということでは、スチュワードシップ・コード導入ということはありましたが、こういったことも既に始められているかもしれませんが、まずは年金基金等の機関投資家、ベンチャーキャピタル、監査法人といったインベストメントチェーンの主要な方々が集まって協議をしたり、お互い啓蒙するような場を設定することによってインベストメントチェーン全体の活性化の方策を考える必要があるのではないかと思いました。

 2点目の市場インフラの機能の向上ですが、PTS機能の拡大という方向性の中では、競売買方式の上限をほかの売買方式の上限を目安として緩和の方向を探るということが必要ではないかと考えます。ただ、同時に、PTSの取引情報の公表義務や前回の中間整理にもありましたように、自主規制機関と連携して売買審査等を行う枠組みの導入で、透明性や不正抑制の仕組みを確保する必要もあるのではないかと思っております。また、このときには、自主規制機関の業務に対するPTSのコスト負担という観点も検討する必要があると思っております。

 あと、PTSのところでは、競売買方式以外のTOB5%ルールの適用除外については、経済的な効果は同じだと思いますので、除外の方向が妥当ではないかと思います。ただ、除外するに際しては売買審査等の枠組みの確保ということが前提となるのではないかと思っております。

 最後の将来的な姿というところですが、機関投資家にとってはやはり高い流動性と信頼性を提供する取引所が市場の中心であるという状況は変わらないのではないかと思っております。ただ、神作委員もおっしゃっておりましたが、市場間競争という観点では、PTSが一定程度の地位を占めるということも望ましいとも思っています。

 また、二度とないとは信じておりますが、万一前回のような取引所の機能不全が生じたときに、PTSが代替市場としての役割を果たすという観点も重要かと思います。この代替市場というとき、売買を代替市場でするということもあるのですが、前回の事象でいいますと、投信の基準価額が算定できなくなって、個人投資家が大変不便したという事象もありました。PTSが一定程度信頼できるマーケットになったといったことが前提だとは思いますが、PTSを取り込んで、投信の基準価額も含めて、いかに、インベストメントチェーンを安定的に運営していくかということも将来的な課題と思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】  有吉でございます。御説明どうもありがとうございました。私からは、成長資金の供給と市場インフラの関連について、それぞれ2点ずつコメントさせていただきたいと思います。

 まず成長資金の供給の関連でございますが、非上場株式の特定投資家取引を活性化させるためには、先ほど神作委員も御指摘されておりましたとおり、セカンダリー市場の整備が非常に重要であると思います。この点については、個々の証券会社の取組でビジネス機会を探ってもらうということが原則的な対応とは思いますが、一方で発行会社であるとか、あるいは既存株主、投資家側のニーズを何らかの公的な場で酌み取って、そういったものを証券会社のほうに還元してプラットフォームの構築を促すような取組も期待したいと思っております。

 それから、2点目は、非上場株式の公正価値評価についてでございます。公正価値評価というものは、要すれば、資金の出し手とそれから受け手である非上場企業との間で納得感があるような価値評価を行うことと理解しております。その中では、評価手法の実際の運用もそうですし、それからどういった企業にどういった評価手法を適用するのが妥当かとか、こういった部分は、もちろん理論面も重要なのだと思いますけれども、技術というか、アート的なものがあると思っておりまして、事例の蓄積や経験が非常に重要な分野ではないかと考えます。

 こういった意味では、評価ができないので事例が蓄積しないということになり、その結果、事例が蓄積しないので、評価の技術が高まらないということになる。こういうニワトリと卵の関係がある、そういう領域ではないかと感じております。そのため、制度環境を整えるということはもちろん重要なわけでございますけれども、一方で、万全な準備が整わないと公正価値評価を始めることができないであるとか、あるいは厳格な公正さが求められてしまうことで評価ができないということによって、結果として事例が積み重ならないということになってしまうと何も進まないのではないかと強く感じているところでございまして、こういった部分をうまく考慮して取組を進めていただきたいと考えております。

 それから、次に市場インフラの関連でございますが、上場株式を対象としたPTS取引の制度設計については、取引所との対比でPTSをどのように位置づけるべきかという政策的に非常に難しい問題が根っこにあると理解しております。

 ただ、そもそも論で恐縮でございますけれども、PTS取引についてどういった投資家にどのようなニーズがあるのか。つまり、取引所ではなくて、PTSを利用するということについて、どういったニーズがあるのかということを私自身はあまり理解できてないところがあります。そこで、国内外のPTS利用の現状であるとか、あるいは業者、利用者双方の意向のようなものをもう少し調査して、どこにニーズがあり、制度改正を進めていくべき点があるのかということが見えてくるとよいのではないかと感じておりますので、この点、もう少し事務局に調査をお願いしたいと考えております。

 それから、4点目は、既に神作委員、佐々木委員が御指摘されておりました値がさ株の問題についてでございます。この値がさ株の点については、本日の事務局説明資料の40ページにもございますとおり、投資単位が50万円以上の上場企業は5%程度であるということは理解しておりますけれども、証券会社の方々に伺うと、この5%の中には日本を代表するような会社であるとか、一般投資家が強い関心は持ちそうな企業というものが多く名を連ねていると、このように理解いたしました。そういった会社に対して小口投資をできる環境になっておらず、NISAで買うこともできないというのはやはり問題なのではないかと感じます。

 ただ一方で、発行会社からすると、株主数が過度に増えるということが、管理の負担、コストの増加につながると、こういう悩みがあることも非常によく理解できるところでございまして、うまい解決策が思いつかない中でのコメントで大変恐縮ではございますけれども、株主総会手続の電子化が進むなどの株主管理の合理化も進んでいるといったことも踏まえて、値がさ株については、例えば単元未満株での取引も行いやすくするようにするといったような取組を進めていくべきではないかと感じております。

 私からは以上でございます。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】  ありがとうございます。簡潔に2点、論点に沿って申し上げたいと思います。ベンチャー投資がなかなか日本は増えていない中でも、金融庁をはじめ様々な努力をされてきて、例えば特定投資家の要件弾力化や私募債等の整備は着実に進んでいるのだろうとは思います。

 ただ、本日の議論をはじめとして、概してここの委員会でやられている議論というものは、やはりレイターステージのベンチャー企業の問題を中心に議論されているとは思います。ベンチャー企業の育成という意味では、アーリーからミドル、レイターということがつながって初めてベンチャー企業というのは育成されるわけであります。今日の話は基本的にはレイターステージのベンチャー企業をどう評価するかという話ですけれども、その先のミドル、あるいはアーリーにそれがどういうふうにつながっていって、全体として日本経済としてベンチャー企業がどういうふうに育成されているかというような議論にまで、将来的には議論を広げていっていただけるというのが望ましいと個人的には考えております。

 それから、2番目のPTS市場等に関してですけれども、どういう投資家を育成したいのかという視点も重要だと思います。これは有吉委員の議論とも関わっていますけれども、どういう投資家を育成したいのかで仕組みづくりというのもやはり違ってくるのだろうなとは思います。例えば市場がハイフリークエンシートレーディングになってくれば、一般の個人投資家は参加できないでしょうけれども、それを目指している投資家はどんどん参加してくるということになるのだろうと思います。あるいは、ティック・サイズに関しても似たようなことはあるかもしれません。

 そういう意味では、どういう投資家を呼び込みたいのかということによっても仕組みづくりというのは違ってくると私も思っています。

 また、PTS市場に関しては、取引所が開いている時間帯で参加したいという投資家と取引所が閉まっている時間帯で参加したいという投資家ではやっぱり違うタイプのニーズがやはりあるのだろうと思います。そういう意味では、PTS市場といっても、1つのくくりということではなくて、どのような時間帯のPTS市場なのかということによっても投資家のニーズは違ってくるのだろうと思いますので、きめ細やかに様々なタイプの投資家のニーズをうまく拾い上げられるような制度設計が必要なのだろうと思います。

 それから、最後に、投資単位の問題は、個人投資家にとっては非常に投資単位が大きいということは投資の1つの制約にはなります。けれども、もう一つの解決方法としては、先ほど有吉委員がおっしゃったように、単元未満株の投資をやりやすくするということだと思いますし、最近はそういうのをできるようなサービスもかなり増えてきているのだろうとは思います。ただ、それではNISAが使えないとか、そういう問題もあるかもしれないので、代替的にはそちらのほうの投資をやりやすくするというような仕組みづくりというのもあり得るだろうなとは思っています。

 以上です。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】  野村でございます。本日も御説明どうもありがとうございます。成長資金のほうにつきましては、特定投資家制度の規則改正など足元で行われている、すなわち、今は今後の展開に注目すべきタイミングと理解しております。

 したがいまして、コメントは主に市場インフラのところについてとなります。まず、本日御説明いただいた資料の中でこれは重要だと思われるページが幾つかございました。1つが、28ページの海外の上場株等の取引のシェアについてですが、この実情を見ても、いわゆる適切なバランスというものがあるわけではなくて、競争の結果こういうふうになっていると理解するのが適当だと思いました。

 また、26ページの、日本のPTSがわずか3社、直近までは2社ということで、そういう現状をどう考えるのかというのは大事だと思います。PTS事業を手がけたいという主体が存在するということが制度改革の大前提だと思います。新たな参入者、それから既存のプレーヤーにとって、事業としての魅力を見出せるような制度改革である必要があるということです。

 議論していただきたいとされた事項、42ページ、この最後の論点についてまず申し述べたいと思います。PTSの役割が大きくなる中での、取引所への移行の在り方、PTSと取引所の役割分担というところです。まず何を念頭に置いて考えねばならないのかを整理したいと思いました。そもそも論ですけれども、市場インフラの改革、あるいはPTSの制度改革で何をしようとしているのかという点です。すなわち、市場のユーザー、つまり投資家の利便性の向上ということになると思います。また、その場合、今現在の投資家だけを言うのではなくて、投資家の裾野を広げていく、拡大していくということと相まって、あるいは国民の金融資産の運用を高度化するといったことも相まって、個人投資家をどんどん広げていくということ、そして、投資未経験の方たちの運用をプロフェッショナルとして担う投資信託のようなプレーヤー、機関投資家も広げていく。要するに、いろいろな関係者、投資家を念頭に置くということだと思います。

 そして、それらの利便性の向上にはイノベーションが不可欠であると思われますので、イノベーションを起こすには、これは一般論かもしれませんけれども、競争が必要であるということかと思います。ゆえに、東証一極ではない形がいいのだという、そういうロジックなのかと思います。

 また、日本の状況として、自然災害が多いということがある中で、一極集中になってしまうリスクが問題点としてはあるのかなと思います。要するに、レジリエンスの観点ということになるかと思います。

 そして、健全な競争のためには公正な競争条件が必要だということで、資料34ページは非常に多くを語っていると思います。東証が果たしている役割、上場審査、上場関連の規制、売買審査をはじめとする機能、価格情報の公表をはじめとする、そういったインフラ的な機能について、存在感を増したPTSが、言葉は少々きつい言い方かもしれませんが、こういった機能をフリーライドするように見えてしまうと、どうなのかという問題になるのだと思います。そうしますと、これらの機能を分解して、競争に適する部分、それから、自主規制のようないわゆる競争にはなじまない部分、そういった機能に分けるということも必要なのかもしれません。

 価格が分断されるという問題もあるわけです。資料の中では、アメリカのNMS、NBBOも言及されておりましたが、果たしてこういう仕組みを整備するのかということも関係してくると思います。論点になると思います。

 要は、PTSが補完としてなのか、あるいは並び立つものなのかといったような役割の話とまとめてしまうこともできるかもしれません。

 44ページ目前半の、PTSのオークション方式の上限の見直しについて論じていくに当たっては、そもそもどうやって決めてきたのかを改めて整理する必要があるかと思いました。

 また、ティック・サイズ、値がさ株ですが、要は、取引単位を小さくすること、これもどのようなメリットがあるのかが大事だと思っております。そうしますと、いわゆる若年層などの少額の投資を拡大していく、これに寄与する可能性があるという点です。米国では取引単位が小さいことを生かして様々なサービスが展開されていると理解しております。これは今の日本において重要なメリットだと考えます。

 なお、本日の議論事項ではないのですが、顧客本位タスクフォースの発言を取りまとめていただいた4ページ、5ページのところの文言には、一部、正確な意味合いや趣旨をつかみかねるものもあると感じました。例えば受託者責任のところを見ますと、厚生労働省と何か協働して行うということなのかなと思いましたが、そうしますと、DC、iDeCoはどうなのかなどと思いますし、利益相反管理や手数料等の明確化をルール化すると記載されておりますが、「単なる開示にとどまらず」とはどういう御趣旨なのかとも思いました。

 また、中立的アドバイザーのところで、独立とは何かの定義がまだ不明確だという御指摘は、本当にそのとおりだと思うのですが、恐らくアドバイスとは何かというのもなかなか定まっていない。つまり、このような基本的な用語の統一が重要で、その上で議論を進める必要があると思いました。これは最後に補足です。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、チャットでいただいています順番で、次は坂委員、どうぞよろしくお願いいたします。

【坂委員】  弁護士の坂です。日頃弁護士会の消費者問題対策委員会等で主として投資者、利用者の観点からいろいろ議論させていただいております。本日からの参加となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 私のほうからは、成長資金の円滑な供給の論点の2つ目について主として発言させていただければと思います。公正価値評価を促す取組について5点述べたいと思います。

 第1点は、広く社会的に公正価値評価が企業の成長、ひいては経済成長の要となり得ることの意義を確認して、その内容の理解の普及を図ることが大切だと思います。公正価値評価は、企業の現状及び将来性について、合理的な分析、認識を行うための手段を提供するものです。これは企業成長に役立て得る反面、不適切な企業評価が放置されますと、企業成長や経済成長の妨げともなり得るところです。企業会計の発展は経済成長に貢献してきたと思いますけれども、公正価値評価の普及も企業の成長あるいは経済全体の成長に貢献するということが期待されているところと思います。

 第2点は、非上場株式などにおける意義を確認して、理解を広げることも大切と思います。非上場株式では、多数の市場参加者による情報集約機能を期待できないので、専門家による公正価値評価とその検証がより重要になります。多数の市場参加者がいないことを背景とする不正への対応の観点からも、この点は重要です。

 第3点ですけれども、成長資金の供給において公正価値評価を共通言語としていくことが大切と思います。公正価値評価は、企業の現状と将来性を図る有用な手段であるにもかかわらず、運用機関においても、投資者においても活用されていないようであります。適切な形で会計基準を整備するなどによってその活用を促して、いわば共通言語化していくことが必要です。

 第4に、成長資金の提供において、企業価値評価を通じてある種のガバナンスを効かせる取組や仕組みを検討するという視点も大事です。公正価値評価が適切に行われるには、評価の前提となる基礎的な情報取得の適正確保と、それから評価手法の選択、実施の合理性確保が重要であって、公認会計士等の専門機関による実施、それから、その適正について出資者による監視あるいは検証、それから、行政監督によるバックアップ等によるガバナンスの仕組みといいますか、構造といいますか、そういったものを検討する視点が必要と思います。

 第5に、公正価値評価の客観性を高め、制度の検証可能性を高めるという視点も重要です。公正価値評価の記述の標準化や比較可能性を確保することなどが考えられます。評価の合理性を事後的に検証する方法としては、ファンドが、非上場株式取得の際に見積もった超過収益力が、その後実現されたかどうかを観察するという視点もあり得ると思います。

 最後に、市場インフラの機能向上の論点について一言だけなのですけれども、市場インフラの機能向上においては、取引機会の提供とともに、市場における情報生産機能、価格発見機能の適正確保を重視すべきだと思います。かかる観点からも、PTSにおける売買の内容チェックや気配情報・約定情報の通知・公表について、法令で求めるということが必要と考えます。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】  松尾でございます。ありがとうございます。

 私からは市場インフラの機能向上について2点申し上げます。まず競売買方式の売買高上限の引上げについては、市場間競争の促進という観点から引き上げていくということには賛成します。ただし、取引の公正性ですとか価格の透明性を確保するためのルールについても、取引所と同等に、近いような形で適用していくことが必要であるという点は、神作委員のおっしゃったとおりかと考えております。

 ただ、一方で、PTSは競売買方式以外の売買方式について、独自の注文方法ですとか約定方法を工夫して既存の取引所との差別化を図るということも期待されている。これは今日の資料にもあったかと思います。そのこととの関係で、そういった新たな売買方式の試行ですとか導入する際に、こういった取引の公正性を確保するための規制ですとか、価格の透明性を確保するための規制がそれを阻害したり、あるいは萎縮させたりということのないように配慮していただく必要があるのではないかということを考えました。

 もう1点、立会外取引と類似するPTS取引について、TOBの5%ルール、義務的な公開買付けの適用について、取引所の立会外取引と同じ扱いをすべきであると。これもそのとおりかと思いますけれども、これはそもそもどういう条件がそろっておればTOBの5%ルールを適用除外にしてよいかというところから始まって、それを満たしておれば、取引所の立会外取引であろうと、PTSにおいて行われる取引であろうと、除外して構わないという方向でアプローチする問題なのかなと感じました。

 ですので、どういう条件がそろえば5%ルールの適用除外をしてよいのかということを明示して、現在もかなり明確になっているとは思いますけれども、それを明確にしていただいて、そちらからアプローチしていただくのがよいと考えました。下手をしますと、取引所の取引である、あるいはPTSの取引であるということのみで除外になってしまいますと、規制を緩くする方向で競争が働いてしまうというようなことになりかねないというような懸念を持ちましたので、今のようなことを申し上げました。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に、武田委員、どうぞお願いいたします。

【武田委員】  ありがとうございます。成長資金供給に関して意見を申し上げます。御説明いただきましたとおり、日本では欧米に比べて年金等からのVC投資が低いこと、そしてその理由の1つとして、非上場株式等の公正価値評価の実施が限られていること、これらは以前から御指摘いただいておりますので、今回はVCファンドの評価の問題、監査の実務の問題、これをぜひ解決していく必要があると考えています。

 資料の注を拝見いたしますと、外国籍であれば公正価値評価を行っている監査法人があること、それらのVCファンドの監査に対応している監査法人もあることが記載されており、また、先ほど他の委員から監査法人にノウハウがないわけではないという御発言がございました。もしノウハウがそれなりに蓄積されているのであれば、監査法人に対し公正価値評価を前提としていただく指針などの形で、周知徹底していく仕組みづくりを御検討いただけないでしょうか。

 ただし、成長資金供給の問題は、エコシステム全体で捉える必要もあると思います。例えば今回、公正価値評価の問題をクリアするには、企業や年金基金等にも目利き力を持った人材がいなければならないと思います。監査法人に対して周知を求めると同時に、年金や企業にも働きかけていく必要があると思います。

 また、日本はマクロ全体で申し上げれば、企業に現預金が300兆円ございますので、その一部をスタートアップ等のオープンイノベーションにつなげていく動きを促進することも必要ではないかと考えます。

 本ワーキング・グループの直接の対象ではないことは理解しておりますが、突き詰めて考えますと、労働市場の流動性や、人材のスキルを適正に賃金として評価していく仕組み、あるいは株主還元の偏重から中長期的な成長を促していくガバナンスの在り方など、エコシステム全体で全体最適の議論は必要だと思います。

 したがって、本ワーキング・グループで公正価値評価の問題、ここをしっかり議論しクリアしていくとともに、金融庁におかれましては、関係省庁と連携してエコシステム全体の観点から、全体最適の議論を進めていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に、原田委員、どうぞお願いいたします。

【原田委員】  原田でございます。私のほうからは市場インフラの機能向上に関して意見を申し上げます。競売買方式に係るPTSの売買高の上限の緩和、これはPTSの機能発揮に向けた取組として賛成いたします。

 2つ目の点につきましても、PTSの性質が取引所に近づくという観点から、売買内容のチェックですとか、気配情報、約定情報などの公表を求めるということに関しても賛成いたします。

 日本は東証のシステム障害が1つのきっかけになりまして、PTSの活性化が継続審議されている状況であろうかと思います。ですので、PTSのシェアが上がって活性化につながるというのはあるべき議論であると思います。

 ただ、忘れてはならないのは、取引の公正性ですとか価額の透明性を確保するという視点で、この点に関しましては、神作委員、井口委員もおっしゃっていたことになりますが、緩和と規制の強化、両方の視点を持つということは大事であると考えます。

 今後の議論の参考になるだろうと思われるのは諸外国の状況であります。PTSをめぐる状況は諸外国で大きく異なりますが、欧米では少なくとも日本よりは進んでいるという状況です。

 アメリカですと、今日、事務局で御説明いただいた中で出てきたのは、取引所とATS、PTSですが、合わせて48の執行所があるということでした。物によっては50あるとする資料もありますけれども、かなり十分な数の執行所があって、競争も十分できている。ですが、アメリカですと、過当な競争のような面もあります。最近ですと、ゲームストップ株をめぐる騒動というのが皆様の記憶に新しいかと思います。複雑な市場になっているのではないかという議論もあります。

 一方、日本ではPTSの数は少なく、これからという状況ですけれども、上場株式などの取引プラットフォームに関しては、ほかの国から学べることは学んで大いに参考にするべきであろうと思っています。

 市場制度ワーキング・グループでは、今後、最良執行ですとか、ティック・サイズですとか、PTSの規制や監督などを議論することになるかと思いますので、有吉委員も同様の視点からおっしゃったと思いますけれども、一度諸外国の制度ですとか現状に詳しい人のお話を聞いてワーキング・グループ参加者全員で情報共有するというのも一案ではないかと考えました。

 具体例で言いますと、韓国ではこの秋、PTS、つまりATS、が始まりますけれども、日本のPTSのスタートから今までに至るいろいろな課題を日本の取引所から聞いて改良して工夫したというようなことを先月、韓国の取引所で聞いてきました。日本はPTSの活性化を今考えているところですので、既に活性化してきてゲームストップ株騒動などで問題を起こして複雑になり過ぎたなどと言われているアメリカの事例などを学ぶというのは、日本の今後のPTSを考える参考になるのではないかなと思います。

 TOBの5%ルールをはじめ、イコールフッティングを進めるべきという考え方は、公正な競争条件で競争するべきであるという視点から重要な考え方であります。先ほど野村委員がおっしゃった点ですが、ただ競争が必要な面と、そうではない面というのはしっかりと分けて考える。バランスを取りつつ仕組みを考えていくということは大事になるはずです。

 事務局の説明にもありましたが、PTSは一種業者でありまして、取引所ではありませんので、市場監視などの自主規制はない。こういう違いをどう考慮して競争を促進していくかという視点は今後も持ちつつ議論していくべきであろうと考えました。

 以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】  どうもありがとうございました。御指摘の中で、アメリカ等の状況の共有ということは少し検討させていただければと思います。

 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、森下委員、どうぞお願いいたします。

【森下委員】  ありがとうございました。私からは4点ほど申し上げたいと思います。まず特定投資家制度ですけれども、仕組みができて、今後これがよく使われていくに当たっては、やはり証券会社、あるいは日本証券業協会の取組というのが本当に重要になってくるのかなと思っております。

 既にJ-Shipsという制度もあり、いろいろな広報などもしてくださっていると思いますけれども、いい形で本当に適切な方々にうまく御案内をしていただいてこの新しい制度を活用していただけるようになるには、やはり間に入っていろいろな御説明を行い、つなぐ役割を果たしてくださる業界の方々が非常に重要だと思いますので、ぜひそこは、頑張っていただくと言うのは失礼な言い方かもしれませんけれども、証券業の皆様にぜひ期待したいと考えているところであります。

 次にPTSですけれども、いろいろ具体的な御提案がありましたけれども、1つ感じておりますのは、PTSといっても非常に多様であるということです。取引所があるようなものもあれば、ないようなものを取り扱うPTSもあるということだと思いますし、サイズなどによっても様々だと思いますので、あまり法令でかちかちっと決めてしまったがために各取引所の創意工夫がやりにくいと、あるいは扱う商品等に応じた柔軟な取扱いがしにくいとなってしまうと逆にPTSのよさを失ってしまうということもありますので、ルールベースか、プリンシプルベースかというような話というのはよく出てきますけれども、適切な役割分担をしながら、いろいろな個性のあるPTSが出てこられるような、そういったルールづくりというものを大事にしたらいいのではないかと感じております。

 3点目ですけれども、今日の御議論いただきたい事項ということとは直接関係ないのかもしれませんけれども、資料の15ページにVCファンドへの資金供給主体の日米比較ということでお示しをいただきました。これもこの会議でも何度か既に出てきているようなものかと思いますが、日本とアメリカでは大分状況が違うということだと思うのですけれども、こういった中で、今後どうしていきたいのか、例えば5年後、どこを、どの割合をどう持っていきたいのかというようなビジョンというようなものは、やはりある程度具体的に持っていたほうがいいのではないのかと思います。今回、特定投資家というような方々が、ファンドというか、新たな非上場企業への投資において一定の役割を占めてくださるようになることを期待しているわけですけれども、では、どれぐらいの割合の増加が特定投資家の方々に期待されるのか。

 ただ、全体としてはそれでもまだまだ不足しているので、もっとほかのところに働きかけていかないといけないのかというようなことを少し具体的に考えていくことがあってもいいのかと思います。もちろんステージによってそれぞれの投資家やファンドの果たす役割は違うので、なかなか一概には言えないのかもしれませんけれども、アメリカにないものを欲しいなと思っていてもいつまでも手に入らないというようなこともあるかもしれませんし、日本として、例えば3年後、5年後にどういった姿を目指したいのかというようなことを考えてみてはどうかということでございます。

 最後に、海外からの資金の取り入れということで、今の15ページの左のところですと海外3%というような数字がありますけれども、こういうような成長資金、非上場企業への投資でどこまで海外からのお金を効果的に取り入れることができているのだろうかですとか、あるいはもっと効果的に取り入れる方法があるのかというようなことも改めて検討してみてもいいのではないかと考えております。

 以上です。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に、松岡委員、どうぞお願いいたします。

【松岡委員】  どうもありがとうございます。既に皆様から具体的な御発言などもございましたので、私のほうからは、企業の立場から、最も関心の高い中の1つである成長資金供給の円滑化に向けた課題等について全体的なコメントを一言だけ申し述べたいと存じます。

 日本企業の成長を目指す上で、様々な新技術やビジネスモデルに対する資金供給が円滑に行われ育成されていくことが、大変重要だと思っておりまして、御説明の中で米国の例なども取り上げられていますが、同国、ひいては世界の時価総額ランキングを見るに、そのようなところから成長を遂げてきた企業が上位を占めているという状況かと存じます。

 そういった意味で、14ページなどで指摘されているような課題を認識し、また、先ほど御指摘のあったとおり、エコシステムとして取り組んでいくということはとても重要かと思っております。

 弊社におきましても様々な投資をグローバルに実施をしておるわけでございますが、そうした中で、成長やリターンポテンシャルのある企業に対するアメリカを中心とした圧倒的な資金提供者の数、種類の多さ、資金量、そして高い洗練度を目の当たりにしており、大きなダイナミズムを感じるとともに、その過程において弊社における目利き力や洗練度、またプロセス執行力も磨かれていくということも如実に感じております。

 日本におきましても、新たなビジネスにチャレンジし、その中でも、成功する者だけとは限らない、リスクテイクのカルチャーが全体として醸成され、また、こちらで御指摘がございました公正価値評価を含めた構造的な変化への取組ということに期待したいと思っている次第でございます。

 ありがとうございました。

【神田座長】  どうもありがとうございました。これで本日御参加いただいている委員の皆様方全員から御発言をいただきました。貴重な御指摘をたくさんいただきまして、ありがとうございました。

 私も1点だけ、感想めいたことですけれども、公正価値評価についてですけれども、やはりこの分野は日本は遅れていると言わざるを得ないと思いますので、非常に重要な分野で、キャッチアップという意味も含めて、ぜひ積極的に、本気で取り組めたらいいと感じています。

 それでは、オブザーバーの皆様方から御発言がございましたらお受けしたいと思います。チャット欄に入れていただければありがたく存じます。

 それでは、日本ベンチャーキャピタル協会、村田さん、よろしくお願いします。

【村田オブザーバー】  よろしくお願いいたします。村田でございます。公正価値評価の促進に向けた取組でございますが、当協会でも最も重要な位置づけとして、この普及に向けた動きを資料でも取り上げていただきましたが、公正価値評価を前提としたパフォーマンスベンチマークの策定等で普及を促進しているというところになりますが、促進の方法として最も効果的なものは、金融商品会計基準と有責会計基準そのもののアップデートをする必要があるということと、これに付随する実務指針、日本公認会計士協会で取り扱われている実務指針も併せてアップデートする必要があるかと考えております。

 その理由が、VCファンドへの資金供給主体という資料がございましたが、日本のLPの約8割が上場企業と金融機関からのLP構成で大きく占められているというところでありますが、先ほどからお話がありますけども、IFRSを採用されていない会社に関しては金融商品会計基準で取り組むことが大前提という形になっておりますので、資料にも書いてございましたが、基本原則として取得原価と減損のみで評価するというもので取り込まれているという実態がございますので、公正価値評価で取り込むインセンティブがないということでございます。自分たちのB/Sに反映するのは金融商品会計基準で適用すべきものとなっているため、これは最も促進が進まない理由ということで、GPサイドだけでなくLPサイド自体の取扱いを変えるという意味で、会計規則を修正する必要があるのではないかと考えております。

 その中で、順番にこれを進めていく必要があるのではないかとも考えておりまして、こちらを日本公認会計士協会の皆様とも連携しながら議論を進めている最中というところになりますが、1つ目のステップとして、業種別委員会実務指針第38号の投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱いというところの中で、まず公正価値評価に関する取扱いが明確に規定されていないというところがございますので、VC等の有責組合に関して、IPEVガイドライン等の準拠に関して監査を行う場合の留意事項を追記されるように改正していくという動きがまず必要かと思っておりますということと、それから、有責会計の部分に関しても、有責法の中で明確に会計規則が盛り込まれていないという非常に変わった法律に現状なっているということもございますので、まず有責会計法、有責法の中で会計規則を明確に、中小企業等投資事業有限責任組合会計規則に準じた会計を行うということを明記した上で、ここで公正価値評価に関する取扱いを取り扱うことができるという内容にアップデートする必要があるかと思っております。

 有責会計を実務指針含めてアップデートをした上で、金商会計のほうに踏み込むべきかと考えておりますが、一足飛びに未上場株式を全て公正価値評価で執り行うのは非常に拙速かなとも考えておりますので、例えば二項有価証券のみに限定し、まずは公正価値評価で取り込めるというルールを、金融商品会計規則、それから金融商品会計に関する実務指針、会計制度委員会報告第18号のルール、こちらにアップデートをかけると。金商会計ベースで公正価値評価をするのが大原則という形で取り込めるようになると、非常に効果的に導入が促進されるのではないかなと思っております。

 その上で、我が国だけが先進国の中で未上場の株式に対し公正価値評価を行っていないという実態がございますので、金融商品会計基準そのものに関して、市場価値、市場価格のない株式は取得原価をもって貸借対照上の価格とするという規定そのものを見直すべきかと考えております。

 それから、公正価値評価以外のところで特定投資家私募の取扱いに関するところですが、こちらは、昨年と一昨年に日本証券業協会でやられていた懇談会でも議論をさせていただいた内容かと思いますが、特定証券情報の内容が発行体にとって非常に重たい内容になっていることが促進をするための阻害要因になりかねないと危惧しておりまして、具体的に申し上げると、財務情報等が開示上必要になってくるというポイントが発行体の負担が非常に大きいものと捉えております。アメリカのレギュレーションDに基づくフォームDの開示内容によれば、A3、4枚くらいの開示情報でチェックボックス形式であり、開示するだけで発行体自体が募集・勧誘行為に使えるという形になっておりますけれども、いわゆる自社のB/S、P/L等の開示を行わない状態で募集活動ができるからこそ非上場株式の流通の活性化がルール上もできていると考えておりますので、なるべく特定証券情報の開示内容をぐっと圧縮するということかと思います。基本的に発行体と投資家が直接コミュニケーションしていわゆる会社のデューデリジェンスをするという形のコミュニケーションができる形というのがアメリカでも一般的に行われておりますので、こういった形に日本もアラインしていく必要があるのではないかと考えております。

 私からは以上になります。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは次に、東京証券取引所、川井さん、どうぞお願いいたします。

【川井オブザーバー】  御指名いただき、ありがとうございます。東京証券取引所の川井でございます。本日は、市場インフラの機能向上ということで様々な御意見をいただきまして、ありがとうございます。本日取り上げていただいたテーマのうち、貯蓄から投資への流れを促進するという観点で、2点コメントさせていただければと思います。

 まず、ティック・サイズについてですが、事務局の資料に御記載いただいていますとおり、粗過ぎても細か過ぎても問題という点がございます。この点、諸外国では、ティック・サイズは、価格形成や投資家の執行コスト、さらには最良執行ルールのベースとなるものですので、市場全体で適切なサイズを統一的に定めているというのが実態でございます。

 翻って東証でございますが、東証における中流動性銘柄の現状は、欧米の水準や流動性の実態、実際には気配のスプレッドを見ても、刻みが粗く、投資家の執行コストが割高になっていることから、これまでも海外の長期投資家を含め、改善すべきという声をいただいておりました。

 そのため、我々としては、既に公表しているのですが、まずは中流動性銘柄であるTOPIX Mid400銘柄を対象に、ティック・サイズの分かりやすさを重視するとともに、神作委員からも御指摘がありましたけれども、過度に細かくならないようにしつつ、見直しを行い、個人投資家を含めた投資家の執行コストの低減を図っていきたいと考えてございます。

 2点目は値がさ株でございます。本日も様々な御指摘、御意見をいただきましたけれども、やはり広く国民に貯蓄から投資への流れを促進するうえで、取引所としても重要な課題と認識しておりますので、まずは、投資単位の高い企業に対して、これまで以上に働きかけを行っていきたいと考えてございます。

 最後に、市場インフラとしての取引所として一言意見させていただきます。取引所を含めた市場インフラは、インベストメントチェーンの重要な一員であり、その担い手が多様化し、同じように投資家に対して、取引の場、またサービスを提供されるという中にあっては、担い手がどうであれ、やはり最も重視すべきは、投資者保護や取引の公正性です。それらが実効的に確保されるように我々自身が一層取り組まなくてはならないと考えておりますし、全体としても、整合性を持った枠組みというものが大切になってこようかと思っております。

 我々取引所としては、今後も投資家に安心して参加いただけるよう、市場の利便性やサービスの向上はもちろんのこと、市場の信頼性や取引の公正性の確保、さらには、システムの堅牢性やセカンダリーサイトの強化など、市場全体のレジリエンシーを柱として、さらなる機能強化に努めていきたいと考えております。

 私からは以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に、日本証券業協会の松本さん、どうぞお願いいたします。

【松本オブザーバー】  日本証券業協会の松本と申します。御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私からは43ページの成長資金の供給の関係とその次のページのPTSの取引の関係についてそれぞれ意見を申し上げたいと存じます。

 まず成長資金の供給についてでございます。本協会では今年の7月に制度整備いたしました特定投資家向けの銘柄制度の愛称といたしましてJ-Shipsと名づけて、説明会の実施ですとか、ウェブのサイトの開設などの周知活動を行ってございます。このホームページの開設が9月でございまして、まだ間もないところ、本日も多くの委員の方にJ-Shipsと言っていただきまして、周知活動の一環にもなったと思って非常に喜んでいるところでございます。

 そうした中、投資家層の拡大という観点からは、非上場企業への投資に関心のある投資家の方が特定投資家に移行しやすい環境の整備ということも引き続き課題かと思ってございますので、この点についても御検討いただければと思っております。

 なお、特定投資家向けの有価証券の積極的な利用に当たっては、セカンダリーが重要という御意見が、本日、委員の方からもございました。我々も全くそのように思ってございまして、こちらにつきましては、資料で書かれてございますPTSでの取引以外にも、対面での取引ですとか、インターネット上での簡易な取引、こういったものを円滑に行えるよう、規制の明確化や緩和について検討することが有用と考えてございます。

 また、IPOプロセスの見直しなど、本協会が検討主体となっている制度整備につきましても、資料中記載がございますが、この点については、金融庁をはじめとして幅広い市場関係者と引き続き具体的な検討を進めてまいりたいと思いますので、引き続き御指導のほどよろしくお願いできればと思います。

 また、先ほど日本ベンチャーキャピタル協会のほうから私どもの規則の特定証券情報の内容について御意見がございました。我々、ルールを作成するときに発行体の方等の意見も踏まえて作成してございますが、こちらにつきまして、必要に応じて検討も行っていきたいとも考えてございます。

 次に、PTS取引についてでございます。まず上場株式のPTS取引につきまして、取引所との適切な市場間の競争を行うという観点から、PTSの機能強化に併せまして、PTSの運営業者自身が気配・約定情報の通知・公表をしていくというような公正な市場確保のための施策についても必要かと思っております。

 なお、この際、世界的にもリアルタイムの情報は有料で提供されて、無料で提供されている情報は一定期間経過したものということが現状かと考えておりますので、そういったことも踏まえまして、無料での公表情報につきましては一定程度の遅延を許容するということがグローバルスタンダードになってくるかと思っております。

 また、PTSの自主規制について御意見もいただいているところでございます。日証協といたしましては、PTSの運営業者に対する自主規制の対応といたしましては、我々の自主規制におきまして、PTS運用業者の方が取引を適切に確保するために必要となる取扱規則を作成することですとか、管理体制を整備するということ、またPTSに参加する証券会社がそういった規則を遵守するというような形の規則をつくることでPTSの取引の公正性、投資家保護の確保を図ることを考えているところでございます。

 最後でございますが、欧米では市場の流動性の分断が不必要な取引コストの上昇を招いたという指摘もあると聞いてございます。この点、既に委員からの御指摘もございましたが、PTSの取引規制の見直しによりかえって取引コストを増大させる可能性もあることから、規制の効果を確認しながら検討を進めていくことが肝要と考えてございます。

 私から以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】  どうもありがとうございました。それでは、次に、国際銀行協会の中村さん、どうぞお願いいたします。

【中村オブザーバー】  国際銀行協会の中村でございます。発言の機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 既に皆様から出ておりますけれども、弊協会の見解ということで3点お話ししたいと思います。

 まず、議論いただきたい事項②の大項目1の3点目についてです。ティック・サイズの取引所とPTSの間での差異については現在特段の問題はないと思います。最良執行の点につきましても、SORシステム等の対応ができており、特段の問題はありません。

 また、市場間競争があるためにこうした差異が出てきており、ビジネス機会が多様化している点は評価すべきと考えております。

 今後検討する問題としては、ティック・サイズを統一するのか、差異のあるままでよしとするのか、それぞれのメリット、デメリット両面があると思いますが、流動性等への影響を検討し、総合的に判断すべきと思います。

 次に、議論いただきたい事項②の大項目1の4点目についてです。PTSの立会外取引に対して、TOB5%ルールが適用除外となれば、現在、ToSTNeTのみで取引されている立会外取引がPTSにおいても可能となります。このことは市場間競争を促進することになると思いますので、歓迎いたします。

 各PTSが立会外取引を行う場合は当然、取引の透明性、システムの安全性等、種々の規制を充足する体制であることが前提となります。また、バイサイドの投資家をはじめとした投資家への十分な説明も必要になると思います。

 最後に、議論いただきたい事項②の大項目1の5点目についてです。取引単位の引下げにつきましては、2018年に100株に統一されており、機関投資家が主たる顧客である証券会社としては特段の問題点は見られません。今後さらなる引下げを行うのであれば、特に流動性等についてプラスの効果があるのか等について検証を行う必要があると思います。

 以上でございます。

【神田座長】  どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方々で御発言はございますでしょうか。

 よろしいでしょうか。委員の皆様方で追加で御発言があれば承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 ありがとうございます。佐々木委員、どうぞ。

【佐々木委員】  ありがとうございます。今日のことに関連したことではないのですけれども、ワーキング・グループ全体として少々希望を申し上げたいのですが、三井住友銀行とSMBC日興証券との間の行政処分が行われました。世間の関心も非常に高く、またファイアーウォール規制緩和をこのワーキング・グループでずっと議論してまいりましたので、また今後も話し合う予定があるということでしたので、この点についてはぜひその際に御説明いただければと思っております。

 この件は、私は読んだだけでよく分かっていないのですけれども、顧客の同意を得てないだけではなく、顧客が望まないのに情報共有されたというようなことが書いてありましたので、そういった意味では、ファイアーウォール規制というより、そもそも顧客管理の問題というか、利益相反の情報共有にも反しているように思ったのですが、少なくともこういったことが防げていない現状があるということが出てきた中で、今後、ファイアーウォール規制の緩和についてまた話し合うというお話がありましたので、こういったことを考慮すべきなのかどうかといったあたり、明確にするほうがいいのかと思いましたので、ぜひ機会をまた設けていただければと思います。よろしくお願いします。

【神田座長】  どうもありがとうございました。何らかの形で説明をさせていただくなりの機会を御検討いただけますか。

【島崎企画市場局市場課長】  はい。

【神田座長】  ありがとうございます。

 では、そういうことでさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

【福田委員】  福田ですけれども、佐々木委員と似たような話ですけれども、足元、非常にマーケットが荒れています。そういう意味では、仕組債とか、複雑な金融商品を持っていた個人が損を抱えたりしています。そういう状況は、投資家にとってはよくないのですけれども、このワーキング・グループでやってきた顧客本位の業務運営に関するいろいろなことがどこまで徹底されているのかということを検証する上ではいい機会になっています。そういうことも含めて議論を広げていただくということは大事ではないかと思いました。

 以上です。

【神田座長】  どうもありがとうございます。顧客本位タスクフォースのほうで議論をしていることにつきましては、今日もさせていただいたのですけれども、毎回、こちらで、簡単ではありますけれども、御報告をしていただいて、今日もコメントをいただいたところですけれども、必要に応じてまたこちらでも議論していただければと思います。そういう意味で御意見等ございましたら、ぜひこちらのほうでもお出しいただいて結構というか、大歓迎でございます。

 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 それでは、よろしゅうございますでしょうか。

 本日もいつものように非常に多様な御意見、貴重な御意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。本日いただきました御説明、御意見等を踏まえ、事務局において今後検討すべき課題について少し整理をしていただき、皆様方に議論を深めていただくということにしたいと思います。

 1点、今申し上げたことも関係するのですけれども、今後の本ワーキング・グループの運営について御説明をさせていただきたいと思います。

 やや繰り返しになりますが、冒頭で事務局からも説明がございましたが、このワーキング・グループの下に設置しております顧客本位タスクフォースというものがございまして、先月大臣からいただきました諮問事項の取扱いですけれども、これにつきましてもこのタスクフォースで検討をしていただきたいと考えております。

 繰り返しになりますけども、タスクフォースの様子はできるだけ頻繁にこのワーキング・グループにも、簡単になるかもしれませんが、御報告いただき、このワーキング・グループでもその都度、もし御意見等がございましたら御発言をいただくというような形を取りたいと考えております。

 ということで、先月大臣からいただきました諮問事項につきましては、このタスクフォースのほうで御検討をしていただきたいと考えております。

 そういうことで進めさせていただくことにつきまして、皆様方に御了解をいただけると大変ありがたく存じますけれども、そういうことでよろしゅうございますでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【神田座長】  どうもありがとうございます。

 それでは、そういうこととさせていただきます。

 局長のほうからございますか。大丈夫ですか。

 それでは、本日は少し早いですけれども、また、将来延長ということもあるかと思いますので、本日は以上をもちまして終了とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
お問い合わせ先

金融庁 03-3506-6000(代表)

企画市場局市場課(内線:2352、3970)

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